説明

複合基板を用いた光学部品とその製造方法

【課題】基板表面の高度な研磨の有無に関わらず、基板上に樹脂組成物の極平坦面を作製し、その極平坦面上に光学薄膜を積層することにより得られる複合基板を用いた光学部品を提供する。
【解決手段】光学基板上に、光硬化性樹脂組成物、熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物などの樹脂組成物を載せ、光学基板よりも極めて平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧し、樹脂組成物を光や温度変化によって硬化させて複合基板を形成し、上記複合基板上に、機能性無機光学薄膜、誘電体多層光学薄膜、光学機能性金属薄膜などの薄膜を、低温スパッタ法、イオンビームスパッタ法などで積層して、反射ミラー、ビームスプリッタ、バンドパスフィルタ、バンドストップフィルタ、エッジフィルタなどの光学部品を成形する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、高度には研磨されていない光学基板を用いても、良好な特性を有する光学部品を得ることができる光学部品の製造方法と、その製造方法による光学部品に関している。
【背景技術】
【0002】
現在、光学薄膜を製造するにあたり、その原料である光学薄膜用基板は、通常、様々な組成のガラスが用いられており、その表面は高度に研磨されている。その基板研磨には何度も行う研磨処理に基づく時間、高価な装置とその管理、さらに膨大な研磨技術を必要とする。
【0003】
この基板研磨に基づく基板表面は、その上に積層した機能性無機光学薄膜を作製した際に、基板表面を反映した形状となり、その凹凸度合い(表面粗さ)、基板内のうねり分布等によって光学薄膜及びそれを用いた光学部品の精度、位置依存性に対して大きく影響することが知られている。そのため、この基板研磨には表面粗さ、うねり分布等を小さくすることが強く求められている。
【0004】
現在までに、高精度な研磨技術による極めて平坦な基板も得られているが、その表面には研磨の際に研磨粒により、研磨痕である凹みが局所的に生じ、その凹みの部分は荒さを増大させる。この局所的な位置においては、その表面状態の悪さから光学薄膜及びそれを用いた光学部品の性能を低下させる。
【0005】
光学薄膜においては、その目的とする用途により金属薄膜もしくは誘電体膜が、単独層もしくは複合層、多層など用途に応じた膜設計に基づいて層構造が用いられる。これらの積層においては、数多くの製造方法、装置が知られている。
【0006】
近年の光学部品には非常に高品質、高精度な特性が求められている。それに伴って基板は、より平坦性を向上が求められ、光学薄膜は、より損失が小さいものが求められている。例えば高反射ミラーでは、その反射率は限りなく100%に近くするために、光学機能性金属薄膜から誘電体多層光学薄膜に変わり、その積層装置も多数の工夫がなされている。
【0007】
他方、微細形状を作製する方法の1つとして、微細形状を施した金型(モールド)を基板上に塗布した樹脂に印圧した後、硬化もしくは熱可塑変形を行い離型させ、基板上に樹脂の微細形状を形成するナノインプリント法が知られている。
【0008】
特許文献1(特開平11−016491号公報)では、プラズマディスプレイパネルの製造において、障壁層、電極、誘電体層の欠陥を少なく、かつ平坦に形成できる厚膜パターン形成方法が開示されている。基板上に、少なくともガラスフリットを有する無機成分とバインダー樹脂を含有する厚膜パターン形成材料を、全面もしくはパターン状に、塗布もしくは印刷した後、平坦化処理を施すもので、平坦化処理はプレスロールまたは定盤を使用して剥離性フィルムを介してまたは介さずに障壁層、電極、誘電体層をプレスするものである。
【0009】
また、特許文献2(特開平10−335837号公報)では、内層の導体回路に表面凹凸が存在していても、層間樹脂絶縁層の表面を平坦化することのできる多層プリント配線板の製造方法が開示されている。これは、多層プリント配線板を製造するに当たり、基板の導体回路上に、未硬化の層間樹脂絶縁剤を塗布して層間樹脂絶縁層を形成する工程、この層間樹脂絶縁層を加熱プレスして、その表面を平坦化する工程、平坦化した層間樹脂絶縁層上に導体回路を形成する工程、を経ることを特徴とするものである。
【0010】
また、特許文献3(特開平10−319365号公報)では、表示欠陥の無い液晶素子を歩留り良く製造する方法が開示されている。ガラス基板の表面に透明電極を形成し、この透明電極を覆うようにパッシベーション膜を形成する。その後、このパッシベーション膜の表面を、表面粗さ100Å以下のプレス部材を40kg/cm2の押圧力にて押圧し、平坦化を行うものである。
【0011】
また、特許文献4(特開平8−152509号公報)では、印刷法でカラーフィルタを形成するに際し、着色インキ層を形成した基板表面の平滑化処理を簡単な方法で行える製造方法が開示されている。これは、印刷法によって基板上に形成したパターン状の着色インキ層に対し、この着色インキ層が乾燥する前に、ゴムロール4に離型フィルム5を巻き付けた被覆ロール3により圧力を加えることにより、着色インキ層の表面をプレスして平坦化処理を行うものである。
【0012】
しかしながら、これらの特許文献1〜4と本発明とは、まず、本発明が超平坦面を有する複合基板を用いた光学部品の製造方法である点において異なっている。また、本発明が、上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形する点においても、これらの特許文献1〜4と本発明とは異なるものであることは明らかである。
【0013】
【特許文献1】特開平11−016491号公報
【特許文献2】特開平10−335837号公報
【特許文献3】特開平10−319365号公報
【特許文献4】特開平8−152509号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本案ではこれらのことを鑑み、基板表面の高度な研磨の有無に関わらず、基板上に樹脂組成物の極平坦面を作製し、その極平坦面上に光学薄膜を積層することにより得られる複合基板を用いた光学部品を提供することを目的としている。
【発明の効果】
【0015】
薄膜を積層した光学部品を製造するためには、従来は、光学基板の研磨に多くの工程を費やす必要があった。従来は、光学基板を何度も研磨処理する必要があり、コスト的負担や、膨大な研磨技術の維持が必要であった。しかし、本発明によって、光学基板の研磨工程を簡略化できようになる。さらに、高精度を維持したまま、光学基板製造から光学部品製造まで比較的短時間で済ませることができる。
【0016】
また、一般に、光学基板の大きさが大きくなるに従いその研磨は非常に難しくなることが知られている。従来は光学基板ごとに研磨が必要であるが、本発明の場合は、極平坦プレス板を必要な基板の大きさに対して1つ作製すればよく、必要な研磨数を削減できる。
【課題を解決するための手段】
【0017】
まず、本発明は、超平坦面を有する複合基板を用いた光学部品の製造方法である。より具体的には、光学基板上に樹脂組成物を載せ、上記樹脂組成物つき光学基板の樹脂組成物側を、上記光学基板よりも極めて平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧し、上記樹脂組成物を硬化させて複合基板を形成する。そして、上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形する。
【0018】
特に、上記樹脂組成物として光硬化性樹脂組成物を用いる場合は、次のようにする。光学基板上に光硬化性樹脂組成物を載せ、上記光硬化性樹脂組成物つき光学基板の樹脂組成物側を、上記光学基板よりも極めて平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧し、上記光硬化性樹脂組成物に光を照射して硬化させて複合基板を形成し、上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形する。
【0019】
また、上記樹脂組成物として熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物を用いる場合は、次のようにする。光学基板上に熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物を載せ、上記熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物つき光学基板の樹脂組成物側を、上記光学基板よりも極めて平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧し、上記熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物を温度変化によって硬化させて複合基板を形成し、上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形する。
【0020】
例えば、上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有する半導体基板材料である場合、形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であるようにすることができる。
【0021】
同様に、上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有するシリコン基板材料である場合、形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であるようにすることができる。
【0022】
同様に、上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有する高精度ガラス基板材料である場合、形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であるようにすることができる。
【0023】
同様に、上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有する高精度低熱膨張ガラス基板材料である場合、形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であるようにすることができる。
【0024】
上記薄膜が機能性無機光学薄膜である場合、該機能性無機光学薄膜を積層して反射ミラーを形成することができる。
【0025】
同様に、上記薄膜が機能性無機光学薄膜である場合、該機能性無機光学薄膜を積層してビームスプリッタを形成することができる。
【0026】
同様に、上記薄膜が機能性無機光学薄膜である場合、該機能性無機光学薄膜を積層してバンドパスフィルタを形成することができる。
【0027】
同様に、上記薄膜が機能性無機光学薄膜である場合、該機能性無機光学薄膜を積層してバンドストップフィルタを形成することができる。
【0028】
同様に、上記薄膜が機能性無機光学薄膜である場合、該機能性無機光学薄膜を積層してエッジフィルタを形成することができる。
【0029】
また、上記薄膜を機能性無機光学薄膜とする場合、上記薄膜の積層は、低温スパッタ法で行なうことができる。
【0030】
同様に、上記薄膜に機能性無機光学薄膜を用いる場合、上記薄膜の積層は、イオンビームスパッタ法で行なうことができる。
【0031】
上記薄膜を誘電体多層光学薄膜を用いて構成することができる。
【0032】
同様に、上記薄膜を光学機能性金属薄膜を用いて構成することができる。
【0033】
また、上記薄膜を誘電体多層光学薄膜あるいは光学機能性金属薄膜を用いて構成することができる。つまり、上記薄膜の積層膜は、該誘電体多層光学薄膜と該光学機能性金属薄膜との複合膜とする。
【0034】
上記の製造方法によって、積層膜を用いた光学部品を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0035】
以下に実施例をあげて本案を詳しく説明する。試料の種類、大きさ、樹脂及び加工装置、積層設計は多種多様なため、本発明はこれらの実施例のみに限定されるものではない。
【実施例1】
【0036】
図1に示すように、硼珪酸ガラスの光学基板1(商品名:BK7、表面粗さRMS=1.22nm)上にアクリル系液状光硬化性樹脂組成物2(東洋合成製、PAK−01)を滴量載せ、シリコン(表面粗さRMS=0.12nm)から成る極平坦プレス板3にて印圧した。その後光学基板1側から365nmの光を照射し硬化反応を行い、極平坦プレス板3を離型し樹脂組成物2の樹脂平坦面を形成した。このときの上記樹脂平坦面上の表面粗さはRMS=0.21nmであり、極平坦性複合基板が得られた。
【実施例2】
【0037】
実施例1で得られた極平坦性複合基板を用い、イオンビームスパッタ装置(Veeco社製)にて、酸化シリコンと酸化タンタルを各1/4波長厚さで交互に積層して41層の誘電体多層光学薄膜4を積層し633nm用高反射ミラーの作製を行った。その結果、表面粗さはRMS=0.16nmであり、図2の反射スペクトル特性の結果から波長633nmでの反射率は100%に極めて近いレベルである事が判った。このときの透過率は0.001%レベルと、低透過率であることが確認された。
【0038】
[比較例1]
高度に研磨した硼珪酸ガラス基板(商品名:BK7、表面粗さRMS=0.1nm)を用いて実施例2と同様に誘電体多層光学薄膜を積層し波長633nm用高反射ミラーを作製した。その結果、表面粗さはRMS=0.13nmであり、反射スペクトル特性の結果から波長633nmでの反射率は100%に極めて近いレベル、透過率は0.001%レベルである事が判った。
【0039】
これらの比較から、実施例1で得られた極平坦性複合基板の場合は、上記の高度に研磨したガラス基板の場合と、同程度の性能の反射ミラーを得られることが分かる。
【実施例3】
【0040】
実施例1で得られた複合基板を用い、実施例2と同様な方法にてビームスプリッタを作製した。その結果、図3に示すように波長787nmにおいて透過率57%、反射率43%であり、損失の少ないビームスプリッタ特性であることを確認した。
【0041】
[比較例2]
高度に研磨した硼珪酸ガラス基板(商品名:BK7、表面粗さRMS=0.1nm)を用いて実施例3と同様の方法にてビームスプリッタを作製した。その結果、波長787nmにおいて透過率58%、反射率43%であり、損失の少ないビームスプリッタ特性であることを確認した。(比較例2終わり)
【0042】
上記では、反射ミラーとビームスプリッタの例を示したが、バンドパスフィルタ、バンドストップフィルタ、あるいはエッジフィルタ等は、形成する多層膜のそれぞれの膜厚が異なるだけであるので、上記の例と同様な方法で製造することができることは明らかである。
【0043】
本発明の複合基板で用いる光学基板材料には、求める光学特性に合わせて通常光学部品で使用されている光学基板材料を使用することが出来る。例えば、市販の硼珪酸ガラス、合成石英、フッ化カルシウム、フッ化マグネシウム、フッ化バリウム、フッ化リチウム、シリコン、ジンクセレン、サファイア、ゲルマニウム等を使用できる。
【0044】
複合基板で用いる樹脂組成物には、光硬化性、熱硬化性、熱可塑性の何れか1つ以上の物性を有する樹脂組成物を用いることが出来る。その樹脂組成物は印圧時の成形性から低粘度性であることが望ましい。このような理由から、樹脂組成物は粘度を低下させるために希釈溶剤を用いることが出来る。しかし、溶剤を揮発させることが必要となり、環境にも影響があるため、その使用量は極力抑えた方が望ましい。最も好ましくは無溶剤で低粘度性の樹脂組成物である。求める光学部品の特性に応じて樹脂の透過率等の光学特性を適当に選択して使用できる。
【0045】
光硬化性樹脂組成物には、アクリル基、メタクリル基等のビニル系2重結合を有する低分子化合部及びそのオリゴマーと重合開始剤等からなる樹脂組成物、エポキシ基を有する低分子化合部及びそのオリゴマーと重合開始剤等からなる樹脂組成物など、市販の光硬化性樹脂組成物を使用することが出来る。また、物性向上のために熱可塑性樹脂等の添加剤、粘度低下のために溶剤、反応性希釈剤を混合することも出来る。
【0046】
熱硬化性樹脂組成物には、フェノール樹脂組成物、エポキシ樹脂組成物、尿素樹脂、メラミン樹脂、ビニル系2重結合を有する樹脂組成物、ウレタン樹脂組成物、ビスマレイミド樹脂組成物、ビスマレイミドトリアジン樹脂組成物、シリコン樹脂組成物、スピンオングラス(SOG)等の無機樹脂組成物など、市販の熱硬化性樹脂組成物を使用することが出来る。また、物性向上のために熱可塑性樹脂等の添加剤、粘度低下のために溶剤、反応性希釈剤を混合することも出来る。
【0047】
熱可塑性樹脂組成物には、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリオキシメチレン、ポリメチルメタクリレート、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリフェニレンスルフィド、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリイミド、シリコン樹脂、液晶ポリマー等など、市販の樹脂組成物及び、フィルム等の固形品を使用できる。
【0048】
各樹脂組成物を基板に載せる場合、溶液の場合においては、そのまま適量を載せても良いが、塗布装置を用いて基板に塗布しても良い。スピンコート、ディップコート等適当な塗布方法を取ることが出来る。また、熱硬化性樹脂組成物においては、未反応状態もしくは一部が反応した状態(Bステージ)のフィルム等を基板上に載せ、熱圧着、硬化反応と平坦成形を行うことも出来る。熱可塑性樹脂組成物も同様に行うことも出来る。しかしその場合は、基板の形状よりはみ出した部分が不必要となりロスが発生するため、最低必要量に抑えることが出来る液状の方が望ましい。
【0049】
樹脂上に平坦面を作製するための極平坦プレス板は、極平坦な面を有するものであれば何れも使用することが出来る。先に挙げた光学部品で使用される基板材料の他に、セラミック、金属等も用いる事が出来る。特に半導体基板として使用されている半導体シリコン基板が平坦性、価格及び、現状で12インチの大きさまで汎用性があり基板大きさへの対応性の点から好ましい。ただし、樹脂との離型性を確保するために、極平坦プレス板の表面もしくは樹脂表面には離型処理を印圧前に施す方が望ましい。
【0050】
平坦面成形後の硬化反応は、光硬化性の場合は光照射を行うことによって硬化させれば良い。光源はその光硬化性が感度を持つ波長で行えば良い。その際、基板が透明の場合は基板側から、基板が不透明で極平坦プレス板が透明な場合は極平坦プレス板側から、それぞれ光照射を行うことが出来る。両方とも不透明の場合は光硬化性樹脂を用いることが出来ない。熱硬化性の場合は硬化反応に必要な温度、熱可塑性の場合は塑性変形に必要な温度を樹脂に加えれば良い。そのため基板及び極平坦プレス板の透明性は問わない。
【0051】
光学部品を製造するための機能性無機光学薄膜を積層する方法としては、これまでに数多くの蒸着方法が知られている。例えば、真空蒸着法、プラズマイオンアシスト法、イオンビームアシスト法、イオンビームスパッタ法など多数の方法が知られている。この中でも好ましくはイオンビームスパッタ法であり、他の光学薄膜の形成方法に対して、緻密さと平坦性が最も優れ、より低温で積層できる手法であり、樹脂への熱的影響が少なく光学薄膜を成形することが出来る。
【産業上の利用可能性】
【0052】
高度な基板研磨の有無に関わらず、基板上に極めて平坦な樹脂平坦面を形成し、その複合基板上に機能性無機光学薄膜を積層する事により、光学部品を作製することを可能にした。これは、従来の基板研磨を作製する上で必要な、何度も行う研磨処理に基づく時間、高価な装置とその管理、膨大な研磨技術の必要性を低減することができ、基板製造から光学部品製造まで短時間で且つ高精度に作製することが出来ることに繋がる。
【0053】
本発明は、ストレージデバイスであるハードディスクドライブ装置のプラッタに用いられるアルミ板や石英ガラス板の表面を平坦化する場合にも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の複合基板と高反射ミラーの工程毎の断面図である。
【図2】実施例1で作製した高反射ミラーの反射・透過スペクトルを示す図である。
【図3】実施例3で作製したビームスプリッタの反射・透過スペクトルを示す図である。
【符号の説明】
【0055】
1 光学基板
2 樹脂組成物
3 極平坦プレス板
4 誘電体多層光学薄膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
超平坦面を有する複合基板を用いた光学部品の製造方法であって、
光学基板上に樹脂組成物を載せるステップと、
上記樹脂組成物つき光学基板の樹脂組成物側を、上記光学基板よりも平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧するステップと、
上記樹脂組成物を硬化させて複合基板を形成するステップと、
上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形するステップと、
を含むことを特徴とする複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項2】
上記樹脂組成物は光硬化性樹脂組成物であって、
光学基板上に光硬化性樹脂組成物を載せるステップと、
上記光硬化性樹脂組成物つき光学基板の樹脂組成物側を、上記光学基板よりも平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧するステップと、
上記光硬化性樹脂組成物に光を照射して硬化させて複合基板を形成するステップと、
上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項3】
上記樹脂組成物は熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物であって、
光学基板上に熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物を載せるステップと、
上記熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物つき光学基板の樹脂組成物側を、上記光学基板よりも平坦な平面を有する極平坦プレス板にて印圧するステップと、
上記熱硬化性もしくは熱可塑性樹脂組成物を温度変化によって硬化させて複合基板を形成するステップと、
上記複合基板上に薄膜を積層して光学部品を成形するステップと、
を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項4】
上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有する半導体基板材料であり、
形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項5】
上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有するシリコン基板材料であり、
形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項6】
上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有する高精度ガラス基板材料であり、
形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項7】
上記の極めて平坦形状な平面を有する極平坦プレス板は、表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下の平坦形状な平面を有する高精度低熱膨張ガラス基板材料であり、
形成される複合基板の樹脂表面の表面粗さが二乗平均粗さ(RMS)で0.3nm以下であることを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項8】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
該機能性無機光学薄膜を積層して反射ミラーを形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項9】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
該機能性無機光学薄膜を積層してビームスプリッタを形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項10】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
該機能性無機光学薄膜を積層してバンドパスフィルタを形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項11】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
該機能性無機光学薄膜を積層してバンドストップフィルタを形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項12】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
該機能性無機光学薄膜を積層してエッジフィルタを形成することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項13】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
上記薄膜の積層は、低温スパッタ法で行なうことを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項14】
上記薄膜は、機能性無機光学薄膜であり、
上記薄膜の積層は、イオンビームスパッタ法で行なうことを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項15】
上記薄膜は、誘電体多層光学薄膜であることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項16】
上記薄膜は、光学機能性金属薄膜であることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項17】
上記薄膜は、誘電体多層光学薄膜あるいは光学機能性金属薄膜であって、
上記薄膜の積層は、該誘電体多層光学薄膜と該光学機能性金属薄膜との複合膜であることを特徴とする請求項8から請求項12のいずれか1つに記載の複合基板を用いた光学部品の製造方法。
【請求項18】
請求項1から請求項17のいずれか1つに記載の製造方法で製造したことを特徴とする複合基板を用いた光学部品。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2009−180871(P2009−180871A)
【公開日】平成21年8月13日(2009.8.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−18777(P2008−18777)
【出願日】平成20年1月30日(2008.1.30)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)【国等の委託研究の成果に係る記載事項】 平成19年度地域新生コンソーシアム研究開発事業「光フロンティア領域を支える次世代機能性光学材料及び素子の開発」、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(301021533)独立行政法人産業技術総合研究所 (6,529)
【出願人】(803000115)学校法人東京理科大学 (545)
【Fターム(参考)】