説明

製紙用嵩高剤

【課題】嵩高性に優れ、紙の強度の低下を抑えることができる嵩高剤、およびその嵩高剤を用いる嵩高紙の製造方法を提供する。
【解決手段】
アルキルグリコシド系化合物、およびアルキルグリコシド系化合物と炭素数8〜22の脂肪酸からなるエステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする製紙用嵩高剤である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製紙用嵩高剤に関するものである。さらに詳しくは、抄紙して得られるシートの嵩を向上させ、強度の高いシートが得られる嵩高剤に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球環境保護の面からパルプの使用量をできるだけ抑えるために、紙製品の坪量を下げる努力がなされており、また、資源の有効利用の観点から古紙の再利用が重要視されている。紙の軽量化のために、単に紙中のパルプ量を削減すると、紙が薄くなり不透明度の低下を招いてしまう。また、古紙を原料とする再生紙では、古紙のパルプ繊維がバージンパルプ繊維と比較して短繊維化しているため嵩高性が低下するという問題がある。
【0003】
これらの問題を解決するために、従来、種々の嵩高性を向上させる試みがなされてきた。特許文献1には架橋パルプを用いる方法が、特許文献2には合成繊維と混抄する方法が開示されているが、これらの方法ではパルプのリサイクルが困難となる。また、特許文献3にはパルプ繊維間に無機物を充填するという方法が開示されているが、紙の強度が低下してしまうという欠点があり、いずれも有効ではない。
【0004】
また、紙用の嵩高剤として、特許文献4には高級アルコールのアルキレンオキシド付加物を含有する紙用嵩高剤が、特許文献5には油脂または糖アルコール系非イオン界面活性剤を含有する紙用嵩高剤が、特許文献6には脂肪酸のアルキレンオキシド付加物を含有する紙用嵩高剤が、特許文献7にはカチオン性化合物、アミン、アミンの酸塩、両性化合物を含有する紙用嵩高剤が、特許文献8には多価アルコール脂肪酸エステルが開示されている。さらに、特許文献9には、脂肪族カルボン酸とポリアミンから得られる化合物にエピハロヒドリンを反応して得られる化合物を含有する紙用嵩高剤が開示されている。しかし、これらの化合物では嵩高性が満足できるレベルではなく、また紙の強度の低下が避けられない。
【0005】
【特許文献1】特開平4−185791号公報
【特許文献2】特開平3−269199号公報
【特許文献3】特開平3−124895号公報
【特許文献4】国際公開第98/03730号パンフレット
【特許文献5】特開平11−200283号公報
【特許文献6】特開平11−200284号公報
【特許文献7】特開平11−269799号公報
【特許文献8】特開平11−350380号公報
【特許文献9】特開2000−273792号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は嵩高性に優れ、かつ紙の強度の低下を抑えることができる嵩高剤、およびその嵩高剤を用いる嵩高紙の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般式(1)
【0008】
【化1】

【0009】
(式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基、アルケニル基またはR2−(OA)m−であり、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、R2は炭素数4〜22のアルキル基、またはアルケニル基であり、mは1〜20、nは1〜10である。)で表わされるアルキルグリコシド系化合物、および一般式(1)で表わされる化合物と炭素数8〜22の脂肪酸からなるエステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする製紙用嵩高剤に関する。
【0010】
また、本発明は、前記の製紙用嵩高剤を添加して得られる嵩高紙にも関する。
【0011】
さらに、本発明は、前記の製紙用嵩高剤を製紙工程中に添加して抄紙する嵩高紙の製造方法にも関する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の嵩高剤を用いることにより、嵩高性が良好で強度を高い水準に維持することができ、紙製品を製造する際に、パルプ原料の使用量を低減することができる。よって、紙力の低下を最低限に抑えつつ紙の厚みを増加させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
本発明は、一般式(1)
【0014】
【化2】

【0015】
(式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基、アルケニル基またはR2−(OA)m−であり、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、R2は炭素数4〜22のアルキル基、またはアルケニル基であり、mは1〜20、nは1〜10である。)で表わされるアルキルグリコシド系化合物、または一般式(1)で表わされる化合物と炭素数8〜22の脂肪酸からなるエステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする製紙用嵩高剤に関する。
【0016】
アルキルグリコシドの製造方法としては、例えば特開昭62−292789号公報、特開昭64−47796号公報、特開平8−269103号公報、特開平11−209391号公報、特開2001−278891号公報等に記載されているように高級アルコールと糖を酸性触媒下、加熱してエーテル化することにより得られる。該方法としては、メチルグリコシド等の炭素数の小さいアルキル基とエーテル化したグルコシドと高級アルコールのトランスグリコシル化反応による間接法とグルコースの還元末端に直接高級アルコールを反応させる直接法がある。
【0017】
本発明でアルキルグリコシドに用いられる糖類としては、単糖類、単糖誘導体のいずれかを用いることができる。単糖類の具体例としては、ヘキソース類として、グルコース、マンノース、アロース、アルトロース、ガラクトース、タロース、グロース、イドース、フルクトース、プシコース、タガトース、ソルボース等が挙げられる。ペントース類として、リボース、アラビノース、キシルロース、リキソース、リブロース等が挙げられる。単糖誘導体としては、デオキシ糖として、ラムノース、フコース等がある。ウロン糖として、グルクロン酸、ガラクチュロン酸、マンヌロン酸等が、またアミノ糖として、グルコサミン、コンドロサミン等が挙げられる。この中でも、グルコースが入手性と安価であることから好ましい。
【0018】
一般式(1)において、nは1〜10であり、1〜3であると好ましい。nが10より大きいと、親水性が強くなり嵩高効果が低下する傾向がある。
【0019】
一般式(1)において、R1は天然由来および合成由来の直鎖および/または分岐の炭素数4〜22のアルキル基、アルケニル基またはR2−(OA)m−である。R1における炭素数は4〜22であり、12〜18が好ましい。炭素数が4より小さいと、嵩高効果が不足する傾向がある。炭素数が22より大きいと、同様の効果が得られるが、安価に工業的に入手することが困難となる傾向がある。Aは炭素数2〜4のアルキレン基、R2は天然由来および合成由来の直鎖および/または分岐の炭素数4〜22のアルキル基、アルケニル基である。例えばアルキル基としては、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基、ペンタデシル基、ヘキサデシル基、ヘプタデシル基、オクタデシル基、ノナデシル基、エイコシル基、ヘンエイコシル基、ドコシル基、イソデシル基、2−プロピルヘプチル基、イソトリデシル基、2−エチルヘキシル基等が挙げられる。アルケニル基としては、ブテニル基、ペンテニル基、ヘキセニル基、ヘプテニル基、オクテニル基、ノネニル基、デセニル基、ヘキサデセニル基、ヘプタデセニル基、オクタデセニル基、ノナデセニル基、エイコセニル基、ヘンエイコセニル基、ドコセニル基等が挙げられる。これらの中で、R1、R2としては、嵩高効果と安価に入手できるという点から、炭素数は12〜18のものが好ましい。R2−(OA)m−におけるアルキレン(A)は、炭素数2〜4のものが用いられ、アルキレンオキシド(OA)の具体例としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシドがあげられる。
【0020】
また、R2−(OA)m−のmは、1〜20であり、好ましくは1〜5である。mが、20を超えると製品粘度が高くなり取り扱いが困難となる傾向がある。
【0021】
2−(OA)m−としては、例えば、ポリオキシエチレンアルキルエーテル基、ポリオキシエチレンアルケニルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、ポリオキシプロピレンアルケニルエーテル基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル基、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルケニルエーテル基等が挙げられる。このときアルキレンオキシドの付加形態としては、ブロック付加であってもランダム付加であってもよく、ブロック付加の場合、その順序も問わない。さらにブロック付加とランダム付加の組み合わせであってもよい。
【0022】
本発明は、一般式(1)で表わされるアルキルグリコシド系化合物のヒドロキシル基に、脂肪酸をエステル化させることによって得られるエステル化合物を用いることができる。エステル化における脂肪酸の炭素数は、8〜22のものが用いられ、12〜18のものが好ましい。炭素数が8より小さいと、エステル化による嵩高効果がそれほど得られない傾向がある。一方、炭素数が22より大きいと、同様の効果は得られるが、安価に工業的に入手することが困難となる傾向がある。
【0023】
炭素数8〜22の脂肪酸としては、直鎖構造または側鎖を有する構造の脂肪酸のいずれも用いることができ、飽和脂肪酸または不飽和脂肪酸のいずれも用いることができる。このような脂肪酸の具体例としては、カプリル酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、アラキジン酸、ベヘニン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸、エルカ酸、イソデカン酸、イソトリデカン酸、イソミリスチン酸、イソパルミチン酸、イソステアリン酸等を挙げることができ、これらの脂肪酸の1種または2種以上を組み合わせて用いることもできる。これらの中で、嵩高効果の点から、炭素数が18以上のものが好ましい。
【0024】
脂肪酸によるアルキレンポリグリコシド系化合物のエステル化は、アルキルグリコシド系化合物の繰り返し単位あたり、0.1〜3モルエステル化することが好ましく、0.2〜1モルがより好ましい。
【0025】
エステル化合物は、例えばグリコシド系化合物と脂肪酸類とを有機溶媒存在下に加水分解酵素を用いて反応させることにより製造することができ、特開昭61−268192号公報やWO89/01480、WO90/09451などで提案されている。
【0026】
本発明の製紙用嵩高剤を適用できるパルプ原料としては、広葉樹晒しクラフトパルプ(以下、LBKPと略す)、針葉樹晒しクラフトパルプ(以下、NBKPと略す)、機械パルプ、化学パルプ、古紙パルプのほか、バガス、竹などの非木材パルプなども挙げられる。
【0027】
本発明の嵩高剤は、製紙工程におけるいずれの工程においても添加することができる。たとえば、叩解前後、薬品などを添加する調成工程、または抄紙前などであり、古紙の場合でも、いずれの工程においても添加することができる。また、嵩高剤を添加すると同時に抄紙を行なって、嵩高紙を製造することもできる。
【0028】
本発明の製紙用嵩高剤の添加量にとくに制限はないが、パルプに対して0.01〜5重量%であることが好ましく、0.1〜2重量%であることがより好ましい。嵩高剤が、0.01重量%より少ないと、充分な嵩高性能が得られなくなり、5重量%を超えても添加量に見合った嵩高性能が得られなくなる。
【0029】
本発明の嵩高剤は、パルプに定着することによりパルプが疎水化されその状態で乾燥されるため、繊維同士の水素結合が起こりにくくなり嵩高になる。水素結合が少なくなるので当然嵩高剤無添加の紙より、強度が弱くなるが、本発明の嵩高剤であれば強度の低下が少ない。
【0030】
本発明の嵩高剤を用いて抄紙した嵩高紙は、原料パルプにもよるが嵩高剤無添加のものと比較して密度低下率が3%以上、強度が90%以上であることが好ましい。
【0031】
また、本発明においては、製紙工程において一般的に使用されるほかの薬剤を添加することができる。たとえば、サイズ剤、湿潤紙力増強剤、乾燥紙力増強剤、ピッチコントロール剤、スライムコントロール剤、歩留向上剤、消泡剤、填料、顔料、染料などをあげることができる。これらのほかの薬剤は、紙料調成工程において添加することができる。具体的には、サイズ剤としてはアルキルケテンダイマー(以下、AKDと略す)、乾燥紙力増強剤としては、カチオン化澱粉などがあげられる。
【実施例】
【0032】
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0033】
実施例1
<嵩高剤の調製>
攪拌機、窒素導入管、蒸留装置および温度計を備えた反応器にブチルアルコール370重量部、グルコース216重量部および触媒としてp−トルエンスルホン酸を加え、還流条件下で3時間反応を行なった。中和ろ過後、過剰のブチルアルコールを留去して嵩高剤を得た。
【0034】
<シートの製造>
フリーネス440mlのLBKPを叩解し、パルプスラリーを調製した。このパルプスラリーをスターラーで攪拌しながらAKDサイズ剤をパルプに対して0.2重量%添加し、5分攪拌した。その後、カチオン化澱粉をパルプに対して0.5重量%添加、5分攪拌し、最後に前記の嵩高剤をパルプに対して、それぞれ0.5重量%添加し、5分攪拌した。次に、TAPPIスタンダードシートマシン(熊谷理機工業(株)製)で坪量60g/m2に抄紙し、0.34MPaで5分間プレス後、ドラムドライヤーで105℃、5分間乾燥した。乾燥後、シートを20℃、湿度65%の条件で1日間調湿してシートを製造し、該シートの密度、裂断長を以下の方法で測定した。測定結果を表1に示す。
【0035】
<密度>
調湿されたシートの重量を測定することにより坪量(g/m2)を算出し、シックネスゲージで厚さ(μm)を測定し、下記計算式より密度(g/cm3)を求めた。なお密度が小さいほど嵩高性が良好である。密度(g/cm3)=坪量(g/m2)/厚さ(μm)
【0036】
<裂断長>
引張試験機で最大荷重(kgf)を測定し、下記計算式より裂断長(km)を求めた。裂断長(km)=最大荷重(kgf)×1000/(坪量(g/m2)×試験片幅(mm))
【0037】
実施例2
攪拌機、窒素導入管、蒸留装置および温度計を備えた反応器にイソデシルアルコール160重量部、ブチルグリコシド90重量部および触媒としてp−トルエンスルホン酸を加え、130℃に昇温して3時間反応を行なった。そのとき、反応容器内を1.3kPaの減圧にして副生成物であるブタノールを留去した。その後、水酸化ナトリウムを用いて中和を行ない、過剰のイソデシルアルコールを除去して嵩高剤を得た。
【0038】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0039】
実施例3〜6
実施例2におけるイソデシルアルコールの代わりに実施例3ではドデシルアルコールを、実施例4ではデシルアルコール1モルに対しプロピレンオキシドを5モル付加させたものを、実施例5ではオクタデシルアルコール1モルにエチレンオキシドを3モル付加させたものを、実施例6では2−プロピルヘプチルアルコール1モルに対してプロピレンオキシドを2モル、エチレンオキシドを3モルブロック付加させたものを使用して実施例2と同様の方法で嵩高剤をそれぞれ製造した。
【0040】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートをそれぞれ製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。各測定結果を表1に示す。
【0041】
実施例7
攪拌機、窒素導入管および温度計を備えた反応器にイソトリデシルグリコシド590重量部、ラウリン酸100重量部および触媒としてp−トルエンスルホン酸を加え、150℃に昇温して5時間反応を行なった。その後水酸化ナトリウムを用いて中和を行ない、嵩高剤を得た。
【0042】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0043】
実施例8
実施例7におけるイソトリデシルグリコシドの代わりにブチルグリコシドを、ラウリン酸の代わりにステアリン酸を使用した以外は実施例7と同様の方法で製造した。
【0044】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0045】
実施例9
攪拌機、窒素導入管および温度計を備えた反応器にポリオキシプロピレンドデシルグリコシド1060重量部、カプリル酸58重量部および触媒としてp−トルエンスルホン酸を加え、150℃に昇温して5時間反応を行なった。その後水酸化ナトリウムを用いて中和を行ない、嵩高剤を得た。
【0046】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0047】
実施例10
攪拌機、窒素導入管および温度計を備えた反応器にポリオキシアルキレン2−エチルヘキシルグリコシド945重量部、カプリン酸34重量部および触媒としてp−トルエンスルホン酸を加え、150℃に昇温して5時間反応を行なった。その後水酸化ナトリウムを用いて中和を行ない、嵩高剤を得た。
【0048】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0049】
実施例11
実施例1で製造した嵩高剤を50重量%および実施例7で製造した嵩高剤を50重量%加え、嵩高剤を得た。
【0050】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0051】
比較例1
実施例7におけるイソトリデシルグリコシドの代わりにグルコースを、ラウリン酸の代わりにステアリン酸を使用して実施例7と同様に製造した。
【0052】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0053】
比較例2
実施例7におけるイソトリデシルグリコシドの代わりにグルコースを使用して実施例7と同様に製造した。
【0054】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0055】
比較例3
攪拌機、窒素導入管、蒸留装置および温度計を備えた反応器にメチルアルコール160重量部、グルコース216重量部および触媒としてp−トルエンスルホン酸を加え、還流条件下で3時間反応を行なった。中和ろ過後、過剰のメチルアルコールを留去して嵩高剤を得た。
【0056】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0057】
比較例4
実施例2におけるイソデシルアルコールの代わりにブチルアルコール1モルに対しエチレンオキシドを24モル付加させたものを使用し、実施例2と同様に製造した。
【0058】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0059】
比較例5
実施例2におけるイソデシルアルコールの代わりにドデシルアルコールを使用し、実施例2と同様に製造した。
【0060】
次に、前記嵩高剤を用いた以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0061】
比較例6
嵩高剤を添加しなかった以外は、実施例1と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表1に示す。
【0062】
【表1】

【0063】
実施例12
フリーネス460mlのNBKPとフリーネス190mlの上質古紙の再生パルプとを重量比70/30重量%に配合したパルプスラリーを、スターラーで攪拌しながらAKDサイズ剤をパルプに対して0.1重量%添加し、5分攪拌した。その後、カチオン化澱粉をパルプに対して0.5重量%添加し、5分攪拌したのち、最後に実施例1で製造した嵩高剤をパルプに対して0.5重量%添加し、5分攪拌した。次に、TAPPIスタンダードシートマシンで坪量60g/m2に抄紙し、0.34MPaで5分間プレス後、ドラムドライヤーで105℃、5分間乾燥した。乾燥後、シートを20℃、65%の条件で1日間調湿してから、実施例1と同様の方法にて密度、裂断長を測定した。測定結果を表2に示す。
【0064】
実施例13〜22
実施例2〜11で製造した嵩高剤を用いた以外は、実施例12と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長をそれぞれ測定した。各測定結果を表2に示す。
比較例7〜11
比較例1〜6で製造した嵩高剤を用いた以外は、実施例12と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長をそれぞれ測定した。各測定結果を表2に示す。
【0065】
比較例12
嵩高剤を添加しなかった以外は、実施例12と同様の方法でシートを製造し、該シートの密度、裂断長を測定した。測定結果を表2に示す。
【0066】
【表2】

【0067】
実施例1〜22において本発明で得られた紙は、嵩高剤無添加のものより大きく嵩が向上しており、さらにアルキル置換されていない糖脂肪酸エステルよりも嵩高性が良好であることがわかる。さらに、嵩高性が向上した際における強度の低下もほとんど生じなかったことがわかる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

(式中、R1は炭素数4〜22のアルキル基、アルケニル基またはR2−(OA)m−であり、Aは炭素数2〜4のアルキレン基、R2は炭素数4〜22のアルキル基、またはアルケニル基であり、mは1〜20、nは1〜10である。)で表わされるアルキルグリコシド系化合物、および一般式(1)で表わされる化合物と炭素数8〜22の脂肪酸からなるエステル化合物の少なくとも1種を含有することを特徴とする製紙用嵩高剤。
【請求項2】
請求項1記載の製紙用嵩高剤を添加して得られる嵩高紙。
【請求項3】
請求項1記載の製紙用嵩高剤を製紙工程中に添加して抄紙する嵩高紙の製造方法。

【公開番号】特開2007−204906(P2007−204906A)
【公開日】平成19年8月16日(2007.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−28705(P2006−28705)
【出願日】平成18年2月6日(2006.2.6)
【出願人】(000003506)第一工業製薬株式会社 (491)
【Fターム(参考)】