複数の肺の位置に応じて患者の肺を換気する人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する方法及び装置
【課題】
【解決手段】 本発明は、複数の肺の位置によって患者の人工的に換気された肺を換気する人工換気器の少なくとも一の換気圧力を制御する方法及び装置に関する。運動回転療法の潜在能力を改善するために、少なくとも一の換気圧力を規定された肺の位置によって、及びこの規定された肺位置に関連する肺の状態の情報によって制御する。
【解決手段】 本発明は、複数の肺の位置によって患者の人工的に換気された肺を換気する人工換気器の少なくとも一の換気圧力を制御する方法及び装置に関する。運動回転療法の潜在能力を改善するために、少なくとも一の換気圧力を規定された肺の位置によって、及びこの規定された肺位置に関連する肺の状態の情報によって制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺の状態を記録するための方法及び装置、及び、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺を換気するための人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する方法及び装置に関する。更に、本発明は患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する方法及び装置に関する。本発明を実行するためには、患者が看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が、位置アクチュエータによって移動可能あるいは変更可能であることが想定されている。このような看護用ベッドの例は、縦軸を中心にしてある回転角度だけ回転可能な回転ベッドである。
【0002】
急性肺疾患、急性肺損傷(acute lung injury:ALI)、及び急性呼吸障害症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の治療は、いまだに、集中治療室に入っている重症患者の治療の重大な問題の一つである。過去20年にわたる集中的な研究にもかかわらず、不十分な呼吸に関する消極的な結果が、患者の短期及び長期の双方の結果に影響している。様々な換気戦略が、酸素化の異常を処理し、換気器が引き起こす肺の損傷から肺を保護するように設計されている一方で、更なる治療オプションが評価されている。
【0003】
動的な身体の位置決め(運動療法または軸回転療法)は、1974年にBryanによって最初に述べられた。この技術は、肺拡張不全を開通させ、肺機能、特に、ALIやARDSの患者の動脈酸素化を改善するものとして知られている。運動回転療法は、非侵襲的であり、比較的安価な方法であるため、全身の健康状態あるいはひどい損傷を、肺の障害およびARDSに対して前もって処理しておく患者にむしろ予防的に用いられている。肺炎や肺疾患の合併症の発生率を低減できる一方、運動回転療法を換気治療の一環として初期に開始する場合に、生存率が高くなることを示すことができた。この治療的アプローチは、機械的換気(すなわち、気管内圧力および一回換気量)の侵襲性と、機械的換気の時間と、集中治療室に入る長さを低減することができる。
【0004】
本発明の意味における運動回転療法は、特別仕様の回転ベッドを用いて適用される。このベッドは、所定の期間あらゆる所望の角度で、連続または停止する断続モードで使用することができる。換気不全における軸回転の一般的な効果は、気管支内の液(粘液)と、下側(依存性)肺領域から上側(非依存性)肺領域の間質液の双方の再配分と流動化である。これらは、最終的に、局所換気と灌流のマッチングを改善するであろう。その結果、酸素化が増えて、内部肺疾患シャントが低減する。胸郭からのリンパの流れが、患者が回転することによって強化される。更に、運動回転療法が、すでに衰弱した肺領域の回復を促進するので、同じかあるいはむしろ低い気管内圧力で肺拡張不全の量が低減する。依存性肺ゾーン内のうつ伏せになってつぶれた肺胞を繰り返し開閉することによって、通常生じるせん断応力から今開いている肺領域が保護される。
【0005】
H.C. Page, et al.:”Is early kinetic positioning beneficial for pulmonary function in multiple trauma patients?”, Injury, Vol. 29, No. 3, pp. 219-225, 1998から、回転ベッド上の患者の連続的な軸回転を含む運動回転療法の使用は公知である。運動回転療法は、肺機能に欠陥があり、後天的外傷性肺機能不全と成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の酸素化を改善することがわかっている。
【0006】
しかしながら、運動回転療法は、特別に設計された回転ベッドを必要とするので、運動回転療法を広く使用できることはいまだ見出されていなかった。更に、運動回転療法は、標準化された治療パラメータ、典型的には、一方の側へ45°以上から、他方へ45°以上、同じように回転させて、15分のサイクル時間で使用されていた。これらの回転パラメータは、換気効力と回転運動情報が結合していないため、実際には、まれに、変わることがあった。同様に、結合情報の欠落は、回転させた患者の治療に用いる機械的換気パラメータの強さを低減することによって、現場の人間が運動回転療法の効果の利点を得ることを阻害する。
【0007】
本発明の目的は、運動回転療法の発展可能性を改善することである。
【0008】
この目的は、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺の状態を記録するための記録方法による第1の発明ソリューションによって解決する。この方法では、患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺が位置アクチュエータによって移動可能であり:
a)人工的に換気された肺を位置アクチュエータによって規定された肺位置に移動するステップと、
b)人工的に換気された肺の状態を決定するステップと、及び
c)この人工的に換気された肺の状態を前記規定された肺位置に応じて記録するステップと、
を具える。
【0009】
複数の肺の位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の状態を記録する第1の発明ソリューションによる、対応する記録装置は、以下の特徴:
a)規定された肺位置に人工的に換気された肺を移動させる位置アクチュエータと、
b)前記人工的に換気された肺の状態を決定する決定手段と、及び
c)前記規定された肺位置に応じて前記人工的に換気された肺の状態を記録する記録手段と、
を具える。
【0010】
第1の発明ソリューションは、人工的に換気された肺の肺位置の変更は、人工的に換気された肺の状態も変えるという認識に基づいている。従って、規定された肺位置に応じて人工的に換気された肺の状態の再現可能な記録が実行され、これは、その他の手段による目的の有る肺の治療を可能とする。
【0011】
更に、この目的は、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺を換気するための人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する制御方法による第2の発明ソリューションによって解決される。この方法では、患者は、看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置は、位置アクチュエータによって移動可能であり:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得るステップと、
b)位置アクチュエータによって人工的に換気された肺を規定された肺位置へ移動させるステップと、及び
c)前記規定された肺位置に応じて、及び前記規定された肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気パラメータを制御するステップと、
を具える。
【0012】
複数の肺の位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺を換気するための人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する第2の発明ソリューションによる、対応する制御装置は:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された肺の第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得る手段と、
b)人工的に換気された肺を規定された肺位置へ移動させる位置アクチュエータと、及び
c)前記規定された肺位置に応じて、および前記規定された肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気パラメータを制御する手段と、
を具える。
【0013】
第2の発明ソリューションは、人工的に換気された肺の肺位置変更は、また、人工的に換気された肺の状態を変化させ、これは最適化した換気に使用することができるとの認識に基づいている。これによって、すでに知られている運動回転療法を支持することができる。特に、第2の発明ソリューションによる最適化した換気は、回転療法の間にトップ位置にある肺にかかる、重なった圧力を開放するという事実を考慮している。例えば、回転する間に少なくとも一の換気圧力の最適条件に達するために、少なくとも人工的に換気された肺の第2の状態が決定され、すでに決定されている人工的に換気された肺の第1の状態と比較される。ここで、少なくとも一の換気圧力は、人工的に換気された肺の第1の状態と第2の状態間の差によって制御される。
【0014】
更に、この目的は、患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する位置決め方法による第3の発明ソリューションによって解決される。この方法において、患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置は、対応する位置アクチュエータによって変更可能であり:
a)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供するステップと、
b)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御するステップと、
を具える。
【0015】
看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する第3の発明ソリューションによる対応する位置決め装置は:
a)人工的に換気された肺の位置を変更する位置アクチュエータと、
b)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供する手段と、
c)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御する手段と、
を具える。
【0016】
第3の発明ソリューションは、制御信号のパラメータが位置アクチュエータを制御し、これによって、肺位置が運動回転療法の成功にも影響するとの認識に基づいている。重要なパラメータは、回転周期、あるいは、肺位置が一の方向に移動した後、開始位置に戻る時間周期である移動周期である。第3の発明ソリューションの更なる認識は、運動回転療法の成功は、この回転周期及び/又は回転振幅が固定されておらず、予め決められた平均回転周期あたりで統計的に変化するのであれば、改善することができることである。
【0017】
第1の発明ソリューションと、第2の発明ソリューションと、第3の発明ソリューションは、互いに組み合わせることができる。以下に述べる好ましい態様は、各発明ソリューションに適用することができる。
【0018】
一の態様によれば、看護ベッドは、縦軸を中心に回転可能であり、位置アクチュエータは、縦軸を中心に看護ベッドを回転させるモータである。代替的に、位置アクチュエータが、患者の下においたエアクッションまたは液体クッションを具えていても良い。
【0019】
更なる態様によれば、規定された肺位置は、位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって達成される。代替的に、規定された肺の位置は、実際の肺の位置を測定する位置センサのフィードバック信号によって達成することもできる。
【0020】
更なる態様によれば、人工的に換気された肺の状態は、あるいは肺の形態学及び/又は肺機能についての局所的または全体的な情報である。
【0021】
局所的な情報は、肺の一部の特別な治療を可能とし、電気インピーダンス断層撮影(EIT)や、コンピュータ断層撮影(CT)などの撮像方法によって実現することができる。肺の全体的な情報は、例えば、ガス交換法などによってより容易に得ることができるが、単に肺全体の動作を測定するだけである。
【0022】
肺形態学は、例えば、生体構造とその奇形など、肺の構造的特徴が考えられるが、肺機能は、肺の機械的動作と共に、換気や血流などの動的な動きを意味する。
【0023】
好ましい態様によれば、人工的に換気された肺の状態は、肺の全体的なガス交換に対する機能性の測定である。全体的なガス交換を決定する多数の方法及び装置があり、そのうちのいくつかを以下に述べる。
【0024】
肺の状態は、一回の呼吸において吐き出したガスの二酸化炭素濃度に基づいて決めることができる。このような方法と装置は、2004年3月26日に出願された、先行する欧州特許出願「Non-Invasive Method and Apparatus for Optimizing the Respiration for Atelectatic Lungs」から知られている。この出願は、ここに引用として含まれている。
【0025】
さらに、肺の状態は、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)に基づいて決めることができる。これは、飽和センサを用いて実行することができる。有利なことに、フィードバック制御ループが、人工的な換気器において、吸息性酸素留分(FiO2)を制御して、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)が一定に保たれるようにし、データプロセッサが制御された吸息性酸素留分(FiO2)の経過から、気管内圧力が変化する間に、決定する。この気管内圧力レベルは、肺の肺胞の開または閉に対応している。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0026】
更に肺の状態は、単位時間当たりに吐き出されるCO2量に基づいて決定することができる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0027】
更に肺の状態は、呼気終末二酸化炭素濃度に基づいて決めることができる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0028】
更に、肺の状態は、酸素paO2の動脈中の部分的な圧力に基づいて決めることができる。このような方法と装置は、ここに引用している、S. Leonhardt et al.: “Optimierung der Beatmung beim akuten Lungenversagen durch Identifikation physiologischer Kenngroessen”, at 11/98, pp. 532-539, 1998から公知である。
【0029】
更なる態様によれば、肺の状態は、肺のコンプライアンスに基づいて決めることができる。ここで、コンプライアンスとは、最高気道内圧と、終末呼気陽圧間の圧力差(PIP(peak inspiratory pressure)−PEEP(positive end-expiratory pressure))によって分割された一回換気量によって規定することができる。コンプライアンスの定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0030】
更なる態様によれば、肺の状態は、吸気及び/又は呼気動的気管支抵抗に基づいて決めることができる。ここで、これらの抵抗は、呼吸ガスフロー(cmH2O/1/s)で割った駆動圧力差として規定することができる。この抵抗の定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0031】
更なる態様によれば、決定された肺の状態は、肺胞のデッドスペースの変更に敏感である。この目的は、終末呼気陽圧(PEEP)と最高気道内圧(PIP)の好適な調整によって肺胞のデッドスペースの変化を補填することである。人工的に換気した肺の肺胞のデッドスペースの変化を決定する様々な方法と装置が知られており、これらは別個に、あるいは互いに組み合わせて用いることができる。
【0032】
更なる態様によれば、肺の状態は、電気インピーダンス断層撮影データに基づいて決められる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/33733A1およびWO01/93760A1から公知である。
【0033】
更に、ガス交換効果と血行力学効果測定の双方を組合わせることができる、肺機能の評価のための様々なその他の公知の臨床的方法及び装置を使用して、人工的に換気された肺の状態を決定することができる。これらのいくつかは、肺シャント留分、酸素抽出率、血管外肺水分、肺血管抵抗及びコンプライアンス、その他を含む。
【0034】
更に、肺の回復の評価の多くのその他の公知の臨床方法及び装置と、機械的機能を用いて、人工的に換気された肺の状態を決定することができる。これらは、呼気および吸気圧力−体積カーブの上側および下側の屈曲点、最大圧力−体積コンプライアンス点(Pmax)、及びその他を含む。
【0035】
更なる態様によれば、人工的に換気された肺の決定された状態は、対応する規定された肺の位置に応じてコンピュータによって記録される。好ましくは、この記録データが、スクリーン上に表示される。
【0036】
第1の発明ソリューションによる記録方法及び記録装置を用いて、第2の発明ソリューションによる制御方法及び制御装置について、および第3の発明ソリューションについての位置決め方法及び位置決め装置についての肺状態情報を提供することができる。
【0037】
一の態様によれば、予め決められた差動ステップサイズが繰り返して位置アクチュエータに適用され、このような人工的に換気された肺の状態の支持ポイントが予め決められた肺位置の範囲を超えて決定されるまで、各差動ステップサイズの後に、人工的に換気された肺の状態の支持ポイントを得ることができる。
【0038】
支持ポイントの解像度を上げるために、支持ポイント間で、二つの隣り合う支持ポイント間の差に応じて肺の状態情報に手を加えることができる。二つの支持ポイント以外に基づく、その他の間挿方法を使用するようにしても良い。例えば、最小二乗法などであり、これによって、予め決められた肺位置の範囲を超えて肺状態情報の安定カーブを得ることができる。
【0039】
このようにして得た肺状態情報を用いて、人工的に換気された肺の少なくとも一の換気パラメータを、第2の発明ソリューションによる肺位置の予め決められた範囲を超えて最適化することができる。好ましくは、少なくとも一の換気パラメータは、肺状態情報が、肺位置の予め決められた範囲を超えて均一な分布となるように制御される。これによって、予め決められた肺位置の範囲を超えた肺状態情報の偏差を、対応する肺位置に応じた適宜の換気パラメータを適用することで、同じレベルにすることができる。代替的に、安定カーブから単一の換気パラメータ値を決定して、肺位置の範囲にわたる肺状態情報によって決定された最大肺機能を保証することができる。
【0040】
更なる態様によれば、決定した肺胞のデッドスペースの変化が、人工的に換気された肺の肺状態情報の二つの支持ポイント間の差に応じて補償するように少なくとも一の換気パラメータを制御することができる。この目的のために、一方で肺胞のデッドスペース間の関係を、他方で、最高気道内圧(PIP)と終末呼気陽圧(PEEP)の影響を示す対応する肺についての特性カーブを記録することができる。この特性カーブに基づいて、最高気道内圧(PIP)及び/又は終末呼気陽圧(PEEP)を、肺胞のデッドスペースのあらゆる変化を補償するために決定することができる。更に、特性カーブによる回転角度を考慮するために、肺胞デッドスペースの状態、対、PIP及び/又はPEEPを、複数の肺位置について決定する。
【0041】
このようにして得た肺状態情報は、第3の発明ソリューションによって、人工的に換気された肺の位置の制御された変化を最適化するのに使用することができる。第3の発明ソリューションによれば、複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布が提供されなければならない。このことは、第1の肺位置に応じた人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置に応じた人工的に換気された肺の第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報に基づいて、自動的に行われる。例えば、特定の肺状態情報を、特定の位置周期と、特定の位置振幅有する位置アクチュエータ用の対応する制御信号に割り当てるルックアップテーブルを設けることができる。これによって、位置アクチュエータ用の制御信号は、位置周期及び/又は振幅の分布を、時間が経つと産出する肺位置の予め決められた範囲を超える、複数のカーブ片でできている。
【0042】
代替的に、この分布は、予め決められた分布を提供する所定の周期的な制御信号セットに基づいて、ユーザインターフェースを介して編集することができる。
【0043】
代替的に、この分布は、事前にあるいはオンラインで自動的に編集することができ、公知の見込みの有る分布を追う、あるいは生物的変化を追従することができる。例えば、人間の心拍は、特徴の有る生物的変化を追従している。この変化は、縮尺して、上述の目的に合うようにすることができる。
【0044】
本発明のその他の目的と特徴は、以下の明細書を参照して明らかになるであろう。
【0045】
図1は、本発明に係る看護用ベッドの一例を示す図である。看護用ベッド101は、矢印102で示すように、その縦軸を中心に回転できるように装着されている。回転角度は、位置アクチュエータ103によって変更可能であり、このアクチュエータは制御ユニット104によって制御される。
【0046】
患者105は、看護用ベッド101の上に固定され、換気器106によって人工的に換気される。位置アクチュエータ103は、制御ユニット104によって、患者がターンして人工的に換気された肺を規定の肺位置にするように、制御ユニット104によって制御することができる。肺の位置は、肺の回転角度を意味し、患者がベッドの上に水平に寝ており、ベッド自体が水平に位置している場合は0°である。肺の位置の測定は、患者の胸部に取り付けられ、制御ユニット104に接続されている、持ち運び可能な位置センサを用いて行うことができる。図1に示す看護用ベッド101は、また、看護用ベッド101の回転角度の測定を介して、患者の肺の回転角度を決定することもできる。
【0047】
人工的に換気された肺の状態は、好適な測定デバイス107を用いて様々な方法で決定することができる。測定デバイス107は、例えば、気道内圧、呼気ガスの成分、人工的な換気器から得られた、肺の状態を決定するための吸気及び呼気ガスの体積、などのデータを使用することができる。肺の状態を決定するための測定は、連続的に実行することもできるし、規定された肺位置において散発的に実行することもできる。肺の状態を決定する方法の例は以下の通りである:
− 肺の状態は、一回の呼吸における呼気ガスのCO2濃度に基づいて決定される。このような方法と装置は、2004年3月26日に出願された、先行する欧州特許出願「Non-Invasive Method and Apparatus for Optimizing the Respiration for Atelectatic Lungs」から知られている。この出願は、ここに引用として含まれている。
− 肺の状態は、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)に基づいて決定される。これは、飽和センサを用いて実行することができる。有利なことに、フィードバック制御ループが、人工的な換気器において、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)が一定に保たれるように吸息性酸素留分(FiO2)を制御し、データプロセッサが制御された吸息性酸素留分(FiO2)の経過から、気管内圧が変化する間に、決定する。この気管内圧力レベルは、肺の肺胞の開または閉に対応している。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、単位時間当たりに吐き出されるCO2量に基づいて決定される。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、呼気終末二酸化炭素濃度に基づいて決定される。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、酸素paO2の動脈中の部分的な圧力に基づいて決定される。このような方法と装置は、ここに引用している、S. Leonhardt et al.: “Optimierung der Beatmung beim akuten Lungenversagen durch Identifikation physiologischer Kenngroessen”, at 11/98, pp. 532-539, 1998から公知である。
− 肺の状態は、肺のコンプライアンスに基づいて決定される。ここで、コンプライアンスとは、最高気道内圧と、終末呼気陽圧間の圧力差(PIP−PEEP)によって分割された一回換気量によって規定することができる。コンプライアンスの定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、吸気及び/又は呼気動的気管支抵抗に基づいて決定される。ここで、これらの抵抗は、呼吸ガスフロー(cmH2O/1/s)で割った駆動圧力差として規定することができる。この抵抗の定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、電気インピーダンス断層撮影データに基づいて決められる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/33733A1およびWO01/93760A1から公知である。
【0048】
以下において、患者の治療の一例を述べる。これは、後に、図2−12によってより詳細に説明する。
【0049】
肺胞回復動作
回転角度0°で、PEEPを予想の肺胞閉鎖圧力(肺の疾患に応じて、15と25cmH2Oの間である)より上に調整する。PIPは、PEEPより十分高く設定され、確実に適宜の換気を行う。
【0050】
回転が開始する。各肺は別々に、上側位置に移動する間に開く。
【0051】
回転角度を上げると、最大回転角度に達する前の5−20呼吸でPIPが段階的に増え始める。PIPは、最大回転角度で最大値(肺の疾患に応じて、45と65cmH2Oの間である)に達する。
【0052】
最大回転角度を超えると、PIPが5−20呼吸以内に下がり始める。
【0053】
上述の方法で各肺が別個に回復した(患者を両側に回転させることによって)後、各肺についてPIPが別個に調整され、適宜の換気を維持する。
【0054】
閉じているPEEPを見つけるためのPEEPタイトレーション
肺胞回復動作の後、回転角度が上がるにつれてPEEPが連続的に下がる。人工的に換気された肺の状態は、連続的に記録される。
【0055】
回転角度0°で所定のPEEPを開始すると、PEEPが下がり、最大回転角度でPEEPが1−2cmH20だけ低下する(過程1)。上記信号のいずれにも肺胞がつぶれる兆候が生じなければ、PEEPのレベルが記録され、0°の時の以前の設定へ連続的に上がる。患者を反対側にターンさせると、PEEPが同じように低下する(過程2)。上記信号のいずれにも肺胞がつぶれる兆候が生じなければ、PEEPのレベルはこの値に維持され、患者は0°に戻る。
【0056】
回転角度0°で、つぶれが存在しなければ、肺胞がつぶれる兆候がおきるまで、下がったPEEPレベルで、過程1と2を実行する。次いで、各側について、このつぶれが生じるPEEPのレベルが記録される。PEEPは、患者が0°の位置に戻る間に、0°のときの以前の設定へ連続的に上昇するであろう。肺のヒステリシス動作によって肺のつぶれの兆候がまだ存在する場合は、肺胞回復動作をこの段階で実行して、上述したように肺を再度広げる。
【0057】
開放した肺の状態を続けながら、肺のつぶれが生じた側についてPEEPを公知の閉鎖圧力の上2cmH20に設定する。
【0058】
その後、上述したようにPEEPを下げ、患者を閉鎖圧力がわかっていない反対側にターンさせる。こちら側についてもつぶれが生じたら、PEEPを記録して、肺を再度開放する。
【0059】
回転の間の換気パラメータの制御
各側についてPEEPつぶれ圧力を決定した後に、進行中の回転を伴ってPEEPを連続的に調整し、各側について必要なレベル以下にPEEPが決して落ちないことを確実にする。
【0060】
PEEPとコンプライアンスは、回転角度と共に変化することがあるので、調整が必要である。従って、回転療法の間に、患者を十分に換気して、1回換気量を所望の範囲である6−10ml/kg体重内に維持しながら、人工的に換気された肺の第1の状態と第2の状態の差に応じて、PIPレベルを呼吸から呼吸へと連続的に調整する。
【0061】
更に、PIP圧力がすでに非常に低い値にある場合は、PIPを一定にして、呼吸レート(RR)を調整することによってコンプライアンスの変化を調整することが進言されるであろう。次いで、PIPを一定に保ったまま、患者を十分に換気するために、RRが呼吸から呼吸へと連続的に調整される。
【0062】
回転周期の変動が、運動回転療法の効果を更に改善することが示されている。例えば、以下の変動モードを適用することができる:
− 回転角度、速度、および停止期間についての最小及び最大値を設定した、数分から数時間の波長のサイン波変動
− 数分から数時間のランプ周期を伴う所定の境界内のランプ状の変動、および回転角度、速度、および停止期間についての最小及び最大値の設定
− 例えば、選択した平均値の0%から100%の間の、均一な確率分布から、このパラメータの大きさの平均シーケンスの50%から200%の振幅を有する単一の変動レベル(すなわち、生物学上の変動)における所定の平均値周辺のランダムな変動
− 変動は、可能な最小から最大の全範囲をカバーする技術的アプローチによって決定することができる
− 回転パラメータの分布は、ガウス分布または生物学的分布である。
【0063】
回転周期に加えて、回転角度、回転速度、及び停止周期が可変である。可変回転角度、速度および停止時間を調整するために、一定であることが必要な、角度と停止期間、その他の平均積を規定することができる。例えば:
− 回転角度が所定の回転角度周辺でランダムに変化する一方、停止期間を調整して、所定の回転速度で、角度と時間の積をほぼ一定に維持する。
− 回転角度が所定の回転角度周辺でランダムに変化する一方、回転速度を調整して、角度と時間の積をほぼ一定に維持する一方で、停止期間は適用されない。
【0064】
図2は、初期位置を表す水平位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す図である。この図には、仰向けになった位置で寝ている患者201が描かれている。医療用撮像において規定されているように、患者を足から見ており、従って、右肺(R)が図2の左手側にあり、左肺(L)が図2の右手側にある。一方、心臓(H)は、中央に位置しており、前向きになっている。
【0065】
なお、この関連において、本発明の方法は、うつぶせの位置に寝ている患者に同様に適用することができる。
【0066】
患者は、支持面202の上に寝ており、この支持面は3つのエアクッション203、204および205をカバーしている。これらのエアクッションは、看護用ベッドの固定フレーム206に装着されており、中くらいの空気圧で介護用ベッドのこの水平位置において膨張している。エアクッション203、204および205の空気圧は、制御ユニットによって、空気をエアクッションの中にポンプで注入するか、エアクッションの空気を抜くかして調整することができる。明らかに、空気以外のその他の流体も同様に使用することができる。
【0067】
エアクッション203、204および205内の空気圧を特別の態様に変えることで、支持面202を回転させ、従って、人工的に換気した肺の回転が生じる。人工的に換気した肺の回転角度の同時測定、すなわち、患者の胸部に取り付けた位置センサを介して、人工的に換気した肺の回転角度を規定された位置に調整することができる。代替的に、規定された肺の位置は、位置アクチュエータの予め決められたステップサイズ、すなわち、各エアクッション内の予め決められた空気圧によって実現できる。
【0068】
図3は、エアクッション内の空気圧の特定の設定によって生じる角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す。図2に比較して、この特別な例では、エアクッション303の空気圧が下げられ、エアクッション304の空気圧は変わらず、エアクッション305の空気圧が上げられている。
【0069】
この結果、支持面302の回転が生じ、従って、人工的に換気された肺の回転が生じる。特に、看護用ベッドのフレーム306は、その水平位置を保っている。
【0070】
図4は、初期位置を表す水平位置に位置にある位置アクチュエータ第2の例を示す図である。この図は、図2の記載で規定しているように、仰向けの位置に寝ている患者401を記載したものである。
【0071】
患者が支持面402の上に寝ており、この面は、看護用ベッドのフレーム403に取り付けられている。フレーム403は、制御ユニットから受信した信号に基づく位置アクチュエータを表すモータによって回転することができる。フレーム403の回転によって、直接、患者の回転が生じ、従って、人工的に換気された肺の回転が生じる。人工的に換気された肺の回転角度の同時測定によって、すなわち、フレーム403の回転角度の測定を介して、人工的に換気された肺の回転角度を規定の位置に調整することができる。代替的に、位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって、すなわち、ステップモータを用いて予め決められたステップ数を実行することによって、規定の肺の位置に達することができる。
【0072】
図5は、位置アクチュエータの特別な設定に起因する、角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第2の例を示す図である。この特定の位置アクチュエータの設定では、患者の左肺が持ち上げられている。
【0073】
看護用ベッドの支持面502とフレーム503の両方が回転する。
【0074】
図6は、少なくとも一の換気圧力を制御するための方法についてのモニタスクリーンを示す図である。表示されているのは、PIPとPEEPの形での人工的な換気システムの入力と、オンラインSpO2信号の形での患者の生理学的出力情報の例である。SpO2信号は、酸素飽和レベルを表している。PIP、PEEP、およびSpO2の値は、人工的に換気された肺の回転角度上の円座標システム中にプロットされている。−45°、0°、及び45°の値について、回転角度が図6に点線で示されている。PIP、PEEP及びSpO2についての値が、特定の回転角度の軸に直交する軸を用いて、グラフから得られる。
【0075】
図6に示すように、看護用ベッドが、患者を負の回転角度に向けてターンさせ、SpO2信号の値は実質的に大きくなる。一方、患者が正の回転角度に向けてターンすると、SpO2信号の値が低くなる。
【0076】
SpO2信号のこの変化は、一定の値のPIPとPEEPに関係する。少なくとも一の気道内圧を変えることなく回転する間の患者のSpO2信号の評価は、診断ゴールを表すのみである。従って、図7−10は、生理学的出力情報についての少なくとも一の換気圧を制御する効果を表している。
【0077】
図7は、運動回転療法の間の肺胞の肺胞回復動作を示す図である。肺胞回復動作が回転角度0°で開始する前に、PEEPが、予想される肺胞の閉鎖圧力(肺の疾患に依存して、15乃至25cmH2Oの間である)あたりに調整される。PIPは、PEEPより十分高く設定して、確実に適宜の換気を行う。
【0078】
肺胞回復動作の間、PIPは段階的に増加して、可能な限り多くの肺ユニットが再度開放するようにし、同時に、PEEPは、新たに回復した肺ユニットを開放し続ける位置に維持される。正及び負の回転振幅の最大値に向けて回復が適用される。ここでは、各上側肺が、ほとんど全ての重なった圧力から開放される。従って、各肺が別々に開放され、上側位置に移動する。
【0079】
例えば、PIPの段階的な増加は、最大回転角度に達する前の5−20呼吸で開始し、PIPは、最大回転角度で最大値に達する(肺の疾患に依存しており、45乃至65cmH2Oの間である)。最大回転角度を超えると、5−20呼吸以内にPIPがその初期値へと下がり始める。
【0080】
上述の方法で各肺が別個に回復した(患者を両側に回転させることによって)後、PIPが各肺について別個に調整され、適宜の換気を維持する。
【0081】
図8は、運動回転療法の間に、成功した肺胞の肺胞回復動作が実行された後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【0082】
肺のヒステリシス行動によって、肺胞の肺胞回復動作の間に得られるPIPおよびPEEPについての値は、肺ユニットが補充されると、これらの気道内圧で更に肺を換気するには高すぎる。従って、タイトレーションプロセスの間に、システマチックにこれらの値を低減する必要がある。ゴールは、全ての肺胞を開放したままにしておく特別な回転角度のPEEPの最小値を得ることである。更なる換気のために、PEEPは、これらの値の若干上に設定することができ、PIPは所望の一回換気量によって調整することができる。
【0083】
図8Aに示すように、PIPおよびPEEPが、典型的には分当たり一ステップワイズ減少する周期で、回転振幅の最大点に向けて低減される。タイトレーションプロセスは、人工的に換気された肺が正の回転角度に向けて回転するときに、PIP及び/又はPEEPが減少し始める(過程1)。人工的に換気された肺が初期位置、すなわち、回転角度0°に戻ると、PIPとPEEPが初期値に設定される。PIP及び/又はPEEPは、人工的に換気された肺が負の回転角度にむけて回転されると、再び低減する(過程2)。生理学的なフィードバックパラメータの一例として、図8Aに酸素飽和信号SpO2が点線で示されている。この酸素飽和は、全回転サイクル(過程1+過程2)の間一定を保ち、優位なつぶれが生じていないことを示す。従って、タイトレーションプロセスは継続すべきである。
【0084】
肺ユニットがつぶれる見込みを増加させるために、PIP及びPEEPについての各順次の回転サイクルは低い値で開始する。図8Bは、タイトレーションプロセスの更なる回転サイクルを示す図である。酸素飽和信号SpO2は、図8Bに示す回転サイクルの間再び一定に保たれて、最大回転角度におけるPEEPの低い値が、いまだ有意な肺ユニットのつぶれをもたらすのに高すぎることを示している。
【0085】
PIP及びPEEPの更なる低減が、図8Cに示すような次の回転サイクルを開始する前に実行される。患者を正の回転位置にターンさせ、PEEPを低減する(過程1)時に、酸素飽和信号SpO2は、低減の形に変化を示す。この変化が認識されると、気道内圧の更なる低減は行われない。酸素飽和信号SpO2の変化が認識されたポイントに対応するPEEPは、特別な回転角度に対するつぶれ圧力を示している。正の回転角度のタイトレーションプロセスが終了する。
【0086】
患者が初期位置、すなわち回転角度0°に戻るとき、PIPとPEEPは、元の値に設定される。酸素飽和信号SpO2は、初期値に回復する。図8Cに示すように、普通、ヒステリシス効果が存在する。
【0087】
患者を負の回転角度にターンさせると、PIP及び/又はPEEPが、負の回転角度についてのつぶれ圧力を認識するために低減される(過程2)。酸素飽和信号SpO2は一定に保たれ、最大負回転角度に届いたPEEPの値が、肺ユニットの有意なつぶれを引き起こすにはまた高すぎることを示している。この結果、負の回転角度におけるタイトレーションプロセスが続けられる。
【0088】
PIPとPEEPをより低い値にしてもう一度開始した更なる回転サイクルを図8Dに示す。図に示す通り、正及び負の回転角度についてのつぶれ圧力を図8Cのプロセスによって認識することができる。正の回転角度についての図8Cにおいてすでに得た値に対応するつぶれ圧力は負の回転角度についてのつぶれ圧力より低い。
【0089】
正及び負の回転角度についてのつぶれ圧力を認識した後、タイトレーションプロセスの間につぶれた肺ユニットを再度開くためには、図7による肺胞回復動作を実行する必要がある。上述した通り、一方の側のつぶれ圧力が認識されたら、タイトレーションプロセスの間にこのような再開放過程がすでに必要になる。これは、肺のヒステリシス行動のために、患者が0°に戻って、PEEPが0°の時の以前の設定値に上がったときに肺のつぶれのサインが存在し続ける場合である。
【0090】
肺が再び完全に回復したら、PEEPレベルは、前に認識されたつぶれ圧力に応じて別々に正及び負の回転角度に設定される。安全マージン、すなわち、2cmH2Oが各つぶれ圧力に加えられる。ついに、PIPは、所望の1回換気量に調整される。
【0091】
図9は、回転角度に応じてPIPとPEEPを制御することによる肺の人工的な換気を示す図である。図8で認識したとおり、正および負の回転角度についてのつぶれ圧力に基づいて、回転角度の関数としてのPEEPのカーブを設定することができる。この特別な例においてスムーズな曲率を有するこのカーブの形状は、PEEPを対応するつぶれ圧力より上に保つために安全マージンが実現されるのであれば、自由に選ぶことができる。回転角度の関数としてのPIPカーブは、対応するPEEPの値と所望の1回換気量から直接追従している。
【0092】
PIPとPEEPを回転角度の関数としてこのように制御することで、肺の最適換気をもたらす。回転サイクルの間、酸素飽和信号SpO2は一定にたもたれるが、同時に、PIPとPEEPの可能な最低値によって、肺の過剰膨張はなく、所望の1回換気量が達成される。
【0093】
図10は、図9による回転サイクルの間のPIPとPEEPを制御するときのモニタスクリーンを示す図である。回転角度に対するPIP、PEEP、及びSpO2の表示は、図6のものと同じである。
【0094】
回転角度によってPIPおよびPEEPを制御することによって、回転サイクル中に酸素飽和信号SpO2を一定に保つことができる。これは、酸素飽和信号SpO2が、回転角度が大きくなるにつれて、すなわち、肺ユニットのつぶれによって下がっている図6とは反対である。このつぶれが、図10に示す人工換気では、PIPとPEEPを制御することによって防止される。
【0095】
図11は、運動回転療法中の、paO2、paCO2、およびpHaの測定値を示す図である。図に見られるように、paO2は、運動回転療法の間に常に改善されている。回転周期は、運動回転療法の間に、時間当たり8から16回転周期に切り替えられている。分当たり10乃至40呼吸の平均換気周期は、回転周期当たり50乃至250呼吸となる。
【0096】
図11の図面は、Servo 300 換気器(Siemens Elema, Solna, Sweden)を用いて看護用ベッドで治療を受けている、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の元のオンライン血液ガスの登録から、血液ガスアナライザParatrend(Diametrics, High Newcombe, UK)によって取り出されている。回転角度は−62°乃至+62°である。平均paO2は、運動回転療法中に継続的に改善され、paO2は、また、一方の側から他方の側へ患者がターンすることに起因して、平均値のあたりを上下している。この往復は、一方の側において患者を人工的に換気することが、他方の側において患者を人工的に換気することより、paO2の改善がより効果的であるらしいことを反映している。
【0097】
追加のデータなしでは、血液ガスの分析は、回転角度と、換気器のセッティングと、ガス交換に関するその最終的な効果の間の関係についてのどのような情報も与えるものではない。しかしながら、この登録は、回転周期の平均paO2およびその振動に関する影響を示している。上述したとおり、この特別な例では、回転周期は時間当たり8乃至16回転周期に切り替えられている。paO2が上がる間に、振動の振幅はかなり小さくなり、個々のおよび時間に依存する、疾患のある肺と通常の肺の影響が最小限に抑えられることを示している。
【0098】
回転角度と、換気器のセッティングと、生理学的出力変数のうちの少なくとも二つのファクタ間でのリンクが必要なことはあきらかである。
【0099】
図12は、運動回転療法の間のコンプライアンスの測定を示す図である。期待されるように、運動回転療法の間にコンプライアンスは改善される。上述したとおり、換気パラメータが適用されている。なお、図12に示す回転角度の範囲は、一例を示しているだけである。所望であれば、より高い値の回転角度、すなわち、±90°、あるいはそれ以上の角度を選択することができる。
【0100】
コンプライアンスは、回転角度の関数として表示されている。患者が、+62°の回転角度にターンしたとき(回転角度0°の開始点からの太線で示す)、コンプライアンスは、回転角度0°のときの初期値のほぼ半分に減る。患者が回転角度0°の初期位置に戻ると、コンプライアンスはむしろ初期値を超えて上がり、患者が負の回転角度までターンしても改善を続ける。コンプライアンスは、回転角度−62°の仮の最大値に達する。患者が回転角度0°の初期位置に戻ると、コンプライアンスが連続的に下がるが、以前のゼロ度−推移における値の有意に上の値を保つ。運動回転療法を続けると、コンプライアンスの値は、上述したのと同様のパターンになるが、回転サイクルあたりの増加の改善度は、より小さくなり、治療効果のある飽和状態に達することは明らかである。肺機能を更に改善する目的で、換気による肺胞の肺胞回復動作など、重ね合わせた活性治療的介入を適用すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明に係る看護用ベッドの一例を示す図である。
【図2】図2は、水平位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す図である。
【図3】図3は、角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す図である。
【図4】図4は、水平位置にある位置アクチュエータの第2の例を示す図である。
【図5】図5は、角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第2の例を示す図である。
【図6】図6は、少なくとも一の換気圧を制御する方法のモニタスクリーンを示す図である。
【図7】図7は、運動回転療法の間の肺胞回復動作を示す図である。
【図8A】図8Aは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図8B】図8Bは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図8C】図8Cは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図8D】図8Dは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図9】図9は、回転角度に応じてPIPとPEEPを制御することによる、肺の人工的な換気を示す図である。
【図10】図10は、図9による回転サイクルの間にPIPとPEEPを制御したときのモニタスクリーンを示す図である。
【図11】図11は、運動回転療法の間の、paO2、paCO2、およびpHaの測定値を示す図である。
【図12】図12は、運動回転療法の間のコンプライアンスの測定値を示す図である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺の状態を記録するための方法及び装置、及び、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺を換気するための人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する方法及び装置に関する。更に、本発明は患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する方法及び装置に関する。本発明を実行するためには、患者が看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が、位置アクチュエータによって移動可能あるいは変更可能であることが想定されている。このような看護用ベッドの例は、縦軸を中心にしてある回転角度だけ回転可能な回転ベッドである。
【0002】
急性肺疾患、急性肺損傷(acute lung injury:ALI)、及び急性呼吸障害症候群(acute respiratory distress syndrome:ARDS)の治療は、いまだに、集中治療室に入っている重症患者の治療の重大な問題の一つである。過去20年にわたる集中的な研究にもかかわらず、不十分な呼吸に関する消極的な結果が、患者の短期及び長期の双方の結果に影響している。様々な換気戦略が、酸素化の異常を処理し、換気器が引き起こす肺の損傷から肺を保護するように設計されている一方で、更なる治療オプションが評価されている。
【0003】
動的な身体の位置決め(運動療法または軸回転療法)は、1974年にBryanによって最初に述べられた。この技術は、肺拡張不全を開通させ、肺機能、特に、ALIやARDSの患者の動脈酸素化を改善するものとして知られている。運動回転療法は、非侵襲的であり、比較的安価な方法であるため、全身の健康状態あるいはひどい損傷を、肺の障害およびARDSに対して前もって処理しておく患者にむしろ予防的に用いられている。肺炎や肺疾患の合併症の発生率を低減できる一方、運動回転療法を換気治療の一環として初期に開始する場合に、生存率が高くなることを示すことができた。この治療的アプローチは、機械的換気(すなわち、気管内圧力および一回換気量)の侵襲性と、機械的換気の時間と、集中治療室に入る長さを低減することができる。
【0004】
本発明の意味における運動回転療法は、特別仕様の回転ベッドを用いて適用される。このベッドは、所定の期間あらゆる所望の角度で、連続または停止する断続モードで使用することができる。換気不全における軸回転の一般的な効果は、気管支内の液(粘液)と、下側(依存性)肺領域から上側(非依存性)肺領域の間質液の双方の再配分と流動化である。これらは、最終的に、局所換気と灌流のマッチングを改善するであろう。その結果、酸素化が増えて、内部肺疾患シャントが低減する。胸郭からのリンパの流れが、患者が回転することによって強化される。更に、運動回転療法が、すでに衰弱した肺領域の回復を促進するので、同じかあるいはむしろ低い気管内圧力で肺拡張不全の量が低減する。依存性肺ゾーン内のうつ伏せになってつぶれた肺胞を繰り返し開閉することによって、通常生じるせん断応力から今開いている肺領域が保護される。
【0005】
H.C. Page, et al.:”Is early kinetic positioning beneficial for pulmonary function in multiple trauma patients?”, Injury, Vol. 29, No. 3, pp. 219-225, 1998から、回転ベッド上の患者の連続的な軸回転を含む運動回転療法の使用は公知である。運動回転療法は、肺機能に欠陥があり、後天的外傷性肺機能不全と成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の酸素化を改善することがわかっている。
【0006】
しかしながら、運動回転療法は、特別に設計された回転ベッドを必要とするので、運動回転療法を広く使用できることはいまだ見出されていなかった。更に、運動回転療法は、標準化された治療パラメータ、典型的には、一方の側へ45°以上から、他方へ45°以上、同じように回転させて、15分のサイクル時間で使用されていた。これらの回転パラメータは、換気効力と回転運動情報が結合していないため、実際には、まれに、変わることがあった。同様に、結合情報の欠落は、回転させた患者の治療に用いる機械的換気パラメータの強さを低減することによって、現場の人間が運動回転療法の効果の利点を得ることを阻害する。
【0007】
本発明の目的は、運動回転療法の発展可能性を改善することである。
【0008】
この目的は、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺の状態を記録するための記録方法による第1の発明ソリューションによって解決する。この方法では、患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺が位置アクチュエータによって移動可能であり:
a)人工的に換気された肺を位置アクチュエータによって規定された肺位置に移動するステップと、
b)人工的に換気された肺の状態を決定するステップと、及び
c)この人工的に換気された肺の状態を前記規定された肺位置に応じて記録するステップと、
を具える。
【0009】
複数の肺の位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の状態を記録する第1の発明ソリューションによる、対応する記録装置は、以下の特徴:
a)規定された肺位置に人工的に換気された肺を移動させる位置アクチュエータと、
b)前記人工的に換気された肺の状態を決定する決定手段と、及び
c)前記規定された肺位置に応じて前記人工的に換気された肺の状態を記録する記録手段と、
を具える。
【0010】
第1の発明ソリューションは、人工的に換気された肺の肺位置の変更は、人工的に換気された肺の状態も変えるという認識に基づいている。従って、規定された肺位置に応じて人工的に換気された肺の状態の再現可能な記録が実行され、これは、その他の手段による目的の有る肺の治療を可能とする。
【0011】
更に、この目的は、複数の肺の位置に応じて患者の人工的に換気された肺を換気するための人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する制御方法による第2の発明ソリューションによって解決される。この方法では、患者は、看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置は、位置アクチュエータによって移動可能であり:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得るステップと、
b)位置アクチュエータによって人工的に換気された肺を規定された肺位置へ移動させるステップと、及び
c)前記規定された肺位置に応じて、及び前記規定された肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気パラメータを制御するステップと、
を具える。
【0012】
複数の肺の位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺を換気するための人工換気器の少なくとも一の換気パラメータを制御する第2の発明ソリューションによる、対応する制御装置は:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された肺の第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得る手段と、
b)人工的に換気された肺を規定された肺位置へ移動させる位置アクチュエータと、及び
c)前記規定された肺位置に応じて、および前記規定された肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気パラメータを制御する手段と、
を具える。
【0013】
第2の発明ソリューションは、人工的に換気された肺の肺位置変更は、また、人工的に換気された肺の状態を変化させ、これは最適化した換気に使用することができるとの認識に基づいている。これによって、すでに知られている運動回転療法を支持することができる。特に、第2の発明ソリューションによる最適化した換気は、回転療法の間にトップ位置にある肺にかかる、重なった圧力を開放するという事実を考慮している。例えば、回転する間に少なくとも一の換気圧力の最適条件に達するために、少なくとも人工的に換気された肺の第2の状態が決定され、すでに決定されている人工的に換気された肺の第1の状態と比較される。ここで、少なくとも一の換気圧力は、人工的に換気された肺の第1の状態と第2の状態間の差によって制御される。
【0014】
更に、この目的は、患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する位置決め方法による第3の発明ソリューションによって解決される。この方法において、患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置は、対応する位置アクチュエータによって変更可能であり:
a)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供するステップと、
b)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御するステップと、
を具える。
【0015】
看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する第3の発明ソリューションによる対応する位置決め装置は:
a)人工的に換気された肺の位置を変更する位置アクチュエータと、
b)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供する手段と、
c)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御する手段と、
を具える。
【0016】
第3の発明ソリューションは、制御信号のパラメータが位置アクチュエータを制御し、これによって、肺位置が運動回転療法の成功にも影響するとの認識に基づいている。重要なパラメータは、回転周期、あるいは、肺位置が一の方向に移動した後、開始位置に戻る時間周期である移動周期である。第3の発明ソリューションの更なる認識は、運動回転療法の成功は、この回転周期及び/又は回転振幅が固定されておらず、予め決められた平均回転周期あたりで統計的に変化するのであれば、改善することができることである。
【0017】
第1の発明ソリューションと、第2の発明ソリューションと、第3の発明ソリューションは、互いに組み合わせることができる。以下に述べる好ましい態様は、各発明ソリューションに適用することができる。
【0018】
一の態様によれば、看護ベッドは、縦軸を中心に回転可能であり、位置アクチュエータは、縦軸を中心に看護ベッドを回転させるモータである。代替的に、位置アクチュエータが、患者の下においたエアクッションまたは液体クッションを具えていても良い。
【0019】
更なる態様によれば、規定された肺位置は、位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって達成される。代替的に、規定された肺の位置は、実際の肺の位置を測定する位置センサのフィードバック信号によって達成することもできる。
【0020】
更なる態様によれば、人工的に換気された肺の状態は、あるいは肺の形態学及び/又は肺機能についての局所的または全体的な情報である。
【0021】
局所的な情報は、肺の一部の特別な治療を可能とし、電気インピーダンス断層撮影(EIT)や、コンピュータ断層撮影(CT)などの撮像方法によって実現することができる。肺の全体的な情報は、例えば、ガス交換法などによってより容易に得ることができるが、単に肺全体の動作を測定するだけである。
【0022】
肺形態学は、例えば、生体構造とその奇形など、肺の構造的特徴が考えられるが、肺機能は、肺の機械的動作と共に、換気や血流などの動的な動きを意味する。
【0023】
好ましい態様によれば、人工的に換気された肺の状態は、肺の全体的なガス交換に対する機能性の測定である。全体的なガス交換を決定する多数の方法及び装置があり、そのうちのいくつかを以下に述べる。
【0024】
肺の状態は、一回の呼吸において吐き出したガスの二酸化炭素濃度に基づいて決めることができる。このような方法と装置は、2004年3月26日に出願された、先行する欧州特許出願「Non-Invasive Method and Apparatus for Optimizing the Respiration for Atelectatic Lungs」から知られている。この出願は、ここに引用として含まれている。
【0025】
さらに、肺の状態は、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)に基づいて決めることができる。これは、飽和センサを用いて実行することができる。有利なことに、フィードバック制御ループが、人工的な換気器において、吸息性酸素留分(FiO2)を制御して、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)が一定に保たれるようにし、データプロセッサが制御された吸息性酸素留分(FiO2)の経過から、気管内圧力が変化する間に、決定する。この気管内圧力レベルは、肺の肺胞の開または閉に対応している。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0026】
更に肺の状態は、単位時間当たりに吐き出されるCO2量に基づいて決定することができる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0027】
更に肺の状態は、呼気終末二酸化炭素濃度に基づいて決めることができる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0028】
更に、肺の状態は、酸素paO2の動脈中の部分的な圧力に基づいて決めることができる。このような方法と装置は、ここに引用している、S. Leonhardt et al.: “Optimierung der Beatmung beim akuten Lungenversagen durch Identifikation physiologischer Kenngroessen”, at 11/98, pp. 532-539, 1998から公知である。
【0029】
更なる態様によれば、肺の状態は、肺のコンプライアンスに基づいて決めることができる。ここで、コンプライアンスとは、最高気道内圧と、終末呼気陽圧間の圧力差(PIP(peak inspiratory pressure)−PEEP(positive end-expiratory pressure))によって分割された一回換気量によって規定することができる。コンプライアンスの定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0030】
更なる態様によれば、肺の状態は、吸気及び/又は呼気動的気管支抵抗に基づいて決めることができる。ここで、これらの抵抗は、呼吸ガスフロー(cmH2O/1/s)で割った駆動圧力差として規定することができる。この抵抗の定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
【0031】
更なる態様によれば、決定された肺の状態は、肺胞のデッドスペースの変更に敏感である。この目的は、終末呼気陽圧(PEEP)と最高気道内圧(PIP)の好適な調整によって肺胞のデッドスペースの変化を補填することである。人工的に換気した肺の肺胞のデッドスペースの変化を決定する様々な方法と装置が知られており、これらは別個に、あるいは互いに組み合わせて用いることができる。
【0032】
更なる態様によれば、肺の状態は、電気インピーダンス断層撮影データに基づいて決められる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/33733A1およびWO01/93760A1から公知である。
【0033】
更に、ガス交換効果と血行力学効果測定の双方を組合わせることができる、肺機能の評価のための様々なその他の公知の臨床的方法及び装置を使用して、人工的に換気された肺の状態を決定することができる。これらのいくつかは、肺シャント留分、酸素抽出率、血管外肺水分、肺血管抵抗及びコンプライアンス、その他を含む。
【0034】
更に、肺の回復の評価の多くのその他の公知の臨床方法及び装置と、機械的機能を用いて、人工的に換気された肺の状態を決定することができる。これらは、呼気および吸気圧力−体積カーブの上側および下側の屈曲点、最大圧力−体積コンプライアンス点(Pmax)、及びその他を含む。
【0035】
更なる態様によれば、人工的に換気された肺の決定された状態は、対応する規定された肺の位置に応じてコンピュータによって記録される。好ましくは、この記録データが、スクリーン上に表示される。
【0036】
第1の発明ソリューションによる記録方法及び記録装置を用いて、第2の発明ソリューションによる制御方法及び制御装置について、および第3の発明ソリューションについての位置決め方法及び位置決め装置についての肺状態情報を提供することができる。
【0037】
一の態様によれば、予め決められた差動ステップサイズが繰り返して位置アクチュエータに適用され、このような人工的に換気された肺の状態の支持ポイントが予め決められた肺位置の範囲を超えて決定されるまで、各差動ステップサイズの後に、人工的に換気された肺の状態の支持ポイントを得ることができる。
【0038】
支持ポイントの解像度を上げるために、支持ポイント間で、二つの隣り合う支持ポイント間の差に応じて肺の状態情報に手を加えることができる。二つの支持ポイント以外に基づく、その他の間挿方法を使用するようにしても良い。例えば、最小二乗法などであり、これによって、予め決められた肺位置の範囲を超えて肺状態情報の安定カーブを得ることができる。
【0039】
このようにして得た肺状態情報を用いて、人工的に換気された肺の少なくとも一の換気パラメータを、第2の発明ソリューションによる肺位置の予め決められた範囲を超えて最適化することができる。好ましくは、少なくとも一の換気パラメータは、肺状態情報が、肺位置の予め決められた範囲を超えて均一な分布となるように制御される。これによって、予め決められた肺位置の範囲を超えた肺状態情報の偏差を、対応する肺位置に応じた適宜の換気パラメータを適用することで、同じレベルにすることができる。代替的に、安定カーブから単一の換気パラメータ値を決定して、肺位置の範囲にわたる肺状態情報によって決定された最大肺機能を保証することができる。
【0040】
更なる態様によれば、決定した肺胞のデッドスペースの変化が、人工的に換気された肺の肺状態情報の二つの支持ポイント間の差に応じて補償するように少なくとも一の換気パラメータを制御することができる。この目的のために、一方で肺胞のデッドスペース間の関係を、他方で、最高気道内圧(PIP)と終末呼気陽圧(PEEP)の影響を示す対応する肺についての特性カーブを記録することができる。この特性カーブに基づいて、最高気道内圧(PIP)及び/又は終末呼気陽圧(PEEP)を、肺胞のデッドスペースのあらゆる変化を補償するために決定することができる。更に、特性カーブによる回転角度を考慮するために、肺胞デッドスペースの状態、対、PIP及び/又はPEEPを、複数の肺位置について決定する。
【0041】
このようにして得た肺状態情報は、第3の発明ソリューションによって、人工的に換気された肺の位置の制御された変化を最適化するのに使用することができる。第3の発明ソリューションによれば、複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布が提供されなければならない。このことは、第1の肺位置に応じた人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置に応じた人工的に換気された肺の第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報に基づいて、自動的に行われる。例えば、特定の肺状態情報を、特定の位置周期と、特定の位置振幅有する位置アクチュエータ用の対応する制御信号に割り当てるルックアップテーブルを設けることができる。これによって、位置アクチュエータ用の制御信号は、位置周期及び/又は振幅の分布を、時間が経つと産出する肺位置の予め決められた範囲を超える、複数のカーブ片でできている。
【0042】
代替的に、この分布は、予め決められた分布を提供する所定の周期的な制御信号セットに基づいて、ユーザインターフェースを介して編集することができる。
【0043】
代替的に、この分布は、事前にあるいはオンラインで自動的に編集することができ、公知の見込みの有る分布を追う、あるいは生物的変化を追従することができる。例えば、人間の心拍は、特徴の有る生物的変化を追従している。この変化は、縮尺して、上述の目的に合うようにすることができる。
【0044】
本発明のその他の目的と特徴は、以下の明細書を参照して明らかになるであろう。
【0045】
図1は、本発明に係る看護用ベッドの一例を示す図である。看護用ベッド101は、矢印102で示すように、その縦軸を中心に回転できるように装着されている。回転角度は、位置アクチュエータ103によって変更可能であり、このアクチュエータは制御ユニット104によって制御される。
【0046】
患者105は、看護用ベッド101の上に固定され、換気器106によって人工的に換気される。位置アクチュエータ103は、制御ユニット104によって、患者がターンして人工的に換気された肺を規定の肺位置にするように、制御ユニット104によって制御することができる。肺の位置は、肺の回転角度を意味し、患者がベッドの上に水平に寝ており、ベッド自体が水平に位置している場合は0°である。肺の位置の測定は、患者の胸部に取り付けられ、制御ユニット104に接続されている、持ち運び可能な位置センサを用いて行うことができる。図1に示す看護用ベッド101は、また、看護用ベッド101の回転角度の測定を介して、患者の肺の回転角度を決定することもできる。
【0047】
人工的に換気された肺の状態は、好適な測定デバイス107を用いて様々な方法で決定することができる。測定デバイス107は、例えば、気道内圧、呼気ガスの成分、人工的な換気器から得られた、肺の状態を決定するための吸気及び呼気ガスの体積、などのデータを使用することができる。肺の状態を決定するための測定は、連続的に実行することもできるし、規定された肺位置において散発的に実行することもできる。肺の状態を決定する方法の例は以下の通りである:
− 肺の状態は、一回の呼吸における呼気ガスのCO2濃度に基づいて決定される。このような方法と装置は、2004年3月26日に出願された、先行する欧州特許出願「Non-Invasive Method and Apparatus for Optimizing the Respiration for Atelectatic Lungs」から知られている。この出願は、ここに引用として含まれている。
− 肺の状態は、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)に基づいて決定される。これは、飽和センサを用いて実行することができる。有利なことに、フィードバック制御ループが、人工的な換気器において、ヘモグロビン酸素飽和(SO2)が一定に保たれるように吸息性酸素留分(FiO2)を制御し、データプロセッサが制御された吸息性酸素留分(FiO2)の経過から、気管内圧が変化する間に、決定する。この気管内圧力レベルは、肺の肺胞の開または閉に対応している。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、単位時間当たりに吐き出されるCO2量に基づいて決定される。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、呼気終末二酸化炭素濃度に基づいて決定される。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、酸素paO2の動脈中の部分的な圧力に基づいて決定される。このような方法と装置は、ここに引用している、S. Leonhardt et al.: “Optimierung der Beatmung beim akuten Lungenversagen durch Identifikation physiologischer Kenngroessen”, at 11/98, pp. 532-539, 1998から公知である。
− 肺の状態は、肺のコンプライアンスに基づいて決定される。ここで、コンプライアンスとは、最高気道内圧と、終末呼気陽圧間の圧力差(PIP−PEEP)によって分割された一回換気量によって規定することができる。コンプライアンスの定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、吸気及び/又は呼気動的気管支抵抗に基づいて決定される。ここで、これらの抵抗は、呼吸ガスフロー(cmH2O/1/s)で割った駆動圧力差として規定することができる。この抵抗の定義は、ここに引用されているWO00/44427A1から知られている。
− 肺の状態は、電気インピーダンス断層撮影データに基づいて決められる。このような方法と装置は、ここに引用されているWO00/33733A1およびWO01/93760A1から公知である。
【0048】
以下において、患者の治療の一例を述べる。これは、後に、図2−12によってより詳細に説明する。
【0049】
肺胞回復動作
回転角度0°で、PEEPを予想の肺胞閉鎖圧力(肺の疾患に応じて、15と25cmH2Oの間である)より上に調整する。PIPは、PEEPより十分高く設定され、確実に適宜の換気を行う。
【0050】
回転が開始する。各肺は別々に、上側位置に移動する間に開く。
【0051】
回転角度を上げると、最大回転角度に達する前の5−20呼吸でPIPが段階的に増え始める。PIPは、最大回転角度で最大値(肺の疾患に応じて、45と65cmH2Oの間である)に達する。
【0052】
最大回転角度を超えると、PIPが5−20呼吸以内に下がり始める。
【0053】
上述の方法で各肺が別個に回復した(患者を両側に回転させることによって)後、各肺についてPIPが別個に調整され、適宜の換気を維持する。
【0054】
閉じているPEEPを見つけるためのPEEPタイトレーション
肺胞回復動作の後、回転角度が上がるにつれてPEEPが連続的に下がる。人工的に換気された肺の状態は、連続的に記録される。
【0055】
回転角度0°で所定のPEEPを開始すると、PEEPが下がり、最大回転角度でPEEPが1−2cmH20だけ低下する(過程1)。上記信号のいずれにも肺胞がつぶれる兆候が生じなければ、PEEPのレベルが記録され、0°の時の以前の設定へ連続的に上がる。患者を反対側にターンさせると、PEEPが同じように低下する(過程2)。上記信号のいずれにも肺胞がつぶれる兆候が生じなければ、PEEPのレベルはこの値に維持され、患者は0°に戻る。
【0056】
回転角度0°で、つぶれが存在しなければ、肺胞がつぶれる兆候がおきるまで、下がったPEEPレベルで、過程1と2を実行する。次いで、各側について、このつぶれが生じるPEEPのレベルが記録される。PEEPは、患者が0°の位置に戻る間に、0°のときの以前の設定へ連続的に上昇するであろう。肺のヒステリシス動作によって肺のつぶれの兆候がまだ存在する場合は、肺胞回復動作をこの段階で実行して、上述したように肺を再度広げる。
【0057】
開放した肺の状態を続けながら、肺のつぶれが生じた側についてPEEPを公知の閉鎖圧力の上2cmH20に設定する。
【0058】
その後、上述したようにPEEPを下げ、患者を閉鎖圧力がわかっていない反対側にターンさせる。こちら側についてもつぶれが生じたら、PEEPを記録して、肺を再度開放する。
【0059】
回転の間の換気パラメータの制御
各側についてPEEPつぶれ圧力を決定した後に、進行中の回転を伴ってPEEPを連続的に調整し、各側について必要なレベル以下にPEEPが決して落ちないことを確実にする。
【0060】
PEEPとコンプライアンスは、回転角度と共に変化することがあるので、調整が必要である。従って、回転療法の間に、患者を十分に換気して、1回換気量を所望の範囲である6−10ml/kg体重内に維持しながら、人工的に換気された肺の第1の状態と第2の状態の差に応じて、PIPレベルを呼吸から呼吸へと連続的に調整する。
【0061】
更に、PIP圧力がすでに非常に低い値にある場合は、PIPを一定にして、呼吸レート(RR)を調整することによってコンプライアンスの変化を調整することが進言されるであろう。次いで、PIPを一定に保ったまま、患者を十分に換気するために、RRが呼吸から呼吸へと連続的に調整される。
【0062】
回転周期の変動が、運動回転療法の効果を更に改善することが示されている。例えば、以下の変動モードを適用することができる:
− 回転角度、速度、および停止期間についての最小及び最大値を設定した、数分から数時間の波長のサイン波変動
− 数分から数時間のランプ周期を伴う所定の境界内のランプ状の変動、および回転角度、速度、および停止期間についての最小及び最大値の設定
− 例えば、選択した平均値の0%から100%の間の、均一な確率分布から、このパラメータの大きさの平均シーケンスの50%から200%の振幅を有する単一の変動レベル(すなわち、生物学上の変動)における所定の平均値周辺のランダムな変動
− 変動は、可能な最小から最大の全範囲をカバーする技術的アプローチによって決定することができる
− 回転パラメータの分布は、ガウス分布または生物学的分布である。
【0063】
回転周期に加えて、回転角度、回転速度、及び停止周期が可変である。可変回転角度、速度および停止時間を調整するために、一定であることが必要な、角度と停止期間、その他の平均積を規定することができる。例えば:
− 回転角度が所定の回転角度周辺でランダムに変化する一方、停止期間を調整して、所定の回転速度で、角度と時間の積をほぼ一定に維持する。
− 回転角度が所定の回転角度周辺でランダムに変化する一方、回転速度を調整して、角度と時間の積をほぼ一定に維持する一方で、停止期間は適用されない。
【0064】
図2は、初期位置を表す水平位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す図である。この図には、仰向けになった位置で寝ている患者201が描かれている。医療用撮像において規定されているように、患者を足から見ており、従って、右肺(R)が図2の左手側にあり、左肺(L)が図2の右手側にある。一方、心臓(H)は、中央に位置しており、前向きになっている。
【0065】
なお、この関連において、本発明の方法は、うつぶせの位置に寝ている患者に同様に適用することができる。
【0066】
患者は、支持面202の上に寝ており、この支持面は3つのエアクッション203、204および205をカバーしている。これらのエアクッションは、看護用ベッドの固定フレーム206に装着されており、中くらいの空気圧で介護用ベッドのこの水平位置において膨張している。エアクッション203、204および205の空気圧は、制御ユニットによって、空気をエアクッションの中にポンプで注入するか、エアクッションの空気を抜くかして調整することができる。明らかに、空気以外のその他の流体も同様に使用することができる。
【0067】
エアクッション203、204および205内の空気圧を特別の態様に変えることで、支持面202を回転させ、従って、人工的に換気した肺の回転が生じる。人工的に換気した肺の回転角度の同時測定、すなわち、患者の胸部に取り付けた位置センサを介して、人工的に換気した肺の回転角度を規定された位置に調整することができる。代替的に、規定された肺の位置は、位置アクチュエータの予め決められたステップサイズ、すなわち、各エアクッション内の予め決められた空気圧によって実現できる。
【0068】
図3は、エアクッション内の空気圧の特定の設定によって生じる角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す。図2に比較して、この特別な例では、エアクッション303の空気圧が下げられ、エアクッション304の空気圧は変わらず、エアクッション305の空気圧が上げられている。
【0069】
この結果、支持面302の回転が生じ、従って、人工的に換気された肺の回転が生じる。特に、看護用ベッドのフレーム306は、その水平位置を保っている。
【0070】
図4は、初期位置を表す水平位置に位置にある位置アクチュエータ第2の例を示す図である。この図は、図2の記載で規定しているように、仰向けの位置に寝ている患者401を記載したものである。
【0071】
患者が支持面402の上に寝ており、この面は、看護用ベッドのフレーム403に取り付けられている。フレーム403は、制御ユニットから受信した信号に基づく位置アクチュエータを表すモータによって回転することができる。フレーム403の回転によって、直接、患者の回転が生じ、従って、人工的に換気された肺の回転が生じる。人工的に換気された肺の回転角度の同時測定によって、すなわち、フレーム403の回転角度の測定を介して、人工的に換気された肺の回転角度を規定の位置に調整することができる。代替的に、位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって、すなわち、ステップモータを用いて予め決められたステップ数を実行することによって、規定の肺の位置に達することができる。
【0072】
図5は、位置アクチュエータの特別な設定に起因する、角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第2の例を示す図である。この特定の位置アクチュエータの設定では、患者の左肺が持ち上げられている。
【0073】
看護用ベッドの支持面502とフレーム503の両方が回転する。
【0074】
図6は、少なくとも一の換気圧力を制御するための方法についてのモニタスクリーンを示す図である。表示されているのは、PIPとPEEPの形での人工的な換気システムの入力と、オンラインSpO2信号の形での患者の生理学的出力情報の例である。SpO2信号は、酸素飽和レベルを表している。PIP、PEEP、およびSpO2の値は、人工的に換気された肺の回転角度上の円座標システム中にプロットされている。−45°、0°、及び45°の値について、回転角度が図6に点線で示されている。PIP、PEEP及びSpO2についての値が、特定の回転角度の軸に直交する軸を用いて、グラフから得られる。
【0075】
図6に示すように、看護用ベッドが、患者を負の回転角度に向けてターンさせ、SpO2信号の値は実質的に大きくなる。一方、患者が正の回転角度に向けてターンすると、SpO2信号の値が低くなる。
【0076】
SpO2信号のこの変化は、一定の値のPIPとPEEPに関係する。少なくとも一の気道内圧を変えることなく回転する間の患者のSpO2信号の評価は、診断ゴールを表すのみである。従って、図7−10は、生理学的出力情報についての少なくとも一の換気圧を制御する効果を表している。
【0077】
図7は、運動回転療法の間の肺胞の肺胞回復動作を示す図である。肺胞回復動作が回転角度0°で開始する前に、PEEPが、予想される肺胞の閉鎖圧力(肺の疾患に依存して、15乃至25cmH2Oの間である)あたりに調整される。PIPは、PEEPより十分高く設定して、確実に適宜の換気を行う。
【0078】
肺胞回復動作の間、PIPは段階的に増加して、可能な限り多くの肺ユニットが再度開放するようにし、同時に、PEEPは、新たに回復した肺ユニットを開放し続ける位置に維持される。正及び負の回転振幅の最大値に向けて回復が適用される。ここでは、各上側肺が、ほとんど全ての重なった圧力から開放される。従って、各肺が別々に開放され、上側位置に移動する。
【0079】
例えば、PIPの段階的な増加は、最大回転角度に達する前の5−20呼吸で開始し、PIPは、最大回転角度で最大値に達する(肺の疾患に依存しており、45乃至65cmH2Oの間である)。最大回転角度を超えると、5−20呼吸以内にPIPがその初期値へと下がり始める。
【0080】
上述の方法で各肺が別個に回復した(患者を両側に回転させることによって)後、PIPが各肺について別個に調整され、適宜の換気を維持する。
【0081】
図8は、運動回転療法の間に、成功した肺胞の肺胞回復動作が実行された後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【0082】
肺のヒステリシス行動によって、肺胞の肺胞回復動作の間に得られるPIPおよびPEEPについての値は、肺ユニットが補充されると、これらの気道内圧で更に肺を換気するには高すぎる。従って、タイトレーションプロセスの間に、システマチックにこれらの値を低減する必要がある。ゴールは、全ての肺胞を開放したままにしておく特別な回転角度のPEEPの最小値を得ることである。更なる換気のために、PEEPは、これらの値の若干上に設定することができ、PIPは所望の一回換気量によって調整することができる。
【0083】
図8Aに示すように、PIPおよびPEEPが、典型的には分当たり一ステップワイズ減少する周期で、回転振幅の最大点に向けて低減される。タイトレーションプロセスは、人工的に換気された肺が正の回転角度に向けて回転するときに、PIP及び/又はPEEPが減少し始める(過程1)。人工的に換気された肺が初期位置、すなわち、回転角度0°に戻ると、PIPとPEEPが初期値に設定される。PIP及び/又はPEEPは、人工的に換気された肺が負の回転角度にむけて回転されると、再び低減する(過程2)。生理学的なフィードバックパラメータの一例として、図8Aに酸素飽和信号SpO2が点線で示されている。この酸素飽和は、全回転サイクル(過程1+過程2)の間一定を保ち、優位なつぶれが生じていないことを示す。従って、タイトレーションプロセスは継続すべきである。
【0084】
肺ユニットがつぶれる見込みを増加させるために、PIP及びPEEPについての各順次の回転サイクルは低い値で開始する。図8Bは、タイトレーションプロセスの更なる回転サイクルを示す図である。酸素飽和信号SpO2は、図8Bに示す回転サイクルの間再び一定に保たれて、最大回転角度におけるPEEPの低い値が、いまだ有意な肺ユニットのつぶれをもたらすのに高すぎることを示している。
【0085】
PIP及びPEEPの更なる低減が、図8Cに示すような次の回転サイクルを開始する前に実行される。患者を正の回転位置にターンさせ、PEEPを低減する(過程1)時に、酸素飽和信号SpO2は、低減の形に変化を示す。この変化が認識されると、気道内圧の更なる低減は行われない。酸素飽和信号SpO2の変化が認識されたポイントに対応するPEEPは、特別な回転角度に対するつぶれ圧力を示している。正の回転角度のタイトレーションプロセスが終了する。
【0086】
患者が初期位置、すなわち回転角度0°に戻るとき、PIPとPEEPは、元の値に設定される。酸素飽和信号SpO2は、初期値に回復する。図8Cに示すように、普通、ヒステリシス効果が存在する。
【0087】
患者を負の回転角度にターンさせると、PIP及び/又はPEEPが、負の回転角度についてのつぶれ圧力を認識するために低減される(過程2)。酸素飽和信号SpO2は一定に保たれ、最大負回転角度に届いたPEEPの値が、肺ユニットの有意なつぶれを引き起こすにはまた高すぎることを示している。この結果、負の回転角度におけるタイトレーションプロセスが続けられる。
【0088】
PIPとPEEPをより低い値にしてもう一度開始した更なる回転サイクルを図8Dに示す。図に示す通り、正及び負の回転角度についてのつぶれ圧力を図8Cのプロセスによって認識することができる。正の回転角度についての図8Cにおいてすでに得た値に対応するつぶれ圧力は負の回転角度についてのつぶれ圧力より低い。
【0089】
正及び負の回転角度についてのつぶれ圧力を認識した後、タイトレーションプロセスの間につぶれた肺ユニットを再度開くためには、図7による肺胞回復動作を実行する必要がある。上述した通り、一方の側のつぶれ圧力が認識されたら、タイトレーションプロセスの間にこのような再開放過程がすでに必要になる。これは、肺のヒステリシス行動のために、患者が0°に戻って、PEEPが0°の時の以前の設定値に上がったときに肺のつぶれのサインが存在し続ける場合である。
【0090】
肺が再び完全に回復したら、PEEPレベルは、前に認識されたつぶれ圧力に応じて別々に正及び負の回転角度に設定される。安全マージン、すなわち、2cmH2Oが各つぶれ圧力に加えられる。ついに、PIPは、所望の1回換気量に調整される。
【0091】
図9は、回転角度に応じてPIPとPEEPを制御することによる肺の人工的な換気を示す図である。図8で認識したとおり、正および負の回転角度についてのつぶれ圧力に基づいて、回転角度の関数としてのPEEPのカーブを設定することができる。この特別な例においてスムーズな曲率を有するこのカーブの形状は、PEEPを対応するつぶれ圧力より上に保つために安全マージンが実現されるのであれば、自由に選ぶことができる。回転角度の関数としてのPIPカーブは、対応するPEEPの値と所望の1回換気量から直接追従している。
【0092】
PIPとPEEPを回転角度の関数としてこのように制御することで、肺の最適換気をもたらす。回転サイクルの間、酸素飽和信号SpO2は一定にたもたれるが、同時に、PIPとPEEPの可能な最低値によって、肺の過剰膨張はなく、所望の1回換気量が達成される。
【0093】
図10は、図9による回転サイクルの間のPIPとPEEPを制御するときのモニタスクリーンを示す図である。回転角度に対するPIP、PEEP、及びSpO2の表示は、図6のものと同じである。
【0094】
回転角度によってPIPおよびPEEPを制御することによって、回転サイクル中に酸素飽和信号SpO2を一定に保つことができる。これは、酸素飽和信号SpO2が、回転角度が大きくなるにつれて、すなわち、肺ユニットのつぶれによって下がっている図6とは反対である。このつぶれが、図10に示す人工換気では、PIPとPEEPを制御することによって防止される。
【0095】
図11は、運動回転療法中の、paO2、paCO2、およびpHaの測定値を示す図である。図に見られるように、paO2は、運動回転療法の間に常に改善されている。回転周期は、運動回転療法の間に、時間当たり8から16回転周期に切り替えられている。分当たり10乃至40呼吸の平均換気周期は、回転周期当たり50乃至250呼吸となる。
【0096】
図11の図面は、Servo 300 換気器(Siemens Elema, Solna, Sweden)を用いて看護用ベッドで治療を受けている、成人型呼吸窮迫症候群(ARDS)の患者の元のオンライン血液ガスの登録から、血液ガスアナライザParatrend(Diametrics, High Newcombe, UK)によって取り出されている。回転角度は−62°乃至+62°である。平均paO2は、運動回転療法中に継続的に改善され、paO2は、また、一方の側から他方の側へ患者がターンすることに起因して、平均値のあたりを上下している。この往復は、一方の側において患者を人工的に換気することが、他方の側において患者を人工的に換気することより、paO2の改善がより効果的であるらしいことを反映している。
【0097】
追加のデータなしでは、血液ガスの分析は、回転角度と、換気器のセッティングと、ガス交換に関するその最終的な効果の間の関係についてのどのような情報も与えるものではない。しかしながら、この登録は、回転周期の平均paO2およびその振動に関する影響を示している。上述したとおり、この特別な例では、回転周期は時間当たり8乃至16回転周期に切り替えられている。paO2が上がる間に、振動の振幅はかなり小さくなり、個々のおよび時間に依存する、疾患のある肺と通常の肺の影響が最小限に抑えられることを示している。
【0098】
回転角度と、換気器のセッティングと、生理学的出力変数のうちの少なくとも二つのファクタ間でのリンクが必要なことはあきらかである。
【0099】
図12は、運動回転療法の間のコンプライアンスの測定を示す図である。期待されるように、運動回転療法の間にコンプライアンスは改善される。上述したとおり、換気パラメータが適用されている。なお、図12に示す回転角度の範囲は、一例を示しているだけである。所望であれば、より高い値の回転角度、すなわち、±90°、あるいはそれ以上の角度を選択することができる。
【0100】
コンプライアンスは、回転角度の関数として表示されている。患者が、+62°の回転角度にターンしたとき(回転角度0°の開始点からの太線で示す)、コンプライアンスは、回転角度0°のときの初期値のほぼ半分に減る。患者が回転角度0°の初期位置に戻ると、コンプライアンスはむしろ初期値を超えて上がり、患者が負の回転角度までターンしても改善を続ける。コンプライアンスは、回転角度−62°の仮の最大値に達する。患者が回転角度0°の初期位置に戻ると、コンプライアンスが連続的に下がるが、以前のゼロ度−推移における値の有意に上の値を保つ。運動回転療法を続けると、コンプライアンスの値は、上述したのと同様のパターンになるが、回転サイクルあたりの増加の改善度は、より小さくなり、治療効果のある飽和状態に達することは明らかである。肺機能を更に改善する目的で、換気による肺胞の肺胞回復動作など、重ね合わせた活性治療的介入を適用すべきである。
【図面の簡単な説明】
【0101】
【図1】図1は、本発明に係る看護用ベッドの一例を示す図である。
【図2】図2は、水平位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す図である。
【図3】図3は、角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第1の例を示す図である。
【図4】図4は、水平位置にある位置アクチュエータの第2の例を示す図である。
【図5】図5は、角度の付いた位置にある位置アクチュエータの第2の例を示す図である。
【図6】図6は、少なくとも一の換気圧を制御する方法のモニタスクリーンを示す図である。
【図7】図7は、運動回転療法の間の肺胞回復動作を示す図である。
【図8A】図8Aは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図8B】図8Bは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図8C】図8Cは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図8D】図8Dは、運動回転療法の間に成功裏の肺回復動作が行われた後のタイトレーションプロセスを示す図である。
【図9】図9は、回転角度に応じてPIPとPEEPを制御することによる、肺の人工的な換気を示す図である。
【図10】図10は、図9による回転サイクルの間にPIPとPEEPを制御したときのモニタスクリーンを示す図である。
【図11】図11は、運動回転療法の間の、paO2、paCO2、およびpHaの測定値を示す図である。
【図12】図12は、運動回転療法の間のコンプライアンスの測定値を示す図である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の肺位置に応じて患者の人工的に換気された肺の状態を記録する記録方法であって、前記患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が位置アクチュエータによって移動可能である記録方法において:
a)人工的に換気された肺を位置アクチュエータによって規定された肺位置に移動するステップと、
b)人工的に換気された肺の状態を決定するステップと、及び
c)この人工的に換気された肺の状態を前記規定された肺位置に応じて記録するステップと、
を具えることを特徴とする記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記録方法において、前記看護用ベッドが縦軸を中心に回転可能であり、前記位置アクチュエータが、前記看護用ベッドをその縦軸を中心に回転させるモータであることを特徴とする記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載の記録方法において、前記位置アクチュエータが、患者の下に配置したエアクッションであることを特徴とする記録方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の記録方法において、前記規定された肺位置が、前記位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって達成されることを特徴とする記録方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の記録方法において、前記規定された肺位置が、実際の肺の位置を測定する位置センサのフィードバック信号によって達成されることを特徴とする記録方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の記録方法において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の形態学上の部分的あるいは全体的な情報及び/又は肺機能の測定であることを特徴とする記録方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の記録方法において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の全体的なガス交換に関する機能の測定であることを特徴とする記録方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の記録方法において、前記人工的に換気された肺の前記決定された状態が、対応する規定された肺位置に応じてコンピュータによって記録されることを特徴とする記録方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の記録方法において、前記ステップa)、b)、c)が前記位置アクチュエータの予め決められた差動ステップサイズで、前記人工的に換気された肺の状態が、予め決められた肺の位置の範囲を超えて決定されるまで繰り返されることを特徴とする記録方法。
【請求項10】
複数の肺位置に応じて患者の人工的に換気された肺を換気するための人工的な換気器の少なくとも一の換気圧力を制御する制御方法であって、前記患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が位置アクチュエータによって移動可能である制御方法において:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得るステップと、
b)位置アクチュエータによって人工的に換気された肺を規定の肺位置へ移動させるステップと、及び
c)前記規定の肺位置に応じて、及び前記規定の肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気圧力を制御するステップと、
を具えることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法において、前記肺の状態の情報が、請求項9に記載の記録方法を適用して得られることを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の制御方法において、前記肺の状態の情報が、隣り合う二つの支持ポイント間の差に応じて前記支持ポイント間で補間されることを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の制御方法において、少なくとも一の換気圧力が、前記肺の状態の情報が、複数の肺の位置に均一な分布を生むように制御されることを特徴とする制御方法。
【請求項14】
患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する位置決め方法であって、前記患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が対応する位置アクチュエータによって変更可能である位置決め方法において、
a)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供するステップと、
b)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御するステップと、
を具えることを特徴とする位置決め方法。
【請求項15】
請求項14に記載の位置決め方法において、前記分布が、所定の周期的な制御信号セットに基づいてユーザのインターフェースを介して編集されることを特徴とする位置決め方法。
【請求項16】
請求項14に記載の位置決め方法において、前記分布が、第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された肺の第2の状態の、少なくとも二つの支持ポイントに基づいて肺状態情報に応じて編集されることを特徴とする位置決め方法。
【請求項17】
複数の肺位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の状態を記録する記録装置において:
a)規定された肺位置に前記人工的に換気された肺を移動させる位置アクチュエータと、
b)前記人工的に換気された肺の状態を決定する決定手段と、及び
c)前記規定された肺位置に応じて前記人工的に換気された肺の状態を記録する記録手段と、
を具えることを特徴とする記録装置。
【請求項18】
請求項17に記載の記録装置において、前記看護用ベッドが縦軸を中心に回転可能であり、前記位置アクチュエータが、前記看護用ベッドをその縦軸を中心に回転させるモータであることを特徴とする記録装置。
【請求項19】
請求項17に記載の記録装置において、前記位置アクチュエータが、患者の下に配置したエアクッションを具えることを特徴とする記録装置。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれかに記載の記録装置において、前記規定された肺位置が、前記位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって達成されることを特徴とする記録装置。
【請求項21】
請求項17乃至19のいずれかに記載の記録装置において、前記規定された肺位置が、実際の肺の位置を測定する位置センサのフィードバック信号によって達成されることを特徴とする記録装置。
【請求項22】
請求項17乃至21のいずれかに記載の記録装置において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の形態学上の部分的あるいは全体的な情報及び/又は肺機能の測定であることを特徴とする記録装置。
【請求項23】
請求項17乃至21のいずれかに記載の記録装置において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の全体的なガス交換に関する機能の測定であることを特徴とする記録装置。
【請求項24】
請求項17乃至23のいずれかに記載の記録装置において、前記人工的に換気された肺の前記決定された状態が、対応する規定された肺位置に応じてコンピュータによって記録されることを特徴とする記録装置。
【請求項25】
請求項17乃至24のいずれかに記載の記録装置において、予め決められた差動ステップサイズが、前記人工的に換気された肺の状態が、予め決められた肺の位置の範囲を超えて決定されるまで前記位置アクチュエータに繰り返して適用されることを特徴とする記録装置。
【請求項26】
複数の肺位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺を換気するための人工的な換気器の少なくとも一の換気圧力を制御する制御装置において:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得る手段と、
b)位置アクチュエータによって人工的に換気された肺を規定の肺位置へ移動させる手段と、及び
c)前記規定の肺位置に応じて、及び前記規定の肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気圧力を制御する手段と、
を具えることを特徴とする制御装置。
【請求項27】
請求項26に記載の制御装置において、前記肺の状態の情報が、請求項25に記載の記録装置を用いて得られることを特徴とする制御装置。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の制御装置において、前記肺の状態の情報が、隣り合う二つの支持ポイント間の差に応じて前記支持ポイント間で補間されることを特徴とする制御装置。
【請求項29】
請求項26乃至28のいずれかに記載の制御方法において、少なくとも一の換気圧力が、前記肺の状態の情報が、複数の肺の位置に均一な分布を生むように制御されることを特徴とする制御装置。
【請求項30】
看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する位置決め装置において:
a)前記人工的に換気された肺の前記位置を変更する位置アクチュエータと、
b)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供する手段と、
c)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御する手段と、
を具えることを特徴とする位置決め装置。
【請求項31】
請求項30に記載の位置決め装置において、前記分布が、所定の周期的な制御信号セットに基づいてユーザのインターフェースを介して編集されることを特徴とする位置決め装置。
【請求項32】
請求項30に記載の位置決め装置において、前記分布が、第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された肺の第2の状態の、少なくとも二つの支持ポイントに基づいて肺状態情報に応じて編集されることを特徴とする位置決め装置。
【請求項1】
複数の肺位置に応じて患者の人工的に換気された肺の状態を記録する記録方法であって、前記患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が位置アクチュエータによって移動可能である記録方法において:
a)人工的に換気された肺を位置アクチュエータによって規定された肺位置に移動するステップと、
b)人工的に換気された肺の状態を決定するステップと、及び
c)この人工的に換気された肺の状態を前記規定された肺位置に応じて記録するステップと、
を具えることを特徴とする記録方法。
【請求項2】
請求項1に記載の記録方法において、前記看護用ベッドが縦軸を中心に回転可能であり、前記位置アクチュエータが、前記看護用ベッドをその縦軸を中心に回転させるモータであることを特徴とする記録方法。
【請求項3】
請求項1に記載の記録方法において、前記位置アクチュエータが、患者の下に配置したエアクッションであることを特徴とする記録方法。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれかに記載の記録方法において、前記規定された肺位置が、前記位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって達成されることを特徴とする記録方法。
【請求項5】
請求項1乃至3のいずれかに記載の記録方法において、前記規定された肺位置が、実際の肺の位置を測定する位置センサのフィードバック信号によって達成されることを特徴とする記録方法。
【請求項6】
請求項1乃至5のいずれかに記載の記録方法において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の形態学上の部分的あるいは全体的な情報及び/又は肺機能の測定であることを特徴とする記録方法。
【請求項7】
請求項1乃至5のいずれかに記載の記録方法において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の全体的なガス交換に関する機能の測定であることを特徴とする記録方法。
【請求項8】
請求項1乃至7のいずれかに記載の記録方法において、前記人工的に換気された肺の前記決定された状態が、対応する規定された肺位置に応じてコンピュータによって記録されることを特徴とする記録方法。
【請求項9】
請求項1乃至8のいずれかに記載の記録方法において、前記ステップa)、b)、c)が前記位置アクチュエータの予め決められた差動ステップサイズで、前記人工的に換気された肺の状態が、予め決められた肺の位置の範囲を超えて決定されるまで繰り返されることを特徴とする記録方法。
【請求項10】
複数の肺位置に応じて患者の人工的に換気された肺を換気するための人工的な換気器の少なくとも一の換気圧力を制御する制御方法であって、前記患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が位置アクチュエータによって移動可能である制御方法において:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得るステップと、
b)位置アクチュエータによって人工的に換気された肺を規定の肺位置へ移動させるステップと、及び
c)前記規定の肺位置に応じて、及び前記規定の肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気圧力を制御するステップと、
を具えることを特徴とする制御方法。
【請求項11】
請求項10に記載の制御方法において、前記肺の状態の情報が、請求項9に記載の記録方法を適用して得られることを特徴とする制御方法。
【請求項12】
請求項10又は11に記載の制御方法において、前記肺の状態の情報が、隣り合う二つの支持ポイント間の差に応じて前記支持ポイント間で補間されることを特徴とする制御方法。
【請求項13】
請求項10乃至12のいずれかに記載の制御方法において、少なくとも一の換気圧力が、前記肺の状態の情報が、複数の肺の位置に均一な分布を生むように制御されることを特徴とする制御方法。
【請求項14】
患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する位置決め方法であって、前記患者は看護用ベッドに寝ており、人工的に換気された肺の位置が対応する位置アクチュエータによって変更可能である位置決め方法において、
a)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供するステップと、
b)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御するステップと、
を具えることを特徴とする位置決め方法。
【請求項15】
請求項14に記載の位置決め方法において、前記分布が、所定の周期的な制御信号セットに基づいてユーザのインターフェースを介して編集されることを特徴とする位置決め方法。
【請求項16】
請求項14に記載の位置決め方法において、前記分布が、第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された肺の第2の状態の、少なくとも二つの支持ポイントに基づいて肺状態情報に応じて編集されることを特徴とする位置決め方法。
【請求項17】
複数の肺位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の状態を記録する記録装置において:
a)規定された肺位置に前記人工的に換気された肺を移動させる位置アクチュエータと、
b)前記人工的に換気された肺の状態を決定する決定手段と、及び
c)前記規定された肺位置に応じて前記人工的に換気された肺の状態を記録する記録手段と、
を具えることを特徴とする記録装置。
【請求項18】
請求項17に記載の記録装置において、前記看護用ベッドが縦軸を中心に回転可能であり、前記位置アクチュエータが、前記看護用ベッドをその縦軸を中心に回転させるモータであることを特徴とする記録装置。
【請求項19】
請求項17に記載の記録装置において、前記位置アクチュエータが、患者の下に配置したエアクッションを具えることを特徴とする記録装置。
【請求項20】
請求項17乃至19のいずれかに記載の記録装置において、前記規定された肺位置が、前記位置アクチュエータの予め決められたステップサイズによって達成されることを特徴とする記録装置。
【請求項21】
請求項17乃至19のいずれかに記載の記録装置において、前記規定された肺位置が、実際の肺の位置を測定する位置センサのフィードバック信号によって達成されることを特徴とする記録装置。
【請求項22】
請求項17乃至21のいずれかに記載の記録装置において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の形態学上の部分的あるいは全体的な情報及び/又は肺機能の測定であることを特徴とする記録装置。
【請求項23】
請求項17乃至21のいずれかに記載の記録装置において、前記人工的に換気された肺の状態が、肺の全体的なガス交換に関する機能の測定であることを特徴とする記録装置。
【請求項24】
請求項17乃至23のいずれかに記載の記録装置において、前記人工的に換気された肺の前記決定された状態が、対応する規定された肺位置に応じてコンピュータによって記録されることを特徴とする記録装置。
【請求項25】
請求項17乃至24のいずれかに記載の記録装置において、予め決められた差動ステップサイズが、前記人工的に換気された肺の状態が、予め決められた肺の位置の範囲を超えて決定されるまで前記位置アクチュエータに繰り返して適用されることを特徴とする記録装置。
【請求項26】
複数の肺位置に応じて看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺を換気するための人工的な換気器の少なくとも一の換気圧力を制御する制御装置において:
a)第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された第2の状態の少なくとも二つの支持ポイントに基づく肺状態情報を得る手段と、
b)位置アクチュエータによって人工的に換気された肺を規定の肺位置へ移動させる手段と、及び
c)前記規定の肺位置に応じて、及び前記規定の肺位置に関連する肺状態情報に応じて少なくとも一の換気圧力を制御する手段と、
を具えることを特徴とする制御装置。
【請求項27】
請求項26に記載の制御装置において、前記肺の状態の情報が、請求項25に記載の記録装置を用いて得られることを特徴とする制御装置。
【請求項28】
請求項26又は27に記載の制御装置において、前記肺の状態の情報が、隣り合う二つの支持ポイント間の差に応じて前記支持ポイント間で補間されることを特徴とする制御装置。
【請求項29】
請求項26乃至28のいずれかに記載の制御方法において、少なくとも一の換気圧力が、前記肺の状態の情報が、複数の肺の位置に均一な分布を生むように制御されることを特徴とする制御装置。
【請求項30】
看護用ベッドに寝ている患者の人工的に換気された肺の位置の変更を制御する位置決め装置において:
a)前記人工的に換気された肺の前記位置を変更する位置アクチュエータと、
b)複数の位置周期及び/又は複数の振幅の分布を有する周期的制御信号を提供する手段と、
c)前記周期的制御信号によって位置アクチュエータを制御する手段と、
を具えることを特徴とする位置決め装置。
【請求項31】
請求項30に記載の位置決め装置において、前記分布が、所定の周期的な制御信号セットに基づいてユーザのインターフェースを介して編集されることを特徴とする位置決め装置。
【請求項32】
請求項30に記載の位置決め装置において、前記分布が、第1の肺位置による人工的に換気された肺の第1の状態と、第2の肺位置による人工的に換気された肺の第2の状態の、少なくとも二つの支持ポイントに基づいて肺状態情報に応じて編集されることを特徴とする位置決め装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8A】
【図8B】
【図8C】
【図8D】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2007−537782(P2007−537782A)
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−506517(P2007−506517)
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010741
【国際公開番号】WO2005/094369
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501394620)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (25)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年12月27日(2007.12.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月29日(2005.3.29)
【国際出願番号】PCT/US2005/010741
【国際公開番号】WO2005/094369
【国際公開日】平成17年10月13日(2005.10.13)
【出願人】(501394620)ケーシーアイ ライセンシング インコーポレイテッド (25)
【Fターム(参考)】
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