説明

複合板

【課題】耐火性能を高めると共に、軽量で作業性の向上、及び製造コストの低減化を図る。
【解決手段】本発明に係る複合板1は、内外装材2と断熱材3とを接着剤4により貼り合わすことにより形成され、接着剤4は、無機系素材から成る粉粒体5を含み、該粉粒体は、加熱時に溶融し合着して熱の反射層を形成することを特徴とし、前記無機系素材は、微細化されたアルミニウム又は銀を含み、内外装材2は、酸化マグネシウム又は珪酸カルシウムを含み、断熱材3は、有機系若しくは無機系の、発泡系又は繊維系の断熱材を含んでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、建築物の外壁や内壁等に用いられる複合板に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、室内環境の快適化や省エネルギー化の促進のため、建築物の外壁や内壁等に、断熱性能を有する部材が取り付けられていることがある。従来のこの種の部材としては、例えば、内外装材に断熱材が貼り合わされて一体に形成された複合板が知られている(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特開平8−105186号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記した従来の複合板は、酸化マグネシウム板や珪酸カルシウム板から成る内外装材に有機系又は無機系の断熱材を貼り合わせて形成されたものであるため、建築部材の耐火認定試験(ISO834)による1時間耐火に適合する高い耐火性能を有することができなかった。そのため、複合板の使用範囲が限定され、用途の拡大化を図ることができないといった問題があった。
【0004】
一方、前記ISO834による1時間耐火に適合させるため、前記断熱材にセメントモルタルを塗布したり、金属板や金属膜を貼付したりした複合板も提案されているが、これらの場合には、複合板の重量が重くなるため、施工性が悪いといった問題や、製造コストが高くなると共に、接着剤による一体化が難しいといった問題があった。そのため、実用性や機能性が低かった。
【0005】
本発明は、上記した課題を解決すべくなされたものであり、耐火性能を高めることができると共に、軽量で作業性の向上、及び製造コストの低減化を図ることのできる複合板を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記した目的を達成するため、本発明に係る複合板は、内外装材と断熱材とを接着剤により貼り合わすことにより形成され、該接着剤は、無機系素材から成る粉粒体を含み、該粉粒体は、加熱時に溶融し合着して熱の反射層を形成することを特徴とする。
【0007】
そして、前記無機系素材は、微細化されたアルミニウム又は銀を含んでいるのがよい。
【0008】
また、前記内外装材は、酸化マグネシウム又は珪酸カルシウムを含んでいてもよく、さらに、前記断熱材は、有機系若しくは無機系の、発泡系又は繊維系の断熱材を含んでいてもよい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、接着剤が無機系素材から成る粉粒体を含んでおり、加熱時にこの紛粒体が溶融し合着して熱の反射層を形成するため、ISO834による1時間耐火に適合する高い耐火性能を発揮することができる。また、軽量であり、施工性を高めることができ、製造コストの低減化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、図面を参照しつつ、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1は、本発明の実施の形態に係る複合板を示す断面図、図2は同複合板を加熱した時の初期の状態を示す断面図、図3は同複合板を加熱し続け、接着剤が高温に達した時の状態を示す断面図である。
である。なお、以下の説明では、本発明に係る複合材を建築物の外壁や内壁等の壁材に適用した場合について例示して説明する。
【0011】
本実施の形態に係る複合板1は、図1に示されているように、2枚の板状の内外装材2,2の間に断熱材3を介装し、各内外装材2,2の内面と断熱材3とを接着剤4により貼り合わすことにより形成されている。
【0012】
内外装材2としては、酸化マグネシウム又は珪酸カルシウムのみから成る板材か、或いは、酸化マグネシウム又は珪酸カルシウムを含む板材を使用することができ、内外装材2の内部には、ワイヤメッシュ等の補強部材が設けられていてもよい。
【0013】
断熱材3としては、発泡スチロール、発泡ウレタン、発砲ポリエチレン、発泡イソシアネート等の有機系の発泡系断熱材、又は炭酸カルシウム板等の無機系の発泡系断熱材、或いは、セルローズファイバー、繊維板等の有機系の繊維系断熱材、又はグラスウール、ロックウール等の無機系の繊維系断熱材を使用することができ、断熱材3の内部には、ワイヤメッシュ等の補強部材が設けられていてもよい。
【0014】
また、接着剤4は、アルミニウム又は銀等の無機系素材から成る粉粒体5を含んでおり、無機系素材は微細化されて混合されているのが好ましい。
【0015】
このような構成を備えた複合材1において、図2に示されているように、内外装材2が外側からバーナー7等により熱せられると、その熱は内外装材2を伝導し、接着剤4を介して断熱材3に伝導し、断熱材3はその伝導熱により、溶融する。この場合、断熱材3が発火燃焼することなく溶融するのは、複合板1の内部が無酸素状態になるからである。
【0016】
このように断熱材3が溶融した後、さらに内外装材2が加熱され、接着剤4の温度が高温(例えば、600℃付近)に達すると、図3に示されているように、接着剤4の内部のアルミニウムや銀等の無機系素材の紛粒体5は、溶融し、互いに合着して、接着剤4内の他の成分と共に輻射熱の反射層6を形成する。そして、この輻射熱の反射層6により熱が遮断され、反対側の内外装材2への伝熱が抑制される。この結果、複合板1は、ISO834による1時間耐火に適合する高い耐火性能を発揮する。
【0017】
ここで、ISO834による1時間耐火とは、試験体の一方側表面の加熱温度を、345℃から1時間経過後に945℃になるように1分毎に上昇させた時に、最終的に試験体の他方側表面の数地点の平均温度が160℃を超えず、且つ他方側表面の最高温度が200℃を超えない状態を保持することができた場合に認定される耐火性能のことを言う。
【0018】
上記したように本発明の実施の形態に係る複合板1によれば、ISO834による1時間耐火に適合する高い耐火性能を発揮することができるため、複合板1の用途の拡大化を図ることができる。また、ISO834による1時間耐火に適合させるため、断熱材にセメントモルタルを塗布したり、金属板や金属膜を貼付したりする必要がないため、軽量となり、施工性を高めることができると共に、製造コストの低減化を図ることができる。さらに、複合板1が加熱されても、接着剤4の接着性能を高く保持することができるため、内外装材2が剥離したりすることもなく、実用性や機能性の向上を図ることができる。
【0019】
なお、上記した実施の形態において、複合板1は、2枚の板状の内外装材2,2の間に断熱材3が介装されて構成されているが、これは単なる例示に過ぎず、1枚の内外装材2の内面に断熱材3が接着剤4によって貼り合わされて構成されていてもよい。
【0020】
また、上記実施の形態では、本発明を建築物の外壁や内壁等の壁材に適用した場合について説明したが、本発明はこの場合に限定されるものではなく、建築物の屋根や床等の下地材や床材、或いは、建築物以外の構築物の壁材等、他の各種内外装材にも適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施の形態に係る複合板を示す断面図である。
【図2】本発明の実施の形態に係る複合板を加熱した時の初期の状態を示す断面図である。
【図3】本発明の実施の形態に係る複合板を加熱し続け、接着剤が高温に達した時の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 複合板
2 内外装材
3 断熱材
4 接着剤
5 粉粒体
6 反射層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内外装材と断熱材とを接着剤により貼り合わすことにより形成され、該接着剤は、無機系素材から成る粉粒体を含み、該粉粒体は、加熱時に溶融し合着して熱の反射層を形成することを特徴とする複合板。
【請求項2】
前記無機系素材は、微細化されたアルミニウム又は銀を含んでいる請求項1に記載の複合板。
【請求項3】
前記内外装材は、酸化マグネシウム又は珪酸カルシウムを含んでいる請求項1又は2に記載の複合板。
【請求項4】
前記断熱材は、有機系若しくは無機系の、発泡系又は繊維系の断熱材を含んでいる請求項1〜3のいずれか1の請求項に記載の複合板。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−25139(P2008−25139A)
【公開日】平成20年2月7日(2008.2.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−196559(P2006−196559)
【出願日】平成18年7月19日(2006.7.19)
【出願人】(594088444)
【Fターム(参考)】