複合サイトカイン−抗体複合体
【課題】2つ以上の異なるサイトカイン間での複合体または融合体を提供すること。
【解決手段】本発明は、少なくとも2つの異なるサイトカイン分子を含むタンパク質複合体および融合タンパク質に関する。タンパク質複合体および融合タンパク質は、免疫グロブリンの領域のような標的化部分をさらに含み得る。このタンパク質複合体および融合タンパク質を使用する方法がまた、開示される。本発明は、2つ以上の異なるサイトカイン間での複合体または融合体を提供し、その複合体または融合体は、概して、標的免疫治療と同様に有用である。これらの複合体または融合体は、必要に応じて他のタンパク質機能基を含む。そのような複合体または融合体の1つの特徴は、固定された比率でその成分のサイトカインの活性を提供することである。
【解決手段】本発明は、少なくとも2つの異なるサイトカイン分子を含むタンパク質複合体および融合タンパク質に関する。タンパク質複合体および融合タンパク質は、免疫グロブリンの領域のような標的化部分をさらに含み得る。このタンパク質複合体および融合タンパク質を使用する方法がまた、開示される。本発明は、2つ以上の異なるサイトカイン間での複合体または融合体を提供し、その複合体または融合体は、概して、標的免疫治療と同様に有用である。これらの複合体または融合体は、必要に応じて他のタンパク質機能基を含む。そのような複合体または融合体の1つの特徴は、固定された比率でその成分のサイトカインの活性を提供することである。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(出願に関する参考文献)
本出願は、1999年8月9日に提出された米国出願第60/147,924号の利益を主張し、その開示を本明細書中で参考文献として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、複合サイトカインタンパク質複合体(multiple cytokine protein complexs)およびそれらの組成物の構築および発現方法に関する。さらに詳細には、本発明は、複合サイトカインおよび標的化成分よりなる融合タンパク質、ならびに癌およびウイルス感染のような疾患の処置に融合タンパク質を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
免疫系を制御する調節ネットワークは、免疫細胞の機能を表すおよび表さない、そのうえ細胞の増殖を制御するための、サイトカインと呼ばれる分泌タンパク質シグナル伝達分子による。これらの反応は、概して、所望される生物学的効果を活発にするように協調して作用する複合サイトカインを含む。インターロイキン−2(IL−2)のような一定のサイトカインは、自己で免疫細胞増殖を誘導し得、そして第2のサイトカイン分泌を含む他の機能を活性化し得る。別のサイトカイン(インターロイキン−12(IL−12))(Trinchieriによって概説された、1994、Blood 84:4008−4027)は、一定の免疫細胞の増殖を誘導し得、別の重要な免疫モジュレーター(インターフェロン−γ(IFN−γ))を誘導し得る。このIFL−γの誘導は、IL−12の重要な活性であるが、IL−12は、IFN−γ独立性の別の重要な活性を有する。IL−12自身は、感染症状況の初期段階で誘導されるため、先天免疫系および後天免疫系に連結すると考えられる。
【0004】
マウスおよびヒト免疫細胞の両方を用いた多くのインビトロの研究は、最適な免疫反応の開発におけるサイトカイン組み合わせの重要性を示した。例えば、ほとんどのT細胞は、マイトジェンで活性化されるか、または高濃度のIL−2中で培養されるまでは、IL−12レセプター(IL−12R)を発現しない(Desaiら、(1992)、J.Immunol.148:3125−3132)。一旦、そのレセプターが発現されると、細胞はIL−12に対してはるかに敏感になる。さらに、IL−12は、IFN−γ転写を誘導するが、IFN−γmRNAは、その後じきに減る。IL−2の存在下、mRNAは、安定し、そしてIFN−γ生成量の劇的な増加を生じる(Chanら(1992)J.Immunol.148:92−98)。他の研究においては、IL−3およびIL−11のサイトカイン組み合わせまたはIL−3およびスチールファクター(Steel Factor)のサイトカイン組み合わせは、初期造血前駆細胞の増殖においてIL−12との相乗効果を有する(Trinchieri、1994;上記に引用)ことが見出された。インターロイキン−4およびGM−CSFの組み合わせは、樹状細胞の刺激において特に有効である(Paluckaら、(1998)J.Immunology 160:4587−4595)。細胞性免疫反応の刺激にとって、IL−12およびIL−18(最近発見されたIL−12に相補性のいくつかの活性を有するTh1促進サイトカイン(Hashimotoら、(1999)J.Immunology 163:583−589;Barbulescuら、(1998)J.Immunology 160:3642−3647))の組み合わせもまた、有用である。さらに、IL−2およびインターフェロン−γは、一定の状況で相乗的である(Palladino、M.A.、米国特許第5,082,658号)。
【0005】
多くのこれらの相乗作用研究において、各サイトカインの相対的なレベルが、非常に重要であることが発見された。IL−2の最適以下の量の存在下でのIL−12の添加は、増殖の誘導、細胞溶解活性およびIFN−γ誘導に相乗作用を導くが、1つのサイトカインを高い用量で使用するIL−2およびIL−12の組み合わせは、拮抗することが見いだされた(Perussiaら、J.Immunol.149:3495−3502(1992);Mehrotaら、J.Immunol.151:2444−2452(1993))同様の状況はまた、IL−12およびIL−7の組み合わせにおいても現れる。
【0006】
マウスにおける抗腫瘍反応の発生のためのIL−12と他のサイトカインとの間の相乗作用研究はまた、混合した結果を示した。いくつかのモデルにおいて、各サイトカインの最適以下の用量で相乗作用が見られ、そしてさらに高い用量は、高い毒性を導いたが、一方他のモデルにおいて、IL−12およびIL−2の組み合わせは、ほとんどまたはまったく相乗作用を示さなかった(例えば、Nastalaら、J.Immunol.153:1697−1706(1994)参照のこと)。特に、異なる薬学的な性質(異なる循環半減期および生分布など)を有する、2つの薬剤の活性の固定比率を維持する必要性があるとき、これらの結果は、インビボにおける2つの潜在的な相乗作用の薬剤の組み合わせの本来の違いを反映し得る。
【0007】
インビトロの細胞培養実験において、サイトカインレベルを制御することは、簡単であるが、インビボでは多くのファクターが、サイトカインの相対的な生分布および局在性に影響を及ぼし得、従って、サイトカインの免疫刺激能に影響を及ぼす。これらのファクターの最も重要なものは、半減期である。ボーラス注射後の血行中のIL−2の半減期は、約10分である。これらの薬物動態性質と著しい対照としては、IL−12の循環半減期は、マウス中では3時間より長く(Wysockaら(1995)Eur.J.Immunol.25:672)、そしてヒトでは5〜10時間である(Lotzeら、(1996)Ann NY Acad Sci 795:440−454)と報告された。
【0008】
この違いは、IL−2およびGM−CSF共に相対的に小さいサイズ(IL−12が75kDaに対して、15〜25kD)であり、腎濾過によって、IL−2およびGM−CSFが浄化され得ることによると考えられる。約50kDa未満の分子量を有するタンパク質は、腎濾過によって浄化される。ほとんど全てのサイトカインは、50kDaより小さく、そして同様に速やかに腎濾過による浄化をこうむる。2つのそのように小さく速やかに浄化されるサイトカインを用いる処置が、所望される場合、単純にサイトカインの同時投与で十分である。しかし、同時投与は、有意に半減期に差のあるサイトカインには最適ではない。
【0009】
サイトカインの全身投与は、有害な副作用のため難しい。例えば、高いレベルのインターフェロン−αは、重大な副作用(皮膚、神経学的、免疫および内分泌の毒性を含む)を生じる。複合サイトカイン融合体は、著しい重篤な副作用を示し得ると予想される。
【0010】
サイトカインの全身投与の副作用を低減するため、1つのストラテジーは、サイトカインとターゲッティング能力を有する第2の分子とを融合することである。Fc領域が別のタンパク質のN末端に配置される融合体(「免疫融合体」または、Xがインターフェロン−αなどのリガンドである「Fc−X」融合体と呼ばれる)は、多数の特有の、有利な生物学的性質を有する(Loら、米国特許第5,726,044号および同第5,541,087号;Loら、Protein Engineering 11:495)。特に、そのような融合体タンパク質は細胞表面の関連のFcレセプターに今まで通り結合し得る。しかし、リガンドが細胞表面のレセプターに結合する場合、Fc領域の配位が変化し、そして抗体依存性細胞障害(ADCC)および補体結合を媒介する配列が閉塞される(occuluded)と思われる。結果として、Fc−X分子のFc領域は、ADCCまたは補体結合を効果的に媒介できない。N末端サイトカインおよびC末端Fc領域との融合体による細胞障害性の影響は、周知である。例えば、Fc領域のN末端とIL−2との融合体は、IL−2レセプター、固定補体を保有する細胞に結合し得る分子を生成し、そして結果として細胞を溶解する(Landolfiら、N.F.(1993)米国特許第5,349,053号)。対照的に、Fc−IL−2融合体タンパク質は、この性質を有さない。したがって、Fc−X融合体は、ADCCおよび補体結合の有害な影響を受けずに、血清半減期および相対的肝臓中濃度を増加する効力を有すると予想される。
【0011】
短い血清半減期を有する多くの異なったタンパク質を、Fc−X配置でFc領域と融合させ得、その結果得られた融合体はかなり長い血清半減期を有することが、証明された。しかし、2つの異なるFc融合体の血清半減期は、概して同一ではない。従って、2つの異なるX機能基の送達が、所望される場合、2つの異なるFc−Xタンパク質の同時投与は、概して最適ではない。
【0012】
いくつかの環境下で、より良いアプローチは、サイトカインと、細胞表面抗原への特異性および親和性を有する抗体(または抗体由来のフラグメント)とを融合させること(Gilliesら、米国特許第5,650,150号;Gilliesら、Proc.Natl.Acad.Sci.89:1428)によって、または融合タンパク質型のペプチド結合を介してタンパク質抗原および刺激性のサイトカインを結合させること(Hazamaら、Vaccine 11:629)によって、この細胞表面抗原に対するサイトカインの効果を標的とすることである。抗体自身は融合サイトカインの半減期を増加し得るが、同一抗体を用いた異なるサイトカイン融合間にはまだ違いがあり(例えば、Gilliesら、Bioconjugate Chem.4:230−235(1993);Gilliesら、J.Immunol.160:6195−6203を参照のこと)、その違いは、標的部位での同時局在性を困難にする。上記に論じたように、このことが、サイトカインの活性の不均等を導き得、そして所望の相乗効果を減少させ得る。さらに、2つの異なる融合タンパク質の使用は、その安全性および有効性のプロフィールのため各融合体別々の試験を必要とし、ついでさらに混合物として試験を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、2つ以上の異なるサイトカイン間での複合体または融合体を提供し、その複合体または融合体は、概して、標的免疫治療と同様に有用である。これらの複合体または融合体は、必要に応じて他のタンパク質機能基を含む。そのような複合体または融合体の1つの特徴は、固定された比率でその成分のサイトカインの活性を提供することである。
【0014】
概して、本発明は、少なくとも2つの異なるサイトカインを含むタンパク質複合体に関する。そのサイトカインは、同じポリペプチド鎖であり得、またはジスルフィド結合もしくは化学的架橋によって形成される結合などの共有結合によって結合され得る。あるいは、そのサイトカインは、安定な非共有結合的な結合であり得る。いくつかの好ましい実施形態において、タンパク質複合体は、哺乳動物中のある部位対して複合体を標的とする標的機能基(抗体または抗体フラグメントなど)を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、2鎖サイトカイン(IL−12など)の生物活性と第2のサイトカインの生物活性とを組み合わせたタンパク質複合体を提供する。そのサイトカインは互いに共有結合的に結合され(例えば、融合され)得る。そのサイトカインはまた、他の機能基を介して結合され得る。例えば、第2のサイトカインを含むポリペプチド鎖として、IL−12を特異的に結合する結合機能基(例えば、IL−12に対する抗体またはIL−12に対するレセプター)が挙げられる。あるいは、結合機能基はIL−12と結合された第2の機能基と相互に作用し得る。例えば、IL−12のサブユニットをコードするポリペプチド鎖として、アビジンが挙げられる場合、第2のサイトカインを含むポリペプチドとして、標的機能基としてのビオチンが挙げられ得る。ひとつの実施形態において、第2のサイトカインは、IL−2である。
【0016】
本発明は、IL−12自体の薬物動態の動きと類似した、より長く単一の薬物動態の動きを提供し、そのことが、第2のサイトカインの活性の持続を増加し、そして動物へ注入した後の2つのサイトカインの活性のバランスを維持しながら、IL−12の活性および第2のサイトカインの活性の両方を維持するIL−12の融合タンパク質の生成に関する方法を提供する。
【0017】
本発明の別の実施形態において、融合タンパク質は、IL−12のp35およびp40サブユニットが、ジスルフィド結合によって結合され、そしてIL−12のp35またはp40サブユニットのアミノまたはカルボキシル末端どちらか一方で、IL−12−XまたはX−IL−12の一般式(ここでXは第2のサイトカインである)で第2のサイトカインと共有結合的に結合した、IL−12のヘテロダイマー型を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態において、融合タンパク質は、可撓性のペプチドリンカーを介して結合された2つのポリペプチドサブユニットを含むIL−12の単鎖(sc)型とアミノまたはカルボニル末端のどちらか一方で、一般式scIL−12−XまたはX−scIL−12で共有結合された、第2のサイトカインを含む。
【0019】
さらに別の実施形態において、2つのサイトカインはさらに、タンパク質鎖のアミノまたはカルボキシ末端のいずれか一方で二量化または多量体化構造を形成し得るタンパク質と融合される。この実施形態の好ましい形態において、第2のサイトカインとIL−12の融合タンパク質形成のひとつは、さらに、免疫グロブリン(Ig)鎖の一部(二量化し得るFc領域など)と、融合される。さらなる実施形態としては、Ig鎖の一部のいずれかの末端でIL−12の少なくともひとつのポリペプチド鎖および他の末端で融合された第2のサイトカインとの融合が挙げられる。
【0020】
別の実施形態において、2つ以上のサイトカインは、特異的レセプターへの結合によって、標的能力を有するタンパク質と融合される。例えば、Fc領域は、肝臓中に豊富であるFcレセプターと結合し得る。複合結合サイトカインとFc領域の融合は、二量化および標的共の利点を例示する、しかし、いくつかの状況においては、多量体化能力または標的能力のみを有するが両方の能力は有していない複合化サイトカインの融合体を構築することが有用である。
【0021】
さらに、別の実施形態においては、複合サイトカインを含む、融合タンパク質は、さらに、アミノ末端またはカルボキシル末端のいずれかで、多様な標的能力を有する多くのクラスの分子(抗体、または骨格を持っているかもしくは持っていないペプチドアプタマーなど)と、融合される(Colasら、(1998)Proc Natl Acad Sci USA.95:14272−7)。特定の実施形態は、複合サイトカインと、抗原と結合し得る抗体の少なくとも一部分(インタクトな抗体、単鎖抗体または単鎖Fv領域など)との融合である。さらに実施形態としては、抗原と結合し得る抗体鎖の少なくとも一部のいずれかの末端部分でIL−12の少なくとも1つのポリペプチド鎖および、他の末端で融合した第2のサイトカインとの融合が挙げられる。
【0022】
上記の記述に従って、概して、遺伝工学技術によって、複合サイトカイン融合タンパク質と複合サイトカイン抗体融合タンパク質を構築することが好ましい、この結果、タンパク質成分が、アミド結合またはジスルフィド結合などの共有結合によって結合される。しかし、そのようなタンパク質複合体を構築するために、化学架橋を使用することもまた、有用である。そのような方法は、タンパク質化学分野で良く確立される。あるいは、異なるサイトカインと、安定した非共有結合複合体を形成するパートナータンパク質とを融合することでタンパク質複合体を生むことが、時には、十分である。例えば、非共有結合ヘテロ二量体サポートタンパク質は、以下のように使用される:第1のサイトカインを、ヘテロ二量体のひとつのサブユニットと融合する、第2のサイトカインを、ヘテロ二量体の第2のサブユニットと融合する、そして2つの融合タンパク質を、適切な条件で混合する。例えば、2つのサブユニット−サイトカイン融合タンパク質をコードした核酸は、同じ細胞中で発現される。この場合、複合サイトカインタンパク質複合体は、サイトカイン組成成分が直接または非直接に共有結合的に結合されずに、構築され得る。本発明の目的を達成するために、そのような複合体が、動物の投与の際に維持され、そして生物学的効果を達成するために十分に安定であることが、必要である。
【0023】
本発明はまた、2つ以上のサイトカインを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する、ここで、サイトカインの1つは、好ましくはIL−12であり、そして、核酸によってコードされた融合タンパク質は、必要に応じて、他のタンパク質部分を含む。好ましい実施形態として、2つ以上のサイトカインと二量化タンパク質(抗体鎖のFc部分)との融合体をコードする核酸が挙げられる。別の好ましい実施形態のセットは、2つ以上のサイトカインと標的能力を有するタンパク質(抗体など)との融合体をコードする核酸である。
【0024】
本発明はまた、2つ以上のサイトカインの融合体の構築のための方法、およびそのような融合タンパク質を発現方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、疾患および他の医学的病気の処置方法を提供する、ここで、その処置は、2つ以上のタンパク質の活性の有用な組み合わせを含む。1つの実施形態において、少なくとも1つのタンパク質は、短い(例えば、20分以下)または中程度にだけ長い(例えば、40分以下)血清半減期を有する。そのタンパク質は、遺伝工学技術、または他の技術によって融合され、ヒトまたは動物へ投与される。この場合、2つのタンパク質の活性は固定比で現れ、そして2つのタンパク質の異なる投薬スケジュールでの別個の投与を、要求されない。さらに、融合タンパク質の血清半減期は、概して、より長い血清半減期を有するタンパク質成分の血清半減期とさらに類似である、従って、より短い血清半減期を有するタンパク質の有効半減期を長くする。
【0026】
より詳細には、本発明は、癌もしくは感染などの疾患、または他の疾患の免疫治療処置方法を提供し、2重鎖サイトカイン(第2のサイトカインと結合したIL−12など)を用いて有効的に処置され得る。好ましい実施形態において、IL−12は、IL−2またはGM−CSFと融合され、そして動物またはヒトに投与される。他の好ましい実施形態において、GM−CSFは、IL−4と融合され、動物またはヒトへ投与される。別の実施形態において、IL−12は、IL−8と融合され、動物またはヒトへ投与される。そのような処置は他の疾患処置と組み合わせて使用され得る。さらに、本発明は、多様な抗原に対するワクチン接種方法を提供し、様々な疾患を予防または処置するために使用され得る。
【0027】
これらの方法の他の実施形態において、2つの異なるサイトカインが、二量体タンパク質の一部分(抗体のFc領域など)と融合され、そして、動物またはヒトに投与される。これらの方法の好ましい形態では、サイトカインIL−12は、第2のサイトカインと共にFc領域と融合され、さらに好ましくは、その第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。
【0028】
さらにこれらの方法の他の実施形態において、2つの異なるサイトカインが、インタクトな抗体と融合され、そして動物またはヒトに投与される。この方法の好ましい形態において、サイトカインIL−12が、第2のサイトカインと共に抗体の一部分と融合され、さらに好ましくは、その第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。本発明はまた、疾患を処置する点で有用な抗体サイトカイン融合タンパク質の混合物を開示する。1つの実施形態において、抗体IL−2融合タンパク質と抗体IL−12融合タンパク質の混合物が、疾患の処置に使用される。例えば、癌、ウイルス感染、またはバクテリア感染が処置される。
本発明はまた、例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)免疫グロブリン領域(Ig)、第1のサイトカイン(C1)および第2の異なるサイトカイン(C2)を規定するポリペプチド鎖を含む、多機能融合タンパク質。
(項目2)項目1に記載の融合タンパク質であって、ここで、前記Ig、前記C1および前記C2は、N末端からC末端の方向に配置され、以下:
(i)Ig−C1−C2;
(ii)C1−Ig−C2;および
(iii)C1−C2−Ig
(ここで、棒線は、ポリペプチド結合またはポリペプチドリンカーを表す)からなる群より選択される式によって規定される融合タンパク質を産生する、融合タンパク質。
(項目3)前記C1または前記C2が、IL−2、IL−4またはGM−CSFを含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目4)前記C1または前記C2が、ヘテロ二量体サイトカインのサブユニットを含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目5)前記C1が、ケモカインである、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目6)前記サブユニットが、IL−12のp35サブユニットまたはIL−12のp40サブユニットを含む、項目4に記載の融合タンパク質。
(項目7)前記C1または前記C2が、ヒトサイトカインである、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目8)前記Igが、免疫グロブリン重鎖可変領域ドメイン(VH)を含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目9)前記Igが、免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、項目1または8に記載の融合タンパク質。
(項目10)前記定常領域が、ヒンジ領域ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目11)前記定常領域が、さらにCH1ドメインを含む、項目10に記載の融合タンパク質。
(項目12)前記VHが、癌特異的抗原またはウイルス抗原と免疫学的に反応性である、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目13)前記C1および前記C2が、前記融合タンパク質に結合される場合、インビボにおいて類似した循環半減期を有する、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目14)前記Ig、前記C1、および前記C2が、同じ条件下において全て活性である、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目15)多機能タンパク質複合体であって、
免疫グロブリン領域および第1のサイトカインの第1の部分を規定する、第1のポリペプチド鎖、および
第2のサイトカインおよび該第1のサイトカインの第2の部分を規定する、第2のポリペプチド鎖、
を含む、多機能タンパク質複合体。
(項目16)前記第1のポリペプチド鎖が、前記第2のポリペプチド鎖に共有結合される、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目17)前記第1のサイトカインが、二量体サイトカインである、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目18)前記第1のサイトカインが、IL−12である、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目19)前記第2のサイトカインが、IL−2である、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目20)多機能タンパク質複合体であって、少なくとも:
免疫グロブリン軽鎖の少なくとも一部に融合された第1のサイトカインを含む、第1の融合タンパク質、および
免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部に融合された第2の異なるサイトカインを含む、第2の融合タンパク質、
を含む、多機能タンパク質複合体。
(項目21)前記第1の融合タンパク質が、前記第2の融合タンパク質に共有結合される、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目22)前記免疫グロブリン軽鎖の一部が、前記免疫グロブリン重鎖の一部にジスルフィド結合される、項目21に記載のタンパク質複合体。
(項目23)前記第1のサイトカインのアミノ末端が、前記免疫グロブリン軽鎖のカルボキシ末端に融合される、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目24)前記第2のサイトカインのアミノ末端が、前記免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端に融合される、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目25)前記第1のサイトカインが、IL−12である、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目26)前記第2のサイトカインが、IL−12である、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目27)第1のサイトカイン(C1)および第2の異なるサイトカイン(C2)を規定するポリペプチド鎖を含む、多機能融合タンパク質であって、ここで、該C2は、遊離の場合、遊離のC1の約2倍より大きいインビボにおける循環半減期を有するが、該C1が該融合タンパク質において該C2に連結される場合、該C1は、該融合タンパク質において該C2とほぼ同じのインビボにおける循環半減期を有する、多機能融合タンパク質。
(項目28)前記C1が、IL−2またはGM−CSFである、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目29)前記C2が、IL−4、IL−12またはこれらのサブユニットである、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目30)前記C1のC末端が、前記C2のN末端に連結される、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目31)前記C2のC末端が、前記C1のN末端に連結される、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目32)前記C末端が、前記N末端にポリペプチドリンカーを介して連結される、項目30または31に記載の融合タンパク質。
(項目33)免疫グロブリン領域(Ig)をさらに含む、項目32に記載の融合タンパク質。
(項目34)前記Igが、免疫グロブリン重鎖可変領域ドメイン(VH)を含む、項目33に記載の融合タンパク質。
(項目35)前記Igが、免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、項目33に記載の融合タンパク質。
(項目36)前記定常領域が、ヒンジ領域ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目35に記載の融合タンパク質。
(項目37)前記重鎖定常領域が、CH1ドメインをさらに含む、項目36に記載の融合タンパク質。
(項目38)前記遊離のC2が、C1よりも少なくとも約4倍大きいインビボにおける循環半減期を有する、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目39)前記C2が、C1よりも約8倍大きい循環半減期を有する、項目38に記載の融合タンパク質。
(項目40)項目1、15、20または27に記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
(項目41)項目40に記載の核酸を含む、細胞。
(項目42)融合タンパク質を調製する方法であって、該融合タンパク質は、第1のサイトカイン(C1)、第2の異なるサイトカイン(C2)、および哺乳動物において予め選択された位置を標的化し得る標的化部分を含み、該方法は、以下の工程:
(a)宿主細胞において融合タンパク質をコードする核酸を発現させる工程であって、該融合タンパク質は、C1、C2および該融合タンパク質が該哺乳動物に投与された場合に予め選択された位置において該融合タンパク質を標的化し得る標的化部分を含む、工程;および
(b)該融合タンパク質を収集する工程
を包含する、方法。
(項目43)第1のサイトカイン(C1)および第2の異なるサイトカイン(C2)を、哺乳動物において予め選択された位置に対して標的化する方法であって、該方法は、以下:
該哺乳動物に多機能融合タンパク質を投与する工程であって、該多機能融合タンパク質は、C1、C2、および該融合タンパク質を該哺乳動物において予め選択された位置に対して標的化し得る免疫グロブリン領域(Ig)を含む、工程、
を包含する、方法。
(項目44)項目42または43に記載の方法であって、前記Igが、前記哺乳動物において前記予め選択された位置に配置された抗原と免疫学的に反応性である免疫グロブリン重鎖可変領域ドメインを含む、方法。
(項目45)前記抗原が、癌特異的抗原またはウイルス抗原である、項目44に記載の方法。
(項目46)項目42または43に記載の方法であって、前記Igが、前記哺乳動物において前記予め選択された位置に配置された免疫グロブリンFcレセプターに結合し得る免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、方法。
(項目47)前記Ig、前記C1、および前記C2が、前記融合タンパク質が前記哺乳動物に投与された場合に、全て活性である、項目42または43に記載の方法。
(項目48)前記哺乳動物が、ヒトである、項目42または43に記載の方法。
(項目49)前記C1が、IL−12またはそのサブユニットである、項目42または43に記載の方法。
(項目50)前記C2が、IL−2およびGM−CSFからなる群より選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法は、項目1、15、20または27に記載のタンパク質を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目52)哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法は、項目40に記載の核酸を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目53)哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法は、項目41に記載の細胞を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
前述および本発明の他の目的、ならびにそれらの様々な特徴は、添付の図面と共に読むときに、以下の記述から、より完全に理解され得る、図面の全体を通じて、同様の数は、同様の構造を言及する。
【図1】図1Aは、2つのサイトカインの融合をその最も簡単な形態で略図で図解する:1つのサイトカインが、必要に応じてリンカーを介して第2のサイトカインと融合される。図1B〜1Iは、第2のサイトカイン(「cyt」と標示された)が、ヘテロ二量体サイトカインIL−12と結び付けられ得る、様々な方法を示す。特に、第2のサイトカインは、p40のC−末端(図1B)、p40のN−末端(図1C)、p35のC−末端(図1D)またはp35のN−末端(図1E)と融合され得る。さらに、図1は、第2のサイトカインが、IL−12の単鎖バージョンと融合され得る方法を示す。特に、単鎖IL−12分子は、p35のN−末端からp40に向かい、そのC−末端(図1F)またはN−末端(図1G)で第2のサイトカインを有し得る。あるいは、単鎖IL−12分子は、p40のN−末端からp35に向かい、そのC−末端(図1H)またはN−末端(図1I)で第2のサイカインと共に、p35のN−末端とP40を有し得る。
【図2】図2A〜2Cは、図1で描かれた複合サイトカイン融合体(箱)が、抗体のFc領域(ここではヒンジ(H)、CH2ドメインおよびCH3ドメイン(長円形)として示される)とさらに融合され得る方法を、略図的に示す。特に、図1の8分子のいずれかは、Fc領域のC−末端(図2A)またはN−末端(図2B)のいずれかと融合され得る。さらに、第1のサイトカインおよび第2のサイトカイン(それぞれ箱)は、それぞれと直接結び付けられる必要はないが、Fc部分を介して結合され得る(図2C)。
【図3−1】図3A〜3Gは、複合サイトカイン融合タンパク質が、さらにIgGなどのインタクトな免疫グロブリンと融合され得る方法のサブセットを略図的に示す。重鎖V領域は、VHと標示された長円形として示され、軽鎖V領域は、VLと標示された長円形として示され、そして、定常領域は、空白の長円形である。図1に図解した複合サイトカイン融合体は、重鎖のC−末端(図3A)、重鎖のN−末端(図3B)軽鎖のN−末端(図3C)または軽鎖のC−末端(図3D)に配置され得る。さらに、多くの方法があり、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、重鎖および軽鎖のN−末端およびC−末端で、別個に結び付けられ得る、これらの3つを、図3E〜3Gに示す。
【図3−2】図3A〜3Gは、複合サイトカイン融合タンパク質が、さらにIgGなどのインタクトな免疫グロブリンと融合され得る方法のサブセットを略図的に示す。重鎖V領域は、VHと標示された長円形として示され、軽鎖V領域は、VLと標示された長円形として示され、そして、定常領域は、空白の長円形である。図1に図解した複合サイトカイン融合体は、重鎖のC−末端(図3A)、重鎖のN−末端(図3B)軽鎖のN−末端(図3C)または軽鎖のC−末端(図3D)に配置され得る。さらに、多くの方法があり、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、重鎖および軽鎖のN−末端およびC−末端で、別個に結び付けられ得る、これらの3つを、図3E〜3Gに示す。
【図4】図4A〜4Cは、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、可変軽鎖および可変重鎖が融合された「単鎖」抗体と、融合され得、そして、タンパク質が単一ポリペプチドとして発現され、次いでホモ二量化される方法を、略図的に示す。特に、複合サイトカイン融合は、C−末端(図4A)またはN−末端(図4B)に配置され得る。さらに、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、それぞれと直接結び付けられる必要はないが、単鎖抗体部分を介して結合され得る(図4C)。
【図5】図5A〜5Cは、第1のサイトカインと第2のサイトカインが、重鎖および軽鎖由来の融合された可変領域からなる単鎖Fv領域と融合され得る方法を略図的に示す。特に、第1のサイトカイン−サイトカイン融合は、C−末端(図5A)またはN−末端(図5B)で配置され得る。さらに、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインは、直接結び付けられる必要はないが、単鎖Fv部分を介して結合され得る(図5C)。
【図6A】図6Aは、別個のサイトカインまたは融合タンパク質に応答したヒト末梢血球単核細胞(PBMC)によるインターフェロン−γの誘導における、IL−12とIL−2との間の相乗効果を示す。図6Aにおいて、細胞を、植物性血球凝集素活性の前(四角)もしくは後(×)にヒトIL−12を使用して、または植物性血球凝集素活性の前(ひし形)もしくは後(三角)にIL−12−IL−2融合タンパク質を使用して処理した。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは、融合タンパク質として存在するIL−12の濃度を、pg/mlで示す。y軸は、ELISAでアッセイされたIFN−γ濃度(ng/ml)を示す。
【図6B】図6Bは、別個のサイトカインまたは融合タンパク質に応答したヒト末梢血球単核細胞(PBMC)によるインターフェロン−γの誘導における、IL−12とIL−2との間の相乗効果を示す。図6Bは、細胞を、IL−12およびIL−2を1:1のモル比で添加した混合物(黒色ひし形)、ヒトFc−IL−12−IL−2融合タンパク質(灰色四角)およびヒト抗体−IL−12−IL−2融合タンパク質(明るい灰色三角)を用いて処置した実験を示す。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは、融合タンパク質として存在するIL−12の濃度を、pg/mlで示す。y軸は、ELISAでアッセイされたIFN−γ濃度(ng/ml)を示す。
【図7】図7は、別々に融合タンパク質の活性を測定し、そして、非融合IL−12分子の活性と融合タンパク質の活性を比較する、典型的なIL−12のバイオアッセイを示す。描かれているのは、マウスIL−12(白丸)、マウスIL−12およびIL−2を1:1のモル比で添加された混合物(黒四角)、マウスIL−2(白三角)および抗体−マウスIL−12−IL−2融合タンパク質(黒ひし形)に応答した、ヒトPBMCの3H−チミジン取り込みの刺激である。X軸は、インタクトなタンパク質として、または融合タンパク質として存在する単量体のサイトカインの濃度(pM)を示し;y軸はトリチウムチミジン組み込みのcpmを示す。
【図8】図8は、標準IL−2バイオ活性アッセイを示す。グラフは、マウスIL−2(丸)、抗体−マウスIL−12−IL−2融合タンパク質(ひし形)およびマウスIL−12(四角)に応答した、マウスCTLL細胞増殖の刺激を示す。X軸は、インタクトなタンパク質として、または融合タンパク質として存在する単量体サイトカインの濃度(pM)を示す。細胞を、様々な量のサイトカインまたは融合タンパク質を含む培地で、48時間、インキュベートし、次いで、MTT/MTSアッセイを使用して、生存細胞数をアッセイした。y軸は、光学密度(OD)の単位にして、490ナノメーターの吸光度を示す。
【図9】図9は、マウスIL−12(白丸)、マウスIL−12およびIL−2を1:1のモル比で添加した混合物(黒丸)、マウスFc−単鎖IL−12−IL−2融合タンパク質(黒三角)およびマウスIL−2と融合されたマウス単鎖IL−12(黒ひし形)に応答した、ヒトPBMCによる3H−チミジン取り込みの刺激を示す。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは融合タンパク質として存在する単量体のサイトカインの濃度(pM)を示す;y軸はトリチウムチミジン組み込みのcpmを示す。
【図10】図10は、マウスIL−12(白丸)、マウスIL−12およびGM−CSFを1:1のモル比で添加した混合物(黒丸)、マウスGM−CSF(黒三角)およびマウスFc−マウスIL−12−GM−CSF融合タンパク質(×)に応答した、ヒトPBMCによる3H−チミジン取り込みの刺激を示す。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは融合タンパク質として存在する、単量体のサイトカインの濃度(pM)を示す;y軸はトリチウムチミジン組み込みのcpmを示す。
【図11】図11は、KS−1/4の抗原であるヒトEpCAMを発現するように操作されたCT26結腸癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するBalb/Cマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処理の影響を示す。黒ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、6マイクログラムのKS−IL−12−IL−2で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、3.4マイクログラムのKS−IL−2、および5.3マイクログラムのKS−IL−12で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図12】図12は、ヒトEpCAMを発現するように操作されたCT26結腸癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するSCIDマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合たんぱく質処置の影響を示す。ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、6マイクログラムのKS−IL−12−IL−2で処置されたマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、3.4マイクログラムのKS−IL2および5.3マイクログラムのKS−IL12で処置されたマウスの平均腫瘍容積を示す。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図13】図13は、ヒトEpCAMを発現するように操作されたルイス肺癌(LLC)細胞の皮下腫瘍を保有するマウスの抗体−サイトカイン処置および抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を比較する。ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、20マイクログラムのKS−IL2を0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、20マイクログラムのKS−IL12を0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。Xは、20マイクログラムのKS−IL−12−IL−2を0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図14】図14は、ヒトEpCAMを発現するように操作されたルイス肺癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するマウスの抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を示す。ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、20マイクログラムのKS−IL−12−IL−2で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、11.5マイクログラムのKS−IL2および18マイクログラムのKS−IL12で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図15】図15は、ヒトEpCAMを発現する、またはしないいずれかのルイス肺癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を示す。黒四角は、LLC/KSA由来腫瘍を保有するマウスの平均腫瘍容積を示す。黒ひし形は、LLC由来腫瘍を保有するマウスの平均腫瘍容積を示す。マウスは、0、1、2、3および4日目に20マイクログラムのKS−IL12−IL2で処置した。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図16】図16は、ルイス肺癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を示す。約106の細胞を、0日目に皮下に注射した。ひし形は、ナイーブなマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、ヒトEpCAMを発現をするように操作されたルイス肺ガン細胞由来の皮下腫瘍をあらかじめ有しており、そして、KS−IL12−IL2の処置によってこれらの腫瘍を治癒されたマウスの、平均腫瘍容積を示す。X軸は、注射後の経過日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図17A】図17Aは、正常な免疫系を有する動物中で、細胞が腫瘍を形成する能力に対する、腫瘍細胞による単一または複合サイトカインタンパク質分泌の影響を示す。図17Aにおいて、4セットのマウスを比較した:1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(黒ひし形);5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白ひし形);scIL−12を発現する1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(黒三角);およびscIL−12を発現する5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白三角)。X軸は、腫瘍細胞の注射後の日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図17B】図17Bは、正常な免疫系を有する動物中で、細胞が腫瘍を形成する能力に対する、腫瘍細胞による単一または複合サイトカインタンパク質分泌の影響を示す。図17Bは、1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(黒ひし形);5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白ひし形);scIL−12−IL−2を発現する1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(×);およびscIL−12を発現する5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白丸)。X軸は、腫瘍細胞の注射後の日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図18】図18は、免疫欠損の動物において細胞が腫瘍を形成する能力に対する、腫瘍細胞による、単一または複合サイトカインタンパク質分泌の影響を示す。この図は、1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したSCIDマウス(黒ひし形);scIL−12を発現する1×106のLLC腫瘍細胞皮下注射したSCIDマウス(黒三角);およびscIL−12を発現する1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したSCIDマウス(白丸)を比較する。X軸は、腫瘍細胞の注射後の日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、2つ以上の別個のサイトカインが融合または複合体化するタンパク質分子を提供する。そのタンパク質複合体または融合タンパク質は、必要に応じて、さらなるタンパク質部分(抗体Fc領域および抗原結合部位を含む抗体領域などの多量体化および標的化を可能にする部分を含む)を含む。本発明はまた、複合サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸を提供する。本発明はまた、疾患の処置および医療条件における、複合サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸の構築のための方法、複合サイトカイン融合タンパク質の産生のための方法、および複合サイトカイン融合タンパク質の使用についての方法を提供する。
本明細書で使用される場合、「サイトカイン」とは、免疫系の細胞の活性を調節する分泌タンパク質またはその活性化フラグメントまたはその変異体をいう。サイトカインの例としては、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、腫瘍壊死因子、免疫細胞前駆体についてのコロニー刺激因子などが挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロ二量体サイトカイン」とは、2つの別個のタンパク質サブユニットからなるサイトカインについていう。現在、IL−12が、唯一の天然に存在する公知のヘテロ二量体サイトカインである。しかし、人工のヘテロ二量体サイトカインが構築され得る。例えば、IL−6およびIL−6Rの可溶性フラグメントは組み合わされ、CNTFおよびCNTF−Rαが形成し得るように、ヘテロ二量体サイトカインを形成し得る[Trinchieri(1994)Blood 84:4008]。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「インターロイキン−12」(IL−12)とは、p35およびp40サブユニット、またはp35およびp40の活性単鎖融合体、または、これらの種改変体、フラグメント、もしくは誘導体からなる2つのサブユニットのサイトカインをいう。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「インターロイキン−2」(IL−2)とは、任意の哺乳動物IL−2(例えば、ヒトIL−2、マウスIL−2)または、これらの活性種もしくは対立遺伝子改変体、フラグメントもしくは誘導体をいう。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「GM−CSF」とは、哺乳動物顆粒球/単球コロニー刺激因子サイトカインタンパク質(例えば、ヒトGM−CSF、マウスGM−CSF)、またはこれらの活性種もしくは対立遺伝子改変体、フラグメントもしくは誘導体をいう。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリン重鎖定常領域のカルボキシル末端部分、またはそのアナログもしくはその部分を意味する。例えば、IgGの免疫グロブリンFc領域は、少なくともヒンジ領域の一部(CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含み得る。好ましい実施形態では、Fc領域は、少なくともヒンジ領域の一部およびCH3ドメインを含む。別の好ましい実施形態では、Fc領域は、少なくともCH2領域を含み、そしてより好ましくは、ヒンジ領域の少なくとも一部をまた含む。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「ペプチドリンカー」とは、2つのタンパク質(例えば、タンパク質およびFc領域)を共に結合するために使用される1つ以上のペプチドを意味する。このペプチドリンカーはしばしば、一連のアミノ酸(例えば、主にグリシンおよび/またはセリン)である。好ましくは、このペプチドリンカーは、主にグリシンおよびセリン残基の一連の混合物であり、そして、約10〜15アミノ酸長である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「多量体の」とは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)または非共有結合の相互作用を介して2つ以上のタンパク質サブユニットの安定した会合をいう。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「二量体の」とは、2つのタンパク質サブユニットが共有結合または非共有結合の相互作用を介して安定して会合する特定の多量体分子をいう。安定した複合体は、少なくとも数分の解離速度(すなわち、オフの速度)を有する複合体である(結果として、この複合体は、インビボ使用中に標的組織に到達するのに十分な安定した長さであり、そして、生物学的効果を有する)。Fcフラグメントはそれ自身が、代表的に、ヒンジ領域の一部、CH2および/またはCH3ドメインを含む重鎖フラグメントの二量体を形成する。しかし、多数のタンパク質リガンドは、二量体としてそれらのレセプターに結合することが公知である。サイトカインXが自然に二量体化する場合、Fc−X分子のX部分は、はるかに大きい程度に、二量体化する。なぜなら、この二量体化プロセスは、濃度依存性であるからである。このFcによって結合される2つのX部分の物理的近接は、二量体化を細胞内プロセスとし、二量体の方へ平衡状態を大きく変化させ、そして、レセプターに対するこの結合を増強する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」とは、宿主細胞に取り込まれ、そして、組換えられて宿主細胞ゲノムに組み込まれるか、または、エピソームとして自律的に増幅されるのに適格性のヌクレオチド配列を含む任意の核酸を意味する。このようなベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターの非制限的な例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子発現」または「タンパク質の発現」とは、DNA配列の転写、mRNA転写産物の翻訳、およびタンパク質産物の分泌または単離可能な形態でのタンパク質産物の産生のどちらかを意味することが理解される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「免疫サイトカイン」とは、米国特許第5,650,150号で開示されるように、抗体およびサイトカインを含む融合タンパク質である。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「リーダー配列」とは、第2のタンパク質配列(通常N末端)に付着され、そして、この第2のタンパク質配列を細胞から分泌されるように指向するタンパク質配列である。このリーダー配列は、通常、第2のタンパク質配列から切断されそして除去され、これは、成熟タンパク質となる。この用語「リーダー配列」は、一般的に「シグナル配列」と同義語である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「EpCAM」とは、上皮細胞付着分子をいい(Cirulliら[1998]140:1519−1534)、そして、モノクローナル抗体KS−1/4によって結合される抗原を意味する「KSA」と同義語である。EpCAMは、上皮細胞に由来する癌細胞上で豊富に発現される細胞表面タンパク質である。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「KS−1/4」とは、EpCAMに結合する特定のモノクローナル抗体をいう。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「KS−IL2」「KS−IL12」および「KS−IL12−IL2」などは、インターロイキン2を有するKS−1/4、インターロイキン12を有するKS−1/4、ならびにインターロイキン12およびインターロイキン2の両方を有するKS−1/4からそれぞれなる抗体−サイトカイン融合タンパク質をいう。類似の名前の融合タンパク質構築物もまた本明細書中で使用される。抗体分子のいくつかの部位でサイトカインを融合することが可能であるので、「KS−IL12−IL2」などの記載は、明確に他を示さなければ、任意の可能な部位で融合されたインターロイキン12およびインターロイキン2の両方を有するKS−1/4を含むタンパク質の分類をいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「14.18」とは、腫瘍特異的抗原GD2に結合する特定のモノクローナル抗体をいう。
【0047】
本発明を使用するタンパク質構築物のいくつかの例示的な実施形態は、図1〜5に例示される。図2〜5に概略される分子の一部は、1A〜1Iと標識され、図1A〜1Iに示される融合タンパク質についていい、そして、図1由来の融合タンパク質のいずれかが、示されるように他のタンパク質にさらに融合され得ることを例示する。サイトカインは長方形として示され、抗体の定常領域は楕円形として示され、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は標識された楕円形として示されている。
【0048】
本発明は、2つの異なったサイトカインおよび必要に応じてさらなるタンパク質部分を含むタンパク質複合体を記載する。ホモ二量体サイトカイン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、IL−5、IL−8など)は、複数のサブユニットを含むが、それにも関わらず、単一のサイトカインである。同様に、IL−12などのヘテロ二量体サイトカインは、異なったサブユニットを含むが、単一のサイトカインである。さらに、通常はホモ二量体サイトカインのヘテロ二量体形態(例えば、MCP−1/MCP−2ヘテロ二量体)または、通常はへテロ二量体サイトカインの2つの対立形質(例えば、Zhang,J.Biol.Chem.[1994]269:15918−24)は、単一のサイトカインである。本発明の複合体は、2つの異なったサイトカインを含み、これらのそれぞれ(例えば、IL−2およびIL−12;IL−4およびGM−CSF;MCP−1およびエオタキシン(eotaxin)など)は、免疫系の細胞の活性を調節することができる。
【0049】
図1Aは、本発明の好ましい実施形態を示す:融合タンパク質10では、第1のサイトカイン12のC末端は、必要に応じてリンカー領域を介して(データは示されていない)、第2のサイトカイン14のN末端に融合される。本発明のいくつかの実施形態では、本発明のタンパク質複合体は、有意に異なる血清の半減期を有する少なくとも2つのサイトカインを含む。例えば、小さいタンパク質および大きいタンパク質を使用することは、しばしば、より大きいタンパク質に特徴的な循環半減期を有する融合タンパク質を生じる。従って、IL−12および第2のサイトカインの組み合わせた効果が所望である状況では、以下の一般式の融合タンパク質として2つのサイトカインを発現することが有利である:IL−12−XまたはX−IL−12(ここで、Xは、第2のサイトカインである)。2つの特定の利点が見出される。第1に、より速く清澄されるサイトカインの血清半減期が延びる。第2に、両方のサイトカインの血清半減期は、お互いに非常に類似するようになる。
【0050】
IL−12などの2鎖のサイトカインは、2鎖のサイトカインのどちらかの鎖のN末端またはC末端で、別のサイトカインに融合され得る。1つの実施形態では、第2のサイトカインは、IL−12のp35またはp40サブユニットのいずれかのN末端またはC末端のいずれかに融合される(図1B〜1E)。図1Bの融合タンパク質16では、第1のサイトカイン12のN末端は、IL−12のp40サブユニット18のC末端に融合される。p40サブユニット18は、共有結合22によってIL−12のp35サブユニット20に連結される。図1Cの融合タンパク質24では、p40サブユニット18のN末端は、第1のサイトカイン12のC末端に融合され、そして、共有結合22によってp35サブユニット20に連結される。図1Dは、第1のサイトカイン12のN末端がp35サブユニット20のC末端に融合される融合タンパク質26を示し、p35サブユニット20は、共有結合20によって、p40サブユニット18に連結される。図1Eでは、融合タンパク質28は、p35サブユニット20を含み、これは、そのN末端が第1のサイトカイン12のC末端に融合され、そして、共有結合22によって、p40サブユニット18に連結される。
【0051】
第2の実施形態では、IL−12のサブユニットは融合され、N末端の位置で、p35サブユニットまたはp40サブユニットのいずれかと、単鎖タンパク質(scIL−12)を形成し得る;第2のサイトカインは、生じるscIL−12のN末端またはC末端に付着され得る(図1F〜1I)。従って、図1Fに示される好ましい実施形態では、融合タンパク質30は、単鎖IL−12を含み、ここで、p40サブユニット18のN末端は、必要に応じてペプチドリンカーを介して、p35サブユニット20のC末端に融合される。この実施形態では、サイトカイン12のN末端は、p40サブユニット18のC末端に融合される。図1Gに示される実施形態では、p35サブユニット20のN末端は、必要に応じてペプチドリンカーを介して、サイトカイン12のC末端に融合される。図1Hおよび1Iは、p35サブユニットのN末端が、必要に応じてペプチドリンカーを介して、p40サブユニットのC末端に融合される、IL−12の別の単鎖バージョンを含む融合タンパク質34および36を示す。融合タンパク質34(図1Hに示される)において、サイトカイン12のN末端は、p35サブユニット20のC末端に融合される。融合タンパク質36(図1Iに示される)において、p40サブユニット18のN末端は、サイトカイン12のC末端に融合される。大いに好ましい実施形態では、IL−12は、IL−2に融合される。
【0052】
このような分子の生成は、さらに実施例において例示される。
【0053】
ヘテロ多量体分子(例えば、IL−12または抗体)を、非同一のサブユニットが、短いアミノ酸リンカーによって連結される単鎖分子として発現することは、しばしば、都合がよい[Hustonら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.85:5879;Lieschkeら(1997)Nat Biotechnol.15:35;Lieschke;G.J.およびMulligan;R.C.、米国特許第5,891,680号]。遺伝子融合が構築され、次いで、単一の組換えDNA構築物を含む細胞中で、所望のタンパク質が発現され得る。このようなヘテロ多量体サイトカインの単鎖バージョンは、さらに、第2のサイトカインに融合され得、これは、さらに、単一の組換えDNA構築物から発現される所望の活性を有する融合タンパク質を可能にする。このような分子の発現は、実施例で例示される。
【0054】
本発明はまた、IL−4およびGM−CSFを含む融合タンパク質を記載する。この組み合わせは、樹状細胞によって提示される抗原を機能的に刺激する際に、特に有用である。別の有用な融合体は、IL−12およびIL−18を含む。これらの両方のサイトカインは、Th1応答を促進するが、いくらか異なった相補的な活性を有する。
【0055】
本発明はまた、多数の別個の融合サイトカインが、多量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得るタンパク質にさらに融合される融合タンパク質を記載する。このような分子の利点は、1つ以上のサイトカインの効力が、二量体化によって、増強され得るということである。いくつかの場合では、このサイトカインが二量体としてそのレセプターに結合するので、二量体化による効力の増強が発生し得る。1つの実施形態では、複合サイトカインは、抗体分子の一部(例えば、Fc領域)に融合される(図2)。別の実施形態では、IL−12および第2のサイトカインは、ホモ二量体化タンパク質部分に融合される。好ましい実施形態では、第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。この融合タンパク質は、種々の方法によって作製され得、融合タンパク質のN末端からC末端までのいくつかの別個のタンパク質部分の全ての多様な順序を反映する。例えば、インターロイキン12および第2のサイトカインが、Fc領域に融合される場合、この2つのサイトカインは、両方とも、このFc領域のN末端またはC末端に対して任意の順序で融合されるかもしれないし、または、一方のサイトカインが、N末端に融合され、他方がC末端に融合されるかもしれない。
【0056】
これらの順列のいくつかは、図2に例示される。例えば、図2Aに示される実施形態では、本発明の融合タンパク質44は、ヒンジ領域38、CH2領域40およびCH3領域42を含むFc領域のC末端に融合される。融合タンパク質44は、種々の構造を有し得、例えば、図1A〜1Iに示される融合タンパク質10、16、24、26、28、30、32、34、または36の構造が挙げられる。融合タンパク質44が、1つより多くのN末端およびC末端を有する場合(融合タンパク質16、24、26、および28におけるように)、Fc領域は、融合タンパク質44のいずれかのN末端に融合され得る。図2Bに示されるように、融合タンパク質44は、Fc領域のN末端に融合され得る。図2Cに示される実施形態では、第1のサイトカイン12は、Fc領域のN末端に融合され得、そして、第2のサイトカイン14は、このFc領域のC末端に融合され得る。
【0057】
(構造的考慮)
サイトカイン(タンパク質の1クラスとしての)は、サイズおよび一般的な折り畳み特性において、類似していることに注意するのは重要である。従って、本明細書中で開示される特定の実施例は、サイトカインタンパク質のファミリーについての複合サイトカイン融合タンパク質をどのように構築するかを例示する。例えば、多くのサイトカインは、「4つのへリックス束」と呼ばれるタンパク質折り畳みクラスに分類される。4つのへリックス束タンパク質としては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン6(IL−6)、白血病阻害因子(LIF)、成長ホルモン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、レプチン(leptin)、エリトロポイエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−5(IL−5)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、IL−2、IL−4、インターロイキン−3(IL−3)、IL−10、インターフェロン−β、インターフェロン−αおよび密接に関連したインターフェロンτ、ならびにインターフェロンγ(IFN−γ)が挙げられる。
【0058】
IL−5およびINF−γを除き、これらのタンパク質の全ては、4つのおおよそ平行なαへリックスおよび2つのクロスオーバー連結を使用して、モノマーとして折り畳まれる。IL−5およびIFN−γを除くそれぞれの場合に、N末端およびC末端は、タンパク質の同じ面上に存在する。4つのへリックス束のタンパク質(IL−5およびIFN−γを除く)は、同じ折り畳みパターンを有するので、IL−2、IL−4およびGM−CSFについて本明細書中に記載される方法はまた、他の4つのへリックス束タンパク質およびモノマーとして折り畳まれる他の小サイトカインタンパク質に適用される。
【0059】
ケモカインは、細胞外勾配を形成し、そして、免疫細胞の特定のクラスの走化性を媒介すると考えられるサイトカインの特定のクラスである。例えば、MCP−1は、単球、マクロファージ、および活性化T細胞についての化学誘引物質であり;エオタキシンは、好酸球についての化学誘引物質であり;そして、インターロイキン8は、好中球についての化学誘引物質である。これらの化学誘引物質機能に加えて、ケモカインは、他のサイトカインのように、特定の標的細胞における特定の遺伝子の発現を誘導し得る。例えば、MCP−1は、血管の平滑筋細胞における組織因子の発現を誘導すると考えられている(Schecterら、J Biol Chem.[1997]272:28568−73)。
【0060】
本発明は、1つ以上のサイトカインがケモカインである、サイトカイン−サイトカイン融合体および抗体−サイトカイン−サイトカイン融合体を開示する。本発明はまた、3つ以上のサイトカインを有するタンパク質構築物を開示し、ここで、1つ以上のサイトカインがケモカインである。例えば、ケモカインIP−10、RANTES、MIP−1α、MIP−1β、マクロファージ化学誘引物質タンパク質、エオタキシン、リンホタクチン(lymphotactin)、BLCは、抗体部分のような他の部分を有するかまたは有さない第2のサイトカインに融合され得る。
【0061】
例えば、ヒトゲノムは、少なくとも50のケモカインをコードする。公知のケモカインは、概して、類似の3次元モノマー構造およびタンパク質折り畳みパターンを共有する。従って、本明細書中に開示されるタンパク質構築物および構築ストラテジーの一般的な形態は、種々の公知のケモカインまたは未だ発見されていないケモカインに対して適用され得る。
【0062】
ケモカインは、3つのβ鎖および1つのαへリックスを有する別個の折り畳みパターンを有する。ケモカインは、モノマーのように折り畳み、次いで、全てではないがいくつかの場合で、折り畳み後、二量体化する。全てのケモカインについて、モノマーサブユニットの折り畳みパターンは、同一であって、そして、全体の構造は、極めて類似している。例えば、インターロイキン−8、血小板因子4、黒色腫増殖刺激活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質、MIP、RANTES(活性化の際にレギュレートされ、正常なT細胞が発現および分泌される)、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1、MCAF)、エオタキシン、単球化学誘引物質タンパク質−3(MCP−3)、フラクタルカイン(fractalkine)のケモカインドメイン、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1(SDF−1)、マクロファージ炎症性タンパク質−2、ケモカインhcc−2(マクロファージ炎症性タンパク質−5)、Gro β、サイトカイン誘導性好中球化学誘引物質およびCINC/Groの三次元構造は、X線結晶学および/またはNMR法によって決定されている;これらの構造の全ては、同一の折り畳みを示し、そして、一般的に類似している。これらのケモカインは、同一の折り畳みパターンを有しているので、リンホタクチンについて本明細書中で使用される方法はまた、他のケモカインタンパク質にも適用される。
【0063】
ケモカインの遊離N末端は、しばしば、その機能について重要である。従って、第2のサイトカイン、抗体部分、または他のタンパク質部分が、このケモカインのC末端に融合され得る融合体を構築することは、いくつかの実施形態において有利である。2つの活性なケモカインを含むタンパク質複合体を構築するために、例えば、2つの異なったケモカインを、抗体の重鎖および軽鎖のN末端に融合することは有用である。いくつかのケモカイン(例えば、IL−8)は、生理学的条件下で、二量体である。特定の適用のために、複合サイトカイン抗体融合体(例えば、IL−8−抗体−サイトカイン融合体)を、融合していないIL−8部分または抗体部分と相互作用しない異なった融合パートナーを有するIL−8部分と共に、同時発現することは有用である。この方法では、異なったIL−8部分は、全てのIL−8部分が抗体鎖に融合された場合に生じ得る空間的束縛または重合なしで、ヘテロ二量体化し得る。次いで、この所望の複合サイトカイン融合タンパク質は、サイズに基づいてかまたはStaphylococcus A タンパク質のような抗体結合タンパク質への結合に基づいて、分離され得る。
【0064】
1つのケモカインを含む複合サイトカイン融合タンパク質については、この融合タンパク質がまた、局在化機能(例えば、抗原に結合する抗体部分)を含む実施形態が、好ましい実施形態である。理論により束縛されることを望まないが、身体へのケモカインの広範な分布は、何も効果を有さないか、またはそのケモカインに対する細胞の一般的な脱感作を導くことが、一般的に考えられている。さらに、ケモカインの化学誘引剤機能は、そのケモカインの濃度差異が存在する場合にのみ、顕著であり得ると考えられている。
【0065】
好ましい実施形態は、リンホカイン−抗体−インターロイキン−2融合タンパク質である。別の好ましい実施形態は、ケモカインおよび第2のサイトカインの両方が、Th1応答を促進する、実施形態である。例えば、IP−10およびIL−12を含む融合タンパク質は、1つの非常に好ましい実施形態である。
【0066】
(短い血清半減期を有する複数のサイトカインの半減期の延長)
本発明はまた、長い血清半減期を有する第3の部分に融合した、2つのサイトカイン(両方が短い血清半減期を有する)を含む融合タンパク質を記載する。例えば、樹状細胞の刺激が所望である場合には、IL−4およびGM−CSFの活性を組み合わせることが、有用である(Thurner、J Immunol.Methods[1999]223:1−15;Paluckaら、[1998]J.Immunol.160:4587−4595)。IL−4およびGM−CSFの両方は、短い血清半減期を有する低分子であるので、Fc領域、IL−4、およびGM−CSFを含む融合タンパク質を構築することが、有用である。得られる分子は、樹状細胞の増殖および活性の強力な刺激剤である。同様に、IL−4およびGM−CSFの両方は、所定の抗原を発現する細胞の部位に対する、組み合わせられたサイトカイン活性を誘導する目的で、抗体のような標的成分に融合され得る。
【0067】
Fc領域は、単独でかまたはインタクトな抗体の一部として、複合サイトカイン融合体に、特定の適用に依存して、有利であり得るかまたは不利であり得るいくつかの特性を与え得る。これらの特性としては、二量化、血清半減期の延長、相補体を固定する能力、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を媒介する能力、およびFcレセプターへの結合が挙げられる。血清半減期の延長が、主として望ましい特徴であり、そしてFc領域の免疫学的特性が重要ではないかまたは所望ではない場合には、天然の改変体であるかまたは1つ以上の免疫学的特性を欠く変異体である、Fc領域を使用することが、好ましい。例えば、短い血清半減期を有する2つ以上のサイトカインの血清半減期を等しくし、そして延長することが望ましい場合には、ヒトIgG2またはIgG4(これらはそれぞれ、Fcレセプターに対する親和性が減少しているかまたは有さない)由来のFc領域を含む複合サイトカイン融合タンパク質を構築すること、あるいはFcレセプター結合部位において変異を有するFc領域を使用することが、好ましい。実際に、いくつかのサイトカインが抗体に融合することによって、この融合タンパク質のFcレセプターに対する親和性が増加すること、およびこのことによって、動物におけるクリアランスの速度がより速くなることが、既に示されている。Fcレセプターに対する親和性が減少したFc領域を使用することは、これらの分子の血清半減期を大いに改善することが示された(Gilliesら、[1999]Cancer Res.59:2159−2166)。いくつかの状況下において、そして使用されるサイトカインに依存して、Fcレセプターに結合するFc領域は、複合サイトカイン融合タンパク質のインターナリゼーション、および1以上のサイトカイン部分の分解を生じる。
【0068】
(標的化)
本発明はまた、2つ以上のサイトカインが、これらのサイトカインを特定の標的分子、細胞、または身体位置に局在化させ得るタンパク質に付着した、融合タンパク質を記載する。局在化能力を有する好ましい分子は、抗体、または抗体の抗原結合可変領域を含む部分である。しかし、他の局在化分子(またはそのドメイン)が使用され得る(例えば、特定のリガンドまたはレセプター、天然に存在する結合タンパク質、特定の基質に結合する酵素、特定の結合能力または局在化能力に関して選択された人工的に生成したペプチド、標的化能力を生じる別の物理化学的特性を有するペプチド、標的化される別の分子に結合することによって標的化能力を有するタンパク質、あるいは他の型のタンパク質)。2つのサイトカインを標的化分子に融合させる場合には、好ましい第1のサイトカインは、IL−12である。IL−12が使用される場合には、好ましい第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。
【0069】
抗体の場合には、2つ以上のサイトカインが融合され得る多数の方法が存在する。なぜなら、いくつかの付着可能な部位が存在するからである。例えば、IgG抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される。これら2つのサイトカインは、互いに融合され、次いで、この重鎖または軽鎖のいずれかのN末端またはC末端に融合し得る。あるいは、各サイトカインは、抗体分子のN末端またはC末端の1つに、別々に融合し得る。
【0070】
図3は、2つのサイトカインが1つの抗体分子に融合し得る様式のサブセットを示す。例えば、図3Aを参照すると、本発明の融合タンパク質44は、免疫グロブリン重鎖46のC末端に融合し得、この重鎖は、免疫グロブリン軽鎖48に結合している。図2においてと同様に、融合タンパク質44は、種々の構造(例えば、図1A〜1Iに示す、融合タンパク質10、16、24、26、28、30、32、34または36の構造を含む)を有し得る。図3Bに示すように、融合タンパク質44は、免疫グロブリン軽鎖48に結合した免疫グロブリン重鎖46のN末端に、融合し得る。図3Cおよび3Dに示す実施形態においては、融合タンパク質44は、免疫グロブリン重鎖46に結合した免疫グロブリン軽鎖48のN末端(図3C)またはC末端(図3D)に融合する。図3Eおよび3Fに示すように、第1のサイトカイン12は、第2のサイトカイン14に融合した免疫グロブリン重鎖46に結合した、免疫グロブリン軽鎖48に融合し得る。サイトカイン12および14は、免疫グロブリン鎖のN末端(図3E)またはC末端(図3F)に融合し得る。あるいは、図3Gにおいてと同様に、第1のサイトカイン12は、免疫グロブリン軽鎖48のN末端に融合し得、一方で第2のサイトカイン14は、免疫グロブリン重鎖46のC末端に融合する。
【0071】
(単鎖抗体への融合)
抗体を単鎖分子として表すことが、時々好都合である。本発明はまた、2つ以上のサイトカインが単鎖抗体に融合した、融合タンパク質を提供する。これは、所望の融合タンパク質を発現させる場合に使用されるDNA構築物の数を減少させるという利点を有し、このことは、遺伝子治療において特に有用であり得る。特に、サイトカインが単鎖分子である場合には、これらのサイトカインの、単鎖抗体への融合は、融合タンパク質が単一のタンパク質鎖として発現することを可能にする。
【0072】
図4A〜4Cに示されるように、いくつかの実施形態において、サイトカインは、単鎖抗体に、そのN末端、そのC末端、または両方の末端において、融合し得る。例えば、図4Aに示すように、融合タンパク質44は、軽鎖可変領域52および重鎖可変領域54を有する単鎖抗体50のC末端に融合し得る。図4Bに示すように、融合タンパク質44はまた、単鎖抗体50のN末端に融合し得る。図4Cに示す実施形態においては、第1のサイトカイン12は、単鎖抗体50のN末端に融合し、そして第2のサイトカイン14は、単鎖抗体50のC末端に融合する。
【0073】
好ましい実施形態は、IL−12および単鎖抗体に対する第2のサイトカインの融合体を含む。より好ましい実施形態は、IL−2またはGM−CSFを、第2のサイトカインとして含む。
【0074】
抗体の定常領域は、種々のエフェクター機能を媒介する可能性を有する。例えば、IgG1は、相補体の結合、ADCC,およびFcレセプターへの結合を媒介する。サイトカインが融合する位置は、抗体定常領域のエフェクター機能を変化させ得、このことは、これらのエフェクター機能の改変が所望である場合に、有用である。
【0075】
いくつかの場合においては、2つ以上のサイトカインの、抗体の標的化領域を有するが定常領域を有さない部分への融合体を構築することが、望ましくあり得る。このような融合タンパク質は、2つ以上のサイトカインへの完全抗体の融合体より小さく、このことは、特定の目的において有利であり得る。さらに、このような融合タンパク質は、インタクトな抗体の1つ以上のエフェクター機能を欠くが、抗体の標的化能力を維持する。
【0076】
従って、本発明は、2つ以上のサイトカインが1つの単鎖Fv領域に融合した、融合タンパク質を特徴とする。図5A〜5Cに図示する実施形態に示すように、2つのサイトカインが、Fv領域のN末端もしくはC末端に融合され得るか、または1つのサイトカインが各末端に融合され得る。例えば、図5Aに示すように、本発明の融合タンパク質44は、免疫グロブリン軽鎖可変領域52および免疫グロブリン重鎖可変領域54を含む、単鎖Fv領域のC末端に融合され得る。融合タンパク質44はまた、図5Bに示すように、Fv領域のN末端に融合され得る。図5Cに示すように、第1のサイトカイン12がFv領域のN末端に融合し得、そして第2のサイトカイン14がFv領域のC末端に融合し得る。
【0077】
(複数のサイトカインのためのヘテロ二量体ビヒクルとしての抗体)
いくつかの状況において、サイトカインの2つに関してタンパク質の同一の末端が活性のために必須である、2つ以上のサイトカインの融合体を構築することが、望ましい。例えば、2つの異なるサイトカインの天然に存在するN末端が、各サイトカインの活性のために必須であり得る。両方のサイトカイン部分が活性である単一ポリペプチド鎖融合タンパク質を構築することは、不可能である。
【0078】
抗体とは、ジスルフィド結合によって共有結合される重鎖および軽鎖からなる、ヘテロ二量体タンパク質である。両方がインタクトな融合していないN末端を必要とする2つのサイトカイン部分を有する、複合サイトカイン融合タンパク質を構築することが、所望である場合には、これら2つのサイトカインを抗体の重鎖および軽鎖のN末端に別々に融合させることが、好ましい(図3E)。同様に、両方がインタクトな融合していないC末端を必要とする2つのサイトカイン部分を有する、複合サイトカイン融合タンパク質を構築することが所望である場合には、これら2つのサイトカインを、抗体の重鎖および軽鎖のC末端に別個に融合させることが、好ましい(図3F)。抗体が、2つのサイトカインをこの様式で接続するためのビヒクルとしてのみ使用される場合には、免疫機能に関連するさらなる特性を与える抗体の部分を、変異または欠失させることが、有用であり得る。例えば、Fab領域をビヒクルとして使用することは、好ましくあり得る。なぜなら、Fab領域は、抗体のヘテロ二量化特性を維持するが、Fc領域に特徴的な機能を欠くからである。抗原結合部位が非機能的である抗体または抗体フラグメントを使用することもまた、有用であり得る。
【0079】
抗体への複数のサイトカインの融合は、本発明の新規特徴の多くを組み合わせる。抗体−複合サイトカイン融合体において、これらのサイトカインの血清半減期は、等しくされ、そして延長される;両方のサイトカインの活性は、標的に局在化され、そして特に毒性の効果は、複数の相乗的に作用するサイトカインの全身投与に起因して、回避される;各サイトカインは、効果的に二量化または多量体化される;そしてこれらのサイトカインは、必ずしも直接的に融合される必要はなく、抗体分子の重鎖および軽鎖の異なる部位に融合され得る。
【0080】
複数のサイトカインおよび1つの抗体を含む融合タンパク質を設計する際には、多数の選択肢および構造が存在し、これらは、慣用的な実験によって区別され得る。構造的生物学的考慮もまた、有用である。例えば、多くのサイトカインは、4ヘリックス束と称されるクラスに入る。これらの構造は、4つのαヘリックスからなり、そして同じ接近のN末端およびC末端を有する。一般に、N末端およびC末端の周囲のサイトカインの面は、サイトカインレセプターへの結合において使用されず、従って、いずれかの末端が、抗体または第2のサイトカインへの融合のために使用され得る。しかし、4ヘリックス束のサイトカインのN末端およびC末端の両方を、異なる部分に直接融合させることは、立体的な理由により、時々困難である。2つの異なる4ヘリックス束サイトカインを抗体に融合させることが所望である場合には、従って、各サイトカインをその抗体の異なる部位に融合させることが、有用である。あるいは、Ig鎖−サイトカイン−サイトカインの形態のポリペプチド鎖を構築することが必要である場合には、1つ以上の可撓性リンカーを使用して、立体の問題を克服し得る。
【0081】
抗体の代わりに、他の分泌ヘテロ二量体分子を使用して、複数のサイトカインを保有することもまた、可能である。例えば、前立腺特異的抗原およびこれが複合体化するプロテアーゼインヒビター、IgA重鎖およびJ鎖、TGF−βファミリーメンバーならびにこれらのアスタシン様結合パートナーを含む複合体、またはIL−12が、使用され得る。
【0082】
(核酸)
本発明はまた、上記型のタンパク質の各々を発現し得る核酸を特徴とする。これらとしては、2つ以上のサイトカインを含む融合タンパク質をコードする核酸、2つ以上のサイトカインおよび1つの二量化ドメイン(例えば、Fc領域)を含む融合体、1つの抗体に融合した2つ以上のサイトカインを含む融合体、ならびに1つのFv領域に融合した2つ以上のサイトカインが挙げられる。これらの核酸の好ましい形態は、DNAベクターであり、これから、融合タンパク質が、細菌細胞または哺乳動物細胞のいずれかにおいて、発現され得る。複数のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質については、1つより多くのコード核酸が使用され得る。あるいは、2つ以上の融合タンパク質コード配列を、単一の核酸分子上に位置させることが、有用であり得る。これらの例は、複数のサイトカインをコードする特徴付けられた核酸の特定の形態を示す。
【0083】
本発明の核酸は、複合サイトカイン融合タンパク質の生成のためかまたは遺伝子治療の目的のためかのいずれかで、複合サイトカイン融合タンパク質の発現のために特に有用である。
【0084】
本発明の有用な実施形態を合成するための方法、ならびにこれらの薬理学的活性を試験するために有用なアッセイは、実施例に記載される。
【0085】
本発明はまた、薬学的組成物、ならびに広範な種々の疾患の処置および予防(種々の感染および癌の処置、ならびに種々の疾患に対するワクチン接種が挙げられるがこれらに限定されない)におけるこれらの使用の方法を提供する。
【0086】
複合サイトカイン融合タンパク質を使用して、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染、またはウイルス感染、あるいは癌を処置し得る。例えば、IL−12は、多くの型の感染(細菌Listeria monocytogenes;寄生虫Toxoplasma gondii、Leishmania major、およびSchistosoma mansoni;真菌Candida albicans;ならびにウイルスの脈絡髄膜炎ウイルスおよびサイトメガロウイルスによる感染が挙げられるがこれらに限定されない)において、予防的効果を有することが、公知である。サイトカインは、一般に、組み合わせで作用するので、同時に作用することが既知である2つ以上のサイトカインを含む融合タンパク質を使用することは、しばしば有用である。例えば、IL−2は、IL−12の効果と相乗するので、これらのサイトカインを、細菌、寄生虫、真菌およびウイルスによる疾患の処置において組み合わせることは、有用である。
【0087】
感染性疾患の処置の好ましい方法は、複数のサイトカインを感染の部位に配置する標的化剤にさらに融合した、複合サイトカイン融合タンパク質を使用することである。種々の標的化ストラテジーを、以下に記載する。
【0088】
本発明の薬学的組成物は、固体、半固体、または液体の投薬形態(例えば、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤などのような)の形態で、好ましくは、正確な投薬量の投与に適した単位投薬形態で、使用され得る。これらの組成物は、従来の薬学的キャリアまたは賦形剤を含有し、そしてさらに、他の医薬、薬学的薬剤、キャリア、アジュバントなどを含有し得る。このような賦形剤は、他のタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿タンパク質)を含有し得る。このような投薬形態を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者に明らかである。投与される組成物または処方物は、いずれの場合においても、特定の量の活性成分を、処置されている被験体において所望の効果を達成するに有効な量で含有する。
【0089】
本明細書の組成物の投与は、このような活性を示す薬剤のための投与の受容可能な形態のいずれかにより得る。これらの方法としては、経口投与、非経口投与、または局所投与および他の全身形態が挙げられる。注射は、投与の好ましい方法である。
【0090】
投与される活性化合物の量は、もちろん、処置されている被験体、苦痛の重篤度、投与の様式、および処方する医師の判断に依存する。
【0091】
上記のように、IL−2、IL−12、GM−CSF、IL−4、およびその他のようなサイトカインは、癌の処置について調査されている。いくつかの状況下においては、癌の処置において、複合サイトカイン融合タンパク質を使用することが有利である。この理由は、より単純な投与、成分サイトカインの1つの増加した血清半減期、および/または2つのサイトカインの相対的活性の優れた調節である。
【0092】
癌の処置の好ましい方法は、サイトカインの効果が濃縮され得るように、そして全身分布の副作用が回避され得るように、サイトカインを特定の器官または組織に標的化することである。例えば、複数のサイトカインの、Fc領域への融合体は、肝臓に濃縮されることが予測され、このことは、肝臓に制限される癌を処置する際に、有用であり得る。より好ましい方法は、抗体のような標的化剤にさらに融合された、複合サイトカイン融合タンパク質を使用することである。特に、抗体KS−1/4および14.18は、腫瘍特異的抗原に指向される(Varki NMら、Cancer Res[1984]44:681−7;Gilliesら、Journal of Immunological Methods 125:191[1989];米国特許第4,975,369号および同第5,650,150号)。抗体−複合サイトカイン融合体を使用する場合には、腫瘍の型を調査し、そしてその型の腫瘍に存在しやすい抗原に指向される抗体を選択することが、しばしば有用である。例えば、腫瘍を、FACS分析、ウェスタンブロット、腫瘍のDNAの試験、または腫瘍細胞の型を単に同定することによって、腫瘍を特徴付けることが、有用であり得る。腫瘍の特徴付けのこのような方法は、腫瘍の特徴付けの当業者(例えば、腫瘍遺伝子学者および腫瘍生物学者)に周知である。複合サイトカイン融合タンパク質を、種々の他の手段(例えば、特定のリガンドまたはレセプター部分への融合、予め選択された結合活性を有するペプチドアプタマーへの融合、局在化特性を有する低分子への化学的結合体化など)によって標的化することもまた、可能である。これらの標的化方法はまた、他の疾患(例えば、感染)の処置のために、使用され得る。
【0093】
(癌および他の細胞疾患の、遺伝子治療による処置)
本発明の核酸は、癌、および免疫系を特定の細胞型に標的化することが所望である他の疾患の処置のための遺伝子治療剤として、使用され得る。例えば、癌細胞がヒトまたは動物から取り出され、複合サイトカイン融合タンパク質をコードする1つ以上の核酸がこれらの癌細胞にトランスフェクトされ、次いで、これらの癌細胞がヒトまたは動物に再導入される。あるいは、DNAが、癌細胞にインサイチュで導入され得る。次いで、このヒトまたは動物は、これらの癌細胞に対する免疫応答を増加させ、このことは、この癌を治癒またはこの癌の重篤度を低下させ得る。哺乳動物細胞における発現を促進するために適切な調節エレメントに結合された、複合サイトカイン遺伝子融合体が、種々の技術(リン酸カルシウム法、「遺伝子銃」、アデノウイルスベクター、カチオン性リポソーム、レトロウイルスベクター、または他の任意の効率的なトランスフェクション方法が挙げられる)のいずれかによって、癌細胞にトランスフェクトされ得る。この核酸は、他の部分にさらに融合された複合サイトカイン融合タンパク質を、コードし得る。
【0094】
1つより多くの融合サイトカインの融合体を発現する核酸を用いた抗癌遺伝子治療を、融合サイトカイン蛋白質の免疫刺激特性を増大させうる処置などの他の癌治療と組み合わせて行いうる。例えば、本発明核酸は、癌細胞で発現される抗原に対する免疫応答を促進しうる他の蛋白質部分を発現すること、または、そのような蛋白質部分を発現する他の核酸と同時トランスフェクションすることも可能である。特に、B7副刺激表面蛋白質を発現する核酸を癌細胞に共にトランスフェクションしうる(Robinsonら、米国特許第5,738,852号)。複合サイトカイン融合を発現する核酸を用いた癌細胞のトランスフェクションはまた、癌細胞を標的とする抗体または免疫サイトカインを用いた処置とともに行われうる(Lodeら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.95:2475)。複合サイトカイン融合蛋白質を発現する核酸を用いた癌細胞のトランスフェクションはまた、血管新生ブロッカーを用いた処置とともに行われうる(Lodeら、(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.9:1591)。
【0095】
付加的な免疫刺激剤および/または血管新生ブロッカーを用いた治療もまた、複合サイトカイン融合蛋白質を用いた全身的治療と組み合わせうる。付加的免疫刺激剤または血管新生ブロッカーを併用した治療の長所は、これらの治療がDNAに損傷を与える薬剤および細胞周期ブロッカーとは異なり、複合サイトカイン融合蛋白質による刺激の結果分裂しうる免疫細胞を殺傷しないということである。
【0096】
この遺伝子治療方法の好適な実施態様は、IL−12および第2のサイトカインをコードする一つ以上の核酸を癌細胞へ導入し、次にその癌細胞をヒトまたは動物へ再導入するということである。第二のサイトカインは、好適には、IL−2またはGM−CSFである。
【0097】
アジュバントとして融合させた二つ以上のサイトカインを用い、ワクチンを与えられた宿主哺乳類においてある一定の病原体に対して保護的な細胞性免疫応答を誘導することを目的とした新規ワクチン組成およびワクチンの活性賦活方法が、本発明により提供される。例えば、Th1免疫応答を所望する場合、複合Th−1促進サイトカインを融合させることが可能であり、その結果得られた融合蛋白質を抗原と組み合わせて動物に投与しうる。
【0098】
特に、IL−12およびIL−2を融合させ、抗原とともに投与しうる。あるいは、IL−12およびIL−2をさらに抗原性蛋白質そのものと融合させ、免疫応答に刺激を与えるために使用しうる。この場合、本発明は、宿主細胞性免疫に依存したワクチンに向けられる。つまり、特定の病原性の感染に対する防御反応を引き起こすために細胞傷害性Tリンパ球および活性化食細胞を誘導するということである。IL−12、IL−2および抗原という組み合わせは抗原に対するTh1応答を標的としているため、IL−12、IL−2および抗原を含む融合蛋白質を用いたワクチン投与を行うことは特に有用である。ヒトにおいて使用されている、ミョウバンのような、従来のアジュバントは、Th2応答を誘導する傾向がある。
【0099】
Th2免疫応答が所望される場合、Th−2促進サイトカインの組み合わせを融合させて使用しうる。例えば、単一分子を形成させるために、IL−4およびIL−10を融合させ、その結果得られた融合蛋白質をアジュバントとして使用することは有用でありうる。特に、動物において樹状細胞を補給することが所望される場合、IL−4およびGM−CSFの組み合わせを融合させたものを、さらに抗原提示細胞との結合を促進するためにFc領域と融合させうる、または、さらに融合サイトカインを腫瘍などの標的細胞へ向けることを可能とする抗体と融合させうる。
【0100】
本発明はまた、新規治療組成物および、癌細胞上に生じうる選択抗原を含みうる、いわゆる「癌ワクチン」を含む所定の治療組成物との相乗効果をもたらすことを意図した免疫活性賦活方法を提供する。例えば、二つ以上の融合サイトカインを含む蛋白質を直接、適切な経路により、適切に処置された癌細胞とともに投与しうる。
【実施例】
【0101】
(実施例)
(実施例1:サイトカイン−サイトカイン融合蛋白質発現を可能とする遺伝子融合体の構築)
複数のサイトカインを持つ多機能蛋白質を得るために、IL−12のp40とIL−2との間、およびIL−12のp40とGM−CSFとの間の遺伝子融合体を合成した。さらに、成熟マウスp35(配列番号1)のコード配列を、高レベル発現および効率の良い分泌を可能にするプロモーターおよびリーダー配列と融合させた。マウスp40−IL−2およびp40−GM−CSFのコード配列を、それぞれ、配列番号2、配列番号3にて示す。ヒトp40−IL−2融合体もまた構築した(配列番号4)。IgG2aのマウスFc領域とマウスp35との融合体(配列番号5)および、IgG1のヒトFc領域とヒトp35との融合体(配列番号6)を、以前に開示されている発現プラスミド(Loら、Protein Engineering11:495−500(1998);Loら、米国特許第5,726,087号)を用いて構築した。
【0102】
成熟マウスおよびヒトp35とKS−1/4抗体重鎖のC末端との融合について、Gilliesら(J.Immunology(1998)160:6195−6203)により記述されている。成熟マウスおよびヒトp35と14.18抗体重鎖のC−末端との融合体を類似の方法により構築した(PCT 国際公開第WO99/29732)。
【0103】
p40とIL−2を融合させること、およびp40とGM−CSFを融合させることを目的としてここで論じている種類の方法は、一般的に二つ以上のサイトカインの融合に対して適用可能である。特に、C−末端部分はシグナル配列を必要としない一方、殆どのN−末端部分のコード配列には分泌のシグナル配列が含まれている。ある環境下において、二つのサイトカインのコード配列間に、好適には、10−15アミノ酸長で、グリシンおよびセリンリッチである短いペプチド性リンカーに対するコード配列を配置することは有用でありうる。全てのそのような種類の融合体作製に関連するDNA操作は、当該分野の技術の範囲内である。
【0104】
例えば、マウスIL−12 p40サブユニットおよびマウスIL−2間の融合体構築の詳細は、次に示すものであった。マウスIL−12のp40サブユニットの全長cDNAを、コンカナバリン A(Concavalin A)(培養液中に5μg/mlの濃度で、3日間)で活性化されたマウス脾臓細胞からPCRによりクローニングした。フォワードプライマーの配列は、AA GCT AGC ACC ATG TGT CCT CAG AAG CTA ACC(配列番号7)で、NheI部位であるGCTAGC(配列番号7の第3−8残基)を、翻訳開始コドンATGの上流に置いたものであった。リバースプライマーの配列は、CTC GAG CTA GGA TCG GAC CCT GCA GGG(配列番号8)で、XhoI部位であるCTCGAG(配列番号8の第1−6残基)を、翻訳停止コドンTAG(アンチコドンCTA)のすぐ下流に置いたものであった。配列確認後、そのネイティブのリーダーとともにmu−p40を含むNheI−XhoI断片を、XbaI−XhoI消化した発現ベクターpdCs(Loら、(1998)Protein Engineering 11:495−500)にライゲーションした。NheIおよびXbaI制限部位は、一致する粘着末端を持ち、また、mu−p40は内部XbaI部位を持つので、NheI部位をmu−p40のクローニングのために使用した。
【0105】
mu−p40−muIL−2をコードするDNAを構築するために、mu−p40DNAを、そのPstI部位(C TGC AG)を経由して成熟マウスIL−2のcDNAを含むSmaI−XhoI断片とつなぐため、オリゴヌクレオチドリンカーを用いた。融合蛋白質の連結部位のDNA配列は、C TGC AGG GTC CGA TCC CCG GGT AAA GCA CCC(配列番号9)で、その中のC TGC AG(配列番号9の第1−6残基)はPstI部位であり、C CCG GG(配列番号9の第15−20残基)はSmaI部位で、TCCはマウスp40のC−末端アミノ酸残基、GCAは成熟マウスIL−2のN−末端残基であった。
【0106】
単鎖muIL12−muGMCSFをコードするDNAは、前記単鎖muIL12−muIL2をコードするDNA構築物に由来し、muIL2cDNAをSmaI部位でmuGMCSF cDNAに置き換えることによって構築したものであった。単鎖muIL12およびmuGMCSFの連結部のDNA配列は、C TGC AGG GTC CGA TCC CCG GGA AAA GCA(配列番号10)であり、C TGC AG(配列番号10の第1−6残基)はPstI部位であり、C CCG GG(配列番号10の第17−22残基)はSmaI部位、TCCはマウスp40のC−末端アミノ酸残基、GCAは成熟マウスGMCSFのN−末端残基であった。
【0107】
(実施例2:IL−12融合蛋白質の発現)
IL−12−IL−2融合蛋白質を次のように発現させた。p40融合体をコードする個々のベクターおよびp35を含む蛋白質をコードするベクターの異なる組み合わせを、一時的に融合蛋白質を発現させるためにヒト293上皮癌細胞へ同時トランスフェクションした。調製済みキット(Wizard,Promega Inc.)を用いてDNAを精製し、滅菌するためにエタノール沈殿を行ない、滅菌水で再懸濁した。
【0108】
生物学的に活性のあるIL−12融合蛋白質ヘテロ二量体を発現させるために、ヒト293上皮癌細胞の同時トランスフェクションにより、サブユニットの融合体および非融合体をコードする個々のベクターの異なる組み合わせを一時的に発現させた。調製済みキット(Wizard,Promega Inc.)を用いてDNAを精製し、滅菌するためにエタノール沈殿を行ない、滅菌水で再懸濁した。10μg/mlのDNA(二つのプラスミドを同時トランスフェクションする場合、それぞれを5μgずつ含む)を用いて標準的方法によって、リン酸カルシウム沈殿を用意し、およそ70%コンフレントになった状態で60mmプレート上にて成長している293培養物に、0.5ml/プレートを添加した(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第二版、Sambrook,FritschおよびManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。16時間後、沈殿物を含む培地を除去し、新鮮な培地に交換した。3日後、上清を採取し、ELISA、IL−12活性の生物学的測定、または免疫沈澱法および放射性標識蛋白質のSDSゲル上での分析により、トランスフェクションされた遺伝子の発現の産生について分析した。標識するために、培養第二日目に、培地を、メチオニンを含まない生育培地に交換し、35S−メチオニン(100μCi/ml)を添加した。さらに16時間インキュベーションした後、培地を回収し、遠心(卓上遠心機で5分間、13,000rpm)により清澄化し、プロテインAセファロースビーズ(1mlの培養上清に対して10μlのビーズ容積を含む)とともにインキュベーションを行った。室温にて1時間置いた後、遠心および1% Nonidet−P40(NP−40)を含むPBSバッファーを用いて再懸濁を繰り返し、ビーズを洗浄した。最終的な沈殿物を、SDS含有ゲルバッファーで再懸濁し、2分間煮沸した。遠心によりビーズを除去した後、上清を2等分した。一方の試料に還元剤(5% 2−メルカプトエタノール)を添加し、SDSポリアクリルアミドゲルに充填する前に、両試料を5分間煮沸した。電気泳動後、ゲルをX線フィルムに対して曝露した(オートラジオグラフィー)。
【0109】
次の発現プラスミドを用いたトランスフェクションを行った。すなわち、mu.p35およびmu.p40−IL−2、KS−1/4−mu.p35およびmu.p40、KS−1/4−mu.p35およびmu.p40−IL−2、14.18−mu.p35およびmu.p40−IL−2、hu.Fc−p35およびhu.p40−IL−2、KS−1/4−hu.p35およびhu.p40−IL−2、ならびに14.18−hu.p35およびhu.p40−IL−2である。ここで、「mu」とは、マウス蛋白質を、「hu」とは、ヒト蛋白質を意味する。
【0110】
35S−メチオニンで細胞を代謝的に標識し、分泌された蛋白質を還元条件下でのSDSゲル電気泳動およびオートラジオグラフィーにより試験したところ、それぞれの場合において高レベルの発現が観察された。成分蛋白質の分子量を基にして、還元融合蛋白質の分子量を次のように予測した。すなわち、IL−12のp35、35kD;IL−12のp40、40kD;IL−2、16kD;Fc、32kD;Ig重鎖、55kD;およびIg軽鎖、28kDと予測した。予測した分子量を有する蛋白質移動度が観察された。
【0111】
安定的にトランスフェクトされ、複合サイトカイン融合蛋白質を発現している細胞系列もまた分離した。ヘテロ二量体構築物の場合、IL−12 p40−IL−2融合タンパク質コード化発現ベクターまたはIL−12 p40−GM−CSF融合タンパク質コード化発現ベクターは、IL−12 p40サブユニットのみに関して先に記述されている(Gilliesら、(1998)J.Immunol.160:6195−62030)ように構築された。記述されているように(Gilliesら、(1998)J.Immunol.160:6195−62030)、p40融合蛋白質を発現しているトランスフェクション細胞系列に対して、IL−12 p35サブユニット、Fc−p35蛋白質または抗体−p35融合蛋白質発現ベクターのいずれかをコードする発現ベクターを2回トランスフェクションした。
【0112】
ヒトFc−IL−12−IL−2を発現している(すなわちKS−p35およびp40−IL−2を発現している)安定的トランスフェクション細胞培養液から上清を回収し、製造者の手順(Repligen、Needham、MA)に従って、プロテインAセファロースと結合させ溶出させることにより、その産物を精製した。IL−12およびIL−2含量に関して、ELISAによって精製蛋白質を解析した。その結果から、IL−12およびIL−2の個々のサイトカイン含量において、質量としておよそ4倍の相違があることが示された。これはIL−12およびIL−2の間の分子量に4倍の相違があることに相関する。同じように、ELISAによる、IL−12およびIL−2レベルに関するヒトKS−IL−12−IL−2を発現しているトランスフェクション細胞の産物解析により、IL−12およびIL−2について同様の値が示された。従って、ELISAの精度の範囲内で、測定値から、IL−12およびIL−2がおよそ1:1のモル比で産生されているであろうことが示される。Fcまたは全抗体のどちらかを用いて作製されたIL−12−GM−CSF融合蛋白質において同様の結果を得た。
【0113】
(実施例3:IFN−γ誘導解析における融合蛋白質の相乗活性)
ヒトボランティアから得た休止または分裂促進因子活性化ヒト末梢血液単核細胞(PBMCs)のどちらかを用いたIFN−γ誘導解析において、IL−12−IL−2融合蛋白質の生物学的活性を測定した(図6)。IFN−γ産生をELISAにより測定した。
【0114】
健康なボランティアより、ヒト末梢血液単核細胞(PBMCs)を得て、Ficoll−Hypaque(Pharmacia)勾配を用いて遠心(1700rpm、20分間)し精製した。PBMCを含む軟膜を無血清培養液(SF−RPMI)で50ml容積になるように希釈し、1500rpm、5分間の遠心により回収した。勾配遠心後、フィトヘマグルチニン(PHA;10μg/ml)を含む、または含まない、10%ウシ胎児血清を含む細胞培養液(RPMI−10)で、細胞密度が5x106細胞/mlになるように細胞を再懸濁し、加湿CO2インキュベーター中で、37℃にて3日間培養を行った。遠心により細胞を回収し、等量のSF−RPMIで3回洗浄した後、新鮮なRPMI−10で再懸濁した(1x106細胞/ml)。96ウェルマルチプレートのウェルに、最終的な細胞数が各ウェルに105個になるように、一部(100μl)を添加した。細胞を培養した培養液からの試験試料を新鮮な培養液で連続希釈し、96ウェルプレートのウェルに添加した。コントロール用ウェルには、IL−12(図6A)または、市販のIL−2およびIL−12の等モル混合物(図6B;R&Dシステムより購入したサイトカイン)を添加した。CO2インキュベーター中で48時間、37℃にて、プレートのインキュベーションを行い、製造者(Endogen,Inc.,Woburn,MA.USA)による説明書に従ってELISAによりIFN−γ濃度を解析するために、一部分(20μl)を分取した。
【0115】
図6Aにおいて、ヒトIL−12−IL−2融合蛋白質の活性を、IL−12単独の場合と比較した。その結果から、IL−12単独の場合はIFN−γ誘導レベルが中程度であったが、その一方、IL−12−IL−2融合蛋白質はIFN−γ合成を強く誘導したということが示される。IL−2もまた、IFN−γ合成には不十分であることが知られているため、これらの結果から、IL−12およびIL−2部分が融合蛋白質中で両方とも機能的であり、また相乗的に機能するということが示される。
【0116】
次にIFN−γ誘導活性に関して、Fc−IL−12−IL−2融合蛋白質、KS−IL−12−IL−2融合蛋白質およびIL−12とIL−2の1:1モル比混合物の活性を比較した。図6Bにおける結果から、Fc−IL−12−IL−2融合蛋白質およびKS−IL−12−IL−2融合蛋白質が、IL−12およびIL−2の等モル混合物とほぼ同程度の活性を持つことが示される。ヒト型に対して用いた、実施例1において記述した方法で構築したマウス型のIL−2およびIL−12を融合蛋白質の構築に使用した場合、同様の結果が得られた。
【0117】
(実施例4:IL−12−IL−2融合蛋白質のIL−2およびIL−12生理活性)
増殖を基にした解析において、融合蛋白質におけるIL−2およびIL−12の活性を遊離サイトカインと比較した。典型的なIL−12増殖解析において、マウス抗体14.18−IL−12−IL−2分子の活性を試験した。ボランティアよりヒトPBMCsを得て、標準的な手順(Gately,M.K.,Chizzonite,R.およびPresky,D.H.Current Protocols in Immunology(1995)pp.6.16.6−6.16.15)に従って、5μg/mlのフィトヘマグルチニン−Pと共に3日間培養し、Hank‘sHBSSで洗浄した後、105細胞/ウェルになるようにマイクロタイタープレートに播種した。様々な試験蛋白質存在下で、48時間、細胞をインキュベーションし、放射性取り込みレベル測定の10時間前に0.3μCiの3H−チミジンを添加した。IL−12および、IL−12およびIL−2の等モル混合物により、用量依存的に細胞への3H−チミジン取り込みが刺激され、また、14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質は、3H−チミジン取り込みに対する刺激に関してこれとほぼ同様の効果を示した。3H−チミジン取り込みに対するIL−2による刺激はより高いモル濃度でしか見られなかったことから、観察された3H−チミジン取り込みに対する14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質による刺激は、主にIL−12活性によるものであるということが示された。結果を図7で示す。
【0118】
さらに、異なる細胞増殖解析において、標準的手順(Davis,L.S.,Lipsky,P.E.および、Bottomly,K.Current Protocols in Molecular Immunology(1995)p.6.3.1.−6.3.7)に従って、IL−2部分の生物学的活性について試験した。マウスCTLL−2細胞系列の増殖はIL−2に依存する。CTLL−2細胞系列はまた、IL−4にも応答して増殖しうるが、IL−12に対しては応答しない。活発な対数増殖期におけるCTLL−2細胞を、IL−2を含まない培地で2回洗浄し、様々な量の市販マウスIL−2、マウス14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質、または市販マウスIL−12の存在下で、マイクロタイタープレートに約1x104細胞/ウェルになるように播種し、48時間培養した。増殖期の終わりに、MTT/MTS解析を用いて生存細胞数を定量した。図8にて、IL−2,IL−12または、14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質レベルを変化させた実験を示す。これらの結果により、マウスIL−12は量を増やしても検出可能な細胞増殖刺激が見られなかった一方、マウスIL−2およびマウス14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質は、増殖刺激に関してほぼ同等の効力を持つことが示される。この結果から、14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質によるCTLL−2細胞増殖刺激がIL−2部分によるもので、IL−12部分によるものではないことが示される。
【0119】
(実施例5:抗体部分を伴う、および伴わない、単鎖および多重鎖IL−12−IL−2融合蛋白質の構築と発現)
一本鎖マウスIL−12−IL−2融合タンパク質を、以下のように構築した。p40−IL−2コード配列融合体を、実施例1のヒトp40−IL−2融合体の構築に使用したものと類似の方法によって構築した。IL−12のp35およびp40サブユニットをコードするDNAを連結し、シングルコード配列を作製するために、5’末端にXhoI部位および3’末端にBamHI部位を有するリンカーをコードするDNAを合成した。成熟p40−IL−2コード配列の5’末端を改変して、制限部位を導入し、次いで、このリンカーの3’末端に連結した。マウスp35コード配列の3’末端を改変して、制限部位を作製し、そしてこのリンカーのXhoI部位に連結した。実施例1に記載されるように、一本鎖のmuIL12およびmu−p40−muIL2をコードするcDNAを、p40中の好都合な制限部位を用いることによって結合させ、一本鎖muIL12−muIL2をコードする第3のDNA構築物を得た。これらの工程を、必要とされる場合、種々のベクターおよびDNAフラグメント単離物を用いて実行した。得られたマウスp35−リンカー−p40−IL−2コード領域の配列は、配列番号11である。
【0120】
同時に、対応する一本鎖マウスIL−12コード配列を、対応する方法によって構築した。このコード配列は、配列番号12である。
【0121】
さらに、本発明者らは、さらに、p35−リンカー−p40−IL−2のN末端に融合させたIgG2a Fc領域をコードするDNA配列を構築した。
【0122】
培養された293細胞を、マウス一本鎖Fc−IL−12−IL−2およびFc−IL−12タンパク質をコードする発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。融合タンパク質の発現を、実施例2に記載されるようにアッセイした。Fc融合タンパク質を、プロテインAセファロースへのこれらの結合によって精製し、そして高いレベルのFc−IL−12−IL−2およびFc−IL−12が、観察された。SDSゲル上での移動からの見かけ上の分子量(Fc−IL−12−IL−2、123kD;およびFc−IL−12、107kD)によって推測されるように、これらのタンパク質をインタクトで合成した。
【0123】
実施例1に記載のKS−scIL12−IL2融合タンパク質は、2つの異なるポリペプチド鎖(KS−1/4軽鎖およびC末端にscIL12−IL2部分を有するKS−1/4重鎖)を有する四量体である。抗体分子上のいずれの部位がサイトカイン部分の付着に適しているかを調べるために、第2の融合タンパク質を構築し、これは、KS1/4抗体、IL−12部分、およびIL−2部分を、実施例1のKS−IL12−IL2配置とは異なる配置であった。この第2のタンパク質は、四量体であり、そして2つの異なるポリペプチドからなった。一方のポリペプチドは、KIS−1/4抗体の軽鎖から成った。他方のポリペプチドは、KS−1/4抗体の重鎖の成熟N末端に融合された一本鎖muIL12、続いてこの重鎖のカルボキシル末端のマウスIL−2からなった。
【0124】
マウスIL−12のp35サブユニットをコードするcDNAを、コンカナバリンA(培養培地において5μg/mlで3日間)で活性化されたマウス脾細胞からPCRによってクローン化した。正方向プライマーは、配列:AAGCTT GCTAGCAGC ATG TGT CAA TCA CGC TAC(配列番号14)(ここで、HindIII部位であるAAGCTT(配列番号14の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置される)を有し、そして逆方向プライマーは、配列:CTCGAG CTT TCA GGC GGA GCT CAG ATA GCC(配列番号15)(ここで、XhoI部位であるCTCGAG(配列番号15の残基1〜6)は、翻訳終止コドンTGA(アンチコドンTCA)の下流に配置される)を有する。
【0125】
一本鎖IL−12をコードするこのDNAは、グリシン残基およびセリン残基に富むリンカーをコードするオリゴヌクレオチドに連結されたmup35 DNA、続いてmup40 DNAから成る。得られた構築物は、オリゴヌクレオチド連結部に以下:
【0126】
【化1】
の配列を有する。ここで、G AGC TC(配列番号16の残基1〜6)は、マウスp35翻訳終止コドンのちょうど上流のSacI制限部位であり、GCGは、マウスp35のC末端アミノ酸残基をコードし、GGA TCC(配列番号16の残基50〜55)は、連結を容易にするために導入されたBamHI制限部位であり、そしてATGは、成熟mu−p40のN末端残基をコードする。
【0127】
一本鎖muIL12−KS重鎖−muGMCSFをコードするDNAは、mup40およびKS重鎖の成熟N末端の連結部に、以下:
【0128】
【化2】
の配列を有する。ここで、ここで、C TGC AG(配列番号18の残基1〜6)は、マウスp40翻訳終止コドンのちょうど上流のPstI部位であり、TCCは、マウスp40のC末端アミノ酸残基をコードし、CAGは、成熟KS重鎖のN末端残基をコードする。次いで、一本鎖muIL12−KS重鎖−muIL2をコードする得られたDNAを、KS軽鎖と共に同時発現させた。
【0129】
抗体分子のどの末端が融合連結の作製に利用可能であるかをさらに調べるため、そしてどのように多くの異なるポリペプチドが複合サイトカイン融合タンパク質にアセンブルされ得るかを調べるために、KS−1/4、IL−12、およびIL−2を含む第3のタンパク質(すなわち、IL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2)を、発現させ、そして活性に関して試験した。この融合タンパク質は、六量体であり、そして3つの異なるポリペプチドを含む。1つのポリペプチドは、KS1/4抗体の軽鎖に融合したマウスp35からなる。第2のポリペプチドは、ヒトIL−2に融合したKS1/4抗体の重鎖からなる(Gilliesら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.89:1428)、そして第3のポリペプチドは、マウスp40である。発現の際、2つの軽鎖および2つの重鎖が、ジスルフィド結合して、四量体の抗体−サイトカイン構造を形成する。さらに、軽鎖のN末端におけるp35もまた、p40とジスルフィド結合する。
【0130】
mup35−KS軽鎖をコードするDNAは、その連結部に以下:
【0131】
【化3】
の配列を有する。ここで、G AGC TC(配列番号20の残基1〜6)は、マウスp35翻訳終止コドンのすぐ上流のSacI制限部位であり、GCGは、マウスp35のC末端アミノ酸残基をコードし、GGA TCC(配列番号20の残基50〜55)は、連結を容易にするために導入されたBamHI制限部位であり、そしてGAGは、軽鎖のN末端アミノ酸残基をコードする。
【0132】
この六量体融合タンパク質の発現のために、マウスp40を発現する細胞株を、ネオマイシン耐性遺伝子を含む発現ベクターでのトランスフェクションおよびG418による選択によって作製した。次いで、マウスp40を発現する細胞株を、軽鎖および重鎖の転写単位およびジヒドロ葉酸還元酵素選択マーカー(これは、メトトレキサートによる選択を可能にする(Gilliesら(1998)J.Immunol.160:6195))の両方を含む発現ベクターでトランスフェクトした。
【0133】
(実施例6:マウス一本鎖IL−12−IL−2融合タンパク質の活性)
実施例4に使用される方法と同じ方法を使用して、一過性発現によって産生されるマウス一本鎖IL−12−IL−2の活性を試験した。細胞培養上清における各サイトカインの量を、まずELISAによって決定し、そしてこれを使用して、用量応答曲線を設定した。この活性は、Fcおよび抗体IL−12−IL−2融合タンパク質を用いて見出されたことならびに上記のことと親密に対応した。
【0134】
詳細には、マウス一本鎖(sc)IL−12−IL−2およびマウスFc scIL−12−IL−2分子のIL−12活性を、実施例4に記載されるヒトPBMC細胞増殖アッセイにおいて試験した。IL−12ならびにIL−12およびIL−2の等モル混合物は、細胞への3H−チミジンの取り込みを用量依存的様式で刺激した。1モル濃度当たりの基準に対して、scIL−12−IL−2融合タンパク質およびFc−scIL−12−IL−2融合タンパク質の両方は、3H−チミジン取り込みの刺激の際にほぼIL−12のように効果的であった(図9)。実施例4に記載されるように、IL−2は、3H−チミジンの取り込みを、最も高いモル濃度でのみ刺激し、これは、scIL−12−IL−2融合タンパク質によって刺激された3H−チミジンの観察された取り込みが、主にそのIL−12活性に起因することを示す。
【0135】
さらに、scIL−12−IL−2融合タンパク質におけるIL−2部分の生物学的活性を、細胞ベースのアッセイで試験し、そして、このアッセイの正確さの範囲内に対し、1モルの基準に対して市販のIL−2とほぼ同じであることが見出された。IL−2部分の生物学的活性を、実施例4に記載されるように、CTLL−2細胞増殖アッセイにおいて試験した。この結果により、マウスIL−2、マウスscIL−12−IL−2、およびマウスFc−IL−12−IL−2融合タンパク質が、刺激増幅においてほぼ等しい効力であることが示される。マウスIL−12は、検出可能なCTLL−2細胞増殖の刺激を生じなかった。これらの結果により、scIL−12−IL−2融合タンパク質によるCTLL−2細胞増殖の刺激が、IL−12部分ではなく、IL−2部分に起因したことが示される。
【0136】
実施例5に記載されるFc−IL12−IL2、IL12−KS−IL2、およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2のタンパク質の、IL−12活性およびIL−2活性をまた、細胞ベースのアッセイにおいて試験した。PBMC細胞増殖/トリチル化チミジン取り込みアッセイを用いて、Fc−IL12−IL2、IL12−KS−IL2、およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2タンパク質の全てが、強力なIL−12活性を示した。同様に、CTLL−2細胞増殖アッセイを用いて、Fc−IL12−IL2、IL12−KS−IL2、およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2タンパク質は全て、強力なIL−2活性を示した。さらに、ELISAにおいて、IL12−KS−IL2およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2タンパク質は両方とも、例え、重鎖および軽鎖のV領域がそれぞれそれらのN末端において別のタンパク質に融合していたとしても、EpCAM抗原にしっかりと結合した。
【0137】
(実施例7.マウスIL−12−GM−CSF融合タンパク質の活性)
マウスFc−IL−12−GM−CSF分子のIL−12活性を、細胞増殖アッセイにおいて試験した(図10)。ヒトPBMCを、3人のボランティアから得て、そして5μg/ml フィトヘマグルチニン−Pを用いて3日間培養し、Hank’s HBSSを用いて洗浄し、そして1ウェル当たり105細胞でマイクロタイタープレートにプレートした(これらは、標準的な手順(Gately,M.K.,Chizzonite,R.,およびPresky,D.H.Current Protocols in Immunology(1995)6.16.1−6.16.15頁)に従った))。細胞を、種々の試験タンパク質の存在下で48時間インキュベートし、次いで、0.3マイクロキュリーの3H−チミジンを、放射性取り込みのレベルを決定する10時間前に添加した。IL−12およびIL−12とGM−CSFの等モル混合物は、3H−チミジンの細胞への取り込みを用量依存様式で刺激し、そして、14.18−IL−12−GM−CSF融合タンパク質は、3H−チミジンの刺激取り込みにおいてほぼ等しい効率であった。GM−CSFは、試験された濃度において3H−チミジンの取り込みを刺激しなかった。これは、14.18−IL−12−GM−CSF融合タンパク質によって刺激された3H−チミジンの観察された取り込みが、主に、そのIL−12活性に起因したことを示す。
【0138】
さらに、種々のIL−12−Gm−CSF融合タンパク質のGM−CSF部分の生物学的活性を、細胞ベースのアッセイにおいて試験した。これにより、GM−CSF部分が活性であり、これは市販のGM−CSFと同じ一般的な範囲である1分子当たりの活性を伴った。例えば、GM−CSF部分の生物学的活性を、分子免疫学の当業者に公知の手順に従って異なる細胞増殖アッセイにおいて試験する(Cooper,S.C.およびBroxmeyer,H.E.Current Protocols in Molecular Immunology(1996)6.4.1−6.4.0頁)。マウス32D(GM)細胞株は、増殖に関してGM−CSFに依存する;この株は、本来の32D細胞株(CooperおよびBroxmeyerによって記載される)からGM−CSFに対して特に感受性であるように適応されている(Faasら、Eur.J.Immunol.(1993)23:1201−14)。32D(GM)細胞株は、IL−12に応答性ではなかった。活性な対数増殖における32D(GM)細胞を、GM−CSFを欠く培地で2回洗浄し、そして、種々の量の、市販のマウスGM−CSFまたはマウスIL−12−GM−CSF融合タンパク質の存在下で、マイクロタイターウェルの1ウェル当たり5×103個の細胞をプレートし、そして48時間増殖させる。0.3マイクロキュリーの3H−チミジンを、放射性取り込みのレベルを決定する16時間前に添加する。漸増レベルのIL−12−GM−CSF融合タンパク質を用いた3H−チミジンの取り込みに、用量応答性の増加が存在した。これは、IL−12−GM−CSF融合タンパク質のGM−CSF部分が活性であることを示す。さらに、モル濃度基準で算出されたこの融合タンパク質のGM−CSF生物学的活性は、市販のマウスのGM−CSFの生物学的活性に匹敵する。
【0139】
(実施例8.複合サイトカイン融合タンパク質を用いた免疫堪能動物(immune−proficient mammal)における結腸癌腫の処置)
複合サイトカイン−抗体融合タンパク質を使用して、インタクトな免疫系を有する哺乳動物における結腸癌腫を処置し得るか否かを試験するために、以下の実験を実施した。CT26は、Balb/Cマウス由来の結腸癌腫細胞株である。標準的な遺伝子操作技術によって、この細胞株を操作し、ヒト上皮細胞接着分子を発現させた。この分子は、KS−1/4抗体によって認識される抗原である;これらの細胞を、CT26/KSA細胞と名付ける。
【0140】
Balb/Cマウスを2×106CT26/KSA細胞を用いて皮下接種した。腫瘍が約100〜200立方ミリメートルの容積に達する場合、マウスをさらなる研究のための9匹のマウスの3つのグループに無作為化した。0日目から開始して、腫瘍保有マウスを、PBS、約5.3マイクログラムのKS−IL−12と混合された約3.4マイクログラムのKS−IL2、または約6マイクログラムのKS−IL2−IL12を用いて処理した。これらの用量は、各セットのマウスに対して等しい数のIL−12分子およびIL−2分子を送達するために設計する。マウスを、5日間、1日に1回腫瘍内注射した。腫瘍のサイズを、カリパーを用いて測定した。
【0141】
1つのこのような実験の結果を、図11に示す。この実験において、KS−IL12−IL2は、腫瘍増殖の強い阻害を引き起こした。KS−IL12とKS−IL2の混合物もまた、腫瘍増殖の有意な阻害を引き起こしたが、KS−IL12−IL2のように完全ではなかった。KS−IL12−IL2で処理されたマウスのグループにおいて、9匹のマウスのうちの6匹は、これらの腫瘍を明らかに治癒した:これらの6匹のマウスは、実験を終了した場合、93日目まで生存した;そしてこれらのマウスにおける腫瘍は、縮みそして消失し、その結果、39日目〜93日目からは皮下腫瘍は検出され得なかった。他の3匹のマウスは、増殖が遅延される腫瘍を有し、その結果、腫瘍大敵は、たった87日後に4,000立方ミリメートルを超えた。
【0142】
KS−IL12とKS−IL2の混合物で処理されたマウスのうち、2匹のマウスは、その皮下腫瘍が明らかに治癒され、そして実験の終わりまで生存した。残りの7匹のマウスの腫瘍は、消失せず、そして最終的には、1,000立方ミリメートル(1匹のマウス)または4,000立方ミリメートルより大きく(6匹のマウス)増殖した。
【0143】
KS−IL12−IL2が、KS−IL12とKS−IL2等モル混合物よりも、より効果的であるという事実は、驚くべきことである。この実験における用量は、1用量当たり約15ピコモルの融合タンパク質を送達し、これは約9×1012分子に対応する。処置の開始において、各腫瘍は、約160立方ミリメートルの容積を有し、これは、約1億6000万の細胞に対応する。各細胞は、約106分子のEpCAMを発現し、そうなので、KS抗体が結合する約1.6×1014個のEpCAM抗原分子が存在する。従って、KS−IL12とKS−IL2が混合され、そしてそのような腫瘍を保有するマウスに注射された場合、これらの2つの免疫サイトカイン融合タンパク質は、おそらく抗原結合部位に関して互いに競合しない。従って、腫瘍部位における効果的な用量のIL−12およびIL−2は、少なくとも、KS−IL12とKS−IL2の混合物に関して、KS−IL12−IL2に関するような高さであるべきであった。
【0144】
(実施例9.複合サイトカイン融合タンパク質を用いた免疫不全動物における結腸癌腫の処置)
多くの形態の癌治療が、免疫系の細胞を含む分裂細胞(dividing cell)の殺傷に効果を有する。結果として、癌患者は、しばしば、免疫抑制になる。複合サイトカイン融合タンパク質を使用して、抑制された免疫系を有する哺乳動物を処置し得るか否かに取り組むために、CT26/KSA腫瘍を保有するSCIDマウスを、KS−IL12−IL2、KS−IL12とKS−IL2の混合物、またはPBSで処理した。SCIDマウスは、B細胞およびT細胞の両方が欠失であり、そして感染と戦うその能力については生来の免疫系(例えば、NK細胞)の分枝に依存する。
【0145】
皮下CT26/KSA腫瘍を有するマウスを、実施例8に記載されるように作製した。8匹のマウスの3つの群(各々は、約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)を、実施例8と同じ用量およびスケジュールを用いて腫瘍内注射によって処理した。結果を、図12に示す。この場合、KS−IL12−IL2融合タンパク質およびKS−IL12とKS−IL2の混合物は、ほぼ等しく効果的であった:8匹のマウスのうちの5匹は、各グループにおいて25日目までに治癒された。しかし、治癒されなかったマウスにおいて、6個の腫瘍のうちの5個は、未処理動物における腫瘍に特徴的な速度で増殖し始め、約14〜21日の効果的な遅延であった。これは、実施例8の免疫堪能マウスにおける腫瘍と対照的である:腫瘍がKS−IL 12−IL2を用いた処理によって完全に排除されなかった場合でさえ、この腫瘍は、この実験の開始後、約60日までは急速に増殖し始めなかった。
【0146】
これらの実験は、複合サイトカイン抗体融合タンパク質を使用して、免疫抑制された動物における癌を処置し得ることを示す。
【0147】
(実施例10.複合サイトカイン融合タンパク質の腫瘍内注射による肺癌腫の処理:個々の免疫サイトカインによる処理との比較)
複合サイトカイン融合タンパク質および単一サイトカイン部分を有する免疫サイトカインの、肺細胞由来の癌に対する効果に取り組むために、以下の実験を実施した。
【0148】
Lewis肺癌腫(LLC)は、C57BL/6マウス由来の急速進行性の腫瘍である。ヒトEpCAMタンパク質を発現するLLC細胞株を、標準的な遺伝子操作技術によって構築した;この細胞株を、LLC/KSAと命名した。
【0149】
皮下LLC/KSA腫瘍を有するC57BL/6マウスを、実施例8に記載されるように作成した(KMLを有するチェック#の細胞)。各5匹のマウスの4つのグループ(各々は、約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)を、5日間、腫瘍内注射で処理した。マウスを、PBS、約20ミリグラムのKS−IL12、約20ミリグラムのKS−IL12、または約20ミリグラムのKS−IL12−IL2で注射した。
【0150】
結果を、図13に示す。この場合、KS−IL12−IL2融合タンパク質は、KS−IL12またはKS−IL2のいずれよりも、よりさらに効果的であった。KS−IL12−IL2融合タンパク質を用いて処理された全てのマウスにおいて、これらの腫瘍は、27日までに消失した。74日目に、これらのマウスを、実施例14に記載されるような肺転移アッセイに使用した;本来の皮下腫瘍は、介在期間または第2の実験の間に再び出現しなかった。対照的に、KS−IL2またはKS−IL12のいずれかを用いた処理は、いくつかの明らかな腫瘍の縮小および有意な腫瘍増殖の遅延を引き起こしたが、これらの腫瘍は、最終的には増殖した。この実施例および以前の実施例の結果の比較により、特定の疾患および投与形態に関して、異なるサイトカイン部分を保有する免疫サイトカインの混合物を用いた処理が、単一型の免疫サイトカインを用いた処理よりも優れていることを示す。
【0151】
(実施例12 複合サイトカイン融合タンパク質の腫瘍内注射による肺癌腫の処置:免疫サイトカインの混合物による処理との比較)
複合サイトカイン融合タンパク質、および異なるサイトカイン部分を保有する免疫サイトカインの混合物の、肺細胞由来の癌に対する効果を示すために、以下の実験を実施した。
【0152】
皮下LLC/KSA腫瘍を有するC57BL/6マウスを、実施例11に記載されるように作製した。7匹のマウス(各々は、約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)の3つの群を、5日間、腫瘍内注射によって処理した。マウスを、PBS、約18μgのKS−IL12と約11.5μgのKS−IL12との混合物、または約20μgのKS−IL12−IL2で注射した。
【0153】
結果を図14に示す。この場合、KS−IL12−IL2融合タンパク質は、KS−IL12とKS−IL2との混合物よりも、よりさらに効果的であった。KS−IL12−IL2融合タンパク質で処理された全てのマウスにおいて、腫瘍は、27日目までに消失した。対照的に、KS−IL12とKS−IL2との混合物での処理は、いくらかの明らかな腫瘍の縮みおよび腫瘍増殖の有意な遅延をもたらしたが、この処置群において全ての腫瘍は、最終的に再び増殖した。
【0154】
(実施例13.複合サイトカイン−抗体融合タンパク質の、抗腫瘍活性の抗原依存性)
腫瘍の処置における複合サイトカイン−抗体融合タンパク質の効果が、抗体によって認識される抗原の腫瘍特異的発現に依存するか否かを示すために、以下の実験を実施した。
【0155】
皮下LLC/KSA腫瘍を有する7匹のC57BL/6マウスのセット、および親LLC細胞株から誘導された腫瘍を有する9匹のマウスの第2のセットを、実施例11に記載されるように作製した。これら2つの群のマウス(約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)を、5日間、腫瘍内注射によって処理した。マウスを、約20μgのKS−IL12−IL2で注射した。
【0156】
結果を図15に示す。この場合、LLC/KSA腫瘍を保有するマウスは全て、これらの腫瘍が完全に治癒した。対照的に、LLC腫瘍を保有するマウスのうちの2匹のみが、治癒した;他のLLC腫瘍保有マウスは全て、その腫瘍容積における一過性の減少を享受したが、その腫瘍は、最終的に大きな容積に増殖した。
【0157】
これらの結果は、EpCAM表面抗原の認識が、KS−IL12−IL2のLLC/KSA腫瘍細胞の表面への接着を促進すること、および生じる免疫応答が増強されることをしめす。いくつかの抗腫瘍効果は、LLC由来の腫瘍に対しても同様に観察され;(理論に束縛されることを望まないが)この場合におけるKS−IL12−IL2の抗腫瘍効果は、融合タンパク質が直接腫瘍に注射され、従って、その腫瘍に一過性に局在した事実に起因し得る。
【0158】
(実施例14.腫瘍細胞型に対する免疫記憶の生成)
転移の発達は、癌の処置における主要な問題である。複合サイトカイン抗体融合タンパク質を用いた処置が、腫瘍細胞型に対する長期の免疫記憶の形成を導き得るか否か、および転移の確立を妨害し得るか否かを試験するために、以下の実験を実施した。
【0159】
実施例11由来の5匹のC57BL/6マウスを、KS−IL12−IL2で処理し、そしてこれらの皮下腫瘍が明らかに治癒された。実施例14に記載されるように、処置の開始に対して74日目に、これらの5匹のマウスを、106のLLC/KSA細胞を用いて静脈内注射した。コントロールとして、8匹のC57BL/6マウスをまた、106のLLC/KSA細胞を用いて静脈内注射した。
【0160】
28日目に、マウスを屠殺し、そして肺を転移に関して調べた。8匹のコントロールマウスの肺は、70%〜100%が転移で覆われ、平均85%の肺表面範囲を有した。これらのマウスの平均肺重量は、0.86グラムであった。対照的に、5匹の前処理したマウス由来の肺表面上には、転移は見出されず、そして平均肺重量は、0.28グラム(これは、正常マウス肺の重量に対応する)であった。これらの結果は、本来の腫瘍細胞の処置が、この腫瘍細胞に対する長期の免疫記憶を生じることを示し;この記憶は、この腫瘍細胞型の転移の確立を妨害した。
【0161】
(表X.LLC−KSA肺転移からの「後退した」マウスの保護)
【0162】
【表1】
腫瘍を有さないコントロール群の平均肺重量は0.2gであった。転移スコアは、融合された転移小節の%表面範囲に基づき、ここで、0=転移なし;1=1〜25%の範囲;2=25〜50%の範囲;3=50〜75%の範囲;および4=75〜100%の範囲である。
【0163】
免疫記憶形成に関して試験するための第2の実験は、LLC/KSA腫瘍細胞で注射され、皮下腫瘍が発生し、そしてこれらの腫瘍が消失した実施例12由来の7匹のマウスのうちの6匹を使用した。実施例12の処置の開始62日後に、6匹の前処理したマウスおよび10匹のナイーブな未処理のC57BL/6コントロールマウスを、106のLLC細胞で皮下注射した。これらの細胞は、ヒトKS抗原EpCAMを発現しない。
【0164】
ナイーブなマウスにおいて、注射されたLLC細胞は、全てのマウスにおいて急速に増殖する腫瘍を形成した。対照的に、前処理されたマウスにおける腫瘍は、よりさらにゆっくりと増殖し、そして1匹のマウスにおいては、皮下腫瘍は検出されなかった。これらの結果を、図16に示す。ヒトKS抗原であるEpCAMがLLC細胞上で発現されないので、LLC細胞に対する免疫応答は、これらの細胞によって発現される別の抗原に基づいた。
【0165】
(実施例15:ワクチンとしての複合サイトカイン融合タンパク質)
複合サイトカイン融合タンパク質は、抗原タンパク質に融合される場合、ワクチンとして使用され得る。N末端からC末端への部分の特定の順番、または融合タンパク質が単一ポリペプチド鎖であるかオリゴマーであるかは、発現されるプラスミドの構築の利便性に依存して変化し得る。このタンパク質は、種々の経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内など)によって投与され得る。同様に、投与の用量および頻度は、一般的に、ヒトワクチンに関する標準的な慣例と同様に、ならびにワクチン開発の当業者に周知であるのと同様に、経験的に決定される必要がある。
【0166】
例えば、抗原−IL−12−サイトカインの形式の融合タンパク質は、マウスに投与され、ここで、この融合タンパク質中のサイトカインは、IL−12とは異なる第2のサイトカインである。コントロールマウスは、同じ量の抗原−サイトカイン、抗原−IL−12、または抗原単独を受ける。抗原融合タンパク質の投与の間および/またはこの投与後の種々の時間において、血液サンプルを、レトロ眼窩出血(retro−orbital bleeding)によって収集し、そして血漿を調製し、そしてこの抗原に対して指向する抗体の存在に関して分析する。抗体が、この抗原に対して作製されたことが見出された。さらに、この抗原に対する免疫応答の性質は、Th1応答特有である。抗体応答は、特定のコントロール免疫においてよりも、より強くそして産生された抗体の型は異なる。
【0167】
より詳細には、PBS緩衝液中のヒト化抗体−マウスIL−12−IL−2融合タンパク質を、Balb/cマウスに静脈内注射(5μg/日×5)で注射する。コントロールマウスは、同じ抗体を、同じ量だが、IL−12−IL−2を接着させること無しで受ける。いずれの注射溶液も、いずれの他の型のアジュバントも含まない。10日目に、血液サンプルをレトロ眼窩出血によって微量遠心分離チューブに収集し、そして血漿を、クエン酸ナトリウムを含むプラスチックチューブ中に血液サンプルを収集し、続いてEppendorf卓上微量遠心分離機で最大回転で遠心することによって調製する。ELISAプレート(96ウェル)をヒト化抗体タンパク質(これは、ヒト定常領域を含み、そしてこの免疫に応答して作製される任意のマウス抗体を捕獲するために使用される)を用いてコートする。未結合物質を洗浄して除去した後、結合したマウス抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて検出する。任意の結合した抗体は、ヒト定常領域または可変領域(これらの両方は、ヒト化抗体と融合タンパク質との間で共有される)のいずれかを指向し得る。
【0168】
融合されたIL−12−IL−2がないヒト化抗体に対しては、ほとんどまたは全く反応性がない。一方、融合タンパク質は、外因性アジュバントの非存在下および静脈内投与の経路が皮下投与または腹腔内投与のいずれかと比較して、そのような応答を誘導することに関して非常に望ましくない事実にもかかわらず、強力な抗体応答を誘導する。IgG2aアイソタイプの抗体(これは、代表的なIL−12増強された応答である)は、抗体−IL−12−IL−2注射された群において見出されるが、ヒト抗体で注射された群には見出されない。
【0169】
種々の経路によって投与される抗原−IL−12複合サイトカイン融合タンパク質の免疫原性を、PBSもしくは他の生体適合性の緩衝液、または公知のアジュバント(例えば、フロイントの非完全アジュバントおよびフロイントの完全アジュバント)中のこの融合タンパク質(例えば、上記に記載される)の溶液を注射することによって試験する。例えば、単一または複数の、皮下注射、皮内注射または腹腔内注射が、2週間毎に提供され得る。あるいは、融合タンパク質は、まず皮下注射によって投与され得、次いで続いて、腹腔内注射され得る。フロイントのアジュバントは、注射部位における過敏に起因して、ヒトの用途に対しては使用することができない。水酸化アルミニウム(Alum)の沈澱物のような代替のアジュバントが、ヒトの用途に対して承認され、そして本発明において使用され得る。スクアレンおよび脂質に基づく新規有機化学アジュバントがまた、皮膚への注射に使用され得る。
【0170】
(実施例16:複合サイトカイン融合タンパク質を用いた遺伝子治療)
遺伝子治療法によって送達される複合サイトカイン融合タンパク質の抗癌活性をまた、肺癌の処置に関して示した。Lewis肺癌腫細胞を、上記に記載されるウイルスベクター系(PA317パッケージング細胞株へトランスフェクトされるpLNCX−scIL−12−IL−2またはpLNCX−scIL−12 DNA)を用いて安定にトランスフェクトした。これらの構築物は、IL−12の一本鎖バージョンをコードし、ここで、p35およびp40サブユニットは、リンカーで結合されている。クローンを、G418含有培地を用いてインビトロで選択し、そして約50〜60ng/mlのIL−12を安定に発現するクローンを、ELISA(R & D Systems)によって同定した。
【0171】
scIL−12またはscIL−12−IL−2を発現する、約1×106および約5×106LLC細胞を、C57BL/6マウスおよびまたSCIDマウスに皮下注射した。コントロールとして、2×106 LLC細胞を、C57BL/6マウスおよびまたSCIDマウスに注射した。IL−12を発現するLLC細胞は、サイトカインを発現するように操作されていないLLC細胞から誘導された腫瘍とほぼ同じ速度で増殖する腫瘍を形成する。しかし、C57BL/6マウスおよびまたSCIDマウスの両方において、scIL−12−IL−2を発現するLLC細胞は、皮下腫瘍を形成しないか、または引続いて縮みそして消失する腫瘍を形成するかのいずれかであった(図17および18)。
【0172】
(実施例17.IL−4およびGM−CSFを含む複合サイトカイン融合タンパク質の構築)
サイトカインIL−4およびGM−CSFは、組み合わせて使用される場合、樹状細胞の強力なアクチベーターである。IL−4およびGM−CSFの活性を含む複合サイトカイン−抗体融合タンパク質が、以下のように構築された。GM−CSFのコード配列が、KS−1/4抗体重鎖のコード配列の3’末端にインフレームで融合され、これには、リーダー配列が先行した。さらに、IL−4のコード配列(リーダー配列を含む)は、成熟KS−1/4抗体軽鎖のコード配列の5’末端に、リンカーを用いてインフレームで融合された。
【0173】
詳細には、マウスIL−4とKS−1/4抗体の軽鎖との融合タンパク質をコードするDNAを構築するために、マウスIL−4 cDNAを、正方向プライマー:TCTAGACC ATG GGT CTC AAC CCC CAG C(配列番号22)(ここで、XbaI部位のTCTAGA(配列番号22の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置される)および逆方向プライマー:C GGA TCC CGA GTA ATC CAT TTG CAT GAT GCT CTT TAG GCT TTC CAG G(配列番号23)(これは、マウスIL−4のC末端アミノ酸残基をコードするTCGコドン(アンチコドンCGA)に対してすぐ3’にBamHI部位であるGGA TCC(配列番号23の残基2〜7)を含む)を用いて、PCRによって適応させた。PCRフラグメントのクローニングおよび配列確認の後、マウスIL−4 cDNAを含むXbaI−BamHIフラグメントを、グリシンおよびセリン残基に富むフレキシブルペプチドリンカーをコードするBamHI−AflIIオリゴヌクレオチド二重鎖に連結した。次に、AflII末端を、マウスKS−1/4軽鎖のN末端に先行する人工的に配置されたAflII部位に結合させた。2つの連結から生じる連結におけるDNAおよびタンパク質の配列を、以下に提供する。
【0174】
【化4】
このDNA配列において、GGATCC(配列番号24の残基4〜9)およびCTTAAG(配列番号24の残基48〜53)は、それぞれ、再構築に使用される2つの制限部位のBamHIおよびAflIIであり;TCGは、マウスIL−4のC末端セリン残基をコードする;GAGは、KS−1/4軽鎖の成熟N末端をコードする;そして、GlySerリッチのペプチドリンカーのアミノ酸配列をそのDNA配列の下に示す。強力なプロモーターを含む高レベルの発現のための補助的配列を、前の実施例に記載される技術および分子生物学の他の標準的な技術を用いて、融合ポリペプチドの両方をコードするDNAセグメントのほぼ周辺に配置した。
【0175】
IL4−KS(軽鎖)およびKS(重鎖)−GM−CSF融合タンパク質をコードするDNA配列を、NS/0細胞にトランスフェクトし、そして対応するポリペプチドが、高レベルで発現された。還元状態下におけるSDS−PAGEにより、約80kDに重鎖−GM−CSFポリペプチドに対応する散在したバンド、および約50kDにIL4−軽鎖融合体に対応する複合バンドが見出された。散在したバンドおよび複合バンドの出現は、それぞれ、IL−4およびGM−CSFの可変のグリコシル化に起因した。
【0176】
サブユニットは、図3Gの一般的な構造に対応する構造を有するジスルフィド結合した四量体タンパク質へアセンブルした。このタンパク質は、KS−1/4の抗原結合活性、そのFc領域を介したStaph Aタンパク質への結合する能力、ならびにIL−4およびGM−CSFのサイトカイン活性を有した。IL−4活性を、IL−4依存性刺激によるCTLL−2細胞のトリチウム化チミジン取り込みによって測定した。GM−CSF活性を、GM−CSF依存性刺激による32(D)GM細胞のトリチウム化チミジン取り込みによって測定した。モル濃度の基準に対して、KS−IL4−GMCSFのIL−4活性およびGM−CSF活性は、精製されたIL4およびGM−CSFと類似していた。
【0177】
抗体配列と結合していないサイトカインIL−4とGM−CSFの融合体を、以下のように構築した。マウスIL−4を、マウス脾細胞のRNAからPCRによってクローン化した。正方向プライマーは、配列:TCTAGACC ATG GGT CTC AAC CCC CAG C(配列番号26)(ここで、XbaI部位のTCTAGA(配列番号26の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置された)を有し、そして逆方向プライマーは、配列:CGA TAT CCC GGA CGA GTA ATC CAT TTG CAT GAT GCT CTT TAG GCT TTC CAG G(配列番号27)(これは、マウスIL−4のC末端アミノ酸残基をコードするTCGコドン(アンチコドンCGA)のすぐ3’にEcoRV部位のGAT ATC(配列番号27の残基2〜7)を配置した)を有した。配列確認の後、そのネイティブなリーダーと共にmuIL−4 cDNAを含むXbaI−EcoRVフラグメントを、muGM−CSFを含むSmaI−XhoIフラグメントに連結させ、muIL−4とmuGM−CSF cDNAとの間の融合体の連結部に以下の配列を得た:ATG GAT TAC TCG TCC GGG ATG GGA AAA GCA CCC GCC CGC(配列番号28)(ここで、muIL4のC末端配列およびmuGM−CSFのN末端配列を、下線で示し、そして、GATG GG(配列番号28の残基17〜22)は、EcoRV平滑末端からSmaI平滑末端への連結から生じる配列である)。muIL4−muGMCSFをコードする生じたDNAを、次いで、発現ベクターにクローン化した。この発現されたタンパク質を、SDS−PAGEによって分析し、そして、45〜50kDの見かけ上の分子量を有する散在バンドとして泳動されることが見出された。モル濃度の基準に対して、IL4−GMCSFのIL−4活性およびGM−CSF活性は、精製されたIL−4およびGM−CSFと類似していた。
【0178】
(実施例18.リンホタクチン−KS−IL12(lymphotactin−KS−IL2)をコードするDNAの構築およびリンホタクチン−KS−IL2タンパク質の発現)
ケモカインは、勾配を形成し、免疫細胞の化学走性を媒介すると考えられている、異なるクラスのサイトカインである。さらに、他のサイトカインのように、ケモカインは、標的細胞において特定の遺伝子の発現を誘導し得る。ケモカインの1つの特徴は、遊離のN末端がしばしば活性に必要とされることであり、これにより、融合タンパク質が構築され得る方法に限定を置くかもしれない。
【0179】
サイトカインリンホタクチン(これは、ケモカインである)、抗体KS−1/4、およびサイトカインIL−2からなる、サイトカイン−抗体−サイトカイン融合タンパク質を構築した。この融合タンパク質は、四量体であり、そして2つの異なるポリペプチドを含んだ。1つのポリペプチドは、KS−1/4抗体の重鎖のN末端に融合されたマウスリンホタクチンからなる(C末端にIL−2が続く)。C末端にIL−2を有するKS−1/4重鎖の融合体(「KS−IL2重鎖」)は、以前に記載された(Gilliesら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1428)。もう一方のポリペプチドは、KS1/4抗体の軽鎖からなる。
【0180】
マウスリンホタクチンの完全なコード配列は、KelnerおよびZlotnik(Science 266:1395(1998))によって公開された。マウスリンホタクチンとKS−IL2の重鎖との融合タンパク質をコードするDNAを構築するために、マウスリンホタクチンcDNAを、正方向プライマー:TCTAGAGCCACC ATG AGA CTT CTC CTC CTG AC(配列番号29)(ここで、XbaI部位のTCTAGA(配列番号29の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置された)、および逆方向プライマー:GGA TCC CCC AGT CAG GGT TAC TGC TG(配列番号30)(これは、マウスリンホタクチンのC末端アミノ酸残基をコードするGGGコドン(アンチコドンCCC)のすぐ3’にBamHI部位のGGA TCC(配列番号30の残基1〜6)を配置した)を用いて、PCRによって適応させた。PCRフラグメントのクローニングおよび配列確認の後、マウスリンホタクチンcDNAを含むXbaI−BamHIフラグメントを、グリシンおよびセリン残基に富むフレキシブルペプチドリンカーをコードするBamHI−AflIIオリゴヌクレオチド二重鎖に連結した。次に、AflII末端を、KS−IL2重鎖の成熟N末端に先行する人工的AflII部位に結合させた。2つの連結から生じる連結におけるDNA配列を、以下に提供する。
【0181】
【化5】
ここで、GGATCC(配列番号31の残基4〜9)およびCTTAAG(配列番号31の残基48〜53)は、それぞれ、構築に使用される2つの制限部位のBamHIおよびAflIIであり;CCCは、マウスリンホタクチンのC末端アミノ酸残基をコードする;CAGは、KS−IL2重鎖の成熟N末端をコードする;そして、GlySerリッチのペプチドリンカーのアミノ酸配列を、DNA配列の上に示す。次いで、マウスリンホタクチン−KS−IL2重鎖をコードするDNAを、発現ベクターにクローン化し、次いで、KS1/4軽鎖と同時発現させた。
【0182】
発現されたリンホタクチン−KS−IL2融合タンパク質を、T細胞を用いてBoydenチャンバー移動アッセイにおけるリンホタクチン活性に関して試験する(Leonardら、(1999)Current Protocols in Immunology、6.12.3頁)。あるいは、NK細胞を使用する。あるいは、リンホタクチン活性を、Gタンパク質結合レセプターの活性化に対する応答におけるカルシウム流動に関する、標準的な細胞アッセイにおいて観察する(Maghazachiら、FASEB J.(1997);11:765−74)。さらに、リンホタクチン−KS−IL2融合タンパク質を、試験し、そしてEpCAMへ結合する能力に関するアッセイにおいて活性であることが見出され、そしてまた、IL−2活性に関するアッセイ(例えば、CTLL−2細胞増殖アッセイ)において活性である。
【0183】
(参考としての援用)
本明細書上記に引用された全ての刊行物は、その全体が本出願に参考として援用される。
【0184】
(等価物)
本発明は、本発明の精神または基本的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形式で具体化され得る。従って、上記の実施形態は、全ての関係において、本明細書中に記載される本発明に対する限定よりも、例示的であるとみなされる。従って、本発明の範囲は、前述の発明の詳細な説明よりも、添付の特許請求の範囲によって示され、従って、特許請求の範囲の等価物の意義および範囲内にある全ての変更は、本発明に含まれることが意図される。
[配列表]
【0185】
【表2】
【技術分野】
【0001】
(出願に関する参考文献)
本出願は、1999年8月9日に提出された米国出願第60/147,924号の利益を主張し、その開示を本明細書中で参考文献として援用する。
【0002】
(発明の分野)
本発明は、複合サイトカインタンパク質複合体(multiple cytokine protein complexs)およびそれらの組成物の構築および発現方法に関する。さらに詳細には、本発明は、複合サイトカインおよび標的化成分よりなる融合タンパク質、ならびに癌およびウイルス感染のような疾患の処置に融合タンパク質を使用する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
(発明の背景)
免疫系を制御する調節ネットワークは、免疫細胞の機能を表すおよび表さない、そのうえ細胞の増殖を制御するための、サイトカインと呼ばれる分泌タンパク質シグナル伝達分子による。これらの反応は、概して、所望される生物学的効果を活発にするように協調して作用する複合サイトカインを含む。インターロイキン−2(IL−2)のような一定のサイトカインは、自己で免疫細胞増殖を誘導し得、そして第2のサイトカイン分泌を含む他の機能を活性化し得る。別のサイトカイン(インターロイキン−12(IL−12))(Trinchieriによって概説された、1994、Blood 84:4008−4027)は、一定の免疫細胞の増殖を誘導し得、別の重要な免疫モジュレーター(インターフェロン−γ(IFN−γ))を誘導し得る。このIFL−γの誘導は、IL−12の重要な活性であるが、IL−12は、IFN−γ独立性の別の重要な活性を有する。IL−12自身は、感染症状況の初期段階で誘導されるため、先天免疫系および後天免疫系に連結すると考えられる。
【0004】
マウスおよびヒト免疫細胞の両方を用いた多くのインビトロの研究は、最適な免疫反応の開発におけるサイトカイン組み合わせの重要性を示した。例えば、ほとんどのT細胞は、マイトジェンで活性化されるか、または高濃度のIL−2中で培養されるまでは、IL−12レセプター(IL−12R)を発現しない(Desaiら、(1992)、J.Immunol.148:3125−3132)。一旦、そのレセプターが発現されると、細胞はIL−12に対してはるかに敏感になる。さらに、IL−12は、IFN−γ転写を誘導するが、IFN−γmRNAは、その後じきに減る。IL−2の存在下、mRNAは、安定し、そしてIFN−γ生成量の劇的な増加を生じる(Chanら(1992)J.Immunol.148:92−98)。他の研究においては、IL−3およびIL−11のサイトカイン組み合わせまたはIL−3およびスチールファクター(Steel Factor)のサイトカイン組み合わせは、初期造血前駆細胞の増殖においてIL−12との相乗効果を有する(Trinchieri、1994;上記に引用)ことが見出された。インターロイキン−4およびGM−CSFの組み合わせは、樹状細胞の刺激において特に有効である(Paluckaら、(1998)J.Immunology 160:4587−4595)。細胞性免疫反応の刺激にとって、IL−12およびIL−18(最近発見されたIL−12に相補性のいくつかの活性を有するTh1促進サイトカイン(Hashimotoら、(1999)J.Immunology 163:583−589;Barbulescuら、(1998)J.Immunology 160:3642−3647))の組み合わせもまた、有用である。さらに、IL−2およびインターフェロン−γは、一定の状況で相乗的である(Palladino、M.A.、米国特許第5,082,658号)。
【0005】
多くのこれらの相乗作用研究において、各サイトカインの相対的なレベルが、非常に重要であることが発見された。IL−2の最適以下の量の存在下でのIL−12の添加は、増殖の誘導、細胞溶解活性およびIFN−γ誘導に相乗作用を導くが、1つのサイトカインを高い用量で使用するIL−2およびIL−12の組み合わせは、拮抗することが見いだされた(Perussiaら、J.Immunol.149:3495−3502(1992);Mehrotaら、J.Immunol.151:2444−2452(1993))同様の状況はまた、IL−12およびIL−7の組み合わせにおいても現れる。
【0006】
マウスにおける抗腫瘍反応の発生のためのIL−12と他のサイトカインとの間の相乗作用研究はまた、混合した結果を示した。いくつかのモデルにおいて、各サイトカインの最適以下の用量で相乗作用が見られ、そしてさらに高い用量は、高い毒性を導いたが、一方他のモデルにおいて、IL−12およびIL−2の組み合わせは、ほとんどまたはまったく相乗作用を示さなかった(例えば、Nastalaら、J.Immunol.153:1697−1706(1994)参照のこと)。特に、異なる薬学的な性質(異なる循環半減期および生分布など)を有する、2つの薬剤の活性の固定比率を維持する必要性があるとき、これらの結果は、インビボにおける2つの潜在的な相乗作用の薬剤の組み合わせの本来の違いを反映し得る。
【0007】
インビトロの細胞培養実験において、サイトカインレベルを制御することは、簡単であるが、インビボでは多くのファクターが、サイトカインの相対的な生分布および局在性に影響を及ぼし得、従って、サイトカインの免疫刺激能に影響を及ぼす。これらのファクターの最も重要なものは、半減期である。ボーラス注射後の血行中のIL−2の半減期は、約10分である。これらの薬物動態性質と著しい対照としては、IL−12の循環半減期は、マウス中では3時間より長く(Wysockaら(1995)Eur.J.Immunol.25:672)、そしてヒトでは5〜10時間である(Lotzeら、(1996)Ann NY Acad Sci 795:440−454)と報告された。
【0008】
この違いは、IL−2およびGM−CSF共に相対的に小さいサイズ(IL−12が75kDaに対して、15〜25kD)であり、腎濾過によって、IL−2およびGM−CSFが浄化され得ることによると考えられる。約50kDa未満の分子量を有するタンパク質は、腎濾過によって浄化される。ほとんど全てのサイトカインは、50kDaより小さく、そして同様に速やかに腎濾過による浄化をこうむる。2つのそのように小さく速やかに浄化されるサイトカインを用いる処置が、所望される場合、単純にサイトカインの同時投与で十分である。しかし、同時投与は、有意に半減期に差のあるサイトカインには最適ではない。
【0009】
サイトカインの全身投与は、有害な副作用のため難しい。例えば、高いレベルのインターフェロン−αは、重大な副作用(皮膚、神経学的、免疫および内分泌の毒性を含む)を生じる。複合サイトカイン融合体は、著しい重篤な副作用を示し得ると予想される。
【0010】
サイトカインの全身投与の副作用を低減するため、1つのストラテジーは、サイトカインとターゲッティング能力を有する第2の分子とを融合することである。Fc領域が別のタンパク質のN末端に配置される融合体(「免疫融合体」または、Xがインターフェロン−αなどのリガンドである「Fc−X」融合体と呼ばれる)は、多数の特有の、有利な生物学的性質を有する(Loら、米国特許第5,726,044号および同第5,541,087号;Loら、Protein Engineering 11:495)。特に、そのような融合体タンパク質は細胞表面の関連のFcレセプターに今まで通り結合し得る。しかし、リガンドが細胞表面のレセプターに結合する場合、Fc領域の配位が変化し、そして抗体依存性細胞障害(ADCC)および補体結合を媒介する配列が閉塞される(occuluded)と思われる。結果として、Fc−X分子のFc領域は、ADCCまたは補体結合を効果的に媒介できない。N末端サイトカインおよびC末端Fc領域との融合体による細胞障害性の影響は、周知である。例えば、Fc領域のN末端とIL−2との融合体は、IL−2レセプター、固定補体を保有する細胞に結合し得る分子を生成し、そして結果として細胞を溶解する(Landolfiら、N.F.(1993)米国特許第5,349,053号)。対照的に、Fc−IL−2融合体タンパク質は、この性質を有さない。したがって、Fc−X融合体は、ADCCおよび補体結合の有害な影響を受けずに、血清半減期および相対的肝臓中濃度を増加する効力を有すると予想される。
【0011】
短い血清半減期を有する多くの異なったタンパク質を、Fc−X配置でFc領域と融合させ得、その結果得られた融合体はかなり長い血清半減期を有することが、証明された。しかし、2つの異なるFc融合体の血清半減期は、概して同一ではない。従って、2つの異なるX機能基の送達が、所望される場合、2つの異なるFc−Xタンパク質の同時投与は、概して最適ではない。
【0012】
いくつかの環境下で、より良いアプローチは、サイトカインと、細胞表面抗原への特異性および親和性を有する抗体(または抗体由来のフラグメント)とを融合させること(Gilliesら、米国特許第5,650,150号;Gilliesら、Proc.Natl.Acad.Sci.89:1428)によって、または融合タンパク質型のペプチド結合を介してタンパク質抗原および刺激性のサイトカインを結合させること(Hazamaら、Vaccine 11:629)によって、この細胞表面抗原に対するサイトカインの効果を標的とすることである。抗体自身は融合サイトカインの半減期を増加し得るが、同一抗体を用いた異なるサイトカイン融合間にはまだ違いがあり(例えば、Gilliesら、Bioconjugate Chem.4:230−235(1993);Gilliesら、J.Immunol.160:6195−6203を参照のこと)、その違いは、標的部位での同時局在性を困難にする。上記に論じたように、このことが、サイトカインの活性の不均等を導き得、そして所望の相乗効果を減少させ得る。さらに、2つの異なる融合タンパク質の使用は、その安全性および有効性のプロフィールのため各融合体別々の試験を必要とし、ついでさらに混合物として試験を必要とする。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0013】
(発明の要旨)
本発明は、2つ以上の異なるサイトカイン間での複合体または融合体を提供し、その複合体または融合体は、概して、標的免疫治療と同様に有用である。これらの複合体または融合体は、必要に応じて他のタンパク質機能基を含む。そのような複合体または融合体の1つの特徴は、固定された比率でその成分のサイトカインの活性を提供することである。
【0014】
概して、本発明は、少なくとも2つの異なるサイトカインを含むタンパク質複合体に関する。そのサイトカインは、同じポリペプチド鎖であり得、またはジスルフィド結合もしくは化学的架橋によって形成される結合などの共有結合によって結合され得る。あるいは、そのサイトカインは、安定な非共有結合的な結合であり得る。いくつかの好ましい実施形態において、タンパク質複合体は、哺乳動物中のある部位対して複合体を標的とする標的機能基(抗体または抗体フラグメントなど)を含む。
【0015】
好ましい実施形態において、本発明は、2鎖サイトカイン(IL−12など)の生物活性と第2のサイトカインの生物活性とを組み合わせたタンパク質複合体を提供する。そのサイトカインは互いに共有結合的に結合され(例えば、融合され)得る。そのサイトカインはまた、他の機能基を介して結合され得る。例えば、第2のサイトカインを含むポリペプチド鎖として、IL−12を特異的に結合する結合機能基(例えば、IL−12に対する抗体またはIL−12に対するレセプター)が挙げられる。あるいは、結合機能基はIL−12と結合された第2の機能基と相互に作用し得る。例えば、IL−12のサブユニットをコードするポリペプチド鎖として、アビジンが挙げられる場合、第2のサイトカインを含むポリペプチドとして、標的機能基としてのビオチンが挙げられ得る。ひとつの実施形態において、第2のサイトカインは、IL−2である。
【0016】
本発明は、IL−12自体の薬物動態の動きと類似した、より長く単一の薬物動態の動きを提供し、そのことが、第2のサイトカインの活性の持続を増加し、そして動物へ注入した後の2つのサイトカインの活性のバランスを維持しながら、IL−12の活性および第2のサイトカインの活性の両方を維持するIL−12の融合タンパク質の生成に関する方法を提供する。
【0017】
本発明の別の実施形態において、融合タンパク質は、IL−12のp35およびp40サブユニットが、ジスルフィド結合によって結合され、そしてIL−12のp35またはp40サブユニットのアミノまたはカルボキシル末端どちらか一方で、IL−12−XまたはX−IL−12の一般式(ここでXは第2のサイトカインである)で第2のサイトカインと共有結合的に結合した、IL−12のヘテロダイマー型を含む。
【0018】
本発明の別の実施形態において、融合タンパク質は、可撓性のペプチドリンカーを介して結合された2つのポリペプチドサブユニットを含むIL−12の単鎖(sc)型とアミノまたはカルボニル末端のどちらか一方で、一般式scIL−12−XまたはX−scIL−12で共有結合された、第2のサイトカインを含む。
【0019】
さらに別の実施形態において、2つのサイトカインはさらに、タンパク質鎖のアミノまたはカルボキシ末端のいずれか一方で二量化または多量体化構造を形成し得るタンパク質と融合される。この実施形態の好ましい形態において、第2のサイトカインとIL−12の融合タンパク質形成のひとつは、さらに、免疫グロブリン(Ig)鎖の一部(二量化し得るFc領域など)と、融合される。さらなる実施形態としては、Ig鎖の一部のいずれかの末端でIL−12の少なくともひとつのポリペプチド鎖および他の末端で融合された第2のサイトカインとの融合が挙げられる。
【0020】
別の実施形態において、2つ以上のサイトカインは、特異的レセプターへの結合によって、標的能力を有するタンパク質と融合される。例えば、Fc領域は、肝臓中に豊富であるFcレセプターと結合し得る。複合結合サイトカインとFc領域の融合は、二量化および標的共の利点を例示する、しかし、いくつかの状況においては、多量体化能力または標的能力のみを有するが両方の能力は有していない複合化サイトカインの融合体を構築することが有用である。
【0021】
さらに、別の実施形態においては、複合サイトカインを含む、融合タンパク質は、さらに、アミノ末端またはカルボキシル末端のいずれかで、多様な標的能力を有する多くのクラスの分子(抗体、または骨格を持っているかもしくは持っていないペプチドアプタマーなど)と、融合される(Colasら、(1998)Proc Natl Acad Sci USA.95:14272−7)。特定の実施形態は、複合サイトカインと、抗原と結合し得る抗体の少なくとも一部分(インタクトな抗体、単鎖抗体または単鎖Fv領域など)との融合である。さらに実施形態としては、抗原と結合し得る抗体鎖の少なくとも一部のいずれかの末端部分でIL−12の少なくとも1つのポリペプチド鎖および、他の末端で融合した第2のサイトカインとの融合が挙げられる。
【0022】
上記の記述に従って、概して、遺伝工学技術によって、複合サイトカイン融合タンパク質と複合サイトカイン抗体融合タンパク質を構築することが好ましい、この結果、タンパク質成分が、アミド結合またはジスルフィド結合などの共有結合によって結合される。しかし、そのようなタンパク質複合体を構築するために、化学架橋を使用することもまた、有用である。そのような方法は、タンパク質化学分野で良く確立される。あるいは、異なるサイトカインと、安定した非共有結合複合体を形成するパートナータンパク質とを融合することでタンパク質複合体を生むことが、時には、十分である。例えば、非共有結合ヘテロ二量体サポートタンパク質は、以下のように使用される:第1のサイトカインを、ヘテロ二量体のひとつのサブユニットと融合する、第2のサイトカインを、ヘテロ二量体の第2のサブユニットと融合する、そして2つの融合タンパク質を、適切な条件で混合する。例えば、2つのサブユニット−サイトカイン融合タンパク質をコードした核酸は、同じ細胞中で発現される。この場合、複合サイトカインタンパク質複合体は、サイトカイン組成成分が直接または非直接に共有結合的に結合されずに、構築され得る。本発明の目的を達成するために、そのような複合体が、動物の投与の際に維持され、そして生物学的効果を達成するために十分に安定であることが、必要である。
【0023】
本発明はまた、2つ以上のサイトカインを含む融合タンパク質をコードする核酸を提供する、ここで、サイトカインの1つは、好ましくはIL−12であり、そして、核酸によってコードされた融合タンパク質は、必要に応じて、他のタンパク質部分を含む。好ましい実施形態として、2つ以上のサイトカインと二量化タンパク質(抗体鎖のFc部分)との融合体をコードする核酸が挙げられる。別の好ましい実施形態のセットは、2つ以上のサイトカインと標的能力を有するタンパク質(抗体など)との融合体をコードする核酸である。
【0024】
本発明はまた、2つ以上のサイトカインの融合体の構築のための方法、およびそのような融合タンパク質を発現方法を提供する。
【0025】
本発明はまた、疾患および他の医学的病気の処置方法を提供する、ここで、その処置は、2つ以上のタンパク質の活性の有用な組み合わせを含む。1つの実施形態において、少なくとも1つのタンパク質は、短い(例えば、20分以下)または中程度にだけ長い(例えば、40分以下)血清半減期を有する。そのタンパク質は、遺伝工学技術、または他の技術によって融合され、ヒトまたは動物へ投与される。この場合、2つのタンパク質の活性は固定比で現れ、そして2つのタンパク質の異なる投薬スケジュールでの別個の投与を、要求されない。さらに、融合タンパク質の血清半減期は、概して、より長い血清半減期を有するタンパク質成分の血清半減期とさらに類似である、従って、より短い血清半減期を有するタンパク質の有効半減期を長くする。
【0026】
より詳細には、本発明は、癌もしくは感染などの疾患、または他の疾患の免疫治療処置方法を提供し、2重鎖サイトカイン(第2のサイトカインと結合したIL−12など)を用いて有効的に処置され得る。好ましい実施形態において、IL−12は、IL−2またはGM−CSFと融合され、そして動物またはヒトに投与される。他の好ましい実施形態において、GM−CSFは、IL−4と融合され、動物またはヒトへ投与される。別の実施形態において、IL−12は、IL−8と融合され、動物またはヒトへ投与される。そのような処置は他の疾患処置と組み合わせて使用され得る。さらに、本発明は、多様な抗原に対するワクチン接種方法を提供し、様々な疾患を予防または処置するために使用され得る。
【0027】
これらの方法の他の実施形態において、2つの異なるサイトカインが、二量体タンパク質の一部分(抗体のFc領域など)と融合され、そして、動物またはヒトに投与される。これらの方法の好ましい形態では、サイトカインIL−12は、第2のサイトカインと共にFc領域と融合され、さらに好ましくは、その第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。
【0028】
さらにこれらの方法の他の実施形態において、2つの異なるサイトカインが、インタクトな抗体と融合され、そして動物またはヒトに投与される。この方法の好ましい形態において、サイトカインIL−12が、第2のサイトカインと共に抗体の一部分と融合され、さらに好ましくは、その第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。本発明はまた、疾患を処置する点で有用な抗体サイトカイン融合タンパク質の混合物を開示する。1つの実施形態において、抗体IL−2融合タンパク質と抗体IL−12融合タンパク質の混合物が、疾患の処置に使用される。例えば、癌、ウイルス感染、またはバクテリア感染が処置される。
本発明はまた、例えば、以下の項目を提供する:
(項目1)免疫グロブリン領域(Ig)、第1のサイトカイン(C1)および第2の異なるサイトカイン(C2)を規定するポリペプチド鎖を含む、多機能融合タンパク質。
(項目2)項目1に記載の融合タンパク質であって、ここで、前記Ig、前記C1および前記C2は、N末端からC末端の方向に配置され、以下:
(i)Ig−C1−C2;
(ii)C1−Ig−C2;および
(iii)C1−C2−Ig
(ここで、棒線は、ポリペプチド結合またはポリペプチドリンカーを表す)からなる群より選択される式によって規定される融合タンパク質を産生する、融合タンパク質。
(項目3)前記C1または前記C2が、IL−2、IL−4またはGM−CSFを含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目4)前記C1または前記C2が、ヘテロ二量体サイトカインのサブユニットを含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目5)前記C1が、ケモカインである、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目6)前記サブユニットが、IL−12のp35サブユニットまたはIL−12のp40サブユニットを含む、項目4に記載の融合タンパク質。
(項目7)前記C1または前記C2が、ヒトサイトカインである、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目8)前記Igが、免疫グロブリン重鎖可変領域ドメイン(VH)を含む、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目9)前記Igが、免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、項目1または8に記載の融合タンパク質。
(項目10)前記定常領域が、ヒンジ領域ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目11)前記定常領域が、さらにCH1ドメインを含む、項目10に記載の融合タンパク質。
(項目12)前記VHが、癌特異的抗原またはウイルス抗原と免疫学的に反応性である、項目9に記載の融合タンパク質。
(項目13)前記C1および前記C2が、前記融合タンパク質に結合される場合、インビボにおいて類似した循環半減期を有する、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目14)前記Ig、前記C1、および前記C2が、同じ条件下において全て活性である、項目1に記載の融合タンパク質。
(項目15)多機能タンパク質複合体であって、
免疫グロブリン領域および第1のサイトカインの第1の部分を規定する、第1のポリペプチド鎖、および
第2のサイトカインおよび該第1のサイトカインの第2の部分を規定する、第2のポリペプチド鎖、
を含む、多機能タンパク質複合体。
(項目16)前記第1のポリペプチド鎖が、前記第2のポリペプチド鎖に共有結合される、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目17)前記第1のサイトカインが、二量体サイトカインである、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目18)前記第1のサイトカインが、IL−12である、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目19)前記第2のサイトカインが、IL−2である、項目15に記載の多機能タンパク質複合体。
(項目20)多機能タンパク質複合体であって、少なくとも:
免疫グロブリン軽鎖の少なくとも一部に融合された第1のサイトカインを含む、第1の融合タンパク質、および
免疫グロブリン重鎖の少なくとも一部に融合された第2の異なるサイトカインを含む、第2の融合タンパク質、
を含む、多機能タンパク質複合体。
(項目21)前記第1の融合タンパク質が、前記第2の融合タンパク質に共有結合される、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目22)前記免疫グロブリン軽鎖の一部が、前記免疫グロブリン重鎖の一部にジスルフィド結合される、項目21に記載のタンパク質複合体。
(項目23)前記第1のサイトカインのアミノ末端が、前記免疫グロブリン軽鎖のカルボキシ末端に融合される、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目24)前記第2のサイトカインのアミノ末端が、前記免疫グロブリン重鎖のカルボキシ末端に融合される、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目25)前記第1のサイトカインが、IL−12である、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目26)前記第2のサイトカインが、IL−12である、項目20に記載のタンパク質複合体。
(項目27)第1のサイトカイン(C1)および第2の異なるサイトカイン(C2)を規定するポリペプチド鎖を含む、多機能融合タンパク質であって、ここで、該C2は、遊離の場合、遊離のC1の約2倍より大きいインビボにおける循環半減期を有するが、該C1が該融合タンパク質において該C2に連結される場合、該C1は、該融合タンパク質において該C2とほぼ同じのインビボにおける循環半減期を有する、多機能融合タンパク質。
(項目28)前記C1が、IL−2またはGM−CSFである、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目29)前記C2が、IL−4、IL−12またはこれらのサブユニットである、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目30)前記C1のC末端が、前記C2のN末端に連結される、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目31)前記C2のC末端が、前記C1のN末端に連結される、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目32)前記C末端が、前記N末端にポリペプチドリンカーを介して連結される、項目30または31に記載の融合タンパク質。
(項目33)免疫グロブリン領域(Ig)をさらに含む、項目32に記載の融合タンパク質。
(項目34)前記Igが、免疫グロブリン重鎖可変領域ドメイン(VH)を含む、項目33に記載の融合タンパク質。
(項目35)前記Igが、免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、項目33に記載の融合タンパク質。
(項目36)前記定常領域が、ヒンジ領域ドメイン、CH2ドメインおよびCH3ドメインを含む、項目35に記載の融合タンパク質。
(項目37)前記重鎖定常領域が、CH1ドメインをさらに含む、項目36に記載の融合タンパク質。
(項目38)前記遊離のC2が、C1よりも少なくとも約4倍大きいインビボにおける循環半減期を有する、項目27に記載の融合タンパク質。
(項目39)前記C2が、C1よりも約8倍大きい循環半減期を有する、項目38に記載の融合タンパク質。
(項目40)項目1、15、20または27に記載の融合タンパク質をコードする、核酸。
(項目41)項目40に記載の核酸を含む、細胞。
(項目42)融合タンパク質を調製する方法であって、該融合タンパク質は、第1のサイトカイン(C1)、第2の異なるサイトカイン(C2)、および哺乳動物において予め選択された位置を標的化し得る標的化部分を含み、該方法は、以下の工程:
(a)宿主細胞において融合タンパク質をコードする核酸を発現させる工程であって、該融合タンパク質は、C1、C2および該融合タンパク質が該哺乳動物に投与された場合に予め選択された位置において該融合タンパク質を標的化し得る標的化部分を含む、工程;および
(b)該融合タンパク質を収集する工程
を包含する、方法。
(項目43)第1のサイトカイン(C1)および第2の異なるサイトカイン(C2)を、哺乳動物において予め選択された位置に対して標的化する方法であって、該方法は、以下:
該哺乳動物に多機能融合タンパク質を投与する工程であって、該多機能融合タンパク質は、C1、C2、および該融合タンパク質を該哺乳動物において予め選択された位置に対して標的化し得る免疫グロブリン領域(Ig)を含む、工程、
を包含する、方法。
(項目44)項目42または43に記載の方法であって、前記Igが、前記哺乳動物において前記予め選択された位置に配置された抗原と免疫学的に反応性である免疫グロブリン重鎖可変領域ドメインを含む、方法。
(項目45)前記抗原が、癌特異的抗原またはウイルス抗原である、項目44に記載の方法。
(項目46)項目42または43に記載の方法であって、前記Igが、前記哺乳動物において前記予め選択された位置に配置された免疫グロブリンFcレセプターに結合し得る免疫グロブリン重鎖定常領域を含む、方法。
(項目47)前記Ig、前記C1、および前記C2が、前記融合タンパク質が前記哺乳動物に投与された場合に、全て活性である、項目42または43に記載の方法。
(項目48)前記哺乳動物が、ヒトである、項目42または43に記載の方法。
(項目49)前記C1が、IL−12またはそのサブユニットである、項目42または43に記載の方法。
(項目50)前記C2が、IL−2およびGM−CSFからなる群より選択される、項目49に記載の方法。
(項目51)哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法は、項目1、15、20または27に記載のタンパク質を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目52)哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法は、項目40に記載の核酸を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
(項目53)哺乳動物における疾患を処置する方法であって、該方法は、項目41に記載の細胞を該哺乳動物に投与する工程を包含する、方法。
【図面の簡単な説明】
【0029】
前述および本発明の他の目的、ならびにそれらの様々な特徴は、添付の図面と共に読むときに、以下の記述から、より完全に理解され得る、図面の全体を通じて、同様の数は、同様の構造を言及する。
【図1】図1Aは、2つのサイトカインの融合をその最も簡単な形態で略図で図解する:1つのサイトカインが、必要に応じてリンカーを介して第2のサイトカインと融合される。図1B〜1Iは、第2のサイトカイン(「cyt」と標示された)が、ヘテロ二量体サイトカインIL−12と結び付けられ得る、様々な方法を示す。特に、第2のサイトカインは、p40のC−末端(図1B)、p40のN−末端(図1C)、p35のC−末端(図1D)またはp35のN−末端(図1E)と融合され得る。さらに、図1は、第2のサイトカインが、IL−12の単鎖バージョンと融合され得る方法を示す。特に、単鎖IL−12分子は、p35のN−末端からp40に向かい、そのC−末端(図1F)またはN−末端(図1G)で第2のサイトカインを有し得る。あるいは、単鎖IL−12分子は、p40のN−末端からp35に向かい、そのC−末端(図1H)またはN−末端(図1I)で第2のサイカインと共に、p35のN−末端とP40を有し得る。
【図2】図2A〜2Cは、図1で描かれた複合サイトカイン融合体(箱)が、抗体のFc領域(ここではヒンジ(H)、CH2ドメインおよびCH3ドメイン(長円形)として示される)とさらに融合され得る方法を、略図的に示す。特に、図1の8分子のいずれかは、Fc領域のC−末端(図2A)またはN−末端(図2B)のいずれかと融合され得る。さらに、第1のサイトカインおよび第2のサイトカイン(それぞれ箱)は、それぞれと直接結び付けられる必要はないが、Fc部分を介して結合され得る(図2C)。
【図3−1】図3A〜3Gは、複合サイトカイン融合タンパク質が、さらにIgGなどのインタクトな免疫グロブリンと融合され得る方法のサブセットを略図的に示す。重鎖V領域は、VHと標示された長円形として示され、軽鎖V領域は、VLと標示された長円形として示され、そして、定常領域は、空白の長円形である。図1に図解した複合サイトカイン融合体は、重鎖のC−末端(図3A)、重鎖のN−末端(図3B)軽鎖のN−末端(図3C)または軽鎖のC−末端(図3D)に配置され得る。さらに、多くの方法があり、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、重鎖および軽鎖のN−末端およびC−末端で、別個に結び付けられ得る、これらの3つを、図3E〜3Gに示す。
【図3−2】図3A〜3Gは、複合サイトカイン融合タンパク質が、さらにIgGなどのインタクトな免疫グロブリンと融合され得る方法のサブセットを略図的に示す。重鎖V領域は、VHと標示された長円形として示され、軽鎖V領域は、VLと標示された長円形として示され、そして、定常領域は、空白の長円形である。図1に図解した複合サイトカイン融合体は、重鎖のC−末端(図3A)、重鎖のN−末端(図3B)軽鎖のN−末端(図3C)または軽鎖のC−末端(図3D)に配置され得る。さらに、多くの方法があり、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、重鎖および軽鎖のN−末端およびC−末端で、別個に結び付けられ得る、これらの3つを、図3E〜3Gに示す。
【図4】図4A〜4Cは、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、可変軽鎖および可変重鎖が融合された「単鎖」抗体と、融合され得、そして、タンパク質が単一ポリペプチドとして発現され、次いでホモ二量化される方法を、略図的に示す。特に、複合サイトカイン融合は、C−末端(図4A)またはN−末端(図4B)に配置され得る。さらに、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインが、それぞれと直接結び付けられる必要はないが、単鎖抗体部分を介して結合され得る(図4C)。
【図5】図5A〜5Cは、第1のサイトカインと第2のサイトカインが、重鎖および軽鎖由来の融合された可変領域からなる単鎖Fv領域と融合され得る方法を略図的に示す。特に、第1のサイトカイン−サイトカイン融合は、C−末端(図5A)またはN−末端(図5B)で配置され得る。さらに、第1のサイトカインおよび第2のサイトカインは、直接結び付けられる必要はないが、単鎖Fv部分を介して結合され得る(図5C)。
【図6A】図6Aは、別個のサイトカインまたは融合タンパク質に応答したヒト末梢血球単核細胞(PBMC)によるインターフェロン−γの誘導における、IL−12とIL−2との間の相乗効果を示す。図6Aにおいて、細胞を、植物性血球凝集素活性の前(四角)もしくは後(×)にヒトIL−12を使用して、または植物性血球凝集素活性の前(ひし形)もしくは後(三角)にIL−12−IL−2融合タンパク質を使用して処理した。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは、融合タンパク質として存在するIL−12の濃度を、pg/mlで示す。y軸は、ELISAでアッセイされたIFN−γ濃度(ng/ml)を示す。
【図6B】図6Bは、別個のサイトカインまたは融合タンパク質に応答したヒト末梢血球単核細胞(PBMC)によるインターフェロン−γの誘導における、IL−12とIL−2との間の相乗効果を示す。図6Bは、細胞を、IL−12およびIL−2を1:1のモル比で添加した混合物(黒色ひし形)、ヒトFc−IL−12−IL−2融合タンパク質(灰色四角)およびヒト抗体−IL−12−IL−2融合タンパク質(明るい灰色三角)を用いて処置した実験を示す。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは、融合タンパク質として存在するIL−12の濃度を、pg/mlで示す。y軸は、ELISAでアッセイされたIFN−γ濃度(ng/ml)を示す。
【図7】図7は、別々に融合タンパク質の活性を測定し、そして、非融合IL−12分子の活性と融合タンパク質の活性を比較する、典型的なIL−12のバイオアッセイを示す。描かれているのは、マウスIL−12(白丸)、マウスIL−12およびIL−2を1:1のモル比で添加された混合物(黒四角)、マウスIL−2(白三角)および抗体−マウスIL−12−IL−2融合タンパク質(黒ひし形)に応答した、ヒトPBMCの3H−チミジン取り込みの刺激である。X軸は、インタクトなタンパク質として、または融合タンパク質として存在する単量体のサイトカインの濃度(pM)を示し;y軸はトリチウムチミジン組み込みのcpmを示す。
【図8】図8は、標準IL−2バイオ活性アッセイを示す。グラフは、マウスIL−2(丸)、抗体−マウスIL−12−IL−2融合タンパク質(ひし形)およびマウスIL−12(四角)に応答した、マウスCTLL細胞増殖の刺激を示す。X軸は、インタクトなタンパク質として、または融合タンパク質として存在する単量体サイトカインの濃度(pM)を示す。細胞を、様々な量のサイトカインまたは融合タンパク質を含む培地で、48時間、インキュベートし、次いで、MTT/MTSアッセイを使用して、生存細胞数をアッセイした。y軸は、光学密度(OD)の単位にして、490ナノメーターの吸光度を示す。
【図9】図9は、マウスIL−12(白丸)、マウスIL−12およびIL−2を1:1のモル比で添加した混合物(黒丸)、マウスFc−単鎖IL−12−IL−2融合タンパク質(黒三角)およびマウスIL−2と融合されたマウス単鎖IL−12(黒ひし形)に応答した、ヒトPBMCによる3H−チミジン取り込みの刺激を示す。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは融合タンパク質として存在する単量体のサイトカインの濃度(pM)を示す;y軸はトリチウムチミジン組み込みのcpmを示す。
【図10】図10は、マウスIL−12(白丸)、マウスIL−12およびGM−CSFを1:1のモル比で添加した混合物(黒丸)、マウスGM−CSF(黒三角)およびマウスFc−マウスIL−12−GM−CSF融合タンパク質(×)に応答した、ヒトPBMCによる3H−チミジン取り込みの刺激を示す。X軸は、インタクトなタンパク質としてまたは融合タンパク質として存在する、単量体のサイトカインの濃度(pM)を示す;y軸はトリチウムチミジン組み込みのcpmを示す。
【図11】図11は、KS−1/4の抗原であるヒトEpCAMを発現するように操作されたCT26結腸癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するBalb/Cマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処理の影響を示す。黒ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、6マイクログラムのKS−IL−12−IL−2で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、3.4マイクログラムのKS−IL−2、および5.3マイクログラムのKS−IL−12で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図12】図12は、ヒトEpCAMを発現するように操作されたCT26結腸癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するSCIDマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合たんぱく質処置の影響を示す。ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、6マイクログラムのKS−IL−12−IL−2で処置されたマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、3.4マイクログラムのKS−IL2および5.3マイクログラムのKS−IL12で処置されたマウスの平均腫瘍容積を示す。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図13】図13は、ヒトEpCAMを発現するように操作されたルイス肺癌(LLC)細胞の皮下腫瘍を保有するマウスの抗体−サイトカイン処置および抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を比較する。ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、20マイクログラムのKS−IL2を0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、20マイクログラムのKS−IL12を0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。Xは、20マイクログラムのKS−IL−12−IL−2を0、1、2、3および4日目に腫瘍内注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図14】図14は、ヒトEpCAMを発現するように操作されたルイス肺癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するマウスの抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を示す。ひし形は、コントロールとして、PBSを0、1、2、3および4日目に注射したマウスの平均腫瘍容積を示す。三角は、20マイクログラムのKS−IL−12−IL−2で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、11.5マイクログラムのKS−IL2および18マイクログラムのKS−IL12で処置したマウスの平均腫瘍容積を示す。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図15】図15は、ヒトEpCAMを発現する、またはしないいずれかのルイス肺癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を示す。黒四角は、LLC/KSA由来腫瘍を保有するマウスの平均腫瘍容積を示す。黒ひし形は、LLC由来腫瘍を保有するマウスの平均腫瘍容積を示す。マウスは、0、1、2、3および4日目に20マイクログラムのKS−IL12−IL2で処置した。腫瘍内注射を行った。X軸は、最初の注射後の経過日数を示す;y軸は1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図16】図16は、ルイス肺癌細胞由来の皮下腫瘍を保有するマウスの、抗体−サイトカイン−サイトカイン融合タンパク質処置の影響を示す。約106の細胞を、0日目に皮下に注射した。ひし形は、ナイーブなマウスの平均腫瘍容積を示す。四角は、ヒトEpCAMを発現をするように操作されたルイス肺ガン細胞由来の皮下腫瘍をあらかじめ有しており、そして、KS−IL12−IL2の処置によってこれらの腫瘍を治癒されたマウスの、平均腫瘍容積を示す。X軸は、注射後の経過日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図17A】図17Aは、正常な免疫系を有する動物中で、細胞が腫瘍を形成する能力に対する、腫瘍細胞による単一または複合サイトカインタンパク質分泌の影響を示す。図17Aにおいて、4セットのマウスを比較した:1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(黒ひし形);5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白ひし形);scIL−12を発現する1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(黒三角);およびscIL−12を発現する5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白三角)。X軸は、腫瘍細胞の注射後の日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図17B】図17Bは、正常な免疫系を有する動物中で、細胞が腫瘍を形成する能力に対する、腫瘍細胞による単一または複合サイトカインタンパク質分泌の影響を示す。図17Bは、1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(黒ひし形);5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白ひし形);scIL−12−IL−2を発現する1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(×);およびscIL−12を発現する5×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したC57BL/6マウス(白丸)。X軸は、腫瘍細胞の注射後の日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【図18】図18は、免疫欠損の動物において細胞が腫瘍を形成する能力に対する、腫瘍細胞による、単一または複合サイトカインタンパク質分泌の影響を示す。この図は、1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したSCIDマウス(黒ひし形);scIL−12を発現する1×106のLLC腫瘍細胞皮下注射したSCIDマウス(黒三角);およびscIL−12を発現する1×106のLLC腫瘍細胞を皮下注射したSCIDマウス(白丸)を比較する。X軸は、腫瘍細胞の注射後の日数を示す;y軸は、1立方ミリメートル中の平均腫瘍容積を示す。
【発明を実施するための形態】
【0030】
(発明の詳細な説明)
本発明は、2つ以上の別個のサイトカインが融合または複合体化するタンパク質分子を提供する。そのタンパク質複合体または融合タンパク質は、必要に応じて、さらなるタンパク質部分(抗体Fc領域および抗原結合部位を含む抗体領域などの多量体化および標的化を可能にする部分を含む)を含む。本発明はまた、複合サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸を提供する。本発明はまた、疾患の処置および医療条件における、複合サイトカイン融合タンパク質をコードする核酸の構築のための方法、複合サイトカイン融合タンパク質の産生のための方法、および複合サイトカイン融合タンパク質の使用についての方法を提供する。
本明細書で使用される場合、「サイトカイン」とは、免疫系の細胞の活性を調節する分泌タンパク質またはその活性化フラグメントまたはその変異体をいう。サイトカインの例としては、インターロイキン、インターフェロン、ケモカイン、腫瘍壊死因子、免疫細胞前駆体についてのコロニー刺激因子などが挙げられる。
【0031】
本明細書中で使用される場合、「ヘテロ二量体サイトカイン」とは、2つの別個のタンパク質サブユニットからなるサイトカインについていう。現在、IL−12が、唯一の天然に存在する公知のヘテロ二量体サイトカインである。しかし、人工のヘテロ二量体サイトカインが構築され得る。例えば、IL−6およびIL−6Rの可溶性フラグメントは組み合わされ、CNTFおよびCNTF−Rαが形成し得るように、ヘテロ二量体サイトカインを形成し得る[Trinchieri(1994)Blood 84:4008]。
【0032】
本明細書中で使用される場合、「インターロイキン−12」(IL−12)とは、p35およびp40サブユニット、またはp35およびp40の活性単鎖融合体、または、これらの種改変体、フラグメント、もしくは誘導体からなる2つのサブユニットのサイトカインをいう。
【0033】
本明細書中で使用される場合、「インターロイキン−2」(IL−2)とは、任意の哺乳動物IL−2(例えば、ヒトIL−2、マウスIL−2)または、これらの活性種もしくは対立遺伝子改変体、フラグメントもしくは誘導体をいう。
【0034】
本明細書中で使用される場合、「GM−CSF」とは、哺乳動物顆粒球/単球コロニー刺激因子サイトカインタンパク質(例えば、ヒトGM−CSF、マウスGM−CSF)、またはこれらの活性種もしくは対立遺伝子改変体、フラグメントもしくは誘導体をいう。
【0035】
本明細書中で使用される場合、「免疫グロブリンFc領域」とは、免疫グロブリン重鎖定常領域のカルボキシル末端部分、またはそのアナログもしくはその部分を意味する。例えば、IgGの免疫グロブリンFc領域は、少なくともヒンジ領域の一部(CH2ドメインおよびCH3ドメイン)を含み得る。好ましい実施形態では、Fc領域は、少なくともヒンジ領域の一部およびCH3ドメインを含む。別の好ましい実施形態では、Fc領域は、少なくともCH2領域を含み、そしてより好ましくは、ヒンジ領域の少なくとも一部をまた含む。
【0036】
本明細書中で使用される場合、「ペプチドリンカー」とは、2つのタンパク質(例えば、タンパク質およびFc領域)を共に結合するために使用される1つ以上のペプチドを意味する。このペプチドリンカーはしばしば、一連のアミノ酸(例えば、主にグリシンおよび/またはセリン)である。好ましくは、このペプチドリンカーは、主にグリシンおよびセリン残基の一連の混合物であり、そして、約10〜15アミノ酸長である。
【0037】
本明細書中で使用される場合、用語「多量体の」とは、共有結合(例えば、ジスルフィド結合)または非共有結合の相互作用を介して2つ以上のタンパク質サブユニットの安定した会合をいう。
【0038】
本明細書中で使用される場合、用語「二量体の」とは、2つのタンパク質サブユニットが共有結合または非共有結合の相互作用を介して安定して会合する特定の多量体分子をいう。安定した複合体は、少なくとも数分の解離速度(すなわち、オフの速度)を有する複合体である(結果として、この複合体は、インビボ使用中に標的組織に到達するのに十分な安定した長さであり、そして、生物学的効果を有する)。Fcフラグメントはそれ自身が、代表的に、ヒンジ領域の一部、CH2および/またはCH3ドメインを含む重鎖フラグメントの二量体を形成する。しかし、多数のタンパク質リガンドは、二量体としてそれらのレセプターに結合することが公知である。サイトカインXが自然に二量体化する場合、Fc−X分子のX部分は、はるかに大きい程度に、二量体化する。なぜなら、この二量体化プロセスは、濃度依存性であるからである。このFcによって結合される2つのX部分の物理的近接は、二量体化を細胞内プロセスとし、二量体の方へ平衡状態を大きく変化させ、そして、レセプターに対するこの結合を増強する。
【0039】
本明細書中で使用される場合、「ベクター」とは、宿主細胞に取り込まれ、そして、組換えられて宿主細胞ゲノムに組み込まれるか、または、エピソームとして自律的に増幅されるのに適格性のヌクレオチド配列を含む任意の核酸を意味する。このようなベクターとしては、直鎖状核酸、プラスミド、ファージミド、コスミド、RNAベクター、ウイルスベクターなどが挙げられる。ウイルスベクターの非制限的な例としては、レトロウイルス、アデノウイルス、およびアデノ随伴ウイルスが挙げられる。
【0040】
本明細書中で使用される場合、「遺伝子発現」または「タンパク質の発現」とは、DNA配列の転写、mRNA転写産物の翻訳、およびタンパク質産物の分泌または単離可能な形態でのタンパク質産物の産生のどちらかを意味することが理解される。
【0041】
本明細書中で使用される場合、「免疫サイトカイン」とは、米国特許第5,650,150号で開示されるように、抗体およびサイトカインを含む融合タンパク質である。
【0042】
本明細書中で使用される場合、「リーダー配列」とは、第2のタンパク質配列(通常N末端)に付着され、そして、この第2のタンパク質配列を細胞から分泌されるように指向するタンパク質配列である。このリーダー配列は、通常、第2のタンパク質配列から切断されそして除去され、これは、成熟タンパク質となる。この用語「リーダー配列」は、一般的に「シグナル配列」と同義語である。
【0043】
本明細書中で使用される場合、「EpCAM」とは、上皮細胞付着分子をいい(Cirulliら[1998]140:1519−1534)、そして、モノクローナル抗体KS−1/4によって結合される抗原を意味する「KSA」と同義語である。EpCAMは、上皮細胞に由来する癌細胞上で豊富に発現される細胞表面タンパク質である。
【0044】
本明細書中で使用される場合、「KS−1/4」とは、EpCAMに結合する特定のモノクローナル抗体をいう。
【0045】
本明細書中で使用される場合、「KS−IL2」「KS−IL12」および「KS−IL12−IL2」などは、インターロイキン2を有するKS−1/4、インターロイキン12を有するKS−1/4、ならびにインターロイキン12およびインターロイキン2の両方を有するKS−1/4からそれぞれなる抗体−サイトカイン融合タンパク質をいう。類似の名前の融合タンパク質構築物もまた本明細書中で使用される。抗体分子のいくつかの部位でサイトカインを融合することが可能であるので、「KS−IL12−IL2」などの記載は、明確に他を示さなければ、任意の可能な部位で融合されたインターロイキン12およびインターロイキン2の両方を有するKS−1/4を含むタンパク質の分類をいう。
【0046】
本明細書中で使用される場合、「14.18」とは、腫瘍特異的抗原GD2に結合する特定のモノクローナル抗体をいう。
【0047】
本発明を使用するタンパク質構築物のいくつかの例示的な実施形態は、図1〜5に例示される。図2〜5に概略される分子の一部は、1A〜1Iと標識され、図1A〜1Iに示される融合タンパク質についていい、そして、図1由来の融合タンパク質のいずれかが、示されるように他のタンパク質にさらに融合され得ることを例示する。サイトカインは長方形として示され、抗体の定常領域は楕円形として示され、重鎖可変領域および軽鎖可変領域は標識された楕円形として示されている。
【0048】
本発明は、2つの異なったサイトカインおよび必要に応じてさらなるタンパク質部分を含むタンパク質複合体を記載する。ホモ二量体サイトカイン(例えば、インターフェロンα、インターフェロンβ、インターフェロンγ、IL−5、IL−8など)は、複数のサブユニットを含むが、それにも関わらず、単一のサイトカインである。同様に、IL−12などのヘテロ二量体サイトカインは、異なったサブユニットを含むが、単一のサイトカインである。さらに、通常はホモ二量体サイトカインのヘテロ二量体形態(例えば、MCP−1/MCP−2ヘテロ二量体)または、通常はへテロ二量体サイトカインの2つの対立形質(例えば、Zhang,J.Biol.Chem.[1994]269:15918−24)は、単一のサイトカインである。本発明の複合体は、2つの異なったサイトカインを含み、これらのそれぞれ(例えば、IL−2およびIL−12;IL−4およびGM−CSF;MCP−1およびエオタキシン(eotaxin)など)は、免疫系の細胞の活性を調節することができる。
【0049】
図1Aは、本発明の好ましい実施形態を示す:融合タンパク質10では、第1のサイトカイン12のC末端は、必要に応じてリンカー領域を介して(データは示されていない)、第2のサイトカイン14のN末端に融合される。本発明のいくつかの実施形態では、本発明のタンパク質複合体は、有意に異なる血清の半減期を有する少なくとも2つのサイトカインを含む。例えば、小さいタンパク質および大きいタンパク質を使用することは、しばしば、より大きいタンパク質に特徴的な循環半減期を有する融合タンパク質を生じる。従って、IL−12および第2のサイトカインの組み合わせた効果が所望である状況では、以下の一般式の融合タンパク質として2つのサイトカインを発現することが有利である:IL−12−XまたはX−IL−12(ここで、Xは、第2のサイトカインである)。2つの特定の利点が見出される。第1に、より速く清澄されるサイトカインの血清半減期が延びる。第2に、両方のサイトカインの血清半減期は、お互いに非常に類似するようになる。
【0050】
IL−12などの2鎖のサイトカインは、2鎖のサイトカインのどちらかの鎖のN末端またはC末端で、別のサイトカインに融合され得る。1つの実施形態では、第2のサイトカインは、IL−12のp35またはp40サブユニットのいずれかのN末端またはC末端のいずれかに融合される(図1B〜1E)。図1Bの融合タンパク質16では、第1のサイトカイン12のN末端は、IL−12のp40サブユニット18のC末端に融合される。p40サブユニット18は、共有結合22によってIL−12のp35サブユニット20に連結される。図1Cの融合タンパク質24では、p40サブユニット18のN末端は、第1のサイトカイン12のC末端に融合され、そして、共有結合22によってp35サブユニット20に連結される。図1Dは、第1のサイトカイン12のN末端がp35サブユニット20のC末端に融合される融合タンパク質26を示し、p35サブユニット20は、共有結合20によって、p40サブユニット18に連結される。図1Eでは、融合タンパク質28は、p35サブユニット20を含み、これは、そのN末端が第1のサイトカイン12のC末端に融合され、そして、共有結合22によって、p40サブユニット18に連結される。
【0051】
第2の実施形態では、IL−12のサブユニットは融合され、N末端の位置で、p35サブユニットまたはp40サブユニットのいずれかと、単鎖タンパク質(scIL−12)を形成し得る;第2のサイトカインは、生じるscIL−12のN末端またはC末端に付着され得る(図1F〜1I)。従って、図1Fに示される好ましい実施形態では、融合タンパク質30は、単鎖IL−12を含み、ここで、p40サブユニット18のN末端は、必要に応じてペプチドリンカーを介して、p35サブユニット20のC末端に融合される。この実施形態では、サイトカイン12のN末端は、p40サブユニット18のC末端に融合される。図1Gに示される実施形態では、p35サブユニット20のN末端は、必要に応じてペプチドリンカーを介して、サイトカイン12のC末端に融合される。図1Hおよび1Iは、p35サブユニットのN末端が、必要に応じてペプチドリンカーを介して、p40サブユニットのC末端に融合される、IL−12の別の単鎖バージョンを含む融合タンパク質34および36を示す。融合タンパク質34(図1Hに示される)において、サイトカイン12のN末端は、p35サブユニット20のC末端に融合される。融合タンパク質36(図1Iに示される)において、p40サブユニット18のN末端は、サイトカイン12のC末端に融合される。大いに好ましい実施形態では、IL−12は、IL−2に融合される。
【0052】
このような分子の生成は、さらに実施例において例示される。
【0053】
ヘテロ多量体分子(例えば、IL−12または抗体)を、非同一のサブユニットが、短いアミノ酸リンカーによって連結される単鎖分子として発現することは、しばしば、都合がよい[Hustonら(1988)Proc.Nat.Acad.Sci.85:5879;Lieschkeら(1997)Nat Biotechnol.15:35;Lieschke;G.J.およびMulligan;R.C.、米国特許第5,891,680号]。遺伝子融合が構築され、次いで、単一の組換えDNA構築物を含む細胞中で、所望のタンパク質が発現され得る。このようなヘテロ多量体サイトカインの単鎖バージョンは、さらに、第2のサイトカインに融合され得、これは、さらに、単一の組換えDNA構築物から発現される所望の活性を有する融合タンパク質を可能にする。このような分子の発現は、実施例で例示される。
【0054】
本発明はまた、IL−4およびGM−CSFを含む融合タンパク質を記載する。この組み合わせは、樹状細胞によって提示される抗原を機能的に刺激する際に、特に有用である。別の有用な融合体は、IL−12およびIL−18を含む。これらの両方のサイトカインは、Th1応答を促進するが、いくらか異なった相補的な活性を有する。
【0055】
本発明はまた、多数の別個の融合サイトカインが、多量体(例えば、ホモ二量体またはヘテロ二量体)を形成し得るタンパク質にさらに融合される融合タンパク質を記載する。このような分子の利点は、1つ以上のサイトカインの効力が、二量体化によって、増強され得るということである。いくつかの場合では、このサイトカインが二量体としてそのレセプターに結合するので、二量体化による効力の増強が発生し得る。1つの実施形態では、複合サイトカインは、抗体分子の一部(例えば、Fc領域)に融合される(図2)。別の実施形態では、IL−12および第2のサイトカインは、ホモ二量体化タンパク質部分に融合される。好ましい実施形態では、第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。この融合タンパク質は、種々の方法によって作製され得、融合タンパク質のN末端からC末端までのいくつかの別個のタンパク質部分の全ての多様な順序を反映する。例えば、インターロイキン12および第2のサイトカインが、Fc領域に融合される場合、この2つのサイトカインは、両方とも、このFc領域のN末端またはC末端に対して任意の順序で融合されるかもしれないし、または、一方のサイトカインが、N末端に融合され、他方がC末端に融合されるかもしれない。
【0056】
これらの順列のいくつかは、図2に例示される。例えば、図2Aに示される実施形態では、本発明の融合タンパク質44は、ヒンジ領域38、CH2領域40およびCH3領域42を含むFc領域のC末端に融合される。融合タンパク質44は、種々の構造を有し得、例えば、図1A〜1Iに示される融合タンパク質10、16、24、26、28、30、32、34、または36の構造が挙げられる。融合タンパク質44が、1つより多くのN末端およびC末端を有する場合(融合タンパク質16、24、26、および28におけるように)、Fc領域は、融合タンパク質44のいずれかのN末端に融合され得る。図2Bに示されるように、融合タンパク質44は、Fc領域のN末端に融合され得る。図2Cに示される実施形態では、第1のサイトカイン12は、Fc領域のN末端に融合され得、そして、第2のサイトカイン14は、このFc領域のC末端に融合され得る。
【0057】
(構造的考慮)
サイトカイン(タンパク質の1クラスとしての)は、サイズおよび一般的な折り畳み特性において、類似していることに注意するのは重要である。従って、本明細書中で開示される特定の実施例は、サイトカインタンパク質のファミリーについての複合サイトカイン融合タンパク質をどのように構築するかを例示する。例えば、多くのサイトカインは、「4つのへリックス束」と呼ばれるタンパク質折り畳みクラスに分類される。4つのへリックス束タンパク質としては、顆粒球コロニー刺激因子(G−CSF)、インターロイキン6(IL−6)、白血病阻害因子(LIF)、成長ホルモン、毛様体神経栄養因子(CNTF)、レプチン(leptin)、エリトロポイエチン、顆粒球マクロファージコロニー刺激因子(GM−CSF)、インターロイキン−5(IL−5)、マクロファージコロニー刺激因子(M−CSF)、IL−2、IL−4、インターロイキン−3(IL−3)、IL−10、インターフェロン−β、インターフェロン−αおよび密接に関連したインターフェロンτ、ならびにインターフェロンγ(IFN−γ)が挙げられる。
【0058】
IL−5およびINF−γを除き、これらのタンパク質の全ては、4つのおおよそ平行なαへリックスおよび2つのクロスオーバー連結を使用して、モノマーとして折り畳まれる。IL−5およびIFN−γを除くそれぞれの場合に、N末端およびC末端は、タンパク質の同じ面上に存在する。4つのへリックス束のタンパク質(IL−5およびIFN−γを除く)は、同じ折り畳みパターンを有するので、IL−2、IL−4およびGM−CSFについて本明細書中に記載される方法はまた、他の4つのへリックス束タンパク質およびモノマーとして折り畳まれる他の小サイトカインタンパク質に適用される。
【0059】
ケモカインは、細胞外勾配を形成し、そして、免疫細胞の特定のクラスの走化性を媒介すると考えられるサイトカインの特定のクラスである。例えば、MCP−1は、単球、マクロファージ、および活性化T細胞についての化学誘引物質であり;エオタキシンは、好酸球についての化学誘引物質であり;そして、インターロイキン8は、好中球についての化学誘引物質である。これらの化学誘引物質機能に加えて、ケモカインは、他のサイトカインのように、特定の標的細胞における特定の遺伝子の発現を誘導し得る。例えば、MCP−1は、血管の平滑筋細胞における組織因子の発現を誘導すると考えられている(Schecterら、J Biol Chem.[1997]272:28568−73)。
【0060】
本発明は、1つ以上のサイトカインがケモカインである、サイトカイン−サイトカイン融合体および抗体−サイトカイン−サイトカイン融合体を開示する。本発明はまた、3つ以上のサイトカインを有するタンパク質構築物を開示し、ここで、1つ以上のサイトカインがケモカインである。例えば、ケモカインIP−10、RANTES、MIP−1α、MIP−1β、マクロファージ化学誘引物質タンパク質、エオタキシン、リンホタクチン(lymphotactin)、BLCは、抗体部分のような他の部分を有するかまたは有さない第2のサイトカインに融合され得る。
【0061】
例えば、ヒトゲノムは、少なくとも50のケモカインをコードする。公知のケモカインは、概して、類似の3次元モノマー構造およびタンパク質折り畳みパターンを共有する。従って、本明細書中に開示されるタンパク質構築物および構築ストラテジーの一般的な形態は、種々の公知のケモカインまたは未だ発見されていないケモカインに対して適用され得る。
【0062】
ケモカインは、3つのβ鎖および1つのαへリックスを有する別個の折り畳みパターンを有する。ケモカインは、モノマーのように折り畳み、次いで、全てではないがいくつかの場合で、折り畳み後、二量体化する。全てのケモカインについて、モノマーサブユニットの折り畳みパターンは、同一であって、そして、全体の構造は、極めて類似している。例えば、インターロイキン−8、血小板因子4、黒色腫増殖刺激活性(MGSA)、マクロファージ炎症性タンパク質、MIP、RANTES(活性化の際にレギュレートされ、正常なT細胞が発現および分泌される)、単球化学誘引物質タンパク質−1(MCP−1、MCAF)、エオタキシン、単球化学誘引物質タンパク質−3(MCP−3)、フラクタルカイン(fractalkine)のケモカインドメイン、好中球活性化ペプチド−2(NAP−2)、間質細胞由来因子−1(SDF−1)、マクロファージ炎症性タンパク質−2、ケモカインhcc−2(マクロファージ炎症性タンパク質−5)、Gro β、サイトカイン誘導性好中球化学誘引物質およびCINC/Groの三次元構造は、X線結晶学および/またはNMR法によって決定されている;これらの構造の全ては、同一の折り畳みを示し、そして、一般的に類似している。これらのケモカインは、同一の折り畳みパターンを有しているので、リンホタクチンについて本明細書中で使用される方法はまた、他のケモカインタンパク質にも適用される。
【0063】
ケモカインの遊離N末端は、しばしば、その機能について重要である。従って、第2のサイトカイン、抗体部分、または他のタンパク質部分が、このケモカインのC末端に融合され得る融合体を構築することは、いくつかの実施形態において有利である。2つの活性なケモカインを含むタンパク質複合体を構築するために、例えば、2つの異なったケモカインを、抗体の重鎖および軽鎖のN末端に融合することは有用である。いくつかのケモカイン(例えば、IL−8)は、生理学的条件下で、二量体である。特定の適用のために、複合サイトカイン抗体融合体(例えば、IL−8−抗体−サイトカイン融合体)を、融合していないIL−8部分または抗体部分と相互作用しない異なった融合パートナーを有するIL−8部分と共に、同時発現することは有用である。この方法では、異なったIL−8部分は、全てのIL−8部分が抗体鎖に融合された場合に生じ得る空間的束縛または重合なしで、ヘテロ二量体化し得る。次いで、この所望の複合サイトカイン融合タンパク質は、サイズに基づいてかまたはStaphylococcus A タンパク質のような抗体結合タンパク質への結合に基づいて、分離され得る。
【0064】
1つのケモカインを含む複合サイトカイン融合タンパク質については、この融合タンパク質がまた、局在化機能(例えば、抗原に結合する抗体部分)を含む実施形態が、好ましい実施形態である。理論により束縛されることを望まないが、身体へのケモカインの広範な分布は、何も効果を有さないか、またはそのケモカインに対する細胞の一般的な脱感作を導くことが、一般的に考えられている。さらに、ケモカインの化学誘引剤機能は、そのケモカインの濃度差異が存在する場合にのみ、顕著であり得ると考えられている。
【0065】
好ましい実施形態は、リンホカイン−抗体−インターロイキン−2融合タンパク質である。別の好ましい実施形態は、ケモカインおよび第2のサイトカインの両方が、Th1応答を促進する、実施形態である。例えば、IP−10およびIL−12を含む融合タンパク質は、1つの非常に好ましい実施形態である。
【0066】
(短い血清半減期を有する複数のサイトカインの半減期の延長)
本発明はまた、長い血清半減期を有する第3の部分に融合した、2つのサイトカイン(両方が短い血清半減期を有する)を含む融合タンパク質を記載する。例えば、樹状細胞の刺激が所望である場合には、IL−4およびGM−CSFの活性を組み合わせることが、有用である(Thurner、J Immunol.Methods[1999]223:1−15;Paluckaら、[1998]J.Immunol.160:4587−4595)。IL−4およびGM−CSFの両方は、短い血清半減期を有する低分子であるので、Fc領域、IL−4、およびGM−CSFを含む融合タンパク質を構築することが、有用である。得られる分子は、樹状細胞の増殖および活性の強力な刺激剤である。同様に、IL−4およびGM−CSFの両方は、所定の抗原を発現する細胞の部位に対する、組み合わせられたサイトカイン活性を誘導する目的で、抗体のような標的成分に融合され得る。
【0067】
Fc領域は、単独でかまたはインタクトな抗体の一部として、複合サイトカイン融合体に、特定の適用に依存して、有利であり得るかまたは不利であり得るいくつかの特性を与え得る。これらの特性としては、二量化、血清半減期の延長、相補体を固定する能力、抗体依存性細胞媒介性細胞傷害性(ADCC)を媒介する能力、およびFcレセプターへの結合が挙げられる。血清半減期の延長が、主として望ましい特徴であり、そしてFc領域の免疫学的特性が重要ではないかまたは所望ではない場合には、天然の改変体であるかまたは1つ以上の免疫学的特性を欠く変異体である、Fc領域を使用することが、好ましい。例えば、短い血清半減期を有する2つ以上のサイトカインの血清半減期を等しくし、そして延長することが望ましい場合には、ヒトIgG2またはIgG4(これらはそれぞれ、Fcレセプターに対する親和性が減少しているかまたは有さない)由来のFc領域を含む複合サイトカイン融合タンパク質を構築すること、あるいはFcレセプター結合部位において変異を有するFc領域を使用することが、好ましい。実際に、いくつかのサイトカインが抗体に融合することによって、この融合タンパク質のFcレセプターに対する親和性が増加すること、およびこのことによって、動物におけるクリアランスの速度がより速くなることが、既に示されている。Fcレセプターに対する親和性が減少したFc領域を使用することは、これらの分子の血清半減期を大いに改善することが示された(Gilliesら、[1999]Cancer Res.59:2159−2166)。いくつかの状況下において、そして使用されるサイトカインに依存して、Fcレセプターに結合するFc領域は、複合サイトカイン融合タンパク質のインターナリゼーション、および1以上のサイトカイン部分の分解を生じる。
【0068】
(標的化)
本発明はまた、2つ以上のサイトカインが、これらのサイトカインを特定の標的分子、細胞、または身体位置に局在化させ得るタンパク質に付着した、融合タンパク質を記載する。局在化能力を有する好ましい分子は、抗体、または抗体の抗原結合可変領域を含む部分である。しかし、他の局在化分子(またはそのドメイン)が使用され得る(例えば、特定のリガンドまたはレセプター、天然に存在する結合タンパク質、特定の基質に結合する酵素、特定の結合能力または局在化能力に関して選択された人工的に生成したペプチド、標的化能力を生じる別の物理化学的特性を有するペプチド、標的化される別の分子に結合することによって標的化能力を有するタンパク質、あるいは他の型のタンパク質)。2つのサイトカインを標的化分子に融合させる場合には、好ましい第1のサイトカインは、IL−12である。IL−12が使用される場合には、好ましい第2のサイトカインは、IL−2またはGM−CSFである。
【0069】
抗体の場合には、2つ以上のサイトカインが融合され得る多数の方法が存在する。なぜなら、いくつかの付着可能な部位が存在するからである。例えば、IgG抗体は、2つの重鎖および2つの軽鎖から構成される。これら2つのサイトカインは、互いに融合され、次いで、この重鎖または軽鎖のいずれかのN末端またはC末端に融合し得る。あるいは、各サイトカインは、抗体分子のN末端またはC末端の1つに、別々に融合し得る。
【0070】
図3は、2つのサイトカインが1つの抗体分子に融合し得る様式のサブセットを示す。例えば、図3Aを参照すると、本発明の融合タンパク質44は、免疫グロブリン重鎖46のC末端に融合し得、この重鎖は、免疫グロブリン軽鎖48に結合している。図2においてと同様に、融合タンパク質44は、種々の構造(例えば、図1A〜1Iに示す、融合タンパク質10、16、24、26、28、30、32、34または36の構造を含む)を有し得る。図3Bに示すように、融合タンパク質44は、免疫グロブリン軽鎖48に結合した免疫グロブリン重鎖46のN末端に、融合し得る。図3Cおよび3Dに示す実施形態においては、融合タンパク質44は、免疫グロブリン重鎖46に結合した免疫グロブリン軽鎖48のN末端(図3C)またはC末端(図3D)に融合する。図3Eおよび3Fに示すように、第1のサイトカイン12は、第2のサイトカイン14に融合した免疫グロブリン重鎖46に結合した、免疫グロブリン軽鎖48に融合し得る。サイトカイン12および14は、免疫グロブリン鎖のN末端(図3E)またはC末端(図3F)に融合し得る。あるいは、図3Gにおいてと同様に、第1のサイトカイン12は、免疫グロブリン軽鎖48のN末端に融合し得、一方で第2のサイトカイン14は、免疫グロブリン重鎖46のC末端に融合する。
【0071】
(単鎖抗体への融合)
抗体を単鎖分子として表すことが、時々好都合である。本発明はまた、2つ以上のサイトカインが単鎖抗体に融合した、融合タンパク質を提供する。これは、所望の融合タンパク質を発現させる場合に使用されるDNA構築物の数を減少させるという利点を有し、このことは、遺伝子治療において特に有用であり得る。特に、サイトカインが単鎖分子である場合には、これらのサイトカインの、単鎖抗体への融合は、融合タンパク質が単一のタンパク質鎖として発現することを可能にする。
【0072】
図4A〜4Cに示されるように、いくつかの実施形態において、サイトカインは、単鎖抗体に、そのN末端、そのC末端、または両方の末端において、融合し得る。例えば、図4Aに示すように、融合タンパク質44は、軽鎖可変領域52および重鎖可変領域54を有する単鎖抗体50のC末端に融合し得る。図4Bに示すように、融合タンパク質44はまた、単鎖抗体50のN末端に融合し得る。図4Cに示す実施形態においては、第1のサイトカイン12は、単鎖抗体50のN末端に融合し、そして第2のサイトカイン14は、単鎖抗体50のC末端に融合する。
【0073】
好ましい実施形態は、IL−12および単鎖抗体に対する第2のサイトカインの融合体を含む。より好ましい実施形態は、IL−2またはGM−CSFを、第2のサイトカインとして含む。
【0074】
抗体の定常領域は、種々のエフェクター機能を媒介する可能性を有する。例えば、IgG1は、相補体の結合、ADCC,およびFcレセプターへの結合を媒介する。サイトカインが融合する位置は、抗体定常領域のエフェクター機能を変化させ得、このことは、これらのエフェクター機能の改変が所望である場合に、有用である。
【0075】
いくつかの場合においては、2つ以上のサイトカインの、抗体の標的化領域を有するが定常領域を有さない部分への融合体を構築することが、望ましくあり得る。このような融合タンパク質は、2つ以上のサイトカインへの完全抗体の融合体より小さく、このことは、特定の目的において有利であり得る。さらに、このような融合タンパク質は、インタクトな抗体の1つ以上のエフェクター機能を欠くが、抗体の標的化能力を維持する。
【0076】
従って、本発明は、2つ以上のサイトカインが1つの単鎖Fv領域に融合した、融合タンパク質を特徴とする。図5A〜5Cに図示する実施形態に示すように、2つのサイトカインが、Fv領域のN末端もしくはC末端に融合され得るか、または1つのサイトカインが各末端に融合され得る。例えば、図5Aに示すように、本発明の融合タンパク質44は、免疫グロブリン軽鎖可変領域52および免疫グロブリン重鎖可変領域54を含む、単鎖Fv領域のC末端に融合され得る。融合タンパク質44はまた、図5Bに示すように、Fv領域のN末端に融合され得る。図5Cに示すように、第1のサイトカイン12がFv領域のN末端に融合し得、そして第2のサイトカイン14がFv領域のC末端に融合し得る。
【0077】
(複数のサイトカインのためのヘテロ二量体ビヒクルとしての抗体)
いくつかの状況において、サイトカインの2つに関してタンパク質の同一の末端が活性のために必須である、2つ以上のサイトカインの融合体を構築することが、望ましい。例えば、2つの異なるサイトカインの天然に存在するN末端が、各サイトカインの活性のために必須であり得る。両方のサイトカイン部分が活性である単一ポリペプチド鎖融合タンパク質を構築することは、不可能である。
【0078】
抗体とは、ジスルフィド結合によって共有結合される重鎖および軽鎖からなる、ヘテロ二量体タンパク質である。両方がインタクトな融合していないN末端を必要とする2つのサイトカイン部分を有する、複合サイトカイン融合タンパク質を構築することが、所望である場合には、これら2つのサイトカインを抗体の重鎖および軽鎖のN末端に別々に融合させることが、好ましい(図3E)。同様に、両方がインタクトな融合していないC末端を必要とする2つのサイトカイン部分を有する、複合サイトカイン融合タンパク質を構築することが所望である場合には、これら2つのサイトカインを、抗体の重鎖および軽鎖のC末端に別個に融合させることが、好ましい(図3F)。抗体が、2つのサイトカインをこの様式で接続するためのビヒクルとしてのみ使用される場合には、免疫機能に関連するさらなる特性を与える抗体の部分を、変異または欠失させることが、有用であり得る。例えば、Fab領域をビヒクルとして使用することは、好ましくあり得る。なぜなら、Fab領域は、抗体のヘテロ二量化特性を維持するが、Fc領域に特徴的な機能を欠くからである。抗原結合部位が非機能的である抗体または抗体フラグメントを使用することもまた、有用であり得る。
【0079】
抗体への複数のサイトカインの融合は、本発明の新規特徴の多くを組み合わせる。抗体−複合サイトカイン融合体において、これらのサイトカインの血清半減期は、等しくされ、そして延長される;両方のサイトカインの活性は、標的に局在化され、そして特に毒性の効果は、複数の相乗的に作用するサイトカインの全身投与に起因して、回避される;各サイトカインは、効果的に二量化または多量体化される;そしてこれらのサイトカインは、必ずしも直接的に融合される必要はなく、抗体分子の重鎖および軽鎖の異なる部位に融合され得る。
【0080】
複数のサイトカインおよび1つの抗体を含む融合タンパク質を設計する際には、多数の選択肢および構造が存在し、これらは、慣用的な実験によって区別され得る。構造的生物学的考慮もまた、有用である。例えば、多くのサイトカインは、4ヘリックス束と称されるクラスに入る。これらの構造は、4つのαヘリックスからなり、そして同じ接近のN末端およびC末端を有する。一般に、N末端およびC末端の周囲のサイトカインの面は、サイトカインレセプターへの結合において使用されず、従って、いずれかの末端が、抗体または第2のサイトカインへの融合のために使用され得る。しかし、4ヘリックス束のサイトカインのN末端およびC末端の両方を、異なる部分に直接融合させることは、立体的な理由により、時々困難である。2つの異なる4ヘリックス束サイトカインを抗体に融合させることが所望である場合には、従って、各サイトカインをその抗体の異なる部位に融合させることが、有用である。あるいは、Ig鎖−サイトカイン−サイトカインの形態のポリペプチド鎖を構築することが必要である場合には、1つ以上の可撓性リンカーを使用して、立体の問題を克服し得る。
【0081】
抗体の代わりに、他の分泌ヘテロ二量体分子を使用して、複数のサイトカインを保有することもまた、可能である。例えば、前立腺特異的抗原およびこれが複合体化するプロテアーゼインヒビター、IgA重鎖およびJ鎖、TGF−βファミリーメンバーならびにこれらのアスタシン様結合パートナーを含む複合体、またはIL−12が、使用され得る。
【0082】
(核酸)
本発明はまた、上記型のタンパク質の各々を発現し得る核酸を特徴とする。これらとしては、2つ以上のサイトカインを含む融合タンパク質をコードする核酸、2つ以上のサイトカインおよび1つの二量化ドメイン(例えば、Fc領域)を含む融合体、1つの抗体に融合した2つ以上のサイトカインを含む融合体、ならびに1つのFv領域に融合した2つ以上のサイトカインが挙げられる。これらの核酸の好ましい形態は、DNAベクターであり、これから、融合タンパク質が、細菌細胞または哺乳動物細胞のいずれかにおいて、発現され得る。複数のポリペプチド鎖を含む融合タンパク質については、1つより多くのコード核酸が使用され得る。あるいは、2つ以上の融合タンパク質コード配列を、単一の核酸分子上に位置させることが、有用であり得る。これらの例は、複数のサイトカインをコードする特徴付けられた核酸の特定の形態を示す。
【0083】
本発明の核酸は、複合サイトカイン融合タンパク質の生成のためかまたは遺伝子治療の目的のためかのいずれかで、複合サイトカイン融合タンパク質の発現のために特に有用である。
【0084】
本発明の有用な実施形態を合成するための方法、ならびにこれらの薬理学的活性を試験するために有用なアッセイは、実施例に記載される。
【0085】
本発明はまた、薬学的組成物、ならびに広範な種々の疾患の処置および予防(種々の感染および癌の処置、ならびに種々の疾患に対するワクチン接種が挙げられるがこれらに限定されない)におけるこれらの使用の方法を提供する。
【0086】
複合サイトカイン融合タンパク質を使用して、細菌感染、寄生虫感染、真菌感染、またはウイルス感染、あるいは癌を処置し得る。例えば、IL−12は、多くの型の感染(細菌Listeria monocytogenes;寄生虫Toxoplasma gondii、Leishmania major、およびSchistosoma mansoni;真菌Candida albicans;ならびにウイルスの脈絡髄膜炎ウイルスおよびサイトメガロウイルスによる感染が挙げられるがこれらに限定されない)において、予防的効果を有することが、公知である。サイトカインは、一般に、組み合わせで作用するので、同時に作用することが既知である2つ以上のサイトカインを含む融合タンパク質を使用することは、しばしば有用である。例えば、IL−2は、IL−12の効果と相乗するので、これらのサイトカインを、細菌、寄生虫、真菌およびウイルスによる疾患の処置において組み合わせることは、有用である。
【0087】
感染性疾患の処置の好ましい方法は、複数のサイトカインを感染の部位に配置する標的化剤にさらに融合した、複合サイトカイン融合タンパク質を使用することである。種々の標的化ストラテジーを、以下に記載する。
【0088】
本発明の薬学的組成物は、固体、半固体、または液体の投薬形態(例えば、丸剤、カプセル剤、散剤、液剤、懸濁剤などのような)の形態で、好ましくは、正確な投薬量の投与に適した単位投薬形態で、使用され得る。これらの組成物は、従来の薬学的キャリアまたは賦形剤を含有し、そしてさらに、他の医薬、薬学的薬剤、キャリア、アジュバントなどを含有し得る。このような賦形剤は、他のタンパク質(例えば、ヒト血清アルブミンまたは血漿タンパク質)を含有し得る。このような投薬形態を調製する実際の方法は、公知であるか、または当業者に明らかである。投与される組成物または処方物は、いずれの場合においても、特定の量の活性成分を、処置されている被験体において所望の効果を達成するに有効な量で含有する。
【0089】
本明細書の組成物の投与は、このような活性を示す薬剤のための投与の受容可能な形態のいずれかにより得る。これらの方法としては、経口投与、非経口投与、または局所投与および他の全身形態が挙げられる。注射は、投与の好ましい方法である。
【0090】
投与される活性化合物の量は、もちろん、処置されている被験体、苦痛の重篤度、投与の様式、および処方する医師の判断に依存する。
【0091】
上記のように、IL−2、IL−12、GM−CSF、IL−4、およびその他のようなサイトカインは、癌の処置について調査されている。いくつかの状況下においては、癌の処置において、複合サイトカイン融合タンパク質を使用することが有利である。この理由は、より単純な投与、成分サイトカインの1つの増加した血清半減期、および/または2つのサイトカインの相対的活性の優れた調節である。
【0092】
癌の処置の好ましい方法は、サイトカインの効果が濃縮され得るように、そして全身分布の副作用が回避され得るように、サイトカインを特定の器官または組織に標的化することである。例えば、複数のサイトカインの、Fc領域への融合体は、肝臓に濃縮されることが予測され、このことは、肝臓に制限される癌を処置する際に、有用であり得る。より好ましい方法は、抗体のような標的化剤にさらに融合された、複合サイトカイン融合タンパク質を使用することである。特に、抗体KS−1/4および14.18は、腫瘍特異的抗原に指向される(Varki NMら、Cancer Res[1984]44:681−7;Gilliesら、Journal of Immunological Methods 125:191[1989];米国特許第4,975,369号および同第5,650,150号)。抗体−複合サイトカイン融合体を使用する場合には、腫瘍の型を調査し、そしてその型の腫瘍に存在しやすい抗原に指向される抗体を選択することが、しばしば有用である。例えば、腫瘍を、FACS分析、ウェスタンブロット、腫瘍のDNAの試験、または腫瘍細胞の型を単に同定することによって、腫瘍を特徴付けることが、有用であり得る。腫瘍の特徴付けのこのような方法は、腫瘍の特徴付けの当業者(例えば、腫瘍遺伝子学者および腫瘍生物学者)に周知である。複合サイトカイン融合タンパク質を、種々の他の手段(例えば、特定のリガンドまたはレセプター部分への融合、予め選択された結合活性を有するペプチドアプタマーへの融合、局在化特性を有する低分子への化学的結合体化など)によって標的化することもまた、可能である。これらの標的化方法はまた、他の疾患(例えば、感染)の処置のために、使用され得る。
【0093】
(癌および他の細胞疾患の、遺伝子治療による処置)
本発明の核酸は、癌、および免疫系を特定の細胞型に標的化することが所望である他の疾患の処置のための遺伝子治療剤として、使用され得る。例えば、癌細胞がヒトまたは動物から取り出され、複合サイトカイン融合タンパク質をコードする1つ以上の核酸がこれらの癌細胞にトランスフェクトされ、次いで、これらの癌細胞がヒトまたは動物に再導入される。あるいは、DNAが、癌細胞にインサイチュで導入され得る。次いで、このヒトまたは動物は、これらの癌細胞に対する免疫応答を増加させ、このことは、この癌を治癒またはこの癌の重篤度を低下させ得る。哺乳動物細胞における発現を促進するために適切な調節エレメントに結合された、複合サイトカイン遺伝子融合体が、種々の技術(リン酸カルシウム法、「遺伝子銃」、アデノウイルスベクター、カチオン性リポソーム、レトロウイルスベクター、または他の任意の効率的なトランスフェクション方法が挙げられる)のいずれかによって、癌細胞にトランスフェクトされ得る。この核酸は、他の部分にさらに融合された複合サイトカイン融合タンパク質を、コードし得る。
【0094】
1つより多くの融合サイトカインの融合体を発現する核酸を用いた抗癌遺伝子治療を、融合サイトカイン蛋白質の免疫刺激特性を増大させうる処置などの他の癌治療と組み合わせて行いうる。例えば、本発明核酸は、癌細胞で発現される抗原に対する免疫応答を促進しうる他の蛋白質部分を発現すること、または、そのような蛋白質部分を発現する他の核酸と同時トランスフェクションすることも可能である。特に、B7副刺激表面蛋白質を発現する核酸を癌細胞に共にトランスフェクションしうる(Robinsonら、米国特許第5,738,852号)。複合サイトカイン融合を発現する核酸を用いた癌細胞のトランスフェクションはまた、癌細胞を標的とする抗体または免疫サイトカインを用いた処置とともに行われうる(Lodeら、(1998)Proc.Natl.Acad.Sci.95:2475)。複合サイトカイン融合蛋白質を発現する核酸を用いた癌細胞のトランスフェクションはまた、血管新生ブロッカーを用いた処置とともに行われうる(Lodeら、(1999)Proc.Natl.Acad.Sci.9:1591)。
【0095】
付加的な免疫刺激剤および/または血管新生ブロッカーを用いた治療もまた、複合サイトカイン融合蛋白質を用いた全身的治療と組み合わせうる。付加的免疫刺激剤または血管新生ブロッカーを併用した治療の長所は、これらの治療がDNAに損傷を与える薬剤および細胞周期ブロッカーとは異なり、複合サイトカイン融合蛋白質による刺激の結果分裂しうる免疫細胞を殺傷しないということである。
【0096】
この遺伝子治療方法の好適な実施態様は、IL−12および第2のサイトカインをコードする一つ以上の核酸を癌細胞へ導入し、次にその癌細胞をヒトまたは動物へ再導入するということである。第二のサイトカインは、好適には、IL−2またはGM−CSFである。
【0097】
アジュバントとして融合させた二つ以上のサイトカインを用い、ワクチンを与えられた宿主哺乳類においてある一定の病原体に対して保護的な細胞性免疫応答を誘導することを目的とした新規ワクチン組成およびワクチンの活性賦活方法が、本発明により提供される。例えば、Th1免疫応答を所望する場合、複合Th−1促進サイトカインを融合させることが可能であり、その結果得られた融合蛋白質を抗原と組み合わせて動物に投与しうる。
【0098】
特に、IL−12およびIL−2を融合させ、抗原とともに投与しうる。あるいは、IL−12およびIL−2をさらに抗原性蛋白質そのものと融合させ、免疫応答に刺激を与えるために使用しうる。この場合、本発明は、宿主細胞性免疫に依存したワクチンに向けられる。つまり、特定の病原性の感染に対する防御反応を引き起こすために細胞傷害性Tリンパ球および活性化食細胞を誘導するということである。IL−12、IL−2および抗原という組み合わせは抗原に対するTh1応答を標的としているため、IL−12、IL−2および抗原を含む融合蛋白質を用いたワクチン投与を行うことは特に有用である。ヒトにおいて使用されている、ミョウバンのような、従来のアジュバントは、Th2応答を誘導する傾向がある。
【0099】
Th2免疫応答が所望される場合、Th−2促進サイトカインの組み合わせを融合させて使用しうる。例えば、単一分子を形成させるために、IL−4およびIL−10を融合させ、その結果得られた融合蛋白質をアジュバントとして使用することは有用でありうる。特に、動物において樹状細胞を補給することが所望される場合、IL−4およびGM−CSFの組み合わせを融合させたものを、さらに抗原提示細胞との結合を促進するためにFc領域と融合させうる、または、さらに融合サイトカインを腫瘍などの標的細胞へ向けることを可能とする抗体と融合させうる。
【0100】
本発明はまた、新規治療組成物および、癌細胞上に生じうる選択抗原を含みうる、いわゆる「癌ワクチン」を含む所定の治療組成物との相乗効果をもたらすことを意図した免疫活性賦活方法を提供する。例えば、二つ以上の融合サイトカインを含む蛋白質を直接、適切な経路により、適切に処置された癌細胞とともに投与しうる。
【実施例】
【0101】
(実施例)
(実施例1:サイトカイン−サイトカイン融合蛋白質発現を可能とする遺伝子融合体の構築)
複数のサイトカインを持つ多機能蛋白質を得るために、IL−12のp40とIL−2との間、およびIL−12のp40とGM−CSFとの間の遺伝子融合体を合成した。さらに、成熟マウスp35(配列番号1)のコード配列を、高レベル発現および効率の良い分泌を可能にするプロモーターおよびリーダー配列と融合させた。マウスp40−IL−2およびp40−GM−CSFのコード配列を、それぞれ、配列番号2、配列番号3にて示す。ヒトp40−IL−2融合体もまた構築した(配列番号4)。IgG2aのマウスFc領域とマウスp35との融合体(配列番号5)および、IgG1のヒトFc領域とヒトp35との融合体(配列番号6)を、以前に開示されている発現プラスミド(Loら、Protein Engineering11:495−500(1998);Loら、米国特許第5,726,087号)を用いて構築した。
【0102】
成熟マウスおよびヒトp35とKS−1/4抗体重鎖のC末端との融合について、Gilliesら(J.Immunology(1998)160:6195−6203)により記述されている。成熟マウスおよびヒトp35と14.18抗体重鎖のC−末端との融合体を類似の方法により構築した(PCT 国際公開第WO99/29732)。
【0103】
p40とIL−2を融合させること、およびp40とGM−CSFを融合させることを目的としてここで論じている種類の方法は、一般的に二つ以上のサイトカインの融合に対して適用可能である。特に、C−末端部分はシグナル配列を必要としない一方、殆どのN−末端部分のコード配列には分泌のシグナル配列が含まれている。ある環境下において、二つのサイトカインのコード配列間に、好適には、10−15アミノ酸長で、グリシンおよびセリンリッチである短いペプチド性リンカーに対するコード配列を配置することは有用でありうる。全てのそのような種類の融合体作製に関連するDNA操作は、当該分野の技術の範囲内である。
【0104】
例えば、マウスIL−12 p40サブユニットおよびマウスIL−2間の融合体構築の詳細は、次に示すものであった。マウスIL−12のp40サブユニットの全長cDNAを、コンカナバリン A(Concavalin A)(培養液中に5μg/mlの濃度で、3日間)で活性化されたマウス脾臓細胞からPCRによりクローニングした。フォワードプライマーの配列は、AA GCT AGC ACC ATG TGT CCT CAG AAG CTA ACC(配列番号7)で、NheI部位であるGCTAGC(配列番号7の第3−8残基)を、翻訳開始コドンATGの上流に置いたものであった。リバースプライマーの配列は、CTC GAG CTA GGA TCG GAC CCT GCA GGG(配列番号8)で、XhoI部位であるCTCGAG(配列番号8の第1−6残基)を、翻訳停止コドンTAG(アンチコドンCTA)のすぐ下流に置いたものであった。配列確認後、そのネイティブのリーダーとともにmu−p40を含むNheI−XhoI断片を、XbaI−XhoI消化した発現ベクターpdCs(Loら、(1998)Protein Engineering 11:495−500)にライゲーションした。NheIおよびXbaI制限部位は、一致する粘着末端を持ち、また、mu−p40は内部XbaI部位を持つので、NheI部位をmu−p40のクローニングのために使用した。
【0105】
mu−p40−muIL−2をコードするDNAを構築するために、mu−p40DNAを、そのPstI部位(C TGC AG)を経由して成熟マウスIL−2のcDNAを含むSmaI−XhoI断片とつなぐため、オリゴヌクレオチドリンカーを用いた。融合蛋白質の連結部位のDNA配列は、C TGC AGG GTC CGA TCC CCG GGT AAA GCA CCC(配列番号9)で、その中のC TGC AG(配列番号9の第1−6残基)はPstI部位であり、C CCG GG(配列番号9の第15−20残基)はSmaI部位で、TCCはマウスp40のC−末端アミノ酸残基、GCAは成熟マウスIL−2のN−末端残基であった。
【0106】
単鎖muIL12−muGMCSFをコードするDNAは、前記単鎖muIL12−muIL2をコードするDNA構築物に由来し、muIL2cDNAをSmaI部位でmuGMCSF cDNAに置き換えることによって構築したものであった。単鎖muIL12およびmuGMCSFの連結部のDNA配列は、C TGC AGG GTC CGA TCC CCG GGA AAA GCA(配列番号10)であり、C TGC AG(配列番号10の第1−6残基)はPstI部位であり、C CCG GG(配列番号10の第17−22残基)はSmaI部位、TCCはマウスp40のC−末端アミノ酸残基、GCAは成熟マウスGMCSFのN−末端残基であった。
【0107】
(実施例2:IL−12融合蛋白質の発現)
IL−12−IL−2融合蛋白質を次のように発現させた。p40融合体をコードする個々のベクターおよびp35を含む蛋白質をコードするベクターの異なる組み合わせを、一時的に融合蛋白質を発現させるためにヒト293上皮癌細胞へ同時トランスフェクションした。調製済みキット(Wizard,Promega Inc.)を用いてDNAを精製し、滅菌するためにエタノール沈殿を行ない、滅菌水で再懸濁した。
【0108】
生物学的に活性のあるIL−12融合蛋白質ヘテロ二量体を発現させるために、ヒト293上皮癌細胞の同時トランスフェクションにより、サブユニットの融合体および非融合体をコードする個々のベクターの異なる組み合わせを一時的に発現させた。調製済みキット(Wizard,Promega Inc.)を用いてDNAを精製し、滅菌するためにエタノール沈殿を行ない、滅菌水で再懸濁した。10μg/mlのDNA(二つのプラスミドを同時トランスフェクションする場合、それぞれを5μgずつ含む)を用いて標準的方法によって、リン酸カルシウム沈殿を用意し、およそ70%コンフレントになった状態で60mmプレート上にて成長している293培養物に、0.5ml/プレートを添加した(MOLECULAR CLONING:A LABORATORY MANUAL、第二版、Sambrook,FritschおよびManiatis編、Cold Spring Harbor Laboratory Press,1989)。16時間後、沈殿物を含む培地を除去し、新鮮な培地に交換した。3日後、上清を採取し、ELISA、IL−12活性の生物学的測定、または免疫沈澱法および放射性標識蛋白質のSDSゲル上での分析により、トランスフェクションされた遺伝子の発現の産生について分析した。標識するために、培養第二日目に、培地を、メチオニンを含まない生育培地に交換し、35S−メチオニン(100μCi/ml)を添加した。さらに16時間インキュベーションした後、培地を回収し、遠心(卓上遠心機で5分間、13,000rpm)により清澄化し、プロテインAセファロースビーズ(1mlの培養上清に対して10μlのビーズ容積を含む)とともにインキュベーションを行った。室温にて1時間置いた後、遠心および1% Nonidet−P40(NP−40)を含むPBSバッファーを用いて再懸濁を繰り返し、ビーズを洗浄した。最終的な沈殿物を、SDS含有ゲルバッファーで再懸濁し、2分間煮沸した。遠心によりビーズを除去した後、上清を2等分した。一方の試料に還元剤(5% 2−メルカプトエタノール)を添加し、SDSポリアクリルアミドゲルに充填する前に、両試料を5分間煮沸した。電気泳動後、ゲルをX線フィルムに対して曝露した(オートラジオグラフィー)。
【0109】
次の発現プラスミドを用いたトランスフェクションを行った。すなわち、mu.p35およびmu.p40−IL−2、KS−1/4−mu.p35およびmu.p40、KS−1/4−mu.p35およびmu.p40−IL−2、14.18−mu.p35およびmu.p40−IL−2、hu.Fc−p35およびhu.p40−IL−2、KS−1/4−hu.p35およびhu.p40−IL−2、ならびに14.18−hu.p35およびhu.p40−IL−2である。ここで、「mu」とは、マウス蛋白質を、「hu」とは、ヒト蛋白質を意味する。
【0110】
35S−メチオニンで細胞を代謝的に標識し、分泌された蛋白質を還元条件下でのSDSゲル電気泳動およびオートラジオグラフィーにより試験したところ、それぞれの場合において高レベルの発現が観察された。成分蛋白質の分子量を基にして、還元融合蛋白質の分子量を次のように予測した。すなわち、IL−12のp35、35kD;IL−12のp40、40kD;IL−2、16kD;Fc、32kD;Ig重鎖、55kD;およびIg軽鎖、28kDと予測した。予測した分子量を有する蛋白質移動度が観察された。
【0111】
安定的にトランスフェクトされ、複合サイトカイン融合蛋白質を発現している細胞系列もまた分離した。ヘテロ二量体構築物の場合、IL−12 p40−IL−2融合タンパク質コード化発現ベクターまたはIL−12 p40−GM−CSF融合タンパク質コード化発現ベクターは、IL−12 p40サブユニットのみに関して先に記述されている(Gilliesら、(1998)J.Immunol.160:6195−62030)ように構築された。記述されているように(Gilliesら、(1998)J.Immunol.160:6195−62030)、p40融合蛋白質を発現しているトランスフェクション細胞系列に対して、IL−12 p35サブユニット、Fc−p35蛋白質または抗体−p35融合蛋白質発現ベクターのいずれかをコードする発現ベクターを2回トランスフェクションした。
【0112】
ヒトFc−IL−12−IL−2を発現している(すなわちKS−p35およびp40−IL−2を発現している)安定的トランスフェクション細胞培養液から上清を回収し、製造者の手順(Repligen、Needham、MA)に従って、プロテインAセファロースと結合させ溶出させることにより、その産物を精製した。IL−12およびIL−2含量に関して、ELISAによって精製蛋白質を解析した。その結果から、IL−12およびIL−2の個々のサイトカイン含量において、質量としておよそ4倍の相違があることが示された。これはIL−12およびIL−2の間の分子量に4倍の相違があることに相関する。同じように、ELISAによる、IL−12およびIL−2レベルに関するヒトKS−IL−12−IL−2を発現しているトランスフェクション細胞の産物解析により、IL−12およびIL−2について同様の値が示された。従って、ELISAの精度の範囲内で、測定値から、IL−12およびIL−2がおよそ1:1のモル比で産生されているであろうことが示される。Fcまたは全抗体のどちらかを用いて作製されたIL−12−GM−CSF融合蛋白質において同様の結果を得た。
【0113】
(実施例3:IFN−γ誘導解析における融合蛋白質の相乗活性)
ヒトボランティアから得た休止または分裂促進因子活性化ヒト末梢血液単核細胞(PBMCs)のどちらかを用いたIFN−γ誘導解析において、IL−12−IL−2融合蛋白質の生物学的活性を測定した(図6)。IFN−γ産生をELISAにより測定した。
【0114】
健康なボランティアより、ヒト末梢血液単核細胞(PBMCs)を得て、Ficoll−Hypaque(Pharmacia)勾配を用いて遠心(1700rpm、20分間)し精製した。PBMCを含む軟膜を無血清培養液(SF−RPMI)で50ml容積になるように希釈し、1500rpm、5分間の遠心により回収した。勾配遠心後、フィトヘマグルチニン(PHA;10μg/ml)を含む、または含まない、10%ウシ胎児血清を含む細胞培養液(RPMI−10)で、細胞密度が5x106細胞/mlになるように細胞を再懸濁し、加湿CO2インキュベーター中で、37℃にて3日間培養を行った。遠心により細胞を回収し、等量のSF−RPMIで3回洗浄した後、新鮮なRPMI−10で再懸濁した(1x106細胞/ml)。96ウェルマルチプレートのウェルに、最終的な細胞数が各ウェルに105個になるように、一部(100μl)を添加した。細胞を培養した培養液からの試験試料を新鮮な培養液で連続希釈し、96ウェルプレートのウェルに添加した。コントロール用ウェルには、IL−12(図6A)または、市販のIL−2およびIL−12の等モル混合物(図6B;R&Dシステムより購入したサイトカイン)を添加した。CO2インキュベーター中で48時間、37℃にて、プレートのインキュベーションを行い、製造者(Endogen,Inc.,Woburn,MA.USA)による説明書に従ってELISAによりIFN−γ濃度を解析するために、一部分(20μl)を分取した。
【0115】
図6Aにおいて、ヒトIL−12−IL−2融合蛋白質の活性を、IL−12単独の場合と比較した。その結果から、IL−12単独の場合はIFN−γ誘導レベルが中程度であったが、その一方、IL−12−IL−2融合蛋白質はIFN−γ合成を強く誘導したということが示される。IL−2もまた、IFN−γ合成には不十分であることが知られているため、これらの結果から、IL−12およびIL−2部分が融合蛋白質中で両方とも機能的であり、また相乗的に機能するということが示される。
【0116】
次にIFN−γ誘導活性に関して、Fc−IL−12−IL−2融合蛋白質、KS−IL−12−IL−2融合蛋白質およびIL−12とIL−2の1:1モル比混合物の活性を比較した。図6Bにおける結果から、Fc−IL−12−IL−2融合蛋白質およびKS−IL−12−IL−2融合蛋白質が、IL−12およびIL−2の等モル混合物とほぼ同程度の活性を持つことが示される。ヒト型に対して用いた、実施例1において記述した方法で構築したマウス型のIL−2およびIL−12を融合蛋白質の構築に使用した場合、同様の結果が得られた。
【0117】
(実施例4:IL−12−IL−2融合蛋白質のIL−2およびIL−12生理活性)
増殖を基にした解析において、融合蛋白質におけるIL−2およびIL−12の活性を遊離サイトカインと比較した。典型的なIL−12増殖解析において、マウス抗体14.18−IL−12−IL−2分子の活性を試験した。ボランティアよりヒトPBMCsを得て、標準的な手順(Gately,M.K.,Chizzonite,R.およびPresky,D.H.Current Protocols in Immunology(1995)pp.6.16.6−6.16.15)に従って、5μg/mlのフィトヘマグルチニン−Pと共に3日間培養し、Hank‘sHBSSで洗浄した後、105細胞/ウェルになるようにマイクロタイタープレートに播種した。様々な試験蛋白質存在下で、48時間、細胞をインキュベーションし、放射性取り込みレベル測定の10時間前に0.3μCiの3H−チミジンを添加した。IL−12および、IL−12およびIL−2の等モル混合物により、用量依存的に細胞への3H−チミジン取り込みが刺激され、また、14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質は、3H−チミジン取り込みに対する刺激に関してこれとほぼ同様の効果を示した。3H−チミジン取り込みに対するIL−2による刺激はより高いモル濃度でしか見られなかったことから、観察された3H−チミジン取り込みに対する14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質による刺激は、主にIL−12活性によるものであるということが示された。結果を図7で示す。
【0118】
さらに、異なる細胞増殖解析において、標準的手順(Davis,L.S.,Lipsky,P.E.および、Bottomly,K.Current Protocols in Molecular Immunology(1995)p.6.3.1.−6.3.7)に従って、IL−2部分の生物学的活性について試験した。マウスCTLL−2細胞系列の増殖はIL−2に依存する。CTLL−2細胞系列はまた、IL−4にも応答して増殖しうるが、IL−12に対しては応答しない。活発な対数増殖期におけるCTLL−2細胞を、IL−2を含まない培地で2回洗浄し、様々な量の市販マウスIL−2、マウス14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質、または市販マウスIL−12の存在下で、マイクロタイタープレートに約1x104細胞/ウェルになるように播種し、48時間培養した。増殖期の終わりに、MTT/MTS解析を用いて生存細胞数を定量した。図8にて、IL−2,IL−12または、14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質レベルを変化させた実験を示す。これらの結果により、マウスIL−12は量を増やしても検出可能な細胞増殖刺激が見られなかった一方、マウスIL−2およびマウス14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質は、増殖刺激に関してほぼ同等の効力を持つことが示される。この結果から、14.18−IL−12−IL−2融合蛋白質によるCTLL−2細胞増殖刺激がIL−2部分によるもので、IL−12部分によるものではないことが示される。
【0119】
(実施例5:抗体部分を伴う、および伴わない、単鎖および多重鎖IL−12−IL−2融合蛋白質の構築と発現)
一本鎖マウスIL−12−IL−2融合タンパク質を、以下のように構築した。p40−IL−2コード配列融合体を、実施例1のヒトp40−IL−2融合体の構築に使用したものと類似の方法によって構築した。IL−12のp35およびp40サブユニットをコードするDNAを連結し、シングルコード配列を作製するために、5’末端にXhoI部位および3’末端にBamHI部位を有するリンカーをコードするDNAを合成した。成熟p40−IL−2コード配列の5’末端を改変して、制限部位を導入し、次いで、このリンカーの3’末端に連結した。マウスp35コード配列の3’末端を改変して、制限部位を作製し、そしてこのリンカーのXhoI部位に連結した。実施例1に記載されるように、一本鎖のmuIL12およびmu−p40−muIL2をコードするcDNAを、p40中の好都合な制限部位を用いることによって結合させ、一本鎖muIL12−muIL2をコードする第3のDNA構築物を得た。これらの工程を、必要とされる場合、種々のベクターおよびDNAフラグメント単離物を用いて実行した。得られたマウスp35−リンカー−p40−IL−2コード領域の配列は、配列番号11である。
【0120】
同時に、対応する一本鎖マウスIL−12コード配列を、対応する方法によって構築した。このコード配列は、配列番号12である。
【0121】
さらに、本発明者らは、さらに、p35−リンカー−p40−IL−2のN末端に融合させたIgG2a Fc領域をコードするDNA配列を構築した。
【0122】
培養された293細胞を、マウス一本鎖Fc−IL−12−IL−2およびFc−IL−12タンパク質をコードする発現プラスミドを用いてトランスフェクトした。融合タンパク質の発現を、実施例2に記載されるようにアッセイした。Fc融合タンパク質を、プロテインAセファロースへのこれらの結合によって精製し、そして高いレベルのFc−IL−12−IL−2およびFc−IL−12が、観察された。SDSゲル上での移動からの見かけ上の分子量(Fc−IL−12−IL−2、123kD;およびFc−IL−12、107kD)によって推測されるように、これらのタンパク質をインタクトで合成した。
【0123】
実施例1に記載のKS−scIL12−IL2融合タンパク質は、2つの異なるポリペプチド鎖(KS−1/4軽鎖およびC末端にscIL12−IL2部分を有するKS−1/4重鎖)を有する四量体である。抗体分子上のいずれの部位がサイトカイン部分の付着に適しているかを調べるために、第2の融合タンパク質を構築し、これは、KS1/4抗体、IL−12部分、およびIL−2部分を、実施例1のKS−IL12−IL2配置とは異なる配置であった。この第2のタンパク質は、四量体であり、そして2つの異なるポリペプチドからなった。一方のポリペプチドは、KIS−1/4抗体の軽鎖から成った。他方のポリペプチドは、KS−1/4抗体の重鎖の成熟N末端に融合された一本鎖muIL12、続いてこの重鎖のカルボキシル末端のマウスIL−2からなった。
【0124】
マウスIL−12のp35サブユニットをコードするcDNAを、コンカナバリンA(培養培地において5μg/mlで3日間)で活性化されたマウス脾細胞からPCRによってクローン化した。正方向プライマーは、配列:AAGCTT GCTAGCAGC ATG TGT CAA TCA CGC TAC(配列番号14)(ここで、HindIII部位であるAAGCTT(配列番号14の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置される)を有し、そして逆方向プライマーは、配列:CTCGAG CTT TCA GGC GGA GCT CAG ATA GCC(配列番号15)(ここで、XhoI部位であるCTCGAG(配列番号15の残基1〜6)は、翻訳終止コドンTGA(アンチコドンTCA)の下流に配置される)を有する。
【0125】
一本鎖IL−12をコードするこのDNAは、グリシン残基およびセリン残基に富むリンカーをコードするオリゴヌクレオチドに連結されたmup35 DNA、続いてmup40 DNAから成る。得られた構築物は、オリゴヌクレオチド連結部に以下:
【0126】
【化1】
の配列を有する。ここで、G AGC TC(配列番号16の残基1〜6)は、マウスp35翻訳終止コドンのちょうど上流のSacI制限部位であり、GCGは、マウスp35のC末端アミノ酸残基をコードし、GGA TCC(配列番号16の残基50〜55)は、連結を容易にするために導入されたBamHI制限部位であり、そしてATGは、成熟mu−p40のN末端残基をコードする。
【0127】
一本鎖muIL12−KS重鎖−muGMCSFをコードするDNAは、mup40およびKS重鎖の成熟N末端の連結部に、以下:
【0128】
【化2】
の配列を有する。ここで、ここで、C TGC AG(配列番号18の残基1〜6)は、マウスp40翻訳終止コドンのちょうど上流のPstI部位であり、TCCは、マウスp40のC末端アミノ酸残基をコードし、CAGは、成熟KS重鎖のN末端残基をコードする。次いで、一本鎖muIL12−KS重鎖−muIL2をコードする得られたDNAを、KS軽鎖と共に同時発現させた。
【0129】
抗体分子のどの末端が融合連結の作製に利用可能であるかをさらに調べるため、そしてどのように多くの異なるポリペプチドが複合サイトカイン融合タンパク質にアセンブルされ得るかを調べるために、KS−1/4、IL−12、およびIL−2を含む第3のタンパク質(すなわち、IL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2)を、発現させ、そして活性に関して試験した。この融合タンパク質は、六量体であり、そして3つの異なるポリペプチドを含む。1つのポリペプチドは、KS1/4抗体の軽鎖に融合したマウスp35からなる。第2のポリペプチドは、ヒトIL−2に融合したKS1/4抗体の重鎖からなる(Gilliesら(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.89:1428)、そして第3のポリペプチドは、マウスp40である。発現の際、2つの軽鎖および2つの重鎖が、ジスルフィド結合して、四量体の抗体−サイトカイン構造を形成する。さらに、軽鎖のN末端におけるp35もまた、p40とジスルフィド結合する。
【0130】
mup35−KS軽鎖をコードするDNAは、その連結部に以下:
【0131】
【化3】
の配列を有する。ここで、G AGC TC(配列番号20の残基1〜6)は、マウスp35翻訳終止コドンのすぐ上流のSacI制限部位であり、GCGは、マウスp35のC末端アミノ酸残基をコードし、GGA TCC(配列番号20の残基50〜55)は、連結を容易にするために導入されたBamHI制限部位であり、そしてGAGは、軽鎖のN末端アミノ酸残基をコードする。
【0132】
この六量体融合タンパク質の発現のために、マウスp40を発現する細胞株を、ネオマイシン耐性遺伝子を含む発現ベクターでのトランスフェクションおよびG418による選択によって作製した。次いで、マウスp40を発現する細胞株を、軽鎖および重鎖の転写単位およびジヒドロ葉酸還元酵素選択マーカー(これは、メトトレキサートによる選択を可能にする(Gilliesら(1998)J.Immunol.160:6195))の両方を含む発現ベクターでトランスフェクトした。
【0133】
(実施例6:マウス一本鎖IL−12−IL−2融合タンパク質の活性)
実施例4に使用される方法と同じ方法を使用して、一過性発現によって産生されるマウス一本鎖IL−12−IL−2の活性を試験した。細胞培養上清における各サイトカインの量を、まずELISAによって決定し、そしてこれを使用して、用量応答曲線を設定した。この活性は、Fcおよび抗体IL−12−IL−2融合タンパク質を用いて見出されたことならびに上記のことと親密に対応した。
【0134】
詳細には、マウス一本鎖(sc)IL−12−IL−2およびマウスFc scIL−12−IL−2分子のIL−12活性を、実施例4に記載されるヒトPBMC細胞増殖アッセイにおいて試験した。IL−12ならびにIL−12およびIL−2の等モル混合物は、細胞への3H−チミジンの取り込みを用量依存的様式で刺激した。1モル濃度当たりの基準に対して、scIL−12−IL−2融合タンパク質およびFc−scIL−12−IL−2融合タンパク質の両方は、3H−チミジン取り込みの刺激の際にほぼIL−12のように効果的であった(図9)。実施例4に記載されるように、IL−2は、3H−チミジンの取り込みを、最も高いモル濃度でのみ刺激し、これは、scIL−12−IL−2融合タンパク質によって刺激された3H−チミジンの観察された取り込みが、主にそのIL−12活性に起因することを示す。
【0135】
さらに、scIL−12−IL−2融合タンパク質におけるIL−2部分の生物学的活性を、細胞ベースのアッセイで試験し、そして、このアッセイの正確さの範囲内に対し、1モルの基準に対して市販のIL−2とほぼ同じであることが見出された。IL−2部分の生物学的活性を、実施例4に記載されるように、CTLL−2細胞増殖アッセイにおいて試験した。この結果により、マウスIL−2、マウスscIL−12−IL−2、およびマウスFc−IL−12−IL−2融合タンパク質が、刺激増幅においてほぼ等しい効力であることが示される。マウスIL−12は、検出可能なCTLL−2細胞増殖の刺激を生じなかった。これらの結果により、scIL−12−IL−2融合タンパク質によるCTLL−2細胞増殖の刺激が、IL−12部分ではなく、IL−2部分に起因したことが示される。
【0136】
実施例5に記載されるFc−IL12−IL2、IL12−KS−IL2、およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2のタンパク質の、IL−12活性およびIL−2活性をまた、細胞ベースのアッセイにおいて試験した。PBMC細胞増殖/トリチル化チミジン取り込みアッセイを用いて、Fc−IL12−IL2、IL12−KS−IL2、およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2タンパク質の全てが、強力なIL−12活性を示した。同様に、CTLL−2細胞増殖アッセイを用いて、Fc−IL12−IL2、IL12−KS−IL2、およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2タンパク質は全て、強力なIL−2活性を示した。さらに、ELISAにおいて、IL12−KS−IL2およびIL12−KS(軽鎖)+KS(重鎖)−IL2タンパク質は両方とも、例え、重鎖および軽鎖のV領域がそれぞれそれらのN末端において別のタンパク質に融合していたとしても、EpCAM抗原にしっかりと結合した。
【0137】
(実施例7.マウスIL−12−GM−CSF融合タンパク質の活性)
マウスFc−IL−12−GM−CSF分子のIL−12活性を、細胞増殖アッセイにおいて試験した(図10)。ヒトPBMCを、3人のボランティアから得て、そして5μg/ml フィトヘマグルチニン−Pを用いて3日間培養し、Hank’s HBSSを用いて洗浄し、そして1ウェル当たり105細胞でマイクロタイタープレートにプレートした(これらは、標準的な手順(Gately,M.K.,Chizzonite,R.,およびPresky,D.H.Current Protocols in Immunology(1995)6.16.1−6.16.15頁)に従った))。細胞を、種々の試験タンパク質の存在下で48時間インキュベートし、次いで、0.3マイクロキュリーの3H−チミジンを、放射性取り込みのレベルを決定する10時間前に添加した。IL−12およびIL−12とGM−CSFの等モル混合物は、3H−チミジンの細胞への取り込みを用量依存様式で刺激し、そして、14.18−IL−12−GM−CSF融合タンパク質は、3H−チミジンの刺激取り込みにおいてほぼ等しい効率であった。GM−CSFは、試験された濃度において3H−チミジンの取り込みを刺激しなかった。これは、14.18−IL−12−GM−CSF融合タンパク質によって刺激された3H−チミジンの観察された取り込みが、主に、そのIL−12活性に起因したことを示す。
【0138】
さらに、種々のIL−12−Gm−CSF融合タンパク質のGM−CSF部分の生物学的活性を、細胞ベースのアッセイにおいて試験した。これにより、GM−CSF部分が活性であり、これは市販のGM−CSFと同じ一般的な範囲である1分子当たりの活性を伴った。例えば、GM−CSF部分の生物学的活性を、分子免疫学の当業者に公知の手順に従って異なる細胞増殖アッセイにおいて試験する(Cooper,S.C.およびBroxmeyer,H.E.Current Protocols in Molecular Immunology(1996)6.4.1−6.4.0頁)。マウス32D(GM)細胞株は、増殖に関してGM−CSFに依存する;この株は、本来の32D細胞株(CooperおよびBroxmeyerによって記載される)からGM−CSFに対して特に感受性であるように適応されている(Faasら、Eur.J.Immunol.(1993)23:1201−14)。32D(GM)細胞株は、IL−12に応答性ではなかった。活性な対数増殖における32D(GM)細胞を、GM−CSFを欠く培地で2回洗浄し、そして、種々の量の、市販のマウスGM−CSFまたはマウスIL−12−GM−CSF融合タンパク質の存在下で、マイクロタイターウェルの1ウェル当たり5×103個の細胞をプレートし、そして48時間増殖させる。0.3マイクロキュリーの3H−チミジンを、放射性取り込みのレベルを決定する16時間前に添加する。漸増レベルのIL−12−GM−CSF融合タンパク質を用いた3H−チミジンの取り込みに、用量応答性の増加が存在した。これは、IL−12−GM−CSF融合タンパク質のGM−CSF部分が活性であることを示す。さらに、モル濃度基準で算出されたこの融合タンパク質のGM−CSF生物学的活性は、市販のマウスのGM−CSFの生物学的活性に匹敵する。
【0139】
(実施例8.複合サイトカイン融合タンパク質を用いた免疫堪能動物(immune−proficient mammal)における結腸癌腫の処置)
複合サイトカイン−抗体融合タンパク質を使用して、インタクトな免疫系を有する哺乳動物における結腸癌腫を処置し得るか否かを試験するために、以下の実験を実施した。CT26は、Balb/Cマウス由来の結腸癌腫細胞株である。標準的な遺伝子操作技術によって、この細胞株を操作し、ヒト上皮細胞接着分子を発現させた。この分子は、KS−1/4抗体によって認識される抗原である;これらの細胞を、CT26/KSA細胞と名付ける。
【0140】
Balb/Cマウスを2×106CT26/KSA細胞を用いて皮下接種した。腫瘍が約100〜200立方ミリメートルの容積に達する場合、マウスをさらなる研究のための9匹のマウスの3つのグループに無作為化した。0日目から開始して、腫瘍保有マウスを、PBS、約5.3マイクログラムのKS−IL−12と混合された約3.4マイクログラムのKS−IL2、または約6マイクログラムのKS−IL2−IL12を用いて処理した。これらの用量は、各セットのマウスに対して等しい数のIL−12分子およびIL−2分子を送達するために設計する。マウスを、5日間、1日に1回腫瘍内注射した。腫瘍のサイズを、カリパーを用いて測定した。
【0141】
1つのこのような実験の結果を、図11に示す。この実験において、KS−IL12−IL2は、腫瘍増殖の強い阻害を引き起こした。KS−IL12とKS−IL2の混合物もまた、腫瘍増殖の有意な阻害を引き起こしたが、KS−IL12−IL2のように完全ではなかった。KS−IL12−IL2で処理されたマウスのグループにおいて、9匹のマウスのうちの6匹は、これらの腫瘍を明らかに治癒した:これらの6匹のマウスは、実験を終了した場合、93日目まで生存した;そしてこれらのマウスにおける腫瘍は、縮みそして消失し、その結果、39日目〜93日目からは皮下腫瘍は検出され得なかった。他の3匹のマウスは、増殖が遅延される腫瘍を有し、その結果、腫瘍大敵は、たった87日後に4,000立方ミリメートルを超えた。
【0142】
KS−IL12とKS−IL2の混合物で処理されたマウスのうち、2匹のマウスは、その皮下腫瘍が明らかに治癒され、そして実験の終わりまで生存した。残りの7匹のマウスの腫瘍は、消失せず、そして最終的には、1,000立方ミリメートル(1匹のマウス)または4,000立方ミリメートルより大きく(6匹のマウス)増殖した。
【0143】
KS−IL12−IL2が、KS−IL12とKS−IL2等モル混合物よりも、より効果的であるという事実は、驚くべきことである。この実験における用量は、1用量当たり約15ピコモルの融合タンパク質を送達し、これは約9×1012分子に対応する。処置の開始において、各腫瘍は、約160立方ミリメートルの容積を有し、これは、約1億6000万の細胞に対応する。各細胞は、約106分子のEpCAMを発現し、そうなので、KS抗体が結合する約1.6×1014個のEpCAM抗原分子が存在する。従って、KS−IL12とKS−IL2が混合され、そしてそのような腫瘍を保有するマウスに注射された場合、これらの2つの免疫サイトカイン融合タンパク質は、おそらく抗原結合部位に関して互いに競合しない。従って、腫瘍部位における効果的な用量のIL−12およびIL−2は、少なくとも、KS−IL12とKS−IL2の混合物に関して、KS−IL12−IL2に関するような高さであるべきであった。
【0144】
(実施例9.複合サイトカイン融合タンパク質を用いた免疫不全動物における結腸癌腫の処置)
多くの形態の癌治療が、免疫系の細胞を含む分裂細胞(dividing cell)の殺傷に効果を有する。結果として、癌患者は、しばしば、免疫抑制になる。複合サイトカイン融合タンパク質を使用して、抑制された免疫系を有する哺乳動物を処置し得るか否かに取り組むために、CT26/KSA腫瘍を保有するSCIDマウスを、KS−IL12−IL2、KS−IL12とKS−IL2の混合物、またはPBSで処理した。SCIDマウスは、B細胞およびT細胞の両方が欠失であり、そして感染と戦うその能力については生来の免疫系(例えば、NK細胞)の分枝に依存する。
【0145】
皮下CT26/KSA腫瘍を有するマウスを、実施例8に記載されるように作製した。8匹のマウスの3つの群(各々は、約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)を、実施例8と同じ用量およびスケジュールを用いて腫瘍内注射によって処理した。結果を、図12に示す。この場合、KS−IL12−IL2融合タンパク質およびKS−IL12とKS−IL2の混合物は、ほぼ等しく効果的であった:8匹のマウスのうちの5匹は、各グループにおいて25日目までに治癒された。しかし、治癒されなかったマウスにおいて、6個の腫瘍のうちの5個は、未処理動物における腫瘍に特徴的な速度で増殖し始め、約14〜21日の効果的な遅延であった。これは、実施例8の免疫堪能マウスにおける腫瘍と対照的である:腫瘍がKS−IL 12−IL2を用いた処理によって完全に排除されなかった場合でさえ、この腫瘍は、この実験の開始後、約60日までは急速に増殖し始めなかった。
【0146】
これらの実験は、複合サイトカイン抗体融合タンパク質を使用して、免疫抑制された動物における癌を処置し得ることを示す。
【0147】
(実施例10.複合サイトカイン融合タンパク質の腫瘍内注射による肺癌腫の処理:個々の免疫サイトカインによる処理との比較)
複合サイトカイン融合タンパク質および単一サイトカイン部分を有する免疫サイトカインの、肺細胞由来の癌に対する効果に取り組むために、以下の実験を実施した。
【0148】
Lewis肺癌腫(LLC)は、C57BL/6マウス由来の急速進行性の腫瘍である。ヒトEpCAMタンパク質を発現するLLC細胞株を、標準的な遺伝子操作技術によって構築した;この細胞株を、LLC/KSAと命名した。
【0149】
皮下LLC/KSA腫瘍を有するC57BL/6マウスを、実施例8に記載されるように作成した(KMLを有するチェック#の細胞)。各5匹のマウスの4つのグループ(各々は、約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)を、5日間、腫瘍内注射で処理した。マウスを、PBS、約20ミリグラムのKS−IL12、約20ミリグラムのKS−IL12、または約20ミリグラムのKS−IL12−IL2で注射した。
【0150】
結果を、図13に示す。この場合、KS−IL12−IL2融合タンパク質は、KS−IL12またはKS−IL2のいずれよりも、よりさらに効果的であった。KS−IL12−IL2融合タンパク質を用いて処理された全てのマウスにおいて、これらの腫瘍は、27日までに消失した。74日目に、これらのマウスを、実施例14に記載されるような肺転移アッセイに使用した;本来の皮下腫瘍は、介在期間または第2の実験の間に再び出現しなかった。対照的に、KS−IL2またはKS−IL12のいずれかを用いた処理は、いくつかの明らかな腫瘍の縮小および有意な腫瘍増殖の遅延を引き起こしたが、これらの腫瘍は、最終的には増殖した。この実施例および以前の実施例の結果の比較により、特定の疾患および投与形態に関して、異なるサイトカイン部分を保有する免疫サイトカインの混合物を用いた処理が、単一型の免疫サイトカインを用いた処理よりも優れていることを示す。
【0151】
(実施例12 複合サイトカイン融合タンパク質の腫瘍内注射による肺癌腫の処置:免疫サイトカインの混合物による処理との比較)
複合サイトカイン融合タンパク質、および異なるサイトカイン部分を保有する免疫サイトカインの混合物の、肺細胞由来の癌に対する効果を示すために、以下の実験を実施した。
【0152】
皮下LLC/KSA腫瘍を有するC57BL/6マウスを、実施例11に記載されるように作製した。7匹のマウス(各々は、約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)の3つの群を、5日間、腫瘍内注射によって処理した。マウスを、PBS、約18μgのKS−IL12と約11.5μgのKS−IL12との混合物、または約20μgのKS−IL12−IL2で注射した。
【0153】
結果を図14に示す。この場合、KS−IL12−IL2融合タンパク質は、KS−IL12とKS−IL2との混合物よりも、よりさらに効果的であった。KS−IL12−IL2融合タンパク質で処理された全てのマウスにおいて、腫瘍は、27日目までに消失した。対照的に、KS−IL12とKS−IL2との混合物での処理は、いくらかの明らかな腫瘍の縮みおよび腫瘍増殖の有意な遅延をもたらしたが、この処置群において全ての腫瘍は、最終的に再び増殖した。
【0154】
(実施例13.複合サイトカイン−抗体融合タンパク質の、抗腫瘍活性の抗原依存性)
腫瘍の処置における複合サイトカイン−抗体融合タンパク質の効果が、抗体によって認識される抗原の腫瘍特異的発現に依存するか否かを示すために、以下の実験を実施した。
【0155】
皮下LLC/KSA腫瘍を有する7匹のC57BL/6マウスのセット、および親LLC細胞株から誘導された腫瘍を有する9匹のマウスの第2のセットを、実施例11に記載されるように作製した。これら2つの群のマウス(約100〜200立方ミリメートルの腫瘍を保有する)を、5日間、腫瘍内注射によって処理した。マウスを、約20μgのKS−IL12−IL2で注射した。
【0156】
結果を図15に示す。この場合、LLC/KSA腫瘍を保有するマウスは全て、これらの腫瘍が完全に治癒した。対照的に、LLC腫瘍を保有するマウスのうちの2匹のみが、治癒した;他のLLC腫瘍保有マウスは全て、その腫瘍容積における一過性の減少を享受したが、その腫瘍は、最終的に大きな容積に増殖した。
【0157】
これらの結果は、EpCAM表面抗原の認識が、KS−IL12−IL2のLLC/KSA腫瘍細胞の表面への接着を促進すること、および生じる免疫応答が増強されることをしめす。いくつかの抗腫瘍効果は、LLC由来の腫瘍に対しても同様に観察され;(理論に束縛されることを望まないが)この場合におけるKS−IL12−IL2の抗腫瘍効果は、融合タンパク質が直接腫瘍に注射され、従って、その腫瘍に一過性に局在した事実に起因し得る。
【0158】
(実施例14.腫瘍細胞型に対する免疫記憶の生成)
転移の発達は、癌の処置における主要な問題である。複合サイトカイン抗体融合タンパク質を用いた処置が、腫瘍細胞型に対する長期の免疫記憶の形成を導き得るか否か、および転移の確立を妨害し得るか否かを試験するために、以下の実験を実施した。
【0159】
実施例11由来の5匹のC57BL/6マウスを、KS−IL12−IL2で処理し、そしてこれらの皮下腫瘍が明らかに治癒された。実施例14に記載されるように、処置の開始に対して74日目に、これらの5匹のマウスを、106のLLC/KSA細胞を用いて静脈内注射した。コントロールとして、8匹のC57BL/6マウスをまた、106のLLC/KSA細胞を用いて静脈内注射した。
【0160】
28日目に、マウスを屠殺し、そして肺を転移に関して調べた。8匹のコントロールマウスの肺は、70%〜100%が転移で覆われ、平均85%の肺表面範囲を有した。これらのマウスの平均肺重量は、0.86グラムであった。対照的に、5匹の前処理したマウス由来の肺表面上には、転移は見出されず、そして平均肺重量は、0.28グラム(これは、正常マウス肺の重量に対応する)であった。これらの結果は、本来の腫瘍細胞の処置が、この腫瘍細胞に対する長期の免疫記憶を生じることを示し;この記憶は、この腫瘍細胞型の転移の確立を妨害した。
【0161】
(表X.LLC−KSA肺転移からの「後退した」マウスの保護)
【0162】
【表1】
腫瘍を有さないコントロール群の平均肺重量は0.2gであった。転移スコアは、融合された転移小節の%表面範囲に基づき、ここで、0=転移なし;1=1〜25%の範囲;2=25〜50%の範囲;3=50〜75%の範囲;および4=75〜100%の範囲である。
【0163】
免疫記憶形成に関して試験するための第2の実験は、LLC/KSA腫瘍細胞で注射され、皮下腫瘍が発生し、そしてこれらの腫瘍が消失した実施例12由来の7匹のマウスのうちの6匹を使用した。実施例12の処置の開始62日後に、6匹の前処理したマウスおよび10匹のナイーブな未処理のC57BL/6コントロールマウスを、106のLLC細胞で皮下注射した。これらの細胞は、ヒトKS抗原EpCAMを発現しない。
【0164】
ナイーブなマウスにおいて、注射されたLLC細胞は、全てのマウスにおいて急速に増殖する腫瘍を形成した。対照的に、前処理されたマウスにおける腫瘍は、よりさらにゆっくりと増殖し、そして1匹のマウスにおいては、皮下腫瘍は検出されなかった。これらの結果を、図16に示す。ヒトKS抗原であるEpCAMがLLC細胞上で発現されないので、LLC細胞に対する免疫応答は、これらの細胞によって発現される別の抗原に基づいた。
【0165】
(実施例15:ワクチンとしての複合サイトカイン融合タンパク質)
複合サイトカイン融合タンパク質は、抗原タンパク質に融合される場合、ワクチンとして使用され得る。N末端からC末端への部分の特定の順番、または融合タンパク質が単一ポリペプチド鎖であるかオリゴマーであるかは、発現されるプラスミドの構築の利便性に依存して変化し得る。このタンパク質は、種々の経路(例えば、静脈内、皮下、腹腔内など)によって投与され得る。同様に、投与の用量および頻度は、一般的に、ヒトワクチンに関する標準的な慣例と同様に、ならびにワクチン開発の当業者に周知であるのと同様に、経験的に決定される必要がある。
【0166】
例えば、抗原−IL−12−サイトカインの形式の融合タンパク質は、マウスに投与され、ここで、この融合タンパク質中のサイトカインは、IL−12とは異なる第2のサイトカインである。コントロールマウスは、同じ量の抗原−サイトカイン、抗原−IL−12、または抗原単独を受ける。抗原融合タンパク質の投与の間および/またはこの投与後の種々の時間において、血液サンプルを、レトロ眼窩出血(retro−orbital bleeding)によって収集し、そして血漿を調製し、そしてこの抗原に対して指向する抗体の存在に関して分析する。抗体が、この抗原に対して作製されたことが見出された。さらに、この抗原に対する免疫応答の性質は、Th1応答特有である。抗体応答は、特定のコントロール免疫においてよりも、より強くそして産生された抗体の型は異なる。
【0167】
より詳細には、PBS緩衝液中のヒト化抗体−マウスIL−12−IL−2融合タンパク質を、Balb/cマウスに静脈内注射(5μg/日×5)で注射する。コントロールマウスは、同じ抗体を、同じ量だが、IL−12−IL−2を接着させること無しで受ける。いずれの注射溶液も、いずれの他の型のアジュバントも含まない。10日目に、血液サンプルをレトロ眼窩出血によって微量遠心分離チューブに収集し、そして血漿を、クエン酸ナトリウムを含むプラスチックチューブ中に血液サンプルを収集し、続いてEppendorf卓上微量遠心分離機で最大回転で遠心することによって調製する。ELISAプレート(96ウェル)をヒト化抗体タンパク質(これは、ヒト定常領域を含み、そしてこの免疫に応答して作製される任意のマウス抗体を捕獲するために使用される)を用いてコートする。未結合物質を洗浄して除去した後、結合したマウス抗体を、西洋ワサビペルオキシダーゼに結合したヤギ抗マウスFc抗体(Jackson ImmunoResearch)を用いて検出する。任意の結合した抗体は、ヒト定常領域または可変領域(これらの両方は、ヒト化抗体と融合タンパク質との間で共有される)のいずれかを指向し得る。
【0168】
融合されたIL−12−IL−2がないヒト化抗体に対しては、ほとんどまたは全く反応性がない。一方、融合タンパク質は、外因性アジュバントの非存在下および静脈内投与の経路が皮下投与または腹腔内投与のいずれかと比較して、そのような応答を誘導することに関して非常に望ましくない事実にもかかわらず、強力な抗体応答を誘導する。IgG2aアイソタイプの抗体(これは、代表的なIL−12増強された応答である)は、抗体−IL−12−IL−2注射された群において見出されるが、ヒト抗体で注射された群には見出されない。
【0169】
種々の経路によって投与される抗原−IL−12複合サイトカイン融合タンパク質の免疫原性を、PBSもしくは他の生体適合性の緩衝液、または公知のアジュバント(例えば、フロイントの非完全アジュバントおよびフロイントの完全アジュバント)中のこの融合タンパク質(例えば、上記に記載される)の溶液を注射することによって試験する。例えば、単一または複数の、皮下注射、皮内注射または腹腔内注射が、2週間毎に提供され得る。あるいは、融合タンパク質は、まず皮下注射によって投与され得、次いで続いて、腹腔内注射され得る。フロイントのアジュバントは、注射部位における過敏に起因して、ヒトの用途に対しては使用することができない。水酸化アルミニウム(Alum)の沈澱物のような代替のアジュバントが、ヒトの用途に対して承認され、そして本発明において使用され得る。スクアレンおよび脂質に基づく新規有機化学アジュバントがまた、皮膚への注射に使用され得る。
【0170】
(実施例16:複合サイトカイン融合タンパク質を用いた遺伝子治療)
遺伝子治療法によって送達される複合サイトカイン融合タンパク質の抗癌活性をまた、肺癌の処置に関して示した。Lewis肺癌腫細胞を、上記に記載されるウイルスベクター系(PA317パッケージング細胞株へトランスフェクトされるpLNCX−scIL−12−IL−2またはpLNCX−scIL−12 DNA)を用いて安定にトランスフェクトした。これらの構築物は、IL−12の一本鎖バージョンをコードし、ここで、p35およびp40サブユニットは、リンカーで結合されている。クローンを、G418含有培地を用いてインビトロで選択し、そして約50〜60ng/mlのIL−12を安定に発現するクローンを、ELISA(R & D Systems)によって同定した。
【0171】
scIL−12またはscIL−12−IL−2を発現する、約1×106および約5×106LLC細胞を、C57BL/6マウスおよびまたSCIDマウスに皮下注射した。コントロールとして、2×106 LLC細胞を、C57BL/6マウスおよびまたSCIDマウスに注射した。IL−12を発現するLLC細胞は、サイトカインを発現するように操作されていないLLC細胞から誘導された腫瘍とほぼ同じ速度で増殖する腫瘍を形成する。しかし、C57BL/6マウスおよびまたSCIDマウスの両方において、scIL−12−IL−2を発現するLLC細胞は、皮下腫瘍を形成しないか、または引続いて縮みそして消失する腫瘍を形成するかのいずれかであった(図17および18)。
【0172】
(実施例17.IL−4およびGM−CSFを含む複合サイトカイン融合タンパク質の構築)
サイトカインIL−4およびGM−CSFは、組み合わせて使用される場合、樹状細胞の強力なアクチベーターである。IL−4およびGM−CSFの活性を含む複合サイトカイン−抗体融合タンパク質が、以下のように構築された。GM−CSFのコード配列が、KS−1/4抗体重鎖のコード配列の3’末端にインフレームで融合され、これには、リーダー配列が先行した。さらに、IL−4のコード配列(リーダー配列を含む)は、成熟KS−1/4抗体軽鎖のコード配列の5’末端に、リンカーを用いてインフレームで融合された。
【0173】
詳細には、マウスIL−4とKS−1/4抗体の軽鎖との融合タンパク質をコードするDNAを構築するために、マウスIL−4 cDNAを、正方向プライマー:TCTAGACC ATG GGT CTC AAC CCC CAG C(配列番号22)(ここで、XbaI部位のTCTAGA(配列番号22の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置される)および逆方向プライマー:C GGA TCC CGA GTA ATC CAT TTG CAT GAT GCT CTT TAG GCT TTC CAG G(配列番号23)(これは、マウスIL−4のC末端アミノ酸残基をコードするTCGコドン(アンチコドンCGA)に対してすぐ3’にBamHI部位であるGGA TCC(配列番号23の残基2〜7)を含む)を用いて、PCRによって適応させた。PCRフラグメントのクローニングおよび配列確認の後、マウスIL−4 cDNAを含むXbaI−BamHIフラグメントを、グリシンおよびセリン残基に富むフレキシブルペプチドリンカーをコードするBamHI−AflIIオリゴヌクレオチド二重鎖に連結した。次に、AflII末端を、マウスKS−1/4軽鎖のN末端に先行する人工的に配置されたAflII部位に結合させた。2つの連結から生じる連結におけるDNAおよびタンパク質の配列を、以下に提供する。
【0174】
【化4】
このDNA配列において、GGATCC(配列番号24の残基4〜9)およびCTTAAG(配列番号24の残基48〜53)は、それぞれ、再構築に使用される2つの制限部位のBamHIおよびAflIIであり;TCGは、マウスIL−4のC末端セリン残基をコードする;GAGは、KS−1/4軽鎖の成熟N末端をコードする;そして、GlySerリッチのペプチドリンカーのアミノ酸配列をそのDNA配列の下に示す。強力なプロモーターを含む高レベルの発現のための補助的配列を、前の実施例に記載される技術および分子生物学の他の標準的な技術を用いて、融合ポリペプチドの両方をコードするDNAセグメントのほぼ周辺に配置した。
【0175】
IL4−KS(軽鎖)およびKS(重鎖)−GM−CSF融合タンパク質をコードするDNA配列を、NS/0細胞にトランスフェクトし、そして対応するポリペプチドが、高レベルで発現された。還元状態下におけるSDS−PAGEにより、約80kDに重鎖−GM−CSFポリペプチドに対応する散在したバンド、および約50kDにIL4−軽鎖融合体に対応する複合バンドが見出された。散在したバンドおよび複合バンドの出現は、それぞれ、IL−4およびGM−CSFの可変のグリコシル化に起因した。
【0176】
サブユニットは、図3Gの一般的な構造に対応する構造を有するジスルフィド結合した四量体タンパク質へアセンブルした。このタンパク質は、KS−1/4の抗原結合活性、そのFc領域を介したStaph Aタンパク質への結合する能力、ならびにIL−4およびGM−CSFのサイトカイン活性を有した。IL−4活性を、IL−4依存性刺激によるCTLL−2細胞のトリチウム化チミジン取り込みによって測定した。GM−CSF活性を、GM−CSF依存性刺激による32(D)GM細胞のトリチウム化チミジン取り込みによって測定した。モル濃度の基準に対して、KS−IL4−GMCSFのIL−4活性およびGM−CSF活性は、精製されたIL4およびGM−CSFと類似していた。
【0177】
抗体配列と結合していないサイトカインIL−4とGM−CSFの融合体を、以下のように構築した。マウスIL−4を、マウス脾細胞のRNAからPCRによってクローン化した。正方向プライマーは、配列:TCTAGACC ATG GGT CTC AAC CCC CAG C(配列番号26)(ここで、XbaI部位のTCTAGA(配列番号26の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置された)を有し、そして逆方向プライマーは、配列:CGA TAT CCC GGA CGA GTA ATC CAT TTG CAT GAT GCT CTT TAG GCT TTC CAG G(配列番号27)(これは、マウスIL−4のC末端アミノ酸残基をコードするTCGコドン(アンチコドンCGA)のすぐ3’にEcoRV部位のGAT ATC(配列番号27の残基2〜7)を配置した)を有した。配列確認の後、そのネイティブなリーダーと共にmuIL−4 cDNAを含むXbaI−EcoRVフラグメントを、muGM−CSFを含むSmaI−XhoIフラグメントに連結させ、muIL−4とmuGM−CSF cDNAとの間の融合体の連結部に以下の配列を得た:ATG GAT TAC TCG TCC GGG ATG GGA AAA GCA CCC GCC CGC(配列番号28)(ここで、muIL4のC末端配列およびmuGM−CSFのN末端配列を、下線で示し、そして、GATG GG(配列番号28の残基17〜22)は、EcoRV平滑末端からSmaI平滑末端への連結から生じる配列である)。muIL4−muGMCSFをコードする生じたDNAを、次いで、発現ベクターにクローン化した。この発現されたタンパク質を、SDS−PAGEによって分析し、そして、45〜50kDの見かけ上の分子量を有する散在バンドとして泳動されることが見出された。モル濃度の基準に対して、IL4−GMCSFのIL−4活性およびGM−CSF活性は、精製されたIL−4およびGM−CSFと類似していた。
【0178】
(実施例18.リンホタクチン−KS−IL12(lymphotactin−KS−IL2)をコードするDNAの構築およびリンホタクチン−KS−IL2タンパク質の発現)
ケモカインは、勾配を形成し、免疫細胞の化学走性を媒介すると考えられている、異なるクラスのサイトカインである。さらに、他のサイトカインのように、ケモカインは、標的細胞において特定の遺伝子の発現を誘導し得る。ケモカインの1つの特徴は、遊離のN末端がしばしば活性に必要とされることであり、これにより、融合タンパク質が構築され得る方法に限定を置くかもしれない。
【0179】
サイトカインリンホタクチン(これは、ケモカインである)、抗体KS−1/4、およびサイトカインIL−2からなる、サイトカイン−抗体−サイトカイン融合タンパク質を構築した。この融合タンパク質は、四量体であり、そして2つの異なるポリペプチドを含んだ。1つのポリペプチドは、KS−1/4抗体の重鎖のN末端に融合されたマウスリンホタクチンからなる(C末端にIL−2が続く)。C末端にIL−2を有するKS−1/4重鎖の融合体(「KS−IL2重鎖」)は、以前に記載された(Gilliesら、(1992)Proc.Natl.Acad.Sci.USA 89:1428)。もう一方のポリペプチドは、KS1/4抗体の軽鎖からなる。
【0180】
マウスリンホタクチンの完全なコード配列は、KelnerおよびZlotnik(Science 266:1395(1998))によって公開された。マウスリンホタクチンとKS−IL2の重鎖との融合タンパク質をコードするDNAを構築するために、マウスリンホタクチンcDNAを、正方向プライマー:TCTAGAGCCACC ATG AGA CTT CTC CTC CTG AC(配列番号29)(ここで、XbaI部位のTCTAGA(配列番号29の残基1〜6)は、翻訳開始コドンATGの上流に配置された)、および逆方向プライマー:GGA TCC CCC AGT CAG GGT TAC TGC TG(配列番号30)(これは、マウスリンホタクチンのC末端アミノ酸残基をコードするGGGコドン(アンチコドンCCC)のすぐ3’にBamHI部位のGGA TCC(配列番号30の残基1〜6)を配置した)を用いて、PCRによって適応させた。PCRフラグメントのクローニングおよび配列確認の後、マウスリンホタクチンcDNAを含むXbaI−BamHIフラグメントを、グリシンおよびセリン残基に富むフレキシブルペプチドリンカーをコードするBamHI−AflIIオリゴヌクレオチド二重鎖に連結した。次に、AflII末端を、KS−IL2重鎖の成熟N末端に先行する人工的AflII部位に結合させた。2つの連結から生じる連結におけるDNA配列を、以下に提供する。
【0181】
【化5】
ここで、GGATCC(配列番号31の残基4〜9)およびCTTAAG(配列番号31の残基48〜53)は、それぞれ、構築に使用される2つの制限部位のBamHIおよびAflIIであり;CCCは、マウスリンホタクチンのC末端アミノ酸残基をコードする;CAGは、KS−IL2重鎖の成熟N末端をコードする;そして、GlySerリッチのペプチドリンカーのアミノ酸配列を、DNA配列の上に示す。次いで、マウスリンホタクチン−KS−IL2重鎖をコードするDNAを、発現ベクターにクローン化し、次いで、KS1/4軽鎖と同時発現させた。
【0182】
発現されたリンホタクチン−KS−IL2融合タンパク質を、T細胞を用いてBoydenチャンバー移動アッセイにおけるリンホタクチン活性に関して試験する(Leonardら、(1999)Current Protocols in Immunology、6.12.3頁)。あるいは、NK細胞を使用する。あるいは、リンホタクチン活性を、Gタンパク質結合レセプターの活性化に対する応答におけるカルシウム流動に関する、標準的な細胞アッセイにおいて観察する(Maghazachiら、FASEB J.(1997);11:765−74)。さらに、リンホタクチン−KS−IL2融合タンパク質を、試験し、そしてEpCAMへ結合する能力に関するアッセイにおいて活性であることが見出され、そしてまた、IL−2活性に関するアッセイ(例えば、CTLL−2細胞増殖アッセイ)において活性である。
【0183】
(参考としての援用)
本明細書上記に引用された全ての刊行物は、その全体が本出願に参考として援用される。
【0184】
(等価物)
本発明は、本発明の精神または基本的な特徴から逸脱することなく、他の特定の形式で具体化され得る。従って、上記の実施形態は、全ての関係において、本明細書中に記載される本発明に対する限定よりも、例示的であるとみなされる。従って、本発明の範囲は、前述の発明の詳細な説明よりも、添付の特許請求の範囲によって示され、従って、特許請求の範囲の等価物の意義および範囲内にある全ての変更は、本発明に含まれることが意図される。
[配列表]
【0185】
【表2】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【請求項1】
明細書中に記載の発明。
【図1】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【図2】
【図3−1】
【図3−2】
【図4】
【図5】
【図6A】
【図6B】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17A】
【図17B】
【図18】
【公開番号】特開2011−67211(P2011−67211A)
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−250341(P2010−250341)
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2001−515719(P2001−515719)の分割
【原出願日】平成12年8月9日(2000.8.9)
【出願人】(308014846)メルク パテント ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年4月7日(2011.4.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年11月8日(2010.11.8)
【分割の表示】特願2001−515719(P2001−515719)の分割
【原出願日】平成12年8月9日(2000.8.9)
【出願人】(308014846)メルク パテント ゲーエムベーハー (12)
【Fターム(参考)】
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