説明

複合機

【課題】原稿媒体の収容数が増加し、現像機構及び定着機構が損傷しにくく、原稿媒体がトナーで汚れにくく、原稿媒体がカールしにくい複合機を提供する。
【解決手段】主搬送路は、第1の分岐、転写機構、定着機構及び第2の分岐を順次に経由して給紙カセットから排紙トレイへ延びる。反転搬送路は、転写機構及び定着機構を迂回して第2の分岐から第1の分岐へ延びる。反転搬送路は、第2の分岐から第1の分岐へ戻る用紙の表裏を反転する。搬送機構は、スキャンボタンが押された場合にスキャン用の経路に沿って媒体を搬送し、コピーボタンが押された場合にコピー用の経路に沿って媒体を搬送する。スキャン用の経路は、転写機構及び定着機構を通過せず読み取り機構及び反転搬送路を経由する。コピー用の経路は、転写機構及び定着機構を順次に通過する。給紙カセットには処理前の用紙の束が収容され、排紙トレイには処理後の用紙が保持される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、媒体の主面に画像を形成し媒体の主面に形成された画像を読み取る複合機に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的なMulti Function Peripherals(MFP)が記録用紙に印刷を行う場合には、転写機構及び定着機構を順次に経由して用紙カセットから排紙トレイへ記録用紙が搬送される。記録用紙が転写機構を通過するときには、トナー画像が記録用紙の主面に転写される。記録用紙が定着機構を通過するときには、記録用紙の主面に転写されたトナー画像が記録用紙に定着させられる。
【0003】
一般的なMFPが原稿用紙を読み取るときには、読み取り機構を経由してAutomatic Document Feeder(ADF)から排紙トレイへ原稿用紙が搬送される。原稿用紙が読み取り機構を通過するときには、原稿用紙の主面に形成された画像が読み取られる。
【0004】
一般的なMFPにおいては、用紙カセットは相対的に多量の記録用紙を保持できるが、ADFは相対的に少量の原稿用紙しか保持できない。
【0005】
特許文献1の複合機は、用紙カセットに記録用紙又は原稿用紙を保持させ、記録用紙が搬送される経路と原稿用紙が搬送される経路とを共通化し、共通化された経路に転写機構、定着機構及び読み取り機構を経由させる。これにより、多量の原稿用紙が用紙カセットに保持される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平6−113053号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかし、特許文献1の複合機においては、原稿用紙が転写機構及び定着機構を通過する。このため、転写機構及び定着機構が損傷しやすい。また、原稿用紙がトナーで汚れやすくカールしやすい。
【0008】
本発明は、この問題を解決するためになされる。本発明の目的は、原稿媒体の収容数が増加し、転写機構及び定着機構が損傷しにくく、原稿媒体がトナーで汚れにくく、原稿媒体がカールしにくい複合機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は複合機に向けられる。
【0010】
(1)本発明の第1の局面においては、収容構造に処理前の媒体の束が収容され、保持構造に処理後の媒体が保持され、搬送機構が搬送路網に沿って媒体を搬送する。搬送路網は、主搬送路及び反転搬送路を備える。主搬送路は、第1の分岐、転写機構、定着機構及び第2の分岐を順次に経由して収容構造から保持構造へ延びる。反転搬送路は、転写機構及び定着機構を迂回して第2の分岐から第1の分岐へ延びる。反転搬送路は、第2の分岐から第1の分岐へ戻る媒体の表裏を反転する。
【0011】
第1の制御部は、検出部が第1の操作を検出した場合に、第1の経路に沿って搬送機構に媒体を搬送させる。第1の経路は、転写機構及び定着機構を通過せず読み取り機構を通過する。第1の経路は反転搬送路を経由する。媒体が読み取り機構を通過するときに、読み取り機構が媒体の主面に形成された画像を読み取る。
【0012】
第1の制御部は、検出部が第2の操作を検出した場合に、第2の経路に沿って搬送機構に媒体を搬送させる。第2の経路は、転写機構及び定着機構を順次に通過する。媒体が転写機構を通過するときに、転写機構が媒体の主面にトナー画像を転写する。媒体が定着機構を通過するときに、定着機構が媒体の主面に転写されたトナー画像を媒体に定着させる。
【0013】
(2)本発明の第2の局面は、本発明の第1の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第2の局面においては、主搬送路の収容構造から転写機構までの区間が第3の分岐を経由し、反転搬送路が第4の分岐を経由する。搬送路網は、追加搬送路を備える。追加搬送路は、第3の分岐から第4の分岐へ延びる。第1の経路は、追加搬送路を経由する。第2の経路は、追加搬送路を経由しない。
【0014】
(3)本発明の第3の局面は、本発明の第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第3の局面においては、追加搬送路が読み取り機構を経由する。
【0015】
(4)本発明の第4の局面は、本発明の第1又は第2の局面にさらなる事項を付加する。本発明の第4の局面においては、主搬送路の収容構造から転写機構までの区間が読み取り機構を経由する。第2の制御部は、読み取り機構の読み取り結果から媒体の主面に画像が形成されていることを検出した場合に転写機構によるトナー画像の転写及び定着機構によるトナー画像の定着を中止させる。
【0016】
(5)本発明の第5の局面は、本発明の第1から第4までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第5の局面においては、検出部が第1の操作を検出した場合に、転写機構によるトナー画像の転写のための動作及び定着機構によるトナー画像の定着のための動作を第3の制御部が停止させる。検出部が第2の操作を検出した場合に、第3の制御部は、転写機構によるトナー画像の転写のための動作及び定着機構によるトナー画像の定着のための動作を実行させる。
【0017】
(6)本発明の第6の局面は、本発明の第1から第5までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第6の局面においては、第1の操作部材が収容構造に設けられ、第2の操作部材が収容構造以外に設けられる。第1の操作及び第2の操作は、それぞれ、第1の操作部材及び第2の操作部材に対する操作である。
【0018】
(7)本発明の第7の局面は、本発明の第1から第6までのいずれかの局面にさらなる事項を付加する。本発明の第7の局面においては、第4の制御部が、操作の正否の確認を求める情報を表示装置に表示させる。当該情報が表示されるのは、検出部が第1の操作を検出した場合及び検出部が第2の操作を検出した場合である。当該情報は、第1の制御部が搬送機構に媒体を搬送させる前に表示される。
【発明の効果】
【0019】
本発明の第1の局面によれば、記録媒体が収容される収容構造に原稿媒体が収容され、原稿媒体の収容数が増加する。また、原稿媒体が転写機構及び定着機構を通過せず、転写機構及び定着機構が損傷しにくく、原稿媒体がトナーで汚れにくく、原稿媒体がカールしにくい。
【0020】
本発明の第2の局面によれば、第1の分岐における媒体の流れが単純になり、搬送機構が単純になる。
【0021】
本発明の第3の局面によれば、記録媒体に画像が形成される場合に記録媒体が読み取り機構を通過せず、媒体が読み取り機構を通過する回数が減り、読み取り機構が劣化しにくい。
【0022】
本発明の第4の局面によれば、画像が形成されている媒体に画像が重ねて形成されず、誤操作による原稿媒体への画像の形成が抑制される。
【0023】
本発明の第5の局面によれば、転写機構及び定着機構へ供給される電力が減少し、複合機の消費電力が減少する。
【0024】
本発明の第6の局面によれば、第1の操作と第2の操作とが容易に識別され、誤操作が抑制される。
【0025】
本発明の第7の局面によれば、操作の正否が確認され、誤操作が抑制される。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】複合機の斜視図である。
【図2】複合機の内部の模式図である。
【図3】スキャン用の経路を示す図である。
【図4】片面コピー用の経路を示す図である。
【図5】両面コピー用の経路を示す図である。
【図6】複合機の参考例を示す模式図である。
【図7】複合機の参考例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1及び図2は、複合機の望ましい実施形態を示す。図1は、複合機の斜視図である。図2は、複合機の内部の模式図である。
【0028】
図1及び図2に示す複合機100は、スキャン機能、コピー機能、ファックス機能及びプリント機能を有する。これらの機能の一部が省略されてもよく、これらの機能以外の機能が追加されてもよい。ただし、複合機100は、少なくとも、用紙に形成された画像を読み取り、用紙に画像を形成する。
【0029】
複合機100が処理する用紙には、画像が読み取られる原稿用紙及び画像が形成される記録用紙がある。用紙がOverHead Projector(OHP)シート等の他の媒体に置き換えられてもよい。複合機100は、より一般的には、媒体に形成された画像を読み取り、媒体に画像を形成する。
【0030】
図1に示すように、複合機100は、給紙カセット102、排紙トレイ104、Automatic Document Feeder (ADF)106、Flat Bed Scanner (FBS)108及び操作パネル110を備える。操作パネル110は、パッチパネル112及びコピーボタン114を備える。給紙カセット102の前面にはスキャンボタン116が設けられる。
【0031】
複合機100にスキャンを行わせる場合は、画像が読み取られる前の原稿用紙の束が給紙カセット102に収容される。スキャンボタン116が押されるのに続いて、原稿用紙に形成された画像が読み取られる。画像が読み取られた後の原稿用紙は排紙トレイ104へ排出される。ADF106又はFBS108に置かれた原稿用紙が読み取られてもよい。
【0032】
複合機100にコピーを行わせる場合は、ADF106に原稿用紙が置かれ、画像が形成される前の記録用紙の束が給紙カセット102に収容される。コピーボタン114が押されるのに続いて、ADF106に置かれた原稿用紙に形成された画像が読み取られ、読み取られた画像が記録用紙に形成される。画像が形成された後の記録用紙は排紙トレイ104へ排出される。ADF106に代えてFBS108に置かれた原稿用紙が読み取られてもよい。
【0033】
給紙カセット102は、用紙の束を収容する収容室が内部に形成された箱型の構造物である。複合機100においては、給紙カセット102が本体から引き出された場合又は給紙カセット102が本体から取り外された場合に収容室が露出する。給紙カセット102には、ADF106に置かれる用紙よりも多くの用紙が収容される。例えば、ADF106には数10枚の用紙が置かれ、給紙カセット102には100枚以上の用紙が収容される。複合機100においては、通常は記録用紙の束が収容される給紙カセット102に原稿用紙の束が収容され、原稿用紙の収容数が増加する。
【0034】
排紙トレイ104は、用紙を保持する構造物である。排紙トレイ104が「トレイ」の範疇に含まれない構造物に置き換えられてもよい。
【0035】
複合機100においては、スキャンボタン116が給紙カセット102に設けられ、コピーボタン114が操作パネル110に設けられる。このため、複合機100にスキャンを行わせる操作及び複合機100にコピーを行わせる操作が容易に識別され、誤操作が抑制される。
【0036】
操作の識別を容易にするためには、スキャンボタン116が給紙カセット102に設けられ、コピーボタン114が給紙カセット102以外に設けられればよい。したがって、コピーボタン114が操作パネル110以外に設けられてもよい。操作の識別を容易にすることが強く求められない場合は、コピーボタン114及びスキャンボタン116の両方が操作パネル110に設けられてもよい。
【0037】
複合機100にコピーを行わせる操作及び複合機100にスキャンを行わせる操作の両方又は片方は、ボタン以外の操作部材に対する操作であってもよく、2個以上の操作部材に対する操作の組み合わせであってもよい。
【0038】
図2に示すように、複合機100は、転写機構118、定着機構120、読み取り機構122、レジスト機構124、搬送機構126、検出部128、第1の制御部130、第2の制御部132、第3の制御部134及び第4の制御部135をさらに備える。第1の制御部130、第2の制御部132、第3の制御部134及び第4の制御部135は、制御用のソフトウエアを実行する組み込みコンピュータである。第1の制御部130、第2の制御部132、第3の制御部134及び第4の制御部135は、同じ組み込みコンピュータであってもよいし、異なる組み込みコンピュータであってもよい。第1の制御部130、第2の制御部132、第3の制御部134及び第4の制御部135の機能の全部又は一部がソフトウエアを伴わないハードウエアに担われてもよい。ハードウエアは、電子回路であってもよいし、機械的機構であってもよい。
【0039】
搬送機構126は、搬送路網142に沿って用紙を搬送する。搬送路網142は、主搬送路144及び反転搬送路146を備える。主搬送路144は、第1の分岐150、レジスト機構124、転写機構118、定着機構120及び第2の分岐154を順次に経由して給紙カセット102から排紙トレイ104へ延びる。主搬送路144の画像形成区間152は、転写機構118及び定着機構120を経由して始端156から終端158へ延びる。画像形成区間152において記録用紙の主面に画像が形成される。反転搬送路146は、転写機構118及び定着機構120を迂回して第2の分岐154から第1の分岐150へ延びる。
【0040】
搬送路網142は、追加搬送路148をさらに備える。追加搬送路148は、第3の分岐160から第4の分岐162へ延びる。主搬送路144の給紙カセット102から転写機構118までの区間は、第3の分岐160を経由する。反転搬送路146は、第4の分岐162を経由する。図2においては主搬送路144の第1の分岐150から転写機構118までの区間が第3の分岐160を経由しているが、主搬送路144の給紙カセット102から第1の分岐150までの区間が第3の分岐160を経由してもよい。
【0041】
搬送機構126は、搬送ローラ136並びに経路切り替え機構137,138及び139を備える。搬送ローラ136は、用紙を送る。経路切り替え機構137,138及び139は、それぞれ、第2の分岐154、第3の分岐160及び第4の分岐162において経路を切り替える。搬送ローラ136のうち、反転搬送路146の第4の分岐162から第2の分岐154までの区間における用紙の搬送を担う搬送ローラ140は、両方向に用紙を送る。搬送ローラ136のうち、主搬送路144の第2の分岐154から排紙トレイ104までの区間における用紙の搬送を担う搬送ローラ141も、両方向に用紙を送る。経路切り替え機構137,138及び139は、それぞれ、第2の分岐154、第3の分岐160及び第4の分岐162において用紙が進行しない搬送路を閉塞する。搬送機構126は、搬送ローラ136が用紙を送る方向及び経路切り替え機構137,138及び139が閉塞する搬送路を変更し、用紙が搬送される経路を切り替える。
【0042】
第1の分岐150において主搬送路144の用紙カセット102の側(以下では「主搬送路144の上流側」という。)と反転搬送路146とは鋭角をなす。主搬送路144の上流側から第1の分岐150へ到達する用紙は主搬送路144の排紙トレイ104の側(以下では「主搬送路144の下流側」という。)へ道なりに進行し、反転搬送路146から第1の分岐150へ到達する用紙も主搬送路144の下流側へ道なりに進行する。主搬送路144の下流側から第1の分岐150へ到達する用紙は通常は存在しない。
【0043】
第2の分岐154において主搬送路144の上流側と反転搬送路146とは鋭角をなす。主搬送路144の上流側から第2の分岐154へ到達する用紙は主搬送路144の下流側へ道なりに進行し、反転搬送路146から第2の分岐154に到達する用紙も主搬送路144の下流側へ道なりに進行する。主搬送路144の上流側から第2の分岐154へ用紙が到達する場合は、経路切り替え機構137は反転搬送路146を閉塞する。反転搬送路146から第2の分岐154へ用紙が到達する場合は、経路切り替え機構137は主搬送路144の上流側を閉塞する。経路切り替え機構137が主搬送路144の上流側を閉塞しているときに主搬送路144の下流側から第2の分岐154へ到達する用紙は反転搬送路146へ進行する。
【0044】
第3の分岐160において主搬送路144の下流側と追加搬送路148とは鋭角をなす。経路切り替え機構138が主搬送路144の下流側を閉塞しているときに主搬送路144の上流側から第3の分岐160へ到達する用紙は追加搬送路148へ進行する。経路切り替え機構138が追加搬送路148を閉塞しているときに主搬送路144の上流側から第3の分岐160へ到達する用紙は主搬送路144の下流側へ進行する。
【0045】
第4の分岐162において反転搬送路146の第1の分岐150の側(以下では「反転搬送路146の下流側」という)と追加搬送路148とは鋭角をなす。追加搬送路148から第4の分岐162へ到達する用紙は、反転搬送路146の第2の分岐154の側(以下では「反転搬送路146の上流側」という)へ道なりに進行する。追加搬送路148から第4の分岐162へ用紙が到達する場合は、経路切り替え機構139が反転搬送路146の下流側を閉塞する。経路切り替え機構139が追加搬送路148を閉塞しているときに反転搬送路146の上流側から第4の分岐162へ到達する用紙は反転搬送路146の下流側へ進行する。
【0046】
第1の制御部130は、スキャンボタン116が押されたことを検出部128が検出した場合に、図3に示すスキャン用の経路164に沿って原稿用紙900を一枚ずつ搬送機構126に搬送させる。スキャン用の経路164は、主搬送路144の給紙カセット102から第3の分岐160までの区間、追加搬送路148の全体、反転搬送路146の第4の分岐162から第2の分岐154までの区間及び主搬送路144の第2の分岐154から排紙トレイ104までの区間を順次に経由する。スキャン用の経路164は、転写機構118及び定着機構120を通過しない。原稿用紙900は、反転搬送路146を逆行する。
【0047】
スキャン用の経路164に沿って原稿用紙900が搬送される間に、原稿用紙900は読み取り機構122を通過する。読み取り機構122を通過するときに、原稿用紙900の主面に形成されている画像が読み取り機構122に読み取られる。読み取り機構122は、Charge Coupled Device(CCD)イメージセンサ等により画像を読み取る。
【0048】
これにより、原稿用紙900が転写機構118及び定着機構120を通過せず、転写機構118及び定着機構120が損傷しにくくなり、原稿用紙がトナーで汚れにくくなり、原稿用紙がカールしにくくなる。
【0049】
原稿用紙900は、読み取り機構122を通過する前にレジスト機構124を通過し、両端が揃えられる。
【0050】
第1の制御部130は、コピーボタン114が押されたことを検出部128が検出した場合に、図4に示す片面コピー用の経路168又は図5に示す両面コピー用の経路170に沿って記録用紙902を一枚ずつ搬送機構126に搬送させる。
【0051】
片面コピー用の経路168は、主搬送路144の全体を経由する。
【0052】
片面コピー用の経路168に沿って記録用紙902が搬送される間に、記録用紙902が画像形成区間152を1回通過する。記録用紙が画像形成区間152を通過するときには、記録用紙902の第1の主面に画像が形成される。記録用紙902が画像形成区間152を通過するときには、記録用紙902が転写機構118及び定着機構120を順次に通過する。記録用紙902が転写機構118を通過するときに、転写機構118により記録用紙902の主面にトナー画像が転写される。記録用紙902が定着機構120を通過するときに、記録用紙902に転写されたトナー画像は定着機構120により記録用紙902に定着させられる。片面コピー用の経路168は、追加搬送路148を経由しない。
【0053】
両面コピー用の経路170は、主搬送路144の給紙カセット102から折り返し位置172までの区間、主搬送路144の折り返し位置172から第2の分岐154までの区間、反転搬送路146の全体及び主搬送路144の第1の分岐150から排紙トレイ104までの区間を順次に経由する。折り返し位置172は、主搬送路144の第2の分岐154から排紙トレイ104までの区間にある。両面コピー用の経路170は、追加搬送路148を経由しない。記録用紙902は、反転搬送路146を順行する。
【0054】
両面コピー用の経路170に沿って記録用紙が搬送される間に、記録用紙902が画像形成区間152を2回通過する。記録用紙902が1回目に画像形成区間152を通過するときには、記録用紙902の第1の主面に画像が形成される。記録用紙902が2回目に画像形成区間152を通過するときには、記録用紙902の第2の主面に画像が形成される。記録用紙が1回目に画像形成区間152を通過するときと2回目に画像形成区間152と通過するときとの間には、記録用紙902が反転搬送路146を通過して第2の分岐154から第1の分岐150へ戻り、記録用紙902の表裏が反転される。
【0055】
原稿用紙902は、画像形成区間152を通過する前にレジスト機構124を通過し、両端が揃えられる。
【0056】
スキャン用の経路164が図3に示すように追加搬送路148を経由する場合は、第1の分岐150における用紙の流れが単純になり、搬送機構126が単純になる。この利点は、追加搬送路148が設けられる場合と追加搬送路148が省略される場合とを対比することにより理解される。追加搬送路148が省略される場合は、主搬送路144を進行する用紙、反転搬送路146から主搬送路144へ進行する用紙及び主搬送路144から反転搬送路146へ進行する用紙が第1の分岐150を通過し、複雑な経路の切り替えが要求される。ただし、複雑な経路の切り替えが許容される場合は、追加搬送路148が省略されてもよい。
【0057】
追加搬送路148が省略される場合は、スキャン用の経路164は、主搬送路144の給紙カセット102から第1の分岐150までの区間、反転搬送路146の全体及び主搬送路144の第2の分岐154から排紙トレイ104までの区間を順次に経由する。
【0058】
読み取り機構122は、図2において実線で示すように、主搬送路144の給紙カセット102から転写機構118までの区間に設けられる。
【0059】
第2の制御部132は、読み取り機構122の読み取り結果から用紙の主面に画像が形成されていることを検出した場合に転写機構118によるトナー画像の転写及び定着機構120によるトナー画像の定着を中止させる。これにより、画像が形成されている用紙に画像が重ねて形成されず、誤操作による原稿用紙への画像の形成が抑制される。
【0060】
転写機構118によるトナー画像の転写のための動作及び定着機構120によるトナー画像の定着のための動作を停止させることにより転写機構118によるトナー画像の転写及び定着機構120によるトナー画像の定着は中止される。用紙が搬送される経路を片面コピー用の経路168又は両面コピー用の経路170からスキャン用の経路164へ変更することにより転写機構118によるトナー画像の転写及び定着機構120によるトナー画像の定着が中止されてもよい。
【0061】
転写機構118によるトナー画像の転写のための動作とは、トナー画像の転写のためだけに必要な固有の動作をいう。例えば、転写ドラム174に形成された静電潜像を現像する現像機構178の起動である。したがって、トナー画像の転写以外のために必要な動作は停止されない。例えば、用紙を搬送するために必要な転写ドラム174の回転は停止されない。
【0062】
定着機構120によるトナー画像の定着のための動作とは、トナー画像の定着のためだけに必要な固有の動作をいう。例えば、定着ドラム180に内蔵されたヒータ182の起動である。したがって、トナー画像の定着以外のために必要な動作は停止されない。例えば、用紙を搬送するために必要な定着ドラム180の回転は停止されない。
【0063】
スキャン用の経路164が経由する位置であれば、読み取り機構122の位置が変更されてもよい。
【0064】
例えば、読み取り機構122は、図2において一点破線で示すように、追加搬送路148が経由する位置に設けられる。これにより、複合機100にコピーを行わせる場合に記録用紙が読み取り機構122を通過せず、用紙が読み取り機構122を通過する回数が減り、用紙が読み取り面をこする回数が減り、読み取り機構122が劣化しにくくなる。
【0065】
第3の制御部134は、スキャンボタン116が押されたことを検出部128が検出した場合に転写機構118によるトナー画像の転写及び定着機構120によるトナー画像の定着のための動作を停止させ、コピーボタン114が押されたことを検出部128が検出した場合に用紙の搬送の前に転写機構118によるトナー画像の転写のための動作及び定着機構120によるトナー画像の定着のための動作を実行させる。これにより、転写機構118及び定着機構120へ供給される電力が減少し、複合機100の消費電力が減少する。スキャンボタン116が押された場合は、記録用紙に画像が形成されないので、転写機構118によるトナー画像の転写のための動作及び定着機構120によるトナー画像の定着のための動作を停止させても問題はない。
【0066】
第4の制御部135は、スキャンボタン116が押されたことを検出部128が検出した場合及びコピーボタン114が押されたことを検出部128が検出された場合に操作の正否の確認を求める情報をタッチパネル112に表示させる。当該情報は、第1の制御部130が搬送機構126に用紙を搬送させる前に表示される。これにより、操作の正否が確認され、誤操作が抑制される。
【0067】
望ましい実施形態とは別に、複合機の参考例が図6及び図7に示される。図6及び図7は、模式図である。
【0068】
図6に示す複合機500は、給紙ユニット502、レジスト部504、現像部506、カートリッジ508、定着部510、排紙部512及び両面部514を備える。図7に示す複合機500においては、図6に示す現像部506及びカートリッジ508が読み取り部516に交換されている。
【0069】
複合機500にコピーを行わせる場合は、図6に示すように、現像部506及び定着部510を1回又は2回通過する経路518に沿って記録用紙が搬送される。
【0070】
複合機100にスキャンを行わせる場合は、図7に示すように、コピーを行わせる場合と同じ経路518に沿って原稿用紙が搬送される。原稿用紙は読み取り部516を1回又は2回通過し、原稿用紙の片面又は両面が読み取られる。複合機500にスキャンを行わせる場合は、定着部510の定着ローラ520は回転させられるが、ヒータ522はオンされない。
【0071】
このように、現像部506と読み取り部516とを交換可能にすることも考えられる。
【符号の説明】
【0072】
100 複合機
102 給紙カセット
104 排紙トレイ
114 コピーボタン
116 スキャンボタン
118 転写機構
120 定着機構
122 読み取り機構
126 搬送機構
144 主搬送路
146 反転搬送路
164 スキャン用の経路
168 片面コピー用の経路
170 両面コピーの経路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合機であって、
処理前の媒体の束を収容する収容構造と、
処理後の媒体を保持する保持構造と、
通過する媒体の主面にトナー画像を転写する転写機構と、
通過する媒体の主面に転写されたトナー画像を媒体に定着させる定着機構と、
第1の分岐、前記転写機構、前記定着機構及び第2の分岐を順次に経由して前記収容構造から前記保持構造へ延びる主搬送路と前記転写機構及び前記定着機構を迂回して前記第2の分岐から前記第1の分岐へ延び前記第2の分岐から前記第1の分岐へ戻る媒体の表裏を反転する反転搬送路とを備える搬送路網に沿って媒体を搬送する搬送機構と、
第1の操作及び第2の操作を検出する検出部と、
前記検出部が前記第1の操作を検出した場合に前記転写機構及び前記定着機構を通過せず前記反転搬送路を経由する第1の経路に沿って前記搬送機構に媒体を搬送させ、前記検出部が前記第2の操作を検出した場合に前記転写機構及び前記定着機構を順次に通過する第2の経路に沿って前記搬送機構に媒体を搬送させる第1の制御部と、
前記第1の経路に経由され通過する媒体の主面に形成された画像を読み取る読み取り機構と、
を備える複合機。
【請求項2】
請求項1の複合機において、
前記主搬送路の前記収容構造から前記転写機構までの区間は第3の分岐を経由し、
前記反転搬送路は第4の分岐を経由し、
前記搬送路網は前記第3の分岐から前記第4の分岐へ延びる追加搬送路を備え、
前記第1の経路は前記追加搬送路を経由し、
前記第2の経路は前記追加搬送路を経由しない
複合機。
【請求項3】
請求項2の複合機において、
前記追加搬送路は前記読み取り機構を経由する
複合機。
【請求項4】
請求項1又は請求項2の複合機において、
前記主搬送路の前記収容構造から前記転写機構までの区間は前記読み取り機構を経由し、
前記複合機は、
前記読み取り機構の読み取り結果から媒体の主面に画像が形成されていることを検出した場合に前記転写機構によるトナー画像の転写及び前記定着機構によるトナー画像の定着を中止させる第2の制御部
をさらに備える
複合機。
【請求項5】
請求項1から請求項4までのいずれかの複合機において、
前記検出部が前記第1の操作を検出した場合に前記転写機構によるトナー画像の転写のための動作及び前記定着機構によるトナー画像の定着のための動作を停止させ、前記検出部が前記第2の操作を検出した場合に前記転写機構によるトナー画像の転写のための動作及び前記定着機構によるトナー画像の定着のための動作を実行させる第3の制御部
をさらに備える複合機。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれかの複合機において、
前記収容構造に設けられる第1の操作部材と、
前記収容構造以外に設けられる第2の操作部材と、
をさらに備え、
前記第1の操作及び前記第2の操作は、それぞれ、前記第1の操作部材及び前記第2の操作部材に対する操作である
複合機。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれかの複合機において、
情報を表示する表示装置と、
前記検出部が前記第1の操作を検出した場合及び前記検出部が前記第2の操作を検出した場合に前記第1の制御部が前記搬送機構に媒体を搬送させる前に操作の正否の確認を求める情報を前記表示装置に表示させる第4の制御部と、
をさらに備える複合機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−154988(P2012−154988A)
【公開日】平成24年8月16日(2012.8.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−11725(P2011−11725)
【出願日】平成23年1月24日(2011.1.24)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】