説明

複合入力装置

【課題】太陽電池の上にタッチパネルを設けた複合入力装置において、太陽電池に届く光を十分に確保し、太陽電池における光電変換効率を向上させると共に、タッチパネルとしての機能を有する複合入力装置を提供する。
【解決手段】複合入力装置は、受光面で受光して発電可能な太陽電池部と、前記太陽電池部の前記受光面の上に設けられ、透明導電膜を有するタッチパネル部と、を備え、前記透明導電膜は、導電性ナノワイヤ材料によって構成され、1%〜3%の範囲のヘイズ値を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、太陽電池と、その受光面の上に設けられたタッチパネルと、を備えた複合入力装置に関する。
【背景技術】
【0002】
太陽電池部材は、光電変換効率の向上が重要な課題であり、そのために光電変換層の膜厚を厚くする、凹凸表面構造からなる”テクスチャ構造”と呼ばれる構造を設け、光をこの”テクスチャ構造”によって光を散乱させることによって、光電変換層を通過する光の光路長を長くして、光電変換層において吸収される光の量を増加させる方法が用いられている。
【0003】
しかし、テクスチャ構造上に光電変換層(半導体層)を形成した場合、光電変換層に多くの欠陥を誘起し、変換効率を悪化させる場合があることや、光電変換層の膜厚を厚くすることによる材料コストのアップや生産速度の低下などの問題がある。太陽電池において、変換効率向上及び入射角度依存性の解消のために、入射光を散乱光に変換する提案がある(例えば、特許文献1及び2参照。)。
【0004】
一方、太陽電池と透明タッチパネルとを組み合わせたデバイス技術についていくつか提案がなされている(例えば、特許文献3〜6参照。)。このように太陽電池とタッチパネルを組み合わせたデバイスによれば、例えばリモコンとして用いた場合、1次電池を必要としないというメリットがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2011−40525号公報
【特許文献2】特開2010−56532号公報
【特許文献3】実開昭61−189352号明細書
【特許文献4】特開2003−167233号公報
【特許文献5】特開2004−102677号公報
【特許文献6】特開2006−228196号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記のように太陽電池の上にタッチパネルを設けた場合、タッチパネルにおける透明電極として従来のITO等による透明電極を用いた場合には透過率が90%以下となる。そのため、タッチパネルを設けない場合に比べて太陽電池の受光面に届く光が少なくなり、発電効率を低下させてしまうという問題点があった。
【0007】
そこで、本発明の目的は、太陽電池の上にタッチパネルを設けた複合入力装置において、太陽電池に届く光を十分に確保し、太陽電池における光電変換効率を向上させると共に、タッチパネルとしての機能を有する複合入力装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係る複合入力装置は、受光面で受光して発電可能な太陽電池部と、
前記太陽電池部の前記受光面の上に設けられ、透明導電膜を有するタッチパネル部と、
を備え、
前記透明導電膜は、導電性ナノワイヤ材料によって構成され、1%〜3%の範囲のヘイズ値を有する。
【0009】
また、前記透明導電膜は、透過率90%以上であることが好ましい。
【0010】
さらに、前記太陽電池部で発電した電力を蓄えるための2次電池部と、
外部と無線通信を行うための無線通信部と、
をさらに備えてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る複合入力装置によれば、太陽電池の上にタッチパネルを設けた複合入力装置において、タッチパネル部の透明導電膜を所定の導電性ナノワイヤ材料を用いて構成することによって、透明導電膜のヘイズ値が1%〜3%の範囲とすることができる。これによって、太陽電池に届く光を十分に確保し、太陽電池における光電変換効率を向上させると共に、タッチパネルとしての機能を有する複合入力装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】実施の形態1に係る複合入力装置の断面構造を示す概略断面図である。
【図2】実施の形態1に係る複合入力装置のタッチパネル部に入射した入射光が透明導電膜で散乱光に変換され、太陽電池部に入射する概要を示す概略断面図である。
【図3】導電性ナノワイヤ材料の構造を示す概略図である。
【図4】導電性ナノワイヤ材料で構成された透明導電膜における抵抗値と透過率との関係を示すグラフである。
【図5】導電性ナノワイヤ材料で構成された透明導電膜における抵抗値とヘイズ(Hz:(%))との関係を示すグラフである。
【図6】実施の形態1に係る複合入力装置の平面図である。
【図7】実施の形態2に係る複合入力装置の構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施の形態に係る複合入力装置について添付図面を用いて説明する。なお、図面において実質的に同一の部材には同一の符号を付している。
【0014】
(実施の形態1)
図1は、実施の形態1に係る複合入力装置10の断面構造を示す概略断面図である。
この複合入力装置10は、太陽電池部1と、太陽電池部1の受光面12の上に設けられたタッチパネル部2とを備える。また、タッチパネル部2には、導電性ナノワイヤ材料3によって構成された透明導電膜4を有する。この透明導電膜4は、ヘイズ値として1%〜3%の範囲を有する。なお、この透明導電膜4は、光透過率90%以上である。
【0015】
この実施の形態1に係る複合入力装置10では、タッチパネル部の透明導電膜4を構成する材料として、通常用いられるITO材料ではなく、導電性ナノワイヤ材料3を用いていることを特徴とする。通常使用されるITO(インジウムスズ酸化物)材料は、光をほとんど散乱させることなく透過させる性質を有する。一方、導電性ナノワイヤ材料では、その材質に応じて高い透過率を維持したまま、内部で光を散乱させることができる。
【0016】
図2は、この複合入力装置10のタッチパネル部2の入力面14に入射した入射光6がタッチパネル部2の透明導電膜4で散乱光8に変換され、太陽電池部1の受光面12に入射する概要を示す概略断面図である。このように太陽電池部1に散乱光8として入射させることによって、太陽電池部1を通過する光の光路長を太陽電池部1に垂直入射した場合の光路長よりも長くすることができ、太陽電池部1における変換効率を向上させることができる。このような入射面に垂直な入射光6から散乱光8への変換によって、太陽電池部1の内部への光閉じ込め効果を得ることができる。なお、透明導電膜4による光散乱の程度はヘイズ値で評価できる。
【0017】
このヘイズ値は、膜を透過する全透過光中における拡散光(散乱光)の割合を表す数値(%)である。なお、ヘイズ値は、くもり度とも呼ばれ、その値が低いほど透明であることを意味する。例えば、1%以下であれば拡散光による透過が少ないことを意味し、ディスプレイ用として利用可能な透明度であるとされる。ヘイズ値が1%以上場合には透過光中の拡散光が増すため下部の表示が見づらくなる。この複合入力装置10では、上述のようにタッチパネル部2の透明導電膜4を導電性ナノワイヤ材料3によって構成し、ヘイズ値が1%〜3%の範囲としている。これによって、太陽電池部1へ散乱光8を入射させることができ、太陽電池部1における変換効率を向上させることができる。
【0018】
以下に、この複合入力装置10を構成する各構成部材について説明する。
【0019】
<タッチパネル部>
タッチパネル部2は、マトリクス・スイッチ方式、抵抗膜方式、静電容量方式等のいずれの方式によるタッチパネルも使用できる。タッチパネル部2は、入力のための入力面14を有する。この入力面14は、太陽電池部1の受光面12に光を入射するための面としても機能する。なお、タッチ箇所を示すための最下層の表示部分については、例えば、図6に示す印刷によるボタン16表示であってもよい。あるいは、タッチパネル部2と太陽電池部1との間に、さらに液晶表示部を備えてもよい。
また、このタッチパネル部2の透明導電膜4は、導電性ナノワイヤ材料3で構成されている。
【0020】
<導電性ナノワイヤ材料>
図3は、直径d及び長さLを有する導電性ナノワイヤ材料3の構造を示す概略図である。この導電性ナノワイヤ材料3は、およそ10〜100,000の範囲のアスペクト比を有する。アスペクト比が大きいと、各導電性ナノワイヤ材料が互いに接触しやすくなり、有効な透明導電膜4が形成できる。また、高透明性のために導電性ナノワイヤ材料3の全体密度が低くなることから、透明導電膜4を得るために有利になる。すなわち、高アスペクト比を有する導電性ナノワイヤ材料3を使用することによって、導電膜4が実質的に透明になるように導電性ナノワイヤ材料3の密度を十分低くできる。
【0021】
また、導電性ナノワイヤ材料3の直径dが太くなると、抵抗率が実質的に小さくなり、導電性は良好になるが、その一方で、より多くの光を吸収するため光透過率が減少する。その結果、透明性が悪くなる。粒界および表面散乱に基づく抵抗率への影響は、直径10nm未満で大きくなる。直径が太くなるとこれらの影響は急激に減少する。導電膜4全体の抵抗率は、導電性ナノワイヤ材料3の直径が10nmから100nmにかけて大幅に減少する。しかし、電気的特性における上記改善は、透明導電膜の透明性減少とのバランスをとる必要がある。この複合入力装置10では、透明導電膜4を構成する導電性ナノワイヤ材料3の直径及びアスペクト比の選択を行って、図4及び図5に示すように、透明導電膜4におけるヘイズ値が1%〜3%の範囲であって、光透過率90%以上となるようにしている。
【0022】
導電性ナノワイヤ材料3としては、例えば、銀、金、銅、ニッケル、金めっきされた銀、アルミニウム等を用いることができる。なお、導電性ナノワイヤ材料3としては、上記例示に限定されるものではない。導電性ナノワイヤ材料として、特に銀ナノワイヤが好ましい。
【0023】
なお、導電性ナノワイヤ材料を透明導電材料として用いる提案(特開2010−244747号公報、特表2009−505358号公報)がある。
【0024】
<太陽電池部>
太陽電池部1には、通常の可視光領域の光について光電変換して発電可能な太陽電池を使用できる。例えば、単結晶シリコン系太陽電池、多結晶シリコン系太陽電池、アモルファスシリコン系太陽電池、化合物系太陽電池、等のいずれであってもよい。
【0025】
(実施の形態2)
図7は、実施の形態2に係る複合入力装置10aの構成を示すブロック図である。この複合入力装置10aは、実施の形態1に係る複合入力装置と対比すると、2次電池部18と、無線通信部20と、をさらに備える点で相違する。2次電池部18は、太陽電池部1で発電した電力を蓄える。無線通信部20は、外部と無線通信を行う。この複合入力装置10aによれば、例えば無線通信部20を利用してリモコンとして機能させることができる。この場合、太陽電池部1で発電した電力を2次電池部18で蓄えておくことができるので、十分な太陽光や照明等が得られない場合にも、あらかじめ発電し、蓄えておいた電力を利用できる。
【産業上の利用可能性】
【0026】
本発明に係る複合入力装置によれば、太陽電池の上にタッチパネルを設けた複合入力装置において、タッチパネル部の透明導電膜を所定の導電性ナノワイヤ材料を用いて構成している。これにより、透明導電膜のヘイズ値を1%〜3%の範囲とすることができ、太陽電池及びタッチパネルを有する複合入力装置として有用である。
【符号の説明】
【0027】
1 太陽電池部
2 タッチパネル部
3 導電性ナノワイヤ材料
4 透明導電膜
6 入射光
8 散乱光
10、10a 複合入力装置
12 受光面
14 入力面
16 ボタン
18 2次電池部
20 無線通信部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
受光面で受光して発電可能な太陽電池部と、
前記太陽電池部の前記受光面の上に設けられ、透明導電膜を有するタッチパネル部と、
を備え、
前記透明導電膜は、導電性ナノワイヤ材料によって構成され、1%〜3%の範囲のヘイズ値を有する、複合入力装置。
【請求項2】
前記透明導電膜は、透過率90%以上である、請求項1に記載の複合入力装置。
【請求項3】
前記太陽電池部で発電した電力を蓄えるための2次電池部と、
外部と無線通信を行うための無線通信部と、
をさらに備えた、請求項1又は2に記載の複合入力装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図7】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−8101(P2013−8101A)
【公開日】平成25年1月10日(2013.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−138773(P2011−138773)
【出願日】平成23年6月22日(2011.6.22)
【出願人】(000231361)日本写真印刷株式会社 (477)
【Fターム(参考)】