説明

複合的な放射線治療及び化学治療の組成物及び方法

本発明は、放射線治療及び化学治療を含む複合治療に関する。特に本発明は、癌並びに関連疾患及び症状の治療において放射線治療又は化学治療と組合わせてイソフラボン又はその類似体を使用することに関する。本発明はまた上記治療に有用な組成物及び薬剤、並びにそれらの製法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射線治療及び化学治療を含む複合治療に関する。特に本発明は、癌並びに関連疾患及び症状の治療において放射線治療又は化学治療と組合わせてイソフラボン又はその類似体を使用することに関する。本発明はまた上記治療に有用な組成物及び薬剤、並びにそれらの製法に関する。
【背景技術】
【0002】
癌は、その病因に関わらず、制御及び調節されていない細胞増殖と生存を特徴とする。この過程は種々の変化を伴う。この変化の最初の状態は、前悪性状態として知られている。この状態では、細胞は、種々の形態変化(異型外観、中程度の未分化、膨潤)、分裂活性変化(異常増殖)、及び生存性の変化(アポトーシス指標の低下)を示す。この変化の最後の状態では、癌細胞は、完全に未分化な外観を持ち、急速かつ連続的に細胞分裂し、転移により周辺組織や離れた組織に侵襲し、そしてアポトーシス率が非常に低くなる。人間及び動物の癌状態の細胞は、これらの2つの変化状態の中間のいずれかの状態を示す。
【0003】
癌発症の正確な機序は完全には解明されていないが、ほぼ全てのタイプの癌に共通して、生と死のバランスを調節する細胞機構に根本的な誤りが発生している。
【0004】
癌性か非癌性かに関係なく、いずれの細胞においてもその死は正常な欠損状態である。死は、主に2つの機構:(a)全ての細胞の表面に発現して、免疫細胞や血中因子と反応する死受容体(例えばFas、TRAILなど)、及び(b)細胞内で生じる内部シグナルにより通常惹起されるミトコンドリアの破壊、により始まる。また死は、細胞蛋白質を分解するカスパーゼという蛋白質分解酵素の活性化を介して起きる。死受容体を介する死は、外因性アポトーシスと言われ、ミトコンドリア機構を介する死は、内因性アポトーシスと言われる。細胞は、生存するために、C-FLIP, XIAP, Smac-DIABLO及びBaxなどの抗アポトーシス蛋白質を生産して、絶えず存在する死受容体と開始因子との結合を遮断する必要がある。抗アポトーシス蛋白質は、死受容体またはミトコンドリアへの、あるいはそこからの前死シグナルカスケードを抑制するのに有用である。抗アポトーシス因子の細胞内生産では、受容体であるスフィンゴシンキナーゼの活性化が重要な役割を担っていると考えられている。細胞死が生じるには、抗アポトーシス蛋白質の発現低下、その分解速度の促進、又はその両者が必要である。
【0005】
細胞の生存は、増殖受容体を介して活発に促進される。このような受容体として、上皮成長因子受容体、血小板由来成長因子受容体、インスリン様成長因子受容体、腫瘍壊死因子受容体、及び線維芽細胞増殖因子受容体などがある。自己分泌性、傍分泌性、及び内分泌性の各成長因子によってこれらの増殖受容体が活性化されると、種々の前生存経路を介して、細胞生存のために絶えず重要な刺激が提供される。
【0006】
癌は、これらの前生存と前死のバランス機構の機能障害と関係する。例えば、多くの癌細胞は、1種類以上の増殖受容体を過剰に発現しており、その結果、前生存機構が過剰に活性化されている。肺癌や乳癌など多くの上皮系の癌は、通常量を超える上皮成長因子受容体を発現している。他の例として、癌は、該受容体の発現低下及び/又は抗アポトーシス因子の過剰発現による死受容体機構の破壊と関係する。
【0007】
このような癌と細胞調節機構の機能不全との関係から、癌治療を成功させるためには、上記機能不全の修復か、又は上記機能不全を克服することができる別の機能の活性化のいずれかが必要であることが判る。これは、現代の多くの化学治療及び放射線治療の基礎で
ある。本質的には、これらの種々の治療方法は、癌細胞にアポトーシスを誘発するために代謝的又は物理的に不可逆的な損傷を与えようとするものである。このような細胞損傷は、非常に重篤であれば、死受容体の発現増加、死受容体の自己分泌性リガンドの発現増加、抗アポトーシス因子の発現低下、及び/又は前死因子の増加調節という前死状態を招く。これらの効果の結果として、カスパーゼによる蛋白質の自己分解過程が活性化される。
【0008】
癌治療は種々の手段を介して行われる。該治療の目的は、一般的には、細胞分裂速度の低下もしくは抑制(細胞分裂停止)又は細胞死の誘発(細胞障害)のいずれかである。別の目的は、一般性はより低いが、急速増殖する癌組織に必要な栄養素の供給を阻害すること(抗血管新生作用)である。別の目的は、一般性はより低いが、増殖速度が抑制される程度に細胞機能の完全性を阻害すること(シグナル伝達阻害)である。
【0009】
主効果が抗血管新生作用である手段には、次のものがある。
(a)サリドマイド
主効果が細胞分裂停止である手段には、次のものがある。
(a)トポイソメラーゼ阻害剤(例えばトポテカン(ハイカムチン))
主効果が細胞障害である手段には、次のものがある。
(a)主にDNA損傷効果による手段(例えば、放射線、シスプラチン、カルボプラチン、エトポシド、ブレイオマイシン、ドクソルビシン、アルキル化剤)
(b)主に微小管の破壊効果による手段(例えば、タキサン、ビンカアルカロイド、コルヒチン)
(c)主に抗代謝作用効果による手段(例えば、メトトレキセート、5-フルオロウラシル、ヒドロキシウレア、サイタラビン)
主効果がシグナル伝達調節である手段には、次のものがある。
(a)主に増殖受容体の活性阻害効果による手段(例えば、蛋白質チロシンキナーゼ阻害剤、増殖受容体のアゴニストとして作用する抗体、タモキシフェン、抗アンドロゲン、抗エストロゲン、GnrHアゴニスト)
(b)主に死受容体の発現又は活性促進効果による手段(例えば、インターフェロン、Fasリガンド、TRAILリガンド)
【0010】
人間及び動物のほとんどの癌において現在の治療方法には多くの欠点がある。第一に、それらの多くは、用量制限をもたらす有害な副作用(これは治療の非特異的な性質を反映する)及び非癌組織の損傷に関係する。症状として、骨髄機能の低下(貧血)、胃腸の不快(嘔気嘔吐)、及び脱毛がある。他の欠点として、重篤なやけどや痛み(放射線治療)、性欲及び生殖能力の喪失(性ホルモンアンタゴニスト)、及び白血病などの他の種類の癌の罹り易さ(放射線治療、いくつかの薬剤)がある。
【0011】
第二に、多くの腫瘍は、標準的な抗癌治療剤に本来的に非感受性である。このような場合、標準的な治療では、いずれの用量でも、ほとんど、または全く抗癌効果を示さず、あるいは有意な臨床効果に必要な用量では、著しい毒性を示す。このような腫瘍の例として、腎臓癌、膵臓癌、メラノーマ、及び胆管癌がある。このような相対的な非感受性の原因は不明である。
【0012】
第三に、標準的な抗癌治療に感受性である腫瘍の多くは、続いて耐性を獲得する。この誘発された耐性の原因は、生物学的効果を発揮する前に細胞から薬剤を排出する「輸送体蛋白質」であるp-糖蛋白質などの蛋白質が過剰発現するためであると考えられている。
【0013】
本発明において、放射線治療に対する細胞の耐性、又は放射線治療に対する癌細胞もしくは腫瘍の感受性の増加促進を解決することは重要である。
【0014】
放射線治療は、癌細胞を殺すために、高エネルギー放射線、通常はX線を用いる。X線は、可視光と似た性質を有するが、100オングストローム未満という極短波長である。X線は1895年に最初に発見され、その後すぐに治療分野において診断、検査、癌細胞と腫瘍の治療に用いられてきた。また、術前に腫瘍サイズを小さくするために放射線治療を行うこともある。また、術後に残った組織を殺すために放射線治療を行うこともできる。
【0015】
通常、治療は局所的であり、これは、高エネルギー放射線を体内もしくは体表面の特定の位置に向けることを意味する。一般に、癌細胞は、正常細胞よりも放射線治療に感受性であり、それらの細胞のほとんどは殺されるだろう。悪影響を受けた正常細胞は、通常は非常に急速に自己修復して回復する。問題点は、治療される癌細胞が放射線治療に対して脱感作されることである。他の問題点は、治療部位が、生命維持に必要な臓器、例えば心臓や脊髄に近いことである。よって放射線の照射レベル又は量は、周囲の正常な細胞、組織もしくは臓器に損傷を与えずに癌細胞を攻撃するために重要である。余効として、照射に対する癌細胞の感受性の増加、感受性の回復、又は正常細胞の保護が強く求められるだろう。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
従って、先天的または後天的な放射線耐性または化学耐性という問題を解決することができ、かつより安全に、より高耐性に、より高く抗癌効果を発揮できる、改良された抗癌治療が早急に開発される必要がある。
【0017】
本発明の好ましい課題は、癌の治療、軽減又は予防のための医薬組成物及び方法を提供することである。また本発明の課題は、治療のために癌細胞を標的とする医薬組成物及び方法を提供することである。これらの組成物及び方法は、癌細胞と区別して、正常細胞の機能、保護もしくは分化を標的にする改良薬理活性、毒性薬剤の改良供給、及び/又は、先天的または後天的な耐性を有する癌細胞における放射線感受性又は化学感受性の回復を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0018】
本願は、新規な治療方法及び化学治療用の組成物及び化合物を開示する。本発明は、イソフラバノイド化合物の全く予想外の活性として、様々な作用様式により広範な抗癌治療(薬剤又は放射線治療)に対する癌細胞の感受性を増加すること、及びこれらの薬剤や治療方法に対する耐性を獲得した細胞において同一の薬剤に対する感受性を回復することに基づく。さらに驚くことに、イソフラボノイド化合物は、非癌細胞及び組織に対する保護効果を示すことが見出された。
【0019】
本発明は、一つの態様として、癌細胞又は腫瘍を下記式(I)のイソフラボノイド化合物に接触させることにより、放射線治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増加又は回復する方法を提供する。
【0020】
本発明は、別の態様として、正常な細胞又は組織体を式(I)のイソフラボノイド化合物に接触させることにより、放射線治療及び/又は化学治療の効果から正常な細胞又は組織体を保護する方法を提供する。
【0021】
本発明は、別の態様として、癌細胞又は腫瘍を式(I)のイソフラボノイド化合物に接触させることにより、化学治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増加又は回復する方法を提供する。一つの態様では、患者は、治療において放射線治療と化学治療の双方を受ける。別の態様では、活性薬剤は、成長受容体の阻害剤又は死受容体の刺激剤である。
【0022】
一般式(I)の化合物は、イソフラバノイド化合物、所望により置換されたその化合物、それらの医薬学的に許容された塩およびプロドラッグである。
【0023】
【化1】

式中、
、R及びZは、独立して、水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、又はハロであり、
【0024】
あるいは、Rは、先に定義したとおりであり、かつR及びZはそれらが結合される炭素原子と一緒になって、以下から選択される5員環を形成し、
【化2】

【0025】
あるいは、Rは、先に定義したとおりであり、かつR及びZはそれらが結合される炭素原子と一緒になって、以下から選択される5員環を形成し、
【化3】

【0026】
および、Wは、Rであり、Aは、水素、ヒドロキシ、NR又はチオであり、Bは、以下から選択され、
【化4】

【0027】
あるいは、Wは、Rであり、AとBは、それらが結合される炭素原子と一緒になって、以下から選択される6員環を形成し、
【化5】

【0028】
あるいは、W、A及びBは、それらが結合される基と一緒になって、以下を構成し、
【化6】

【0029】
あるいは、WとAは、それらが結合される基と一緒になって、以下を構成し、
【化7】

【0030】
かつBは、以下から選択され、
【化8】

【0031】
ここで、Rは、水素、アルキル、アリールアルキル、アルケニル、アリール、アミノ酸、C(O)R11(ここで、R11は、水素、アルキル、アリール、アリールアルキル、又はアミノ酸である)、又はCO12(ここでR12は、水素、アルキル、ハロアル
キル、アリール、又はアリールアルキルである)であり、
は、水素、アルキル、又はアリールであり、あるいは、
とRは、それらが結合される窒素と一緒になってピロリジニル又はピペリジニルを構成し、
【0032】
は、水素、C(O)R11(ここでR11は先に定義したとおりである)、又はCO12(ここでR12は先に定義したとおりである)であり、
は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、アミノ、チオ、NR、COR11(ここでR11は先に定義したとおりである)、CO12(ここでR12は先に定義したとおりである)、又はCONRであり、
は、水素、C(O)R11(ここでR11は先に定義したとおりである)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、アリールアルキル、又はSi(R13)(ここでR13は、各々独立して、水素、アルキル又はアリールである)であり、
【0033】
は、水素、ヒドロキシ、アルコキシ、又はアルキルであり、
は、アルキル、ハロアルキル、アリール、アリールアルキル、C(O)R11(ここでR11は先に定義したとおりである)、又はSi(R13)(ここでR13は先に定義したとおりである)であり、
10は、水素、アルキル、ハロアルキル、アミノ、アリール、アリールアルキル、アミノ酸、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノであり、
表記「---」は、単結合又は二重結合のいずれかを表し、
Tは、独立して、水素、アルキル、又はアリールであり、
Xは、O、NR、又はSであり、
【0034】
Yは、以下である:
【化9】

【0035】
ここで、R14、R15及びR16は、独立して、水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、OS(O)R10、CHO、C(O)R10、COOH、CO10、CONR、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、ヘテロアリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、又はハロであり、あるいは、R14、R15及びR16の任意の2つは、互いに縮合して環状アルキル構造、芳香族構造、又は複素環式芳香族構造を形成する。
【0036】
好ましい態様として、放射線治療の前に、又は第二の化学治療剤による処置の前に、癌患者を式(I)の化合物により前処置する。しかし、式(I)の化合物の投与と、放射線治療又は第二の化学治療剤の投与又はその双方のいずれかとの順序はいずれでもよい。
【0037】
別の態様として、癌患者において放射線治療に対する、先天的または後天的いずれかの耐性が認められた後に、式(I)の化合物を投与する。
別の態様として、癌患者において化学治療に対する、先天的または後天的いずれかの耐性が認められた後に、式(I)の化合物を投与する。
【0038】
本発明は、別の態様として、放射線治療を受けている、又は受けようとしている患者に
、治療上有効な量の式(I)の化合物を投与することを含んでなる複合治療を提供する。一つの態様では、上記投与は放射線治療の前に行い、かつ患者において放射線耐性が獲得された後に行いうる。
【0039】
本発明は、別の態様として、患者に治療上有効な量の式(I)の化合物及び化学治療剤を投与することを含んでなる複合治療を提供する。上記投与は、逐次に、又は同時に、又は患者において化学耐性が獲得された後に行いうる。
【0040】
好ましい態様として、治療する症状は、好ましくは悪性を示す癌であるが、例えば前悪性の病変(例えば異型、形成不全、上皮内癌)などの初期段階の癌、及び良性の癌でもよい。
【0041】
本発明は、別の態様として、上記の本発明の方法のための薬剤の製造方法、及びそのための医薬製剤を提供する。
【0042】
本明細書および請求項全てにわたり、他に要求のない限り、「含む」という単語、および「含み」や「含んでいる」などの活用語は、記載した1つの要素または工程、あるいは複数の要素または工程を包含することを意味するが、その他の1つの要素または工程、あるいは複数の要素または工程を排除することを意味するものではない。
【発明を実施するための最良の形態】
【0043】
本明細書では、用語「イソフラバノイド」「イソフラボノイド」及び「イソフラボン」は、広義には、1,2-ジフェニルプロパン系に基づいたピラン環からのペンダント(pendent)のフェニル基を有する、環縮合したベンゾピラン分子を含む。したがって、一般にイソフラボン、イソフラベン(isoflavenes)、イソフラバン(isoflavans)、イソフラバノン(isoflavanones)、イソフラバノール(isoflavanols)などと総称されるこの種類の化合物は、本明細書では、イソフラボン、イソフラボン誘導体またはイソフラバノイド化合物と総称する。
【0044】
用語「アルキル」は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、第二ブチル、第三ブチルなどの直鎖および分岐鎖アルキル基の両方を意味する。アルキル基は、1〜10個の炭素原子、好ましくは1〜6個の炭素原子を有し、より好ましくはメチル、エチル、プロピルまたはイソプロピルである。アルキル基は、所望により、1つまたは複数のフッ素、塩素、臭素、ヨウ素、カルボキシル、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルアミノ−カルボニル、ジ−(C〜C−アルキル)−アミノ−カルボニル、ヒドロキシル、C〜C−アルコキシ、ホルミルオキシ、C〜C−アルキル−カルボニルオキシ、C〜C−アルキルチオ、C〜C−シクロアルキルまたはフェニルで置換されてもよい。
【0045】
用語「アリール」は、フェニルおよびナフチルを含み、所望により、1つまたは複数のC〜C−アルキル、ヒドロキシ、C〜C−アルコキシ、カルボニル、C〜C−アルコキシカルボニル、C〜C−アルキルカルボニルオキシ、またはハロで置換されてもよい。
【0046】
用語「ハロ」は、フルオロ、クロロ、ブロモ、およびヨードを含み、好ましくはフルオロおよびクロロ、より好ましくはフルオロである。例えば「ハロアルキル」の例として、モノハロゲン化、ジハロゲン化、さらにペルハロゲン化(perhalogenated)までのアルキル基が挙げられる。好ましいハロアルキル基は、トリフルオロメチルおよびペンタフルオロエチルである。
【0047】
用語「医薬学的に許容される塩」は、電荷を保有し、かつ薬剤と組合わせて投与することができる、例えば塩の対カチオンまたは対アニオンとしての有機または無機部分を指す。医薬学的に許容されるカチオンは、当業者に既知であり、ナトリウム、カリウム、カルシウム、亜鉛、および第四級アミンが挙げられるが、これらに限定されない。医薬学的に許容されるアニオンは、当業者に既知であり、塩化物、酢酸塩、クエン酸塩、重炭酸塩及び炭酸塩が挙げられるが、これらに限定されない。
【0048】
用語「医薬学的に許容される誘導体」または「プロドラッグ」は、対象へ投与した際に直接または間接的に親化合物又は代謝物質を供給することができる、あるいはそれ自身が活性を示す、活性化合物の誘導体を指す。
【0049】
本明細書では、用語「治療」、「予防」もしくは「防止」、「軽減」は、最も広い意味内容とする。特に「治療」は、動物が完全に回復するまで治療することを必ずしも意味しない。したがって、「治療」は、特定の症状の兆候又は重症を軽減すること、あるいは特定の症状が発生する危険性を予防又は低下することを含む。
【0050】
用語「放射線治療」または「照射治療」は、癌細胞、腫瘍、または関連する組織および生物学的プロセスに影響を与える粒子および/またはエネルギー波による処置または治療の方法を広く含む。特に放射線は、X線、電子、ガンマ線またはプロトンなどの放射線治療に用いられる高エネルギー波もしくは粒子である。最も好ましい波または粒子はX線である。
【0051】
用語「化学治療剤」は、癌細胞、腫瘍、または関連する組織および生物学的プロセスに影響を与える全ての薬剤、化学物質、化合物、組成物、作用剤、薬物、重合体、ペプチド、蛋白質などを広く含む。
【0052】
式(I)のイソフラバノイド化合物は、好ましくは一般式(III)〜(IX)から選択され、より好ましくは一般式(IV)〜(IX)から選択される。
【化10】




【0053】
式中、R、R、R、R、R14、R15、W及びZは、先に定義したとおりであり、
より好ましくは、
、R、R14、R15、W及びZは、独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、C(O)R10、COOH、CO10、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、アリール、チオ、アルキルチオ、アミノ、アルキルアミノ、ジアルキルアミノ、ニトロ、又はハロであり、
は、水素、C(O)R11(ここでR11は、水素、アルキル、アリール、又はアミノ酸である)、又はCO12(ここでR12は、水素、アルキル、又はアリールである)であり、
【0054】
は、水素、ヒドロキシ、アルキル、アリール、COR11(ここでR11は、先に定義したとおりである)、又はCO12(ここでR12は、先に定義したとおりである)であり、
は、水素、C(O)R11(ここでR11は、先に定義したとおりである)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、ハロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、アリールアルキル、又はSi(R13)(ここでR13は、各々独立して水素、アルキル、又はアリールである)であり、
は、アルキル、ハロアルキル、アリールアルキル、又はC(O)R11(ここでR11は、先に定義したとおりである)であり、かつ
10は、水素、アルキル、アミノ、アリール、アミノ酸、アルキルアミノ、又はジアルキルアミノであり、
【0055】
より好ましくは、
及びR14は、独立してヒドロキシ、OR、OC(O)R10又はハロであり、
、R15、W及びZは、独立して水素、ヒドロキシ、OR、OC(O)R10、C(O)R10、COOH、CO10、アルキル、ハロアルキル、又はハロであり、
は、水素、C(O)R11(ここでR11は水素又はアルキルである)、又はCO12(ここでR12は水素又はアルキルである)であり、
は、水素又はヒドロキシであり、
は、水素、C(O)R11(ここでR11は水素又はアルキルである)、アルキル、ハロアルキル、アルケニル、アリール、ハロアリール、アルキルアリール、アルコキシアリール、アリールアルキル、又はSi(R13)(ここでR13は、各々独立して水素、アルキル又はアリールである)であり、
は、アルキル、アリールアルキル、又はC(O)R11(ここでR11は先に定義したとおりである)であり、かつ
10は、水素又はアルキルであり、
【0056】
そしてより好ましくは、
及びR14は、独立してヒドロキシ、メトキシ、ベンジルオキシ、アセチルオキシ、又はクロロであり、
、R15、W及びZは、独立して水素、ヒドロキシ、メトキシ、ベンジルオキシ、アセチルオキシ、メチル、トリフルオロメチル、又はクロロであり、
は、水素又はCO12(ここでR12は水素又はメチルである)であり、
は、水素であり、かつ
は、水素、メチル、エチル、トリフルオロメチル、フェニル、ハロフェニル、メチルフェニル、エチルフェニル、メトキシフェニル、又はフェニルメチルである。
【0057】
特に好ましくは、式(I)のイソフラボノイド化合物及びその医薬学的に許容される塩は、下記の中から選択される。
【化11】




【0058】
【化12】





【0059】
【化13】





【0060】
【化14】

【0061】
別の態様として、好ましいイソフラボノイド化合物は、イソフラべ-3-エンおよび一般式(VI)のイソフラバン化合物であり、下記化合物及びその薬学的に許容される塩のほかにも、特に上記化合物12〜21および30が挙げられる。
【化15】


【0062】
【化16】







【0063】
最も好ましい態様では、イソフラボノイド化合物は、化合物12(デヒドロエクオール)、32、39、45および48から選択される。従って本明細書、実施例および図面において、特にデヒドロエクオールについて説明するが、本発明は、必ずしも明細書の記載に限定されるものではない。
【0064】
該イソフラボノイド化合物群は、例えばゲニステインなどのイソフラボン、デヒドロエクオールなどのイソフラベンを含み、癌の予防と治療における化学治療剤の有望な新技術である。該化合物の薬理作用の基礎は正確には完全に解明されていないが、その効果は細胞分裂停止および細胞傷害である。非常に興味深いことに、該化合物群は、人間および動物の癌に対して広範に活性を示し、かつ癌細胞に対して高い選択性を示す。
【0065】
本発明者は、デヒドロエクオールなどの当該イソフラボノイド類に属する化学物質は、有効な抗癌剤であり、驚くことに、下記の2つの標準的化学毒性剤は細胞内で全く異なる抗癌効果を有するにも関わらず、シスプラチンやゲミシタビンなどの化学治療剤の効果と相乗して作用することを見出した。
【0066】
より驚くことに、本発明者は、該イソフラボン類又は誘導体は、放射線治療効果に対する癌細胞および腫瘍の感受性を増加又は回復することを見出した。
【0067】
治療様式には、一回の治療、又は数週間に及ぶ分割法と呼ばれる一連の治療を含む。この分割治療は、典型的には、例えば月曜日から金曜日まで一日一回行われ、正常細胞の回復のために例えば週末などに中休みを取る。実際の治療様式は、大きくは治療する癌の種類および使用する放射線治療の種類に依存する。当業者は、患者毎に、健康状態、疾患の進行度、癌の種類などの種々の要因を考慮して、最適な様式を決めることができる。
【0068】
好ましい態様では、該イソフラボンおよびその誘導体を、放射線治療の前に投与する。この前処置の効果は、放射線効果に対する感受性を癌細胞又は腫瘍に与えることである。このイソフラボノイド前処置は、標的細胞の放射線感受能力に影響を与えるために、放射線治療の充分前に、及び/又は放射線治療の途中に開始するとよい。最も広範な好ましい態様では、この前処置は、癌細胞または腫瘍が投与されたイソフラボノイドに充分な時間および期間接触するように行われる。この期間は、典型的には7日、または14日、または30日まででよい。別の好ましい態様では、イソフラボノイド処置は、放射線治療の6日前に、または5日、3日、2日、または1日前に行われる。
【0069】
別の状況では、放射線治療の当日にイソフラボノイドを投与することも有益であり、これにより、なお、アポトーシスの阻害因子を除去し、またはその分解速度を高めて細胞死に影響することができる。
【0070】
治療として分割治療を含む場合、イソフラボノイドの投与は、一回目の放射線治療の前、ある回の放射線治療の前のみ、または各回の放射線治療の前の所定時に行いうる。
【0071】
別の好ましい態様では、イソフラボノイドの投与により、放射線治療後に起きうる感受性の問題点を回復するか、又は少なくとも低減できることが判った。この点に関して、別の好ましい態様では、イソフラボノイドの投与は、放射線治療後に行われる。
【0072】
化学治療剤は、一般にDNA相互作用剤、代謝拮抗剤、チュブリン作用剤、ホルモン剤、その他の剤、例えばアスパラギナーゼ又はヒドロキシウレア、に分類される。化学治療剤の各グループは、活性の種類又は化合物の種類によりさらに分類される。本発明の式(I)のイソフラボノイド化合物又はその塩と組合わせて用いられる化学治療剤は、これらのいずれのグループから選択してもよいが、これらに限定されるものではない。化学治療剤の詳細およびその投与方法についてはDorr, et al., Cancer Chemotherapy Handbook, 2nd edition, pages 15-34, Appleton and Lang (Conneticut, 1994)を参照されたい(これを本文に引用する)。
【0073】
DNA相互作用剤には、アルキル化剤、例えばシスプラチン、シクロフォスファミド、アルトレタミン;DNA鎖切断剤、例えばブレオマイシン;介入性トポイソメラーゼII阻害剤、例えばダクチノマイシン、ドクソルビシン;非介入性トポイソメラーゼII阻害剤、例えばエトポシド、テニポシド;およびDNA副溝結合剤、例えばプリカミジン(plicamydin)が含まれる。
【0074】
アルキル化剤は、細胞内のDNA、RNA又は蛋白質分子、あるいはより小さなアミノ酸、グルタチオン又は類似の化学物質に共有結合して付加化合物を形成する。一般に、アルキル化剤は、核酸、蛋白質、アミノ酸、又はグルタチオン中のアミノ基、カルボキシル基、リン酸基、又はスルフヒドリル基などの細胞構成成分の求核原子と反応する。癌治療におけるアルキル化剤の機序および役割は充分に解明されていない。
【0075】
典型的なアルキル化剤には、ナイトロジェンマスタード、例えばクロラムブシル、シクロホスファミド、イホスファミド、メクロレタミン、メルファラン、ウラシルマスタード;アジリジン、例えばチオテパ;メタンスルフォン酸エステル、例えばブスルファン;ニトロソウレア、例えばカルムスチン、ロムスチン、ストレプトゾシン;白金錯体、例えばシスプラチン、カルボプラチン;生体内還元性アルキル化剤、例えばマイトマイシン、並びにプロカルバジン、ダカルバジン、およびアルトレタミンが含まれる。
【0076】
DNA鎖切断剤には、例えばブレオマイシンが含まれる。
【0077】
DNAトポイソメラーゼII阻害剤には、以下のインターカレータ、例えばアムサクリン、ダクチノマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン(アドリアマイシン)、イダルビシン、およびミトキサントロン;非インターカレータ、例えばエトポシドおよびテニポシドが含まれる。
【0078】
DNA副溝結合剤は、例えばプリカマイシンである。
【0079】
代謝拮抗剤は、核酸合成を、二つの主要な機序のいずれかを介して阻害する。ある種の薬剤は、DNA合成の直前の前駆体であるデオキシリボヌクレオシド三リン酸の合成を阻害し、よってDNA複製を阻害する。ある種の化合物は、プリンまたはピリミジンの類似体であり、ヌクレオチド同化経路に組み込まれる。続いて、これらの類似体は正常体の代わりにDNAまたはRNA内に組み込まれる。
【0080】
本発明に有用な代謝拮抗剤には、限定するものではないが、葉酸拮抗剤、例えばメトトレキセートおよびトリメトレキセート;ピリミジン拮抗剤、例えばフルオロウラシル、フルオロデオキシウリジン、CB3717、アザシチジン、シタラビンおよびフロクスウリジン;プリン拮抗剤、例えばメルカプトプリン、6-チオグアニン、フルダラビン、ペントスタチン;並びにリボヌクレオチドレダクターゼ阻害剤、例えばヒドロキシウレアが含まれる。
【0081】
チュブリン作用剤は、重合して細胞微小管を形成する蛋白質であるチュブリンに対して、その特定部位への結合を介して作用する。微小管は、必須な細胞構造単位である。この作用剤がチュブリンに結合すると、細胞は微小管を形成できない。チュブリン作用剤には、例えばビンクリスチン、ビンブラスチン(双方アルカロイドである)およびパクリタキセル(タキソール)が含まれる。
【0082】
ホルモン剤も癌および腫瘍の治療に有用である。これらは、ホルモン感受性の腫瘍に用いられ、通常は天然資源に由来する。ホルモン剤には、限定するものではないが、エストロゲン、抱合エストロゲン、エチニルエストラジオール、ジエチルスチルベストロール、クロロトリアニセンおよびイデンストロール(idenestrol);プロゲスチン、例えばカプロ
ン酸ヒドロキシプロゲステロン、メドロキシプロゲステロン、およびメゲストロール;並びにアンドロゲン、例えばテストステロン、プロピオン酸テストステロン、フルオキシメステロン、およびメチルテストステロンが含まれる。
【0083】
副腎皮質ステロイドは、天然のコルチゾールまたはヒドロコルチゾンに由来する。これらは、その抗炎症作用のため、またいくつかでは有糸分裂阻害およびDNA合成停止活性のために用いられる。このような化合物には、限定するものではないが、プレドニゾン、デキサメタゾン、メチルプレドニゾロン、およびプレドニゾロンが含まれる。
【0084】
黄体形成ホルモン放出ホルモン剤またはゴナドトロピン放出ホルモン拮抗剤は、主に前立腺癌の治療に用いられる。これらには、酢酸ロイプロリドおよび酢酸ゴセレリンが含まれる。これらは精巣内のステロイド生合成を抑制する。
【0085】
抗ホルモン剤には、例えば抗エストロゲン剤、例えばタモキシフェン;抗アンドロゲン剤、例えばフルタミド;並びに抗副腎剤(antiadrenal agents)、例えばミトタンおよびアミノグルテチミド(aminoglutethimide)が含まれる。
【0086】
別の薬剤としては下記のものがある。ヒドロキシウレアは、主にリボヌクレオチドレダクターゼ酵素の阻害を介して作用するものであり、アスパラギナーゼは、アスパラギンを非機能性アスパラギン酸に変換して腫瘍の蛋白質合成を阻害する酵素である。
【0087】
好ましい化学治療剤は、シスプラチン、カルボプラチン、タキソール(パクリタキセル)、フルオロウラシル、フロクスウリジン、シクロホスファミド、イホスファミド、ヘキサメチルメラミン、エストラムスチン、マイトマイシン、およびドセタキセルである。
【0088】
式(I)の化合物は化学治療活性も示し、この点に関してデヒドロエクオール(化合物12)並びに化合物32および39を特に例示することができる。
【0089】
本発明において好ましい二座および三座型白金配位子としては、当業界に周知なものが挙げられる。例えば適当な二座配位子としては、エチレン-1,2-ジアミンおよび1,10-フェナントロリン、そのほかの当業界に周知の配位子から選択されうる。
【0090】
本発明の化合物は、エストロゲン効果、アンドロゲン効果、血管拡張及び痙攣効果(vasodilatory and spasmodic effects)、炎症効果、並びに酸化効果に関係する、あるいはそれらに起因する疾病の治療に特に有用である。これらの効果は、国際特許出願WO98/08503及びWO03/086386にさらに記載されている。
【0091】
本発明の治療処置に必要とされる式(I)の化合物の量は、具体的な用途、使用される特定の化合物の性質、処置される症状、投与様式、及び患者の状態など、多数の要因に依存する。式(I)の化合物は、従来行われているような方法及び量で投与しうる。例えば、Goodman and Gilma, The Pharmacological Basis of Therapeutics, 1299 (7thedition, 1985)を参照されたい。具体的な投与量は、処置される症状、患者の状態、投与経路、及び上記に示された他の周知の要因に依存する。患者毎の一日の投与量は、一般的には0.1 mg〜10 g;典型的には0.5 mg〜1 g;好ましくは50 mg〜200 mgの範囲内であればよい。重要なことに、一般式(I)のイソフラバノイド化合物と抗癌剤との相乗効果により、比較的に毒性の高い薬剤、例えばシスプラチン、パクリタキセル及びカルボプラチンの投与量を有意に減らすことができる。
【0092】
本明細書に記載される臨床兆候の治療のための医薬組成物は、一般的には、本発明の化合物(便宜上以下「活性化合物」と呼ぶ)と、1又は複数の医薬学的又は獣医学的に許容
される、当該分野で周知の担体及び/又は賦形剤との混合により製造される。
【0093】
担体は、もちろん製剤中の他の如何なる成分とも適合するという意味で許容されるものでなければならず、かつ患者に有害であってはならない。担体又は賦形剤は、固体又は液体、あるいはその両方であってもよく、好ましくは、本化合物と共に、例えば錠剤などの投与単位として製剤化され、これは0.5〜59重量%又は100重量%までの活性化合物を含有してよい。1又は複数の活性化合物を本製剤に組み込むことができ、これを、1又は複数の副成分を含みうる構成成分を実質的に混合するという周知の調剤技術に従って調製できる。
【0094】
本製剤は、経口、直腸、眼、頬(例えば、舌下)、非経口(例えば、皮下、筋内、皮内及び静脈内)ならびに経皮投与に適した製剤を含む。しかし、具体的なケースにおける最適な経路は、治療される症状の性質及び重症度、ならびに使用される特定の活性化合物の性質に依存する。
【0095】
経口投与に適した製剤は、予め決められた量の活性化合物を含むカプセル、サッシェ(sachets)、ロゼンジ(lozenges)又は錠剤などの個別の単位;粉末又は顆粒;水性又は非水性液体中の溶液又は懸濁液;あるいは水中油型又は油中水型エマルションとして提供される。このような製剤は、活性化合物と適当な担体(1又は複数の副成分を含んでもよい)とを混合する工程を含む適当な調剤法に従って調製しうる。一般に、本製剤は、活性化合物と、液体担体又は細分した固体担体、あるいはその両方とを一様に充分に混合し、適宜、該混合物を投薬単位に成型して調製しうる。例えば、錠剤は、所望により1又は複数の副成分と共に活性化合物を含む粉末又は顆粒を圧縮・成型して調製しうる。圧縮した錠剤は、適当な機械で、所望によりバインダー、滑剤、不活性希釈剤、及び/又は界面活性剤/分散剤を混合した自由流体、例えば粉末又は顆粒を圧縮して調製しうる。成型された錠剤は、適当な機械で、不活性液体バインダーで湿らせた粉末状化合物を成型して調整しうる。
【0096】
頬内(舌下)投与に適した製剤として、香味付けされた基剤、通常はスクロース及びアカシア又はトラガカント中に活性化合物を含むロゼンジ、ならびにゼラチン及びグリセリン又はスクロース及びアカシア等の不活性基剤中に活性化合物を含むトローチ(pastilles)が挙げられる。
【0097】
非経口投与に適した本発明の組成物は、都合良くは、活性化合物の滅菌水調製物であり、この調製物は、好ましくは投与対象の血液と等張である。これらの調製物は、好ましくは静脈内に投与されるが、皮下、筋肉内、又は皮内注射によって投与してもよい。このような調製物は、都合良くは、活性化合物を水又はグリシン緩衝液と混合し、得られた溶液を滅菌し、そして血液と等張にすることにより調製しうる。本発明の注射用製剤は、一般に0.1〜60%(w/v)の活性化合物を含み、0.1 ml/分/kgの割合で、又は必要に応じて投与される。本発明の化合物の投与経路として非経口投与は好ましい。
【0098】
直腸投与に適した製剤は、好ましくは単位用量の坐剤として提供される。これらは、活性化合物を、1又は複数の従来の固体担体、例えばカカオバターと混合し、次いで得られた混合物を成型することにより調製されうる。
【0099】
皮膚への局所投与に適した製剤又は組成物は、好ましくは、軟膏、クリーム、ローション、ペースト、ゲル、スプレー、エアロゾル、又はオイルの形を取る。使用する担体として、ワセリン、ラノリン、ポリエチレングリコール、アルコール、及びそれらの2種以上の組合せが挙げられる。活性化合物は、一般に0.1%〜0.5%(w/w)、例えば0.5%〜2%(w/w)の濃度で提供される。この組成物の例として化粧用スキンクリームが挙げられる。
【0100】
経皮投与に適した製剤は、長時間患者の表皮と密着したままにできる個別のパッチとして提供されうる。このようなパッチは、所望により緩衝水溶液として、例えば0.1 M〜0.2
Mの濃度で活性化合物を適宜含む。
【0101】
経皮投与に適した製剤は、イオン導入法によって送達することもでき(例えばPharmaceutical Research 3 (6), 318 (1986)参照)、典型的には、活性化合物の所望の緩衝水溶液の形を取る。適切な製剤は、クエン酸塩又はビス/トリス緩衝液(pH 6)又はエタノール/水を含み、0.1 M〜0.2 Mの活性成分を含有する。
【0102】
活性化合物は、食料品に添加し、混合し、コーティングし、一体化し、又はその他の態様で添加して、食料品の形態で提供されうる。「食料品」とは、可能な限り最も広義の意味で使用され、乳製品を含む飲料などの液体製品、及びその他の食品、例えば健康スナックやデザートなどを含む。本発明の化合物を含む食製品は、標準的な
技法に従って容易に調製できる。
【0103】
本発明の治療方法、使用及び組成物は、ヒト又は動物、例えばコンパニオン・アニマル、家庭内の動物(例えばイヌやネコ)、家畜動物(例えばウシ、ヒツジ、ブタ及びヤギ)などの哺乳類、鳥類(例えばニワトリ、シチメンチョウ、アヒル)などに適用することができる。
【0104】
活性化合物、その医薬学的に許容される誘導体、プロドラッグまたは塩を、所望の活性を損なわない他の活性物質、又は所望の活性を補う物質、例えば抗生剤、抗真菌剤、抗炎症剤又は抗ウイルス剤と一緒に共投与することもできる。当該活性薬剤は、2つ以上のイソフラボン又はその誘導体を、組合わせて又は相乗的な混合物として、含んでもよい。また、活性化合物を、脂質低下剤、例えばプロブコールやニコチン酸;血小板凝集阻害剤、例えばアスピリン;抗血栓剤、例えばクマディン;カルシウムチャンネルブロッカー、例えばベラパミル、ジルチアゼム、ニフェジピン;アンギオテンシン変換酵素(ACE)阻害剤、例えばカプトプリル、エナラプリル;並びにβ―ブロッカー、例えばプロパノロール、テルブタロール、ラベタロールと共に投与することもできる。活性化合物を、非ステロイド性抗炎症剤、例えばイブプロフェン、インドメタシン、アスピリン、フェノプロフェン、メフェナム酸、フルフェナム酸、スリンダクと組合わせて投与することもできる。活性化合物を、コルチコステロイドと共に投与することもできる。
【0105】
このような共投与は同時でも逐次でもよい。同時投与は、化合物を同一の投与単位中に存在させ、又は、同時若しくは近時に投与される独立した別個の投与単位に存在させることにより実行しうる。逐次投与は、適宜任意の順番で行うことができ、典型的には、特に累積的又は相乗的な効果を欲する場合には、第二の、すなわち後の活性剤を投与する時に、第一の、すなわち初めの活性剤の生理学的効果が持続していることが要求される。
【0106】
本発明に使用される式(I)のイソフラボンは、既知の多くの起源に由来する。好ましくは、それらは合成により得られる。例えば、種々のイソフラボンの合成に適する方法を開示するChang et al. (1994)を参照されたい。式(I)のイソフラボンは、所望の化合物を天然に含んでいる植物から化学抽出することにより、あるいは抽出と半合成の方法により得ることもできる。
【0107】
国際特許出願WO98/08503及びWO00/49009(これらを引用して本文に組み込む)並びにそれらに引用された参考文献にも、本発明に使用されるイソフラバノイド化合物を調製するための一般的な合成方法が開示されている。
【0108】
3,4-ジアリールクロマンは、例えば米国特許3,340,276及び3,822,287に記載の方法など、既知の方法に従って調製される。特定の異性体の合成及び相互変換の方法は米国特許3,822,287及び4,447,622に開示されている。
【0109】
本発明者は、式(I)の化合物、特には式(VI)のイソフラベ-3-エン化合物は、既知の放射線治療と共に驚異的な相乗効果を発揮することを見出した。また、本発明者は、式(I)の化合物、特には式(VI)のイソフラベ-3-エン化合物は、化学治療剤と共に驚異的な相乗効果を発揮することを見出した。本発明のイソフラバノイド化合物は、既に耐性となった癌細胞株に対して、化学感受性を回復する、又は少なくとも改善することが見出された。また、これらの化合物は、放射線治療又は化学治療の作用から、細胞特性の差異により、非癌性もしくは正常な細胞もしくは組織体を保護することも可能である。
【0110】
特にデヒドロエクオール(化合物12)並びに化合物32及び39は、インターフェロン-ガンマ、Fasリガンド、TRAILリガンド、増殖受容体阻害剤(例えば、上皮成長因子受容体、血小板由来成長因子受容体、線維芽細胞増殖因子受容体、腫瘍壊死因子受容体、インスリン様成長因子受容体の阻害剤)と相乗的に相互作用することが見出された。これらの化合物は、XIAPに対して抑制効果を有し、その結果、アポトーシスを促進的に調節し、かつ細胞生存を抑制的に調節することにより、癌細胞を放射線感受性(又は化学感受性)にする活性を示すと考えられている。
【0111】
これらの結果を下記実施例においてさらに説明する。これらの結果から、放射線治療及び/又は化学治療とイソフラボノイド化合物との組合わせは、標準的化学治療剤のIC50を減少させ、よって癌細胞及び新生腫瘍の増殖の治療に有用であることが判る。本文に記載したとおり、イソフラバノイド化合物の投与、同時又は逐次投与、あるいは標準的治療法の前処置としての投与により、化学毒性剤及び放射線治療に対する癌細胞及び腫瘍の感受性を高めることができる。本発明を下記実施例によりさらに説明するが、それらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0112】
放射線治療を施した種々の癌細胞株に対して所定のイソフラボノイド化合物の効果を培養プレート上で評価した。細胞の生存性はCellTiter(登録商標)により決定した。アポトーシスはヘキスト33342色素を用いて評価した。
【0113】
その結果、デヒドロエクオール(化合物12)並びに化合物32及び39(2及び10μM)を用いて前処置(1日及び8時間)並びに逐次処置/後処置(−30分/+4時間)することにより、ヒト乳癌、前立腺癌、卵巣癌、膵臓癌及び子宮頸癌の癌細胞株は放射線耐性を得ることが示された。
【0114】
同様に、その他の化合物、化合物7及び8も、種々のヒト癌細胞株において、程度は異なるが同様の結果を示した。
【0115】
驚くことに、イソフラボンによる細胞治療は、癌細胞株に対する放射線増感剤として作用することが判った。
【0116】
これらの結果から、主な作用経路として、イソフラボノイド化合物はXIAPを阻害し、よって照射後に細胞の生存を大きく低下させ、実験モデルにおいてより強く腫瘍を制御することが示唆される。また、イソフラボノイド化合物は標準的な放射線耐性細胞に作用し、その放射線感受性を対照群よりも高めることが判る。
【0117】
これらの実施例より、式(I)のイソフラボノイド化合物は、放射線治療と組合わせて、
耐性癌細胞及び腫瘍の感受性を増強又は回復する治療剤、及び放射線耐性癌細胞に感受性を誘導する治療剤として有用であることが明白である。
【0118】
また、式(I)の化合物は、一般的な細胞増殖の抑制的調節のために、そのような臨床症状の治療、軽減、防御、予防及び/又は抑制のためにも有用である。
【0119】
当業者に明らかなように、本発明は、具体的に記載したもの以外にも変更及び修正されうる。本発明はまた、そのような変更及び修正をすべて含むものと考える。本発明はさらに、本明細書で参照又は指摘した全ての方法、技術要素、組成物及び化合物を、個別的又は総括的に含み、そしてそのような方法や技術要素の任意の組合わせを全て含む。本明細書中で先行技術を引用したが、これは、そのような先行技術が当該技術分野の一般常識であると認識するものでも暗示するものでもない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
放射線治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増強又は回復する方法であって、癌細胞又は腫瘍を、明細書記載の式(I)のイソフラボノイド化合物又はその医薬学的に許容される塩と接触させる方法。
【請求項2】
化学治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増強又は回復する方法であって、癌細胞又は腫瘍を、式(I)のイソフラボノイド化合物又はその医薬学的に許容される塩と接触させる方法。
【請求項3】
放射線治療及び/又は化学治療の効果から正常な細胞又は組織体を保護する方法であって、正常な細胞又は組織体を、式(I)のイソフラボノイド化合物又はその医薬学的に許容される塩と接触させる方法。
【請求項4】
治療上有効な量の式(I)の化合物又はその医薬学的に許容される塩を、放射線治療を受けている、又は受けようとしている対象に投与することを含んでなる複合治療。
【請求項5】
放射線治療の前に上記投与を行う、請求項4に記載の複合治療。
【請求項6】
放射線の前処置により該対象に放射線耐性が生じた後に上記投与を行う、請求項5に記載の複合治療。
【請求項7】
治療上有効な量の式(I)の化合物又はその医薬学的に許容される塩、及び化学治療剤を対象に投与することを含んでなる複合治療。
【請求項8】
化学治療の前に上記投与を行う、請求項6に記載の複合治療。
【請求項9】
化学治療の前処置により該対象に化学耐性が生じた後に上記投与を行う、請求項8に記載の複合治療。
【請求項10】
治療する症状が、悪性の癌、前悪性病変を含む初期段階の癌(例えば異形成、形成異常、上皮内新生)又は良性の癌である、請求項4〜9のいずれかに記載の複合治療。
【請求項11】
放射線治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増強又は回復するための医薬の製造のための式(I)の化合物又はその医薬学的に許容される塩の使用。
【請求項12】
化学治療に対する癌細胞又は腫瘍の感受性を増強又は回復するための医薬の製造のための式(I)の化合物又はその医薬学的に許容される塩の使用。

【公表番号】特表2007−525485(P2007−525485A)
【公表日】平成19年9月6日(2007.9.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−540083(P2006−540083)
【出願日】平成16年11月19日(2004.11.19)
【国際出願番号】PCT/AU2004/001619
【国際公開番号】WO2005/049008
【国際公開日】平成17年6月2日(2005.6.2)
【出願人】(500445789)ノボゲン リサーチ ピーティーワイ リミテッド (10)
【Fターム(参考)】