説明

製鋼用二次精錬における真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置

【課題】構造が簡単で保守性に優れた真空脱ガス炉用排ガス処理装置を提供する。
【手段】排ガス処理装置は、第1〜第3の前段側エゼクター3,4,5、第1コンデンサ6、後段側エゼクター7,8及び第2コンデンサ9を有している。第3前段側エゼクター5にはノズル17,18から霧化水を噴出できる。前段側エゼクター3,4,5がブースターとして機能している脱ガス工程ではノズル17,18は停止しており、ブースターとして機能していない脱炭工程ではノズル17,18で第3前段側エゼクター5に霧化水を噴出する。脱炭工程で第3前段側エゼクター5と第1コンデンサ6とをベンチュリスクラバーとして機能させることにより、粉塵を効率よく除去できる。その結果、エゼクター7,8や第2コンデンサ9の内面に粉塵が付着堆積することを防止できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、製鋼用二次精錬で使用する真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
製鋼設備では二次精錬装置として真空脱ガス炉が使用されており、この真空脱ガス炉を使用して溶鋼中のガス状不純物を除去しているが、鋼を低炭素化する脱炭も真空脱ガス炉を使用して行われていることが多い。そして、真空脱ガス炉の排ガスは、一般に、ブースターとして機能する前段側のエゼクターとその下流に設けたコンデンサ(凝縮器)とを有する処理装置で浄化されているが、特に脱炭工程で大量の粉塵が発生してこれが後段側のエゼクターやコンデンサの内面に付着堆積しており、その除去作業に多大の手間がかかるという問題があった。
【0003】
そこで、真空脱ガス炉を操業しながら粉塵を除去する方策が考えられており、その例として特許文献1には、排ガス通路中に網目状フィルターを設けて、この網目状フィルターを水で洗浄して粉塵を洗い流すことが開示されている。他方、特許文献2には、真空脱ガス炉を使用していない状態でガス通路の内部を大気圧にして、その状態でエゼクターやコンデンサの内面を洗浄水で洗い流すことが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−311533号公報
【特許文献2】特許第4189132号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
網目状フィルターは濾過手段として様々な分野で使用されているが、真空脱ガス炉用の排ガス処理装置には適用し難く、従って特許文献1の発明は現実性が低いと言える。すなわち、網目状フィルターがその機能を発揮するにはある程度に目が詰まってなければならないが、真空脱ガス炉から吸引された排ガスは非常な高速で流れているため、ガス通路に網目状フィルターが介在しているとこれが排ガスの流れに対する巨大な抵抗として作用するのであり、従って、現実性に欠けると言える。
【0006】
他方、真空脱ガス炉は連続操業でなくバッチ処理として断続的に操業するため、ガス通路を大気圧にして洗浄水を流すという特許文献2の方法は実用性は高い。しかし、粉塵はコンデンサ等の内面にこびり付いているため、単に洗浄水を流した程度では除去できない場合が多く、従って特許文献2の発明では粉塵除去機能が完全とは言い難い。
【0007】
また、脱炭工程では1μm程度かそれより小さい微細な粉塵が大量に発生するが、従来は、これら微細な粉塵を高効率で補集除去できていなかったのが実情である。
【0008】
本願発明は、このような現状を改善すべく成されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本願発明は、製鋼用二次精錬を行う真空脱ガス工程において不純物及び排ガスを吸引して脱ガスと脱炭とを行う装置に関する。
【0010】
そして、請求項1の発明は、高真空を得るためのブースターとして使用される蒸気駆動式の前段側エゼクターと、前記前段側エゼクターから放出された蒸気および排ガスを凝縮させる第1コンデンサーとを有しており、前記第1コンデンサーの下流側に、後段側エゼクター及び第2コンデンサーとの対を一対または複数対配置しており、真空脱ガス工程では前記前段側エゼクターを高能力で駆動し、脱炭工程では前記前段側エゼクターを駆動しないかまたは能力を低下させて駆動するようになっている、という構成において、前記前段側エゼクターに、少なくとも脱炭工程においてベンチュリースクラバーとして機能させるための注水手段が設けられている。
【0011】
請求項2の発明に係る装置は、請求項1において、前記前段側エゼクターは複数個あって直列に接続されており、これら複数の前段側エゼクターのうち最も下流に位置した前段側エゼクターに、前記注水手段として水を高圧で噴射するノズルが設けられている。
【0012】
請求項3の発明に係る装置は請求項2の発明を具体化したものであり、この発明では、前記最も下流に位置した前段側エゼクターのスロート部と出口寄り部位とに前記ノズルを設けていて、前記前段側エゼクターを駆動しない場合は両方のノズルから水が高圧で噴射され、前記前段側エゼクターが高能力又は低能力で駆動される場合には出口寄り部位のノズルから水が高圧で噴射される。
【0013】
請求項4の発明に係る装置は、請求項1〜3において、前記前段側エゼクターには、当該前段側エゼクターの内面を乾燥させるための加温手段が外周の略全体にわたって設けられている。更に請求項5の発明は請求項4の発明を具体化したもので、この発明では、前記加温手段は、前記前段側エゼクターを外側から囲うジャケットを有しており、前記前段側エゼクターとジャケットとの間の空間に蒸気を吹き込むことで加温手段が構成されている。
【発明の効果】
【0014】
さて、脱炭工程では脱ガス工程に比べて真空脱ガス炉の真空度は低く、このため、前段側エゼクターは駆動せずに後段側エゼクターのみで排ガスを吸引していることが一般的である。従って、前段側エゼクターのスロート部を通る排ガスの流速は、脱ガス工程では音速か亜音速程度の流速であるが、脱炭工程では例えば60〜90m/秒程度の流速になっている。そして、この程度の流速で前段側エゼクターの内部に注水すると水を排ガスの膨張作用等によって微細化することができ、この微細な水滴に粉塵が付着することにより、第1コンデンサで大部分の粉塵を補集除去することができる。このため、1μm程度かそれより小さい微細粉塵も効率よく捕集除去できる。
【0015】
つまり、前段側エゼクターと第1コンデンサとが湿式集塵機であるベンチュリスクラバーと同じ機能を発揮するのであり、これにより、後段側エゼクターや第2コンデンサに流入する粉塵の量を著しく抑制でき、その結果、粉塵の除去に要する手間と費用を著しく抑制できるのである。更に述べると、本願発明は真空脱ガス炉を運転しながら脱炭工程で粉塵を効果的に除去できるのであり、しかも、前段側エゼクターに注水手段を付加する簡単な構造であるためコスト面でも優れている。
【0016】
特許文献1,2に開示されているように、前段側エゼクターはブースターとしての機能を高めるため複数個を直列接続した多段式になっていることが殆どである。そして、請求項1の発明ではこれら複数のユニットのうちの任意のユニットに注水手段を設けることが可能であるが、請求項2のように最も下流側の前段側エゼクターに注水手段を設けると、粉塵が付着した水滴はスロート部を経ずにそのまま第1コンデンサに流入するため、流れ抵抗が高くなることを防止して脱炭工程を支障なく行うことができる。
【0017】
既述のように、真空脱ガス炉で発生した排ガスには1μm程度かそれより小さい微細粉塵が相当割合で含まれている。他方、排ガス中の粉塵を水滴に効率的に付着させるには、水滴の大きさは粉塵の大きさ(粒径)の100〜150倍程度が好適である。従って、1μm程度の粉塵を効率良く集塵するには水を100〜150μm程度に微細化するの必要がある。
【0018】
そして、請求項2では、水はノズルで霧化した状態で前段側エゼクターの内部に噴射されてこれが排ガスの膨張作用で更に微細化されるが、このとき、水滴は脱炭工程での排ガスの流速とマッチングして100〜150μm程度かそれより小さい粒径に微細化される割合が高く、このため1μm程度かそれより小さい微細粉塵もより一層効率的に補集できる。このように1μm程度かそれより小さい微細粉塵を高効率で補集除去できることは本願発明の大きな特徴である。
【0019】
注水手段の位置は特に限定はないが、請求項3のようにエゼクターのスロート部と出口寄り部位(拡大部)とにノズルを設けると、スロート部を通過した排ガスは大きく膨張するため水の微細化効果も高い一方、出口寄り部位では排ガスは膨張が進行しているため水の微細化効果は低いと推測され、従って、様々な大きさの粉塵に対応できて好適であると言える。
【0020】
また、脱ガス工程では排ガスはエゼクターのスロート部で非常な高速になるので、脱ガス工程でスロート部に注水することは不可能であるが、エゼクターの出口寄り部位では流速は低くなっているため脱ガス工程においても注水することは可能であり、このため、請求項3の発明によると、脱ガス工程において前段側エゼクターをベンチュリスクラバーとして機能させることも可能になる。これにより、脱ガス工程で発生した微細粉塵を的確に補集除去することができる。
【0021】
また、請求項3では、前段側エゼクターをブースターとして機能させていない状態でスロート部と出口寄り部位との両方から注水されるため、脱炭工程において微細粉塵と水滴とを結合させる機会を高めることができ、その結果、粉塵の補集機能を向上できる。特に、100μm程度かそれ低下の微細水滴を大量に生成できるため、1μm程度かそれより小さい微細粉塵の補集除去に高い効果を発揮する。
【0022】
なお、前段側エゼクタを低能力で駆動させるとスロート部の流速を90m程度以下にすることができるが、この場合は、スロート部からも水を噴射させ得る。従って、本願発明では、前段側エゼクタを駆動しつつ、スロート部と出口寄り部位との両方から水を噴射させることも可能である。
【0023】
さて、真空脱ガス炉用の前段側エゼクターは高圧蒸気を噴出させることで駆動されてブースターとして機能するが、蒸気は前段側エゼクターに吹き込まれると急激に膨張(断熱膨張)して減圧され、その結果、飽和蒸気圧が下がって蒸気が水滴化し、この水滴が前段側エゼクターの内面に付着する現象が生じる。従って、蒸気を使用した前段側エゼクターは本質的にウェット環境になっており、このため、脱ガス工程で前段側エゼクター(ブースター)の内面が濡れてこれに粉塵が付着堆積する現象が生じており、この粉塵を除去することに手間がかかっていた。
【0024】
これに対して請求項4のように前段側エゼクターに加温手段を設けると、内面が水で濡れることを防止又は著しく抑制できるため、前段側エゼクターの内面に粉塵が付着することを防止又は著しく抑制できる。従って請求項4の発明によると、脱ガス工程で発生した粉塵を前段側エゼクター(ブースター)に付着させずに第1コンデンサで効率的に補集することができるのであり、その結果、脱ガスに起因して粉塵が付着することも脱炭に起因して粉塵が付着することも、防止または著しく抑制できる。
【0025】
加温手段としては、例えば前段側エゼクターの外面に電熱式や蒸気式のヒータを巻き付けるといったことも可能であるが、請求項5のように前段側エゼクターとジャケットとの間に蒸気を吹き込む方式を採用すると、単純な構造でエゼクターの全体を的確に加温できるため高い加温効果を発揮できて好適である。また、製鋼所には蒸気はふんだんに存在するため、コスト面でも有利である。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本願発明の実施形態を示すブロック図である。
【図2】(A)は第3前段側エゼクターの部分拡大図、(B)は(A)のB−B視断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
次に、本願発明の実施形態を図面に基づいて説明する。おおまかに述べると、真空脱ガス炉1で発生した排ガスは、ガス通路2を通りつつ、第1〜第3の前段側エゼクター(ブースター)3,4,5、第1コンデンサ6、並列配置された2基の後段側エゼクター7,8、第2コンデンサ9の順で通過し、そして浄化されたガスは大気に放出される。
【0028】
本実施形態では、第3前段側エゼクター5と第1コンデンサ6とを集塵用ベンチュリとして機能させることができる。敢えて述べるまでもないが、各前段側エゼクター3,4,5と後段側エゼクター7,8とはそれぞれ長手中途部がくびれた鼓形になっている。以下、設備の全体を詳述する。
【0029】
(1).配置・構造の説明
各前段側エゼクター3,4,5はヘッダー3a,4a,5aを有しており、第1前段側エゼクター3と第2前段側エゼクター4とは直線状に並んでいる。他方、第2前段側エゼクター4は第3前段側エゼクター5に対して横向きの姿勢で接続されている。もとより、これらユニットの配置態様は現場の状態によって任意に設定できる。
【0030】
各前段側エゼクター3,4,5のヘッダー3a,4a,5aには高圧水蒸気を噴出する噴気口13を設けており、蒸気は各前段側エゼクター3,4,5の軸線方向に放出される。敢えて述べるまでもないが、噴気口13には蒸気管14が接続されている(この点は以下においても同じである。)。
【0031】
各前段側エゼクター3,4,5のヘッダー3a,4a,5aには、運転停止時に洗浄水を流すための注水口15も設けている。注水口15には水管16が接続されている(この点は以下においても同じである。)。なお、注水口15は実際には多数の小穴で構成されており、ヘッダー3a,4a,5aの外周面に飛び飛びで多数設けている(この点は以下においても同じである。)。
【0032】
第3前段側エゼクター5のうちスロート部5bと出口寄り部位(拡大部)5cとには、集塵用水を霧化して内部に放出するため、注水手段としての第1及び第2のノズル17,18が設けられている。両ノズル17,18に接続された水管16には加圧ポンプ19を設けている。また、両ノズル17,18の噴霧量はそれぞれ流量制御弁20で個別に制御することができる。なお、ノズルはスロート部5bのみ又は出口寄り部位5cのみのいずれかに設けても良いが、少なくともスロート部5bに設けるのが好ましい。
【0033】
第3前段側エゼクター5の終端は第1コンデンサ6の下部にガス通路2を介して接続されている(直結してもよい。)。周知のとおり、第1コンデンサ6の内部には多数の細管が配置されており、その内部に冷却水を通すことで排ガスや蒸気の凝縮が行われる。第1コンデンサ6にも上下2段の注水口15′を設けている。真空脱ガス炉1が稼働している状態(すなわち脱ガス工程又は脱炭工程)で注水口15′から散水することも可能である。
【0034】
後段側エゼクター7,8のヘッダー7a,8aにも噴気口13と注水口15とを設けており、また、第1コンデンサ6と後段側エゼクター7,8との間には逆止弁21を設けている。第2コンデンサ9も第1コンデンサ6と同じ構造であり、両コンデンサ6,9の下端は管路でタンク22に接続されている。なお、後段側エゼクターと第2コンデンサとの対を複数設けることも可能である。1基の後段側エゼクターと1基の第2コンデンサ9とで対を構成することも可能である。
【0035】
既述のとおり、第3前段側エゼクター5にノズル17,18から霧化水を噴出させ得るようになっている。この噴霧構造の具体例を図2に示している。本実施形態では、第3前段側エゼクター5のスロート部5bと出口寄り部位5cに噴霧口23を円周方向に飛び飛びで設け、各噴霧口23にはノズル17,18を接続している。本実施形態では、スロート部5bにはノズル17の列を4列設けて出口寄り部位5cにはノズル18の列を2列設けており、2列のノズル17,18の群が1本の環状パイプ24に接続されている(もとより、配管構造は任意に変更できる。)。
【0036】
ノズル17,18の列数や1列の個数は第3前段側エゼクター5の大きさや流量等に応じて任意に設定できる。例えば、噴霧口17,18をスロート部5bと出口寄り部位5cとに1列ずつ設けるなどしても良い。また、スロート部5bのみにノズル17を設けることも可能である。更に、ノズル17を螺旋状に並べて配置することも可能である。
【0037】
(2).排ガスの処理プロセス
脱ガス工程では第1〜第3の前段側エゼクター3,4,5が蒸気で駆動されており、これによって真空脱ガス炉1は高真空に維持される。なお、前段側エゼクター(ブースター)は2段式でもよいし4段式以上であってもよい。脱ガス工程では第3前段側エゼクター5へは注水していない(第1コンデンサ6には注水口15′から散水することも可能である。)。従って、第1コンデンサ6には排ガスと駆動済蒸気とが流入し、この排ガスと蒸気との混合気体が第1コンデンサ6で凝縮されることにより、溶鋼から抽出されたガス状不純物がある程度除去されると共に、大量の蒸気が凝縮滴下して排ガスに含まれる蒸気量が低下する。
【0038】
第1コンデンサ6での凝縮作用によって排ガスに含まれている蒸気量が低下することにより、後段側エゼクター7,8に流入する蒸気の量は著しく低下しており、このため後段側エゼクター7,8を軽快に駆動することができる。
【0039】
脱炭工程では、一般に前段側エゼクター3〜5には蒸気は吹き込まれておらず、従って前段側エゼクター3〜5は高真空発生用減圧ブースターとしては機能していない。そして、従来は、真空脱ガス炉1で発生した粉塵は乾燥状態で第1コンデンサ6に流入しており、このため第1コンデンサ6による粉塵の補集機能は低く、相当量の粉塵が後段側エゼクター7,8及び第2コンデンサ9に流入していた。このため、後段側エゼクター7,8及び第2コンデンサ9の内面に粉塵が付着堆積していた。
【0040】
これに対して本実施形態では、脱炭工程では、第3前段側エゼクター5のノズル17,18から水を噴霧することにより、第3前段側エゼクター5と第1コンデンサ6とをベンチュリスクラバーとして機能させている。
【0041】
脱炭工程では真空脱ガス炉1の真空度は高くないため、第3前段側エゼクター5のスロート部5bを通過する排ガスの流速は60〜90m/秒になっている。そして、この程度の流速の排ガスにノズル17から噴霧すると、水滴は排ガスの膨張作用によって例えば100〜150μm程度(あるいはそれ以下)に微細化する。従って、粉塵が1μm程度かそれより小さくても、これら微細粉塵をあまさず微細水滴に付着させることができる。そして、微細粉塵が付着した微細水滴は第1コンデンサ6に流入し、第1コンデンサ6の内部で凝縮して滴下する。従って、脱炭工程で大量に発生した微細粉塵の大部分を第1コンデンサ6で補集除去することができる。
【0042】
第1コンデンサ6から放出された排ガスは後段側エゼクター7,8を介して第2コンデンサに流入するが、粉塵は第1コンデンサ6で大部分が除去されているため、後段側エゼクター7,8や第2コンデンサ9の内面に粉塵が堆積することを防止または著しく抑制できる。前段側エゼクター3,4,5をブースターとして機能させつつ出口寄り部位のノズル18から注水したり、前段側エゼクター3,4,5を低能力で駆動しつつ両方のノズル17,18から注水することも可能である。更に、前段側エゼクター3,4,5を駆動しているときにはどの能力に関係なくノズル17,18は使用しないことも可能である。
【0043】
(3).前段側エゼクターの加温
前段側エゼクター3,4,5には、加温手段の一例として、一点鎖線で示すようにジャケット(カバー)25を設けることが可能である(図1において第3前段側エゼクター5のジャケットは省略している。)。ジャケット25は各前段側エゼクター3,4,5の外周面の全体(或いは略全体)を覆っており、前段側エゼクター3,4,5の外周面とジャケット25との間は保温空間になっている。そして、各前段側エゼクター3,4,5ごとに蒸気入り口26と蒸気出口27とを設けて、蒸気を保温空間に吹き込むことで各前段側エゼクター3,4,5を保温できる。
【0044】
脱ガス工程で各前段側エゼクター3,4,5を蒸気で駆動していると、蒸気が各前段側エゼクター3,4,5の内部で減圧膨張して蒸気が水滴化し、この水滴が各前段側エゼクター3,4,5の内面に付着し、水滴に粉塵が付着することで、前段側エゼクター3,4,5の内面に粉塵がこびり付く現象が見られる。
【0045】
これに対して本実施形態のように各前段側エゼクター3,4,5を保温すると、前段側エゼクター3,4,5の内面を乾燥状態かそれに近い状態に保持できるため、脱ガス工程において前段側エゼクター3,4,5の内面に粉塵が付着することを防止または著しく抑制できるのである。
【0046】
ジャケット25の構造は様々に具体化できる。例えばジャケット25と前段側エゼクター3,4,5との間に螺旋状の仕切り板を介在させることにより、螺旋状の保温空間を形成することが可能である。仕切り板(或いはスペーサ)を前段側エゼクター3,4,5の軸線方向に長く延びる態様とすることも可能である。
【0047】
他の加温手段として、蒸気が通るパイプを前段側エゼクター3,4,5の外面に巻き付けて溶接したり、電熱式等のヒータを前段側エゼクター3,4,5の外面に巻き付けたりすることも可能である。加温媒体としては、蒸気に代えて熱風を使用することも可能である。
【0048】
図1に二点鎖線で示すように、ガス通路2のうち第1前段側エゼクター3の上流側の部分と第3前段側エゼクター5とをくびれ部がないバイパスダクト2′で接続し、脱炭工程ではバイパスダクト2′を使用して脱ガス工程では第1及び第2の前段側エゼクター3,4を使用する、というように切り換えることも可能である。
【産業上の利用可能性】
【0049】
本願発明は、製鋼二次精錬用真空脱ガス炉から放出された不純物・排ガスの処理に適用して有用性を発揮する。従って、産業上利用できる。
【符号の説明】
【0050】
1 真空脱ガス炉
2 ガス通路
3 第1前段側エゼクター(第1ブースター)
4 第2前段側エゼクター(第2ブースター)
5 第3前段側エゼクター(第3ブースター)
6 第1コンデンサ
7,8 後段側エゼクター
9 第2コンデンサ
13 噴気口
14 蒸気管
15 注水口
17,18 ノズル
19 加圧ポンプ
25 加温手段の一例としてのジャケット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
製鋼用二次精錬を行う真空脱ガス工程において不純物及び排ガスを吸引して脱ガスと脱炭とを行う装置であって、
高真空を得るためのブースターとして使用される蒸気駆動式の前段側エゼクターと、前記前段側エゼクターから放出された蒸気および排ガスを凝縮させる第1コンデンサーとを有しており、前記第1コンデンサーの下流側に、後段側エゼクター及び第2コンデンサーとの対を一対または複数対配置しており、真空脱ガス工程では前記前段側エゼクターを高能力で駆動し、脱炭工程では前記前段側エゼクターを駆動しないかまたは能力を低下させて駆動するようになっている、という構成において、
前記前段側エゼクターに、少なくとも脱炭工程においてベンチュリースクラバーとして機能させるための注水手段が設けられている、
製鋼用二次精錬における真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置。
【請求項2】
前記前段側エゼクターは複数個あって直列に接続されており、これら複数の前段側エゼクターのうち最も下流に位置した前段側エゼクターに、前記注水手段として水を高圧で噴射するノズルが設けられている、
請求項1に記載した製鋼用二次精錬における真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置。
【請求項3】
前記最も下流に位置した前段側エゼクターのスロート部と出口寄り部位とに前記ノズルを設けていて、前記前段側エゼクターを駆動しない場合は両方のノズルから水が高圧で噴射され、前記前段側エゼクターが高能力又は低能力で駆動される場合には出口寄り部位のノズルから水が高圧で噴射される、
請求項2に記載した製鋼用二次精錬における真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置。
【請求項4】
前記前段側エゼクターには、当該前段側エゼクターの内面を乾燥させるための加温手段が外周の略全体にわたって設けられている、
請求項 1〜3 のうちのいずれかに記載した製鋼用二次精錬における真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置。
【請求項5】
前記加温手段は、前記前段側エゼクターを外側から囲うジャケットを有しており、前記前段側エゼクターとジャケットとの間の空間に蒸気を吹き込むことで加温手段が構成されている、
請求項4に記載した製鋼用二次精錬における真空脱ガス用の不純物および排ガス処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−7207(P2012−7207A)
【公開日】平成24年1月12日(2012.1.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−144047(P2010−144047)
【出願日】平成22年6月24日(2010.6.24)
【出願人】(591262805)日本エゼクターエンジニアリング株式会社 (2)
【Fターム(参考)】