説明

複数のシリンダースリーブと、材料帯を固着した短いシリンダースリーブを有するシリンダークランクハウジングの製造方法

本発明は複数のシリンダースリーブ(1)を有するシリンダークランクハウジングの製造方法に関し、次のステップを含む:それぞれ、シリンダー頭部側に第1の末端と、クランクシャフト側に、第2の末端と、スリーブ本体(2)とを含む少なくとも2つのシリンダースリーブ(1)を用意する;鋳型の中に、シリンダースリーブを固定する;鋳造材料によって、シリンダースリーブ(1)を鋳込む。本発明は、さらにスリーブ本体(2)をもつシリンダースリーブ(1)に関する。本発明に従って、シリンダースリーブが、特に容易に位置決めでき、従来の長いシリンダースリーブと同様に簡単に挿入できるシリンダースリーブおよびその製造方法が得られ、方法に関していえば、少なくとも、クランクシャフト側の第2の末端から、軸線方向に突き出ている材料帯(3)を、それぞれのスリーブ本体(2)に固定するものであり、スリーブに関していえば、材料帯(3)がスリーブ本体(2)に固定され、スリーブ本体(2)の端部のひとつ目(4,7)から、軸線方向に突き出ているものであることが特徴である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数のシリンダーライナーをもつシリンダークランクケースの製造に関して、請求項1の前文に記載の手法に関する。本発明はさらに、材料帯[material strips]を固着させたシリンダーライナーに関して、請求項8の前文に記載の内容に関する。
【0002】
内燃機関のシリンダークランクケースの一般的な製造方法は、シリンダーライナーをシリンダークランクケースと鋳造する。シリンダーライナーは特別な耐久性を持つ材料で構成され、適切な摩擦学的特性を有している。これらのシリンダーライナーは、通常は、シリンダー穴の全長にわたって延びている。
【0003】
DE 101 53 720 C2では、実質的にピストン移動の上死点と下死点の間に延ばされたシリンダーライナーを有するシリンダークランクケースについて、そして、そのようなシリンダークランクケースの製造方法について述べている。シリンダークランクケースを製造するため、スリーブ付きの鋳型を利用する。シリンダークランクケースを鋳造する前に、短いシリンダーライナーは、スリーブに押圧され、そして、スリーブとしっかりつながった突起[projection]によって固定される。スリーブとシリンダーライナーは鋳型の中にスライドによって位置付けられる。そのシリンダーライナー自体が、従来よりも、軸方向長さがより短い点において、従来のシリンダーライナーとは異なる。この手法の欠点のひとつは、スリーブに対し押圧され、スリーブの突起によって固定されたシリンダーライナーは、スライドによって起こる動作の中で、ぶれて[tilt]しまう可能性があることである。シリンダーライナーは、硬質であるため、金型へのダメージを起こしてしまう可能性がある。加えて、シリンダーライナーは、完全にスリーブを覆わないので、そのため、鋳造段階での熱い鋳造金属とスリーブの接触がおきてしまう。これがスリーブの損耗を増大させる結果となる。
【0004】
DE 102 38 873 B4では、クランクシャフト側の末端表面に輪郭削り(contouring)のあるシリンダークランクケース関しての、シリンダーライナーについて示している。シリンダークランクケースの製造のための鋳造過程において、シリンダーライナーは、スリーブに対接して、輪郭削りされた[contoured]表面によって支持される。シリンダーライナーの閉じていて、コンターされていない部分は、シリンダーライナーのシリンダー頭部側とピストン運動中のボトムピストンリングの下死点の間で延びている。コンターされた末端表面において、スリーブの上に位置するシリンダーライナーは、コンターの最も高い点でのみスレーブによって支持されている。これが、シリンダーの方向に平行に走向するシリンダーライナー軸との正しい一致を達成するのをより困難にしている。そして、シリンダーライナーの傾きにつながる。スリーブは、輪郭削りの故に、シリンダーライナーによって覆われなくなった部分では、鋳造金属との接触に関して、さらに保護されていないことになる。
【0005】
JP 06 185 401Aでは、短いライナーを持つシリンダークランクケースについて述べている。ライナーの軸方向の延長は、この場合、ピストンが、ピストン運動の上死点にある時、ピストンリングまでの長さを上回りさえすればよいように採寸されている。
【0006】
DE 101 53 721 B4では、シリンダーライナーがシリンダークランクケースに鋳込まれているシリンダークランクケースを製造するための鋳造ツールについて述べている。シリンダーライナーは、シリンダー穴の全長まで延びておらず、製造中、シリンダー頭部側末端で、スペーサーリングによって金型の上部壁面から離隔されている。従って、そのように作られたシリンダークランクケースの中で、シリンダーライナーはシリンダーの頭部側において、鋳造材料によって固着され、しっかりと固定される。問題点は、あらかじめ許容された誤差範囲を守る必要があるために、スペーサーリングをとても精度良く位置づけしなければならないこと、そして、次以降の工程で、スペーサーリングを再び取りのぞかなければならないことである。
【0007】
EP 0 871 791 B1では、吹き付け成型AlSi合金によって、ツイン壁面チューブの製造方法について述べている。また、これはシリンダーライナーの製造に適しており、工業生産チューブとして、シリンダーライナーの特徴として必要な、耐水性、耐火性、汚染物質排出低減の性質を有している。
【0008】
EP 0 858 517 B1では、吹き付け成型による過共晶AlSi合金からのライナーの製造方法を述べている。
【0009】
EP 0 848 760 B1では、吹き付け成型による過共晶AlSi合金からのシリンダーライナーの別の製造方法を述べている。
【0010】
DE 102 25 657 B4では、複数のシリンダーライナーを含む鋳造アルミエンジンブロックの製造のための、鋳造部品について述べている。鋳造部品は複数の鋳型コアー、各々が軸線方向に延びた外径テーパーを持つ複数のシリンダージャケットに属するシリンダージャケットコアーからなり、特に、シリンダーライナーの位置決めのために使われる。シリンダーライナーは、各々が内径テーパーを有し、外径テーパーと一致し、シリンダーライナーの壁面の厚さの倍である。
【0011】
本発明の目的は、請求項1の前文にあるような方法と、請求項8の前文にあるようなライナーを提示するためであり、シリンダーライナーは、特に簡単に位置決めでき、従来の長いシリンダーライナーと同様に容易に装着することが可能となる。
【0012】
本発明に従って、この目的は、上述の方法の場合、請求項1を特徴付ける構成によって、そして、上述のシリンダーライナー場合、請求項8を特徴付ける構成によって達成された。
【0013】
本発明による複数のシリンダーライナーをもつシリンダークランクケース製造方法は、それぞれ、第1の末端がシリンダーヘッド側にあり、第2の末端がクランクシャフト側にある少なくとも二つのシリンダーライナーを用意し、ライナーを鋳型に固定し、そして、シリンダーライナーの周りに鋳造材料を鋳込むというステップを含み、少なくとも、シリンダーライナーのクランクシャフト側の第2の末端から軸方向に突出して、材料帯が各シリンダーライナー本体に固定されていることよって特徴付けられている。
【0014】
好ましくは圧延金属シートから形成した材料帯を、端縁をつき合わせてシリンダーライナー上に設けることによって、従来のシリンダーライナーに比較して軸方向長さがより短いライナー本体を有するシリンダーライナーが容易に設計できるようになった。この目的のため、ライナー本体と材料帯とから形成されるシリンダーライナーは、好ましくは従来のシリンダーライナーとおおよそ同じ長さとなる。これは、従来のシリンダーライナーを使用するに最適な公知のツールが、本シリンダークランクケースの製造方法にも継続して利用できることを意味している。比較的薄い材料帯が鋳造工程で溶着し、したがって、有利なことに凝固したシリンダークランクケースは、周囲を囲む鋳造材料と共通の部分を形作る。更なる有利さは、シリンダー動作面での熱的、機械的要求により、ライナー本体は、高価な、高品質な材料から製造しなければならないが、材料帯であれば、シリンダー動作面ではないので、より単純な材料で製造することができるから、従来のシリンダーライナーと比較して、短いライナー本体は、シリンダーライナーのコスト低減につながるということである。
【0015】
シリンダーライナーは、好ましくは鋳型の一部分に押圧されることにより、鋳型内に固定される。特に好適な本発明の手法においては、鋳型のこの部分は、従来のシリンダーライナーで知られている手法と同様の形状のスリーブである。スリーブに圧着されるシリンダーライナーは、スリーブの外周を囲んでいる。特に、ライナー本体と材料帯によって作られるシリンダーライナーの全長が、従来のシリンダーライナーの全長と等しい場合には、実質的に、従来のシリンダーライナーの位置決めとの違いがないので、ライナーを押圧固定することは、シリンダーライナーの位置決めをとても容易にする。ここに圧着されるシリンダーライナーの材料帯は、ライナー本体によって鋳造材料との接触から保護されることのない鋳型部分を、鋳造材料との接触から保護し、その為、鋳型の寿命を延ばす。
【0016】
短くされたライナー本体の軸方向の長さは、好ましくは、シリンダークランクケース内のピストンの移動長と等しくする。したがって、シリンダーライナーは、シリンダークランクケースの中において、実質的にライナー本体の軸方向の長さがピストンスカート部の移動量によって制限されているように構成される。シリンダーライナーは、さらに好ましくは、ライナー本体のシリンダー頭部側がシリンダー頭部ガスケットと同一平面上に位置するように位置決めされる。シリンダークランクケースに鋳込まれた、従来のシリンダーライナーより短いライナー本体は、シリンダークランクケースを形成する鋳造材料によって、クランクシャフト側の端面を囲まれている。ライナー本体は、外周において鋳造材料と結合しているだけではなく、クランクシャフト側の端面においても鋳造材料によって支持されているため、その後のエンジンの稼動時において、シリンダーライナーが、シリンダークランクケースから剥離するのを防止するのに役立つ。
【0017】
本発明の好適な実施例においては、各々のシリンダーライナーの、ライナー本体と材料帯を合わせた全体の長さは、実質的に、個々のシリンダー穴の長さに等しい。
【0018】
シリンダークランクケースが冷却し凝固した後の最終的な機械加工工程において、周りを囲む鋳造物につながった材料帯は、最終的にシリンダー内径から取り除かれるのが好ましい。このために使用される最終の機械加工手法は、好ましくは、ホーニング、シリンダー内径のボーリングや、例えば、内径旋盤のように、シリンダー表面を機械的に操作するチップフォーミング手法などの、他のいくつかの機械的作業を含む。
【0019】
本発明の方法の好ましい実施例においては、シリンダーライナーは、ライナー本体が鋳型内において、互いに少なくとも部分的に接触するように配置される。ここで好ましくはライナー本体外側は接触面が平面となるように加工される。このような手法は、特にシリンダーライナーのスペース削減に役立ち、それによって、同じ全体のサイズのエンジンでも、相対的に大きな排気量のエンジンを製造することが可能となる。ライナー本体に固定されている材料帯が、互いに接触しないように、シリンダーライナーが配置されているのが好ましい。これにより、シリンダーライナーのライナー本体からクランクシャフト側に突き出ている材料帯は、周りを囲む鋳造材料がスムーズに流れることを許容する。
【0020】
本発明のシリンダーライナーは、ライナー本体に、ライナーに固定された材料帯が、ライナー本体の少なくとも一端面から軸方向に突き出ていることが、特徴点である。ここで、材料帯は、好ましくは、ライナー本体の内側を少なくとも部分的に覆っている。そして、材料帯は、摩擦性接着、例えば、接着ボンドによって、または、ポジティブ インターロック、例えば、機械的な係合、または、摩擦性接着とポジティブ インターロックとの組み合わせによって、ライナー本体に固定することは、格別に容易である。材料帯は、ライナー本体内部の周面を覆って固定されているのがより好ましい。代替の実施例では、材料帯は、ライナー本体外周りを覆っている。
【0021】
ライナー本体に固定されている材料帯は、好ましくは、円筒形であってシリンダーライナーと同軸である。材料帯によって形成される円筒体の外直径は、円筒形のライナー本体の内直径と、等しくなるように、または、ライナー本体の中で、強固に着接[a firm seat]するような大きさに、調整されている。円筒形の材料帯は、ライナー内部の一部を覆い、ライナー本体の一端から軸方向に突き出しているのが好ましい。
【0022】
ある好適な実施態様においては、円筒形のカーブをもった材料帯は、ライナー本体のすべての内部表面を覆う。そのような実施態様では、特に均質な、そしてスムーズなシリンダーライナーの内部表面を構成することができる。
【0023】
シリンダーライナーの他の好適な代替例においては、材料帯を入れるくぼみを設けている。そのくぼみの深さは、好ましくは材料帯の厚さに等しく、本発明によるライナーは、軸の全長にわたって一定な内径をもち、全体として、とてもスムーズで均一な形を有したものとなる。くぼみの深さと、材料帯の厚さとは、最終機械加工工程でシリンダークランクケースの内部表面から取り除かれる材料の厚さを超えないものであることが好ましい。
【0024】
ライナー本体は、特に軽量金属や軽合金の吹き付け成型材料からできている。アルミニウム、マグネシウム、アルミシリコン合金、アルミベース合金、そしてマグネシウムベース合金からなるグループの材料は、特に、ライナー本体に良く適しており、また、吹き付け成型手法は、特に、ライナー本体の製造手法として良く適していることが明らかになっている。材料帯も、また、軽量金属または軽合金からできており、特にアルミニウムシートの形のものが好ましい。そのようなアルミニウムシートの材料帯は、容易に、そして安価に製造でき、例えは、柔軟性や融解温度などの材料特性の点においても、良く適している。
【0025】
材料帯は、好ましくはライナー本体とは異なる材料でできている。このことによって、材料帯とライナー本体とで要求される各々の基準によって、材料体にひとつの材料、そしてライナー本体には他の材料を選択できるという利点がある。
【0026】
さらに好ましくは、材料帯は、シリンダークランクケースの鋳造材料と同じ材料でできている。シリンダーライナー周辺へ鋳造材料を鋳込む過程で、材料帯は融合し、材料帯とライナー本体の特に良好な接合をもたらす。
【0027】
好ましくは、金属シートによって形成された材料帯の厚さは、ライナー本体の壁面厚さよりも小さい。材料帯の厚さは、シリンダーライナーの壁面厚さの0.5倍以下、さらに、0.25倍以下であるのが好ましく、シリンダーライナー本体の壁面厚さの0.1倍などの材料帯がより好ましく、特にライナー本体の壁面厚さの0.05から0.15倍の、より薄い材料帯が好ましい。このような薄い材料帯を選択するようにすることは、シリンダーとクランクケースの最終的な機械加工工程において、材料帯をシリンダー内径から完全に取り除くことを確実化する。
【0028】
本発明の、短いシリンダーライナーの製造方法は、軽量金属や軽合金の吹き付け成型によりビレットを製造し、ライナー本体の制作のための円筒形チューブ制作のためにビレットの押し出し成型を行い、材料帯を固定する準備のためライナー本体の内部表面の少なくとも一部分を表面機械加工し、そして、ライナー本体の内側に材料帯を固定するという手順を含む。
【0029】
吹き付け成型によるビレットの製造と、円筒形チューブの制作のための押し出し成型は、基本的にシリンダーライナーの製造方法として知られている内容を含んでいる。EP 0 858 517 B1、EP 0 848 760 B1、そして、EP 0 871 791 B1は、ここに引用して組み込む。しかしながら、新規の特徴は、摩擦性接続、ポジティブ インターロックや、これらの併用により、金属帯をはめ込む準備として、ライナー本体の内部表面を機械加工することである。内部表面の機械加工は、好ましくは、例えば、ねじ、薄片形構造、層状の突き出しおよび/又は沈んだくぼみや、あり溝様式のアンダーカットのくぼみの製造といった、標準プロファイルを作成するために、行う。そのような内部表面のプロファイル作成は、材料帯を圧着することで、耐久性の高い機械的結合を材料帯とライナー本体との間で達成し、材料帯をライナー本体にしっかりと固定することを可能にしている。表面機械加工は、更に好適には、、ライナー本体と結合した材料帯が、ライナー本体と同じ内径を有するように、内部表面のくぼみを制作する。代替手法として、好ましくは、材料帯は接着剤によって、ライナー本体の内部表面に固定される。
【0030】
1つの代替手法において、表面機械加工がライナー本体の外部表面に対してなされ、材料帯はライナー本体の外部表面に固定される。これにより、ピストン走行面に接するシリンダー内径の、クランクシャフト側の開口を大きくし、ピストンを支持する連結棒の運動性向上という優位性をもたらす。円筒形に曲げられた材料帯の軸線方向に伸びる端縁は、互いに突合せで接し、材料帯は閉じた形となり、円筒形に曲げられた材料帯は、閉じた円筒面となるよう作成される。
【0031】
さらなる優位性ならびに特徴は、次の最適な具体的実施例と従属請求項において示される。
【図面の簡単な説明】
【0032】
発明は、より詳しく、以下の、発明の好適な説明のための具体的実施例と添付図面とによって説明される。
【図1】図1は、本発明によるシリンダーライナーの、第一の好適な実施例の、縦方向断面図である。
【図2】図2は、本発明によるシリンダーライナーの、第二の好適な実施例の、縦方向断面図である。
【図3】図3は、図2のシリンダーライナーの、Xとして表示された部分の詳細を示した模式図である。
【図4】図4は、図1のシリンダーライナーの、Yとして表示された部分の詳細を示した模式図である。
【図5】図5は、図4で示された部分の代替例を示した図である。
【図6】図6は、図4で示された発明によるシリンダーライナーの、更なる代替例の詳細を示した図である。
【0033】
図1に示されたシリンダーライナー1は、円筒形ライナー本体2と、ライナー本体2の内部表面に固定された材料帯3とを含む。材料帯3は、L1で示された全長を有し、ライナー本体2のクランクシャフト側の末端面からL2で示される距離だけ突き出ている。シリンダーライナー1の軸方向の全長はLによって示される。図1と2で示される実施例においては、材料帯3の軸線方向への長さL1はライナー本体2の軸線方向への長さより短い。しかしながら、代替例として、材料帯3の軸線方向への長さL1は、また、特に、材料帯3がライナー本体2のシリンダーヘッド側の末端面のところまで伸びている時には、ライナー本体2の軸線方向への延長と等しいか、より長くてもよい。
【0034】
ライナー本体2と材料帯3との結合は、図2と3から特によく理解できる。ライナー本体2の内側は、サメのヒレの形をしたプロファイリング5があり、アンダーカットの作用により、ライナー本体の中に材料帯3が押し込まれた際に、両者の極めて良好な結合をもたらす。そのプロファイリングは、材料帯によって覆われた内部表面全体に亘って、回転対称になっている。
【0035】
図示されてないが、ひとつの代替例においては、プロファイリングを形成した部分が、材料帯によって覆われた内部表面の部分すべてではなく、回転対称な一部分のみである。特別なプロファイリングを有する回転対称の部分は、特別なプロファイルがない部分によって、軸方向に中断されている。図示されているサメのヒレの形をしたプロファイリングの代わりに、代替の実施例においては、例えば、のこぎりの歯や、あり溝様式プロファイルのようなものが、アンダーカットがあるものやないものとして、使用される。
【0036】
さらなる代替の実施例(図示せず)として、材料帯は、シリンダーライナーの内部に、例えば、接着剤のような摩擦性の結合によって、シリンダーライナーの内部に固定されている。この具体例では、ライナー本体のプロファイル形成加工は必要ない。
【0037】
プロファイリングの代わりに、図6で示されるライナー本体2は、材料帯3を収容するため、くぼみ6がある。材料帯3の内部表面とライナー本体2の内部表面は、従って、共通の面を形作る。容易にわかるように、材料帯3の厚さは、ライナー本体2の壁面厚さよりも大幅に薄い。
【0038】
シリンダークランクケースを製造するために、鋳造金型の一部がシリンダーライナー1によって囲まれることになるように、シリンダーライナー1は、クランクシャフト側の末端面4から突き出ている材料帯3によって鋳造金型の一部分に圧着する。シリンダーライナー1は、周囲に鋳込まれた液体鋳造材料があるため、ライナー本体2の外部円周面8の少なくとも一部は、鋳造材料と接触する。ライナー本体2と鋳造材料との接合を改善するために、プロファイリングや、表面コーティングが、外側円周表面8に施されてもよい。
【0039】
特に図4と6から、すぐに理解できることは、ライナー本体2の末端面4aは、軸方向に延長して延びる材料帯3の外部表面に対して、実質的に垂直であることである。代替の実施例として、特に図5から、すぐに理解できることは、末端面4aが、材料帯3に対して鋭角になっていることである。この実施例は、シリンダークランクケースにシリンダーライナー1を鋳造するとき、鋳造材料は、クランクシャフト側の末端面4から鋳造金型に入っていくときに、優位性がある。鋳造材料は、その後、端末面7から鋭角に立った末端面4aによって、シリンダーライナー1のシリンダー頭部側の末端面7方向に導かれ、図4で示される具体例と比較して、液体鋳造材料の乱流をより低減している。それによって、シリンダーライナー1のシリンダークランクケースへの接着を改良している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のシリンダーライナー(1)を持つシリンダークランクケースの製造方法であって、
各々、第1の、シリンダー頭部側末端と、第2の、クランクシャフト側末端と、ライナー本体とを有する、少なくとも2つのシリンダーライナー(1)を用意するステップと、シリンダーライナー(1)を鋳型内に固定するステップと、シリンダーライナー(1)の周りに鋳造金属を鋳込むステップを含み、シリンダーライナーの少なくとも第2のクランクシャフト側の端面軸線方向に突き出る材料帯(3)を、各々のライナー本体(2)に固定することを特徴とする、前記方法。
【請求項2】
各々のシリンダーライナー(1)はシリンダー穴を形成するための鋳型の一部分に材料帯(3)を押圧すことによって固定されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ライナー本体(2)の長さが、シリンダークランクケース内のピストンの移動長と実質的に等しいことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
各々のシリンダーライナー(1)の、ライナー本体(2)と材料帯(3)とが接合した長さが、各々のシリンダー穴の長さと実質的に等しいことを特徴とする、請求項1〜3のいずれかに記載の方法。
【請求項5】
シリンダーライナー(1)の周りに鋳造がおこなわれた後に、材料帯(3)を取り除くステップを更に含む、請求項1〜4のいずれかに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも2つのシリンダーライナー(1)のライナー本体(2)が、鋳型内に配置されるとき、少なくとも部分的に、互いに接触していることを特徴とする、請求項1〜5のいずれかに記載の方法。
【請求項7】
ライナー本体に配置された材料帯(3)が、互いに接していないことを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ライナー本体(2)を含むシリンダーライナー(1)であって、材料帯が、ライナー本体(2)に固定され、少なくともライナー本体(2)の一端(4,7)から軸方向に突き出ていることを特徴とする、前記シリンダーライナー。
【請求項9】
材料帯(3)が少なくとも部分的にライナー本体の内部を覆っていることを特徴とする、請求項8記載のシリンダーライナー。
【請求項10】
材料帯(3)が、シリンダーライナー(1)と同軸の円筒形の形状を有していることを特徴とする、請求項8または9記載のシリンダーライナー。
【請求項11】
材料帯(3)が、ライナー本体(2)の内側に、機械的なカップリングによって固定されていることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項12】
材料帯(3)が、ライナー本体(2)の内側に、摩擦性の接続によって固定されていることを特徴とする、請求項8〜10のいずれかに記載のシリンダーライダー。
【請求項13】
材料帯(3)を収容するために、ライナー本体(2)にくぼみ(6)を形成することを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項14】
ライナー本体(2)が、吹き付け成型材料で構成されていることを特徴とする、請求項8〜13のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項15】
ライナー本体(2)が、軽量金属または軽合金で構成されていることを特徴とする、請求項8〜14のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項16】
材料帯(3)が、軽量金属または軽合金で構成されていることを特徴とする、請求項8〜15のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項17】
材料帯(3)が、ライナー本体(2)とは異なる材料で構成されていることを特徴とする、請求項8〜16のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項18】
材料帯(3)の厚さが、ライナー本体(2)の壁面の厚さより薄いことを特徴とする、請求項8〜17のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項19】
材料帯(3)の厚さが、ライナー本体(2)の壁面の厚さの0.5倍より薄いことを特徴とする、請求項18記載のシリンダーライナー。
【請求項20】
材料帯(3)の軸線方向長さ(L1)が、ライナー本体(2)の軸方向の長さよりも短いことを特徴とする、請求項8〜19のいずれかに記載のシリンダーライナー。
【請求項21】
請求項8〜20のいずれかに記載のシリンダーライナーの製造方法であって、軽量金属または軽合金を吹き付けることによってビレットを製造するステップ、ライナー本体(2)を成型するために、押し出し成形によって円筒形の管を形成するステップ、ライナー本体(2)の少なくとも内壁の一部に表面機械加工を行うステップを含み、さらに、ライナー本体(2)の内側に材料帯(3)を固定することを含むことを特徴とする、前記製造方法。
【請求項22】
材料帯(3)が、圧入によって固定されることを特徴とする、請求項21記載の方法。
【請求項23】
材料帯(3)が、接着剤によって固定されることを特徴とする、請求項21の方法。
【請求項24】
固定後の材料帯(3)が、シリンダーライナー(1)と同軸の円筒形の形状を有していることを特徴とする、請求項21〜23のいずれかに記載の方法。
【請求項25】
円筒形の材料帯(3)が、ライナーの軸と実質的に平行な接合線を有することを特徴とする、請求項24記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公表番号】特表2010−515860(P2010−515860A)
【公表日】平成22年5月13日(2010.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−545814(P2009−545814)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際出願番号】PCT/DE2008/000023
【国際公開番号】WO2008/086770
【国際公開日】平成20年7月24日(2008.7.24)
【出願人】(502373905)ピーク ヴェルクシュトッフ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (2)
【Fターム(参考)】