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複合材を用いた構造部材の成形方法及び複合材料を用いた構造部材
説明

複合材を用いた構造部材の成形方法及び複合材料を用いた構造部材

【課題】他部材との接合面に凹凸面を形成する場合であっても、背中合わせの接合時にしわ発生の原因となる隙間を形成することがない複合材を用いた構造部材の成形方法を提供すること。
【解決手段】シート状複合材料31を積層してなる平板状のプリプレグ30からコ字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法において、複合材料30が、シート状複合材料31を最小厚さt1に積層して平板状のベース素材32を得るベース素材積層工程の後、成形後にフランジ面の凸部となる位置に限定してベース素材32にシート状複合材料31を所望の厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、たとえば航空機の主翼に使用される骨格部材のように、フランジ面に凹凸がある複合材を用いた構造部材の成形方法及び複合材を用いた構造部材に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合材料の特性である強度−重量比及び剛性比が高いという理由から、軽量化を必要とされる構造物及び構造部材に複合材料の採用が増加している。このような複合材料としては、たとえば炭素繊維複合材料(CFRP)などが知られている。しかし、複合材料は、一般的に製造時における作業工程が多くなる傾向があるため製造コストや品質管理の問題を有しており、特に、複雑な形状や大規模な部品ほどこの問題は顕著になる。
ところで、航空機等の骨格構造部材にはH型断面、T型断面及びL型断面等を有するものがあるが、強度は従来の鋼材部材と同等であり、かつ軽量化の要求から、このような各構造部材も複合材料を用いて製造されつつある。特に航空機では、このような長尺の構造部材がストリンガと称されている。このようなストリンガを製作する場合、最初にコ字型断面形状のチャンネル材またはL字型断面形状のアングル材を2個製作した後、両チャンネル材または両アングル材を背中合わせに組み付けてH型断面形状またはT型断面形状の長尺棒状部材(複合材を用いた構造部材)とする工法がある。
【0003】
上述したコ字型断面形状のチャンネル材(以下、「Cチャンネル」と呼ぶ)を成形する従来技術として、ホット・ドレープ成形法と呼ばれる工法が知られている。
この成形法においては、たとえば図7(a)に示すように、ホット・ドレープ槽1内のブラダ2上に、所望の厚さとしたプリプレグ(複合材プリプレグシートの積層体)3び角柱形状としたマンドレル(成形型)4を配置し、所定位置に位置決めしてからブラダ2の下に設けられたヒータ(不図示)を所定温度に加熱する。この加熱により、プリプレグ3が所望の温度まで昇温して軟化するので、この加熱状態を所定時間保持した後、ホット・ドレープ槽1内を密閉空間5にして真空圧まで減圧する。
この減圧により、図7(b)に示すように、大気圧に連通するブラダ2の内部は真空の密閉空間5内より相対的に高圧となり、従って、膨張したブラダ2がプリプレグ3をマンドレル4に向けて押圧する。この結果、プリプレグ3はマンドレル4に沿って略コ字状の断面形状に変形するので、室温状態のマンドレル4に所定時間押し付けられることで硬化したCチャンネルが成形される。(たとえば、特許文献1参照)
【0004】
また、板状の熱可塑性複合材平板の表面を超塑性シートで覆った後、加熱状態で平板の両端から張り出している超塑性シートをクランプにより挟持して曲げ方向の加えることにより、平板を成形治具に沿って成形する技術が開示されている。(たとえば、特許文献2参照)
また、無端状としたプリプレグを一対の棒状賦型で両側に引っ張りながら成形型に押し付けて中間形状に形成した後、棒状賦型を引き抜いて略L状断面等の所定形状に形成する繊維強化複合材の成形方法が開示されている。(たとえば、特許文献3参照)
【特許文献1】特表平10−507697号公報
【特許文献2】特開平05−42590号公報
【特許文献3】特開2000−52440号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上述した複合材を用いた構造部材(以下、「構造部材」と呼ぶ)Cは、たとえば航行機の主翼を構成する骨格部材として使用する場合、図8に示すように、強度部位の板厚を部分的に増して内面に凹凸が形成された複合材料製板材(スキン)6の内面に接するフランジ面が必要となる。なお、航空機主翼の強度部位には、たとえばエンジン取付部や車輪取付部等がある。
このため、構造部材Cの構成部品となるCチャンネル10(図10参照)の成形に使用するプリプレグ(複合材料)3は、たとえば図9に示すように、同一幅としたプリプレグシート3aの積層数を長手方向に変化させたものとなる。すなわち、複合材料のプリプレグシート積層数は、長手方向と直交する断面において、Cチャンネル10のフランジ面11及びウェブ面12が同一となる。
【0006】
この結果、図10に示すように、成形されたCチャンネル10は、フランジ面11の長手方向に積層数に応じた所望の凹凸が形成されるだけでなく、ウェブ面12についても同様の凹凸が形成される。
従って、Cチャンネル10のウェブ面12どうしを背中合わせに接合してH型断面形状の構造部材Cとする工程では、たとえば図11に示すように、積層数が少ない凹部のウェブ面12,12間に隙間13が形成される。このため、接合時の押圧力が隙間13を埋めるように作用し、ウェブ12を形成するプリプレグシート3aの層間にしわ(波形変形)を発生させるという問題が指摘されている。このようなしわの発生は、加工時の圧縮応力を低下させるとともに成形品の強度低下をまねく原因となるため好ましくない。
また、一対のアングル材を背中合わせに組み付けてT型断面形状の構造部材とする場合においても、H型断面形状の構造部材Cと同様にしわ発生の問題が指摘されている。
【0007】
本発明は、上記の事情に鑑みてなされたものであり、その目的とするところは、他部材との接合面に凹凸面を形成する場合であっても、背中合わせの接合時にしわ発生の原因となる隙間を形成することがない複合材を用いた構造部材の成形方法及び複合材を用いた構造部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記の課題を解決するため、下記の手段を採用した。
本発明の請求項1は、シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記複合材料が、前記シート状複合材料を最小厚さに積層して平板状のベース素材を得るベース素材積層工程の後、成形後に前記フランジ面の凸部となる位置に限定して前記ベース素材に前記シート状複合材料を所望の厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層されることを特徴とするものである。
【0009】
このような複合材を用いた構造部材の成形方法によれば、複合材料が、シート状複合材料を最小厚さに積層して平板状のベース素材を得るベース素材積層工程の後、成形後にフランジ面の凸部となる位置に限定してベース素材にシート状複合材料を所望の厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層されるので、ベース素材積層工程で得られた平板状のベース素材により平坦なウェブ面を形成することができ、従って、背中合わせの接合による隙間の形成が防止される。
【0010】
本発明の請求項2は、シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記複合材料が、前記シート状複合材料を最小厚さに積層して平板状のベース素材を得るベース素材積層工程の後、成形後に前記フランジ面の凸部となる位置に限定して前記ベース素材に前記シート状複合材料を所望の厚さまで積層するとともに、前記ウェブ面となる位置に最大厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層されることを特徴とするものである。
【0011】
このような複合材を用いた構造部材の成形方法によれば、複合材料が、シート状複合材料を最小厚さに積層して平板状のベース素材を得るベース素材積層工程の後、成形後にフランジ面の凸部となる位置に限定してベース素材にシート状複合材料を所望の厚さまで積層するとともに、ウェブ面となる位置に最大厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層されるので、ウェブ面となる位置が最大厚さまで積層されて平坦なウェブ面を形成することができ、従って、背中合わせの接合による隙間の形成が防止される。
【0012】
請求項1または2に記載の発明において、前記凸部積層工程で形成された凹部に、成形時のみ前記複合材料全体の板厚を均一にする当て材を配設することが好ましく、これにより、成形時の曲げ加工力を均等化することができる。なお、この当て材は、曲げ加工による成形が終了した後除去される。
【0013】
本発明の請求項4は、シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記フランジ面の凹部となる位置に当て材を配設した状態で前記シート状複合材料を最大厚さに積層し、全体を同一厚さとした平板状の複合材料を得る積層工程と、前記複合材料を前記コ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、前記複合材料を成形した後、前記フランジ面から前記当て材を除去して前記凹部を所望の板厚とする凹部形成工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0014】
このような複合材を用いた構造部材の成形方法によれば、フランジ面の凹部となる位置に当て材を配設した状態でシート状複合材料を最大厚さに積層し、全体を同一厚さとした平板状の複合材料を得る積層工程と、複合材料をコ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、複合材料を成形した後、フランジ面から当て材を除去して凹部を所望の板厚とする凹部形成工程とを備えているので、複合材料全体を同一厚さの状態にして成形することが可能になり、曲げ加工力を均等化して成形することができる。また、成形工程の終了後には、フランジ面から当て材を除去することにより、フランジ面に所望の凹凸が形成される。
【0015】
本発明の請求項5は、シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記フランジ面の凹部となる位置及び前記ウェブ面となる位置に当て材を配設した状態で前記シート状複合材料を最大厚さに積層し、全体を同一厚さとした平板状の複合材料を得る積層工程と、前記複合材料を前記コ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、前記複合材料を成形した後、前記フランジ面から前記当て材を除去して前記凹部を所望の板厚にするとともに、前記ウェブ面から前記当て材を除去して最小厚さとする凹部形成工程と、を備えていることを特徴とするものである。
【0016】
このような複合材を用いた構造部材の成形方法によれば、フランジ面の凹部となる位置及びウェブ面となる位置に当て材を配設した状態でシート状複合材料を最大厚さに積層し、全体を同一厚さとした平板状の複合材料を得る積層工程と、複合材料をコ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、複合材料を成形した後、フランジ面から当て材を除去して凹部を所望の板厚にするとともに、ウェブ面から当て材を除去して最小厚さとする凹部形成工程とを備えているので、複合材料全体を同一厚さの状態にして成形することが可能になり、曲げ加工力を均等化して成形することができる。また、成形工程の終了後には、当て材を除去したフランジ面には所望の凹凸が形成され、かつ、当て材を除去したウェブ面は最小厚さとなる。
【0017】
本発明の複合材を用いた構造部材は、請求項1から5のいずれかに記載の複合材を用いた構造部材の成形方法により成形したことを特徴とするものである。
【0018】
このような複合材を用いた構造部材によれば、請求項1から5のいずれかに記載の複合材を用いた構造部材の成形方法により成形したので、平坦なウェブ面が形成されたものとなる。従って、背中合わせの接合による隙間の形成を防止することができる。
【発明の効果】
【0019】
上述した本発明によれば、コ字状またはL字状等の断面形状を背中合わせにして接着され、他部材との接合面となるフランジ面に板厚変化に対応するための凹凸が形成されている複合材を用いた構造部材の製造時において、最小厚さまたは最大厚さに積層された平坦な面どうしを背中合わせに接合して押圧力により接着させるため、接合面間に隙間が形成されることはない。また、凸部積層工程で形成された凹部に当て材を配設したり、あるいは、当て材を用いて同一厚さとした複合材料を成形することにより、成形時のみ複合材料全体の板厚が見かけ上均一になるので、コ字状またはL字状等の断面形状の成形時に曲げ加工力が均等化してしわを発生しにくくなる。
従って、接合面及び近傍の複合材料は、接合面を接着させる押圧力を受けてもしわを発生することがなくなるので、歩留まりが向上して良好な品質の複合材を用いた構造部材を安定して製造することができる。また、しわに起因する圧縮応力の低下も防止される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0020】
以下、本発明に係る複合材料構造部材の成形方法及び複合材を用いた構造部材の一実施形態を図面に基づいて説明する。
図3は、複合材を用いた構造部材(以下、「構造部材」と呼ぶ)Cの使用例として、航空機における主翼の一部を構成するウイングボックスの構成例を示す斜視図である。このウイングボックス20は、多数のH型ストリンガ21及びリブ材22を井桁状に組み合わせて骨格を形成し、その外側をスキン23及びスパー24で覆った中空の構造体である。以下の説明では、構造部材Cの一例として、H型ストリンガ21について説明する。
【0021】
H型ストリンガ21は、図2に示すように、主翼の翼長(長手)方向に延びるH型断面形状の複合材を用いた構造部材であり、たとえば炭素繊維にエポキシ樹脂等の高分子材料を組み合わせた炭素繊維複合材が採用される。このH型ストリンガ21は、板状の複合材料(プリプレグ)を成形してなる一対のCチャンネル10Aを背中合わせに接合して製造される。なお、図中の符号11はCチャンネル10Aのフランジ面、12はウェブ面である。
【0022】
<第1の実施形態>
本発明の第1の実施形態を図1及び図2に基づいて説明する。
この実施形態において、Cチャンネル10Aの成形には、図1に示すプリプレグ(複合材料)30が使用される。このプリプレグ30は、シート状複合材料31を積層した平板状の複合材料であり、以下に説明する工程で積層される。
最初のベース素材積層工程では、シート状複合材料31を最小厚さt1とするのに必要な枚数を積層して平板状のベース素材32を得る。この工程で積層するシート状複合材料31は、プリプレグ30の全面をカバーする同形状とされる。
次の凸部積層工程では、Cチャンネル10Aの成形後にフランジ面11の凸部(パッドアップ部)となる肉厚位置33に限定して、ベース素材32に必要枚数のシート状複合材料31を所望の厚さまで追加して積層する。この結果、シート状複合材料31の厚さは、肉厚位置33において所望の最大厚さt2まで増加する。
【0023】
上述した積層工程を経て製造されたプリプレグ30は、ベース素材32が、強度上必要となる最小厚さt1を確保するとともに、成形後にCチャンネル10Aのウェブ面12となる位置に凹凸のない平坦面を形成している。そして、成形後にCチャンネル10Aのフランジ面11において凸部となる位置には、積層数(肉厚)を増した肉厚位置33が形成されている。
このような肉厚部33は、たとえば航空機の主翼において、構造部材Cを取り付ける位置のスキン23と整合をとるため、すなわち、必要強度に応じてスキン23の内面に形成される凹凸(積層数差)に合わせてフランジ面11に設けられるものであるから、必要強度を確保したウェブの板厚t1との関連性はない。
【0024】
このため、上述したプリプレグ30を使用して成形したCチャンネル10Aは、ウェブ面12が積層数変化による凹凸のない平坦面となり、積層数変化のあるフランジ面11には、最小厚さt1の凹部及び最大厚さt2の凸部による凹凸が形成される。従って、Cチャンネル10Aを背中合わせに接合して構造部材Cを製造する場合、ウェブ面12が互いに平坦面となるため接合部に隙間を形成することはない。
すなわち、背中合わせに接合して貼り合わせるウェブ面12は、シート状複合材料31の積層数に差がない同一積層数のベース素材32であるから、接合面間に積層数差に起因した隙間が形成されることはない。従って、Cチャンネル10Aを接合する際には、隙間を埋めるようにして無理な力が作用することはなくなるので、しわの発生を防止することができる。
【0025】
このように、上述した構造部材Cの成形方法では、複合材料30が、シート状複合材料31を最小厚さt1に積層して平板状のベース素材32を得るベース素材積層工程の後、成形後にフランジ面11の凸部となる位置に限定してベース素材32にシート状複合材料31を所望の厚さt2まで積層する凸部積層工程を実施して積層されるので、ベース素材積層工程で得られた平板状のベース素材32により平坦なウェブ面12を形成し、背中合わせの接合による隙間の形成を防止することができる。
従って、上述した成形方法を用いて製造された構造部材Cは、しわのない良好な品質の部材となる。
【0026】
<第2の実施形態>
続いて、本発明の第2の実施形態を図4及び図5に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態において、Cチャンネル10Bの成形には、図4に示すプリプレグ(複合材料)40が使用される。このプリプレグ40は、シート状複合材料41を積層した平板状の複合材料であり、以下に説明する工程で積層される。
最初のベース素材積層工程では、シート状複合材料41を最小厚さt1とするのに必要な枚数を積層して平板状のベース素材42を得る。この工程で積層するシート状複合材料41は、プリプレグ40の全面をカバーする同形状とされる。
次の凸部積層工程では、Cチャンネル10Bの成形後にフランジ面11の凸部(パッドアップ部)となる肉厚位置43及びウェブ面12となる位置に限定して、ベース素材42に必要枚数のシート状複合材料41を所望の厚さまで追加して積層する。この結果、シート状複合材料41の厚さは、肉厚位置43において所望の最大厚さt2まで増加する。
【0027】
このような成形方法としても、成形されたCチャンネル10Bの接合面となるウェブ面12は積層数変化のない平坦面になるので、背中合わせの接合による隙間の形成が防止される。すなわち、この実施形態では、積層数を増すためのシート状複合材料41がウェブ面12となる位置にも積層されているので、最小厚さt1の積層数で平坦面とした第1の実施形態とは異なり、積層数が最大厚さt2に一致した平坦面となる。
このため、上述したプリプレグ40を使用して成形したCチャンネル10Bは、ウェブ面12が積層数変化による凹凸のない平坦面となり、積層数変化のあるフランジ面11には、最小厚さt1の凹部及び最大厚さt2の凸部による凹凸が形成される。従って、Cチャンネル10Bを背中合わせに接合して構造部材Cを製造する場合、ウェブ面12が互いに平坦面となるため接合部に隙間を形成することはないので、隙間を埋めるようにして無理な力が作用することはなく、しわの発生を防止することができる。
【0028】
<第3の実施形態>
続いて、本発明の第3の実施形態を図6に基づいて説明する。なお、上述した実施形態と同様の部分には同じ符号を付し、その詳細な説明は省略する。
この実施形態において、Cチャンネル10A,10Bの成形には、図6(a),(b)に示すプリプレグ(複合材料)30A,40Aが使用される。
【0029】
図6(a)に示す実施形態のプリプレグ40Aは、以下に説明する成形方法に採用されるものである。
すなわち、この実施形態における複合材を用いた構造部材の成形方法は、フランジ面11の凹部となる位置に当て材50を配設した状態でシート状複合材料41を肉厚部43と同様の最大厚さt2に積層し、全体を同一厚さt2とした平板状のプリプレグ40Aを得る積層工程と、プリプレグ40Aをコ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、プリプレグ40Aを成形した後、フランジ面11から当て材50を除去して凹部を所望の板厚(たとえば最小板厚t1)にする凹部形成工程とを備えている。
【0030】
当て材50は、成形工程完了後に容易に除去できるようにするため、たとえば凹部となる位置のシート状複合材料41を、たとえば肉厚部43等の他の部分から予め切断するなどして分離させた状態のものを最大厚さt2まで積層したものでもよいし、あるいは、予め用意した凹部高さに相当する積層体等の部材を採用して当て材50とし、積層作業の適当な時点(たとえば、最小厚さt1まで積層した時点)で凹部となる位置に配設するとともに、周囲の肉厚部43となる部分にシート状複合材料41を積層してもよい。
なお、当て材50については、たとえば、マンドレル4と同じ材料等のように、複合材料以外の材料を採用してもよい。
【0031】
このとき、たとえば当て材50がプリプレグ40Aのような複合材料である場合には、成形工程の曲げ加工を実施すると樹脂分の接着作用により互いに接着される。そこで、この接着対策として、当て材50の下面とフランジ面11となるベース素材42の表面との間にビニールシート等の中間材を挿入することにより、接着力の低減により当て材50の除去作業を容易にすることが好ましい。
すなわち、フランジ面11の凹部となる位置にも、シート状複合材料41または類似の複合材料等を積層して得られる当て材50を配設し、あるいは、当て材50となる積層体等の部材を配設して、プリプレグ40Aの全体を同一厚さt2の状態にしてから成形工程を実施するので、曲げ加工力を均等化して成形することができる。
また、成形工程が終了した後には、フランジ面11から当て材50を除去することにより、フランジ面11には所望の凹凸が形成される。
【0032】
また、図6(b)に示すプリプレグ30Aは、図6(a)に示す実施形態の第1変形例であり、この場合の積層工程では、フランジ面11の凹部となる位置及びウェブ面12となる位置に当て材50を配設した状態にしてシート状複合材料31を最大厚さt2まで積層し、全体を同一厚さt2とした平板状のプリプレグ30Aを得る。すなわち、上述した図6(a)ではウェブ面12の板厚が最大厚さt2となるのに対し、この第1変形例の成形方法では、たとえばウェブ面12の板厚を凹部と同じ最小厚さt1とするため、凹部と同様の厚さにした当て材50が使用されている。
【0033】
この場合の当て材50は、複合材料をコ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程が終了した後、凹部形成工程で除去される。そして、当て材50を除去したフランジ面11には所望の板厚(たとえば最小板厚t1)の凹部が形成され、かつ、当て材50を除去したウェブ面12は最小厚さt1の平坦面となる。
従って、プリプレグ30Aの全体を同一厚さt2の状態にして成形工程を実施可能となるので、曲げ加工力を均等化して成形することができる。
【0034】
また、上述した当て材50は、上述した第1及び第2の実施形態に示したプリプレグ30、40をコ字型断面形状に曲げ加工し、Cチャンネル10A、10Bを成形する際に適用されるしわ低減対策としても有効である。以下、このしわ低減対策について、図6を参照して説明する。なお、このしわ防止対策は、シート状複合材料31,41の積層完了後にプリプレグ30,40に形成された凹部に対し、後から当て材50を配設して同一厚さとした複合材料を成形するものであり、従って、当て材50を配設した状態で同一厚さに形成されたプリプレグ30A,40Aとは異なるものである。
【0035】
このしわ低減対策では、凸部積層工程で形成された凹部に対して、すなわち、板厚がt2より薄い領域に対して、成形時のみプリプレグ30,40の板厚を全体にわたって均一にする当て材50が配設されている。この当て材50は、曲げ加工時における見かけ上の板厚が肉厚部33,43と同一のt2となるように、ベース素材32,42上に重ねて添えられた部材であり、たとえばプリプレグ30,40と同じ複合材料製としてもよいし、あるいは、複合材料以外(たとえば、マンドレル4と同じ材料)の材料製としてもよい。なお、この当て材50は、曲げ加工による成形が終了した後に除去される。
【0036】
このような当て材50を用いて板厚が均一化された状態で成形すると、成形時の曲げ加工力を均等化することができる。このため、プリプレグ30,40をコ字状またはL字状等の断面形状に成形する際には、プリプレグ30,40の成形部全体に均等な曲げ加工力が作用するので、しわが発生しにくくなる。
なお、当て材50が複合材料製の場合には、曲げ加工により複合材料どうしが樹脂分の接着作用で接着されるので、当て材50の下面とベース素材32,42の表面との間にビニールシート等の中間材を挿入することで、成形完了後に当て材50を除去する作業が容易になる。
【0037】
ところで、上述した両実施形態においては、コ字状断面のCチャンネル10A,10Bを背中合わせに接合して接着したH型断面の複合材を用いた構造部材Cに関する成形方法を説明したが、本発明は、たとえばL字状断面のアングル材を背中合わせに接着したT字型断面形状の複合材を用いた構造部材等にも適用可能である。
また、上述した実施形態では、積層数が2種類の例を示したが、3種類またはそれ以上の場合に適用することも可能である。
【0038】
従って、上述した本発明によれば、コ字状またはL字状等の断面形状を背中合わせにして接着され、他部材との接合面となるフランジ面11に板厚変化に対応するための凹凸を積層数変化により形成されている複合材を用いた構造部材の製造時において、たとえば最小厚さt1または最大厚さt2に積層された平坦な面どうしを背中合わせに接合して押圧力により接着させるため、接合面間に隙間が形成されることはない。このため、接合面及び近傍の複合材料は、接合面を接着させる押圧力を受けてもしわを発生することがなくなるので、歩留まりが向上して良好な品質の複合材を用いた構造部材を安定して製造することができる。また、当て材50の採用により、Cチャンネル10A,10B等の成形時にもしわを生じにくくなるので、これによっても、歩留まりが向上して良好な品質の複合材を用いた構造部材を安定して製造できるようになる。
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において適宜変更することができる。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、たとえば航空機、船舶、車両及び風車等のように、軽量構造が要求される炭素繊維複合材料等の複合材を用いた構造部材に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0040】
【図1】本発明に係る複合材を用いた構造部材の成形方法について、第1の実施形態を示す複合材料の積層状態を示す斜視図である。
【図2】図1の複合材料により成形したCチャンネルを接合して製造される複合材を用いた構造部材を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は平面図である。
【図3】航空機の主翼を構成するウイングボックスの構成例を示す斜視図である。
【図4】本発明に係る複合材を用いた構造部材の成形方法について、第2の実施形態を示す複合材料の積層状態を示す斜視図である。
【図5】図4の複合材料により成形したCチャンネルを接合して製造される複合材を用いた構造部材を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は平面図である。
【図6】本発明に係る複合材を用いた構造部材の成形方法について、当て材を用いて曲げ加工する複合材料の状態を示す斜視図であり、(a)は第3の実施形態及びしわ低減対策を図4に示す第2の実施形態へ適用した例、(b)は第3の実施形態の第1変形例及び図1に示す第1の実施形態へ適用した例である。
【図7】Cチャンネルを成形するホット・ドレープ成形法を示す図で、(a)は成形準備前の状態を示し、(b)は成形時の状態を示している。
【図8】航空機の主翼構造を示す要部断面図である。
【図9】複合材を用いた構造部材の成形方法について、従来技術を示す複合材料の積層状態を示す斜視図である。
【図10】図9の複合材料により成形したCチャンネルを示す斜視図である。
【図11】図9の複合材料により成形した図10のCチャンネルを接合して製造される複合材を用いた構造部材を示す図で、(a)は外観斜視図、(b)は平面図である。
【符号の説明】
【0041】
10A,10B Cチャンネル
11 フランジ面
12 ウェブ面
13 隙間
30,30A,40,40A プリプレグ(複合材料)
31,41 シート状複合材料
32,42 ベース素材
33,43 肉厚部
50 当て材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記複合材料が、前記シート状複合材料を最小厚さに積層して平板状のベース素材を得るベース素材積層工程の後、成形後に前記フランジ面の凸部となる位置に限定して前記ベース素材に前記シート状複合材料を所望の厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層されることを特徴とする複合材を用いた構造部材の成形方法。
【請求項2】
シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記複合材料が、前記シート状複合材料を最小厚さに積層して平板状のベース素材を得るベース素材積層工程の後、成形後に前記フランジ面の凸部となる位置に限定して前記ベース素材に前記シート状複合材料を所望の厚さまで積層するとともに、前記ウェブ面となる位置に最大厚さまで積層する凸部積層工程を実施して積層されることを特徴とする複合材を用いた構造部材の成形方法。
【請求項3】
前記凸部積層工程で形成された凹部に、成形時のみ前記複合材料全体の板厚を均一にする当て材が配設されることを特徴とする請求項1または2に記載の複合材を用いた構造部材の成形方法。
【請求項4】
シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記フランジ面の凹部となる位置に当て材を配設した状態で前記シート状複合材料を最大厚さに積層し、全体を同一厚さとした平板状の複合材料を得る積層工程と、
前記複合材料を前記コ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、
前記複合材料を成形した後、前記フランジ面から前記当て材を除去して前記凹部を所望の板厚とする凹部形成工程と、を備えていることを特徴とする複合材を用いた構造部材の成形方法。
【請求項5】
シート状複合材料を積層してなる平板状の複合材料からコ字状断面またはL字状断面に成形され、凹凸を設けたフランジ面と平坦なウェブ面とを備えている複合材を用いた構造部材の成形方法であって、
前記フランジ面の凹部となる位置及び前記ウェブ面となる位置に当て材を配設した状態で前記シート状複合材料を最大厚さに積層し、全体を同一厚さとした平板状の複合材料を得る積層工程と、
前記複合材料を前記コ字状断面またはL字状断面に成形する成形工程と、
前記複合材料を成形した後、前記フランジ面から前記当て材を除去して前記凹部を所望の板厚にするとともに、前記ウェブ面から前記当て材を除去して最小厚さとする凹部形成工程と、を備えていることを特徴とする複合材を用いた構造部材の成形方法。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の複合材を用いた構造部材の成形方法により成形したことを特徴とする複合材を用いた構造部材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2007−230036(P2007−230036A)
【公開日】平成19年9月13日(2007.9.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−52918(P2006−52918)
【出願日】平成18年2月28日(2006.2.28)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】