説明

複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げるための装置

【課題】相並んで配置された多数の巻上げ機の場合ですら、パッケージの妨害されない搬出が可能となるようにする。
【解決手段】パッケージ23を搬出するための第2のドッフィング平面が設けられており、該ドッフィング平面が、下側の巻上げ機2.1の上方のワインダプラットフォーム4によって形成されており、該ワインダプラットフォーム4が、上側の巻上げ機2.2を支持しているようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージを形成するための装置であって、紡糸装置が設けられており、該紡糸装置が、糸を押し出すための複数の紡糸ノズルを有しており、階層状に重なり合って配置された少なくとも2つの巻上げ機が設けられており、該巻上げ機が、糸を、分離された2つの糸群で巻き上げるようになっており、巻上げ機に、下床によって形成された、パッケージを搬出するためのドッフィング平面が対応配置されている形式のものに関する。
【0002】
さらに、本発明は、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージを形成するための装置であって、紡糸装置が設けられており、該紡糸装置が、糸を押し出すための複数の紡糸ノズルを有しており、下床に階層状に重なり合って配置された少なくとも2つの巻上げ機が設けられており、該巻上げ機が、糸を、分離された2つの糸群で巻き上げるようになっており、巻上げ機に、下床によって形成された、パッケージを搬出するためのドッフィング平面が対応配置されている形式のものに関する。
【背景技術】
【0003】
複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げるための冒頭で述べた形式の装置は、米国特許第6210143号明細書に基づき公知である。
【0004】
複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げるための公知の装置では、紡糸装置で複数の糸が平行に相並んで紡糸される。このためには、紡糸装置が複数の紡糸ノズルを有している。これらの紡糸ノズルを通して、糸のフィラメントが押し出される。冷却および延伸による処理後、多数の糸が2つの糸群に分割され、2つの巻上げ機に供給される。このためには、両巻上げ機が下床に階層状に互いに重なり合って配置されている。完全に巻き取られたパッケージの操作および搬出は、下床によって形成されたドッフィング平面から行われる。この場合、巻上げ機は互いにサイド同一に配置されており、これによって、下側の巻上げ機のパッケージと上側の巻上げ機のパッケージとを一方の機械長手方向サイドに向かって取り出すことができ、搬出することができる。
【0005】
このような形式の装置が多数相並んで配置された大型設備では、操作したい多数の巻上げ機と、実施したい複数回のパッケージ交換とによって、機械長手方向サイドに沿ったパッケージの搬出時の障害を回避することができないことが分かった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】米国特許第6210143号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
したがって、本発明の課題は、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げるための冒頭で述べた形式の装置を改良して、相並んで配置された多数の巻上げ機の場合ですら、パッケージの妨害されない搬出が可能となるようにすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題を解決するために本発明の第1の装置では、パッケージを搬出するための第2のドッフィング平面が設けられており、該ドッフィング平面が、下側の巻上げ機の上方のワインダプラットフォームによって形成されており、該ワインダプラットフォームが、上側の巻上げ機を支持しているようにした。
【0009】
本発明の第1の装置の有利な構成では、ワインダプラットフォームが、巻上げ機の側方に糸開口を有しており、該糸開口を通して、下側の巻上げ機に対応配置された糸が案内可能である。
【0010】
本発明の第1の装置の有利な構成では、上側の巻上げ機が、ワインダプラットフォームに、下床に設けられた下側の巻上げ機に対してサイドチェンジされて保持されているかまたはサイド同一に保持されている。
【0011】
本発明の第1の装置の有利な構成では、巻上げ機が、突出したそれぞれ2つの巻取りスピンドルを有しており、該巻取りスピンドルが、一方の端部で、回転可能な巻取りレボルバに保持されていて、反対の側に位置する端部で操作側に向けられており、両巻上げ機の操作側が、平行に一方の機械長手方向サイドに形成されている。
【0012】
本発明の第1の装置の有利な構成では、巻上げ機の操作側が、反対の側に位置する2つの機械長手方向サイドに対応配置されているように、巻上げ機が、重なり合って配置されている。
【0013】
本発明の第1の装置の有利な構成では、下床とワインダプラットフォームとにそれぞれ複数の巻上げ機が配置されており、該巻上げ機が、機械長手方向サイドに沿って平行に相並んで配置されている。
【0014】
本発明の第1の装置の有利な構成では、巻上げ機に巻取りスピンドルの自由端部の上方で、該巻取りスピンドルに対して横方向に方向付けられたそれぞれ少なくとも1つのゴデットローラが対応配置されており、該ゴデットローラによって、該当する糸群が、該当する巻上げ機に供給されるようになっている。
【0015】
本発明の第1の装置の有利な構成では、ゴデットローラが、引出しおよび延伸のためのそれぞれ1つの処理装置に対応配置されており、該処理装置が、巻上げ機の上面に配置されていて、操作可能である。
【0016】
本発明の第1の装置の有利な構成では、紡糸装置が、少なくとも1つの紡糸ビームを有しており、該紡糸ビームの下面に紡糸ノズルが保持されており、該紡糸ノズルを通して、糸が押出し可能である。
【0017】
本発明の第1の装置の有利な構成では、紡糸装置が、互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの紡糸ビームを有しており、該紡糸ビームの下面に2つのグループの紡糸ノズルが保持されており、該紡糸ノズルを通して、別個の2つの糸群が押出し可能である。
【0018】
さらに、前記課題を解決するために本発明の第2の装置では、上側の巻上げ機が、下側の巻上げ機に対してサイドチェンジされて保持されており、巻上げ機の両操作側に対するドッフィング平面の内部に、パッケージを搬出するためのそれぞれ1つのドッフィング通路が形成されているようにした。
【0019】
本発明の第2の装置の有利な構成では、巻上げ機が、突出したそれぞれ2つの巻取りスピンドルを有しており、該巻取りスピンドルが、一方の端部で、回転可能な巻取りレボルバに保持されていて、反対の側に位置する端部で操作側に向けられており、両巻上げ機の操作側が、反対の側に位置する2つの機械長手方向サイドに対応配置されている。
【0020】
本発明の第2の装置の有利な構成では、下床にそれぞれ複数の巻上げ機が配置されており、該巻上げ機が、両方の機械長手方向サイドに沿って平行に相並んで配置されている。
【発明の効果】
【0021】
本発明の課題の第1の解決手段は、パッケージを搬出するための第2のドッフィング平面が設けられており、このドッフィング平面が、下側の巻上げ機の上方のワインダプラットフォームによって形成されており、このワインダプラットフォームが、上側の巻上げ機を支持していることによって付与されている。これによって、巻上げ機に対するパッケージ交換とパッケージの搬出とをそれぞれ異なるドッフィング平面で実施することができる。下側の巻上げ機は下床から操作され、上側の巻上げ機はワインダプラットフォームから操作される。これによって、多数の巻上げ機の極めてコンパクトな配置ですら、上下の巻上げ機に対するパッケージ交換を互いに分離して実施することができ、これによって、その都度の衝突が回避される。本発明の別の顕著な利点は、階層状に重なり合って配置された巻上げ機によって達成される高い空間節約が有利に維持し続けられることにある。したがって、1つの建造物の内部で合成糸の製造時の最大の紡糸性能を得ることができる。
【0022】
下側の巻上げ機への糸の供給を保証するためには、ワインダプラットフォームが、巻上げ機の側方に糸開口を有しており、この糸開口を通して、下側の巻上げ機に対応配置された糸が案内可能である本発明の改良態様が提案されている。この場合、糸開口の位置は、巻上げ機の上方での選択された糸案内に応じて、上側の巻上げ機の側方に任意に形成可能である。
【0023】
したがって、巻上げ機の別個の配置によって、フレキシブルな高い配置可能性が得られる。この配置可能性は、特に上側の巻上げ機が、ワインダプラットフォームに、下床に設けられた下側の巻上げ機に対してサイドチェンジされて保持されているかまたはサイド同一に保持されている本発明の改良態様によって実現することができる。この場合、巻上げ機は軸方向に互いにずらされて保持されてもよいし、この軸方向に対して横方向に互いにずらされて保持されてもよい。したがって、紡糸装置からの引出し後の糸群の案内に対する高い自由度が得られる。
【0024】
糸群の連続的な巻上げのために、有利には、突出したそれぞれ2つの巻取りスピンドルを備えた巻上げ機が使用される。この場合、巻取りスピンドルは、一方の端部で、回転可能な巻取りレボルバに保持されていて、反対の側に位置する端部で操作側に向けられている。いまや、両巻上げ機の操作側は、一方の機械長手方向サイドに対応配置されているかまたは反対の側に位置する2つの機械長手方向サイドに対応配置されているように方向付けることができる。
【0025】
この場合、機械長手方向サイドに沿って、有利には複数の巻上げ機を平行に相並んで配置することができる。
【0026】
第1の巻上げ機の上方のワインダプラットフォームにもかかわらず、装置全体の可能な限りコンパクトな構造を獲得するために、有利には、巻取りスピンドルに対して横方向に方向付けられたゴデットローラが、巻取りスピンドルの自由端部の上方に対応配置されており、ゴデットローラによって、該当する糸群が、該当する巻上げ機に供給される本発明の改良態様が使用される。これによって、巻上げ機の個々の巻取り箇所への糸群の分配を、ほぼ水平に方向付けられた分配レベルから実施することができる。
【0027】
有利には、ゴデットローラが、引出しおよび延伸のための処理装置に対応配置されている。この処理装置は巻上げ機の上面に直接配置されている。
【0028】
巻上げ機に巻き上げられる糸群は、本発明の有利な改良態様によれば、それぞれ1つの紡糸ビームの紡糸ノズルを通して押し出すことができるかまたは互いに間隔を置いて配置された2つの紡糸ビームの紡糸ノズルを通して押し出すことができる。
【0029】
本発明の課題の第2の解決手段は、上側の巻上げ機が、下側の巻上げ機に対してサイドチェンジされて保持されており、巻上げ機の両側に対するドッフィング平面の内部に、パッケージを搬出するためのそれぞれ1つのドッフィング通路が形成されていることによって付与されている。この場合、巻上げ機に対する操作およびパッケージ交換は、互いに異なる2つのドッフィング通路から実施することができる。これによって、パッケージの搬出時の衝突が回避される。
【0030】
この場合にも、複数の巻上げ機を、反対の側に位置する2つの機械長手方向サイドに対して相並んで配置することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明による装置の第1の実施例の概略的な側面図である。
【図2】図1に示した実施例の概略的な正面図である。
【図3】本発明による装置の別の実施例の概略的な側面図である。
【図4】本発明による装置の別の実施例の概略的な側面図である。
【図5】図4に示した実施例の概略的な正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下に、発明を実施するための形態を図面につき詳しく説明する。
【0033】
図1および図2には、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージを形成するための本発明による装置の第1の実施例が概略的に複数の図で示してある。図1には、本実施例が側面図で示してあり、図2には、本実施例が正面図で示してある。この場合、図2には、複数の装置が相並んで示してある。これらの装置は、大型設備において一般的に機械長手方向サイドに対して配置されている。したがって、本発明による装置は1つの紡糸ステーションを形成しており、これによって、複数の糸が押し出され、冷却され、延伸され、巻き上げられて、パッケージが形成される。したがって、以下の説明は、まず、1つの紡糸ステーションに関し、両図面に当てはまる。
【0034】
本実施例は紡糸装置1を有している。この紡糸装置1は紡糸プラットフォーム11の上方に配置されている。紡糸装置1は、この実施例では、相並んで配置された2つの紡糸ビーム7.1,7.2を有している。両紡糸ビーム7.1,7.2はその下面に、一列に配置されたそれぞれ複数の紡糸ノズル6を支持している。図2から明らかであるように、たとえば4個の紡糸ノズル6が直列配置で示してある。図示の紡糸ノズル6の個数は例示的である。したがって、たとえば6個、8個、10個またはそれ以上の紡糸ノズル6が保持されてよく、これによって、たとえば12本、16本、20本またはそれ以上の糸が紡糸ステーションごとに押し出される。
【0035】
紡糸ビーム7.1,7.2は、それぞれ1つの溶融体流入通路8.1,8.2を有している。この溶融体流入通路8.1,8.2は、1つまたはそれ以上の溶融源、たとえばエクストルーダに接続されている。紡糸ビーム7.1,7.2の内部では、溶融体流入通路8.1,8.2が、それぞれ紡糸ポンプ(図示せず)と分配管路(図示せず)とを介して紡糸ノズル6に接続されている。
【0036】
この紡糸ノズル6はその下面に複数のノズル開口を有しており、これによって、紡糸ノズルに供給されたポリマ溶融体から成る多数のフィラメントが押し出される。この場合、1つの紡糸ノズル6のフィラメントストランドがそれぞれ集結させられて、1つの糸が形成される。このためには、紡糸ノズル6に、間隔を置いて冷却筒9.1,9.2の下方でそれぞれ集束糸ガイド14が対応配置されている。紡糸ビーム7.1,7.2の下方に形成された冷却筒9.1,9.2には、それぞれ1つの雰囲気発生器10.1,10.2が対応配置されており、これによって、たとえば冷却空気が発生させられる。この冷却空気は、フィラメントを冷却するために、冷却筒9.1,9.2内に案内される。
【0037】
紡糸ノズル6を通して押し出された糸群5.1,5.2を引き出すためには、紡糸装置1の下方に上側の巻上げ機2.2と下側の巻上げ機2.1とが配置されている。この下側の巻上げ機2.1は下床3に載着されていて、紡糸ビーム7.1に対応配置されており、これによって、糸群5.1が巻き取られて、パッケージが形成される。
【0038】
上側の巻上げ機2.2は、下側の巻上げ機2.1の上方のワインダプラットフォーム4に配置されている。上側の巻上げ機2.2は紡糸ビーム7.2に対応配置されており、これによって、糸群5.2が巻き上げらて、パッケージが形成される。
【0039】
巻上げ機2.1,2.2は同一に形成されている。この場合、各巻上げ機2.1,2.2は、突出した2つの巻取りスピンドル17.1,17.2を有している。両巻取りスピンドル17.1,17.2は一方の端部で巻取りレボルバ19に支承されていて、自由端部で操作側18.1,18.2に向けられている。巻取りスピンドル17.1,17.2には、糸が交互に平行に相並んで巻き取られて、パッケージ23が形成される。したがって、各巻上げ機2.1,2.2は全部で4つの巻取り箇所を有している。この場合、巻取り箇所の個数は、紡糸装置1から引き出された供給された糸の本数と同一である。供給のためには、巻上げ機2.1,2.2に設けられた各巻取り箇所にそれぞれ1つのヘッド糸ガイド20と綾振り装置21とが対応配置されている。この場合、パッケージ23に圧着ローラ26が対応配置されている。
【0040】
巻上げ機2.1,2.2は、この実施例では、サイドチェンジされて互いに重なり合って保持されており、これによって、巻上げ機2.1の操作側18.1が右側の機械長手方向サイドに割り当てられており、巻上げ機2.2の操作側18.2が左側の機械長手方向サイドに割り当てられている。したがって、巻上げ機2.1,2.2に対する操作とパッケージ変換とが、互いに反対の側に位置する機械長手方向サイドで実施される。この場合、下床3は、巻上げ機2.1の、巻き取られたパッケージを搬出するための第1のドッフィング平面を形成しており、ワインダプラットフォーム4は、巻上げ機2.2の、巻き取られたパッケージを搬出するための上側のドッフィング平面を形成している。
【0041】
糸群5.1を紡糸装置1から引き出すためには、巻上げ機2.1の上面に処理装置13.1が配置されている。この処理装置13.1は2つのゴデットローラ15.1,15.2を有している。両ゴデットローラ15.1,15.2には、糸群5.1が部分的に巻き掛けられている。この場合、ゴデットローラ15.2は巻上げ機2.1の巻取りスピンドル17.1,17.2に対して横方向に方向付けられており、これによって、糸群5.1が、主として、水平方向の分配レベルからヘッド糸ガイド20を介して巻上げ機2.1の巻取り箇所に供給される。
【0042】
紡糸装置1からの糸群5.1の供給は、紡糸プラットフォーム11に設けられた糸通過路12.1と、ワインダプラットフォーム4に設けられた糸開口16とを介して行われる。この糸開口16は上側の巻上げ機2.2のすぐ側方に形成されている。
【0043】
第2の糸群5.2は紡糸装置1から第2の処理装置13.2を介して引き出される。この第2の処理装置13.2は上側の巻上げ機2.2の上面に配置されている。処理装置13.2は処理装置13.1に対して同一に形成されており、これによって、糸群5.2がゴデットローラ15.2を介して巻上げ機2.2の巻取り箇所のヘッド糸ガイド20に案内される。この場合、糸群5.2の糸案内は、紡糸プラットフォーム11に設けられた第2の糸通過路12.2を通して行われる。
【0044】
図1および図2に示した実施例では、下側の巻上げ機2.1が下床3から操作され、これによって、パッケージ交換後、完全に巻き取られたパッケージが、下床3によって形成されたドッフィング平面で搬出される。この場合、操作は、図1に示したように、右側の機械長手方向サイドで行われる。
【0045】
巻上げ機2.2の操作は、反対の側に位置する機械長手方向サイドでワインダプラットフォーム4から行われる。この場合、巻上げ機2.2によって完全に巻き取られたパッケージが、ワインダプラットフォーム4によって形成された上側のドッフィング平面で直接搬出される。
【0046】
図2に示したように、機械長手方向サイドには、複数の紡糸ステーションが相並んで配置されている。図2には、たとえば3つの第1の紡糸ステーション22.1,22.2,22.3が示してある。各紡糸ステーション22.1〜22.3は同一に形成されており、これによって、多数の糸が平行に相並んで巻き取られて、パッケージを形成することができる。この場合、下側の巻上げ機2.1は全て下側のドッフィング平面から操作される。これに対して、上側の巻上げ機2.2によって巻き取られたパッケージのパッケージ搬出はワインダプラットフォーム4で行われる。
【0047】
巻上げ機2.1,2.2の、図1に示したオーバラップ配置によって、紡糸ビーム7.1,7.2を紡糸ステーションに極めてコンパクトに相並んで配置することができる。これによって、高い空間節約が可能となる。
【0048】
図3には、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げるための本発明による装置の別の実施例が示してある。図3には、この実施例が側面図で示してある。
【0049】
図3による実施例には、1つの紡糸ステーションが示してある。この紡糸ステーションは、紡糸装置1と、この紡糸装置1の下方に配置された2つの巻上げ機2.1,2.2とから形成されている。紡糸装置1は、この実施例では、紡糸ビーム7を有している。この紡糸ビーム7の下面には、複数の紡糸ノズル6が列状の配置で相並んで保持されている。図3には、ただ1つの紡糸ノズル6が示してある。紡糸ビーム7は溶融体流入通路8を介して溶融源(図示せず)に接続されている。加熱された紡糸ビーム7の内部には、さらに別の溶融体案内構成部材(図示せず)、たとえば紡糸ポンプおよび溶融体管路が設けられており、これによって、紡糸ビーム7の下面に設けられた紡糸ノズル6にポリマ溶融体が供給される。
【0050】
この実施例では、紡糸ノズル6は、ノズル開口を通して押し出されたフィラメントが2つのフィラメント束に分割されて、それぞれ2つの糸が形成されるように形成されている。このためには、紡糸ノズル6に2つの集束糸ガイド14.1,14.2が対応配置されている。紡糸ビーム7の下方には、冷却筒9と雰囲気発生器10とが配置されている。
【0051】
紡糸装置1は紡糸プラットフォーム11の上方に配置されている。この紡糸プラットフォーム11から、紡糸ノズル6の操作および保守が実施可能となる。
【0052】
紡糸プラットフォーム11の下方では、下側の巻上げ機2.1が下床3に配置されており、上側の巻上げ機2.2がワインダプラットフォーム4に配置されている。この場合、このワインダプラットフォーム4はやはり下側の巻上げ機2.1の上方に延びている。巻上げ機2.1,2.2は、図1および図2による前述した実施例に対して同一に形成されている。この場合、巻上げ機2.1,2.2は、この実施例では、互いにサイド同一に配置されている。したがって、操作側18.1,18.2が、それぞれ左側の機械長手方向サイドに向けられており、これによって、巻上げ機2.1,2.2の操作が一方の機械長手方向サイドで、互いに異なる2つの平面において行われる。
【0053】
糸群5.1,5.2を紡糸装置1から引き出すためには、巻上げ機2.1,2.2にその上面でそれぞれ再び1つの処理装置13.1,13.2が対応配置されている。各処理装置13.1,13.2は、それぞれ2つのゴデットローラ15.1,15.2を有している。両ゴデットローラ15.1,15.2には、糸群5.1,5.2がそれぞれ部分的に巻き掛けられている。この場合、処理装置13.1,13.2の機能は、本発明の前述した実施変化形態の処理装置に対して同一である。
【0054】
糸群5.1は下側の巻上げ機2.2に、紡糸プラットフォーム11に設けられた糸通過路12.1と、ワインダプラットフォーム4に設けられた糸開口16とを通して供給される。第2の糸群5.2は糸通過路12.2を介して巻上げ機2.2に達する。
【0055】
図3による実施例の機能および操作は、図1および図2による実施例に対して同一であり、これによって、前述した説明が参照される。図3に示した装置部分は1つの紡糸ステーションに相当しており、これによって、大型設備には、このような形式の多数のアッセンブリが相並んで保持されている。この場合にも、パッケージが、分離された2つのドッフィング平面で巻上げ機2.1,2.2から取り出され、搬出される。
【0056】
図4および図5には、本発明による装置の別の実施例が示してある。この場合、ただ1つの紡糸ステーションが、それぞれ側面図および平面図で示してある。
【0057】
図4および図5に示した実施例では、1つの紡糸装置1と、1つの処理装置13と、2つの巻上げ機2.1,2.2とが、鉛直な配置で互いに重なり合って保持されている。紡糸装置1は、図3に示した紡糸装置に対して同一であり、これによって、各紡糸ノズル6から、それぞれ2つの糸が紡出される。紡糸装置1は紡糸プラットフォーム11の上方に配置されている。
【0058】
下側の巻上げ機2.1と、上側の巻上げ機2.2と、処理装置13とは、下床3に載着されている。この場合、巻上げ機2.1,2.2は機枠25内に互いにサイドチェンジされて配置されており、これによって、下側の巻上げ機2.1の操作側18.1が右側の機械長手方向サイドに向けられており、上側の巻上げ機2.2の操作側18.2が左側の機械長手方向サイドに向けられている。両操作側18.1,18.2に対して、それぞれ1つのドッフィング通路24.1,24.2が形成されている。この場合、このドッフィング通路24.1,24.2は、複数の紡糸ステーションの相互並列によって形成された設備全体の機械長手方向サイドに対して平行に延びている。巻上げ機2.1,2.2に対する操作およびパッケージ交換は、この事例では、下床3によって形成された下側のドッフィング平面から実施される。この場合、巻上げ機2.1によって巻き取られたパッケージがドッフィング通路24.1に搬出される。これに対して、巻上げ機2.2によって巻き取られたパッケージは、反対の側に位置するドッフィング通路24.2に搬出される。
【0059】
両糸群5.1,5.2の案内および処理のためには、処理装置13が設けられている。この処理装置13は上側の巻上げ機2.1の上方に配置されている。このためには、処理装置13が2つのゴデットローラ15.1,15.2を有している。両ゴデットローラ15.1,15.2には、両糸群5.1,5.2が部分的に巻き掛けられている。ゴデットローラ15.1,15.2は巻上げ機2.1,2.2の巻取り箇所の上方に対称的に配置されており、これによって、糸群5.1,5.2の分配が、ほぼ鉛直方向の分配レベルから行われる。
【0060】
図1〜図5に示した実施例では、紡糸装置、処理装置ならびに巻上げ機の構成は例示的である。基本的には、図示の装置部材が択一的な装置部材によって置き換えられてよく、これによって、たとえば別の糸タイプが製造される。ただし、この場合、互いに重なり合って配置された巻上げ機に対する完全に巻き取られたパッケージのパッケージ交換と搬出とが、分離されたドッフィング平面または分離されたドッフィング通路から行われることが重要となる。
【符号の説明】
【0061】
1 紡糸装置
2.1,2.2 巻上げ機
3 下床
4 ワインダプラットフォーム
5.1,5.2 糸群
6 紡糸ノズル
7,7.1,7.2 紡糸ビーム
8,8.1,8.2 溶融体流入通路
9,9.1,9.2 冷却筒
10,10.1,10.2 雰囲気発生器
11 紡糸プラットフォーム
12.1,12.2 糸通過路
13.1,13.2 処理装置
14,14.1,14.2 集束糸ガイド
15.1,15.2 ゴデットローラ
16 糸開口
17.1,17.2 巻取りスピンドル
18.1,18.2 操作側
19 巻取りレボルバ
20 ヘッド糸ガイド
21 綾振り装置
22.1,22.2,22.3 紡糸ステーション
23 パッケージ
24.1,24.2 ドッフィング通路
25 機枠
26 圧着ローラ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージを形成するための装置であって、紡糸装置(1)が設けられており、該紡糸装置(1)が、糸を押し出すための複数の紡糸ノズル(6)を有しており、階層状に重なり合って配置された少なくとも2つの巻上げ機(2.1,2.2)が設けられており、該巻上げ機(2.1,2.2)が、糸を、分離された2つの糸群(5.1,5.2)で巻き上げるようになっており、巻上げ機(2.1,2.2)に、下床(3)によって形成された、パッケージ(23)を搬出するためのドッフィング平面が対応配置されている形式のものにおいて、
パッケージ(23)を搬出するための第2のドッフィング平面が設けられており、該ドッフィング平面が、下側の巻上げ機(2.1)の上方のワインダプラットフォーム(4)によって形成されており、該ワインダプラットフォーム(4)が、上側の巻上げ機(2.2)を支持していることを特徴とする、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージを形成するための装置。
【請求項2】
ワインダプラットフォーム(4)が、巻上げ機(2.2)の側方に糸開口(16)を有しており、該糸開口(16)を通して、下側の巻上げ機(2.1)に対応配置された糸が案内可能である、請求項1記載の装置。
【請求項3】
上側の巻上げ機(2.2)が、ワインダプラットフォーム(4)に、下床(3)に設けられた下側の巻上げ機(2.1)に対してサイドチェンジされて保持されているかまたはサイド同一に保持されている、請求項1または2記載の装置。
【請求項4】
巻上げ機(2.1,2.2)が、突出したそれぞれ2つの巻取りスピンドル(17.1,17.2)を有しており、該巻取りスピンドル(17.1,17.2)が、一方の端部で、回転可能な巻取りレボルバ(19)に保持されていて、反対の側に位置する端部で操作側(18.1,18.2)に向けられており、両巻上げ機(2.1,2.2)の操作側(18.1,18.2)が、平行に一方の機械長手方向サイドに形成されている、請求項3記載の装置。
【請求項5】
巻上げ機(2.1,2.2)の操作側(18.1,18.2)が、反対の側に位置する2つの機械長手方向サイドに対応配置されているように、巻上げ機(2.1,2.2)が、重なり合って配置されている、請求項3記載の装置。
【請求項6】
下床(3)とワインダプラットフォーム(4)とにそれぞれ複数の巻上げ機(2.1,2.2)が配置されており、該巻上げ機(2.1,2.2)が、機械長手方向サイドに沿って平行に相並んで配置されている、請求項4または5記載の装置。
【請求項7】
巻上げ機(2.1,2.2)に巻取りスピンドル(17.1,17.2)の自由端部の上方で、該巻取りスピンドル(17.1,17.2)に対して横方向に方向付けられたそれぞれ少なくとも1つのゴデットローラ(15.2)が対応配置されており、該ゴデットローラ(15.2)によって、該当する糸群(5.1,5.2)が、該当する巻上げ機(2.1,2.2)に供給されるようになっている、請求項4から6までのいずれか1項記載の装置。
【請求項8】
ゴデットローラ(15.2)が、引出しおよび延伸のためのそれぞれ1つの処理装置(13.1,13.2)に対応配置されており、該処理装置(13.1,13.2)が、巻上げ機(2.1,2.2)の上面に配置されていて、操作可能である、請求項7記載の装置。
【請求項9】
紡糸装置(1)が、少なくとも1つの紡糸ビーム(7)を有しており、該紡糸ビーム(7)の下面に紡糸ノズル(6)が保持されており、該紡糸ノズル(6)を通して、糸が押出し可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項10】
紡糸装置(1)が、互いに間隔を置いて配置された少なくとも2つの紡糸ビーム(7.1,7.2)を有しており、該紡糸ビーム(7.1,7.2)の下面に2つのグループの紡糸ノズル(6)が保持されており、該紡糸ノズル(6)を通して、別個の2つの糸群が押出し可能である、請求項1から8までのいずれか1項記載の装置。
【請求項11】
複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージ(23)を形成するための装置であって、紡糸装置(1)が設けられており、該紡糸装置(1)が、糸を押し出すための複数の紡糸ノズル(6)を有しており、下床(3)に階層状に重なり合って配置された少なくとも2つの巻上げ機(2.1,2.2)が設けられており、該巻上げ機(2.1,2.2)が、糸を、分離された2つの糸群(5.1,5.2)で巻き上げるようになっており、巻上げ機(2.1,2.2)に、下床(3)によって形成された、パッケージ(23)を搬出するためのドッフィング平面が対応配置されている形式のものにおいて、
上側の巻上げ機(2.2)が、下側の巻上げ機(2.1)に対してサイドチェンジされて保持されており、巻上げ機(2.1,2.2)の両操作側(18.1,18.2)に対するドッフィング平面の内部に、パッケージを搬出するためのそれぞれ1つのドッフィング通路(24.1,24.2)が形成されていることを特徴とする、複数の糸を溶融紡糸しかつ巻き上げて、複数のパッケージを形成するための装置。
【請求項12】
巻上げ機(2.1,2.2)が、突出したそれぞれ2つの巻取りスピンドル(17.1,17.2)を有しており、該巻取りスピンドル(17.1,17.2)が、一方の端部で、回転可能な巻取りレボルバ(19)に保持されていて、反対の側に位置する端部で操作側(18.1,18.2)に向けられており、両巻上げ機(2.1,2.2)の操作側(18.1,18.2)が、反対の側に位置する2つの機械長手方向サイドに対応配置されている、請求項11記載の装置。
【請求項13】
下床(3)にそれぞれ複数の巻上げ機(2.1,2.2)が配置されており、該巻上げ機(2.1,2.2)が、両方の機械長手方向サイドに沿って平行に相並んで配置されている、請求項11または12記載の装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−222767(P2010−222767A)
【公開日】平成22年10月7日(2010.10.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−122213(P2009−122213)
【出願日】平成21年5月20日(2009.5.20)
【出願人】(307031976)エーリコン テクスティル ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング ウント コンパニー コマンディートゲゼルシャフト (105)
【氏名又は名称原語表記】Oerlikon Textile GmbH & CO. KG
【住所又は居所原語表記】Leverkuser Strasse 65, D−42897 Remscheid, Germany
【Fターム(参考)】