説明

複合ライン及び複合ラインの制御方法。

【課題】冷間圧延機を含む複合ラインを効率的に稼動させつつ、複合ラインを構成する機械数を低減し、又は設備が小型化する。
【解決手段】この発明の複合ラインは、圧延加工に供される金属板を、巻き取り、巻き戻す巻取巻戻機と、巻取巻戻機の下流に設置され、巻取巻戻機から新たに供給された金属板を、先に供給された金属板に溶接する溶接機と、溶接機の下流に設置され、通過する金属板を圧延する可逆式冷間圧延機と、可逆式冷間圧延機の下流に設定され、金属板を蓄積する中間ルーパと、中間ルーパの下流側に配置され、中間ルーパを通過した金属板に、所定の処理を施す連続処理設備と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複合ライン及び複合ラインの制御方法に関する。より具体的には、冷間圧延機及び連続処理設備を含む複合ライン及びその制御方法として好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、不可逆式の冷間圧延機と、表面処理等の処理設備とが接続された複合ラインが知られている。このような複合ラインは、例えば、2つの巻戻機、溶接機、入口側ルーパ、冷間圧延機、出口側ルーパ、表面処理等を含む処理設備等が接続されて構成されている。具体的に、巻戻機から金属板が供給されると、金属板は溶接機に送られ、その先端が先行する金属板の尾端に溶接される。金属板は一度入口側ルーパに蓄積される。入口側ルーパを通過した金属板は、冷間圧延機に供給され、複数の冷間圧延機の作業ロールにより所望の厚さに圧延される。その後、金属板は、出口側ルーパに導入され、出口側ルーパを通過すると処理設備に供給され、最終的に出口側に設置された巻取機に巻き取られる。
【0003】
このような設備では、金属板を連続的に供給するため2つの巻戻機が設置され、交互に金属板が供給される。この交互に供給される金属板の先端部と、先行する金属板の尾端とは、溶接機において溶接されるが、その溶接中は溶接機内で金属板を停止させる必要がある。また、例えば、冷間圧延機の作業ロール取り換え作業時等、冷間圧延機を停止する必要が生じる場合もある。
【0004】
入力側ルーパ内には、ある程度の金属板を蓄積できるように構成されており、溶接中など金属板の供給が停止される場合に、このルーパ内の金属板を冷間圧延機に送り出すことで、冷間圧延機が停止するのを防止する。
【0005】
出口側ルーパ内にも、ある程度の金属板を蓄積できるように構成されており、冷間圧延機が停止する場合に、蓄積された金属板を処理設備に送り出すことで、冷間圧延機の停止や速度低下に起因して、処理設備が停止したり処理速度が低下したりする状態を抑制している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平06−170430号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上述したように、従来の、不可逆式冷間圧延機を含む複合ラインでは、冷間圧延機の下流及び上流それぞれに、入口側ルーパ、出口側ルーパを設けて、溶接時や冷間圧延機の停止時にルーパに蓄積された金属板を送り出すことで、設備全体の停止を抑制している。
【0008】
しかしながら、このように冷間圧延機の上流・下流それぞれに金属板蓄積用のルーパを配置する構造では設備全体が大きくなる。また設備全体の機械数も増大する。しかしながら、ランニングコスト低減等の観点からは、設備の小型化、機械数の削減が望まれる。
【0009】
従って、この発明は上記の課題の解決を目的とし、冷間圧延機を含む複合ラインを効率的に稼動させつつ、複合ラインを構成する機械数を低減し、又は設備が小型化するよう改良した複合ライン及びその制御方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、この発明の複合ラインは、圧延加工に供される金属板を、巻き取り、巻き戻す巻取巻戻機と、巻取巻戻機の下流に設置され、巻取巻戻機から新たに供給された金属板を、先に供給された金属板に溶接する溶接機と、溶接機の下流に設置され、通過する金属板を圧延する可逆式冷間圧延機と、可逆式冷間圧延機の下流に設定され、金属板を蓄積する中間ルーパと、中間ルーパの下流側に配置され、中間ルーパを通過した金属板に、所定の処理を施す連続処理設備とを備える。
【0011】
ここで、巻取巻戻機により金属板を巻き戻すとは、巻取巻戻機に巻き回された金属板が送り出されることを意味し、一方、金属板を巻き取るとは、巻取巻戻機に金属板が再び巻かれることを意味する。
【0012】
この発明の複合ラインにおいて、可逆式冷間圧延機は、金属板の通過方向を、上流から下流への順方向又は、前記順方向とは反対の逆方向に切り替えできる機構を備える。中間ルーパは、中間ルーパ内に蓄積される金属板の長さを変更できる機構を備える。中間ルーパ内に蓄積された金属板は、可逆式冷間圧延機及び/又は連続処理設備側に送り出されるものである。
【0013】
この発明の複合ラインは、更に、溶接機と可逆式冷間圧延機の間に設置され、金属板を巻き取り巻き戻すことができる巻取巻戻機を、備えるものであってもよい。この巻取巻戻機は、可逆式冷間圧延機内の金属板の通過方向にあわせて、金属板を巻取巻戻機巻き戻すことを可能とする。
【0014】
この発明の複合ラインにおいて、可逆式冷間圧延機により行われる金属板の圧延処理は、少なくとも、順方向に圧延を行う第1圧延と、第1圧延の後、逆方向に圧延を行う第2圧延と、第2圧延の後、再び、順方向に圧延を行う第3圧延と、を含むものとすることができる。この場合、複合ラインは、更に、第2圧延において、中間ルーパから可逆式冷間圧延機に送られる金属板の長さと、中間ルーパから連続処理設備に送られる金属板の長さとの合計長を予測する予測器と、その合計長が、第2圧延処理前に中間ルーパに蓄積されている金属板の長さを超えない範囲となるように、1回の圧延処理によって処理される金属板の最大長を設定し、第1圧延で処理される金属板の長さを、最大長に制限する制限制御機とを備えるものとしてもよい。
【0015】
この発明の複合ラインの制御方法は、上記この発明のいずれかの複合ラインを制御する制御方法であって、可逆式冷間圧延機における金属板の圧延処理の工程は、少なくとも、順方向に圧延処理を行う、第1圧延工程と、第1圧延工程の後、逆方向に圧延処理を行う第2圧延工程と、第2圧延工程の後、再び、順方向に圧延を行う第3圧延工程と、を備える。
【0016】
あるいは、この発明の複合ラインの制御方法は、第2圧延工程に要する圧延時間中に、中間ルーパから可逆式冷間圧延機に送られる金属板の長さと、中間ルーパから連続処理設備に送られる金属板の長さとの合計長が、第2圧延工程直前の中間ルーパ内の金属板の蓄積長を超えないように、圧延処理を行うものとすることができる。
【0017】
あるいは、この発明の複合ラインの制御方法は、金属板を複数の区画に分割し、1つの区画ごとに、圧延処理を行うものとしてもよい。
【発明の効果】
【0018】
この発明の複合ラインによれば、可逆式冷間圧延機を用いることで、一方向の冷間圧延機を用いる場合に比べて、少ない台数で、金属板を所望の厚さに圧延することができる。従って、冷間圧延機の台数を減らし、複合ライン全体を小型化することができる。
【0019】
また、可逆式冷間圧延機の上流側に巻取巻戻機を設置することで、可逆式冷間圧延機の入口側に金属板を蓄積する設備を省略することができ、複合ラインの更なる小型化を図ることができる。また、巻取巻戻機と、金属板を蓄積する中間ルーパを用いることで、可逆式冷間圧延機を含む複合ラインにおいても、処理設備を停止したり処理速度を低下させたりすることなく効率的に設備を運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】この発明の実施の形態1の複合ラインの全体構成について説明するための模式図である。
【図2】この発明の実施の形態2の複合ラインの全体構成について説明するための模式図である。
【図3】この発明の実施の形態2における、複合ライン運転時のタイミングチャートである。
【図4】この発明の実施の形態2における、複合ライン運転中の各状態における速度や金属板の蓄積長等の値について説明するための図である。
【図5】この発明の実施の形態3における、複合ライン運転時のタイミングチャートである。
【図6】この発明の実施の形態3における、複合ライン運転中の各状態における速度や金属板の蓄積長等の値について説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態3における、複合ライン運転中の各状態における速度や金属板の蓄積長等の値について説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態3における、複合ライン運転中の各状態における速度や金属板の蓄積長等の値について説明するための図である。
【図9】この発明の実施の形態4における、複合ラインの全体構成について説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。なお、各図において、同一または相当する部分には同一符号を付してその説明を簡略化ないし省略する。
【0022】
実施の形態1.
[複合ラインの全体構成]
図1は、この発明の実施の形態1における複合ラインの全体構成について説明するための模式図である。図1の複合ラインは、2つの巻取巻戻機2、4を備えている。巻取巻戻機2、4それぞれには、コイル状の金属板6がセットされている。巻取巻戻機2、4の下流側には溶接機10が設置されている。溶接機10の下流には、2台の可逆式冷間圧延機12が設置されている。可逆式冷間圧延機12それぞれの内部には作業ロール14が設置されている。可逆式冷間圧延機12の下流には中間ルーパ16が設置されている。中間ルーパ16の下流には連続処理設備20が設置されている。連続処理設備20は、熱処理機22と表面処理機24と加工処理機26とを備える。但し、連続処理設備20は、この何れかを備えるものであってもよい。連続処理設備20の下流には、巻取機28が設置されている。
【0023】
[複合ラインの各装置での動作]
巻取巻戻機2、4は、それぞれ金属板6を送り出すことができると共に、送り出した金属板6を巻き取ることができる。巻取巻戻機2、4により金属板6を巻き戻すとは、巻取巻戻機2、4に巻き返された金属板6が溶接機10側に送り出されることを意味し、一方、金属板6を巻き取るとは、巻取巻戻機2、4に金属板6が再び巻き返され、金属板6が溶接機10側から巻取巻戻機2、4に戻されることを意味する。この複合ラインでは、巻取巻戻機2、4により、金属板6の送り出しと巻き取りとを可能とすることで、入口側のルーパが省略されている。
【0024】
この複合ラインでは、金属板6が、巻取巻戻機2、4から交互に供給される。即ち、例えば、一方の巻取巻戻機2から供給された金属板6が全て払い出されると、次に、他方の巻取巻戻機4にセットされた金属板6が送り出される。巻取巻戻機2及び4のどちらからであっても、新たに金属板6が送り出される場合の複合ラインの動作は同一であるが、以下、説明の簡略化のため、一方の巻取巻戻機2から、新たに金属板6が送り出される場合の複合ラインの動作について説明する。
【0025】
巻取巻戻機2から新たな金属板6が送り出されると、まず、先行する金属板6との溶接が行われる。この際、先行している金属板6は、尾端部6Aが溶接機10内の所定の位置に来た状態で止められる。巻取巻戻機2から送り出された新たな金属板6は、同様に、先端部6Bが溶接機10内の所定の位置に来た状態で停止される。溶接機10では、金属板6の先端部6Bと、先行する金属板6の尾端部6Aとが溶接される。
【0026】
溶接が終了すると、先行する金属板6に続き、溶接された新たな金属板6が可逆式冷間圧延機12に送り出される。ここで、可逆式冷間圧延機12は、金属板6が流れる方向を逆転させることができるものである。つまり、可逆式冷間圧延機12では、金属板6の通過方向が上流から下流、即ち、溶接機10側から中間ルーパ16側への順方向であっても、順方向とは反対の逆方向であっても、圧延を行うことができる。これにより可逆式冷間圧延機12では、同一の作業ロール14間に金属板6を繰り返し通過させて、複数回の圧延を行うことができる。作業ロール14による圧延率は、1方向1回の圧延ごとに変化させることができる。従って一連の圧延処理により、所望の厚さに金属板6を圧延することができる。なお、以下、実施の形態において、一連の圧延処理のなかで、金属板6を送る方向が切り替えられるまでの間の1回ごとの処理を「パス」と称することとする。
【0027】
例えば、3回の圧延処理を行う場合、1パス目、順方向で作業ロール14に金属板6が送られる。その後、2パス目では、巻取巻戻機2により、1パス目を終了した金属板6を巻き取って、金属板6を作業ロール14間に逆方向に通過させる。その後、3パス目で、再び順方向に戻し、2パス目の圧延を終了した金属板6を再び順方向に送り、作業ロール14を通過させる。
【0028】
可逆式冷間圧延機12での圧延処理が完了した金属板6は、中間ルーパ16から連続処理設備20に送られて各処理が行なわれ、最終的に巻取機28に巻き取られてラインでの処理が完了する。
【0029】
ところで、この複合ラインは、金属板6の蓄積長を変更できる中間ルーパ16を設置することで、連続処理設備20による処理を継続して行うことができるように構成されている。具体的に、中間ルーパ16は、帯状の金属板6にループ(屈曲延長部)を形成させて蓄積する。中間ルーパ16は、更に、このループの大きさを変化させることができる機構を有し、ループの大きさが最大の場合の長さから、ループの大きさが最小の場合の長さの間で、金属板6の蓄積長を変化させる。これにより、複合ライン稼働中に、効率的に可逆式冷間圧延機12を稼動させるとともに、連続処理設備20が停止するのを抑制する。
【0030】
例えば、上記金属板6の溶接の間は、金属板6が溶接機10の間で止められる。従ってこの間、可逆式冷間圧延機12での圧延処理は行われず、中間ルーパ16には金属板6が送り込まれない。このような場合には、中間ルーパ16に蓄積されていた、圧延処理完了後の金属板6が連続処理設備20に送られる。これにより、可逆式冷間圧延機12が停止している間も、連続処理設備20を稼動させることができる。
【0031】
また可逆式冷間圧延機12から順方向に圧延された金属板6を逆方向に圧延(逆パス圧延)する場合には、一度、可逆式冷間圧延機12を通過した金属板6が中間ルーパ16に蓄積される。逆パス圧延の場合には、蓄積された金属板6が中間ルーパ16から可逆式冷間圧延機12側に送り出される。このとき同時に、金属板6は連続処理設備20にも送り出される。ここで中間ルーパ16内に蓄積された金属板が不足しないように、各処理における速度や最初の金属板6の長さ等を制御すれば、逆パス圧延を行う場合にも連続処理設備20の停止を避けることができる。
【0032】
その他、例えば以下の場合にも、可逆式冷間圧延機12は停止又は減速する。
(イ)作業ロール14の交換・組替え時。
(ロ)溶接点や欠陥点が作業ロール14を通過する際。このとき圧延速度を緩速させるか、又は圧延を停止して作業ロール14のロールギャップを開放して通過させる。
(ハ)溶接点又は任意の場所に設けられた、目標板厚を変更するための板厚変更点が、作業ロール14を通過する場合。この場合にも圧延速度を緩速するか又は圧延を停止して、作業ロール14のロールギャップを、所望の目標板厚を達成するロールギャップに変更する。
【0033】
この複合ラインでは、溶接、逆パス圧延、その他(イ)〜(ハ)のような理由で、可逆式冷間圧延機12が停止、緩速した場合にも、中間ルーパ16に蓄積されている金属板6が連続処理設備20に送り出される。その結果、中間ルーパ16のループの大きさが小さくなる。このように中間ルーパ16での蓄積長を変化させることで、連続処理設備20での処理を継続して行なうことができ、複合ライン全体が停止することなく、効率的にラインを稼動させることができるように構成されている。
【0034】
なお、中間ルーパ16において金属板6は、稼動ロールと固定ロールとに巻かれた状態でループを形成する。従って、最小の蓄積状態であっても、中間ルーパ16内には、少なくとも両ロールに接している長さ分の金属板6が蓄積されていることとなる。しかしながら、以下の実施の形態では、この部分を含まず、各装置に送り出すことができる金属板6の蓄積長を「有効蓄積長」とする。また、ループの大きさが最大、最小の場合における有効蓄積長を、「最大蓄積長」、「最小蓄積長」と称するものとする。
【0035】
[圧延率と圧延後の金属板長について]
作業ロール14の圧延率は、最終的に必要となる圧延後の厚さに応じて適宜設定することができる。nパス目圧延率aは、nパス目圧延前の厚さH、その作業ロール14によるnパス目圧延後の厚さhとすると、次式(1)のように定義される。
圧延率a=(H−h)/H ・・・・(1)
なお、以下においてnは自然数であり、その圧延処理が何パス目であるかを示す。
【0036】
なお、本実施の形態1では、2つの作業ロール14を有しているが、説明の簡略化のため、2つの作業ロール14による圧延率を纏めて圧延率aとして説明する。ただし、実際には、それぞれの作業ロール14ごとに異なる圧延率とすることもできる。
【0037】
また、nパス目の圧延で、圧延率aで圧延された後の金属板の長さである圧延後長Lは、次式(2)で表される。
圧延後長L=圧延前の長さL(n−1)/(1−a) ・・・・(2)
【0038】
[中間ルーパの蓄積長と、各動作状態での速度の具体的な設定について]
この複合ラインにおいて、巻取巻戻機2、4の巻き戻し速度、中間ルーパ16の追込速度は、可逆式冷間圧延機12の最大圧延速度以上にすることができる。可逆式冷間圧延機12による圧延速度は、連続処理設備20の搬送速度より速度を速めることができる。以下、複合ラインによる一連の処理の各動作状態での中間ルーパ16の有効蓄積長や、その速度の設定について説明する。
【0039】
ここで「圧延速度」は、圧延機12において処理されて送り出される金属板6の速度、即ち、圧延機12の出口側での金属板6の速度を表すものとする。圧延速度は、作業ロール14の回転速度を変化させることで調整することができる。以下、実施の形態では、作業ロールの回転速度を制御することで、圧延速度を設定された目標値に制御するものとして説明する。
【0040】
圧延率aの可逆式冷間圧延機12の圧延速度をVとするとき、可逆式冷間圧延機12の入口側の速度v(入側速度)は、次式(3)のように表される。
入側速度v=(1−a)×圧延速度V ・・・・(3)
【0041】
また、連続処理設備20内の金属板6は、一定の速度V0で処理されるものとする。また、中間ルーパ16の金属板6の最大蓄積長をRmaxとし、一連の処理開始時の有効蓄積長をR0とし、金属板6の圧延前の最初の長さをL0とする。
【0042】
<溶接>
巻取巻戻機2から金属板6が送り出され、溶接機10での溶接中、可逆式冷間圧延機12での圧延が停止する。溶接中も中間ルーパ16から連続処理設備20には、速度V0で金属板6が送られる。従って、溶接時間をT0とすると、溶接中にも連続処理設備20を停止させないためには、溶接開始時の有効蓄積長Rsは条件Aを満たす必要がある。
(条件A) Rs≧V0×T0
溶接終了後の有効蓄積長R0は、次式(4)で表される。
R0=Rs−V0×T0 ・・・・(4)
【0043】
<順方向の追込圧延>
一連の圧延処理においては、順方向の圧延と、逆方向の圧延とが交互に、所定回数行われる。順方向の圧延は、可逆式冷間圧延機12に順方向に金属板6が送られる。巻取巻戻機2又は4の巻き戻し(送り出し)速度は、可逆式冷間圧延機12の入口側の速度と等しい速度に設定される。
【0044】
順方向の圧延において、金属板6が順方向に作業ロール14を通過している間、かつ、中間ルーパ16の金属板6の有効蓄積長が最大蓄積長Rmaxに満たない状態である間は、可逆式冷間圧延機12内での圧延速度Vが、連続処理設備20の処理速度V0より速くなるように設定される。以下、実施の形態では、この状態での圧延を「追込圧延」と称するものとする。なお、順方向の圧延(追込圧延と長端同期圧延とを含む)は、溶接後の1パス目以降、後述する逆パス圧延と交互に行われる。従って、順方向の圧延(追込圧延及び長端同期圧延)は、奇数のパスで行われ、以下において、順方向の圧延におけるパス数nは奇数である。
【0045】
具体的には、次式(5)に従って、nパス目の追込圧延での速度Vが設定される。
n1=(Rmax−R(n−1))/(V−V0) ・・・・(5)
ここで、Tn1はnパス目の追込圧延時間であり、R(n−1)はnパス目の追込圧延開始直前の有効蓄積長である。
【0046】
ただし、1回のパスごとの圧延で処理される金属板6の長さは、予め設定された金属板6の長さに応じたものとなる。従って、追込時の圧延速度Vと追込時間Tn1は、以下の条件を満たす必要がある。
(条件B) V≦L/Tn1
はnパス目の圧延終了後の金属板6の長さ(圧延後長)であり、上記式(2)から算出される値である。条件Bが満たされない場合、追込圧延での速度、時間は次式(6)に従って設定される。
=L/Tn1 ・・・・・(6)
追込圧延中、中間ルーパ16内には、圧延速度Vと連続処理設備20の処理速度V0との速度差(V−V0)の速さで、金属板6が蓄積されていく。
【0047】
<順方向の長端同期圧延>
nパス目の順方向の圧延における追込圧延の間に、中間ルーパ16の有効蓄積長が最大蓄積長Rmaxに至ると、これ以上は中間ルーパ16に金属板6を蓄積することができない状態となる。従って、追込圧延の間に中間ルーパ16の有効蓄積長が最大蓄積長Rmaxとなったときは、圧延速度は、中間ルーパ16から連続処理設備20に送り出される速さとは同一の速度V0に設定される。この運転状態では、中間ルーパ16内の有効蓄積長に増減はなく、最大蓄積長Rmaxのまま維持される。以下の実施の形態において、この状態での圧延を「長端同期圧延」と称することとする。
【0048】
nパス目の順方向の圧延における長端同期圧延の時間Tn2は、nパス目の追込圧延後に圧延されずに残っている金属板6をすべて圧延する時間である。従って、次式(7)により求められる。
n2=(L−V×Tn1)/V0 ・・・・(7)
【0049】
<逆パス圧延>
順方向の圧延後、巻取巻戻機2又は4により巻き取られることで、可逆式冷間圧延機12には逆方向に金属板6が送り込まれる。なお、逆パス圧延は、順方向の圧延と交互に行われる。従って、逆パス圧延は偶数のパスで行われ、以下において、逆パス圧延におけるパス数nは偶数である。
【0050】
nパス目の圧延処理での逆パス圧延の圧延速度をVとすると、上記式(3)より、中間ルーパ16から可逆式冷間圧延機12へ金属板6が送り込まれる速度は、V×(1−a)である。従って、中間ルーパ16内の金属板6は(V×(1−a)+V0)の速さで減少する。なお、ここでaは、この逆パス圧延の圧延率である。
【0051】
nパス目の圧延終了後の圧延後長をLとすると、逆パス圧延に要する圧延時間Tは次式(8)により求められる。
=L/V ・・・・(8)
【0052】
また、逆パス圧延時間T中には、中間ルーパ16内の有効蓄積長がゼロとならないようにするため、圧延速度Vは条件Cを満たす範囲に設定される。
(条件C) R(n−1)≧(V×(1−a)+V0)×T
なお、条件Cにおいて、R(n−1)は逆パス圧延開始直前の有効蓄積長である。
【0053】
逆パス圧延が終了すると、再び、順方向の圧延が行われる。2回目以降の順方向、逆方向の圧延は、それぞれの条件A〜Cを満たす範囲で、同様に設定される。このように、所望の厚さになるように設定された回数の圧延が、順方向、逆方向の順に繰り返される。金属板6は、最終パスの圧延まで完了した後、連続処理設備20内に送られ、すべての処理が完了すると巻取機28において巻き取られる。
【0054】
以上説明したように、本実施の形態1によれば、可逆式冷間圧延機12と、巻取巻戻機2、4と中間ルーパ16とを組み合わせることで、従来の複合ラインで必要とされていた、入側ルーパと出側ルーパとを1つのルーパ(中間ルーパ16)に集約することができ、従来にくらべ、複合ラインの装置数を少なくし、ライン全体の小型化を図ることができる。
【0055】
また、非可逆式冷間圧延機に替えて、可逆式冷間圧延機12を用いることで、従来の、スタンド数の多いタンデム式非可逆パス圧延機によって達成される圧延率と同等の圧延率を、少ない台数の圧延機で実現することができる。これにより複合ライン全体の小型化を図ることができる。
【0056】
このように作業ロール14の数を少なくすることで、作業ロール14の組替えによる可逆式冷間圧延機12の停止期間、あるいは、緩速期間を短くすることができ、作業効率を向上させることができる。更に、この実施の形態1の複合ラインでは、可逆式冷間圧延機の停止又は緩速期間、中間ルーパ16に蓄積された金属板を連続処理設備20で処理することができるため、連続処理設備20を停止させることなく、効率的に作業を継続することができる。
【0057】
なお、実施の形態1において説明した可逆式冷間圧延機12の停止、緩速の理由は、この発明を拘束するものではない。これは、以下の実施の形態についても同様である。
【0058】
また、本実施の形態1では、2台の可逆式冷間圧延機12を用いる場合について説明した。しかし、この発明において、可逆式冷間圧延機12の台数はこれに限るものではない。この発明において、可逆式冷間圧延機12は少なくとも1台設置されていればよく、その台数は、圧延処理の効率、圧延率等を考慮して、適宜設定することができる。これは、以下の実施の形態についても同様である。
【0059】
また、本実施の形態1において、圧延処理のパス数nである作業ロール14の通過回数は、必要な圧延率と効率に応じて設定することができる。この際、パス数は奇数に限るものではない。巻取巻戻機2、4、溶接機10、連続処理設備20、巻取機28の位置関係を変更したり、あるいは、何パス目かの逆方向の圧延の後に、作業ロール14のロールギャップを開放し圧延することなく連続処理設備20に金属板6を送り込む設定とすることで、圧延回数を偶数とすることも可能である。これは、以下の実施の形態においても同様である。
【0060】
また、本実施の形態1では、中間ルーパ16は、ループの大きさを変更することで、蓄積長を変更することができる構成としたが、中間ルーパ16の構成はこれに限るものではなく、金属板6を蓄積し、更に、その蓄積長を変更することができるものであれば他の構成であってもよい。これは、以下の実施の形態においても同様である。
【0061】
実施の形態2.
図2は、この発明の実施の形態2の複合ラインの全体構成について説明するための模式図である。図2に示されるように、この複合ラインは、2つの巻取巻戻機2、4のうち、一方の巻取巻戻機4に替えて、溶接機10の下流に巻取巻戻機202及び巻付機204を有し、2台の可逆式冷間圧延機12に替えて、1台の可逆式冷間圧延機12のみを備えている点を除き、図1の複合ラインと同様の構成を有している。
【0062】
この複合ラインにおいて、コイル状の金属板6は、当初、常に、巻取巻戻機2にセットされ、巻取巻戻機2から送り出される。新たに送り出された金属板6の先端部6Bが、溶接機2において、先の金属板6の尾端部6Aに溶接されると、金属板6はまず可逆式冷間圧延機12に送り出され、所定パス数の圧延処理が行われる。
【0063】
具体的に、順方向の圧延により圧延された金属板6は、中間ルーパ16内に蓄積される。ここでは巻取巻戻機2にセットされた金属板6が全て払い出された場合にも、その後、可逆式冷間圧延機12は順方向の圧延を続け、金属板6の尾端部6Aが可逆式冷間圧延機12の手前に達した時に可逆式冷間圧延機12を停止する。
【0064】
停止後、可逆式冷間圧延機12は逆転され、逆パス圧延に入る。このとき、ベルトラッパーなどの巻付機204により、金属板6が巻取巻戻機202に巻き付けられる。その後の逆パス圧延では、中間ルーパ16内の金属板6のうち板厚が目標板厚にまで圧延されていない部分が、巻取巻戻機202に巻き取られる。
【0065】
最終パスの圧延において、巻取巻戻機202の全ての金属板6が払い出された後も、圧延は継続される。金属板6の尾端部6Aが再び可逆式冷間圧延機12の入口手前まできた時点で圧延が停止される。圧延停止後、可逆式冷間圧延機12は逆回転され、金属板6の尾端部6Aは、溶接機10内で送られて停止される。その後、予め巻取巻戻機2にセットされていた次の金属板6の先端部6Bと溶接され、再び、上記のような工程が繰り返される。
【0066】
このように、巻取巻戻機202を、溶接機10と可逆式冷間圧延機12との間に設置することで、巻取巻戻機202から可逆式冷間圧延機12までの距離を、巻取巻戻機2と可逆式冷間圧延機12との距離よりも短くすることができる。これにより、圧延加工できない金属板のオフゲージの長さを短縮することができる。
【0067】
上記の処理において、逆パス圧延を行う場合、巻取巻戻機202により金属板6を巻き取る。従って、逆パス圧延開始前に巻取巻戻機202に金属板6を巻きつける巻き替え時間を要する。巻き替えの所要時間をTn0とすると、連続処理設備20に送り出されることで中間ルーパ16の金属板6は、Tn0×V0減少する。従って、nパス目の初めの有効蓄積長R(n−1)は、条件Dを満たす必要がある。
(条件D) R(n―1)≧V0×Tn0
その他、このラインの稼動に必要な条件や、速さの算出条件については、実施の形態1と同様である。
【0068】
以下に、この発明の実施の形態2の複合ラインの運転状態の一つの例を示す。図3は、この例における圧延処理のタイミングチャートであり、図3上側に、中間ルーパ16の有効蓄積長、下側に、圧延速度の時間変化をあらわしている。図4は、この例における各運転状態での時間、速度、有効蓄積長等の値を具体的に表す図である。
【0069】
図3、4を参照して、この例では、運転開始前、中間ルーパ16内の有効蓄積長は600[m]とされ、処理される金属板6の最初の長さL0は300[m]、連続処理設備20の処理速度V0は常に一定の2[m/s]で運転されるものとする。また、パス数n=3とし、即ち、1パス目に順方向の圧延を行い、2パス目に逆パス圧延、3パス目に再び順方向の圧延処理を行うものとする。簡略化のため、1パス目、2パス目、3パス目の圧延率a1〜a3は、全て0.15とする。ただし、実際には、各パスでの圧延率を異なる圧延率とすることが可能である。
【0070】
<溶接(工程ア)>
図3における溶接期間は圧延が停止され、圧延速度は0[m/s]である。溶接期間、連続処理設備20では中間ルーパ16から送り出された金属板6が一定の速度V0=2[m/s]で継続して処理される。従って、溶接期間(ア)の120[s]に中間ルーパ16内の有効蓄積長Rは240[m]減少し360[m]となる。
【0071】
<1パス目追込圧延(工程イ)>
圧延が開始されると、追込み圧延の間、圧延速度Vは速度8[m/s]に設定される。追込圧延時間T11は40[s]である。この間、中間ルーパ16には速度差6[m/s]の速さで金属板6が蓄積し、中間ルーパ16の蓄積長が最大蓄積長600[m]に達する。なお、ここでの速度V、追込み圧延時間T11は、条件Bを満たす。
【0072】
<1パス目長端同期圧延(工程ウ)>
最大蓄積長となった後、可逆式冷間圧延機12の速度は、連続処理設備20の速度と同一の速度V0=2[m/s]とされる。長端同期の期間、中間ルーパ16内の蓄積長は最大蓄積長600[m/s]で維持される。1パス目の長端同期圧延時間は、式(7)により、16.47[s]である。ここで1パス目の圧延が完了する。圧延後の金属板6の長さLは352.94[m]となる。
【0073】
<巻替(工程エ)>
1パス目圧延終了後、金属板6の尾端部6Aが巻付機204により巻取巻戻機202に巻きつけられる。この巻替時間T20は25[s]である。この間、連続処理設備20には、一定の速度2[m/s]で金属板6が送られているので、中間ルーパ16内の蓄積長R20は50[m]減少し550[m]となる。
【0074】
<2パス目逆パス圧延(工程オ)>
その後逆パス圧延が行われる。逆パス圧延の圧延速度Vは16[m/sec]であり、1パス目延長後の352.94[m]の金属板6を逆パス圧延の時間T21は、25.95[s]である。中間ルーパ16側の金属板6の速度に換算すると13.6[m/sec]である。従って、逆パス圧延の期間(オ)では、中間ルーパ16内の金属板蓄積長は、15.6[m/sec]の速さで減少する。逆パス圧延が終了したとき中間ルーパ16内の有効蓄積長R21は145.16[m]である。
【0075】
<3パス目追込圧延(工程カ)>
次に3パス目の圧延が開始される。現在の中間ルーパ16の有効蓄積長R21は145.16[m]であり、最大蓄積量600[m]に満たない。従って追込圧延を行う。ここでは圧延速度Vは30[m/s]で圧延される。中間ルーパ16には28[m/s]の速度で金属板が蓄積される。中間ルーパ16の金属板6が最大蓄積長に達するまでの時間T30は16.24[s]である。
【0076】
<3パス目長端同期圧延(工程キ)>
追込圧延後、3パス目の圧延が終了するまでの間は長端同期圧延とされる。この時間T31は、上記式(7)より、0.65[s]である。この間、中間ルーパ16の有効蓄積長は、最大蓄積長600[m]のまま維持され、3パス目の圧延が終了する。
【0077】
なお、逆パス圧延から3パス目圧延までの期間に、巻取巻戻機2に、次のコイル状金属板6を準備しておく。これにより、先行する金属板6の最終パスの圧延が終了した時点で、直ちに先行する金属板6尾端部6Aを溶接機に逆送し、次の金属板6の先端部6Bと先行する金属板6の尾端部6Aとの溶接の工程(ア)を開始できる。
【0078】
以上説明したように、実施の形態2においては、可逆式冷間圧延機12と巻取巻戻機2、巻取巻戻機202と、中間ルーパ16とを組み合わせることにより、従来の装置で必要とされた入側ルーパと出側ルーパの2つのルーパを1つに集約することができる。従って、ライン全体の更なる小型化を図ることができ、この複合ラインにより、効率的に一連の圧延処理を行うことができる。
【0079】
なお、実施の形態2においては、可逆式冷間圧延機12を1台のみ用いる場合について説明したが、この発明はこれに限るものではなく、例えば、実施の形態1のように2台の可逆式冷間圧延機12を用いるものであってもよく、また、更に、多くの可逆式冷間圧延機12を用いたものであってもよい。
【0080】
また、実施の形態2では、1パス目〜3パス目の3回の圧延を行う場合について説明した。しかし、この発明はこれに限るものではなく、作業ロール14の通過回数、即ちパス数は、所望の板厚を得るために必要な圧延率に応じて設定することができる。また、実施の形態1と同様に、圧延回数は奇数に限るものではない。
【0081】
実施の形態3.
実施の形態3は、図2のシステムと同様の構成を有している。本実施の形態3のシステムは、金属板の母材の全長が長い場合に、その全長を、複数の区画に分けて、その区画ごとに、所定パス数の圧延処理と連続処理設備20による処理との一連の連続処理を行うものである。
【0082】
この分割した圧延処理では、基本的には、実施の形態2の処理と同様に一連の処理が行われるが、以下の2点においてのみ、処理が異なることとなる。
(1)1本の金属板6の、最後の1区画の圧延処理を除き、逆パス圧延の前の巻き替えの処理が不要となる。
(2)1本の金属板6の最初の1区画の圧延開始前を除き、溶接が不要となる。
【0083】
図5は、この発明の実施の形態3の複合ラインによる、具体的な圧延処理のタイミングチャートであり、図5上側に、中間ルーパ16の有効蓄積長、下側に、圧延速度の時間変化を表している。
【0084】
図5の例は、投入される金属板6の最初の母材長さを700[m]とし、これを2等分して、1区画350[m]ごとに分割圧延を行なうものである。ここで1つの区画に対する圧延処理のパス数は、3パスとする。ただし、以下、本実施の形態3では、便宜的に、上記(1)〜(8)式及び、条件A〜条件Dに用いられるnを連番、即ち、金属板6の1本目の前半区画の最初のパスから前半の3パス目終了までの最初の3パスをn=1、2、3、とし、続く1本目の後半区画の3パスをn=4、5、6とし、続く2本目の前半区画の3パスをn=7、8、9と表記するものとする。各パスでの圧延率は、すべて0.15とする。また、図6〜図8は、この図5の例の圧延処理の各運転状態における数値を表す図であり、図6は1本目前半の区画、図7は1本目後半の区画、図8は2本目前半の区画に関するものである。
【0085】
<溶接>
図5及び図6を参照して、に示されるように、1本目の圧延が開始すると120[s]の溶接が行われる。上記(1)式により、溶接期間中に中間ルーパ16内の有効蓄積長は、240[m]減少し、360[m]となる。
【0086】
<1本目前半 1パス目>
次に、1本目前半の1パス目追込期間となる。式(6)のTn1を代入して条件Bを満たすことを考慮すると、追込圧延の圧延速度Vは、4.79[m/s]以上とする必要があり、ここでは6[m/s]に設定する。圧延時間は、上記式(5)より60[s]である。追込圧延後、中間ルーパ16内の金属板6の長さは最大蓄積長Rmaxに達する。
【0087】
中間ルーパ16内の金属板6の長さが最大蓄積長に達した後、圧延速度は連続処理設備20への搬送速度と同じ速度2[m/s]に維持される。この長端同期圧延の時間T12は、上記式(7)より25.88[s]である。
【0088】
1パス目圧延で処理される金属板6の長さLは全長の1/2の350[m]である。圧延率は0.15であるから、式(2)より1パス目圧延後の圧延後長Lは411.76[m]である。
【0089】
<1本目前半 2パス目>
1パス目圧延終了後は、巻き替えなく直ちに逆パス圧延が開始される。逆パス圧延後の圧延後長Lは484.43[m]となる。式(8)のTn1を代入して条件Cを満たすことを考慮すると、圧延速度は、5.14[m/s]以上とする必要がある。ここでは、圧延速度は6[m/s]である。上記式(8)より、逆パス圧延時間Tは80.74[S]となる。
【0090】
逆パス圧延の期間、連続処理設備20へは一定速度2[m/s]で金属板6が搬送させる。従って、この期間の中間ルーパ16内の金属板は7.1[m/s]の速度で減少する。従って、逆パス圧延終了後、中間ルーパ16内の金属板6は、573.24[m]減少し、有効蓄積長は26.76[m]となる。
【0091】
<1本目前半 3パス目>
3パス目追込圧延では、圧延速度Vは8[m/s]とされる。この速度で、有効蓄積長が最大蓄積長となるまでの追込圧延時間を式(5)に従って算出した場合、95.54[s]となるが、この追込時間では、条件Bが満たされない。従って、追込時間は、式(6)に従って、T=71.24[s]とされる。3パス目は長端同期状態にされることなく終了する。3パス目終了後、中間ルーパ16の有効蓄積長は、454.20[m]となる。
【0092】
<1本目後半 1パス目>
続く処理を、図5及び図7を参照して説明する。後半の区画の圧延では、溶接作業が不要であるため、ロールギャップを圧延率aとなるように設定し直ちに追込圧延に入る。ここでの圧延速度Vは6[m/s]とされる。式(5)より圧延時間は36.45[s]であり、この圧延により有効蓄積長は最大蓄積長に達する。その後、長端同期に切り替えられる。長端同期圧延の時間T42は、式(8)より、96.53[S]である。この間、中間ルーパ16内の有効蓄積長は最大蓄積長に維持される。
【0093】
<1本目後半 2パス目>
後半の圧延処理では、逆パス圧延の際に巻き替えが必要となる。巻き替え時間T50は25[s]であり、この間に、有効蓄積長は550[m]となる。巻き替え後、逆パス圧延が行われる。逆パス圧延の速度Vは8[m/s]である。逆パス圧延の圧延後長Lは484.43[m/s]であり、逆パス圧延に要する時間T51は、60.55[s]である。この間、8.8[m/s]の速さで中間ルーパ16の金属板6が減少するため、中間ルーパ16内の有効蓄積長は17.13[m]となる。
【0094】
<1本目後半 3パス目>
3パス目追込圧延では、圧延速度Vは8[m/s]とされる。この速度で、有効蓄積長が最大蓄積長となるまでの追込圧延時間を式(5)に従って算出した場合、97.14[s]となるが、この追込時間では条件Bが満たされない。従って、追込時間は、式(6)により、T=71.24[s]とされる。3パス目は長端同期状態にされることなく終了する。3パス目終了後、中間ルーパ16の有効蓄積長は、444.57[m]となる。
【0095】
<2本目前半 1パス目>
続く処理を、図5及び図8を用いて説明する。2本目の金属板6が供給されると、最初の区画では溶接作業が必要とされる。溶接に要する時間T70は120[s]である。中間ルーパ16の有効蓄積長は、240[m]減少し204.57[m]となる。
【0096】
次に、追込圧延が行われる。圧延速度Vは6[m/s]とされる。この速度で有効蓄積長が最大蓄積長となるまでの追込圧延時間を式(5)に従って算出した場合、条件Bが満たされない。従って、追込時間は、式(6)により、T71=68.63[s]とされる。従って、長端同期状態に切り替えられることなく、1パス目の圧延は終了する。1パス目終了後、中間ルーパ16の有効蓄積長は、479.08[m]となる。
【0097】
<2本目前半 2パス目>
1パス目圧延終了後、前半区画の処理では、巻き替えなく直ちに逆パス圧延が開始される。逆パス圧延後の圧延後長Lは484.43[m]である。逆パス圧延の圧延速度は15[m/s]とされ、上記式(8)より、逆パス圧延時間Tは32.30[s]である。
【0098】
逆パス圧延の期間、連続処理設備20へは一定速度2[m/s]で金属板6が搬送される。従って、この期間の中間ルーパ16内の金属板6は14.75[m/s]の速度で減少する。逆パス圧延終了後、中間ルーパ16内の有効蓄積長は、2.72[m]となる。
【0099】
<2本目前半 3パス目>
3パス目追込圧延では、圧延速度Vは8[m/s]とされる。この速度で、有効蓄積長が最大蓄積長となるまでの追込圧延時間を式(5)に従って算出した場合、条件Bが満たされない。従って、追込時間は、式(6)に従って、T=71.24[s]とされる。3パス目は長端同期状態にされることなく終了する。3パス目終了後、中間ルーパ16の有効蓄積長は、430.16[m]となる。以後、1本目後半と同様の圧延処理が行われる。
【0100】
以上のように、1本の金属板6を複数の区画に分けて処理することにより、母材長の長い金属板6についても、本実施の形態3の複合ラインにより、処理設備20を停止させたり、処理速度を低下させたりすることなく連続して処理することができる。
【0101】
なお、実施の形態3では、金属板6を2つに等分して処理する場合について説明した。しかし、この発明においてはこれに限るものではなく、2つ以上の複数の区画に分けて行うものであればよい。また、各区画の長さが互いに異なるものであってもよい。
【0102】
実施の形態4.
図9は、この発明の実施の形態4の複合ラインについて説明するための図である。図9の複合ラインは、予測器402、制限制御装置404を備える点を除き、図2の複合ラインと同じものである。
【0103】
本実施の形態4の複合ラインにおいて、予測器402は、1パス目、2パス目の圧延後の金属板の長さL、Lを、上記式(2)に基づいて予測する機能を有している。更に、予測器402は、2パス目の圧延で中間ルーパ16から送り出される金属板6の全長を次式(9)に基づき予測する。
予測長=L+(L/V)×V0 ・・・・(9)
【0104】
制限制御装置404は、予測器402で予測された予測長が、中間ルーパ16で蓄積できる最大蓄積長の長さより短くなるように、1パス目圧延前に、1回の処理で処理する金属板6の区画長を換算する。制限制御装置404は、1パス目に送り出される金属板6の区画長が、換算された区画長に到達したところで、巻取巻戻機2を制限停止させる。
【0105】
巻取巻戻機2が制限停止された場合、逆パス圧延で巻取巻戻機2により金属板6を巻き取る。更に、1パス目圧延された部分の逆パス圧延が終了すると、再び順方向に戻し、3パス目の圧延が開始される。
【0106】
以上説明したように、実施の形態4では、中間ルーパ16の最大蓄積長を越えないように、自動的に金属板6の1回の処理区画が設定され、圧延を行なうことができる。
【0107】
なお、実施の形態4では、2台の可逆式冷間圧延機12を用いる場合について図示して説明した。しかしこの発明において可逆式冷間圧延機12はこれに限るものではなく、1台、あるいは3台以上用いるものであってもよい。
【0108】
なお、以上の実施の形態において各要素の個数、数量、量、範囲等の数に言及した場合、特に明示した場合や原理的に明らかにその数に特定される場合を除いて、その言及した数に、この発明が限定されるものではない。また、この実施の形態において説明する構造等は、特に明示した場合や明らかに原理的にそれに特定される場合を除いて、この発明に必ずしも必須のものではない。
【符号の説明】
【0109】
2、4 巻取巻戻機
6 金属板
10 溶接機
12 可逆式冷間圧延機
14 作業ロール
16 中間ルーパ
20 連続処理設備
28 巻取機
202 巻取巻戻機
204 巻付機
402 予測器
404 制限制御装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
圧延加工に供される金属板を、巻き取り、巻き戻す巻取巻戻機と、
前記巻取巻戻機の下流に設置され、前記巻取巻戻機から新たに供給された金属板を、先に供給された金属板に溶接する溶接機と、
前記溶接機の下流に設置され、通過する金属板を圧延する可逆式冷間圧延機と、
前記可逆式冷間圧延機の下流に設定され、金属板を蓄積する中間ルーパと、
前記中間ルーパの下流側に配置され、前記中間ルーパを通過した金属板に、所定の処理を施す連続処理設備と、を備え、
前記可逆式冷間圧延機は、金属板の通過方向を、上流から下流への順方向又は、前記順方向とは反対の逆方向に切り替えできる機構を備え、
前記中間ルーパは、前記中間ルーパ内に蓄積される金属板の長さを変更できる機構を備え、
前記中間ルーパ内に蓄積された金属板は、前記可逆式冷間圧延機及び/又は前記連続処理設備側に送り出されることを特徴とする複合ライン。
【請求項2】
前記可逆式冷間圧延機と前記溶接機との間に設置され、金属板を巻き取り巻き戻すことができる巻取巻戻機を、更に、備え、
前記可逆式冷間圧延機内の金属板の通過方向に応じて、前記金属板は前記巻取巻戻機により巻き取り巻き戻されることを特徴とする請求項1に記載の複合ライン。
【請求項3】
前記可逆式冷間圧延機により行われる金属板の圧延処理は、少なくとも、
前記順方向に圧延を行う第1圧延と、
前記第1圧延の後、前記逆方向に圧延を行う第2圧延と、
前記第2圧延の後、再び、前記順方向に圧延を行う第3圧延と、を含み、
前記第2圧延において、前記中間ルーパから前記可逆式冷間圧延機に送られる金属板の長さと、前記中間ルーパから前記連続処理設備に送られる金属板の長さとの合計長を予測する予測器と、
前記合計長が、前記第2圧延前に中間ルーパに蓄積されている金属板の長さを超えない範囲となるように、1回の前記圧延処理によって処理される金属板の最大長を設定し、前記第1圧延で処理される金属板の長さを、前記最大長に制限する制限制御装置と、
を、更に備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の複合ライン。
【請求項4】
請求項1から3のいずれかに記載の複合ラインを制御する複合ラインの制御方法であって、
前記可逆式冷間圧延機における金属板の圧延処理の工程は、少なくとも、
前記順方向に圧延を行う、第1圧延工程と、
前記第1圧延工程の後、前記逆方向に圧延を行う第2圧延工程と、
前記第2圧延工程の後、再び、前記順方向に圧延を行う第3圧延工程と、
を備えることを特徴とする複合ラインの制御方法。
【請求項5】
前記第2圧延工程に要する圧延時間中に、前記中間ルーパから前記可逆式冷間圧延機に送られる金属板の長さと、前記中間ルーパから前記連続処理設備に送られる金属板の長さとの合計長が、前記第2圧延工程直前の前記中間ルーパ内の金属板の蓄積長を超えないように、前記圧延処理を行うことを特徴とする請求項4記載の複合ラインの制御方法。
【請求項6】
前記金属板を複数の区画に分割し、1つの区画ごとに、前記圧延処理を行うことを特徴とする請求項4又は5に記載の複合ラインの制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−171010(P2012−171010A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−38572(P2011−38572)
【出願日】平成23年2月24日(2011.2.24)
【出願人】(501137636)東芝三菱電機産業システム株式会社 (904)
【Fターム(参考)】