説明

製紙プロセス

セルロースファイバーおよび場合により充填剤を含むセルロース懸濁液を用意し、セルロース懸濁液をワイヤまたは網で脱水してシートを形成し、そしてシートを乾燥することによる製紙プロセスであって、水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマーおよび反応性基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むポリマーであるポリマー添加剤を含むプロセス。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紙または板紙の製造プロセスに関する。特に、本発明は、紙の湿潤および乾燥強度の改良に関する。本発明はまた、紙の内添または表面サイジングの改良された方法に関する。
【0002】
紙強度特性は、個々のセルロースファイバーの強度、およびセルロースファイバーの間に強い結合を形成する能力、ならびにセルロースシートを形成するセルロースファイバーのネットワークに依存する傾向があることが公知である。低品質のセルロースファイバーは、強度特性の減少をもたらすおそれがある。さらに、形成不良をもたらすセルロースファイバーの不均一な分布は、形成されたセルロースシートの強度も損なう。
【0003】
製紙中の湿潤強度特性、およびこうして形成した紙の乾燥強度特性の両方を改良するために、ポリマー添加剤を添加することが公知である。市販されているこのようなポリマー添加剤は、典型的には、天然(部分的に変性された)または合成の水溶性ポリマー、たとえばカチオンスターチ、アニオンスターチ、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリルアミド、アニオンポリアクリルアミドおよび低分子量カチオンポリマー、たとえばポリDADMAC(ジアリルジメチルアンモニウムクロリド)、ポリアミドアミンエピクロロヒドリン、ポリアミンエピクロロヒドリン、ポリジシアンジアミドを含む。
【0004】
US-A-3,311,594には、アミノポリアミド−エピクロロヒドリンAPAE湿潤紙力強度増強用樹脂の製造が開示されている。樹脂はエピクロロヒドリンをアミノポリアミドと反応させることにより製造し、APAE樹脂は、濃縮された形態において貯蔵の問題を示し、そして一般にGPA樹脂より程度は低いが、貯蔵の間にゲル化するおそれがある。このため、ゲル化を最小限にするためにAPAE樹脂を低い固形分レベルに希釈することが、一般的な手順であった。APAE樹脂は、乾燥および湿潤強度を紙に付与する。
【0005】
グリオキシル化(glyoxylated)ポリアクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロリドコポリマー樹脂は、紙用の乾燥強度および一時的な湿潤強度増強用樹脂としての使用について公知である。US-A-4,605,702には、分子量約500〜6000を有するアクリルアミドコポリマーのグリオキサル化(glyoxalating)による湿潤紙力増強剤の製造が示されている。得られた樹脂は、水溶液中で安定性が乏しく、そして非高温でも短い貯蔵期間の後にゲル化する。したがって、この樹脂は通常、わずか約5〜10wt%の樹脂を含有する比較的希薄な水溶液の形態で供給される。
【0006】
US-A-5783041には、製紙プロセス中に、パルプスラリーに、アミノポリアミド−エピクロロヒドリン樹脂、グリオキシル化アクリルアミド−ジアリルジメチルアンモニウムクロリド樹脂、および高電荷密度のカチオン樹脂を含有する混合樹脂溶液を添加することによる、紙の乾燥強度特性を向上させるための方法が記載されている。
【0007】
US-A-3,556,932には、水溶性グリオキサル化(glyoxalated)アクリルアミドポリマー湿潤紙力増強剤が記載されている。これらの湿潤紙力増強剤は、分子量が約1,000,000未満、好ましくは分子量約25,000未満であるポリマーから製造される。ポリマーを希薄な水溶液中でグリオキサールと反応させて、−CONHCHOHCHO官能性をポリマーに付与し、そしてグリオキサール架橋によりポリマーの分子量を増加させる。低分子量ポリマーおよび希薄な溶液は、それらを無限に架橋、またはゲル化することなく、少なくとも6%の−CONHCHOHCHO官能性をポリマーに付与するために必要であり、この条件でポリマーは湿潤紙力増強用途に役に立たない。このような低固形分(希薄な条件)においてさえも、架橋は継続し、そして生成物の保存寿命を限定する。たとえば、10%固形分溶液として供給される市販用の製品は、室温で約8日内にゲル化する。
【0008】
US-A-5041503は、グリオキシル化ポリアクリルアミドの欠点を、それをマイクロエマルションとして製造することにより、克服することを試みている。ポリマー分子は、マイクロエマルション中に別々に保たれると考えられ、これにより架橋を防止し、したがってより高い分子量のポリマーを使用可能にする。ポリマーは、ポリマーが架橋する場合でさえも、製紙において改良されたまたは湿潤および乾燥紙力増強を提供することができると考えられている。
【0009】
Takuya Kitaokaらによる、"Novel paper strength additives containing cellulose binding domain of cellulase", J Wood Sci (2001) 47: 322-324という題名の報文には、タンパク質に反応性であるように変性したアニオン高分子電解質へ共有結合しているセルロース結合ドメインタンパク質が記載されている。アニオン高分子電解質は、タンパク質と直接反応性ではなく、カルボジイミド塩酸塩化合物と反応するカルボキシル基を含有する。後処理した反応生成物を次にセルロース結合ドメインタンパク質と組み合わせて、タンパク質に共有結合した合成ポリマーを生成する。この反応生成物は、乾燥または湿潤紙力増強剤として従来の乾燥および湿潤紙力増強剤よりも、効果が低いことが見出された。
【0010】
Chemical Abstracts reference(accession number 2004: 222096)には、Journal of Wood Science (2001) 47: 322-324に類似の開示が記載されている。
【0011】
近年、白水の高い割合をプロセスに戻して、河川の汚染における環境影響、ならびに製紙プロセスへ導入する新たな水道水の需要を最小限にするように、製紙プロセスで用いたプロセス水をリサイクルする傾向がある。プロセス水のリサイクルは、イオン性物質、たとえばリグノスルホン酸塩を含むアニオンのゴミの蓄積をまねく傾向がある。したがって、プロセス水中に含まれるイオン性物質のレベルは、閉じた系において、極めて高い傾向がある。静電引力を使用する従来のイオン性の乾燥および湿潤紙力強度増強用樹脂は、閉ループ系において、効果が低いことが見出されている。
【0012】
非イオン性の従来の乾燥および湿潤紙力強度増強用樹脂は、閉ループ製紙系の高い電解質含量によって、不利に影響をおよぼされる傾向はないが、このような従来の添加剤は、プロセス水のリサイクルが少ない製紙系で使用するイオン性添加剤と同じくらい効果的である傾向はない。
【0013】
目的は、従来技術に記載した前述の生成物よりもさらに効果的な添加剤を使用して、紙の乾燥強度および製紙プロセス中の湿潤強度を向上させるための方法を提供することである。別の目的は、製紙プロセスにおいて内添または表面サイズ剤として有用でありうる生成物を提供することである。
【0014】
本発明によれば、本発明者らは、セルロースファイバーおよび場合により充填剤を含むセルロース懸濁液を用意し、セルロース懸濁液をワイヤまたは網で脱水してシートを形成し、そしてシートを乾燥することによる製紙プロセスであって、水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマーおよび反応性基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むポリマーであるポリマー添加剤を含むプロセスを提供する。
【0015】
予期せざることには、本発明者らは、ポリマー添加剤が、形成した紙の乾燥強度の向上に有効であることを見出した。さらに添加剤は、製紙プロセスを有する湿潤強度も改良する。さらに、添加剤をウエット・エンド中に塗布する場合は内添サイズ剤として、またはそれ自身の形成したシートに塗布する場合は表面サイズ剤として用いることができる。
【0016】
反応性基を含有するエチレン性不飽和モノマーは、水溶性または潜在的に水溶性のモノマーと共重合する任意の適切なモノマーとすることができる。反応性基は、望ましくはヒドロキシル基と直接反応性であるはずの任意の適切な反応性基とすることができる。特に、それはセルロースのヒドロキシル基と直接反応性であるべきである。本発明者らは、直接反応性とは、適切な反応条件下で、反応性基がセルロース繊維の少なくとも1種の基と直接に反応性であること、そしてそれをセルロース繊維に対して反応性にするために基を化学的に変性する必要がないことを意味する。特に適切な反応性基は、エポキシド、イソシアネート、アミドメチロール基を含む。特に適切なモノマーは、グリシジルアクリレート、グリシジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、N−メチロールアクリルアミド、および3−イソプロペニルジメチルベンジルイソシアネートを含む反応性基を有するものである。これらの中で、グリシジルアクリレートおよびグリシジルメタクリレートが特に好ましい。
【0017】
水溶性のエチレン性不飽和モノマーの水への溶解性は、25℃で水100ml当りモノマー少なくとも5gであるのが望ましい。モノマーが潜在的に水溶性である場合、たとえば重合後に、それを変性して、水に可溶性となる、たとえば上で定義した溶解性を有するモノマー単位を得ることができる。
【0018】
適切な水溶性または潜在的に水溶性のモノマーは、アクリルアミド、メタクリルアミド、N−アルキルアクリルアミド、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(たとえばヒドロキシエチルアクリレート)、N−ビニルピロリドン、酢酸ビニル、ビニルアセトアミド、アクリル酸(またはその塩)、メタクリル酸(またはその塩)、イタコン酸(またはその塩)、クロトン酸(または塩)、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸(またはその塩)、(メタ)アリルスルホン酸(またはその塩)、ビニルスルホン酸(またはその塩)、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレートまたはその第四級アンモニウムもしくは酸付加塩、ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリルアミドまたはその第四級アンモニウムおよび酸付加塩、およびジアリルジアルキルアンモニウムハロゲン化物(たとえばジアリルジメチルアンモニウムクロリド)よりなる群から選択される。好ましいカチオンモノマーは、ジメチルアミノエチルアクリレート、およびジメチルアミノエチルメタクリレートの塩化メチル第四級アンモニウム塩を含む。
【0019】
反応性基を有するエチレン性不飽和モノマーおよび水溶性のエチレン性不飽和モノマーは、適切な出発原料から合成触媒を用いて合成して、あるいはまた、エチレン性不飽和モノマーに転化することができる適切な基質を生体触媒により転化することにより製造することができる。典型的には、基質を生体触媒と接触させ、これにより基質を、気泡材料および場合により発酵の成分を含有するエチレン性不飽和モノマーに転化する。あるいはまた、エチレン性不飽和モノマーを、発酵プロセスの生成物として製造することができる。
【0020】
望ましくは、ポリマー添加剤は、水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、および反応性基(前記定義の通り)を有するエチレン性不飽和モノマー10mol%までを含むモノマーブレンドから形成してもよい。反応性基を含有するモノマーの好ましい量は、一般に5mol%までである。通常反応性基を含有するモノマーは、少なくとも0.0001mol%、好ましくは少なくとも0.001mol%の量で存在する。ポリマー添加剤は完全に、反応性基を含有するモノマーおよび水溶性または潜在的に水溶性のモノマーを形成してもよい。典型的には、水溶性または潜在的に水溶性のモノマーは、99.9999mol%まで、好ましくは99.999mol%までの量で存在していてもよい。
【0021】
他のエチレン性不飽和モノマー、たとえばアクリル酸エステル、たとえばアクリル酸メチル、メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、メタクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、メタクリル酸プロピル、アクリル酸n−ブチル、メタクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、メタクリル酸イソブチル、アクリル酸n−ヘキシル、メタクリル酸n−ヘキシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、およびメタクリル酸ステアリル;スチレン;ハロゲン化モノマー、たとえば塩化ビニルおよび塩化ビニリデンを含むことが望ましい場合がある。他のモノマーの量は、典型的には50mol%までであるが、通常20mol%まで、より望ましくは10mol%未満である。
【0022】
より好ましくは、ポリマー添加剤は、水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー50〜99.995mol%;反応性基を有するエチレン性不飽和モノマー0.005〜2mol%;および他のエチレン性不飽和モノマー0〜50mol%を含むモノマーブレンドから形成される。より好ましくは、さらに、水溶性または潜在的に水溶性のモノマーの量は80(特に90より多く)〜99.995mol%であり、そして他のエチレン性不飽和モノマーの量(含む場合)は20mol%まで(特に10mol%未満)である。
【0023】
特に好適なポリマー添加剤は、アクリルアミドおよびグリシジルメタクリレートを含むモノマーブレンドから形成される。グリシジルメタクリレートの量が、反応性基を含有するモノマーに対する前記定義の通りであるポリマーが特に好ましい。特に好ましいポリマーは、グリシジルメタクリレート0.005〜5mol%を含有し、残部はアクリルアミドである。
【0024】
本発明のポリマー添加剤の重量平均分子量は、数千、たとえば6000または7000のように低くてもよく、あるいはたとえば数千万のように極めて高くてもよい。しかし、本発明者らは、本発明のポリマーが製紙プロセスにおいて乾燥紙力増強剤として用いるためのものである場合、ポリマー重量平均分子量が100万未満であることが好ましいことを見出した。より好ましくは、重量平均分子量は、500,000未満、特に50,000〜300,000の範囲内、特に100,000〜150,000である。
【0025】
ポリマー添加剤は、前述のモノマーを組み合わせてモノマーブレンドを形成し、次いで、このモノマーブレンドを重合条件に付することにより形成することができる。典型的には、これは、重合開始剤を導入することおよび/またはモノマーブレンドを化学線(たとえば紫外線)に付することおよび/またはモノマーブレンドを加熱することを含むことができる。
【0026】
好ましくは、モノマーブレンドを水性媒体に溶解または分散させ、そして重合を生じさせるために水溶性の開始剤を水性媒体に導入する。種々の従来の開始剤系を用いて重合を生じさせることが可能である。たとえば、レドックス開始剤対を用いて水溶性モノマーを重合させるのが一般的な方法であり、還元剤および酸化剤であるレドックス対をモノマーと混合することによりラジカルが生じる。単独でまたは他の開始剤系と組み合わせて、高温でラジカルを放出する任意の適切な開始剤化合物を含む熱開始剤を用いるのも従来の方法である。他の開始剤系は、光および放射線誘起開始剤系を含み、これはラジカルを放出するために放射線照射の必要がありこれにより重合を生じさせる。他の開始剤系は、周知であり、文献に十分記録されている。
【0027】
典型的には、レドックス開始剤は、還元剤、たとえば亜硫酸ナトリウム、二酸化硫黄、および酸化化合物、たとえば過硫酸アンモニウムまたは適切なペルオキシ化合物、たとえば第三級ブチルヒドロペルオキシドなどを含む。レドックス開始剤は、レドックス対の各成分10,000ppmまで(モノマーの重量に基づいて)使用してもよい。好ましくは、レドックス対の各成分は多くの場合1000ppm未満であるが、典型的には1〜100ppmの範囲、通常4〜50ppmの範囲である。還元剤対酸化剤の比は、10:1〜1:10、好ましくは5:1〜1:5の範囲、より好ましくは2:1〜1:2、たとえば1:1程度とすることができる。
【0028】
重合は、熱開始剤を、単独、または他の開始剤系、たとえばレドックス開始剤と組み合わせて使用することにより生じさせる場合もある。熱開始剤は、高温でラジカルを放出する任意の適切な開始剤化合物、たとえばアゾ化合物、たとえばアゾビスイソブチロニトリル(AZDN)、4,4’−アゾビス−(4−シアノ吉草酸)(ACVA)を含む。典型的には、熱開始剤をモノマーの重量に基づいて10,000ppmまでの量で用いる。しかし、ほとんどの場合、熱開始剤を100〜5,000ppm、好ましくは200〜2,000ppmの範囲で、通常1,000ppm程度用いる。
【0029】
ポリマー添加剤をポリマーの水溶液として製造してもよい。これは、たとえば比較的濃厚、たとえば2重量%より濃く、たとえば少なくとも5または10重量%としてもよい。あるいはまた、ポリマーは粒状形態で、たとえば粉末として製造してもよい。これはポリマーを含む溶液を乾燥し、次いでポリマーをばらばらにして粉末生成物を形成することにより達成してもよい。あるいはまた、少なくとも30%、通常少なくとも50重量%の濃度でモノマーの溶液を重合することにより、ポリマーをゲルとして形成してもよい。文献に記録されている従来の方法にしたがって、形成したゲルを粉砕し、乾燥し、次に磨砕して粉末を形成することができる。あるいはまた、水不混和性液体中でポリマー安定剤を用いてモノマーの逆相重合を行うことにより、ポリマーをビーズの形でまたはエマルションとして得てもよい。ポリマー安定剤は、一般に、たとえば親水性および疎水性アクリルモノマーから形成される、両親媒性の安定剤である。適切な方法が文献に記載されており、たとえば適切な水不混和性液体および安定剤および/または界面活性剤の詳細が、EP-A-150933およびEP-A-126528に記載されている。適切な界面活性剤、非水溶液、およびポリマー安定剤、並びに適切な条件が、たとえば、EP-A-128661、EP-A-126528、GB-A-2,002,400、GB-A-2,001,083、またはGB-A-1,482,515に記載されている。
【0030】
ポリマービーズを製造する場合、それらは一般に実質的に乾燥している。典型的には、実質的に乾燥したビーズの寸法は、不混和性液体中に分散した水性相粒子の寸法により決定される。多くの場合、乾燥した粒子は、寸法が少なくとも30ミクロン、多くの場合少なくとも100ミクロン、たとえば500ミクロンまで、または1mmまで、またはさらに2mm以上であるビーズであることが望ましい。この寸法の粒子を用いて、実質的に乾燥した粒子を、水不混和性液体からろ過、遠心分離または他の従来の分離方法により分離して、そして分離後さらなる乾燥に付してもよい。このさらなる乾燥は、溶剤交換によってもよいが、たとえば流動床での温風によるのが好ましい。
【0031】
本発明の一つの好ましい形態では、そのポリマー添加剤を、このセルロース懸濁液を脱水する前に含む。一般に、これはセルロース懸濁液を機械ワイヤまたは網で水切りする前であり、そして通常これはヘッドボックスの前である。
【0032】
好ましくは、ポリマー添加剤は乾燥紙力増強剤である。紙の乾燥強度を向上させるために用いる場合、ポリマーを望ましくは製紙プロセスのウエット・エンドに含む。典型的には、ポリマーの乾燥紙力増強剤を、任意の他のストック成分、たとえばセルロース供給ストックと共に含んでいてもよい。それは、製紙プロセスの混合チェストもしくはブレンドチェスト中に、または希釈に先立って濃いストックに含んでいてもよい。あるいはまた、乾燥紙力強度増強用樹脂添加剤を希薄ストックに添加する。これは濃いストックの希釈直後、あるいは場合によりファン・ポンプの一つの後としてもよい。添加剤は、水切り前を除いてセントリ・スクリーン(centri screen)の後に含んでもよいが、セントリ・スクリーンの前に添加するのが好ましい。
【0033】
乾燥紙力強度増強用樹脂ポリマーを従来の量、たとえば少なくとも300g/メートルトン、事によると2kg/メートルトン程度またはそれ以上で添加してもよい。典型的な投与量は1kg/メートルトン程度とすることができる。
【0034】
本発明のポリマーは、水溶液として供給して用いてもよい。一つの形態では、ポリマーは比較的濃厚な、たとえば濃度が2重量%より濃い、たとえば少なくとも5または10重量%である水溶液として提供してもよい。このポリマー水溶液を、直接に用いてもよいが、その代わりに使用前に比較的希薄な濃度、たとえば1重量%以下、たとえば0.05〜0.5%、たとえば0.1重量%に希釈してもよい。望ましくは、ポリマーは、粒状の形態、たとえば粉末であるが、好ましくはビーズである。粒状のポリマーを水に溶解して、たとえば上述したような濃度を有する水溶液を形成してもよい。一つの別の形態では、プロセスにおいて、粒状のポリマーを乾燥紙力強度増強用樹脂として直接に用いることが望ましい。好ましくは、粒状のポリマーは、プロセスに直接に導入するビーズの形態である。
【0035】
典型的には、排水およびリテンション助剤(retention aids)も、他の添加剤、たとえば定着剤などとともにプロセスに含むことができる。典型的な排水およびリテンション(retention)系は、マイクロパーティクル系、たとえば、EP-A-235893に記載されている好結果のCiba Hydrocol(登録商標)プロセスとしてもよい。
【0036】
本発明で用いるポリマー添加剤は、製紙プロセス中に、湿潤紙力強度増強用樹脂としても使用してもよい。ポリマーの特性は、それがそれ自身とおよび/またはストック中に含有されるセルロースファイバーのセルロースと架橋する可能性を有するように選択される。本発明者らは、残留の反応性基、特にグリシジル基を含有するポリマーがこの要件を満たすことができることを見出した。製紙プロセスの間に、いったんセルロースシートがワイヤまたは網上に形成したら、通常、それを、セルロースシートを圧縮し乾燥する装置に移す。湿ったセルロースシートを、通常、ローラー上の一連のベルト、たとえばフェルトに移す。湿ったセルロースシートは、そのプロセスの間にそれが裂けたりせず損傷を受けていない状態のままであるように、十分に強い必要がある。製紙プロセスにポリマー添加剤を組み入れることにより、湿潤強度の著しい改良を確認することができる。湿潤紙力増強剤として用いる場合、それを乾燥紙力増強剤として用いる場合と同様の方法でポリマーを組み入れることができる。
【0037】
本発明の別の態様では、ポリマー添加剤を内添サイズ剤として用いることができる。一般にポリマーの特性は、それを製紙プロセスに含む場合は、それが形成された紙のシートの本体中の成分ファイバーの水吸収特性を、低水吸収性であるように変性するように選択することができる。このことは、それが許容できないレベルの湿気および水が紙シートによって吸収されることを防ぐので重要である。
【0038】
内添サイズ剤として用いる場合、ポリマーを通常希薄ストックに組み込むが、これを濃いストックまたは任意のストック成分に組み込むことができる。サイジング配合物中にポリマーを含むことが望ましい。そのような配合物は、それをファイバーに対してより多くするために、本質的にはカチオンとしてもよい。ポリマーがカチオンであることも望ましく、これは、水溶性モノマー成分がカチオンモノマーを含むカチオン合成ポリマー成分を製造することにより得られてもよい。
【0039】
本発明で述べたポリマーは、製紙プロセスのセルロース懸濁液に導入する場合、乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤として、ならびに内添サイズ剤として実質的に同時に機能してもよい。
【0040】
本発明のさらなる別の形態では、ポリマー添加剤を、形成したセルロースシートの表面に塗布する。典型的には、セルロース懸濁液を機械ワイヤまたは網で水切りしたら、添加剤をセルロースシートに塗布する。これは乾燥段階の前またはその間であるのが好ましい。本発明のこの形態では、ポリマー添加剤は、セルロースシート表面の少なくとも1面、通常両面に、望ましくは表面コーティングを形成する。好ましい態様では、セルロースシートの表面に塗布する場合、ポリマー添加剤は表面サイズ剤である。一般に、これはポリマーをセルロースシートの表面に塗布することにより行う。表面サイズ剤として用いる場合、乾燥中または乾燥に先立って、ポリマーをセルロースシートの表面に塗布することが好ましい。紙シートの表面サイジングは、紙の表面を低水吸収性にすることを確実にする。外面的サイズ紙の製造の著しい改良を、本発明のポリマーを用いて実現することができる。
【0041】
表面サイズ剤を従来の量でセルロースシートに塗布してもよい。典型的には、これは乾燥紙メートルトン当り少なくとも50gであり、そして乾燥紙メートルトン当り2kg程度、特にメートルトン当り300g〜メートルトン当り1.5kgの範囲内とすることができる。
【0042】
本発明のさらなる態様では、本発明者らは、少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、およびグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーであるグリシジルモノマーを10mol%まで、好ましくは5mol%まで含むモノマーブレンドから形成されたポリマーであって、重量平均分子量が100万未満であるポリマーを提供する。
【0043】
ポリマーは、製紙プロセスにおいて用いるポリマー添加剤に関して記載したいずれかの前述の特徴を含んでいてもよい。ポリマーは、製紙プロセスにおける添加剤として使用するのに特に適切である。それは、たとえば乾燥紙力増強剤、湿潤紙力増強剤、内添サイズ剤として、または表面サイズ剤として使用してもよい。
【0044】
本発明者らは、アクリルアミドまたはメタクリルアミドを含むモノマーブレンドから形成されたポリマーが特に有効であることを見出した。特に好適なポリマーは、グリシジルモノマーとして、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのいずれかを含む。
【0045】
好ましい形態では、ポリマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミド少なくとも99.9mol%、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート0.1mol%までを含む。より好ましくは、ポリマーは、アクリルアミドまたはメタクリルアミド99.990〜99.999mol%、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート0.001〜0.01mol%を含むモノマーブレンドから形成される。特にアクリルアミドまたはメタクリルアミド含量99.990〜99.995mol%が好ましい。グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートの特に好ましいレベルは、0.005〜0.010mol%の範囲である。
【0046】
本発明のポリマーの重量平均分子量は、数千、たとえば6000または7000のように低くてもよく、あるいはたとえば数千万のように極めて高くてもよい。しかし、本発明者らは、本発明のポリマーを製紙プロセスにおける乾燥紙力増強剤として用いる場合、ポリマーの重量平均分子量が500,000未満、特に50,000〜300,000の範囲内、特に100,000〜150,000であることが好ましいことを見出した。
【0047】
好ましいポリマーは、特定の分子量範囲と、アクリルアミドまたはメタクリルアミド対グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートの比との組み合わせを有する。そのようなポリマーは、アクリルアミド少なくとも99.9mol%、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレート0.1mol%までを含み、そして100,000〜200,000、好ましくは130,000〜150,000の重量平均分子量を有するのが適切である。
【0048】
製紙プロセスで用いるポリマー添加剤について述べた前述の製造方法にしたがって、ポリマーを製造することができる。
【0049】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0050】
実施例
1.分析方法
ポリマーを、TSK PWXLカラム(G6000+G3000+ガード)または同等品を用いるサイズ排除クロマトグラフィー(SEC)により分析した。移動相は、精製水中の0.05モルのリン酸水素二カリウム(K2HPO4)を伴う0.2モルの塩化ナトリウム(NaCl)であり、それを公称流量0.5ml/minで系にポンプで通した。
【0051】
ポリマーは、280nmでのUV活性がほとんどないが、カルボニル発色団のために210nmで強く吸収する。ポリマーの分子量値および分子量分布を、分子量特性が公知のポリアクリル酸ナトリウム標準の一式のカラムのキャリブレーションに従って、210nmで検出することにより測定した。SEC系での各標準の保持時間を測定し、ピーク分子量の対数対保持時間をプロットした。
【0052】
2.ポリマー合成
一般的な方法
1.適切な反応容器に、水、およびジエチレントリアミン五酢酸五ナトリウム塩(DETAPA)を入れる。
2.内容物の温度を上げ、80℃に維持する。
3.開始剤(1)を反応容器に加える。
4.開始剤[1]の導入直後に、モノマーの溶液ならびに開始剤(2)の溶液を反応容器に導入する。
5.モノマーおよび開始剤を全て導入した後、反応容器の内容物を80℃の温度に維持しながらさらに30分間攪拌を続ける。
【0053】
アクリルアミド:グリシジルメタクリレートポリマー(モル比99:1)の合成
反応
容器:水 350.0g
(DETAPA)@6% 0.5ml
(〜pH5にする酢酸)
開始剤(1)過硫酸アンモニウム 0.431g(水10ml中)
モノマー:アクリルアミド@50% 396.0g
グリシジルメタクリレート@97% 4.13g
水 199.87g
開始剤(2)(2.25時間供給):過硫酸アンモニウム0.569g(水50ml中)
【0054】
3.ポリマー反応CBDを用いる紙手抄きシート(Handsheet)の製造
ストック調製
50:50の長:短ファイバーストックを、10%の充填剤を用いてコンシステンシー1.8%に調製し、ろ水度45SRまで叩いた。
【0055】
ポリマーの評価−引張強さ
ストックを1000rpmで攪拌し、30秒混合しながらポリマー(0.1%)を1kg/tで加えた。
【0056】
次いで、ストックを0.5%に希釈し、5×300mlのアリコートを採取した。
【0057】
各アリコートは、1500rpmで30秒攪拌しながら、固有粘度が7dl/gより上のPercol 182カチオンポリアクリルアミド(500g/t)と共に加え、その後500rpmで15秒さらに混合しながらHydrocol Oナトリウムベントナイト(2kg/t)を添加した。次に、手抄きシートを英国標準手抄きシートメーカー(Handsheet maker)を用いて製造し、サンプル当り5枚の手抄きシートを得た。各手抄きシートは、それから切断されたストリップ(幅2.5cm)を有し、個々のストリップをTappi試験方法T402(紙、ボード、パルプ手抄きシートおよび関連する生成物の基準調整および試験環境)にしたがって調整した。
【0058】
調整済みのストリップを、次いで、Testometric 220Dを用いて、Tappi試験方法T494(紙および板紙の引張破断特性)にしたがって試験した。
【0059】
評価したポリマー
用いたポリマーは、次の表に示されているように反応性グリシジルメタクリレート単位の割合を変えた、ポリアクリルアミド−グリシジルメタクリレートコポリマーである:
【0060】
【表1】

【0061】
引張測定の結果;
【0062】
【表2】

【0063】
ポリマー添加剤は、有効な乾燥紙力強度増強用樹脂であることが分かり、そしてポリアクリルアミド−グリシジルメタクリレートコポリマーは、有効な乾燥紙力強度増強用樹脂の役割を果たすことができることを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
セルロースファイバーおよび場合により充填剤を含むセルロース懸濁液を用意し、セルロース懸濁液をワイヤまたは網で脱水してシートを形成し、そしてシートを乾燥することによる製紙プロセスであって、水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマーおよび反応性基を有するエチレン性不飽和モノマーを含むポリマーであるポリマー添加剤を含むプロセス。
【請求項2】
反応性基が、エポキシド、イソシアネート、およびアミドメチロール基よりなる群から選択される、請求項1記載のプロセス。
【請求項3】
ポリマーが、少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー;反応性基を有するエチレン性不飽和モノマー10mol%まで、好ましくは5mol%を含むモノマーブレンドから形成される、請求項1または請求項2記載のプロセス。
【請求項4】
ポリマーがアクリルアミドおよびグリシジルメタクリレートを含むモノマーブレンドから形成される、請求項1〜3のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項5】
ポリマーが、100万未満、好ましくは50,000〜300,000の重量平均分子量を有する、請求項1〜4のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項6】
ポリマー添加剤が乾燥紙力増強剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項7】
ポリマー添加剤が湿潤紙力増強剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項8】
ポリマー添加剤が内添サイズ剤である、請求項1〜5のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項9】
表面サイズ剤であるポリマー添加剤を、形成したセルロースシートの表面に塗布する、請求項1〜5のいずれか1項記載のプロセス。
【請求項10】
少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、およびグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーであるグリシジルモノマーを10mol%まで、好ましくは5mol%まで含むモノマーブレンドから形成されたポリマーであって、重量平均分子量が100万未満であるポリマー。
【請求項11】
モノマーブレンドがアクリルアミドまたはメタクリルアミドを含む、請求項10記載のポリマー。
【請求項12】
グリシジルモノマーが、グリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートのいずれかである、請求項10または請求項11記載のポリマー。
【請求項13】
ポリマーが、アクリルアミドを少なくとも99.9mol%、およびグリシジルアクリレートまたはグリシジルメタクリレートを0.1mol%まで含む、請求項10〜12のいずれか1項記載のポリマー。
【請求項14】
重量平均分子量が50,000〜300,000である、請求項10〜13記載のポリマー。
【請求項15】
少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、およびグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーであるグリシジルモノマーを10mol%まで、好ましくは5mol%まで含むモノマーブレンドから形成された、重量平均分子量が100万未満であるポリマーの、製紙プロセスでの乾燥紙力増強剤としての使用。
【請求項16】
少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、およびグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーであるグリシジルモノマーを10mol%まで、好ましくは5mol%まで含むモノマーブレンドから形成された、重量平均分子量が100万未満であるポリマーの、製紙プロセスでの湿潤紙力増強剤としての使用。
【請求項17】
少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、およびグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーであるグリシジルモノマーを10mol%まで、好ましくは5mol%まで含むモノマーブレンドから形成された、重量平均分子量が100万未満であるポリマーの、製紙プロセスでの内添サイズ剤としての使用。
【請求項18】
少なくとも1種の水溶性または潜在的に水溶性のエチレン性不飽和モノマー、およびグリシジル基を有するエチレン性不飽和モノマーであるグリシジルモノマーを10mol%まで、好ましくは5mol%まで含むモノマーブレンドから形成された、重量平均分子量が100万未満であるポリマーの、製紙プロセスでの表面サイズ剤としての使用。

【公表番号】特表2008−519911(P2008−519911A)
【公表日】平成20年6月12日(2008.6.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−540542(P2007−540542)
【出願日】平成17年11月3日(2005.11.3)
【国際出願番号】PCT/EP2005/011737
【国際公開番号】WO2006/050848
【国際公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【出願人】(592006855)チバ スペシャルティ ケミカルズ ウォーター トリートメント リミテッド (19)
【氏名又は名称原語表記】Ciba Specialty Chemicals Water Treatments Limited
【Fターム(参考)】