説明

複数のソースからの光学信号をリアルタイムで同時に監視する方法及びシステム

信号ソース配列、特にスペクトル的に異なる信号成分を有する光学信号ソース配列からの光学信号をリアルタイムで監視する方法及びシステム。システムは、励起放射をこのような配列に向けるとともに、このような配列から発せられた信号を向け、信号を検出器アレイ上にイメージングする光学トレインと光学的に通信する信号ソース配列を含み、このような信号は、検出器アレイから追加の処理を受けることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2006年2月13日に出願された米国仮特許出願第60/772,908号明細書及び2006年7月5日に出願された米国特許出願第11/483,413号明細書の優先権を主張するものであり、これらそれぞれの開示全体をあらゆる目的のために参照により本明細書に援用する。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究開発の記載
本発明の部分は、NHGRI助成金第R01 HG003710−01の下で行われたものであり、米国政府がこのような発明に対する権利を有し得る。
【背景技術】
【0003】
光学検出システムは、一般に、広範囲の異なる解析作業に利用されている。例えば、単純なマルチウェルプレートリーダが、マルチウェルプレートの各種ウェル内で実行された流体ベースの反応からの光学信号を解析するに当たって偏在的に利用されてきた。こういったリーダは、一般に、マルチウェルプレートの96個、384個又は1536個の異なる各ウェル内の所与の反応より生じる反応液の蛍光応答、発光応答、又は発色応答を監視する。
【0004】
他の光学検出システムも開発され、流動システム等の他の構成での検体の解析、すなわち分子種のキャピラリー電気泳動分離に広く使用されてきた。通常、こういったシステムは、励起光源、例えばレーザ又はレーザダイオードをキャピラリーに向け、蛍光性検体又は蛍光標識検体が検出領域を通過して流れるときを検出可能な蛍光検出システムを含む(例えば、ABI3700シーケンシングシステム(ABI3700 Sequencing systems)、アジレント2100バイオアナライザー及びALPシステム(Agilent 2100 Bioanalyzer and ALP systems)等参照)。
【0005】
さらに他の検出システムは、レーザを表面結合された検体に向けて走査して、表面上のどこで検体が結合したかを判断する。このようなシステムは、配列上の所与の蛍光標識分子の位置的結合がその分子の特性、例えば所与の分子に対する相補性又は結合親和性を示す、分子配列ベースのシステムに広く使用されている(例えば、米国特許第5,578,832号明細書参照)。
【特許文献1】米国特許第5,578,832号明細書
【特許文献2】米国特許第6,917,726号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
異なる種類の様々な光学検出システムが利用可能であるにもかかわらず、リアルタイムで高多重化される単分子解析の開発により、多数の異なるイベントを比較的高速で検出可能であり、かつ潜在的に複雑で多重波長の信号をデコンボリューション(deconvolve)可能な検出システムの必要性が生じた。さらに、このようなシステムは一般に、感度の強化、その結果として低電力要件での信号対雑音比の向上を必要とする。本発明は、これら及び様々な他の必要性を満たす。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、一般に、複数の異なる光学信号の複数のソース、特にこのような信号の複数の異なる離散したソースからのこのような信号を監視するシステム及び方法に関する。この方法及びシステムは、対象となる化学反応及び生化学反応の、このような反応が行われている基板上の反応領域配列からの監視に特に有用である。特に対象とするのは、これらの方法及びシステムを、単分子解析、例えば、核酸配列反応に見られるような比較的高速及び低レベル信号の発生を含む解析作業に使用することである。
【0008】
第1の態様において、本発明は、基板と、基板上に配置される複数の信号ソースであって、信号ソースが基板上に複数の略平行する行に配列され、複数の並列する行のそれぞれが複数の信号ソースを含む、複数の信号ソースとを備える解析装置を提供する。このような基板内又は基板上で、行内の隣接する2つの信号ソースは第1の距離だけ離間され、2つの隣接する信号ソース行は第2の距離だけ離間され、第2の距離は第1の距離よりも少なくとも3倍大きい。
【0009】
本発明は解析システムも提供する。このシステムは、複数の離散した信号ソースが配置された基板と、励起光源と、励起光を励起光源から基板に伝送して、第1の複数の照明信号ソース及び第2の複数の照明信号ソースを照明し、複数の照明信号ソースからアレイ検出器上に信号をイメージングするように位置決めされる光学トレインとを備える。このような文脈の中では、基板及び光学トレインのうちの1つ又は複数は、第1及び第2の複数の照明信号ソースが他方から第1の距離だけ離間されるように構成され、第1の距離は、アレイ検出器上にイメージングされる信号ソースからの信号のイメージの断面寸法の少なくとも3倍である。
【0010】
本発明は、複数の信号ソースを解析する方法も提供する。この方法は、通常、複数の離散した信号ソースが配置された基板を提供するステップを含む。次に、第1の複数の信号ソース及び第2の複数の信号ソースが照明され、第1の複数の照明信号ソースは、検出器アレイ上にイメージングされる信号ソースのイメージの断面寸法の少なくとも3倍大きい距離だけ第2の複数の照明信号ソースから離間される。次に、信号ソースは検出器アレイ上にイメージングされる。
【0011】
本発明は、解析システムであって、複数の信号ソースが配置された基板と、励起光源と、光学トレインとを備え、光学トレインは、励起光源から励起光を受けて、基板に少なくとも第1及び第2の略平行な線形照明プロファイルで向けるように構成され、第1及び第2の線形照明プロファイルは、基板上において第1の線形照明プロファイルの幅の少なくとも2倍の距離だけ離間され、光学トレインは、基板から光学信号を受け取り、光学信号を検出器アレイ上にイメージングするようにさらに構成される、解析システムも提供する。
【0012】
さらなる態様では、本発明は、複数の離散した信号ソースが配置された基板を備える解析システムであって、少なくとも第1の信号ソースサブセットが第1の略線形向きに位置決めされ、第2の信号ソースサブセットが、第1の線形向きに略平行する第2の略線形向きに位置決めされる、解析システムを提供する。本発明のこの態様のシステムは、光源と、光源からの光を基板に少なくとも第1及び第2の略平行する線形照明プロファイルで向ける光学トレインも備える。第1の線形プロファイルは、第1の信号ソースサブセットを照明し、第2の照明プロファイルは第2の信号ソースサブセットを照明する。
【0013】
これに関連して、本発明は、基板上の複数の信号ソースからの蛍光信号を検出する方法であって、励起放射を信号ソースにより占有されない基板の部分には向けず、励起放射を基板上の複数の信号ソースにより占有される基板の部分に向けるステップを含む方法を提供する。
【0014】
さらに別の態様では、本発明は、複数の離散した信号ソースを備える基板を備えるシステムを提供する。システムは、励起光源と、励起光を励起光源から受け、励起光を基板に向けるように位置決めされる光学トレインも含む。光学トレインは、励起光を略線形照明プロファイルで複数の信号ソースに向けるのと同時に、複数の信号ソースから光学信号を同時に受信し、光学信号をイメージング検出器に向け、複数の信号ソースから光学信号を検出するように構成される。
【0015】
本発明は、少なくとも第1及び第2の行になった信号ソースが配置された基板を備えるシステムをさらに提供する。励起光源と、励起光源から励起光を受け、励起光を基板に向けるように位置決めされる光学トレインも含まれ、光学トレインは、励起光を少なくとも第1及び第2の離散ビームに分け、少なくとも第1及び第2の離散ビームのそれぞれを基板に略線形照明プロファイルで向けるように構成され、第1のビームは、第1の信号ソース行内の複数の信号ソースを同時に照明し、第2のビームは第2の信号ソース行内の複数の信号ソースを同時に照明する。
【0016】
関連する態様では、励起光源と、励起光源から励起光を受け、励起光を基板に向けるように位置決めされる光学トレインとを備えるシステムも提供される。光学トレインは、励起光を少なくとも第1及び第2の偏光成分ビームに分ける偏光ビームスプリッタと、第1及び第2の偏光成分ビームをそれぞれ基板上の異なるロケーションに向ける光学部品とを備える。
【0017】
さらに別の態様では、本発明は、基板上の複数の信号ソースを解析する方法を提供する。本方法は、基板上に少なくとも第1及び第2の隣接する信号ソースを提供するステップと、第1の信号ソースと第2の信号ソースとの間のスペースを実質的に照明せずに、励起放射を第1及び第2の信号ソースに選択的に向けるステップとを含む。
〔図面の簡単な説明〕
【0018】
〔図1〕本発明の全体システムの概略図である。
【0019】
〔図2〕ゼロモード導波管等の基板上の信号ソース配列の概略図を提供する。
【0020】
〔図3A−3B〕本発明の信号検出システムに適合する信号ソースの代替の構成を示す。
【0021】
〔図4〕図3Aに示す基板から導出される分離されイメージングされた信号を概略的に示し、イメージングされた信号上へのその基板からの信号ソースのオーバーレイを提供する。
【0022】
〔図5〕スペクトル的に分解可能な信号成分の分離及び検出のための光学部品を含む本発明のシステムの基板及び光学トレインを概略的に示す。
【0023】
〔図6〕基板上の多数の信号ソースを同時に照明するための光学部品を含む本発明のシステムの概略図を提供する。
【0024】
〔図7〕1つの照明ビームを複数のビームに分けるに当たって偏向要素を利用する光学トレインの一例を提供する。
【0025】
〔図8〕照明ビームを分けるに当たっての偏向要素の代替使用例を提供する。
【0026】
〔図9〕続く線形化に向けて複数の照明ビームを生成するために、従来のビーム分離光学系を利用する光学トレインを概略的に示す。
【0027】
〔図10〕複数の照明ビーム及び/又はラインを生成するに当たって偏光ビームスプリッタを利用する光学トレインを概略的に示す。
【0028】
〔図11〕照明ビームの異なる偏光ビーム成分を分離して方向付けるいくつかの代替の光学構成を概略的に示す。
【0029】
〔図12〕例えば図11及び図12に示した光学トレインのビーム分離機能を多重化する光学トレインを概略的に示す。
【0030】
〔図13〕基板に入射するフラッド照明及びマルチライン照明の照明プロファイルの比較のためのプロットを提供する。
【0031】
〔図14〕本発明の基板及びシステムに関連して有用な取り付け台の一例の概略図を提供する。
【0032】
〔図15〕本発明に関連して使用されるロボットシステムを概略的に示す。
【0033】
〔図16〕代替の照明戦略を有するシステムを概略的に示す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0034】
I.序論
本発明は、一般に、解析基板上の、例えば蛍光性材料を有する、複数の離散した調査ポイント又は離散した光学信号ソースを同時に照明し、その結果として、こういった光学信号の複数の離散ソースから発せられる光学信号を同時にリアルタイムで監視する光学検出又は監視システム、このようなシステムにより可能になる方法、及びこのようなシステムの構成要素に関する。特に、本発明の光学検出及び監視システムは、一般に、潜在的に非常に多数の異なる信号ソースを照明し、及び/又はこれら信号ソースからの離散信号を監視することが可能であり、且つ任意に、このような信号を分離し、及び/又はデコンボリューションして構成信号イベントにすることが可能であり、このような信号は高速経時変化し得るのにもかかわらず、これをリアルタイムで行うことが可能である。
【0035】
本発明の好ましい態様によれば、本発明のシステム及び方法は、向上した光学信号対雑音比を提供し、選択性の低い照明プロファイルを利用するシステムよりもはるかに低い照明電力を利用することが可能である。これは、一般に、対象領域以外の基板の領域に照明を向けずに、照明を実質的に解析基板上の対象領域に向けることにより達成される。照明を実質的に所望の場所のみに提供することにより、全体として基板に向けられる照明電力を低減することができるとともに、反射照明又は「レーザブリードスルー(laser bleed through)」、自己蛍光、散乱等の光学信号雑音源も実質的に低減することができる。このような雑音源の低減の結果、光学信号対雑音比が劇的に増大し、検出忠実度が向上する。
【0036】
したがって、本発明のシステムは、異なる機能要素の集まりのすべて又は一部を含む。これらの要素は、光学信号を発生する機能を含む複数の離散したソースを含む。好ましい態様では、このようなソースは、化学的、生化学的及び/又は生物学的反応物質、あるいはその存在、反応、又は変換を示す光学信号を発生可能なこのような反応物質の模倣物を含む。ソースはそれ自体で光学信号を発生させることが可能であってもよいが、好ましいケースでは、ソース内の光学信号、例えば蛍光を励起させる励起放射ソースも提供される。
【0037】
本発明のシステムは、通常、光学信号が最終的に検出されるときにこのような信号から最適量の情報を最終的に導出するために、こういったソースからの光学信号(並びにこのようなソースに向けられる励起放射)の方向付け、分離、及び/又はその他の様式での変更を行う光学要素も含む。したがって、本発明のシステムは、通常、ソースから向けられ、任意に光学要素により分離及び/又は他の様式での変更が行われた潜在的に多数の信号を検出する光学検出システムを含む。
【0038】
光学検出システムにより検出された信号は、次に、適切な処理システム及びデータ管理プロセスにより記録され処理されて、システムの出力をユーザ使用可能なフォーマットで提供する。
【0039】
上述のように、本発明のシステムは、好ましくは、発色反応、発光反応若しくは発光原性反応(luminogenic)、又は蛍光反応若しくは蛍光原性反応(fluorogenic)等の光学的に検出可能な信号を発生する空間的に離散した化学的反応、生化学的反応、及び/又は生物学的反応の配列又は集まりの監視に適用される。好ましい反応の数例としては、製薬、バイオテクノロジー、及び医療診断の各分野で日頃行われているもの、すなわち、免疫アッセイ、酵素アッセイ、受容体アッセイ、核酸ハイブリダイゼーションアッセイ、核酸合成反応、細胞アッセイ、及びその他多数が挙げられる。
【0040】
通常、本明細書に記載するシステムの適用例において使用される反応の進行の結果として、単独で、又は外部刺激、例えば励起放射に応答して光学的に検出可能な信号を発生することが可能な物質の消費、生成、及び/又は変換のうちの1つ又は複数が生じる。例として、特定の反応物質は、別の反応物質と反応して蛍光性になり、又はこのような反応により蛍光性が変化するか、若しくは低減する。したがって、励起放射に応答して反応から発せられる蛍光は、反応が進行するにつれて変化する。本発明のシステムは、このような信号のソース、例えば、任意に反応物質及び/又は生成物を含む反応が発生するエリア、このようなソースからのこのような信号の収集、方向付け、及び任意に分離及び/又は変更を行う光学要素、このような信号の最終検出、並びに最適な値及び情報をユーザにもたらすための結果データの処理を提供する。
【0041】
本発明のシステムは、通常、光学信号ソース、任意の励起光源、光学信号及び任意の励起光の収集、方向付け、及び/又は処理を行う各種光学要素を含む光学トレイン、光学信号の受信、検出、及び記録(又は記録用の形式にすること)を行う光学検出器、並びに光学検出器から導出されるデータを処理するプロセッサのすべて又はサブセットを含む基板のすべて又はサブセットを含む。
【0042】
上記システムの全体的な概略図を図1に示す。図示のように、システム100は、複数の離散した光学信号ソース、例えば、反応ウェル又は光閉じ込め104を含む基板102を含む。励起光源、例えばレーザ106が任意にシステムに設けられ、励起放射を各種信号ソースに向けるように位置決めされる。これは、通常、励起放射を適切な光学部品、例えばダイクロイック108及び対物レンズ110に向けるか、又はこれらを通って向けることによって行われ、これら光学部品は励起放射を基板102、特に信号ソース104に向ける。次に、ソース104から発せられた信号が、光学部品、例えば対物レンズ110により集められ、さらなる光学要素、例えばダイクロイック108、プリズム112、及びレンズ114を通過してついに、光学検出システム、例えば検出器アレイ116に向けられてそれに衝突する。次に、信号は検出器アレイ116により検出され、その検出からのデータは適切なデータ処理ユニット、例えば、コンピュータ118に送られ、ここで、データは解釈、解析を受け、最終的にユーザ使用可能なフォーマットで、例えばディスプレイ120に、又はプリンタ124からのプリントアウト124で提示される。
【0043】
本発明のシステムの各種機能、適用、及び構成要素についてさらに詳細に後述する。
【0044】
II.基板
A.基板
上述のように、本発明の基板は、一般に、複数の離散した光学信号ソースを提供する。反応を監視するシステムの場合、このような信号ソースは、通常、反応が行われており、離散した光学信号を発することができる離散領域を含む。広義では、このような異なる領域は、化学的閉じ込め又は物理的閉じ込めを含めた複数の異なる機構のうちの任意の機構で他の領域から離散して維持される反応窪み、反応ウェル、又は反応ゾーンを含むことができる。単なる例として、このような領域は、核酸、タンパク質、抗体、又は他の免疫配列(immuno−array)等の基板表面上に固定化された分子の離散したパッチ又はゾーンを含むことができ、監視される反応はこのような固定化分子と検体との会合であり、このような領域は基板内にチャネル、例えばマイクロ流体チャネル領域、毛細管の集合体、又は個々の毛細管内の複数の領域等を含む。
【0045】
これに代えて、又はこれに加えて、このような領域は、反応成分を離散領域内に保持する構造的閉じ込めを含むことができる。このような構造的閉じ込めは、ウェル、窪み、チャネル、又は反応成分を保持する他の構造を含むことができる。このような閉じ込めは、例えば化学的バリア、例えば水性反応成分を親水性領域内に保持する基板表面上の親水性領域を囲む疎水性領域の使用を通して、構造的な閉じ込めを効率的に提供する他のバリアを含むこともできる。
【0046】
さらに他の態様では、このような領域は、例えば、構造的閉じ込め内の固定化反応物質を含む上記の組み合わせを含むことができる。構造的閉じ込めに加えて、反応領域は、基板上の構造的閉じ込めとして、又はそれに加えて機能することができ、励起照明の閉じ込め及び/又は反応領域での比較的小さな面積又は容積から発せられる光学信号の収集を通して基板上の観察量を最小化するように機能する光学的閉じ込めを含むこともできる。このような光学的閉じ込めは、例えば、基板上の反応領域に所望の励起又は観察量をもたらすことができるゼロモード導波管等の導波管、光学回折格子、光学コーティング等を含むことができる。
【0047】
通常、基板は光学的に透明な層を備え、この層の上に、離散した光学信号ソースを提供する反応領域が配置される。光学的に透明な層は、一般に、基板の他の構成要素に応じて複数の透明な固形物質のうちの任意のものを含むことができる。このような物質は、ガラス、石英、石英ガラス等の無機物質を含む。あるいは、このような物質は、ポリスチレン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリメチルメタクリレート(PMMA)等の高分子基板等の有機物質を含み、PMMAは、比較的低い自己蛍光性を有するため、蛍光反応又は蛍光原性反応において特に有用である。
【0048】
好ましい態様では、基板は、離散した反応領域を基板上に画定する光学閉じ込めとしてゼロモード導波管を含む。ゼロモード導波管は、例えば、米国特許第6,917,726号明細書に記載されており、これはその開示全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。簡潔には、このような導波管は、クラッド層を通して配置されるコアを備え、反応への適用の場合、コアは、監視する反応物質を受けることができる、クラッド層を通して配置される開口部を備える。通常、開口部は、結果として照射されるコア及びその内容物の部分を効果的に非常に小さくするように、導波管に入った光がコアを通って伝搬するのをある程度防ぎ、及び/又はコアを出る光学信号の放射を防ぐのに十分小さな少なくとも1つの断面寸法、例えば直径を有する。光学信号(及び励起放射)の場合、導波管のコアの直径は、通常、1nm〜200nmであり、好ましくは約10〜100nmであり、より好ましくは約30〜約100nmである。
【0049】
光学閉じ込めは、通常、基板上に配列形式で設けられ、複数の閉じ込めが基板上に設けられる。本発明によれば、閉じ込め、例えばゼロモード導波管の配列が、単一基板上の100個超、1000個超、10,000個超、又はさらに100,000個超の別個の導波管の配列で設けられる。さらに、導波管配列は、通常、比較的高密度の導波管を基板の表面上に含む。このような高密度は、通常、1mm当たりゼロモード導波管10個超、好ましくは基板表面面積1mm当たり導波管100個超、より好ましくは1mm当たり導波管500個超又はさらには1000個超であり、多くの場合には1mm当たり最高で導波管100,000個超の密度で存在する導波管を含む。多くの場合では、配列内の導波管は、規則的なパターンで、例えば所与の配列内で規則正しく離間された導波管の2行、5行、10行、25行、50行、100行、1000行、又はより多くの行及び/若しくは列(各行又は各列が2個、5個、10個、25個、50個、100個、1000個、又はより多くの導波管を有する)で離間され、特定の好ましい場合では、標準の行及び/又は列形式から外れた配列での導波管の編成を提供することが有利である。例えば、特定の好ましい態様では、基板上の信号ソースは、複数の略平行するラインに配列され、所与のライン内のソースは、第1の距離だけ略一定間隔で離間されるが、隣接する平行ラインのソースは、第1の距離よりも大きい第2の距離だけ離間される。本明細書で使用される略平行という用語は、第1の行内の複数の信号ソースの位置を画定する、又はその位置に接触するラインが、第2の行内の複数の信号ソースを画定する、又はそれに接触するラインの、平行の10°以内、好ましくは5°以内、より好ましくは平行の1°以内であることを意味する。
【0050】
図2及び図3は、基板上に配列される光学信号ソースの代替の構成を示す。図2は、一定間隔で離間され、一貫したサイズの光学信号ソースを含む光学信号ソースの配列200を示す(基板202でのゼロモード導波管204の配列として示される)。上述のように、信号ソースは、そこから発せられる信号の光学処理を考慮して離間することもできる。例えば、さらに詳細に後述するように、光学信号は場合によっては、成分要素、例えば異なるシグナリング要素、すなわち異なる放射スペクトルを有する蛍光試薬を示す、異なる波長範囲の光に空間的に分けられる。このような場合、後述のように、分離された信号が検出器に入射する際に、こういったソースから導出される空間的に分離された信号の重複を防ぐために十分な間隔を基板上の隣接する信号ソース間に提供することが望ましいことがある。この場合、間隔の増大は一次元でのみ必要であってよく、例えば、十分な間隔が信号ソース行間に提供されるが、十分な間隔を必ずしも配列内の信号ソース列間に提供する必要はない。あるいは、このような間隔の追加を2次元で提供してもよい。信号が検出前に空間分離を受ける信号ソース配列の場合、このような隣接する信号ソースの間隔は、一般に、約0.1μm〜約10μm以上の範囲であってよく、好ましくは約0.8μm〜約3μm以上である。
【0051】
したがって、図3Aに示すように、隣接するソースの間隔が一方の次元では比較的小さく保たれ、他方の次元では比較的大きく保たれるソース302の配列300が提供される。通常、これにより、行内間隔が行間隔よりも小さな平行する行又は列に構成されたソース配列になる。したがって、ソース304と306との距離は、ソース304と308との間隔よりも小さい。一次元においてより大きな間隔を提供することにより、他の隣接する信号ソースからイメージングされる信号と重複せずに、検出器アレイにフォーカスされた信号成分の同じ次元での空間的分離が可能である。通常、信号成分分離は通常、一次元で、例えば行間次元で行われるため、ZMW等の隣接する信号ソース行の間隔は、各ZMWから別個に分解された信号成分が検出器アレイ上にイメージングされる際に、隣接する行からの信号の重複をなくすのに十分なものである。したがって、ZMWが配列上にイメージングされ、2個、3個、又は好ましくは4個以上のイメージ成分を配列上に含めたいと仮定すると、行間隔は、イメージングされる信号成分のサイズにおおよそ等しい個々の成分の分解に必要な間隔の1倍、2倍、又は3倍以上に対応することになる。これにより、2個、3個、又は4個以上の信号成分を信号重複なしでイメージングするために十分な行間隔が可能である。その最も単純な形態では、これは、通常、行間隔が、同じ行内にある信号ソースの間隔の少なくとも2倍、3倍、又は4倍以上になることを意味する。あるいは、異なる行内の隣接する信号ソースの間隔は、照明スポットのサイズに基づいてよく、又は線形照明の場合、照明ラインの幅に基づいてよい。特に、照明される信号ソースに十分な間隔を保証するために、隣接する信号ソース行の間隔は、照明スポット若しくは照明ラインの幅の2倍、さらには照明スポット若しくは照明ラインの幅の3倍、照明スポット若しくは照明ラインの幅の4倍、又はさらには4倍よりも大きくてもよい。特定の態様では、例えば中心間で測定される所与の行内の信号ソースのピッチは、約100nm〜約1mmの範囲であることができ、好ましい態様では、約100nm〜約1μm又はさらには約200nm〜約500nmの範囲である。これとは対照的に、隣接する行間のピッチは、通常、行内ピッチの約2倍〜約10倍であり、通常は少なくとも3倍である。したがって、信号ソースの行間ピッチは、通常、約200nm〜約10mmの範囲であり、特定の好ましい基板は行間ピッチ約200nm〜約1500nm〜約3μmを有する。理解されるように、ピッチ(行内及び行間)は、好ましい態様での範囲内のどこにあってもよく、多くの場合ではこれらの範囲外にあってもよい。
【0052】
本発明のこの態様の利益を図4に概略的に示す。図示のように、信号ソース配列の間隔は、これら信号ソースから発せられる信号のスペクトル分解イメージの略図にオーバーレイされる。特に、各信号ソース402は、空間的に分離され、検出器アレイの異なる領域上にイメージングされる(通常、異なる波長範囲の)複数の信号成分のイメージを発生させる(イメージ450〜456として)。信号ソース402と406との間及び404と408との間に十分な間隔を提供することにより、各信号ソースからイメージングされた全範囲の信号成分、例えばイメージ450〜456及び460〜466を収容するイメージスペースが検出器アレイトップ上に提供される。
【0053】
本発明の上記態様は、単一信号ソースからの複数のスペクトル的に異なる信号成分を分解する際に特に有用である。例えば、反応の監視に使用される蛍光化合物の場合、本発明の上記態様は、特定の励起放射に応答して少なくとも2つ、3つ、4つ、又はそれよりも多くの異なる蛍光放射スペクトルを提供する蛍光化合物の混合物から信号を分解できるようにするに当たって有用である。例えば、単一信号ソースから、少なくとも2つ、3つ、4つ、又はそれよりも多くのスペクトル的に異なる蛍光放射プロファイルを光学的に分解し、ひいては区別することができる。理解されるように、このようなシステムは、蛍光ベースであるか、又は他の場合、例えば発光、測色ベース等であるかに関わらず、スペクトル的に異なる他の信号成分の分解においても有用である。
【0054】
これに加えて、又はこれに代えて、ソース間隔は、光学システム全体内の光学収差を吸収するように、又は他の目的を達成するように構成することができる。本発明のこの態様を図3Bに概略的に示す。上述のように、場合によっては、配列の外周にあるソース、例えば図2のソース206及び208は、例えばソース210及び212よりも光学的分解性がよくないことがある。場合によっては、外周ソース、例えば206及び208の分解を妨げるのに十分な収差があり得る。したがって、図3Bに示すように、オブジェクトイメージの中心からの距離に応じて、隣接するソースの間隔が増大するソース352の配列350が提供される。例えば、図示のように、配列350で表されるオブジェクトフィールドの中心に近い信号ソース、例えばソース354及び356は、オブジェクトフィールドの中心から離れたソース、例えばソース358及び360よりも少なくとも一次元において互いにより近く、オブジェクトフィールドの中心から離れたソースは、中心により近い信号ソースよりも少なくとも一次元においてより広く離間される。したがって、光学システムのオブジェクトフィールドの中心から第1の距離にある2つのソース間の少なくとも一次元における間隔は、オブジェクトフィールドの中心から第2のより離れた距離にある2つのソース間の、この場合もやはり少なくとも一次元における間隔よりも小さい。隣接する信号ソースの間隔は、一次元でのみ変化してもよく、例えば、左から右に変化するが、上から下へは変化しなくてもよく、又は両次元で変化してもよい。間隔が両次元で変化する場合、例えば、オブジェクトフィールドの中心にある任意の2つの信号ソースの間隔は、中心から離れた、すなわちオブジェクトフィールドの外周にある任意の2つの信号ソースの間隔よりも小さいことが理解されるであろう。上記により、ZMW等の信号ソース配列のより効果的な多重解析が可能になる。
【0055】
配列要素のさらなる構成は、特定の光学システムの特定の収差に合うように特に適合することができる。例えば、支配的な光学収差が結果として、フィールドロケーションに依存するイメージスポットサイズ又は形状を形成する場合、例えば、隣接するソースのイメージの重複を防ぐ等のようにソースを適宜離間することにより、そのサイズ又は形状にソース配列の設計において対処することができる。同様に、イメージングされるソースの形状が、隣接ソースのイメージと潜在的に重複するように一次元において歪む場合も、ソースを、その次元を縮小し重複を回避するような寸法にすることができ、例えば、楕円形又は矩形のソースを提供することができる。
【0056】
上記により、ZMW等の信号ソース配列のより効果的な多重解析が可能になる。
【0057】
B.基板の接続
本発明の基板は、通常、適切な取り付け台を通して全体システムと接続され、取り付け台は基板を固定し、例えば、光学システムに対して基板を平行移動させる機能を提供し、任意に追加の機能、例えば流体連結、熱調整、例えば加熱又は冷却、位置合わせ等を提供する。取り付け台は、通常、続く解析のために、台上での基板の適切な位置決め及び/又は向きを保証する位置決め要素も含む。このような位置決めシステムは、取り付け台上の対応する構造と合わせられる相補的な構造を基板上に含むことができる。これらは単純な構造、例えば歯/切り欠き構造、角が面取りされた構造、又は他の特徴的な相補的な構造を含むことができる。あるいは、合わせ要素は、基板が続く解析のために適宜位置決めされ、かつ正確な向きに位置決めされているときを示す、基板及び取り付け台上の金属接点及び関連する電子構成要素等の電子鍵を含むことができる。このような鍵要素は、例えば、基板上に組み込まれたメモリ要素を通して、又は電気接点の位置及び向きを通して各基板に符号化されて提供して、特定の基板、例えばロット番号等を示すことができる。このような識別システムは、所与の基板が以前に使用されたことがあるか否か、そして何のために使用されたのかを突き止める能力を提供することができる。通常、取り付け台は、基板又は基板を収容したパッケージ構造を受けるウェル又は窪み構成要素、例えばマルチウェルプレートフォーマット、並びに基板を台上の固定位置に強制的に保持するための付勢機構、例えばバネ、クリップ、又は他の機構を含む。様々な異なる取り付け台、合わせ要素、及び平行移動システムを、本発明の文脈の中で利用することが可能である。例えば、取り付け台の範囲は、基板を所定位置に保持するためのクリップベースの付勢構成要素を有する単純なプラットフォームから、例えばビデオ又はカセットテープシステムのテープ収容機構と同様の、例えば、基板を挿入し、システムのその他の構成要素に相対して所定位置に保持するように構成されたスロットを含むことができるより複雑な取り付け台であり得る。このようなシステムは、使用中に制御された基板周囲環境を提供するために、取り付け台を囲むエンクロージャを含むことができる。通常、取り付け台は、基板が取り付け台上で適宜向き合わせられることを保証する合わせ要素を含むとともに、例えば、取り付け台上のバーコードリーダ及び基板に適用されたバーコードを通して、又は電子符号化素子、例えばRFID素子を通して、基板又は基板の意図される用途を識別するためのインタフェース構成要素を含むことができる。
【0058】
比較的単純な取り付け台の一例を図14に示す。図示のように、取り付け台1400は、基板(図示せず)を受ける取り付け領域1404を有するプラットフォーム1402を含む。取り付け領域は、通常、基板を下から観察できるようにするプラットフォーム1402の開口部1406上に配置される。これも図示されるように、取り付け台は、プラットフォーム上への基板の位置決め及び位置合わせに役立つ構造を含む。これらは、例えば、リッジ1406、基板を位置決めする窪み又はウェル、及び基板上の相補的な構造、例えば穴又は切り欠きに対応するピン、ベベル構造、タブ等の位置合わせ構造1408を含むことができる。上述のように、クリップ又は閉じることができるカバー要素として示され、側面図からも示される付勢機構1410等の基板を所定位置にロックする固定機構を設けることもできる。加熱要素又は冷却要素、追加の光学部品、及び他のインタフェース要素等の追加の構成要素を取り付け台に設けることも可能である。
【0059】
取り付け台は、通常、台を光学システムに対して2次元又は3次元に移動させる平行移動システムにも結合される。平行移動システムは、基板上の信号ソース配列全体のスキャンを可能にするとともに、例えばフォーカス、基板の取り外し、基板への成分の追加等のために基板を光学システムに向けて、又は光学システムから離れて移動させる能力を提供する。様々なx−y−z平行移動システムが容易に利用可能である。さらに、ロボットシステムも、プログラムされた命令に従って取り付け台の平行移動機能を自動化するために容易に利用可能である。図15は、光学トレイン1508の上方で基板1506を支持する、取り付け台1504に結合された概略的に表される平行移動システム502を含む全体システム1500の概略図を示す。図示のように、ロボットシステムは、基板をx次元、y次元、又はz次元の任意の次元に移動させる能力を含む。
【0060】
ロボットシステムは、基板を取り付け台上に位置決めする構成要素、試薬を基板に適用する構成要素等を含むこともできる。本発明に適用可能な広範囲のこのようなロボットシステムは、一般に、例えばテカン(Tecan)Inc.、キャリパーライフサイエンス(Caliper Life Sciences)Inc.、ベックマン(Beckman)Inc.等から市販されている。
【0061】
ロボットシステムは、基板を取り付け台上に位置決めする構成要素、試薬を基板に適用する構成要素等を含むこともできる。本発明に適用可能な広範囲のこのようなロボットシステムは、一般に、例えばテカン(Tecan)Inc.、キャリパーライフサイエンス(Caliper Life Sciences)Inc.、ベックマン(Beckman)Inc.等から市販されている。
【0062】
III.励起源
上述のように、好ましい適用例では、本発明のシステムは、複数の離散した信号ソースから発せられる発光信号又は蛍光信号を監視するために使用される。したがって、多くの場合、本発明のシステムは、励起放射源を含む。励起光源は、一般に、例えば所与の解析の試薬及び構成によって決まるような、特定の用途に必要な励起放射の性質に依存する。例えば、光源は、ランプ、例えばハロゲン、水銀、キセノン等、LED、レーザ、レーザダイオード、又は所望の励起波長又は波長範囲の電磁放射を基板上の信号ソースに向けることが可能な他の任意の光源を含むことができる。好ましい態様では、狭い帯域幅及び所望の励起波長範囲内でレーザが発生する放射強度により、レーザが励起放射源として好ましい。一般に、様々な異なるレーザ種類がこういった用途に有用であり、レーザ種類としては、例えば、イオンレーザ、固体状態ダイレクトダイオードレーザ、ダイオードポンプ固体状態レーザ(DPSS)、固体状態周波数変換クリスタルレーザ等が挙げられる。場合によっては、複数の異なる励起波長を提供するために、複数のソースを利用することができる。例として、信号ソースが蛍光化合物、例えば蛍光染料で標識された化合物を含む場合、このような化合物の様々な異なる励起スペクトルに複数の異なる励起源を提供することができる。例えば、アレクサ648(Alexa648)染料で標識された化合物の場合、通常、少なくとも、648nmの光(こういった染料の各励起波長)を含む励起放射範囲を提供する励起源を提供することが望ましい。あるいは、染料吸収曲線の公称ピークでの光を提供しない場合、レーザは、ピーク吸収効率が561nmに近いアレクサ546(Alexa546)等の使用される染料に十分な吸収効率を含む。複数の異なる染料の場合、例えば、異なる波長範囲を有する、異なるレーザを使用することができる。
【0063】
IV.光学トレイン
上述のように、本発明の全体システムは、通常、励起放射を基板及び基板上の複数の信号ソースに向け、及び/又はこれらソースから発せられる信号を、各信号ソースからの信号を定量化し記録する検出システムに向ける光学トレインを含む。本明細書において記載する全体システムに使用される光学トレインは、通常、励起放射及び/又は離散した信号ソースから発せられる信号のフォーカス、方向付け、分割、分離、偏光、及び/又はコリメートを行う際に使用される複数の異なる光学部品を含む。
【0064】
1つの光学トレインの概略図を図5に示す。図示のように、光学トレインは、基板504の近傍にあり、例えばレーザ506からの励起放射を基板の所望のロケーションにフォーカスさせ、基板から発せられる光学信号を収集する対物レンズ502を含む。光学トレインは、通常、励起光及び発せられた光学信号を選択的に反射又は透過させて、反射又は他の様式で逸らされた励起放射から信号放射を効率的に分離する1つ又は複数のダイクロイックミラー/フィルタ508も含む。
【0065】
光学トレインは、任意に、例えば、異なる波長の光学信号を分離し、又はこれらを検出システム上の異なるロケーションに向ける信号分離光学系を含むこともできる。例えば、光学トレインは、いくつかの異なる主波長の信号を含むことができる光学サインを信号ソースから受け取るプリズム510を含むことができる。あるいは、ダイクロイックフィルタのセットを縦続接続構成で使用して、スペクトルの異なる各信号成分を異なる検出器又は検出器領域に選択的に向けることもできる。
【0066】
分離要素がプリズムの場合、プリズム510を透過する際に、異なる波長の信号は異なる程度で回折され、その結果、任意に追加の光学部品、すなわちイメージングレンズ512を通して異なる角度で、それらの分離、検出、及び定量化が可能な検出システム、例えば検出器アレイ514に向けられる。
【0067】
このような信号を分離する能力は、異なる特定の試薬、反応、及び/又は相互作用を示す、異なる蛍光放射スペクトルをそれぞれ有する複数の異なる試薬を含む信号ソースを監視するに当たって特に価値がある。光学信号をスペクトル的に分離するに当たり、遮断フィルタセット、ダイクロイック、光回折格子等の様々な他の光学部品を利用することができる。このような部品は、通常、各光学信号の異なる部分を異なる検出器に、又は好ましくは同じ検出器若しくは検出器アレイ上の異なるロケーションに向けるように構成される。本発明によれば、異なる信号は、このような信号成分を検出器、例えば検出器アレイ514上に差分的にイメージングすることによってスペクトル分解することができる。このような差分イメージングは、例えば、異なる検出器又は同じ検出器上の異なるロケーションに向けられることによって空間的に異なってもよく、又は例えば、分解できるように異なる信号成分のイメージと異なる形状のイメージング信号を提供して、構造的に異なってもよい。
【0068】
例えば、検出器に向けられる光学信号を制限する空間フィルタ、一偏光光学平面にある信号を透過させる偏光フィルタ等を含めた光学信号の部分を分離する他の部品も、システムの用途に応じて任意に光学トレインに含められる。例えば、波長の異なる信号の分離に加えて、光学トレインは、励起放射及び/又は発せられた信号を分割して異なるロケーション又は励起放射の空間構成を変更させる他の光学部品、例えば任意の光学回折格子516に向けるように機能するスプリッタ、例えばビームスプリッタ、光学回折格子、レンズ、又はマイクロレンズ配列等を含むこともできる。場合によっては、レーザに固有であり得る任意の光学雑音を除去又は低減することによって主レーザ線をフィルタリングする追加のフィルタをレーザの後に追加することができ、同様に、全体としてシステムから生成若しくは反射され得る又は周辺光であり得る任意の不要な迷光を低減又は除去する追加のフィルタを検出器の前に追加することができる。
【0069】
特に、特定の態様では、光学トレイン及び/又は励起放射源のうちの1つ又は複数は、基板上の信号ソース外のスペースの照明を任意に回避又は低減しながら、基板上の多数の離散した信号ソースの励起照明を同時に提供するように構成することができる。特に、関連しない照明、例えば信号ソースを含まない基板の部分に向けられた照明は、システムの光学信号対雑音比を低減させ、ひいてはシステムの感度を低下させる相当量の光学雑音を発生させ得る。特に、過度の放射からの光散乱、光学トレインを透過するレーザ反射照明(「レーザブリードスルー」)、及び基板材料の自己蛍光が、蛍光システムでの光学雑音の大きな成分である。過度の照明の欠点は、拡散照明パターンが所望のすべてのロケーションに十分な照明出力を提供することを保証するために励起光源に増大した出力要件を提供することを含め、システムを通って流れる。これは、より高い出力を有するレーザの組み込みにより、コスト及び出力散逸要件の増大に繋がる。さらに、過度の照明は、関連する信号間のスペースに無関係のデータを提供することによりデータ処理パラメータに影響を及ぼし得る。さらに、熱の影響、例えば加熱は、化学的試料及び生物学的試料に向けられたレーザ出力量の関数であり、こういったシステムの適用に相当な悪影響を及ぼし得る。
【0070】
例えば、ゼロモード導波管配列の文脈の中では、光学トレイン及び/又は励起放射ソースは、多数のゼロモード導波管に照明を同時に提供する。後述のように、光学トレインは、通常、同じ又は同様の多数の信号ソース、又はこの例ではゼロモード導波管からの信号を収集し検出することも可能である。システムは、通常、少なくとも2つの信号ソースを同時に照明し、好ましくは、10個よりも多くの信号ソースを同時に、より好ましくは100個よりも多くの信号ソースを同時に照明する。場合によっては、本明細書に記載のシステムを1000個、10,000個以上の離散信号ソースの励起に使用することが望ましいことがある。励起ビームを分割するか、又は複数の励起源を適用する(両方ともビーム分割を使用するか、又は使用しない)システムは、多数の信号ソースに励起放射を向ける際に特に有用である。
【0071】
多数の信号ソースへの励起放射での同時照明は、一般に、上述のように、様々な異なる手段を通して達成することができる。例えば、大きな信号ソース配列上に比較的大きなスポットサイズをフォーカスすることができる。しかし、理解されるように、レーザ出力は制限され、見境のない照明は特定の悪影響、例えば加熱、自己蛍光、ひいては光学信号対雑音比(SNR)の低減に繋がり得るため、基板の非信号発生部分の照明を回避することが望ましいであろう。例えば、薄膜金属クラッド層を使用するゼロモード導波管配列の場合、信号発生領域間のスペースは高反射性である。このような反射された活性放射は、システムの雑音レベルの上昇を発生させる。さらに、基板材料も照明に応答して自己蛍光し、システムに追加の光学雑音源をもたらし得る。したがって、基板の無関係な部分からの雑音寄与を低減することが望ましい。
【0072】
場合によっては、複数の異なる励起源、例えばレーザ506及び任意の追加レーザ(図示せず)を所与の基板に向けることにより、より大きな励起領域を提供して、より多数の信号ソースの照明を提供することができる。不都合なことに、複数の異なるソースの使用は、個々のソースの相違、例えば個々のソースから発生する信号に影響を及ぼし得る、例えばわずかに異なる信号プロファイルを提供する照明の波長、周波数、又は強度に関する問題を呈し得る。さらに、このような複数の励起源システムはなお、全体として、基板の過剰照明の問題を発生させ得る。同様に、本明細書の他のどこかで記載したように、例えばビームスプリッタ、光学回折格子、又は他の光学部品を使用して、励起光ビームを複数のビームに分割して、複数の離散励起照明スポットを基板上の異なるロケーションに向け、その結果として、基板上の多数の信号ソースを照明することができる。関連する態様では、ビームスポットを楕円形又は細長いスポット又は線形状に伸長させるレンズを設けることができる。
【0073】
特定の好ましい構成では、基板上の信号ソースに好ましい照明を提供し、信号ソースにより占有されない基板の領域への照射を低減するか、又はなくすように、個々の又は複数の励起放射源を操作することができる。励起光源の照明プロファイルを変調して、基板上の信号ソースに優先的に励起照明を提供し、特に好ましい態様では、このような信号ソースにより占有されないスペースへはより少ない照明を提供するために、いくつかの方法を使用することができる。これは一般に、強度のピークが、少なくとも部分的に基板上の信号ソースの位置に対応するオブジェクト平面内の位置にある照明プロファイルを光学トレインのオブジェクト平面、例えば基板に提供する光学要素を使用することによって達成される。様々な異なる光学要素を使用して、この照明プロファイルを実現することができる。例えば、低周波数の照明が信号ソースの解析に問題ない場合、単に、例えばガルボを備えたレーザシステムの使用を通して往復ビームを利用することができる。低周波照明が問題であるか、又は問題となり得る場合、ホログラフィック光学要素又は回折光学要素を利用して、例えば、ライン行、格子等の所望の照明プロファイルを実現することができる。
【0074】
特に好ましい態様では、照明プロファイルは、例えば線形化された照明プロファイル又は「ライン照明」を使用して線形フォーマットで信号ソースに適用されて、複数の信号ソースの行又は列を、このような行又は列の間の非信号ソーススペースの照明を低減しながら、同時に照明する。ライン照明又は線形照明プロファイルは、基板の細長い領域又はラインの照明を指す。通常、ライン照明は通常、幅寸法よりも大幅に大きな長さ寸法を有する。例えば、少なくとも5、好ましくは10よりも大きく、より好ましくは100よりも大きなアスペクト比(長さ:幅)を有する。
【0075】
理解されるように、ライン照明の使用は、特にビーム整形技法、例えば空間フィルタリングと組み合わせられる場合、標準のフラッド照明プロファイルよりも効果的に分散照明プロファイルを基板のより広い面積にわたって提供し、特に、基板の非関連部分の照明に関連する過度の雑音寄与を低減する。例えば、励起照明を信号ソースに向け、応答蛍光を測定するシステムの場合、このような雑音は、蛍光収集光学系からブリードスルーする反射励起放射、基板又は他の照明される材料の自己蛍光等に起因し得る。さらに、励起放射を実質的に基板の関連領域に選択的に向けることにより、システムの励起出力要件を効果的に低減し、それにより、システムコストが改良されるとともに、加熱及び他の過剰照明問題の影響が低減される。図13は、フラッド照明と比較したライン照明の利益のうちのいくつかの図を提供する。特に、図示のように、フラッド照明は、例えば、多数の潜在的な信号ソースを含む基板エリアの大部分に実質的に低い出力を提供し、基板の非常に小さな部分のみ(ピーク最大)に最大出力を提供する、正規分布でばらつく出力密度プロファイル(広いピークとして示される)を基板の表面にわたって提供する。
【0076】
一方、マルチライン照明プロファイル(複数のピークで示される)は、基板エリアのより広い部分にわたってより均等な照明を提供し、より均等な照明をより多くの信号ソースに提供し、最適な出力レベルをこのような信号ソースに提供する(複数のピーク最大)。さらに、ライン照明プロファイルのピークが信号ソース配列内の信号ソースの行又は列に対応することを保証することにより、フラッド照明と比較して、無関係な基板エリアの相当部分の照明が回避される。本明細書の他のどこかで記載したように、このような無関係な照明は、無駄又は問題のある照明出力、及び例えば照明ブリードスルー、自己蛍光等から導出される過度の雑音レベルという問題をもたらす。上記利点に加えて、マルチライン照明戦略の使用は、図3Aに示す非対称に離間された信号ソース配列と併せて、又はそれに代えて使用することができることが理解されるであろう。特に、(信号ソースの行内間隔と比較して)より大きな信号ソース行間隔を提供することに加えて、又はこれに代えて、例えば、照明される行の間に追加の行があるか否かに関わらず、照明をこのようにして離間された行に向けることができる。ここでも、上述のように、照明ラインは、各信号ソース行からの様々な信号成分を分解できるように離間することができる。
【0077】
特定の好ましい態様では、ホログラフィック光学要素(HOE)、円柱レンズ若しくはマイクロレンズ、又は円柱レンズ若しくはマイクロレンズの配列が、信号ソースを含む領域を優先的に照明し、信号ソースを含まない基板の領域を照明しないように、励起光を変調して線形プロファイル又はフォーマットで照明を提供するために使用される。さらに、このような光学要素は、複数のラインで、すなわち平行及び/又は直交する向き、例えば格子等として励起照明プロファイルを基板上にもたらすことができる。説明のために、基板又は含まれる信号ソース配列での向きを基準にして、「レーザスポット」又は「励起放射スポット」は、楕円形、線、格子等を含めた、基板に入射する様々な異なるビーム形状、構成、及び向きのうちの任意のものを指す。理解されるように、基板上の信号ソースに励起放射を選択的に向ける際に、励起放射と基板上の信号ソース配列との位置合わせに役立つ特定の位置合わせツールをシステムに装備することができる。このようなツールは、手動で又は自動的にシステムにより識別可能な基準位置を基板上に含むことができ、それにより、システムを基板上の信号ソース配列上に適宜向け、及び/又はフォーカスすることができる。
【0078】
本発明のこの態様の概略図を図6に示す。図示のように、全体システム600の励起照明部分は、ここではビーム分割光学部品及び/又は円柱レンズ配列及び/又は任意のイメージングレンズとして示される(すべてまとめて要素604として示される)適切な光学要素を通して適切なダイクロイックミラー、例えばダイクロイック606に向けられる励起光源、例えばレーザ602を含み、ダイクロイック606は、対物レンズ620を通して励起放射(実線の矢印として示される)を基板610に向かって上に向ける。上述のように、励起放射の空間プロファイルは、対物レンズ620の焦点面にある基板610上の様々な信号ソース608により大きな励起放射を優先的に提供するように構成される。基板610の代替の図は、基板上の一連の平行照明領域として照明プロファイルを示す(破線の輪郭線612で示される)。
【0079】
本明細書において他のどこかで記載したように、信号ソースから発せられる蛍光又は他の光学信号は、次に、対物レンズ620により集められ、ダイクロイック606を透過し、任意に、例えばプリズム614を介して信号成分のスペクトル分離を受け、最終的に検出器、例えば検出器アレイ618に向けられる。すでに説明した各種光学部品に加えて、本明細書に記載のシステムの光学トレインは、分離され方向付けられた光学信号の分解されたイメージを、例えば検出器アレイ618のイメージ平面上に提供する1つ又は複数のイメージングレンズ、例えばレンズ616を含むこともできる。
【0080】
例えば円柱レンズを使用して、照明プロファイルを線形化することに加えて、基板に入射する際により均一な強度を有する線形化ビーム又はスポットを提供することが望ましいこともある。特に、照明スポットの線形化に際しては、スポットの両エッジでの強度低減をなくさず、単にこういった低減を再フォーカスするだけである。したがって、照明ラインの両端部において、追加の操作がない場合、光強度の低減が見られることが予期される。本発明の少なくとも1つの態様によれば、光学トレインは、単純な線形化スポットにわたって大幅に低減されたテールエッジを有する均一なライン照明プロファイルを基板上に提供するように構成される。一般に、これは、照明ラインの両端部として再フォーカスされる照明スポットのエッジをブロックする空間フィルタに照明ビームを通すことによって達成される。ここでも、HOEを被制御ビーム整形用途に使用することができる。あるいは、空間フィルタリングは、元の照明ビームではなく線形化ビームに適用することができる。本明細書において記載したものに代えて、又はそれらに加えて、例えば共焦点ピンホールフィルタ等を含めた他の空間フィルタを照明ビームにさらに適用することもできる。
【0081】
ライン照明は、信号ソースの単一の行又は列に適用することができる。しかし、信号ソース配列は通常、共直線ソースの行又は列内に提供されるため、多くの場合、複数の離散した照明ラインを提供して、様々な離散した行又は列を、このような行又は列の間のスペースの照明を回避しながら照明することが望ましい。ライン照明は、単一行ベース又は単一列ベースで適用することもでき、又は複数の別個のラインで適用して、複数の異なる信号ソース行及び/又は列を照明することもできる。好ましい態様では、例えば、1つ又は複数のラインを照明信号ソースに適用することができ、場合によっては、2本ライン、4本ライン、10本ライン、20本ライン、50本ライン、又はそれよりも多くを、信号ソース行又は列の照明に使用することができる。
【0082】
複数の照明ラインは、本明細書において他のどこかで記載したように、例えば、複数の励起源の使用を含めたいくつかの手段によって提供することができる。しかし、レーザ、より複雑な光学トレインに必要なスペース量等に関連する複数の励起源に関連するコストにより、多くの場合、1つ又は数個のみの励起源からの照明ビームを分割することが好ましい。
【0083】
基板に入射する複数の照明ビームを提供する一手法は、元のビームを回折要素、例えば回折格子に通して向けて、単一の元のビームから複数の照明ビームを生成する。複数の照明ビームの生成に効果的であるが、回折要素は、一般に、波長から独立しておらず、例えば、異なる照明ラインは異なるスペクトル特性又は波長範囲を有する。多くの解析が励起波長の比較的精密な制御に依存するため、好ましいシステムでは、ビーム分割は実質的に波長から独立しており、例えば、各照明ラインはその他の照明ラインと略同じスペクトル特性を有する。
【0084】
好ましい態様では、本発明は、個々の元の励起光ビームから複数の離散した照明ビームを提供し、これをコスト効率的及びスペース効率的に、且つ波長から独立して行ういくつかの異なる光学トレインを提供する。
【0085】
一態様では、本発明のシステムの光学トレインは、個々の照明ビームに部分的に挿入されて、そのビームの一部分を偏向させ、したがって結果として2つのビームを生成する偏向部品を組み込む。一態様では、偏向部品は、元のレーザビームの中に部分的に、例えば半波分挿入されたプリズムを含むことができる。プリズムを透過するビームの部分は、プリズムの偏向角に従って偏向する。この手法を図7に概略的に示す。図示のように、プリズム702等の偏向要素は、元の励起光ビーム(矢印704で示される)の中に半分挿入される。ビームの一部分がプリズム702を透過し、プリズム702により偏向される結果として、ビームは、プリズムの偏向角により発散する2つの成分に分割される。発散ビーム(矢印706及び708で示される)は、次に、通常は円柱レンズ(図示せず)、対物レンズ712等の追加の光学要素を透過した後に、基板710上の異なるロケーションに向けられる。基板上の2つのビーム又はその線形化スポットの間隔は、通常、プリズムの偏向角及びプリズム702と対物レンズ712との距離に関連する。例えばプリズム、回折格子、傾斜ミラー、又はヒンジミラー等を含めた様々な異なる種類の偏向要素を本発明のシステムでのビーム分割に利用することができる。
【0086】
特定の態様では、プリズム又は回折格子の使用は、ビームの一部の偏向にいくらかの波長依存性を導入する恐れがあり、これは最終用途にとって問題であり得るため、あまり好ましくないことがある。したがって、代替の構成では、ヒンジミラーが、元のビームを2つの離散したビームに分割する偏向要素として使用される。これは反射要素であるため、波長に依存するいかなるばらつきもビーム部分の偏向に導入しない。これを図8に概略的に示す。図示のように、励起源、例えばレーザ802は、元のビーム(矢印804で示される)をヒンジミラー806に向ける。ビームは2つの発散角で偏向され、結果として矢印808及び810で示される2つの離散したビームが生成される。図7に示される分離されたビームと同様に、次に、ビームは適切な光学系、例えば円柱レンズ812及び対物レンズ814を通して基板816上にフォーカスされる。理解されるように、特定の態様では、ヒンジミラーは、光学トレイン内の光路に沿った、異なる場所、例えば円柱レンズ及び/又はイメージングレンズの後に挿入することができる。ここでも、基板816上の照明スポット又は照明ラインの分離は、一般に、ヒンジミラーの偏向角及びヒンジミラー806とその他の光学部品、例えば対物レンズ814との距離に依存する。
【0087】
上述の偏向要素のうちの任意の偏向要素の使用は複数のビームを提供するに当たって効果的であるが、それらの使用はいくつかの点で限られた柔軟性を有し得る。特に、上述のように、隣接するビームの間隔は、通常、偏向要素の偏向角及び基板までの距離に依存する。したがって、この間隔への調整は、離散したビームすべてに対して同時にしか行うことができず、通常、偏向要素を異なる偏向角を有するものに交換するか、又は対物レンズからの距離を調整することによってしか行うことができない。しかし、場合によっては、個々のビームを方向付けなければならない精度及び基板のばらつき又は単一基板上の信号ソース群のばらつきにより、個々のビームを互いに対して位置決めする調整可能性の必要性が決まり得る。
【0088】
これを達成する1つの光学トレインを図9に概略的に示す。図示のように、例えば単一の励起源902からの照明ビームは、ビームスプリッタ904を透過して、2つの照明ビーム(矢印906及び908で示される)を生成する。ビームスプリッタの向きに応じて、次に、一方又は両方のビームが再方向付けされて、対物レンズ914、円柱レンズ912等の追加の光学要素を透過した後、照明ビームを基板910の異なるロケーションに提供する。再方向付けは、任意の数の異なる偏向光学系又はミラー、例えばミラー916、918等を使用して達成することができる。任意に、ビームを基板の間隔の狭い領域上に再方向付けするために、ビームスプリッタ920等の追加の部分的に透過性の反射要素を使用してもよい。
【0089】
複数の照明ビームを基板上に提供するに当たって効果的であるが、標準ビームスプリッタ及び反射光学系を使用して、システムのより大きな規模の多重化を実施することは困難であり得ることが理解されるであろう。特に、分離された各ビームに必要な反射光学系は、個々の基板に向けられたより多数の離散照明ビーム、例えば2、4、8、10、20、40、50以上の離散ビームを提供しようとするシステムの光学トレインの複雑性及びコストを大幅に追加する。さらに、各ビームは互いのビームと略同一であるため、ビームスプリッタ等の単一の光学要素を使用して基板の間隔の狭い領域に向けられるビームの再結合により、上記の図9において矢印922及び924で示すように、印加エネルギーの大幅な損失に繋がり得る(各ビームからの光子の半分のみが基板に向けられる)。
【0090】
したがって、別の態様では、ビーム間隔の調整により大きな柔軟性を提供し、波長のばらつきがわずかであるか、又はないが、共通の光学要素を通してであっても個々の方向付けを可能にするのに十分に異なる特性を保持するビームをもたらすビーム分割光学系が使用される。
【0091】
例えば、特定の好ましい態様では、ビーム分割は、ビームを2つの偏光成分(s成分及びp成分)に分割することによって実行される。次に、各偏光成分は、独立して調整可能な光学トレインを使用して基板上の異なるロケーションに別個に向けられる。この概略図を図10に示す。図示のように、レーザ1002等の励起光源は、元の励起ビームを偏光ビームスプリッタ1006に向け(矢印1004で示される)、偏光ビームスプリッタ1006は元のビームを2つの偏光成分であるsビーム1008及びpビーム1010に分離する。2つの離散したビームはそれぞれ、例えばミラー1014及び1016のそれぞれからの反射によって基板1012上の異なる位置に向けられる。ミラー1014及び1016のうちの一方又は両方の位置及び/又は角度を調整することにより、ビームの方向、そして最終的には基板上のビームの位置を調整することができる。次に、2つのビームは元に戻って、第2の偏光ビームスプリッタ1018を透過し、第2の偏光ビームスプリッタ1018は、ビームを共線化させるが、ミラー1014及び1016のうちの一方又は両方からの調整された間隔により互いにわずかにオフセットする。次に、オフセットビームは対物レンズ1020を透過して、基板1012の異なるロケーション上にフォーカスされる。ビームは偏光ビームスプリッタ1012を使用して偏光に基づいて再方向付けされるため、上記の図9に示されるビームの一部のみと比較して、ビームの略すべてが基板に再方向付けされる。
【0092】
光学トレイン及び個々の構成要素のいくつかの変形を使用して、図10に示される目標と同じ目標を達成することができる。例えば、偏光ビームスプリッタキューブとして示されるが、他の偏光ビーム分割機構を利用してもよいことが理解されるであろう。例えば、ビーム分割キューブに代えてペリクルビームスプリッタを利用することができる。同様に、光学トレイン内に特定の構成の光学部品を利用して示されているが、偏光ビームスプリッタ又はこれと等価の要素を使用して元のビームから離散しオフセットされたビームを提供するために、いくつかの代替の光学構成を利用してよく、これを異なる向き及び/又は異なるスペース要件で達成可能なことが理解されるであろう。いくつかのこのような構成を図11に示す。
【0093】
上述のシステムは、追加のビーム分割・調整光学系を生成される新しい各ビームに追加することによって容易に多重化することができる。追加の偏光ビームスプリッタを利用するために、通常、2分の1波長板(例えば、ビーム分割光学系に対して45°回転させた)を光学トレイン内の各ビームの光の中に挿入して、各ビームが追加の分割/調整を受ける前に、偏光ビームスプリッタを使用して各ビームをさらに分割できるように各ビームの偏光を回転させることが望ましい。本発明のこの態様により多重化された光学システムの概略を図12に示す。図示のように、励起光源1202は、ここでも、励起光ビームを偏光ビームスプリッタ1204に向けて、ビームを偏光成分(例えば、sビーム1206及びpビーム1208)に分割する。次に、各ビームは、ミラー1210及び1212を介して偏光ビームスプリッタ1214にそれぞれ向けられる。ビームスプリッタ1214は、ビームが共通して方向付けられる(例えば、2つのビーム1206及び1208を実質的に共線化又は平行化する)ようにビームを再び一緒にするように機能するが、2つのビーム間に空間的なオフセットを提供するか、又は特定の好ましい態様では、最終的に基板上にイメージングされるビームが空間的にオフセットされるようなオフセット角を提供するように位置決めされる。次に、2つの偏光ビームは、ビーム分割光学系の光軸の向きに対して45°回転された2分の1波長板1216を透過して、各ビームを再び分割する機能を提供する。2つのビームは、次に、追加の偏光ビームスプリッタ1218を透過して、各ビームを別個の偏光成分にさらに分割して、4つのビームを生成し、これらビームは、次に、ミラー1220及び1222並びに偏光ビームスプリッタ1224を介して一緒に元に戻されるが、4つすべてのビームが、基板に入射する際に、所望のように空間的にオフセットされるように位置決めされる。次に、離散した4つのビームは光学要素、例えば対物レンズ1226を透過し、基板1228上にフォーカスされる。
【0094】
あるいは、多重化は、それぞれ異なる偏向角を元の入射ビームに提供し、したがって1つの光学部品内で複数の別個のビームをもたらすプリズムの配列を含むマイクロレンズ配列を使用して提供することができる。同様に、マイクロミラー配列を多重化偏向要素として使用してもよく、各ミラー要素は入射ビームを異なる角度で偏向させて、複数の別個のビームを提供する。しかし、ここでも、このような偏向要素は、一般に、個々のビームの互いに対する偏向の完全な制御を提供しない。したがって、場合によっては、例えばテキサスインスツルメンツ(Texas Instruments)から入手可能なDLP(登録商標)システムに見られるようなMEMSベースのマイクロミラー配列を利用することが望ましいことがある。このようなマイクロミラー配列は、比較的高精度で入射光の方向制御を提供し、元の単一ビームからある範囲の離散ビームを生成することができる。
【0095】
光学トレインの各種構成要素、例えば、レンズ、回折格子、フィルタ、プリズム、ビームスプリッタ等は、一般に、例えばスペシャルオプティクス(Special Optics)Inc.、ニューポートコーポレーション(Newport Corporation)、ソーラボ(Thorlabs)Inc.、CVIレーザ(CVI Lasers)、ラムダリサーチオプティクス(Lambda Research Optics)、ラムダフィジックス(Lambda Physics)、及びプレシジョンオプティカル(Precision Optical)Inc.を含めた光学系供給業者から市販されている。
【0096】
いくつかの態様では、本発明のシステムに使用される光学トレインは、マルチフルオロフォア(multi−fluorophore)システム、例えば信号発生に際して複数の異なる蛍光体を含む信号ソースに有用であり得る複数の光源、例えばレーザ、励起システムをより容易に実施できるようにする反射蛍光フィルタに基づく構成を利用する。
【0097】
従来の蛍光検出方式では、通常、励起光が蛍光試料に入射するように、励起光をおよそ90°の角度で反射し、波面が比較的そのまま残るように、その試料から発せられた蛍光を透過する干渉フィルタが利用される。このような透過蛍光ジオメトリで得られる拒絶励起光の程度は、大半の1つ又は2つの励起帯用途に対して十分であるが、こういった現在の方式は、3つ又は4つの励起帯方式に効率的に拡張することができない。その理由は、複数の励起帯を反射しながら、複数の、例えば2つ、3つ、4つ又はそれよりも多数の異なる蛍光スペクトルの大半の部分を効率的に透過させる単一の透過蛍光フィルタが、利用可能な技術を使用して容易に製造できないためである。さらに、複数のフィルタ構成要素が組み合わせられて、これがマルチレーザマルチ放射波長システムにおいて実現されるが、より高性能の蛍光透過フィルタシステムを作るための透過損失の増大、光学収差の増大、サイズの増大、及びコストの増大が、このような解決策をより望ましくないものにする。
【0098】
これとは対照的に、本発明のシステムの特定の好ましい構成の光学トレインは、基板又はシステム内の他の構成要素から反射された励起光をブロックしながら、発せられた光を検出器に選択的に向けるに当たって反射蛍光フィルタ設備を利用する。特に、本発明のこの態様の光学トレインは、通常、基板から発せられた蛍光を、透過させるのではなく反射して検出器に向ける少なくとも1つの光学フィルタ構成要素を含む。本発明のシステムは、例えば離散した放射スペクトルを有する複数の異なる蛍光材料により発せられる複数の放射蛍光波長範囲を選択的に反射するマルチバンド反射ダイクロイックフィルタを含む。マルチバンド反射性に加えて、これらフィルタ構成要素は、通常、励起光(所望の励起波長の光)を透過可能である。したがって、マルチバンドダイクロイックは、複数の異なる波長の励起放射を透過するが、一般により長い波長の放射蛍光を反射するように適合される。ダイクロイックは、2つ以上の放射帯の間又は放射帯の中にある励起帯を透過させるために、比較的狭い反射範囲を含むようにさらに適合される。このような反射蛍光システムは、透過性ダイクロイックと比較して優れた性能のダイクロイックから利益を受けるとともに、コスト及び単純さの利益も有する。
【0099】
狭帯域選択性が反射と透過との関係に適用されるため、反射される励起放射のより多くが、マルチバンドダイクロイックで反射されずにマルチバンドダイクロイックを透過することによってフィルタリングされる。任意の励起放射がマルチバンドダイクロイックにより反射されるという点で、すべての色又は放射スペクトルとは対照的に、分離された一色(例えば、選択された1つの放射スペクトル)に適用される個々の狭帯域ノッチフィルタを使用して、個々の励起スペクトル(「カラースペクトル」とも称される)の続く分離を選択的にフィルタリングして除去することができる。さらに、単一のマルチ狭帯域反射フィルタの製造は、利用可能な技術を使用して、マルチ狭帯域透過フィルタよりも容易に実現可能である。
【0100】
本発明のシステムに含まれる光学トレインは、解析中の試料材料を光学トレインの焦点面内でフォーカスするように光学システム内の対物レンズ又は他のレンズを自動的に調整するオートフォーカス機能を含むこともできる。一般に、様々な異なるオートフォーカスシステムを本発明のシステムに組み込むことができる。
【0101】
上述のように、蛍光ベースの光学解析システムにより発生する雑音レベルへの一原因は、システムの光学部品、例えば基板の自己蛍光の発生を通してである。上述のように、基板からのこのような自己蛍光を低減する一手法は、例えばライン照明又は点照明を通して励起放射を解析に関連する基板の部分のみに向けることである。このような手法に加えて、蛍光信号を収集して検出器に向けるために使用される光学トレインとは全体的に又は一部異なる光学トレインを通して励起方向付けを提供することによっても、光学トレインの部品の自己蛍光を低減することもできる。特に、信号成分の収集及び方向付けに使用されるものと同じ対物レンズ、フィルタ、フォーカス光学系等を利用しない光学トレインを通して励起放射を基板に向けることにより、システムからこの自己蛍光成分による雑音量を低減することができる。さらに、励起放射を蛍光信号から分離するために提供される信号方向付け光学トレインの構成要素を低減又はなくして、これら構成要素からのあらゆる雑音寄与又は信号低減をさらに低減することができる。
【0102】
第1の例示的な態様では、励起放射は、対物レンズ及び/又は基板から蛍光信号を収集し伝送する光学トレインの追加の光学部品を透過せずに基板に向けられる。励起放射の対物レンズ(及び/又は他の光学部品)を迂回するに当たり、励起放射により励起されたこのような構成要素の自己蛍光が回避される。光学信号の集まりからの励起放射の方向差別化は、様々な機構により達成することができる。例として、基板上の信号ソースに励起放射を向けるように位置決めされた第2の対物レンズを利用することができる。複数の異なる対物レンズを利用することができるが、このようなシステムは柔軟性に制限を有し得る。したがって、一般に、代替の励起放射方向付け方式を利用することができる。
【0103】
一例では、励起放射は、全体的又は部分的に基板自体に向けられ伝搬され得る。したがって、蛍光信号が収集され伝送される方向にいくらか直交する方向から、例えば基板の平面に垂直な角度で励起放射を基板に向けることができる。このようなシステムの概略図を図16に示す。図示のように、蛍光信号の収集、伝送、及び検出用の光学トレイン設備は、上述の図5に示す光学トレインと同様である。特に、システム1600では、収集光学系は、基板1604から蛍光信号を受けるように位置決めされた対物レンズ1602を含む。任意に、対物レンズ1602を透過し得るあらゆる励起光、例えば散乱励起光をフィルタリングして除去するために、1つ又は複数のダイクロイックフィルタ1608を設けることができる。蛍光信号の各種スペクトル成分は、例えばプリズム1610を使用して分離され、フォーカス光学系、例えばレンズ1612を通して検出器1614上にフォーカスされる。しかし、図5に示すシステムとは対照的に、放射源、例えばレーザ1606からの励起放射は、収集光学系、特に対物レンズ1602を透過せずに基板に向けられる。代わりに、励起放射は、励起放射を基板1604上の所望の信号ソースに所望の均一強度で提示する(矢印1616で示される)ように基板1604に向けられる。
【0104】
励起放射を基板上の複数の信号ソースに所望の均一性で提供する一機構は、基板内に回折格子要素を設けて、励起放射を基板を通して又は基板に沿って導入し、信号ソースまで伝搬させることを含む。基板と照明放射との結合は、単純なレンズ光学系、ファイバ光学系等を含めた、照明を回折格子に向ける様々な機構のうちの任意の機構により達成することができる。回折格子は、例えば基板の表面に沿って、例えば基板の境界面及びゼロモード導波管配列のクラッド層等のその基板に塗布された別の材料層にプラズモン波を設定することにより、基板を通して照明を伝搬するように構成することができる。クラッド層、例えばゼロモード導波管の開口部との相互作用により、プラズモン波はゼロモード導波管内のエバネッセント場に結合され、それにより、ゼロモード導波管の底部の非常に小さな容積を照明する。あるいは、回折格子は、下にある基板を導波管として使用して、励起放射を全反射モードで向けることができ、基板の表面での光のエバネッセント減衰が、その表面上の任意の構造的閉じ込め、例えばゼロモード導波管構造又は他の空間的閉じ込めを含めたその表面での、又は表面近傍での非常に小さな容積の照明を提供する。理解されるように、基板及びクラッド層の境界面に沿ったプラズモン波の伝搬は、基板の自己蛍光を大幅に回避するという追加の利益を有する。この理由は、プラズモン波が基板の全厚ではなく、波長のおよそ1/2しか基板内に貫入しないためである。回折格子のジオメトリ及び位置決めは、ゼロモード導波管配列にわたって均一な励起強度を提供するように選択することができる。
【0105】
本明細書において他のどこかで記載したように、本発明の光学トレインは、蛍光透過に基づくのか、それとも蛍光反射に基づくのかに関わらず、通常、発せられ、好ましくは分離された蛍光信号を検出器に向ける。特に好ましい態様では、検出器は、ダイオードアレイ検出器又は電荷結合素子(CCD、ICCD、又はEMCCD)等の点検出器の配列を含む。このようなアレイ検出器の場合、光学トレインが方向付けられた蛍光を特定の所望の構成の検出器上に提供することが望ましいであろう。例えば、場合によっては、最小閾値レベルを超える蛍光信号を複数のピクセル上にイメージングすることが望ましい。例えば、データの強化された統計評価を提供するために、少なくとも2ピクセル、好ましくは少なくとも4ピクセル、より好ましくは少なくとも10、20、又はさらには100ピクセルからの十分な信号データを提供することが望ましいであろう。
【0106】
複数の分離されたスペクトル成分を有する信号の場合、個々の信号スポットにわたる強度のばらつきをデータ解析で吸収できるように、例えば平均化、破棄等することができるように、異なる各蛍光信号成分、例えば発せられた蛍光の色の異なる各スポットをアレイ検出器の複数のピクセル上にイメージングすることが望ましいであろう。例えば、多くの場合、各信号成分は、検出器アレイ内の少なくとも2つのピクセル上に、好ましくは検出器アレイ内の少なくとも4つ以上のピクセルに、そして場合によってはさらに10、20、又は50以上のピクセルにイメージングされる。
【0107】
信号ソース、例えば離散信号ソース配列を含む試料基板の場合、所与のスペクトル信号の検出に関わる全体配列からのピクセルの総数は、通常、解析中のソースの概ね倍数で変化する。例えば、配列上の各離散信号ソースからの分離された各色信号は、検出器アレイ内の4ピクセルにイメージングされ、10個の信号ソースは同じ配列を使用して解析された場合、信号ソースの全体配列のその色の合計信号は、検出器アレイのおよそ40ピクセル上にイメージングされる。多くの場合、本明細書において他のどこかで記載したように、個々の信号成分は、配列内の重複するピクセル上にイメージングすることができ、他の特性、例えば中心点、形状等に基づいて区別される。このような場合、いくつかの信号ソースをイメージングするピクセルの数は、単純に信号成分数の倍数ではない。上記にも関わらず、信号ソースからの所与の異なる信号セットをイメージングするために必要なピクセル数は、通常、色分離なしで信号をイメージングするために必要なピクセル数の1倍よりも多く、好ましくは、色分離なしのイメージサイズの2倍、3倍、又はさらには4倍多い。本明細書において何回も繰り返してきたように、特に好ましい態様では、イメージングされる信号は、通常、ある範囲の数のピクセルを利用して、異なる検出器又は検出器アレイ上の領域に向けられてイメージングされる少なくとも2つの分離されたスペクトル成分、好ましくは3つ、4つ、又はそれよりも多くのスペクトル成分を含む。
【0108】
V.検出器
本発明のシステムは、一般に、検出器に向けられる光学信号の検出に有用な様々な異なる検出器種類のうちの任意の種類を含むことができる。異なる種類の検出器の例としては、フォトダイオード、アバランシェフォトダイオード、光電子倍増管、電荷結合素子、CMOS(相補型金属酸化膜半導体)センサ又はイメージャ、CCD/CMOSハイブリッドイメージャ等のイメージング検出器等が挙げられる。好ましい態様では、イメージング検出器は、基板のより広いエリアにわたる、ひいてはより多数の離散信号ソースの同時検出を提供するために本発明のシステムに利用される。電荷結合素子ベースの検出器(CCD)及びCMOSイメージセンサは、基板上の多数の離散信号ソースからの信号を同時に検出し、及び/又は監視する能力に関して特に好ましい。CCDから導出されたデータは離散ピクセルに割り当てられるため、CCDの異なるロケーションに入射する離散ソースからの信号を別個に検出し定量化することができる。さらに、比較的高速かつ比較的低信号レベルが一般的な用途、例えば信号ソースが単分子反応を含む用途では、電子倍増型CCD(EMCCD)又は増感CCD(ICCD)等の高感度検出器が一般に好ましい。通常、EMCCDが、その低信号レベルへの感度に関して好ましい。
【0109】
信号ソースの照明と同様に、好ましい態様では、本発明のシステムの検出システムは、通常、少なくとも2つの異なる信号ソースを同時に、好ましくは少なくとも10個の離散信号ソースを、多くの場合には100個を超える、1000個を超える、さらには5000個を超える、又はそれ以上の離散信号ソースからの信号を同時に検出し、及び/又は監視することが可能である。さらに、検出器も同様に、このような各ソースからの複数の空間的に分離された信号又は信号成分を監視又は検出することが可能である。特に、上述のように、各離散ソースからの信号は、好ましくは、少なくとも部分的に、少なくとも2つ、好ましくは3つ、4つ、又はさらにはより多数の別個の信号成分に空間的に分離され、これらが、分解し、最終的には別個に検出することが可能な検出器アレイ上に向けられる。場合によっては、所与の信号ソースから発せられ得る2つの異なる信号が、検出器アレイの異なる領域上に空間的に完全には分離可能ではないことがある。しかし、このような信号は放射波長スペクトルが異なるため、このような異なる信号を、光学トレインの波長分離構成要素、例えば図6のプリズム610等のプリズムに通すことにより、わずかに異なる放射スペクトルを有する別の信号成分から空間的に完全には分離可能ではないが、特定の放射スペクトルの特性であるイメージング形状を有するイメージング信号を検出器アレイ上にもたらすことができる。このような場合、検出可能なイベントを発生させる信号成分の識別は、時には、このような信号が入射するピクセルの集合群の特徴的な形状又は中心点の識別を含み得る。
【0110】
VI.データ管理
本発明のシステムは、通常、検出器に入射し、検出器により検出される信号を処理し、及び/又は記録し、そのデータを処理してユーザにとって有用な情報にする検出器に結合されるデータ処理システムも含む。例えば、信号ソースが蛍光反応物質を含む単一分子解析の場合、データ処理システムは、特定の時間の検出器の所与のロケーション上の信号の入射に、所与の反応の発生を示す値を割り当てることができる。各信号から導出されるデータは、通常、(a)信号の強度、(b)信号が入射した1つ又は複数のピクセル、(c)信号が検出された相対時間等のうちの1つ又は複数を含む。次に、このようなデータは、反応物質の相対レート又は活性、反応の順序、信号が導出された特定の信号ソース、及びそのソースの反応物質の知識を通してそのような反応物質に曝された検体の性質を示すように処理される。
【0111】
説明を容易にするために、信号ソースが、光学閉じ込め内の蛍光ヌクレオチド類似体及びDNAポリメラーゼ酵素を使用しての鋳型由来DNA合成を含む場合、信号は、合成での所与の相対位置でのヌクレオチドの取り込みを示すことができる。さらに、光学トレインのスペクトル分離態様を使用し、且つすべて染料が付けられるか、あるいは、例えばそれぞれの異なるスペクトル特性により光学トレインで分離され、検出器上の異なるロケーションに向けられる(又は異なるイメージング形状を有する)分解可能なように異なるスペクトル特性を有する標識を付けた4つの異なるヌクレオチド類似体を使用して、検出器上の所与のロケーションにある(又は所与の形状を有する)信号は、特定の種類の類似体の組み込みを示すことができ、このような信号の相対的なタイミングは、このような塩基が、鋳型配列内の、それぞれ先の又は後の信号を発生させる別の塩基の前又は後で生じることを示す。最後に、このような信号が入射する配列上のロケーションは、信号が導出された信号ソースを示す(例えば、およそ同じロケーションでの次の信号が(例えば、所与のソースからの信号の成分のスペクトルの相違に基づく空間的分離を受けて)、同じ反応の継続によるものである可能性が高い)。この検出は複数回繰り返されて、複数のヌクレオチドの組み込み配列が識別される。鋳型由来DNA合成での組み込みの相補性により、鋳型配列内のヌクレオチドの基礎配列を突き止めることができる。
【0112】
離散ソースからの信号を別個に監視する向上した能力に加えて、このようなCCD又は他のアレイ検出器の使用は、個々の信号ソースからの信号並びに信号ソース配列全体からの総信号の解析というさらなる利益を提供する。例えば、所与の離散ソースからの信号が複数のピクセルに入射する場合、ピクセル単位でのデータの区画化では、データ解析のために、例えばより高い雑音レベル又は歪みレベルを有するエッジ信号をなくして、所与のイメージング信号内の最適なピクセルを選択することができる。これに加えて、又はこれに代えて、各離散信号ソースの信号データを得るために使用されるピクセルを、本明細書の他のどこかで記載したような様々な異なる目的に向けて個々に適合することができる。このようなピクセルデータの管理について、さらに詳細に後述する。
【0113】
本明細書に記載のシステムは、関連する信号のより効率的な処理を提供するプロセスを利用する。少なくとも1つの一般的な態様では、このようなプロセスは、関連する信号のみをさらに処理し、関連性の低い信号を破棄するか、又は結合することを含む。いずれの場合でも、完全な後続処理を受ける信号データ量を低減することにより、その処理を加速させ、処理要件、例えば計算パワーを低減し、イメージデータ管理に必要なアレイ検出器上のスペースを低減し、検出器構成要素の寿命を延ばし、様々な他の利益を実現することができる。こういったプロセスは、一般に、CCDチップの文脈の中で実行されてもよく、又は例えばコンピュータを使用して、後続するオフチッププロセスで実行されてもよい。理解されるように、多くの場合、好ましい実施態様は、検出器アレイそれ自体でのイメージデータ処理ステップ内で実行される。
【0114】
上述のように、特定の態様では、本発明は、検出システムにより生成されたか、又は生成されたであろう過度の非関連データの管理、記憶、及び/又は処理を回避するために、初期データ処理ステップ又は選択ステップ並びに検出器上の異なるエリアからの特定のデータの組み合わせ処理を提供する。特に、場合によっては、例えばCCDチップからデータを抽出する前又は後にピクセルデータの選択的スキップ、除去、又は結合を通して、例えばデータ処理速度並びに背景信号データの管理及び有用性の点で大きな利点を得ることができる。言い換えれば、関連性の高いデータを含まない、例えば関連するイメージング信号の外にある特定のピクセルエリアから収集されるデータを無視するか、又は分けて処理することにより、プロセスから大量の非関連データを除去するか、又はすべての背景信号データ若しくは関連性の低い信号データを1つの処理可能なユニットに結合することで、データ管理プロセスを加速することができる。これに加えて、又はこれに代えて、このように結合された関連性の低いピクセルデータは、システムのより有意味な背景信号レベル又は雑音の導出に有用であり得る。いずれの場合でも、システムの速度及び正確性は利益を受けるはずである。
【0115】
例として、多数の離散信号ソース又はこのようなソースから導出され分離された信号を単一の検出器アレイ、例えばCCD、ICCD、又はEMCCD上にイメージングする場合、このような離散ソースからイメージングされる信号間のスペースは、「静かな(quiet)」スペースであるため、有用なデータを殆ど又は全く生じない。検出器アレイのこのような領域から生じる有用な信号データがないにもかかわらず、このようなロケーションからのデータは、通常、例えばゼロ、他の何らかの低レベル信号値、又は他の非関連値として記録されてきた。このような信号は背景として無視することができるが、破棄される時点までのそれらの記録及び処理では、記憶するためのメモリ空間及び評価して最終的に破棄するための処理容量が必要とされる。したがって、特定の態様では、本発明は、検出器アレイ上のこのような静かなロケーションをフィルタリングして除去し、ひいては記録されないようにデータをブロックするマスキングプロセスを提供する。
【0116】
他の態様では、処理を受ける別個のデータ要素数を最小化するために、関連する配列要素からのデータを、続けて処理する前に、結合又は「ビン化」することができる。例えば、上述の抽出された行データを参照すると、特定の信号ソースイメージ又はイメージングされた信号ソース間のスペースに対応する各行セット及び/又は列セットを後続処理に向けて別個にビン化して、処理を受けるデータ要素数を低減することができる。同様に、個々の信号ソース配列要素からのイメージに対応するピクセルを一緒にビン化又は処理することもできる。上述の各ケースでは、単独であるか、組み合わせであるかに関わらず、データ要素の全体数は、個々の各ピクセル要素の抽出及び処理と比較して大幅に低減される。
【0117】
データ管理の利益を提供することに加えて、イメージングされた信号成分のピクセルを選択的にビン化することにより、データ解析の利点を提供することができる。例えば、空間的に分離された信号成分をイメージングする際に、同様の忠実度の信号行から導出される要素を選択的にビン化することができ、それにより、次に、忠実度の低い信号をまとめて識別することが可能になる。上述のように、特定の実施形態では、各信号の構成要素、例えば各信号ソースから発せられる、異なる信号波長は、空間的分離を受けて、検出器アレイ上の異なるピクセル又はピクセルの集まり上にイメージングされる。理解されるように、構成信号波長は、厳密な信号波長又は場合によっては波長範囲内ではなくある範囲にわたる傾向を有し、様々な用途及び/又は多重化で行われ得るようなより信号ソース内のより多くの信号波長構成要素の追加により、空間的分離は、各行に沿った、異なる信号構成要素間に完全に満たない分離をもたらすことがあり、これにより、例えば、分離された信号のスペクトル重複が発生する。
【0118】
本発明の特定の態様によれば、忠実度のより高いデータは、イメージング信号内であっても忠実度のより低いデータとは別個に処理される。その最も単純な意味において、例えばシステムの雑音レベルと相対して最も高い強度を有する忠実度の最も高いデータに対応するピクセルのみが、関連する信号として処理される。そして、他の信号成分は異なる処理を受けるか、又は破棄される。一般に、理解されるように、このような信号成分は、例えば、イメージング信号の外周ではなく中心に向かうイメージング信号の主要部分内にある信号成分である。
【0119】
例えば、過度のレベルの混合信号成分を含む忠実度のより低いデータをビン化することにより、こういった信号をすべて同時に、又は少なくとも関連するピクセルデータから分けて効率的に破棄又は処理することができる。本発明の特定の態様によれば、データは、同じレベルのスペクトル重複(又は重複の欠如)を含む各ピクセルセットを結合するようにビン化される。上述した静かな検出器スペースと同様に、忠実度の最も高い信号を有するピクセル間にあるピクセルからのデータは、高忠実度信号データとは別個に処理することができる。例えば、後続処理の前に破棄することもでき、又は高忠実度データとは単に別のプロセス動作でビン化して処理することもできる。あるいは、他のすべての低忠実度データと結合して、背景レベルのスペクトル重複信号等を生成してもよい。
【0120】
さらに、これら信号データ処理技法のうちの任意の技法を動的に適用して、実行中の各解析動作の異なるパラメータ、例えば信号体雑音比を最適化することができる。特に、除外された行及び/又は列の相対的な間隔、各信号イベントに割り当てられるピクセル数、又はこれらの任意の組み合わせを調整して、例えば、標準の信号対背景雑音と比較することにより所望の信号対雑音比を実現することができる。さらに、これは、異なる領域数又は配列上にイメージングされる領域数若しくは信号ソース数のうちの任意のものに関して最適化可能な適切なソフトウェアプログラミングを使用して実行することができる。
【0121】
場合によっては、検出器アレイ上の信号ソーススペース間のエリアから導出されるいかなる信号もフィルタリングして、隣接する信号ソース/ピクセルエリア内の信号から導出されるいかなる雑音もフィルタリングして除去する物理的なマスクをアレイ検出器上に提供することが望ましいことがある。物理的なマスクは、別個の光学要素、例えば半導体製造において使用されるフォトリソグラフィマスクと同様に、例えばイメージング信号に対応する領域に配置される光学開口部を有する不透明基板を備えることができる。あるいは、マスクは、例えば吸光ポリマー又は吸光材料、フォトレジスト等を含むポリマーを使用して検出器アレイを覆う層として提供することができる。
【0122】
理解されるように、システム自体から導出され、他の調整なしでマスクが使用されるイベントになお存在する雑音は、上述の方法のうちの任意の方法において考慮し、対処することができる。さらなる態様では、例えば、信号が入射する配列上の領域に対応するが、関連する信号が入射しない場所には検出器素子がなく、したがって、例えば普通なら関連するイメージング信号イベントの間の配列上に入射するいくらかの背景信号イベントを除外するように、検出器素子、例えばCCDのピクセルの選択的な配置を通して特に構成された検出器アレイを利用することができる。
【実施例】
【0123】
VII.実施例
以下の例に、蛍光信号のいくつかの信号ソース配列に応答させる際の、フラッド照明と比較したライン照明の利益のいくつかを示す。
【0124】
フラッド照明とゼロモード導波管配列の線形照明とを比較するために、2つの光学設備を使用した。行間隔7.55μm、行内ZMW間隔1.335μmを有する単一のZMW配列チップを使用した。チップに、すべてインビトロジェン/モレキュラープローブス(Invitrogen/Molecular Probes)(オレゴン州ユージーン(Eugene))から入手可能なアレクサ488(Alexa488)、アレクサ532(Alexa532)、アレクサ594(Alexa594)、及びアレクサ633(Alexa633)を含む蛍光染料の10μM溶液を装填した。全体的な光学設備には、各波長に総レーザ出力3mWを有する488nm及び633nmレーザ、オリンパス(Olympus)60倍空気対物レンズ(air objective)、及び100Hzフレームレート及びEM利得1000倍のEMCCDカメラセットが含まれた。励起光を対物レンズの前で球面レンズ(f=250)に通すことにより、フラッド照明を実現し、励起光を対物レンズ前で円柱レンズ(f=130)に通すことにより、線形照明を実現した。それぞれの場合で、光学濃度2.0フィルタをオンオフ切り替えることにより、ZMW基板でのレーザ出力密度が同じになるようにレーザ出力を調整した。その結果、フラッド照明設備では、レーザ出力3mWが488nm及び633nmレーザに印加され、線形照明設備では、レーザ出力0.03mWが488nm及び633nmレーザに印加された。
【0125】
フラッド照明の場合、ZMW蛍光信号と自己蛍光信号との比はおよそ1:1であったのに対して、ライン照明の場合、この比はおよそ50:1であった。光学的SNRの大幅な向上に加えて、必要なレーザ出力のおよそ1%を使用して、フラッド照明の場合と比較して同じ又は同様のEMCCD信号レベルがライン照明の場合で実現された。
【0126】
例示のためにいくらか詳細に説明したが、当業者が既知又は理解するいくつかの変形を本発明の範囲内で実施可能なことが容易に理解されるであろう。まだ明示的に本明細書に援用されていない限りにおいて、本開示において参照されたすべての公開されている参照文献及び特許文献は、その全体があらゆる目的のために参照により本明細書に援用される。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【図1】本発明の全体システムの概略図である。
【図2】ゼロモード導波管等の基板上の信号ソース配列の概略図を提供する。
【図3A】本発明の信号検出システムに適合する信号ソースの代替の構成を示す。
【図3B】本発明の信号検出システムに適合する信号ソースの代替の構成を示す。
【図4】図3Aに示す基板から導出される分離されイメージングされた信号を概略的に示し、イメージングされた信号上へのその基板からの信号ソースのオーバーレイを提供する。
【図5】スペクトル的に分解可能な信号成分の分離及び検出のための光学部品を含む本発明のシステムの基板及び光学トレインを概略的に示す。
【図6】基板上の多数の信号ソースを同時に照明するための光学部品を含む本発明のシステムの概略図を提供する。
【図7】1つの照明ビームを複数のビームに分けるに当たって偏向要素を利用する光学トレインの一例を提供する。
【図8】照明ビームを分けるに当たっての偏向要素の代替使用例を提供する。
【図9】続く線形化に向けて複数の照明ビームを生成するために、従来のビーム分離光学系を利用する光学トレインを概略的に示す。
【図10】複数の照明ビーム及び/又はラインを生成するに当たって偏光ビームスプリッタを利用する光学トレインを概略的に示す。
【図11】照明ビームの異なる偏光ビーム成分を分離して方向付けるいくつかの代替の光学構成を概略的に示す。
【図12】例えば図11及び図12に示した光学トレインのビーム分離機能を多重化する光学トレインを概略的に示す。
【図13】基板に入射するフラッド照明及びマルチライン照明の照明プロファイルの比較のためのプロットを提供する。
【図14】本発明の基板及びシステムに関連して有用な取り付け台の一例の概略図を提供する。
【図15】本発明に関連して使用されるロボットシステムを概略的に示す。
【図16】代替の照明戦略を有するシステムを概略的に示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板上に配置される複数の信号ソースであって、前記信号ソースは複数の略平行する行で前記基板上に配列され、前記複数の平行な行はそれぞれ複数の信号ソースを含み、行内の2つの隣接する信号ソースは第1の距離だけ離間され、2つの隣接する信号ソース行は第2の距離だけ離間され、前記第2の距離は前記第1の距離よりも大きい、複数の信号ソースと
を備える解析装置。
【請求項2】
前記第2の距離は前記第1の距離の少なくとも2倍である、請求項1に記載の解析装置。
【請求項3】
前記第2の距離は前記第1の距離の少なくとも3倍である、請求項1に記載の解析装置。
【請求項4】
前記基板上の前記複数の信号ソースはそれぞれ、前記基板の表面内に配置されるウェルを含む、請求項1に記載の解析装置。
【請求項5】
前記基板は、第1の透明層と、前記透明層上に配置される第2の層とを備え、各ウェルは、前記第2の層を通って前記第1の層まで配置される開口部を備える、請求項4に記載の解析装置。
【請求項6】
各ウェルは、約1nm〜約200nmの断面寸法を有する、請求項5に記載の解析装置。
【請求項7】
前記第2の層は不透明層を含み、各ウェルはゼロモード導波管を含む、請求項6に記載の解析装置。
【請求項8】
前記第1の距離は約100nm〜約1mmであり、前記第2の距離は約200nm〜約10mmである、請求項1に記載の解析装置。
【請求項9】
前記基板は少なくとも10の略平行な信号ソース行を含む、請求項1に記載の解析装置。
【請求項10】
前記基板は少なくとも100の略平行な信号ソース行を含む、請求項1に記載の解析装置。
【請求項11】
前記複数の信号ソースはそれぞれ蛍光材料を含む、請求項1に記載の解析装置。
【請求項12】
前記蛍光材料は、異なる蛍光放射スペクトルを有する蛍光化合物の混合物を含む、請求項11に記載の解析装置。
【請求項13】
前記蛍光化合物の混合物は、異なる放射スペクトルを有する少なくとも2つの異なる蛍光化合物を含む、請求項12に記載の解析装置。
【請求項14】
前記蛍光化合物の混合物は、異なる放射スペクトルを有する少なくとも4つの異なる蛍光化合物を含む、請求項12に記載の解析装置。
【請求項15】
基板上の信号ソース配列であって、
前記基板上の第1のロケーションに配置される第1の複数の信号ソースであって、前記第1の複数の信号ソースのうちの第1の信号ソースは、前記第1の複数の信号ソース内の第2の信号ソースから第1の距離にある、第1の複数の信号ソースと、
前記基板上の第2のロケーションに配置される第2の複数の信号ソースであって、前記第2の複数の信号ソースのうちの第1の信号ソースは、前記第2の複数の信号ソース内の第2の信号ソースから第2の距離にあり、前記第2の距離は前記第1の距離よりも大きい、第2の複数の信号ソースと
を含む配列。
【請求項16】
前記第1のロケーションは、前記第2のロケーションよりも前記基板のイメージングフィールドの中心に近い、請求項15に記載の配列。
【請求項17】
前記配列の中心ロケーションに向かう信号ソースは、前記配列上の外周ロケーションにある信号ソースよりも間隔が狭い、請求項15に記載の配列。
【請求項18】
前記信号ソースは、前記基板上に配置される離散した反応容積を含む、請求項15に記載の配列。
【請求項19】
前記信号ソースは、前記基板上に配置される光学閉じ込めを含む、請求項15に記載の配列。
【請求項20】
前記光学閉じ込めはゼロモード導波管を含む、請求項19に記載の配列。
【請求項21】
複数の離散した信号ソースが配置された基板と、
励起光源と、
前記励起光源からの励起光を前記基板上に伝送して、第1の複数の照明信号ソース及び第2の複数の照明信号ソースを照明し、前記複数の照明信号ソースからの信号をアレイ検出器上にイメージングするように位置決めされる光学トレインと
を備える解析システムであって、
前記基板及び前記光学トレインのうちの1つ又は複数は、前記第1の複数の照明信号ソースが前記第2の複数の照明信号ソースから、前記アレイ検出器上にイメージングされる前記第1の複数の信号ソース内の信号ソースからの信号のイメージの断面寸法よりも大きい第1の距離だけ離間されるように構成される、解析システム。
【請求項22】
前記第1の距離は、前記アレイ検出器上にイメージングされる前記第1の複数の信号ソース内の信号ソースからの信号のイメージの断面寸法の2倍よりも大きい、請求項21に記載の解析システム。
【請求項23】
前記第1の距離は、前記アレイ検出器上にイメージングされる前記第1の複数の信号ソース内の信号ソースからの信号のイメージの断面寸法の3倍よりも大きい、請求項21に記載の解析システム。
【請求項24】
前記基板は、前記基板上で互いに隣接し、前記第1の距離だけ離間される第1及び第2の複数の信号ソースを含み、前記第1及び第2の複数の信号ソースは、前記第1及び第2の複数の照明信号ソースに対応する、請求項21に記載の解析システム。
【請求項25】
前記第1の複数の信号ソースは第1の信号ソース行を含み、前記第2の複数の信号ソースは第2の信号ソース行を含み、前記第1及び第2の信号ソース行は略平行であり、前記第1の距離だけ離間される、請求項24に記載の解析システム。
【請求項26】
前記光学トレインは、前記基板上に第1及び第2の照明プロファイルを提供するように構成され、前記基板上の前記第1及び第2の照明プロファイルは、前記第1の距離だけ離間される、請求項21に記載の解析システム。
【請求項27】
前記光学トレインは、各離散信号ソースから前記検出器アレイ上に分解可能な信号成分を別個にイメージングするように構成され、第1の信号ソースからの信号成分のイメージは、前記複数の離散信号ソース内の第2の信号ソースの信号成分からのイメージに重複しない、請求項21に記載の解析システム。
【請求項28】
前記分解可能な信号成分は、少なくとも3つの分解可能な信号成分を含む、請求項27に記載の解析システム。
【請求項29】
前記光学トレインは、離散信号ソースからの前記分解可能な信号成分のそれぞれを前記検出器アレイ上の空間的に離散した隣接する、異なるロケーションにイメージングするように構成される、請求項27に記載の解析システム。
【請求項30】
前記分解可能な信号成分は、分解可能な異なるスペクトルを有する蛍光放射を含む、請求項27に記載の解析システム。
【請求項31】
信号ソース配列上のイメージングフィールドから信号を受け取り、前記信号を検出器上にイメージングする光学トレインと、
信号ソース配列であって、前記イメージフィールドの外周にある2つの隣接する信号ソースの間隔は、前記配列上の前記イメージフィールドの中心にある2つの隣接する信号ソースの間隔よりも大きい、信号ソース配列と
を備えるシステム。
【請求項32】
複数の信号ソースが配置された基板と、
励起光源と、
光学トレインであって、
前記励起光源から励起光を受け取り、
前記励起光を前記基板上に少なくとも第1及び第2の略平行する線形照明プロファイルで向け、前記第1及び第2の線形照明プロファイルは、前記第1の線形照明プロファイルの幅よりも大きな距離だけ前記基板上において離間され、及び
前記基板から光学信号を受け取り、前記光学信号を検出器アレイ上にイメージングする
ように構成される光学トレインと
を備える解析システム。
【請求項33】
前記光学トレインは、励起光を線形照明プロファイルに変換する円柱レンズ及びホログラフィック光学要素のうちの1つ又は複数を含む、請求項32に記載の解析システム。
【請求項34】
前記光学トレインは、励起光を前記基板に少なくとも4つの略平行する線形照明プロファイルで向けるように構成される、請求項33に記載の解析システム。
【請求項35】
前記光学トレインは、励起光を前記基板に少なくとも10の略平行する線形照明プロファイルで向けるように構成される、請求項33に記載の解析システム。
【請求項36】
前記光学トレインは、励起光を前記基板に少なくとも20の略平行する線形照明プロファイルで向けるように構成される、請求項33に記載の解析システム。
【請求項37】
前記光学トレインは、励起光を前記基板に少なくとも50の略平行する線形照明プロファイルで向けるように構成される、請求項33に記載の解析システム。
【請求項38】
前記第1及び第2の線形照明プロファイルは、前記第1の線形照明プロファイルの幅の少なくとも2倍の距離だけ前記基板上において離間される、請求項31に記載の解析システム。
【請求項39】
前記第1及び第2の線形照明プロファイルは、前記第1の線形照明プロファイルの幅の少なくとも3倍の距離だけ前記基板上において離間される、請求項31に記載の解析システム。
【請求項40】
前記第1及び第2の線形照明プロファイルは、前記第1の線形照明プロファイルの幅の少なくとも4倍の距離だけ前記基板上において離間される、請求項31に記載の解析システム。
【請求項41】
第1のスペースで離間された第1及び第2の信号ソースを含む基板と、
励起光源と、
励起光を、前記第1のスペースの少なくとも一部に向けることなく、前記励起光源から前記第1及び第2の信号ソースに同時に向けるように構成される光学トレインと
を備える解析システム。
【請求項42】
前記第1の信号ソースは第1の信号ソース群のメンバであり、前記第2の信号ソースは第2の信号ソース群のメンバであり、前記光学トレインは、励起光を前記第1及び第2の群内の各信号ソースに同時に向けるように構成される、請求項41に記載の解析システム。
【請求項43】
前記第1及び第2の信号ソース群は、互いに略平行に配置される第1及び第2の離散信号ソース行を含む、請求項42に記載の解析システム。
【請求項44】
複数の離散した信号ソースが配置された基板であって、少なくとも第1の信号ソースサブセットが第1の略線形な向きに位置決めされ、第2の信号ソースサブセットが、前記第1の線形な向きに略平行する第2の略線形な向きに位置決めされる、基板と、
光源と、
前記光源からの光を前記基板に少なくとも第1及び第2の略平行な線形照明プロファイルで向ける光学トレインであって、前記第1の線形プロファイルは前記第1の信号ソースサブセットを照明し、前記第2の照明プロファイルは前記第2の信号ソースサブセットを照明する、光学トレインと、
を備える解析システム。
【請求項45】
前記基板上の前記第1の線形照明プロファイルの位置は、前記基板上の前記第2の線形照明プロファイルの位置から独立して調整可能である、請求項44に記載の解析システム。
【請求項46】
前記光学トレインは、前記光源からの光を少なくとも第1及び第2のビームに分ける第1の偏光ビームスプリッタと、前記第1及び第2のビームを前記基板上の前記第1及び第2の線形照明プロファイルに変換する線形化光学系とを少なくとも備える、請求項44に記載の解析システム。
【請求項47】
複数の離散した信号ソースを含む基板と、
励起光源と、
前記励起光源から励起光を受け取り、前記励起光を前記基板に向けるように位置決めされる光学トレインであって、励起光を複数の信号ソースに略線形の照明プロファイルで同時に向け、前記複数の信号ソースから光学信号を同時に受け取り、前記光学信号をイメージング検出器上に向け、前記複数の信号ソースから前記光学信号を検出するように構成される光学トレインと
を備えるシステム。
【請求項48】
少なくとも第1及び第2の信号ソース行が配置された基板と、
励起光源と、
前記励起光源から励起光を受け取り、前記励起光を前記基板に向けるように位置決めされる光学トレインであって、前記光学トレインは、前記励起光を少なくとも第1及び第2の離散ビームに分け、前記少なくとも第1及び第2の離散ビームのそれぞれを略線形の照明プロファイルで前記基板に向けるように構成され、前記第1のビームは前記第1の信号ソース行内の複数の信号ソースを同時に照明し、前記第2のビームは前記第2の信号ソース行内の複数の信号ソースを同時に照明する、光学トレインと
を備えるシステム。
【請求項49】
励起光源と、
前記励起光源から励起光を受け取り、励起光を前記基板に向けるように位置決めされる光学トレインであって、
前記励起光を少なくとも第1及び第2の偏光成分ビームに分ける偏光ビームスプリッタ、及び
前記第1及び第2の偏光成分ビームのそれぞれを前記基板上の異なるロケーションに向ける光学部品
を含む光学トレインと
を備えるシステム。
【請求項50】
複数の信号ソースを解析する方法であって、
複数の離散した信号ソースが配置された基板を提供するステップと、
第1の複数の照明信号ソース及び第2の複数の照明信号ソースを照明するステップであって、前記第1の複数の照明信号ソースは、検出器アレイ上にイメージングされる前記信号ソースのイメージの断面寸法よりも大きな距離だけ前記第2の複数の照明信号ソースから離間されるステップと、
前記信号ソースを検出器アレイ上にイメージングするステップと
を含む方法。
【請求項51】
前記第1の複数の照明信号ソースは、検出器アレイ上にイメージングされる信号ソースのイメージの断面寸法の少なくとも2倍の距離だけ前記第2の複数の照明信号ソースから離間される、請求項50に記載の方法。
【請求項52】
前記第1の複数の照明信号ソースは、検出器アレイ上にイメージングされる信号ソースのイメージの断面寸法の少なくとも3倍の距離だけ前記第2の複数の照明信号ソースから離間される、請求項50に記載の方法。
【請求項53】
前記第1の複数の信号ソース及び前記第2の複数の信号ソースは、前記基板上で互いに隣接し、前記第1の距離だけ離間される、請求項50に記載の方法。
【請求項54】
前記照明するステップは、前記基板の非照明部分により前記基板上の前記第1の距離だけ離間された前記基板の第1及び第2の部分を照明するステップを含み、前記第1の複数の照明信号ソースは前記基板の前記第1の部分に配置され、前記第2の複数の照明信号ソースは前記基板の前記第2の部分に配置される、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記基板はフラッド照明され、前記第1及び第2の複数の照明信号ソースは、前記基板上において前記第1の距離だけ離間される、請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記第1の複数の信号ソースは第1の照明ビームを使用して照明され、前記第2の複数の信号ソースは第2の照明ビームを使用して照明される、請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記第1及び第2の照明ビームはそれぞれ、線形照明プロファイルを含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
複数の信号ソースを解析する方法であって、
第1及び第2の信号ソース行に配置された複数の離散した信号ソースが配置された基板を提供するステップであって、前記第1及び第2の信号ソース行は第1の距離だけ離間されるステップと、
励起光を少なくとも第1及び第2の線形照明プロファイルで前記第1及び第2の信号ソース行のそれぞれに向けるステップであって、前記第1の距離は前記第1の線形照明プロファイルの幅よりも大きいステップと、
前記励起光に応答しての前記複数の離散した信号ソースからの信号を解析するステップと
を含む方法。
【請求項59】
前記第1の距離は、前記第1の線形照明プロファイルの幅の少なくとも2倍である、請求項58に記載の方法。
【請求項60】
前記第1の距離は、前記第1の線形照明プロファイルの幅の少なくとも3倍である、請求項58に記載の方法。
【請求項61】
基板上の複数の信号ソースから蛍光信号を検出する方法であって、前記信号ソースにより占有されない前記基板の部分には励起放射を向けずに、励起放射を基板上の前記複数の信号ソースに占有される前記基板の部分に向けるステップを含む方法。
【請求項62】
基板上の複数の信号ソースを解析する方法であって、
基板上に少なくとも第1及び第2の隣接する信号ソースを提供するステップと、
前記第1の信号ソースと前記第2の信号ソースとの間のスペースを実質的に照明せずに、励起放射を前記第1及び第2の信号ソースに選択的に向けるステップと
を含む方法。
【請求項63】
前記第1の信号ソースは第1の複数の信号ソース内に提供され、前記第2の信号ソースは第2の複数の信号ソース内に提供され、前記第1及び第2の複数の信号ソースは互いに隣接し、前記励起放射を選択的に向けるステップは、前記第1の複数の信号ソースと前記第2の複数の信号ソースとの間のスペースを実質的に照明せずに、励起放射を前記第1及び第2の複数の信号ソースに選択的に向けるステップを含む、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
前記励起放射を前記第1及び第2の信号ソースに選択的に向けるステップは、励起光を前記第1及び第2の別個の線形照明プロファイルで前記基板上に向けるステップを含み、前記第1の線形照明プロファイルは前記第1の信号ソースを照明し、前記第2の線形照明プロファイルは前記第2の信号ソースを照明する、請求項62に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【公表番号】特表2009−526997(P2009−526997A)
【公表日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−555310(P2008−555310)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【国際出願番号】PCT/US2007/003804
【国際公開番号】WO2007/095235
【国際公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【出願人】(506141546)パシフィック バイオサイエンシーズ オブ カリフォルニア, インコーポレイテッド (11)
【Fターム(参考)】