説明

複数の極板構成部材の接合方法

【課題】複数の金属薄片間の電導性と機械的強度を確保した金属薄片積層体を提供する。
【解決手段】複数の金属薄片が積層された金属薄片積層体に形成された貫通孔と、
該貫通孔内の金属露出面を高エネルギー線で溶接することにより金属薄片間の電導を確保した電導性が改善された金属薄片積層体およびその製造方法、並びに内面を溶接された貫通孔内にリベットを挿通しカシメ接合した金属薄片積層体。
【効果】金属薄片の表面が有機物により汚染されていても、電導性と機械的強度の確保された金属薄片積層体を提供することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の金属薄片からなる積層体の電導性を確保すると同時に強固な機械的強度を有する金属薄片積層体に関するものであり、さらに具体的には、複数の金属薄片状の極板構成部材、または集電タブを接合することにより導電性と耐振動性などの機械的強度が改善された積層構造となすものであり、二次電池の製造に特に有用である。
【背景技術】
【0002】
従来、携帯電話をはじめとした携帯型の電池使用機器には充放電の容量が大きなリチウムイオン電池が広く用いられている。電気自動車、電動自転車、電動工具、電力貯蔵などの用途においても、充放電の容量が大きく、効率が優れた二次電池が求められている。また、高出力の電池においては、平板状の正極と負極とをセパレータを介して順次多数枚を積層した積層型電池が用いられている。リチウムイオン電池においては、正極としては、極板構成部材としての作用をするアルミニウム箔上にリチウム遷移金属複合酸化物粒子をカーボンブラックなどの導電性付与材と共に塗布したものが用いられ、負極としては、極板構成部材として作用する金属箔に黒鉛などの炭素粒子とカーボンブラックなどの導電性付与材からなるスラリーを塗布したものが用いられている。
【0003】
この種の電池には、例えば、電池にはシート状のプラス(+)電極およびマイナス(−)電極が突設され、これらの電極は、通常、極板構成部材である薄い金属箔を多数枚重ね合わせることによりシート状に構成されているものが多い。また、電極は端子状に形成され、その端子に導線が接続されるようになっている。このような薄い金属箔を多数枚重ね合わせたシート状電極を電極端子として形成する場合には、多数の薄い金属箔シートの端部を相互に導通させて電通効率を良くすることが必要である。そのために従来は、幾種類かの導通手法が用いられている。例えば、積層された金属箔の所定部位に高周波溶着あるいはスポット溶接を施し、これにより金属箔同士を電気的に接続する手法や、金属箔の積層からなる電極を貫通する抜き穴を設けその穴にリベットを打ち込み圧接することにより金属箔間の接触を強固にして導通性を保持することが行われている。
【0004】
これらの技術に付いて幾つかの具体例を挙げると、リベットを使用する例としては、複数の積層された極薄金属片からなる積層体を導通させるにあたり、極薄積層体に貫通リベットを打設し、そのリベットを介して極薄金属片同士を導通させる極薄積層体の導通法が提案されている。この方法は多くの工数を必要とするため手間と時間、さらにはコストの低減を目的とするものであり、さらに、簡単かつ確実に導通を取ることができ、しかも安定した導通状態を得る極薄積層体の導通方法およびシート状電極を提供するものである(特許文献1)。
また、リベットを使用して積層体の導通する技術の改善方法としては、リベットの円筒脚部を積層体の最下位にある極薄金属片に埋め込むようにカシメ圧接することにより、極薄金属片同士を導通させ、貫通孔が残ることなくしかも導通部分の空隙をなくして十分強度を出すことができる極薄積層体とすることが提案されている(特許文献2)。
【0005】
溶接によるものとしては、極板のリード部の端部がその極板に略直交方向に伸びている集電板に接合されている電極構造体を有する電池であり、極板の前記端部に突起が形成されており、その突起の周りが、少なくとも集電板を形成する金属が溶融してから凝固したフィレットによって充填されていることにより、接合部の電気抵抗の安定性を確保しながらもコストの低減ができる電極構造体の製造方法が提案されている(特許文献3)。
【0006】
また、超音波溶接によるものとしては、正負の電極シートの重なり端面からはみ出した複数の電極シートを超音波振動の付与に伴う接合手段により集電端子に接続する電池製造方法において、超音波振動により発生する金属粉が電極ユニットに侵入することを防止する技術(特許文献4)や、複数のアルミ箔や銅箔を重ね合わせたものを挟持板に挟み込んで超音波溶接する技術が提案されている(特許文献5)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−93489号公報
【特許文献2】特開2006−202539号公報
【特許文献3】特開2006−351376号公報
【特許文献4】特開2007−53002号公報
【特許文献5】特開2003−197174号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来の金属、樹脂、ラミネートケースを用いた二次電池においては出力端子と内部の極板構成部材との接続が必要となる。このためには、複数の極板構成部材の端部または集電タブを接合し、一体化して各極板構成部材間の導通を確保した積層体となすと共に、これをリード端子や外部出力端子へと接続する。すなわち、積層型セルを使用した二次電池においては、複数の極板構成部材を端部で一体化して電気導電性と機械的強度を確保すると共にリード端子または出力端子へと接続することが必要である。特に、積層型セルにおいて先含浸方式により製造する方法を用いて製造する場合には、極板構成部材の接合面がポリマー電解液やバインダーなどの有機物で汚染されることが多いため、汚染された極板構成部材をそのまま重ね合わせて接続した場合でも十分な導電性と強度を確保した接合を得ることが必要となる。また、大出力用途の電池においては、接合部での抵抗を極端に低くし、かつ振動が加わる環境下においても低抵抗を維持することが必要である。
従来は、二次電池における出力端子と内部の極板構成部材との接合においては、超音波溶接、スポット溶接、レーザー溶接や針圧接などの方法が用いられていたが十分な強度、および安定した導電性を確保することは困難であることが多かった。そこで、導電性と機械的強度が共に優れた接合方法が求められていた。また、従来の接合方法では、被接合面が何らかの物質により汚染されている場合は、溶接などによる接合安定性が大きく損なわれていたため、接合面が汚染されていても安定した接合が得られ、しかも接合面での機械的強度が十分得られる新たな接合方法が求められていた。
【0009】
本発明は、こうした従来技術を改善し、複数の極板構成部材や集電タブなどの接続に有用な技術を提供するものである。本発明は、複数の極板構成部材やその延長部分の集電タブのような複数の金属薄片からなる部分を導通性が確保された積層体構造とすることを目的とするものであり、さらに、何らかの原因により汚染された表面を有する金属薄片を積層して一体化して導通性と機械的特性を共に有する部材となすことができる技術を提供することを目的とするものである。さらに、二次電池の製造において、極板構成部材の表面がポリマー電解液やバインダーなどの有機物で汚染されていても接合強度と導電性が十分確保でき、振動などの外力がかかる環境においても接合部での電気抵抗を低く保持することができる優れた接合構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は以下の(1)ないし(8)の金属薄片積層体の製造方法を要旨とする。
(1)複数の金属薄片が積層された金属薄片積層体に貫通孔を形成し、該貫通孔内の金属露出面を高エネルギー線で溶接することにより金属薄片間の導電性を確保することを特徴とする金属薄片積層体の製造方法。
(2)高エネルギー線が、レーザー光である上記(1)に記載の金属薄片積層体の製造方法。
(3)貫通孔内の金属露出面の2%〜100%を溶接する上記(1)または(2)に記載の金属薄片積層体の製造方法。
(4)内面が溶接された貫通孔内にリベットを挿通しカシメ接合する上記(1)から(3)の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
(5)リベットの材質が、アルミニウムあるいは銅からなる上記(4)に記載の金属薄片積層体の製造方法。
(6)金属薄片積層体の外面とリベットとの接触部分を溶接により一体化する上記(1)から(5)の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
(7)金属薄片が二次電池の極板構成部材または集電タブである上記(1)から(6)の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
(8)リード端子を極板構成部材または集電タブに接合する上記(1)から(7)の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
【0011】
また、本発明は以下の(9)ないし(14)の金属薄片積層体を要旨とする。
(9)複数の金属薄片よりなる金属積層体と該金属積層体に形成された貫通孔を有し、該貫通孔内の金属露出面が高エネルギー線による溶接により接続されていることを特徴とする金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
(10)貫通孔内の金属露出面の2%〜100%が溶接されている上記(9)に記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
(11)貫通孔にはリベットが挿通され、カシメ接合している上記(9)または(10)に記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
(12)リベットの材質が、アルミニウムあるいは銅からなる上記(9)から(11)の何れかに記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
(13)金属積層体の外面とリベットの接触部分が溶接により一体化されている上記(9)から(12)の何れかに記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
(14)金属薄片が二次電池の極板構成部材または集電タブである上記(9)から(13)の何れかに記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【0012】
さらにまた、本発明は以下の(15)の二次電池を要旨とする。
(15)上記(9)から(14)のいずれかに記載の金属薄片積層体を具備することを特徴とする二次電池。
【発明の効果】
【0013】
本発明により次の優れた効果が奏される。
(1)簡便な方法により、複数の金属薄片からなる積層体の金属薄片相互間を接合することができ、導電性および機械的強度に優れた積層体が得られる。
接合部での電気抵抗は低く、強い振動が加わる環境下においても低い抵抗性を維持することができる。
(2)レーザー光による溶接技術およびリベットによるカシメ圧接による接合技術などの既知技術の応用により実用化が容易である。
(3)現行工法とは比較にならないほどの強度と導電性を確保することができる。
(4)リチウムイオン電池などの二次電池の製造に応用でき、高出力で強い振動のある過酷な環境下、例えば、鉄道、電気自動車などでの使用が可能な電池を提供することができる。
(5)溶接部分の状況を目視により確認することができる為、検査、確認が容易であり、製品の性能にばらつきがほとんど生じない。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】接合部の全体図
【図2】接合部全体の断面図
【図3】超音波溶接による接合法の模式図
【図4】レーザー溶接による接合法の模式図
【図5】リベットによる接合部の模式図
【図6】本発明による接合部を製造する工程の模式図
【図7】本発明による接合部の断面と極板構成部材とリード端子を接合した状態を示す写真
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明は、複数の金属薄片が積層された金属薄片積層体に貫通孔を形成し、形成された貫通孔内の金属露出面をレーザー光などの高エネルギー線で溶接することにより金属薄片間の導電性が確保された金属薄片積層体の製造方法および金属薄片間の導通が確保された金属薄片積層体、並びにこの金属薄片積層体を極板構成部材とする二次電池に関するものであり、複数の金属薄片からなる積層体の導電性と機械的強度の確保を可能とし、さらに、内面を溶接された貫通孔内にリベットを挿通しカシメ接合することによりさらに機械的強度を改善したものである。また、本発明は、清浄な表面を有する金属薄片間の接合、あるいは有機物質類などが付着して汚染された表面を有する金属薄片間の接合に適用することが可能であり、特に有機物質などで汚染された表面を有する金属薄片間の接合にあっても有用であり、十分な電導性と機械的強度が確保される。
本発明により製造された金属薄片積層体は主に二次電池の電極として使用される。そこで、以下における本発明の説明はリチウムイオン電池の電極を形成する技術を例にして本発明を説明する。
【0016】
[リチウム二次電池の製造]
一般に、リチウム二次電池における正極または負極は、アルミニウム板や銅板の様な極板構成部材上に、正極活物質または負極活物質、電解質、導電材料、バインダー樹脂等を含有する混合物を塗布して製造する。ゲル状電解質を用いたリチウム二次電池では、活物質、重合性モノマー、電解液を混練、塗布し、しかるのちモノマーを重合することによって電解液をゲル状電解質とし、極板構成部材を積層する方法によって製造される方法が採用されている。本発明は、こうした電池の製造において極板構成部材の表面の一部が有機物質で汚染された場合に特に有用である。
【0017】
積層型リチウムイオン電池の製造では、まず、アルミニウム箔からなる正極板構成部材上に、正極板構成部材から引き出された正極集電タブ上を除いて、リチウムイオンを吸蔵、放出するLiMn24などの正極活物質を塗布して正極集電タブが引き出された正極電極を形成する。また、銅箔からなる負極板構成部材上には、負極板構成部材から引き出された負極集電タブ上を除き、リチウムイオンを吸蔵、放出するグラファイトなどの負極活物質を塗布して負極集電タブが引き出された負極電極を形成する。正負極集電タブは正極電極あるいは負極電極をそれぞれ並列に接続し、さらに外部電極端子となる正負極リード端子と接続する。このように複数枚の正極電極と負極電極がセパレータを介して対向して平板状に積層配置されており、正極電極に接続した正極集電タブの複数枚は並列した積層体状となし電気的に導通されリード部に接続される。また、負極電極に付いても同様に、負極集電タブの複数枚を並列した積層体状となし電気的に導通させて、負極リード端子と接続される。このとき、集電タブに活物質にかかわる有機物、ポリマー電解液などによる汚染が生じた場合には本発明が特に有用である。
【0018】
[従来技術の問題点の概要]
正極板構成部材または負極板構成部材表面に、正極活物質または負極物質を塗布し、またポリマー電解質を塗布することによる工程を経てリチウムイオン電池を製造するにあたっては、塗布工程において塗布が必要でない極板構成部材や集電タブの表面が正極物質やそのバインダー、あるいはポリマー電解質などで汚染されることがある。特に、集電タブはその複数が積層一体化されてリード部と接合されるが、集電タブからなる積層体は電気的にも機械的にも一体化していなければならないため、各種の溶接方式や圧接などにより接合されている。このとき、集電タブ表面が汚染されていると、溶接時の加熱によりガス発生が生じて、集電タブ間の接合がうまく行われないとか、汚染物質が集電タブ間に絶縁層として存在することになり、複数の集電タブを電気的に機械的に良好な接合状態をすることを確立することは極めて困難なことであった。本発明は、こうした従来技術の問題点を解決すると共にさらに良好な接合状態をした極板構成部材の積層体を提供するものである。
【0019】
[本発明の模式図による説明]
本発明電極板構成部材の積層体の接合方法に付いて模式図により説明する。
図1は接合前の電極集合体を示す。電極集合体は、複数の極板構成部材1が積層され、その部材のそれぞれから伸びた集電タブ2が重合積層され、その上面に外部接続用素子と連結するためのリード端子3が載置される。集電タブ2とリード端子3とはそれらが重なり合っている部分の接合部、すなわち溶接部4において溶接またはその他の方法により電気的にまた機械的に接続され一体される。このときの極板構成部材1の集電タブ2が汚染されているとその断面は図2に示すごとくとなり、極板構成部材1およびその延長部である集電タブ2の表面には、例えば、ポリマー電解質やバインダーなどの汚染物5が付着していることがしばしば観察される。図2の破線で示した溶接部4では、複数の極板構成部材1とリード端子3が電気的に導通するよう接合されなければならない。しかも、接合された部分は、機械的強度が確保され、振動などの外力がかかっても変形あるいは導電性の低下があってはならない。本発明による接合部はこうした規定を満足することができる。
【0020】
[従来技術による接合の図による説明]
従来、電極集合体の部分の接合は超音波溶接、レーザー溶接、リベット接合などが採用されることが多い。図3には超音波溶接による接合を図示したものであり、超音波溶接部61には超音波振動素子6が当接されて圧力下に超音波をかけて積層された複数の金属板間を接合するが、各金属板間の接合強度は弱く非常に不安定である。従って、十分な接合強度と導通性を確保することが難しいものであった。レーザー光による溶接を図4に示す。レーザー光溶接部71にレーザー光7を照射すると、照射された部分は高温となり金属は融着する。このとき、金属は高温に晒されるために集電タブ2の表面に有機物質材料が存在すると、それが高温により気化するため集電タブ2間には気体が存在することになり相互の接触が不良となるため溶接による接合が不安定となる。特に、集電タブ2が電解液などにより汚染されている場合は、電解液が急速に気化して爆飛し、気化飛散物72となることとなり電気的並びに機械的な接合が十分確保されなかった。
【0021】
リベット8による接合に付いては図5に示す。接続部の集電タブ2とリード端子3には貫通孔が設けられてその穴にはリベット8が挿通されてリベット8をカシメ圧接することにより接続の集電タブ2とリード端子3は機械的に接合される。リベット8に接触している集電タブはカシメ圧接による圧力により変形して互いに接触し、あるいはリベット8と接触状態となる(図5参照)。こうした接触状態を形成することにより電気的導通と機械的強度が確保される。しかしながらリベット接合によると、接合強度は強いが接触抵抗が大きいため十分な導通性を確保できない欠点があった。また、外観からは接合状態を観察することはできない為、接合が不十分で品質が低下していることを検知することは困難であった。
このように、上記3種の方法により形成した接合では、導通性と機械的高度の確保は十分ではなく、しかも、外観からは所定の導通性と機械的強度が得られたか否かを判定することは困難であった。
【0022】
[本発明の接合方法の図による説明]
図6には本発明の金属薄片間が導通した金属積層体の製造方法の工程を示す。極板構成部材1から延長された集電タブ2にリード端子3を載置して複数枚の金属薄片を積層状態とし(6.1)、この接合部分(溶接部分)4にパンチ9で貫通孔10を形成する(6.2)。貫通孔10の内面には金属の汚染されていない面が露出されるためレーザー光による溶接は安定して行うことができる。次に、レーザー光7を貫通孔10の内面に照射することにより内面に露出した各金属薄片は溶融し内面で接合される(図6.3a)。これにより、金属薄片間の接合強度と導通性が確保される。貫通孔10の内面のほぼ全面がレーザー溶接された状態の一例を図6.3bに示す。貫通孔10の外周は溶接により盛り上がり、内面は溶接により一体化している。次に、貫通孔10の径および深さに適合したリベット8を貫通孔10に挿入し(6.4)、リベット8をカシメ圧接する(6.5)ことにより積層体の溶接部分の強度を増強することができる。リベット8の採用により接合部の強度をより一層増加させることが可能となり、接合部分の導電性と機械的強度を両立させることが容易となった。
【0023】
本発明における貫通孔の形成とレーザー光による内面の溶接により実用的な導電性と機械的強度は確保されるが、さらに、リベットによる接合と組合せによることにより金属薄片積層体の接合において接合部分の導電性と機械的強度の両者がさらに改善される。本発明が適用される技術分野、用途などには特に制限されないが積層二次電池の製造、特にリチウムイオン電池の製造に最も有用である。
貫通孔の数、直径は金属積層体の大きさ、金属薄片の績層数、金属片の強度、用途などに応じて適宜選定されるが、0.005mm〜0.030mm厚の金属片10〜60枚程度積層された金属薄片積層体であれば、直径1.0〜4.0mmの孔が1個〜10個程度設けられる。別の観点から見ると、貫通孔は、接合部面積の6%〜10%とすることが好ましい。貫通孔の内面のレーザー光による溶接は露出した金属面の2%〜100%、好ましくは5% 〜100%を溶接することにより接合部の導電性と機械的強度を確保することができる。溶接には全ての隣接する金属片同士が接合されていることが好ましく、貫通孔の上端から下端まで、点状、線状、帯状などの溶接部分を複数個設けることにより行なわれる。
【0024】
溶接された貫通孔にリベットを差し込み圧接することにより機械的強度は一層増強されると共に電導性も向上する。リベットは圧接により貫通孔の周辺を圧接することになり、金属薄片間の接触が密になり機械的強度が向上すると共に密着性が増し、また金属製のリベットによる通電路が設けられるため導電性が向上する。リベットは、その強度、腐食性、導電性などを総合的に検討すると、アルミニウムや銅製とすることが好ましい。
リベットをカシメ圧接した後、金属薄片やリード端子の表面と接触しているリベットの頭部および脚部を溶接により金属薄片等と一体化することにより接合強度をさらに向上させることができる。
【0025】
図7には、接合部の断面の模式図および外観を示す写真を挙げる。レーザー光7は貫通孔10の内面を溶融して露出している清浄な金属表面を溶接し接合してレーザー溶接面11を形成することにより、金属薄片間の電導性が向上すると共に溶接部分の実用的強度が確保される。さらに、貫通孔10にリベット8が挿入されてカシメ圧接することにより貫通孔10付近の金属薄片部分はリベット8の頭部81と脚部82により上下から圧接されるため貫通孔10の形成により低下した接合部分の強度を向上させることができる。
図7.3は溶接部の外観を示す写真であり、3個のリベットにより極板構成部材1の集電タブ2とリード端子3が接合されている。
【0026】
[本発明と従来法との対比]
図7に示されている接合部を含め3種の接合部を作製しその接合強度試験、電気抵抗試験および耐振動性試験について実施した。
試験1: 15μm厚のアルミニウム製の金属薄片(極板構成部材)を34枚と、300μm厚のアルミニウム製の金属片(リード端子)一枚を重ね合わせて、2.3mmの貫通孔を3個設け、貫通孔の内面の100%をレーザー光により溶接した後貫通孔にリベットを挿通しカシメ圧接した。
試験2: 前記貫通孔内を溶接することなくリベットを挿通し圧接した。
試験3: 超音波溶着により金属薄片を接合した。
作製した接合部の接合強度については90度剥離試験法により、電気抵抗についてはインピーダンス試験法により試験した。耐振動性試験はJIS E4031鉄道3種B種試験により実施した。
【0027】
[表面が汚染された金属薄片の接合]
上記条件において、表面が有機物からなるポリマー電解液を1.3mg/mで塗布した極板構成部材を使用して試験したところ次の結果を得た。
[接合強度試験]
試験1(レーザー溶接、リベット接合): 4.7N
試験2(リベット接合) : 4.7N
試験3(超音波溶接) : 1.5N
[電気抵抗試験]
試験1(レーザー溶接、リベット接合): 2.2mΩ
試験2(リベット接合) : 6.6mΩ
試験3(超音波溶接) : 2.5mΩ
【0028】
以上の結果から分かるように、従来の超音波溶接法によると、表面にポリマー電解質が付着している場合は溶着が不十分であることが判明した。超音波溶接法では電気抵抗試験では良好な結果が得られたが接合強度は十分ではなく、耐震動性試験では不合格となった。リベット接合では、接合強度は大きい値が得られたが電気抵抗値が大きく電気部品として利用するには優れたものではなかった。本発明のレーザー溶接とリベット接合を組み合わせた場合では、接合強度はリベット接合と同程度あり、電気抵抗値は超音波溶接法よりも低い値が得られた。しかも、本発明の部材では耐振動性試験に合格し、鉄道車両や自動車での使用に十分耐えられることが証明された。
本発明の具体例を下記に示すが、本発明はこれらの実施例により限定されるものではない。
【実施例1】
【0029】
[レーザー光溶接とリベットによる接合]
15μm厚のアルミニウム製の金属薄片(極板構成部材)を34枚と、300μm厚のアルミニウム製の金属片(リード)一枚を重ね合わせて、2.3mmの貫通孔を3個設け、貫通孔の内面の100%を溶接した後貫通孔にリベットを挿通し圧接することにより接合部を形成した。各金属薄片の表面には、予め有機物からなるポリマー電解液からなる組成のポリマー電解液を1.3mg/mの割合で塗布して汚染された状態となした極板構成部材を作製して試験した。接合強度試験、電気抵抗試験、耐振動性試験において次の結果を得た。
接合強度4.7N、電気抵抗2.2mΩであり耐振動性試験には合格した。
【0030】
(比較例1)
[汚染表面の超音波による溶接]
実施例1と同様の汚染面を有する15μm厚のアルミニウム製の金属薄片(極板構成部材)を34枚と、300μm厚のアルミニウム製の金属片(リード端子)一枚を重ね合わせてその端部を超音波溶接した。超音波溶接の条件は以下の通りである。
リード側(2点打ち)アンプ100%、エネルギー180J、圧力5.0Kg/cm、クリアランス100μm、タブ側(1点打ち)アンプ75%、+エネルギー70J、圧力5.0Kg/cm、クリアランス100μm
超音波溶接の実施中に溶接外れや金属薄片の破損が発生して溶接がスムースに進行しなかった。また、製造した接合部の強度は1.5Nであった。
【0031】
(比較例2)
レーザー溶接を利用した以外は比較例1と同様にして接合部を形成した。レーザー光溶接の条件は以下の通りである。
エネルギー:6J(パワー:2.7KW・フラッシュ2.5ms・スロープ0.5ms)
3ショット/ポジション オーバーラップ:0.1mm
溶接点数:18点/1穴
レーザー光溶接の実施中にスパッタが発生して溶接がスムースに進行しなかった。また、製造した接合部の強度4.7Nであった。
【産業上の利用可能性】
【0032】
本発明は、複数の金属薄片が積層された金属薄片積層体に貫通孔を形成し、形成された貫通孔内の金属露出面を高エネルギー線で溶接することにより金属薄片間の導通を確保した金属薄片積層体に関するものであり、さらに内面を溶接された貫通孔内にリベットを挿通しカシメ接合することにより電導性と機械的強度の改善された金属薄片積層体を提供することができる。
本発明は、特に、表面が有機物質により汚染された金属薄片間の接合に有用であり、先含浸方式によるリチウムイオン電池の電極の製造に適用することができる。本発明により製造された電極は、良好な電導性と機械的強度を共に有するものであり、高性能電池や強い振動が頻繁に負荷される鉄道や自動車用の電池として適している。また、本発明による電極の製造は、従来技術の応用により十分達成することができる為、新規な技術の開発は必要なくその実施には格別な困難はない。従って、リチウム電池の電極などに直ちに応用することができ、電池関連の産業に大きく貢献するものである。
【符号の説明】
【0033】
1:極板構成部材
2:集電タブ(接合部)
3:リード端子
4:溶接部
5:汚染物質
6:超音波振動素子
61:超音波溶接部
7:レーザー光
71:レーザー光溶接部
72:気化飛散物
8:リベット
81:リベット頭部
82:リベット脚部
83:リベットにより圧縮された極板構成部材
9:パンチ
10:パンチ孔(貫通孔)
11:レーザー溶接面



【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の金属薄片が積層された金属薄片積層体に貫通孔を形成し、該貫通孔内の金属露出面を高エネルギー線で溶接することにより金属薄片間の導電性を確保することを特徴とする金属薄片積層体の製造方法。
【請求項2】
高エネルギー線が、レーザー光である請求項1に記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項3】
貫通孔内の金属露出面の2%〜100%を溶接する請求項1または2に記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項4】
内面が溶接された貫通孔内にリベットを挿通しカシメ接合する請求項1から3の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項5】
リベットの材質が、アルミニウムあるいは銅からなる請求項4に記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項6】
金属薄片積層体の外面とリベットとの接触部分を溶接により一体化する請求項1から5の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項7】
金属薄片が二次電池の極板構成部材または集電タブである請求項1から6の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項8】
リード端子を極板構成部材または集電タブに接合する請求項1から7の何れかに記載の金属薄片積層体の製造方法。
【請求項9】
複数の金属薄片よりなる金属積層体と該金属積層体に形成された貫通孔を有し、該貫通孔内の金属露出面が高エネルギー線による溶接により接続されていることを特徴とする金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【請求項10】
貫通孔内の金属露出面の2%〜100%が溶接されている請求項9に記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【請求項11】
貫通孔にはリベットが挿通され、カシメ接合している請求項9または10に記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【請求項12】
リベットの材質が、アルミニウムあるいは銅からなる請求項9から11の何れかに記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【請求項13】
金属積層体の外面とリベットの接触部分が溶接により一体化されている請求項9から12の何れかに記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【請求項14】
金属薄片が二次電池の極板構成部材または集電タブである請求項9から13の何れかに記載の金属薄片間の導電性が確保されている金属薄片積層体。
【請求項15】
請求項9から14のいずれかに記載の金属薄片積層体を具備することを特徴とする二次電池。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−84448(P2013−84448A)
【公開日】平成25年5月9日(2013.5.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−223587(P2011−223587)
【出願日】平成23年10月11日(2011.10.11)
【出願人】(390022471)アオイ電子株式会社 (85)
【Fターム(参考)】