説明

複合窓枠の下部構造、及びそれを備える複合窓枠

【課題】同一の複合窓枠で複層ガラスにも単層ガラスにも使用可能な複合窓枠を提供する。
【解決手段】窓開口に固定した金属枠の屋内側を合成樹脂製の樹脂枠で覆って構成された枠内にパネルを保持する複合窓枠の下部構造において、前記樹脂枠の樹脂下枠よりも屋外側に、複層パネルを嵌合可能な見込方向の幅を有する嵌合溝を前記金属枠の下枠に形成し、この嵌合溝の屋内側には、前記嵌合溝に嵌合した単層パネルを固定する固定部材又は前記複層パネルを固定する固定部材を着脱可能とするとともに、前記各固定部材には、前記単層パネル又は複層パネルを屋外側に押圧固定する押圧部を突出形成し、前記単層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いを、前記複層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いよりも大きくした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、窓開口に固定した金属枠の屋内側を合成樹脂製の樹脂枠で覆って構成された枠内にパネルを保持する複合窓枠の下部構造、及びこの下部構造を備える複合窓枠に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、窓枠として、窓開口に固定した金属枠の屋内側を合成樹脂製の樹脂枠で覆って構成された枠内にパネルを保持する複合窓枠が存在する。こうした複合窓枠を使用すれば、金属枠よりも熱伝導率の低い樹脂枠が屋内側に設けられているため、断熱性が向上できるとともに、屋内側への結露を防止することができる。また、こうした複合窓枠を使用すれば、屋内側に樹脂が露出するため、金属枠特有の視覚的冷たさを排除し、温かみのある意匠の窓枠を提供することができる。
【0003】
なお、こうした複合窓枠においては、高い断熱性と結露防止効果を得るために、複層ガラスが用いられることが一般的であった(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2000−320250号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記したような複合窓枠の温かみのある意匠性は広く求められているため、断熱性能が求められない場合であっても複合窓枠を使用したい場合がある。しかしながら、上記したように、従来の複合窓枠では基本的に複層ガラスが用いられるため、断熱性能が求められない場合であっても複層ガラスを用いた複合窓枠を使用するしかなく、単層ガラスを使用した場合と比較して施工コストが高くなってしまうという問題があった。
【0006】
こうした問題の解決策としては、単層ガラス用の複合窓枠を提供することが考えられる。しかしながら、単層ガラス用の複合窓枠を提供することとした場合、多用される複層ガラス用の複合窓枠とは別に複合窓枠を製造しなければならず、製造コストが高くなってしまうという問題があった。
【0007】
そこで、本発明は、同一の複合窓枠で複層ガラスにも単層ガラスにも使用可能な複合窓枠を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、上記した課題を解決するためになされたものであり、以下を特徴とする。
【0009】
(請求項1)
請求項1に記載の発明は、以下の点を特徴とする。
【0010】
すなわち、請求項1に記載の複合窓枠の下部構造は、窓開口に固定した金属枠の屋内側を合成樹脂製の樹脂枠で覆って構成された枠内にパネルを保持する複合窓枠の下部構造であって、前記樹脂枠の樹脂下枠よりも屋外側に、複層パネルを嵌合可能な見込方向の幅を有する嵌合溝を前記金属枠の下枠に形成し、この嵌合溝の屋内側には、前記嵌合溝に嵌合した単層パネルを固定する固定部材又は前記複層パネルを固定する固定部材を着脱可能とするとともに、前記各固定部材には、前記単層パネル又は複層パネルを屋外側に押圧固定する押圧部を突出形成し、前記単層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いを、前記複層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いよりも大きくしたことを特徴とする。
【0011】
(請求項2)
請求項2に記載の発明は、上記した請求項1記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0012】
すなわち、前記固定部材及び前記樹脂下枠は、前記金属枠の下枠に嵌合固定されていることを特徴とする。
【0013】
(請求項3)
請求項3に記載の発明は、上記した請求項1又は2に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0014】
すなわち、前記樹脂下枠には、前記固定部材の屋内側の面に当接して支持する当接部が設けられていることを特徴とする。
【0015】
(請求項4)
請求項4に記載の発明は、上記した請求項3に記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0016】
すなわち、前記当接部は、前記樹脂下枠の上部に設けられるとともに、前記当接部の下方には前記固定部材の下端部が揺動可能な空隙部が設けられていることを特徴とする。
【0017】
(請求項5)
請求項5に記載の発明は、上記した請求項1〜4のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0018】
すなわち、前記固定部材の上面と、前記樹脂下枠の上面とが、略面一に形成されていることを特徴とする。
【0019】
(請求項6)
請求項6に記載の発明は、上記した請求項1〜5のいずれかに記載の発明の特徴点に加え、以下の点を特徴とする。
【0020】
すなわち、前記樹脂下枠の上面に排水用の凹部が設けられていることを特徴とする。
【0021】
(請求項7)
請求項7に記載の複合窓枠は、上記した請求項1〜6のいずれかに記載の下部構造を有し、複合窓枠の上枠及び両側の縦枠においても、前記固定部材と同じ形状の固定部材で前記パネルを支持したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
請求項1に記載の発明は上記の通りであり、前記樹脂枠の樹脂下枠よりも屋外側に、複層パネルを嵌合可能な大きさの嵌合溝を形成し、この嵌合溝の屋内側には、前記嵌合溝に嵌合した単層パネルを固定する固定部材又は前記複層パネルを固定する固定部材を着脱可能とするとともに、前記各固定部材には、前記単層パネル又は複層パネルを屋外側に押圧固定する押圧部を突出形成し、前記単層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いを、前記複層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いよりも大きく形成した。このため、固定部材を変更するだけで、金属枠及び樹脂枠を変更することなく、厚さの異なるパネル(単層パネル、複層パネル)を取り付けることができるから、厚さの異なるパネルごとに複合窓枠を設ける必要がなく、同一の複合窓枠で複層パネルにも単層パネルにも使用可能な複合窓枠を提供することができる。すなわち、部材を兼用することで製造コストを低減できるとともに、単層パネルを使用する場合は、意匠性の良い複合窓枠を低コストで施工できる。
【0023】
更には、固定部材を変更するだけで、施工時や施工後に単層パネルを使用するか複層パネルを使用するかを選択することができるため、例えば、当初は単層パネルを使用することとした場合でも、その後に断熱性能が要求されるようになった場合には、固定部材を変更して複層パネルを使用するように変更することもできる。
【0024】
また、請求項2に記載の発明は上記の通りであり、固定部材と樹脂下枠とが金属枠の下枠に嵌合固定されているため、これらが金属製の枠体にしっかりと固定されており、枠体の強度を保つことができる。
【0025】
また、請求項3に記載の発明は上記の通りであり、樹脂下枠には固定部材の屋内側の面に当接して支持する当接部が設けられているため、この当接部で固定部材の屋内側への転びを防止することができ、固定部材がパネルを確実に支持できるものとなっている。更には、金属枠が露出しないため、意匠性も良くすることができる。
【0026】
また、請求項4に記載の発明は上記の通りであり、当接部が樹脂下枠の上部に設けられるとともに、当接部の下方には固定部材の下端部が揺動可能な空隙部が設けられているため、固定部材を揺動させて取り外ししやすくなっている。このため、固定部材を容易に交換することができ、使用するパネルの種類(単層パネル、複層パネル)の変更が容易なものとなっている。
【0027】
また、請求項5に記載の発明は上記の通りであり、固定部材の上面と樹脂下枠の上面とが略面一に形成されているため、窓枠下部において高さ方向に出っ張りがなく、採光に有利であるとともに、意匠性の良い窓枠を提供できる。
【0028】
また、請求項6に記載の発明は上記の通りであり、樹脂下枠の上面に排水用の凹部が設けられているため、結露等によりガラスに生じた水滴などを排水できる。
【0029】
また、請求項7に記載の発明は上記の通りであり、複合窓枠の上枠及び両側の縦枠においても、前記固定部材と同じ形状の固定部材でパネルを支持したため、部材を共通化することができ、製造コストを低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明の実施の形態であって、複層ガラス使用時における複合窓枠の縦断面図である。
【図2】本発明の実施の形態であって、図1の複合窓枠の下部構造の部分拡大図である。
【図3】本発明の実施の形態であって、複層ガラス使用時における複合窓枠の横断面図である。
【図4】本発明の実施の形態であって、単層ガラス使用時における複合窓枠の縦断面図である。
【図5】本発明の実施の形態であって、図4の複合窓枠の下部構造の部分拡大図である。
【図6】本発明の実施の形態であって、単層ガラス使用時における複合窓枠の横断面図である。
【図7】本発明の実施の形態であって、固定部材を取り外す様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら説明する。
【0032】
(複合窓枠の概要)
本実施例に係る複合窓枠は、図1〜6に示すように、建物外壁に形成された窓開口に納められる複合窓枠であり、方形に枠組みされた窓枠内にパネルを保持した嵌め殺しの窓である。窓枠を構成する各枠材は、複合型の枠材であり、ベースとなる金属枠10とその屋内側露出部分を覆う樹脂枠20とから構成されている。この金属枠10は、金属上枠16、金属下枠11及び左右の金属縦枠17で構成され、隣接する枠を相互にねじで締結して構成されている。また樹脂枠20は、樹脂上枠29、樹脂下枠21及び左右の樹脂縦枠30とで構成されており、樹脂上枠29は金属上枠16に、樹脂下枠21は金属下枠11に、樹脂縦枠30は金属縦枠17にそれぞれ取付けられている。
【0033】
金属枠10はアルミの押し出し型材にて成型され、また樹脂枠20及び後述する固定部材40a,40bは、合成樹脂から押し出し成型される。
【0034】
本実施形態に係る複合窓枠は、このように樹脂枠20にて金属枠10の屋内側露出部分を覆うことにより、金属による冷たい印象を隠すとともに、熱伝導率の低い樹脂によって断熱効果を向上させている。
【0035】
本実施例においては、パネルとしてガラスを使用することとし、すなわち、単層パネルとして単層ガラス31aを、複層パネルとして複層ガラス31bを用いることとして説明する。なお、本発明の実施形態としては、ガラスを使用する場合に限るものではなく、パネルとしてガラス以外を使用することとしても良い。
【0036】
そして、本実施例に係る複合窓枠は、図1に示すように、樹脂下枠21よりも屋外側において、金属下枠11に嵌合溝18が形成され、この嵌合溝18は、複層ガラス31bを嵌合可能な見込方向の幅を有するように形成されている。そして、この嵌合溝18の屋内側には、嵌合溝18に嵌合した単層ガラス31aを固定する単層ガラス用固定部材40a又は複層ガラス31bを固定する複層ガラス用固定部材40bが金属下枠11に着脱可能となっている。すなわち、後述するように、単層ガラス用固定部材40aと複層ガラス用固定部材40bとのうちから選択した任意の固定部材を使用可能に形成されていることにより、固定部材を変更するだけで、金属枠10及び樹脂枠20を変更することなく、厚さの異なるガラスを支持可能に形成されている。
【0037】
(複層ガラス31b使用時)
以下、まずは複層ガラス31bを使用した場合について、図1〜3を参照しつつ説明する。
【0038】
複層ガラス31b使用時においては、図1に示すように、嵌合溝18に複層ガラス31bが嵌合されて保持されている。この複層ガラス用固定部材40bは、屋内側からは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられた複層ガラス用固定部材40bによって緩衝部材50を介して支持されており、屋外側からは、金属下枠11に設けられた屋外当接部19によって緩衝部材50を介して支持されている。
【0039】
図2は、図1の複合窓枠の下部構造の部分拡大図である。この図2が示すように、金属下枠11の屋内側には、窓側に立設する窓側突出縁12と、屋内側に立設する屋内側突出縁13と、この窓側突出縁12と屋内側突出縁13との間に立設する中央立設部14と、が上方に向けて立設しており、これらが立設することにより、嵌合溝18よりも屋内側に2つの溝が形成されている。そして、窓側突出縁12と中央立設部14とで形成された溝には、複層ガラス用固定部材40bが嵌め込まれ、中央立設部14と屋内側突出縁13とで形成された溝には、樹脂下枠21が嵌め込まれている。
【0040】
(樹脂下枠21)
樹脂下枠21は、図2に示すように、上面を露出させて金属下枠11に嵌合固定されるものである。詳しくは、長手方向全長に渡って、屋外側に第1脚部22が形成されるとともに、屋内側に第2脚部23が形成されており、この2つの脚部22、23が、金属下枠11の中央立設部14と屋内側突出縁13との間に嵌め込まれることにより、金属下枠11に嵌合固定されている。
【0041】
この樹脂下枠21の上面延長線上の屋外側の端部は、屋外側へと突出して当接部24を形成している。この当接部24は、後述する複層ガラス用固定部材40b(もしくは単層ガラス用固定部材40a)の屋内側壁面に当接して、この複層ガラス用固定部材40b(もしくは単層ガラス用固定部材40a)を支持するためのものである。
【0042】
また、樹脂下枠21の上面には、図3に示すように、結露等によりガラスに生じた水滴などを排水するための凹部26が長手方向両側に2箇所設けられている。図2及び図3に示すように、この凹部26の中央には排水孔27が設けられ、この排水孔27の周囲を覆うように排水孔カバー28が設けられている。これにより、排水用の凹部26に集められた水滴が排水孔27を通って樹脂下枠21の下に排水され、更に外部へと排水されるようになっている。詳しくは、図示しない排水用の穴が、樹脂下枠21においては排水孔27の下の位置に設けられるとともに、金属下枠11においては空隙部25の下の位置に設けられており、この穴を通って外部に排水されるようになっている。
【0043】
(複層ガラス用固定部材40b)
複層ガラス用固定部材40bは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられて、複層ガラス31bを支持するためのものである。すなわち、図2に示すように、複層ガラス用固定部材40bは、金属下枠11の窓側突出縁12の屋内側に沿うように固定される本体部41と、この本体部41の上部において複層ガラス31b側に所定の突出度合で突出した押圧部42と、本体部41の下方に設けられた脚部44と、を備えている。
【0044】
この複層ガラス用固定部材40bは、図2に示すように、前記樹脂下枠21の上面及び前記金属下枠11の屋外当接部19の上面と略面一となるように設けられた上面を露出させて、金属下枠11に嵌合固定されるものである。詳しくは、上部においては、押圧部42の基部下方に設けられた係合溝43に窓側突出縁12の上端が係合し、下方においては、脚部44が金属下枠11の窓側突出縁12と中央立設部14との間に嵌め込まれるようになっており、これにより、複層ガラス用固定部材40bが固定されている。
【0045】
また、押圧部42は、図2に示すように、複層ガラス31b側に略水平に突出した部分であり、この突出の先端側には図2に示すように緩衝部材50が設けられており、この緩衝部材50を介して複層ガラス31bを支持している。この緩衝部材50を取り付ける押圧部42の先端は、図2に示すように、先端側が下段となるように段差が設けられており、この段差部分に緩衝部材50を取り付けるようになっている。このように、緩衝部材50を取り付ける部分が低くなっているため、緩衝部材50を取り付けた場合でも、この緩衝部材50の上面を含め、複層ガラス用固定部材40bの上面、前記樹脂下枠21の上面、及び、前記金属下枠11の屋外当接部19の上面が、すべて略面一となるように形成されている。
【0046】
なお、この複層ガラス用固定部材40bは、図1及び図3に示すように、複合窓枠の上枠及び両側の縦枠においても同じ断面形状のものが使用されている。すなわち、金属上枠16及び両側の金属縦枠17にも、それぞれ複層ガラス用固定部材40bが嵌合固定されており、これらの複層ガラス用固定部材40bも、押圧部42の先端側に設けられた緩衝部材50を介して複層ガラス31bを支持するようになっている。
【0047】
(単層ガラス31a使用時)
次に、単層ガラス31aを使用した場合について、図4〜6を参照しつつ説明する。
【0048】
単層ガラス31a使用時においては、図4に示すように、嵌合溝18に単層ガラス31aが嵌合されて保持されている。この単層ガラス用固定部材40aは、屋内側からは、樹脂下枠21と複層ガラス31bとの間に設けられた単層ガラス用固定部材40aによって緩衝部材50を介して支持されており、屋外側からは、金属下枠11によって緩衝部材50を介して支持されている。この緩衝部材50を取り付ける押圧部42の先端は、図5に示すように、先端側が下段となるように段差が設けられており、この段差部分に緩衝部材50を取り付けるようになっている。このように、緩衝部材50を取り付ける部分が低くなっているため、緩衝部材50を取り付けた場合でも、この緩衝部材50の上面を含め、単層ガラス用固定部材40aの上面、前記樹脂下枠21の上面、及び、前記金属下枠11の屋外当接部19の上面が、すべて略面一となるように形成されている。
【0049】
このように、単層ガラス31a使用時においても、複層ガラス31b使用時と同様に、固定部材によりパネルを支持しており、また、金属枠10及び樹脂枠20も同じものを使用している。一方、複層ガラス31b使用時とは異なり、窓枠の内部に保持される単層ガラス31aを単層ガラス用固定部材40aで支持している。すなわち、本実施形態に係る複合窓枠においては、固定部材40a、40bを変更するだけで、金属枠10及び樹脂枠20を変更することなく、単層ガラス31aにも複層ガラス31bにも対応できるようになっている。
【0050】
ここで、単層ガラス用固定部材40aと複層ガラス用固定部材40bとの違いは、押圧部42の突出度合である。すなわち、図2と図5とを比較しても明らかなように、単層ガラス用固定部材40aは、複層ガラス用固定部材40bと比較して押圧部42の突出度合が大きく形成されている。これにより、単層ガラス31aが使用されることにより発生する厚さ方向の間隙を埋めた上で、単層ガラス31aを支持できるように形成されている。すなわち、この単層ガラス用固定部材40aの押圧部42も、図5に示すように、単層ガラス31a側に略水平に突出しており、この突出の先端側に設けられた緩衝部材50を介して単層ガラス31aを支持している。
【0051】
なお、この単層ガラス用固定部材40aは、図4及び図6に示すように、複合窓枠の上枠及び両側の縦枠においても同様の断面形状のものが使用されている。すなわち、金属上枠16及び両側の金属縦枠17にも、それぞれ単層ガラス用固定部材40aが嵌合固定されており、これらの単層ガラス用固定部材40aも、押圧部42の先端側に設けられた緩衝部材50を介して単層ガラス31aを支持するようになっている。
【0052】
また、この単層ガラス用固定部材40aの押圧部42は、図5に示すように複層ガラス用固定部材40bの押圧部42と比較して肉厚となっている。これにより、単層ガラス用固定部材40aの押圧部42は、複層ガラス用固定部材40bの押圧部42と比較して突出度合いが大きいために負荷が大きいにもかかわらず、強度が保てるように形成されている。また、この単層ガラス用固定部材40aの押圧部42は、内部が中空となっており、強度を保ちつつも低コストで製造できるものとなっている。
【0053】
(使用ガラスの変更方法)
次に、使用ガラスの変更方法について説明する。ここでは仮に、複層ガラス31bから単層ガラス31aに変更する手順について説明する。
【0054】
使用ガラスを変更する場合には、まず、枠組み四方の押圧部42の先端側に設けられた緩衝部材50を取り外す。
【0055】
次に、枠組み四方の複層ガラス用固定部材40bを取り外す。このとき、図7に示すように、金属下枠11には、複層ガラス用固定部材40bの下端部が揺動可能な空隙部25として使用可能な溝が設けられており、この空隙部25は、複層ガラス用固定部材40bの当接部24の下方に設けられている。すなわち、複層ガラス用固定部材40bは、金属下枠11に嵌合固定されているときには、図2に示すように、脚部44が、金属下枠11の中央立設部14から水平方向に突出する突出片15に係止され、揺動できないようになっているが、図7(a)に示すように、上方に持ち上げることにより、この突出片15による係止が解除され、図7(b)に示すように、空隙部25内を前後方向に揺動可能となっている。そして、複層ガラス用固定部材40bを揺動させて斜めにすることにより、金属下枠11から取り外すことができるようになっている。
【0056】
そして、複層ガラス用固定部材40bを取り外した後、複層ガラス31bを単層ガラス31aに交換する。このとき、図5に示すように、単層ガラス31aはセッティングブロック51上に載置する。そして、単層ガラス用固定部材40aを金属下枠11に嵌合固定し、単層ガラス用固定部材40a先端の緩衝部材50を単層ガラス31aに当接させる。これにより、単層ガラス31aを屋外側の緩衝部材50側に押し付けて狭持する。
【0057】
以上により、複層ガラス31bから単層ガラス31aに変更することができる。なお、上記した手順は、複層ガラス31bから単層ガラス31aに変更する場合に限らず、単層ガラス31aから複層ガラス31bに変更する場合でも、同様である。
【0058】
このように、本実施形態に係る複合窓枠は、固定部材40a、40bを変更するだけで、単層ガラス31aにも複層ガラス31bにも対応できる。例えば、当初は単層ガラス31aを使用することとした場合でも、その後に断熱性能が要求されるようになった場合には、固定部材を単層ガラス用固定部材40aから複層ガラス用固定部材40bに変更して、複層ガラス31bを使用するように変更することもできる。
【0059】
しかも、固定部材40a、40bの脚部44が揺動可能な空隙部25が設けられているため、固定部材40a、40bを揺動させて取り外ししやすくなっており、上記したような固定部材40a、40b及びパネル31a、31bの変更が容易な構造となっている。
【0060】
なお、図2及び図5に示すように、固定部材40a、40bは、樹脂下枠21と間隔を空けて配置されており、このように間隔を空けて配置されていることにより、固定部材40a、40bを交換する際に固定部材40a、40bを上下に移動するための空間が形成されている。しかも、このように空間が形成されていることにより、固定部材40a、40bと樹脂下枠21との間に空気層ができるため、断熱性能を向上させることができるようにもなっている。
【0061】
ところで、上記した説明においては、最初に緩衝部材50を取り外すこととしたが、これに限らない。例えば、最初に樹脂下枠21を取り外すこととし、この後に緩衝部材50を取り外すこととしても良い。
【0062】
(まとめ)
上記したように、本実施形態に係る複合窓枠は、単層ガラス用固定部材41aと複層ガラス用固定部材41bとのうちから選択した任意の固定部材を使用可能であり、単層ガラス用固定部材41aは、複層ガラス用固定部材41bと比較して押圧部42の突出度合を大きく形成している。このため、固定部材を変更するだけで、金属枠10及び樹脂枠20を変更することなく、単層ガラス31aであっても複層ガラス31bであっても支持可能となっている。よって、部材を兼用でき、製造コストを低減できるとともに、断熱性能が求められない場合には単層ガラス31aを使用することで意匠性の良い複合窓枠を低コストで施工できる。
【0063】
また、固定部材31a、31bと樹脂下枠21とが金属下枠11に嵌合固定されているため、しっかりと固定されており、枠体の強度を保つことができる。しかも、樹脂下枠21には固定部材31a、31bを支持する当接部24が設けられているため、この当接部24で固定部材31a、31bの転びを防止することができるようになっている。すなわち、図2及び図5に示すように、固定部材31a、31bは金属下枠11に嵌合固定されているのみならず、樹脂下枠21の当接部24でも支持されているため、パネル31a、31bを確実に支持できるものとなっている。更には、図2及び図5に示すように、金属下枠11を樹脂下枠21と固定部材31a、31bとで覆うことになるため、金属枠10が露出せず、意匠性が良い窓枠となっている。
【0064】
また、固定部材31a、31bの上面が、樹脂下枠21の上面及び金属下枠11の屋外当接部19の上面と略面一に形成されているため、窓枠下部において高さ方向に出っ張りがないようになっており、採光に有利であるとともに、意匠性の良い窓枠となっている。
【0065】
また、樹脂下枠21の上面に排水用の凹部26が設けられているため、結露等によりガラスに生じた水滴などを排水することができる。
【0066】
また、四方の窓枠で同じ形状の固定部材40a、40bを使用することとしたため、部材を共通化することができ、製造コストを低減することができるようになっている。
【0067】
また、本実施形態に係る固定部材40a,40bは合成樹脂製であるため、押圧部42がパネル31a、31bを弾性的に押圧して固定することができるようになっており、安全かつ強固にパネル31a、31bを固定できるようになっている。
【0068】
なお、本実施形態においては、固定部材として単層ガラス用固定部材40aと複層ガラス用固定部材40bとの2つを使用可能としたが、これに限らない。すなわち、これ以外の固定部材を設けてもよく、各固定部材における押圧部42の突出度合いのバリエーションを増やせば、本実施形態以外の厚みのパネルであっても支持可能とすることができる。
【0069】
また、本実施形態においては、固定部材として単層ガラス用固定部材40aと複層ガラス用固定部材40bとを別に設けることとしたが、これに限らない。すなわち、単層ガラス用固定部材40aの押圧部42の一部を切り落としたりすることで、単層ガラス用固定部材40aを複層ガラス用固定部材40bとしても使用できるように形成しても良い。例えば、単層ガラス用固定部材40aの押圧部42の中途部分に切り取り溝を設け、この切り取り溝で押圧部42の一部を切り離すことにより、押圧部42の突出度合いを小さくできるようにし、単層ガラス用固定部材40aを複層ガラス用固定部材40bとして使用できるように形成しても良い。なお、この場合においても、切り取り溝を2以上設けることにより、押圧部42の突出度合いのバリエーションを増やすこととしても良い。
【0070】
また、本実施形態においては、固定部材40a,40bが緩衝部材50を介してパネルを支持することとしたが、これに限らない。すなわち、本実施例に係る固定部材40a,40bに、緩衝部材50を一体的に形成したものを使用することとしても良い。この場合、パネル体と接する部分(緩衝部材50に相当する部分)を軟質材料で形成し、金属下枠11に嵌合する部分(本実施例に係る固定部材40a,40bに相当する部分)を硬質材料で形成することとすれば、パネルを安全かつ強固に支持することができる。
【符号の説明】
【0071】
10 金属枠
11 金属下枠
12 窓側突出縁
13 屋内側突出縁
14 中央立設部
15 突出片
16 金属上枠
17 金属縦枠
18 嵌合溝
19 屋外当接部
20 樹脂枠
21 樹脂下枠
22 第1脚部
23 第2脚部
24 当接部
25 空隙部
26 凹部
27 排水孔
28 排水孔カバー
29 樹脂上枠
30 樹脂縦枠
31a 単層ガラス(単層パネル)
31b 複層ガラス(複層パネル)
40a 単層ガラス用固定部材
40b 複層ガラス用固定部材
41 本体部
42 押圧部
43 係合溝
44 脚部
50 緩衝部材
51 セッティングブロック

【特許請求の範囲】
【請求項1】
窓開口に固定した金属枠の屋内側を合成樹脂製の樹脂枠で覆って構成された枠内にパネルを保持する複合窓枠の下部構造であって、
前記樹脂枠の樹脂下枠よりも屋外側に、複層パネルを嵌合可能な見込方向の幅を有する嵌合溝を前記金属枠の下枠に形成し、この嵌合溝の屋内側には、前記嵌合溝に嵌合した単層パネルを固定する固定部材又は前記複層パネルを固定する固定部材を着脱可能とするとともに、
前記各固定部材には、前記単層パネル又は複層パネルを屋外側に押圧固定する押圧部を突出形成し、前記単層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いを、前記複層パネルを固定する固定部材の押圧部の突出度合いよりも大きくしたことを特徴とする、複合窓枠の下部構造。
【請求項2】
前記固定部材及び前記樹脂下枠は、前記金属枠の下枠に嵌合固定されていることを特徴とする、請求項1記載の複合窓枠の下部構造。
【請求項3】
前記樹脂下枠には、前記固定部材の屋内側の面に当接して支持する当接部が設けられていることを特徴とする、請求項1又は2記載の複合窓枠の下部構造。
【請求項4】
前記当接部は、前記樹脂下枠の上部に設けられるとともに、前記当接部の下方には前記固定部材の下端部が揺動可能な空隙部が設けられていることを特徴とする、請求項3に記載の複合窓枠の下部構造。
【請求項5】
前記固定部材の上面と、前記樹脂下枠の上面とが、略面一に形成されていることを特徴とする、請求項1〜4のいずれかに記載の複合窓枠の下部構造。
【請求項6】
前記樹脂下枠の上面に排水用の凹部が設けられていることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の複合窓枠の下部構造。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれかに記載の下部構造を有し、複合窓枠の上枠及び両側の縦枠においても、前記固定部材と同じ形状の固定部材で前記パネルを支持したことを特徴とする、複合窓枠。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2011−214312(P2011−214312A)
【公開日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−83528(P2010−83528)
【出願日】平成22年3月31日(2010.3.31)
【出願人】(302045705)株式会社LIXIL (949)
【Fターム(参考)】