説明

複数の反応ゾーンを使用することによる低級オレフィンの製造法

【課題】C4以上オレフィンを含むオレフィン富化混合物を、接触分解することによって低級オレフィンを製造する、収率および選択性に優れた方法の提供。
【解決手段】1種以上のC4以上オレフィンおよび任意に有機酸素化化合物を含むオレフィン富化混合物を供給原料とし、a)原料を第一反応ゾーンに入れ、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する第一結晶質アルミノシリケート触媒と接触させ、低級オレフィンを含む第一反応流出物を製造する工程;b)次いでその第一反応流出物を少なくとも1つの第二反応ゾーンに入れて、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する第二結晶質アルミノシリケート触媒と接触させ、低級オレフィンを含む第二反応流出物を製造する工程;およびc)その第二反応流出物から低級オレフィンを分離する工程を含み;かつ第一反応器および第二反応器における反応温度を制御する、オレフィンの接触分解方法。

【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
相互参照
本出願は、すべての目的のためにその内容を本明細書に完全に引用したものとする2005年8月15日に中国特許庁に出願された特許出願第200510028811.3号および第200510028812.8号の優先権を主張する。
【技術分野】
【0002】
本発明は、低級オレフィンを製造する方法に関するものであり、詳しくは、C以上オレフィンを接触分解させることによって低級オレフィンを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0003】
石油化学工業は、国民経済の重要な基盤産業であって、工業、農業、通信および国防を含む様々な部門に大量の化学原料を供給している。而して、石油化学工業は、国民経済と相関がありかつ国民経済を先導する工業部門のうちの一つである。低級オレフィンは、現代石油化学工業を構成する最も重要な基本原料のうちの一つである。
【0004】
例えば、プロピレンは、主として、ポリプロピレン、クメン、オキソアルコール、アクリロニトリル、プロピレンオキシド、アクリル酸、およびイソプロパノールなどを製造するために使用されていて、ポリプロピレンは、世界のプロピレン需要の半分超を占めている。現在のところ、世界におけるプロピレンの67%が、水蒸気分解によるエチレン製造時の副生物から誘導され、30%が、製油所における接触分解ユニット(FCC)によるガソリンおよびディーゼル油の製造時の副生物から誘導され、そして、わずかな量(約3%)が、プロパンの脱水素化およびエチレン・ブチレンのメタセシス反応から得られている。将来のプロピレンの需要は、その供給に比べてより高い割合で増加すると予測される。プロピレン需要の比較的高い増加率および従来の製造法で提示される「供給を上回る需要」という状況を考慮すると、プロピレンの需要を補うためにプロピレンの収率を増加させる他の様々な新技術を使用する必要がある。
【0005】
最近では、ポリオレフィンおよびアルキル芳香族化合物に関する大きな需要の影響を受けて、低級オレフィンの需要は、急速に増加する傾向があるが、低級オレフィンの従来の製造法では、低級オレフィンの市場での急速に増大する需要を満たすことができないことから、低級オレフィンの需要を補うために、低級オレフィンの収率を増加させる他の様々な新技術を使用する必要がある。
【0006】
また一方で、世界には、C以上オレフィンの原料が非常にたくさんある。化学製品市場の変化および輸送費を含む様々なファクターの影響を考慮すると、これらの原料を現場で十分に処理して利用する方法が好ましい。その一つの有望な方法は、C4以上オレフィンのより低級なオレフィンへの転化を含む。その方法では、比較的過剰でかつ低いアクセサリ値(accessory value)を有するC4以上オレフィンの原料を利用できるだけでなく、幅広い用途を有する様々な低級オレフィンを得ることもできる。
【0007】
参照文献CN1490287Aは、温度350〜500℃、圧力0.6〜1.0MPaおよび1〜10hr−1の単位時間あたりの重量空間速度(WHSV)で、固定床反応器において、CまたはCのオレフィンを含む混合物を反応させることによって、エチレンおよびプロピレンを製造する方法を開示した。前記文献は、様々なタイプの触媒および反応結果に焦点を当てており、その反応原料は、主として、C以上のオレフィンではなく、CおよびCのオレフィンである。一方、そこでは、単一の反応器構成が使用されるので、確実に触媒が望ましい安定性を保ち、また、目標生成物が望ましい収率で得られることは不可能だった。
【0008】
参照文献CN1274342A(US 6,307,117B1の対応特許)は、20%以上の少なくとも1種のC〜C12オレフィンを含む線形炭化水素供給原料から接触転化によってエチレンおよびプロピレンを製造する方法を開示した。前記文献では、使用したゼオライト含有触媒におけるゼオライトは、次の要求条件を満たしていた:すなわち、該ゼオライトは、実質的にプロトンを含まない、200〜5,000のSiO/Alモル比を有する、周期表のIB族に属する金属から成る群より選択される少なくとも1種の金属を含む、そして中間孔径ゼオライトである。また、好ましいゼオライトはZSM−5ゼオライトファミリーに属する。反応は、400〜700℃の温度、0.1〜10atmの圧力および1〜1,000hr−1のWHSVで行った。しかしながら、単一の反応器構成が、この文献でも同じように使用されており、その結果として、エチレンおよびプロピレンの収率は比較的低く、またプロピレンの最高収率はわずか25.19%である。
【0009】
Equistar Chemicals,L.P.の参照文献WO 00/26163は、中間孔径を有するゼオライト触媒を使用して、少なくとも60重量%のCおよび/またはCのオレフィンを含む供給原料からプロピレンおよびエチレンを製造する方法を開示した。その発明で有用なゼオライトとしては:3.5Å超の細孔径と14〜28の孔径指数(pore size index)とを有するZSM−23およびAIPO4−11のような一次元チャンネルを有するゼオライト;および3.5Åを超える細孔径および14〜28の孔径指数を有する一次チャンネルと、20未満の孔径指数を有する二次チャンネルとを含むZSM−57およびAIPO4−18のような相互接続チャンネルを有するゼオライトを挙げていた。触媒は、Na型およびH型などであることができ、その場合、PdまたはPtのような極微量の酸化金属を加えて、触媒再生中にコークスの除去を促進できた。固定床反応器システムによる方法を一般的に使用し、反応は、200〜750℃の温度、0.05〜1MPaの圧力および0.5〜1,000hr−1のWHSVで行った。一方で、前記参照文献は、触媒の具体的な調製法および反応データは開示しなかった。また、そこでは単一の反応器構成も使用していたが、エチレンおよびプロピレンの非理想的な収率および触媒の低い安定性を含む結果が認められた。
【0010】
参照文献EP0109059A1は、C〜C12オレフィンのプロピレンへの転化法を提案した。そこで使用された触媒は、300以下のSiO/Alモル比を有するZSM−5ゼオライトであった。その方法は、400〜600℃の温度および50hr−1を超えるオレフィンの空間速度で行われた。接触分解反応に関する様々に配合された原料、反応温度および空間速度の影響を詳細に調査した。しかしながら、この発明では、反応器を組み合わせた構成を使用することについては言及しておらず、而して、触媒は、最適な接触転化の利点を実現できず、また、目標生成物は満足のいく選択性および安定性を有していなかった。
【0011】
参照文献US598181は、C〜CオレフィンのCおよびCのオレフィンへの転化法を提案した。そこで使用された触媒は、10〜200のSiO/Alモル比、300〜600m/gのBET比表面積、および0.1〜0.9μmの粒径を有するペンタシル型ゼオライト触媒であった。反応温度は、380〜500℃であった。この発明の一つの特徴は、一定の割合の蒸気を供給原料中にブレンドすることにある。そのHO/HCの割合は0.5〜3(重量基準)であった。蒸気を添加すると、触媒上での炭素の堆積を軽減することができ、それによって、触媒の安定性が増すということであった。また、この発明では、反応器を組み合わせた構成を使用することは考慮されておらず、而して、触媒に関して最適な活性および安定性の利点を同様に実現できなかった。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
本発明で解決しようとする技術的問題は、触媒の低い安定性および短い寿命、および目標生成物としての低級オレフィンに関する収率および選択性の低さを含む従来の文献で提示された欠陥を克服することであり、また、本発明は、低級オレフィンを製造するための新規な方法も提案する。オレフィンの接触分解反応の複雑なメカニズムに関する広範かつ徹底的な分析後に、本発明者は、熱伝達の基本的な原理の観点から、顕微鏡的展示および顕微鏡的要素を密接に組み合わせながら、実験現象に関する多くの実験的調査および探索を行い、それによって、これらの問題を解決するための新規な方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0013】

本発明は、C4以上のオレフィンと任意に有機酸素化化合物とを含む供給原料を接触分解することによって低級オレフィンを製造する方法を提供する。
【発明の効果】
【0014】
本発明方法の特徴は、目標生成物としての低級オレフィンに関する高い収率および良好な選択性、ならびに触媒の高い安定性である。
オレフィンを接触分解する条件下で行われ、そして1種以上のC4以上オレフィンを含むオレフィン富化混合物を供給原料として採用する低級オレフィンを製造する方法は、以下の工程:すなわち、
a)まず最初に、供給原料を第一反応ゾーンに入れて、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する第一結晶質アルミノシリケート触媒と接触させ、それにより、低級オレフィンを含む第一反応流出物を製造する工程;
b)次いでその第一反応流出物を少なくとも1つの第二反応ゾーンに入れて、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する第二結晶質アルミノシリケート触媒と接触させ、それにより、低級オレフィンを含む第二反応流出物を製造する工程;および
c)その第二反応流出物から低級オレフィンを分離する工程を含み;かつ
その場合に、該第一反応ゾーンにおける反応温度は200〜530℃であり、そして該第二反応ゾーンにおける反応温度は440〜600℃であるが、該第一反応ゾーンは該第二反応ゾーンとは異なる反応温度を有することを条件とすることを特徴としている。
【0015】
本明細書で使用される用語「低級オレフィン」とは2〜6個の炭素原子を有するオレフィンを指している。
上記の技術的な解決法において供給原料として使用される1種以上のC4以上オレフィンを含むオレフィン富化混合物は、好ましくは、C4以上オレフィンを含みかつ製油所の接触分解ユニットもしくはエチレン工場の水蒸気分解ユニットから誘導されるオレフィン富化混合物分画であるか、または、C4以上オレフィンを含みかつα−オレフィンの製造時に同時製造されるかもしくはOTO(酸素化物からオレフィン)、例えばMTP(メタノールからプロピレン)のようなMTO(メタノールからオレフィン)時に副製造されるオレフィン富化混合物成分である。オレフィン富化供給原料中のC4以上オレフィンの量は10〜90重量%である。オレフィン富化混合物は、好ましくはC〜C12線状オレフィンを含む混合物であり、更に好ましくはC〜C線状オレフィンを含む混合物である。
【0016】
本発明では、第二反応流出物を、例えばエチレン分離塔およびプロピレン分離塔に通し、それによりエチレンおよびプロピレンのような低級オレフィン生成物を得る。低級オレフィンを分離する前記方法は、当業者に公知である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
本発明の一つの好ましい態様では、有機酸素化化合物を、少なくとも第一反応ゾーンの入口で加える。オレフィン富化混合物中において、有機酸素化化合物の総量(第二反応ゾーンの入口で加えることができる有機酸素化化合物を含む)対オレフィンの重量比は0.01〜10:1である。任意に、有機酸素化化合物も、第二反応ゾーンの入口で加える。第二反応ゾーンの入口における有機酸素化化合物のこの部分対オレフィン富化流中のC4以上オレフィンの重量比は0〜5:1である。
【0018】
本発明で使用される有機酸素化化合物としては、メタノール、ジメチルエーテル、エタノール、エチルエーテルまたはそれらの任意の割合の混合物が挙げられる。好ましくは、有機酸素化化合物は、メタノール、ジメチルエーテル、またはメタノールとジメチルエーテルとの任意の割合の混合物である。本発明の一つの好ましい態様では、反応器に炭化水素供給材料と一緒に適当量の有機酸素化化合物を加える。例えば、一つの面では、酸素化化合物としてのメタノールまたはジメチルエーテルを、目標生成物の収率を増加させるのに役立つエチレンおよびプロピレンを形成させるための反応条件下で脱水し、そして一方、生成する水は、C4以上オレフィンを分解するための希釈ガスとして役立つことができ、そして更に重要なことには、比較的低い温度での接触分解によって、メタノールまたはジメチルエーテルは、炭化水素の炭素・炭素結合を活性化し、それによって反応温度を低くすることができ、また、触媒の酸性点における炭素の堆積を減少させることができる活性中間体を生成させる。同時に、有機酸素化化合物の脱水熱の放熱による分解反応で必要とされる吸熱容量を提供するために、また同時に、希釈ガスを提供するために、各反応器の出口からの流出物に対して、一定量のメタノールまたはジメチルエーテルまたはそれらの混合物を補い、それにより、反応中の中間手順およびエネルギーを、上記反応の二種の有効な組み合わせによって、効率的に利用する。
【0019】
本発明の一つの態様では、第一反応ゾーンは、好ましくは200〜530℃、更に好ましくは350〜500℃の反応温度;好ましくは0.1〜100hr−1間、更に好ましくは2〜50hr−1間のWHSV(触媒の単位重量あたり1時間に通過した供給原料の重量)、および好ましくは−0.1〜5MPa、更に好ましくは−0.07〜0.5MPaの反応圧力(ゲージ圧、以下同じ)を有する。第二反応ゾーンは、好ましくは440〜600℃、更に好ましくは470〜580℃の反応温度;好ましくは0.1〜100hr−1、更に好ましくは0.5〜30hr−1のWHSV;および好ましくは−0.1〜1MPa、更に好ましくは−0.07〜0.5MPaの反応圧力を有する。
【0020】
本発明の別の態様では、第一反応ゾーンおよび第二反応ゾーンの両方が、好ましくは0〜1MPaまたは−0.1〜<0MPaの圧力を有する。少なくとも第一反応ゾーンの入口で有機酸素化化合物を加えるとき、第一反応ゾーンおよび第二反応ゾーンの両方が、好ましくは0〜0.5MPaまたは−0.07〜<0MPaの圧力を有する。
【0021】
本発明の別の態様では、第一反応ゾーンは最も好ましくは440〜480℃の反応温度を有し、第二反応ゾーンは最も好ましくは480〜550℃の反応温度を有し、そして第一反応ゾーンの反応温度は、第二反応ゾーンのそれに比べて低い。第一反応ゾーンの温度は、第二反応ゾーンのそれに比べて、10〜80℃だけ低い、更に好ましくは20〜50℃だけ低いことが更に好ましい。
【0022】
本発明の別の態様では、第一反応ゾーンは最も好ましくは5〜30hr−1のWHSVを有し、第二反応ゾーンは最も好ましくは1〜20hr−1のWHSVを有し、そして第一反応ゾーンのWHSVは、第二反応ゾーンのWHSVに比べて高い。第一反応ゾーンのWHSVは、第二反応ゾーンのそれに比べて、5〜15hr−1だけ高い。
【0023】
本発明で使用される第一結晶アルミノシリケートおよび第二結晶アルミノシリケートの両方は、好ましくは、少なくとも10のSiO/Alモル比を有するZSMモレキュラーシーブ、ベータモレキュラーシーブまたはモルデン沸石ゼオライトモレキュラーシーブから選択する。ZSMモレキュラーシーブは、好ましくは10〜3,000のSiO/Alモル比を有するZSM−5、ZSM−11、ZSM−23またはZSM−42から好ましく選択する。第一結晶アルミノシリケートおよび第二結晶アルミノシリケートの両方は、最も好ましくは、50〜500のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブである。
【0024】
本発明の方法では、該第二反応ゾーンのうちの少なくとも一つは、直列に、好ましくは1〜5個の反応器、更に好ましくは1〜3個の固定床反応器を含む。その場合、固定床反応器は、好ましくは、軸方向固定床反応器(axial fixed−bed reactor)または半径方向固定床反応器(radial fixed−bed reactor)から選択される。
【0025】
一つの好ましい態様では、本発明は、直列の少なくとも2つの反応ゾーンを採用しており、そこでは、相対的に、第一反応ゾーンは、より高いWHSVおよびより低い温度で運転し、また、第二反応ゾーンは、より低いWHSVおよびより高い温度で運転する。多くの実験的研究では、C4以上オレフィンの接触分解法のメカニズムは、重合および分解のメカニズムであり、そこでは、重合プロセスは放熱であり、そして分解プロセスは吸熱であることが証明されている。重合中の集中放熱は、入口における触媒の比較的大きな温度上昇を引き起こすことがあり、特に、触媒の活性中心における局所温度は、触媒の見掛け温度に比べて10℃だけ、場合によっては100℃超だけ高いことがあり、また、高過ぎる局所的温度は、触媒の寿命に対して致命的な影響を及ぼす。特に、触媒上でのオレフィンの芳香族化のプロセスおよびオレフィンの縮合を大いに促進して、コークスを生成させることができ、それによって、コーキングが加速され、而して触媒の失活および安定期間の短縮が加速される。オレフィンの接触分解法では、高過ぎる局所温度の上昇は、触媒の寿命に関して多くの顕著な影響を有する。
【0026】
第一反応ゾーンで使用する低い温度での運転は、オレフィン重合からの放熱を低減でき、それによって、オレフィン重合の間、触媒の速い失活を引き起こし得る高過ぎる局所温度の上昇を回避できる。一方、本発明では、目標生成物の収率および選択性を低減し得る低い温度での過度の水素移動反応を回避するために比較的高いWHSVを使用する。更に、オレフィンの分解プロセスが吸熱であることを考慮すると、比較的高い運転温度および比較的低いWHSVを、直列に接続された第二反応ゾーンで使用して、オレフィンの分解プロセスのために充分な熱吸収と滞留時間とを保証し、それにより、低級オレフィンの収率を最大にしかつ触媒の安定な期間を延長しようとする目的が達成される。それは、固定床接触分解法を使用することによって低級オレフィンの収率を増加させるためには非常に重要である。
【0027】
本発明の技術的な解決法は好ましい技術的効果を達成し、それにより、反応温度を低くしかつ目標生成物としての低級オレフィンの収率および選択性を増大させるという条件下で、触媒活性の安定性は効果的に延長される。
【0028】
本明細書では詳細に記載されていない他の運転条件における低級オレフィンの従来の接触分解法を参照してきたが、それらは、接触分解によって低級オレフィンを製造する本方法に包含できる。
【0029】
特に断りが無ければ、本明細書で使用されるパーセンテージおよび比率は重量を基準としている。
特に断りが無ければ、本発明における結晶アルミノシリケートのSiO/Alモル比は、原子を基準として算出される。
【0030】
言及したすべての刊行物は、すべての目的のために、その内容を本明細書に完全に引用したものとする。以下、実施例を掲げて、本発明の好ましい態様を説明し実証する。実施例のすべては、単なる例示であり、本発明を限定することを意図していない。
【0031】
実施例では、関連のある各混合物中の様々な成分の量を、分離し、次いで、水素炎イオン検出器および50メートルの長さのΦ0.53mm PLOT Al毛細管クロマトグラフカラムを具備しているHP−6890ガスクロマトグラフ(Agilent Technologies,Inc.、米国)を使用して検出する。
【実施例】
【0032】
実施例1
モル比が200 SiO:0.5 Al:60 n−ブチルアミン:17 OH; 200 NaCl:6300 HOである原料を、室温で撹拌しながら15時間混合して、SiO/Alのモル比200を考慮してケイ素、アルミニウム、テンプレート(n−ブチルアミン)および水を含むスラリーを配合した。その後で、そのスラリーを50時間140℃で結晶化させ、次いで、その結晶化させた溶液を蒸留水で洗浄し、空気雰囲気下120℃で12時間乾燥させ、そして空気雰囲気下580℃で8時間焼成して、ZSM−5モレキュラーシーブを得た。そのZSM−5モレキュラーシーブ50gを、87gの40%(重量基準)シリカゲルと混合し、そして押し出してストリップとし、次いで、それを、空気雰囲気下130℃で12時間乾燥させ、そして、空気雰囲気下430℃で6時間焼成して、ZSM−5型触媒を得た。
【0033】
上記ZSM−5型触媒5gを、直列に接続されている第一および第二の反応器(両方ともΦ18mmの軸方向固定床反応器であり、特に断りが無ければ、以下の実施例でも同じである)の中にそれぞれ充填し、反応前に、N雰囲気下480℃において3時間活性化させた。次いで、C4供給原料を充填し、触媒と接触させて反応させた。第一反応器は400℃の反応温度および50hr−1のWHSVを有し、第二反応器は530℃の反応温度および12hr−1のWHSVを有し、また、2つの反応器の両方ともに、反応圧力は標準圧力であった。実験で使用したC4供給原料は、SINOPEC(中国上海市)の上海石油化学製油所(Shanghai Petrochemical Refinery)のFCC装置から得られたものであり、その供給原料の成分の重量パーセント量は表1に示してあり、また、生成物は、2時間反応させた後に試料採取して分析した(以下の実施例でも同じ)。反応結果は、表2に示してある。
【0034】
【表1】

【0035】
【表2】

【0036】
本実施例では、C4の転化率は72.5%、エチレンの収率は6.72%、プロピレンの収率は24.36%、およびエチレンとプロピレンの全収率は31.08%であった。
実施例2〜5
これらの実施例における様々な工程および条件は:ZSM−5モレキュラーシーブ触媒が500のSiO/Alモル比を有し;第一反応器が、450℃の反応温度、18hr−1のWHSVおよび0.2MPaの反応圧力を有し;そして、第二反応器が、560℃の反応温度、−0.02MPaの反応圧力、また表3に示したように変化させたWHSVを有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、混合C8モノオレフィン(PetroChina Company Limited(中国蘭州市)の蘭州精油所(Lanzhou Refinery)から得た)であり、オクテンの重量%は約80.5%であり、オクタンの重量%は約19.5%であった。反応結果は表3にまとめてある。
【0037】
【表3】

【0038】
実施例6〜11
これらの実施例における様々な工程および条件は:第一反応器には、60のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒を充填し、第二反応器には、480のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒を充填し;その触媒の両方ともに、反応前に、N雰囲気下で3時間480℃において活性化させた、以外は実施例1と同じであった。
【0039】
反応で使用したC4供給原料は、上記製油所のFCCから入手し、その成分は表1に示した。表4に記載したような異なる反応スキームを採用した。その結果は表4にまとめた。
【0040】
【表4】

【0041】
実施例12
この実施例における様々な工程および条件は:モレキュラーシーブが、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、410℃の反応温度、70hr−1のWHSVおよび−0.053MPaの反応圧力を有し;そして、第二反応器が、500℃の反応温度、1.5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C4供給原料であり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は4.37%、プロピレンの収率は22.51%、そしてC4オレフィンの転化率は70.5%であった。
【0042】
実施例13
これらの実施例における様々な工程および条件は:モレキュラーシーブが、300のSiO/Alモル比を有するZSM−11モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSVおよび標準圧力の反応圧力を有し;そして、第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C4供給原料であり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は5.10%、プロピレンの収率は20.03%、C4オレフィンの転化率は68.23%であった。
【0043】
実施例14
この実施例における様々な工程および条件は:モレキュラーシーブが、350のSiO/Alモル比を有するZSM−23モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして、
第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合C4オレフィンであり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は6.07%、プロピレンの収率は21.66%、C4オレフィンの転化率は71.8%であった。
【0044】
実施例15
この実施例における様々な工程および条件は:モレキュラーシーブが、210のSiO/Alモル比を有するZSM−42モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして、第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C4オレフィンであり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は6.92%、プロピレンの収率は19.37%、C4オレフィンの転化率は73.8%であった。
【0045】
実施例16
この実施例における様々な工程および条件は:モレキュラーシーブが、700のSiO/Alモル比を有するベータモレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSVおよび0 MPaの反応圧力を有し;そして、第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記FCC装置から得られた混合C4オレフィンであり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は6.46%、プロピレンの収率は21.15%、そしてC4オレフィンの転化率は72.3%であった。
【0046】
実施例17
この実施例における様々な工程および条件は:モレキュラーシーブが、30のSiO/Alモル比を有するモルデン沸石モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、530℃の反応温度、28hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして、第二反応器が、580℃の反応温度、5hr−1のWHSVおよび標準圧力の反応圧力を有していた、以外は実施例1と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、SINOPEC SHANGHAI Petrochemical Company Limited(中国上海市)のエチレン工場における水蒸気分解ユニットから得られた混合C5供給原料(n−ペンテンの重量%は44.1%、n−ペンタンのそれは15.28%、イソペンタンのそれは40.62%であった)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は8.75%、プロピレンの収率は26.19%、ブチレンの収率は30.5%、C5オレフィンの転化率は76.1%であった。
【0047】
実施例18
この実施例における様々な工程および条件は:接触分解のための供給原料が、Petrochemical Technology SINOPEC(中国上海市)においてメタノールを分解することによるオレフィン製造時の副生物から得られたC〜Cモノオレフィンであり、その場合、CおよびCのオレフィンの量は、それぞれ約60%および約25%であり、残りの約15%はC以上のオレフィンであった、以外は実施例1と同じであった。
【0048】
第一反応器は、530℃の反応温度、28hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして第二反応器は、580℃の反応温度、5hr−1のWHSVおよび0.2MPaの反応圧力を有していた。第一反応器および第二反応器の両方ともに、480のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブであった。その触媒は、反応前に、3時間、N2雰囲気下、480℃で活性化させた。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は6.31%、プロピレンの収率は21.53%、そしてオレフィン全体の転化率は69.1%であった。
【0049】
実施例19
この実施例における様々な工程および条件は:反応器が、直列に接続された第一反応器、第二反応器および第三反応器を含み;反応器のうちのいずれかで使用した触媒が、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、410℃の反応温度、70hr−1のWHSVおよび−0.053MPaの反応圧力であり;第二反応器が、450℃の反応温度、50hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして第三反応器が、480℃の反応温度、2hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例12と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィンであり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は5.12%、プロピレンの収率は22.87%、そしてCオレフィンの転化率は71.2%であった。
【0050】
実施例20
この実施例における様々な工程および条件は:第四反応器を、第三反応器の後に直列に接続し;反応器のうちのいずれかで使用した触媒は、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、410℃の反応温度、70hr−1のWHSVおよび−0.053MPaの反応圧力であり;第二反応器が、450℃の反応温度、50hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;第三反応器が、480℃の反応温度、48hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして第四反応器が、500℃の反応温度、2hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例19と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィンであり、その成分は重量%で表1に示した。
反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は5.72%、プロピレンの収率は23.31%、そしてC4オレフィンの転化率は71.5%であった。
【0051】
実施例21
この実施例における様々な工程および条件は:第五反応器を、第四反応器の後に直列に接続した;反応器のうちのいずれかで使用した触媒は、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、410℃の反応温度、70hr−1のWHSVおよび−0.053MPaの反応圧力を有し;第二反応器が、450℃の反応温度、50hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;第三反応器が、480℃の反応温度、48hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;第四反応器が、500℃の反応温度、30hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして第五反応器が、530℃の反応温度、2hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例20と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は6.41%、プロピレンの収率は23.96%、そしてCオレフィンの転化率は72.0%であった。
【0052】
実施例22
この実施例における様々な工程および条件は:第六反応器を、第五反応器の後に直列に接続した;反応器のうちのいずれかで使用した触媒は、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、410℃の反応温度、70hr−1のWHSVおよび−0.053MPaの反応圧力であり;第二反応器が、450℃の反応温度、50hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;第三反応器が、480℃の反応温度、48hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;第四反応器が、500℃の反応温度、30hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;第五反応器が、530℃の反応温度、28hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有し;そして第六反応器が、550℃の反応温度、2hr−1のWHSVおよび0MPaの反応圧力を有していた、以外は実施例21と同じであった。この実施例で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合C供給原料であり、その成分は重量%で表1に示した。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は6.83%、プロピレンの収率は24.06%、C4オレフィンの転化率は72.8%であった。
【0053】
実施例23
この実施例における様々な工程および条件は:第一反応器が、470℃の反応温度、12.0hr−1のWHSVを有し;第二反応器が、550℃の反応温度、12hr−1のWHSV有し;両方の反応器とも、反応圧力は標準圧力であった、以外は実施例1と同じであった。上記製油所のFCC装置から得られた混合C供給原料である供給原料(その成分は重量%で表1に示した)を、触媒の寿命を調べるために使用した。その反応結果を表5にまとめた。
【0054】
【表5】

【0055】
比較実施例1
同じZSM−5モレキュラーシーブ触媒の寿命を:550℃の反応温度、標準圧力の反応圧力、および実施例23で示した総WHSVと同一のWHSVを有する単一反応器を使用した、以外は実施例23に記載した様々な工程および条件にしたがって調べた。その結果を表6にまとめた。
【0056】
【表6−1】

【0057】
【表6−2】

【0058】
明らかに、本発明の技術的解決法は、触媒の活性期間を著しく延長でき、明らかな技術的利点を有していた。
比較実施例2
この実施例における様々な工程および条件は:580℃の反応温度、標準圧力の反応圧力、および実施例23で示した総WHSVと同一のWHSVを有する単一反応器を使用した、以外は実施例17に記載した様々な工程および条件にしたがって調べた。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は8,63%、プロピレンの収率は25.21%、ブチレンの収率は27.6%であった。
【0059】
実施例1A
直列に接続された2つの反応器を反応で使用した。触媒は、上記実施例1で調製されたZSM−5触媒であった。第一反応器が、400℃の反応温度、50hr−1のWHSV、および1.5:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、530℃の反応温度、12hr−1のWHSV、および第一反応器の出口において0.7:1の供給原料中メタノール対C以上オレフィン重量比を有し;そして両方の反応器における反応圧力は、標準圧力であった。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合C供給原料(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は8.96%、プロピレンの収率は28.32%、そしてCオレフィンの転化率は69%であった。
【0060】
実施例2A〜7A
第一反応器および第二反応器に異なる触媒を充填する条件下で、かつ異なる配合比を有する供給原料を使用して、接触分解生成物の分配を調べた。
【0061】
この実施例における様々な工程および条件は:触媒が、異なるSiO/Alモル比を有し;そしてその触媒を、反応前に、3時間、N2雰囲気下、480℃で活性化させた、以外は実施例1Aと同じであった。この実施例では、混合C供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られたものであり、その成分は重量%で表1に示した;また混合C供給原料は、実施例17で使用したものと同じだった;また混合Cモノオレフィン供給原料は、実施例2〜5で使用したものと同じだった。
【0062】
第一反応器と第二反応器における反応条件およびその反応結果は、表2Aに示した。
【0063】
【表7】

【0064】
実施例8A
この実施例における様々な工程および条件は:触媒が、310のSiO/Alモル比を有するZSM−11モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、460℃の反応温度、5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および0.05:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、565℃の反応温度、1.5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.2:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた、以外は実施例1Aと同じであった。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は9.10%、プロピレンの収率は31.03%、そしてCオレフィンの転化率は69.57%であった。
【0065】
実施例9A
この実施例における様々な工程および条件は:触媒が、350のSiO/Alモル比を有するZSM−23モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および0.1:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.8:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた、以外は実施例1Aと同じであった。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は7.09%、プロピレンの収率は28.13%、そしてCオレフィンの転化率は70.5%であった。
【0066】
実施例10A
この実施例における様々な工程および条件は:触媒が、210のSiO/Alモル比を有するZSM−42モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および5:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは3:1のメタノール対C4以上オレフィン重量比を有していた、以外は実施例1Aと同じであった。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は11.54%、プロピレンの収率は37.66%、そしてCオレフィンの転化率は75.87%であった。
【0067】
実施例11A
これらの実施例における様々な工程および条件は:触媒が、700のSiO/Alモル比を有するベータモレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、470℃の反応温度、5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および0.5:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、560℃の反応温度、1.5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.3:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた、以外は実施例1Aと同じであった。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は8.43%、プロピレンの収率は29.19%、そしてCオレフィンの転化率は72.8%であった。
【0068】
実施例12A
この実施例における様々な工程および条件は:触媒が、30のSiO/Alモル比を有するモルデン沸石モレキュラーシーブ触媒であり;第一反応器が、530℃の反応温度、28hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および8.5:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、580℃の反応温度、5hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた、以外は実施例1Aと同じであった。反応で使用した供給原料は混合C供給原料であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は10.69%、プロピレンの収率は33.84%、そしてCオレフィンの転化率は72.3%であった。
【0069】
実施例13A
この実施例における様々な工程および条件は、以下の事項以外は実施例1Aと同じであった:すなわち、供給原料は、実施例18で使用したようなC〜Cモノオレフィンであった。
【0070】
第一反応器は、530℃の反応温度、28hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および0.05:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして第二反応器が、580℃の反応温度、5hr−1のWHSV、0.2MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた、以外は実施例1Aと同じであった。第一反応器および第二反応器の両方で使用した触媒は、480のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であった。触媒は、反応前に、3時間、N雰囲気下、480℃で活性化させた。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は11.31%、プロピレンの収率は32.73%、そしてオレフィン全体の転化率は73.7%であった。
【0071】
実施例14A
この実施例における様々な工程および条件は、以下の事項以外は実施例13Aと同じであった:すなわち、直列に接続された3つの反応器を反応で使用した。これらの反応器のうちのいずれかで使用した触媒は、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒である。第一反応器は、410℃の反応温度、70hr−1のWHSV、−0.053MPaの反応圧力、および0.05:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;第二反応器は、450℃の反応温度、50hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0のメタノール対C以上オレフィン重量比を有し;そして第三反応器が、480℃の反応温度、2hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第三反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は11.82%、プロピレンの収率は36.87%、そしてC4オレフィンの転化率は72.2%であった。
【0072】
実施例15A
この実施例における様々な工程および条件は、以下の事項以外は実施例14Aと同じであった:すなわち、直列に接続された4つの反応器を反応で使用した。これらの反応器のうちのいずれかで使用した触媒は、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であった。第一反応器は、410℃の反応温度、70hr−1のWHSV、−0.053MPaの反応圧力、および0.05:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;第二反応器は、480℃の反応温度、50hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.05:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有し;第三反応器は、460℃の反応温度、48hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第三反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C4以上オレフィン重量比を有し;そして、第四反応器は、530℃の反応温度、2hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第四反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は11.90%、プロピレンの収率は34.01%、そしてC4オレフィンの転化率は75.5%であった。
【0073】
実施例16A
この実施例における様々な工程および条件は、以下の事項以外は実施例15Aと同じであった:すなわち、直列に接続された5つの反応器を反応で使用した。これらの反応器のうちのいずれかで使用した触媒は、300のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブ触媒であった。第一反応器は、410℃の反応温度、70hr−1のWHSV、−0.053MPaの反応圧力、および0.05:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;第二反応器は、480℃の反応温度、50hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第二反応器の入口の流れでは0.05:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有し;第三反応器は、500℃の反応温度、48hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第三反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有し;第四反応器は、480℃の反応温度、30hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第四反応器の入口の流れでは0.08:1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有し;そして、第五反応器は、530℃の反応温度、2hr−1のWHSV、0MPaの反応圧力、および第五反応器の入口の流れでは0.08: 1のメタノール対C以上オレフィン重量比を有していた。反応で使用した供給原料は、上記製油所のFCC装置から得られた混合Cオレフィン(その成分は表1に重量%で示した)であった。反応結果は次の通りであった:すなわち、エチレンの収率は12.41%、プロピレンの収率は33.36%、そしてCオレフィンの転化率は76.8%であった。
【0074】
実施例17A
反応で使用した触媒は、実施例1に記載した様々な工程にしたがって作ったZSM−5型モレキュラーシーブ触媒であった。その触媒を、反応前に、3時間、N雰囲気下、480℃で活性化させた。
【0075】
反応では、直列に接続された二軸固定床反応器を使用する。その場合、第一反応器は、470℃の反応温度、12hr−1のWHSV、および0.01:1の供給原料中メタノール/オレフィン重量比を有し;そして、第二反応器は、550℃の反応温度、12hr−1のWHSV、および第二反応器の入口の流れでは0.01:1のメタノール/C以上オレフィン重量比を有し;そして、両方の反応器における反応圧力は、標準圧力であった。上記製油所のFCC装置から得られた混合C供給原料である供給原料(その成分は重量%で表1に示した)を、触媒の寿命を調べるために使用した。その反応結果を表3Aにまとめた。
【0076】
【表8】

【0077】
比較実施例1A
同じZSM−5モレキュラーシーブ触媒の寿命を:メタノールを加えていない、550℃の反応温度、標準圧力の反応圧力、および実施例17Aで示した総WHSVと同一のWHSVを有する単一反応器を使用した、以外は実施例17Aに記載した様々な工程および条件にしたがって調べた。その結果を表4Aにまとめた。
【0078】
【表9】

【0079】
明らかに、メタノールを加える本発明の技術的解決法は、触媒の活性期間を著しく延長でき、明らかな技術的利点を有していた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
オレフィンを接触分解する条件下で行い、そして、1種以上のC4以上オレフィンを含むオレフィン富化混合物を供給原料として採用する低級オレフィンを製造する方法が、以下の工程:すなわち、
a)まず最初に、供給原料を第一反応ゾーンに入れて、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する第一結晶質アルミノシリケート触媒と接触させ、それにより、低級オレフィンを含む第一反応流出物を製造する工程;
b)次いで該第一反応流出物を少なくとも1つの第二反応ゾーンに入れて、少なくとも10のSiO/Alモル比を有する第二結晶質アルミノシリケート触媒と接触させ、それにより、低級オレフィンを含む第二反応流出物を製造する工程;および
c)該第二反応流出物から低級オレフィンを分離する工程を含み;かつ、
その場合に、該第一反応ゾーンにおける反応温度は200〜530℃であり、そして該第二反応ゾーンにおける反応温度は440〜600℃であるが、該第一反応ゾーンは該第二反応ゾーンとは異なる反応温度を有することを条件とすることを特徴とする前記方法。
【請求項2】
該オレフィン富化混合物が、C4以上オレフィンを含みかつ製油所の接触分解ユニットもしくはエチレン工場の水蒸気分解ユニットから誘導されるオレフィン富化混合物分画であるか、または、C4以上オレフィンを含みかつα−オレフィンの製造で同時製造されるかもしくは酸素化物からオレフィンへの反応において副製造されるオレフィン富化混合物成分である請求項1記載の方法。
【請求項3】
該オレフィン富化混合物が、C〜C12線状オレフィンを含む混合物である請求項1記載の方法。
【請求項4】
該オレフィン富化混合物が、C〜C線状オレフィンを含む混合物である請求項3記載の方法。
【請求項5】
有機酸素化化合物を、少なくとも該第一反応ゾーンの入口で加え、かつ、該オレフィン富化混合物中における総有機酸素化化合物対オレフィンの重量比が、0.01〜10:1である請求項1記載の方法。
【請求項6】
有機酸素化化合物を、該第二反応ゾーンの入口で加え、かつ、該第二反応ゾーンの入口における該オレフィン富化流中にける該有機酸素化化合物のこの部分対C4以上オレフィンの重量比が、0〜5:1である請求項1記載の方法。
【請求項7】
該有機酸素化化合物が、メタノール、ジメチルエーテル、またはメタノールとジメチルエーテルとの混合物である請求項5記載の方法。
【請求項8】
該第一反応ゾーンが、0.1〜100hr−1のWHSV、−0.1〜5MPaの反応圧力を有し;そして、該第二反応ゾーンが、0.1〜100hr−1のWHSV、−0.1〜1MPaの反応圧力を有する請求項1または5記載の方法。
【請求項9】
該第一反応ゾーンが、350〜500℃、2〜50hr−1のWHSV、および−0.07〜0.5MPaの反応圧力を有し;そして、該第二反応ゾーンが、470〜580℃の反応温度、0,5〜30hr−1のWHSV、および−0.07〜0.5MPaの反応圧力を有する請求項8記載の方法。
【請求項10】
該第一反応ゾーンおよび該第二反応ゾーンの両方の反応圧力が、0〜1MPaまたは−0.1〜<0MPaである請求項8記載の方法。
【請求項11】
少なくとも該第一反応器の入口で有機酸素化化合物を加えるとき、該第一反応ゾーンおよび該第二反応ゾーンの両方の反応圧力が、0〜0.5MPaまたは−0.07〜<O MPaである請求項8記載の方法。
【請求項12】
該第一反応ゾーンが440〜480℃の反応温度を有し、該第二反応ゾーンが480〜550℃の反応温度を有し、そして該第一反応ゾーンが、該第二反応ゾーンに比べて低い反応温度を有する請求項9記載の方法。
【請求項13】
該第一反応ゾーンが5〜30hr−1のWHSVを有し、該第二反応ゾーンが1〜20hr−1のWHSVを有し、そして第一反応ゾーンが、該第二反応ゾーンに比べて高いWHSVを有する請求項9記載の方法。
【請求項14】
該第一反応ゾーンの反応温度が、該第二反応ゾーンのそれに比べて10〜80℃だけ低く、かつ/または、該第一反応ゾーンのWHSVが、該第二反応ゾーンのそれに比べて5〜15hr−1だけ高い請求項1記載の方法。
【請求項15】
該第一結晶アルミノシリケートおよび該第二結晶アルミノシリケートの両方を、ZSMモレキュラーシーブ、ベータモレキュラーシーブまたはモルデン沸石モレキュラーシーブから選択する請求項1記載の方法。
【請求項16】
該ZSMモレキュラーシーブを、ZSM−5、ZSM−11、ZSM−23またはZSM−42から選択し;そして、該モレキュラーシーブが、10〜3,000のSiO/Alモル比を有する請求項15記載の方法。
【請求項17】
該第一結晶アルミノシリケートおよび該第二結晶アルミノシリケートの両方を、50〜500のSiO/Alモル比を有するZSM−5モレキュラーシーブから選択する請求項11記載の方法。
【請求項18】
該第二反応ゾーンのうちの少なくとも一つが、直列に1〜5個の反応器を含む請求項1記載の方法。
【請求項19】
該第二反応ゾーンのうちの少なくとも一つが、直列に1〜3個の固定床反応器を含む請求項18記載の方法。
【請求項20】
該第一反応ゾーンおよび該第二反応ゾーンの両方で使用する該反応器を、軸方向固定床反応器および半径方向固定床反応器から選択する請求項1記載の方法。

【公開番号】特開2007−51143(P2007−51143A)
【公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2006−220836(P2006−220836)
【出願日】平成18年8月14日(2006.8.14)
【出願人】(504144932)中国石油化工股▲分▼有限公司 (5)
【出願人】(504150368)中国石油化工股▲分▼有限公司上海石油化工研究院 (3)
【Fターム(参考)】