説明

製パン方法および製品

【課題】凍結させた予備焼きパン生地から、焼き上げたパン製品を製造する改良された方法、そのようにして得られる凍結させた予備焼きパン生地、ならびに対応する焼き上げた製品およびパン改良剤を提供する。
【解決手段】凍結した、予備焼きしたパン生地片を、加熱炉中に加熱炉温度200℃〜260℃で5分間以内の時間入れることに対応する最終的な焼き上げにより、焼き上げたパン製品を得ることができる、前記凍結した、予備焼きしたパン生地片を製造する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結させた予備焼きパン生地から、焼き上げたパン製品を製造する改良された方法、そのようにして得られる凍結させた予備焼きパン生地、ならびに対応する焼き上げた製品およびパン改良剤に関する。
【0002】
本発明においては、製パンとは、加熱炉中で、少なくとも下記の成分、すなわち穀類粉、水、および活性パン酵母を確実に含むパン生地またはパン生地片を、その発酵後に焼き上げることにより、焼き上げたパン等の製品を製造するために使用するすべての工程に関する。「穀類粉」との用語は、穀類または数種類の穀類の組合せに由来する粉を意味する。
【背景技術】
【0003】
加熱炉で即焼き上げることができる製パン用パン生地の製造は、少なくとも一つの混合工程および少なくとも一つの発酵工程を包含する、幾つかの工程を含む方法である。
【0004】
一般的に、製パン業者は、連続的に作業し、このためにパンの鮮度が影響を受けることがある。朝焼き上げた場合、そのパンは昼前までは新鮮であるが、その後、外皮が乾燥または軟化する、およびカリカリした感触および芳香が失われると共に品質が低下する。今日、現代の消費者は、夕方または夜を含めて、一日のどの時点においても新鮮なパンを求めている。
【0005】
この消費者の要求に応えるために、製パン業者は、毎日、異なった時間間隔で幾つかの焼き上げ作業を行うことを強いられてきた。しかし、即焼き上げることができるパン生地の製造は、時間がかかり、労働力の要る仕事であり、室温では、パン生地は、加熱炉に入れる前に短時間しか置いておけない。
【0006】
この問題を克服するために、幾つかの製法が開発されている。
【0007】
例えば、「予備焼きパン生地」技術が公知である。この技術は、発酵したパン生地の予備焼き工程が特徴であり、これによってパン生地のコアが凝固し、外側に柔らかい被膜、すなわち外皮の前駆物質が形成される。伝統的な予備焼きパン生地の一つの特徴は、柔らかい被膜が褐色化しないことである。すなわち、僅かな褐色化は、外皮が形成され始めていることを示し、従って、予備焼き段階が限度を越えたことを示す。これは、その後の欠陥、すなわち製造収率の低下および最終焼き上げ後の外皮の剥がれにつながる。従って、予備焼き工程は、特に微妙な工程である。伝統的な「予備焼きパン生地」技術においては、外皮の形成を開始させずにコアの凝固を引き起こすのが困難であるために、ほとんどの場合、大サイズの製品を製造できない。従って、この技術は、ロールパン、半分の長さのバゲットまたは短いバゲットに使用されることが最も多い。予備焼きパン生地は、乾燥を回避する条件下で24〜48時間保存するか(新鮮な予備焼き)、または凍結させることができる。凍結の前、最中および後に、予備焼きパン生地の乾燥を制限することも重要である。最終的な焼き上げの時点で、典型的には販売時に、凍結させた予備焼きパン生地を冷凍機から取り出し、加熱炉に直接入れる。従って、その日のどの時点でも、予備焼きパン生地片の形状および重量に応じて、10〜20分間の最終焼き上げの後には、新鮮なパンを入手できる。通常の凍結させた予備焼きパン生地技術の有害な大きな欠点の一つは、予備焼きパン生地片が最終的焼き上げの際に収縮することであり、体積が少なくとも10%減少する。
【0008】
米国特許公開US−A−4788067およびUS−A−4861601には、この予備焼きパン生地技術に属する、10〜15分間を要する、予備焼きパン生地の最終焼き上げ工程を必要とする製法が記載されている。
【0009】
パンまたは類似の製品を完全に焼き上げた時点で凍結させ、販売の直前に加熱炉に短時間入れることにより、解凍させる試みもなされている。この方法には、第一に、柔らかい中味が脱水し、リングや白い斑点が生じ、第二に、外皮が剥離するという、2つの大きな欠点がある。従って、この、完全に焼き上げたパンを凍結させる方法では、良好な品質のパン製品を得ることができない。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、短時間で焼き上げた後、一日中、良好な品質の焼き上げ製品を入手できる、改良された製パン方法に関する。本発明により、とりわけ、最終の加熱炉焼き上げを5分間以内で行うことができる。
【0011】
本発明の方法により、最終焼き上げの際にパン生地の収縮を大幅に低減させることができる。本発明の方法により、有害な外皮の剥離も回避される。
【0012】
本発明においては、「加熱炉」の用語は、中でパン生地の焼き上げを熱移動により行う加熱炉を意味する。従って、「加熱炉」に電子レンジは含まれない。加熱炉は、パン焼き加熱炉、特にラック型または静止型、またはデッキ型、あるいは水平または垂直モジュール式トンネルの形態であるのが好ましいが、加熱炉ケースの中で指定の温度に到達できれば、家庭用のオーブンでもよい。パン焼き加熱炉により、パン生地の焼き上げを温度150℃〜260℃で、所望によりスチームを加熱炉中に注入して、行うことができる。
【0013】
「焼き上げた製品」の用語は、直ちに食べられる、十分に焼き上げた製品を意味する。従って、従来の凍結させて予備焼きする方法および本発明においては、焼き上げた製品は、最終的な焼き上げ後の製品であり、従って、予備焼き操作だけを行った予備焼きパン生地片とは異なる。
【0014】
本発明は、焼き上げたパン製品を製造する方法に関する。この方法では、焼き上げた製品に対応する、成形した発酵させた、即焼き上げ可能なパン生地片を、加熱炉中で、柔らかい中味が凝固し、着色した外皮が形成されるまで、予備焼きを実施する。得られる予備焼きパン生地片を冷凍し、貯蔵する。この予備焼きパン生地片を、加熱炉中で5分間以内、好ましくは3分間以内、さらに好ましくは2〜3分間、加熱炉温度200℃〜260℃で最終的に焼き上げることにより、十分に焼き上げた製品が得られる。最終的な焼き上げは、加熱炉温度220℃〜260℃で行うのが有利であり、230℃〜250℃がより有利である。
【0015】
一般的に、最終的な焼き上げ時間は、2分間未満にすべきではない。
【0016】
一実施態様においては、予備焼きを加熱炉温度220℃〜260℃、好ましくは230℃〜250℃で行う。
【0017】
本明細書において、「着色した」および「着色する」の用語は、加熱炉焼き上げの際に外皮が褐色化することを意味し、この褐色化は、特に外皮と柔らかい中味とを区別するものである。
【0018】
予備焼きしたパン生地片の凍結は、そのコア温度が−12℃以下に急速に達するように行うのが最も好ましい。凍結は、例えばケース温度約−30℃で行うことができる。
【0019】
凍結後、最終的な焼き上げまでは、凍結した、予備焼きしたパン生地片を好ましくは−15℃〜−25℃、より好ましくは−18℃〜−22℃、さらに好ましくは−18℃で貯蔵する。
【0020】
このように凍結した、予備焼きしたパン生地片は、数週間、あるいは6箇月まで、さらには1〜2年間まで貯蔵することができる。
【0021】
最終的な焼き上げの際、凍結した予備焼きパン生地片を、加熱炉中に直接、すなわち凍結した状態で、入れることができる。凍結した予備焼きパン生地片を部分的に解凍または完全に解凍してから、加熱炉中に入れて最終的に焼き上げることもできる。
【0022】
本発明の方法により、特に、外皮が剥離せず、その体積が、形成し、発酵させ、直ちに焼き上げられるパン生地片を、凍結工程を行わずに、単一の焼き上げ工程で直接十分に焼き上げた場合に得られるであろう体積に少なくとも95%等しい、焼き上げた製品を得ることができる。
【0023】
上記のように、パン生地片は、確実に、少なくとも穀類粉、水(所望によりミルクまたは他の含水製品の形態で)および活性パン酵母で調製する。
【0024】
好ましくは、パン生地片を調製する際に、改良する役割を果たす他の成分も加える。
【0025】
例えば、パン生地片成分は、穀類粉、水および酵母に加えて、一種以上の食品安定剤および/または食用植物繊維を含むのが有利である。
【0026】
食品安定剤は、特にセルロース誘導体、例えばカルボキシメチルセルロース、ペクチン、アルジネートおよびカラジーナン、グアーガム、カロウバガム(carouba gum)、キサンタンガム、ゼラチン、変性デンプン、予備ゼラチン化デンプンおよび予備ゼラチン化小麦粉、である。食品安定剤は、セルロース誘導体、化学的または物理的に変性したデンプン、ガムおよび予備ゼラチン化小麦粉に対応する食品安定剤の中から選択するのが好ましく、特にカルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、予備ゼラチン化小麦粉、予備ゼラチン化トウモロコシ(コーン)粉の中から選択された一種以上の食品安定剤である。
【0027】
好ましくは、パン生地片成分は、予備ゼラチン化デンプンまたは予備ゼラチン化デンプンの供給源、例えば予備ゼラチン化穀類粉、例えば特に予備ゼラチン化小麦粉、を含む。
【0028】
パン生地片成分は、下記の物質、すなわち
メイラード型反応に関与する一種以上の糖を、第一に、該糖の、予備焼き工程の前に酵母により発酵する量を超え(パン生地片中に存在する酵母により発酵し得る糖の場合であるが、これは、この条件が、存在する糖が発酵し得ない場合に因果的に満たされるためである)、第二に、予備焼き工程の際に外皮を着色させるのに十分な量で、および/またはメイラード型反応に関与するタンパク質を与えるのに十分な量で含むことができる。
【0029】
メイラード型反応とは、熱の作用で、還元機能を有する糖が、窒素含有化合物により、着色化合物を生じる、すべての反応である。最も反応性の高い糖は、5または6個の炭素原子を含む糖であるが、12個の炭素原子を含む糖、例えばスクロース、ラクトースおよびマルトース、もこれらの反応に関与する。
【0030】
メイラード型機構に関与し、本発明の状況下で使用できる、一種以上の糖を含む成分の中で、ミルク誘導体、例えばホエー粉末、ミルク透過物(permeate)および粉乳、グルコース、スクロースおよびソルビトールを特に挙げることができる。
【0031】
メイラード型機構に関与し、本発明の状況下で使用できる、一種以上のタンパク質を含む成分の中で、ミルク誘導体、例えばホエー粉末、粉乳およびミルクに由来するカゼイネート、およびグルテン補充物を特に挙げることができる。
【0032】
従って、パン生地片成分は、少なくとも一種の、メイラード型反応に関与する糖および/またはタンパク質を含む成分を含むのが有利であり、この成分は、ホエー粉末、ラクトース、グルコース(=デキストロース)、ガラクトース、スクロース、フルクトースおよびソルビトールの群から選択される。
【0033】
一実施態様においては、メイラード型反応に関与する過剰の糖、例えばグルコースまたはキシロース、は、パン生地片を発酵させる際に少なくとも一種の酵素製剤により、少なくとも部分的に、さらには完全に与えられる。
【0034】
メイラード型機構に関与する糖を与えることができ、本発明の状況下で使用できる酵素製剤としては、アミラーゼ、アミログルコシダーゼ、麦芽化された(malted)小麦粉および細菌性ヘミセルラーゼを挙げることができる。従って、パン生地片成分は、特に、少なくとも一種のアミログルコシダーゼ(=グルコアミラーゼ=グルカン−1,4−アルファ−グルコシダーゼ)を含む該酵素製剤を包含することができる。
【0035】
パン生地片成分は、5個の炭素原子を含む(以下、C5と呼ぶ)糖、例えばキシロース、を放出するヘミセルラーゼおよびエキソアミラーゼ、好ましくは麦芽系、すなわち最終生成物が実質的にマルトースであるアミラーゼ、の群から選択された少なくとも一種の酵素も含むことができ、この酵素またはこれらの酵素は、少なくとも一種のアミログルコシダーゼを含む酵素製剤と組み合わせる、および/またはその一部を形成するのが好ましい。
【0036】
一実施態様では、メイラード型機構に関与するタンパク質は、パン生地片を発酵させる際に、少なくとも一種の酵素製剤、例えばプロテアーゼを含む製剤、により、少なくとも部分的に与えられる。
【0037】
パン生地片は、下記の物質、すなわち
食品安定剤、および
メイラード型反応に関与する糖またはタンパク質、好ましくはホエー粉末および/またはグルコース、
の全てを含む成分で製造するのが好ましい。
【0038】
また、パン生地片は、下記の物質、すなわち
食品安定剤、および
パン生地を発酵させる際に、メイラード型反応に関与する糖を与える酵素供給源、
の両方を含む成分で製造するのも有利であり、該食品安定剤は、好ましくは予備ゼラチン化された製パン用穀物粉、より好ましくは予備ゼラチン化小麦粉であり、該酵素供給源は、好ましくはアミログルコシダーゼ供給源であり、より好ましくはアミログルコシダーゼおよびC5糖を与えるヘミセルラーゼの供給源であり、さらに好ましくはアミログルコシダーゼ、C5糖を与えるヘミセルラーゼおよびエキソアミラーゼの供給源である。
【0039】
パン生地片は、通常、下記の製パン用補助成分、すなわち
1)酸化剤、
2)乳化剤、
3)非麦芽系アルファ−アミラーゼ、エンド−アルファ−アミラーゼ、ヘミセルラーゼ、好ましくはエンド−キシラナーゼ、リパーゼ、ホスホリパーゼの群から選択された酵素製剤、またはこれらの酵素製剤の組合せ、の少なくとも一種を含むのが有利であり、好ましい酸化剤はアスコルビン酸であり、好ましい乳化剤はE472eおよびE472f乳化剤(脂肪酸のモノ−およびジグリセリドのジアセチル酒石酸エステル)である。パン生地片は、好ましくは該3種類の製パン用補助成分の少なくとも2種類を、さらに好ましくはこれらの3種類の製パン用補助成分を含んでなる。
【0040】
パン生地片成分は、エキソアミラーゼ供給源として、例えばベータ−アミラーゼ、麦芽化された穀類、好ましくは麦芽化された小麦粉または麦芽化された大麦、さらに好ましくは麦芽化された小麦粉を含むこともできる。麦芽化された穀類粉または穀類麦芽または麦芽の酵素系抽出物の用語は、同等であると考えるべきであり、用語「麦芽化された穀類」に含まれる。この法則は、穀類がその名前(小麦、大麦)により指定される場合にも当てはまる。
【0041】
予備焼きの前、パン生地片は、水和レベルが製パン百分率(Baker's Percentage)で表して少なくとも62%であり、これは、同じ製パン粉を使用して一回の焼き上げだけで行う従来の方法により加工したパン生地片の、従来の水和より、少なくとも2ポイント、または製パン百分率で2%高い(この増加を、パン生地の水和または含水量に対して考える場合、これは少なくとも2/60=3.3%である)。
【0042】
本発明の別の態様は、これらの成分の組合せの一つを含むパン改良剤の、特に以下に記載するような本発明の改良剤の使用であって、本発明の方法を使用して上記のような焼き上げ製品を製造する、および本発明の方法を使用して上記のような凍結した、予備焼きしたパン生地片を製造するための、パン生地片製造への使用に関する。
【0043】
本発明は、凍結した、予備焼きしたパン生地片を製造する方法であって、該凍結した、予備焼きしたパン生地片の加熱炉中の滞留時間が、加熱炉温度200℃〜260℃で5分間以内、好ましくは200℃〜260℃で3分間以内、に相当する最終的な焼き上げにより、焼き上げたパン製品を得ることができ、該最終的な焼き上げは、加熱炉温度220℃〜260℃、好ましくは230℃〜250℃で行うのが有利である、方法にも関する。この方法は、下記の工程、すなわち
焼き上げた製品に対応する、形成し、発酵させた、即焼き上げ可能なパン生地片を得る工程、
該パン生地片を加熱炉中で
・その柔らかい中味が凝固し、
・着色外皮が形成される
まで予備焼きする工程、
このようにして得られた、予備焼きしたパン生地片を凍結させる工程、
を含んでなり、パン生地片は、上記実施態様のいずれかの形態にあるパン生地片である。
【0044】
本発明は、対応する凍結した、予備焼きしたパン生地片にも関する。
【0045】
上記のように、この凍結した、予備焼きしたパン生地片により、最終的な焼き上げを加熱炉温度200℃〜260℃で5分間以内行うだけで、焼き上げた製品を得ることができる。
【0046】
しかし、幾つかの特別な用途では、予備焼きしたパン生地片が、部分的に焼き上げた段階であっても、すなわち最終的な焼き上げをしていなくても、消費者に受け容れられることが確認された。解凍後、予備焼きしたパン生地片を、最終的な焼き上げを行わずに、妥当な品質の詰め物をしたサンドイッチの製造に使用できると思われる。ロールパン、半バゲットまたは短いバゲットの形態にある予備焼きしたパン生地片は、この使用に特に好適である。凍結した、予備焼きしたパン生地片は、該凍結した、予備焼きしたパン生地片が、加熱炉中、温度200℃〜260℃で2〜3分間に相当する最終的な焼き上げの後、好ましくない外皮の剥離が無い新鮮な焼き上げ製品を与えるという点で、完全に焼き上げ、凍結させたパン生地片とは区別される。
【0047】
本発明は、本発明の製造方法(焼き上げ製品の製造方法、および凍結した、予備焼きしたパン生地片の製造方法)を実行するためのパン改良剤、および該改良剤の、該製パン方法における使用にも関する。
【0048】
本発明は、特に、本発明の製造方法に意図する、組合せで、
セルロース誘導体、予備ゼラチン化されたデンプンおよび予備ゼラチン化された穀類粉の群から選択された安定剤、
ホエー、
およびデキストロース
を含むパン改良剤に関する。
【0049】
本発明は、組合せで、予備ゼラチン化された製パン用穀類粉、好ましくは予備ゼラチン化された小麦粉、およびアミログルコシダーゼを、好ましくはC5糖を与えるヘミセルラーゼおよび/または麦芽系エキソアミラーゼとも組み合わせて含む、該改良剤にも関する。さらに好ましい様式で、該改良剤は、該酵素製剤に加えて、使用する粉100kgに対して、製パン百分率で、1%〜4%の予備ゼラチン化された製パン穀類粉、好ましくは予備ゼラチン化された小麦粉、およびヨーロッパ指針95/2CEに従う通常のフランスパンで認められている添加剤、特に0.009%〜0.020%のアスコルビン酸、好ましくは0.009%〜0.015%のアスコルビン酸を与えることができる。
【0050】
特に、本発明は、使用する粉100kgに対して、製パン百分率で、
1%〜3%のデキストロース(=グルコース)、
0.5%〜4%のホエー、および
0.3%〜1%のカルボキシメチルセルロースおよび/または1〜4%の予備ゼラチン化された製パン穀類粉
を与えることができる、焼き上げ改良剤に関する。
【0051】
この改良剤は、麦芽化された穀類も含むことができる。好ましくは、改良剤は、麦芽化された小麦または麦芽化された大麦を含み、さらに好ましくは麦芽化された小麦を含む。特に有用な一態様により、改良剤は、使用する粉100kgに対して、製パン百分率で、0.1%〜1%の麦芽化された穀類(例えば上に規定するような)、好ましくは麦芽化された小麦または麦芽化された大麦、最も好ましくは麦芽化された小麦を含む。
【0052】
本発明の別の態様は、凍結した、予備焼きしたパン生地片を加熱炉に、200℃〜260℃で5分間以内、好ましくは200℃〜260℃で3分間以内、さらに好ましくは200℃〜260℃で2〜3分間入れることにより、該凍結した、予備焼きしたパン生地片を最終的に焼き上げることを含んでなる方法を使用する、焼き上げたパン製品の製造であり、この最終的な焼き上げは、好ましくは220℃〜260℃、さらに好ましくは230℃〜250℃の加熱炉温度で行う。
【0053】
すでに上に示したように、この最終的な焼き上げの際、凍結した、予備焼きしたパン生地片は、加熱炉中に直接入れるか、または部分的もしくは完全な解凍工程にかけてから、加熱炉中に入れ、最終的な焼き上げを行うことができる。本発明は、解凍だけを行う凍結した、予備焼きしたパン生地片にも関する。
【0054】
本発明は、本発明の方法を使用して得られる焼き上げた製品にも関する。
【0055】
本発明は、外皮を有するパン、例えば(半)バゲットおよびロールパン、に重要である。
【0056】
本発明は、特殊なパン、パン・ヴィエノワ(甘くしたパン)およびミルクロールを包含するあらゆる種類のパンから選択された焼き上げ製品にも有用である。焼き上げ製品の重量は30g〜2kgでよい。本発明は、重量200g〜2kgのパン生地片に特に重要である。本発明は、ピザ生地、いわゆる酵母で膨らませたスイートパストリー(「viennoiseries」)、例えばクロワッサンおよびブリオッシュ、には関連しない。
【0057】
本発明により、高品質の新鮮な焼き上げ製品が5分間以内で、さらには3分間以内で得られる。
【0058】
これは、パン店における販売に特に有利であるが、本発明により、製パン業者は、その日の製品が売り切れた後に新鮮なパン製品を緊急に求める顧客を満足させることもできる。最後に、本発明は、最終的な焼き上げ操作を自身で行うことにより、高品質の焼き上げ製品を得たいと願う消費者にも重要である。
【実施例】
【0059】
本発明の優位性を下記の例で、より明確に説明する。
【0060】
例1および2
本発明の短時間焼き上げパン、および比較例 凍結した、予備焼きしたパン生地から得るパン
1)即焼き上げ可能なパン生地の製造
例1および2に使用する本発明の即焼き上げ可能なパン生地の製造処方、および工業的処方に近い、比較例Cに使用する処方を表1に示す。
【0061】
【表1】

【0062】
2) パン生地の組成
本発明のパン生地1および2、および比較例Cのパン生地の処方を、この技術分野で一般的な製パン百分率、すなわち使用する穀類粉100重量部あたりの各成分の重量部で表す。これらの値を表2に示す。
【0063】
新鮮パン酵母または圧縮パン酵母は、GIE LESAFFRE、94701 Maisons Alfort、仏国、により商品名「L'HIRONDELLE」(登録商標)bleuで販売されている乾燥成分約30%の酵母である。
【0064】
改良剤IBIS(登録商標)bleuは、GIE LESAFFRE、94701 Maisons Alfort、仏国、およびLESAFFRE INTERNATIONAL, Division Ingredients、59700 Marcq-en-Baroeul、仏国、から市販の通常フランスパン用の従来処方の改良剤である。この改良剤は、特に、必要量のアスコルビン酸および酵素製剤を与え、上記の手順(表1参照)により高品質パンが得られる。
【0065】
例1および2で使用する本発明の改良組成物「G」および「N」を表3aおよび3bに示す。
【0066】
【表2】

【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
3)パン生地片の予備焼き
パン生地片の予備焼きは、Angoulevant/Eurofour、59144 Gommegnies、仏国、から市販されている「Angoulevant」型のスチーム付きラックオーブン中で行う(表4参照)。
【0070】
【表5】

【0071】
注:同じ型のパン生地重量350gの「真っ直ぐなパン生地」プロセスバゲットの製造、すなわち十分に焼き上げるには、予備加熱温度240℃、設定温度200℃および焼き上げ時間22分間を使用できる。
【0072】
4)凍結
本発明の例1および2による予備焼きパン生地片および比較例Cによる予備焼きパン生地片を急速冷凍機中、−30℃で30分間凍結させ、次いで−20℃で貯蔵する。
【0073】
5)最終的な焼き上げ
凍結した、予備焼きしたパン生地片の最終的な焼き上げは、「Angoulevant」型のスチーム付きラックオーブン中で行う(表5参照)。
【0074】
【表6】

【0075】
6)周縁部の湿分
本発明の例1と2、および比較例Cで得た、予備焼きしたパン生地片の凍結前および最終的な焼き上げを行った製品の周縁部の湿分を測定した(表6参照)。
【0076】
【表7】

【0077】
冷却は、冷却の、水が僅かに蒸発する部分に関連する。
【0078】
予備焼きしたパン生地片および焼き上げた製品の周縁部の湿分は、予備焼きしたパン生地片または焼き上げた製品の、厚さ約1cmの表面区域の湿分に相当し、この表面区域は、外皮または比較例Cにおける予備焼きしたパン生地片では実質的に無色で柔らかい被膜を含んでなる。
【0079】
7)着色
本発明の例1および2、および比較例Cで得た、予備焼きしたパン生地片および最終的な焼き上げを行った製品の表面の色を測定した(表7参照)。これらの測定は、MINOLTA彩度計(chromameter)を使用して行った。MINOLTA彩度計は、人間の色に関する視覚および異なった色の知覚される解釈に対してより正確な関係を求めるために推奨される一様な表色空間の一つであるL*a*b*表示で配置されている。
【0080】
この配置では、
「L」は明度ファクターを表す(この「L」値が高い程、その試料は白色に向かう傾向がある)。
「a」は緑−赤軸を表し、この値は−60<「a」<+60で変化する。低い値は緑色の特徴を有し、高い値は赤色の特徴を有する。
「b」は黄−青軸を表し、この尺度は、「a」に関する尺度と等しい。この値は−60<「b」<+60で変化する。低い値は青色の特徴を有し、高い値は黄色の特徴を有する。
【0081】
【表8】

【0082】
本発明の製品では、比較例Cによる予備焼きパン生地処理におけるよりも、予備焼き後または最終的な焼き上げ後でも、外皮がはるかに濃いことが分かる。本発明の例1および2による予備焼き後の製品は、比較例Cにより焼き上げた、最終的な焼き上げ後の製品よりも、僅かに濃くさえある。
【0083】
本発明の製品は、外皮の赤色強度が高く、黄色の強度が低いことも分かる。
【0084】
8)結果
本発明の方法では、最終焼き上げの際のパン生地片の収縮は、焼き上げ製品の体積の5%未満である。これは、最終焼き上げの際に少なくとも10%の、すなわち少なくとも2倍大きい、収縮が観察される、伝統的な凍結予備焼き方法と比較して大きな利点である。
【0085】
本発明により焼き上げた製品の柔らかい中味は、凍結させ、次いで解凍し、最終的に焼き上げた製品の場合のようなリングや白い斑点が全く無い。
【0086】
本発明により焼き上げた製品の外皮の色は、直接パン生地製法、すなわち予備焼きや凍結工程が無い製法で得た焼き上げ製品の典型的な、高く評価される、または公知の色である。
【0087】
経験から、凍結させ、予備焼きしたパン生地による公知の方法は、外皮の剥離を引き起こし易いことが分かっている。本発明の方法を使用した場合、好ましくない外皮の剥離は起きない。
【0088】
比較例Cにより例示されるような、凍結させ、予備焼きしたパン生地による公知の方法と対照的に、本発明の方法は、小サイズの製品に限定されず、より大きなサイズ、例えば1〜2kg、の高品質焼き上げ製品にも使用できることも分かっている。
【0089】
最終的な焼き上げの後、本発明の焼き上げ製品は、焼き上げたばかりの製品の芳香を放つ。
【0090】
例に示すように、本発明により、一日のどの時点でも、僅か数分間の最終的な焼き上げ時間の後に、高品質の焼きたて製品を顧客に提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結した、予備焼きしたパン生地片を、加熱炉中に加熱炉温度200℃〜260℃で5分間以内の時間入れることに対応する最終的な焼き上げにより、焼き上げたパン製品を得ることができる、前記凍結した、予備焼きしたパン生地片を製造する方法であって、
焼き上げた製品に対応する、成形し、発酵させた、即焼き上げ可能なパン生地片を得る工程、
前記パン生地片を加熱炉中で、
前記パン生地片の柔らかい中味が凝固し、
着色外皮が形成されるまで予備焼きする工程、および
得られた前記予備焼きしたパン生地片を凍結させる工程、
を含んでなり、
前記予備焼きが、加熱炉温度220℃〜260℃で行われ、
前記パン生地片が、穀類粉、酵母および水に加えて、
アルファ−アミラーゼおよびヘキセルラーゼ、を含む成分から製造される、ことを特徴とする、方法。
【請求項2】
前記パン生地片が、製パン百分率で、前記アルファ−アミラーゼを少なくとも0.0018%、および前記ヘキセルラーゼを少なくとも0.0018%含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記凍結した、予備焼きしたパン生地片を、加熱炉中に加熱炉温度200℃〜260℃で3分間以内の時間入れる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記凍結した、予備焼きしたパン生地片を、加熱炉中に加熱炉温度200℃〜260℃で2〜3分間入れる、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記予備焼きが、加熱炉温度230℃〜250℃で行われる、請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記パン生地片が、セルロース誘導体、ペクチン、アルジネート、カラジーナン、ゼラチン、化学的または物理的に変性されたデンプン、ガムおよび予備ゼラチン化された小麦粉の中から選択される少なくとも1種の食品安定剤を含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記食品安定剤が、カルボキシメチルセルロース、キサンタンガム、予備ゼラチン化された小麦粉および予備ゼラチン化されたトウモロコシ粉の中から選択される、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記食品安定剤が、予備ゼラチン化されたデンプン、および予備ゼラチン化されたデンプンの供給源の中から選択される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記食品安定剤が、予備ゼラチン化された穀類粉である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
前記前記食品安定剤が、予備ゼラチン化された小麦粉である、請求項8に記載の方法。
【請求項11】
前記パン生地片が、麦芽化された穀類を含む成分で製造される、請求項1〜10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記パン生地片が、麦芽化された大麦を含む成分で製造される、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記パン生地片が、麦芽化された小麦を含む成分で製造される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記パン生地片が、
酸化剤、
乳化剤、さらに
リパーゼおよびホスホリパーゼから選択された酵素製剤、またはこれらの酵素製剤の組合せ、
の3種類の製パン用補助成分の少なくとも1種を含む、請求項1〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記酸化剤がアスコルビン酸である、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記パン生地片が、前記3種類の製パン用補助成分の少なくとも2種類を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記パン生地片が、前記3種類の製パン用補助成分を含む、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
予備焼き前の前記パン生地片の水和レベルが少なくとも62%である、請求項1〜17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記パン生地片が、
セルロース誘導体、予備ゼラチン化されたデンプンおよび予備ゼラチン化された穀類粉の群から選択される安定剤、
ホエー粉末、および
デキストロース、
の組合せを含む成分で製造される、請求項1〜18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
前記パン生地片が、製パン百分率で、
1%〜3%のデキストロース、
0.5%〜4%のホエー粉末、および
0.3%〜1%のカルボキシメチルセルロースおよび/または1〜4%の予備ゼラチン化された製パン穀類粉、
の組合せを含む成分で製造される、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記パン生地片が、製パン百分率で、
1%〜4%の予備ゼラチン化された製パン用穀類粉、および
0.009%〜0.020%のアスコルビン酸、
の組合せを含む成分で製造される、請求項19に記載の方法。
【請求項22】
前記予備ゼラチン化された製パン用穀類粉が予備ゼラチン化された小麦粉である、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
前記成分が0.009%〜0.015%のアスコルビン酸を含む、請求項21に記載の方法。
【請求項24】
前記パン生地片が、製パン百分率で、0.1%〜1%の麦芽化された穀類を含む成分で製造される、請求項11〜13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項25】
前記成分が0.1%〜1%の麦芽化された大麦を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項26】
前記成分が0.1%〜1%の麦芽化された小麦を含む、請求項24に記載の方法。
【請求項27】
請求項1〜26のいずれか一項に記載の方法により得られる、凍結した、予備焼きしたパン生地片。
【請求項28】
請求項27に記載の凍結した、予備焼きしたパン生地片の最終的な焼き上げを含んでなる、焼き上げたパン製品を得るための方法であって、前記凍結した、予備焼きしたパン生地片を加熱炉に、200℃〜260℃で5分間以内入れる、方法。
【請求項29】
前記凍結した、予備焼きしたパン生地片を加熱炉に、200℃〜260℃で3分間以内入れる、請求項28に記載の方法。
【請求項30】
前記最終的な焼き上げが、温度220℃〜260℃で行われる、請求項28または29に記載の方法。
【請求項31】
前記最終的な焼き上げが、温度230℃〜250℃で行われる、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
前記焼き上げた製品が、パンの群から選択される、請求項1〜26、28または31のいずれか一項に記載の方法。
【請求項33】
前記焼き上げた製品が、外皮を有するパン、パン・ヴィエノワ(甘食)、ミルクロールを含む群から選択される、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記焼き上げた製品が、重量30g〜2kgのパンの群から選択される、請求項32に記載の方法。

【公開番号】特開2011−152146(P2011−152146A)
【公開日】平成23年8月11日(2011.8.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84774(P2011−84774)
【出願日】平成23年4月6日(2011.4.6)
【分割の表示】特願2007−519704(P2007−519704)の分割
【原出願日】平成17年7月5日(2005.7.5)
【出願人】(505344199)ルサフル、エ、コンパニ (8)
【氏名又は名称原語表記】LESAFFRE ET CIE
【Fターム(参考)】