説明

複数の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物

本発明は、液体ビヒクルおよび少なくとも2種の改質された顔料を含む分散体およびインクジェットインク組成物に関する。第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも2種の改質された顔料を含む分散体およびインクジェットインク組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
顔料の表面は、種々の異なる官能基を含み、そして顔料の特定のクラスにより複数タイプの基が存在する。幾つかの方法が、材料のグラフト化、そして特に、これらの顔料の表面へのポリマー化のために開発されてきた。例えば、ポリマーが、フェノールおよびカルボキシル基等の表面基を含有するカーボンブラックに結合できることが示された。しかし、顔料の表面の固有の官能性に依存するこの方法は、全ての顔料が同じ特定の官能基を有するわけではないので、一般的に適用できなかった。
【0003】
顔料に種々の異なる結合した官能基を提供できる改質された顔料製品の調製のための方法が開発された。例えば、米国特許第5、851、280号明細書は、例えば、有機基がジアソニウム塩の一部であるジアゾニウム反応を介した結合を含む有機基の顔料上への結合のための方法を開示する。
【0004】
結合したポリマー基を有するものを含む、改質された顔料を提供する他の方法がまた、記載されていた。例えば、国際公開第01/51566号パンフレットは、第1の化学基と第2の化学基とを反応させることによって、結合した第3の化学基を有する顔料を生成させる、改質された顔料を製造する方法を開示する。これらの顔料を含有するインクジェットインクを含むインク組成物がまた、記載されていた。さらに、米国特許第5、672、198号明細書、米国特許第5、922、118号明細書、米国特許第6、042、643号明細書、および米国特許第6、641、656号明細書は、ホスホン酸基を含む種々の結合した基を有する改質された顔料を開示する。また、米国特許第6、328、894号明細書、米国特許第6、398、858号明細書、米国特許第6、米国特許第436、178号明細書、米国特許第6、494、943号明細書、および米国特許第6、506、245号明細書は、1、2、3−ベンゼントリカルボン酸基を含むアリールポリカルボン酸基を含む種々の結合した基を有する改質された顔料を開示する。インクジェットインク組成物を含むこれらの改質された顔料を含む組成物がまた示される。また、ポリマー被覆した炭素生成物およびそれらの調製のための方法は、米国特許第6、458、458号明細書に記載されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これらの方法は、結合した基を有する改質された顔料を提供するが、インクジェットインク等の組成物中で改善された性能特性を有する着色剤と、それによって改質された顔料を提供する好都合な代替物を提供することへのニーズがある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、液体ビヒクルおよび少なくとも2種の改質された顔料を含む分散体に関する。第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む。一態様では、第1の改質された顔料の量は、両方の改質された顔料の合計量の50%超である。第2の態様では、非ポリマー基およびポリマー基の両者は、カルボン酸またはそれらの塩を含む。この分散体は、インクジェットインク組成物として使用できる。
【0007】
当然のことながら、先の一般的な記載および以下の詳細な記載の両方は、例示的および説明的なだけであり、そして請求項として記載された本発明のさらなる説明を提供することのみを目的とする。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明は、ビヒクルおよび少なくとも2種の改質された顔料を含む、分散体およびインクジェットインク組成物に関する。
【0009】
本発明の分散体のビヒクルは、水性または非水性液体ビヒクルのいずれかであることができるが、好ましくは水を含むビヒクルである。従って、このビヒクルは、好ましくは、50%超の水を含み、そして、例えば、水または水とアルコール等の水混和性溶媒との混合物であることができるビヒクルである水性ビヒクルである。好ましくは、水性ビヒクルは水であり、そして分散体は水性分散体である。
【0010】
本発明の分散体は、同じでない少なくとも2種の改質された顔料をさらに含む。第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の第1の有機基を有する第1の顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の第2の有機基を有する第2の顔料を含む。有機基のそれぞれは、下記に詳細を記載するであろう。
【0011】
第1の顔料および第2の顔料は、同一であるかまたは互いに異なることができるが、好ましくは少なくとも同じ色であり、そしてさらに好ましくは、同じ顔料である。第1の顔料および第2の顔料は、炭素質の黒色顔料、および青色、黒色、茶色、シアン、緑色、白色、紫色、マゼンタ、赤色、橙色、または黄色の顔料からなる顔料を含む有機着色顔料等の当業者によって通常使用される任意のタイプの顔料であることができる。黒色顔料の代表的な例は、チャネルブラック、ファーネスブラック、ガスブラック、およびランプブラック等の種々のカーボンブラック(顔料ブラック 7)を含み、そして、例えば、(Black Pearls(商標)2000、Black Pearls(商標)1400、Black Pearls(商標)1300、Black Pearls(商標)1100、Black Pearls(商標)1000、Black Pearls(商標)900、Black Pearls(商標)880、Black Pearls(商標)800、Black Pearls(商標)700、Black Pearls(商標)L、Elftex(商標)8、Monarch(商標)1400、Monarch(商標)1300、Monarch(商標)1100、Monarch(商標)1000、Monarch(商標)900、Monarch(商標)880、Monarch(商標)800、Monarch(商標)700、Mogul(商標)L、Regal(商標)330、Regal(商標)400、Vulcan(商標)P等の)Cabot Corporationから入手可能なRegal(商標)、Black Pearls(商標)、Elftex(商標)、Monarch(商標)、Mogul(商標)、およびVulcan(商標)の商標の下で販売されているカーボンブラックを含む。好適なクラスの着色顔料は、例えば、アントラキノン、フタロシアニンブルー、フタロシアニングリーン、ジアゾ、モノアゾ、ピラントロン、ペリレン、ヘテロサイクリックイエロー、キナクリドン、キノロキノロン、および(チオ)インジゴイドを含む。そうした顔料は、BASF Corporation、Engelhard CorporationおよびSun Chemical Corporationを含む多くの供給業者から、粉末またはプレスケーキのいずれかの形態で市販されている。他の好適な着色顔料の例は、Colour Index、3rd edition(The Society of Dyers and Colourists、1982)に記載されている。好ましくは、この顔料は、シアン、マゼンタ、またはイエローの有機顔料またはカーボンブラック等の炭素質の黒色顔料である。
【0012】
第1のおよび第2の顔料は、構造または顔料の分枝の尺度である広範なフタル酸ジブチル吸収(DBP)値を有することができる。例えば、第1の顔料、第2の顔料、または両者は、約30〜200mL/l00gおよび約50〜150mL/100gを含む、約25〜400mL/l00gのDBP値を有するカーボンブラックであることができる。好ましくは、第1の顔料、第2の顔料、または両者は、約100mL/100g以下、さらに好ましくは、約80mL/l00g以下、そして最も好ましくは、約70mL/l00g以下のDBP値を有するカーボンブラックである。
【0013】
第1のおよび第2の顔料は、顔料の所望の特性によって、窒素吸着によって測定して、広範なBET表面積を有することができる。例えば、第1の顔料、第2の顔料、または両者は、約20m/g〜約600m/gおよび約50m/g〜約300m/gの表面積を含む、約10m/g〜約1500m/gのBET表面積を有するカーボンブラックであることができる。好ましくは、第1の顔料、第2の顔料、または両者は、約200m/g以上、そしてさらに好ましくは、約230m/g以上のBET表面積を有するカーボンブラックである。特異的な好ましい例は、Cabot Corporationから市販されているBlack Pearls(商標)1100およびMonarch(商標)1100を含む。また、当業者に知られているように、より大きい表面積は、より小さい一次粒子サイズに対応する。この顔料はまた、当該技術分野で知られている広範な一次粒子径を有する。例えば、顔料は、約10nm〜約80nmおよび15nm〜約50nmを含む、約5nm〜約100nmの一次粒子サイズを有することができる。例えば、着色顔料のためのより大きい表面積が、所望の用途で、容易に使用可能でない場合、顔料は、必要に応じて、ボールまたはジェットミリング等の従来のサイズ減少または粉砕技術に曝されて、顔料をより小さい粒径に減少させることができることが当業者によって充分に認識される。
【0014】
上記の様に、第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の第1の有機基を有する第1の顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の第2の有機基を有する第2の顔料を含む。好ましくは、両方の有機基は、直接結合している。これらの改質された顔料のそれぞれは、有機化学基が顔料に結合するように、当業者に知られた任意の方法を使用して調製できる。例えば、改質された顔料は、米国特許第5、554、739号明細書、米国特許第5、707、432号明細書、米国特許第5、837、045号明細書、米国特許第5、851、280号明細書、米国特許第5、885、335号明細書、米国特許第5、895、522号明細書、米国特許第5、900、029号明細書、米国特許第5、922、118号明細書、および米国特許第6、042、643号明細書、および国際公開第99/23174号パンフレットに記載された方法を使用して調製でき、これらの記載は、参照により本明細書中にその全てを取り込む。そうした方法は、例えば、別個のポリマーおよび/または界面活性剤を使用する分散剤タイプの方法と比較して、基の顔料へのさらに安定な結合を提供する。改質された顔料を調製するための他の方法は、利用できる官能基を有する顔料と、例えば、米国特許第6、723、783号明細書(参照よりその全部を本明細書中に取り込む)に記載された等の有機基を含む試薬とを反応させることを含む。そうした官能性顔料は、上記で取り込んだ参照文献中に記載された方法を使用して調製できる。結合した官能基を含有するさらに改質されたカーボンブラックはまた、米国特許第6、831、194および6、660、075号明細書、米国特許出願公開第2003−0101901号明細書および出願公開第2001−0036994号明細書、カナダ国特許第2、351、162号明細書、欧州特許第1394221号明細書、および国際公開第04/63289号パンフレット、ならびにN.Tsubokawa、Polym.Sci.、17、417、1992、(それぞれ、参照により本明細書中にそれらの全てを取り込む)に記載された方法によって調製できる。
【0015】
第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含む。「非ポリマー」によって、結合した基が、例えば、ラジカル重合または縮合重合を含む重合反応によって調製できないことを意味する。従って、ポリマー基は、数平均または重量平均分子量等の平均分子量によって一般的に特徴付けられるであろうが、非ポリマー基は、規定された分子量を有する。好ましくは、非ポリマー基は、約250以下を含む、好ましくは約500以下、さらに好ましくは、約400以下、最も好ましくは、約300以下の低分子量を有する。
【0016】
非ポリマー基は、少なくとも1種の官能基をさらに含むことができる。好ましくは、非ポリマー基は、少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のイオン化可能基、またはイオン基とイオン化可能基との混合物を含む。イオン基は、アニオン性またはカチオン性のいずれかであり、そしてNa、K、Li、NH、NR’、アセテート、NO、SO−2、RSO、ROSO、OH、およびCl(式中、R’は、同一であるかまたは互いに異なることができ、水素または置換または非置換アリールおよび/またはアルキル基等の有機基を表す。)等の無機または有機対イオンを含む反対電荷の対イオンと結びつく。イオン化可能基は、使用する媒体中でイオン基を生成できるものである。アニオン化可能基は、アニオンを生成し、そしてカチオン化可能基は、カチオンを生成する。好ましくは、結合した基は、有機基である。有機イオン基は、米国特許第5、698、016号明細書(この記載を参照により本明細書中に全て取り込む)に記載されたものを含む。
【0017】
イオン基は、酸性置換基等のアニオンを生成できるイオン化可能な置換基(アニオン化可能基)から生成できる負に帯電したイオン基である。これらはまた、これらは、イオン化可能な置換基の塩中でアニオンであることができる。イオン基の代表的な例は、−COO、−SO、−OSO、−HPO−2、−OPO−2、および−PO−2を含む。アニオン化可能基の代表的な例は、−COOH、−SOH、−PO、−RSH、−ROH、および−SONHCOR’(式中R’は、同一であるかまたは互いに異なることができ、水素または置換または非置換アリールおよび/またはアルキル基等の有機基を表わす。)を含む。
【0018】
カチオン基は、プロトン化されたアミン等のカチオンを生成できるイオン化可能な置換基(カチオン化可能基)から生成できるプラスに帯電した有機イオン基である。例えば、アルキルまたはアリールアミンは、プロトン化されて、アンモニウム基−NR^H(式中、R’は置換または非置換アリールおよび/またはアルキル基等の有機基を表わす。)を生成することができる。カチオン基は、プラスに帯電した有機イオン基であることもできる。例は、第四級アンモニウム基(−NR’)および第四級ホスホニウム基(−PR’)(式中、R’は水素または置換または非置換アリールおよび/またはアルキル基等の有機基を表わす。)を含む。
【0019】
好ましくは、非ポリマー基は、アニオン性基またはアニオン化可能基を含み、そして、さらに好ましくは、カルボン酸基、スルホン酸基、ホスホン酸基、またはそれらの塩等の酸基またはそれらの塩を含む。好ましい非ポリマー基の具体例は、式−X−(CO(式中、顔料に結合したXは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリーレン、またはアラルキレン基である。)を有する基を含む。Mは、H、Na、K、Li、またはNR(式中、同じであるかまたは異なることができるRは、水素または置換または非置換アリールおよび/またはアルキル基等の有機基を表わし、そしてnは1〜4、特に1または2である。)である。さらに好ましくは、Xはアリーレン基であり、そして非ポリマー基は、例えば、式−COHCOOHまたは−C−CO+。を有する基を含む、アリーレンカルボン酸基、アリーレンスルホン酸基、アリーレンホスホン酸基、またはそれらの塩等のアリーレン酸基またはそれらの塩を含む。
【0020】
顔料の所望の特性および結合した基のタイプによって、結合した非ポリマー基の量を変更できる。例えば、非ポリマー基の合計量は、窒素吸着(BET方法)によって測定して、約0.5〜約5.0マイクロモル/m、約1〜約3マイクロモル/m、または約2〜約2.5マイクロモル/mを含む、約0.01〜約10.0マイクロモルの基/1m表面積の第1の顔料であることができる。互いに異なった追加の結合した非ポリマー基がまた、存在できる。
【0021】
第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む。上に記載したように、「ポリマー」基は、重合反応によって調製できるものである。従って、第2の顔料に結合したポリマー基は、ポリマーを含み、そしてこれは、当該技術分野で知られている任意の方法を使用して調製できる。例えば、ポリマー基のポリマーは、1種または2種以上のラジカル的に重合可能なモノマーの重合によって調製できる。そうしたモノマーは、インクジェットインク組成物において特に有用な、さらなる望ましい特性を有するポリマーを提供できる。例は、アクリルおよびメタクリル酸、アクリレートエステル、メタクリレートエステル、アクリルアミドおよびメタクリルアミド、アクリロニトリル、シアノアクリレートエステル、マレエートおよびフマレートジエステル、ビニルピリジン、ビニルN−アルキルピロール、ビニルアセテート、ビニルオキサゾール、ビニルチアゾール、ビニルピリミジン、ビニルイミダゾール、ビニルケトン、ビニルエーテル、およびスチレンを含むがこれらに限られない。ビニルケトンは、両方のβ−炭素がC1〜C4のアルキル基、ハロゲン等を有するビニルケトンまたはフェニル基が1〜5個のC1〜C6のアルキル基および/またはハロゲン原子で置換できるビニルフェニルケトン等のアルキル基のβ炭素原子が水素原子を有さないものを含む。スチレンは、ビニル基が炭素原子において等のC1〜C6アルキル基で置換されているもの、および/またはC1〜C6アルキル、(ビニルを含む)アルケニル、または(アセチレニルを含む)アルキニル基、フェニル基、ハロアルキル基、およびC1〜C6のアルコキシ、ハロゲン、ニトロ、カルボキシ、スルホネート、C1〜C6のアルコキシカルボニル、(C1〜C6のアシル基で保護されたものを含む)ヒドロキシ、およびシアノ基等の官能基を含む、フェニル基が1〜5の置換基で置換されているものを含む。具体例は、アクリル酸メチル(MA)、メタクリル酸メチル(MMA)、アクリル酸エチル(EA)、メタクリル酸エチル(EMA)、アクリル酸ブチル(BA)、2−エチルヘキシルアクリレート(EHA)、アクリロニトリル(AN)、メタクリロニトリル、スチレン、およびそれらの誘導体を含む。
【0022】
ポリマー基のポリマーはまた、1種または2種以上の重合可能なモノマーのカチオン性またはアニオン性重合によって調製できる。例えば、ポリビニルエーテルは、一般的な構造CH=CH(OR)(式中、Rは、アルキル、アラルキル、アルカリール、またはアリール基であるか、または1つまたは2つ以上のアルキレンオキサイド基を含む基である。)を有するもの等のモノマーのカチオン性重合によって調製できる。他のカチオン的またはアニオン的に重合可能なモノマーを含むことができる。さらに、ポリマー基のポリマーはまた、重縮合技術によって調製できる。例えば、このポリマーは、ポリエステルまたはポリウレタンであることができる。
【0023】
ポリマー基のポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、ターポリマーおよび/または任意の数の異なる繰り返し単位を含むポリマーであることができる。さらに、このポリマーは、ランダムポリマー、分枝ポリマー、交互ポリマー、グラフトポリマー、ブロックポリマー、星状ポリマー、および/または櫛状ポリマーであることができる。結合したポリマーのタイプは、意図された用途によって変化できる。例えば、このポリマー基は、酸基を含み、そして150未満、または100未満、または50未満等の200未満の酸価を有するポリマーを含むことができる。酸価は、KOH等の強塩基を用いた滴定を含む当該技術分野で知られている任意の方法を使用して決定できる。具体例は、100〜200、50〜100、および0〜50の酸価を含む。また、このポリマー基は、50〜100、および好ましくは50未満等の100未満のTgを有するポリマーを含むことができる。さらに、このポリマー基は、約1000〜50、000、約2、000〜25、000、および約5、000〜20、000等の約500〜100、000の分子量(Mw)を有するポリマーを含むことができる。ポリマー基のポリマーの多分散性は、一般的に、2.5未満、および2未満等の3未満である。あるいは、分子量分布は、2モード等の多モードであることができる。
【0024】
ポリマー基の具体例は、ポリビニルアルコール基、ポリビニルピロリドン基、ポリウレタン基、(メタクリル酸、アクリル酸、またはそれらのエステルから調製されたホモポリマーまたはコポリマー基等の)アクリレートまたはメタクリレートポリマー基、(スチレンおよびメタクリル酸、アクリル酸、またはそれらのエステルから調製されたコポリマー基等の)ポリ(スチレン−アクリレート)またはポリ(スチレンメタクリレート)基、スチレンおよびマレイン酸または無水マレイン酸から調製されたポリマー基、(ビニルアセテートエチレンコポリマー基、ビニルアセテート脂肪酸ビニルエチレンコポリマー基、ビニルアセテートマレエートエステルコポリマー基、ビニルアセテートクロトン酸コポリマー基、およびビニルアセテートアクリル酸コポリマー基等の)ビニルアセテートから調製されたポリマー基、およびそれらの塩を含む。好ましくは、このポリマー基は、少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のアニオン化可能基、またはそれらの混合物を含む。さらに好ましくは、このポリマー基は、少なくとも1種のカルボン酸基またはそれらの塩等の少なくとも1種の酸基またはそれらの塩を含む。例えば、好ましいポリマー基は、スチレンアクリル酸ポリマー基およびスチレンメタクリル酸ポリマー基、またはマレイン酸または無水マレイン酸ポリマー基、またはそれらの塩等のメタクリレートまたはアクリレートポリマー基を含む。好適な塩は、Na、K、Li、NH、NR’(式中、同一であるか互いに異なることができるR’は、水素または置換または未置換アリールおよび/またはアルキル基等の有機基を表す。)等の無機または有機対イオンを含む。
【0025】
結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む第2の改質された顔料は、種々の異なる技術を使用して調製できる。例えば、この第2の改質された顔料は、ポリマーの官能基と、終端または末端官能性ポリマーおよび顔料の反応を含む(例えば、米国特許第6、723、783号明細書、米国特許出願公開第2004/0229975号明細書、または欧州特許第0272127号明細書に示されたような)第2の顔料の官能基との反応、または終端もしくは末端官能性ポリマーを含むポリマーのアミン含有官能基と、(例えば、米国特許第6、478、863号明細書に示すような)顔料とさらに反応するジアゾ化試薬との反応によって、調製できる。この第2の改質された顔料はまた、第2の顔料からのモノマーの重合によって調製できる。例えば、この第2の改質された顔料は、ラジカル重合、原子移動ラジカル重合(ATRP)等の制御された重合方法、安定なフリーラジカル(SFR)重合、および可逆的付加開裂連鎖移動重合(RAFT)、グループ移動重合(GTP)等のイオン性重合(アニオン性またはカチオン性)、および縮合重合によって調製できる。また、第2の改質された顔料は、例えば、米国特許第6、372、820号明細書;米国特許第6、350、519号明細書;米国特許第6、551、393号明細書;または米国特許第6、368、239号明細書中に、または国際公開第2006/086599号パンフレットおよび国際公開第2006/086660号パンフレットに記載された方法を使用して調製できる。これらの参照文献のそれぞれは、参照により、その全てを本明細書中に取り込む。
【0026】
顔料の所望の特性および結合した基のタイプによって、結合したポリマー基の量を、変更できる。例えば、ポリマー基の合計量は、第2の顔料の0.1重量%〜50重量%、好ましくは1重量%〜45重量%、およびさらに好ましくは、第2の顔料の10重量%〜40重量%であることができる。
【0027】
本発明の好ましい態様では、第1の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、カルボン酸基を含む結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む。驚いたことに、改質された顔料のこの組み合わせを含む分散体が、これらの改質された顔料単体のみのいずれかからなる分散体の性能特性、およびカルボン酸基を有さない改質された顔料の組み合わせからなる分散体の性能特性に基づいて、予期しない性能特性を有することが見いだされた。特に、これらの分散体がインクジェットインク用途で使用される場合、印刷性能における予期しない改善、特に光沢、画像の明瞭性、および耐久力が、観察された。
【0028】
第1の改質された顔料および第2の改質された顔料の両方は、インクジェットインク組成物として使用される場合、分散体安定性等の分散体それ自身の特性に有害に影響することなく、例えば、画像品質等の所望の全体的な性能特性を提供するのに効果的な合計量で本発明の分散体中に存在できる。典型的には、改質された顔料の合計量は、分散体の重量に基づいて、約0.1%〜約30%である。
【0029】
第1の改質された顔料の第2の改質された顔料に対する量はまた、変化できる。しかし、好ましくは、本発明の分散体は、第2の改質された顔料の量に対して、より多い量の第1の改質された顔料の量を含む。例えば、本発明の分散体の別の好ましい態様において、本発明の分散体のための、第1の改質された顔料が量Xで存在し、そして第2の改質された顔料が量Yで存在する場合、顔料の合計量に対する第1の改質された顔料の分率であるX/(X+Y)、は、0.5より大きい。従って、第1の改質された顔料は、全改質された顔料の50%より大きい。好ましくは、X/(X+Y)は、0.55〜0.9、さらに好ましくは、0.6〜0.8である。1超の第1の改質された顔料が存在する場合、Xは第1の改質された顔料の合計量を指し、そして1超の第2の改質された顔料が存在する場合、Yは、第2の改質された顔料の合計量を指す。上記の第2の改質された顔料の量に対して、より多くの上記の第1の改質された顔料を含む分散体が、第1の改質された顔料より多くの第2の改質された顔料、または等しい量の第1改質された顔料および第2の改質された顔料、を含む分散体に比較して、改善された性能特性を有することが特に見いだされた。特に、インクジェットインク用途において使用される場合、印刷性能における予期しない改善が見いだされた。
【0030】
本発明の分散体は、製造プロセスの結果として分散体中に共存できる不純物および他の望ましくない自由種を除去するために、精製または分級できる。例えば、分散体は、限外ろ過/膜分離、逆浸透、またはイオン交換等の公知の技術を使用した未反応の処理剤等のあらゆる好ましくない自由な種を除去するために精製できる。好ましくは、分散体の大きい粒子濃度はまた、全体的な分散体安定性を改善するために低下できる。従って、例えば、500nm超のサイズを有する粒子は、遠心分離等の技術を使用して除去できる。
【0031】
上記の様に、少なくとも2種の異なる改質された顔料を含む本発明の分散体は、例えば、プラスチック組成物の調製、水性または非水性インク、水性または非水性被膜、ゴム組成物、紙組成物および繊維製品組成物を含む種々の異なる用途において使用できる。特に、これらの分散体は、例えば、自動車の被膜および工業被膜、塗料、トナー、接着、ラテックス、およびインクを含む水性組成物中で使用できる。この分散体は、インク組成物、特にインクジェットインク組成物において最も有用であることが見いだされた。
【0032】
従って、本発明はさらに、ビヒクルおよび少なくとも2種の改質された顔料、すなわち、結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含む第1の改質された顔料および結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む第2の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物に関する。ビヒクルおよび改質された顔料は上記のもののうちのいずれであることができる。これらの2種の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物が個々に改質された顔料のいずれかを含む場合、特に第1の改質された顔料の量が第2の改質された顔料の量より多い場合、インクジェットインク組成物と比較して、驚くべき印刷性能特性ことが見いだされた。例えば、第1の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物が、第2の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物から調製された画像より、より高い光沢および画像の明瞭性(DOI)を有する印刷画像を有する場合、それぞれ同じ顔料の配合量レベルでこれらの改質された顔料の組み合わせを含むンクジェットインク組成物がまた、同様に高い光沢およびDOIを有することができることが、驚いたことに見いだされた。もう一つの例として、第2の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物が、例えば、高い光沢を有する第1の改質された顔料を含むインクジェットインク組成物と比較して、しみに対する高い耐性または水堅牢度等の1つの所望の特性を有する場合、両方の改質顔料を含む本発明のインクジェットインク組成物は、高い光沢ならびに改善されたしみに対する耐性および水堅牢度の両方を有することができることが、驚いたことに見いだされた。
【0033】
本発明のインクジェットインク組成物は、最小の追加成分(添加物および/または共溶媒)および処理ステップを用いて生成できる。しかし、組成物の安定性を保ちながら多くの所望の特性を与えるために、好適な添加物を取り込むことができる。例えば、界面活性剤および/または分散剤、保湿剤、乾燥加速剤、浸透剤、殺生剤、バインダー、およびpH制御剤、ならびに当該技術分野で知られている他の添加物を加えることができる。特別な添加物の量は、種々の因子によって変化できるが、一般的に、0%〜40%の範囲である。例えば、他の改質された顔料、改質されていない顔料、または過酸化物、オゾン、パーサルフェート、および次亜ハロゲン酸塩(それらの内の幾つかはRohm and HaasまたはOrientから市販されている)他の改質された顔料、またはその両方を使用して調製された自己分散性の酸化顔料を含む酸化顔料を含む、さらなる着色剤の使用はまた、本発明の範囲内にある。さらに、結合したポリマー基に関連した上記のポリマーのいずれかを含むポリマーによって、封入された顔料を含むポリマー改質された顔料を使用することはまた、本発明の範囲内である。また、1種の着色剤が染料を含み、そして1種の着色剤が顔料を含む、改質された着色剤の混合物をまた、使用できる。
【0034】
組成物のコロイド安定性をさらに高めるため、またはインクと、印刷紙等の印刷基材、またはインクを印刷するヘッドのいずれかとの相互作用を変えるために、分散剤(界面活性剤および/または分散剤)を加えることができる。種々のアニオン性、カチオン性および非イオン性分散剤は、本発明のインク組成物と組み合わせて使用でき、そしてこれらは、固体形態であるか、または水溶液であることができる。
【0035】
アニオン性分散剤または界面活性剤の代表的な例は、水酸化またはアミノ化誘導体を含む、高次脂肪酸塩、高級アルキルジカルボキシレート、高級アルコールの硫酸エステル塩、高級アルキルスルホネート、アルキルベンゼンスルホネート、アルキルナフタレンスルホネート、ナフタレンスルホネート(Na、K、Li、Ca、等)、ホルマリンポリ縮合物、高次脂肪酸とアミノ酸との間の縮合物、ジアルキルスルホコハク酸エステル塩、アルキルスルホサクシネート、ナフテネート、アルキルエーテルカルボキシレート、アシル化ペプチド、α−オレフィンスルホネート、N−アクリルメチルタウリン、アルキルエーテルスルホネート、第2高級アルコールエトキシサルフェート、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート、モノグリシルサルフェート、アルキルエーテルホスフェートおよびアルキルホスフェート、アルキルホスホネートおよびビスホスホネートを含むがこれらに限られない。例えば、スチレンスルホネート塩のポリマーおよびコポリマー、非置換および置換ナフタレンスルホネート塩(例えば、アルキルまたはアルコキシ置換ナフタレン誘導体)、(ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド、プロピルアルデヒド、およびその同類のものを含む非置換アルキルアルデヒド誘導体等の)アルデヒド誘導体、マレイン酸塩、およびそれらの混合物は、アニオン性分散助剤として使用できる。塩は、例えば、Na、Li、K、Cs、Rb、および置換および非置換アンモニウムカチオンを含む。具体例は、Versa(商標)4、Versa(商標)7、およびVersa(商標)77(National Starch and Chemical Co.);Lomar(商標)D(ダイアモンドShamrock Chemicals Co.);Daxad(商標)19およびDaxad(商標)K(W.R.Grace Co.);およびTamol(商標)SN(Rohm & Haas)等の市販製品を含むがこれらに限られない。カチオン性界面活性剤の代表的な例は、脂肪族アミン、第四級アンモニウム塩、スルホニウム塩、ホスホニウム塩およびその同類のものを含む。
【0036】
本発明のインクジェットインクで使用可能である非イオン性分散剤または界面活性剤の代表的な例は、フッ素誘導体、シリコーン誘導体、アクリル酸コポリマー、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレン第二級アルコールエーテル、ポリオキシエチレンスチロールエーテル、(Air Productsから入手できるSurfynol(商標)420、Surfynol(商標)440、およびSurfynol(商標)465等の)エトキシレート化アセチレンジオール、ポリオキシエチレンラノリン誘導体、アルキルフェノールホルマリン縮合物のエチレンオキサイド誘導体、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマー、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテルポリオキシエチレン化合物の脂肪酸エステルポリエチレンオキサイド縮合タイプ、エチレングリコール脂肪酸エステル、脂肪酸モノグリセリド、ポリグリセロールの脂肪酸エステル、プロピレングリコールの脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、脂肪酸アルカノールアミド、ポリオキシエチレン脂肪酸アミドおよびポリオキシエチレンアルキルアミンオキサイドを含む。例えば、Igepal(商標)CAおよびCOシリーズ材料(Rhone−Poulenc Co.)、Brij(商標)シリーズ材料(ICI Americas、Inc.)、およびトリトン(商標)シリーズ材料(Dow Company)等のエトキシレート化モノアルキルまたはジアルキルフェノールを使用できる。これらの非イオン性界面活性剤または分散剤は、単独でまたは前記のアニオン性およびカチオン性分散剤と組み合わせて使用できる。
【0037】
この分散剤はまた、天然ポリマーまたは合成ポリマーの分散剤であることができる。天然ポリマー分散剤の具体例は、糊、ゼラチン、カゼインおよびアルブミン等のタンパク質;アラビアゴムおよびトラガカントゴム等の天然ゴム;サポニン等のグルコシド;アルギン酸、およびプロピレングリコールアルギネート、トリエタノールアミンアルギネート、およびアンモニウムアルギネート等のアルギン酸誘導体;およびメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロースおよびエチルヒドロキシセルロース等のセルロース誘導体を含む。合成ポリマー分散剤を含むポリマーの分散剤の具体例は、DuPontからのElvanols、CelaneseからのCelvoline等のポリビニルアルコール、BASFからのLuvatec、ISPからのKollidon およびPlasdone等のポリビニルピロリドン、およびPVP−K、Glide、ポリメタアクリル酸等のアクリル樹脂または(多くの場合、「メタアクリル」と記載される)メタクリル樹脂、LyondellからのEthacryl line、AlcoからのAlcosperse、アクリル酸メタアクリロニトリルコポリマー、カリウムメタアクリレートメタアクリロニトリルコポリマー、ビニルアセテートメタアクリレートエステルコポリマーおよびメタアクリル酸メタアクリレートエステルコポリマー;BASFからのJoncryl line、NoveonからCarbomers等のスチレンメタアクリル酸コポリマー、BASFからのJoncryl polymers等のスチレンメタアクリル酸メタアクリレートエステルコポリマー、スチレン−α−メチルスチレンメタアクリル酸コポリマー、スチレン−α−メチルスチレンメタアクリル酸メタアクリレートエステルコポリマー;スチレンマレイン酸コポリマー;SartomerからのSMA polymers等のスチレン無水マレイン酸コポリマー、ビニルナフタレンアクリルまたはメタクリル酸コポリマー等のスチレンアクリルまたはメタクリル樹脂;ビニルナフタレンマレイン酸コポリマー;およびビニルアセテートエチレンコポリマー、ビニルアセテート脂肪酸ビニルエチレンコポリマー、ビニルアセテートマレエートエステルコポリマー、ビニルアセテートクロトン酸コポリマーおよびビニルアセテートアクリル酸コポリマー等のビニルアセテートコポリマー;並びにそれらの塩を含む。インクジェットインク中で分散剤および添加物のために使用できる上記に上げたもの、変形および関連した材料等のポリマーは、DegussaからのTego products、LyondellからのEthacryl products、BASFからJoncryl polymers、CibaからのEFKA分散剤、ならびにBYK ChemieからのDisperbykおよびByk分散剤に含まれる。
【0038】
特にノズルの目詰まりを防ぐ、ならびに紙の浸透(浸透剤)、改善された乾燥(乾燥加速剤)、および耐しわ特性を提供する目的で、保湿剤および水溶性有機化合物はまた、本発明のインクジェットインク組成物に加えることができる。使用できる保湿剤および他の水溶性化合物の具体例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコールおよびジプロピレングリコール等の低分子量グリコール、1、3−ペンタンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、4−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、5−ヘキサンジオール、2、6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール(2、2−ジメチル−1、3−プロパンジオール)、1、3−プロパンジオール、1、4−ブタンジオール、1、5−ペンタンジオール、1、6−ヘキサンジオール、1、2、6−ヘキサントリオール、ポリ(エチレンコ−プロピレン)グリコール等の;約2〜約40炭素原子を含有するジオール、およびその同類のもの、ならびにエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを含むエチレンオキサイド;グリセリン、トリメチロールプロパン、1、3、5−ペンタントリオール、1、2、6−ヘキサントリオールを含む、約3〜約40炭素原子を含有するトリオール誘導体、およびその同類のものを含むアルキレンオキサイドとのそれらの反応生成物、ならびにエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、およびそれらの混合物;ネオペンチルグリコール、(2、2−ジメチル−1、3−プロパンジオール)、およびその同類のものを含むアルキレンオキサイドとそれらの反応生成物、ならびに広範な分子量を有する材料を生成するのに望ましいモル比で、エチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドを含む、アルキレンオキサイドとのそれらの反応生成物;チオジグリコール;ペンタエリスリトールおよびエタノール、プロパノール、イソプロピルアルコール、n−ブチルアルコール、sec−ブチルアルコール、およびtert−ブチルアルコール、2−プロピン−l−オール(プロパルギルアルコール)、2−ブテン−l−オール、3−ブテン−2−オール、3−ブチン−2−オール、およびシクロプロパノール等の低級アルコール;ジメチルホルムアルデヒドおよびジメチルアセトアミド等のアミド;アセトンおよびジアセトンアルコール等のケトンまたはケトアルコール;テトラヒドロフランおよびジオキサン等のエーテル;エチレングリコールモノメチルエーテルおよびエチレングリコールモノエチルエーテル、トリエチレングリコールモノメチル(または、モノエチル)エーテル等のセロソルブ;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、およびジエチレングリコールモノブチルエーテル等のカルビトール;2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドンおよびε−カプロラクタム等のラクタム;尿素および尿素誘導体;ベタイン等の内塩、およびその同類のもの;1−ブタンチオールを含む前記の材料のチオ(硫黄)誘導体;t−ブタンチオール1−メチル−1−プロパンジオール、2−メチル−1−プロパンジオール;2−メチル−2−プロパンチオール;チオシクロプロパノール、チオエチレングリコール、チオジエチレングリコール、トリチオまたはジチオジエチレングリコール、およびその同類のもの;アセチルエタノールアミン、アセチルプロパノールアミン、プロピルカルボキシエタノールアミン、プロピルカルボキシプロパノールアミンを含むヒドロキシアミド誘導体、およびその同類のもの;アルキレンオキサイドと、前記の材料との反応生成物;並びにそれらの混合物を含む。さらなる例は、マルチトール、ソルビトール、グルコノラクトンおよびマルトース等のサッカロイド;トリメチロールプロパンおよびトリメチロールエタン等の多価アルコール;N−メチル−2−ピロリドン;1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン;ジメチルスルホキシド、メチルエチルスルホキシド、アルキルフェニルスルホキシド等のジアルキルスルフィド(対称および非対称スルホキシド)およびその同類のものを含む、約2〜約40炭素原子を含有するスルホキシド誘導体;およびジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、スルホラン(テトラメチレンスルホン、環状スルホン)、ジアルキルスルホン、アルキルフェニルスルホン、ジメチルスルホン、メチルエチルスルホン、ジエチルスルホン、エチルプロピルスルホン、メチルフェニルスルホン、メチルスルホラン、ジメチルスルホラン、およびその同類のもの等の約2〜約40炭素原子を含有するスルホン誘導体(対称および非対称スルホン)を含む。そうした材料は、単独でまたは組み合わせて使用できる。
【0039】
殺生剤および/または殺菌剤をまた、本発明のインクジェットインク組成物に加えることができる。バクテリアは、多くの場合、インクノズルより大きく、そして目詰まり、および他の印刷の問題を起こすことができるので、殺生剤は、細菌の成長を防止するのに重要である。有用な殺生剤の例、ベンゾエートまたはソルベート塩、およびイソチアゾリノンを含むがこれらに限られない。
【0040】
種々のポリマーのバインダーはまた、組成物の粘度を調製するために、ならびに他の望ましい特性を提供するために、本発明のインクジェットインク組成物と組み合わせて使用できる。好適なポリマーのバインダーは、アラビアゴム、ポリアクリレート塩、ポリメタクリレート塩、ポリビニルアルコール(DuPontからのElvanols、CelaneseからのCelvoline)、ヒドロキシプロピレンセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、(BASFからのLuvatec、ISPからKollidon およびPlasdone、およびPVP−K、Glide等の)ポリビニルピロリドン、ポリビニルエーテル、澱粉、ポリサッカロイド、Discole(商標)シリーズ(DKS International)を含むエチレンオキサイドおよびプロピレンオキサイドで誘導体化されたまたは誘導体化されていないポリエチレンイミン;Jeffamine(商標)シリーズ(Huntsman);およびその同類のもの等の水溶性ポリマーおよびコポリマーを含むがこれらに限られない。水可溶性ポリマー化合物のさらなる例は、例えば、(BASFからのJoncryl line、NoveonからのCarbomers等の)スチレンアクリル酸コポリマー、スチレンアクリル酸アルキルアクリレートターポリマー、(BASFからのJoncryl line等の)スチレンメタクリル酸コポリマー、(SartomerからのSMAポリマー等の)スチレンマレイン酸コポリマー、スチレンマレイン酸アルキルアクリレートターポリマー、スチレンメタクリル酸アルキルアクリレートターポリマー、スチレンマレイン酸半エステルコポリマー、ビニルナフタレンアクリル酸コポリマー、アルギン酸、ポリアクリル酸またはそれらの塩およびそれらの誘導体を含む上記の種々の分散剤または界面活性剤を含む。さらに、バインダーは、分散体またはラテックス形態で加えることができ、または存在できる。例えば、ポリマーのバインダーは、(NSM NeoresinsからのNeoCryl materials、Alberdingk−BoleyからのACおよびASポリマー等の)アクリレートまたはメタクリレートコポリマーのラテックスであることができ、または(Alberdingk−BoleyからのABU等の)水分散性ポリウレタンまたは(EASTMan ChemicalからのAQポリマー等の)ポリエステルであることができる。インクジェットインク中のバインダーとして使用できる上記に記載したもの、変化形、および関連した材料等のポリマーは、LyondellからのEthacryl products、BASFからのJoncryl polymers、NSM NeoresinsからのNeoCryl materials、ならびにACおよびASポリマーAlberdingk−Boley中に含まれる。
【0041】
本発明のインクジェットインク組成物のpHを制御または調整するための種々の添加物をまた使用できる。好適なpH調節剤の例は、ジエタノールアミンおよびトリエタノールアミンならびに種々の水酸化物試薬等の種々のアミンを含む。水酸化物試薬は、水酸化物対イオンを有する塩等のOHイオンを含む任意の試薬である。例は、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化リチウム、水酸化アンモニウム、およびテトラメチル水酸化アンモニウムを含む。他の水酸化物塩、ならびに水酸化物試薬の混合物をまた使用できる。さらに、水性媒体中でOHイオンを生成する他のアルカリ性試薬をまた使用できる。例は、炭酸ナトリウム等のカーボネート、ナトリウム重炭酸塩等の重炭酸塩、およびナトリウムメトキシドおよびナトリウムエトキシド等のアルコキシドを含む。バッファーをまた、加えることができる。
【0042】
さらに、本発明のインクジェットインク組成物は、カラーバランスを変更し、そして光学密度を調整するために、従来の染料をさらに取り込むことができる。そうした染料は、食用色素、FD&C染料、酸性染料、直接染料、反応性染料、銅フタロシアニン誘導体、ナトリウム塩、アンモニウム塩、カリウム塩、リチウム塩を含むフタロシアニンスルホン酸の誘導体、およびその同類のものを含む。
【0043】
インクジェットインク組成物は、本発明の改質された顔料のための上記のもの等の方法を使用して、精製でき、およびまたは分類できる。任意選択的対イオン交換ステップをまた使用できる。従って、好ましからざる不純物または望ましくない大きい粒子はまた、良好な全体的特性を有するインクを生成させるために除去できる。
【0044】
本発明は、さらに、種々のインクジェットインク組成物を含み、そして本発明のインクジェットインク組成物を含むインクジェットインクセットに関する。このセットのインクジェットインク組成物は、当該技術分野において知られているものと任意の様式で異なることができる。例えば、このインクジェットインクセットは、例えば、シアン顔料を含むインクジェットインク組成物、マゼンタ顔料を含むインクジェットインク組成物、および/または黒色顔料を含むインクジェットインク組成物を含む、異なるタイプおよび/または異なる色の着色剤を含むインクジェットインク組成物を含むことができる。他のタイプのインクジェットインク組成物、例えば、基材上に固定するように設計された試薬を含む組成物を含むインクジェットインク組成物をまた使用できる。他の組み合わせは、当該技術分野で知られているであろう。
【0045】
本発明は、本来、例示的のみであることを目的とする以下の例によってさらに明確になるであろう。
【実施例】
【0046】
例1
以下の例は、第1の改質された顔料および第2の改質された顔料を含む本発明のインクジェットインク組成物の調製および印刷性能特性を記載し、ここで、第1の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種のポリマー基を有する顔料を含む。
【0047】
この例では、結合した安息香酸基またはそれらの塩(第1の改質された顔料)を有するカーボンブラックを含む改質されたカーボンブラックの水性分散体を、(240m/gのBET窒素表面積および50cc/100gのDBP値を有するCabot Corporationから市販されている)Black Pearls(商標)1100カーボンブラックと、(1グラムのカーボンブラック当たり1.5ミリモルの)p−アミノ安息香酸および(p−アミノ安息香酸に等モルの)ナトリウム亜硝酸とを反応させることによって調製した。また、結合したスチレンアクリル酸コポリマー(第2の改質された顔料)を有するカーボンブラックを含む改質されたカーボンブラックの分散体を、Black Pearls(商標)1100カーボンブラックと、(1グラムのカーボンブラック当たり1.0ミリモルの)アミノベンジルアミン、(1モルのアミノベンジルアミン当り2モルの)メタンスルホン酸、および(アミノベンジルアミンに等モルの)ナトリウム亜硝酸とを反応させることによって調製し、結合したアミノ基を有するカーボンブラックを生成させ、そしてこれを次に(240の酸価および16、000の重量平均分子量を有するBASFから入手可能であるスチレンアクリル酸コポリマー、ポリマー/顔料の重量比で3/1の)Joncryl(商標)690と反応させた。
【0048】
本発明のインクジェットインク組成物は、第1の改質された顔料を含む塩基組成物(Base1−1)と、第2の改質された顔料を含む塩基組成物(Base2−1)とを種々の比率で組み合わせることによって調製できる。2種の塩基組成物は、下記表1に示され、本発明のインクジェットインク組成物を調製するのに使用されるそれぞれの塩基組成物の量を、下記表2に示す。
表1
【表1】

表2
【表2】

【0049】
それぞれのインクジェットインク組成物における全顔料の配合量は、4%であった。表2において、特定の顔料の、インクジェットインク組成物中での顔料の合計量に対する比である重量分率を示す。従って、第1の改質された顔料の量がXであり、そして第2の改質された顔料の量がYである場合、第1の改質された顔料の重量分率はX/(X+Y)である。
【0050】
本発明のインクジェットインク組成物(例IA、IB、1C、およびID)、ならびにそれらで調製した塩基組成物(Base1−1および2−1)を、Canon i550プリンターを使用して、印刷品質高、カラー調整デフォルト、グレイスケール印刷チェック済みの印刷設定で、Canon PP−101およびCanon PR−101フォト光沢紙上に印刷した。印刷性能特性を、15分間乾燥させた後に生じた印刷画像で決定した。光沢(20°)を、Micro Tri Gloss Meter、モデル4430を用いて測定し、および画像の明瞭性(DOI)を、QEA DIASを用いて測定した。耐ウェットスミア性(Wet smear resistance)を、湿ったキムワイプで、印刷画像にかけて5回こすり、そして印刷ストリップからの光沢紙へのしみを証拠として、目視で評価することによって決定した(「合格」は、しみなしを意味し、「微量」は、ほとんど少ししかしみがないことを意味し、そして「不合格」は、目に見えるしみを意味する)。水堅牢度(WF)を、印刷画像にかけて水を滴下し、そして同じスケールを使用して評価することによって決定した。下の表3a(Canon PP−101上で印刷された画像で)および表3b(Canon PR−101で印刷された画像で)印刷性能の結果を示す。
表3a
【表3】

表3b
【表4】

【0051】
データが示すように、本発明のインクジェットインク組成物は、それらで調製した塩基組成物の性能に基づいて期待されなかった性能特性を有した。例えば、Base1−1の20°光沢値は、PP−101上で152であり、一方Base2−1の光沢値は59である。例1A、IB、1C、および1Dのインクジェットインク組成物は、これらの値の加重平均に基づいて期待されるであろうより大きい光沢値を有する。さらに、Base2−1の光沢値は、59でありながら、58.9%までもがこのより低い光沢顔料(例ID)である4%の顔料を含むインクジェットインク組成物が、まだ非常に高い光沢を有することが、驚いたことに見いだされた。同じことがDOIに当てはまる。従って、(Base1−1からの)より高い光沢、より高いDOIの顔料が、(Base2−1からの)より低い光沢、より低いDOIの顔料と組み合わせることができ、高い全体的な光沢およびDOIを有するインクジェットインク組成物を生成することが見いだされた。さらに、例IA〜IDのそれぞれは、全顔料の73.6%までもが、Base1−1からであるにもかかわらずBase1−1と比較して、改善されたまたは類似のウェットスミアおよび水堅牢度特性を有する。
【0052】
このように、2種の異なる改質された顔料を含む本発明のインクジェットインク組成物は、良好な印刷性能特性のバランスを有することが驚いたことに見いだされた、そしてこの特性の組み合わせは、加重平均に基づいて、個々に改質された顔料のいずれかを含む塩基組成物の性能に基づいて期待されない。(Base1−1からの)第1の改質された顔料の量が、顔料の合計量の50%より多い場合、特に改善された特性が見いだされた。
例2
【0053】
以下の例は、第1の改質された顔料および第2の改質された顔料を含む本発明のインクジェットインク組成物の調製および印刷性能特性を記載し、ここで、第1の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種のポリマー基を有する顔料を含む。
【0054】
この例では、結合した安息香酸基またはそれらの塩(第1の改質された顔料)を有するカーボンブラックを含む改質されたカーボンブラックの水性分散体を、(200m/gのBET窒素表面積および117cc/100gのDBP値を有するCabot Corporationから市販されている)Black Pearls(商標)700カーボンブラックと、(1グラムのカーボンブラック当たり0.8ミリモルの)p−アミノ安息香酸および(p−アミノ安息香酸に等モルの)ナトリウム亜硝酸とを反応させることによって調製した。また、結合したスチレンアクリル酸コポリマー(第2の改質された顔料)を有するカーボンブラックを含む改質されたカーボンブラックの分散体を、Black Pearls(商標)700カーボンブラックと、(APSES、1グラムのカーボンブラック当り0.5ミリモルの)4−アミノフェニル−2−スルファトエチルスルホンおよび(APSESに等モルの)ナトリウム亜硝酸とを反応させることによって調製し、結合したスルホエチルスルホン酸基を有するカーボンブラックを生成させ、これを(PEHA、1グラムのカーボンブラック当りミリ1.4モルの)ペンタエチレンヘキサミンと次に反応させ、続いてJoncryl(商標)683(160の酸価およびa8、000の重量平均分子量を有し、BASFから入手可能であるスチレンアクリル酸コポリマー、ポリマー/顔料の重量で1/1)と反応させた。
【0055】
本発明のインクジェットインク組成物を、第1の改質された顔料の分散体を含む塩基組成物(Base1−2)と、第2の改質された顔料の分散体を含む塩基組成物(Base2−2)とを比率を変えて組み合わせることによって調製した。2種の塩基組成物を、下の表4に示し、そして、本発明のインクジェットインク組成物を調製するのに使用されるそれぞれの塩基組成物の量を、下の表5に示す。
表4
【表5】

表5
【表6】

【0056】
それぞれのインクジェットインク組成物における全顔料の配合量は、4%であった。表5に、特定の顔料の、インクジェットインク組成物中での顔料の合計量に対する比である重量分率を示す。従って、第1の改質された顔料の量がXであり、そして第2の改質された顔料の量がYである場合、第1の改質された顔料の重量分率はX/(X+Y)である。
【0057】
本発明のインクジェットインク組成物(例2A、2B、および2C)、ならびにそれで調製した塩基組成物(Base1−2および2−2)を、例1に記載したように、Canoni550プリンターを使用して、CanonPP−101フォト光沢紙上に印刷し、そして印刷性能特性を、15分間乾燥させた後に生じた印刷画像で上記の様に決定した。結果を下の表6に示す。
表6
【表7】

【0058】
データが示すように、本発明のインクジェットインク組成物は、それで調製した塩基組成物の性能に基づいて、期待されなかった性能特性を有した。例えば、Base1−2のDOIが1.8であるが、一方、例2AのDOIは、1.9である。このように、例2Aのインクジェットインク組成物は、Base1−2それ自身より(Base1−2からの)高DOI顔料を少なく有するにもかかわらず、そして全顔料の24.4%は、より低いDO(Base2−2からの)I顔料であるにもかかわらず、DOIにおける増加が観察された。さらに、例2A、2B、および2Cのインクジェットインク組成物は、個々にBase1−2およびBase2−2のためのDOI値sの加重平均に基づいて期待されたより多いDOI値を有することが見いだされた。さらに、全顔料の75.6%までもが、より乏しい水堅牢度を有するBase1−2からの顔料であるにも関わらず、例2A〜2Cのそれぞれは、Base1−2と比較して、改善された水堅牢度特性を有する。
【0059】
このように、2種の異なる改質された顔料を含む本発明のインクジェットインク組成物は、良好な印刷性能特性のバランスを有することが驚いたことに見いだされた、そしてこの特性の組み合わせは、加重平均に基づいて、個々に改質された顔料のいずれかを含む塩基組成物の性能に基づいて期待されない。
比較例1
【0060】
以下の例は、第1の改質された顔料および第2の改質された顔料を含む比較インクジェットインク組成物の調製および印刷性能特性を記載し、ここで、第1の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する顔料を含み、そして第2の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含まない結合した少なくとも1種のポリマー基を有する顔料を含む。
【0061】
この例では、例1の結合した安息香酸基(第1の改質された顔料)を有するカーボンブラックを含む改質されたカーボンブラックの水性分散体を使用した。また、結合した安息香酸基またはそれらの塩およびアルキレンオキサイドポリマーを有するカーボンブラックを含む改質されたカーボンブラックの分散体(第2の改質された顔料)を、Black Pearl(商標)1100カーボンブラックと、(APSES、1グラムのカーボンブラック当り0.25ミリモルの)4−アミノフェニル−2−スルファトエチルスルホンおよび(APSESに等モルの)ナトリウム亜硝酸とを反応させることによって調製し、結合したスルホエチルスルホン酸基を有するカーボンブラックを生成させ、そして次にこれを(1グラムのカーボンブラック当り1.25ミリモルの)p−アミノ安息香酸および(p−アミノ安息香酸に等モルの)ナトリウム亜硝酸と反応させ、続いて(2、000の平均分子量を有するHuntsmanから入手可能な、1グラムのカーボンブラック当たり0.5ミリモルのアミンの)Jeffamine M2070と反応させた。
【0062】
インクジェットインク組成物を、第1の改質された顔料の分散耐を含む塩基組成物(比較Base1−1)と、第2の改質された顔料の分散体を含む塩基組成物(比較Base2−1)とを、異なる比率で組み合わせることによって調製した。この2種の塩基組成物を、下の表7に示し、そして比較インクジェットインク組成物を調製するためにそれぞれの塩基組成物の量を、下の表8に示す。
表7
【表8】

表8
【表9】

【0063】
それぞれのインクジェットインク組成物における全顔料の配合量は、4%であった。表8において、特定の顔料の、インクジェットインク組成物中での顔料の合計量に対する比である重量分率を示す。従って、第1の改質された顔料の量がXであり、そして第2の改質された顔料の量がYである場合、第1の改質された顔料の重量分率はX/(X+Y)である。
【0064】
比較インクジェットインク組成物(比較例IA、IB、および1C)、ならびにそれで調製した塩基組成物(比較Base1−1および2−1)を、Canon i550プリンターを使用してCanon PP−101フォト光沢紙上に例1に記載したように印刷し、そして印刷性能特性を、15分間乾燥させた後に生じた印刷画像で上記のように決定した。結果を、下の表9に示す。
表9
【表10】

【0065】
データが示すように、比較インクジェットインク組成物は、それらが調製された比較塩基組成物の性能に基づいて改善された光沢およびDOI値を有しながら、これらの組成物は、改善された耐久力を有さなかった。比較インクジェットインク組成物のそれぞれは、貧弱な、ウェットスミアおよび水堅牢度特性を有した。したがって、(第2の改質された顔料が、カルボン酸またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種のポリマー基を有する顔料を含まない2種の改質された顔料を含む)比較インクジェットインク組成物は、同じ第1の改質された顔料と、カルボン酸またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種のポリマー基を有する顔料を含む第2の改質された顔料とを含む本発明のインクジェットインク組成物、と比較して、印刷性能特性の優勢さを有さない。
【0066】
本発明の好ましい態様の先の記載は、具体的な説明および記載の目的のために示された。本発明の好ましい態様先の記載は包括したり、または開示された正確な形態に本発明を限定したりすることを目的としない。改質および変化は、上記教示に照らして可能であり、または本発明の実施により得ることができる。当業者が本発明を種々の態様において、および熟考された特別な使用に適するように種々の改変を用いて、利用できるように本発明の原理およびその実際的な用途を説明するために、態様が選択され、そして記載された。本発明の範囲およびそれらの均等は、付属の請求項によって規定されることを意図する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)液体ビヒクル;b)少なくとも1種の第1の改質された顔料;およびc)少なくとも1種の第2の改質された顔料を含んで成る、インクジェットインク組成物、
該第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み、そして量Xで存在し;
該第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含み、そして量Yで存在し;そしてX/(X+Y)>0.5である。
【請求項2】
X/(X+Y)が、約0.55〜約0.90である、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項3】
X/(X+Y)が、約0.6〜約0.8である、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項4】
該非ポリマー基が、少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のイオン化可能基、またはそれらの混合物を含む、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項5】
該非ポリマー基が、少なくとも1種のカルボン酸基またはそれらの塩を含む、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項6】
該非ポリマー基が、式−X−(CO(式中、該顔料に結合したXは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリーレン、またはアラルキレン基であり;Mは、H、Na、K、Li、またはNR(式中、同一であるかまたは互いに異なることができるRは、水素または置換もしくは非置換アリールおよび/もしくはアルキル基等の有機基を表す。)であり;そしてnは1〜4である。)を有する基である、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項7】
Xが、アリーレン基である、請求項6のインクジェットインク組成物。
【請求項8】
該非ポリマー基が、−C−CO基である、請求項6のインクジェットインク組成物。
【請求項9】
該ポリマー基が、少なくとも1種のイオン基、少なくとも1種のアニオン化可能基、またはそれらの混合物を含む、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項10】
該ポリマー基が、少なくとも1種のカルボン酸基またはそれらの塩を含む、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項11】
該ポリマー基が、アクリレートもしくはメタクリレートポリマー基またはマレイン酸もしくは無水マレイン酸ポリマー基である、請求項10のインクジェットインク組成物。
【請求項12】
該ポリマー基が、スチレンアクリル酸、スチレンメタクリル酸、またはスチレンマレイン酸ポリマー基である、請求項10のインクジェットインク組成物。
【請求項13】
該第1の顔料または該第2の顔料が、100mL/100g顔料以下のDBP値を有する、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項14】
該第1の顔料または該第2の顔料が、80mL/100g顔料以下のDBP値を有する、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項15】
該第1の顔料または該第2の顔料が、70mL/100g顔料以下のDBP値を有する、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項16】
該第1の顔料または該第2の顔料が、200m/g以上のBET表面積値を有する、請求項13のインクジェットインク組成物。
【請求項17】
該第1の顔料または該第2の顔料が、230m/g以上のBET表面積値を有する、請求項13のインクジェットインク組成物。
【請求項18】
該第1の顔料および該第2の顔料が、カーボンブラックである、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項19】
該第1の顔料および該第2の顔料が、同じである、請求項1のインクジェットインク組成物。
【請求項20】
a)液体ビヒクル;b)少なくとも1種の第1の改質された顔料;およびc)少なくとも1種の第2の改質された顔料を含んで成る、インクジェットインク組成物、
該第1の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み;そして、
該第2の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の第2のポリマー基を有する顔料を含む。
【請求項21】
該非ポリマー基が、式−X−(CO)n(式中、該顔料に結合したXは、アリーレン、ヘテロアリーレン、アルキレン、アルカリーレン、またはアラルキレン基であり;Mは、H、Na、K、Li、またはNR(式中、同一であるかまたは互いに異なることができるRは、水素または置換もしくは非置換アリールおよび/もしくはアルキル基等の有機基を表わす。)であり;そして、nは1〜4である。)を有する基である、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項22】
Xが、アリーレン基である、請求項21のインクジェットインク組成物。
【請求項23】
該非ポリマー基が−C−CO基である、請求項21のインクジェットインク組成物。
【請求項24】
該ポリマー基が、アクリレートもしくはメタクリレートポリマー基またはマレイン酸もしくは無水マレイン酸ポリマー基である、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項25】
該ポリマー基が、スチレンアクリル酸、スチレンメタクリル酸、またはスチレンマレイン酸ポリマー基である、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項26】
該第1の顔料または第2の顔料が、100mL/100g顔料以下のDBP値を有する、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項27】
該第1の顔料または第2の顔料が、80mL/100g顔料以下のDBP値を有する、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項28】
該第1の顔料または第2の顔料が、70mL/100g顔料以下のDBP値を有する、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項29】
該第1の顔料または該第2の顔料が、200m/gのBET以上の表面積値を有する、請求項26のインクジェットインク組成物。
【請求項30】
該第1の顔料または該第2の顔料が、230m/gのBET以上の表面積値を有する、請求項26のインクジェットインク組成物。
【請求項31】
該第1の顔料および該第2の顔料が、カーボンブラックである、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項32】
該第1の顔料および該第2の顔料が、同じである、請求項20のインクジェットインク組成物。
【請求項33】
a)液体ビヒクル;b)少なくとも1種の第1の改質された顔料;およびc)少なくとも1種の第2の改質された顔料を含んでなる、分散体、
該第1の改質された顔料は、結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み、そして量Xで存在し;
該第2の改質された顔料は、結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含み、そして量Yで存在し;そして、X/(X+Y)>0.5である。
【請求項34】
a)液体ビヒクル;b)少なくとも1種の第1の改質された顔料;およびc)少なくとも1種の第2の改質された顔料を含んで成る、分散体、
該第1の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種の非ポリマー基を有する第1の顔料を含み;そして、
該第2の改質された顔料は、カルボン酸基またはそれらの塩を含む結合した少なくとも1種のポリマー基を有する第2の顔料を含む。

【公表番号】特表2010−519366(P2010−519366A)
【公表日】平成22年6月3日(2010.6.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−550607(P2009−550607)
【出願日】平成20年2月26日(2008.2.26)
【国際出願番号】PCT/US2008/002496
【国際公開番号】WO2008/106114
【国際公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【出願人】(391010758)キャボット コーポレイション (164)
【氏名又は名称原語表記】CABOT CORPORATION
【Fターム(参考)】