説明

複合コネクタ

【課題】高電流用複合コネクタと低電流用複合コネクタとの組立時・検査時に組立自動機及び画像検査機等を共用でき、且つ両コネクタが外観上明確な差異を有し、取り違えられることを防止する。
【解決手段】高電流用複合コネクタ10の信号端子32のピッチPを低電流用複合コネクタ1の端子ピッチPと同一とし、高電流コネクタ10の電源端子310のピッチP0を低電流コネクタ1の端子ピッチPの2倍以上の整数倍とし、高電流コネクタ10の信号端子32の材質を低電流コネクタ1の端子材質と同一とし、高電流コネクタ10の電源端子310の材質を低電流コネクタ1の端子材質よりも高い導電率の材質とし、高電流コネクタ10の信号端子32の幅Tを低電流コネクタ1の端子幅Tと同一とし、高電流コネクタ10の電源端子310の幅T0を低電流コネクタ1の端子幅Tよりも広くし、高電流コネクタ10の電源端子310の数を、低電流コネクタ1の電源端子31の数より減じるようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、1つのハウジングに信号伝達用の信号端子と電力供給用の電源端子とが並設された複合コネクタに関する。
【背景技術】
【0002】
複合コネクタとして、例えば、特開平8−125360号公報(特許文献1)の第9図及び段落0003に記載されているように、一つのコネクタハウジングに52本の同一の端子(ピン)を並設し、20本ずつの2つの端子群を電源端子として用いると共に、残りの12本の端子群を信号端子として用いるようにしたものが知られている。この種の複合コネクタは、信号伝達専用のコネクタと電源供給専用のコネクタとの二種を別途に用意しないで済むことから簡便で低コストとなり、更に回路基板上のコネクタ実装面積増大を防げるなど多々メリットがあるため各種の電子機器に広く採用されている。
【0003】
斯様な複合コネクタにおいては、通常、電源端子として用いる端子の数で許容電源電流(許容電流)を定めている。即ち、上述した先行例の場合、端子一本当たり0.5アンペアの電流が流せるものと仮定すると、電源端子として用いる20本の端子群には10アンペア(0.5アンペア×20本)の電流を流すことができる。言い換えると、信号端子も電源端子も1端子当たりの許容電流は同じ0.5アンペアであって、電子機器に組み込まれた際に、一方に信号が、他方に電力が、各々伝達されるようになっている。
【0004】
一般に、複合コネクタは、その端子ピッチを一定(例えば0.5mm)としてあり、通常、組立自動機によってハウジングに端子を圧入して製造される。そして、組立自動機は、コネクタのハウジングを端子ピッチに相当する長さずつ端子並設方向に送り出し、端子を1本ずつハウジングに圧入するようになっている。このため、端子ピッチが一定でないと、組立自動機での端子の圧入は困難となる。
【0005】
また、このような複合コネクタにあっては、その端子のテール部を回路基板にはんだ付けするが、はんだ付けが不十分であると信号や電力の伝達が旨く行なわれず電子機器の品質不良となることから、画像検査機を用いて各テール部のはんだ付け状況をチェックしている。この画像検査機も端子ピッチに相当する長さずつハウジングを端子並設方向に送り出しつつ、各端子を撮像するため、端子ピッチが一定でないと画像検査機によるはんだ付け状況のチェックが困難となる。
【0006】
【特許文献1】特開平8−125360号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、電子機器の機能アップ等が図られることに伴い、その供給電力を増す必要が生じ、複合コネクタの電源端子を流れる許容電流の引上げを求められることが少なくない。
【0008】
この要求に対して、(1)電源端子をより導電性の高い材質に変更する、例えば、電源端子は、通常、信号端子にも使われているリン青銅を用いているところ、リン青銅の数倍、導電性に優れた黄銅に変更する、(2)電源端子の幅は、通常、信号端子の幅と同一であるところ、電源端子の幅を信号端子の幅よりも増大させてその断面積を増加させ、電気抵抗を減じて通電量を増す、の2つの手段が考えられる。
【0009】
ここで、特許文献1に記載の上述した複合コネクタにおいて、電源端子として用いる20本ずつの2つの端子群の夫々に、前記の10アンペアから2倍の20アンペアの電流を流す必要が生じたと仮定する。
【0010】
上記(1)の手段では、改変前の電源端子の材質(例えばリン青銅)に対して約2倍の導電性能を発揮する材質(例えば黄銅)で電源端子を作製し、これをコネクタハウジングに圧入することになる。この場合、ハウジングの成形のためのモールド型や端子の打ち抜き成形のためのプレス型に一切の変更を要せず、極めて簡便に複合コネクタの許容電流の引上げができる。
【0011】
しかし乍ら、上記(1)の手段では、10アンペアの電流を流せる複合コネクタ(低電流用複合コネクタ)と、20アンペアの電流を流せるようにした複合コネクタ(高電流用複合コネクタ)との間に、外観上、全く差異が無く、これらが取り違えられて電子機器に組み込まれた際には、重大な問題が生じ得る。また、電源端子自体と信号端子自体との間にも、外観上、全く差異が無く、何らかのミスにより電源端子と信号端子とを取り違えてハウジングに組み込んでしまった時も、それを外観から発見することはできず、同様に重大な問題に発展しかねない。
【0012】
他方、上記(2)の手段では、電源端子の幅を信号端子の幅に対して倍増させて高電流用複合コネクタとするため、前記低電流用複合コネクタとの差異は、外観上明らかであり、且つ、幅広の電源端子と幅狭の信号端子との差異も外観上明らかであるため、上記(1)の手段による問題点を解消できる。
【0013】
しかし乍ら、上記(2)の手段では、図6の上段に示すように、既存の電源端子31(幅T=0.2mm、ピッチP=0.5mm、端子間隔N=0.3mm)に対し、図6の下段に示すように、ピッチP=0.5mmを保ったまま端子断面積を2倍にすべく端子幅T1=0.4mmに改変した電源端子311とすると、端子間隔N1=0.1mmとなってしまい、回路基板に設けられるランド部の間隔を、はんだブリッジを回避するのために必要な間隔(ランド部間隔0.1mm以上、端子間隔で言えば0.3mm以上)とすることができず、この端子のはんだ付け表面実装は成立しない。
【0014】
ピッチPを広げれば、端子のはんだ付け表面実装が可能になるが、この場合、ピッチPに相当する長さずつコネクタハウジングを端子並設方向に送り出す前記組立自動機及び画像検査機をも改変しなければならないため、ピッチPの変更は好ましくない。また、ピッチPを広げると、コネクタの全長が増大し、回路基板上のコネクタ実装占有面積も増大し、複合コネクタのメリット(信号伝達専用コネクタと電源供給専用コネクタとの二種を別途に用意しないで済むので回路基板上のコネクタ実装面積増大を防げる)を半減させてしまう。
【0015】
以上の事情を考慮して創案された本発明の目的は、
既存の比較的低電流用の複合コネクタと新規追加の高電流用の複合コネクタとの並行生産を前提に、
高電流用複合コネクタが低電流用複合コネクタに対して外観上明確な差異を有していて両コネクタを取り違えて電子機器に組み込むことを回避でき、
高電流用複合コネクタの電源端子と信号端子とが外観上明確な差異を有していて両端子を取り違えてコネクタハウジングに組み込むことを回避でき、
高電流用複合コネクタの端子ピッチと低電流用複合コネクタの端子ピッチとが整数倍の関係になっていて両コネクタの組立時及び検査時に、組立自動機及び画像検査機を共用できる複合コネクタを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0016】
上記目的を達成するために第1の発明は、ハウジングに並設された複数の端子の一部を信号端子とすると共に他部を電源端子とした複合コネクタであって、電源端子及び信号端子の隣り合う端子ピッチを全て同一とすると共にこれら端子の幅及び材質を全て同一とした低電流用複合コネクタに対し、信号端子のピッチが、低電流用複合コネクタの端子ピッチと同一であり、電源端子のピッチが、低電流用複合コネクタの端子ピッチの2倍以上の整数倍であり、信号端子の材質が、低電流用複合コネクタの端子材質と同一であり、電源端子の材質が、低電流用複合コネクタの端子材質よりも高い導電率の材質であり、信号端子の幅が、低電流用複合コネクタの端子幅と同一であり、電源端子の幅が、低電流用複合コネクタの端子幅よりも広く、電源端子の数が、低電流用複合コネクタの電源端子の数より減じられ、電源電流の高電流化が図られた複合コネクタである。
【0017】
第2の発明は、ハウジングに並設された複数の端子の一部を信号端子とすると共に他部を電源端子とした複合コネクタであって、電源端子のピッチが信号端子のピッチの2倍以上の整数倍であり、電源端子の幅が信号端子の幅よりも広く、電源端子の材質が信号端子の材質よりも高い導電率の材質である複合コネクタである。
【0018】
上記電源端子及び信号端子を回路基板に対して表面実装するようにしてもよい。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係る複合コネクタによれば、
既存の比較的低電流用の複合コネクタと新規追加の高電流用の複合コネクタとの並行生産を前提にして、
高電流用複合コネクタが低電流用複合コネクタに対して外観上明確な差異を有しているので両コネクタを取り違えて電子機器に組み込むことを回避でき、
高電流用複合コネクタの電源端子と信号端子とが外観上明確な差異を有しているので両端子を取り違えてコネクタハウジングに組み込むことを回避でき、
高電流用複合コネクタの端子ピッチと低電流用複合コネクタの端子ピッチとが整数倍の関係になっているので両コネクタの組立時及び検査時に、組立自動機及び画像検査機を共用できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
本発明の好適実施形態を添付図面を用いて説明する。
【0021】
先ず、高電流用(例えば20アンペア用)の複合コネクタのベースとなる低電流用(例えば10アンペア用)の複合コネクタについて説明する。
【0022】
図1において、1はFPC(フレキシブル・プリント・サーキット)やFFC(フレキシブル・フラット・ケーブル)等のフレキシブル基板が係脱される低電流用複合コネクタである。このコネクタ1は、合成樹脂製のハウジング2、ハウジング2に並設された導電材からなる多数の端子3、ハウジング2に回動可能に支承されたアクチュエータ4等を備えており、ハウジング2に形成された基板挿抜開口40にフレキシブル基板を挿入し、続いてアクチュエータ4を倒してその押圧部41でフレキシブル基板を端子3に圧接することで、フレキシブル基板とコネクタ1とを電気的に接続するようになっている。
【0023】
コネクタ1は、図示しない回路基板に実装される。具体的には、端子3のテール部33が、回路基板に設けられたランドに、はんだ付けされる。本実施形態では、ハウジング2の端面21に固定金具5が取り付けられており、この固定金具5も回路基板にはんだ付けすることで、コネクタ1の実装強度を向上させている。
【0024】
端子3は、ハウジング2に一定の端子ピッチPで計52本並設されており、図1にて左端に位置する端子3を1番ピン、同右端に位置する端子3を52番ピンと名付けると、1〜20番ピン並びに33〜52番ピンの各20本が電源端子31、その間に位置する21〜32番ピンの12本が信号端子32となっている。また、各電源端子31及び信号端子32の端子幅T及び端子材質は全て同一となっている。
【0025】
詳しくは、電源端子31も信号端子32も、例えばリン青銅製であって、その端子幅Tは0.2mm、端子ピッチPは0.5mmで、1ピン当たりの許容電流は0.5アンペアとなっている。換言すれば、このコネクタ1の端子3は、信号端子32と電源端子31とが共通であり、電源端子31として1〜20番ピン、33〜52番ピンの各20ピンを用いることによって、夫々10アンペア(0.5アンペア×20本)の電流を流せるようになっている。
【0026】
図2に、かかるコネクタ1の表面実装の様子を模型的に示す。図2に示すように、回路基板Kには、平面視矩形状のランドLが、端子3の本数(52本)と同数並設されている。各ランドLの幅Mは、全て同一で本実施形態では0.4mmとなっていて、ランドL同士の間には、隣接するランドL間でのはんだブリッジを防止するため、0.1mmの間隔Nが設けられている。また各ランドLの高さHは0.7mmとなっている。
【0027】
ランドLの中央に位置付けされた矩形は、端子3のテール部33におけるはんだ面34を示している。はんだ面34の幅Tは図1に示す端子幅Tそのものであるため0.2mmであり、はんだ面34の高さhは0.5mmとなっている。そして、はんだ面34の周縁とランドLの周縁との間には、幅T方向及び高さh方向に、夫々0.1mmのスペースSが設定されている。
【0028】
このコネクタ1の回路基板Kへの実装に際しては、各ランドLにはんだペーストを所定の厚さ塗布し、その上に端子3のテール部33の各はんだ面34を位置付け、この状態でリフロー炉に入れてはんだを溶融し、はんだをはんだ面34に濡付し、これをリフロー炉から出して冷却し、はんだを凝固させ、端子3をランドLに固着する。
【0029】
斯様なコネクタ1は、電源端子31も信号端子32も、全く同じ形状で且つ同じ端子ピッチPであるから、前述した組立自動機及び画像検査機(ピッチPに相当する長さずつコネクタハウジング2を端子並設方向に送り出す物)を使用でき、且つ10アンペアの電源電流が流せ、10本の信号端子32を備えた複合コネクタ1として機能する事ができる。
【0030】
次に、上述した10アンペア用の低電流用複合コネクタ1をベースとし、20アンペアの電流が流せるように改変した高電流用複合コネクタについて図3に基づき説明する。
【0031】
図3において、10はFPCやFFC等のフレキシブル基板が係脱される高電流用複合コネクタである。このコネクタ10は、合成樹脂製のハウジング2、ハウジング2に並設された導電材からなる多数の端子3、ハウジング2に回動可能に支承されたアクチュエータ4、ハウジング2の端面21に設けられた固定金具5等を備え、ハウジング2に形成された基板挿抜開口40にフレキシブル基板を挿入し、続いてアクチュエータ4を倒してその押圧部41でフレキシブル基板を端子3に圧接することで、フレキシブル基板とコネクタ1とを電気的に接続するようになっている点では、図1の低電流用複合コネクタ1と変わるところはない。
【0032】
端子3は、ハウジング2に計32本並設されており、図3にて左端に位置する端子3を1番ピン、同右端に位置する端子3を32番ピンと名付けると、1〜10番ピン並びに23〜32番ピンの各10本が電源端子310、その間に位置する11〜22番ピンの12本が信号端子32となっている。即ち、図3の高電流用複合コネクタ10の電源端子310の本数は、図1の低電流用複合コネクタ1の電源端子31の本数に比べ、左右夫々10本ずつ総計20本少なくなっている。より具体的には、図3のコネクタ10は、図1のコネクタ1における電源端子31を1本おきに間引いて、つまり2、4、6、8、10、12、14、16、18、20及びに33、35、37、39、41、43、45、47、49、51番ピンの計20本を間引いた配列として、電源端子310の端子間ピッチP0を図1の端子ピッチPの2倍にしてある。なお、信号端子32の本数は両コネクタ1、10とも同じである。
【0033】
図3の高電流用複合コネクタ10の信号端子32は、図1の低電流用複合コネクタ1の信号端子32及び電源端子31と同様に、例えばリン青銅製であって、その端子幅Tは0.2mm、端子ピッチPは0.5mmで、1ピン当たりの許容電流は0.5アンペアとなっている。他方、コネクタ10の電源端子310は、導電率がリン青銅の約2倍の黄銅等の材料から製造されており、その端子幅T0は信号端子32の端子幅Tの2倍の0.4mm、端子ピッチP0も信号端子32の端子ピッチPの2倍の1.0mmとなっている。即ち、図3にて1〜10番ピン、23〜32番ピンの各電源端子310は、11〜12番ピンの信号端子32に比べて、1端子当たり、導電率が2倍で且つ端子断面積が2倍なので都合4倍の2.0アンペア(0.5アンペア×4倍)の電流を流し得る。よって、図3にて左右10本ずつの電源端子310は、総計で夫々20アンペア(2.0アンペア×10本)の電流を流せるようになっている。
【0034】
図4に、コネクタ10の表面実装の様子を模型的に示す。図4に示すように、回路基板Kには、平面視矩形状のランドL、L0が、信号端子32及び電源端子310の総数(32本)と同数並設されており、その内の中央に配置された12個のランドLが信号端子32用、その左右に位置付けされた各10個のランドL0が電源端子310用となっている。信号端子32用のランドLは、図1の低電流用複合コネクタ1のそれと同様に、ランド幅Mは0.4mm、その間隔Nは0.1mm、同高さHは0.7mm、ランドピッチ(端子ピッチP)は0.5mmとなっている。ランドLの中央に位置付けされた矩形は、信号端子32のテール部33におけるはんだ面34を示しており、その高さhは0.5mm、幅Tは0.2mmであり、周囲には0.1mmのスペースSが用意されている。
【0035】
他方、電源端子310用のランドL0は、図4に示すように、その幅M0が0.6mm、その間隔N0は0.4mm、同高さHは0.7mm、ランドピッチ(端子ピッチP0)は信号端子32のそれの2倍の1.0mmとなっている。ランドL0の中央に位置付けされた矩形は、電源端子310のテール部330におけるはんだ面340を示しており、その高さhは0.5mmであり、周囲には0.1mmのスペースSが用意されている。このはんだ面340の幅T0は、信号端子32のはんだ面34の幅Tの2倍の0.4mmとなっている。換言するに、この電源端子310用のランドL0の配列は、図1の電源端子31を一つおきに間引くことで図3に示すように電源端子310のピッチP0を2倍に広げたとき、間引かれた電源端子31が対応するランドを取り除いて空白部分を形成し、その空白部分を利用してランド幅M0を広げた拡張配設構造となっている。
【0036】
因みに、電源端子310、31のレイアウトのみを取り上げると、図5の様になる。図5の上段は図1の低電流用複合コネクタ1の電源端子31の配列を示し、図5の下段は図3の高電流用複合コネクタ10の電源端子310の配列を示す。
【0037】
本実施形態の作用及び効果を説明する。
【0038】
図1の低電流用複合コネクタ1と図3の高電流用複合コネクタ10とを比較すると、高電流用複合コネクタ10は、その電源端子310にコネクタ1の電源端子31の材料よりも約2倍高導電率の材料を選定し、その端子幅T0をコネクタ1の電源端子31の端子幅Tの2倍としている。これにより、高電流用複合コネクタ10の電源端子310は、低電流用複合コネクタ1の電源端子31に対し、端子1本当たり、4倍の2アンペアの電流を流し得ることになる。
【0039】
そして、高電流用複合コネクタ10は、このような電源端子310を、1〜10番ピン及びに23〜32番ピンの各10本確保して、各々に20アンペア(2アンペア×10本)の電流を流し得るようにしているので、低電流用複合コネクタ1の電源電流(図1の1〜30番ピン、33〜52番ピンの各20本の電源端子31によって左右夫々、0.5アンペア×20本=10アンペア流し得る電源電流)に対して2倍の電流を流すことができる。
【0040】
この高電流用複合コネクタ10においては、電源端子310の端子ピッチP0は、信号端子32のピッチPの2倍であると共に、その信号端子32のピッチPは、基礎となる低電流用複合コネクタ1の端子ピッチPと同じである。よって、既存の低電流用の複合コネクタ1をベースとして新規追加の高電流用の複合コネクタ10を設計・製造する場合、組立自動機・画像検査機のハウジング2の送りピッチ(コネクタ1の端子ピッチPに合わせられている)を、電源端子310の部分のみ信号端子32の部分の2倍に設定することで、或いは電源端子310の部分のみ端子310を一つおきに空打ち・空撮像することで、組立自動機・画像検査機をコネクタ1、10で共用できる。従って、新たな設備を要せず、廉価なコネクタ10を提供できる。
【0041】
また、この2種のコネクタ1、10は、上記組立自動機及び画像検査機等の生産設備を共用しつつも、その外観は電源端子31、310の数やその間隔から明確な差異があるため、両コネクタ1、10を取り違えて電子機器に組み込んでトラブルを発生させるという事態を回避できる。更に、コネクタ10の電源端子310は、コネクタ10の信号端子32、コネクタ1の信号端子32及び電源端子31とは外観上明確な差異を有しているので、コネクタ10の電源端子310を、コネクタ10の信号端子32、コネクタ1の信号端子32及び電源端子31と取り違えてハウジング2に組み込んでトラブルを発生させるという事態も回避できる。
【0042】
加えて、本実施形態に係る高電流用複合コネクタ10においては、端子の数を増やしてそれを電源端子に割り当てて所望の高電流コネクタを得ようとする従来の発想とは逆に一部の端子31を間引き、端子材料及び端子幅を変更することで高電流コネクタを得ているため、コネクタ10の長大化を防ぎ、電子機器の小型化に寄与できる。また、高電流用複合コネクタ10においては、電源端子310同士の間には、十分な間隔N0が形成されているので、そのはんだ付け時にブリッジが生じて短絡が起こることも防止することができる。
【0043】
なお、上述した実施形態の説明において端子数やその寸法などを例示したが、これらはあくまでも本発明の理解を助けるためのものであって、何ら、これらに限定されるものではない。例えば、コネクタ10において、電源端子310のピッチP0は、信号端子32のピッチP(コネクタ1の端子ピッチP)の2倍に限られず、2倍以上の整数倍であってもよい。
【0044】
また、図1に示した10アンペアの電流に対応したコネクタ1の存在を前提に20アンペア対応のコネクタ10を作り出す如く説明したが、勿論、その逆であっても良い。
【0045】
さらに、ZIF式のコネクタ1、10の例をもって説明したが、Non−ZIF式を含め、あらゆる形式のコネクタに応用できることは言うまでもない事である。
【0046】
なお、ここで説明に用いた組立自動機や画像検査機は、単に端子間ピッチを主要動作ファクタとする代表的設備にすぎず、この他の各種設備を除外するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係る高電流用の複合コネクタの基礎となる低電流用の複合コネクタの斜視図である。
【図2】図1の低電流用複合コネクタの回路基板への表面実装の様子の一部を模式的に示す平面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る高電流用の複合コネクタの斜視図である。
【図4】図3の高電流用複合コネクタの回路基板への表面実装の様子の一部を模式的に示す平面図である。
【図5】上段は図1の低電流用複合コネクタの電源端子の配列を示し、下段は図3の高電流用複合コネクタの電源端子の配列を示す説明図である。
【図6】上段は従来の複合コネクタの電源端子及びその端子ピッチを示し、下段は端子ピッチをそのままとし端子幅を2倍に改変したものを示す説明図である。
【符号の説明】
【0048】
1 低電流用複合コネクタ
2 ハウジング
3 端子
31 電源端子
32 信号端子
P 端子ピッチ
T 端子幅
10 高電流用複合コネクタ
310 電源端子
P0 端子ピッチ
T0 端子幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングに並設された複数の端子の一部を信号端子とすると共に他部を電源端子とした複合コネクタであって、
電源端子及び信号端子の隣り合う端子ピッチを全て同一とすると共にこれら端子の幅及び材質を全て同一とした低電流用複合コネクタに対し、
信号端子のピッチが、低電流用複合コネクタの端子ピッチと同一であり、電源端子のピッチが、低電流用複合コネクタの端子ピッチの2倍以上の整数倍であり、
信号端子の材質が、低電流用複合コネクタの端子材質と同一であり、電源端子の材質が、低電流用複合コネクタの端子材質よりも高い導電率の材質であり、
信号端子の幅が、低電流用複合コネクタの端子幅と同一であり、電源端子の幅が、低電流用複合コネクタの端子幅よりも広く、
電源端子の数が、低電流用複合コネクタの電源端子の数より減じられ、
電源電流の高電流化が図られたことを特徴とする複合コネクタ。
【請求項2】
ハウジングに並設された複数の端子の一部を信号端子とすると共に他部を電源端子とした複合コネクタであって、
電源端子のピッチが信号端子のピッチの2倍以上の整数倍であり、
電源端子の幅が信号端子の幅よりも広く、
電源端子の材質が信号端子の材質よりも高い導電率の材質である
ことを特徴とする複合コネクタ。
【請求項3】
上記電源端子及び信号端子を回路基板に対して表面実装するようにした請求項1又は2に記載の複合コネクタ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2007−299701(P2007−299701A)
【公開日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−128629(P2006−128629)
【出願日】平成18年5月2日(2006.5.2)
【出願人】(000205122)大宏電機株式会社 (78)
【Fターム(参考)】