説明

複合組成物及び複合組成物を用いた成形品

【課題】優れた耐熱性と実用上充分な保存安定性を有し、かつ自然環境下において生分解する複合組成物を提供する。
【解決手段】少なくとも一の種類の生分解性を有する有機高分子化合物と、炭素繊維と、生分解性を有する有機高分子化合物の加水分解抑制剤とを含有する複合組成物、及びこれを用いた成形品を作製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自然環境下において生分解可能で、かつ実用上充分な耐熱性と使用耐久性とを兼ね備えた複合組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、多種多様の合成樹脂材料が開発、提供されており、各種産業分野における使用量は年々増加してきている。そしてその結果、合成樹脂の廃棄物の量も増大化する傾向にあるが、これが廃棄されたとき、そのまま焼却処理すると、有害ガスが発生したり、大きな燃焼熱により焼却炉の損傷を起こしたりすることがあり、環境への負荷が大きな課題となっている。
【0003】
従来において、廃棄された樹脂を処理する方法としては、例えば熱分解や化学分解等の処置を施して廃棄樹脂を低分子化した後に焼却したり、埋め立てたりする方法が知られている。
しかし、焼却処理は二酸化炭素の排出を伴うために、地球温暖化の原因となる。
また、樹脂中に硫黄、窒素、ハロゲン等が含有されていると、焼却処理により有害ガスが排出され、大気汚染を引き起こす原因となる。
一方、樹脂を埋め立てると、現在汎用されている殆どの樹脂は化学的に極めて安定であるため長期間分解されずに残存し、土壌汚染の原因になる。
【0004】
上記のような環境に及ぼす影響の問題に対し、近年においては、各種生分解性樹脂が開発され、実用化されつつある(例えば、特許文献1参照。)。
生分解性樹脂とは、微生物等により生化学的に二酸化炭素及び水等に分解される性質を有するものであり、自然環境へ廃棄された場合においても容易に分解して低分子量化し、最終的に無害な化合物に変化するものである。そのため、廃棄に伴う地球環境に対する悪影響を低減化させることができるという特長を有している。このような理由から、生分解性樹脂は、特に、日用雑貨品、衛生用品、遊戯用品等の使い捨て製品に実用化が進められている。
【0005】
上述したように生分解性樹脂は、自然環境保全という観点においては、優れた効果を有していると言えるが、一方において、実用的観点からは未だ解決すべき多くの課題を有している。
例えば、工業用・土木用・漁業資材、機械部品、医療用部材等においては、材料の特性として優れた耐熱性を有することが要求されるが、従来公知の生分解性樹脂は、材料そのものとしては、耐熱性が比較的低いため、かかる観点において改善が要求されてきた。
【0006】
従来においては、例えばポリ乳酸のような生分解する性質を有する樹脂中に炭素繊維を含有させたり、あるいは樹脂の化学的な構造についての検討を行ったりすることによって、引っ張り強度等の機械物性を向上させるという技術に関する提案がなされていた(例えば、特許文献2、3参照。)。
【0007】
【特許文献1】特開2003−192925号公報
【特許文献2】特開2004−231910号公報
【特許文献3】特開2003−306599号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、今後一層技術が高度化し、精密化が図られる電気製品や自動車内装材等の各種成形品に生分解性樹脂を利用することを考えれば、実用的に機能し得るためには、耐熱性の向上を図ること、充分な剛性を図ること、更には生分解性を有しつつ実用上の使用に耐え得る保存安定性(使用耐久性)を有することが要求されるようになった。
【0009】
例えば駆動源からの発熱や精密なアクチュエータの局所的な発熱があった場合においても熱変形しないことが要求されるが、これらを搭載した電機機器筐体や自動車内装部品等として生分解性樹脂の一例であるポリ乳酸を適用した場合、ポリ乳酸のガラス転移温度(58℃)を超える温度域においては、貯蔵弾性率が大幅に低下してしまうという問題があるため、これを改善すべく耐熱性の向上を図ることが必要である。
【0010】
また、例えば小形のオーディオ商品では、実用上の使用性を考慮すれば、30℃、相対湿度80%の条件下で、少なくとも5〜7年は強度等の物性が維持されることが必要であると言えるが、上述したような従来提案されている各種技術においては、未だ充分な保存特性が実現できておらず、今後においては、この課題を解決するための耐久性(恒温恒湿環境下における耐久性)の向上を図ることが必要である。
【0011】
そこで本発明においては、優れた生分解性を有し、廃棄時の自然環境への影響が極めて少なく、かつ実用上充分な耐熱性と優れた機械的強度を有し、電子機器や自動車内装材等に用いた場合においても、充分な耐久性すなわち保存特性を有する複合組成物を提供することとした。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明においては、少なくとも一の種類の生分解性を有する有機高分子化合物と、炭素繊維と、前記生分解性を有する有機高分子化合物の加水分解抑制剤とを含有する複合組成物及びこれを用いて作製した成形品を提供する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、生分解性樹脂に炭素繊維を加えたことにより、耐熱性の向上が図られ、樹脂のガラス転移温度よりも高い温度領域においても、実用上充分な機械的強度を保つことができるようになった。また、加水分解抑制剤を加えたことにより、保存耐久性の向上が図られた。
本発明の複合組成物は、自然環境下において最終的に無害な物質に生分解され、環境への影響を効果的に低減化でき、また、例えば駆動源や電源等の熱源をもつ機器等の筐体として利用した場合においても、実用上充分な機械的強度、耐熱性、及び使用耐久性(保存特性)を発揮できた。
すなわち本発明の複合組成物は、生分解性樹脂、炭素繊維、加水分解抑制剤の三元系を有するものとしたため、生分解性、耐熱性、機械的強度、及び保存耐久性のいずれにおいても実用上満足できる特性を兼ね備えたものとなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明の具体的な実施の形態について説明するが、本発明は以下の例に限定されるものではない。
本発明の複合組成物は、少なくとも一の種類の生分解性を有する有機高分子化合物と、 炭素繊維と、加水分解抑制剤とを含有しているものである。
【0015】
先ず、生分解性を有する有機高分子化合物について説明する。
生分解性を有する有機高分子化合物(以下、「生分解性高分子化合物」という)は、使用後は自然界において微生物が関与して低分子化合物、最終的に水と二酸化炭素に分解する化合物(生分解性プラスチック研究会、ISO/TC−207/SC3)であるものとする。
生分解性高分子化合物としては、生分解性樹脂が好ましく、具体的には、生分解性を有する、多糖類、ペプチド、脂肪族ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリアミド、若しくはポリアルキレングリコール等のいずれか、またはこれらの少なくともいずれかの一を含む共重合体等が挙げられる。
【0016】
特に、脂肪族ポリエステルは、混合性や量産性に優れているため、実用的の好適な材料である。
脂肪族ポリエステルとしては、ポリ−L−乳酸(PLLA)、L−乳酸とD−乳酸とのランダム共重合体等のポリ乳酸、またはそれらの誘導体がより好適である。ポリ乳酸は、植物原料よりなるものであるため、環境保全の観点から特に好ましい材料であり、強度が高く、低価格であるため、コスト低減化の観点からも好適である。
一般的なポリ乳酸は、融点が160〜170℃程度、ガラス転移温度が58℃程度の生分解性に優れた結晶性ポリマーであるが、後述するように本発明によれば、この温度よりも耐熱性を向上させ、耐久消費材として求められる保存性も併せて確保することができる。
これらの他、例えばポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリリンゴ酸、ポリグリコール酸、ポリコハク酸エステル、ポリシュウ酸エステル、ポリジグリコール酸ブチレン、ポリジオキサノン、微生物合成ポリエステル等も適用でき、微生物合成ポリエステルとしては、例えば、3−ヒドロキシブチレート(3HB)、3−ヒドロキシバリレート(3HV)、またはその共重合体等が挙げられる。
【0017】
脂肪族ポリエステルの分子量(数平均分子量)は、30000〜200000程度が好適である。
分子量が30000未満であると、最終的に得られる複合組成物の強度が不充分となり、一方、200000を超えると、成形性や加工性が劣化してしまうためである。
【0018】
上記多糖類としては、例えばセルロース、デンプン、キチン、キトサン、デキストラン若しくはこれらの誘導体、またはこれらの少なくとも一を含む共重合体が挙げられる。
上記ペプチドとしては、例えば、コラーゲン、カゼイン、フィブリン、ゼラチン等が挙げられる。
上記ポリアミドとしては、例えば、ナイロン4、ナイロン2/ナイロン6共重合体等が挙げられる。
【0019】
また多糖類を適用する場合には、熱可塑性を付与するために、種々の可塑剤を添加してもよい。
さらに、低分子量では生分解性があるが、高分子量では生分解性の低い有機高分子化合物についても、生分解性高分子化合物とのグラフト共重合等により生分解性が得られるようになるものであれば、適用することができる。例えば、ポリエチレン、ポリアクリル酸誘導体、ポリプロピレン、ポリウレタン等が挙げられる。
また、これらの樹脂の分子量や末端基については、重合により機械的な強度が得られればよく、特に制限されるものではない。
【0020】
生分解性高分子化合物は、公知の方法によって作製できる。
例えば、生分解性ポリエステルは、ラクチド法、多価アルコールと多塩基酸との重縮合、または、分子内に水酸基とカルボキシル基とを有するヒドロキシカルボン酸の分子間重縮合等の方法により作製することができる。
【0021】
次に、本発明の複合組成物を構成する炭素繊維について説明する。
炭素繊維は、公知の方法、例えば、ポリアクリルニトリル法、ピッチ法、レーヨン法、カイノール法等のいわゆる有機ブリカーサー法や、気相成長法のいずれの方法によって作製されたものも適用できる。
【0022】
また炭素繊維の繊維長、平均繊維径などの大きさは特に限定されないが、樹脂への分散性や樹脂の耐熱性向上の効果を考慮に入れてサイズを選択することが好ましい。
特に気相成長法によって作製された炭素繊維は、生分解性高分子化合物中における分散性に優れているため、本発明の目的である耐熱性の向上を図るに当たって、より少ない添加量で優れた効果を発揮できるという利点を有している。また、分散性が悪くなるような影響を与えない限り炭素繊維の繊維径、繊維長は制限されるものでない。
【0023】
生分解性高分子化合物(例えば脂肪族ポリエステル)と、上記の炭素繊維である充填剤との混合比率(重量比)は、脂肪族ポリエステル/充填剤=99.9/0.1〜40/60であることが好適である。特に99.5/0.5〜50/50が好ましく、更には99/1〜60/40が好ましい。
炭素繊維の含有量が0.1重量%未満であると、充分な耐熱性向上効果が得られず、一方において60重量%を超えると、最終的に得られる複合組成物の強度低下等、実用的な材料としての課題を招来するためである。
【0024】
更には、上述した炭素繊維である充填剤と生分解性高分子化合物との親和性や分散性を向上させるため、化学的な表面処理を施すことが好ましい。
表面処理方法としては、アセチル化、ベンゾイル化等のアシル化処理や、シランカップリング処理等が挙げられる。
このような表面処理を施すことにより、上述した生分解性高分子化合物、例えば脂肪族ポリエステルとの表面密着性が向上し、樹脂と炭素繊維との界面剥離による強度低下の抑制が図られる。
【0025】
次に、加水分解抑制剤について説明する。
加水分解抑制剤は、生分解性高分子化合物の加水分解を抑制する添加剤であり、例えば、生分解性高分子化合物の活性水素と反応性を有する化合物が挙げられる。これにより、生分解性高分子化合物中の活性水素量が低減し、活性水素が触媒的に生分解性高分子鎖を加水分解することが回避できる。
【0026】
なお、活性水素とは、酸素、窒素等と水素との結合(N−H結合やO−H結合)における水素のことであり、かかる水素は炭素と水素の結合(C−H結合)における水素に比べて反応性が高い。具体的には、生分解性高分子化合物中の、例えばカルボキシル基:−COOH、水酸基:−OH、アミノ基:−NH2、またはアミド結合:−NHCO−等における水素が挙げられる。
【0027】
生分解性高分子化合物中の活性水素と反応性を有する化合物としては、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキソゾリン系化合物が挙げられる。特にカルボジイミド化合物は、生分解性高分子化合物と溶融混練可能であり、少量の添加で、加水分解性を抑制する効果が発揮できる。
【0028】
カルボジイミド化合物とは、分子中に一個以上のカルボジイミド基を有する化合物であり、ポリカルボジイミド化合物も含まれる。
カルボジイミド化合物の合成方法としては、例えば、触媒として、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−ニトロフェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジメチル−O−(3−メチル−4−(メチルチオ)フェニル)ホスホロチオエート、O,O−ジエチル−O−2−イソプロピル−6−メチルピリミジン−4−イルホスホロチオエート等(○は、任意の数)の有機リン系化合物、または、例えばロジウム錯体、チタン錯体、タングステン錯体、パラジウム錯体等の有機金属化合物を用い、各種ポリマーイソシアネートを約70℃以上の温度で、無溶媒または不活性溶媒(例えば、ヘキサン、ベンゼン、ジオキサン、クロロホルム等)中で脱炭酸重縮合により製造するという方法を挙げられる。
【0029】
カルボジイミド化合物の一種であるモノカルボジイミド化合物としては、ジシクロヘキシルカルボジイミド、ジイソプロピルカルボジイミド、ジメチルカルボジイミド、ジイソブチルカルボジイミド、ジオクチルカルボジイミド、ジフェニルカルボジイミド、ナフチルカルボジイミド等が挙げられ、特に工業的に入手が容易であるジシクロヘキシルカルボジイミドやジイソプロピルカルボジイミドが好ましい。
【0030】
イソシアネート化合物としては、例えば2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、m−フェニレンジイソシアネート、p−フェニレンジイソシアネート、4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート、2,2’−ジフェニルメタンジイソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジメトキシ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、3,3’−ジクロロ−4,4’−ビフェニレンジイソシアネート、1,5−ナフタレンジイソシアネート、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、1,3−シクロヘキシレンジイソシアネート、1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート、テトラメチルキシリレンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、リジンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、または3,3’−ジメチル−4,4’−ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等が挙げられる。
【0031】
上記イソシアネート化合物は、公知の方法で合成でき、また市販品を適宜使用することができる。
市販のポリイソシアナート化合物としては、コロネート(日本ポリウレタン製商品名:水添ジフェニルメタンジイソシアネート)、またはミリオネート(日本ポリウレタン製商品名)等の、芳香族イソシアネートアダクト体が適用可能である。
特に、液状より固形物、例えばイソシアネート基をマスク剤(多価脂肪族アルコール、芳香族ポリオール等)でブロックしたポリイソシアネート化合物が好ましい。
【0032】
オキサゾリン系化合物としては、例えば、2,2’−o−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、2,2’−p−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−m−フェニレンビス(4,4’−ジメチル−2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−テトラメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−ヘキサメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−オクタメチレンビス(2−オキサゾリン)、2,2’−エチレンビス(4−メチル−2−オキサゾリン)、または2,2’−ジフェニレンビス(2−オキサゾリン)等が挙げられる。
【0033】
上述した各種加水分解抑制剤の種類、または添加量により、最終的に得られる複合組成物の生分解速度や、機械的強度を制御可能であるので、本発明の複合組成物を用いて製造する成形品の種類に応じて、種類及び配合量を決定する。
具体的には、加水分解抑制剤の添加量は、約7重量%以下とすることが好ましい。
また、加水分解抑制剤は、上述した各化合物を単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0034】
本発明の複合組成物を製造する方法としては、特に限定されるものではなく、公知の方法を適用できる。
例えば、生分解性を有する有機高分子化合物に、上述した炭素繊維、及び加水分解抑制剤を溶融混練することにより製造することができる。
具体的には、生分解性を有する有機高分子化合物を溶融する前工程、あるいは溶融工程において炭素繊維及び加水分解抑制剤を添加し混合する。
なお、炭素繊維及び加水分解抑制剤は同時に添加してもよいし、個別に添加してもよい。個別に添加する場合、添加する順序は任意でよい。
また、生分解性を有する有機高分子化合物を溶融後、炭素繊維又は加水分解抑制剤のいずれかを添加し、混合した後、得られた複合組成物を再び溶融し、加水分解抑制剤又は炭素繊維のいずれか一方を添加し、混合するようにしてもよい。
【0035】
本発明の複合組成物には、難燃剤、潤滑剤、ワックス類、可塑剤、熱安定剤、補強材、無機・有機フィラー、着色剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、及び結晶化促進剤等の各種添加剤を加えてもよい。
添加剤の含有量は特に制限されないが、0.1以上50重量%未満とすることが好適である。0.1重量%未満であると、それぞれの機能が発現されにくく、60重量%を超えると、本発明の複合組成物が目的とする物性(生分解性、耐熱性、保存耐久性)を阻害するおそれがあるためである。
【0036】
難燃剤としては、例えば、各種のホウ酸系難燃化合物、リン系難燃化合物、無機系難燃化合物、チッソ系難燃化合物、ハロゲン系難燃化合物、有機系難燃化合物、コロイド系難燃化合物等が挙げられる。具体的な材料を以下に示すが、これらは単独で用いてもよく、二種以上混合して用いてもよい。
【0037】
ホウ酸系難燃化合物としては、例えば、ホウ酸亜鉛水和物、メタホウ酸バリウム、ほう砂等の化合物が挙げられる。
【0038】
リン系難燃化合物としては、例えば、リン酸アンモニウム、ポリリン酸アンモニウム、リン酸メラミン、赤燐、リン酸エステル、トリス(クロロエチル)ホスフェート、トリス(モノクロロプロピル)ホスフェート、トリス(ジクロロプロピル)ホスフェート、トリアリルフォスフェート、トリス(3−ヒドロキシプロピル)ホスフェート、トリス(トリブロモフェニル)ホスフェート、トリス−β−クロロプロピルホスフェート、トリス(ジブロモフェニル)ホスフェート、トリス(トリブロモネオペンチル)ホスフェート、テトラキス(2−クロロエチル)エチレン・ジフォスフェート、ジメチルメチルフォスフェート、トリス(2−クロロエチル)オルトリン酸エステル、芳香族縮合リン酸エステル、含ハロゲン縮合有機リン酸エステル、エチレン・ビス・トリス(2−シアノエチル)ホスフォニウム・ブロミド、ポリリン酸アンモニウム、β−クロロエチルアッシドフォスフェート、ブチルピロフォスフェート、ブチルアッシドフォスフェート、ブトキシエチルアッシドフォスフェート、2−エチルヘキシルアッシドフォスフェート、メラミンリン酸塩、含ハロゲンフォスホネート、またはフェニル・フォスフォン酸等の化合物が挙げられる。
【0039】
無機系難燃化合物としては、例えば、硫酸亜鉛、硫酸水素カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アンチモン、硫酸エステル、硫酸カリウム、硫酸コバルト、硫酸水素ナトリウム、硫酸鉄、硫酸銅、硫酸ナトリウム、硫酸ニッケル、硫酸バリウム、硫酸マグネシウム等の硫酸金属化合物、硫酸アンモニウム等のアンモン系難燃化合物、フェロセン等の酸化鉄系燃焼触媒、硝酸銅等の硝酸金属化合物、酸化チタン等のチタンを含有する化合物、スルファミン酸グアニジン等のグアニジン系化合物、その他、ジルコニウム系化合物、モリブデン系化合物、錫系化合物、炭酸カリウム等の炭酸塩化合物、水酸化アルミニウム、または水酸化マグネシウム等の水酸化金属、及びこれらの変性物が挙げられる。
【0040】
チッソ系難燃化合物としては、例えば、トリアジン環を有するシアヌレート化合物等が挙げられる。
【0041】
ハロゲン系難燃化合物としては、例えば、塩素化パラフィン、パークロロシクロペンタデカン、ヘキサブロモベンゼン、デカブロモジフェニルオキシド、ビス(トリブロモフェノキシ)エタン、エチレンビス・ジブロモノルボルナンジカルボキシイミド、エチレンビス・テトラブロモフタルイミド、ジブロモエチル・ジブロモシクロヘキサン、ジブロモネオペンチルグリコール、2,4,6−トリブロモフェノール、トリブロモフェニルアリルエーテル、テトラブロモ・ビスフェノールA誘導体、テトラブロモ・ビスフェノールS誘導体、テトラデカブロモ・ジフェノキシベンゼン、トリス−(2,3−ジブロモプロピル)−イソシアヌレート、2,2−ビス(4−ヒドロキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシエトキシ−3,5−ジブロモフェニル)プロパン、ポリ(ペンタブロモベンジルアクリレート)、トリブロモスチレン、トリブロモフェニルマレイニド、トリブロモネオペンチル・アルコール、テトラブロモジペンタエリスリトール、ペンタブロモベンジルアクリレート、ペンタブロモフェノール、ペンタブロモトルエン、ペンタブロモジフェニルオキシド、ヘキサブロモシクロドデカン、ヘキサブロモジフェニルエーテル、オクタブロモフェノールエーテル、オクタジブロモジフェニルエーテル、オクタブロモジフェニルオキシド、マグネシウムヒドロキシド、ジブロモネオペンチルグリコールテトラカルボナート、ビス(トリブロモフェニル)フマルアミド、N−メチルヘキサブロモジフェニルアミン、臭化スチレン、またはジアリルクロレンデート等のハロゲンを含有する難燃化合物が挙げられる。
【0042】
有機系難燃化合物としては、例えば、無水クロレンド酸、無水フタル酸、ビスフェノールAを含有する化合物、グリシジルエーテル等のグリシジル化合物、ジエチレングリコール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール、変性カルバミド、シリコーンオイル、または二酸化ケイ素、低融点ガラス、オルガノシロキサン等のシリカ系化合物が挙げられる。
【0043】
コロイド系難燃化合物としては、例えば、従来公知の難燃性を有する水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム等の水酸化物、アルミン酸化カルシウム、2水和石膏、ホウ酸亜鉛、メタホウ酸バリウム、ホウ砂、カオリンクレー等の水和物、硝酸ナトリウム等の硝酸化合物、モリブデン化合物、ジルコニウム化合物、アンチモン化合物、ドーソナイト、またはプロゴパイト等の難燃性化合物のコロイド等が挙げられる。
【0044】
難燃系添加物は、例えば焼却処分の際に有毒ガスの発生等、廃棄の際に環境に負荷を与えないものが好ましい。
このような環境配慮の観点から、難燃系添加物としては、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、若しくは水酸化カルシウム等の水酸化物系化合物や、上述したようなリン系化合物、特にリン酸アンモニウム、若しくはポリリン酸アンモニウム等のリン酸アンモニウム系化合物や、二酸化ケイ素、低融点ガラス、若しくはオルガノシロキサン等のシリカ系化合物等が好ましい。
【0045】
難燃系添加物のシリカ系化合物としては、二酸化ケイ素の含有率が約50%以上のものが好適である。シリカ系化合物が天然由来の鉱物から採取されることから、シリカ系化合物以外の物質(例えば、MgO、CaO、Fe23、Al23等)が、ある程度の含有されてしまうが、難燃効果が不純物により阻害されないことが望ましい。
【0046】
難燃系添加物の水酸化物系化合物としては、純度が約99.5%以上であるものが好適である。純度が高いほど、後述する加水分解制御剤と組み合わせたときの保存安定性が向上するためである。
水酸化物系化合物の純度は、公知の方法で測定できる。例えば、水酸化物系化合物に含まれている不純物の含有量を公知の方法で測定し、全体量から前記不純物の含有量を減じれば、水酸化物系化合物の純度を得ることができる。具体的には、例えば水酸化アルミニウムの場合、不純物としてはFe23、SiO2、T−Na2O、S−Na2O等が挙げられる。Fe23の含有量は炭酸ナトリウム−ホウ酸液に融解後、O−フェナントロリン吸光光度法(JIS H 1901)により求められる。SiO2の含有量は炭酸ナトリウム−ホウ酸液に融解後、モリブテン青吸光光度法(JIS H 1901)により求められる。
T−Na2Oの含有量は硫酸に融解後、フレーム光度測定法で、S−Na2Oは温水抽出後、フレーム光度測定法で求められる。上記により求められた含有量を水酸化アルミニウムの重量より減じることにより水酸化物の純度を得ることができる。もちろん99.5%以上の純度があれば、異なる複数種の難燃系水酸化物系化合物を組み合わせて用いることができる。
【0047】
上述した難燃系添加物の形状は、特に限定されないが、粒状が好ましい。粒子径は、種類に応じて適宜選択する。
例えば、難燃系添加物がSiO2やガラス等のシリカ系化合物である場合、レーザー回折法により求められる平均粒径が約50μm以下であることが好ましい。なお、この場合において、粒度分布については特に限定されない。
また、難燃系添加物が、Al(OH)3、Mg(OH)2、Ca(OH)2等の水酸化物系化合物である場合、レーザー回折法により求められる平均粒子径が約100μm以下であることが好ましい。なお、この場合においても粒度分布は特に限定されない。
【0048】
本発明の複合組成物を用いて成形品を作製する際の、成形プロセスにおける射出成形性や、混練時の分散性を考慮すると、難燃系添加物の平均粒子径は、上記範囲とすることが好ましく、上記範囲の中でも、数値的に小さい方がより好適である。
なお、組成物への充填率を向上させるため、平均粒子径の異なる複数種の難燃系添加剤を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
さらに、難燃系添加物が、Al(OH)3、Mg(OH)2、Ca(OH)2等の水酸化物系化合物である場合は、窒素ガス吸着法により求められるBET比表面積が約5.0m2/g以下の粒子が好適である。
なお、組成物への充填率を向上させるため、BET比表面積の異なる複数種の難燃系水酸化化合物を組み合わせて用いてもよい。
また、成形性について考慮しても、BET比表面積は、約5.0m2/g以下が好適であり、特に小さい方がより好ましい。
【0050】
難燃系添加物の添加量は、本発明の複合組成物の機械的強度が確保できる範囲で任意に定める。
具体的には、難燃系添加物が、Al(OH)3、Mg(OH)2、Ca(OH)2等の水酸化物系化合物である場合には、約5〜50重量%程度、好ましくは約7.5〜45重量%程度、更には約10〜40重量%程度とすることが望ましい。
難燃系添加物が、(NH4)3(PhO3n+1)n+2(nは自然数)等の(ポリ)リン酸アンモニウム系化合物の場合は、約1〜25重量%程度、好ましくは約2〜20重量%程度、更には、約3〜15重量%程度とすることが望ましい。
難燃系添加物が、SiO2やガラス等のシリカ系化合物である場合は、約5〜40重量%程度、好ましくは約10〜35重量%程度、更には約15〜30重量%程度とすることが望ましい。
【0051】
補強材としては、例えばガラスマイクロビーズ、植物繊維、ガラス繊維などの繊維類、チョーク、ノボキュライト(novoculite)等の石英、アスベスト、長石、雲母、タルク、ウォラストナイト等のケイ酸塩、カオリン等が挙げられる。
無機フィラーとしては、例えば、炭素、二酸化珪素の他、アルミナ、シリカ、マグネシア、またはフェライト等の金属酸化微粒子、タルク、マイカ、カオリン、ゼオライト等の珪酸塩類、硫酸バリウム、炭酸カルシウム、窒化珪素、炭化珪素などの珪化物、炭化硼素、窒化硼素等の硼化物、またはフラーレン等の微粒子等が挙げられる。
有機フィラーとしては、例えば、エポキシ樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、アクリル樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、ポリアミド樹脂、ポリエステル樹脂、またはテフロン(登録商標)樹脂が挙げられる。
特に炭素、二酸化珪素、珪化物が好適である。上述した各種フィラーは、単独で用いてもよく、二種以上を混合して用いてもよい。
【0052】
酸化防止剤としては、フェノール系、アミン系、リン系、イオウ系、ヒドロキノン系、またはキノリン系酸化防止剤等が挙げられる。
【0053】
フェノール系酸化防止剤としては、ヒンダードフェノール類、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−p−クレゾール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)ベンゼン、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、4,4’−メチレンビス(2,6−ジ−t−ブチルフェノール)、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、1,6−ヘキサンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC2-10アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばトリエチレングリコール−ビス[3−(3−t−ブチル−5−メチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のジまたはトリオキシC2-4 アルキレンジオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6 アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばグリセリントリス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC3-8アルカントリオール−ビス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばペンタエリスリトールテトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]等のC4-8アルカンテトラオールテトラキス[3−(3,5−ジ−分岐C3-6アルキル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート]、例えばn−オクタデシル−3−(4’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェノール)プロピオネート、ステアリル−2−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェノール)プロピオネート、ジステアリル−3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシベンジルホスホネート、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−5−メチル−2−ヒドロキシベンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、N,N’−ヘキサメチレンビス(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシ−ヒドロシンムアミド)、3,9−ビス{2−[3−(3−t−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカン、4,4’−チオビス(3−メチル−6−t−ブチルフェノール)、または1,1,3−トリス(2−メチル−4−ヒドロキシ−5−t−ブチルフェノール)ブタン等が挙げられる。
【0054】
アミン系酸化防止剤としては、例えば、フェニル−1−ナフチルアミン、フェニル−2−ナフチルアミン、N,N’−ジフェニル−1,4−フェニレンジアミン、またはN−フェニル−N’−シクロヘキシル−1,4−フェニレンジアミン等が挙げられる。
【0055】
リン系酸化防止剤としては、例えば、トリイソデシルホスファイト、トリフェニルホスファイト、トリスノニルフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイト、2,2−メチレンビス(4,6−ジ−t−ブチルフェニル)オクチルホスファイト、4,4’−ブチリデンビス(3−メチル−6−t−ブチルフェニル)ジトリデシルホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−メチルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−アミルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチルフェニル)ホスファイト、ビス(2−t−ブチルフェニル)フェニルホスファイト、トリス[2−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス[2,4−(1,1−ジメチルプロピル)−フェニル]ホスファイト、トリス(2−シクロヘキシルフェニル)ホスファイト、トリス(2−t−ブチル−4−フェニルフェニル)ホスファイト等のホスファイト化合物;トリエチルホスフィン、トリプロピルホスフィン、トリブチルホスフィン、トリシクロヘキシルホスフィン、ジフェニルビニルホスフィン、アリルジフェニルホスフィン、トリフェニルホスフィン、メチルフェニル−p−アニシルホスフィン、p−アニシルジフェニルホスフィン、p−トリルジフェニルホスフィン、ジ−p−アニシルフェニルホスフィン、ジ−p−トリルフェニルホスフィン、トリ−m−アミノフェニルホスフィン、トリ−2,4−ジメチルフェニルホスフィン、トリ−2,4,6―トリメチルフェニルホスフィン、トリ−o−トリルホスフィン、トリ−m−トリルホスフィン、トリ−p−トリルホスフィン、トリ−o―アニシルホスフィン、トリ−p−アニシルホスフィン、または1,4−ビス(ジフェニルホスフィノ)ブタン等のホスフィン化合物等が挙げられる。
【0056】
ヒドロキノン系酸化防止剤としては、例えば、2,5−ジ−t−ブチルヒドロキノン等が挙げられる。
キノリン系酸化防止剤としては、例えば、6−エトキシ−2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン等が挙げられる。
イオウ系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリルチオジプロピオネート、ジステアリルチオジプロピオネート等が挙げられる。
【0057】
上記酸化防止剤の中でも、特に、フェノール系酸化防止剤(特に、ヒンダードフェノール類)、例えば、ポリオール−ポリ[(分岐C3-6 アルキル基およびヒドロキシ基置換フェニル)プロピオネート]等が好適である。
上述した酸化防止剤は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0058】
熱安定剤としては、例えばポリアミド、ポリ−β−アラニン共重合体、ポリアクリルアミド、ポリウレタン、メラミン、シアノグアニジン、メラミン−ホルムアルデヒド縮合体等の塩基性窒素含有化合物等の窒素含有化合物、有機カルボン酸金属塩(ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等)、金属酸化物(酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化アルミニウム等)、金属水酸化物(水酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、水酸化アルミニウム等)、金属炭酸塩等のアルカリ、またはアルカリ土類金属含有化合物、ゼオライト、またはハイドロタルサイト等が挙げられる。
特に、アルカリまたはアルカリ土類金属含有化合物(特にマグネシウム化合物やカルシウム化合物等のアルカリ土類金属含有化合物)、ゼオライト、またはハイドロタルサイト等が好適である。
上述した熱安定剤は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0059】
紫外線吸収剤としては、従来公知のベンゾフェノン系、ベンゾトリアゾール系、シアノアクリレート系、サリチレート系またはシュウ酸アニリド系等が挙げられる。
具体的には、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシドデシロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2−ヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシベンジロキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2’−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシエトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、[2,2’−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシメトキシ)ベンゾフェノン]−メタクリル酸メチル共重合体、または[2,2’−ジヒドロキシ−4−(メタクリロイルオキシオクトキシベンゾフェノン)−メタクリル酸メチル共重合体等が挙げられる。
上述した紫外線吸収剤は、単独で用いてもよく、二種以上を併用してもよい。
【0060】
潤滑剤としては、例えば、流動パラフィン等の石油系潤滑油、ハロゲン化炭化水素、ジエステル油、シリコン油、フッ素シリコン等の合成潤滑油、各種変性シリコン油(エポキシ変性、アミノ変性、アルキル変性、ポリエーテル変性等)、ポリオキシアルキレングリコール等の有機化合物とシリコンとの共重合体等のシリコン系潤滑性物質、シリコン共重合体、フルオロアルキル化合物等の各種フッ素系界面活性剤、トリフルオロ塩化メチレン低重合物等のフッ素系潤滑物質、パラフィンワックス、ポリエチレンワックス等のワックス類、高級脂肪族アルコール、高級脂肪族アミド、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸塩、または二硫化モリブデン等が挙げられる。
特に、シリコン共重合体(樹脂にシリコンをブロックやグラフトにより重合させたもの)が好適である。
シリコン共重合体としては、アクリル系樹脂、ポリスチレン系樹脂、ポリニトリル系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、エポキシ系樹脂、ポリブチラール系樹脂、メラミン系樹脂、塩化ビニル系樹脂、ポリウレタン系樹脂またはポリビニルエーテル系樹脂等に、シリコンをブロックまたはグラフト重合させたものであればよく、シリコングラフト共重合体を用いることが好ましい。
上述した潤滑剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0061】
ワックス類としては、例えば、ポリプロピレンワックス、ポリエチレンワックス等のオレフィン系ワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、ミクロクリスタリンワックス、モンタンワックス、脂肪酸アミド系ワックス、高級脂肪族アルコール系ワックス、高級脂肪酸系ワックス、脂肪酸エステル系ワックス、カルナウバワックス、ライスワックス等を適用できる。
上述したワックス類は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
着色剤としては、無機顔料、有機顔料、または染料等が挙げられる。
無機顔料としては、例えばクロム系顔料、カドミウム系顔料、鉄系顔料、コバルト系顔料、群青、紺青等が挙げられる。
また、有機顔料や染料の具体例としては、カーボンブラック、例えばフタロシアニン銅等のフタロシアニン顔料、キナクリドンマゼンタ、キナクリドンレッド等のキナクリドン顔料、ハンザイエロー、ジスアゾイエロー、パーマネントイエロー、パーマネントレッド、ナフトールレッド等のアゾ顔料、スピリットブラックSB、ニグロシンベース、オイルブラックBW等のニグロシン染料、オイルブルー、ピグメントイエロー、ピグメントブルー、ピグメントレッド、アルカリブルー等が挙げられる。
上述した着色剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0063】
結晶化促進剤としては、p−t−ブチル安息香酸ナトリウム、モンタン酸ナトリウム、モンタン酸カルシウム、パルミチン酸ナトリウム、ステアリン酸カルシウム等の有機酸塩類、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、珪酸マグネシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、タルク等の無機塩類、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化チタン等の金属酸化物が挙げられる。
上述した結晶化促進剤は、単独で用いてもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0064】
本発明の複合組成物には、従来公知の種々の処理を施してもよい。
例えば、生分解性高分子化合物の加水分解を抑制するために、活性エネルギー線を照射させてもよい。この場合、活性エネルギー線源としては、例えば電磁波、電子線、または粒子線、及びこれらの組み合わせが挙げられる。
電磁波としては、紫外線(UV)、エックス線等が挙げられ、粒子線としては、陽子、中性子等の素粒子の線が挙げられる。特に、電子加速器の使用による電子線照射処理を施すことが望ましい。
活性エネルギー線は、公知の装置を用いて照射することができる。例えば、UV照射装置、電子加速器等が挙げられる。照射線量、及び照射強度は、本発明の複合組成物において、効果的に生分解性高分子化合物の加水分解を遅延する範囲であれば、とくに限定されない。例えば、電子線の場合、加速電圧が、約100〜5000kV程度が好ましく、照射線量としては、約1kGy程度以上が好ましい。
【0065】
本発明の複合組成物は、種々の成形品用途に応用可能である。
例えば、DVD((Digital Versatile Discもしくは Digital VideoDisk))プレーヤー、CD(コンパクトディスク)プレーヤー、アンプ等の据置型のAV機器、スピーカー、車載用AV/IT機器、携帯電話端末、電子書籍等のPDA、ビデオデッキ、テレビ、プロジェクター、テレビ受信機器、デジタルビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、プリンター、ラジオ、ラジカセ、システムステレオ、マイク、ヘッドフォン、TV、キーボード、ヘッドフォンステレオ等の携帯型音楽機、パソコン、及びパソコン周辺機器等の電気製品の筐体等の各種成形品のいずれにも適用可能である。
【0066】
なお、電気製品の筐体だけでなく、電気製品を構成する部品や梱包材等の用途にも適用可能であり、その他、自動車内装材等にも適用可能である。
【0067】
本発明の複合組成物を用いて成形品を製造する方法としては、例えば、圧空成形、フィルム成形、押出成形、または射出成形等が挙げられ、特に射出成形が好ましい。
具体的には、押出成形は、常法に従い、例えば単軸押出機、多軸押出機、タンデム押出機等の公知の押出成形機を用いて行うことができる。
また、射出成形は、常法に従い、例えばインラインスクリュ式射出成形機、多層射出成形機、二頭式射出成形機等の公知の射出成形機にて行うことができる。
【実施例】
【0068】
以下、具体的に本発明に係る複合組成物を用いて作製した成形品のサンプルを作製し、それぞれ特性評価を行った。
なお、本発明は、下記に示す例に限定されるものではない。
【0069】
〔実施例1〜5〕、〔比較例1〜3〕
(試料の調製)
(A)生分解性樹脂:ポリ乳酸(レイシア(H100J、三井化学株式会社製))
(B)炭素繊維:気相法炭素繊維
昭和電工製商品名VGCF(繊維長:10〜20μm、平均繊維径:150nm)
昭和電工製商品名VGCF−H(繊維長:10〜20μm、平均繊維径:150nm)
(C)加水分解抑制剤
下記表1に示すように、上記(A)〜(C)を、表中に記載した量で、溶融混練法により混合した。
混練機としてはミニマックス−ミックスルーダ(東洋精機株式会社製)を使用し、ノズル温度を170〜175℃、トルクを4〜6kg、滞留時間を3秒以内とし、さらに所定の添加剤を加え、混練処理を行った。
上記工程により得られた複合組成物を粉砕し、180℃で400kg/cm2のプレスをし、厚さ1.0mmの板状の成形品を作製した。その後、複合組成物の成形品を120℃の環境下で1時間放置し、サンプルとした。
【0070】
【表1】

【0071】
上述のようにして作製した複合組成物の成形品サンプルに対して、下記に示すように、耐熱性試験(高温条件下による粘弾性試験)、及び保存性試験を行った。
【0072】
〔耐熱性試験(高温条件下による粘弾性試験)〕
測定装置:レオメトリック社製粘弾性アナライザー
サンプル片:上記表1に示す組成の複合組成物(長さ50mm×幅7mm×厚さ1mm)
周波数:6.28(rad/s)
測定開始温度:0℃
測定最終温度:160℃
昇温速度:5℃/分
歪:0.05%
【0073】
〔保存性試験〕
保存性試験は、作製した複合組成物の分子量の変化を測定することで行った。
各サンプルの分子量を初期分子量として、80℃、相対湿度80%の恒温恒湿槽内で、100時間保管し、その後に測定したサンプルの分子量を保存後の分子量とする。
保存後の分子量を初期の分子量で除した値を分子量維持率とし、この分子量維持率が90%を上回った場合に、実用上の保存性は良好である(○)とし、分子量維持率が90%以下であった場合は、実用上の保存性は不充分である(×)と判断し、下記表2にその結果を示した。
なお、分子量の測定方法を以下に示す。
分子量は、重量平均分子量(ポリスチレン換算分子量)であり、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用いて測定する。
装置:MILLIPORE Waters600E system controller
検出器:UV (Waters484)、及びRI (Waters410)
標準サンプル:ポリスチレン
操作:濃度が0.15重量%となるように、試料をクロロホルムに溶解させ、二時間攪拌した後、この溶液をφ0.25μmのフィルターを通して上記装置の評価サンプルとした。
【0074】
〔耐熱性試験(高温条件下による粘弾性試験)の評価〕
図1に、炭素繊維として、昭和電工製商品名VGCFを用いた実施例1、2と、比較例1の各サンプル、図2に、炭素繊維として昭和電工製商品名VGCF-Hを用いた実施例3〜5と、比較例1の各サンプルの、それぞれの粘弾性試験結果を示し、その評価を下記表2に示した。
図1、図2に示すように、炭素繊維を含有させた複合組成物である実施例1〜5のサンプルにおいては、生分解性樹脂(ポリ乳酸)のガラス転移温度(58℃程度)よりも高い温度範囲においても、実用的に優れた強度が維持されており、炭素繊維を含有しない比較例1のサンプルに比較して、著しい耐熱性の向上効果が得られたことが確かめられた。
【0075】
〔保存性試験の評価〕
下記表2に、実施例1〜7及び比較例1〜3のサンプルの、それぞれの保存性試験の評価結果を示す。
【0076】
【表2】

【0077】
上記表2に示すように、本発明に係る実施例1〜5のサンプルは、加水分解抑制剤を含有させたことにより、恒温恒湿環境下において、極めて良好な保存特性が実現でき、本発明によれば、実用上充分な安定性を有する成形品が得られることが確認された。一方、加水分解抑制剤を含有させなかった比較例2、3のサンプルにおいては、実用充分な安定性が得られなかった。
【0078】
上述した結果から明らかなように、本発明に係る複合組成物によれば、生分解性を有する有機高分子化合物に、炭素繊維と、加水分解抑制剤とを含有させたことにより、生分解性、耐熱性、及び保存性を兼ね備え、例えば電子機器筐体等のような、内部の電源や駆動源により発熱するようなものを具備しているものに用いた場合においても、実用上充分な保存安定性が実現できた。
【0079】
すなわち、本発明の複合組成物は、高い耐熱性、安定性を有し、実用的な各種成形品に利用でき、かつ廃棄時には、最終的に生体や地球環境に対して安全な成分、例えば、水と二酸化炭素等も分解される、環境への影響が極めて少ない材料であり、これを各種電気製品の筐体や梱包材等の成形品に利用することで、廃棄による環境汚染を低減化することができた。
【図面の簡単な説明】
【0080】
【図1】実施例及び比較例サンプルの粘弾性試験結果を示す。
【図2】実施例及び比較例サンプルの粘弾性試験結果を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、一の種類の生分解性を有する有機高分子化合物と、炭素繊維と、前記生分解性を有する有機高分子化合物の加水分解抑制剤とを含有することを特徴とする複合組成物。
【請求項2】
前記生分解性を有する有機高分子化合物が、多糖類、脂肪族ポリエステル、ポリアミノ酸、ポリビニルアルコール、ポリアルキレングリコールのうちの少なくともいずれか、または、少なくともこれらのいずれかを含む共重合体であることを特徴とする請求項1に記載の複合組成物。
【請求項3】
前記脂肪族ポリエステルが、ポリ乳酸、ポリカプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリヒドロキシ吉草酸、ポリエチレンスクシネート、ポリブチレンスクシネート、ポリブチレンアジペート、ポリリンゴ酸、微生物合成ポリエステルのうちの少なくともいずれか、又は、少なくともこれらのいずれかを含む共重合体であることを特徴とする請求項3に記載の組成物。
【請求項4】
前記加水分解抑制剤が、カルボジイミド化合物、イソシアネート化合物、オキソゾリン化合物のうちの少なくともいずれかの化合物であることを特徴とする請求項1に記載の複合組成物。
【請求項5】
少なくとも一の種類の生分解性を有する有機高分子化合物と、炭素繊維と、前記生分解性を有する有機高分子化合物の加水分解抑制剤とを含有する複合組成物を用いて作製したことを特徴とする成形品。







【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−137799(P2006−137799A)
【公開日】平成18年6月1日(2006.6.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−326532(P2004−326532)
【出願日】平成16年11月10日(2004.11.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】