説明

製版装置及び画像形成装置

【課題】小ロットの印刷を低コストで行うことができ、且つ高画質の画像を形成する。
【解決手段】製版装置20は、親水性及び疎水性の何れか一方の版粒子15を担持する第1担持体1と、親水性及び疎水性の何れか他方であって転移温度を境に可逆的に硬度が変化する第2担持体2と、第2担持体2を選択的に加熱するサーマルヘッド5と、第2担持体2を冷却する冷却ローラー6と、第1担持体1を第2担持体2に当接及び離間させる第1駆動部13と、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2に当接させ、画像信号に応じてサーマルヘッド5により第2担持体2を選択的に加熱し、冷却ローラー6により第2担持体2を冷却し、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2から離間させることで、第2担持体2の加熱部分のみに版粒子15を固着させて第2担持体2上に版像を形成する制御部90と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製版装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、代表的な画像形成方法として、画像情報に対応して版表面に親水性部分と親油性(疎水性)部分を形成し、親水性部分に湿し水を付着させ、親油性部分にのみ選択的にインクを付着させてインク像を形成し、形成したインク像をブランケットローラーを介して記録媒体上に転写することで画像形成を行う平版印刷版を用いたオフセット印刷方式がある。
【0003】
このオフセット印刷方式では連続的に高画質の画像形成を行うことが可能であるが、感光層で覆われたアルミニウム板に対し、画像情報に応じて露光、エッチングを行うなど製版工程が複雑であり、また、製版工程で排出される廃液の処理が必要となる。このため、オフセット印刷は製版コストが高く、印刷部数が少ない場合には単価が非常に高くなってしまう。そこで、小ロットの印刷を低コストで行うため、製版コストの低い印刷方式が求められている。
【0004】
これに対し、オフセット印刷のような複雑な製版工程がない画像形成方式として、静電潜像を乾式トナーや湿式トナーによって現像する電子写真方式(例えば、特許文献1参照)、磁気潜像を磁性トナーによって現像するマグネトグラフィ(例えば、特許文献2参照)、インクを微小液滴として吐出するインクジェット方式(例えば、特許文献3参照)等が提供されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2005−352371号公報
【特許文献2】特開2009−51119号公報
【特許文献3】特開2004−148618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、これらの方式では色材として粉体や液滴を使用しているため、粉体や液滴が飛散する等して、オフセット印刷に比べて画質が低下するという問題がある。また、電子写真方式では、静電気により潜像を形成するため、環境によって帯電量が変化する場合があり安定した画質を維持することが難しく、マグネトグラフィ方式では、磁性トナーを使用しているためカラー化する際の色再現性が悪いといった問題がある。更に、インクジェット方式では、インクが低粘度であるため記録媒体上でインクが滲んだり、ヘッドの目詰まりによって画像欠損が発生したりするという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、小ロットの印刷を低コストで行うことができ、且つ、高画質の画像を形成することができる製版装置及び画像形成装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
以上の課題を解決するため、本発明の一態様によれば、
親水性及び疎水性の何れか一方の版粒子を表面に担持する第1担持体と、
親水性及び疎水性の何れか他方であって転移温度を境界として可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体と、
前記第2担持体を選択的に転移温度以上に加熱して軟化させる加熱手段と、
前記第2担持体を転移温度未満に冷却して硬化させる冷却手段と、
前記第1担持体を前記版粒子を介して前記第2担持体に当接及び離間させる駆動部と、
前記駆動部により前記第1担持体を前記前記第2担持体に当接させ、画像信号に対応して前記加熱手段により前記第2担持体を選択的に加熱し、前記冷却手段により前記第2担持体を冷却し、前記駆動部により前記第1担持体を前記第2担持体から離間させることで、前記第2担持体の加熱された部分のみに前記版粒子を固着させ、前記第2担持体上に前記版粒子が固着された領域と前記版粒子が固着されない領域とからなる版像を形成する制御部と、を備えることを特徴とする製版装置が提供される。
【0009】
本発明の他の態様によれば、
上記製版装置を備えることを特徴とする画像形成装置が提供される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、小ロットの印刷を低コストで行うことができ、且つ、高画質の画像を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る画像形成装置を示す図である。
【図2】画像形成装置における画像形成ユニットの概略構成を示す図である。
【図3】画像形成ユニットの制御系を示すブロック図である。
【図4】製版装置による版の形成を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明を実施するための形態について図面を用いて説明する。ただし、以下に述べる実施形態には、本発明を実施するために技術的に好ましい種々の限定が付されているが、発明の範囲を以下の実施形態及び図示例に限定するものではない。
【0013】
図1は、本発明に係る画像形成装置を示す図である。
図1には、画像形成装置として、複数の画像形成ユニットを備えるフルカラー方式の画像形成装置100を図示しているが、本発明は、フルカラー方式にのみ限定されるものではなく、モノクロ画像のみを形成する1色(ブラック等)の画像形成ユニットを採用している画像形成装置への適用も可能である。また、本発明は、小型のプリンタ、オフィス用複合機、および商業印刷を用途とする高速・大量印刷可能な画像形成装置などへの適用が可能である。
【0014】
図1に示すように、本発明の装置は、画像形成装置100、給紙部58、排紙ストッカー57で構成されていて、画像形成装置100には操作部50が設けられている。
【0015】
画像形成装置100の内部には、後述する画像形成ユニット100Aが、フルカラー画像を形成するための各色に対応して複数設けられている。画像形成ユニット100Aは、給紙部58から搬送された記録媒体Sに対して画像形成を行う。画像形成がなされ、必要に応じて後処理がなされた記録媒体Sは排紙ストッカー57に排出される。
【0016】
画像形成ユニット100Aについて、図2を参照して以下説明する。図2は、画像形成ユニット100Aの概略構成を示す図である。また、画像形成ユニット100Aは、本発明に係る製版装置20を含んでいる。
【0017】
画像形成ユニット100Aは、親水性の版粒子15を表面に担持する第1担持体1、第1担持体1に版粒子15を供給する供給装置3、第1担持体1に担持される版粒子15を単層化する版粒子単層化装置4、疎水性であって転移温度Tmを境にして可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体2、第1担持体1を第2担持体2に当接及び離間させる第1駆動部(駆動部)13、第2担持体2を回動する第2駆動部14、第2担持体2を転移温度以上に選択的に加熱して軟化させるサーマルヘッド(加熱手段)5、第2担持体2を転移温度未満に冷却して硬化させる冷却ローラー(冷却手段)6、第2担持体2の表面に湿し水を供給する湿し水供給部7、第2担持体2の表面にインクを供給するインク供給部8、第2担持体2上に形成されるインク像を転写するブランケットローラー9、記録媒体Sをブランケットローラー9に押圧する押圧ローラー10、ブランケットローラー9の付着物を除去するブランケットローラー清掃器11、第2担持体2の表面をクリーニングする版クリーニング装置(クリーニング装置)12、各部を制御する制御部90等を具備している。
【0018】
製版装置20は、第1担持体1、第2担持体2、第1駆動部13、第2駆動部14、供給装置3、版粒子単層化装置4、サーマルヘッド5、冷却ローラー6、版クリーニング装置12及び制御部90により構成されている。
【0019】
また、湿し水供給部7、インク供給部8、ブランケットローラー9、押圧ローラー10、ブランケットローラー清掃器11は、それぞれ既存のオフセット印刷方式の画像形成装置に用いられるものと同様のものを用いることができる。
【0020】
第1担持体1は、表面に粘着性を有する薄膜粘着シートが無端ベルト状に形成され、表面の粘着性により版粒子15を担持するものである。第1担持体1は、サーマルヘッド5と第2担持体2との間に設けられるため、サーマルヘッド5による熱を効率的に第2担持体2に伝えられるように薄膜であることが好ましい。例えば、厚さ10μmのポリイミドシートを基材とし、当該基材に厚さ10μmのシリコン系の粘着剤を塗布したものが用いられる。
なお、第1担持体1の基材としては、ポリイミドに限らず、サーマルヘッド5による加熱温度以上の耐熱温度を有する材料であれば良い。また、第1担持体1の粘着剤としては、シリコン系に限らず、アクリル系その他の粘着剤であっても良い。
【0021】
第1担持体1は、第1駆動部13及び冷却ローラー6に張架され、図2中矢印方向に回動可能に支持されている。また、第1担持体1は、第1駆動部13と冷却ローラー6との間における領域A(図2参照)において第2担持体2の表面に当接し、当該領域A以外の部分において第2担持体2から離間している。つまり、第1駆動部13が駆動して第1担持体1を回動させることにより、第1担持体1を第2担持体2に当接及び離間させることができる。
【0022】
なお、第1担持体1は、第1駆動部13による遠心力や機内風によって、版粒子15を表面から脱落させることなく担持できるものであれば薄膜粘着シートでなくとも良く、例えば、第1担持体1の表面に微細形状を設けてアンカー効果により版粒子15を担持するものであっても良いし、版粒子15に電荷や磁力を付与して第1担持体1の周辺に所望の電界や磁界を形成することにより、クーロン力や磁気吸引力により版粒子15を担持するものであっても良い。
【0023】
第1担持体1の近傍には、供給装置3及び版粒子単層化装置4が設けられている。
供給装置3は、版粒子15を第1担持体1に供給し、第1担持体1の表面全体に版粒子15を担持させるものである。供給装置3により第1担持体1の表面に供給された版粒子15は、第1担持体1の表面の粘着力及び粒子間の凝集力により、第1担持体1の表面上に複数層に亘って付着し、版粒子15の層を形成する。版粒子15は、親水性の金属又はシリカ系の粒子を用いることができ、例えば、酸化アルミニウム、酸化鉄、酸化チタン、これらの表面にシリカコーティングが施されたもの、又はシリカ等を使用することができる。また、版粒子15の平均粒径は、記録媒体S上に形成される画像の画質を考慮すると、好ましくは0.5μm〜30μmであり、より好ましくは1μm〜5μmである。具体的には、このような版粒子15として、東ソーシリカ(株)製の湿式シリカAZ200を使用することができる。
【0024】
版粒子単層化装置4は、第1担持体1の表面上に形成された版粒子15の層を、版粒子15の1粒子分の層にする(単層化)ための装置である。版粒子単層化装置4は、例えば、第1担持体1の表面に近接した筒状の中空形状をしたエア放出部4aと、エア放出部4aから放出されるエアを吸引する吸引部4bとから構成されている。
【0025】
エア放出部4aは、電力により回転駆動するファンなどの気流発生装置を内蔵し、第1担持体1の表面にエアを吹き付ける。エア放出部4aから放出されたエアにより、第1担持体1の表面に形成された版粒子15の層のうち第1担持体1に直接接触していない版粒子15、即ち、粒子間の凝集力によって第1担持体1に付着している版粒子15のみが吹き飛ばされて、吸引部4bに吸引される。吸引部4bに吸引された版粒子15は、所定のフィルタによって回収され、画像形成装置100内に版粒子15が飛散することを防止している。また、吸引部4bの近傍には、吸引部4bにより回収された版粒子15をスクリュー部材や空気圧による搬送手段によって供給装置3に戻す機構が設けられていることが好ましく、この場合には、版粒子15を再利用することができる。
【0026】
版粒子単層化装置4により、第1担持体1の表面に放出するエアの風量としては、粒子間の凝集力によって第1担持体1に付着する版粒子15を吹き飛ばせる程度であって、第1担持体1の表面の粘着力によって第1担持体1に付着する版粒子15を吹き飛ばさない程度の風量であれば良く、エア放出部4aの形状や画像形成装置100の構成に応じて適宜調整するものとする。
本実施形態では、版粒子15を担持する第1担持体1が薄膜粘着シートで構成されていることにより、第1担持体1は、第1担持体1の表面に直接接触している版粒子15のみに対して付着力を有しており、表面に接触していない版粒子15に対しては付着力を有していない。したがって、第1担持体1の表面に付着する2層目以降の版粒子15を除去・回収することが容易であり、版粒子単層化装置4による版粒子15の単層化を行い易い。
【0027】
なお、版粒子単層化装置4は、エア放出部4a及び吸引部4bから構成されるものでなくとも良く、例えば、第1担持体1の表面に形成された版粒子15の層に対して粘着部材やウレタンゴムブレードを当接させて2層目以降の版粒子15を除去する構成や、第1担持体1に超音波振動を加えて2層目以降の版粒子15を除去する構成であっても良い。
【0028】
第2担持体2は、ドラム状に形成された第2駆動部14の表面を覆うように設けられている。第2駆動部14は、図2中矢印方向に回転駆動することにより、第2担持体2を回動させる。第2駆動部14は、例えば、ガラス、アルミニウムその他の材料により構成されている。
【0029】
第2担持体2は、転移温度を境界として可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる。この第2担持体2に用いられる感温性材料としては、例えば、側鎖結晶性ポリマーが好ましい。
【0030】
側鎖結晶性ポリマーの組成としては、例えば、炭素数16以上、好ましくは炭素数16〜22の直鎖状アルキル基を有する(メタ)アクリレート30〜99質量部と、炭素数1〜6のアルキル基を有するアクリル酸エステル又はメタクリル酸エステル0〜70質量部と、極性モノマー1〜10質量部とを重合させて得られる重合体等が挙げられる。
【0031】
炭素数16以上の直鎖状アルキル基を側鎖とする(メタ)アクリレートとしては、例えば、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、エイコシル(メタ)アクリレート、ベヘニル(メタ)アクリレート等の炭素数16〜22の線状アルキル基を有する(メタ)アクリレートが挙げられる。炭素数1〜6のアルキル基を有する(メタ)アクリレートとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート等が挙げられる。極性モノマーとしては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、イタコン酸、マレイン酸、フマル酸等のカルボキシル基含有エチレン不飽和単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシヘキシル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基を有するエチレン不飽和単量体等が挙げられる。
【0032】
具体的には、第2担持体2に用いられる感温性材料としては、例えば、ニッタ(株)製のクールオフインテリマーが挙げられる。クールオフインテリマーは、疎水性(純水接触角は、90°)であって、転移温度Tm以上で軟化した状態となって粘着性を発現し、転移温度Tm未満では硬化した状態となる。クールオフインテリマーのこのような状態変化は、熱を加える度に可逆的に繰り返させることができる。クールオフインテリマーは例えば、厚さが40μm、転移温度Tmが55℃のものを用いることができるが、これらの値は版粒子15の種類や画像形成装置100の構成等によって適宜設定変更可能である。
【0033】
第1駆動部13は、第1担持体1を介して第2担持体2に当接して設けられ、図2中矢印方向に回転駆動することにより第1担持体1を回動させる。また、第1駆動部13は、その回転軸が第2駆動部14の回動軸と平行となるように設けられている。
【0034】
サーマルヘッド5は、第1担持体1の領域Aにおいて第1担持体1を介して第2担持体2に当接するように設けられている。つまり、サーマルヘッド5は、第2担持体2の回動方向において第1駆動部13よりも下流側であって冷却ローラー6よりも上流側の位置に配置され、当該位置に固定されている。
サーマルヘッド5は、第1駆動部13及び第2駆動部14の回転軸と互いに平行となる向きに延在して設けられ、当該延在方向に沿って複数の発熱素子(図示略)が配設されている。サーマルヘッド5は、制御部90により処理されて出力された画像信号に基づいて、複数の発熱素子を選択的に発熱させることにより、第2担持体2の表面を選択的に加熱する。したがって、第1駆動部13及び第2駆動部14が回転駆動することによって、第2担持体2の表面のうち非画像部分に対応する領域がサーマルヘッド5により転移温度Tm以上に加熱されて、当該領域のみが軟化する。第2担持体2の軟化した領域は粘着性を発現し、第1担持体1に担持された版粒子15と接着する。
【0035】
なお、第2担持体2を選択的に加熱して軟化させる加熱手段としては、例えば、画像信号に応じて変調され放射するレーザー光を第1駆動部13及び第2駆動部14の回転軸方向と平行な方向に走査させるレーザー発光手段を用いるものであっても良い。この場合、第2担持体2の表面のうち加熱する領域を精密に制御することが可能となり、精度良く版を形成することができる。これにより、形成された版を用いて記録媒体S上に高画質の画像を形成することができる。
【0036】
冷却ローラー6は、第1担持体1を介して第2担持体2の全幅に亘って当接して設けられ、図2中矢印方向に回転駆動可能に構成されている。冷却ローラー6及び第1駆動部13が第2担持体の全幅に亘って当接して配置されるので、冷却ローラー6及び第1駆動部13に張架される第1担持体1は、第2担持体2に対して密着して当接される。冷却ローラー6は、第1担持体1を介して第2担持体2を転移温度Tm未満の温度に冷却する。これにより、サーマルヘッド5によって加熱されて軟化した第2担持体2が硬化する。第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5により加熱された領域において、第1担持体1に担持された版粒子15は、転移温度Tm未満に冷却されて硬化した第2担持体2に固着される。
ここで、第2担持体2が版粒子15を固着する力は、第1担持体1が版粒子15を担持する力よりも大きい。そうすると、第1駆動部13により第1担持体1が第2担持体2から離間されると、第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5により加熱された領域には版粒子15が固着され、サーマルヘッド5により加熱されていない領域には版粒子15が固着されない。これにより、第2担持体2上に版粒子15が固着される領域と版粒子15が固着されない領域とからなる版像が形成される。
【0037】
なお、冷却ローラー6は、第2担持体2を選択的に冷却できるように構成されていても良い。この場合、冷却ローラー6は、第1駆動部13及び第2駆動部14の回転軸と互いに平行となる方向に沿って複数のペルチェ素子が配設されて構成され、制御部90により処理されて出力された画像信号に基づいて、複数のペルチェ素子を選択的に冷却させる。これにより、冷却ローラー6は、第2担持体2の表面のうち非画像部分に対応する領域を選択的に冷却する。冷却ローラー6が第2担持体2の非画像部分に対応する領域(サーマルヘッド5により加熱された部分)のみを選択的に冷却できるので、冷却ローラー6の表面上に温度むらが生じることを抑制できる。冷却ローラー6の表面上の温度むらを抑制できるので、冷却ローラー6は第2担持体2の表面を十分に冷却することができ、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0038】
上記のようにそれぞれ構成される第1担持体1、第1駆動部13、サーマルヘッド5及び冷却ローラー6は、それぞれ所定の接離機構(図示略)により、第2担持体2から離間させることができるように構成されている。記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、当該接離機構によって第1担持体1、第1駆動部13、サーマルヘッド5及び冷却ローラー6を第2担持体2から離間する。
【0039】
湿し水供給部7は、湿し水供給ローラー7a、湿し水容器7b及び湿し水供給ローラー清掃器7cから構成されている。
湿し水供給ローラー7aは、第2担持体2に当接して設けられ、図2中矢印方向に回転駆動可能に構成されている。湿し水供給ローラー7aの表面は、湿し水を保持できる程度の親水性を有している。湿し水容器7bには、湿し水が貯留されており、図示しない湿し水補充器から適宜湿し水が補充される。湿し水供給ローラー7aは、回転駆動することで湿し水容器7b内を通過して、湿し水容器7bに貯留された湿し水を表面に保持し、当該表面が第2担持体2に当接する。湿し水供給ローラー7aは、湿し水を保持した表面が第2担持体2に当接して第2担持体2の表面に湿し水を供給する。第2担持体2の表面のうち版粒子15が固着されていない領域(画像部)は、第2担持体2が疎水性であるため湿し水は付着せず、親水性の版粒子15が固着されている領域(非画像部)のみに湿し水が付着する。
湿し水供給ローラー清掃器7cは、湿し水供給ローラー7aと第2担持体2との当接部よりも湿し水供給ローラー7aの回転方向下流側に設けられ、湿し水供給ローラー7aの表面に当接するように設けられている。湿し水供給ローラー清掃器7cは、湿し水供給ローラー7aの表面に付着したインク等の付着物を除去する。
【0040】
インク供給部8は、インク供給ローラー8a、インク容器8b及びインク規制ブレード8cから構成されている。
インク供給ローラー8aは、第2担持体2に当接して設けられ、図2中矢印方向に回転駆動可能に構成されている。インク容器8bには、油性インク等の湿し水と混じり合わない性質のインクが貯留されており、図示しないインク補充器から適宜インクが補充される。インク供給ローラー8aは、回転駆動することでインク容器8b内を通過して、インク容器8bに貯留されたインクを表面に保持し、インク規制ブレード8cに当接する。インク規制ブレード8cは、インク容器8bよりもインク供給ローラー8aの回転方向下流側に設けられ、インク供給ローラー8aの表面に当接することで、インク供給ローラー8aの表面に保持されたインクを2μm〜50μm、好ましくは4μm〜10μmの厚さのインク層とする。表面にインク層が保持されたインク供給ローラー8aは、第2担持体2に当接して第2担持体2の表面に適切量のインクを供給する。第2担持体2の表面において、版粒子15が固着された領域(非画像部)には湿し水が付着しているのでインクは付着せず、版粒子15が固着されていない領域(画像部)にのみインクが付着する。これにより、第2担持体2の表面上にインク像が形成される。
【0041】
ブランケットローラー9は、第2担持体2に当接して設けられ、図2中矢印方向に回転駆動可能に構成されている。ブランケットローラー9は、第2担持体2と当接して、第2担持体2の表面上に形成されたインク像をブランケットローラー9の表面に転写する。ブランケットローラー9の表面は、疎水性となるように構成されているため、第2担持体2の表面に付着した湿し水はブランケットローラー9には転写されない。
【0042】
押圧ローラー10は、ブランケットローラー9に当接して設けられ、図2中矢印方向に回転駆動可能に構成されている。押圧ローラー10は、画像形成時に給紙部58から供給される記録媒体Sをブランケットローラー9との間に挟持し、挟持した記録媒体Sをブランケットローラー9側へ押圧しながら回転することにより、記録媒体S上にブランケットローラー9の表面のインク像を転写する。これにより、記録媒体S上に画像が形成される。
【0043】
ブランケットローラー清掃器11は、ブランケットローラー9に当接して設けられ、ブランケットローラー9の表面の付着物を除去する。これにより、記録媒体Sに転写されずにブランケットローラー9の表面に残ったインク等の付着物が記録媒体Sに転写されてしまうことを防止でき、画像品質の低下を抑制することができる。
【0044】
また、図2に示すように第2担持体2とブランケットローラー9との周長及び回転速度が等しい場合には、ブランケットローラー清掃器11は、所定の接離機構(図示略)により、ブランケットローラー9から離間させることができるように構成されているものとする。第2担持体2とブランケットローラー9との周長及び回転速度が等しければ、記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、ブランケットローラー9の表面にインク等の付着物が残存していても画像品質の低下は起きないためである。つまり、記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、ブランケットローラー清掃器11はブランケットローラー9から離間し、記録媒体S上に形成する画像を切り替える場合には、ブランケットローラー清掃器11はブランケットローラー9に当接し、ブランケットローラー9に付着した付着物を除去する。
【0045】
版クリーニング装置12は、ブランケットローラー9よりも第2担持体2の回転方向下流側に設けられ、超音波振動部12a及び洗浄液容器12bから構成されている。
洗浄液容器12bに貯留される洗浄液は、画像形成ユニット100Aの各部を劣化させるようなものでなければ特に限定されるものではなく、例えば、湿し水等が用いられる。洗浄液容器12bには、図示しない洗浄液補充器から適宜洗浄液が補充される。超音波振動部12aは、洗浄液容器12bに貯留された洗浄液を介して第2担持体2の表面に超音波を発振し、超音波洗浄により第2担持体2の表面に固着された版粒子15や第2担持体2の表面に付着したインク及び湿し水を洗浄除去する。
【0046】
また、版クリーニング装置12は、洗浄液容器12bに貯留される洗浄液が第2担持体2に接触するように設けられているが、所定の接離機構(図示略)により第2担持体2から離間させることができるように構成されている。これにより、記録媒体Sに対して同じ画像を繰り返し形成する場合には、版クリーニング装置12が第2担持体2から離間した状態となり、版クリーニング装置12がクリーニングを行うことなく繰り返し同じ画像を形成することができる。また、記録媒体S上に形成する画像を切り替える場合には、版クリーニング装置12が第2担持体2に近接した状態となり、版クリーニング装置12は第2担持体2に固着された版粒子15や第2担持体2に付着したインク及び湿し水を除去する。これにより、第2担持体2は、新たな画像を形成できる状態となる。
なお、版クリーニング装置12の近傍には、版クリーニング装置12によって第2担持体2から除去した版粒子15を回収する機構が設けられていても良く、回収した版粒子15をスクリュー部材や空気圧による搬送手段によって供給装置3に戻すように構成されていても良い。この場合、版クリーニング装置12には、第2担持体2から回収された版粒子15とその他のものとを分離する機構が設けられていると、より効率的となる。
【0047】
制御部90は、図3に示すように、製版装置20及び画像形成ユニット100Aの各部を制御する。制御部90は、図示しないCPU(Central Processing Unit)、RAM(Random Access Memory)、ROM(Read Only Memory)を備え、製版装置20及び画像形成ユニット100A用の各種処理プログラムに従って各種動作を行う。
具体的には、制御部90は、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2に当接させ、画像信号に対応してサーマルヘッド5により第2担持体2を選択的に加熱し、冷却ローラー6により第2担持体2を冷却し、第1駆動部13により第1担持体1を第2担持体2から離間させることで、第2担持体2の加熱された部分のみに版粒子15を固着させ、第2担持体2上に版粒子15が固着された領域と版粒子15が固着されない領域とからなる版像を形成する。
【0048】
ここで、図4を参照して、上記したように構成される製版装置20による版の形成について説明する。図4は、版粒子15を介して当接及び離間する第1担持体1と第2担持体2の概略構成を示す拡大断面図であって、図4(a)はサーマルヘッド5により加熱されない部分(画像部)、図4(b)はサーマルヘッド5により加熱される部分(非画像部)をそれぞれ示している。
【0049】
先ず、版粒子15を単層で担持した第1担持体1は、第1駆動部13により回動し、第2担持体2に当接する。続いて、サーマルヘッド5により第2担持体2の表面のうち非画像部に対応する領域が選択的に転移温度Tm以上に加熱され、当該領域において第2担持体2が軟化するとともに粘着性を発現する。第1担持体1は、第2担持体2に密着して当接するので、第2担持体2の表面のうち加熱されて軟化した領域においては版粒子15が第2担持体2に埋め込まれる(図4(b)参照)。第2担持体2はサーマルヘッド5により選択的に加熱された後、冷却ローラー6により冷却される。これにより、第2担持体2の表面のうち加熱されて軟化した領域が転移温度Tm未満に冷却されて硬化する。第2担持体2が硬化することによって版粒子15が第2担持体2に固着される。冷却ローラー6によって第2担持体2が冷却された後、第1駆動部13により第1担持体1は第2担持体2から離間される。ここで、第2担持体2が版粒子15を固着する力は第1担持体1が版粒子15を担持する力よりも大きい。したがって、第1担持体1が第2担持体2から離間されると、第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5によって加熱された領域(非画像部)においては版粒子15が第2担持体2に固着され(図4(b)参照)、サーマルヘッド5により加熱されなかった領域(画像部)においては版粒子15が第1担持体1に担持された状態となる(図4(a)参照)。このようにして、第2担持体2上に、版粒子15が固着される領域と版粒子15が固着されない領域とからなる版像が形成される。
第2担持体2から離間された第1担持体1は第1駆動部13により回動し、供給装置3及び版粒子単層化装置4により、再び第1担持体1の表面に単層の版粒子15が担持される。なお、第1担持体1と第2担持体2とが当接する領域Aよりも第1担持体1の回動方向下流側であって、供給装置3及び版粒子単層化装置4よりも第1担持体1の回動方向上流側には、所定のクリーニング装置が設けられていても良い。この場合には、第2担持体2から離間された後の第1担持体1の表面に担持される版粒子15を当該クリーニング装置により一度全て除去してから、供給装置3及び版粒子単層化装置4により、再び第1担持体1の表面に単層の版粒子15が担持される。
【0050】
なお、第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5によって加熱されて軟化した領域において、版粒子15は第2担持体2に埋め込まれていなくとも良く、第2担持体2が一旦転移温度Tm以上にまで加熱された後に冷却されることで、第2担持体2上に版粒子15が固着する。
【0051】
以上、本実施形態によれば、版粒子15を担持した第1担持体1を、転移温度Tmを境にして可逆的に硬度が変化する第2担持体2に当接させた状態で、サーマルヘッド5により画像信号に対応して第2担持体2を選択的に加熱し、冷却ローラー6により第2担持体2を冷却し、第1担持体1を第2担持体2から離間させることで、第2担持体2上に版を形成することができる。これにより、オフセット印刷方式よりも簡易に版を形成することが可能であり、形成した版を用いて高画質の画像を形成することができる。また、第2担持体2は転移温度Tmを境にして可逆的に硬度が変化する感温性材料からなり、この第2担持体2に版粒子15を固着させることにより版を形成しているため、低コストで版を形成することができる。したがって、小ロット印刷における印刷コストを低く抑えることができる。
【0052】
また、第1駆動部13により第1担持体1が第2担持体2に密着するため、サーマルヘッド5により第2担持体2が加熱されて軟化された際に、版粒子15が第2担持体2に埋め込まれる。これにより、版粒子15が第2担持体2に強く固着され、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0053】
また、第1担持体1が薄膜粘着シートであるため、版粒子単層化装置4により第1担持体1の表面に版粒子15を単層で担持させることができ、これにより第2担持体2に版粒子15を単層で固着させることができる。したがって、第2担持体2の表面に版粒子15が複数層で固着されないため、複数層の版粒子15にインクや湿し水が取り込まれることにより生じる各ローラーの劣化や湿し水容器7b及びインク容器8bの汚染等の不具合が起こらない。
【0054】
また、サーマルヘッド5は、薄膜粘着シートである第1担持体1を介して第2担持体2を選択的に加熱するので、第2担持体2の形状や構造に依らず、第2担持体2を効率的に加熱することができる。これにより、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0055】
また、冷却ローラー6が第2担持体2を選択的に冷却できるように構成されている場合には、冷却ローラー6により第2担持体2の表面のうちサーマルヘッド5により加熱された領域のみを選択的に冷却できるので、冷却ローラー6の表面上に温度むらが生じることを抑制することができる。これにより、冷却ローラー6が第2担持体2の表面を十分に冷却することができ、第2担持体2上に精度良く版を形成することができる。
【0056】
また、版クリーニング装置12により第2担持体2に固着された版粒子15を除去するので、第2担持体2に対して繰り返し版を形成することができ、版の切り替えも容易である。これにより、小ロット印刷における印刷コストを更に低く抑えることができる。また、版クリーニング装置12により、第2担持体2の表面に付着した湿し水やインクなどの付着物を除去できるので、形成した版を用いて画質が良好な画像を形成することができる。
【0057】
なお、上記実施形態では、第2担持体が疎水性であって版粒子が親水性であるものとしたが、第2担持体が親水性であって版粒子が疎水性であるものとしても良い。この場合には、サーマルヘッドは第2担持体の表面のうち画像部分に対応する領域を選択的に加熱するものとする。
【0058】
また、上記実施形態では、第2担持体をドラム状の第2駆動部の表面に設けられるものとしたが、第2担持体はベルト状の部材に設けられているものとしても良い。同様に、第1担持体をベルト状であるものとしたが、第1担持体はドラム状であるものとしても良い。
【0059】
また、上記実施形態では、サーマルヘッドを第1担持体の内側に設け、第1担持体を介して第2担持体を選択的に加熱するものとしたが、サーマルヘッドを第2担持体の内側(第2駆動部側)に設け、第2担持体を内側から加熱するものとしても良い。
【0060】
また、上記実施形態では、第1駆動部及び冷却ローラーが第2担持体に当接して設けられていることにより、第1担持体が第2担持体に密着して当接するものとしたが、第1駆動部及び冷却ローラーは第2担持体から僅かに離間して設けられていても良く、第1担持体は第2担持体に密着せずに当接するものとしても良い。
【符号の説明】
【0061】
1 第1担持体
2 第2担持体
3 供給装置
4 版粒子単層化装置
4a エア放出部
4b 吸引部
5 サーマルヘッド(加熱手段)
6 冷却ローラー(冷却手段)
7 湿し水供給部
7a 湿し水供給ローラー
7b 湿し水容器
7c 湿し水供給ローラー清掃器
8 インク供給部
8a インク供給ローラー
8b インク容器
8c インク規制ブレード
9 ブランケットローラー
10 押圧ローラー
11 ブランケットローラー清掃器
12 版クリーニング装置(クリーニング装置)
12a 超音波振動部
12b 洗浄液容器
13 第1駆動部(駆動部)
14 第2駆動部
15 版粒子
20 製版装置
50 操作部
57 排紙ストッカー
58 給紙部
90 制御部
100 画像形成装置
100A 画像形成ユニット
S 記録媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
親水性及び疎水性の何れか一方の版粒子を表面に担持する第1担持体と、
親水性及び疎水性の何れか他方であって転移温度を境界として可逆的に硬度が変化する感温性材料からなる第2担持体と、
前記第2担持体を選択的に転移温度以上に加熱して軟化させる加熱手段と、
前記第2担持体を転移温度未満に冷却して硬化させる冷却手段と、
前記第1担持体を前記版粒子を介して前記第2担持体に当接及び離間させる駆動部と、
前記駆動部により前記第1担持体を前記前記第2担持体に当接させ、画像信号に対応して前記加熱手段により前記第2担持体を選択的に加熱し、前記冷却手段により前記第2担持体を冷却し、前記駆動部により前記第1担持体を前記第2担持体から離間させることで、前記第2担持体の加熱された部分のみに前記版粒子を固着させ、前記第2担持体上に前記版粒子が固着された領域と前記版粒子が固着されない領域とからなる版像を形成する制御部と、を備えることを特徴とする製版装置。
【請求項2】
前記駆動部は、前記第1担持体を前記第2担持体に密着して当接させることを特徴とする請求項1に記載の製版装置。
【請求項3】
前記第1担持体は、薄膜粘着シートであることを特徴とする請求項1又は2に記載の製版装置。
【請求項4】
前記加熱手段は、前記第1担持体を介して前記第2担持体を加熱することを特徴とする請求項3に記載の製版装置。
【請求項5】
前記冷却手段は、前記第2担持体を選択的に転移温度未満に冷却することを特徴とする請求項1から4の何れか一項に記載の製版装置。
【請求項6】
前記版粒子は親水性であり、前記第2担持体は疎水性であることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載の製版装置。
【請求項7】
前記第2担持体に固着された前記版粒子を除去するクリーニング装置を更に備えることを特徴とする請求項1から6の何れか一項に記載の製版装置。
【請求項8】
請求項1から7の何れか一項に記載の製版装置を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−250380(P2012−250380A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−123022(P2011−123022)
【出願日】平成23年6月1日(2011.6.1)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】