説明

複数の幅に適応するスプレーバー制御

本発明に従ってスプレーバーからの流量を制御することにより複数のウェブ幅に適応する装置および方法。具体的には、この装置および方法は縮小ウェブ幅に対する要求を受け取り、低減流量で噴霧するようスプレーバーの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は印刷機、より具体的にはスプレーバーと、スプレーバーを作動させる方法とに関する。
【0002】
関連出願の相互参照
本出願は米国出願通し番号第11/209,597号"IMPROVED SPRAY PATTERN VALUE BODY"および米国出願通し番号第11/210,033号"CENTRAL MANIFOLD SUPPLY FOR SPRAY BAR"に関連するものであり、これら米国出願の全開示内容は参照により本出願に包含される。
【0003】
背景
印刷産業では、複数のスプレーヘッドを有するスプレーバーを使用して、湿し水のような液体を湿しローラに供給し、湿しローラが供給された溶液を他の複数の湿しローラを介してプレートに行き渡らせる。典型的なスプレーバーはウェブの幅に適応するように設計されている。狭いウェブ幅を走らせたい場合には、スプレーバーにシャッターが取り付けられる。シャッターはスプレーバーの両端の2つのスプレーヘッドのスプレーパターンを打ち切ることで作用する。典型的なシャッターは、スプレーバーが多数の狭いウェブ幅を走ることができるように、複数の設定を有している。
【0004】
初期のシャッターデザインは固体ブレードから構成されていたため、スプレーパターンの打ち切られた領域にある目標ローラの端部には液体が伝わらなかった。そのため、非ぬれ面に過度の熱が発生し、ローラが尚早に破損してしまう原因ともなった。シャッターの使用に係わる別の問題は、ある一定のウェブ長を下回ると、シャッターが無効となることである。シャッターの効力は限られたウェブ幅範囲に服している。シャッターの使用は結果として廃液を増加させてしまう。というのも、スプレーパターンの打ち切られた部分というのはローラの方ではなく、ドレインパンの中へ向かっているからである。
【0005】
最近のシャッターデザインは穿孔を有しているので、打ち切られた領域のスプレーパターンはシャッターを通って目標ローラに達することができる。これによりローラが十分に湿るので、ローラに対する時期尚早の損傷は防止される。より大きなウェブ幅の変化に適応するために、シャッターのペアを複数設ける場合もある。
【0006】
発明の概要
本発明の1つの実施形態によれば、複数のウェブ幅に適応するスプレーバー制御装置および方法が提供される。この装置および方法はウェブ幅縮小の要求を受け取ると、低減流量で噴霧するようスプレーバーの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御する。ここで、「低減流量」と言われているのは、ウェブ幅縮小要求がないときに使用される流量よりも少ない流量だからである。
【0007】
本発明の1つの実施形態によれば、印刷ユニットが提供される。この印刷ユニットは湿しローラを横断するように軸方向に配置された複数のスプレーノズルを有しており、これらのスプレーノズルによって、印刷ユニットのプレートシリンダ上の印刷プレートに液体が吹き付けられる。スプレーバーと通信するためにインタフェースが設けられ、このインタフェースにはプロセッサが接続される。プロセッサはウェブ幅縮小の要求に応答し、低減流量で噴霧するよう複数のスプレーノズルの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御する。
【0008】
上に述べた複数のスプレーノズルからの流量を制御する方法も提供される。
【0009】
図面の簡単な説明
本発明のさらなる特徴および利点は以下の詳細な説明と添付図面とから明らかとなる。図面のうち、
図1は、本発明の1つの実施形態によるスプレーバーを示し、
図2は、本発明の1つの実施形態による制御器を示し、
図3は、本発明の1つの実施形態によるスプレーバーのウェブ幅を縮小制御するためのプロセスを図解したフローチャートを示している。
【0010】
詳細な説明
図1には、本発明の1つの実施形態によるスプレーバー10とスプレーパターン120が示されている。この実施形態では、スプレーバーのスプレーノズルから発するスプレーパターンの端が打ち切られる。図1に示されているように、スプレーバー110はスプレーノズル130−1から130−nとスプレーパターン140−1から140−nを有しており、ここで、nは1よりも大きな所定の数である。各スプレーノズルに付随する各スプレーヘッドにはソレノイドがあって、スプレーノズル130−1から130−nによる液体の供給を制御するが、図1では、図解の簡潔さのためにこのソレノイドは図示されていない。
【0011】
図1に図示された実施形態では、nは4に等しい。したがって、スプレーバー110は4つのスプレーノズル130−1から130−4と4つのスプレーパターン140−1から140−4を有している。スプレーバー110は液源とソースライン(双方とも図示せず)に接続されている。この液体は例えば印刷機の印刷ユニットの湿しシステムで使用される湿し水のような溶液であってよく、液源からソースラインとスプレーバー110を通って流れる。スプレーバー110に入った後、液体はスプレーノズル130−1から130−4に入り、例えば湿しローラへと出て行く。湿しローラはこの液体を1つまたは複数の別の湿しローラに伝え、今度はこの別の湿しローラが液体をプレートシリンダ160の印刷プレート170に行き渡らせる。例えば、図1に概略的に示されているように、スプレーノズル130はプレートシリンダ160を横断するように軸方向に配置されており、このため液体は湿しローラ組立体180の軸方向に延びる湿しローラを介して印刷ユニットのプレートシリンダ160上の印刷プレートに吹き付けられる。ここでは単一のスプレーバーとプレートシリンダについて説明がなされるが、印刷ユニットはそれぞれ各自のスプレーバーを有する複数のプレートシリンダを有していてよい。
【0012】
スプレーノズルは例えばソレノイドを介して制御されるようにしてよい。流量はソレノイドの周波数またはパルス幅(オン時間)を増減させることにより増減させることができる。ソレノイドはスプレーノズル内のソレノイドバルブの一部を形成することが好ましい。
【0013】
図1には、スプレーパターン120も示されている。スプレーパターン120は第1の完全ウェブ幅145と第2の縮小ウェブ幅150を示している。ウェブ幅145は液体がスプレーノズル130−1から130−4を通って流れた結果である。縮小ウェブ幅150は本発明の1つの実施形態に従って液体がスプレーノズル130−1から130−4を通って流れた結果である。
【0014】
本発明の実施形態によれば、印刷機は自動的にスプレーバーを縮小ウェブ幅に合わせる。図2を参照すると、制御器200はメモリ215とインタフェース205に接続された従来通りの設計のプロセッサ210を有している。本発明によれば、プロセッサ210はインタフェース205と通信バス220とを介してユーザインタフェースから特定の縮小ウェブ幅に対する要求を受け取る。プロセッサ210は完全ウェブ幅145を表す値も受け取る。このような要求は以下で説明するメモリ215に格納されているプログラムに従ってプロセッサ210により処理される。このような要求に応答して、プロセッサ210はスプレーバー110の外部スプレーノズル130−1から130−4に縮小ウェブ幅150に応じた低減流量での噴霧を行わせる。
【0015】
図3のブロック310に示されているように、プロセッサ210はプログラムの命令を受けて、受け取った縮小ウェブ幅に対する要求を読み取る。ブロック315において、プロセッサ210は完全ウェブ幅と要求された縮小ウェブ幅とに基づいてウェブ幅縮小率を求める。ここでは、%ウェブ幅縮小をXと呼ぶ。要するに、
【数1】

【0016】
ブロック320では、プロセッサ210は外部スプレーノズル130−1と130−nの低減流量を求める。低減流量は次の式を用いて求められる。
流量(ノズル#)=q(1−X/2)、ここで
#=スプレーノズル位置
q=完全ウェブ幅の場合のノズルごとの流量
上で述べたように、プロセッサ210はスプレーノズル130−1と130−nに対する低減流量を以下に示すように求める。
流量(ノズル1)=q(1−X/2)
流量(ノズルn)=q(1−X/2)
内部ノズル(ノズル2−(n−1))は完全ウェブ幅の場合に使用される流量に維持される。
流量(ノズル2,3...(n−1))=q、ここで
n=スプレーバー全体でのノズル数
この例(スプレーヘッド130−1から130−4)ではn=4であるから、完全ウェブ幅のときの流量に維持されるスプレーヘッド(内部スプレーヘッド)は以下に示すように2つである。
流量(ノズル2,3)=q
低減流量に維持されるスプレーヘッドは
流量(ノズル1,4)=q(1−X/2)
ブロック330において、プロセッサ210はスプレーノズル130−1と130−4のソレノイドに制御信号を送り、ソレノイド周波数を低下させることで流量を比例的に低下させると同時に、スプレーノズル130−2と130−3の完全ウェブ幅流量を維持することで、図1に示されているように、縮小ウェブ幅150を生じさせる。
【0017】
以上は単に本発明の原理を説明するためだけのものである。したがって、当業者であれば、本発明の趣旨および範囲の中で本発明の原理を具体化した他の多くの組合せを考案することが可能であることが理解されなければならない。
【0018】
例えば、上記開示によれば、本発明の原理は本発明の利益を得るためにスプレーノズルの個数を増減させることにも容易に順応することができることは明らかである。
【0019】
最後に言うと、上では、システムと方法は個々の機能ブロックが果たす様々な機能という形で開示されている。しかし、これらの機能はいずれも、これらブロックの任意の機能を、あるいは実際にすべての機能を実現する装置において、例えばデジタルシグナルプロセッサ(DSP)、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサ、またはSoC(system on a chip)のような適切にプログラムされた1つまたは複数のプロセッサにより等しく具体化可能である。したがって、例えば、制御器200は、1つまたは複数のDSP、マイクロコントローラ、マイクロプロセッサまたはSoC、および/または、デジタル論理素子とソフトウェアを実行するまたはファームウェアにプログラムされた機能を有する他のコンポーネントとの組合せにより実現されるものとしてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の1つの実施形態によるスプレーバーを示す。
【図2】本発明の1つの実施形態による制御器を示す。
【図3】本発明の1つの実施形態によるスプレーバーのウェブ幅を縮小制御するためのプロセスを図解したフローチャートを示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スプレーバーからの流量を制御する装置であって、スプレーバーと通信するためのインタフェースと、該インタフェースに接続されたプロセッサとを有しており、該プロセッサは、ウェブ幅縮小の要求に応答し、低減流量で噴霧するようスプレーバーの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御する、ことを特徴とする装置。
【請求項2】
複数のスプレーノズルと、スプレーバーと通信するためのインタフェースと、該インタフェースに接続されたプロセッサを有する印刷ユニットにおいて、前記スプレーノズルは印刷ユニットの湿しローラを横断するように軸方向に配置されており、前記プロセッサは、ウェブ幅縮小の要求に応答し、低減流量で噴霧するよう前記複数のスプレーノズルの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御する、ことを特徴とする印刷ユニット。
【請求項3】
スプレーノズルがスプレーバーの一部である、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項4】
前記プロセッサは前記複数のスプレーノズルの各々を制御し、要求に応答して、前記複数のスプレーノズルの1つまたは複数の内部スプレーノズルを前記低減流量よりも大きな流量に維持する、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項5】
前記プロセッサは完全ウェブ幅値と縮小ウェブ幅値とに基づいてウェブ幅縮小率を求める、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項6】
前記プロセッサは前記1つまたは複数の外部スプレーノズルを動作させるための低減流量を求める、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項7】
前記プロセッサは完全ウェブ幅のときの流量を維持できるスプレーノズル数を求める、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項8】
前記プロセッサは前記外部スプレーノズルのうちのどの1つまたは複数の外部スプレーノズルを低減流量で動作させるかを決定する、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項9】
前記プロセッサは1つまたは複数の制御信号を送り、前記1つまたは複数の外部スプレーノズルの流量の制御に関連した1つまたは複数のソレノイドを制御する、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項10】
前記1つまたは複数の信号はアナログまたはデジタル信号である、請求項8記載の印刷ユニット。
【請求項11】
前記プロセッサは前記1つまたは複数のソレノイドの1つまたは複数の周波数を変化させることにより流量を比例的に低下させる、請求項8記載の印刷ユニット。
【請求項12】
前記プロセッサは前記1つまたは複数のソレノイドのオン時間を変化させることにより流量を比例的に低下させる、請求項8記載の印刷ユニット。
【請求項13】
プレートシリンダをさらに有し、液体は湿しローラからさらに別の1つまたは複数の湿しローラを介して前記プレートシリンダに取り付けられた印刷プレートへと伝わる、請求項2記載の印刷ユニット。
【請求項14】
スプレーバーからの流量を制御する方法において、ウェブ幅縮小の要求を受け取り、低減流量で噴霧するようスプレーバーの1つ又は複数の外部スプレーノズルを制御することを特徴とする方法。
【請求項15】
1つまたは複数の内部スプレーノズルについては前記低減流量よりも大きな流量を維持する、請求項14記載の方法。
【請求項16】
完全ウェブ幅値と縮小ウェブ幅値とに基づいてウェブ幅縮小率を求める、請求項14記載の方法。
【請求項17】
1つまたは複数の外部スプレーノズルを動作させるための低減流量を求める、請求項14記載の方法。
【請求項18】
完全ウェブ幅のときの流量を維持できるスプレーノズル数を求める、請求項14記載の方法。
【請求項19】
外部スプレーノズルのうちのどの1つまたは複数のスプレーノズルを低減流量で動作させるかを決定する、請求項14記載の方法。
【請求項20】
1つまたは複数の制御信号を送り、前記1つまたは複数の外部スプレーノズルの流量の制御に関連した1つまたは複数のソレノイドを制御する、請求項14記載の方法。
【請求項21】
前記1つまたは複数の信号はアナログまたはデジタル信号である、請求項20記載の方法。
【請求項22】
前記1つまたは複数のソレノイドの1つまたは複数の周波数を低下させることにより流量を比例的に低減させる、請求項20記載の方法。
【請求項23】
印刷ユニットの湿しローラを横断するように軸方向に配置された複数のスプレーノズルからの流量を制御する方法において、ウェブ幅縮小の要求を受け取り、低減流量で噴霧するよう前記複数のノズルの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御することを特徴とする方法。
【請求項24】
複数のスプレーノズルと、該スプレーバーと通信するためのインタフェースと、該インタフェースに接続されたプロセッサを有する印刷ユニットにおいて、前記スプレーノズルは印刷ユニットのプレートシリンダ上にある印刷プレートに液体を伝わらせるためにプレートシリンダを横断するように軸方向に配置されており、前記プロセッサは、ウェブ幅縮小の要求に応答し、低減流量で噴霧するよう前記複数のスプレーノズルの1つまたは複数の外部スプレーノズルを制御する、ことを特徴とする印刷ユニット。
【請求項25】
湿しローラ組立体とスプレーノズルを有しており、スプレーノズルは湿しローラ組立体の湿しローラに液体を噴霧し、湿しローラ組立体は液体を印刷プレートに伝える、請求項24記載の印刷ユニット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公表番号】特表2009−505862(P2009−505862A)
【公表日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−527940(P2008−527940)
【出願日】平成18年8月7日(2006.8.7)
【国際出願番号】PCT/US2006/030505
【国際公開番号】WO2007/024449
【国際公開日】平成19年3月1日(2007.3.1)
【出願人】(505332174)ゴス インターナショナル アメリカス インコーポレイテッド (48)
【氏名又は名称原語表記】Goss International Americas, Inc.
【住所又は居所原語表記】121 Broadway, Dover NH 03820, USA
【Fターム(参考)】