複合弁
【課題】弁箱スリーブの上端開口部を開閉するカット弁弁体が開いている際、粉粒体状の流体が弁箱スリーブ内をスムーズに流れることが可能な複合弁を提供する。
【解決手段】弁箱流入口10と弁箱流出口11とを備えた弁箱4内に弁箱スリーブ5が設けられ、弁箱スリーブ5の上端開口部13が弁箱流入口10に連通するとともに下端開口部14が弁箱4内で開口して弁箱流出口11に対向し、弁箱スリーブ5内に、上端開口部13を開閉する回転自在な椀形状のカット弁弁体6と退避スペース21とが設けられ、退避スペース21は弁箱スリーブ5の上端開口部13の下流側に位置するとともに上端開口部13よりも径方向外向きに拡がり、弁箱4内に、弁箱スリーブ5の下端開口部14を開閉するシール弁弁体7が設けられ、カット弁弁体6は、開位置Oにおいて、弁箱スリーブ5内の退避スペース21に退避する。
【解決手段】弁箱流入口10と弁箱流出口11とを備えた弁箱4内に弁箱スリーブ5が設けられ、弁箱スリーブ5の上端開口部13が弁箱流入口10に連通するとともに下端開口部14が弁箱4内で開口して弁箱流出口11に対向し、弁箱スリーブ5内に、上端開口部13を開閉する回転自在な椀形状のカット弁弁体6と退避スペース21とが設けられ、退避スペース21は弁箱スリーブ5の上端開口部13の下流側に位置するとともに上端開口部13よりも径方向外向きに拡がり、弁箱4内に、弁箱スリーブ5の下端開口部14を開閉するシール弁弁体7が設けられ、カット弁弁体6は、開位置Oにおいて、弁箱スリーブ5内の退避スペース21に退避する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの弁を一つの弁の面間に収納した複合弁に関するものであり、例えば粉粒体を搬送ガスによって移送する管路系等に設けられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の複合弁としては、例えば図8に示すように、石炭の粉粒体を窒素ガスによってガス化炉81へ移送する管路系82に設けられる複合弁83がある。複合弁83の上流側(入口側)には、石炭の粉粒体を貯留および供給するホッパ84が設けられている。また、複合弁83の下流側(出口側)には、空気を窒素と酸素とに分離する空気分離装置85が設けられている。
【0003】
図9〜図11に示すように、複合弁83は、カット弁86とシール弁87とを1弁面間に収納したものであり、弁箱88と、弁箱88内に設けられた円筒状の弁箱スリーブ89とを有している。弁箱88は、上部に弁箱流入口90を有し、下部に弁箱流出口91を有している。弁箱スリーブ89の上端は弁箱88に接合され、弁箱スリーブ89の上端開口部92が弁箱流入口90に連通している。また、弁箱スリーブ89の下端開口部93は、弁箱88内で開口して、弁箱流出口91の上方に対向している。これにより、弁箱流入口90から弁箱スリーブ89内を通って弁箱流出口91に至る流路94が形成される。
【0004】
弁箱スリーブ89内には、弁箱スリーブ89内の流路94を開閉する回転自在な円板状のカット弁弁体96が設けられている。カット弁弁体96の直径方向の一側は弁箱スリーブ89内の流体の流れ方向に対して直交するカット弁弁棒97に固定支持されるとともに、他側はトラニオン98に支持されている。カット弁弁棒97は、弁箱88の一方の側面に設けられた第1ボス部99に挿通されており、円筒状のトラニオン100を介して回転自在に保持されている。弁箱スリーブ89の内週面には、カット弁弁体96に対応する環状のカット弁弁座101が設けられている。カット弁弁棒97の基端側はカット弁開閉操作用の操作機102に接続されている。
【0005】
弁箱88内には、弁箱スリーブ89の下端開口部93を開閉する回転自在なシール弁弁体105が設けられている。シール弁弁体105は回転軸心106に対して外向きに膨らんだ椀形状に形成されている。シール弁弁体105の一端部は弁箱スリーブ89内の流体の流れ方向に対して直交するシール弁弁棒107に固定支持されるとともに、他端部はトラニオン100の外周部に回転可能に嵌合保持されている。これにより、シール弁弁体105は、シール弁弁棒107を介して、弁箱88に対して弁箱スリーブ89内の流体の流れを横切る方向に回転自在に支持されている。尚、シール弁弁棒107は、弁箱88の他方の側面に設けられた第2ボス部109に挿通されて回転自在に保持されている。
【0006】
また、シール弁弁体105は内側に球面状のシート面110を有している。弁箱スリーブ89の下端部には、シール弁弁体105のシート面110に弾性的に摺接する弾性材からなるシール弁弁座111が設けられている。シール弁弁棒107の基端側はシール弁開閉操作用の操作機108に接続されている。
【0007】
複合弁83の弁箱流入口90は接続管115を介してホッパ84の底部に接続されている。また、弁箱流出口91は供給管116を介してガス化炉81に接続されており、供給管116の上流端には、空気分離装置85から窒素を供給する窒素供給管117が接続されている。接続管115と供給管116とに連通する均圧管118が接続され、均圧管118には均圧弁119が設けられている。
【0008】
これによると、図10(a)に示すように、カット弁弁体96とシール弁弁体105とを閉じた状態から石炭の粉粒体をガス化炉81へ移送する場合、先ず、均圧弁119を開いて、複合弁83の下流側と上流側との圧力を均等にし、次に、図10(b)に示すように、操作機108を作動してシール弁弁体105を開き、その後、図11に示すように、操作機102を作動してカット弁弁体96を開く。
【0009】
これにより、ホッパ84内の石炭の粉粒体は、複合弁83の弁箱流入口90から弁箱スリーブ89内の流路94を通過し、弁箱流出口91から供給管116に流入し、空気分離装置85から発生する窒素によって供給管116からガス化炉81へ移送される。
【0010】
上記のようにカット弁弁体96とシール弁弁体105とを備えた複合弁83は下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平11−108225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、カット弁弁体96は円板状であり、カット弁弁体96とカット弁弁棒97とでバタフライ弁形式として構成され、このため、図11に示すように、カット弁弁体96を全開した場合、カット弁弁体96が弁箱スリーブ89内の流路94の径方向における中央部分に残るため、石炭の粉粒体(流体の一例)の流れがカット弁弁体96によって大幅に阻害され、石炭の粉粒体がスムーズに流れないといった問題がある。特に、複合弁83の口径が小さい場合、全開したカット弁弁体96が弁箱スリーブ89内において占める割合は大きくなるため、上記石炭の粉粒体の流れが阻害されるといった問題が顕著になる。
【0012】
本発明は、弁箱スリーブの一端開口部を開閉する第1の弁体が開いている際、流体が弁箱スリーブ内をスムーズに流れることが可能な複合弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本第1発明における複合弁は、弁箱流入口と弁箱流出口とを備えた弁箱内に筒状の弁箱スリーブが設けられ、
弁箱スリーブの一端開口部が弁箱流入口に連通し、弁箱スリーブの他端開口部が弁箱内で開口して弁箱流出口に対向し、
弁箱スリーブ内に、弁箱スリーブの一端開口部を開閉する回転自在な第1の弁体と退避スペースとが設けられ、
退避スペースは弁箱スリーブの一端開口部よりも径方向外向きに拡がっており、
弁箱内に、弁箱スリーブの他端開口部を開閉する回転自在な第2の弁体が設けられ、
第2の弁体は開位置で弁箱の内周部と弁箱スリーブの外周部との間に退避し、
第1の弁体は、開位置で、弁箱スリーブ内の退避スペースに退避するものである。
【0014】
これによると、第1の弁体と第2の弁体とを開くことにより、流体が弁箱流入口から弁箱スリーブ内を通って弁箱流出口へ流れる。この際、第1の弁体は弁箱スリーブ内の退避スペースに退避するため、流体の流れが第1の弁体によって大幅に阻害されることはなく、流体は弁箱スリーブ内をスムーズに流れる。
【0015】
本第2発明における複合弁は、弁箱の内周面に、弁箱流入口から弁箱スリーブの一端開口部にわたって入口側テーパ面が形成され、
入口側テーパ面は、弁箱流入口側から弁箱スリーブの一端開口部側になるほど縮径しているものである。
【0016】
これによると、流体(粉粒体等)を貯留するホッパを複合弁の弁箱流入口に直接接続した場合、第1の弁体を開くことにより、ホッパ内の流体が、ホッパの底部開口部を通って、複合弁の弁箱流入口へ流れ込む。この際、複合弁の入口側テーパ面はホッパの底部開口部に連続しているため、流体の弁箱への流入が促進され、従来においてホッパの底部に設けられていた下方に縮径する円錐断面形状部分を複合弁の入口側テーパ面と置き換える(兼用する)ことができる。これにより、ホッパの底部開口部の円錐断面形状部分の高さを低減することができ、ホッパ全体の高さを小型化できる。
【0017】
本第3発明における複合弁は、第1の弁体は外側に球面状の第1のシート面を有し、
第2の弁体は内側に球面状の第2のシート面を有し、
弁箱スリーブに、第1のシート面に摺接する円環状の第1の弁座と、第2のシート面に摺接する第2の弁座とが設けられているものである。
【0018】
本第4発明における複合弁は、第1の弁体は、開位置において弁箱スリーブの一端開口部に連通し且つ閉位置において弁箱スリーブの一端開口部から退避する弁体開口部を有し、
弁箱スリーブ内の流れ方向を横切る方向の軸心の周りで第1の弁体を回転自在に支持する
一対の弁棒が設けられ、
第1の弁座は、第1の弁体の外側と弁箱スリーブの内周面との間に形成されて弁箱スリーブの一端開口部側から弁棒側に続く間隙の入口側を全周にわたり遮断して、粉粒体状の流体の上記間隙への流入を防止しているものである。
【0019】
これによると、第1の弁座は、第1の弁体の外側と弁箱スリーブの内周面との間に形成されて弁箱スリーブの一端開口部側から弁棒側に続く間隙の入口側を全周にわたり遮断する。これにより、粉粒体状の流体の一部が上記間隙を通って弁棒側へ流れ込んでしまうのを防止することができ、粉粒体状の流体が弁棒の回転摺動部分に噛み込むのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によると、第1の弁体と第2の弁体とを開くことにより、流体が弁箱流入口から弁箱スリーブ内を通って弁箱流出口へ流れる。この際、第1の弁体は弁箱スリーブ内の退避スペースに退避するため、流体の流れが第1の弁体によって大幅に阻害されることはなく、流体は弁箱スリーブ内をスムーズに流れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明における第1の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、従来のものと同じ部材については同一の符号を付記して説明を省略する。
1は、石炭の粉粒体(流体の一例)を窒素ガス(ガス体の一例)によってガス化炉81へ移送する管路系82に設けられる複合弁である。図1〜図3に示すように、複合弁1は、カット弁2(第1の弁の一例)とシール弁3(第2の弁の一例)とを1つの弁の面間に収納したものであり、弁箱4と、弁箱4内に設けられた弁箱スリーブ5と、カット弁弁体6(第1の弁体の一例)と、シール弁弁体7(第2の弁体の一例)と、カット弁2を開閉操作する第1の操作機8と、シール弁3を開閉操作する第2の操作機9とを有している。
【0022】
弁箱4は、上部に弁箱流入口10を有するとともに、下部に弁箱流出口11を有している。弁箱スリーブ5は、両端が開口した円筒状であり、上端部が弁箱4内に取り付けられている。弁箱スリーブ5の上端開口部13(一端開口部の一例)が弁箱流入口10に連通している。また、弁箱スリーブ5の下端開口部14(他端開口部の一例)が弁箱4内で開口して弁箱流出口11に対向しており、弁箱流入口10から弁箱スリーブ5内を通って弁箱流出口11に至る流路15が形成されている。
【0023】
弁箱スリーブ5は、上端部内周面に、径方向内向きに突出した突出部16を全周にわたり有している。また、上端開口部13は、下流側(下方側)ほど直径が縮小するテーパー面17を有している。
【0024】
また、弁箱スリーブ5内には退避スペース21が形成されている。退避スペース21は、上端開口部13の下流側に位置するとともに、上端開口部13よりも弁箱スリーブ5の径方向外向きに拡がっており、突出部16の下方に全周にわたり形成されている。
【0025】
カット弁2のカット弁弁体6は、上端開口部13を開閉するものであり、弁箱スリーブ5内に回転自在に設けられている。図4に示すように、カット弁弁体6は、回転軸心19に対して径方向外向きに膨らんだ椀形状(半球状)の弁本体部6aと、弁本体部6aに設けられた一対のボス部6b,6cとを有している。弁本体部6aには、円形の弁体開口部6dが形成されている。図2に示すように、全開位置Oにおいて、カット弁弁体6が退避スペース21に退避するとともに、弁体開口部6dが上端開口部13に重なって連通する。また、図3に示すように、全閉位置Sにおいて、弁体開口部6dは上端開口部13から退避スペース21に退避する。
【0026】
また、カット弁弁体6は外側に球面状の第1のシート面6eを有している。弁箱スリーブ5の突出部16の下部には、第1のシート面6eに摺接する円環状のカット弁弁座24(第1の弁座の一例)が設けられている。
【0027】
また、シール弁3のシール弁弁体7は、下端開口部14を開閉するものであり、弁箱4内に回転自在に設けられている。シール弁弁体7は、回転軸心19に対して径方向外向きに膨らんだ椀形状の弁本体部7aと、弁本体部7aに設けられた一対のアーム部7b,7cとを有している。図2の仮想線で示すように、シール弁弁体7は、全開位置Oにおいて、弁箱4の内周面と弁箱スリーブ5の外周面との間に退避する。
【0028】
また、シール弁弁体7は内側に球面状の第2のシート面7dを有している。弁箱スリーブ5の下端部(他端部)には、第2のシート面7dに摺接する円環状のシール弁弁座25(第2の弁座の一例)が設けられている。
【0029】
回転軸心19は弁箱スリーブ5内の流体の流れ方向を横切る方向に形成されている。カット弁弁体6は、横方向に配置されたカット弁弁棒27によって、回転軸心19の周りで回転自在に支持されている。カット弁弁棒27は一対の弁棒27a,27bに分割されている。このうち、一方の弁棒27aは円筒状のトラニオン28に挿通され、トラニオン28は弁箱4の一側部に設けられた一方のボス部4aに挿通されている。一方の弁棒27aの一端部がカット弁弁体6の一方のボス部6bに挿入されて連結されており、一方の弁棒27aの他端部が上記第1の操作機8に連動連結されている。他方の弁棒27bは、基端部が弁箱スリーブ5に固定され、遊端部がカット弁弁体6の他方のボス部6cに挿入されている。
【0030】
また、シール弁弁体7は、シール弁弁棒29と上記トラニオン28とによって、カット弁弁体6と同軸の回転軸心19の周りで回転自在に支持されている。シール弁弁棒29は弁箱4の他側部に設けられた他方のボス部4bに回転自在に挿通されており、シール弁弁棒29の一端部がシール弁弁体7の一方のアーム部7bの基端部に挿入されて連結されている。シール弁弁棒29の他端部は第2の操作機9に連動連結されている。また、シール弁弁体7の他方のアーム部7cの基端部はトラニオン28の外周部に回転可能に嵌合保持されている。
【0031】
図5に示すように、カット弁弁体6の外面と弁箱スリーブ5の内周面との間には、上端開口部13側から一対の両弁棒27a,27b側に続く間隙31が形成されている。カット弁弁座24は上記間隙31の入口側を全周にわたり遮断している。
【0032】
以下、上記構成における作用を説明する。
図3に示すように、カット弁弁体6とシール弁弁体7とを閉じた状態から石炭の粉粒体をガス化炉81へ移送する場合、先ず、均圧弁119を開いて、複合弁1の下流側と上流側との圧力を均等にする。
【0033】
次に、第2の操作機9を作動して、シール弁弁棒29を回転させ、図3の仮想線で示すように、シール弁弁体7を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させる。これにより、シール弁弁体7が、回転軸心19を中心に90°回転し、全開位置Oにおいて弁箱4の内周面と弁箱スリーブ5の外周面との間に退避し、弁箱スリーブ5の下端開口部14が開放される。
【0034】
次に、第1の操作機8を作動して、カット弁弁棒27を回転させ、図2に示すように、カット弁弁体6を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させる。これにより、カット弁弁体6が、回転軸心19を中心に90°回転し、全開位置Oにおいて弁箱スリーブ5内の退避スペース21に退避し、カット弁弁体6の弁体開口部6dが弁箱スリーブ5の上端開口部13に重なり、上端開口部13が開放される。
【0035】
これにより、ホッパ84内の石炭の粉粒体は、複合弁1の弁箱流入口10から上端開口部13とカット弁弁体6の弁体開口部6dとを通過して弁箱スリーブ5内の流路15を流れ、下端開口部14を通過して弁箱流出口11から供給管116に流入し、空気分離装置85から発生する窒素によって供給管116からガス化炉81へ移送される。
【0036】
上記のようにカット弁弁体6は、全開位置Oまで回転した際、退避スペース21に退避するため、全開位置Oのカット弁弁体6が弁箱スリーブ5内の石炭の粉粒体の流れを阻害することは低減され、石炭の粉粒体が弁箱スリーブ5内をスムーズに流れる。この際、カット弁弁座24はカット弁弁体6の弁体開口部6dの周囲を取り囲むようにして第1のシート面6eに摺接している。
【0037】
また、図3に示すように、第1の操作機8を作動してカット弁弁体6を全開位置Oから全閉位置Sまで回転させることにより、弁箱スリーブ5の上端開口部13がカット弁弁体6で閉鎖される。さらに、第2の操作機9を作動してシール弁弁体7を全開位置Oから全閉位置Sまで回転させることにより、弁箱スリーブ5の下端開口部14がシール弁弁体7で閉鎖される。
【0038】
さらに、カット弁弁体6の全開位置Oと全閉位置Sとにおいて、図5に示すように、カット弁弁座24は上記間隙31の入口側を全周にわたり遮断している。これにより、石炭の粉粒体の一部が上記間隙31を通って弁棒27a,27b側へ流れ込んでしまうのを防止することができ、石炭の粉粒体が弁棒27a,27bの各回転摺動部分Aに噛み込むのを防止することができる。
【0039】
次に、本発明における第2の実施の形態を図6,図7を参照して説明する。
上記第1の実施の形態では、接続管115を介して複合弁1をホッパ84の底部に接続しているが、本第2の実施の形態では、接続管115を設けず、図6,図7に示すように、複合弁1をホッパ40の底部に直接接続している。
【0040】
すなわち、ホッパ40は、下部に、底部開口部40aと底部フランジ部40bとを有している。上記底部開口部40aの内周面は、下方ほど縮径する底部円錐面40c(円錐断面形状部分)として形成されている。
【0041】
複合弁1の弁箱4は、上部に、弁箱流入口10と流入口側フランジ部43とを有している。弁箱流入口10の内周面から弁箱スリーブ5の上端開口部13の内周面にわたって入口側テーパ面44が形成されている。入口側テーパ面44は、上側(すなわち弁箱流入口10側)から下側(すなわち上端開口部13側)になるほど直径が縮小している。
【0042】
ホッパ40の底部フランジ部40bと複合弁1の流入口側フランジ部43とがボルト,ナットにより連結されている。入口側テーパ面44は、ホッパ40の底部円錐面40cと同角度で傾斜しており、底部円錐面40cに連続している。
【0043】
尚、均圧管118はホッパ40の底部と供給管116とに連通している。また、入口側テーパ面44はホッパ40の底部円錐面40cと同角度で傾斜しているが、必ずしも同角度でなくてもよい。
【0044】
以下、上記構成における作用を説明する。
カット弁弁体6とシール弁弁体7とを閉じた状態から石炭の粉粒体をガス化炉81へ移送する場合、先ず、均圧弁119を開いて、複合弁1の下流側と上流側との圧力を均等にする。次に、図7の仮想線で示すように、シール弁弁体7を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させ、その後、図7の実線で示すように、カット弁弁体6を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させる。
【0045】
これにより、ホッパ40内に貯留されている石炭の粉粒体が、底部開口部40aを通って、弁箱流入口10へ流れ込む。この際、複合弁1の入口側テーパ面44はホッパ40の底部円錐面40cに連続しているため、石炭の粉粒体の弁箱4への流入が促進される。また、底部円錐面40cの下部を入口側テーパ面44と置き換える(兼用する)ことができるため、底部円錐面40cの高さを低減することができ、ホッパ40の全体の高さを従来のものより小型化できる。
【0046】
上記各実施の形態では、流体の一例として石炭の粉粒体を挙げたが、石炭以外の粉粒体であってもよい。また、ガス体の一例として窒素ガスを挙げたが、窒素ガス以外の気体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態における複合弁の正面側から見た縦断面図である。
【図2】図1におけるX−X矢視図であり、カット弁弁体とシール弁弁体とを全開した状態を示す。
【図3】図1におけるX−X矢視図であり、カット弁弁体とシール弁弁体とを全閉した状態を示す。
【図4】同、複合弁のカット弁弁体の斜視図である。
【図5】図1におけるカット弁弁体部分の拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における複合弁を設けた石炭粉粒体移送用の管路系の図である。
【図7】同、複合弁の断面図である。
【図8】従来の複合弁を設けた石炭粉粒体移送用の管路系の図である。
【図9】同、複合弁の断面図であり、中心線から右半分はカット弁弁体とシール弁弁体とを全閉した状態を示し、左半分はカット弁弁体とシール弁弁体とを全開した状態を示す。
【図10】図9におけるX−X矢視図であり、(a)はカット弁弁体とシール弁弁体とを全閉した状態を示し、(b)はカット弁弁体を全閉し、シール弁弁体を全開した状態を示す。
【図11】図9におけるX−X矢視図であり、カット弁弁体とシール弁弁体とを全開した状態を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 複合弁
4 弁箱
5 弁箱スリーブ
6 カット弁弁体(第1の弁体)
6d 弁体開口部
6e 第1のシート面
7 シール弁弁体(第2の弁体)
7d 第2のシート面
10 弁箱流入口
11 弁箱流出口
13 上端開口部(一端開口部)
14 下端開口部(他端開口部)
19 回転軸心
21 退避スペース
24 カット弁弁座(第1の弁座)
25 シール弁弁座(第2の弁座)
27a,27b 弁棒
31 間隙
44 入口側テーパ面
【技術分野】
【0001】
本発明は、二つの弁を一つの弁の面間に収納した複合弁に関するものであり、例えば粉粒体を搬送ガスによって移送する管路系等に設けられるものに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の複合弁としては、例えば図8に示すように、石炭の粉粒体を窒素ガスによってガス化炉81へ移送する管路系82に設けられる複合弁83がある。複合弁83の上流側(入口側)には、石炭の粉粒体を貯留および供給するホッパ84が設けられている。また、複合弁83の下流側(出口側)には、空気を窒素と酸素とに分離する空気分離装置85が設けられている。
【0003】
図9〜図11に示すように、複合弁83は、カット弁86とシール弁87とを1弁面間に収納したものであり、弁箱88と、弁箱88内に設けられた円筒状の弁箱スリーブ89とを有している。弁箱88は、上部に弁箱流入口90を有し、下部に弁箱流出口91を有している。弁箱スリーブ89の上端は弁箱88に接合され、弁箱スリーブ89の上端開口部92が弁箱流入口90に連通している。また、弁箱スリーブ89の下端開口部93は、弁箱88内で開口して、弁箱流出口91の上方に対向している。これにより、弁箱流入口90から弁箱スリーブ89内を通って弁箱流出口91に至る流路94が形成される。
【0004】
弁箱スリーブ89内には、弁箱スリーブ89内の流路94を開閉する回転自在な円板状のカット弁弁体96が設けられている。カット弁弁体96の直径方向の一側は弁箱スリーブ89内の流体の流れ方向に対して直交するカット弁弁棒97に固定支持されるとともに、他側はトラニオン98に支持されている。カット弁弁棒97は、弁箱88の一方の側面に設けられた第1ボス部99に挿通されており、円筒状のトラニオン100を介して回転自在に保持されている。弁箱スリーブ89の内週面には、カット弁弁体96に対応する環状のカット弁弁座101が設けられている。カット弁弁棒97の基端側はカット弁開閉操作用の操作機102に接続されている。
【0005】
弁箱88内には、弁箱スリーブ89の下端開口部93を開閉する回転自在なシール弁弁体105が設けられている。シール弁弁体105は回転軸心106に対して外向きに膨らんだ椀形状に形成されている。シール弁弁体105の一端部は弁箱スリーブ89内の流体の流れ方向に対して直交するシール弁弁棒107に固定支持されるとともに、他端部はトラニオン100の外周部に回転可能に嵌合保持されている。これにより、シール弁弁体105は、シール弁弁棒107を介して、弁箱88に対して弁箱スリーブ89内の流体の流れを横切る方向に回転自在に支持されている。尚、シール弁弁棒107は、弁箱88の他方の側面に設けられた第2ボス部109に挿通されて回転自在に保持されている。
【0006】
また、シール弁弁体105は内側に球面状のシート面110を有している。弁箱スリーブ89の下端部には、シール弁弁体105のシート面110に弾性的に摺接する弾性材からなるシール弁弁座111が設けられている。シール弁弁棒107の基端側はシール弁開閉操作用の操作機108に接続されている。
【0007】
複合弁83の弁箱流入口90は接続管115を介してホッパ84の底部に接続されている。また、弁箱流出口91は供給管116を介してガス化炉81に接続されており、供給管116の上流端には、空気分離装置85から窒素を供給する窒素供給管117が接続されている。接続管115と供給管116とに連通する均圧管118が接続され、均圧管118には均圧弁119が設けられている。
【0008】
これによると、図10(a)に示すように、カット弁弁体96とシール弁弁体105とを閉じた状態から石炭の粉粒体をガス化炉81へ移送する場合、先ず、均圧弁119を開いて、複合弁83の下流側と上流側との圧力を均等にし、次に、図10(b)に示すように、操作機108を作動してシール弁弁体105を開き、その後、図11に示すように、操作機102を作動してカット弁弁体96を開く。
【0009】
これにより、ホッパ84内の石炭の粉粒体は、複合弁83の弁箱流入口90から弁箱スリーブ89内の流路94を通過し、弁箱流出口91から供給管116に流入し、空気分離装置85から発生する窒素によって供給管116からガス化炉81へ移送される。
【0010】
上記のようにカット弁弁体96とシール弁弁体105とを備えた複合弁83は下記特許文献1に記載されている。
【特許文献1】特開平11−108225号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
しかしながら上記の従来形式では、カット弁弁体96は円板状であり、カット弁弁体96とカット弁弁棒97とでバタフライ弁形式として構成され、このため、図11に示すように、カット弁弁体96を全開した場合、カット弁弁体96が弁箱スリーブ89内の流路94の径方向における中央部分に残るため、石炭の粉粒体(流体の一例)の流れがカット弁弁体96によって大幅に阻害され、石炭の粉粒体がスムーズに流れないといった問題がある。特に、複合弁83の口径が小さい場合、全開したカット弁弁体96が弁箱スリーブ89内において占める割合は大きくなるため、上記石炭の粉粒体の流れが阻害されるといった問題が顕著になる。
【0012】
本発明は、弁箱スリーブの一端開口部を開閉する第1の弁体が開いている際、流体が弁箱スリーブ内をスムーズに流れることが可能な複合弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するために本第1発明における複合弁は、弁箱流入口と弁箱流出口とを備えた弁箱内に筒状の弁箱スリーブが設けられ、
弁箱スリーブの一端開口部が弁箱流入口に連通し、弁箱スリーブの他端開口部が弁箱内で開口して弁箱流出口に対向し、
弁箱スリーブ内に、弁箱スリーブの一端開口部を開閉する回転自在な第1の弁体と退避スペースとが設けられ、
退避スペースは弁箱スリーブの一端開口部よりも径方向外向きに拡がっており、
弁箱内に、弁箱スリーブの他端開口部を開閉する回転自在な第2の弁体が設けられ、
第2の弁体は開位置で弁箱の内周部と弁箱スリーブの外周部との間に退避し、
第1の弁体は、開位置で、弁箱スリーブ内の退避スペースに退避するものである。
【0014】
これによると、第1の弁体と第2の弁体とを開くことにより、流体が弁箱流入口から弁箱スリーブ内を通って弁箱流出口へ流れる。この際、第1の弁体は弁箱スリーブ内の退避スペースに退避するため、流体の流れが第1の弁体によって大幅に阻害されることはなく、流体は弁箱スリーブ内をスムーズに流れる。
【0015】
本第2発明における複合弁は、弁箱の内周面に、弁箱流入口から弁箱スリーブの一端開口部にわたって入口側テーパ面が形成され、
入口側テーパ面は、弁箱流入口側から弁箱スリーブの一端開口部側になるほど縮径しているものである。
【0016】
これによると、流体(粉粒体等)を貯留するホッパを複合弁の弁箱流入口に直接接続した場合、第1の弁体を開くことにより、ホッパ内の流体が、ホッパの底部開口部を通って、複合弁の弁箱流入口へ流れ込む。この際、複合弁の入口側テーパ面はホッパの底部開口部に連続しているため、流体の弁箱への流入が促進され、従来においてホッパの底部に設けられていた下方に縮径する円錐断面形状部分を複合弁の入口側テーパ面と置き換える(兼用する)ことができる。これにより、ホッパの底部開口部の円錐断面形状部分の高さを低減することができ、ホッパ全体の高さを小型化できる。
【0017】
本第3発明における複合弁は、第1の弁体は外側に球面状の第1のシート面を有し、
第2の弁体は内側に球面状の第2のシート面を有し、
弁箱スリーブに、第1のシート面に摺接する円環状の第1の弁座と、第2のシート面に摺接する第2の弁座とが設けられているものである。
【0018】
本第4発明における複合弁は、第1の弁体は、開位置において弁箱スリーブの一端開口部に連通し且つ閉位置において弁箱スリーブの一端開口部から退避する弁体開口部を有し、
弁箱スリーブ内の流れ方向を横切る方向の軸心の周りで第1の弁体を回転自在に支持する
一対の弁棒が設けられ、
第1の弁座は、第1の弁体の外側と弁箱スリーブの内周面との間に形成されて弁箱スリーブの一端開口部側から弁棒側に続く間隙の入口側を全周にわたり遮断して、粉粒体状の流体の上記間隙への流入を防止しているものである。
【0019】
これによると、第1の弁座は、第1の弁体の外側と弁箱スリーブの内周面との間に形成されて弁箱スリーブの一端開口部側から弁棒側に続く間隙の入口側を全周にわたり遮断する。これにより、粉粒体状の流体の一部が上記間隙を通って弁棒側へ流れ込んでしまうのを防止することができ、粉粒体状の流体が弁棒の回転摺動部分に噛み込むのを防止することができる。
【発明の効果】
【0020】
以上のように本発明によると、第1の弁体と第2の弁体とを開くことにより、流体が弁箱流入口から弁箱スリーブ内を通って弁箱流出口へ流れる。この際、第1の弁体は弁箱スリーブ内の退避スペースに退避するため、流体の流れが第1の弁体によって大幅に阻害されることはなく、流体は弁箱スリーブ内をスムーズに流れる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
以下、本発明における第1の実施の形態を図面を参照して説明する。尚、従来のものと同じ部材については同一の符号を付記して説明を省略する。
1は、石炭の粉粒体(流体の一例)を窒素ガス(ガス体の一例)によってガス化炉81へ移送する管路系82に設けられる複合弁である。図1〜図3に示すように、複合弁1は、カット弁2(第1の弁の一例)とシール弁3(第2の弁の一例)とを1つの弁の面間に収納したものであり、弁箱4と、弁箱4内に設けられた弁箱スリーブ5と、カット弁弁体6(第1の弁体の一例)と、シール弁弁体7(第2の弁体の一例)と、カット弁2を開閉操作する第1の操作機8と、シール弁3を開閉操作する第2の操作機9とを有している。
【0022】
弁箱4は、上部に弁箱流入口10を有するとともに、下部に弁箱流出口11を有している。弁箱スリーブ5は、両端が開口した円筒状であり、上端部が弁箱4内に取り付けられている。弁箱スリーブ5の上端開口部13(一端開口部の一例)が弁箱流入口10に連通している。また、弁箱スリーブ5の下端開口部14(他端開口部の一例)が弁箱4内で開口して弁箱流出口11に対向しており、弁箱流入口10から弁箱スリーブ5内を通って弁箱流出口11に至る流路15が形成されている。
【0023】
弁箱スリーブ5は、上端部内周面に、径方向内向きに突出した突出部16を全周にわたり有している。また、上端開口部13は、下流側(下方側)ほど直径が縮小するテーパー面17を有している。
【0024】
また、弁箱スリーブ5内には退避スペース21が形成されている。退避スペース21は、上端開口部13の下流側に位置するとともに、上端開口部13よりも弁箱スリーブ5の径方向外向きに拡がっており、突出部16の下方に全周にわたり形成されている。
【0025】
カット弁2のカット弁弁体6は、上端開口部13を開閉するものであり、弁箱スリーブ5内に回転自在に設けられている。図4に示すように、カット弁弁体6は、回転軸心19に対して径方向外向きに膨らんだ椀形状(半球状)の弁本体部6aと、弁本体部6aに設けられた一対のボス部6b,6cとを有している。弁本体部6aには、円形の弁体開口部6dが形成されている。図2に示すように、全開位置Oにおいて、カット弁弁体6が退避スペース21に退避するとともに、弁体開口部6dが上端開口部13に重なって連通する。また、図3に示すように、全閉位置Sにおいて、弁体開口部6dは上端開口部13から退避スペース21に退避する。
【0026】
また、カット弁弁体6は外側に球面状の第1のシート面6eを有している。弁箱スリーブ5の突出部16の下部には、第1のシート面6eに摺接する円環状のカット弁弁座24(第1の弁座の一例)が設けられている。
【0027】
また、シール弁3のシール弁弁体7は、下端開口部14を開閉するものであり、弁箱4内に回転自在に設けられている。シール弁弁体7は、回転軸心19に対して径方向外向きに膨らんだ椀形状の弁本体部7aと、弁本体部7aに設けられた一対のアーム部7b,7cとを有している。図2の仮想線で示すように、シール弁弁体7は、全開位置Oにおいて、弁箱4の内周面と弁箱スリーブ5の外周面との間に退避する。
【0028】
また、シール弁弁体7は内側に球面状の第2のシート面7dを有している。弁箱スリーブ5の下端部(他端部)には、第2のシート面7dに摺接する円環状のシール弁弁座25(第2の弁座の一例)が設けられている。
【0029】
回転軸心19は弁箱スリーブ5内の流体の流れ方向を横切る方向に形成されている。カット弁弁体6は、横方向に配置されたカット弁弁棒27によって、回転軸心19の周りで回転自在に支持されている。カット弁弁棒27は一対の弁棒27a,27bに分割されている。このうち、一方の弁棒27aは円筒状のトラニオン28に挿通され、トラニオン28は弁箱4の一側部に設けられた一方のボス部4aに挿通されている。一方の弁棒27aの一端部がカット弁弁体6の一方のボス部6bに挿入されて連結されており、一方の弁棒27aの他端部が上記第1の操作機8に連動連結されている。他方の弁棒27bは、基端部が弁箱スリーブ5に固定され、遊端部がカット弁弁体6の他方のボス部6cに挿入されている。
【0030】
また、シール弁弁体7は、シール弁弁棒29と上記トラニオン28とによって、カット弁弁体6と同軸の回転軸心19の周りで回転自在に支持されている。シール弁弁棒29は弁箱4の他側部に設けられた他方のボス部4bに回転自在に挿通されており、シール弁弁棒29の一端部がシール弁弁体7の一方のアーム部7bの基端部に挿入されて連結されている。シール弁弁棒29の他端部は第2の操作機9に連動連結されている。また、シール弁弁体7の他方のアーム部7cの基端部はトラニオン28の外周部に回転可能に嵌合保持されている。
【0031】
図5に示すように、カット弁弁体6の外面と弁箱スリーブ5の内周面との間には、上端開口部13側から一対の両弁棒27a,27b側に続く間隙31が形成されている。カット弁弁座24は上記間隙31の入口側を全周にわたり遮断している。
【0032】
以下、上記構成における作用を説明する。
図3に示すように、カット弁弁体6とシール弁弁体7とを閉じた状態から石炭の粉粒体をガス化炉81へ移送する場合、先ず、均圧弁119を開いて、複合弁1の下流側と上流側との圧力を均等にする。
【0033】
次に、第2の操作機9を作動して、シール弁弁棒29を回転させ、図3の仮想線で示すように、シール弁弁体7を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させる。これにより、シール弁弁体7が、回転軸心19を中心に90°回転し、全開位置Oにおいて弁箱4の内周面と弁箱スリーブ5の外周面との間に退避し、弁箱スリーブ5の下端開口部14が開放される。
【0034】
次に、第1の操作機8を作動して、カット弁弁棒27を回転させ、図2に示すように、カット弁弁体6を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させる。これにより、カット弁弁体6が、回転軸心19を中心に90°回転し、全開位置Oにおいて弁箱スリーブ5内の退避スペース21に退避し、カット弁弁体6の弁体開口部6dが弁箱スリーブ5の上端開口部13に重なり、上端開口部13が開放される。
【0035】
これにより、ホッパ84内の石炭の粉粒体は、複合弁1の弁箱流入口10から上端開口部13とカット弁弁体6の弁体開口部6dとを通過して弁箱スリーブ5内の流路15を流れ、下端開口部14を通過して弁箱流出口11から供給管116に流入し、空気分離装置85から発生する窒素によって供給管116からガス化炉81へ移送される。
【0036】
上記のようにカット弁弁体6は、全開位置Oまで回転した際、退避スペース21に退避するため、全開位置Oのカット弁弁体6が弁箱スリーブ5内の石炭の粉粒体の流れを阻害することは低減され、石炭の粉粒体が弁箱スリーブ5内をスムーズに流れる。この際、カット弁弁座24はカット弁弁体6の弁体開口部6dの周囲を取り囲むようにして第1のシート面6eに摺接している。
【0037】
また、図3に示すように、第1の操作機8を作動してカット弁弁体6を全開位置Oから全閉位置Sまで回転させることにより、弁箱スリーブ5の上端開口部13がカット弁弁体6で閉鎖される。さらに、第2の操作機9を作動してシール弁弁体7を全開位置Oから全閉位置Sまで回転させることにより、弁箱スリーブ5の下端開口部14がシール弁弁体7で閉鎖される。
【0038】
さらに、カット弁弁体6の全開位置Oと全閉位置Sとにおいて、図5に示すように、カット弁弁座24は上記間隙31の入口側を全周にわたり遮断している。これにより、石炭の粉粒体の一部が上記間隙31を通って弁棒27a,27b側へ流れ込んでしまうのを防止することができ、石炭の粉粒体が弁棒27a,27bの各回転摺動部分Aに噛み込むのを防止することができる。
【0039】
次に、本発明における第2の実施の形態を図6,図7を参照して説明する。
上記第1の実施の形態では、接続管115を介して複合弁1をホッパ84の底部に接続しているが、本第2の実施の形態では、接続管115を設けず、図6,図7に示すように、複合弁1をホッパ40の底部に直接接続している。
【0040】
すなわち、ホッパ40は、下部に、底部開口部40aと底部フランジ部40bとを有している。上記底部開口部40aの内周面は、下方ほど縮径する底部円錐面40c(円錐断面形状部分)として形成されている。
【0041】
複合弁1の弁箱4は、上部に、弁箱流入口10と流入口側フランジ部43とを有している。弁箱流入口10の内周面から弁箱スリーブ5の上端開口部13の内周面にわたって入口側テーパ面44が形成されている。入口側テーパ面44は、上側(すなわち弁箱流入口10側)から下側(すなわち上端開口部13側)になるほど直径が縮小している。
【0042】
ホッパ40の底部フランジ部40bと複合弁1の流入口側フランジ部43とがボルト,ナットにより連結されている。入口側テーパ面44は、ホッパ40の底部円錐面40cと同角度で傾斜しており、底部円錐面40cに連続している。
【0043】
尚、均圧管118はホッパ40の底部と供給管116とに連通している。また、入口側テーパ面44はホッパ40の底部円錐面40cと同角度で傾斜しているが、必ずしも同角度でなくてもよい。
【0044】
以下、上記構成における作用を説明する。
カット弁弁体6とシール弁弁体7とを閉じた状態から石炭の粉粒体をガス化炉81へ移送する場合、先ず、均圧弁119を開いて、複合弁1の下流側と上流側との圧力を均等にする。次に、図7の仮想線で示すように、シール弁弁体7を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させ、その後、図7の実線で示すように、カット弁弁体6を全閉位置Sから全開位置Oまで回転させる。
【0045】
これにより、ホッパ40内に貯留されている石炭の粉粒体が、底部開口部40aを通って、弁箱流入口10へ流れ込む。この際、複合弁1の入口側テーパ面44はホッパ40の底部円錐面40cに連続しているため、石炭の粉粒体の弁箱4への流入が促進される。また、底部円錐面40cの下部を入口側テーパ面44と置き換える(兼用する)ことができるため、底部円錐面40cの高さを低減することができ、ホッパ40の全体の高さを従来のものより小型化できる。
【0046】
上記各実施の形態では、流体の一例として石炭の粉粒体を挙げたが、石炭以外の粉粒体であってもよい。また、ガス体の一例として窒素ガスを挙げたが、窒素ガス以外の気体であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1の実施の形態における複合弁の正面側から見た縦断面図である。
【図2】図1におけるX−X矢視図であり、カット弁弁体とシール弁弁体とを全開した状態を示す。
【図3】図1におけるX−X矢視図であり、カット弁弁体とシール弁弁体とを全閉した状態を示す。
【図4】同、複合弁のカット弁弁体の斜視図である。
【図5】図1におけるカット弁弁体部分の拡大図である。
【図6】本発明の第2の実施の形態における複合弁を設けた石炭粉粒体移送用の管路系の図である。
【図7】同、複合弁の断面図である。
【図8】従来の複合弁を設けた石炭粉粒体移送用の管路系の図である。
【図9】同、複合弁の断面図であり、中心線から右半分はカット弁弁体とシール弁弁体とを全閉した状態を示し、左半分はカット弁弁体とシール弁弁体とを全開した状態を示す。
【図10】図9におけるX−X矢視図であり、(a)はカット弁弁体とシール弁弁体とを全閉した状態を示し、(b)はカット弁弁体を全閉し、シール弁弁体を全開した状態を示す。
【図11】図9におけるX−X矢視図であり、カット弁弁体とシール弁弁体とを全開した状態を示す。
【符号の説明】
【0048】
1 複合弁
4 弁箱
5 弁箱スリーブ
6 カット弁弁体(第1の弁体)
6d 弁体開口部
6e 第1のシート面
7 シール弁弁体(第2の弁体)
7d 第2のシート面
10 弁箱流入口
11 弁箱流出口
13 上端開口部(一端開口部)
14 下端開口部(他端開口部)
19 回転軸心
21 退避スペース
24 カット弁弁座(第1の弁座)
25 シール弁弁座(第2の弁座)
27a,27b 弁棒
31 間隙
44 入口側テーパ面
【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁箱流入口と弁箱流出口とを備えた弁箱内に筒状の弁箱スリーブが設けられ、
弁箱スリーブの一端開口部が弁箱流入口に連通し、弁箱スリーブの他端開口部が弁箱内で開口して弁箱流出口に対向し、
弁箱スリーブ内に、弁箱スリーブの一端開口部を開閉する回転自在な第1の弁体と退避スペースとが設けられ、
退避スペースは弁箱スリーブの一端開口部よりも径方向外向きに拡がっており、
弁箱内に、弁箱スリーブの他端開口部を開閉する回転自在な第2の弁体が設けられ、
第2の弁体は開位置で弁箱の内周部と弁箱スリーブの外周部との間に退避し、
第1の弁体は、開位置で、弁箱スリーブ内の退避スペースに退避することを特徴とする複合弁。
【請求項2】
弁箱の内周面に、弁箱流入口から弁箱スリーブの一端開口部にわたって入口側テーパ面が形成され、
入口側テーパ面は、弁箱流入口側から弁箱スリーブの一端開口部側になるほど縮径していることを特徴とする請求項1記載の複合弁。
【請求項3】
第1の弁体は外側に球面状の第1のシート面を有し、
第2の弁体は内側に球面状の第2のシート面を有し、
弁箱スリーブに、第1のシート面に摺接する円環状の第1の弁座と、第2のシート面に摺接する第2の弁座とが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合弁。
【請求項4】
第1の弁体は、開位置において弁箱スリーブの一端開口部に連通し且つ閉位置において弁箱スリーブの一端開口部から退避する弁体開口部を有し、
弁箱スリーブ内の流れ方向を横切る方向の軸心の周りで第1の弁体を回転自在に支持する
一対の弁棒が設けられ、
第1の弁座は、第1の弁体の外側と弁箱スリーブの内周面との間に形成されて弁箱スリーブの一端開口部側から弁棒側に続く間隙の入口側を全周にわたり遮断して、粉粒体状流体の上記間隙への流入を防止していることを特徴とする請求項3記載の複合弁。
【請求項1】
弁箱流入口と弁箱流出口とを備えた弁箱内に筒状の弁箱スリーブが設けられ、
弁箱スリーブの一端開口部が弁箱流入口に連通し、弁箱スリーブの他端開口部が弁箱内で開口して弁箱流出口に対向し、
弁箱スリーブ内に、弁箱スリーブの一端開口部を開閉する回転自在な第1の弁体と退避スペースとが設けられ、
退避スペースは弁箱スリーブの一端開口部よりも径方向外向きに拡がっており、
弁箱内に、弁箱スリーブの他端開口部を開閉する回転自在な第2の弁体が設けられ、
第2の弁体は開位置で弁箱の内周部と弁箱スリーブの外周部との間に退避し、
第1の弁体は、開位置で、弁箱スリーブ内の退避スペースに退避することを特徴とする複合弁。
【請求項2】
弁箱の内周面に、弁箱流入口から弁箱スリーブの一端開口部にわたって入口側テーパ面が形成され、
入口側テーパ面は、弁箱流入口側から弁箱スリーブの一端開口部側になるほど縮径していることを特徴とする請求項1記載の複合弁。
【請求項3】
第1の弁体は外側に球面状の第1のシート面を有し、
第2の弁体は内側に球面状の第2のシート面を有し、
弁箱スリーブに、第1のシート面に摺接する円環状の第1の弁座と、第2のシート面に摺接する第2の弁座とが設けられていることを特徴とする請求項1又は請求項2記載の複合弁。
【請求項4】
第1の弁体は、開位置において弁箱スリーブの一端開口部に連通し且つ閉位置において弁箱スリーブの一端開口部から退避する弁体開口部を有し、
弁箱スリーブ内の流れ方向を横切る方向の軸心の周りで第1の弁体を回転自在に支持する
一対の弁棒が設けられ、
第1の弁座は、第1の弁体の外側と弁箱スリーブの内周面との間に形成されて弁箱スリーブの一端開口部側から弁棒側に続く間隙の入口側を全周にわたり遮断して、粉粒体状流体の上記間隙への流入を防止していることを特徴とする請求項3記載の複合弁。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−24856(P2009−24856A)
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−191493(P2007−191493)
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年2月5日(2009.2.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年7月24日(2007.7.24)
【出願人】(000001052)株式会社クボタ (4,415)
【Fターム(参考)】
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