説明

複合操作型電子部品

【課題】各種電子機器の入力操作部分などに使用され、操作つまみへの回転操作および押圧操作、傾倒操作により駆動される複合操作型電子部品に関し、高さ寸法が低背化されたものを提供する。
【解決手段】ケース21に回転可能に保持された回転体51の中央孔55に、機器側の操作つまみ91の中央脚92およびその周囲を囲む四つの弾性爪93を上下動および傾倒可能に挿通させ、ケース21に配された押圧型中央スイッチ31または押圧型周辺スイッチ41〜44のいずれかを上記操作つまみ91そのもので作動可能な構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として各種電子機器の入力操作部分などに使用され、操作つまみへの回転操作および押圧操作、傾倒操作により駆動される複合操作型電子部品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のこの種の複合操作型電子部品について、図11〜図14を用いて説明する。
【0003】
図11は従来の複合操作型電子部品の外観斜視図、図12は同図11のP−P線における断面図、図13は同分解斜視図である。
【0004】
同図に示すように、下方開放のコの字形の金属カバー1と四角形状の枠体2および固定接点基板部3により形成された箱型ケースには、上面中央に円形開口孔1Aが設けられると共に、下部の固定接点基板部3には、中央に一個およびその周辺位置に複数個の、下方に押すことにより作動する押圧型スイッチ7Aおよび7B,7C,…が配設され、更に固定弾性接点8が上方に突出して設けられている。
【0005】
そして、箱型ケースの中間壁部4に回転可能に保持された回転体9には、上記の固定弾性接点8に対応した可動接点としての接点板10が保持されている。
【0006】
また、12は操作体で、水平断面が多角形である下端の多角形球体12Aが回転体9中央の多角形の貫通孔9Aに、独立して上下動および傾倒可能であるが共回りするように係合すると共に、その下面は中央の押圧型スイッチ7Aに当接しており、上方に伸びた円柱状の操作レバー12Bが駆動体13の中央円形孔13Aを貫通して箱型ケース上面の円形開口部1Aから突出している。
【0007】
そして、駆動体13は略多角形の板状で、上面中央の球状突部13Bが箱型ケース上面の円形開口部1A下面に対して回転傾倒可能に当接すると共に、その中央円形孔13Aには操作体12の操作レバー12Bが上下動および回転可能に係合している。
【0008】
さらに、駆動体13は、上記周辺位置に配された押圧型スイッチ7B,7C,…に各々当接する突部14A,14B,…を下面に有している。
【0009】
なお、11は回転操作時に節度感を発生するためのクリックばねであり、中間壁部4の下面側にカシメ固定されている。
【0010】
このような構成の複合操作型電子部品の動作について説明すると、まず、操作レバー12Bに横方向の押し力を加えて、図11および図12に矢印Xで示す右方向に傾倒操作すると、図14に示すように、操作体12は下端の多角形球体12Aを中心として右方向に回動し、これに伴って操作レバー12Bの中間に係合している駆動体13がXI方向に回動して傾倒し、その方向に応じた下端部の突部14Aが周辺の押圧型スイッチ7Bを下方に押して作動させる。
【0011】
そして、操作レバー12Bに加えた横方向の押し力を除くと、押圧型スイッチ7Bの弾性復元力によって突部14Aすなわち駆動体13は押し戻されて、操作体12を元の図12の中立位置に復帰させる。
【0012】
次に、操作レバー12Bを回転操作して操作体12を中立位置のままで水平回転させると、駆動体13は動かないで操作体12の下端の多角形球体12Aと共回りするように係合している回転体9が回転させられ、その下面の接点板10に対して固定弾性接点8が弾接摺動し所定の電気信号が得られる。
【0013】
また、操作レバー12Bに下向きの押し力を加えて、図11および図12に矢印Vで示すように下方へ押圧操作すると、駆動体13および回転体9は動かないで、操作体12下端の多角形球体12Aの下面が中央の押圧型スイッチ7Aを下方に押して作動させることができるものであった。
【0014】
そして、この複合操作型電子部品は、操作レバー12Bの上端に機器側の操作つまみが装着されて搭載状態とされるものであった。
【0015】
なお、この出願の発明に関連する先行技術文献情報としては、例えば、特許文献1、特許文献2が知られている。
【特許文献1】特開平10−241501号公報
【特許文献2】特開2003−263940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
しかしながら上記従来の複合操作型電子部品は、操作体12が上方に突出すると共にその操作体12上端に機器側の操作つまみを装着して搭載状態となるものであったため、その操作つまみを含むと高さ寸法が高くなってしまうという課題があった。
【0017】
本発明は、このような従来の課題を解決するものであり、操作つまみの厚み分を含んで低い高さ寸法で構成できる複合操作型電子部品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために本発明は、以下の構成を有するものである。
【0019】
本発明の請求項1に記載の発明は、押圧型中央スイッチと複数の押圧型周辺スイッチとの間の位置に回転操作用の固定接点が配されたケースと、上記固定接点に係合する可動接点がフランジ部に固定された中央孔付きの回転体と、上記ケースに結合され上記回転体の上方への位置規制を行うカバー部材と、つまみ本体の下面に突設された中央脚およびその周囲に配された係合部が、上記回転体の中央孔に上下動かつ傾倒可能なように挿通され、上記係合部の上記中央孔への係合により上記つまみ本体の回転に応じて上記回転体を共回りさせ、かつ上記つまみ本体の下方への押圧操作で上記押圧型中央スイッチを上記中央脚で押圧し、上記係合部が上記回転体の中央孔と係合した箇所を支点として上記つまみ本体が傾倒した際、その傾倒方向に応じた上記押圧型周辺スイッチをその下面のリング状押圧部で押圧する機器側の操作つまみとからなる複合操作型電子部品としたものであり、各押圧型スイッチを機器側の操作つまみにより押圧する構成としたため、操作つまみを含んで高さ方向の低背化が図れたものにできるという作用を有する。
【0020】
請求項2に記載の発明は、請求項1記載の発明において、コイルばねなどの弾性体を、つまみ本体の下面と回転体またはカバー部材との間に配したものであり、操作つまみの下方への移動または傾倒動作後の復帰が補助され、スムーズな動作のものにできる上、操作つまみのがたつきの少ない高品位のものにできるという作用を有する。
【0021】
請求項3に記載の発明は、請求項1記載の発明において、中央脚の周囲に複数の弾性爪が配され、それらが係合部をなし、それに応じた形状で形成された回転体の中央孔に上記各弾性爪が挿通されて構成されたものであり、簡素な構成で、回転体に対し共回り可能に係合すると共に、操作つまみの上下動および傾倒動作にも適用するものにでき、しかも操作つまみの傾倒動作時にはその弾性爪の撓みに応じた復帰力も付加されるものにできるという作用を有する。
【0022】
請求項4に記載の発明は、請求項1記載の発明において、回転体のフランジ部の上面が凹凸面で構成され、それに弾接するダボ部を有するクリックばねが、ケースに設けられた固定用孔部に圧入固定されると共に、カバー部材で上方への抜け止めがなされるように押さえ込まれる構成としたものであり、簡素な作業でクリックばねを容易に装着できるという作用を有する。
【0023】
請求項5に記載の発明は、請求項1記載の発明において、つまみ本体のリング状押圧部と押圧型周辺スイッチの操作部との間に摩擦緩和部材を介在させたものであり、操作つまみの回転操作時に、操作つまみが若干傾倒してリング状押圧部が押圧型周辺スイッチの操作部上に当接しつつ回転しても、回転操作状態が滑らかでリング状押圧部の削れなども低減させることができるという作用を有する。
【発明の効果】
【0024】
以上のように本発明によれば、外装部材である機器側の操作つまみへの回転操作で所定信号が得られると共に、その機器側の操作つまみそのもので各押圧型スイッチの操作が可能な構成としたため、上記操作つまみの厚み分を含んで高さ寸法が低背化された複合操作型電子部品を実現できるという有利な効果が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0026】
(実施の形態)
図1は本発明の一実施の形態による複合操作型電子部品の断面図、図2は同分解斜視図、図3は同操作つまみおよびコイルばねを除いた状態での外観斜視図、図4は同要部であるケースの上面図、図5は同図3のQ−Q線における断面図、図6は同要部である操作つまみの下面側からみた斜視図である。
【0027】
同図において、21は、外形が略正方形に形成された絶縁樹脂製のケースであり、その中央位置には押圧型中央スイッチ31を備え、その角部位置には四つの押圧型周辺スイッチ41〜44を備えている。
【0028】
そして、押圧型中央スイッチ31は、ケース21中央に設けた円形窪みの底面に露出状態で配された中央接点31Aおよび外側接点31Bと、その中央接点31Aに下面が所定間隔をあけて対峙するように外側接点31B上に載せられた上方凸型ドーム状に形成された金属薄板からなる可動接点31Cと、可動接点31C上を覆うように上記円形窪み周囲の上面部に貼り付けられた可撓性を有する絶縁シート31Dから構成されている。
【0029】
一方、押圧型周辺スイッチ41〜44のそれぞれは、ケース21の角部の各々に設けた円形窪みの底面に露出状態で配された中央接点41A〜44Aおよび外側接点41B〜44Bと、その中央接点41A〜44Aに下面が所定間隔をあけて対峙するように外側接点41B〜44B上に載せられた上方凸型ドーム状に形成された金属薄板からなる可動接点41C〜44Cと、可動接点41C〜44C上が覆われるように上記各円形窪み周囲の上面部に貼り付けられた可撓性を有する絶縁シート41D〜44Dと、その絶縁シート41D〜44D上に載せられた駆動体41E〜44Eから構成されている。なお、各駆動体41E〜44Eは、それぞれ高さ位置の中間位置が円形広幅部41F〜44Fとして形成され、それを境にして、上方には突出した操作部41G〜44Gが、下方にも突出した小径押圧部41H〜44H(図中には小径押圧部43H、44Hはあらわれず。)を有している。
【0030】
そして、ケース21は、上方側に同心で突出する略円形リング状の内壁22および外壁23を備えている。上記押圧型中央スイッチ31は内壁22内の中央位置に配設され、各押圧型周辺スイッチ41〜44は外壁23の外側位置に配設されている。なお、内壁22、外壁23および押圧型中央スイッチ31の中心位置は合わせられており、また内壁22の高さは外壁23よりも低い寸法で設けられている。
【0031】
また、その内壁22と外壁23の間のケース21底部には、回転機能部用の固定接点25が所定パターンで表出している。なお、図4などに示す固定接点25は、インクリメンタルエンコーダに応じた接点パターンのものである。
【0032】
さらに、外壁23には、90度ピッチで矩形突起24が設けられている。そして、その一方側の対向位置にあたる矩形突起24の各々には、固定用孔部24Aが下方に向けてそれぞれ設けられている。
【0033】
そして、51は、フランジ部51A下面に可動接点52が固定された絶縁樹脂製の回転体である。なお、図2に示すように、可動接点52としては、互いに導通する四つの弾性接触部が90度間隔で配されたものを図示し、さらには上記固定接点25もそれに対応する三つの互いに独立形成された接点パターンのものを図示している。
【0034】
そして、図7は、ケース21内における各導電部材の埋設状態を示す図であり、同図からもわかるように、ケース21の側辺部には、固定接点25から三つの独立した端子が、また押圧型中央スイッチ31の中央接点31Aおよび外側接点31Bから二つの独立した端子が、さらには押圧型周辺スイッチ41〜44の中央接点41A〜44Aおよび外側接点41B〜44Bから八つの独立した端子が導出されている。それら合計13本の端子は、それぞれ表面実装型の端子形状に形成され、ケース21の四つの側辺部のそれぞれから半田付け可能に導出されている。なお、端子総数が13本であるため、半田付け装着後にはケース21の四つの側辺部のすべてが使用基板に対して強固に半田付け固定された装着状態になると共に、その中で一つの側辺部のみ三つの端子が導出されているため、そこを目印として装着方向の確認なども行える。
【0035】
なお、ケース21内における各導電部材の埋設状態や構成は上述のもののみに限られず、異なるものであってもよい。例えば、図8に示すように、押圧型中央スイッチ31の外側接点31Bとエンコーダにおけるコモンパターン25Aとが一体形成されたものをケース21内に埋設させると、端子数の少ないものとなる。
【0036】
そして、上記回転体51は、中央孔55を有し、その中央孔55の上部から中間位置までは、略十字状に形成され、その中間位置から下方は、円形孔として構成されており、その下方の円形孔が、ケース21の内壁22の外周面で回転可能に保持されるようにして、フランジ部51Aの外周下面が外壁23の内側近傍位置に設けられた支持用段部に載せられて組み込まれている。
【0037】
また、回転体51のフランジ部51A上面は放射状の凹凸面に形成されている。その凹凸の配設角度ピッチは、固定接点25と可動接点52とで生成される出力信号に応じたものとなっている。
【0038】
そして、61は、略円形リング状で、その一方側の対角位置がそれぞれ水平部に構成されると共に、上記各水平部の外方端部位置から下方に向けて垂下部61Aが延設されているクリックばねである。その垂下部61Aの下方部分は矢尻状に形成されている。
【0039】
上記クリックばね61は、各垂下部61Aが上記ケース21の矩形突起24に設けられた固定用孔部24A内にそれぞれ圧入されてケース21に装着されている。
【0040】
そして、上記クリックばね61の配置状態で、水平部間に形成された一方側の弾性アームに設けられたダボ部61Bは、回転体51のフランジ部51A上面に設けられた凹凸面に弾接している。また、所定トルクを発生させるため他方側の弾性アームに設けられた摺動面部も同じくその凸部上に弾接している。
【0041】
71は、金属板製のカバー部材であり、下方面部71Bの側端部から下方に向けて曲げ形成されたカシメ脚71Aでケース21を抱きカシメしてケース21に結合されている。そして、その下方面部71Bは、平坦な板状でケース21の上面外周部に応じた形状に形成され、ケース21上部に重ね合わされている。また、下方面部71Bの角部位置にはそれぞれ貫通孔が設けられており、その各貫通孔から上述した各押圧型周辺スイッチ41〜44の各駆動体41E〜44Eにおける操作部41G〜44Gが所定量上方に突出している。そして、その各駆動体41E〜44Eは、対応する各可動接点41C〜44Cからの上方への付勢力で、各円形広幅部41F〜44F上面が下方面部71Bに接し、がたつきなどの発生が抑えられている。
【0042】
また、カバー部材71は、中央部分に、下方面部71Bよりも上方に位置する上方面部71Cを有し、この上方面部71Cと下方面部71Bとの間は桟部を介して繋がっている。
【0043】
そして、上方面部71Cは、ケース21の外壁23上に配され、上方面部71Cの中央円形孔71Dの端部で、回転体51の上方への抜け止め防止機能を果たす。
【0044】
さらに、上方面部71Cは、クリックばね61の水平部上にも接しており、当該部分でクリックばね61の抜け止め機能をも果たす。なお、クリックばね61の水平部の下面は、矩形突起24の内壁部の上面で支持されており、それらによってクリックばね61の水平部は上下方向には移動しないように挟み込まれて強固に保持された状態となっている。なお、クリックばね61は、ケース21への圧入固定後に、上方からカバー部材71をケース21に結合させることにより上記装着状態にできるため、簡素な作業でクリックばね61を容易に装着でき、その作業性にも優れる。
【0045】
そして、上方面部71Cの中央円形孔71Dから表出した回転体51の筒状部の上端位置には、上方が大径となるコイルばね81が装着されている。そのコイルばね81の上部は、操作つまみ91の略円盤状に形成されたつまみ本体91A下面に保持されている。なお、この操作つまみ91は、樹脂からなり、機器への搭載状態で、指などにより直接操作される外装部品としてなる機器側のものである。
【0046】
なお、コイルばね81は、他の形状のコイルばね、もしくは他の弾性体であってもよい。また、回転体に装着する以外にカバー部材に装着されていてもよい。さらには、コイルばね81の代わりに、操作つまみ91が回転可能なように、平坦な弾性材料などをカバー部材71の中央円形孔71Dを囲むように配して防塵性の向上を図るようにしてもよい。
【0047】
そして、その略円盤状のつまみ本体91Aは、図6にも示すように、下面中央に、下方に向けて突設された中央脚92およびその周囲を囲むように配された四つの弾性爪93を有している。
【0048】
上記中央脚92は弾性爪93より所定量下方に突出する長さ寸法で配され、その下端は半球状に形成されている。
【0049】
一方、上記中央脚92に対し所定間隔離れた位置で中央脚92をとり囲むように90度ピッチで配された各弾性爪93は、その下端位置に外側に向けて突出する爪部を有している。
【0050】
そして、操作つまみ91は、中央脚92および四つの弾性爪93を回転体51の中央孔55に上方から挿通させて回転体51に組み合わされている。このとき、各弾性爪93は中央孔55上部の十字の直線部のそれぞれに位置を合わせられて挿通されている。なお、各弾性爪93が中心側に向かって若干撓む状態となるようにすれば操作つまみ91のがたつきなども低減される。
【0051】
また、操作つまみ91と回転体51との間に装着されたコイルばね81は、操作つまみ91が回転体51に組み合わされた状態で、上下方向に所定量の圧縮状態となっている。そのばね力により操作つまみ91のつまみ本体91Aは、回転体51に対し上方に付勢され、操作つまみ91の各弾性爪93の爪部が、回転体51の中央孔55における高さ方向の中間段部に各々係止状態となって操作つまみ91は水平状態を保っている。上記構成であれば、コイルばね81からのばね力で操作つまみ91のがたつきが抑えられて高品位のものにできる。なお、上記中央脚92の下端は、押圧型中央スイッチ31の絶縁シート31D上に若干の隙間をあけて対峙している。
【0052】
そして、操作つまみ91において、上記つまみ本体91Aの水平状態で押圧型周辺スイッチ41〜44に対向する下面位置がリング状押圧部94としてなり、そのリング状押圧部94と各押圧型周辺スイッチ41〜44の操作部41G〜44Gとの間には所定間隔があく設定となっている。
【0053】
なお、図1などに示すように、つまみ本体91Aのリング状押圧部94より内側部分を窪んだ形状になし、ケース21の上方に突出する外壁23内の中央部位を収容可能なものとするとよい。また、つまみ本体91A上面の中央位置および周辺位置に、操作突起などを設けることも操作性の向上につながり好ましい。
【0054】
以上のように本発明による複合操作型電子部品は構成されている。
【0055】
そして、上記複合操作型電子部品は、携帯電話などに搭載されて使用され、その搭載状態としては、例えば図9に示すように、携帯電話における外装筐体101の操作面側の中央位置に、上記操作つまみ91におけるつまみ本体91Aの上面部が表出するようにして搭載されることもある。この場合には、操作つまみ91が配された周囲位置にあたる外装筐体101上に、各押圧型周辺スイッチ41〜44の配置位置を示す指標101Aが配設されたものとされる。なお、上記外装筐体101の操作面には、液晶などからなる表示部やテンキー部なども構成されているが詳細な説明は省略する。
【0056】
次に、上記構成の本発明による複合操作型電子部品の動作について説明する。
【0057】
まず、図1に示す操作つまみ91のつまみ本体91Aが水平状態に保たれた非操作状態からつまみ本体91Aを回転操作すると、回転体51の中央孔55に挿通された中央脚92および四つの弾性爪93が回転移動し、その弾性爪93の移動に伴い中央孔55上部に構成された略十字状の壁部が回転方向に押されて回転体51が共回りする。このとき、回転体51は、ケース21およびカバー部材71により保持されつつ回転する。そして、フランジ部51Aの回転に応じて、可動接点52も固定接点25に対して相対的に回転移動し、それに応じて固定接点25からの三つの端子を介して所定の位相差を持ったパルス信号が得られる。
【0058】
なお、当該複合操作型電子部品は、機器への搭載時に操作つまみ91のつまみ本体91A上面を外装筐体101から表出状態で配されることがあることは上述したが、この場合における操作つまみ91への回転操作は、つまみ本体91A上面の周辺部を指の腹でなぞって、または当該周辺部に設けられた操作突起に指を引っ掛けて回転操作されるようになる。
【0059】
上記操作状態で回転操作されると、その操作位置に応じた操作つまみ91部分に弱い下方への押し下げ力が加わるため、当該操作位置に応じたコイルばね81部分がさらに部分的に圧縮状態となって、つまみ本体91Aが、押し下げ側とは反対側となる弾性爪93の爪部根元を支点として若干傾いた状態で回転動作することもある。この状態では、中央脚92を介して押圧型中央スイッチ31に多少の押し下げ力が加わることも考慮されるので、上記動作状態を前提として押圧型中央スイッチ31における可動接点31Cの反転動作力の選定をしておくと、上記回転動作時における押圧型中央スイッチ31のスイッチ状態が不用意に切り換わることを防止できる。
【0060】
また、上記つまみ本体91Aが若干傾いた状態で回転動作する際には、リング状押圧部94が押圧型周辺スイッチ41〜44の操作部41G〜44Gのいずれかに当接状態で回転することも考慮されるが、上記回転動作を前提として押圧型周辺スイッチ41〜44における可動接点41C〜44Cの反転動作力の選定をしておくと上記同様にその回転動作時における押圧型周辺スイッチ41〜44のスイッチ状態の不用意な切り換わりも防止できる。
【0061】
また、若干傾いた状態で回転動作するつまみ本体91Aが操作部41G〜44Gのいずれかに当接状態で回転する場合には、その当接力の影響で回転操作感触が劣化すると共にリング状押圧部94の削れなどが発生することもあるが、その対策としては、例えば図10の斜視図に示すように、リング状押圧部94に沿ってフッ素系樹脂やポリイミド樹脂からなる例えばテープ状などの摩擦緩和部材95を予めつまみ本体91Aに装着し、リング状押圧部94と操作部41G〜44Gとの間に介在させる構成とすればよい。この構成であれば、摩擦緩和部材95の作用で、操作部41G〜44Gのいずれかとリング状押圧部94との間の摩擦力などが緩和され、操作つまみ91の滑らかな回転操作が可能になると共にリング状押圧部94の削れ防止効果も期待できる。
【0062】
そして、上記のように回転体51が回転動作した際には、クリックばね61のダボ部61Bは、フランジ部51Aの回転に応じてその上面の凹凸面上を弾接し所定のクリック感触が生成される。このとき、クリックばね61には圧入固定方向とは反対の抜け方向側への力が働くが、ケース21に結合されたカバー部材71の上方面部71Cで、クリックばね61の水平部を上方から押さえ込んでいる当該構成であれば、クリックばね61の抜けなどの発生もなく、明快なクリック感触が長期間に亘って得られるようになる。
【0063】
次に、図1に示す操作つまみ91の非操作状態からつまみ本体91Aを垂直下方に押し下げ操作すると、コイルばね81が全体的にさらに圧縮されていって操作つまみ91が下方に移動していき、つまみ本体91Aに配された中央脚92下端で絶縁シート31D上から押圧型中央スイッチ31における可動接点31Cの中央部に押し下げ力が加わるようになる。その押し下げ力が所定の大きさを超えると、可動接点31Cの中央部が節度感を伴いつつ反転動作して、その中央部下面が中央接点31Aに接触する。これにより、可動接点31Cを介して中央接点31Aと外側接点31Bとの間が電気的接続状態となり、中央および外側接点31Aおよび31Bからの端子間が導通状態となる。
【0064】
なお、その押圧型中央スイッチ31がオン状態に切り換わった状態で、リング状押圧部94と各押圧型周辺スイッチ41〜44の操作部41G〜44Gとの間は当接しない構成としている。この構成であれば、押圧型中央スイッチ31の動作時の節度感が明快に得られて好ましい。
【0065】
また、その操作つまみ91の下方への移動時には、中央脚92の周囲に配された四つの弾性爪93が、中央孔55上部に構成された略十字状の壁部で下方側に案内されつつ操作つまみ91は移動していくため、操作つまみ91のこじりなども発生し難い。
【0066】
そして、その下方への押し下げ力を除くと、可動接点31Cは自身の復元力により元の上方凸型ドーム状に復元し、中央および外側接点31Aおよび31Bが再び電気的独立状態に戻ると共に、絶縁シート31Dを介して中央脚92を押し上げる。また、コイルばね81も元の状態に戻るため、つまみ本体91Aは両者の上方への付勢力でスムーズに押し戻される。このときも四つの弾性爪93が、中央孔55の略十字状の壁部で案内されつつ操作つまみ91の上方への移動がなされるため、その復帰動作としてもスムーズなものとなり、上記各弾性爪93の爪部が回転体51の中央孔55における中間段部下面にそれぞれ当接することにより操作つまみ91は停止し、図1に示す非操作状態に戻る。
【0067】
なお、この押圧型中央スイッチ31を作動させる押し下げ操作は、操作つまみ91の上面中央部を押し込むように操作すればよい。なお、その操作時およびその復帰動作時に、クリックばね61のダボ部61Bがフランジ部51A上面に設けられた凹部に嵌まり込んで回転体51が停止状態で維持されるようにすることが好ましい。
【0068】
次に、操作つまみ91の上面周辺部を押圧操作して押圧型周辺スイッチ41〜44のいずれかを作動させる動作について説明する。なお、以下には事例として押圧型周辺スイッチ41を作動させる場合の動作を中心に説明する。
【0069】
この場合には、操作つまみ91の上面周辺部に対し、各押圧型周辺スイッチ41〜44が配設されている方向に応じた箇所を押し下げ操作する。このとき、図9の搭載状態とされている場合には、例えば、外装筐体101上の指標101Aなどを目印としつつ、上述のように押し下げ操作する。
【0070】
そして、上記操作に応じて、操作つまみ91は、押し下げ側とは反対側となる弾性爪93の爪部根元を支点として操作された側が下方に位置するように傾倒していく。このとき、その操作つまみ91の四つの弾性爪93の内、傾倒方向に応じて位置するものは、中央孔55の略十字状の壁部で押されて中央側に撓ませられていく。なお、上述したように中央脚92の下端を半球状で構成しておくと、中央脚92が押圧型中央スイッチ31に当接しても傾倒動作がスムーズになされるものとなる。
【0071】
また、その傾倒動作に応じて、操作された側のコイルばね81部分が部分的に大きく圧縮状態となっていき、リング状押圧部94で、対応する押圧型周辺スイッチ41の操作がなされる。
【0072】
つまり、操作された側に応じたリング状押圧部94部分が、対応する押圧型周辺スイッチ41の操作部41Gに当接し、上方から押し下げ力を加えていく。なお、リング状押圧部94が平坦面で構成されている場合には、操作部41Gの上端を半球状に構成しておくとよい。
【0073】
そして、リング状押圧部94で操作部41Gが押し下げられていく駆動体41Eは、絶縁シート41Dを介してその下方の小径押圧部41Hで可動接点41Cの中央部に押し下げ力を加えていく。そして、その力が所定の大きさを超えると、可動接点41Cの中央部が節度感を伴いつつ反転動作して、その中央部下面が中央接点41Aに接触し中央接点41Aと外側接点41Bの間が可動接点41Cを介して電気的に接続され、それらに応じた端子間が導通状態となる。なお、このときには他の押圧型周辺スイッチ42〜44および押圧型中央スイッチ31の状態が切り換わらないように、操作つまみ91の大きさなどは設定されている。
【0074】
そして、操作つまみ91の上面周辺部への押圧操作力を除くと、可動接点41Cは自身の復元力で元の上方凸型ドーム状に戻り、中央および外側接点41Aおよび41Bは電気的独立状態に戻る。また、それに応じて絶縁シート41Dを介して駆動体41Eが押し上げられ、リング状押圧部94も駆動体41Eで押し上げられる。なお、駆動体41Eは、円形広幅部41F上面がカバー部材71の下方面部71Bに接することにより停止する。さらに、それと同時に、部分的な圧縮状態となっているコイルばね81や撓ませられている弾性爪93も元の状態に復元し、それらからの力でスムーズに操作つまみ91は図1に示す非操作状態に戻る。
【0075】
他の押圧型周辺スイッチ42〜44のいずれかを作動させる場合の動作は、上記同様の動作であるため説明を省略する。なお、この傾倒操作時に押圧型周辺スイッチ41〜44における隣り合うものを同時に切り換え操作するようにしてもよい。
【0076】
以上のように、本発明による複合操作型電子部品は、一つの単体の電子部品として構成され、機器側の操作つまみ91の回転操作でエンコーダなどの回転機能部からの所定出力が得られ、かつ操作つまみ91を押圧操作して操作つまみ91を垂直下方側に移動させると押圧型中央スイッチ31の状態が、また傾倒動作させることにより押圧型周辺スイッチ41〜44のいずれかの状態の切り換え操作ができるものである。なお、それらの操作は連続的にも行え、そして、その各スイッチ31と41〜44を作動させる部材として、機器側の操作つまみ91そのものを用いて直接操作できる構成になされているため、操作つまみ91の厚み分を含んで高さ寸法の低背化が図られたものにできる。また、上記構成としたため、図3に示した本体部分のみを先に使用基板にリフロー半田付けし、機器の筐体組み合わせ時などに操作つまみ91およびコイルばね81を後から装着して完成状態とすることもできる。
【0077】
また、上述したように、クリックばね61は圧入固定後に、その抜け方向側に移動しないようにカバー部材71で押さえ込んで装着状態とするものであるため、簡素な作業手順でクリックばね61の装着ができ、かつその装着状態も強固で安定したものにできる。
【0078】
なお、押圧型周辺スイッチの配設数は、四つに限られることはない。
【0079】
また、上記にはつまみ本体91Aの中央脚92周囲に配された係合部を四つの弾性爪93で構成し、回転体51の略十字状の中央孔55に挿通させたものを事例として説明したが、弾性爪の配設数は四つに限られず、複数の弾性爪を中央脚周囲に配すると共に、回転体の中央孔の形状をそれに応じた形状で形成して挿通させたものとしてもよい。上記弾性爪のものであれば、簡素に構成できると共に、つまみ本体91Aの傾倒動作時に弾性爪の撓みに応じた復元力も付加され好ましい。さらに、係合部として弾性爪以外の構成のものとしてもよい。
【0080】
また、上記には操作つまみ91の回転操作に応じて機能する回転機能部をインクリメンタルエンコーダの構成のもので説明したが、当該部位を他のエンコーダ構成としたり、可変抵抗器や回転型スイッチなどの構成としてもよい。
【0081】
また、各スイッチ31と41〜44も上記構成のものに限られることもなく、さらには他の状態切り換えが行われるもの、例えばプッシュオフスイッチや場合によっては二段動作スイッチなどを配したものとしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0082】
本発明による複合操作型電子部品は、外装部材である機器側の操作つまみへの回転操作で所定信号が得られると共に、その機器側の操作つまみそのもので各押圧型スイッチの操作が可能な構成のものであるため、上記操作つまみの厚み分を含んで高さ寸法が低背化されたものにできるという効果を有し、各種電子機器の入力操作部分を構成する際等に有用である。
【図面の簡単な説明】
【0083】
【図1】本発明の一実施の形態による複合操作型電子部品の断面図
【図2】同分解斜視図
【図3】同操作つまみおよびコイルばねを除いた状態での外観斜視図
【図4】同要部であるケースの上面図
【図5】同図3のQ−Q線における断面図
【図6】同要部である操作つまみの下面側からみた斜視図
【図7】同要部であるケース内における各導電部材の埋設状態を示す図
【図8】同要部であるケース内における各導電部材の他の埋設状態を示す図
【図9】同複合操作型電子部品が使用機器に搭載された事例を示す図
【図10】同操作つまみに摩擦緩和部材を備えさせたものの下面側からみた斜視図
【図11】従来の複合操作型電子部品の外観斜視図
【図12】同図11のP−P線における断面図
【図13】同分解斜視図
【図14】同傾倒操作状態を示す断面図
【符号の説明】
【0084】
21 ケース
22 内壁
23 外壁
24 矩形突起
24A 固定用孔部
25 固定接点
25A コモンパターン
31 押圧型中央スイッチ
31A 押圧型中央スイッチの中央接点
31B 押圧型中央スイッチの外側接点
31C 押圧型中央スイッチの可動接点
31D 押圧型中央スイッチの絶縁シート
41〜44 押圧型周辺スイッチ
41A〜44A 押圧型周辺スイッチの中央接点
41B〜44B 押圧型周辺スイッチの外側接点
41C〜44C 押圧型周辺スイッチの可動接点
41D〜44D 押圧型周辺スイッチの絶縁シート
41E〜44E 押圧型周辺スイッチの駆動体
41F〜44F 押圧型周辺スイッチの駆動体における円形広幅部
41G〜44G 押圧型周辺スイッチの駆動体における操作部
41H〜44H 押圧型周辺スイッチの駆動体における小径押圧部
51 回転体
51A フランジ部
52 可動接点
55 回転体の中央孔
61 クリックばね
61A 垂下部
61B ダボ部
71 カバー部材
71A カシメ脚
71B 下方面部
71C 上方面部
71D 中央円形孔
81 コイルばね
91 操作つまみ
91A つまみ本体
92 中央脚
93 弾性爪
94 リング状押圧部
95 摩擦緩和部材
101 外装筐体
101A 指標

【特許請求の範囲】
【請求項1】
押圧型中央スイッチと複数の押圧型周辺スイッチとの間の位置に回転操作用の固定接点が配されたケースと、上記固定接点に係合する可動接点がフランジ部に固定された中央孔付きの回転体と、上記ケースに結合され上記回転体の上方への位置規制を行うカバー部材と、つまみ本体の下面に突設された中央脚およびその周囲に配された係合部が、上記回転体の中央孔に上下動かつ傾倒可能なように挿通され、上記係合部の上記中央孔への係合により上記つまみ本体の回転に応じて上記回転体を共回りさせ、かつ上記つまみ本体の下方への押圧操作で上記押圧型中央スイッチを上記中央脚で押圧し、上記係合部が上記回転体の中央孔と係合した箇所を支点として上記つまみ本体が傾倒した際、その傾倒方向に応じた上記押圧型周辺スイッチをその下面のリング状押圧部で押圧する機器側の操作つまみとからなる複合操作型電子部品。
【請求項2】
コイルばねなどの弾性体を、つまみ本体の下面と回転体またはカバー部材との間に配した請求項1記載の複合操作型電子部品。
【請求項3】
中央脚の周囲に複数の弾性爪が配され、それらが係合部をなし、それに応じた形状で形成された回転体の中央孔に上記各弾性爪が挿通されて構成された請求項1記載の複合操作型電子部品。
【請求項4】
回転体のフランジ部の上面が凹凸面で構成され、それに弾接するダボ部を有するクリックばねが、ケースに設けられた固定用孔部に圧入固定されると共に、カバー部材で上方への抜け止めがなされるように押さえ込まれる構成とした請求項1記載の複合操作型電子部品。
【請求項5】
つまみ本体のリング状押圧部と押圧型周辺スイッチの操作部との間に摩擦緩和部材を介在させた請求項1記載の複合操作型電子部品。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate


【公開番号】特開2006−269319(P2006−269319A)
【公開日】平成18年10月5日(2006.10.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−87846(P2005−87846)
【出願日】平成17年3月25日(2005.3.25)
【出願人】(000005821)松下電器産業株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】