説明

製剤安定性に優れた皮膚外用剤

【課題】
界面活性剤の代わりにアルキル変性カルボキシビニルポリマーを使用した製剤系において、長期低温保存下でも安定な製剤を提供する。
【解決手段】
アルキル変性カルボキシビニルポリマー0.01〜5質量%と1,2−オクタンジオール0.01〜10質量%を含有することにより長期低温保存下での製剤安定性に優れ、しかも皮膚刺激性の恐れのあるパラベン類を含有しない皮膚外用剤が得られた。このものは肌状態の敏感な人への適用が好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、皮膚外用剤に関し、更に詳細には、製剤安定性に優れた皮膚外用剤に関する。
【背景技術】
【0002】
乳化組成物は、有効成分の経皮吸収性を向上させたり、皮膚とのなじみに優れ、皮膚のバリア機能を向上させるなどの効果を有するため、特に化粧料や皮膚外用医薬用の製剤として有用であることが知られている。しかし、一般的に、このような乳化組成物を得るには、油分と水分と界面活性剤が必要である。界面活性剤は、油分を水中に、又は水分を油中に分散させる力が強いものであり、皮膚に対して強い刺激性を有しているものも存する。一般的に化粧品や医薬部外品などへ用いられる界面活性剤は、比較的皮膚への刺激性の弱いポリエキレンオキサイド鎖を有するノニオン系の界面活性剤が多いが、このような界面活性剤においても、長期保存時の経時的変化としてポリエチレンオキサイドの分解により発生するホルマリンの刺激性が問題となっている。一方、界面活性剤の代わりにアルキル変性カルボキシビニルポリマーを乳化剤として使用することにより界面活性剤を含有しない乳化組成物に関しては知られている(例えば、特許文献1、特許文献2を参照)。しかし、このようなアルキル変性カルボキシビニルポリマーのみを乳化剤として使用した製剤系では、極端な保存条件下では、製剤系の安定性が問題となる場合が存する。通常、化粧料などの安定性に関しては、市場での流通事情、消費場面での使用環境などを想定して、十分と考えられる安定性の確保が実施されているが、それでも想定以上の環境変化に対して、製剤の分離などを生じてしまう場合がある。アルキル変性カルボキシビニルポリマーを用いた製剤系は経時保存時において、特に低温保存条件下でゲル化を起こし、分離が生じやすい傾向があることが判ってき、これらの点を改良する目的で、アルキル変性カルボキシビニルポリマーなどとN−アシル酸性アミノ酸、さらに塩基性アミノ酸、分子内に3個以上の水酸基を有する多価アルコールなどを組み合わせることにより、安定性の高い製剤系が得られることが知られている(例えば、特許文献3を参照)。その他の効果として、アルキル変性カルボキシビニルポリマーに、1,2−ペンタンジオールとウンデシレン酸モノグリセライドを組み合わせること(例えば、特許文献4を参照)、1,2−ペンタンジオールや1,2−ヘキサンジオールとファルネソールのようなセスキテルペンアルコールを組み合わせること(例えば、特許文献5を参照)により、防腐効果の優れた皮膚外用剤が得られることも知られている。しかし、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを乳化剤として使用した場合に、特に長期の低温保存条件下で生じるゲル化に対して、1,2−オクタンジオールの添加が有効であることは知られていなかった。
【0003】
【特許文献1】特開平08−217624号公報
【特許文献2】特開平08−217627号公報
【特許文献3】特開2002−212049号公報
【特許文献4】特開2000−204039号公報
【特許文献5】特開2004−115396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、この様な状況下為されたものであり、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを乳化剤として使用した製剤の低温安定性をより向上させることを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この様な状況に鑑みて、本発明者らは、アルキル変性カルボキシビニルポリマー製剤の低温安定性をより向上させることを課題として、鋭意研究努力を重ねた結果、アルキル変性カルボキシビニルポリマーを乳化剤として使用する場合に1,2−オクタンジオールを共存させることにより、低温保存条件下での安定性が向上することを見出し、本発明を完成させた。すなわち本発明は以下に示すとおりである。
(1) アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と1,2−オクタンジオールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
(2) 化粧料であることを特徴とする、(1)に記載の皮膚外用剤。
(3) ポリエチレンオキサイド系の界面活性剤及び/又は増粘剤を含有しないことを特徴とする、(1)又は(2)に記載の皮膚外用剤。
(4) 敏感肌用の化粧料であることを特徴とする、(1)〜(3)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(5) 乳化組成物であることを特徴とする、(1)〜(4)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
(6) さらに、ベタイン類を含有することを特徴とする(1)〜(5)の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、アルキル変性カルボキシビニルポリマーと1,2−オクタンジオールを用いることにより、低温保存条件下でもゲル化による製剤系の分離が起きにくく、製剤安定性のより向上した皮膚外用剤を提供することが出来る。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
(1)本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩
本発明の皮膚外用剤は、アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤の必須成分であるアルキル変性カルボキシビニルポリマーは、乳化作用を有する増粘剤として、化粧料などの分野で使用されており、高分子化合物という特性上から極めて皮膚刺激性の低いのも特徴である。アルキル変性カルボキシビニルポリマーとしては、既にグッドリッチ社より、ペムレンTR−1或いはペムレンTR−2の商品名で市販されているものが存在し、このものを利用することが品質が安定しているため特に好ましい。本発明の化粧料における、これらのアルキル変性カルボキシビニルポリマーの好ましい含有量は、化粧料全量に対して、0.01〜5質量%であり、更に好ましくは0.05〜1質量%である。これは、この様な成分が少なすぎると油−水界面に強度を付与する作用が得られない場合があり、多すぎると却って安定性を損なうことがあるからである。このものは、ナトリウム、カリウムのようなアルカリ金属やトリエタノールアミンなどのアミンや塩基性アミノ酸などの塩基性物質で全部若しくは一部を中和して生理的に許容しうる塩を含む形で用いるのが好ましい。
【0008】
(2)本発明の皮膚外用剤の必須成分である1,2−オクタンジオール
本発明の1,2−オクタンジオールは、保湿剤としての保湿性の他に、大腸菌、黄色ブドウ球菌、枯草菌などの一般細菌、コウジ菌、カビなどの真菌類に対して防腐作用を有していることが知られている。また、類似の1,2−ペンタンジオールや1,2−ヘキサンジオールと比べて、1,2−オクタンジオールは、抗菌力が強く、かつ揮発性が一番低くて、原体の臭いが少なく、商品へ配合しやすいなどの特徴を有している。本発明による皮膚外用剤への1,2−オクタンジオールの配合量は、本発明の効果を発揮すれば特に限定されないが、組成物中、0.01〜10.0質量%が好ましく、0.1〜5.0質量%がより好ましい。この理由は、0.01質量%未満の配合量では乳化組成物の安定化に効果がなく、また、10.0質量%を超えて配合すると、原料臭や組成物への着色の問題が生じる場合があるため、いずれの場合も好ましくないからである。このような性質を有する1,2−オクタンジオールは、市販品されているので、これらの市販品を購入して使用することができる。
【0009】
(3)本発明の皮膚外用剤
本発明の皮膚外用剤は、上記必須成分であるアルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と1,2−オクタンジオールを含有することにより、刺激性の強い界面活性剤を含有しない皮膚外用剤に関するものである。さらに1,2−オクタンジオールが防腐作用を有していることから、刺激性の恐れのある防腐剤を実質的に含有しないという特徴も有しており、敏感肌用の皮膚外用剤に適用することが特に好適である。本発明の皮膚外用剤においては、乳化組成物であることが好ましいので、当然、油剤を含有していることが好ましいが、このような油剤としては、化粧料一般に配合される油性原料を用いることができる。これらの油性原料は特に限定されないが、例えば、スクワラン、流動パラフィン、軽質流動イソパラフィン、重質流動イソパラフィン、マイクロクリスタリンワックス、固形パラフィンなどの炭化水素類、ジメチコン、フェメチコン、シクロメチコン、アモジメチコン、ポリエーテル変性シリコーンなどのシリコーン類、ホホバ油、カルナウバワックス、モクロウ、ミツロウ、ゲイロウ、オレイン酸オクチルドデシル、イソプロピルミリステート、ネオペンチルグリコールジイソステアレート、リンゴ酸ジイソステアレートなどのエステル類、ステアリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、イソステアリン酸、イソパルミチン酸、ベヘン酸、オレイン酸などの脂肪酸類、ベヘニルアルコール、セタノール、オレイルアルコール、オクタデシルアルコールなどの高級アルコール類、ヒマシ油、椰子油、水添椰子油、椿油、小麦胚芽油、イソステアリン酸トリグリセライド、イソオクタン酸トリグリセライド、オリーブオイル等のトリグリセライド類などが挙げられる。
【0010】
さらに、本発明の皮膚外用剤においては、グリシンベタイン、ベータ−アラニンベタイン 、カルニチン、ホモセリンベタイン 、バリンベタイン 、リジンベタイン 、オルニチンベタイン 、アラニンベタイン 、タウロベタイン 、スタキドリン、グルタミン酸ベタイン 、フェニルアラニンベタイン等のベタイン類を含有することも好ましい形態の1つである。これは本発明の皮膚外用剤に、ベタイン類を添加することにより、1,2−オクタンジオールの効果を増強できるからである。このようなベタイン類のうち、グリシンベタインであるトリメチルグリシンの添加が特に好ましい。トリメチルグリシンは、砂糖大根、綿実等多くの植物体中に存在しており、通常はビート糖の製造工程で生じる糖蜜より抽出され、アミノコート(旭フーズ社製)、アクアデュー(味の素社製)として上市されている。本発明ではトリメチルグリシン等のベタイン類の配合量は0.05〜1質量%が好ましい。0.05質量%未満では十分な効果を得ることが難しく、1質量%を越えて配合しても配合量に応じた効果の向上は見られない。
【0011】
また、ポリオキシエチレン系の界面活性剤や増粘剤を含有しないことも本発明の好ましい形態である。しかし、乳化組成物とした場合に、使用する油剤やその他の添加物によっては、剤型が不安定化する場合があるが、このような場合には、必要に応じて、ショ糖脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルを添加することは、本発明の好ましい形態の1つである。ショ糖脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルとは、非イオン性界面活性剤の1種であり、親水性基としてショ糖又はポリグリセリン基を含有している。ここで、ポリエチレンオキサイド系の界面活性剤や増粘剤とは、ポリエチレンオキサイドそのもの、又は高級アルコールとのエーテル結合体や脂肪酸とのエステル結合体などの構造を有しており、いずれにしても活性剤とした場合には、親水性基としてポリエチレンオキサイド鎖を含有している。これらのポリエチレンオキサイド系の界面活性剤や増粘剤は、長期的な経時においてポリエチレンオキサイド鎖が分解して、ホルマリンを生じることが知られている。ショ糖脂肪酸エステル又はポリグリセリン脂肪酸エステルはその構造上の特性からこのような恐れの少ないものであり、界面活性剤の中では、かなり安全性の高いものである。このようなポリグリセリン脂肪酸エステルのポリグリセリンの部分としては、グリセリンの5〜20量体が好ましく例示でき、ショ糖、ポリグリセリンとも、脂肪酸部分としては、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、オレイン酸、リノール酸或いはベヘン酸等が好ましく例示できる。エステル化度は1分子あたり平均1〜3が好ましい。この様なものの多くが市販されており、この様な市販されているものの内、特に好ましいものとしては、ショ糖モノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノステアリン酸エステル、デカグリセリンモノオレイン酸エステル及びデカグリセリンモノイソステアリン酸エステル等が例示できる。これらショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルは唯一種を含有させることもできるし、二種以上を組み合わせて含有させることもできる。
【0012】
さらに、本発明の皮膚外用剤においては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体乃至は共重合体を含有するのも好ましい形態の1つである。2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体乃至は共重合体は、皮膚上に保湿膜を形成して肌を保護する作用があることから、特に敏感な肌状態のヒトに使用するのに向いているものである。このような2−メタクリオキシエチルホスホリルコリンを構成モノマーとする重合体(ホモ重合体)としては、市販品(日本油脂社製「Lipidure−HMシリーズ」)があるので、これらを入手して使用することが可能であり、好ましい。また、2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリンと共重合するメタクリル酸アルキルとしては、通常入手できるメタクリル酸アルキルが使用可能であるが、具体的にはメタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸ミリスチル、メタクリル酸ステアリルなどが例示できる。これらのモノマーの内、メタクリル酸ブチルが特に好ましい。2−メタクリルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸アルキル共重合体のモノマー組成比は97:3〜45:55が好ましく例示できる。これより、メタクリル酸アルキル組成比が少なくなると、共重合体とする効果が無くなるし、逆に多くなると、水への馴染みが少なくなってしまう。これらの重合体乃至は共重合体の皮膚外用組成物中での含有量は、0.0001重量%〜5重量%が好ましく、0.001重量%〜1重量%が更に好ましく、0.002重量%〜0.3重量%が特に好ましい。また、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルの共重合体としては、2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリンとメタクリル酸ブチルのモル比が、およそ80:20であり、分子量が100000〜1000000程度の2−メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン・メタクリル酸ブチル共重合体の5%水溶液が市販されており、これらの市販品(日本油脂社製;Lipidure−PMBシリーズ)を入手して使用することも可能であり、好ましい。
【0013】
その他、本発明の皮膚外用剤に於いては、上記成分以外に、皮膚外用剤で使用される成分を、本発明の効果を損ねない範囲において含有することが出来る。このような成分としては、例えば、1,3−ブタンジオール、1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、グリセリン、ジグリセリン、ジプロピレングリコール、イソプレングリコールなどの多価アルコール類、結晶セルロースや架橋型メチルポリシロキサン、ポリエチレン粉末、アクリル樹脂粉体等の有機粉体類、タルク、マイカ、セリサイト、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、二酸化チタン、酸化鉄、紺青、群青、チタンマイカ、チタンセリサイト、シリカ等の表面処理されていても良い粉体類、カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩、キサンタンガムやヒドロキシプロピルセルロースなどの増粘剤、レチノール、レチノイン酸、トコフェロール、リボフラビン、ピリドキシン、アスコルビン酸、アスコルビン酸リン酸エステル塩などのビタミンやグリチルリチン酸塩、グリチルレチン、ウルソール酸、オレアノール酸などのテルペン類、エストラジオール、エチニルエストラジオール、エストリオールなどのステロイド類などの有効成分、ジメチルアミノ安息香酸エステル類、桂皮酸エステル類、ベンゾフェノン類などの紫外線吸収剤などが好ましく例示できる。本発明の皮膚外用剤は、上記成分を、常法に従って処理することにより製造することが出来る。
【0014】
以下に実施例をあげて本発明について更に詳細に説明を加えるが、本発明がこれら実施例にのみ限定されないことはいうまでもない。
【実施例1】
【0015】
以下の処方に従って、実施例1の乳化物を作成した。イ)、ロ)、ハ)の成分を75℃に加熱し、イ)の成分にロ)の成分を徐々に、攪拌下加え、さらにハ)の成分を添加した。これをホモジナイザーにより乳化粒子を整えた後、攪拌冷却して、本発明の水中油乳化物として得た。この実施例1の1,2−オクタンジオールを水に置換したものを比較例1とした。
【0016】
イ)
スクワラン 10.0 質量%
ホホバ油 5.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 2.0 質量%
バチルアルコール 3.0 質量%
ロ)
1,2−オクタンジオール 0.5 質量%
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 1.0 質量%
(グッドリッチ社製 PEMUREN TR−2)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン) 0.05質量%
(日本油脂製 Lipidure−HM)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−メタクリル酸ブチル)
(日本油脂製 Lipidure−PMB) 0.05質量%
トリメチルグリシン 0.1 質量%
純水 64.8 質量%
ハ)
水酸化ナトリウム 0.5 質量%
純水 10.0 質量%
【0017】
(比較例2、比較例3)
実施例1の処方において、1,2−オクタンジオールを1,2−ペンタンジオールに置換したものを比較例2、1,2−オクタンジオールを1,2−ヘキサンジオールに置換したものを比較例3として、実施例1と同様の方法で皮膚外用剤を得た。
【実施例2】
【0018】
以下の処方に示すように、実施例1より1,2−オクタンジオールの量を変え、実施例1と同様の方法で乳化物を作成し、実施例2の皮膚外用剤を得た。
イ)
スクワラン 10.0 質量%
ホホバ油 5.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 2.0 質量%
バチルアルコール 3.0 質量%
ロ)
1,2−オクタンジオール 0.05質量%
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 1.0 質量%
(グッドリッチ社製 PEMUREN TR−2)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン) 0.05質量%
(日本油脂製 Lipidure−HM)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−メタクリル酸ブチル)
(日本油脂製 Lipidure−PMB) 0.05質量%
トリメチルグリシン 0.1 質量%
純水 65.25質量%
ハ)
水酸化ナトリウム 0.5 質量%
純水 10.0 質量%
【実施例3】
【0019】
以下の処方に示すように、実施例1より1,2−オクタンジオールの量を変え、実施例1と同様の方法で乳化物を作成し、実施例2の皮膚外用剤を得た。
イ)
スクワラン 10.0 質量%
ホホバ油 5.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 2.0 質量%
バチルアルコール 3.0 質量%
ロ)
1,2−オクタンジオール 5.0 質量%
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 1.0 質量%
(グッドリッチ社製 PEMUREN TR−2)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン) 0.05質量%
(日本油脂製 Lipidure−HM)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−メタクリル酸ブチル)
(日本油脂製 Lipidure−PMB) 0.05質量%
トリメチルグリシン 0.1 質量%
純水 60.3 質量%
ハ)
水酸化ナトリウム 0.5 質量%
純水 10.0 質量%
【0020】
<試験例1> 低温経時安定性試験
低温保存条件下での製剤系の安定性に関しては、各サンプルを密閉容器に充填し、−20℃の保存場所に1ヶ月間さらには2ヶ月間放置した。これらのサンプルを20℃に戻して、1時間放置後に、肉眼にて油相の分離状況を判断した。なお製剤系の安定性に関しては、以下の基準にて判断した。○:油相の分離が認められない。△:製剤の表面に油膜が浮き出ている。×:明確に油相の分離が観察される。結果を表1に示す。
【0021】
【表1】

【0022】
表1の結果より1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール、1,2−オクタンジオールを0.5%添加した系においては、いずれも−20℃、1ヶ月放置後のサンプルでは油相の分離などは生じていないが、これらを添加していない系では、油相の分離が認められ、1,2−オクタンジオールなどを添加することにより低温保存安定性が向上したことが判った。さらに、より過酷な長期低温保存条件下すると1,2−ペンタンジオール、1,2−ヘキサンジオール添加の系では、表面に油膜が観察されたが、1,2−オクタンジオールを添加した系では、油膜なども観察されず、より低温安定性が向上することが判った。このように1,2−オクタンジオールの添加は、アルキル変性カルボキシビニルポリマーによる乳化系における低温でのゲル化の進行抑制に対して効果的であることが判った。実施例2,実施例3より、アルキル変性カルボキシビニルポリマーは0.1〜3質量%、1,2−オクタンジオールは0.1〜5質量%の範囲でゲル化の防止効果が認められた。
【実施例4】
【0023】
以下の処方に従って、実施例1と同様の方法で作成し、実施例4の皮膚外用剤を得た。
イ)
スクワラン 10.0 質量%
ホホバ油 5.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 2.0 質量%
バチルアルコール 3.0 質量%
ロ)
1,2−オクタンジオール 0.5 質量%
1,3−ブタンジオール 3.0 質量%
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 3.0 質量%
(グッドリッチ社製 PEMUREN TR−2)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン) 0.05質量%
(日本油脂製 Lipidure−HM)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−メタクリル酸ブチル)
(日本油脂製 Lipidure−PMB) 0.05質量%
トリメチルグリシン 0.1 質量%
純水 62.8 質量%
ハ)
水酸化ナトリウム 0.5 質量%
純水 10.0 質量%
【実施例5】
【0024】
以下の処方に従って、実施例1と同様の方法で作成し、実施例5の皮膚外用剤を得た。
イ)
スクワラン 10.0 質量%
ホホバ油 5.0 質量%
マイクロクリスタリンワックス 2.0 質量%
バチルアルコール 3.0 質量%
デカグリセリンモノステアリン酸エステル 2.5 質量%
ロ)
1,2−オクタンジオール 0.1 質量%
1,3−ブタンジオール 10.0 質量%
アルキル変性カルボキシビニルポリマー 0.2 質量%
(グッドリッチ社製 PEMUREN TR−2)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン) 0.05質量%
(日本油脂製 Lipidure−HM)
ポリ(メタクリロイルオキシエチルホスホリルコリン−メタクリル酸ブチル)
(日本油脂製 Lipidure−PMB) 0.05質量%
トリメチルグリシン 0.1 質量%
純水 56.5 質量%
ハ)
水酸化ナトリウム 0.5 質量%
純水 10.0 質量%

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルキル変性カルボキシビニルポリマー及び/又はその塩と1,2−オクタンジオールを含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項2】
化粧料であることを特徴とする、請求項1に記載の皮膚外用剤。
【請求項3】
ポリエチレンオキサイド系の界面活性剤及び/又は増粘剤を含有しないことを特徴とする、請求項1又は2に記載の皮膚外用剤。
【請求項4】
敏感肌用の化粧料であることを特徴とする、請求項1〜3の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項5】
乳化組成物であることを特徴とする、請求項1〜4の何れか1項に記載の皮膚外用剤。
【請求項6】
さらに、ベタイン類を含有することを特徴とする請求項1〜5の何れか1項に記載の皮膚外用剤。

【公開番号】特開2006−143665(P2006−143665A)
【公開日】平成18年6月8日(2006.6.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−336913(P2004−336913)
【出願日】平成16年11月22日(2004.11.22)
【出願人】(000113470)ポーラ化成工業株式会社 (717)
【Fターム(参考)】