説明

複合金属粉末可変境界歯車及び方法

【課題】回転軸を形成する歯車の芯部の耐衝撃性と歯部の耐摩耗性とがともに優れた、粉末冶金法による歯車の製造方法および歯車を提供する。
【解決手段】圧縮型に、歯車の芯部を形成する部位、歯部を形成する部位の、おのおのに耐衝撃性に優れた金属粉末および耐摩耗性に優れた金属粉末を充填し圧縮成形する段階、得られた成形体を焼結、鍛造する段階を経て、緻密でネットシェイプな歯車を製造する。芯部と歯部の各金属材料の特性、および接合境界位置を調整することにより所望の性能を持つ歯車を得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鍛造金属粉末部品(forgedpowdermetalpart)、特に、複合金属粉末可変
境界部品(compositepowdermetalvariableboundarypart)、及び、その製造方法に
関する。
【背景技術】
【0002】
部品を生産するに当たり、費用、時間、及び、段階を減らすことができる製造工程につ
いての要求が存在していた。その製造工程の改善によってもたらされる利益は、先ず製品
を改善してより優れた寸法、機械的な、及び/又は、性能特性を有するものとする顧客側
の要求によって求められる。例えば、従来の差動サイド歯車(differentialsidegear)
は、以下の性能要求事項のうちいずれか又はその全てを有し得る:寸法精度(dimensiona
lprecision)、高せん断強度、及び、ブリネル抵抗性(brinnellingresistance)を要
求するスプライン領域(splinearea);寸法精度、表面仕上げ、及び、ケース適合性(c
asecompatibility)を要求するハブ(hub)及びスロスト面(thrustface);寸法精度
、表面仕上げ、及び、最適化プロファイルを要求する歯車ジオメトリ;及び、耐衝撃性、
耐磨耗性、耐剥離性(spallingresistance)、並びに、異なる表面及び芯部冶金(core
metallurgies)を要求し得る歯及び芯部の強度。異なる非コンパチブル製造方法、即ち、
キャスティング、スチール鍛造、又は、金属粉末鍛造によって、同じ部品、又はそれ以外
のものの異なる性能要求を達成する。
【0003】
図1によれば、こうした性能要件を満たすために、歯車10は、金属粉末14を鍛造し
た後、その歯車をケース浸炭して(casecarburizing)ほぼ一定の有効境界深さ(effect
ivecasedepth)16を得ることにより、製造される。各々の(歯車の)歯12に対する
一定のケース深さ(casedepth)16については、図1の部分断面図を参照されたい。し
かしながら、ケース浸炭歯車(casecarburizedgear)では、その部品が複合材料で構成
された場合に得られる歯車の本体に有利な性能特徴を提供するものの、改良された歯磨耗
性(toothwear)及び疲労強度(fatiguestrength)等の所望の機械的な特性が必ずしも
得られるものではない。製造工程によって悪影響を受けない点から時間、処理、又は、コ
ストを節約できる、最終製品におけるこれらの性能要件のより良いバランスを取ることが
有利であろう。
【0004】
金属粉末部品の性能要件を改善するための製造方法が米国特許第5,903,815号
(発明の名称:複合金属粉末部品)に記載されている。この方法は、圧縮・焼結される2
以上の別個の金属粉末で製造された部品を開示する。また、米国特許第6,148、68
5号(発明の名称:二重スプロケット/歯車構造及びその製造方法)には、圧縮・焼結し
て最終部品を得る、2以上の別個の金属粉末から歯車を製造する方法が記載されている。
これらの特許文献には、焼結によって得た複合金属粉末部品が記載されているだけである
。歯根(toothroot)に耐衝撃性(impactresistance)及び耐曲げ疲労性(bendingfa
tigueresistance)を提供し、複合可変境界層(compositevariableboundarylayer)
を提供し、又は、圧縮鍛造(compactionforging)によって十分緻密な部品(fullydens
epart)を提供しつつも、歯車の歯面(toothflank)に対し改良された耐荷重性(load
bearing)のような性能特性(performancefeature)を改良できる複合粉末プロセスを適
用することについては何ら記載されていない。
【0005】
したがって、歯根に改良された耐衝撃性及び耐曲げ疲労性を有する複合金属粉末可変境
界部品についてのニーズが存在していた。圧縮鍛造(compactionforging)により複合可
変境界層又は(実質的に)十分緻密な部品を提供することが有利である。また、複合金属
粉末部品に可変境界を設ける方法についてのニーズが存在していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第5,903,815号
【特許文献2】米国特許第6,148、685号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前述したニーズに基づいて、その表面にはより大きい耐歯磨耗性(toothwe
arresistance)をもたらし、かつ、その芯部(core)にはより大きい耐衝撃性(impact
resistance)をもたらす可変境界複合金属粉末歯車を提案したものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の鍛造複合歯車は、芯部から延設された複数の歯と、第1の金属粉末材料を有す
る第1の部分と、第2の金属粉末材料を有する第2の部分と、可変境界プロファイルと、
を含む。ここで、可変境界プロファイルは、前記第1の部分と、前記第2の部分との間イ
に設けられて、歯にはより良い耐歯磨耗性を、そして、歯車の芯部にはより良い耐衝撃性
を提供する。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、その表面により良い耐歯磨耗性を有すると共に、その芯部により良い
耐衝撃性を有する可変境界複合金属粉末歯車が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】図1は、従来技術のケース浸炭歯車(casecarburizedgear)の部分断面図である。
【図2】図2は、本発明の具体例に基づいて、鍛造後に本発明の製品を得るために必要とされる圧縮及び焼結後に製作された複合プリフォームの等角図(isomericview)である。
【図3】複合材料を有する図2のプリフォームの部分断面図である。
【図4】図4は、本発明の具体例に基づいて図2の複合プリフォームから製作された差動サイド歯車(differentialsidegear)の等角図である。
【図5】図5は、図4の差動サイド歯車の部分断面図である。
【図6】図6は、図5の差動サイド歯車の部分断面図である。
【図7】図7は、複合金属粉末境界部品を製造するための本発明の方法の具体例を概略的に示したものである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明をよりよく理解してもらうために、これから添付した図面等に基づいて本発明の
具体例を説明していく。
【0012】
図面において、同じ符号は、同様の部品を表す。したがって、異なる図面において同様
の符号が付される場合がある。一部の例においては、明確さなどの点から、異なる図面に
おける同様の部品について異なる符号を付する場合もあり得る。
【0013】
図2は、本発明の具体例に基づいて、鍛造後に本発明の製品を得るために必要とされる
圧縮及び焼結後に得た複合プリフォーム(compositepreform)84の等角図(isometric
view)である。
【0014】
図3は、複合材料を有する図2の複合プリフォーム84の部分断面図である。プリフォ
ーム84は、材料境界(materialboundary)59によって分離された第1の金属粉末材
料55及び第2の金属粉末材料57を含む。材料境界59は、金属粉末を圧縮型(compac
tiondie)に圧縮した後得られる2以上の材料の境界である。この材料境界59は、異な
る材料55,57間の正確な境界(precisedemarcation)として示されているが、実際
の材料境界線は、複合プリフォームを製造するために用いられた充填プロセスに依存する
材料の分離(separation)に近い。圧縮型に異なる金属粉末を充填して複合プリフォーム
を形成する技術は、この分野の当業者に知られているが、この明細書に記載した発明の理
解のために簡単に説明することとする。
【0015】
図4は、本発明の具体例に基づいて図2の複合プリフォーム84から製造された差動サ
イド歯車50の等角図である。差動サイド歯車50は、この明細書及び図6に示したよう
な可変境界プロファイル(variableboundaryprofile)58を有する複数の歯52を含
む。複数の歯52の各歯は、第1の表面54、及び、歯の芯部(core)又は根(root)5
6を有する。差動サイド歯車50は、回転軸60を有する。ここで、歯52は、歯車の回
転軸と概して同じ方向に半径方向外向きに延設されているが、前記回転軸に対して傾いて
いる。この差動サイド歯車50は、回転軸60と軸方向に合わせられた、軸方向のスプラ
イン内部領域(axiallysplinedinternalsection)62を備えている。差動サイド歯車
50は、複合プリフォーム84を圧縮鍛造して製造される。
【0016】
図5は、図4の差動サイド歯車40の部分断面図である。鍛造後、この差動サイド歯車
50には、第1の金属粉末材料55で構成された第1の領域51、及び、第2の金属粉末
材料で構成された第2の領域53が生じる。また、歯車50は、図6に示した可変境界プ
ロファイル58を含む。可変境界プロファイル58は、前述した性能特性を有するが、必
ずしも浸炭部から製造される必要はなく、複合材料55、57の鍛造によって生じた材料
境界59から製造され得る。可変境界プロファイル58は、複数の歯52に向上された耐
歯摩耗性又は耐荷重性をもたらし、歯車の芯部56に向上された耐衝撃性及び耐曲げ性(
bendingresistance)をもたらす。また、第2の金属粉末材料57は、歯52に所望の性
能特性を保持しつつも、歯車50のスプライン62の有利な性能特性を得るように選択さ
れ得る。
【0017】
複合材料は、各材料領域に戦略的に用いられ得る。また、プリフォームに更なる又は多
重の材料領域を設けることで、最終鍛造部品又は歯車の選択された部分に多重複合可変境
界プロファイルをもたらし、それにより、選択的な性能特性を達成することができる。
【0018】
図6は、図5の差動サイド歯車50の部分断面図である。この差動サイド歯車50は、
複合可変境界プロファイル58を含んでいる。可変境界プロファイル58は、図5のよう
な特定の断面図では、偶然に材料境界59と一致しているが、材料境界59は、図6に示
したような可変境界プロファイル58を決定するものではない。
【0019】
歯車50における第1の表面54は、先端面(tipsurface)64、ピッチ線表面(pit
chlinesurface)66、根フィレット表面(rootfilletsurface)68、及び、根直径
(rootdiameter)又はランド表面(landsurface)70を含んでいる。可変境界プロファ
イル58は、先端面において2.4mm、ピッチ線表面において1.9mm、根フィレッ
ト表面において0.4mm、及び、根ランド表面において0.8mmの有効境界(effect
iveboundary)を有し得る。この具体例では特定の数値を示したが、可変境界プロファイ
ルは特定の表面の断面上に一定でない有効境界プロファイルを有してもよく、ここに示し
た特定のプロファイルに限られない。
【0020】
可変境界プロファイル58は、境界比(boundaryratio)で表すことができる。有効境
界比(effectiveboundaryratio)は、先端面64で測定した境界深さ(boundarydepth
)を根フィレット表面(rootfilletsurface)68で測定した境界深さに比較するか、
ピッチ線表面(pitchlinesurface)66で測定した境界深さを根フィレット表面66で
測定した境界深さに比較するか、又は、根ランド表面(rootlandsurface)70で測定
した境界深さを根フィレット表面68で測定した境界深さに比較することにより得ること
ができる。例えば、先端面64対根フィレット表面68の可変境界比は6:1であり、ピ
ッチ線表面66対根フィレット表面68の可変境界比は、19:4であり、そして、根ラ
ンド表面70対根フィレット表面68の可変境界比は2:1である。
【0021】
最大の深さからより浅い深さまでの可変境界プロファイル58における境界比(bounda
ryratio)が、6:1であることが有利である。なぜならば、耐歯磨耗性及び耐衝撃性な
どの所定の機械的な特性に優れたものを得ることができるからである。
【0022】
また、歯52の第1の表面54として第1の金属粉末材料55を選択して、鍛造歯車に
おいて58HRC以上の表面硬度を達成することが望ましい。43HC未満の硬度を有す
る歯車の芯部56は第2の金属粉末材料57で設けることが望ましい。これに関して、第
2の金属粉末材料は、2%未満の炭素含量を有する低鉄合金スチールのような非硬化材(
non-hardeningmaterial)を有するように選択され、そして、第1の金属粉末材料は、よ
り高い炭素含量を有する異なる種の鉄スチールからなる硬化材(hardeningmaterial)で
ある。
【0023】
可変境界プロファイル58は、歯根56により良い耐衝撃性を提供するか又はスプライ
ン62により良いせん断抵抗を提供しつつも、第1の表面54にはより良い耐歯磨耗性(
toothwearresistance)を有する歯車を提供することができる。この可変境界プロファ
イル58は、プリフォームを戦略的に圧縮鍛造することによって得られる有効境界プロフ
ァイルであっても良い。したがって、可変境界プロファイル58は、この明細書に記載し
た鍛造工程によって得ることができる。
【0024】
差動サイド歯車50に関してプロセスを説明するが、可変境界境界プロファイル58は
、かさ歯車(bevelgear)、差動歯車(differentialgear)、又は、ピニオン歯車(小
歯車)を含めて様々な歯車又は部品に対しても得ることができる。
【0025】
この差動サイド歯車50の材料部のうち一つは、低合金の(lowalloy)、十分に圧縮
された(fullycompacted)鉄金属粉末材料で構成され得る。しかしながら、その歯車は
、様々な種の鍛造金属粉末スチールで構成され得る。
【0026】
可変境界金属粉末歯車50の製造法に戻ると、図7には、複合金属粉末可変境界部品の
得るための本発明の方法の具体例が概略的に示されている。このプロセスは、混合ステッ
プ219、220から始まる。ここで、各材料は、圧縮型(compactionform)に充填可
能な状態となる。その後、各材料を戦略的に圧縮型に配置する充填ステップ221、22
2ステップを行う。充填ステップが完了すると、圧縮ステップ224、焼結ステップ22
6、鍛造ステップ232、及び、冷却ステップ234を行う。鍛造後工程(postforging
operation)(図示せず)は、歯車を更に改良するための工程である。これらのプロセス
段階については当業者(金属粉末の鍛造に関する技術分野)に良く知られているために、
本発明の一部の特徴についてのみ後述する。この観点から、材料の選択、温度処理(temp
eratureprocessing)、及び、圧縮時の圧力については簡単に言及する。
【0027】
混合ステップ219、220では、必要とされるバインダー又は滑剤を含んだ金属粉末
(混合によって得られた、充填ステップ22において圧縮型(compactingform)に充填
するに適したほぼ均一な混合物)を用意する。任意の分離ステップ223は、充填ステッ
プ221、222に含まれて、圧縮型への材料の配置を促し得る。2つの混合ステップ2
19及び220、及び、2つの充填ステップ221及び222が示されているが、更なる
所望の材料それぞれに更なる混合又は充填が必要とされる場合もあり得る。充填ステップ
221、222は、例えば、第2の表面56用の材料57に先立って、第1の表面54が
戦略的にプリフォームに配置されるように、順次行われ得る。しかしながら、この場合に
おいても、充填ステップ221、222が、同時に、又は、ほぼ同時に行われることもあ
り得る。
【0028】
圧縮ステップ224は、2以上の異なる金属粉末材料を圧縮型へ圧縮して、プリフォー
ムを得ることを含む。圧縮の前に、圧縮型の第1の部分に第1の金属粉末材料を充填し、
その後、(必要に応じて、セパレーター223を用いて)圧縮型の第2の部分に第2の
金属粉末材料を充填する。型空洞(diecavity)への充填が終わると、型空洞内で複合金
属粉末を圧縮してプリフォームを形成する。このプリフォームは、この明細書に記載した
とおり、(最終鍛造部品において)可変境界プロファイルが形成される1以上の断面表面
(cross-sectionalsurface)を含んでいる。その後、このプロセスは、焼結、鍛造、及
び、冷却ステップにより完了し、それにより、第1の金属粉末材料を有する第1の部分、
及び、第2の金属粉末材料を有する第2の部分を備えた歯車が得られる。プリフォームを
形成する充填ステップにおける第1及び第2の部分が、必ずしも最終製品の第1及び第2
の部分と同じ境界を有する必要はない。
【0029】
焼結ステップ226は、当業者に知られた方法で行われ得る。複合材料のうち一部は浸
炭又は「焼結−浸炭過程(sint-carbprocessing)」に資するので、その材料は、浸炭ス
テップを施すことで、鍛造プロセスの前に更なる有利な結果をもたらし得る。
【0030】
可変鍛造又は鍛造ステップ232は、プリフォームを鍛造温度及び鍛造圧力にて鍛造し
て、実質的に緻密な(substantiallydense)ネットシェイプの部品を得ることを含む。
歯車の可変境界プロファイルは、各歯にほぼ対称的なプロファイルを生じさせる。それは
、鍛造プロセスの対称的な特性及びプリフォームの対称的な特性に起因する。しかしなが
ら、多重可変境界プロファイルを得るために任意の浸炭ステップ又は更なる鍛造ステップ
を用いることもあり得る。可変境界プロファイルは、鍛造時に一組の鍛造型を用いて、異
なる金属部の臨界流れ(criticalflow)を可変的に改良することによって得ることがで
きる。このとき、複合金属粉末の定められた境界は型部に戦略的に圧縮される必要がある
。ここで、プリフォームの一部は鍛造時に引伸ばされ、かつ薄くされ、そして、プリフォ
ームの他の部分は、厚くされ、かつ、深くされる。その結果、複合プリフォームから(複
数の)異なる金属粉末領域が得られる。
【0031】
一例において、複合可変境界(compositevariableboundaryprofile)を得るために
用いられた鍛造ステップは、プリフォームに材料境界層を戦略的に形成して、鍛造時に複
合金属粉末プリフォームの臨界流れを良くすることによって、更なる改良が可能である。
【0032】
冷却ステップ234によって、鍛造部に、所望の可変境界プロファイルを有する歯車を
生じさせる特定冶金(metallurgy)を設けることができる。この鍛造部の冷却ステップは
、オイル、水、空気中での急冷、又は、金属粉末鍛造法に適したその他の方法によって行
うことができる。
【0033】
冷却ステップの前に、鍛造部品を所定時間ドエルすること(dwell)によって、部品に
おける材料温度の安定化を図り、もって特性を良くすることも考えられる。
【0034】
また、鍛造前に前記プリフォームを鍛造前温度(pre-forgetemperature)に予熱する
ことで、鍛造時に所望の金属流れを改良することも考えられる。
【0035】
鍛造後処理ステップ(postforgingoperation)(任意工程)は、最終の詳細要求条件
に基づく製品のターニング(turning)、フェーシング(facing)、平面研磨(surfaceg
rinding)、スプライニング(splining)、及び、ブローチング(broaching)を含んでも
良い。それにより、洗浄、包装(packing)、又は、出荷に適した状態となる。多重材料
ワークピースに基づいて、これらのステップの最終等級(finishclass)を改良すること
ができる。例えば、非硬化(non-hardened)第2の材料57に基づいて、図4のスプライ
ン62により高いスプライン等級をもたらすことができる。これは、工具磨耗(toolwe
ar)を減らしつつもスプライン等級を改良することで、全体的な機械加工システムを改良
することである。
【0036】
金属粉末、圧縮形態(compactionform)、処理時間、処理温度、処理圧力、鍛造型、
及び、冷却方法の適切な選択及び組み合わせによって、可変境界プロファイルを有するほ
ぼネットシェイプの十分緻密な(十分に密集した)製品を得ることができ、それにより、
機械加工処理を必要とするとしてもその程度は最小限にとどまり、コスト削減及び性能改
良(性能向上)を促すことができる。
【0037】
明細書には様々なプロセスステップを記載したが、それらは、特許請求の範囲により定
まる本発明の範囲を制限するものではない。また、本発明は、幾つかの具体例に基づいて
説明されているが、本発明はこれらの具体例に制限されないものと解すべきである。した
がって、本発明は、以下の特許請求の範囲に記載された技術的思想に含まれる変更例、変
形例、及び、均等例を含む。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリフォームの形状に相当する圧縮型の第1の部分に第1の金属粉末材料を充填するス
テップと、
前記圧縮型の第2の部分に第2の金属粉末材料を充填するステップと、
前記圧縮型に前記粉末を圧縮して、前記プリフォームを形成するステップと、を含む2
以上の異なる金属粉末材料をプリフォームに予備成形する予備成形段階と、
前記プリフォームを焼結する段階と、
鍛造温度及び鍛造圧力にて前記プリフォームを鍛造して、前記第1の金属粉末材料を有
する第1の部分、前記第2の金属粉末材料を有する第2の部分、及び、前記第1部分と前
記第2部分との間に形成された境界プロファイルを有する実質的に緻密なネットシェイプ
の鍛造部品を得る段階と、
前記鍛造部品を冷却する段階と、
を順次行うことを特徴とする2以上の異なる金属粉末材料から歯車を製造する方法。
【請求項2】
前記予備成形段階が、前記金属粉末材料のうちいずれかを充填するために、前記圧縮型
に前記セパレーターを挿入することによる充填時の分離ステップと、圧縮前に前記圧縮型
から前記セパレーターを除去する除去ステップと、含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記境界プロファイルが、可変境界プロファイルである、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
歯車の芯部と、回転軸と、複数の半径方向の歯の芯部と、複数の半径方向の歯と、を有
する、請求項1に記載の方法により製造された、かさ歯車であって、
前記半径方向の歯が、前記かさ歯車の前記回転軸と概して同じ方向に延設され、かつ、
前記回転軸に対して傾けられ、
前記第1の部分によって前記複数の半径方向の歯の外面が形成され、そして、
前記第2の部分によって前記歯車の芯部と、前記複数の半径方向の歯の芯部とが形成さ
れることを特徴とするかさ歯車。
【請求項5】
前記複数の歯が、それぞれ先端面、ピッチ線表面、根フィレット表面、及び、根ランド
表面を含んだ第1の表面を有し、そして、
前記境界プロファイルが、前記可変境界プロファイルであり、かつ、約2:1の前記根
ランド表面対根フィレット表面の境界比、約6:1の前記先端面対前記根フィレット表面
の境界比、又は、約19:4のピッチ線表面対根フィレット表面の境界比のうちいずれか
一以上の境界比を満たす、請求項4に記載のかさ歯車。
【請求項6】
前記第1及び第2の金属粉末材料が、異なる低合金鉄材料である、請求項1に記載の
方法。
【請求項7】
回転軸を形成する歯車の芯部と、
前記歯車の芯部から前記回転軸と概して同じ方向に延び、かつ、前記回転軸に対して傾
いている半径方向の複数の歯と、
少なくとも部分的に前記複数の半径方向の歯を形成する第1の金属粉末材料と、
前記歯車の芯部を形成すると共に、前記複数の半径方向の歯の芯部を部分的に形成する
第2の金属粉末材料と、
を有する、請求項1に記載の方法によって製造された、かさ歯車であって、
互いに異なる硬度特性を有する前記第1及び第2の金属粉末材料の焼結及び鍛造によっ
て、前記第1の金属粉末材料と、前記第2の金属粉末材料との間に可変境界プロファイル
が形成されることを特徴とするかさ歯車。
【請求項8】
前記かさ歯車が、前記歯車の芯部に軸方向の内部領域を有するピニオン歯車である、請
求項7に記載のかさ歯車
【請求項9】
前記第1の金属粉末材料が、58HRC以上の表面硬度を有している、請求項7に記
載のかさ歯車。
【請求項10】
前記第2の金属粉末材料が、43HRC未満の硬度を有している、請求項7に記載の
かさ歯車。
【請求項11】
前記第1の金属粉末材料が、硬化材であり、そして、前記第2の金属粉末材料が、非硬
化材である、請求項7に記載のかさ歯車。
【請求項12】
前記第2の金属粉末材料が、前記第1の金属粉末材料よりも低い炭素含量を有している
、請求項7に記載のかさ歯車。
【請求項13】
第1の金属粉末材料を含んだ芯部と、
前記芯部から延び、かつ、第2の金属粉末材料を少なくとも部分的に含む複数の歯と、
前記第1の金属粉末材料と前記第2の金属粉末材料との間に形成された可変境界プロフ
ァイルと、
を備えた、請求項1に記載の方法によって製造された、鍛造複合歯車であって、
前記第1の金属粉末材料及び前記第2の金属粉末材料が、異なる硬度特性を有していることを特徴とする鍛造複合歯車。
【請求項14】
前記第2の金属粉末材料が、58HRC以上の表面硬度を有している、請求項13に記載の鍛造複合歯車。
【請求項15】
前記第1の金属粉末材料が、43HRC未満の硬度を有している、請求項13に記載の鍛造複合歯車。
【請求項16】
前記第1の金属粉末材料が、非硬化材であり、そして、前記第2の金属粉末材料が、硬
化材である、請求項13に記載の鍛造複合歯車。
【請求項17】
前記可変境界プロファイルが、前記複数の歯で鍛造されたものである、請求項16に記載の鍛造複合歯車。
【請求項18】
前記第1の金属粉末材料が、前記第2の金属粉末材料よりも低い炭素含量を有している
、請求項13に記載の鍛造複合歯車。
【請求項19】
前記歯車が、回転軸を有するかさ歯車であり、そして、
前記複数の歯が、前記かさ歯車の前記回転軸と概して同じ方向において半径方向に延び
、かつ、前記かさ歯車の前記回転軸に対して傾いている、請求項13に記載の鍛造複合歯車。
【請求項20】
前記かさ歯車が、前記芯部において軸方向のスプライン内部領域を有する差動サイド歯
車である、請求項19に記載の鍛造複合歯車。
【請求項21】
前記複数の歯が、それぞれ先端面、ピッチ線表面、根フィレット表面、及び、根ランド
表面を含んだ第1の表面を有し、そして、前記可変境界プロファイルが、約2:1の前記
根ランド表面対根フィレット表面の境界比、約6:1の前記先端面対前記根フィレット表
面の境界比、又は、約19:4のピッチ線表面対根フィレット表面の境界比のうちいずれ
か一以上の境界比を満たす、請求項13に記載の鍛造複合歯車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−79451(P2013−79451A)
【公開日】平成25年5月2日(2013.5.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−267098(P2012−267098)
【出願日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【分割の表示】特願2010−521826(P2010−521826)の分割
【原出願日】平成19年8月17日(2007.8.17)
【出願人】(507341356)ジーケーエヌ シンター メタルズ、エル・エル・シー (20)
【Fターム(参考)】