説明

複合酸化物焼結体

【課題】スパッタリング中の異常放電現象の発生を制御し、パーティクルによる歩留まり低下を抑制することができる複合酸化物焼結体を提供する。
【解決手段】亜鉛と、酸素イオンに6配位を仮定したときのイオン半径が0.7〜1.1Åの正三価以上の価数を取り得る元素A、酸素イオンに4配位を仮定したときのイオン半径が0.5〜0.7Åの正三価以上の価数を取り得る元素Aとは異なる元素Mをそれぞれ少なくとも1種以上含み、Cuを線源とするX線回折パターン(XRD)の2Θ=30〜40°の範囲内に検出される回折ピークが六方晶系ウルツ型構造に帰属される(100)面、(002)面、(101)面のみから構成されることを特徴とする複合酸化物焼結体とすることで、異常放電現象の発生を制御し、パーティクルによる歩留まり低下を抑制することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、酸化亜鉛を主とした複合酸化物焼結体及びその複合酸化物焼結体からなるスパッタリングターゲットに関するものである。
【背景技術】
【0002】
錫をドーパントとして含む酸化インジウム膜はITO(Indium Tin Oxide)膜と称され、低抵抗膜が容易に得られるため透明導電膜として広範に利用されている。しかしながら、ITO膜の主原料であるInは、希少金属で高価であるため、この膜を用いたときの低コスト化には限界がある。
【0003】
そのため、ITO代替の透明導電膜用材料の開発が盛んに進められており、酸化亜鉛を主成分とする周期律表の第III族元素を含む酸化亜鉛膜は、安価な上に化学的にも安定で、透明性、導電性にも優れていることから注目されている。
【0004】
このような透明導電膜の成膜方法として、大面積に均一な膜厚で成膜可能である点でスパッタリングターゲットを用いたスパッタリング法がよく採用されている。しかし、このスパッタリング法はスパッタリング中の異常放電現象により、スパッタリング装置の稼働率の低下や発生するパーティクルの影響による製品歩留まりの低下等の問題があった。
【0005】
スパッタリング中に発生する異常放電現象を抑制する手段として、例えば高密度化したターゲットを使用することが提案されている(例えば特許文献1参照)。また、ターゲットを高密度化し、かつ周期律表の第III族元素の酸化物として添加された酸化アルミニウムに起因するアルミニウム成分凝集径を最大5μm以下としたターゲットを使用することが提案されている(例えば特許文献2参照)。
【0006】
しかしながら、ターゲットの高密度化とターゲット内での添加元素由来の第二成分の凝集径の制御をしただけでは、スパッタリング中の異常放電現象の発生を完全に避けることができず、その際に飛散するパーティクルによる歩留まり低下が生じ、そのために、生産性の低下は免れないという問題があり、より一層の異常放電現象の抑制が求められている。
【0007】
【特許文献1】特開平2−149459号公報
【特許文献2】特開平7−258836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、スパッタリング中の異常放電現象の発生を制御し、パーティクルによる歩留まり低下を抑制することができる複合酸化物焼結体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、上記問題を解決するために特定のイオン半径を有する正三価以上の価数を取り得る元素を特定の原子比で組み合わせた複合酸化物焼結体について鋭意検討を重ねた結果、本発明を完成するに至った。
【0010】
本発明の態様は以下の通りである。
【0011】
(1)亜鉛と、酸素イオンに6配位を仮定したときのイオン半径が0.7〜1.1Åの正三価以上の価数を取り得る元素A、酸素イオンに4配位を仮定したときのイオン半径が0.5〜0.7Åの正三価以上の価数を取り得る、元素Aとは異なる元素Mをそれぞれ少なくとも1種含み、Cuを線源とするX線回折パターン(XRD)の2Θ=30〜40°の範囲内に検出される回折ピークが六方晶系ウルツ型構造に帰属される(100)面、(002)面、(101)面のみから構成されることを特徴とする複合酸化物焼結体。
【0012】
(2)元素Aが、In、Ti、Zr、Snの群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする(1)に記載の複合酸化物焼結体。
【0013】
(3)元素Mが、Al、Ga、Nbの群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする(1)又は(2)に記載の複合酸化物焼結体。
【0014】
(4)焼結体の相対密度が95%以上であることを特徴とする(1)〜(3)のいずれかに記載の複合酸化物焼結体。
【0015】
(5)亜鉛化合物の粉末とその粉末の1次粒子径よりも小さい1次粒子径の元素Aと元素Mの化合物粉末を亜鉛、元素A及び元素Mの各原子比としてA/(A+M)が0.4以上、かつ原子比(A+M)/(Zn+A+M)が0.001〜0.17となるように原料粉末を混合する工程と、当該混合粉末を成形して成形体を作製する工程と、当該成形体を1000〜1600℃の範囲内で焼成して焼結体を作製する工程とを含むことを特徴とする(1)〜(4)のいずれかに記載の複合酸化物焼結体の製造方法。
【0016】
(6)(1)〜(4)のいずれかに記載の複合酸化物焼結体からなる複合酸化物スパッタリングターゲット。
【0017】
(7)(6)に記載の複合酸化物スパッタリングターゲットを用いて成膜してなる透明導電膜。
【0018】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0019】
本発明の複合酸化物焼結体は亜鉛と、正三価以上の価数を取り得る元素の中から酸素イオンに6配位を仮定したときのイオン半径が0.7〜1.1Åの元素Aを少なくとも1種以上、正三価以上の価数を取り得る元素の中から酸素イオンに4配位を仮定したときのイオン半径が0.5〜0.7Åの元素Mを少なくとも1種以上含んでいることを特徴とする。
【0020】
なお、本発明におけるイオン半径とは、「R.D.Shannon,Acta Crystallogr.A32,751−767(1976)」の報告値であるCR(crystal radius)を用いている。この報告によれば、同一元素で酸素4配位と酸素6配位で同一のイオン半径を有する元素は存在しない。
【0021】
元素Aとしては、In(0.94Å)、Ti(0.75Å)、Zr(0.86Å)、Sn(0.83Å)の群より選ばれることが好ましく、Inであることがより好ましい。これらの元素が元素Aとして選ばれることにより、スパッタリング中の異常放電を一層低減することが可能となる。
【0022】
元素Mとしては、Al(0.53Å)、Ga(0.61Å)、Nb(0.62Å)の群より選ばれることが好ましく、Alであることがより好ましい。これらの元素が元素Mとして選ばれることにより、スパッタリング中の異常放電を一層低減することが可能となる。
【0023】
元素Aと元素Mの原子比A/(A+M)は0.4以上であり、0.45以上であることが好ましい。また、原子比(A+M)/(Zn+A+M)は0.001以上0.17以下であり、0.05以上0.15以下が好ましい。この範囲でスパッタリングを行うと、スパッタリング中の異常放電を一層低減することが可能となる。
【0024】
また、一般的に酸化亜鉛に周期律表の第III族元素等の添加元素を含有させた酸化亜鉛系スパッタリングターゲットにおいては、添加元素が一部固溶した酸化亜鉛から主としてなる六方晶系構造の母相と添加元素と酸化亜鉛の反応生成物であるスピネル型構造を有する第2相からその微細構造は構成される。
【0025】
しかし、亜鉛、元素A及び元素Mの各原子比が前述の範囲内である複合酸化物焼結体をX線解析すると、Cuを線源とするXRDの2Θ=30〜40°の範囲内に検出される回折ピークが、実質的に酸化亜鉛を含む六方晶系ウルツ型構造に帰属される(100)面、(002)面、(101)面のみから構成されており、元素Aや元素Mと酸化亜鉛の反応生成物であるスピネル型構造を有する電気抵抗の高い第2相がX線的に消失していることがわかった。
【0026】
従って、本発明でいう「六方晶系ウルツ型構造に帰属される(100)面、(002)面、(101)面のみから構成される」とは、第2相のスピネル型構造に帰属される(311)面のX線回折ピークの積分強度I(311)と、六方晶系ウルツ鉱型構造に帰属される(101)面のX線回折ピークとの積分強度I(101)とから表されるI(311)/(I(101)+I(311))の値が2.5%以下、好ましくは0%であることを意味する。
【0027】
また、第2相としてスピネル型構造以外の相を形成する場合も、当該相に帰属するX線回折ピークの積分強度と六方晶系ウルツ鉱型構造に帰属される(101)面のX線回折ピークの積分強度I(101)との関係は上記と同様のものとなる。
【0028】
この原因としては、複合酸化物焼結体中に元素A及び元素Mが前述の組成で存在すると、元素Aと元素Mがそれぞれ、酸化亜鉛中の酸素に4配位または6配位し、酸化亜鉛と反応せず、スピネル型構造等の第2相を生じなくなるためと考えられる。
【0029】
また、本発明の複合酸化物焼結体の相対密度は95%以上であることが好ましく、97%以上であることが更に好ましい。この範囲を逸脱すると、スパッタリング中の異常放電が著しく増加するとともに、形状を整えるために機械加工等での破損の問題等も生じるためである。
【0030】
なお、相対密度はJIS−R1634−1998に準拠してアルキメデス法で測定した焼結密度X(g/cm)を算術的に求めた理論密度Y(g/cm)に対する相対値として(1)式により求めた。
【0031】
相対密度(%)=(X/Y)×100 (1)
ここで、算術的な理論密度Yは、亜鉛、元素A、元素Mを酸化物換算した場合の比重と組成重量比から体積比を求め、亜鉛、元素A、元素Mの酸化物の比重を体積比配分して算出した。
【0032】
また、本発明の複合酸化物焼結体の平均粒径は20μm以下であることが好ましい。平均粒径が20μmを超えると、形状を整えるために機械加工等での破損の問題等が生じることがあるからである。
【0033】
なお、本発明における複合酸化物中の粒径の測定方法は、以下の通りである。
【0034】
本発明の複合酸化物焼結体を適当な大きさに切断した後、観察面を表面研磨し、次に希酢酸溶液でケミカルエッチングを行い、粒界を明確化する。この試料を走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて、焼結体の研磨面の観察写真を画像処理し、500〜1000個の長径を求め、その平均を平均粒径として求める。
【0035】
次に、本発明の複合酸化物焼結体の製造方法について説明する。
【0036】
本発明の複合酸化物焼結体の製造方法は、(1)亜鉛化合物の粉末とその粉末の1次粒子径よりも小さい1次粒子径の元素Aの化合物粉末と元素Mの化合物粉末を所定の原子比となるように原料粉末を混合する工程と、(2)当該混合粉末を成形して成形体を作製する工程と、(3)当該成形体を1000〜1600℃の範囲内で焼成して焼結体を作製する工程とを含むことを特徴とする。
【0037】
以下、本発明の複合酸化物焼結体の製造方法を工程毎に説明する。
【0038】
(1)原料混合工程
原料粉末は特に限定されるものではなく、例えば、金属塩粉末、塩化物、硝酸塩、炭酸塩等を用いることも可能であるが、取り扱い性を考慮すると酸化物粉末が好ましい。このときの粉末粒径は、微細である方が焼結性に優れるため、通常は1次粒子径として10μm以下の粉末が好ましく用いられ、特に1μm以下の粉末が好ましく用いられる。
【0039】
さらに、元素A、元素Mの化合物粉末は亜鉛化合物の粉末の1次粒子径よりも小さい1次粒子径の化合物粉末を用いる必要がある。亜鉛化合物の粉末の1次粒子径の方が小さい若しくは同一であると、混合状態の均質性が劣るためである。
【0040】
これら各粉末の混合は、特に限定されるものではないが、ジルコニア、アルミナ、ナイロン樹脂等のボールやビーズを用いた乾式、湿式のメディア撹拌型ミルやメディアレスの容器回転式混合、機械撹拌式混合等の混合方法が例示される。具体的には、ボールミル、ビーズミル、アトライタ、振動ミル、遊星ミル、ジェットミル、V型混合機、パドル式混合機、二軸遊星撹拌式混合機等が挙げられる。
【0041】
また、粉末の混合と同時に粉砕が行われるが、粉砕後の粉末粒径は微細であるほど好ましい。このとき、湿式法のボールミルやビーズミル、アトライタ、振動ミル、遊星ミル、ジェットミル等を用いる場合には、粉砕後のスラリーを乾燥する必要がある。この乾燥方法は特に限定されるものではないが、例えば、濾過乾燥、流動層乾燥、噴霧乾燥等が例示できる。
【0042】
また、酸化物粉末以外の粉末を混合する場合は、混合後に500〜1000℃で仮焼を行い、仮焼粉末の粒径が大きくなった場合は粉砕することが好ましい。
【0043】
各原料粉末の純度は、通常99%以上、好ましくは99.9%以上、より好ましくは99.99%以上である。純度が低いと、不純物物質により、本発明の複合酸化物焼結体を用いたスパッタリングターゲットで形成された透明導電膜に影響が及ぼされることがあるからである。
【0044】
これらの原料の配合は、元素Aと元素Mの原子比A/(A+M)が0.4以上であり、かつ各元素の原子比(A+M)/(Zn+A+M)が0.001〜0.17となるように原料を混合する必要がある。
【0045】
(2)成形工程
成形方法は、金属酸化物の混合粉末(仮焼した場合には仮焼した混合粉末)を目的とした形状に成形できる成形方法を適宜選択することが肝要であり、特に限定されるものではない。プレス成形法、鋳込み成形法、射出成形法等が例示できる。
【0046】
成形圧力はクラック等の発生がなく、取り扱いが可能な成形体であれば特に限定されるものではないが、成形密度は可能な限り高めた方が好ましい。そのために冷間静水圧(CIP)成形等の方法を用いることも可能である。
【0047】
なお、成形処理に際しては、ポリビニルアルコール、アクリル系ポリマー、メチルセルロース、ワックス類、オレイン酸等の成形助剤を用いても良い。
【0048】
(3)焼成工程
次に得られた成形体を1000〜1600℃で焼成する。この焼成温度範囲により前記複合酸化物焼結体の微構造が得られるが、酸化亜鉛系複合酸化物特有の揮発消失が抑制され、かつ比較的焼結密度を高められる点から、1100〜1400℃がより好ましい。
【0049】
本発明によれば、複合酸化物焼結体の微構造を前記したように制御することにより、例えば、相対密度99%以上といった高焼結密度を必ずしも得られなくても、スパッタリング中の異常放電現象を著しく抑制することが可能である。ただし、焼結密度が低すぎると、取り扱いやスパッタリング時に破損等を起こすことがあるため、相対密度95%以上が総合的には好ましく、特に好ましいのは97%以上の範囲となる。
【0050】
焼成時間は特に限定されるものではないが、通常1〜48時間が通常用いられ、特に好ましいのは3〜24時間である。これは、本発明の複合酸化物焼結体中の均質性を確保するためであり、24時間より長時間の保持でも均質性を確保することは可能であるが、生産性への影響を考慮すると24時間以下で十分である。
【0051】
昇温速度は特に限定されるものではないが、800℃以上の温度域では50℃/h以下であることがより好ましい。これは、本発明の複合酸化物焼結体を酸化亜鉛を主として含む六方晶系ウルツ型構造の粒子のみで実質的に構成させるためである。
【0052】
焼成雰囲気は特に限定されるものではないが、例えば、大気中、酸素中、不活性ガス雰囲気中等が適宜選択されるが、大気よりも低酸素濃度の雰囲気とすることがより好ましい。
【0053】
これは、本発明の複合酸化物焼結体中に酸素欠陥を導入しやすくなり、そのため、複合酸化物焼結体の抵抗率が低下して異常放電が発生する要因をより一層低減することが可能となるためである。また、焼成時の圧力も特に限定されるものではなく、常圧以外に加圧、減圧状態での焼成も可能である。また、熱間静水圧(HIP)法やホットプレス焼結等も可能である。
【発明の効果】
【0054】
本発明によれば、亜鉛と、酸素イオンに6配位を仮定したときのイオン半径が0.7〜1.1Åの正三価以上の価数を取り得る元素A、酸素イオンに4配位を仮定したときのイオン半径が0.5〜0.7Åの正三価以上の価数を取り得る元素Aとは異なる元素Mをそれぞれ少なくとも1種以上含む、本発明の複合酸化物焼結体はスピネル型構造を有する電気抵抗の高い第2相が消失し、焼結体の電気抵抗のばらつきが少なく、スパッタリングの際の異常放電が起こりにくい複合酸化物焼結体を得ることが可能となる。
【実施例】
【0055】
本発明を以下の実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0056】
(実施例1〜12および比較例1〜4)
純度99.8%、平均粒径0.6μm(1次粒径)の酸化亜鉛粉末と純度99.99%、平均粒径0.1〜0.3μm(1次粒径)の元素A及び元素Mの酸化物粉末を表1に記載の組成となるように湿式ボールミルで混合、造粒し、3.0ton/cmでCIP成形した。
【0057】
(焼成条件)
・焼結温度 :1400℃
・昇温速度 :50℃/h
・降温速度 :100℃/h
・保持時間 :5時間
・焼結雰囲気:窒素雰囲気
得られた複合酸化物焼結体を加工した後、鏡面研磨し、その研磨面をXRD、SEM、電子線マイクロアナライザ(EPMA)、走査型プローブ顕微鏡(SPM)で分析し、結晶相、粒径を分析した。XRDの分析結果は、六方晶系ウルツ型構造相、スピネル型構造相、その他の相に分類して、表1に示した。
【0058】
さらに、得られた焼結体を4インチφサイズに加工してターゲットとし、スパッタリング評価を行った。
(X線回折試験の測定条件)
・X線源 :CuKα
・パワー :40kV、30mA
・走査速度 :1°/分
(スパッタリング成膜条件)
・装置 :DCマグネトロンスパッタ装置
・磁界強度 :1000Gauss(ターゲット真上、水平成分)
・基板温度 :200℃
・到達真空度 :5×10−5Pa
・スパッタリングガス :Ar
・スパッタリングガス圧:0.5Pa
・DCパワー :300W
・スパッタリング時間 :30時間
放電特性はスパッタリングを30時間行い、単位時間当たりに発生した異常放電回数として評価し、0.5回未満/時間を「○」、0.5〜10回/時間を「△」、10回超/時間を「×」とした。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

以上のように、実施例と比較例を比較することにより、酸化亜鉛と、特定のイオン半径を有する正三価以上の価数を取り得る元素を特定の原子比で組み合わせることにより、異常放電を著しく抑制することが可能であることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】実施例1と比較例1のX線回折ピークを比較したものを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
亜鉛と、酸素イオンに6配位を仮定したときのイオン半径が0.7〜1.1Åの正三価以上の価数を取り得る元素A、酸素イオンに4配位を仮定したときのイオン半径が0.5〜0.7Åの正三価以上の価数を取り得る、元素Aとは異なる元素Mをそれぞれ少なくとも1種含み、Cuを線源とするX線回折パターン(XRD)の2Θ=30〜40°の範囲内に検出される回折ピークが六方晶系ウルツ型構造に帰属される(100)面、(002)面、(101)面のみから構成されることを特徴とする複合酸化物焼結体。
【請求項2】
元素Aが、In、Ti、Zr、Snの群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1に記載の複合酸化物焼結体。
【請求項3】
元素Mが、Al、Ga、Nbの群より選ばれる少なくとも1種の元素を含むことを特徴とする請求項1又は2に記載の複合酸化物焼結体。
【請求項4】
焼結体の相対密度が95%以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の複合酸化物焼結体。
【請求項5】
亜鉛化合物の粉末とその粉末の1次粒子径よりも小さい1次粒子径の元素Aと元素Mの化合物粉末とを、亜鉛、元素A及び元素Mの各原子比としてA/(A+M)が0.4以上、かつ原子比(A+M)/(Zn+A+M)が0.001〜0.17となるように原料粉末を混合する工程と、当該混合粉末を成形して成形体を作製する工程と、当該成形体を1000〜1600℃の範囲内で焼成して焼結体を作製する工程とを含むことを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の複合酸化物焼結体の製造方法。
【請求項6】
請求項1〜4のいずれかに記載の複合酸化物焼結体からなる複合酸化物スパッタリングターゲット。
【請求項7】
請求項6に記載の複合酸化物スパッタリングターゲットを用いて成膜してなる透明導電膜。

【図1】
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【公開番号】特開2010−120803(P2010−120803A)
【公開日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−295249(P2008−295249)
【出願日】平成20年11月19日(2008.11.19)
【出願人】(000003300)東ソー株式会社 (1,901)
【Fターム(参考)】