説明

複合淡水化システム

【課題】複合淡水化システムにおける逆浸透膜装置の非透過水の比較的に水圧の低いエネルギを有効利用できる複合淡水化システムを提供する。
【解決手段】複合淡水化システム100Aは、海水Dよりも低塩分濃度の排水Aを、低圧逆浸透膜装置16によりろ過処理する排水水処理系1と、海水Dを海水逆浸透膜装置38によりろ過処理する海水淡水化処理系3と、を備えている。海水淡水化処理系3は、取水された海水Dを溜める取水槽32と、海水逆浸透膜装置38の前段においてろ過処理をする前処理ろ過装置34と、取水槽32の被処理水を前処理ろ過装置34に加圧して供給するタービンポンプ33Aと、を有し、タービンポンプ33Aが、排水処理系1の低圧逆浸透膜装置16から排出される非透過水の水圧によって駆動され、タービンポンプ33Aを駆動した非透過水は取水槽32に供給される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海水、汽水、かん水等の高塩分濃度の第1の原水を、逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第1の水処理系と、第1の原水よりも低塩分濃度の第2の原水を、逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第2の水処理系と、を備える複合淡水化システムに関し、特に、第2の水処理系の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧エネルギを利用する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、逆浸透膜装置を用いたろ過によって海水を淡水化する海水淡水化装置において、例えば、下水に代表される有機物を含有する排水(以下、「有機性排水」と称する)は、通常、生物処理されて、その処理された排水は海洋や河川に放出されていたものを、海水淡水化装置の取水した海水と混合して、海水淡水化装置の被処理水の塩分濃度を海水そのままよりも低下させ(希釈し)、海水淡水化装置の逆浸透膜装置に前記した塩分濃度の希釈された被処理水を圧送することで、圧送ポンプ(本明細書における「高圧ポンプ」に対応)の必要駆動力を低減させる技術が記載されている。
【0003】
また、特許文献2には、逆浸透膜装置を用いた淡水化システムにおいて、逆浸透膜装置の非透過水の有する圧力をターボチャージャで回収して逆浸透膜装置の被処理水の加圧に利用する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第4481345号公報
【特許文献2】特開2001−149932号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載の技術において、有機性排水の水処理工程で逆浸透膜装置を用いる場合の圧力は、海水淡水化装置の水処理工程で逆浸透膜装置を用いる場合の圧力よりも低圧である。そして、有機性排水の水処理工程での逆浸透膜装置から排出される非透過水を直接取水した海水と混合することにより海水よりも塩分濃度を低下させているだけであり、前記した有機性排水の水処理工程の逆浸透膜装置からの非透過水の有するエネルギは比較的に低圧のものであることから何等利用されておらず無駄にされている。
【0006】
本発明は、前記した従来の課題を解決するものであり、複合淡水化システムにおける逆浸透膜装置の非透過水のエネルギを有効利用できる複合淡水化システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するために、第1の発明の複合淡水化システムは、高塩分濃度の第1の原水を、第1の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第1の水処理系と、第1の原水よりも低塩分濃度の第2の原水を、第2の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第2の水処理系と、を備えるものであって、第1の水処理系は、第1の逆浸透膜装置の前段において、取水された第1の原水を含む被処理水のろ過処理をする前段ろ過装置と、被処理水を前段ろ過装置に加圧して供給する第1のポンプと、を有し、第1のポンプが、第2の水処理系の第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧によって駆動され、第1のポンプを駆動した非透過水は第1の原水に混合されて被処理水とされることを特徴とする。
【0008】
第2の水処理系の被処理水の塩分濃度は、第1の水処理系の被処理水の塩分濃度よりも低いので、当然第2の逆浸透膜装置の非透過水の水圧は、第1の逆浸透膜装置の非透過水の水圧よりも相当低い水圧である。しかし、第1の原水を含む被処理水を前段ろ過装置に加圧供給する第1のポンプの所要の昇圧度合いは、第1の逆浸透膜装置への被処理水の要する加圧力よりも低い。従って、第1のポンプが、第2の水処理系の第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧によって駆動されることで、第2の水処理系の第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧を有効利用できる。
それに、第1のポンプを駆動した非透過水は、第1の水処理系の第1の原水に混合されることで第1の水処理系の取水された第1の原水の塩分濃度が希釈された被処理水となり、第1の逆浸透膜装置に被処理水を加圧して供給するポンプの所要昇圧度合いを低減できる。
【0009】
第2の発明の複合淡水化システムは、高塩分濃度の第1の原水を、第1の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第1の水処理系と、第1の原水よりも低塩分濃度の第2の原水を、第2の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第2の水処理系と、を備えるものであって、第1の水処理系は、第1の原水を取水する第3のポンプと、取水された第1の原水を溜める第1原水槽と、を有し、第3のポンプが、第2の水処理系の第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧によって駆動され、第3のポンプを駆動した非透過水は第1原水槽に供給されることを特徴とする。
【0010】
第2の水処理系の被処理水の塩分濃度は、第1の水処理系の被処理水の塩分濃度よりも低いので、当然第2の逆浸透膜装置の非透過水の水圧は、第1の逆浸透膜装置の非透過水の水圧よりも相当低い水圧である。しかし、第1の原水を第1原水槽に供給する第3のポンプの所要の昇圧度合いは、第1の逆浸透膜装置への被処理水の要する圧力よりも低い。従って、第3のポンプが、第2の水処理系の第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧によって駆動されることで、第2の水処理系の第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧を有効利用できる。
それに、第3のポンプを駆動した非透過水は、第1の水処理系の第1原水槽に供給されることで第1の水処理系の取水された第1の原水の塩分濃度が希釈され、第1の逆浸透膜装置に被処理水を加圧して供給するポンプの所要昇圧度合いを低減できる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、複合淡水化システムにおける逆浸透膜装置の非透過水のエネルギを有効利用できる複合淡水化システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】基本実施形態の複合淡水化システムの概略ブロック図である。
【図2】第1の実施形態に係る複合淡水化システムの概略ブロック図である。
【図3】第2の実施形態に係る複合淡水化システムの概略ブロック図である。
【図4】第3及び第4の実施形態に係る複合淡水化システムの概略ブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に、本発明の実施形態に係る複合淡水化システムについて図を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
《基本実施形態の複合淡水化システム》
先ず、図1を参照して本発明の基本実施形態とする複合淡水化システム100について説明する。図1は、基本実施形態の複合淡水化システムの概略ブロック図である。
この複合淡水化システム100は、臨海地帯、塩水湖近傍、汽水帯近傍等に設置されることを前提としている。
そして、複合淡水化システム100は、産業排水や都市排水等のように海水、汽水、かん水等と比較して塩分濃度の低い排水(第2の原水)A(以下、単に「排水A」と称する)を、工業用水等の飲料水以外の中水(「透過水B」又は「生産水B」と称する)として再利用可能に排水処理する排水処理系(第2の水処理系)1と、海水、汽水、かん水等の比較的塩分濃度の高い水(第1の原水)Dを工業用水等の飲料水以外の中水(「透過水E」又は「生産水E」と称する)として再利用可能に浄化処理をする海水淡水化処理系(第1の水処理系)3と、排水処理系1及び海水淡水化処理系3に含まれるポンプや弁の動作制御をする制御装置6を含んで構成されている。
なお、「海水、汽水、かん水等の比較的塩分濃度の高い水D」を、以下では、代表的に「海水D」と称し、代表的に「海水D」と表記した意味で前記したように「海水淡水化処理系3」と称する。
【0015】
(排水処理系1の構成)
先ず、排水処理系1の概略構成について図1を参照しながら説明する。排水Aは、有機物等を含んでおり、排水取水管51から、例えば、膜分離活性汚泥法(MBR)を用いた水処理装置(以下、「MBR水処理装置11」と称し、図1では、単に「MBR」と表示)に導かれ、一次処理される。MBR水処理装置11において一次処理された被処理水は、MBR水処理装置11から移送ポンプ12で配管52を介して、一旦、被処理水の流れのバッファの役目をする処理水水槽13に導かれて溜められる。更に、処理水水槽13に溜められた被処理水は、配管53を介して供給ポンプ14で吸引され高圧ポンプ15に供給され、高圧ポンプ15で昇圧されて、低圧逆浸透膜装置(第2の逆浸透膜装置)16の被処理水の供給口16aに供給される。
【0016】
低圧逆浸透膜装置16は、例えば、特開2001−149932号公報の図3、図4に記載されたような膜モジュール・ユニットが複数並列に配置された構成である。
供給口16aから圧力を掛けて供給された被処理水は、低圧逆浸透膜装置16内で、逆浸透膜(RO膜:Reverse Osmosis Membrane)を透過して浄化された透過水Bと、逆浸透膜を透過しなかった被処理水である非透過水Cと、に分離される。透過水Bは、透過口16bから配管54を介して生産水Bとして外部のその水質レベルに応じた用途に供給される。
【0017】
非透過水Cは、低圧逆浸透膜装置16の排水口16cから配管56を介して途中に設けられた背圧弁18で流量を調整されて、後記する取水槽(第1原水槽)32に供給される。排水処理系1の濃縮された非透過水CのTDS(Total Dissolubed Solids:総溶解性蒸発残留物)は、1,200mg/リットル程度であり、海水DのTDSが30,000mg/リットル程度なのに比較して極めて低い濃度である。そのため、前記した低圧逆浸透膜装置16は、0.8〜1.5MPaの圧力で運転される。ちなみに、この運転圧の幅は、低圧逆浸透膜装置16の逆浸透膜の汚れが増加してくると、所要の透過水Bの流量を得るために運転圧を増加させるためである。
従って、非透過水Cの圧力は0.8〜1.5MPa程度である。そして、この圧力が前記した背圧弁18で開放される。
排水処理系1のMBR水処理装置11の代わりに限外ろ過装置を用いても良い。
なお、配管56が取水槽32内に低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cを導入する段階で非透過水Cの有する圧力をエネルギとして回収する機能を持たせる構成としても良く、その詳細な構成は、第1の実施形態から第4の実施形態の中で詳細に説明する。
【0018】
(海水淡水化処理系3)
次に、海水淡水化処理系3の概略構成について図1を参照しながら説明する。海水Dは、取水ポンプ31で取水管81から吸込まれ、取水管82で取水槽32に供給され、溜められる。前記したように取水槽32には排水処理系1の非透過水Cが配管56で供給されるので、取水槽32内で海水Dと非透過水Cが混合され、海水よりも塩分濃度の低い被処理水となる。つまり、TDSの値も海水Dのものよりも低い値となる。
取水槽32内に溜まった被処理水は、配管83を介してろ過ポンプ33により前処理ろ過装置(前段ろ過装置)34に所定の圧力を掛けて供給される。
この前処理ろ過装置34としては、例えば、限外ろ過膜(UF(Ultra Filtration)膜)を用いたUF装置、精密ろ過膜(MF(Micro Filtration)膜)を用いたMF装置、砂ろ過装置のいずれでも良い。ちなみに、図1では、前処理ろ過装置34に代表的にUF装置を意味する「UF」と表示してある。
前処理ろ過装置34としてUF装置を例にすると、一般的に50〜150kPaで運転される。
【0019】
前処理ろ過装置34でろ過された被処理水は、配管84を経て、一旦、被処理水の流れのバッファの役目をする処理水水槽35に溜められる。そして、処理水水槽35に溜められた被処理水は、配管85を介して供給ポンプ36で吸引され高圧ポンプ37に供給され、高圧ポンプ37で、例えば、3.5〜6MPa程度に昇圧されて、海水逆浸透膜装置(第1の逆浸透膜装置)38の被処理水の供給口38aに供給される。海水逆浸透膜装置38は、例えば、特開2001−149932号公報の図3、図4に記載されたような膜モジュール・ユニットが複数並列に配置された構成である。ただ、低圧逆浸透膜装置16よりも高圧で運転されることから海水逆浸透膜装置38の逆浸透膜の材質はより高圧に耐え得る性能のものである。
ちなみに、この運転圧は、海水逆浸透膜装置38の逆浸透膜に供給される被処理水のTDSの値や汚れが増加してくると、所要の透過水Eの流量を得るために運転圧を増加させる。
【0020】
供給口38aから圧力を掛けて供給された被処理水は、海水逆浸透膜装置38内で、逆浸透膜を透過して浄化された透過水Eと、逆浸透膜を透過しなかった被処理水である非透過水Gと、に分離される。透過水Eは、透過口38bから配管87を介して生産水Eとして外部のその水質レベルに応じた用途に供給される。
【0021】
非透過水Gは、前記した海水逆浸透膜装置38の運転圧を有して排水口38cから配管89を介して、エネルギ回収装置39における後記する加圧側エンド部39bの高圧供給口39dに供給され、圧力を供給ポンプ36から供給される被処理水と直接交換した後、加圧側エンド部39bの排出口39eから配管90の途中に設けられた背圧弁40で流量を調整されて、放出される。
この非透過水Gは、塩分が濃縮された海水、汽水、又はかん水である。
エネルギ回収装置39は、この基本実施形態では、直接圧力交換方式のものであり、主に、図示しないモータで所定の回転速度に回転駆動されるロータ部39a、加圧側エンド部39b、被加圧側エンド部39cから構成されている公知の技術の装置である。
【0022】
供給ポンプ36と高圧ポンプ37との間の配管85の分岐点P1で配管85から配管91が分岐され、供給ポンプ36で供給された低圧の被処理水の一部がエネルギ回収装置39における被加圧側エンド部39cの供給口39gに供給される。そして、供給口39gへ供給された被処理水は、海水逆浸透膜装置38からの非透過水Gとの圧力の直接交換により加圧された後、被加圧側エンド部39cの排出口39fから配管92の途中に設けられたブースターポンプ41に更に供給される。ブースターポンプ41は、エネルギ回収装置39で加圧された被処理水を高圧ポンプ37と同じ圧力にまで昇圧し、高圧ポンプ37の下流側の配管86の合流点P2で高圧ポンプ37から供給される被処理水と配管92からの被処理水とを合流させ、海水逆浸透膜装置38の供給口38aに被処理水を供給する。
【0023】
このように、海水逆浸透膜装置38の非透過水Gは極めて高い圧力を有しているので、そのエネルギを回収して、海水逆浸透膜装置38に被処理水を供給するエネルギに再利用し、高圧ポンプ37の容量を減じることによって動力費を節約できている。また、排水処理系1の非透過水Cを海水Dに混合することによって、塩分濃度を低減させることができ、高圧ポンプ37に必要な昇圧も、海水のみの場合は6MPa程度が必要なものが、非透過水Cと海水Dとを略同量にして薄めると3.5MPa程度まで下げることができる。その結果、その分も動力費が低減できる。つまり、低圧逆浸透膜装置16の運転圧に較べて海水逆浸透膜装置38の運転圧は高圧であり、海水逆浸透膜装置38の非透過水Gの有するエネルギが回収されるとともに海水逆浸透膜装置38の運転圧そのものも低減できる。
【0024】
なお、前記した移送ポンプ12、供給ポンプ14、高圧ポンプ15、取水ポンプ31、ろ過ポンプ33、供給ポンプ36、高圧ポンプ37、ブースターポンプ41、エネルギ回収装置39のロータ部39a等は、図示しない駆動モータの回転軸と接続され一体的に構成され、その駆動モータに動力を供給するインバータ装置(図示せず)が現場盤として設置、又はその駆動モータに一体的に取り付けられている。そして、制御装置6がインバータを介して駆動モータの回転を制御する構成である。
【0025】
(制御装置6)
次に、本基本実施形態における制御装置6の制御の概要について説明する。
制御装置6は、例えば、複数の制御ユニット60,61,63から構成され、それぞれの制御ユニット60,61,63は、図示しないCPU,ROM,RAM等を搭載したCPUボード、入出力インターフェースボード等を搭載している。制御ユニット60は、複合淡水化システム100全体を統括制御し、制御ユニット61は、排水処理系1を制御し、制御ユニット63は、海水淡水化処理系3を制御する構成である。そのため、制御ユニット60は、制御ユニット61,63と相互に通信可能に接続されている。
そして、制御ユニット61は、機能部として背圧弁18の開度を調整して非透過水Cの流量を調整する流量制御部(図示せず)を含んでいる。
【0026】
制御装置6の制御ユニット60には、複合淡水化システム100における生産水B及び生産水Eの要求流量指令C1,C2が外部から入力される。そして、制御ユニット60は、例えば、要求流量指令C1に応じて、排水処理系1に供給される排水流量(後記する流量センサS1で検出される流量)と、透過水Bの流量(後記する流量センサS6で検出される流量)とに基づいて、排水処理系1の透過水Bの目標流量を設定して制御ユニット61に排水処理系1を制御させるとともに、要求流量指令C2に応じて、海水淡水化処理系3の透過水Eの目標流量を算出し、制御ユニット63に海水淡水化処理系3を制御させる。
【0027】
そのために排水取水管51には排水Aの流量を検出する流量センサS1が設けられ、配管54には透過水Bの流量を検出する流量センサS6が設けられ、制御ユニット61を介して排水Aの流量及び透過水Bの流量が制御ユニット60に入力される。また、配管87には透過水Eの流量を検出する流量センサS20が設けられ制御ユニット63を介して制御ユニット60に透過水Eの流量が入力される。
【0028】
MBR水処理装置11には、例えば、水位センサS2が設けられ、制御ユニット61は、水位センサS2からの水位信号に基づいて移送ポンプ12の起動、停止を制御する。処理水水槽13には、例えば、水位センサS3が設けられ、制御ユニット61は、水位センサS3からの水位信号及び高圧ポンプ15の吸込み側の配管53に設けられた圧力センサS4からの圧力信号に基づいて供給ポンプ14の起動、停止の制御、並びに供給ポンプ14の運転時の回転速度を制御する。この圧力センサS4からの圧力信号に基づく供給ポンプ14の回転速度の制御は、高圧ポンプ15に所定の吸込み圧を与えるためである。
【0029】
また、制御ユニット61は、配管54に設けられた流量センサS6からの透過水Bの流量信号に基づいて、その流量が制御ユニット60から入力された透過水Bの目標流量になるように、高圧ポンプ15の回転速度を調整する。そして、そのときの高圧ポンプ15の吐出側の配管53に設けられた流量センサS5からの流量信号に基づきその流量信号が一定になるように高圧ポンプ15の回転速度をフィードバック制御する。
なお、この制御ユニット61における高圧ポンプ15の回転速度のフィードバック制御は、透過水Bの流量信号と透過水Bの目標流量との偏差に基づいて適宜補正される。
【0030】
配管56には、低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの流量を検出する流量センサS7が設けられており、制御ユニット61の前記した流量制御部は、非透過水Cの流量が被処理水の流量センサS5の示す流量に対し一定の割合の流量になるように流量センサS7からの流量信号に基づいて背圧弁18の開度を調整する。
【0031】
取水管82には、流量センサS11が設けられ、また、取水槽32には水位センサS12が設けられている。制御ユニット63は、水位センサS12からの水位信号に基づいて取水ポンプ31の起動、停止を制御するとともに、排水処理系1から取水槽32へ排出される非透過水Cの流量に応じて海水Dの取水流量目標を設定し、流量センサS11からの流量信号に基づいて取水ポンプ31の回転速度を制御する。
例えば、非透過水Cの流量と海水Dの取水流量とを略同じとし、取水槽32の中で海水Dに非透過水Cを混合して塩分濃度を下げた場合、海水逆浸透膜装置38の運転圧は、3.5〜4MPa程度に維持できる。
【0032】
また、制御ユニット63は、処理水水槽35に設けられた水位センサS14からの水位信号に基づいてろ過ポンプ33の起動、停止を制御するとともに、配管84に設けられた流量センサS13からの流量信号に基づいて所定の回転速度にろ過ポンプ33の回転速度を制御し、取水槽32の被処理水を前処理ろ過装置34に所定の圧力で圧送し、一次処理させ、一次処理された被処理水を処理水水槽35に溜めさせる。
【0033】
更に、制御ユニット63は、高圧ポンプ37の吸込み側の配管85に設けられた圧力センサS15からの圧力信号に基づいて供給ポンプ36の起動、停止の制御、並びに供給ポンプ36の運転時の回転速度を制御する。この圧力センサS15からの圧力信号に基づく供給ポンプ36の回転速度の制御は、高圧ポンプ37に所定の吸込み圧を与えるためである。
【0034】
また、制御ユニット63は、配管87に設けられた流量センサS20からの透過水Eの流量信号に基づいて、その流量が制御ユニット60から入力された透過水Eの目標流量になるように、供給ポンプ36、高圧ポンプ37及びブースターポンプ41の回転速度を調整する。そして、そのときの高圧ポンプ37及びブースターポンプ41の吐出側の配管86に設けられた流量センサS16からの流量信号に基づきその流量信号が一定になるように高圧ポンプ37及びブースターポンプ41の回転速度をフィードバック制御する。
なお、この制御ユニット63における高圧ポンプ37及びブースターポンプ41の回転速度のフィードバック制御は、透過水Eの流量信号と透過水Eの目標流量との偏差に基づいて適宜補正される。
【0035】
配管89には、海水逆浸透膜装置38の非透過水Gの流量を検出する流量センサS19が設けられており、制御ユニット63は、非透過水Gの流量が被処理水の流量センサS16の示す流量に対し一定の割合の流量になるように背圧弁40の開度を調整する。
【0036】
このように基本実施形態の複合淡水化システム100では、排水処理系1から排出される低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cを取水した海水Dと混ぜて、海水淡水化処理系3での被処理水とすることにより、海水淡水化処理系3における被処理水の塩分濃度が約半分程度にまで低減でき、海水逆浸透膜装置38を運転する運転圧を、100%海水だけを処理する場合に必要であった約6MPaに比べて大きく減圧でき、動力費を節減できる。
【0037】
《第1の実施形態》
次に、図2を参照しながら本発明の第1の実施形態に係る複合淡水化システム100Aについて説明する。図2は、第1の実施形態に係る複合淡水化システムの概略ブロック図である。本実施形態の複合淡水化システム100Aの基本的な構成は、図1に示した基本実施形態の複合淡水化システム100と略同じであるが、複合淡水化システム100における制御装置6とは、制御装置6が後記する流量調整弁19を制御する点と、図2に示したように、図1に示した基本実施形態と異なり、取水槽32から前処理ろ過装置34に被処理水を供給するろ過ポンプ33の代わりに、タービンポンプ(第1のポンプ)33Aが用いられる点が異なる。
なお、本実施形態では、図1の基本実施形態において配管84に設けられていた流量センサS13が、後記する配管83Bに設けられている。
【0038】
そのため、配管56は、低圧逆浸透膜装置16の排水口16cにその一端が接続され、他端はタービンポンプ33Aのタービン部33aの加圧水入り口33cに接続されている。そして、タービンポンプ33Aのタービン部33aの排出口33dに配管57の一端が接続され、その他端は背圧弁18を介して取水槽32に接続されている。
また、取水槽32に配管83Aの一端が接続され、その他端がタービンポンプ33Aのポンプ部33bの吸込み口33eに接続されている。タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出口33fには、配管83Bの一端が接続され、その他端は前処理ろ過装置34に接続されている。
更に、配管83Bの分岐点P5において戻し配管83Cの一端が接続され、その他端は流量調整弁19を介して取水槽32に接続されている。
低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cは、タービンポンプ33Aのタービン部33aに内蔵されているタービンを回転駆動し、背圧弁18を介して取水槽32に放出される。そして、タービンは、ポンプ部33bに内蔵されているポンプ・インペラを回転駆動して、取水槽32の海水(第1の原水)Dと非透過水Cの混合された被処理水を吸い込み、所定の圧力に、例えば、150kPa程度に加圧して、配管83Bを経由して前処理ろ過装置34に供給する。
【0039】
そして、本実施形態における制御装置6の制御ユニット60,61の機能は、基本実施形態の複合淡水化システム100における制御装置6の制御ユニット60,61の機能と同じである。本実施形態における制御装置6の制御ユニット63の機能は、複合淡水化システム100における制御装置6の制御ユニット63の機能と略同じであるが、ろ過ポンプ33を制御する機能を有せず、流量調整弁19の開度を調整する機能を有する。
複合淡水化システム100と同じ構成については同じ符号を付し重複する説明を省略するとともに、基本実施形態の制御装置6における同じ制御機能についても重複する説明を省略する。
【0040】
本実施形態における制御ユニット61の機能部としての流量制御部(図示せず)は、低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの流量を制御する。そして、タービンポンプ33Aは加圧水入り口33cにおける低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cが加えるタービン入口圧{表1中、左から最初の列に「タービン入口圧(非透過水の加圧圧力)」と表示}の増加に応じてタービン入口流量(リットル/min){表1中、左から2番目の列に「タービン入口流量(非透過水の流量)」と表示}も増加するが、表1の左から3番目以降の列に示すように低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの各タービン入口圧の値に対するタービン入口流量を100%と規格化したとき、タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出口33fからの被処理水の吐出圧(kPa)に応じた被処理水の吐出流量(%)は、タービン入口流量(%)よりも大きな値となる。
【0041】
背圧弁18の開度は、低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの流量を制御するために制御ユニット61の前記した流量制御部で制御されるので、タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出流量は、その非透過水Cの水圧と流量とで自動的に決まる。タービンポンプ33Aの回転速度では前処理ろ過装置34へ供給する被処理水の流量を精度良く調節しようとするためには、制御ユニット63は、機能部としての流量制御部(図示せず)を有し、タービンポンプ33Aによる被処理水の前処理ろ過装置34への供給量が多すぎる場合は、流量センサS13からの流量信号に基づいて流量調整弁19の開度を調整し、戻し配管83Cを介して過剰な被処理水を取水槽32へ戻す。
従って、基本実施形態の淡水化システム100のように海水淡水化処理系3の海水Dの取水量が低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの流量の0.5倍程度の場合は、ろ過ポンプ33を必要とせず、複合淡水化システム100Aは、その分の駆動力コストを低減できる。
【0042】
【表1】

【0043】
《第2の実施形態》
次に、図3を参照しながら本発明の第2の実施形態に係る複合淡水化システム100Bについて説明する。図3は、第2の実施形態に係る複合淡水化システムの概略ブロック図である。本実施形態の複合淡水化システム100Bが、複合淡水化システム100Aと異なる点は、制御装置6の制御ユニット63が後記する補助ろ過ポンプ(第2のポンプ)33Bを制御する点と、図3に示したように取水槽32から更に配管83Dが、配管83Bとの合流点P6に接続され、配管83Dには補助ろ過ポンプ33Bが設けられている点である。
制御装置6は、第1の実施形態と同様に制御ユニット60、制御ユニット61、制御ユニット63を有している。
【0044】
制御ユニット63の機能は、基本的に第1の実施形態における制御ユニット63と同じであるが、その機能部としての流量制御部(図示せず)は、タービンポンプ33Aによる被処理水の前処理ろ過装置34への供給量が多すぎる場合は、流量センサS13からの流量信号に基づいて流量調整弁19の開度を調整し、戻し配管83Cを介して過剰な被処理水を取水槽32へ戻す。逆に、制御ユニット63の前記した流量制御部は、タービンポンプ33Aによる被処理水の前処理ろ過装置34への供給量が少ない場合は、補助ろ過ポンプ33Bを起動し、タービンポンプ33Aと補助ろ過ポンプ33Bとの合計の被処理水の供給量が所要の流量になるように流量センサS13の流量信号に基づいて補助ろ過ポンプ33Bを駆動する図示しないモータの回転速度を制御する。
【0045】
ちなみに、補助ろ過ポンプ33Bのポンプ容量は、基本実施形態におけるろ過ポンプ33のポンプ容量より小さく、補助ろ過ポンプ33Bを運転する場合の動力費は基本実施形態の場合よりも低減される。
【0046】
なお、制御ユニット63の前記した流量制御部は、補助ろ過ポンプ33Bの起動、停止及び、運転中の補助ろ過ポンプ33Bの回転速度の制御、並びに流量調整弁19の開度調整を、合流点P6の下流側の配管83Bに設けた流量センサS13からの流量信号に基づいて行うとしたがそれに限定されるものではない。
流量センサS13の代わりに分岐点P5より上流側の配管83Bに流量センサS13Aを設けるとともに、補助ろ過ポンプ33Bの下流側の配管83Dに流量センサS13Bを設け、制御ユニット63の前記した流量制御部は、流量センサS13A,13Bからのそれぞれの流量信号に基づいて、前処理ろ過装置34へ供給される被処理水の流量を判定し、制御しても良い。つまり、流量センサS13Aの示す流量が所要の流量以上の場合には、補助ろ過ポンプ33Bを停止状態とし、流量調整弁19の開度調整により前処理ろ過装置34へ供給される被処理水の流量を制御する。逆に、流量センサS13Aの示す流量が所要の流量未満の場合には、流量調整弁19の開度を全閉とし、補助ろ過ポンプ33Bを起動する。そして、流量センサS13Aの示す流量と流量センサS13Bの示す流量の合計値が所要の流量となるように補助ろ過ポンプ33Bの回転速度を制御し、前処理ろ過装置34へ供給される被処理水の流量を制御する。
【0047】
本実施形態によれば、非透過水Cによって駆動されるタービンポンプ33Aが供給する取水槽32からの被処理水の流量が、前処理ろ過装置34へ供給されるべき所要の流量よりも多い場合にも少ない場合にも、制御ユニット63の前記した流量制御部によって柔軟に制御でき、生産水Eの目標流量が達成できる。
【0048】
《第3及び第4の実施形態》
(第3の実施形態)
次に、図4を参照しながら本発明の第3の実施形態に係る複合淡水化システム100Cについて説明する。図4は、第3及び第4の実施形態に係る複合淡水化システムの概略ブロック図である。
第3の実施形態の複合淡水化システム100Cの基本的な構成は、略基本実施形態の複合淡水化システム100と同じであるが、複合淡水化システム100とは、制御装置6の制御ユニット63が取水ポンプ31の代わりに後記するタービンポンプ(第3のポンプ)33Aを制御する点と、図3に示したように、図1に示した基本実施形態と異なり、海水Dを取水槽32へ取水する取水ポンプ31の代わりに、タービンポンプ33Aが用いられる点が異なる。
なお、本実施形態では、図1の基本実施形態において配管84に設けられていた流量センサS13が、ろ過ポンプ33の吐出側の配管83に設けられている。
【0049】
そのため、図4に示すように配管56は、低圧逆浸透膜装置16の排水口16cにその一端が接続され、他端はタービンポンプ33Aのタービン部33aの加圧水入り口33cに接続されている。そして、タービンポンプ33Aのタービン部33aの排出口33dに配管57の一端が接続され、その他端は背圧弁18を介して取水槽32に接続されている。
また、取水管81がタービンポンプ33Aのポンプ部33bの吸込み口33eに接続されている。タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出口33fには、取水管82Cの一端が接続され、その他端は取水槽32に接続されている。
低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cは、タービンポンプ33Aのタービン部33aに内蔵されているタービンを回転駆動し、背圧弁18を介して取水槽32に放出される。そして、タービンは、ポンプ部33bに内蔵されているポンプ・インペラを回転駆動して、取水管81を介して海水(第1の原水)Dを吸い込み、取水管82Cを介して取水槽32に供給する。
【0050】
そして、制御装置6の機能は、基本実施形態の複合淡水化システム100における制御装置6の機能と略同じであり、制御ユニット60、制御ユニット61、制御ユニット63を有している。
複合淡水化システム100と同じ構成については同じ符号を付し重複する説明を省略するとともに、本実施形態における制御装置6の基本実施形態における制御装置6と同じ制御機能についても重複する説明を省略する。
【0051】
制御ユニット61の機能部としての流量制御部(図示せず)は、基本実施形態における制御ユニット61の流量制御部(図示せず)と同じ機能であり、低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの流量を制御する。そして、タービンポンプ33Aは加圧水入り口33cにおける低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cのタービン入口圧の増加に応じて低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cのタービン入口流量(リットル/min)も増加するが、表1に示すように(ただし、表1中左から3番目以降の列に示す「被処理水の吐出圧力と被処理水の吐出流量の特性」は、「海水の吐出圧力と海水の吐出流量の特性」と読み直す)低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの各タービン入口圧の値に対するタービン入口流量を100%と規格化したとき、タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出口33fからの海水の吐出圧(kPa)に応じた海水の吐出流量(%)は、非透過水Cのタービン入口流量(%)よりも大きな値となる。
各タービン入口圧の値に対するタービン入口流量を100%と規格化したとき、タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出口33fからの海水Dの吐出圧(kPa)に応じた海水Dの吐出流量(%)は、低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cのタービン入口流量(%)よりも大きな値となる。
【0052】
背圧弁18の開度は、低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cの流量を制御するために制御ユニット61の機能部としての流量制御部(図示せず)で制御されるので、タービンポンプ33Aのポンプ部33bの吐出流量は、その非透過水Cの水圧と流量とで自動的に決まる。そこで、タービンポンプ33Aが取水槽32へ供給する海水Dを取水し過ぎた場合の対策としては、取水槽32には、溢水口(図示せず)を設け、タービンポンプ33Aで海水Dを取水し過ぎた分は、海水Dを排出するようにする。
従って、基本実施形態の複合淡水化システム100のように取水ポンプ31を必要とせず、複合淡水化システム100Cは、その分の駆動力コストを低減できる。
【0053】
ちなみに、制御ユニット63の機能は、基本的に基本実施形態における制御ユニット63と同じであるが、制御ユニット63には、流量センサS11及び水位センサS12からの水位信号に基づいて海水Dの取水量を制御する機能を有しない。
【0054】
(第4の実施形態)
次に、図4を参照しながら本発明の第4の実施形態に係る複合淡水化システム100Dについて説明する。複合淡水化システム100Cと異なる点は、制御装置6の制御ユニット63が後記する補助取水ポンプ(第4のポンプ)31Aを制御する点と、図4に破線で示したように取水管81から更に取水管81Dが分岐している。そして、取水管81Dは、補助取水ポンプ31Aの吸込み口に接続され、更に補助取水ポンプ31Aの吐出口に取水管82Dが接続され、取水槽32接続されている点と、取水管81には図4に破線で示したように流量センサS35が設けられ、海水Dの取水流量を検出して流量信号が制御装置6に入力されている点と、である。
制御装置6は、第3の実施形態と同様に制御ユニット60、制御ユニット61、制御ユニット63を有している。
【0055】
制御ユニット63の機能は、基本的に第3の実施形態における制御ユニット63と同じであるが、基本実施形態における制御ユニット63と同様に海水Dの取水量を水位センサS12と流量センサS35に基づいて制御する機能を有する。そして、制御ユニット63の機能部としての流量制御部は、流量センサS35が示すタービンポンプ33Aによる海水Dの取水槽32への取水量が少ない場合は、補助取水ポンプ31Aを起動し、タービンポンプ33Aと補助取水ポンプ31Aとの合計の海水Dの取水量が所要の取水量になるように流量センサS35の流量信号に基づいて補助取水ポンプ31Aを駆動する図示しないモータの回転速度を制御する。
【0056】
ちなみに、補助取水ポンプ31Aのポンプ容量は、基本実施形態における取水ポンプ31のポンプ容量より小さく、補助取水ポンプ31Aを運転する場合の動力費は基本実施形態の場合よりも低減される。
【0057】
本実施形態によれば、非透過水Cによって駆動されるタービンポンプ33Aが取水槽32へ供給する海水Dの取水流量が、所要の流量よりも少ない場合にも、制御ユニット63の前記した流量制御部によって海水Dの取水量が制御でき、生産水Eの目標流量が達成できる。
【0058】
以上、第1〜第4の実施形態によれば、排水処理系1の非透過水Cの有している比較的低圧の0.8〜1.5MPaの圧力を回収してタービンポンプ33Aの駆動エネルギとして利用しているので、従来よりも動力費を低減した複合淡水化システム100A〜100Dを提供できる。
【0059】
なお、第1〜第4の実施形態では、図2から図4にエネルギ回収装置39として直接圧力交換方式のものが記載され、その後段にブースターポンプ41が組み合わされているが、それに限定されたものではない。ターボチャージャポンプを非透過水Gで駆動するようにしても良い。その場合、配管89と配管90がターボチャージャポンプのタービン部(駆動部)入口と出口にそれぞれ接続され、配管86の下流側がターボチャージャポンプのポンプ部入口に接続され、ターボチャージャポンプのポンプ部出口が供給口38aに配管で接続される。このような形式でも非透過水Gの圧力を回収することができる。
ちなみに、その場合、配管91,92及びブースターポンプ41は不要となる。
【0060】
また、第1〜第4の実施形態では、取水槽32内に低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cを導入して混合する例を説明したが、それに限定されるものではない。
第1及び第2の実施形態において配管57の最下流の末端が取水管82に直接接続されて、配管82内で低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cと海水Dとを混合して被処理水としても良い。
また、第3及び第4の実施形態において配管57の最下流の末端がタービンポンプ33A又は補助取水ポンプ31Aの吸込み側の配管81の流量センサS35より下流側に直接接続されて、配管81内で低圧逆浸透膜装置16の非透過水Cと海水Dとを混合して被処理水としても良い。
【0061】
前記した基本実施形態、第1〜第4の実施形態において、生産水Bと生産水Eは、それぞれの水質レベルに応じて外部へ供給されるとしたが、生産水Bと生産水Eを混合して外部に供給しても良い。
【符号の説明】
【0062】
1 排水処理系(第2の水処理系)
3 海水淡水化処理系(第1の水処理系)
6 制御装置
11 MBR水処理装置
12 移送ポンプ
13 処理水水槽
14 供給ポンプ
15 高圧ポンプ
16 低圧逆浸透膜装置(第2の逆浸透膜装置)
16c 排水口
18 背圧弁
19 流量調整弁
31 取水ポンプ
31A 補助取水ポンプ(第4のポンプ)
32 取水槽(第1原水槽)
33 ろ過ポンプ
33A タービンポンプ(第1のポンプ、第3のポンプ)
33B 補助ろ過ポンプ(第2のポンプ)
34 前処理ろ過装置(前段ろ過装置)
35 処理水水槽
36 供給ポンプ
37 高圧ポンプ
38 海水逆浸透膜装置(第1の逆浸透膜装置)
39 圧力交換装置
40 背圧弁
41 ブースターポンプ
60 制御ユニット
61 制御ユニット
63 制御ユニット
81,81D,82,82C,82D 取水管
83C 戻し配管
100,100A,100B,100C,100D 複合淡水化システム
A 排水(第2の原水)
D 海水(第1の原水)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
高塩分濃度の第1の原水を、第1の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第1の水処理系と、第1の原水よりも低塩分濃度の第2の原水を、第2の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第2の水処理系と、を備える複合淡水化システムであって、
前記第1の水処理系は、
前記第1の逆浸透膜装置の前段において、取水された前記第1の原水を含む被処理水のろ過処理をする前段ろ過装置と、
前記被処理水を前記前段ろ過装置に加圧して供給する第1のポンプと、
を有し、
前記第1のポンプが、前記第2の水処理系の前記第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧によって駆動され、前記第1のポンプを駆動した前記非透過水は前記第1の原水に混合されて前記被処理水とされることを特徴とする複合淡水化システム。
【請求項2】
前記第1の水処理系は、
前記取水された前記第1の原水を溜める第1原水槽を有し、
前記第1のポンプを駆動した前記非透過水は、前記第1原水槽の前記第1の原水に混合されて前記被処理水とされることを特徴とする請求項1に記載の複合淡水化システム。
【請求項3】
前記第1の水処理系は、
前記第1原水槽の前記被処理水を前記前段ろ過装置に加圧して供給する第2のポンプを、前記第1のポンプと並列して有することを特徴とする請求項2に記載の複合淡水化システム。
【請求項4】
前記第1の水処理系は、
前記前段ろ過装置に供給される被処理水の流量を調整する流量調整弁を有することを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の複合淡水化システム。
【請求項5】
前記流量調整弁は、前記前段ろ過装置の前記被処理水の供給口側と、前記第1原水槽と、を接続する戻し配管に設けられることを特徴とする請求項4に記載の複合淡水化システム。
【請求項6】
高塩分濃度の第1の原水を、第1の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第1の水処理系と、第1の原水よりも低塩分濃度の第2の原水を、第2の逆浸透膜装置を用いてろ過処理する第2の水処理系と、を備える複合淡水化システムであって、
前記第1の水処理系は、
前記第1の原水を取水する第3のポンプと、
取水された前記第1の原水を溜める第1原水槽と、
を有し、
前記第3のポンプが、前記第2の水処理系の前記第2の逆浸透膜装置から排出される非透過水の水圧によって駆動され、前記第3のポンプを駆動した非透過水は前記第1原水槽に供給されることを特徴とする複合淡水化システム。
【請求項7】
前記第1の水処理系は、
更に、前記第1の原水を取水して前記第1原水槽に送る第4のポンプを、前記第3のポンプと並列して有することを特徴とする請求項6に記載の複合淡水化システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−170839(P2012−170839A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32411(P2011−32411)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】