説明

複合材料の製造方法

本発明は、(a)疎水性の有機バルク材料を提供する工程と;
(b)まず、疎水性の有機バルク材料の表面に、疎水性の部分を含む水溶性のペプチドを非共有的に結合させ;次に前記水溶性のペプチドを化学的又は酵素的に架橋させることにより、親水性の表面コーティングをバルク材料上に適用する工程とを含む複合材料の製造方法に関する。本発明の方法による複合材料は、基材への接着性、耐久性、親水性、湿潤性、生体適合性及び透過性に関する所望の特性を有し、そのため特に眼用装置として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物品を、架橋性の親水性ペプチドで少なくとも部分的にコーティングし、次に前記親水性ペプチドを化学的又は酵素的に架橋することを含む、生物医学的物品、特にコンタクトレンズのような、コーティングされた物品の製造方法に関するものである。
【0002】
「不活性な」疎水性の基材上のコーティングを調製するための多種多様な方法が、先行技術において開示されている。例えば、WO−A−2004/050132は、まず、疎水性の非荷電の物品表面にポリアクリル酸及びポリアリルアミン塩酸塩からなる幾つかの二重層を提供し、次に抗菌性のペプチドを二重層の酸性成分に共有結合させることを開示している。しかし、二重層の形成には時間がかかり、それらの安定性、特にそれらの長期的安定性は、時に十分満足のいくものではない。このことが、今度は、生物医学的物品が人体内又は人体上、例えば眼上に装着された際の装着者の快適さに影響する場合がある。
【0003】
US−A−2006/0134166は、コポリマーが誘導体化されて疎水性の側鎖を有するポリアミノ酸である、非架橋性の生分解性コポリマーコーティングを、医療装置の表面上に作成する方法を開示している。
【0004】
US−A−2004/0224080は、概ね、医療装置上に酵素的に架橋した表面コーティングであり、リシン及びグルタミンが、トランスグルタミナーゼを用いることにより、酵素的に架橋されている表面コーティングを開示している。
【0005】
US−A−2003/0175745は、生物医学的装置の固体表面をコーティングするのにポリペプチドが使用できることを開示している。また、ペプチドが、グルタルアルデヒドで化学的に架橋できることを開示している。
【0006】
さらに、公知のコーティングプロセスは、一般にバッチプロセスであるが、実施費用が高く、また、大規模な処理工程を要する。このため、既存のプロセスのいずれも、例えば、コンタクトレンズの完全自動化大量製造プロセス(例えば、EP−A−969956又はEP−A−1047542に記載)に組み込むのには十分適していない。
【0007】
したがって、一方では改善された耐久性を有し、生物医学的物品の装着者の快適さを改善し、他方では、大量製造プロセスに組み込むことができるよう容易な方法で製造できる、疎水性の生物医学的物品の表面上の新規な親水性のコーティングを提供することが必要である。
【0008】
驚くべきことに、まず、疎水性の物品表面にペプチドを非共有的に結合させ、次に前記ペプチドを架橋反応に付すことにより、その物品の表面を有効に親水性にすることができることが今や見出された。
【0009】
したがって、本発明は、1つの態様において、
(a)疎水性の有機バルク材料を提供する工程と;
(b)まず、前記バルク材料の表面に、疎水性の部分を含む水溶性のペプチドを非共有的に結合させ;次に前記水溶性のペプチドを化学的又は酵素的に架橋させることにより、バルク材料上に親水性の表面コーティングを適用する工程とを含む、複合材料の製造方法に関する。
【0010】
複合材料の基礎をなす疎水性の有機バルク材料は、好ましくは、カチオン基又はアニオン基のようなイオン基を有さないか、あるいは、少なくとも比較的低いイオン基の濃度を有する材料である。したがって、好適なバルク材料の表面も、低いイオン基の濃度を有するか、又は、カルボキシ、スルホ、アミノ等の基のようなイオン基を有さないことにすらなり、したがって、実質的にイオン電荷を有さないことになるであろう。
【0011】
適切なバルク材料の例は、その数多くが公知である、天然又は合成有機ポリマー又は改質バイオポリマーである。ポリマーの幾つかの例は、重付加及び重縮合ポリマー(ポリウレタン、エポキシ樹脂、ポリエーテル、ポリエステル、ポリアミド及びポリイミド);ビニルポリマー(ポリアクリラート、ポリメタクリラート、ポリアクリルアミド、ポリメタクリルアミド、ポリスチレン、ポリエチレン及びそれらのハロゲン化誘導体、ポリビニルアセタート及びポリアクリロニトリル);又はエラストマー(シリコーン、ポリブタジエン及びポリイソプレン)である。
【0012】
好適なコーティングされる材料の群は、生物医学的装置、例えば、コンタクトレンズ、特に連続装用コンタクトレンズの製造に従来から使用されているそれらであり、それら自体は親水性でない。そのような材料は、当業者にとって公知であり、例えばポリシロキサン、ペルフルオロアルキルポリエーテル、フッ素化ポリ(メタ)アクリラート、ポリアルキル(メタ)アクリラート、又はフッ素化ポリオレフィン、例えば、フッ素化エチレンもしくはプロピレン、例えば、テトラフルオロエチレンを含んでよく、好ましくは、特定のジオキソール、例えば、ペルフルオロ−2,2−ジメチル−1,3−ジオキソールとの組み合わせである。上記材料の2つ以上の混合物も可能である。
【0013】
本発明のポリシロキサンヒドロゲルのうち、ペルフルオロアルキルポリエーテルヒドロゲル又はそれらの混合物、特にポリシロキサンヒドロゲルが、好適な疎水性の有機バルク材料である。
【0014】
適切なポリシロキサンヒドロゲルの例は、例えば、連続装用コンタクトレンズの製造に現在使用されているそれら、例えば、(i)例えば、ヒドロキシエチルアクリラート、ヒドロキシエチルメタクリラート、アクリルアミド、N,N−ジメチルアクリルアミド、N−ビニルピロリドン、アクリル酸又はメタクリル酸からなる群より選択される1つ以上の親水性のモノマーと、(ii)シロキサンモノマー及び/又はマクロモノマー、例えばトリス−トリメチルシリルオキシ−シリル−プロピルメタクリラート(TRIS)、又はポリシロキサン架橋剤、例えば、下記式(2)に記載のもの、とのコポリマーである。適切な市販のシリコンヒドロゲルは、Balafilcon A、Galyfilcon A、Lotrafilcon A、Lotrafilcon B又はSenofilcon Aである。
【0015】
好適なポリシロキサンヒドロゲルの別の群は、結合又は架橋員で連結された、少なくとも1つの疎水性のシロキサン又はペルフルオロアルキルポリエーテルセグメントと、少なくとも1つの親水性のセグメントとを含む両親媒性セグメントコポリマーである。前記ポリシロキサンヒドロゲルの例は、例えば、PCT出願WO−A−96/31792及びWO−A−97/49740に開示されている。特に好適な両親媒性セグメントコポリマーは、ポリシロキサン、ペルフルオロアルキルポリエーテル及び混合ポリシロキサン/ペルフルオロアルキルポリエーテルセグメントからなる群より選択される少なくとも1つの疎水性のセグメントと、ポリオキサゾリン、ポリ(2−ヒドロキシエチルアクリラート)、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリラート)、ポリアクリルアミド、ポリ(N,N−ジメチルアクリルアミド)、ポリビニルピロリドン及びポリエチレンオキシドセグメントからなる群より選択される少なくとも1つの親水性のセグメントを含む。
【0016】
好適なポリシロキサンヒドロゲルのさらに別の群は、(a)エチレン性不飽和二重結合1つを有する少なくとも1つの親水性のモノマーと、エチレン性不飽和二重結合2つ以上を含む少なくとも1つのシロキサン架橋剤とを、官能基を有する連鎖移動剤の存在下で共重合させる工程と;
(b)得られたコポリマーの1つ以上の官能基をエチレン性不飽和基を有する有機化合物と反応させる工程とによって得られる、架橋性もしくは重合性のプレポリマーを架橋することによって得られるそれらである。この種のポリシロキサンヒドロゲルは、例えば、WO−A−01/71392に開示されている。
【0017】
特に好適なポリシロキサンヒドロゲルは、
(a)式:
【化1】


(式中、Rは、水素又はメチルであり、Rは、−COO−(CH−OH、−CONH、−CON(CH、又は
【化2】


である)の親水性のモノマー(場合により、1つ以上のさらなる親水性のモノマーと混合したもの)と;
式:
【化3】


(式中、dは、10〜500、好ましくは10〜300、より好ましくは20〜200及び特に25〜150の整数であり、(alk)は、直鎖又は分岐鎖のC−Cアルキレン又はラジカル−(CH1−3−O−(CH1−3−であり、Xは、−O−又は−NH−であり、Qは、式:
【化4】


のラジカルである)に相当するポリシロキサン架橋剤とを、官能基、特に2−メルカプトエタノール又は特に2−アミノエタンチオール(システアミン)を有する連鎖移動剤の存在下で共重合させる工程;及び
(b)得られたコポリマーを、エチレン性不飽和基を有する有機化合物、例えば2−イソシアナートエチルメタクリラート(IEM)、2−ビニル−アズラクトン、2−ビニル−4,4−ジメチル−アズラクトン、塩化アクリロイルもしくは塩化メタクリロイル、2−ヒドロキシエチルアクリラート(HEA)、2-ヒドロキシメタクリラート(HEMA)、グリシジルアクリラート又はグリシジルメタクリラート、特にIEM又は塩化アクリロイルと反応させる工程によって得られたプレポリマーを架橋することによって得られる。
【0018】
バルク材料表面に結合した水溶性ペプチドは、例えば、式:
A−C(O)−[NH−(ペプチド)−C(O)]−X−R (3)
{式中、A−C(O)は、疎水性のラジカル、例えば、脂肪酸のラジカル、芳香族カルボン酸のラジカル及び芳香脂肪族カルボン酸のラジカルからなる群より選択されるラジカルであり、
[NH−(ペプチド)−C(O)]は、3つ以上のアミノ酸を含み、そのうちの少なくとも1つがリシン(Lys)又はグルタミン(Gln)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドのラジカルであり、
−Rは、OHであり末端ペプチドカルボキシ基の一部であるか、あるいは、XがO又はNR(ここでRは、水素又はC−C−アルキルである)であり、Rが、親水性の基である}のペプチドである。
【0019】
脂肪酸のラジカルとしてのA−C(O)は、例えば、長鎖の脂肪族モノカルボン酸のラジカルであり、例えば、6〜25個の炭素原子及び場合により1つ以上の炭素−炭素の二重結合を含む。好ましくは、A−C(O)は、式C2n+1COOH(ここでnは、7〜20、特に8〜18の数である)のモノカルボン酸のラジカルである。好適な脂肪酸ラジカルA−C(O)の例は、カプリン酸のアシルラジカル、ラウリン酸、パルミチン酸又はステアリン酸である。
【0020】
適切な芳香族酸ラジカルA−C(O)の例は、場合により置換された安息香酸又はナフトエ酸のアシルラジカルである。
【0021】
芳香脂肪族酸A−C(O)の適切なラジカルの例は、場合により置換されたフェニル酢酸又はフェニルプロピオン酸のラジカル、又は、1−もしくは2−ナフチル酢酸又はプロピオン酸のラジカルである。
【0022】
安息香酸、フェニル酢酸又はフェニルプロピオン酸の、場合による置換基は、例えば、C−C−アルキル又はC−C−アルコキシである。
【0023】
アミノ酸配列(ペプチド)は、通常、化学的又は酵素的に架橋性である任意の水溶性ペプチドのラジカルであってよい。
【0024】
ポリペプチドラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなすアミノ酸配列は、好ましくは、酵素トランスグルタミナーゼの基質として機能することができる配列であり、すなわち、それは、酵素的に架橋されることができるトランスグルタミナーゼリーダー配列の形態でリシン及び/又はグルタミンを含有する。
【0025】
ポリペプチドラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなす適切なペプチドの例は、タンパク質加水分解物、例えば、カゼイン加水分解物;グルテンペプチド;ポリリシン;又はリシンと、例えば、アラニン、フェニルアラニン、セリン、チロシン及びトリプトファンからなる群より選択される1つ以上の他のアミノ酸とのコポリマーである。
【0026】
ラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなすポリペプチドの分子量は、通常重要ではないが、好ましくはM値が、≦12000である。Mの好適な分子量の範囲は、400〜10000、より好ましくは400〜5000、特に500〜1500である。
【0027】
ラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなす好適なポリペプチドの1つの群は、ポリリシン類である;前記ポリリシン類の分子量は、好ましくは、優先順位も含めて上記の範囲である。
【0028】
好適なポリペプチドのさらなる群は、リシンと、アラニン、フェニルアラニン、セリン、チロシン及びトリプトファンからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸との統計的ポリマーであり、ここでも、上記の分子量の範囲と優先順位が当てはまる。
【0029】
さらに適切なリシンコポリマーは、統計的組成物:
Tyr−(Ala)−(Lys) (4a)
(式中、xは、0又は1、好ましくは1の数であり;yは、0〜8、好ましくは1〜5、及び特に2〜4の数であり;zは、1〜20、好ましくは2〜10、及び特に2〜5の数であり;(x+y+z)の合計が、3〜20、好ましくは4〜12及び特に5〜8であり、IUPAC-IUB Biochemical Nomenclature Commissionの推奨する呼称に従い、Tyrは、チロシンを、Alaは、アラニンを、及びLysは、リシンを表す)を有する。
【0030】
このリシンコポリマーの群のうち、[NH−(ペプチド)−C(O)]は、好ましくは統計的組成物:
Tyr−(Ala)−(Lys) (4b)
を有するポリペプチドのラジカルであり、さらにより好適であるのは、SEQ ID NO 1:
Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala (4c)
(ここでTyrは、Aに結合し、Alaは、Rに結合している)の合成ポリペプチドのラジカルである。
【0031】
ラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなす好適なポリペプチドのさらなる群は、グルタミン単位を含むグルテンペプチドを包含する。
【0032】
ラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなす好適なポリペプチドのさらなる群は、グルタミン及びリシン単位を含むカゼイン加水分解物を包含する。
【0033】
式(3)のXは、好ましくはO又はNH、特にNHである。
【0034】
親水性の基としてのRは、例えば、水素又は、スルホ、スルファト、ホスファト及び/又はカルボキシにより1回又は数回置換されているC−C−アルキルラジカルを表す。用語スルホ、スルファト、ホスファト及びカルボキシは、一般に、遊離酸及び生物医学的に許容される、特に眼科的に許容されるそれらの塩、例えばナトリウム、カリウム、マグネシウム又はアンモニウム塩を含む。好ましくは、親水性の基としてのRは、スルホ、スルファト及び/又はカルボキシにより一置換又は二置換されているC−C−アルキルラジカルを表す。より好ましくは、親水性の基としてのRは、スルホ又はカルボキシで一置換されているC−C−アルキルラジカルである。最も好ましくは、親水性の基としてのRは、2−スルホエチルである。
【0035】
−RがOHである場合、式(3)は、末端カルボキシ基の適切な塩、例えばナトリウム、カリウム又はアンモニウム塩も包含することを意図する。
【0036】
本発明の好適な実施態様によれば、工程(b)における疎水性の有機バルク材料に、上記式(3){式中A−C(O)は、式C2n+1COOH(ここでnは、7〜20である)のモノカルボン酸のラジカルであり;
[NH−(ペプチド)−C(O)]は、タンパク質加水分解物、グルテンペプチド、ポリリシン、又はリシンと1つ以上の他のアミノ酸とのコポリマーからなる群より選択される、分子量400〜10000を有するポリペプチド由来のアミノ酸配列であり、
は、O又はNHであり、Rは、水素又は、スルホ、スルファト及び/もしくはカルボキシにより一置換又は二置換されているC−C−アルキルである}の水溶性ペプチドが結合する。
【0037】
本発明のより好適な実施態様によれば、工程(b)における疎水性の有機バルク材料に、上記式(3){式中A−C(O)は、式C2n+1COOH(ここでnは、8〜18である)のモノカルボン酸のラジカルであり;
[NH−(ペプチド)−C(O)]は、カゼイン加水分解物;グルテンペプチド;ポリリシン;リシンと、アラニン、フェニルアラニン、セリン、チロシン及びトリプトファンからなる群より選択される1つ以上のアミノ酸との統計的コポリマー;及び式:
Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala (4c)
(ここでTyrは、Aに結合し、Alaは、Rに結合している)のポリペプチドからなる群より選択される、分子量500〜1500を有するポリペプチド由来のアミノ酸配列であり;
は、O又はNHであり、Rは、水素又は、スルホもしくはカルボキシにより一置換されているC−C−アルキルである}の水溶性ペプチドが結合する。
【0038】
式(3)の化合物は、それ自体公知の方法により合成されてよい。例えば、式:
N−(ペプチド)−C(O)OH (3a)
(式中、(ペプチド)は、上記の定義のとおりである)のペプチドを、式:
A−COOH (5)
(式中、Aは、前記の定義のとおりである)の化合物と、及び、該当する場合、式:
−XH (6)
(式中、R及びXは、上記の定義のとおりである)の化合物と、任意の順序で反応させる。
【0039】
式(5)及び(6)の化合物は、公知であり、通常、市販されている。式(3a)のペプチドは、商業的サプライヤーから一部入手することができるか、又は任意の公知の適切な方法に従って合成することができる。例えば、ポリリシン並びにリシンと他のアミノ酸との統計的コポリマーは、標準的な共重合反応によって得られうる。具体的なポリリシンコポリマーは、例えば、W.C. Chan and P.D. White, Fmoc Solid Phase Peptide Synthesis, Practical Approach Series, Oxford University Pressに記載されているような固相ペプチド合成によって得られうる。例えば、式(4a)、(4b)及び(4c)の配列の基礎をなすペプチド、即ち、SEQ ID NO 1は、ポリマー担体、例えば、クロロトリチルアンカーを含むポリスチレン樹脂で固定された、基礎をなす保護アミノ酸(例えば、フルオレニルメトキシカルボニル(Fmoc)ラジカルで保護されている)を1つずつ反応させることにより合成することができる。したがって、第1の保護アミノ酸、例えばFmoc及びBoc(t−ブチルカルボニル)保護リシン又はFmoc保護アラニンを、ポリマー担体にカップリングする。カップリング完了(カイザー試験でチェックしうる)後、前記アミノ酸を脱保護(通常、希釈トリフルオロ酢酸又はピペリジンで行う)し、その後第2の保護アミノ酸のカップリングを開始する。最後のアミノ酸のカップリング及び脱保護の後、得られたペプチドを、それ自体公知の方法、例えば、ジクロロメタン中のトリフルオロ酢酸の溶液で、ポリマー担体から分離する。
【0040】
式(3a)の化合物と式(5)及び(6)の化合物との反応は、有機化学の教科書から、それ自体公知である。式(3a)のペプチドを上記のような固相ペプチド合成で調製した場合、そのペプチドと式(5)の化合物とのカップリングは、好ましくは、ペプチド合成に加えることができる。したがって、ポリマー担体から分離する前のペプチドに、式(5)の化合物を、アミノ酸と同様の方法でカップリングする。
【0041】
疎水性の部分を有する水溶性ペプチドは、疎水性のバルク材料表面に非共有的に結合する。したがって、結合は、例えば、物理的な吸収、バルク材料のポリマーマトリックスへの物理的な組み込み、錯体形成、異極性結合及び/又はイオン相互作用によって生じる。
【0042】
ペプチドのバルク材料表面への結合は、それ自体公知の方法にしたがって達成しうる。例えば、バルク材料をペプチド溶液に浸漬するか、又は例えば、浸漬、スプレー、印刷、スプレッド、注入、圧延又はスピンコーティング(スプレー、又は特に浸漬が好適である)によって、1つ以上のペプチドの層をバルク材料表面上に堆積させる。
【0043】
ペプチドの適切な浸漬溶液は、通常、1つ以上の異なる溶媒に希釈した各々のペプチドを含む。適切な溶媒は、例えば、水あるいは、水混和性有機溶媒、例えばTHF又はC−C−アルカノール、例えば、メタノール、エタノールもしくはイソプロパノールを含む水溶液であり;好適な溶媒は水である。ペプチド水溶液のpHは、使用する特定のポリペプチドに依存する。一定のpH値を維持するために、適切な緩衝液、例えば、リン酸緩衝液を加えてよい。浸漬溶液は、追加的な成分、例えば塩を含有してよい。浸漬溶液の濃度は、例えば、関与する個別のペプチドに依存して、広い範囲で変化してよい。しかし、一般に比較的希薄なペプチドの溶液の配合が好適である。
【0044】
バルク材料をペプチドの溶液に浸漬する時間は、数多くの要因に依存して変化する場合がある。通常、30秒〜約30分間、好ましくは30秒〜15分間、及び特に45秒〜5分間の浸漬時間が有効であると証明されている。バルク材料のペプチド溶液への浸漬は、室温又は高温で行ってよい;したがって、例えば、15〜30℃の温度、及び高温、例えば35〜85℃が可能である。
【0045】
本発明の好適な実施態様は、ペプチド溶液での処理に先立ち、疎水性の有機バルク材料を、水混和性の有機溶媒、例えば、C−C−アルコール、例えばエタノールもしくはイソプロパノール又はTHF中で膨潤させることを含む。膨潤は、周囲温度又は好ましくは高温、例えば、35〜90℃で行ってよい。膨潤時間は、重要ではない;通常、30秒〜5分間、好ましくは45秒〜2分間で十分である。
【0046】
ペプチドの堆積後、バルク材料は、通常の方法、例えば単なるすすぎにより仕上げてもよい。
【0047】
本発明の方法による複合材料の親水性の表面コーティング工程(b)は、例えば、化学的に、有機バルク材料上に非共有的に結合したペプチドの架橋を開始させることにより、終了させることもできる。この目的のために、ペプチドをその表面に含む有機バルク材料を、適切な架橋剤、例えばホルムアルデヒド、好ましくはホルムアルデヒドの水溶液又はグルタルアルデヒドで処理する。
【0048】
好ましくは、本発明の方法による複合材料の親水性の表面コーティング工程(b)は、酵素的に架橋することにより終了させる。例えば、疎水性の有機バルク材料が、その表面に、リシン及びグルタミン単位の両方を含むペプチドを結合させている場合、前記ペプチドは、トランスグルタミナーゼを加えることによって架橋させてもよい。酵素トランスグルタミナーゼは、リシンアミノ基及びグルタミンアミド基の間で、ペプチド内及びペプチド間イソペプチド結合の形成を開始する。バルク材料と、それに結合しているペプチドとの、例えば、細菌トランスグルタミナーゼを含む水溶液中の処理は、例えば、周囲温度又は好ましくは僅かに高温、例えば30〜50℃で行ってよい。処理時間は、重要ではない;通常、30秒〜10分間、好ましくは45秒〜5分間で十分である。
【0049】
疎水性の有機バルク材料が、その表面に、リシン単位のみ又はグルタミン単位のみを含むペプチドを結合させている場合、トランスグルタミナーゼを用いて酵素的に架橋することは、さらに別の、相補的アミノ酸単位を含むタンパク質もしくはタンパク質加水分解物の存在下でのみ実施可能である。
【0050】
本発明のさらに好適な実施態様は、したがって、
(a)疎水性の有機バルク材料を提供する工程と、
(b)まず、
(b1)酵素トランスグルタミナーゼの基材として機能し、好ましくは上記式(3)(式に含まれる変数には、上記の意味及び優先順位が適用される)の化合物である、疎水性の部分を含むペプチドを前記バルク材料表面に結合させ;次に
(b2)タンパク質又はタンパク質加水分解物を、同様に酵素トランスグルタミナーゼの基材として機能するバルク材料表面に加え;その後
(b3)酵素、特にトランスグルタミナーゼで処理することにより、
バルク材料上に親水性の表面コーティングを適用する工程とを含む複合材料の製造方法を含む。
【0051】
例えば、工程(b1)におけるペプチドは、1つ以上のグルタミン単位を含み、工程(b2)におけるタンパク質又はタンパク質加水分解物は、1つ以上のリシン単位を含む;あるいは、本発明の別の実施態様では、工程(b1)におけるペプチドは、1つ以上のリシン単位を含み、工程(b2)におけるタンパク質又はタンパク質加水分解物は、1つ以上のグルタミン単位を含む。
【0052】
上記方法におけるトランスグルタミナーゼ処理が、疎水性バルク材料のペプチド改質表面上に、タンパク質又はタンパク質加水分解物を、固定及び/又は架橋すると考えられる。上記工程(b2)の適切なタンパク質又はタンパク質加水分解物は、例えば、カゼイン又はカゼイン加水分解物、ゼラチン加水分解物、グルテン加水分解物又は大豆タンパク質加水分解物、特にカゼイン加水分解物である。工程(b1)による、ペプチド改質バルク材料のタンパク質又はタンパク質加水分解物での処理は、好ましくは周囲温度での水溶液中で行う。その後、周囲温度又は好ましくは僅かに高温、例えば30〜50℃で、酵素による処理を行う。処理時間は、重要ではない;通常、30秒〜10分間、好ましくは45秒〜5分間が十分である。
【0053】
本発明の方法によって得た複合材料は、好ましくは、上記の定義及び優先順位のすべてを包含する上記の複合材料を含む、生物医学的装置、例えば、眼用装置、好ましくはハード及び特にソフトコンタクトレンズの両方を含むコンタクトレンズ、眼内レンズ又は人工角膜である。複合材料は、さらに、例えば、創傷治療用包帯、眼帯、活性化合物の徐放用材料、例えば、ドラッグデリバリーパッチ、手術において使用できる成形物、例えば、心臓弁、代用血管、カテーテル、人工臓器、被覆生体インプラント、例えば、膵臓島、人工装具の材料、例えば、代用骨、又は診断用成形物、膜又は生物医学的機器又は器具としても有用である。
【0054】
本発明の方法によれば、生物医学的物品、特に眼科用品が得られ、先行技術のそれらと比べて様々な予想外の利点を有し、このためこれらの物品が、例えば、連続装用コンタクトレンズのような実用に極めて適切なものとなる。例えば、これらは、高い表面湿潤性及び潤滑性を有する。このことは、例えば、極めて滑性な物品表面を示す指先試験;又は目視検査;又は適切な接触角の測定によって実証されている。例えば、コーティングしたレンズ及びコーティングしていないレンズの液滴による静的接触角は、Kruss (Kruss GmbH, Hamburg, Germany)のDSA 10 液滴形状分析系で測定される。コーティングしていないシリコンヒドロゲルコンタクトレンズは、通常、90〜100°以上の水接触角を有するが、本発明の方法による処理は、この値を大幅に削減する。本発明の方法によって得られる表面コーティングの優れた品質を評価するさらなるツールは、ATR−FTIR測定又は下記実施例部分に記載のスーダンブラック染料吸収試験である。
【0055】
さらに、本発明の方法によって得られた複合材料を含む生物医学的装置、例えば、コンタクトレンズのような眼用装置は、優れた機械的性質を合わせもつ際立った生体適合性を有する。さらに、一般に有害な眼作用は観察されず、一方タンパク質又は脂質の吸着は低く、また塩沈着物形成も従来のコンタクトレンズよりも低い。一般に、汚損が少なく、微生物付着が少なく、また、生物的侵食も低い一方で、例えば低い摩擦係数及び低い摩耗性に、良好な機械的性質を見い出すことができる。さらに、本発明の複合材料の寸法安定性は、非常に優れている。加えて、本発明による所定のバルク材料での親水性の表面コーティングの結合は、その視界的透明度に影響を及ぼさない。
【0056】
要約すると、本発明の方法によって得られる眼用装置、例えば、眼内レンズ及び人工角膜又は特にコンタクトレンズは、細胞残屑、化粧品、涙成分、脂質、タンパク質、塩、塵芥若しくは汚損、溶媒蒸気又は化学物質に関しての損傷の低さと、例えば、眼用装置の非常に良好な眼上運動を与える柔軟なヒドロゲル表面による、このような眼用装置を装用する患者にとっての高い快適さとの組合せを提供する。
【0057】
実施例において、他に記載のない限り、量は重量であり、温度は、摂氏度で与えられる。固体への湿潤力は、固体を公知の表面張力を有する液体に浸漬するか、又はそこから引き上げたときに測定した。アミノ酸出発物質及びペプチド中のアミノ酸単位は、他に記載のない限り、常に天然のL型である。
【実施例】
【0058】
実施例1:HO−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OHの調製
上記ペプチドを、Fmoc−固相ペプチド合成の標準的な方法を用いて、2−クロロトリチルアンカーを含むポリスチレン担体上で合成した。カップリングは、通常、o−(ベンゾトリアゾール−1−イル)−N,N,N’,N’−テトラメチル−ウロニウムヘキサフルオロフォスファート(TBTU)/1−ヒドロキシ−1H−ベンゾトリアゾール(HOBt)中で行い、及びカップリングの完了は、カイザー(Kaiser)試験により判明した。洗浄工程は、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)で行った。
【0059】
詳細な手順:
(a)市販のAla−OH−2−クロロトリチル−ポリスチレン担体6.25gを、ペプチド合成反応器中のジクロロメタン50ml中に懸濁し、30分間保持した。ポリマー担体をDMFで洗浄し、その後いくらかのDMF中で再び懸濁した。
(b)Fmoc−Lys(Boc)−OHのカップリング:Fmoc−Lys(Boc)−OH 4.69g、TBTU 3.14g及びHOBt 1.35gをDMF20ml中に溶解した。N−エチル−ジイソプロピルアミン(DIPEA)3.4mlをこの溶液に加えた。得られた混合物を短時間撹拌し、次に工程(a)に従って得た懸濁液に加えた。得られた混合物を窒素下に約1時間保持した。その後、サンプルを採り、カイザー試験でチェックした。カイザー試験が陰性である場合、反応器から反応溶液を取り出し、ポリスチレン担体を、DMFで10回洗浄した。
(c)Fmoc保護基の切断:洗浄後、得られたポリマー担体に、DMF/ピペリジン混合物(80/20)30mlを加え、窒素をフラッシュしながら全体を1時間保持した。担体を次に再度、DMFで10回洗浄し、その後いくらかのDMF中に懸濁した。
(d)Fmoc−Lys(Boc)−OHのカップリング:第2のLys(Boc)を、工程(c)に従って調製したLys(Boc)−Ala−2−クロロトリチル−ポリスチレンに加えるために、工程(b)及び(c)を同じ方法で繰り返した。
(e)Fmoc−Ala−OHのカップリング:Fmoc−Ala−OH 3.11g、TBTU 3.14g及びHOBt 1.35gを、DMF20ml中に溶解した。DIPEA 3.4mlを得られた溶液に加えた。得られた混合物を短時間撹拌し、次に工程(d)に従って得た懸濁液に加えた。得られた混合物を窒素下に約1時間保持した。その後、サンプルを採り、カイザー試験でチェックした。カイザー試験が陰性の場合、反応溶液を反応器から取り出し、ポリスチレン担体をDMFで10回洗浄した。その後、Fmoc保護基の切断を工程(c)に記載のとおり行った。
(f)別のFmoc−Lys(Boc)−OH及びFmoc−Ala−OHのカップリング:両アミノ酸を、工程(e)に従って得たペプチドに上記工程(d)及び(e)に記載のものと同じ方法で、カップリングした。
(g)Fmoc−Tyr(tBu)−OH(tBu=t−ブチル)のカップリング:Fmoc−Tyr(tBu)−OH 4.6g、TBTU 3.14g及びHOBt 1.35gをDMF20mlに溶解し、その後、N−エチル−ジイソプロピルアミン(DIPEA)3.4mlをこの溶液に加えた。得られた混合物を短時間撹拌し、次に工程(a)に従って得た懸濁液に加えた。得られた混合物を窒素下に約1時間保持した。その後、サンプルを採り、カイザー試験でチェックした。カイザー試験が陰性の場合、反応溶液を反応器から取り出し、ポリスチレン担体を、DMFで洗浄した。
(h)Fmoc保護基の切断:洗浄後、得られたポリマー担体に、DMF/ピペリジン混合物(80/20)30mlを加え、窒素をフラッシュしながら混合物を1時間保持した。樹脂を次にイソプロパノール及びn−ヘキサンで3回洗浄し、その後高真空において乾燥させた。収量:Tyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Alaを負荷したポリスチレン樹脂12g。
【0060】
実施例2a:固相化学を用いた、疎水性の部分のペプチドへのカップリング
実施例1に従って得たTyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Alaを負荷したポリスチレン担体2.4gを、ジクロロメタンと一緒にペプチド反応器中に懸濁し、30分間保持した。ポリスチレン担体を次にDMFで洗浄し、その後、いくらかのDMF中に再び懸濁した。別の広口ビンにおいて、パルミチン酸641mg、TBTU 786mg及びHOBt 338mgをDMFに溶解した。DIPEA850μlを加え完全に攪拌した後、この溶液を、懸濁したポリスチレン担体に加え、全体を約1時間窒素フラッシュ下に保持した。転換の完了をカイザー試験で確認した後、ポリマー担体をDMFで洗浄した。
【0061】
実施例2b:固相化学を用いた、疎水性の部分のペプチドへのカップリング
実施例1に従って得たTyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Alaを負荷したポリスチレン担体1gを、ジクロロメタンと一緒にペプチド反応器中に懸濁し、30分間保持した。ポリスチレン担体を次にDMFで洗浄し、その後、いくらかのDMF中に再び懸濁した。別の広口壜において、カプリン酸148mg、TBTU 271mg及びHOBt 116mgをDMFに溶解した。DIPEA 293μlを加え完全に攪拌した後、この溶液を、懸濁したポリスチレン担体に加え、全体を窒素で約2時間フラッシュした。転換の完了をカイザー試験で確認した後、反応混合物をろ過し、ポリマー担体をDMFで洗浄した。
【0062】
実施例2c:固相化学を用いた、疎水性の部分のペプチドへのカップリング
実施例1に従って得たTyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Alaを負荷したポリスチレン担体910mgを、ジクロロメタンと一緒にペプチド反応器中に懸濁し、30分間保持した。ポリスチレン担体を次にDMFで洗浄し、その後、いくらかのDMF中に再び懸濁した。別の広口壜において、フェニル酢酸105mg、TBTU 239mg及びHOBt 103mgをDMF中に溶解した。DIPEA 261μlを加え完全に攪拌した後、この溶液を、懸濁したポリスチレン担体に加え、全体を窒素で約1時間フラッシュした。転換の完了をカイザー試験で確認した後、ポリマー担体を洗浄した。
【0063】
実施例2d:固相化学を用いた、疎水性の部分のペプチドへのカップリング
実施例1に従って得たTyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Alaを負荷したポリスチレン担体910mgを、ジクロロメタンと一緒にペプチド反応器中に懸濁し、30分間保持した。ポリスチレン担体を次にDMFで洗浄し、その後、いくらかのDMF中に再び懸濁した。別の広口ビンにおいて、ナフチル酢酸141mg、TBTU 239mg及びHOBt 103mgをDMF中に溶解した。DIPEA 261μlを加え完全に攪拌した後、この溶液を、懸濁したポリスチレン担体に加え、全体を約1時間窒素でフラッシュした。転換の完了をカイザー試験で確認した後、ポリマー担体を洗浄した。
【0064】
実施例3a:ポリマー担体からの完全に保護されたペプチドの切断
実施例2aに従って得たポリマー担体から、完全に保護されたペプチドを分離した。この目的のために、ジクロロメタン中にトリフルオロ酢酸1重量%を含む溶液20mlを、ポリマー担体材料に加え、全体を約2分間振とうさせた。トリフルオロ酢酸/ジクロロメタン溶液を用いた振とうプロセスを7回繰り返した。その後、ポリマー担体をジクロロメタン及びメタノールで3回洗浄した。合わせた切断及び洗浄用溶液をメタノール中のピリジン10重量%の溶液に加え、全体を次に真空中で原体積の約5%に相当する容量まで濃縮した。得られた溶液に、純水約80mlを加え、得られた白色の沈殿物をろ過した。冷水、冷NaHCO溶液、再び冷水、冷KHSO溶液0.05M、最後に再度水での洗浄を繰り返した後、得られた沈殿物を真空中Pで一晩乾燥させた。粗保護ペプチド収量1.56g。
【0065】
実施例3b:脱保護ペプチドのポリマー担体からの切断
実施例2b、2c及び2dに従って調製したペプチドをポリマー担体から分離し、一方で同時に側鎖の保護基を除去した。この目的のために、水2.5重量%、トリ−イソプロピルシラン2.5重量%及びトリフルオロ酢酸95重量%を含む溶液各20mlを、それぞれの保護ペプチドを含むポリマー担体に加え、全混合物を次に約1時間保持した。ポリマー担体を次にろ別し、その後、トリフルオロ酢酸で2回洗浄した。ろ液と洗浄溶液を組み合わせた後、溶媒を真空中で除去した。得られた油状残留物の結晶化をジエチルエーテル中での処理により開始した。収量(粗未保護ペプチド、それぞれベージュ色の結晶):
カプリノイル−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OH:432mg;
フェナク(phenac)−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OH:370mg;
ナフタク(naphtac)−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OH:395mg。
【0066】
実施例4:パルミトイル−Tyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Alaのタウリン(2−スルホエチル−アミン)へのカップリング
実施例3aに従って得たペプチド780mgを、DMF 40mlに溶解した。TBTU 160mg、HOBt 68mg、N−エチル−ジイソプロピルアミン340μl及びタウリン125mgをこの溶液に加え、反応混合物を窒素雰囲気で一晩撹拌した;それにより、最初の懸濁液は、透明な溶液に変化した。最後に、溶媒を真空中で除去し、固体残留物を結晶化し、さらにジエチルエーテルで洗浄した(収量:明褐色の固体1.4g)。
【0067】
粗パルミトイル−Tyr(tBu)−Ala−Lys(Boc)−Ala−Lys(Boc)−Lys(Boc)−Ala−タウリン生成物を、トリフルオロ酢酸25重量%及びジクロロメタン75重量%を含む溶液80ml中に溶解し、全混合物を室温で約90分間撹拌した。溶媒を次に真空中で除去し、残存する油状生成物を結晶化させ、ジエチルエーテルで洗浄した。
【0068】
実施例5:実施例3b及び4で得た粗生成物を、分取HPLC(Varian製HPLC、トリフルオロ酢酸を改質剤とする、水/アセトニトリル勾配の逆相カラム)で精製した。
収量及び特性解析:
(i)カプリノイル−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OH:321mg、ESI-MS: 955.6 [M+Na]+
【化5】


(ii)フェナク−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OH:276mg、ESI-MS: 919.5 [M+Na]+
【化6】


(iii)ナフタク−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−OH:260mg、ESI-MS: 969.5 [M+Na]+
【化7】


(iv)パルミトイル−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−タウリン:406mg、ESI-MS: 1146.7 [M+Na]+
【化8】


実施例6:酵素的に架橋されたペプチドをその表面に結合させたソフトシリコンヒドロゲルコンタクトレンズの調製
疎水性のシリコンヒドロゲルコンタクトレンズ(lotrafilcon A、混合ポリシロキサン/ペルフルオロアルキルポリエーテル架橋剤、TRIS及びDMAの共重合生成物)を、まず、実施例4(パルミトイル−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−タウリン)の精製ペプチド10mmolを含む水溶液中でインキュベートし、次にカゼイン加水分解物(Vitalarmor)1重量%を含む水溶液に移した。細菌トランスグルタミナーゼ2U/mlを40℃で加えて酵素的架橋を開始した。コーティングしたレンズを次にPBS緩衝液で洗浄し、121℃で20分間オートクレーブした。
実施例4のペプチドの結合は、ペプチド鎖のチロシン部分のテトラニトロメタンでのニトロ化反応により、黄色の着色が生じることにより観察することができた。カゼイン加水分解物の結合及び架橋は、レンズ表面の親水性及び湿潤性試験によって調べた。
【0069】
実施例7:酵素的に架橋されたペプチドをその表面に結合させたソフトシリコンヒドロゲルコンタクトレンズの調製
(i)シリコンヒドロゲルコンタクトレンズの調製
(ia)PDMS架橋剤Iの調製
4Lビーカーにおいて、NaCO 24.13g、NaCl 80g及び脱イオン水1.52kgを混合して溶解した。別の4Lビーカーにおいて、ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu, MW 約11500)700gを、ヘキサン1000g中に溶解した。4L反応器に、タービン攪拌器付オーバーヘッド撹拌器及びマイクロフローコントローラー付250ml添加漏斗を装備した。2つの溶液を次に反応器に仕込み、激しく攪拌しながら15分間混合し、エマルションを作成した。塩化アクリロイル14.5gをヘキサン100ml中に溶解し、添加漏斗に仕込んだ。塩化アクリロイル溶液を、激しい攪拌下で1時間かけてエマルションに滴下した。添加完了後、エマルションを30分間撹拌し、次に攪拌を停止し、一晩、相を分離させた。水相をデカントし、有機相を、水に溶解した2.5%NaClの混合物2.0kgで2回洗浄した。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、1.0μmの除外でろ過し、ロータリエバポレーターで濃縮した。得られた油状物を、高真空乾燥で一定重量になるまでさらに精製した。得られた生成物を滴定により分析すると、C=C二重結合が0.175mEq/gであった。
【0070】
(ib)PDMS架橋剤IIの調製
4Lビーカーにおいて、NaCO 61.73g、NaCl 80g及び脱イオン水1.52kgを混合して溶解した。別の4Lビーカーにおいて、ビス−3−アミノプロピル−ポリジメチルシロキサン(Shin-Etsu, MW 約4500)700gを、ヘキサン1000g中に溶解した。4L反応器に、タービン攪拌器付オーバーヘッド撹拌器及びマイクロフローコントローラー付250ml添加漏斗を装備した。2つの溶液を次に反応器に仕込み、激しく攪拌しながら15分間混合し、エマルションを作成した。塩化アクリロイル36.6gをヘキサン100ml中に溶解し、添加漏斗に仕込んだ。塩化アクリロイル溶液を激しい攪拌下で1時間かけてエマルションに滴下した。添加完了後、エマルションを30分間撹拌し、次に攪拌を停止し、一晩、相を分離させた。水相をデカントし、有機相を、水に溶解した2.5%NaClの混合物2.0kgで2回洗浄した。有機相を次に硫酸マグネシウムで乾燥させ、1.0μmの除外でろ過し、ロータリエバポレーターで濃縮した。得られた油状物を、高真空乾燥で一定重量になるまでさらに精製した。得られた生成物を滴定により分析すると、C=C二重結合が0.435mEq/gであった。
【0071】
(ic)架橋性コポリマーの調製
2Lジャケット反応器に、加熱/冷却ループ、還流冷却器、Nインレット/真空アダプター、フィードチューブアダプター及びオーバーヘッド機械式撹拌器を装備した。(ia)によるPDMS架橋剤I 90.00g及び(ib)によるPDMS架橋剤II 30.00gを1−プロパノール480g中に溶解することにより溶液を生成した。この溶液を反応器に仕込み、8℃に冷却した。溶液を排気により15mBar未満に脱気し、真空を15分間保持し、次に乾燥窒素で再加圧した。この脱気手順を全部で3回繰り返した。反応器を乾燥窒素のブランケット下に保持した。
別のフラスコにおいて、モノマー溶液を、システアミン塩酸塩1.50g、AIBN 0.3g、DMA 55.275g、HEA 18.43g及び1−プロパノール364.5gを混合することにより調製した。この溶液をWhatman 540ろ紙でろ過し、次に、流速3.0ml/分で脱気装置及びHPLCポンプを通して反応器に加えた。反応温度を次に、加熱ランプで約1時間で68℃に上げた。
第2のフラスコにおいて、システアミン塩酸塩4.5g及び1−プロパノール395.5gを混合し、次にWhatman 540ろ紙でろ過することにより供給溶液を調製した。反応器の温度が68℃に達した時、この溶液を、脱気装置/HPLCポンプを通し3時間かけて徐々に反応器に投入した。次に、反応を68℃でさらに3時間継続させ、その時点で、加熱を停止し、反応器を室温まで冷ました。
反応混合物をフラスコに移し、ロータリエバポレーター上で、真空下40℃で、サンプル1000gが残るまで溶媒を除去した。次に、溶液を高速で攪拌しながら、徐々に脱イオン水2000gと混合した。さらに溶媒をサンプル2000gが残るまで除去した。この除去プロセスの間に、溶液は、徐々にエマルションになった。得られた材料を、浸透電気伝導度が2.5μS/cm未満になるまで、10kD分子量除去膜を用いた限外ろ過により精製した。このエマルションを、次にオーバーヘッド撹拌器、冷凍ループ、温度計、及びMetrohm Model 718 STAT TitrinoのpHメーター及び分配チップを装備した2−L反応器に仕込んだ。反応混合物を、次に1℃に冷却した。NaHCO 7.99gをエマルションに仕込み、撹拌して溶解した。断続的に15%水酸化ナトリウム溶液を加えることにより、pH9.5を維持するようにTitrinoを設定した。塩化アクリロイル11.59mlを次にシリンジポンプを用いて1時間かけて加えた。エマルションをさらに1時間撹拌し、次に塩酸の15%溶液を加えることにより、反応混合物を中和するようにTitrinoを設定した。生成物を再び、浸透電気伝導度が2.5μS/cm未満になるまで、10kD分子量除去膜を用いた限外ろ過により精製した。最終的なマクロモノマーを凍結乾燥により単離した。
【0072】
(id)コンタクトレンズの調製
工程(ic)に従って得たポリマー18.83gを、1−プロパノール約200mlに溶解し、溶液総重量約70gまで濃縮し、0.45μmの除外でろ過した。固形分26.53%の溶液67.94gを回収した。2−ヒドロキシ−4’−ヒドロキシエチル−2−メチルプロピオフェノン(IRGACURE(登録商標)-2959, Ciba Specialty Chemicals)の1%溶液4.503gを加え、次に溶液を最終重量25.74g(固形分65.0%)まで濃縮した。
配合物200mgを、ポリ(プロピレン)コンタクトレンズ金型に分配し、金型を閉じた。次に金型に2.18mW/cm2の強度を有する紫外線源を15秒間照射した。金型を次に開き、レンズが接着した型半を、イソプロパノール80%、水20%(v/v)の混合物に一晩浸漬した。レンズをこの溶媒混合物で金型からすすいではずし、次に2時間ずつ2回新しいイソプロパノール/水の混合物のアリコートですすいだ。レンズの水を切り、次に脱イオン水に浸漬することにより水和した。それらを次に純水(3.0ml/レンズ)中で2時間3回すすいだ。
【0073】
(ie)表面コーティングの調製
上記(id)に従って得た疎水性のシリコンヒドロゲルコンタクトレンズを、イソプロパノール中75℃で1分間インキュベートし、次に、実施例4の精製ペプチド(パルミトイル−Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala−タウリン)10mmolを含むリン酸緩衝生理食塩溶液に移し、80℃で約1分間処理した。コンタクトレンズを次に緩衝生理食塩溶液に移し、2重量%ホルムアルデヒド溶液100μlを加えた。コンタクトレンズをその後121℃で30分間オートクレーブした。実施例4のペプチドの結合が、ペプチド鎖のチロシン部分のテトラニトロメタンでのニトロ化反応により、黄色の着色が生じることにより観察できた。目視による湿潤性及び親水性試験、並びに接触角の測定、及びスーダンブラック染色試験により、親水性の表面コーティングを調べた。
【0074】
(if)水接触角の測定
測定は、純水(Fluka製、20℃での表面張力72.5mN/M)を用いたKruss (Kruss GmbH, Hamburg, Germany)のDSA 10 液滴形状分析系での液滴法よって行った。測定目的のため、コンタクトレンズを保存溶液からピンセットで取り出し、過剰の保存溶液を穏やかに振とうして除去した。コンタクトレンズを、コンタクトレンズ型の雄部に置き、乾いた清浄な布で拭き取った。水滴(約1μl)を、次にレンズの頂点に添加し、この水滴(WCA(t)、サークルフィッティングモード)の経時的な接触角の変化を観察した;WCAは、グラフWCA(t)をt=0で外挿することによって計算した。
【0075】
(ig)スーダンブラックの染料吸収試験
スーダンブラックB(Aldrich)0.5gを、ビタミンE油状物100g中に、撹拌下で一晩溶解することにより、0.5%(w/w)スーダンブラックの染料溶液を調製した。測定目的のため、表面処理したレンズを、まず、ガラスバイアル中のリン酸緩衝生理食塩溶液(pH7.2)2ml中でオートクレーブ(121℃で30分)した。コンタクトレンズを、次に溶液からピンセットで取り出し、表面の水の大部分が除去されるように、穏やかに振とうした。レンズを次に上記で調製したスーダンブラックの染料溶液に5分間入れた。その後、レンズを染料浴から取り出し、過剰の染料溶液を温水ですすぎ落とした。レンズを風乾させ、着色の度合いに従って評価した。
2 = 着色がないか、ほとんどない
1 = わずかな着色
0 = かなりの着色
【0076】
(ih)(ie)に従ってコーティングしたコンタクトレンズ及び対応するコーティングしていないコンタクトレンズ(対照)で得た値を表1にまとめた。
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)疎水性の有機バルク材料を提供する工程と;
(b)まず、疎水性の有機バルク材料の表面に、疎水性の部分を含む水溶性のペプチドを非共有的に結合させ;次に前記水溶性のペプチドを化学的又は酵素的に架橋させることにより、バルク材料上に親水性の表面コーティングを適用する工程とを含む、複合材料の製造方法。
【請求項2】
疎水性の有機バルク材料が、ポリシロキサン、ペルフルオロアルキルポリエーテル、フッ素化ポリ(メタ)アクリラート、ポリアルキル(メタ)アクリラート、フッ素化ポリオレフィン又はそれらの混合物である、請求項1記載の方法。
【請求項3】
疎水性の有機バルク材料が、ポリシロキサンヒドロゲル、ペルフルオロアルキルポリエーテルヒドロゲル又はそれらの混合物である、請求項1又は2記載の方法。
【請求項4】
バルク材料に非共有結合的に結合するペプチドが、式:
A−C(O)−[NH−(ペプチド)−C(O)]−X−R (3)
{式中、A−C(O)は、脂肪酸のラジカル、芳香族カルボン酸のラジカル及び芳香脂肪族カルボン酸のラジカルからなる群より選択されるラジカルであり、[NH−(ペプチド)−C(O)]は、3つ以上のアミノ酸を含み、そのうちの少なくとも1つがリシン(Lys)又はグルタミン(Gln)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドのラジカルであり、
−Rは、OHであり末端ペプチドカルボキシ基の一部であるか、あるいは、XがO又はNR(ここでRは、水素又はC−C−アルキルである)であり、Rが、親水性の基である}のペプチドである、請求項1〜3のいずれか1項記載の方法。
【請求項5】
ポリペプチドラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなすポリペプチドが、カゼイン加水分解物;グルテンペプチド;ポリリシン;又はリシンと、アラニン、フェニルアラニン、セリン、チロシン及びトリプトファンからなる群より選択される1つ以上の他のアミノ酸とのコポリマーである、請求項4記載の方法。
【請求項6】
ポリペプチドラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなすポリペプチドが、ポリリシン又は、リシンと、アラニン、フェニルアラニン、セリン、チロシン及びトリプトファンからなる群より選択されるアミノ酸との統計的コポリマーである、請求項4又は5のいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
ポリペプチドラジカル[NH−(ペプチド)−C(O)]の基礎をなすポリペプチドが、SEQ ID NO 1:
Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala (4c)
(ここでTyrは、Aに結合し、Alaは、Rに結合している)のコポリマーである、請求項4又は5のいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
ポリペプチドの分子量範囲Mが、400〜10000である、請求項1〜6のいずれか1項記載の方法。
【請求項9】
親水性の表面コーティング工程(b)が、有機バルク材料に結合しているペプチドの架橋を、ホルムアルデヒド又はグルタルアルデヒドから選択される架橋剤を用いて、化学的に開始することにより終了される、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項10】
親水性の表面コーティング工程(b)が、有機バルク材料に結合しているペプチドを酵素的に架橋することにより終了される、請求項1〜8のいずれか1項記載の方法。
【請求項11】
(a)疎水性の有機バルク材料を提供する工程、及び
(b)まず、
(b1)酵素トランスグルタミナーゼの基材として機能し、疎水性の部分を含むペプチドを前記バルク材料表面に結合させ;次に
(b2)タンパク質又はタンパク質加水分解物を、同様に酵素トランスグルタミナーゼの基材として機能するバルク材料表面に加え;その後
(b3)トランスグルタミナーゼで処理することにより、
バルク材料に親水性の表面コーティングを適用する工程とを含む、請求項10記載の方法。
【請求項12】
工程(b2)で添加されるタンパク質又はタンパク質加水分解物が、カゼイン加水分解物又はグルテンペプチドから選択される、請求項11記載の方法。
【請求項13】
複合材料がコンタクトレンズである、請求項1〜12のいずれか1項記載の方法。
【請求項14】
式:
A−C(O)−[NH−(ペプチド)−C(O)]−X−R (3)
{式中、A−C(O)は、脂肪酸のラジカル、芳香族カルボン酸のラジカル及び芳香脂肪族カルボン酸のラジカルからなる群より選択されるラジカルであり、
[NH−(ペプチド)−C(O)]は、3つ以上のアミノ酸を含み、そのうちの少なくとも1つがリシン(Lys)又はグルタミン(Gln)であるアミノ酸配列を有するポリペプチドのラジカルであり、
は、O又はNR(ここでRは、水素又はC−C−アルキルである)であり、Rは、水素又は親水性の基である}の化合物。
【請求項15】
[NH−(ペプチド)−C(O)]が、SEQ ID NO 1:
Tyr−Ala−Lys−Ala−Lys−Lys−Ala (4c)
(ここでTyrは、Aに結合し、Alaは、Rに結合している)のラジカルであり、
が、O又はNHであり、Rが、水素又は、スルホ又はカルボキシにより一置換されているC−C−アルキルである、請求項14記載の式(3)の化合物。

【公表番号】特表2010−519918(P2010−519918A)
【公表日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−552196(P2009−552196)
【出願日】平成20年3月5日(2008.3.5)
【国際出願番号】PCT/EP2008/052645
【国際公開番号】WO2008/107448
【国際公開日】平成20年9月12日(2008.9.12)
【出願人】(504389991)ノバルティス アーゲー (806)
【Fターム(参考)】