説明

製紙工程を改善するための合成ケイ酸金属塩を有するデンプンの使用

本発明はセルロース繊維と有効量のSMSとを具えるスラリから生成される紙又は板紙を開示している。更に、製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法が開示されている。本方法は、前記製紙工程への有効量のSMSの添加ステップを含んでいる。本発明は更に製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法を開示し、有効量のデンプン及び有効量のSMSの双方を前記製紙工程のスラリに添加するステップを具え、前記デンプンは、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、ワクシーメイズスターチ、米デンプン及び小麦デンプンからなる群から選択される。更に、本発明は製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法を開示し、有効量の調製したデンプン及び有効量のSMSの双方を前記製紙工程のスラリに添加するステップを具えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願に対する相互引用]
本出願は、2005年9月21日に出願された米国特許出願第11/231,662号の一部分の続きであり、それによる出願の優先権がここに主張され、開示したものは引用によってここに取り込まれている。
【0002】
本開示は、合成金属ケイ酸塩から生成される紙あるいは板紙と同様に、製紙工程への合成金属ケイ酸塩の添加を通じて、製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法に関する。本開示は更に製紙工程への合成金属ケイ酸塩及びデンプンの添加を通じて、製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法に関する。
【背景技術】
【0003】
製紙のための保水及び脱水システムは現在、次のリスト:凝集剤、凝析剤、及び無機粒子からの成分あるいは成分の組合せを利用している。これらの化学作用のうちの1又はそれ以上が、セルロース繊維、微粉、充填剤、及びその他の添加物を含み、実質的に製紙機械上へ取り込まれる水溶性スラリに添加される場合、シート形成は保水及び脱水で観察される改善とともに促進される。製紙の近年の歴史を通じて、いくつかの異なる無機粒子が保水及び脱水システムの一部分として用いられてきた。無機粒子はコロイド状シリカあるいはシリカゾル、調製したシリカゾル、及びホウケイ酸塩ゾルから、自然に存在するスメクタイトクレイまでの範囲であり、単一又は互いに組み合わせて用いられる。それでも、紙又は板紙の性状を犠牲にすることなく、もっと良い保水あるいは脱水を提供する新しい合成無機粒子のニーズが存在する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明もまた、製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法を提供し、有効量のSMSを前記製紙工程に添加するステップを具えている。
【0005】
本発明はセルロース繊維と有効量のSMS及びデンプンとを具えるスラリから生成される紙及び板紙を提供する。
【0006】
本発明は更に前記製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法を提供し、有効量のSMS及びデンプンを前記製紙工程に添加するステップを具えている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
「SMS」は次式:(Mg3−xLi)SiNa0.33[F(OH)2−y10、の合成金属ケイ酸塩を意味し、x=0乃至3.0、y=0.01乃至2.0である。
【0008】
本発明のSMSは鉱化剤の存在下で単一元素のケイ素及びリチウムとマグネシウムとフッ化物塩とを組み合わせて、結果として生じる混合物を熱水状態に曝すことによって生成できる。例えば、水溶液中で及び2日間の還流の下で、シリカゾルのゲルを水酸化マグネシウム及びフッ化リチウムと組み合わせて、SMSを生ずることができる(「Industrial & Chemical Engineering Chemistry Research(1992),31(7),1654」参照。引用によってここに取り込む)。ナルコカンパニー社(イリノイ州 60563、ネーパービル)から直接取得することも出来る。現在SMSはナルコ製品第DVP4J001として利用可能である。
【0009】
「製紙工程」は、水溶性セルロースの製紙用完成紙料を形成するステップと、前記完成紙料を脱水してシートを形成するステップと、前記シートを乾燥させるステップとを具える、パルプから紙製品を生成する方法を意味する。製紙用完成紙料を形成するステップと、脱水するステップと、乾燥させるステップとは、当該技術分野の当業者に一般的に知られた従来の方法で行うことができる。
【0010】
「COD」は化学的酸素要求量を意味する。
【0011】
「GCC」は炭酸カルシウム粉末を意味する。
【0012】
「HWK」は硬材漂白クラフトを意味する。
【0013】
「MCL」は平均翼弦長を意味する。
【0014】
「SWK」は軟材漂白クラフトを意味する。
【0015】
「TMP」はサーモメカニカルパルプを意味する。
【0016】
「PCC」は沈降炭酸カルシウムを意味する。
【0017】
「CTMP」はケミサーモメカニカルパルプを意味する。
【0018】
「GWD」は砕木パルプを意味する。
【0019】
「DIP」は脱墨パルプを意味する。
【0020】
「kg」はキログラムを意味する。
【0021】
「T」はトンを意味する。
【0022】
上述のように、本発明は製紙工程中に保水及び脱水を向上させる方法を提供し、有効量のSMSを添加するステップを具えている。SMSは恐らくは固形体としてあるいは分散として前記製紙工程へ添加される。一実施例においては、SMSは前記製紙工程に位置するスラリに添加される。前記スラリは水中で分散した1又はそれ以上のセルロース繊維、微粉、及び充填剤を具えることができる。
【0023】
別の実施例においては、前記スラリに添加される有効量のSMSは前記スラリ中の固形分を基準として0.001乃至6kg/T、あるいは、前記スラリ中の固形分を基準として0.01乃至3kg/Tである。
【0024】
別の実施例においては、コロイド状シリカが前記製紙工程のスラリに添加される。更なる実施例においては、コロイド状シリカとSMSの重量比は、0.01:1乃至100:1である。
【0025】
別の実施例においては、コロイド状ホウケイ酸塩は前記製紙工程の前記スラリに添加される。更なる実施例においては、コロイド上ホウケイ酸塩とSMSの重量比は0.01:1乃至100:1である。
【0026】
別の実施例においては、1又はそれ以上のポリマは前記SMSの追加前後、あるいはそれと組み合わせて前記スラリに添加できる。前記ポリマは以下のポリマ型:陽イオン性、陰イオン性、非イオン性、両性イオン性、及び両性からなる群から選択できる。更なる実施例においては、陽イオン性ポリマは、自然に存在する炭化水素;人工的な直鎖性、分岐性、共有結合性の凝集剤;有機微粒子;アクリルアミドと塩化ジアリルジメチルアンモニウムとの共重合体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸塩とアクリルアミドとの共重合体;(メタ)アクリル酸とアクリルアミドとの共重合体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸塩とアクリルアミドとの共重合体;塩化クワットジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸メチルとアクリルアミドとの共重合体;ジメチルアミノエチル(メタ)アクリル酸塩とアクリルアミドと(メタ)アクリル酸とのターポリマ;からなる群から選択される。上述の有機微粒子の例は、HonigとHarrisの米国特許第5,274,055号に提供され、引用としてここに取り込まれている。更なる実施例においては、自然に存在する炭化水素の型はガーゴム及びデンプンからなる群から選択される。
【0027】
更なる実施例においては、陰イオン性ポリマは、アクリル酸のホモ及び共重合体、及び、アクリルアミドあるいはメタクリルアミドを有する、メタクリルアミドと2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸塩との共重合体からなる群から選択される。
【0028】
更なる実施例においては、非イオン性ポリマは、ポリエチレンオキシドとポリアクリルアミドとからなる群から選択される。
【0029】
別の実施例においては、1又はそれ以上の有機凝析剤、無機凝析剤、あるいはそれらの組合せが前記スラリに添加される。更なる実施例においては、有機凝析剤はエピクロロヒドリンジメチルアミンとエチレンイミンから調製されるポリアルキレンポリアミドである。更なる実施例においては、無機凝析剤は、ミョウバン、ポリ塩化アルミニウム、ポリケイ酸硫酸アルミニウムからなる群から選択される。
【0030】
別の実施例においては、本発明は有効量のSMSを添加するステップを具える、製紙工程中の保水と脱水を向上させる方法を具え、前記SMSは前記製紙工程のスラリに添加され、抄紙機あるいは板紙抄紙機に提供して、乾燥した紙あるいは板紙を形成する。更なる実施例においては、SMSは脱水前に前記スラリに添加され、前記抄紙機あるいは板紙抄紙機で乾燥した紙あるいは板紙を形成する。
【0031】
上述したように、本発明は有効量のデンプン及び有効量のSMSの双方を製紙工程のスラリに添加するステップを具える、前記製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法を提供し、前記デンプンが、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、ワクシーメイズスターチ、米デンプン及び小麦デンプンからなる群から選択される。更なる実施例においては、1又はそれ以上のポリマが前記スラリに添加される。更なる実施例においては、前記ポリマは、陽イオン性ポリマ、陰イオン性ポリマ、非イオン性ポリマ、両性イオン性ポリマ、及び両性ポリマからなる群から選択される。
【0032】
別の実施例においては、前記デンプンが、前記SMSの追加の前後に、あるいはそれと組み合わせて、前記スラリに添加される。
【0033】
別の実施例においては、前記有効量のデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約0.1乃至約25kg/tの量で添加される。
【0034】
別の実施例においては、前記有効量のデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約2.5乃至約12.5kg/tの量で添加される。
【0035】
上述のように、有効量の調製したデンプン及び有効量のSMSの双方を製紙工程のスラリに添加するステップを具える、前記製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法を提供する。更なる実施例においては、1又はそれ以上のポリマは前記製紙工程に添加できる。更なる実施例においては、前記ポリマは、陽イオン性ポリマ、陰イオン性ポリマ、非イオン性ポリマ、両性イオン性ポリマ、及び両性ポリマからなる群から選択される。
【0036】
別の実施例においては、前記調製したデンプンは、前記SMSの追加の前後に、あるいはそれと組み合わせて、前記スラリに添加される。
【0037】
別の実施例においては、前記調製したデンプンは、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、ワクシーメイズスターチ、米デンプン及び小麦デンプンからなる群から選択される。
【0038】
別の実施例においては、前記調製したデンプンは陽イオン性か両性かのいずれかである。
【0039】
別の実施例においては、前記スラリは薄い紙料あるいは濃い紙料である。
【0040】
別の実施例においては、前記有効量の調製したデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約0.1乃至約25kg/tの量で添加される。
【0041】
別の実施例においては、前記有効量の調製したデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約2.5乃至約12.5kg/tの量で添加される。
【発明を実施するための形態】
【0042】
本発明は以下の例に更に述べて、様々な応用方法を示すが、添付した請求項によって規定される本発明を限定することを意図していない。
【実施例1】
【0043】
0.7重量%のコンシステンシを有する軽量で薄い合成コーティング紙料が準備された。この薄い紙料の固形物は50乾燥重量%の過酸化水素漂白した混合TMPと、25乾燥重量%の漂白した軟材クラフトと、14.5重量%のカオリンクレイ、10.5重量%の超微細GCCからなる。混合TMPは80重量%の硬材と20重量%の軟材の繊維からなる。漂白した軟材クラフトはカナダ・ヒントンのWeldwood社から購入した乾燥したラップパルプである。カオリンクレイはImerys社(ジョージア州30074、ロズウェル、スイート 300、マンセル コート イースト 100)から購入し、一方、GCCはOmya North America社(ジョージア州 30022、アルファレッタ、スイート 310、ノース ポイント センター イースト 100)から取得した。薄い紙料は漂白した混合TMP濾液と、2.0mMのカルシウム、0.23mMのマグネシウム、4.9mMの硫酸塩及び21.8mMのナトリウムを含む脱イオン水とを用いることによって、対応する濃い紙料から生成した。適正な質の塩類溶液がTMP濾液で用いられて、950mg/lのCOD、pH8.2、2500μS/cmの電気伝導度で薄い紙料を生産した。
【0044】
ここで用いられる陽イオン性デンプンは、Solvitose Nであり、Avebe社(Prins Hendrikplein 20、9641 GK Veendam(オランダ))から入手できる。本実施例で用いられる商業上の製品はCP1131であり、非フッ化の合成した含水ナトリウムリチウムの金属ケイ酸塩であり、Rockwood Specialties社(Widnes、Cheshire(イギリス))から取得できる。Nalkat(登録商標)2020及び61067は商業上の製品であり、ナルコカンパニー社(イリノイ州 60563、ネーパービル、ウエスト ディール ロード 1601)から取得できる。
【0045】
フロキュレーションの活性度は、走査型レーザ顕微鏡又はSLMとして知られている、FBRM(収束ビーム反射率測定:Focused Beam Reflectance Measurement)によって測定し、Lasentec(登録商標)M500(Lasentec社、ワシントン州レッドモンド)を用いた。FBRMの操作を支持する理論の記載は、Preikschat,F.K.とPreikschat,E.「Apparatus and method for particle analysis」、米国特許商標庁、第4,871,251号、1989に見られ、引用によってここに取り込まれている。以下の文献:「Gerli,A.,Keiser,B.A.,and Surya,P.I.,“The use of focused beam reflectance measurement in the development of a new nanosize particle,”Appita J.,54(1),36−40(2001)」と「Clemencon,I.and Gerli,A.,“The effect of flocculant/microparticles retention programs on floc properties,”Nord.Pulp Pap.Res.J.,14(1),23−29(1999)」と「Gerli,A.,Oosterhof,F.,and Keiser,B.A.,“An inorganic nanosize particle − part of a new retention/dewatering system,”Pap.Technol.(Bury,U.K.),40(8),41−45(1999)」は引用として取り込まれ、本技術をどのように用いて性能を測定するかと、どのようにして抄紙機試験と相関を取るかとを詳細に示している。薄い紙料の数平均翼弦長あるいはMCLの変化は、時間の関数として用いられて、フロキュレーション反応の特性を表わす。粒子の添加によって生ずるMCLの変化は、製紙工程の追加された性能と相関し、ΔMCL(平均翼弦長の変化)はより良い性能を示している。MCLの最大変化は、現在のせん断条件下でのフロキュレーションの速度と範囲とを示している。
【0046】
300mLの軽量の合成コーティング完成紙料は、500mLのガラスのビーカに注がれて、それをFBRM(収束ビーム反射率測定)台上に置いた。混合は710rpmで開始した。凝析剤、デンプン、凝集剤及び微粒子物は、「添加シーケンス」と題された表に略述されるように添加された。
【0047】
【表1】

【0048】
本実施例においては、SMSの性能は商業上の製品と比較される。平均翼弦の変化はサンプルについて比較される。結果は、以下の表に示されている。
【0049】
【表2】

【0050】
本データから見られるように、SMSは商業上の製品と比較して有意に大きなフロキュレーション反応を提供する。SMSのより大きなフロキュレーション反応は製紙中のより大きな細粒の保水と相関することを示していた。
【実施例2】
【0051】
0.5重量%のコンシステンシでの混合合成したアルカリ上質紙の薄い紙料が準備された。薄い紙料の固形分は32重量%のSWKと48%のHWKと20%の超微細GCCから構成される。SWKはカナダのアルバータ州にある工場で作られた乾燥したラップから調製され、2乃至4重量%のコンシステンシで脱イオン水中で再パルプ化されて、360mLのカナダ標準濾水度(CSF)まで叩解された。HWKは北アメリカの工場で作られた乾燥したラップから別個に調製され、2乃至4重量%のコンシステンシで脱イオン水中で再パルプ化されて、360mLのCSFまで叩解された。GCCはOmyafilから取得したUltrafineである。対応する濃い紙料とGCCは、1.5mMのカルシウム、0.74mMのマグネシウム、2.2mMのナトリウム、2.99mMの塩化物、0.75mMの硫酸塩及び2.2mMの重炭酸塩を含む脱イオン水と併用、希釈された。薄い紙料は8.1のpHと600μS/cmの電気伝導度で0.5重量%のコンシステンシであった。
【0052】
本実施例中の比較粒子は英国チェシア州ウィドネスのRockwood Specialties社で商業上入手できるLaponite(登録商標)RDである。Laponite(登録商標)RDはCAS番号533320−86−8によって同定された、合成した含水ナトリウムリチウムマグネシウムケイ酸塩であり、SiO59.5、MgO27.5、LiO0.8及びNaO2.8の重量パーセントに基づいた、一般的な化学組成を有している。
【0053】
300mLの合成したアルカリ上質紙のスラリは、500mLのガラスのビーカに注がれて、それをFBRM(収束ビーム反射率測定)台上に置いた。混合は710rpmで開始した。デンプン、凝集剤及び無機微粒子物は、「添加シーケンス」と題された表に略述されるように添加された。
【0054】
【表3】

【0055】
FBRMアプリケーションは前の例で述べている。本実施例では、SMSはLaponiteRDと比較される。結果は以下の表に要約される。
【0056】
【表4】

【0057】
本データから見られるように、SMSはLaponiteRDとして知られている、以前から存在し、商業上利用可能な合成した含水ナトリウムリチウムマグネシウムケイ酸塩と比較して、有意に大きなフロキュレーション反応を提供する。SMSにより生成された、このより大きなフロキュレーション反応は現在利用可能なものと比較して、製紙中のより大きな細粒の保水を示す。
【実施例3】
【0058】
本実施例においては、SMSの脱水性能はカナダにある工場から取得された計量のコーティング紙料で、商業上利用可能な物質のそれと比較する。紙料繊維の生成は、以下の表で略述される。本調査で用いられた陽イオン性デンプンはCato31であり、National Starch社(カリフォルニア州94710−2677、グレイソン ストリート ベーカリー 742)から商業上入手可能である。PCCはその工場で製造され、そこから取得した。Nalkat(登録商標)7655とNalco7526は、ナルコカンパニー社(イリノイ州 60563、ネーパービル、ウエスト ディール ロード 1601)から商業上入手可能な商業上の製品である。本実施例で用いられた商業上の製品はCP1131であり、非フッ化の合成した含水ナトリウムリチウムの金属ケイ酸塩であり、英国チェシア州ウィドネスのRockwood Specialties社から取得できる。
【0059】
【表5】

【0060】
混合した繊維及び充填剤の固形物は、白水で0.7重量%のコンシステンシまで希釈された。
【0061】
生成物の真空脱水分析は、真空排液テスタ(Vacuum Drainage Tester:ここではVDTとする)を用いて得られた。
【0062】
VDTはパッド形式の装置であり、スラリに含まれるセルロース繊維は真空下で、パッドの形態で生じるフィルタの紙あるいはワイヤ上に排出されることを意味している。このように、動作の原理や提供された情報においては、文献に述べられた他の真空脱水装置と似ている(例えば、引用によってここに取り込まれる、「Forsberg,S.and Bengtsson,M.,“The Dynamic Drainage Analyzer,(DDA),”Proceedings Tappi 1990 Papermaker’s Conference,pp.239−45,Atlanta,GA,April23−25,1990」参照)。VDT+と同一の、ナルコカンパニー社(イリノイ州 60563、ネーパービル、ウエスト ディール ロード 1601)から入手可能な、ここに用いられるVDTは調製され、化学的な添加物のスラリとの混合は、機器の上方チャンバでなされるようにした。次いで、処理したスラリは上方の混合チャンバから真空脱水チャンバまで重力によって移される。mL/秒において脱水率が、400mLの濾液あるいは白水を収集するのに必要な時間を決定することによって算出された。操作条件は以下の表に要約される。
【0063】
【表6】

【0064】
脱水の比較結果は以下の表に示される。示されたように、高い脱水率、すなわち15.7mL/秒が、商業上の製品と比較した場合に、本発明の無機粒子であるSMSで得られた。
【0065】
【表7】

【実施例4】
【0066】
本実施例においては、SMSの脱水性能による様々に調製されたデンプンの効果が、カナダにある製糸工場からの100%の過酸化水素漂白されたTMP紙料で決定される。紙料特性は表Iに与えられている。
【0067】
【表8】

【0068】
本調査で用いられた陽イオン性コーンスターチはCato31であり、National Starch社(カリフォルニア州94710−2677、ベーカリー、グレイソン ストリート 742)から商業上入手可能である。本調査で用いられた陽イオン性タピオカデンプンは、International Additive Concepts社(ノースカロライナ州 28273−6214、シャーロット、クロンプトン ストリート 380)から商業上入手可能な、それぞれ中位及び高荷電である、Dynamond132及びDynamond180である。本調査で用いられた陽イオン性ジャガイモデンプンは、Penford Products社(アイオワ州 52404−2175、シーダー ラピッズ、ピー.オー.ボックス 428、ファースト ストリート 1001)から商業上入手可能なTopcat771である。それらは表IIに述べられている。
【0069】
【表9】

【0070】
用いられた凝集剤はナルコカンパニー社(イリノイ州 60563、ネーパービル、ウエスト ディール ロード 1601)から入手可能な6D16である。重力脱水分析のプログラムは、Mutek社(ドイツ、ヘルシング、BTG)で製造されたDynamic Filtration System(DFS−03)を用いて行われた。脱水測定中、1Lの紙料が攪拌する区画に充填され、表IIIに述べたように化学添加物の追加中に800rpmのせん断を受ける。紙料は60秒間、25メッシュのスクリーンを通じて排出され、濾液量は排出時間にわたる重量で決定される。
【0071】
【表10】

【0072】
表IIに前述の様々な調製したデンプンを有するSMSについての脱水比較の結果は、60秒後に収集された排出質量として表IVに与えられている。用いられた過酸化水素漂白されたTMP紙料は、表Iに述べられている。分かるように、コーンスターチと比較すると、優位に高い脱水性能が、ジャガイモ及びタピオカデンプンの存在下で、6D16/SMSプログラムに対して観察された。
【0073】
【表11】

【実施例5】
【0074】
本例は、カナダの製紙工場からの表Vに述べた紙料を用いた、表IIに述べた様々に調製したデンプンのSMSの脱水性能の効果を示している。
【0075】
【表12】

【0076】
本調査で用いられた陽イオン性コーンスターチはCato31であり、National Starch社(カリフォルニア州94710−2677、ベーカリー、グレイソン ストリート 742)から商業上入手可能である。本調査で用いられた陽イオン性タピオカデンプンは、International Additive Concepts社(ノースカロライナ州 28273−6214、シャーロット、クロンプトン ストリート 380)から商業上入手可能な、それぞれ中位及び高荷電である、Dynamond132及びDynamond180である。本調査で用いられた陽イオン性ジャガイモデンプンは、Penford Products社(アイオワ州 52404−2175、シーダー ラピッズ、ピー.オー.ボックス 428、ファースト ストリート 1001)から商業上入手可能なTopcat771である。それらは表IIに述べられている。
【0077】
重力脱水試験は、Mutek社(ドイツ、ヘルシング、BTG)で製造されたDynamic Filtration System(DFS−03)を用いて行われた。脱水測定中、1Lの紙料が攪拌する区画に充填され、表IIIに述べたように化学添加物の追加中に800rpmのせん断を受ける。紙料は60秒間、25メッシュのスクリーンを通じて排出され、濾液量は排出時間にわたる重量で決定される。いくつかの試験用に用いられた凝集剤はナルコカンパニー社(イリノイ州 60563、ネーパービル、ウエスト ディール ロード 1601)から入手可能な61067である。
【0078】
陽イオン性コーン、ジャガイモ及びタピオカデンプンを有する、1.0kg/tで投与されたSMS、及び1.0kg/tで投与された凝集剤についての脱水結果は、60秒後に収集された排出質量として表VIに示されている。中程度の電荷のコーンスターチと比べて、より高い排出質量が中程度の電荷のタピオカ及びジャガイモデンプンの存在下で観察され、中程度の電荷のコーンスターチを有するプログラムと比べたこれらのプログラムについて、優れた排出性能を示した。同様に、中程度の電荷のコーンスターチと比較して、より高い排出性能は、表VIIに示されたようなプログラムの一部として、凝析剤なしで行われた試験について、中程度の電荷のタピオカデンプンで観察された。
【0079】
【表13】

【0080】
【表14】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法であって、有効量のデンプン及び有効量のSMSの双方を前記製紙工程のスラリに添加するステップを具え、前記デンプンが、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、ワクシーメイズスターチ、米デンプン及び小麦デンプンからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法において、前記デンプンが、前記SMSの追加の前後に、あるいはそれと組み合わせて、前記スラリに添加されることを特徴とする方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法において、前記有効量のデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約0.1乃至約25kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項4】
請求項1に記載の方法において、前記有効量のデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約2.5乃至約12.5kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項5】
請求項1に記載の方法において、前記有効量のSMSが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに、約0.001乃至約6kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項6】
請求項1に記載の方法において、前記有効量のSMSが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに、約0.01乃至約3kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項7】
製紙工程中の保水及び脱水を向上させる方法であって、有効量の調製したデンプン及び有効量のSMSの双方を前記製紙工程のスラリに添加するステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項8】
請求項7に記載の方法において、前記調製したデンプンが、前記SMSの追加の前後に、あるいはそれと組み合わせて、前記スラリに添加されることを特徴とする方法。
【請求項9】
請求項7に記載の方法において、前記調製したデンプンが、タピオカデンプン、ジャガイモデンプン、コーンスターチ、ワクシーメイズスターチ、米デンプン及び小麦デンプンからなる群から選択されることを特徴とする方法。
【請求項10】
請求項7に記載の方法において、前記調製したデンプンが、陽イオン性か両性かのいずれかであることを特徴とする方法。
【請求項11】
請求項7に記載の方法において、前記スラリが、水中で分散された1又はそれ以上のセルロース繊維、微粉、及び充填剤を具えることを特徴とする方法。
【請求項12】
請求項1に記載の方法において、前記スラリが、水中で分散された1又はそれ以上のセルロース繊維、微粉、及び充填剤を具えることを特徴とする方法。
【請求項13】
請求項7に記載の方法において、前記スラリが薄い紙料あるいは濃い紙料であることを特徴とする方法。
【請求項14】
請求項1に記載の方法において、前記スラリが薄い紙料あるいは濃い紙料であることを特徴とする方法。
【請求項15】
請求項7に記載の方法が更に、1又はそれ以上のポリマの添加ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項1に記載の方法が更に、1又はそれ以上のポリマの添加ステップを具えることを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項7に記載の方法において、前記有効量の調製したデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約0.1乃至約25kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項7に記載の方法において、前記有効量の調製したデンプンが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに約2.5乃至約12.5kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項7に記載の方法において、前記有効量のSMSが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに、約0.001乃至約6kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項7に記載の方法において、前記有効量のSMSが前記スラリ中の固形分を基準として、前記製紙工程の前記スラリに、約0.01乃至約3kg/tの量で添加されることを特徴とする方法。

【公表番号】特表2009−539000(P2009−539000A)
【公表日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−513457(P2009−513457)
【出願日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際出願番号】PCT/US2007/070103
【国際公開番号】WO2007/143504
【国際公開日】平成19年12月13日(2007.12.13)
【出願人】(507248837)ナルコ カンパニー (91)
【Fターム(参考)】