説明

複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法及びその成形装置

【課題】複層ガラスに寸法誤差があっても、常に一定の品質を保つようにグレイジングチャンネルを押出し成形でき、成形不良を防止すると共に精度の高いグレイジングチャンネルを成形することが出来る。
【解決手段】分割成形ダイ13a,13bは、複層ガラス5の幅Hに対応して位置調整機構15により位置調整可能に構成され、複層ガラス5の周縁部の上下面に分割成形ダイ13a,13bを密着させてグレイジングチャンネル6を成形するための空間部X(成形部)を形成し得るように構成されている。前記押出し装置14は、分割成形ダイ13a,13bに配管16a,16bを介して接続されたプランジャー17a,17bと押出機18とで構成され、分割成形ダイ13a,13bには、前記空間部X(成形部)に連通する吐出穴19a,19bが形成され、この吐出穴19a,19bに前記プランジャー17に接続する配管16a,16bがそれぞれ連結されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法及びその装置に係わり、更に詳しくは複層ガラスの周縁部に成形するグレイジングチャンネルの成形不良を防止すると共に精度の高いグレイジングチャンネルを成形する複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法及びその成形装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の窓には、図2〜図4に示すように、アルミニウム等を素材とした窓枠を構成する断面凹状のサッシ枠1に複層ガラス5を装着する場合、複層ガラス5は複数枚のガラス板2a,2b間にゴム状弾性体から成る一次シール材3a及び二次シール材3b、及びスペーサ部材3cから成るスペーサ3を介して空間層4を形成し、更に複層ガラス5の周縁部にサッシ枠1と複層ガラス5との隙間の水密、気密を目的として断面凹状の異型断面に押出し成形されたグレイジングチャンネル6(シール用枠体)を嵌合装着し、このグレイジングチャンネル6を装着した複層ガラス5をサッシ枠1の底面部にセッティングブロック7を介在させて嵌合装着する方法がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような断面凹状のグレイジングチャンネル6は、軟質・硬質塩化ビニル樹脂(PVC)を押出し成形機により異型断面に押出し成形したもので、底面に複数の水抜き穴8を形成した複層ガラス5をサッシ枠1に装着する前段階で複層ガラス5の周縁部に嵌合装着しておくことで、外部との水密及び気密を保つと共に、風圧による応力の緩和、外力による割れの防止といった機能を複層ガラス5に付加させている。
【0004】
然しながら、このような複層ガラスにグレイジングチャンネルを装着する方法は、手作業で行われるために多くの手間と作業工数がかかり、また予め成形されたグレイジングチャンネル6の長さと複層ガラス5の周長とが一致していないため複層ガラス5の周長に合わせてグレイジングチャンネル6をその都度切断するとグレイジングチャンネル6の端部が無駄になると言う問題があった。
【0005】
このような問題を解決するために、複層ガラス5の周縁部にグレイジングチャンネル6を押出し成形で一体化させ、作業効率を向上させた複層ガラスの製造方法も提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0006】
この製造方法は、図5に示すように水平に設置した複層ガラス5の周縁部を断面コ字状の成形ダイ9に内装された一対のスライドダイ10間に挿入し、スライドダイ10をシリンダー11を介して圧着させた状態でスライドダイ10と複層ガラス5との空間部Xにグレイジングチャンネル6の成形素材6a(溶融樹脂)を押出して成形することにより一体化させる方法である。なお、図5において上記図2〜図4の従来例と同一構成要素は同一符号を付して説明は省略する。
【0007】
然しながら、このような方法は、複層ガラス5が単層ガラスに比べてガラスの平行度、端末面の段差等の大きな寸法のバラツキがあり、スライドダイ10を一方向から押し付ける方法では部分的に溶融した成形素材6aの漏れや、偏肉が生じると言う問題があった。
【0008】
また、複層ガラスの厚さが異なる場合、スライドダイのスライド量も異なり、スライドダイ内の流路が変化するために、複層ガラスを挟んで両面での押出し量あるいは成形後の寸法が異なると言う問題もあった。
【特許文献1】特開2004−3318号公報
【特許文献1】特許第3135841号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、複層ガラスに寸法誤差があっても、常に一定の品質を保つようにグレイジングチャンネルを押出し成形でき、成形不良を防止すると共に精度の高いグレイジングチャンネルを成形することが出来る複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法及びその成形装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法は、横向きに配置した前記複層ガラスの周縁部の上下面に、各々位置調整可能な分割した分割成形ダイを着脱可能に配置し、複層ガラスのそれぞれにダイを各々位置調整可能に配置した後、前記成形ダイまたは複層ガラスの少なくとも一方を移動させながら、前記成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出し成形しながら塗布することを要旨とするものである。
【0011】
ここで、前記グレイジングチャンネルの成形素材が、熱可塑性エラストマーであり、また前記成形ダイと複層ガラスとの間に、押出し装置により一定圧に制御した前記成形素材を連続的に吐出させるのが好ましい。
【0012】
また、この発明は上記目的を達成するため、支持台上に横向きに配置した複層ガラスの周縁部の上下面に位置調整機構を介して着脱可能に配置した分割成形ダイと、この分割成形ダイに接続し、かつ分割成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出す押出し装置とで構成したことを要旨とするものである。
【0013】
ここで、前記押出し装置が、分割成形ダイにそれぞれ接続されるプランジャーと押出機とで構成するのが好ましい。
【0014】
このように、複層ガラスを横向きに配置した状態で、複層ガラスの周縁部に配置した成形ダイまたは複層ガラスの少なくとも一方を移動させながら、前記成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出し成形しながら塗布することで、グレイジングチャンネルの成形不良を防止すると共に精度の高いグレイジングチャンネルを成形することが出来るものである。
【発明の効果】
【0015】
この発明は、上記のように横向きに配置した前記複層ガラスの周縁部の上下面に、各々位置調整可能な分割した分割成形ダイを着脱可能に配置し、複層ガラスのそれぞれにダイを各々位置調整可能に配置した後、前記成形ダイまたは複層ガラスの少なくとも一方を移動させながら、前記成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出し成形しながら塗布するので、例え複層ガラスに寸法誤差があっても、常に一定の品質を保つようにグレイジングチャンネルを押出し成形でき、成形不良を防止すると共に精度の高いグレイジングチャンネルを成形することが出来る効果がある。
【0016】
また、この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形装置は、支持台上に横向きに配置した複層ガラスの周縁部の上下面に位置調整機構を介して着脱可能に配置した分割成形ダイと、この分割成形ダイに接続し、かつ分割成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出す押出し装置とで構成したので、比較的簡単な構成によりグレイジングチャンネルを押出し成形でき、しかも常に一定の品質を保つようにグレイジングチャンネルを押出し成形し、精度の高いグレイジングチャンネルを成形出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。 なお、従来例と同一構成要素は、同一符号を付して説明は省略する。
【0018】
図1は、この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法を実施するための成形装置の概略構成図を示し、この成形装置は、複層ガラス5を水平または一定の傾斜角度で横向きに配置する支持台12と、複層ガラス5の周縁部の上下面に着脱可能に配置する二分割された分割成形ダイ13a,13bと、この分割成形ダイ13a,13bと複層ガラス5との空間部X(成形部)に、グレイジングチャンネル6(シール用枠体)を構成するオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等から成る成形素材6aを連続的に押出す押出し装置14とで構成されている。
【0019】
前記複層ガラス5は、従来と同様に二枚のガラス板2a,2b間に、ホットメルト(接着剤)から成る一次シール材3a,熱可塑性樹脂材料,或いは反応性樹脂材料から成る二次シール材3b、及びアルミニウム,熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー等の材料で、予め乾燥剤が封入もしくは含有されたスぺーサ部材3cから構成されたスペーサ3を介して空間層4を形成したものである。
【0020】
なお、複層ガラス5は水平な支持台12に対して0°〜45°で任意に設定出来るものである。また、前記支持台12は、複層ガラス5を水平、または一定の傾斜角度で配置出来るものであれば水平である必要はなく、一定の角度で傾斜、あるいは連続的に傾斜しているものでも良い。
【0021】
また前記分割成形ダイ13a,13bは、複層ガラス5の幅Hに対応してシリンダー等の位置調整機構15により幅調整の他、ガラスの平行度や端末面の段差の微妙なガラスとのフィッティング位置を調整可能にするように構成され、複層ガラス5の周縁部の上下面に分割成形ダイ13a,13bを密着させてグレイジングチャンネル6を成形するための空間部X(成形部)を形成し得るように構成されている。
【0022】
前記押出し装置14は、分割成形ダイ13a,13bに配管16a,16bを介して接続されたプランジャー17a,17bと押出機18とで構成され、分割成形ダイ13a,13bには、前記空間部X(成形部)に連通する吐出穴19a,19bが形成され、この吐出穴19a,19bに前記プランジャー17a,17bに接続する配管16a,16bがそれぞれ連結されている。
【0023】
次に、上記のような成形装置により複層ガラス5の周縁部の上下面に対してグレイジングチャンネル6を押出し成形により連続的に成形する方法について説明する。
【0024】
先ず、予め成形された複層ガラス5を支持台12上に水平に配置し、複層ガラス5の周縁部の上下面に分割成形ダイ13a,13bを所定位置に配置すると共に、位置調整機構15により複層ガラス5の周縁部の上下面に対して分割成形ダイ13a,13bの成形部を密着させる。
【0025】
このような状態から、押出し装置14の押出機18を駆動して、溶融したオレフィン系熱可塑性エラストマー(TPO)等から成る成形素材6aをプランジャー17a,17bに供給すると共に、このプランジャー17a,17bから配管16a,16bを介して分割成形ダイ13a,13bの吐出穴19a,19bに所定圧力の成形素材6aを吐出させる。そして、吐出穴19a,19bからは、前記分割成形ダイ13a,13bと複層ガラス5との空間部X(成形部)に成形素材6aを押出して成形する。
【0026】
この発明に用いられる成形素材6aは、グレイジングチャンネル6の機能である気密、水密性を有し、かつ熱によって溶融した押出し成形が可能な材料であれば何れのものも使用可能である。例えば、JISA 5756 には、グレイジングチャンネル用の材料物性規格が規定されているが、これに準じていることが望ましい。具体的には、塩化ビニル樹脂等の熱可塑性樹脂、オレフィン系、ポリアミド系、ポリエステル系、シリコーン系、フッ素系、ウレタン系等の熱可塑性エラストマー等が挙げられる。
【0027】
この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形工程において、複層ガラス1枚、1枚の処理の間に短時間ではあるがインターバルを取る必要があるため、成形素材の溶融状態での耐熱性も必要であり、熱的安定性の低い塩化ビニル樹脂よりも、むしろ上記熱可塑性エラストマーが適しており、その中でも汎用性と圧縮永久歪の小さい、動的加硫タイプのオレフィン系熱可塑性エラストマーが特に有効に使用出来る。
【0028】
この際、前記複層ガラス5または分割成形ダイ13a,13bの一方を固定し、他方を移動させて複層ガラス5の周縁部に対して所定形状のグレイジングチャンネル6を連続的に押出し成形するものである。なお、移動速度及び成形素材6aの吐出圧力は、複層ガラス5の厚さや大きさ等に応じて任意に設定するものであり、複層ガラス5または分割成形ダイ13a,13bを同時に移動して成形することも可能である。
【0029】
以上のように、この発明では支持台12に複層ガラス5を横向きに配置した状態で、複層ガラス5の周縁部の上下面に配置した分割成形ダイ13a,13bまたは複層ガラス5の少なくとも一方を移動させながら、前記分割成形ダイ13a,13bと複層ガラス5との間にグレイジングチャンネル6の成形素材6aを連続的に押出し成形しながら塗布するので、例え複層ガラス5に寸法誤差(ガラスの平行度、端末面の段差等の寸法のバラツキ)があったとしても、それらを分割された分割成形ダイ13a,13bにより調整しながら取付けることで、常に一定の品質を保つようにグレイジングチャンネルを押出し成形でき、成形不良を防止すると共に精度の高いグレイジングチャンネル6を成形することが出来るものである。
【0030】
更に、グレイジングチャンネル6を寸法調整のための切断作業が少ないので、効率的な作業形態が可能で、かつグレイジングチャンネル端部をゴミとして廃棄する事もなくなるため、環境への悪影響を与えない工程と言うことも出来る。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法を実施するための成形装置の概略構成図である。
【図2】一般の窓枠部分の一部断面斜視図である。
【図3】図2のA部に装着されるグレイジングチャンネルの拡大断面図である。
【図4】従来のグレイジングチャンネルを嵌合装着した複層ガラスをサッシ枠に装着したサッシアセンブリ部位の断面図である。
【図5】従来のグレイジングチャンネルの製造工程の拡大断面図である。
【符号の説明】
【0032】
1 サッシ枠 2a,2b ガラス板
3a 一次シール材 3b 二次シール材
3c スペーサ部材 3 スペーサ
4 空間層 5 複層ガラス 6 グレイジングチャンネル 7 セッティグブロック
8 水抜き穴 9 成形ダイ
10 スライドダイ 11 シリンダー
X 空間部 6a 成形素材
12 支持台
13a,13b 分割成形ダイ
14 押出し装置 15 位置調整機構
16a,16b 配管
17a,17b プランジャー
18 押出機
19a,19b 吐出穴
H 複層ガラスの幅

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複層ガラスの周縁部にグレイジングチャンネルを介在させてサッシ枠に装着する複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法において、
横向きに配置した前記複層ガラスの周縁部の上下面に、各々位置調整可能な分割した分割成形ダイを着脱可能に配置し、複層ガラスのそれぞれにダイを各々位置調整可能に配置した後、前記成形ダイまたは複層ガラスの少なくとも一方を移動させながら、前記成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出し成形しながら塗布することを特徴とする複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法。
【請求項2】
前記グレイジングチャンネルの成形素材が、熱可塑性エラストマーである請求項1に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法。
【請求項3】
前記成形ダイと複層ガラスとの間に、押出し装置により一定圧に制御した前記成形素材を連続的に吐出させる請求項1または2に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形方法。
【請求項4】
支持台上に横向きに配置した複層ガラスの周縁部の上下面に位置調整機構を介して着脱可能に配置した分割成形ダイと、この分割成形ダイに接続し、かつ分割成形ダイと複層ガラスとの間にグレイジングチャンネルの成形素材を連続的に押出す押出し装置とで構成したことを特徴とする複層ガラス用グレイジングチャンネルの成形装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−124985(P2006−124985A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−312418(P2004−312418)
【出願日】平成16年10月27日(2004.10.27)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】