説明

複層ガラス用グレイジングチャンネル及びその取付け方法

【課題】複層ガラスの内部結露発生を防止すると共に、グレイジングチャンネルの取付け作業を簡素化出来、作業性及び生産性を向上させることが出来る複層ガラス用グレイジングチャンネル及びその取付け方法を提供する。
【解決手段】1は窓枠となる断面凹状のアルミニウム等のサッシ枠、5は二枚のガラス板2a,2b間に、ホットメルト(接着剤)から成る一次シール材3a,熱可塑性樹脂材料,或いは反応性樹脂材料から成る二次シール材3b、及びアルミニウム,熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー等の材料で、予め乾燥剤が封入もしくは含有されたスぺーサ部材3cから構成されたスペーサ3を介して空間層4を形成した複層ガラスを示している。複層ガラス5の周縁部には、ホットメルトから成る接着層10を介して複層ガラス5とサッシ枠1との隙間の水密、気密を目的としたグレイジングチャンネルと呼称される断面凹状の異型断面に押出し成形された熱可塑性エラストマーから成るシール用枠体6が嵌合装着してある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、複層ガラスをサッシ枠に装着するに使用する複層ガラス用グレイジングチャンネル及びその取付け方法に係わり、更に詳しくは複層ガラスの内部結露発生を防止すると共に、グレイジングチャンネルの取付け作業性及び生産性を向上させることが出来る複層ガラス用グレイジングチャンネル及びその取付け方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、建築物の窓には、図3〜図5に示すように、アルミニウム等を素材とした窓枠を構成する断面凹状のサッシ枠1に複数枚のガラス板2a,2b間にゴム状弾性体から成る一次シール材3a及び二次シール材3b、及びスペーサ部材3cから成るスペーサ3を介して空間層4を形成した複層ガラス5を装着する場合、複層ガラス5の周縁部にサッシ枠1と複層ガラス5との隙間の水密、気密を目的としてグレージングチャネルと呼称される断面凹状の異型断面に押出し成形されたシール用枠体6を嵌合装着し、このシール用枠体6を予め装着した複層ガラス5をサッシ枠1の底面部にセッティングブロック7を介在させて嵌合装着する方法が行われている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
上記のような断面凹状のシール用枠体6(グレイジングチャンネル)は、軟質・硬質塩化ビニル樹脂(PVC)を押出し成形機により底面に複数の水抜き穴8を備え、かつ異型断面に押出し成形したもので、複層ガラス5をサッシ枠1に装着する前段階で複層ガラス5の周縁部に嵌合装着しておくことで、外部との水密及び気密を保つと共に、風圧による応力の緩和、外力による割れの防止といった機能を複層ガラス5に付加させている。
【0004】
然しながら、シール用枠体6と複層ガラス5との間隙Xから浸入した雨水等の水分が二次シール材3b(二枚のガラス板2a,2b間の内部の気密性及び水密性を付与する目的で使用されている)を膨潤させ、複層ガラス5のガラス板2a,2bの内面に結露を発生させるといった長期耐久性に問題を発生させていた。
【0005】
また、シール用枠体6(グレイジングチャンネル)の複層ガラス5の周縁部に嵌合装着させる工程では、複層ガラス5の総層の厚さに応じた定型材料を準備しておく必要があるため、部材管理が困難であり、定型材料の切断作業(ガラス板のサイズに応じて一定の長さに調整する)や、嵌合装着作業自体が人手に頼った手作業であるため加工費が高いと言う問題があり、更に切断時に軟質・硬質塩化ビニル樹脂の切断屑が多量に発生するため環境上にも問題があった。
【0006】
更に、通常の複層ガラス5の製造工程では、複層ガラス5のガラスエッジ部を保護するために、上記のようなガラス板2a,2b間に二次シール材3bを打設後に保護テープを貼付ける必要があり、多くの手間と時間がかかると言う問題があった。
【特許文献1】特開2004−3318号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
この発明はかかる従来の問題点に着目し、複層ガラスの内部結露発生を防止すると共に、グレイジングチャンネルの取付け作業を簡素化出来、作業性及び生産性を向上させることが出来る複層ガラス用グレイジングチャンネル及びその取付け方法を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明は上記目的を達成するため、この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルは、複層ガラスのシール用枠体装着部分に、接着層を介してシール用枠体を一体的に接着したことを要旨とするものである。
【0009】
ここで、前記複層ガラスの表裏面の周縁部に、接着層を介して分割されたシール用枠体をそれぞれ装着したり、前記シール用枠体を、複層ガラスの周縁部の全周に接着層を介して連続的に装着するものである。また、前記接着層は、ホットメルトである。
【0010】
また、この発明の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法は、複層ガラスの周縁部に、接着層を介してシール用枠体を一定の形状に押出し成形と同時に一体的に接着することを要旨とするものである。
【0011】
ここで、前記複層ガラスの周縁部にシール用枠体を接着する際、接着材の塗布とシール用枠体の接着とを同時に行い、また前記複層ガラスの周縁部に、予め一定の形状に成形されたシール用枠体を装着する際、接着材を塗布または介在させた後、一体的に接着する。
【0012】
また前記複層ガラスの周縁部の全周囲に、接着材を介して前記シール用枠体を連続的に装着したり、前記複層ガラスの表裏面の周縁部に、接着材を介して分割されたシール用枠体をそれぞれ装着する。前記シール用枠体が、熱可塑性エラストマーであり、前記接着層が、ホットメルトである。
【発明の効果】
【0013】
この発明は、上記のように複層ガラスのシール用枠体装着部分に、接着層を介してシール用枠体を一体的に接着するので、複層ガラスの内部結露発生を防止すると共に、グレイジングチャンネルの取付け作業性を簡素化出来、多くの手間や作業時間の短縮化を図り、作業性及び生産性を向上させることが出来る効果があり、また複層ガラスの周縁部のガラスエッジ部を保護することが出来ると共に、環境に悪影響を与えない部材とすることが出来る効果がある。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、添付図面に基づき、この発明の実施形態を説明する。 なお、従来例と同一構成要素は、同一符号を付して説明は省略する。
【0015】
図1は、この発明の第1実施形態における複層ガラス用グレイジングチャンネル(シール用枠体)を嵌合装着した複層ガラスをサッシ枠に装着したサッシアセンブリ部位の断面図を示し、1は窓枠となる断面凹状のアルミニウム等のサッシ枠、5は二枚のガラス板2a,2b間に、ホットメルト(接着剤)から成る一次シール材3a,熱可塑性樹脂材料,或いは反応性樹脂材料から成る二次シール材3b、及びアルミニウム,熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー等の材料で、予め乾燥剤が封入もしくは含有されたスぺーサ部材3cから構成されたスペーサ3を介して空間層4を形成した複層ガラスを示している。
【0016】
前記複層ガラス5の周縁部には、ホットメルトから成る接着層10を介して複層ガラス5とサッシ枠1との隙間の水密、気密を目的としたグレイジングチャンネルと呼称される断面凹状の異型断面に押出し成形された熱可塑性エラストマーから成るシール用枠体6が嵌合装着してある。
【0017】
このシール用枠体6は、異型断面に押出し成形したもので、複層ガラス5をサッシ枠1に装着する前段階で複層ガラス5の周縁部に嵌合装着しておき、更にサッシ枠1の底面部にセッティングブロック7を介在させた状態で複層ガラス5を嵌合装着して構成するものである。また、このシール用枠体6を、複層ガラス5の周縁部の全周に接着層10を介して連続的に装着することが好ましい。
【0018】
前記熱可塑性エラストマーから成るシール用枠体6は、複層ガラス5の周縁部のシール用枠体装着部分に前記接着層10を介して一体的に接着するもので、シール用枠体6は、断面凹状に一体的に成形される。前記接着層10に使用されるホットメルトとしては、例えば、ブチルゴム,エチレンプロピレンゴム,スチレン系ブロックコポリマー,非晶性ポリオレフィン,ポリイソブチレン,ポリエステル等を主成分とするホットメルトや、ポリウレタンを主成分とする反応型ホットメルトを使用することが出来、好ましくは粘接着性を有し、シラン化合物を含有する。
【0019】
また、上記接着層10としては、ウレタン樹脂,シリコーン樹脂,エポキシ樹脂,アクリル樹脂等を主成分とする1液もしくは2液タイプの接着剤を使用することができ、好ましくはシラン化合物を含有する。シール用枠体6を押出し成形すると同時にガラス板2a,2bに接着させる場合には、ウレタン樹脂,アクリル樹脂を主成分とするプレアプライタイプの接着剤が有利であり、好ましくはポリエステル樹脂を骨格とするウレタン樹脂を主成分とするものである。
【0020】
図2は、この発明の第2実施形態における図1と同様な断面図を示し、この第2実施形態は、シール用枠体6を中央において分割して成形したものである。この実施形態では、分割されたシール用枠体6a,6bを底面に空間部Sを隔てて配設すると共に、第1実施形態と同様に、二枚のガラス板2a,2b間に、ホットメルト(接着剤)から成る一次シール材3a,熱可塑性樹脂材料,或いは反応性樹脂材料から成る二次シール材3b、及びアルミニウム,熱可塑性樹脂,熱可塑性エラストマー等の材料で、予め乾燥剤が封入もしくは含有されたスぺーサ部材3cから構成されたスペーサ3を介して空間層4を形成した複層ガラス5に組付けて構成するものである。
【0021】
即ち、複層ガラス5の周縁部に、上記と同様なホットメルトから成る接着層10を介して分割されたシール用枠体6a,6bを嵌合装着する。なお、その他の構成及び作用は上記第1実施形態と同様なので同一符号を付して説明は省略する。
【0022】
次に、複層ガラス用グレイジングチャンネル(シール用枠体)の取付け方法について説明する。
【0023】
先ず、複層ガラス5をシール用枠体6を介してサッシ枠1に装着する際、複層ガラス5の周縁部のシール用枠体装着部分に、ホットメルトから成る接着層10を塗布すると共に、押出機から一定の形状に押出し成形されたシール用枠体6を同時に一体的に接着するものである。
【0024】
具体的には、例えば、加工テーブル上に予め二枚のガラス板2a,2b間にホットメルト(接着剤)から成る一次シール材3a及び熱可塑性樹脂材料、或いは反応性樹脂材料から成る二次シール材3b、及びスペーサ部材3cから成るスペーサ3を介して空間層4を形成した複層ガラス5を水平に位置決め固定し、この複層ガラス5の周縁部のシール用枠体装着部分に、旋回可能な吐出ノズルを備えた三次元ロボットにより前記ホットメルトから成る接着層10と、熱可塑性エラストマーから成る異型断面に押出し成形されるシール用枠体6とを同時に押出して一体的に接着するものである。
【0025】
なお、三次元ロボットの吐出ノズルを所定位置に固定しておき、加工テーブル上に載置された複層ガラス5を回転させながら接着層10と熱可塑性エラストマーから成るシール用枠体6とを同時に接着することも可能である。
【0026】
また、前記複層ガラス5の周縁部のシール用枠体装着部分に、予め一定の形状に成形されたシール用枠体6を装着する場合には、シール用枠体装着部分に接着材を塗布または介在させた後、シール用枠体6を一体的に接着することも可能である。
【0027】
また、シール用枠体6は、複層ガラス5の周縁部の全周囲に接着材10を介して連続的に装着したり、または複層ガラス5の表裏面の周縁部に、接着材10を介して分割されたシール用枠体6をそれぞれ装着することも可能である。
【0028】
以上のように、複層ガラス5をシール用枠体6を介してサッシ枠1に装着する際、複層ガラス5の周縁部のシール用枠体装着部分に、ホットメルトから成る接着層10を塗布すると共に、押出機から一定の形状に押出し成形されたシール用枠体6を同時に一体的に接着するので、シール用枠体6と複層ガラス5との間隙Xから浸入した雨水等の水分が二次シール材3bの部分に浸入することが無く、従って複層ガラス5のガラス板2a,2bの内面に結露を発生させるのを防止できる。
【0029】
また、シール用枠体6(グレイジングチャンネル)の取付け作業を簡素化出来、多くの手間や作業時間の短縮化を図り、作業性及び生産性を向上させることが出来るものである。更に、複層ガラス5の周縁部のガラスエッジ部をシール用枠体6により保護することが出来ると共に、寸法調整のための切断作業が少ないので、環境に悪影響を与えない部材とすることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】この発明の第1実施形態における複層ガラス用グレイジングチャンネル(シール用枠体)を嵌合装着した複層ガラスをサッシ枠に装着したサッシアセンブリ部位の断面図である。
【図2】この発明の第2実施形態における複層ガラス用グレイジングチャンネル(シール用枠体)を嵌合装着した複層ガラスをサッシ枠に装着したサッシアセンブリ部位の断面図である。
【図3】一般の窓枠部分の一部断面斜視図である。
【図4】図2のA部に装着されるグレイジングチャンネルの拡大断面図である。
【図5】従来のグレイジングチャンネル(シール用枠体)を嵌合装着した複層ガラスをサッシ枠に装着したサッシアセンブリ部位の断面図である。
【符号の説明】
【0031】
1 サッシ枠 2a,2b ガラス板
3a 一次シール材
3b 二次シール材
3c スペーサ部材
3 スペーサ
4 空間層
5 複層ガラス
6,6a,6b シール用枠体
7 セッティグブロック
8 水抜き穴
10 接着層
X 間隙 S 空間部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚のガラス板間にスペーサを介して空間層を形成した複層ガラスをシール用枠体を介してサッシ枠に装着する複層ガラス用グレイジングチャンネルにおいて、前記複層ガラスのシール用枠体装着部分に、接着層を介してシール用枠体を一体的に接着して成る複層ガラス用グレイジングチャンネル。
【請求項2】
前記複層ガラスの表裏面の周縁部に、接着層を介して分割されたシール用枠体をそれぞれ装着した請求項1に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネル。
【請求項3】
前記シール用枠体を、複層ガラスの周縁部の全周に接着層を介して連続的に装着した請求項1または2に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネル。
【請求項4】
前記接着層が、ホットメルトである請求項1,2または3に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネル。
【請求項5】
複数枚のガラス板間にスペーサを介して空間層を形成した複層ガラスをシール用枠体を介してサッシ枠に装着する複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法において、
前記複層ガラスの周縁部に、接着層を介してシール用枠体を一定の形状に押出し成形と同時に一体的に接着する複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。
【請求項6】
前記複層ガラスの周縁部にシール用枠体を接着する際、接着材の塗布とシール用枠体の接着とを同時に行う請求項5に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。
【請求項7】
前記複層ガラスの周縁部に、予め一定の形状に成形されたシール用枠体を装着する際、接着材を塗布または介在させた後、一体的に接着する請求項5または6に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。
【請求項8】
前記複層ガラスの周縁部の全周囲に、接着材を介して前記シール用枠体を連続的に装着する請求項5,6または7に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。
【請求項9】
前記複層ガラスの表裏面の周縁部に、接着材を介して分割されたシール用枠体をそれぞれ装着する請求項5,6,7または8に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。
【請求項10】
前記シール用枠体が、熱可塑性エラストマーである請求項5,6,7,8または9に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。
【請求項11】
前記接着層が、ホットメルトである請求項5,6,7,8,9または10に記載の複層ガラス用グレイジングチャンネルの取付け方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate


【公開番号】特開2006−70574(P2006−70574A)
【公開日】平成18年3月16日(2006.3.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−255504(P2004−255504)
【出願日】平成16年9月2日(2004.9.2)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】