説明

複合体並びに複合体の製造方法および使用方法

ウレタン基を有する、アクリレートまたはオレフィンなどからの有機高分子、および無機高分子の相互侵入網目構造を含む複合体であって、低収縮または無収縮特徴を有する複合体、および複合体の製造方法がここに定義されている。

【発明の詳細な説明】
【優先権の主張】
【0001】
本出願は、2009年3月12日に出願された欧州特許出願第09305230.6号の恩恵を主張するものである。
【技術分野】
【0002】
本開示は、広く、有機高分子と無機高分子を含む非収縮性複合体およびその複合体の製造方法と使用方法に関する。
【背景技術】
【0003】
ここに述べられた公報、特許、および特許書類の全ての開示がここに引用される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0004】
本開示は、例えば、収縮性が非常に低いかまたはない相互侵入有機−無機高分子網目構造からなるナノ複合体、およびそのナノ複合体を製造する方法と使用する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【図1】本開示の実施の形態における、ゾルゲル無機高分子網目構造、および架橋した相互侵入有機高分子網目構造からなるナノ複合体の説明図
【図2】開示の実施の形態における、図1の、必要に応じて架橋を有する、ゾルゲル無機高分子網目構造、および相互侵入有機高分子網目構造からなるナノ複合体を生じる化学反応の説明図
【発明を実施するための形態】
【0006】
本開示の様々な実施の形態を、もしあれば図面を参照して、詳細に説明する。様々な実施の形態の参照は本発明の範囲を制限するものではなく、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲によってしか制限されない。その上、本明細書に述べられたどの実施例も、制限するものではなく、特許請求の範囲に記載された本発明の多くの可能な実施の形態のいくつかを単に述べている。
【0007】
定義
「AED」は、エネルギー分散分析を称する。
【0008】
「d」は、密度を称する。
【0009】
「TGA」は、熱重量分析を称する。
【0010】
「TMA」は、熱機械分析を称する。
【0011】
「DTA」は、動的熱分析を称する。
【0012】
「CTE」は、熱膨張係数を称する。
【0013】
「SEM」は、走査型電子顕微鏡を称する。
【0014】
「ゾルゲルポリマー複合体」は、相互侵入する有機高分子と無機高分子の網目構造からなり、本開示にしたがって調製されたナノ複合材料を称する。
【0015】
「金属酸化物」、「金属酸化物源」などの用語は、無機マトリクスを生じ得、さらに複合体組成物の高分子有機部分と結合できる、任意の出発材料または任意の中間生成物を称する。
【0016】
「炭化水素」、「ヒドロカルビル」、「ヒドロカルビレン」、「カルビルオキシ」などの用語は、−R1またはR3などの一価の部分、もしくは二価の−R2−部分を称し、例えば、アルキル炭化水素、芳香族またはアリール炭化水素、アルキル置換アリール炭化水素、アルコキシ置換アリール炭化水素、ヘテロアルキル炭化水素、ヘテロ芳香族またはヘテロアリール炭化水素、アルキル置換ヘテロアリール炭化水素、アルコキシ置換ヘテロアリール炭化水素、および同様の炭化水素部分、並びにここに示されたものなどを含む。
【0017】
「オキシヒドロカルビレン」、「オキシヒドロカルビル」などの用語は、例えば、式−CHR4−CHR4−(O−CHR4−CHR4z−の二価の酸素添加されたヒドロカルビレン部分を称し、ここで、zは、1から10までの整数であり得、R4は、H、もしくは分岐または未分岐、置換または未置換の(C1-8)アルキルであり得る。そのようなオキシヒドロカルビレン部分は、例えば、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリプロピレングリコール(PPG)などのオリゴマーまたはポリマーアルキレンオキシド、または同様のオキシヒドロカルビレンであり得る。多数の適切なオキシヒドロカルビレン化合物が、シグマ・アルドリッチ(Sigma-Aldrich)社などから市販されている。
【0018】
「ウレタン源」、「重合性ウレタン源」などの用語は、イソシアネート基または同様の化合物を有するフリーラジカル重合性モノマーなどの任意の出発材料、またはウレタン基を有する高分子有機マトリクスを生成でき、さらに複合体組成物における無機マトリクスの少なくとも一部分と結合できる任意の中間生成物を称する。
【0019】
「アルキル」は、直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、およびシクロアルキルを含む。
【0020】
「置換アルキル」または「必要に応じて置換されたアルキル」は、例えば、ヒドロキシ(−OH)、ハロゲン、アミノ(−NH2)、ニトロ(−NO2)、アルキル、アシル(−C(=O)R)、アルキルスルホニル(−S(=O)2R)またはアルコキシ(−OR)から選択される1から4の随意的置換基を有する、直鎖アルキル、分岐鎖アルキル、およびシクロアルキルを含むアルキル置換基を称する。例えば、アルコキシ置換アルキルは、式−CH2−CH2−O−CH3の2−メトキシ置換エチル、式−CH2(NH2)−CH3の1−ジアルキルアミノ置換エチル、および同様の置換アルキル置換基であり得る。
【0021】
「アリール」は、少なくとも1つの環が芳香族である、約9から12の環形成原子を有する一価または二価のフェニルラジカルまたはオルト縮合二環炭素環ラジカルを含む。アリール(Ar)は、1から5の置換基、例えば、アルキル、アルコキシ、ハロ、および同様の置換基を有するフェニルラジカルなどの置換アリールを含み得る。
【0022】
「Het」は、オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、および窒素からなる群より選択される1,2,3または4のヘテロ原子を有する、四(4)、五(5)、六(6)または七(7)員の飽和または不飽和複素環式環を含み、その環は必要に応じてベンゼン環に縮合されている。Hetは、炭素と、1,2,3または4のヘテロ原子とからなる5または6の環形成原子を含有する単環式芳香族環の環形成炭素により結合したラジカルを包含する「ヘテロアリール」も含み、ヘテロ原子の各々は、非過酸化物オキシ、チオ、およびN(X)からなる群より選択され、Xは、存在しないか、またはH、O、(C1-4)アルキル、フェニル、またはベンジル、並びにそれから由来する約8から10の環形成原子のオルト縮合二環複素環のラジカル、特にベンズ誘導体またはそこにプロピレン、トリメチレン、またはテトラメチレンジラジカルを縮合させることにより誘導されたものである。
【0023】
ある実施の形態において、ハロまたはハロゲン化物は、フルオロ、クロロ、ブロモ、またはヨードを含む。アルキル、アルコキシなどは、直鎖基と分岐鎖基の両方を含む。しかし、「プロピル」などの個々のラジカルへの言及は、直鎖ラジカルのみを包含し、「イソプロピル」などの分岐鎖異性体は具体的に参照される。
【0024】
様々な炭化水素含有(すなわち、ヒドロカルビル)部分の炭素原子含有量は、代わりに、その部分中の炭素原子の下限数と上限数を示す接頭番号により示して差し支えない。すなわち、接頭番号Ci-jは、整数「i」から整数「j」までの炭素原子の部分を示す。それゆえ、例えば、(C1−C7)アルキルまたはC1-7アルキルは、1から7までの炭素原子を有するアルキルを称し、(C1−C8)アルコキシまたはC1-8アルコキシなどのヒドロカルビルオキシは、1から8までの炭素原子を有するアルコキシを称する。
【0025】
詳しくは、C1-7アルキルは、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、3−ペンチル、ヘキシル、またはヘプチルであり得;(C3-12)シクロアルキルは、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、二環式、三環式、または多環式置換基であり得る。
【0026】
1-8アルコキシは、メトキシ、エトキシ、プロポキシ、イソプロポキシ、ブトキシ、イソブトキシ、sec−ブトキシ、ペントキシ、3−ペントキシ、ヘキシルオキシ、1−メチルヘキシルオキシ、ヘプチルオキシ、オクチルオキシ、および同様の置換基であり得る。
【0027】
アリール(Ar)は、フェニル、ナフチル、アントラセニル、フェナントレニル、フルオレニル、テトラヒドロナフチル、またはインダニルであり得る。Hetは、ピロリジニル、ピペリジニル、モルホリニル、チオモルホリニル、またはヘテロアリールであり得る。ヘテロアリールは、フリル、イミダゾリニル、トリアゾリル、トリアジニル、オキサゾイル、イソキサゾイル、チアゾリル、イソチアゾリル、ピラゾリル、ピロリル、ピラジニル、テトラゾリル、ピリジル(またはそのN−酸化物)、チエニル、ピリミジニル(またはそのN−酸化物)、インドリル、イソキノリル(またはそのN−酸化物)、またはキノリル(またはそのN−酸化物)であり得る。
【0028】
Hetの特定の値としては、1,2,3または4のヘテロ原子、例えば、非過酸化物オキシ、チオ、スルフィニル、スルホニル、および窒素を含有する五(5)、六(6)または七(7)員の飽和または不飽和環;並びにそれから由来の約8から12の環形成原子のオルト縮合二環式複素環のラジカル、特に、ベンズ誘導体またはそこにプロピレン、トリメチレン、テトラメチレンまたは別の単環式Hetジラジカルを縮合させることにより誘導されたものが挙げられる。
【0029】
ここに開示され示されるような、様々な出発材料または中間体から、本開示の化合物、オリゴマー、ポリマー、複合体または同様の生成物および物品の形成および改変に適した他の条件は公知である。例えば、thndおよびndを参照のこと。ここに記載された調製方法に使用される出発材料は、例えば、市販されている、科学文献に報告されてきた、または当該技術分野に公知の手法を使用して、容易に入手できる出発材料から調製できる。上述したまたは代わりの調製手法の全期間または一部の期間に、必要に応じて保護基を使用することが望ましいかもしれない。そのような保護基およびそれらの導入方法と除去方法が当該技術分野において公知である。ndを参照のこと。
【0030】
「含む」または同様の用語は、以下に限られないが、排他的ではなく包括的なことを包含することを意味する。
【0031】
本開示の実施の形態を説明する際に使用される、例えば、組成物中のある成分の量、濃度、体積、プロセス温度、プロセス時間、収率、流量、圧力、および同様の値、並びにその範囲を修飾する「約」は、例えば、化合物、組成物、複合体、濃縮物または使用する配合物を製造するために使用される典型的な測定および取扱手法により;これらの手法における不慮の誤差により;方法を実施するために使用される出発材料または成分の製造、供給源、または純度における差により;および同様の検討事項により;生じ得る数量における変動を称する。「約」という用語は、特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の熟成のために異なる量、および特定の初期濃度または混合物を有する組成物または配合物の混合または処理のために異なる量も包含する。添付された特許請求の範囲は、これらの「約」量の同等物を含む。
【0032】
実施の形態における「から実質的になる」は、ゾルゲルポリマー組成物、そのハイブリッドゾルゲルポリマー組成物の製造方法または使用方法、または本開示の配合物、および物品、デバイス、または任意の装置を称し、請求項に列記された成分または工程に加え、特定の反応体、特定の添加剤または成分、特定の物質、特定の表面改質剤または条件、または同様の構造、材料、もしくは選択されたプロセス変数などの、本開示の組成物、物品、装置、まくたは製造方法と使用方法の基本的かつ新規の性質に実質的に影響を与えない他の成分または工程を含み得る。本開示の成分または工程の基本的性質に実質的に影響を与えるであろう項目、または本開示に望ましくない特徴を与えるであろう項目としては、例えば、得られるナノ複合体の、高い加熱温度または高い乾燥温度、および同様の工程への過剰な、長期の、または不要な曝露;それぞれ、不完全なアルコール分解および重合反応を生じる不十分な第1または第2の加熱;などの条件が挙げられる。
【0033】
ここに使用される単数形は、別記しない限り、少なくとも1つ、または1つ以上を意味する。
【0034】
当業者によく知られた省略形(例えば、時間または時の「h」または「hr」、グラムの「g」または「gm」、ミリリットルの「ml」、室温の「rt」、ナノメートルの「nm」、および同様の省略形)を使用してもよい。
【0035】
要素、成分、添加剤、開始剤、促進剤、および同様の特徴に関して開示された特定の値と好ましい値、およびその範囲は、説明のためだけであり、それらは、他の定義された値または定義された範囲内の他の値を排除するものではない。本開示の組成物、装置、および方法は、ここに記載された値、特定の値、より特定の値、および好ましい値の任意の値または任意の組合せを含む。
【0036】
ゾルゲルプロセスは、高温、例えば、1,400℃より高い温度でガラス形成化合物を溶融することによりSiO2などの無機酸化物ガラスを形成する従来の方法に関するような高温を必要としないガラス調製の確立された方法である。ゾルゲル方法について、反応性の加水分解された金属アルコキシドの縮合は、例えば、約25から約60℃の温度で、液相中において生じ得る。確立されたゾルゲルプロセスは、最初に金属アルコキシドが加水分解されて金属水酸化物を形成し、次いで、その水酸化物が縮合して、三次元網目構造を形成する二工程プロセスである(シリカ材料および関連する金属酸化物材料の追加の定義、説明、および方法について、例えば、を参照のこと)。
【0037】
無機−有機複合材料は、それらの成分間の相乗効果から生じ得る驚くべき性質のためにますます重要になっている。開示された材料の用途は数多くある。有機高分子と無機高分子との間の異なる組合せにより、従来の複合材料によって得られなかった性質を有する生成物が可能になる。
【0038】
これらのハイブリッド型有機−無機系の困難な態様は、2つの異なる種の間の混合の制御であり、それらの種が、最終生成物の均一性のような重要なパラメータを決定し得る。有機高分子と無機高分子の間の相互侵入網目構造(IPN)の形成は、制御問題に対する潜在的な解決策の1つである。IPNの同時合成により、巨視的に均一な材料を得ることができる。
【0039】
この準備プロセス中に遭遇する主要な問題は、高分子の異なる安定性から生じる。無機系は熱的に極めて安定であり、しばしば高温で形成されるのに対し、ほとんどの有機成分には、250℃辺りの温度の上限がある。したがって、ハイブリッド型複合体系の合成には、形成条件が、成分の各々にうまく適している計画、例えば、低温形成手法を使用する必要がある。この理由のために、より穏やかな反応が選択される。そのような複合材料の生成のための理想的な手法はゾルゲルプロセスである。このゾルゲル法により、従来のガラス製造方法の非常に高い温度には耐えられないであろう有機成分と無機成分から複合材料を製造することができる。
【0040】
ガラス調製のよく知られた方法とは異なり、ゾルゲルプロセスでは、ガラス形成化合物の高温(1,400℃超)での溶融による、SiO2などの無機酸化物ガラスを形成する従来の方法ほど高い温度が必要ない。ゾルゲル法を使用すれば、反応性加水分解金属アルコキシドの縮合が、約25℃から約60℃で液相において生じ得る。ゾルゲル手法は、一般に、金属アルコキシドが加水分解されて金属水酸化物を形成する二段階プロセスを含み、得られた金属水酸化物が縮合して、三次元(3D)網目構造を形成する。
【0041】
この加水分解には、酸性または塩基性触媒(cat.)を使用してよい。触媒のタイプ、量、またその両方を変えることによって、ゲル化時間、嵩密度と見掛け密度、乾燥の際の体積収縮に著しい効果が観察される(Brinker, et al., Sol-gel Science, San Diego, Academic Press, 1990)。
【0042】
しかしながら、異なる金属アルコキシド(Si、Alなど)のトランスアルコーリシス(エステル交換)が記載されている(Doeuff, et al., Mater. Res. Bull., Vol. 25, pg. 1519, 1990 ; Touati, et al., J. Sol-Gel Sci. Technol., Vol. 8, pg. 595, 1997 ; Brandhuber, et al., Chem. Mater., Vol. 17, pg. 4262, 2005 ; Goutille, et al., Polymer, Vol. 44, pg. 3165, 2003 ; Tangwiwat. et al., J. Non-Cryst. Solids, Vol. 351, pg. 976, 2005 ; Eo, et al., J. Mater. Res., Vol. 20 No. 2, pg. 401, 2005 ; Kang, et al., J. Mater. Res., Vol. 21 No. 5, pg. 1286, 2006 ; Matsui, et al., J. Mater. Sci., Vol. 41, pg. 2137, 2006 ; Tu, et al., J. Am. Ceram. Soc., Vol. 79, No. 2, pg. 441, 1996; Fornasieri, et al., J. Am. Chem. Soc., Vol. 127, pg. 4869, 2005 ; Trabelsi, et al., Macromolecules, Vol. 38, pg. 6068, 2005 ; Tu, et al., J. Mater. Res., Vol. 11, No. 10, pg. 2556, 1996)。室温での金属アルコキシドと様々なグリコールまたはアルコールとの反応により、例えば、数分間から数日間に及ぶ期間に亘りゲルが生成される。
【0043】
エチレングリコールおよびプロパン−1,2−ジオールに関するアルコール分解がIRおよびNMR分光法により研究されてきた(前出のDoeuff; Touati; Brandhuber; およびTangwiwatを参照のこと)。特に、金属アルコキシドのアルコキシル基とジオール基との間の交換反応が生じ、ハイブリッドゲルが得られることが示された。単純化された反応スキームは、
【化1】

【0044】
であり、ここで、ROHは液体の副生成物であり、Mは金属であり、RおよびR1は、例えば、アルキルであり、mは任意であり、nは1から6であり得る。
【0045】
水を使用せずに、金属アルコキシドから金属酸化物を調製するための手法が報告された。これらの手法の内の1つは、金属アルコキシドと金属ハロゲン化物との反応を含むいわゆる「非加水分解性ゾルゲルプロセス」により表される(Grader, et al., J. Sol-Gel Sci. Technol., Vol. 21, pg. 157, 2001)。
【0046】
ゾルゲルプロセスの全ての特有なプラスの特徴にもかかわらず、モノリス形のハイブリッド複合体の製造において、欠点に遭遇する。ゲル化されたSiO2網目構造は、一旦形成されたら、乾燥させなければならず、補助溶媒と遊離したアルコール、および存在する場合には水を除去する必要がある。これらの物体は、収縮する、亀裂が生成される、または粉々になる傾向にあるので、この必須の乾燥プロセスにより、数ミリメートルより大きい寸法を有する厚膜またはモノリスの実際的な再現性のある合成が事実上妨げられる。亀裂形成は、例えば、数週間または数ヶ月に亘る非常に遅い制御された乾燥によって、コロイドシリカ核粒子の導入により平均細孔径を増加させることによって、界面活性剤の添加によって、超臨界乾燥によって、または特別な試薬の添加によって、最小にすることができる。ゾルゲル技法の広く行き渡った用途に対する主要な障害の内の1つは、乾燥プロセスに固体無機相の異常な収縮が伴うことである。除去される揮発性物質の体積分率に対して、収縮は通常、約50〜70質量%辺りである(Novak, et al., Mater. Sci. and Eng., Vol. A162, pg. 257, 1993)。この大きさの収縮は、多くの成型用途を不可能にし、ゾルゲルモノリス複合体に高度の応力を生じ得る。ゾルゲルプロセスにより得られた固体生成物の収率は、約20から約30%までに限られる。水と補助溶媒を使用しない、金属アルコキシドの純粋な有機酸による加溶媒分解においてさえも、液体の副生成物(例えば、縮重合の副生成物としての酸エステルおよび水)が生じる。そのため、収縮は、最終的な固体生成物からアルコールを除去しなければならないエステル交換反応においてさえも、ゾルゲル技法において問題であるようである。
【0047】
無機マトリクスの収縮を最小にすることは、ゾルゲルプロセスを使用した複合体の製造において特に重要であ得る。何故ならば、収縮は、特に有機高分子がそのガラス転移温度未満にある場合、材料内に高度の応力を誘発する傾向にあるからである。
【0048】
ノヴァック(Novak)は、エトキシド基またはメトキシド基の代わりに、重合性(不飽和)アルコキシド基を有する一連のテトラアルコキシシラン誘導体を提案した(Novak, Advan. Mater., Vol. 5, No. 6, pg. 423, 1993)。これらのシロキサン誘導体の加水分解および縮合により、重合性アルコールが遊離する。適切な触媒(フリーラジカルまたはROMP)の存在下で、化学量論的量の水および補助溶媒としての対応するアルコールを使用することにより、これらの誘導体の全成分が重合される。補助溶媒と遊離したアルコールの両方が重合するので、ゲルの乾燥プロセスはずっと短く、生成物の収縮は最小になる。ノヴァックの方法の欠点には、例えば、重合性基を含有する市販されていない金属アルコキシドを合成する必要があること、および重縮合プロセスの副生成物(水)を、最終的な固体生成物を乾燥することにより除去しなければならないので、収縮作用を完全には避けられないことがある。
【0049】
第一級アルコールは、触媒のない状況でさえも、周囲温度でイソシアネート基を含有する試薬と反応して、ウレタンを形成するであろうことが知られている(Roberts, et al., “Basic principles of organic chemistry,” W. A. Benjamin, Inc., NY, Vol.1, 1964)。
【0050】
イソシアネート基を含有する試薬は、ゾルゲル技法において広く使用されてきた(Zhang, et al., J. Non-Cryst. Solids, Vol. 350, pg. 152, 2004; Grandfy, et al., J. Non-Cryst. Solids, Vol. 352, pg. 273, 2006; Liu, et al., Eur. Polymer J., Vol. 44, pg. 940, 2008; Nebioglu, et al., J. Appl. Polymer Sci., Vol. 99, pg. 115, 2006; Daimatsu, et al., J. Appl. Polymer Sci., Vol. 108, No. 1, pg. 362, 2008; Fabbri, et al., J. Appl. Polymer Sci., Vol. 108, No. 3, pg. 1426, 2008)。イソシアネート官能基を有する試薬は、シリカエーロゲル網目構造の強化のため(Zhang前出)、または高分子鎖にシリコーン巨視的単位を有する透明な均一高分子を調製するため(Grandfy;およびLiu前出)にシリカ粒子の架橋に使用できる。
【0051】
多くの高分子を含む、イシソアナートプロピルトリエトキシシラン(ICPES)などの有機官能性シランがカップリング結合剤として使用されてきた(Nebioglu, et al., J. Appl. Polymer Sci., Vol. 99, pg. 115, 2006)。そのようなシランは、通常、アルコキシ基の加水分解後に使用され、有機−無機ハイブリッド材料の有機部分との化学的相溶性を提供する。
【0052】
メタクリル酸2−イソシアナートエチルなどの、イソシアネート官能基を含有する有機モノマーが知られている(Daimatsu, et al., J. Appl. Polymer Sci., Vol. 108, No. 1, pg. 362, 2008)。これらのモノマーのアルコールとの反応は、触媒反応を行わず、副生成物を生じずに、滑らかに進行する:
【化2】

【0053】
所望の生成物は、ウレタン基またはモノマーが重合(固化)プロセスに参加できる側鎖を有するフリーラジカル重合性アクリレートモノマーである。
【0054】
イソシアネート基は、非常に反応性であり、シリカ粒子上の表面終端−Si−OH基と反応できる(Zhang; Grandfy; Liu; Nebioglu; and Daimatsu supra; and Fabbri, et al., J. Appl. Polymer Sci., Vol. 108, No. 3, pg. 1426, 2008):
【化3】

【0055】
イソシアネート基を含有するモノマーを使用すると、有機高分子と、典型的にいくつかの残留−Si−OH基を提供する無機部分(すなわち、ゾルゲルプロセスの生成物)との間に化学結合を提供できる。
【0056】
その結果、イソシアネート基を含有するモノマー、オリゴマー、またはポリマーを使用すると、ゾルゲル前駆体が、テトラエトキシ/メトキシシラン(TEOS/TMOS)またはチタンイソプロポキシド(TIPO)などの重合性有機基を有していない場合でさえも、均一な透明材料を提供できる。
【0057】
実施の形態において、本開示は、化学的に結合した有機高分子と無機高分子を含む非収縮性複合材料および物品を提供する。
【0058】
実施の形態において、本開示は、例えば、固体生成物の収率が高い(例えば、90質量%超)非収縮性有機−無機ナノ複合材料を形成するためのワンポット合成のためのゾルゲル方法を提供する。金属(M)アルコキシドが、グリコール、ポリジオール、またはアルコールの混合物中でアルコール分解され、ゲルを形成するための少なくとも1つのイソシアネート基を有する重合性モノマー、重合性オリゴマー、またはその両方とその後反応すると同時に、ゾルゲルプロセスの副生成物(例えば、第一級アルコール)の少なくとも1つのイソシアネート基を含有する前記反応体と相互作用し、生成物のその後の重合が行われる、有機−無機ナノ複合材料、およびその製造方法が提供される。
【0059】
実施の形態において、本開示は、無機高分子鎖および有機高分子鎖の網目構造を有する、有機−無機ナノ複合材料およびその固体物品を提供する。
【0060】
実施の形態において、本開示は、
金属酸化物の供給源、およびジオール、アルコール、またはジオールとアルコールとの組合せの供給源からなる無機網目構造、および
ウレタンペンダント基を有する高分子の供給源、および高分子架橋剤からなる有機網目構造、
からなる相互侵入網目構造を含む複合体を提供する。
【0061】
実施の形態において、本開示は、ここに開示された調製プロセスのいずれかにより調製された複合体を提供する。
【0062】
実施の形態において、本開示は、両方の相が互いに共有結合した、無機マトリクス中に埋め込まれた有機コポリマーを有する非収縮性材料を製造する方法を提供する。
【0063】
出発反応体は、得られる生成物が、液体の有機モノマーの重合中の高分子相の体積の縮小による軽微な収縮(約10体積%未満)を除いて、乾燥工程を含む全プロセス中に収縮しないように選択できる。
【0064】
実施の形態において、本開示は、
以下の反応体の溶液または混合物:
テトラメトキシシラン(TMOS)、テトラエトキシシラン(TEOS)、メタクリル酸3−(トリメトキシシリル)プロピル(TMSPM)、チタンエトキシド(TEO)、チタンイソプロポキシド(TIPO)、アルミニウムトリエトキシド(ATO)、アルミニウムイソプロポキシド(AIPO)、ジルコニウムエトキシド(ZEO)、および同様の金属酸化物、またはそれらの組合せなどの、式Rx−M(OR’)4-xの金属アルコキシドであって、ここで、Mは、Si、Ti、AlまたはZrもしくは、同様の金属およびそれらの組合せであり、Rは、存在する場合、有機ラジカルであり、OR’は、加水分解性低分子量アルコキシ基であり、xは1から4である;
例えば、エチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、またはメタクリル酸/アクリル酸2−ヒドロキシエチル、ポリエチレングリコール(PEG)またはプロピレングリコール(PPG)などのポリジオール(金属アルコキシドとグリコールまたはアルコール成分とのモル比は、例えば、約1:1から約1:2までであり得、これは、金属アルコキシドのアルコール分解反応において全てのアルコール分子を完全に消費するのに十分である)であり得るグリコール、アルコール、またはそれらの混合物;
メタクリル酸2−イソシアナートエチル(ICEM)、3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(IPBIC)、または−NCO担持脂肪族/芳香族ウレタンアクリレート(Bayer Co.)(モノマーまたはオリゴマー成分に対する金属アルコキシドのモル比は、例えば、約1:1から約1:2.5までであり得、これは、金属アルコキシドのアルコール分解反応において全てのアルコール分子を完全に消費するのに十分である)などの、少なくとも1つのイソシアネート基を含有するモノマーまたはオリゴマー;
nが約1から約4までに及ぶ、(エチレングリコール)nジメタクリレート/ジアクリレートまたはジビニルエステル、トリメチロールプロパンエトキシレート(例えば、1EO/OH、7/3EO/OHなど)、ビスフェノールAエトキシレート(例えば、2EO/フェノール)ジアクリレートまたはジメタクリレート、ジビニルベンゼンおよび同様の架橋剤、またはそれらの組合せなどの架橋剤(不飽和モノマーに対する架橋剤のモルパーセントは、例えば、約1%から約10%までであり得る);および
アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル)、または有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル)などのフリーラジカル重合開始剤(開始剤の含有量は、例えば、モノマーに対する約0.1から約4.5質量%であり得る);
を形成する工程を含む方法を提供する。
【0065】
実施の形態において、混合物は、2工程で調製できる。最初に、金属アルコキシドおよびグリコールまたはアルコールを、加熱しながら混合して、透明な均一溶液を得る。次いで、上述した他の成分を加え、その混合物を、アルコール分解反応および重合プロセスが完了するまで加熱する。得られるナノ複合材料は、どのような液体の副生成物も含有せず、収縮しない。
【0066】
実施の形態において、本開示は、例えば、
低コストの市販の出発材料からの低コスト複合体、
生成物の形成反応における低い反応温度、およびアルコール除去のための長期の乾燥を必要としないことのために、低エネルギーコストのプロセス、
触媒のいらないプロセス、
重合性基を含まない無機部分を有する高均一複合材料が得られること、
高収率、例えば、約90質量%超の最終固体生成物が得られること、
亀裂欠陥のない最終固体生成物、
液体副生成物がないために、寸法または形状制限のない最終的な固結モノリス基体製品、および
生成物複合体をもたらす調製プロセスが、金属アルコキシドおよび選択された有機部分の異なる組合せに基づいて、構造、組成、またはその両方の幅広い範囲に亘り変えられること、
を提供することを含む利点を提供する。
【0067】
実施の形態において、本開示は、Si(OEt)4(すなわち、TEOS)、またはRがアルキルであるTi(OR)4などの金属アルコキシド、またはフリーラジカル重合性R基を有さないまたは除外した同様の金属アルコキシドを使用するプロセスを提供する。実施の形態において、本開示は、実質的にまたは完全に透明な最終生成物を提供できる。そのような透明生成物は、例えば、TEOS、または同様に金属アルコキシドが無機酸化物源すなわち前駆体成分として選択され、その金属アルコキシドが、金属アルコキシド内に有機重合性基を有さない場合に得られる。
【0068】
実施の形態において、本開示は、R、R1、またはその両方が、フリーラジカル重合性部分であり得る、R−Si(OR13またはR−Ti(OR13などの式R−M(OR13の金属アルコキシドを使用できるプロセスを提供する。実施の形態において、本開示は、R、R1、またはその両方が、フリーラジカル重合性基を除外した式R−M(OR13の金属アルコキシドを使用できるプロセスを提供する。
【0069】
理論により制限されるものではないが、高均一で透明な生成物は、−OH基に対するイソシアネート基の非常に高い反応性によるものであろう。それゆえ、例えば、TEOSがジオールと反応する場合、残基−OHを有する生成物が最初に形成される。イソシアネート基は、これらの残留−OH基と反応して、イソシアネートを金属酸化物−ジオール反応生成物と連結する化学結合を提供できる。イソシアネート基を使用することにより、カルボン酸などの特定の極性基を含まず、2008年11月26日に出願された、同一出願人による係属出願の欧州特許出願第08305847.9号明細書に開示されたゾルゲルポリマー複合体と比べてより疎水性である、本開示の複合体生成物を調製する選択肢が提供される。
【0070】
本開示の実施の形態において、ゾルゲル調製プロセスにおける乾燥および収縮作用の問題は、追加の溶媒を必要としない反応体であって、任意の液体副生成物を消費するかまたは最終生成物中に含み得る中間生成物を生成する反応体を選択することによって、解決することができる。
【0071】
意外なことに、低収縮または非収縮のゾルゲルポリマーナノ複合体を調製するための効率の高いプロセスを発見した。
【0072】
ある実施の形態において、本開示は、有機高分子の相互侵入網目構造を有する無機金属酸化物マトリクスからなる低収縮または完全に非収縮の材料を製造するための方法および組成物を提供する。ある実施の形態において、本開示は、高い固体生成物の収率、例えば、約90%超の収率を有する非収縮性有機−無機ナノ複合体材料を含むゾルゲルポリマー材料を形成するためのワンポットゾルゲル方法を提供する。出発材料、中間体、有機−無機ナノ複合体生成物、およびナノ複合体を製造する方法が開示されている。ナノ複合体を製造する方法は、一般に以下の工程を含む。金属アルコキシドは、グリコール(ジオール)、アルコール、またはその両方の混合物中でアルコール分解されて、透明溶液が形成される。次に、この混合物に不飽和イソシアネート(すなわち、ウレタン供給源)が加えられて、イソシアネート基を有する高分子が形成され、この基は、さらに反応してウレタン生成物を形成することができる。得られた有機−無機ナノ複合材料は、不飽和イソシアネート化合物から形成されたアクリレートポリマーなどの、その場で重合されたモノマーの相互貫入鎖を有する無機酸化物の網目構造を含む。
【0073】
出発反応体の例としては、Mが、例えば、Si,Al,Ti,Zn、および同様の金属、またはその混合物である金属(M)アルコキシド、およびエチレングリコール、プロパン−1,2−ジオール、および同様のグリコールまたはポリグリコール(ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、および同様のポリグリコールなどの)などのグリコール、およびイソシアネート基を有するメタクリル酸エステルなどの不飽和イソシアネート、ジビニルベンゼンまたはモノジエチレングリコールのジアクリル酸エステル、ジメタクリル酸エステル、または同様のエステルなどの架橋剤、およびAIBN、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミルなどのフリーラジカル重合開始剤または重合剤、および同様の開始剤、または化学線が挙げられる。
【0074】
金属アルコキシドのアルコール分解または解糖により、無機網目構造の前駆体である金属水酸化物が提供される。金属アルコキシドのアルコール分解または解糖のアルコール副生成物が不飽和イソシアネートと反応して、不飽和ウレタンが形成され、これが架橋剤の存在下で重合し、架橋する。この架橋剤は、例えば、添加された不飽和イソシアネートの質量に基づいて、約0.001から約5質量%の量で存在し得る。
【0075】
2つの反応プロセスの同時操作、すなわち、アルコール分解副生成物の関与と有機高分子マニホルドへの転化を有する、フリーラジカル重合マニホルド、およびアルコール分解マニホルドによるゾルゲル形成により、架橋して相互貫入した高分子鎖の網目構造により分子レベルで緊密に編み込まれた固体無機網目構造が提供される。
【0076】
生成物は、実質的な液体副生成物がないために寸法または形態の制限なく、固結したモノリス基体として形成できる。
【0077】
ナノ複合材料の構造および組成は、多くの異なる金属アルコキシドおよび多くの異なる有機モノマーをそのプロセスに使用するために選択できるので、幅広い範囲で容易に変えることができる。
【0078】
ある実施の形態において、本開示は、有機−無機ナノ複合体を製造するための無溶媒方法であって、例えば、
ここに定義された式Rx−M(OR14-x、または式Rx−M(OR1m-xの金属アルコキシド、および式HO−R2−OHのジオールからなる混合物を反応させて、無機金属酸化物マトリクスおよび液体のアルコール副生成物からなる中間体反応生成物を形成する工程、および、
得られた反応混合物に、イソシアネート基を有するフリーラジカル重合性モノマーまたはそのオリゴマーなどの重合性ウレタン供給源を添加して、ウレタン基を有するモノマーまたはオリゴマーを形成し、得られたモノマーまたはオリゴマーウレタンがフリーラジカル様式で、ウレタン基を有する高分子に重合し、この高分子は、金属酸化物ゾルゲルマトリクスと組み合わさって、無機成分と有機成分の相互侵入網目構造を有するナノ複合体からなる最終生成物を形成する工程、
を有してなる方法を提供する。
【0079】
金属酸化物マトリクスの形成において生成されるアルコールの消費は、最初に添加したアルコールまたはグリコール、または遊離アルコキシドを、例えば、不飽和イソシアネートなどのウレタン形成成分と反応させることを含む。
【0080】
ここに定義された式Rx−M(OR1m-xの金属アルコキシド、および式HO−R2−OHのジオールの反応により形成された無機金属酸化物マトリクスは、金属アルコキシドをジオールでアルコール分解(すなわち、解糖)して、式:
【化4】

【0081】
の無機酸化物マトリクスを形成する工程を含み、ここで、Mは金属であり、pは、少なくとも、例えば、約2以上の反復単位の数である。ある実施の形態において、反復単位の数pは、例えば、数百から数千またはそれ以上であり得る。実施の形態において、式Rx−M(OR1m-xの金属アルコキシドは、Rxがメタクリル酸プロピルであり、OR1がメトキシである、メタクリル酸3−(トリメトキシシリルプロピル)(TMSPM)であり得る。
【0082】
金属アルコキシド、および式HO−R3のアルコールの反応混合物から得られる無機金属酸化物マトリクスは、金属アルコキシドのアルコール分解を行って、式:
【化5】

【0083】
の無機酸化物マトリクスを形成することを含み、ここで、Mは金属であり、qは2から約5,000までであり得る。
【0084】
ある実施の形態において、本開示は、複合体を製造する方法であって、
第1の混合物の、穏やかな加熱などによる、第1の加熱であって、第1の混合物が、
i) 式Rx−M(OR1m-xの金属アルコキシド、ここで、
Mは、Si,Ti,Ta,Sn,Al,Zr,Hf,またはそれらの組合せであり、
Rは、存在する場合、1から約10の炭素原子を有するヒドロカルビル基、例えば、アルキル、−アルコキシ、−アクリル、−メタクリル、−アルケン、−シクロアルキル、−ヘテロ環式、−アリール、−ヘテロアリール、−アルキレン−シクロアルキル、−シクロアルキレン−アルキル、−アルキレン−アリール、−アルキレン−ヘテロアリール、−アリーレン−アルキル、ヘテロアリーレン−アルキル、アルキレン−アクリル、−アルキレン−メタクリル、またはそれらの混合物であり、
OR1は、それぞれ独立して、1から約10の炭素原子を有する、アルコキシ基としても知られている、アルコール分解性ヒドロカルビルオキシ基であり、
xは、0から5であり、
mは、1から5である;および、
ii) 式HO−R2−OHのジオール、または式HO−R3のアルコール、ここで、
2は、1から約10の炭素原子を有する、アルキル基としても知られている二価の置換または未置換ヒドロカルビレン基、または複数のアルコキシル基、ウレタン基、炭酸基、またはそれらの組合せを含む少なくとも1つの鎖を有するオリゴマー基または高分子基、例えば、ポリアルキレングリコールなどのポリエーテルである、
3は、3から約18の炭素原子を有するヒドロカルビレン基である、
または
iii) 式HO−R2−OHのジオール、および式HO−R3のアルコールの混合物;
を含むものである第1の混合物の第1の加熱;および
少なくとも1つのイソシアネートを有するモノマーまたは少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性オリゴマー、架橋剤、およびフリーラジカル開始剤を、得られた加熱された第1の混合物と組み合わせ、第2の加熱を行って、複合体を形成する工程、
を含む方法を提供する。
【0085】
第1の加熱は、例えば、約0.5から約5時間に亘り、約50℃から約150℃での加熱により、行っても差し支えない。
【0086】
第2の加熱は、例えば、約20から約100時間の期間に亘り、約45から約150℃の、勾配または1つ以上の工程などにおいて、上昇する温度での加熱により行っても差し支えない。
【0087】
金属アルコキシドは、メタクリル酸3−(トリアルコキシシリルプロピル)、アクリル酸3−(トリアルコキシシリルプロピル)、トリアルコキシビニルシラン、スチリルエチルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、チタンアルコキシド、アルミニウムトリアルコキシド、スズtert−アルコキシド、ハフニウムアルコキシド、タンタルアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、またはそれらの組合せ、例えば、メタクリル酸3−(トリメトキシシリルプロピル)(TMSPM)、テトラエトキシシラン(TEOS)、トリエトキシビニルシラン(TEVS)、スチリルエチルトリメトキシシラン(SEMS)、テトラメトキシシラン(TMOS)、チタンエトキシド(TEO)、チタンイソプロポキシド(TIP)、アルミニウムトリエトキシド(ATO)、アルミニウムトリブトキシド(ATB)、スズtert−ブトキシド(TTB)、ハフニウムブトキシド(HAB)、タンタルエトキシド(TAE)、アルミニウムイソプロポキシド(AIPO)、ジルコニウムエトキシド(ZEO)、ジルコニウムプロポキシド(ZIP)、および同様の金属アルコキシド、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含み得る。
【0088】
ジオールは、例えば、エチレングリコール、1,2−プレピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレングリコール)、ビスフェノール、エトキシル化フェノールなどのアルコキシル化フェノール、ポリカーボネート、アルコキシル化ビスフェノールジオール、ポリウレタンジオール、ポリカーボネートジオール、および同様のジオール化合物、またはそれらの組合せ、などのアルキレングリコール、プロピレングリコール、ポリ(アルキレングリコール)、ポリウレタンジオール、ポリカーボネート、ビスフェノール、アルコキシル化ビスフェノールジオール、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つであり得る。
【0089】
アルコールは、例えば、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、またはそれらの組合せなどのフリーラジカル反応性ヒドロキシ含有アクリレートモノマーの内の少なくとも1つであり得る。
【0090】
少なくとも1つのイソシアネートを有するモノマーまたは少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性オリゴマーは、例えば、アクリレートを含有する脂肪族イソシアネート、アクリレートを含有する芳香族イソシアネート、および同様の重合性イソシアネート、またはそれらの組合せなどの少なくとも1つのイソシアネートを有する不飽和イソシアネートモノマー、または少なくとも1つのイソシアネートを有するオリゴマー不飽和イソシアネートモノマーであり得る。不飽和イソシアネート、すなわち、イソシアネート基を有する重合性モノマーは、例えば、炭素−炭素二重結合を含む少なくとも1つの不飽和部分および少なくとも1つの−NCO基を有するイソシアネートであり得る。少なくとも1つの不飽和部分は、例えば、アクリル酸エステルなどの不飽和酸エステル、メタクリル酸エステルなどのアルキルアクリル酸エステル、クロトン酸エステル(3−メタクリル酸エステル)、イタコン酸エステル(2−メチリデンブタン二酸エステル)、R4が、例えば、H、または(C1-8)アルキル、および同様のヒドロカルビレンであり得る、部分式CR42=CR4−のアルケニルまたはヒドロカルビレニル、不飽和酸エステル、酸エステル、環状不飽和酸エステル、またはそれらの組合せであり得る。少なくとも1つのイソシアネート(−NCO)基は、調製プロセスを実施、所望の生成物を提供できる任意の適切な位置で不飽和酸エステルに結合できる。高分子生成物を製造でき、その後、ウレタン部分を有する適切な不飽和イソシアネート化合物の例が、名称と式により以下に列記されている。式:
【化6】

【0091】
のメタクリル酸2−イソシアナートエチル(ICEM);
式:
【化7】

【0092】
の3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(IPBIC);
式:
【化8】

【0093】
のイソシアネート基を有するオリゴ−ウレタンアクリレート源(例えば、Desmolux(登録商標)VPLS;Bayer Corp.)。
【0094】
不飽和イソシアネート化合物、すなわち、重合性ウレタン源としては、モノマーまたはオリゴマーイソシアネート化合物、例えば、さらにイソシアネート基を含む、アルファ,ベータ−不飽和ケトン、アルファ,ベータ−不飽和エステル、および同様のフリーラジカル重合性基またはそれの組合せなどの、エチレン性、ビニル性などのオレフィン性、および同様のフリーラジカル重合性基またはそれらの組合せが挙げられる。イソシアネート基は、出発の複合体マトリクス内でさらに反応して、最終生成物複合体においてウレタン結合を生成することができる。
【0095】
実施の形態において、金属アルコキシドおよび不飽和イソシアネートまたは重合性イソシアネート成分またはその対応する重合性分のモル比は、例えば、約1:1から約1:2までであり得、これは、金属アルコキシドのアルコール分解または解糖反応において生成された全てのアルコール分子を完全に消費するのに十分である。
【0096】
架橋剤は、例えば、nが1から4である、(エチレングリコール)n−ジメタクリレートまたは−ジアクリレートまたはジビニルエステル、トリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート(シグマ・アルドリッチ社(Sigma-Aldrich)から得られる)(例えば、1:1のEO:OH、7:3のEO:OH、および同レベルのエトキシル化を有する)、ビスフェノールAエトキシレート(例えば、2のEO/フェノール)ジアクリレートまたはジメタクリレート、およびジビニルベンゼンなどのジアルキレングリコールジアクリレート、ジアルキレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、ジビニルアリール、および同様の架橋剤、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つであり得る。不飽和モノマーの含有量に対する架橋剤の好ましいモル当量パーセントは、約0.1%から約10%までであり得る。実施の形態において、好ましい架橋剤の一群は、例えば、シグマ・アルドリッチ社から得られる、式:
【化9】

【0097】
のトリメチロールプロパンエトキシレートトリアクリレート架橋剤、例えば、トリメチロールプロパンエトキシレート(14:3=EO:OH)トリアクリレート、約912の平均Mnを有するトリメチロールプロパンエトキシレート(7:3=EO:OH)トリアクリレート、および同様の架橋剤、またはそれらの組合せであり得る。
【0098】
フリーラジカル開始剤は、例えば、アゾ化合物(例えば、アゾビスイソブチロニトリル、AIBN)、有機過酸化物(例えば、過酸化ベンゾイル、過酸化ジクミル)および同様の開始剤などの、熱重合開始剤、光重合開始剤、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つであり得る。開始剤の好ましい量は、例えば、モノマーに対して約0.1から約0.5質量%であり得、または十分な化学線、またはそれらの組合せ、および同様の重合開始剤であり得る。
【0099】
第1の加熱と第2の加熱は、例えば、溶媒または希釈剤をまったく添加せずに行って差し支えない。ある実施の形態において、この方法は、1つの容器内で、すなわち、シングルポットで行って差し支えない。
【0100】
例えば、所望の光学的性質を有する生成物を制御可能に形成することに関して、グリコールと組み合わせて金属アルコキシドとしてトリエトキシシラン(TEOS)が選択された場合、またはメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)、または両方のアクリレートと組み合わせて金属アルコキシドとしてトリエトキシシラン(TEOS)が選択された場合、不透明または半透明のモノリス生成物が得ら得る。それに加え、所望の光学的性質を有する生成物の形成について、グリコールと組み合わせて、またはメタクリル酸ヒドロキシエチル(HEMA)、アクリル酸ヒドロキシエチル(HEA)、または両方のアクリレートと組み合わせて金属アルコキシドとしてトリメトキシシリルプロピルメタクリレートが選択された場合、透明なモノリス生成物が得られる。
【0101】
ある実施の形態において、得られた有機−無機ナノ複合体は、例えば、非溶融性同質固体であって差し支えない。本開示のナノ複合体の多くは、融点で、または融点に近くで分解点を有するであろう。ある実施の形態において、得られた有機−無機ナノ複合体の収率は、例えば、約90質量%から約98質量%、またはそれより多くて差し支えない。
【0102】
ある実施の形態において、例えば、固体生成物が一定の質量を有するまで、すなわち、実質的な質量変化が無くなるまで、穏やかな加熱などの第2の加熱を行って差し支えない。第2の加熱により、収縮、亀裂形成、またはそれらの組合せのない均一な固体モノリス複合体が提供される。
【0103】
反応混合物は、約10%未満の調製プロセス中の体積縮小を有し得る。最終的な固体生成物は、例えば、約10%未満の乾燥の際の体積収縮を有し得る。
【0104】
ある実施の形態において、調製方法は、アルコール分散された金属アルコキシドを含む中間体反応混合物を有し得、少なくとも1種類の追加の重合性イソシアネートモノマーの、少なくとも1種類の追加の重合性オリゴマーイソシアネート化合物の、またはそれらの組合せの外部添加物をさらに含み得る。
【0105】
ある実施の形態において、本開示は、
金属アルコキシドおよびジオール、アルコール、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つの生成物からなる、ゾルゲル無機高分子網目構造、および
少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性モノマーまたは少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性オリゴマー、架橋剤、およびフリーラジカル開始剤の生成物からなる、架橋した有機高分子網目構造、
を含む相互貫通網目構造を有するゾルゲルポリマーナノ複合体であって、この架橋した有機高分子がゾルゲル無機高分子網目構造への少なくとも1つの共有結合を有するものであるゾルゲルポリマーナノ複合体を提供する。
【0106】
ある実施の形態において、本開示のナノ複合体は、ナノ複合体の総質量に基づいて、例えば、約10から約90質量%のゾルゲル無機高分子、および約90から約10質量%の架橋した有機高分子を含有し得る。ある実施の形態において、前記ゾルゲル無機高分子への少なくとも1つの共有結合は、例えば、ゾルゲル無機高分子への複数の結合であって差し支えない。無機高分子網目構造および有機高分子網目構造の間の共有結合の程度は、得られたナノ複合体における網目構造を物理的手段によって実質的に分離できなくするために、架橋剤および反応体の選択などによって、選択することができる。本開示の相互貫入網目構造を有するゾルゲルポリマーナノ複合体は、有機成分と無機成分との間に実質的なまた観察できる巨視的表面境界を有するとは考えられない。
【0107】
ある実施の形態において、本開示は、
金属アルコキシド、およびジオール、アルコール、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つからなる混合物を含む第1の反応、および
第1の反応の生成物と、不飽和イソシアネート、架橋剤、およびフリーラジカル開始剤からなる混合物とを含む第2の反応、
のそれぞれの生成物を組み合わせてなるゾルゲルポリマーナノ複合体を提供する。上述したプロセスにより調製されたゾルゲルポリマーナノ複合体は、所望であれば、または必要であれば、例えば、連続加熱により、真空の有無にかかわらず、固体が一定の質量または体積を有するまで、第2の反応の生成物を乾燥させることをさらに含み得る。
【0108】
ある実施の形態において、本開示の調製方法は、例えば、以下:
式Rx−M(OR14-xの金属アルコキシド、
ここで、Mは、Si,Ti,Al,Zr,またはそれらの組合せであり、
Rは、飽和または不飽和ヒドロカルビル基であり、
OR1は、約200未満の分子量を有する加水分解性ヒドロカルビルオキシ基またはアルコキシ基であり、
xは0から3である;
グリコール、アルコール、またはそれらの組合せ;
の第1の混合物を形成し、加熱し、
加熱した第1の混合物に、
重合性不飽和イソシアネート;
架橋剤;および
フリーラジカル開始剤;
を含む第2の混合物を添加して、加熱することを含み得る。
【0109】
ある実施の形態において、反応混合物は二段階で調製して差し支えない。最初に、金属アルコキシドおよびグリコールまたはアルコールを加熱しながら混合して、透明な均質溶液を得て差し支えない。次に、重合性イソシアネートモノマーを加え、その混合物を加熱して、重合反応を完了し、イソシアネート部分をウレタン部分に転化させる。
【0110】
得られた固体ナノ複合体生成物は、どのような液体副生成物も含有してない、すなわち含んでおらず、それゆえ、液体の除去または蒸発に帰因する生成物の収縮がない。
【0111】
図面を参照すると、図1は、相互接続された球体(10)としてのゾルゲル無機高分子網目構造、および相互接続された実線(20)としての架橋した有機高分子網目構造からなるナノ複合体を示している。
【実施例】
【0112】
以下の実施例は、上述した開示を使用する様式をより詳しく説明するように働き、さらにその開示の様々な態様を実施するために考えられる最良の態様を述べる働きをする。これらの実施例は、本開示の範囲を制限するものではなく、むしろ例示の目的のために提示されたものであることが理解されよう。実施例はさらに、本開示のナノ複合体をどのように調製するかを記載している。
【0113】
試験方法
A. 構造/均質性;SEM/AED サンプルを日本電子(株)のSEMにより分析し、AEDの分析は、日本電子の装置に接続したAED Noran分析装置により行った。プローブをニッケル(8mm)で金属化した。凹凸コントラストは4kVであった。
【0114】
密度 各サンプルの密度は、従来のアルキメデス法により決定した。空気中と脱イオン水中のサンプルの質量を、デジタル秤を使用して、0.0001グラムの精度で測定した。各サンプルの体積を液体変位量により測定した。最終密度は、サンプルの質量と体積から計算した。
【0115】
B. 熱的/機械的性質
TGA/DTAは、ネッチ社(Netzsch)のSTA 409C装置を使用して、複合体サンプルに行った。TGA測定の全てを、窒素パージを行って空気雰囲気下(100mL/分)で行った。サンプルを5°K/分で20℃から600℃まで加熱した。TGAシステムの精度を検証するために、ニッケルおよびperkalloy(登録商標)について二点キュリー点温度校正を行った。
【0116】
TMA 検体を平板から切断し、20℃から200℃まで5℃/分でTMA TA装置Q400(www.tainstruments.com)内で走査した。
【0117】
CTE測定 TMA法によって、熱膨張係数(CTE)を測定した。検体を平板から切断し、20℃から200℃まで5℃/分でTMA TA装置Q400内で走査したが、この方法の方向は、サンプルの表面(X−Y)に対して垂直、すなわち、Z方向に沿ってであった。CTEは、均一な等方性のために、バルクサンプル全体に関する性質と考えられた。
【0118】
無機部分の量の測定
サンプルの一部(例えば、1〜1.5g)を秤量し、空気中において約3から約4時間に亘り600℃で炉内において加熱した。無機部分の量は、加熱後の残留質量であった。
【0119】
実施例1
金属酸化物−グリコール−アクリレートウレタン複合体 ガラスアンプルの内壁を乾燥デカン中のジクロロジメチルシラン(DCDMS)で疎水化した。1.4468g(0.0088モル)のテトラエトキシシラン(TEOS)および0.7855g(0.0127モル)のエチレングリコール(EG)の混合物から、3時間に亘る150℃での加熱により、透明な溶液を調製した。次いで、アンプルに0.0090gの過酸化ベンゾイル(BP)、0.1690g(0.0007モル)のジエチレングリコールジアクリレート(DADEG)および2.630g(0.0170モル)のメタクリル酸2−イソシアナートエチル(ICEM)を加え、空気中で密封した(モル比:TEOS:EG=1:1.83;TEOS:ICEM=1:2.44)。反応混合物を周囲温度で0.5時間に亘り撹拌した後、この溶液を表1に示された実施例1のスケジュールにしたがって炉内で加熱した。
【表1】

【0120】
固体の透明生成物の収率は96.7質量%であった。サンプル表面の研磨部分のSEM/AEDにより観察は、ナノスケールの高い構造的均質性を示した。分離した粒子または異なる相コントラストは見つからなかった。しかし、AEDスペクトルは、600℃でサンプルを加熱した後にSi(SiO2粒子)の存在を示した。有機−無機ハイブリッド高分子の物理的性質を測定し、それらが表2に示されている。
【表2】

【0121】
実施例2
金属酸化物−グリコール−アルキルアリールウレタン複合体 ガラスアンプルの内壁を乾燥デカン中のジクロロジメチルシラン(DCDMS)で疎水化した。1.7896g(0.0086モル)のテトラエトキシシラン(TEOS)および0.8008g(0.0129モル)のエチレングリコール(EG)の混合物から、3時間に亘る150℃での加熱により、透明な溶液を調製した。次いで、アンプルに0.1760gの過酸化ベンゾイル(BP)、0.0342gの過酸化ジクミル(DCP)、0.0197g(0.0048モル)のジエチレングリコールジアクリレート(DADEG)および3.0288g(0.0150モル)の3−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート(IPBIC)を加え、空気中で密封した(モル比:TEOS:EG=1:1.50;TEOS:IPBIC=1:1.34)。反応混合物を周囲温度で0.5時間に亘り撹拌した後、この溶液を表1に示された実施例2のスケジュールにしたがって炉内で加熱した。固体の透明生成物の収率は96.2質量%であった。有機−無機ハイブリッド高分子の物理的性質を測定し、それらが表2に示されている。
【0122】
実施例3
金属酸化物−グリコール−ウレタンアクリレート複合体 3つのガラスアンプル(3(a),3(b),および3(c))の内壁を乾燥デカン中のジクロロジメチルシラン(DCDMS)で疎水化した。テトラエトキシシラン(TEOS)およびエチレングリコール(EG)の混合物から、3時間に亘る150℃での加熱により透明な溶液を調製した。次いで、これらのアンプルに、過酸化ベンゾイル(BP)、ジエチレングリコールジアクリレート(DADEG)およびBayer MaterialScience社から得られるDESMOLUX(商標)VP LS2396およびVP LS2337などの−NCO担持脂肪族/芳香族ウレタンアクリレートを加え、空気中で密封した。それぞれのアンプルを満たすために、以下の試薬を使用した:
アンプル3(a)
TEOS: 0.4268g(0.0020モル)
EG: 0.1914g(0.0031モル)
VP LS2337: 1.4063g
モル比: TEOS:EG=1:1.50;TEOS:VP LS2337=1:0.98
DADEG: 0.0242g(0.0001モル)
BP: 0.0070g

アンプル3(b)
TEOS: 0.3198g(0.0015モル)
EG: 0.1434g(0.0023モル)
VP LS2337: 1.5545g
モル比: TEOS:EG=1:1.50;TEOS:VP LS2337=1:1.45
DADEG: 0.0276g(0.0001モル)
BP: 0.0080g

アンプル3(c)
TEOS: 0.2578g(0.0012モル)
EG: 0.1156g(0.0019モル)
VP LS2337: 1.6475g
モル比: TEOS:EG=1:1.50;TEOS:VP LS2337=1:1.90
DADEG: 0.0309g(0.0001モル)
BP: 0.0080g
【0123】
反応混合物を周囲温度で0.5時間に亘り撹拌した後、この溶液を表1に示された実施例3のスケジュールにしたがって炉内で加熱した。質量パーセントで表されたアンプル3(a),3(b),および3(c)中の固体の透明生成物の収率は:3(a)=95.4%;3(b)=99.2%;および3(c)=99.7%であった。有機−無機ハイブリッド高分子の物理的性質を測定し、それらが表2に示されている。
【0124】
金属酸化物−グリコール−ウレタン複合体 ガラスアンプルの内壁を乾燥デカン中のジクロロジメチルシラン(DCDMS)で疎水化した。2.0477g(0.0082モル)のメタクリル酸3−(トリメトキシシリルプロピル)(TMSPM)および0.5079g(0.0082モル)のエチレングリコール(EG)の混合物から、1時間に亘る100℃での加熱により、透明な溶液を調製した。次いで、アンプルに0.0088gの過酸化ベンゾイル(BP)、0.2017g(0.0008モル)のジエチレングリコールジメタクリレート(DMDEG)および2.6327g(0.0170モル)のメタクリル酸2−イソシアナートエチル(ICEM)を加え、空気中で密封した(モル比:TMSPM:EG=1:1.00;TMSPM:ICEM=1:2.06)。反応混合物を周囲温度で0.5時間に亘り撹拌した後、この溶液を表1に示された実施例4のスケジュールにしたがって炉内で加熱した。固体の透明生成物の収率は98.9質量%であった。有機−無機ハイブリッド高分子の物理的性質を測定し、それらが表2に示されている。
【0125】
実施例4
金属酸化物−グリコール−ウレタン複合体 ガラスアンプルの内壁を乾燥デカン中のジクロロジメチルシラン(DCDMS)で疎水化した。2.0477g(0.0082モル)のメタクリル酸3−(トリメトキシシリルプロピル)(TMSPM)および0.5079g(0.0082モル)のエチレングリコール(EG)の混合物から、1時間に亘る100℃での加熱により、透明な溶液を調製した。次いで、アンプルに0.0088gの過酸化ベンゾイル(BP)、0.2017g(0.0008モル)のジエチレングリコールジメタクリレート(DMDEG)および2.6327g(0.0170モル)のメタクリル酸2−イソシアナートエチル(ICEM)を加え、空気中で密封した(モル比:TMSPM:EG=1:1.00;TMSPM:ICEM=1:2.06)。反応混合物を周囲温度で0.5時間に亘り撹拌した後、この溶液を実施例4に関して表1に示されたスケジュールにしたがって炉内で加熱した。固体の透明生成物の収率は98.9質量%であった。有機−無機ハイブリッド高分子の物理的性質を測定し、それらが表2に示されている。
【0126】
比較例5
架橋した純粋な高分子:ポリメタクリル酸メチル(PEMA)の調製 先の実施例におけるように、反応混合物中に金属酸化物源を含まなかったことを除いて、有機モノマーを重合させた。ガラスアンプルの内壁を乾燥デカン中のジクロロジメチルシラン(DCDMS)で疎水化した。10.7801g(0.0944モル)のメタクリル酸エチル(EMA)、0.0676gの過酸化ベンゾイル(BP)および過酸化ジクミル(DCP)の混合物から、周囲温度で透明な溶液を調製した。次いで、この溶液を実施例1に関して表1に示されたスケジュールにしたがって炉内で加熱した。架橋したポリメタクリル酸エチル高分子生成物のいくつかの物理的性質を実施例1および4の有機−無機ハイブリッド高分子の物理的性質と比較し、それらが表3に示されている。
【表3】

【0127】
開示された調製された複合材料の他の裏付けとなる特徴の例としては、硬度、引っ掻き抵抗性、および気孔率が挙げられる。
【0128】
本開示を、様々な具体的な実施の形態および技法を参照して説明してきた。しかしながら、多くの変種および改変が、本開示の精神および範囲にありながら可能であることが理解されよう。
【符号の説明】
【0129】
10 ゾルゲル高分子
20 有機高分子
30 ゾルゲル高分子ナノ複合体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合体を製造する方法であって、
第1の混合物の第1の加熱であって、該第1の混合物が、
i) 式Rx−M(OR1m-xの金属アルコキシド、ここで、
Mは、Si,Ti,Ta,Sn,Al,Zr,Hf,またはそれらの組合せであり、
Rは、存在する場合、1から約10の炭素原子を有する置換または未置換、飽和または不飽和のヒドロカルビル基であり、
OR1は、それぞれ独立して、1から約10の炭素原子を有するアルコール分解性ヒドロカルビルオキシ基であり、
xは、0から5であり、
mは、1から5である;および、
ii) 式HO−R2−OHのジオール、式HO−R3のアルコール、またはそれらの混合物、ここで、
2は、1から約10の炭素原子を有する二価の置換または未置換ヒドロカルビレン基、または複数のアルコキシル基、ウレタン基、炭酸基、またはそれらの組合せを含む少なくとも1つの鎖を有するオリゴマー基または高分子基である、
3は、3から約18の炭素原子を有する不飽和重合性ヒドロカルビル基である、
含むものである第1の混合物の第1の加熱;および
少なくとも1つのイソシアネートを有するモノマーまたは少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性オリゴマー、架橋剤、およびフリーラジカル開始剤を、得られた加熱された前記第1の混合物の生成物と組み合わせ、第2の加熱を行って、前記複合体を形成する工程、
を含む方法。
【請求項2】
前記第1の加熱が、約0.5から約5時間に亘り約50から約150℃で行われ、前記第2の加熱が、約20から約100時間の期間に亘り約45から約150℃の上昇する温度で行われることを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記金属アルコキシドが、メタクリル酸3−(トリアルコキシシリルプロピル)、アクリル酸3−(トリアルコキシシリルプロピル)、トリアルコキシビニルシラン、スチリルエチルトリアルコキシシラン、テトラアルコキシシラン、チタンアルコキシド、アルミニウムトリアルコキシド、スズtert−アルコキシド、ハフニウムアルコキシド、タンタルアルコキシド、ジルコニウムアルコキシド、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含み、
前記ジオールHO−R2−OHが、アルキレングリコール、プロピレングリコール、ポリ(アルキレングリコール)、ポリウレタンジオール、ポリカーボネート、ビスフェノール、アルコキシル化ビスフェノールジオール、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含み、
前記アルコールHO−R3が、アクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEA)、メタクリル酸2−ヒドロキシエチル(HEMA)、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含み、
前記少なくとも1つのイソシアネートを有する不飽和イソシアネートモノマーまたは前記少なくとも1つのイソシアネートを有する不飽和イソシアネートオリゴマーが、アクリレートを含有する脂肪族イソシアネート、アクリレートを含有する芳香族イソシアネート、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項4】
前記架橋剤が、ジアルキレングリコールジアクリレート、ジアルキレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパンアルコキシレートトリアクリレート、ジビニルベンゼン、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含み、
前記フリーラジカル開始剤が、熱重合開始剤、光重合開始剤、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記第1の加熱により透明溶液が提供され、前記金属アルコキシドのアルコキシド−OR1がフリーラジカル重合性部分を含むことを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項6】
相互侵入網目構造を有するゾルゲル高分子ナノ複合体において、
金属アルコキシドおよびジオール、アルコール、またはそれらの組合せの内の少なくとも1つの生成物からなる、ゾルゲル無機高分子網目構造、および
少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性モノマーまたは少なくとも1つのイソシアネートを有する重合性オリゴマー、架橋剤、およびフリーラジカル開始剤の生成物からなる、架橋した有機高分子網目構造であって、前記ゾルゲル無機高分子網目構造に対する少なくとも1つの共有結合を有する架橋した有機高分子網目構造、
を含むゾルゲル高分子ナノ複合体。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2012−524127(P2012−524127A)
【公表日】平成24年10月11日(2012.10.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−554222(P2011−554222)
【出願日】平成22年3月12日(2010.3.12)
【国際出願番号】PCT/US2010/027071
【国際公開番号】WO2010/105119
【国際公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(397068274)コーニング インコーポレイテッド (1,222)
【Fターム(参考)】