説明

複合押出機の押出制御方法

【課題】 運転開始時に少ないスクラップ量で単位重量が一定で所定幅も確保した高品質のトップトレッドを効率良く押出成形できる複合押出機の押出制御方法を供する。
【解決手段】 複数本の押出機により搬送される互いに異なる未加硫ゴムを共通のヘッドに集合し同ヘッド15に取り付けられた1つの口金16から押し出してトップトレッドTを成形する複合押出機10の押出制御方法において、トップトレッドTの一構成部材であるベースゴム1に使用されるベースゴム押出機11を定常の押出運転の直前に所定時間定常運転より高速運転させる複合押出機の押出制御方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のゴム部材を1つの口金から押出し成形する複合押出機の押出制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム材料を押出し成形する押出機は、筒状のケース内で回転するスクリューによってケース内に投入されたゴム材料を搬送し下流端の口金近傍で加圧し、口金の形状に成形して押し出す。
【0003】
ゴム材料は、口金近傍で加圧されることで発熱して昇温するが、これを温水などを循環させて温度を一定に保つようにし、スクリューの回転速度を一定とすることで、ゴム成形物を一定の押出量で押し出すことができ、単位重量(単位長さ当りの重量)が一定の安定した品質のゴム成形物を得ることができる。
【0004】
しかし、過渡期の運転再開時を含む押出機の運転開始時には、口金近傍の圧力が低く、ゴム自体も低温であるので、ゴム成形物の単位押出量が安定せず、品質を維持することが難しい。
そのため、従来は、運転開始時に、引出コンベアの線速度を調整する例(特許文献1参照)やスクリューの回転速度を制御する例(特許文献2参照)が提案されている。
【0005】
【特許文献1】特許第3342901号公報
【特許文献2】特開平11−77803号公報
【0006】
特許文献1は、押出機より押し出されたゴム成形物を受け取り搬送する引出コンベアの線速度を変えることで、押し出されたゴム成形物を幾らか伸縮して単位重量を変更できるため、押し出されたゴム成形物を受け取った引出コンベア上でゴム成形物の重量を計測して、この計測値と予め定められた基準値との偏差に基づいて引出コンベアの線速度を調整して最終的なゴム成形物の単位重量を一定に保とうとするものである。
【0007】
特許文献2は、押出機の吐出出口近傍に温度センサを設け、押出開始温度および押出し過程中の温度に基づいて予め定めた特性に従ってスクリューの回転速度を制御することで、押出し成形されるゴム成形物の単位重量を一定に保とうとするものである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかし、ゴム質の異なる複数のゴム材料を複合して構成されるゴム成形物を押出成形する場合、特に熱の入り難いベースゴムを構成部材とする扁平帯状のトップトレッドの場合、前記特許文献1、2のようにしてゴム成形物の単位重量を一定にしたとしても、幅方向両端部までゴムが行き渡らず所定の幅が確保できない部分が多く生じて、品質維持のために結局除去しなければならないスクラップ量が多くなる。
【0009】
本発明は、かかる点に鑑みなされたもので、その目的とする処は、運転開始時に少ないスクラップ量で単位重量が一定で所定幅も確保した高品質のトップトレッドを効率良く押出成形できる複合押出機の押出制御方法を供する点にある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、請求項1記載の発明は、複数本の押出機により搬送される互いに異なる未加硫ゴムを共通のヘッドに集合し同ヘッドに取り付けられた1つの口金から押し出してトップトレッドを成形する複合押出機の押出制御方法において、前記トップトレッドの一構成部材であるベースゴムに使用されるベースゴム押出機を定常の押出運転の直前に所定時間定常運転より高速運転させる複合押出機の押出制御方法とした。
【0011】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の複合押出機の押出制御方法において、前記ベースゴム押出機の高速運転が、スクリューの定常回転速度の1.5倍以上の回転速度でスクリューを高速回転させることであることを特徴とする。
【0012】
請求項3記載の発明は、請求項1または請求項2記載の複合押出機の押出制御方法において、前記ベースゴム押出機の高速運転する所定時間が、約1分間であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
請求項1記載の複合押出機の押出制御方法によれば、ベースゴム押出機を定常の押出運転の直前に所定時間定常運転より高速運転させるので、トップトレッドの一構成部材である最も熱の入り難いゴム質のベースゴムが事前に高速運転により押し出されるので、ベースゴムが加圧されることにより早めに昇温した状態で、他のゴム材料とともに定常の押出運転が開始される。
【0014】
したがって、定常の押出運転が開始されると、最も熱の入り難いベースゴムが昇温され流動性がよい状態で、ゴム材料とともに押出成形されるので、単位重量が所定重量に安定して確保されるとともに、ゴム材料が幅方向両端部まで行き渡り所定の幅を確保することができる。
そして、定常の押出運転の前の所定時間高速運転されて押し出されたベースゴムが、主にスクラップとして除去されるので、スクラップ量が少なくてすむ。
【0015】
請求項2記載の複合押出機の押出制御方法によれば、スクリューの定常回転速度の1.5倍以上の回転速度でスクリューを高速回転させてベースゴム押出機を高速運転するので、ベースゴムを加圧により速やかに昇温することができる。
【0016】
請求項3記載の複合押出機の押出制御方法によれば、ベースゴム押出機を、定常の押出運転の直前に約1分間高速運転するので、ベースゴムの必要な昇温をできるだけ短時間で実行することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明に係る一実施の形態について図1ないし図4に基づいて説明する。
本実施の形態に係る複合押出機10および引出コンベア20の平面図を図1に示す。
複合押出機10は、トップトレッドTを構成する3種類のゴム材料であるベースゴム1,キャップゴム2,ミニサイドゴム3をそれぞれ押し出すベースゴム押出機11,キャップゴム押出機12,サイドゴム押出機13の以上3本の押出機11,12,13を組み合わせて構成されている。
【0018】
各押出機11,12,13は、全て同じ構造であり、円筒状のシリンダケース11c,12c,13c内に同軸にスクリュー11s,12s,13sが回転自在に内蔵され、スクリュー11s,12s,13sの上流端側が減速機構を介してモータ11m,12m,13mの駆動軸に連結され、モータ11m,12m,13mの駆動により減速されてスクリュー11s,12s,13sが軸中心に回転する。
【0019】
3本の押出機11,12,13は、下流端のヘッド15を共通にして90度の間隔で放射方向に延びている。
すなわち、ヘッド15を中心にベースゴム押出機11とキャップゴム押出機12が反対方向に延出し、この両者に直角にサイドゴム押出機13が配置されている。
【0020】
各押出機11,12,13のシリンダケース11c,12c,13cには、上流側にゴムを投入する投入口11h,12h,13hが設けられている。
ヘッド15には、サイドゴム押出機13と反対側に口金16が備えられ、口金16からサイドゴム押出機13と反対方向にトップトレッドTが押し出される。
【0021】
口金16の下方には、引出コンベア20が配置されている。
引出コンベア20は、前後一対のローラ21,22間にコンベアベルト23が過渡され、コンベアベルト23は口金16の下方からトップトレッドTの押し出し方向に延設されて、口金16から押し出されたトップトレッドTを受け、押し出し方向に搬送する。
【0022】
口金16を保持するヘッド15内では、各押出機11,12,13の連結部から口金16への流路が形成されており、図1において右側に配置されたベースゴム押出機11の流路は直角に屈曲して口金16開口の下部に至り、左側に配置されたキャップゴム押出機12の流路は直角に屈曲して口金16開口の下部に至り、上側に配置されたサイドゴム押出機13の流路は左右に分岐して口金16開口の左右端部に至る。
【0023】
以上のような複合押出機10において、各押出機11,12,13がモータ11m,12m,13mの駆動によりスクリュー11s,12s,13sを回転し、投入口11h,12h,13hより投入された各ゴム材料を練りながらヘッド15に向けて搬送し、1つの口金16に集合し、それぞれ所定部位を占めて口金16により所定形状に成形されて押し出され、トップトレッドTが形成される。
【0024】
押し出し成形されたトップトレッドTの断面を図2に示す。
トップトレッドTの断面は扁平台形状をなし、ベースゴム押出機11により押し出されたベースゴム1が下辺に沿った下部分に分布し、その上にキャップゴム押出機12により押し出されたキャップゴム2が分布し、左右両端にミニサイドゴム3が分布している。
【0025】
複合押出機10の定常運転時には、スクリュー11s,12s,13sの回転により搬送された各ゴム材料は、ヘッド15の口金16近傍で加圧されて、発熱して昇温するが、図示されない温水の循環により所定温度に保たれ、かつモータ11m,12m,13mによるスクリュー11s,12s,13sの所定回転速度による回転で、押し出し成形されるトップトレッドTの押出量すなわち単位重量は一定に保たれ、かつ断面形状も所定の扁平台形状を保つことができ安定した高品質のトップトレッドTを製造することができる。
【0026】
そして、過渡期の運転再開を含む複合押出機10の運転開始時には、ベースゴムが他のキャップゴムやミニサイドゴムに比べて熱の入りが悪いため、定常の押出運転の直前にベースゴム押出機を所定時間定常運転より高速運転させて、予め昇温させる運転制御がなされる。
【0027】
運転制御は、コンピュータによる制御装置30により実行され、この制御系の概略ブロック図を図3に示す。
制御装置30は、CPU31がROM32に記録されたプログラムに従いRAM33を逐次利用して各種処理を行う。
制御装置30は、タイマー34を備えている。
【0028】
CPU31は、インタフェース35を介して制御信号を、ベースゴム押出機11,キャップゴム押出機12,サイドゴム押出機13,引出コンベア20のそれぞれのモータドライバ11d,12d,13d,20dに出力し、モータドライバ11d,12d,13d,20dによりースゴム押出機11,キャップゴム押出機12,サイドゴム押出機13,引出コンベア20が駆動される。
【0029】
以上の制御系による制御手順を図4のフローチャートに示し説明する。
ステップ1では、運転開始の指示の有無を判別しており、該指示があるとステップ2に進む。
【0030】
ステップ2に進むと、ベースゴム押出機11を高速運転する。
モータ11mの駆動によりスクリュー11sを、定常回転速度の1.5倍以上の高速で回転させる。
次のステップ3では、タイマー34により1分間の計時を行っており、1分経過を判別するまで、ステップ2に戻って、ベースゴム押出機11の高速運転を続行する。
この間に、熱の入り難いゴム質のベースゴムが加圧されることにより昇温され、ベースゴムのみが押し出される。
【0031】
ベースゴム押出機11が、1分間高速運転されると、ステップ3からステップ4に抜ける。
ステップ4では、全押出機すなわちベースゴム押出機11を含むキャップゴム押出機12,サイドゴム押出機13が、それぞれ所定のスクリュー回転速度で定常運転される。
なお、引出コンベア20もともに駆動される。
次のステップ5で運転終了の指示が判別されるまで、ステップ4に戻り、全押出機の定常運転が続行される。
【0032】
ベースゴム押出機11の高速運転により最も熱の入り難いベースゴムが早めに昇温した状態で、他のキャップゴムやミニサイドゴムとともに定常の押出運転が開始されるので、単位重量が所定重量に安定して確保されるとともに、ゴム材料が幅方向両端部まで行き渡り所定の幅を確保して所定の断面形状のトップトレッドTが押出成形される。
運転終了の指示があると、ステップ5からステップ6に抜け、全押出機11,12,13および引出コンベア20が運転を停止する。
【0033】
以上のように、複合押出機10は制御され、簡単な制御で高い品質が維持されたトップトレッドTを効率的に押出成形することができる。
【0034】
押し出されたトップトレッドTの先端に、ベースゴム押出機11の高速運転により押し出されたベースゴムが付いているので、同ベースゴムおよびその付け根から若干後方部分をスクラップとして除去する。
したがって、定常の押出運転の前に所定時間高速運転されて押し出されたベースゴムが、主にスクラップとして除去されるので、スクラップ量が大幅に減少する。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本発明の一実施の形態に係る複合押出機および引出コンベアの平面図である。
【図2】押出成形されたトップトレッドの断面図である。
【図3】本複合押出機の制御系の概略ブロック図である。
【図4】同制御系による制御手順を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0036】
T…トップトレッド、
1…ベースゴム、2…キャップゴム、3…ミニサイドゴム、
10…複合押出機、11…ベースゴム押出機、12…キャップゴム押出機、13…サイドゴム押出機、15…ヘッド、16…口金、20…引出コンベア、
30…制御装置、31…CPU,32…ROM,33…RAM,34…タイマー,35…インタフェース。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数本の押出機により搬送される互いに異なる未加硫ゴムを共通のヘッドに集合し同ヘッドに取り付けられた1つの口金から押し出してトップトレッドを成形する複合押出機の押出制御方法において、
前記トップトレッドの一構成部材であるベースゴムに使用されるベースゴム押出機を定常の押出運転の直前に所定時間定常運転より高速運転させることを特徴とする複合押出機の押出制御方法。
【請求項2】
前記ベースゴム押出機の高速運転が、スクリューの定常回転速度の1.5倍以上の回転速度でスクリューを高速回転させることであることを特徴とする請求項1記載の複合押出機の押出制御方法。
【請求項3】
前記ベースゴム押出機の高速運転する所定時間が、約1分間であることを特徴とする請求項1または請求項2記載の複合押出機の押出制御方法。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2006−192582(P2006−192582A)
【公開日】平成18年7月27日(2006.7.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−3453(P2005−3453)
【出願日】平成17年1月11日(2005.1.11)
【出願人】(000005278)株式会社ブリヂストン (11,469)
【Fターム(参考)】