説明

製菓用およびベーカリー用油脂組成物のための低トランス油脂

【課題】トランス脂肪酸含量が低く、飽和脂肪酸含量が十分に低い、そして原料コスト、工程コスト、収率などの点で許容されるコストで製造できる、製菓油脂、フィリングおよびクリーム、キャラメル、製菓センター、製菓コーティングおよびタブレットおよびベーカリー・ドウおよびベーカリー製品の製造に好適に使用される油脂組成物を提供する。
【解決手段】パーム油またはパーム油画分を含有し、(1)特定のグリセリド組成、および、(2)不飽和脂肪酸総含量55重量%未満である油脂を接触水添した第1油脂と非水添油脂である第2油脂からなるノンテンパリング油脂組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、製菓用油脂またはベーカリー用油脂としての使用に好適な油脂組成物の製造方法、かかる油脂組成物および、製菓およびフィリング油脂、油中水型エマルジョンおよびドウなどの様々な用途における油脂組成物の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
1.1.フィリング油脂およびクリーム油脂
製菓油脂の第1の重要な用途範囲はいわゆるフィリングおよびクリーム油脂である。フィリングおよびクリーム油脂は、例えば、プラリネまたは製菓バーのソフト・センターまたはビスケットまたはウエハースの中身または表面に用いられるクリームの製造に用いられる。クリームおよび/またはフィリング油脂としての使用に好適とするためには、油脂が特異的な特性、例えば、口の中でよく溶ける特性、良好なクリーミーさおよび安定な結晶構造などを有することが重要である。これらの特性をもたらすことができるいくつかのタイプの油脂が当該技術分野で知られている。
【0003】
フィリングおよび/またはクリーム油脂としての使用に好適な第一のクラスの油脂にはいわゆるラウリン油脂が含まれる。ラウリン油脂は、ココナッツ油またはパーム核油由来であり、ラウリン酸およびミリスチン酸含量が高い。かかるラウリン油脂を分別および/または水添反応にかけることにより、急勾配(steep)のSFC−プロフィールを有するラウリン油脂が得られる。即ち、かかるラウリン油脂は、温度の関数としてのその固体油脂含量(SFC)が室温で高く、体温ではSFCが低く、油脂が完全に融解する。この急な固体から液体への遷移により口の中でのクールな食感が導かれる。急勾配のSFC−プロフィールを示すだけでなく、ラウリン油脂は迅速な固化を示し、これはフィリングおよびクリームに用いる際の利点である。これらはよく実用されているが、ラウリン型の油脂は多くの欠点を有し、主な欠点は時間が経った際のラウリン酸の鹸化の危険性であり、これは好ましくない味をもたらす。ラウリン油脂の別の欠点はその高い飽和脂肪酸含量であり、80%を超えることがよくあるため、重要な栄養学的欠点であると考えられている。
【0004】
第2のクラスの低温溶解性のフィリングおよびクリーム油脂は、分別されたパーム油に基づく。パーム油はそれ自体はむしろ平らなSFC−曲線を示し、20℃でのSFCはたった25%であり、35℃ではSFCは6%である。パーム油を分別工程に供することにより、急勾配のSFC−プロフィールを示す製品が得られる。パーム油の分別は、より低い融点のトリグリセリドを含む液相とより高い融点のトリグリセリドを含む固相が得られるまで、一定の温度にパーム油を冷却することによって行う。SFC曲線のテーリング効果の減少が高融点部分を除くことによって達成され、高融点部分は主にトリパルミチンなどのトリ飽和トリグリセリドからなる。このテーリングに関する油脂は、食べたときに口の中でワックス様の食感をもたらす。次の段階でトリオレインまたは1−パルミチン−2−3−オレイントリグリセリドなどの主にトリ−またはジ−不飽和トリグリセリドを含む低融点部分を除くことにより、室温でのSFCが上昇する。パーム油の高融点および低融点部分を除いた後に残る画分を一般にPMF(パーム中融点画分)と称する。
【0005】
PMFに基づくフィリングおよびクリーム油脂のもっとも重要な利点はそれらの非−ラウリン特性、飽和脂肪酸含量がより低いこと、口溶けがフレッシュなことおよびPMFが非水添油脂であることである。しかしPMFの主な欠点は比較的長く面倒な分別工程を伴うことや、比較的収率が低いことであり、これによって製品が高価となってしまう:パーム油から開始すると、たった25−30%のPMFしか得られない。二回の分別を経て得られる硬化PMFの収率はさらに低い。さらなる欠点はPMFの固化速度が遅いことであり、これによって製菓工場において高い冷却能力を有する装置の使用が必要となる。これに加えて、PMFに基づく油脂には再結晶の危険があり、ある程度保存した際、特にテンパリングを行わない場合、最終製品の「粒状感」がもたらされる。
【0006】
第3のタイプのフィリングおよびクリーム油脂は、水添液体油または水添オレイン画分に基づく。このタイプの油脂組成物は良好なクリーミーさおよび良好な融解特性によって特徴づけられるが、先の2タイプの油脂組成物の特徴である口のなかでのクールな食感はあまり示さない。かかる油脂を含有する製品は迅速に固化し、安定な構造を示す。これに加え、水添液体油およびオレイン画分は、その原料が大量に入手でき、その加工がパーム油分別に比べて複雑でないため、先に述べた製品と比べて高価でない。トランス脂肪酸の存在が結晶化速度の改善という利点をもたらす。しかし水添液体油およびオレイン画分の大きな欠点は、それらのトランス脂肪酸(TFA)含量が高いことであり、これは重要になってきている健康面での問題がある。実際、トランス脂肪酸は不飽和脂肪酸である。しかしながら、これらは飽和脂肪酸(SFA)と比較して望ましくない同程度あるいはより悪い効果を有する。このため、油脂組成物のSFAレベルの制御に関心が払われるだけでなく、TFAおよびSFAレベルの和の制御にも関心が向けられる。急勾配のSFC−プロフィールを有する製品を得るために、水添反応はほとんどトランス-特異的触媒、例えば、S-毒化(poisoned)Ni-触媒の存在下で行われている。
【0007】
上記から、製菓油脂またはベーカリー油脂としての使用に好適な油脂組成物およびかかる油脂組成物の製造方法が求められていることが明らかであろう。好ましくは非-ラウリンであって、ワックス様でない良好な口溶けによって特徴づけられ、十分に速い結晶化速度を示し、興味深い栄養特性を有する油脂組成物が望まれており、このことはかかる組成物は飽和およびトランス脂肪酸の両方の含量が低くなければならないことを意味する。さらに、油脂組成物が許容できるコストで製造されるべきことも注目される。
【0008】
特許文献1から、以下の(i)と(ii)の混合物が知られている:(i)非ラウリン油脂、特に油脂混合物を含む硬化大豆油の湿式分別から得られる中融点画分;および(ii)液体、トランス−硬化高安定性油、特に油脂混合物を含む硬化大豆油の湿式分別から得られるオレイン画分。これに加えて、大豆油およびパーム油オレインの組み合わせがトランス-選択的水添反応に供される。湿式分別において、好ましくはアセトンを溶媒として用い、トランス−選択的水添にはイオウ化(sulphided)Ni−触媒が非常に好適であることが見いだされた。かかるトランス−水添組み合わせの中融点画分とオレイン画分の混合により、ワックス様感が最小限であり、N20>40%でN30<8%である急勾配の融解曲線および急勾配のSFC−プロフィールを示し、良好な口当たりを示すフィリング油脂が得られる。しかし、かかる油脂組成物のトランス脂肪酸含量は35〜45%であって高すぎる。
【0009】
1.2.コーティング油脂およびハード・センター(hard centre)の油脂
フィリングおよびクリームにおける製菓油脂の上記の用途に加えて、ハード・センター、製菓コーティングおよびタブレットにおけるより硬いタイプの製菓油脂が第2の重要な用途である。これらにはいわゆるハード・バターが含まれる。ハード・センターは硬い食感の製菓のセンターのことをいい、通常押出成形によって作られる。ハード・バターは急勾配のSFC−プロフィールによって特徴づけられる:これらは固体油脂含量が高く室温において硬い。体温においてそれらは融解し、それらの固体油脂含量は無視できるようになる。かかる製菓油脂のSFC−プロフィールは伝統的なチョコレート油脂であるカカオバターと類似である。
【0010】
ここ何年か、3つの主なクラスのハード・バターがコーティングまたはタブレットに使用するために開発されており、これらには以下が含まれる:(i)ラウリンカカオバター代替物、(ii)イリッペまたはシア油脂などのいわゆる野生油脂と組み合わせてパーム油画分を含有するカカオバター同等物(CBE)、および(iii)トランス−特異的水添液体油または液体画分に基づく非−ラウリンカカオバター置換物(NL−CBR)。これらの3つのクラスのカカオバター代替物は上記の3つのクラスのフィリング油脂に対応する。
【0011】
一般に、フィリングおよびクリームはタブレットやコーティングよりも軟らかい。フィリングおよびクリームがより軟らかい理由はこれらの製品がタブレットやコーティングと比較して油脂含量が高いことおよびそれらに含まれる油脂の軟らかい性質にある。即ち、室温でのSFCがより低い。フィリングおよびクリーム油脂そしてコーティング油脂の両方にとって、急勾配のSFC−プロフィールを有することが重要であり、これは、「ワックス感」の口当たりを避けるために、室温においてSFCが十分に高く、体温においてはSFCは低くなくてはならないことを意味する。これはフィリング/クリーム油脂およびいわゆるハード・バターの製造に用いられるアプローチが類似していることの説明となる。
【0012】
CBEに用いられるパーム画分は典型的には湿式分別により得られ、これによると乾式または洗浄剤分別(detergent fractionation)により得られるPMFと比べて品質のよいPMFが生じるが、湿式分別工程はより高価なものである。湿式分別工程では、アセトン、ヘキサンまたはその他の好適な溶媒が用いられる。湿式分別工程は、精度のよい分別を保証し、効率的に低融点トリグリセリド、例えばPOO(P=パルミチン酸;O=オレイン酸)および高融点トリグリセリド、例えば、PPPが除去される。湿式分別はまた、パーム中融点画分からのCBE製品において避けるべきジグリセリドを効率的に除く。ここでCBEは非−ラウリンCBRおよびラウリンカカオバター代替物と、それらがテンパリング型の油脂であり、天然のカカオバターと類似しているという点で異なることが重要である。テンパリングは、溶融チョコレート混合物が安定な結晶形態における油脂の結晶化を促進し最大にする目的で、温度制御工程に供され、特に、溶融チョコレート混合物が冷却と加熱を伴う工程に供される加工工程である。
【0013】
非ラウリンCBRの製造はW.Soonによって非特許文献1において記載されている。W.Soonによると、大豆油、ナタネ油およびヒマワリ油などの液体油は、高度に分別されたパームオレイン(ヨウ素価>68)などの液体画分と同様に水添工程に好適な原料である。しかしながらW.Soonによると、水添工程を行うには、トリ飽和トリグリセリド(SSS、ここでS=飽和)の生成を最小限にするように注意が必要である。というのはそれらは融点が高く、ワックス感をもたらすからである。これは適当な触媒を選択することによって達成される。従来からの触媒を用いる代わりに、W.Soonはイオウ毒化ニッケル(sulphur poisoned nickel)触媒の存在下で水添反応を行うことを推奨している。というのはこの触媒は、急勾配のSFC−プロフィールをもたらすトランス−異性体の形成を促進し、SSS異性体の形成を最少にするからである。パーム油に基づく非ラウリンCBRを製造するには、出発原料としてPPPおよびPPO/POP含量ができるだけ低いパームオレインを使用するのが推奨される。PPPはパーム油に天然に存在するトリ飽和脂肪酸である。PPOおよびPOPについては1つの脂肪酸の飽和がトリ飽和脂肪酸の構築に十分なものである。
【0014】
パームオレインの水添反応における従来からの非トランス特異的Ni−触媒に代わってのイオウ毒化Ni−触媒の使用のパームオレインに対する効果はH.Moriによって非特許文献2において記載されている。Moriによると、トランス特異的触媒を用いる場合、急勾配の融解曲線の製菓油脂が得られ、これは従来からの水添触媒を用いた場合には得られない。
【0015】
特許文献2は、カカオバター代替物の製造方法に関し、これによると、パーム中融点画分がニッケル、プラチナまたはパラジウム触媒の存在下での接触水添反応に供される。この水添反応の目的は、複数の不飽和脂肪酸を含むトリグリセリド(SUおよびU)をできるかぎり除去し、脂肪酸のポリ不飽和炭化水素鎖をモノ−不飽和炭化水素鎖に変換することにより、PMFとカカオバターの混合の可能性を拡大し、それによってヨウ素価を38−45まで、リノール酸含量を2%未満まで低下させ、融点が33−36℃の油脂組成物を得ることである。特許文献2に開示されているカカオバター代替物はチョコレート製品、例えば、タブレットまたはコーティングに使用することが意図されている。
【0016】
特許文献3から、少なくともチョコレートにおけるカカオバターの一部を代替するのに好適な植物性油脂製品の製造方法が知られている。この植物性油脂製品の特性はカカオバターの特性と類似している。特許文献3によると、この植物性油脂製品は、パーム油中融点画分(PMF)を画分の水添による硬化工程に供することにより得られる。分別および水添工程は、油脂が天然のカカオバターと混合されたときに軟化あるいは低融点化しないように、そしてそれによってカカオバターとの完全な適合性を示すように行われる。カカオバターとの完全な適合性とは、この工程によって得られる製品がテンパリング型の油脂であることを意味する。さらに、パーム中融点画分が特定の溶媒を用いる溶媒分別によって製造されるべきことが説明されている。
【0017】
1.3.キャラメル
製菓分野における油脂の第三の用途はそのキャラメルにおける使用である。キャラメルには高沸点およびソフト・キャラメルの両方が含まれると理解されたい。油脂はキャラメルに一定の堅さを与え、かみ応えを制御し、粘性を低下させる。キャラメルにおいて、従来からの水添液体油、例えば、水添大豆油または水添ナタネ油が用いられている。ラウリン油脂、例えば、水添パーム核または水添ココナッツ油を用いてもよい。トランス脂肪酸または飽和脂肪酸含量が非常に高いため、トランス脂肪酸含量が低いと同時に類似の融解プロフィールを示し、また、この用途のために許容できるコストで製造できる代替物が望まれている。
【0018】
1.4.マーガリンおよびベーカリー製品
製菓における油脂の用途に次いで、焙焼した食品の製造における油脂の使用が重要である。ベーカリー・ドウの製造に用いられる油脂は、大豆油、ナタネ油、ヒマワリ・シード油などの液体油の部分的水添によってしばしば得られるため、トランス脂肪酸含量が高いことがある。これらの油は大量に安価に入手でき、油の水添によって目的とするドウの食感に応じて異なるSFC−プロフィールを有する広範な油脂が製造できるため一般的である。水添によって製品に可塑性がもたらされるだけでなく、油の安定性が向上する。しかしこれらの液体油に関する問題は、水添工程において、原料中に多量に含まれる不飽和脂肪酸が容易にトランス脂肪酸に異性化することである。これらの脂肪酸は、例えば、結晶化速度の向上などのさらなる機能性を油脂組成物に与えるが、その健康に対する有害性により望ましくない。
【0019】
油脂はショートニングまたはマーガリンとしてベーカリー用途に用いられる。ショートニングは溶融油脂の混合物を注意深く冷却、可塑化およびテンパリングすることによって製造される機能性の可塑性固体油脂として定義できる。マーガリンは油中水型エマルジョンに関する。マーガリンおよびショートニングはベーカリーにおいて重要な機能を有する:それらは、クリーミーな食感およびリッチな風味、柔らかさおよび保湿および膨張のための均一な通気をもたらすことにより最終製品の品質に寄与する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0020】
【特許文献1】欧州特許出願公開第547651号明細書
【特許文献2】米国特許第4205095号明細書
【特許文献3】米国特許第3686240号明細書
【非特許文献】
【0021】
【非特許文献1】”Specialty fats versus Cocoa Butter” pp189−192
【非特許文献2】”Crystallisation and polymorphism of fats and fatty acids” pg430−431
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
2.発明の目的
本発明の目的は、非ラウリンであり、急勾配のSFC−プロフィールによって特徴づけられ、ワックス感のない良好な口溶けを示し、十分に結晶化速度が速く、興味深い栄養特性を示す、即ち、トランス脂肪酸含量が低く、飽和脂肪酸含量が十分に低い、そして原料コスト、工程コスト、収率などの点で許容されるコストで製造できる、製菓油脂に使用する油脂組成物を提供することである。
【0023】
本発明の別の目的は、高レベルのトランス脂肪酸または飽和脂肪酸を含む油脂に代替する、フィリングおよびクリームにおける使用ならびにキャラメルにおける使用に好適な油脂組成物を提供することである。
【0024】
本発明のさらなる目的は、製菓センター、製菓コーティングおよびタブレットにおける使用に好適な油脂組成物を提供することであり、該油脂組成物はトランス脂肪酸含量の高い油脂を完全にまたは部分的に置換するのに好適であり、ワックス感のない急勾配のSFC−プロフィールを維持するものであり、それによって製菓製品がテンパリング工程を要せずに製造されるものである。
【0025】
本発明のさらに別の目的は、トランス脂肪酸含量が低い油脂組成物を提供することであり、該油脂組成物はベーカリー・ドウおよびベーカリー製品の製造における使用に好適なものである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
3.発明の説明
本発明者らはこのたび、製菓油脂またはベーカリー油脂としての使用に好適な油脂組成物が、パーム油またはパーム油画分を含有する原料油脂組成物を接触水添反応に供することによって得られることを見いだした。
【0027】
原料油脂組成物は以下によって特徴づけられる:
(1)以下のグリセリド組成
−SU含量47〜75重量%
−SU+U含量<40重量%
−S含量1〜15重量%
−ジグリセリド含量3〜12重量%
ここで、グリセリド含量はジ−およびトリグリセリドの総量に対する重量%として表す、および、
(2)不飽和脂肪酸総含量55重量%未満、好ましくは50重量%未満、より好ましくは48重量%未満。
【0028】
原料油脂組成物は水添第1油脂が得られるまで接触水添に供し、水添第1油脂は、トランス脂肪酸(TFA)含量が15重量%未満、好ましくは10重量%未満、より好ましくは5重量%未満であり、飽和C18脂肪酸の増加が1重量%未満、好ましくは0.7重量%未満、より好ましくは0.4重量%未満であることによって特徴づけられる。水添第1油脂を油脂組成物中に含ませる。油脂組成物に含まれる第1油脂の量は広範に変動し、100重量%としてもよい。
【0029】
上記において、Sは炭化水素鎖長が炭素原子数14−24の飽和脂肪酸を意味し、Uは炭化水素鎖長が炭素原子数14−24の不飽和脂肪酸を意味する。
【0030】
原料油脂組成物としては好ましくは、パーム油、パーム油画分、またはパーム油に基づく油脂を多く含む、好ましくは>70重量%含む混合物を含有する油脂組成物が使用される。好適な原料組成物はパーム油の分別から得られる中融点画分を含む。
【0031】
製菓およびベーカリー油脂での使用に特に注目される原料油脂組成物は以下によって特徴づけられる:
(1)以下のトリグリセリド組成
−SU含量50−70重量%、好ましくは53−65重量%
−SU+U含量15−35重量%、好ましくは20−32重量%
−S含量1.5−12重量%、好ましくは2−10重量%、もっとも好ましくは2.5−7重量%、および、
(2)不飽和脂肪酸総含量<55重量%、好ましくは<50重量%、より好ましくは<48重量%。
【0032】
本発明においては、水添反応の過程においてトランス脂肪酸が形成する危険性を減らすために、出発原料中の不飽和脂肪酸含量をできるだけ低く維持することが好ましい。
【0033】
パーム油画分を使用する場合、この画分は通常パーム油よりも急勾配のSFC−曲線を示す。パーム油はそれ自体、分別の好適な原料である。しかし製菓またはベーカリー油脂における使用を考える場合、パーム油画分の結晶化速度は遅すぎることが見いだされた。本発明者は、パーム画分を上記の条件下で水添反応に供することにより、結晶化速度が向上し、より急勾配のSFCを示す製品が得られることを見いだした。このようにして上記特性を有する第1油脂が得られる。
【0034】
本発明の上記方法によって第1油脂を得るために用いられる原料油脂組成物は、従来から用いられている高品質PMFと比較して、高融点トリグリセリド、低融点トリグリセリドおよびジグリセリド含量が高いものである。実用的には、これは本発明の方法により、安価な原料油脂から製菓油脂またはベーカリー油脂としての使用に好適な第1油脂の製造が可能になることを意味する。したがって、製菓またはベーカリー油脂としての使用に好適な油脂を得るためには、高品質のパーム油またはパーム油中融点画分PMFを特異的に選択する必要はない。さらに、本発明の方法においては原料油脂組成物として、オレインおよびステアリン画分のきれいな分離の点で強く要求される、分別工程に供したパーム油画分を使用する必要がない。実際、本発明の方法においては、湿式分別の方が乾式分別より良好な分離能を有することが知られているにもかかわらず、湿式分別ではなく乾式分別により得られるパーム油画分を含む原料油脂組成物を使用するのが好ましい。これらすべての要因が、許容されるコストにて製菓およびベーカリー油脂における使用に望ましい特性を有する第1油脂を得ることに寄与している。パーム油画分だけでなく、原料油脂組成物は、請求項1の特徴部のグリセリド組成が満たされる限り、その他の起源の油脂または油脂画分を含んでいてもよい。
【0035】
上記の組成と特性を備えた油脂組成物が得られることはW.Soonの教示からすると驚くべきことである。この教示によると、多量のSU(例えば、POO)を所定量のSおよび多量のSU(例えば、POP/PPO)と組み合わせて含む油脂組成物は、これは本発明の方法に用いられる原料油脂組成物に該当するが、水添に際して容易に高融点トリグリセリドを生成し、ワックス感を示す製品をもたらす。本発明者はこのたび、W.Soonの教示に反して、上記のようなグリセリド組成(即ち、かなりの量のSUおよび多量のSU)を有する油脂組成物から開始した場合、所望の特性を備えた第1油脂が得られることを見いだした:これは急勾配のSFC−プロフィールよって特徴づけられ、ワックス感にならずに良好な口溶けを示し、十分に結晶化速度が速く、興味深い栄養特性、即ちトランス脂肪酸が低含量かつ飽和脂肪酸が十分に低含量、を示し、原料コスト、工程コスト、収率などの点から許容できるコストで製造できる、第1油脂が得られることを意味する。
【0036】
この第1油脂は原料油脂組成物を非常にわずかな水添に供することによって得られる。水添に際してトリ飽和トリグリセリドが形成する危険性は無視できるほどであることが見いだされた。この結果は、水添反応がトランス特異的または非−トランス特異的水添触媒のいずれの存在下でおこなわれたかにかかわらず見られた。
【0037】
本発明者はまた、水添反応の過程において、トランス脂肪酸の形成は許容できる限度内であり、無視できることも多いことを観察した。
【0038】
水添反応は好ましくは、水添前後の製品のヨウ素価の差異が10未満、好ましくは5未満の値のヨウ素価の製品が得られるまで継続する。
【0039】
本発明の水添反応に用いる触媒は当業者に知られているいずれの水添触媒でもよく、例えば、ニッケル、プラチナまたはパラジウムに基づく触媒が挙げられる。しかし好ましくは、水添反応の過程でできるだけトランス脂肪酸の形成を抑えるために、非トランス-特異的またはイオウ毒化されているNi−含有水添触媒を用いる。W.SoonおよびH.Moriの教示から予測されることに反して、水添に供される原料油脂組成物が上記のグリセリド組成を有するかぎり、非トランス特異的触媒の使用によって、ゆるやかなSFC−プロフィール、より高い融点またはより強いワックス感がもたらされることはない。
【0040】
さらに水添反応は160−225℃の温度で行うのが好ましい。というのはこの範囲では水添速度が許容できるものであり、トランス脂肪酸および飽和脂肪酸の形成の危険性が制限されるからである。
【0041】
本発明の方法によって得られる第1油脂は、急勾配のSFC−プロフィールによって特徴づけられる。実際、20℃および35℃におけるSFC値の差は、SFCをIUPAC法2.150aに従って測定した場合、35%より大きく、好ましくは40%より大きい。
【0042】
本発明の方法により得られる第1油脂はさらに、結晶化時間が15℃において15分未満であり、15℃で測定したSFCが50%に達することによって特徴づけられる。
【0043】
本発明の方法によって得られる第1油脂は、ノンテンパリング油脂である。本発明の第1油脂とカカオバターを特定の比で混合した場合、混合物は、軟化またはカカオバターと比較してSFC−プロフィールにおける減少を示すが、製菓用途における加工に、安定な結晶形態における油脂を得るためのテンパリングが必要とされないという利点を有する。この点で、本発明の方法によって得られる第1油脂は基本的に米国特許第3686240号に記載のものと異なる。
【0044】
所望の場合は、上記第1油脂に第2油脂を混合してもよい。その場合、1−100%の第1油脂を99−0%の第2油脂と混合すればよい。第2油脂は好ましくは、TFA−含量が10%未満、好ましくは5%未満である。第1油脂と第2油脂を含む油脂組成物のトランス脂肪酸含量および飽和脂肪酸含量を抑えるために、第2油脂は好ましくは非−水添油脂である。
【0045】
第2油脂は好ましくは30℃において7%未満、35℃において4%未満のSFCを有し、これにより、SFC−プロフィールのテーリングと製品のワックス感が最小限となる。第2油脂における使用に好適な油脂組成物の好ましい例には、パーム画分または液体油、例えば、ヒマワリ油、ナタネ油または大豆油が含まれる。もっとも好ましくは、第2油脂はIVが>40、好ましくは>45、もっとも好ましくは>50のパーム画分である。
【0046】
第2油脂としての使用に好適な油脂のその他の例には、原料油脂組成物を製造するために用いられる分別工程において除去されるパーム油または液体油の分別から回収されるオレイン画分が含まれる。実践的には、これはパーム油の分別から得られるステアリン画分は上記の本発明の方法により軽度に水添されていることを意味する。水添反応が完了した後、オレイン画分の一部が水添ステアリン画分に添加される。このようにして出発原料を含むパーム油から開始して、油脂組成物が良好な収率で得られ、かかる油脂組成物は良好な口溶けを示し、十分に速い結晶化速度を有し、トランス脂肪酸-含量が低い。
【0047】
本発明はさらに、本発明の方法によって得られる油脂組成物を含有する製菓製品または本発明の上記油脂組成物を含有する製菓製品に関する。
【0048】
特に、本発明はフィリング、クリームおよびキャラメルなどの製菓製品に関する。
【0049】
ベーカリー製品用のドウにおいては、油脂相はマーガリンまたはスプレッドの形態で添加されることが非常に多い。それゆえ、本発明はまた、20−85重量%の油脂を含有する油中水型エマルジョンにも関し、該油脂は所定量の本発明の方法によって得られる油脂組成物または所定量の上記油脂組成物を含む。特に注目されるのは、所定量の第1油脂および所定量の第2油脂を含む油脂組成物であり、ここで第2油脂は非−水添油、例えば液体油またはパーム画分であり、そのIVは>40、好ましくは>45、もっとも好ましくは>50である。
【0050】
本発明の別の態様は、ベーカリー用途における上記油中水型エマルジョンの使用に関し、特にドウの製造の段階における使用に関する。
【0051】
本発明の方法によって得られる油脂組成物または上記本発明の油脂組成物あるいは所定量の上記本発明の油中水型エマルジョンを含むベーカリー・ドウ製品も本発明の一部をなす。
【0052】
本発明のベーカリー・ドウを焙焼して得られるベーカリー製品、例えば、ビスケット、クッキーおよびケーキもさらに本発明の一部である。
【0053】
本発明の別の態様は、製菓コーティング油脂に関する。コーティング油脂はコーティングまたは製菓バーにおける使用に好適なハード・タイプの製菓油脂を含むと理解される。この用途に好適であるためには、油脂は良好な耐熱性を示さなくてはならない。即ち、室温で十分に固体油脂含量が高いとともに、体温で良好に溶けて食べたときの口の中でのワックス様の食感を避ける必要がある。かかるコーティング油脂は本発明の方法によって得られる油脂組成物を用いることによって製造できる。というのは、この方法から得られる油脂は、急勾配のSFC-曲線および良好な結晶化速度を示すからである。これら急勾配のSFC-曲線および良好な結晶化速度といった特徴を維持するためには、第1油脂に急勾配のSFC−プロフィールを有するさらなる油脂を混合する方がよい。通常、上記第2油脂はこの目的には使用されない。さらなる油脂は好ましくは20℃におけるSFCが少なくとも50%、好ましくは少なくとも60%である。第1油脂に混合されるさらなる油脂は水添、分別、エステル交換またはこれら手法の2以上の組み合わせによって得られる油脂とすればよい。かかるさらなる油脂の例は、水添液体油、水添および分別パームオレイン、パームステアリンまたはエステル交換パームステアリンであり、急勾配のSFC−プロフィールをもたらすために、さらなる分別工程に供される。さらなる油脂はしたがって、好ましくは非-ラウリン油脂である。
【0054】
製菓コーティング油脂は通常、本発明の油脂組成物または本発明の方法によって得られる油脂組成物を、意図される用途と最終製品に要求される特性に応じて、少なくとも15重量%、好ましくは少なくとも20重量%含む。意図される用途に応じて、製菓コーティング油脂は本発明の油脂組成物を100重量%含んでいてもよいし、85重量%未満、75重量%未満、あるいは60重量%未満含んでいてもよい。
【0055】
本発明のさらなる態様は、上記方法によって得られる油脂組成物または上記の本発明の油脂組成物を含むハード・センターのための製菓油脂に関する。ハード・センターは、特に、糖、油脂およびその他の可能性のある成分、例えば、割ったナッツまたは細かく挽いたナッツ、粉乳、粉末カカオ、カカオマスなどを含み、それらがすべて混合されて押出可能な堅さとされた製菓製品を含むと理解される。かかる製品に用いられる製菓油脂は十分に硬く、十分に速い結晶化を示すことが重要である。というのは、かかる製品は押出成形された後、冷却、切断され、エンローブされることが多いからである。
【0056】
本発明はハード・センターのための製菓油脂にも関し、ここで油脂は総脂肪酸含量に対してトランス脂肪酸含量が25重量%未満、好ましくは15重量%未満、もっとも好ましくは10重量%未満である。
【0057】
本発明をさらに以下の実施例および比較例において説明する。
【0058】
比較例A
パーム油を、(1)ヨウ素価35のステアリン画分および(2)ヨウ素価(IV)56のオレイン画分へと乾式分別した。オレイン画分収率は81%であった。オレイン画分をさらに第2のステアリン画分およびIV−値64.1の第2のオレイン画分へと乾式分別した。オレイン収率は元のパーム油に対して計算して49.9%であった。こうして得られたオレイン画分の固体油脂含量(SFC)、脂肪酸組成(FAC)およびトリグリセリド組成を表1に示す。
【0059】
急勾配のSFC−プロフィールを有する油脂組成物を得るために、オレインを次ぎに水添した。2種類の触媒を試験に用いた。則ち、非特異的およびトランス−特異的ニッケル触媒、それぞれプリカット(Pricat)9910およびプリカット9908(シネティクス(Synetix))である。水添反応を行った条件を表2に記載する。水添オレイン画分のSFCおよびFACを表1に示す。
【0060】
表1から理解されるように、トランス−特異的触媒(プリカット9908)を用いた水添では非−特異的触媒(プリカット9910)の存在下で水添されたオレイン画分と比較して急勾配のSFC−プロフィールを示すオレイン画分が生じ、これにより水添製品がフィリングまたはクリーム油脂用途における使用により好適なものとなる。この比較例の結果は、前述の文献におけるMoriによる観察と完全に一致する。
【0061】
【表1】

【0062】
【表2】

【実施例1】
【0063】
パーム油をIVが34.4の第1ステアリン画分とIVが55.4の第1オレイン画分へと乾式分別した。オレイン収率は84%であった。その後、オレイン画分をさらにIV44.9の第2ステアリン画分とIV−値63.1の第2オレイン画分へと乾式分別した。ステアリン画分のSFC、FACおよびトリグリセリド−含量を表3に要約する。当初のパーム油から計算して第2ステアリン画分の収率は36.1%である。第2ステアリン画分の結晶化速度を表5に示す。
【0064】
より急勾配のSFC−プロフィール、より良好な耐熱性およびより良好な結晶化速度を有する油脂を得るために、こうして得られたステアリン画分を比較例Aの触媒、即ち、トランス−特異的ニッケル触媒であるプリカット9908(サンプル3)および非-特異的触媒であるプリカット9910(サンプル4)の存在下で水添した。水添条件を表4に示し、水添製品のSFCおよびFACを表3に、固化速度を表5に示す。
【0065】
表3の結果から、トランス−特異的触媒を用いて水添されたサンプル3は、非−特異的触媒の存在下で水添されたサンプル4と比較して、より急勾配のSFC−プロフィールを示すわけではないことが理解される。この結果はMoriの教示および比較例Aからは予期されないものであった。表3から、非−特異的触媒の使用は、よりワックス感をもたらすために望ましくないテーリングの強い油脂組成物を与えるものではないようである。実際、分別後の油脂の特徴は、わずかな水添の後にはSFCおよび結晶化速度に関しては望ましい特性が得られ、望ましくない飽和脂肪酸の形成量および追加量のトリ飽和物の構築は抑制されるというものであった。2つの触媒のいずれかの存在下での水添により得られた油脂組成物はいずれも、類似の固化速度を示した。
【0066】
サンプル3および4はともにフィリングまたはクリームにおける使用に好適である。しかし、非特異的触媒により水添された油脂組成物は、TFA−含量が低く、TFAとSFAの和もより低いという利点を有する。
【0067】
【表3】

【0068】
【表4】

【0069】
【表5】

)80℃において完全に融解し、15℃の水浴において冷却後のSFC
【0070】
比較例B
パーム油をIV35の第1ステアリン画分とIV56の第1オレイン画分へと乾式分別した。第1オレイン画分の収率は81%であった。第1オレイン画分をさらにIV45.2の第2ステアリン画分と第2オレイン画分へと乾式分別した。この第2ステアリン画分はパーム中融点画分(PMF)に対応し、そのSFCおよびFACを表6、サンプル5にて示す。
【0071】
当初のパーム油に対するPMF収率は28.9%であった。表6から理解されるように、このPMFのSFC−プロフィールはサンプル3および4のSFC−プロフィールと比較してより急勾配のものであり、こうしてPMF画分は特にクリームまたはフィリング油脂における使用に特に好適なものとなる。しかしサンプル5の油脂は結晶化速度が非常に遅く(表7)、当初のパーム油に対するこの画分の収率は非常に低いため、より高価である。TFA−含量は無視できる程度であった。
【0072】
結晶化速度を向上させるため、30%の第1ステアリン画分を再び70%のPMF画分に添加した(サンプル6、表7)。この添加はSFC−プロフィールを急勾配でなくする効果を有した(表6、サンプル6参照)。サンプル6のSFCは比較例Aのサンプル1のSFCに匹敵し、ただし、非水添製品については35℃でいくぶん多くのテーリングが表れた。
【0073】
第1ステアリン画分とパーム中融点画分の混合により、当初のパーム油に対しての収率は41.3%に向上した。
【0074】
【表6】

【0075】
【表7】

)80℃において完全に融解し、15℃の水浴において冷却後のSFC
【実施例2】
【0076】
サンプル1、4および6の油脂組成物を用いて以下の混合物を作った:
混合物1:100%油脂サンプル1
混合物2:80%油脂サンプル4+20%IV63.1パームオレイン
混合物3:100%油脂サンプル6
混合物2において油脂サンプル4に添加されたパームオレインは、実施例1のサンプル4の製造において得られた第2オレインであった。混合物は表8に要約する特性を示した。
【0077】
【表8】

【0078】
混合物1−3を表9のレシピおよび以下の方法によってフィリングの製造に用いた。すべての乾燥成分を計量し、溶融油脂部分と混合し、「ドウ(dough)」を得た。「ドウ」の油脂含量は25%であった。0.4%のレシチンを最初から添加した。ドウをロール・リファイナーにかけて粒径を15−20ミクロンに減少させ、ホット・ジャケットを備えたミキサー中で残りの油脂とともに1時間ホモジナイズした。ミキサーからドウを取り出した後、40℃に冷却し、アルミナ・カップに注いだ。テンパリングは行わなかった。カップをすぐに12℃で30分冷却装置に入れ、さらに30分15℃で冷却した。カップを20℃で保存した。
【0079】
ドウの製造過程において、カップを満たした際の異なるフィリングの粘性および流動性は実質的に同じであることが観察された。すべてのフィリングは12℃で30分後には完全に固化した。
【0080】
2週間20℃で保存した後、こうして得られたフィリングを8名の味覚パネルによって評価した。様々な特性について味覚スコアを0から4とし、スコア0はその特性が無いことを示し、スコア4はその特性が強く存在することを示すこととした。結果を表10に要約する。
【0081】
フィリングについての同様の評価を20℃で4週間および8週間保存した後に行った。8週間後の評価において、味覚パネルにいずれのフィリングが好ましいか質問した。結果を表10に要約する。
【0082】
【表9】

【0083】
表10の結果の評価から以下のことが読み取れる:
−本発明による油脂組成物であり、トランス脂肪酸含量が低い混合物2の特徴は、トランス脂肪酸含量がより高い混合物1に匹敵するかより良好なものであった。混合物1および2の2週間後および4週間後のスコアはほぼ同じであった;8週間後、混合物2は口あたりとワックス感に関しては最良のスコアであった;8名の評価者うち7名はサンプル2を最良とし、1名の評価者はサンプル1と2を同等とした。この良好な結果は予期せぬものであった。
−実質的にトランス脂肪酸を含まないサンプル6の油脂組成物を含む混合物3は、より高いワックス感の感覚を与え、口溶けもよくなかった。
【0084】
【表10】

【0085】
上記評価をしたいずれの混合物もパーム油画分からなり、分別に供された後、水添されたかあるいは水添されていないものであった。当初のパーム油に対するこれら混合物の収率、TFA−含量およびTFA+SFAの和を表8に示す。
【0086】
表8の結果は、本発明による混合物2は良好な収率で得られ、TFA含量が非常に低く、TFA+SFAの含量が低いことを示す。混合物2では所望の特性を得るために水添反応においてトランス-特異的触媒の使用を必要としなかった。混合物2は、まずオレイン画分の除去、次いでそうして得られたステアリン画分の水添、オレイン画分と部分的に水添されたステアリン画分との部分的再結合により、興味深いSFC−プロフィールを有し、TFAおよびSFA含量が低く、収率のよりよい油脂組成物が得られることを確認する。混合物番号2は、高品質のクリームまたはフィリング油脂であり、結晶化速度および栄養特性が良好であり、合理的なコストで得ることができる。これは本発明の目的であった。
【0087】
混合物1は水添パームオレイン画分に基づく従来からのアプローチである。混合物1について所望の特性を得るためには、トランス特異的触媒の存在下で水添反応を行うことが必要であったが、これはTFAおよびTFA+SFA含量によくない影響を及ぼした。
【0088】
混合物3はパーム中融点画分から出発した「トランス脂肪酸無含有」油脂組成物を作る試みであった。水添はまったく行わなかった。出発製品は急勾配のSFC-曲線を示したが、その結晶化速度は非常に遅く、収率も低く、製品は高コストなものとなった。
【0089】
これらの欠点を克服するために、所定量のステアリン画分をパーム中融点画分に添加した。混合物1および2と比べ、結晶化速度は明らかに遅かったが、製造収率と結晶化速度は向上させることができた。さらに、最終製品がワックス感を示すという新たな問題が生じた。栄養的観点からはこの混合物は混合物2より良好であるとは考えられなかった。というのは、その飽和脂肪酸含量が高く、TFAとSFAの和は製品3および製品2とおよそ同じであるからである。
【実施例3】
【0090】
パーム油から出発して、パーム油を分別に供し、第1ステアリン画分と第1オレイン画分を除去することによりパーム中融点画分を製造した。パーム中融点画分(サンプル7)の特性を表11に示し、結晶化速度を表13に示す。パーム油に対する収率は48.2%であり、比較例2(サンプル5)のPMF収率より良好であった。
【0091】
より急勾配のSFC−プロフィールおよびよりよい結晶化速度を示す製品を得るためにサンプル7のPMFを非−特異的触媒およびトランス−特異的触媒を用いて軽度に水添した。水添条件を表12に示す。TFA含量をできるだけ低く維持するよう試みた。
【0092】
こうして得られた製品の特性を表11および13(サンプル8および9)に要約する。サンプル9は水添反応を非−特異的水添触媒を用いて行ったため、TFA−含量がより低かったが、水添サンプル8および9はほぼ同じSFCおよび結晶化速度を示した。これは実施例1で得られた観察を確認するものである:非−トランス特異的触媒の存在下での水添により得られた油脂組成物は、トランス−特異的触媒を用いて得られた製品と比較して、同程度に急勾配のSFC−プロフィールを示し、「テーリング」程度は大きくなかった。これは現在の技術からは予期されないことであった。
【0093】
2つの油脂組成物8および9をそのクリームにおける性能について評価した。クリームの作成のレシピを表14に示す。実施例2と同じ工程を採用した。サンプル8と9はクリームの製造の際に実質的に同じ挙動を示した。
【0094】
これらクリームをそれぞれ1週間および6週間保存して評価した。テストパネルに6週間保存したサンプルのいずれが好ましいかを質問した。結果を表15に示す。
【0095】
【表11】

【0096】
【表12】

【0097】
【表13】

)80℃において完全に融解し、15℃の水浴において冷却後のSFC
【0098】
【表14】

【0099】
表15の結果は混合物8と9からできたクリームは同等であることを示す。両方において、口あたりがよく、結晶化速度が良好でTFA−含量が低いクリームが得られた。トランス−特異的触媒を用いた製品はより良好でよりシャープな口溶け特性を示したわけではなかった。両方において、パーム油に対する製造収率は満足のできるものであり、これは本発明の目的であった。非−トランス選択的触媒を用いて作ったサンプル9の油脂組成物はさらなる利点を示し、即ちTFA−含量が非常に低く、この用途に重要であると判断されたその他の特性のいずれにおいても劣ることはなかった。
【0100】
【表15】

【実施例4】
【0101】
パーム油からの中融点画分を乾式分別により得、IVは44.1であった。この画分のその他の特性を表16に示す(製品番号10)。この画分を非−特異的触媒、型番プリカット9910を用いて水添した。こうして得られた製品はIVが42.4であり、トランス脂肪酸含量が3.03重量%であった(表16、製品番号11参照)。原料製品と水添製品の結晶化速度を表17に示す。
【0102】
【表16】

【0103】
【表17】

)80℃において完全に融解し、15℃の水浴において冷却後のSFC
【0104】
比較例C
ナタネ油を非−特異的触媒、型番プリカット9910を用いて、IVが70.5となるまで水添した。トランス脂肪酸含量は39.36重量%であった。その他の特性を表16に示す(製品番号12)。製品12は様々な用途、特にベーカリー用途に用いることができる標準的タイプの水添油脂である。
【実施例5】
【0105】
ドウ油脂を製品番号11と番号12のいずれかとIV67.4の二重分別パームオレイン(DFPO)とを混合することによって作成した。混合は類似のSFC−プロフィールを示す混合物が得られるように行った。これら混合物の組成は以下の通り:
−混合物4:54%製品11+46%DFPO
−混合物5:60%製品12+40%DFPO(比較混合物)
−これら混合物のSFC−値を表18に示す。
混合物4はトランス脂肪酸含量が2.4重量%であり、混合物5は24.1重量%であった。
【0106】
【表18−1】

【0107】
上記の油脂組成物に2種類の乳化剤を添加した:それぞれ0.3%の蒸留モノ−アシルグリセリドおよび0.3%のソルビタンモノオレアートである。パイロット・コンビネーター(combinator)を用いてショートニングを作成した。ドウは以下のレシピと方法にしたがって製造した:
−50部のショートニングと40部の糖を混合し、比重が約0.85kg/lとなるようホイップした。
−17部の全卵を添加し混合した
−100部の薄力粉を添加しドウが得られるまで混合した
−ドウを冷蔵庫に30分間入れて堅くした
−ドウを手で混連、シート化し、成形した(厚さ4mm、直径45mm)
−ビスケットを200℃で焼き(7.5−8分)30分間室温まで放冷した。
観察を以下の表に要約する:
【0108】
【表18−2】

【0109】
この試験の結論は、製品の取り扱いおよび最終結果の両方において、混合物番号4が混合物番号5より良好であるというものであった。混合物番号4は非常に良好なドウ油脂であり、比較混合物番号5よりもトランス脂肪酸含量が10分の1ほど少なかった。
【実施例6】
【0110】
パーム油からの中融点画分を乾式分別により得、IVは45.1であった。この画分のその他の特性を表19に示す(製品番号13)。この画分は非−特異的触媒、型番プリカット 9910を用いて水添した。こうして得られた製品はIVが38.8であり、トランス脂肪酸含量が8.22重量%であった(表19、製品番号14参照)。固化速度を表20に示す。
【0111】
比較例D
非−ラウリンカカオバター置換物(NL−CBR)をトランス−特異的触媒、型番プリカット9908を用いて水添した大豆油と水添した二重分別パームオレインを混合することによって製造した。
【0112】
こうして得られた製品はIVが70.7であり、トランス脂肪酸含量が71.61%であった。その他の特性は表19に示す(製品番号15)。
【0113】
【表19】

【0114】
【表20】

)80℃において完全に融解し、15℃の水浴において冷却後のSFC
【実施例7】
【0115】
製菓センターを以下の方法およびレシピにしたがって製造した。第1の混合物を50部の糖、15部の脱脂粉乳および15部のヘーゼルナッツ・ペーストを混合して均質な混合物とすることにより製造した。混合物をロール精製した後、混合物をヒート・ジャケットを備えたミキサーに40℃で入れた。所定量の油脂が45℃で溶融した。20部の油脂を混合物に添加し、その他の成分と1/2時間混合した。塊をミキサーから取り出し、約1.5cmの層の厚さとなるようにロールで広げた。この層を5℃の冷蔵庫で1/2時間冷却した。この層から4cmx4cmのセンターを切り出し、20℃で保存した。
【0116】
このセンターのレシピにおいて、2種類の油脂を試験した:製品14において、水添パーム中融点画分を用い、製品15においてはNL−CBR(本発明によるものではない)を用いた。センターを2週間20℃で保存し、実施例2に記載のように8名の味覚パネルによって評価した。結果を表21に示す。
【0117】
表21に要約した結果から、本発明による油脂番号14を含有する製品は、製品15よりも好ましく、製品15は、品質において劣り、トランス脂肪酸レベルが高いことが結論される。
【0118】
【表21】

【0119】
比較例E
非−ラウリンカカオバター置換物(NL−CBR)をトランス−特異的触媒、型番プリカット9908を用いて水添した大豆油および水添した二重分別パームオレインを混合することによって製造した。こうして得られた製品はIVが70.8であり、トランス脂肪酸含量が63.65重量%であった。その他の特性は表22に示す(製品番号16)。
【実施例8】
【0120】
非−ラウリンカカオバター置換物(NL−CBR)を80%の比較例Eに記載の油脂(製品番号16)と20%の製品番号14を混合することによって製造した。実際、20重量%の高トランスNL−CBRが、20%の本発明による油脂である低トランス油脂番号14と置換され、トランス脂肪酸含量の11.09重量%の減少をもたらした。こうして得られた製品が製品番号17である。
【0121】
製品番号16と17のSFC−プロフィールを表23に示す。この表は、これら油脂の混合がSFCにはほとんど影響を与えないことを示す:コーティングの耐熱性に要求される室温での高SFCは維持され、ワックス感になる危険性と連動している35℃でのSFCは上昇しなかった。
【0122】
【表22】

【0123】
【表23】

【実施例9】
【0124】
製菓コーティングを表24のレシピにしたがって油脂番号16および17を用いて製造した。この際以下の手法を用いた:第1に油脂を溶融し、1%のソルビタントリステアレートを添加した。油脂部分を除くすべての成分を混合してロール精製した。次いで成分をさらに残りの油脂とヒート・ジャケットを備えたミキサーで40℃でホモジナイズした。
【0125】
このコーティング混合物から、タブレットを45℃で成形し、5℃で30分、次いで15℃で30分冷却し、その後タブレットを非−成形とした。テンパリングは行わなかった。タブレットをインキュベーターで20℃で保存した。
【0126】
【表24】

【0127】
タブレットを2週間20℃で保存し、実施例2に記載のように8名の味覚パネルによって評価した。結果を表25に要約する。
【0128】
【表25】

【0129】
表25の結果から、当初のNL−CBRと、20%の油脂が本発明による低トランス油脂によって置換された油脂組成物との間で有意差は観察されなかったことが結論できる。
【実施例10】
【0130】
コーティング油脂を、実施例1において出発原料として用いた第2ステアリンをサンプル3の反応条件を採用する水添反応に供することによって作成した。しかし水添は、高度の水添が達成されるよう行った。H2−消費は2.25Lであり、水添製品のIVは42.1であった。水添製品のさらなる特性を表26に示す(製品番号18)。
【0131】
【表26】

【0132】
比較例F
同様に、コーティング油脂を、比較例Aのパームオレイン(表1)をサンプル1の反応条件を用いる水添反応に供することによって作成した。しかし、水添反応は、高度の水添が達成されるよう行った。H2−消費は12.6Lであり、得られた製品のIVは55.0であった。水添製品のさらなる特性を表26に示す(製品番号19)。
【実施例11】
【0133】
製品番号18および19により、表27に要約されるレシピを用いてコーティングを作成した。
【0134】
コーティングは実施例9に記載のように製造した。コーティングを用いて次いでドウ油脂混合物4による実施例5のビスケットを被覆した。コーティングはビスケットに50℃の温度で行った。コーティングされたビスケットを10分間10℃に冷却した。すべてのコーティングはこの冷却後完全に固化し、良好な光沢を示した。
【0135】
【表27】

【0136】
ビスケットを30分間15℃で放置し、1週間20℃で保存した。コーティングされたビスケットの1週間保存後の評価により、コーティングされたビスケットは外観がよく、食べたときの特性もよいことが確認された。油脂組成物番号18または19を用いてコーティングされたビスケットの間で嗜好の差は無かった。油脂番号18でつくったコーティングによって被覆された製品は、トランス脂肪酸含量が抑えられている製品番号19よりも利点があった。
【実施例12】
【0137】
この実施例では、パーム油の乾式分別により得られるパーム油中融点画分を用い、この中融点画分のIVは45.0であった。その他の特性は表28に示す(製品番号20)。この画分、製品番号20を水添反応に供し、IVが42.6の製品(製品番号21)を得た。水添製品のトランス脂肪酸含量は3.81重量%であった。
【0138】
【表28】

【実施例13】
【0139】
キャラメルを本発明の油脂番号21およびトランス脂肪酸含量が高い水添液体油である油脂番号12を用いて作製した。キャラメルのレシピは表29に記載した。
【0140】
【表29】

)水分量25.7%および糖含量56.3%
【0141】
キャラメルはすべての成分を混合し、混合物を20−25分間120℃の温度に加熱することによって製造した。温度120℃に達した後、混合物をすぐに55℃まで冷却し、キャラメルを成形し、さらに放冷した。
【0142】
こうして得られたキャンディーを評価パネルによって評価した。2つのサンプルの間で有意差は観察されなかった。すべてのサンプルはその形状をよく維持しており、油の滲出は観察されなかった。本発明の油脂番号21はこの用途によい性能を示し、参照油脂と同様に良好であった。しかし本発明の油脂番号21は、トランス脂肪酸含量がより低いという利点を有する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
パーム油またはパーム油画分を含有し以下の(1)および(2)の組成を有する原料油脂組成物を接触水添に供して得られる第1油脂、該第1油脂はトランス脂肪酸含量<15重量%であり、C18−0の増加が1重量%未満である、を含み、IUPAC法2.150aにしたがって測定した油脂組成物の20℃でのSFCと35℃でのSFCの差異が35%を超えることを特徴とする、ノンテンパリング製菓油脂用またはベーカリー油脂用として好適な、ノンテンパリング油脂組成物(SUS:SSU重量比が2未満のものを除く):
(1)以下のグリセリド組成
−SU含量47〜75重量%、
−SU+U含量<40重量%、
−S含量1〜15重量%、
−ジグリセリド含量3〜12重量%、
ここで、グリセリド含量はジ−およびトリグリセリドの総量に対する重量%として表し、Sは炭素原子数14−24の炭化水素鎖を有する飽和脂肪酸を意味し、Uは炭素原子数14−24の炭化水素鎖を有する不飽和脂肪酸を意味する、および、
(2)不飽和脂肪酸総含量55重量%未満。
【請求項2】
原料油脂組成物が以下のグリセリド組成:
1.SU含量50−70重量%、
2.SU+U含量15−35重量%、および、
3.S含量1.5−12重量%、
を有することを特徴とする、請求項1記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項3】
原料油脂組成物がパーム油の分別により得られるパーム油画分またはその画分を含有し、該分別が乾式分別または洗浄剤分別であることを特徴とする、請求項1または2記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項4】
該第1油脂が、水添の前後でのヨウ素価の差異が10未満であることを特徴とする、請求項1−3のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項5】
水添反応が非トランス特異的Ni−含有水添触媒の存在下で行われることを特徴とする、請求項1−4のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項6】
水添反応が160−225℃の温度範囲で行われることを特徴とする、請求項1−5のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項7】
油脂組成物の結晶化時間が15℃で15分未満であり、15℃で測定した油脂組成物のSFCが50%に達することを特徴とする、請求項1−6のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項8】
組成物が1−100重量%の第1油脂および99−0%の第2油脂を含み、該第2油脂のトランス脂肪酸含量が10重量%未満であることを特徴とする、請求項1−7のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項9】
第2油脂が非水添油脂であることを特徴とする、請求項1−8のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項10】
第2油脂のSFCが30℃で7%未満であり、35℃で4%未満であることを特徴とする、請求項1−9のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項11】
第2油脂がパーム画分または液体油であることを特徴とする、請求項1−10のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項12】
第2油脂が、ヨウ素価が40を超えるパーム画分であることを特徴とする、請求項1−11のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物。
【請求項13】
請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物の、製菓製品の製造のための使用。
【請求項14】
請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物を含有する製菓製品。
【請求項15】
製菓製品がフィリングおよびクリームからなる群から選択されることを特徴とする、請求項14記載の製菓製品。
【請求項16】
製菓製品がキャラメルであることを特徴とする、請求項14記載の製菓製品。
【請求項17】
20−85%の油脂を含み、該油脂が請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物を含有することを特徴とする、油中水型エマルジョン。
【請求項18】
ベーカリー用途における請求項17記載の油中水型エマルジョンの使用。
【請求項19】
請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物および/または請求項17の油中水型エマルジョンを含有するベーカリー・ドウ。
【請求項20】
請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物を含有するドウを焼くことによって得られるベーカリー製品。
【請求項21】
請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物を含有する製菓コーティング油脂。
【請求項22】
コーティング油脂が最少15重量%、最大100重量%の、請求項1−7のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物を含有することを特徴とする、請求項21記載の製菓コーティング油脂。
【請求項23】
該コーティング油脂が、20℃での固体油脂含量が少なくとも50%である所定量のさらなる油脂を含むことを特徴とする、請求項22記載の製菓コーティング油脂。
【請求項24】
該コーティング油脂が、水添、分別またはエステル変換、あるいはそれらの組み合わせによって得られる所定量のさらなる油脂を含み、このさらなる油脂が非ラウリン油脂であることを特徴とする、請求項23記載の製菓コーティング油脂。
【請求項25】
請求項21−24のいずれか1項記載の製菓コーティング油脂を含有する製菓コーティングまたはタブレット。
【請求項26】
請求項1−12のいずれか1項記載のノンテンパリング油脂組成物を含有する、ハード・センター製菓油脂。
【請求項27】
該油脂が、油脂に存在するグリセリド総量に対して25重量%未満である所定量のトランス脂肪酸を含有することを特徴とする、請求項26記載のハード・センター製菓油脂。
【請求項28】
請求項26または27記載の製菓油脂を含有する製菓のハード・センター。

【公開番号】特開2010−75202(P2010−75202A)
【公開日】平成22年4月8日(2010.4.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−272370(P2009−272370)
【出願日】平成21年11月30日(2009.11.30)
【分割の表示】特願2003−578509(P2003−578509)の分割
【原出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(000236768)不二製油株式会社 (386)
【Fターム(参考)】