説明

複数の開口形態を選択できるキャップ

【課題】複数の開口形態を簡単な操作で選択できて収納物を複数の吐出形態或いは振り出し形態で吐出或いは振り出しを行える複数の開口形態を選択できるキャップを提案する。
【解決手段】容器体Bの口頸部2の上端開口を覆う頂板11に収納物排出用の透孔14を備えたキャップ本体A1と、キャップ本体上に回転可能に設けるとともに、異種の開口形態をなす複数の開口21…を、透孔14と合致する中心円上に配置した回転板A2と、キャップ本体に開閉可能に連結した蓋体A3とを備えている。そして、使用目的に応じて回転板を回転して所定の開口をキャップ本体の透孔と合致させ、所定形態の吐出或いは振り出しが行える如く選択する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は複数の開口形態を選択できるキャップに関し、詳しくは、収納物を複数の吐出形態で吐出でき或いは複数の振り出し形態で振り出すことができるキャップに関する。
【背景技術】
【0002】
収納物が極めて粘度の高い液或いは粘稠物質等の場合の容器としてチューブ容器が使用され、また、そのキャップとして、例えば、チューブ容器の口頸部外面に、ノズル付きの頂板外周部から垂下する周壁を嵌合させたキャップ本体と、ノズルの上端開口面を閉塞する補助蓋とからなるものが一般に知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
また、上記した極めて粘度の高い液或いは粘稠物質等の収納物の用途に応じて、例えば複数の小開口を穿設した吐出口を備えた容器が提案されている(例えば、特許文献2参照)。具体的には、チューブ容器の口頸部の先端部分に細かい複数の小孔を設けた排出口構造を備えた構造や、口頸部に着脱自在に設けた補助キャップの先端に細かい複数の孔を設けた構造となっている。
【0004】
また、粉体物を収納して少量ずつ振り出す振り出し容器として、キャップを基部と中間体と蓋体の三重構造とし、中間体に振出用小孔を設けたものが提案されている(例えば特許文献3参照)。
【特許文献1】特開2002−114241号公報
【特許文献2】特開2003−261154号公報
【特許文献3】特開2002−193298号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記した各容器はそれぞれ収納物の用途,物性等に応じてそれぞれの形態での吐出或いは振り出しを行える優れたものであるが、それぞれの吐出或いは振り出しの形態が一種類である点に物足りなさがあり、その要求を満たすためには複数の容器を取り揃えておかなければならない不便がある。
【0006】
本発明は、簡単な操作で複数種類の開口形態を選択でき、それに伴って複数形態の収納物の吐出,或いは振り出しを行えるキャップを提案する。また、その構造も簡単で低コストでの製造も容易であるキャップを提案する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明のキャップは、キャップ本体と、回転板と、蓋体とを備えている。
【0008】
本発明のキャップは容器体に装着して使用するが、その容器体としては、口頸部を備えるものであれは特に限定されず、収納物の種類により適宜選択すれば良い。例えば、収納物が高粘度の液の場合には、弾性復元力を備えて圧搾可能な胴部を有するチューブ容器形態のものが好ましく採用でき、また、収納物が粉末等の振り出して使用するものの場合には、通常のボトルタイプの容器が使用できる。
【0009】
キャップ本体は合成樹脂等により形成されたもので、容器体の口頸部に嵌合させ、口頸部上端開口を覆う頂板に収納物排出用の透孔を備えている。一般的な形態として、口頸部外周に嵌合させる周壁の上端より頂板を延設した下端開口の有頂筒状をなす形態のもので、頂板に透孔を穿設する。透孔の穿設位置はキャップ本体の頂板の中心部分に設けても、偏心位置に設けても良く、回転板の設置位置等と連繋させて適宜選択すれば良い。
【0010】
回転板は合成樹脂や金属等により形成され、キャップ本体上に回転可能に設けている。回転板を回転させる手段として、閉蓋状態で回転させることができる様に構成する場合と、開蓋状態て回転させることができる様に構成する場合とが考えられ、前者の場合には、例えばキャップ本体と蓋体との間からその一部を露出して回転させることができる様に構成すれば良い。その場合、回転板の外面に滑り止め用のローレットを設けると良い。また、後者の場合には、開蓋した後、回転板上面に突出した部分、例えば,開口を穿設している突部を掴んで回転させるか、或いは、回転板上に指掛け用の突起を突設し、その突起を持って回転させる如く構成しても良い。
【0011】
回転板は、異種の開口形態をなす複数の開口を、透孔と合致する中心円上に配置している。異種の開口形態とは、例えば、径の大小や開口の横断面形状の相違が挙げられ、或いは単数、複数の相違が挙げられる。複数の場合とは、複数の小孔の集合体を一つの開口として構成する場合である。開口の数に制限はないが、この種のキャップの大きさを考慮すれば3乃至4が妥当な数であると考えられるが、当然これに限らない。また、透孔と合致する中心円上に配置するとは、回転板の中心から透孔までの距離(正確には当然所定の幅をもつが)を半径とする円周上に位置することをいう。更に、回転板をキャップ本体に設置する位置は、キャップ本体に設けた収納物排出用の透孔の位置により左右される。透孔がキャップ本体の頂板中央に設けられている場合には、回転板は中心がキャップ本体の中心から偏心した位置となる。また、透孔をキャップ本体の頂板の中心から、例えば前方へ偏心した位置に設けた場合には、回転板の中心をキャップ本体の中心に位置させることができる。
【0012】
また、回転板の開口と透孔とが連通可能に合致した状態を検知する位置併せ検知手段を設けると良い。位置併せ検知手段はいずれか一つの開口と、キャップ本体の透孔とが合致した時点を検知できれば種々の形態を採用できるが、例えば、回転板とキャップ本体との対向面のいずれか一方に係合突起を設け、他方に係合凹部を設けることで構成できる。例えば、回転板下面の所定位置に一箇所の係合突起を突設し、対向するキャップ本体上面の所定位置に開口の数に相当する数の係合凹部を凹設し、係合突起が各係合凹部と係合する位置で透孔と各開口が合致する如く構成する。また、この場合係合突起の数を係合凹部の数と同じくしても良く、また、係合突起をキャップ本体上面に、係合凹部を回転板下面に設けても良い。また、別の例として、回転板とキャップ本体とにそれぞれ目印を設けて、それらを一致させることにより透孔と各開口とが合致する如く構成しても良い。
【0013】
蓋体はキャップ本体に開閉可能に設けた合成樹脂製のもので、キャップ本体と別体に形成して周壁をキャップ本体周壁外周に螺着する形態としてもよいが、後部下端をキャップ本体後部上端に回動可能に連結して開閉可能に設けたものが好ましく使用できる。特に、キャップ本体と蓋体とを一体に形成したものがより好ましく使用できる。蓋体の裏面には栓を設けると良い。この栓は、キャップ本体の透孔と連通している位置の回転板の開口を閉塞して嵌着され、収納物の漏れや容器体内の気密性の付与等を行えるとともに、回転板の不必要な回転を防止することができる。栓の垂設位置は、キャップ本体の透孔と連通している位置の開口を閉塞できる位置に併せて設ければ良い。
【0014】
第1の手段として、以下の通り構成した。即ち、容器体Bの口頸部2に嵌合させ、口頸部2上端開口を覆う頂板11に収納物排出用の透孔14を備えたキャップ本体A1と、キャップ本体A1上に回転可能に設けるとともに、異種の開口形態をなす複数の開口21…を、透孔14と合致する中心円上に配置した回転板A2と、キャップ本体A1に開閉可能に連結した蓋体A3とからなることを特徴とする複数の開口形態を選択できるキャップ。
【0015】
第2の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段に於いて、いずれかの開口21と透孔14とが連通可能に合致した状態を検知する位置併せ検知手段を設け、該検知手段は、回転板A2とキャップ本体A1とのいずれか一方に設けた係合突起22と、他方に設けた係合凹部16とで構成した。
【0016】
第3の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1の手段又は第2の手段のいずれかの手段に於いて、蓋体A3裏面に、透孔14と合致している開口21を密閉して回転板A2上に嵌合する栓33を設けた。
【0017】
第4の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1手段乃至第3の手段のいずれかの手段に於いて、開口21…が、大径の第1開口21a と、小径の第2開口21b と、複数の小孔の集合体である第3開口21c とからなる。
【0018】
第5の手段として、以下の通り構成した。即ち、前記第1手段乃至第4の手段のいずれかの手段に於いて、前記キャップ本体A1の一部を下方へ陥没させて回転板A2を収納する収納凹部12を凹設し、該収納凹部12は、回転板A2の一部がキャップ本体周壁10外方へ突出する如き側面開口部13を備えている。
【発明の効果】
【0019】
本発明のキャップは、簡単な操作により収納物の取出形態を複数の形態で行える利点がある。また、その構造も簡単で、安価に製造できる利点もある。
【0020】
また、いずれかの開口21と透孔14とが連通可能に合致した状態を検知する位置併せ検知手段を設け、該検知手段を、回転板A2とキャップ本体A1とのいずれか一方に設けた係合突起22と、他方に設けた係合凹部16とで構成した場合には、キャップ本体A1の透孔14と必要な開口21との合致を感触及び視覚で容易に判断でき、しかも、両者の合致はズレの無い確実な合致となり、各開口21の特色を確実に発揮することができる。
【0021】
更に、蓋体A3裏面に、透孔14と合致している開口21を密閉して回転板A2上に嵌合する栓33を設けた場合には、容器が倒れた場合等に収納物の漏出を防止でき、また、容器体内の気密性を維持でき、更に、回転板A2の不用意な回転を防止できるため、開口21が開蓋の際に常時所定位置に存在するという利点もある。
【0022】
また、開口21…が、大径の第1開口21a と、小径の第2開口21b と、複数の小孔の集合体である第3開口21c とからなる場合には、収納物を粘度の高い液とした場合に好適であり、太径棒状の吐出形態と、小径棒状の吐出形態と、複数の極小径棒状形態との選択ができ、使用者や用途に併せて簡単にこれらを切り換えられることができる。
【0023】
また、前記キャップ本体A1の一部を下方へ陥没させて回転板A2を収納する収納凹部12を凹設し、該収納凹部12は、回転板A2の一部がキャップ本体周壁10外方へ突出する如き側面開口部13を備えている如く構成した場合には、容器を握った手の親指等により簡単に回転板A2を回転させることができてより使い勝手が良く、また、回転板A2がキャップ本体A1上面に突出しないので使用時の外観も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
以下、本発明の実施例の形態を図面を参照して説明する。
【0025】
図1乃至図5は本発明キャップの一例を示し、図中Aはキャップを示す。キャップAは、キャップ本体A1と、回転板A2と、蓋体A3とを備えている。尚、BはキャップAを装着する容器体を示す。
【0026】
キャップ本体A1は、容器体Bの口頸部2に螺合させた周壁10の上端縁より、口頸部2上端開口を覆う頂板11を延設した下端開口の有頂筒状をなし、頂板11の一部を下方へ陥没させて回転板A2を収納する収納凹部12を凹設している。収納凹部12は円形の回転板A2の一部がキャップ本体周壁10外方へ突出する如き側面開口部13を備えた円弧状の周壁部を備え、キャップ本体A1の中心部分に相当する底面部に透孔14を開口している。また、収納凹部12の底面上に回転板A2を軸着するための支軸15を立設しており、更に、頂板11裏面の収納凹部12部分とそれ以外の部分に亘って環状に垂設した環状突起17下面を口頸部2上面に圧接してこの部分に液密性を付与している。
【0027】
回転板A2は合成樹脂製で円板状をなし、一部を収納凹部12の側面開口部13より突出した状態で収納凹部12に収納され、下面中央に設けた軸孔20に支軸15を軸着して回転可能にキャップ本体A1に装着している。回転板A2には透孔14を介して収納物を吐出する複数の開口21…を設けている。これら開口21…はそれぞれ大径の第1開口21a と、小径の第2開口21b と、複数の小孔の集合体である第3開口21c とから構成している。第1開口21a は透孔14と同径をなし、頂板11上面に突設した第1突部23内を介してその上端に上端を開口している。また、第2開口21b は透孔14より小径であり、頂板11上面に突設した第2突部24内を介してその上端に上端を開口している。更に、第3開口21c は透孔14より小径の4個の小孔1の集合体であり、頂板11上面に突設した第3突部25内を介してその上端に上端を開口している。
【0028】
回転板A2の裏面所定位置には突出幅の小さい係合突起22が突設されており、一方、キャップ本体A1の収納凹部12内底面の所定位置には係合突起22が係合する係合凹部16が設けられている。係合凹部16は係合突起22の回動軌跡上の所定の三箇所に設けられており、透孔14と第1開口21a とが合致する位置或いは透孔14と第2開口21b とが合致する位置、或いは透孔14と第3開口21c が合致する位置に於いて、それぞれ係合突起22が係合凹部16と係合する如く構成している。この係合突起22と係合凹部16との係合は、その突出幅,横断面積等を考慮して比較的容易に外れる如く構成しており、各係合凹部16間に於いては係合突起22は収納凹部12底面を摺動しつつ回動する如く構成している。また、回転板A2の外周縁にはローレットを刻設して滑り止め効果を図っている。
【0029】
蓋体A3は、キャップ本体A1と合成樹脂により一体に形成したもので、周壁30の上端より頂壁31を延設した下端開口の有頂筒状をなし、キャップ本体A1の後部に一対のヒンジ32を介して周壁30の後部下端部を一体に連結しており、各ヒンジ32の作用でキャップ本体A1に対して弾性反転可能に連結している。周壁30の下面は閉蓋時にキャップ本体A1の上面周縁部に当接される如く構成しており、その際、頂壁31裏面より垂設した栓33が、透孔14位置に合致した開口21である第1開口21a の第1突部23外周に嵌合する如く構成している。
【0030】
図1の状態から蓋体A3を開き図2の状態とし、目的とする吐出形態が図2の第1開口21a の場合には、そのままの状態から容器体胴部を圧搾して収納物を吐出することができる。また、他の吐出形態を使用したい場合には、開蓋状態で回転板A2を回転させて所定の開口21と透孔14とを連通させる。その際、係合突起22が係合凹部16に係合して所定の位置まで回動して所望の開口21と透孔14とが連通したことを感触で知ることができ、また、中央位置に開口21が到達した際に前記感触を得られるため視覚的にも知ることができる。使用後は、そのまま蓋体A3を閉じれば良く、その際、栓33が中央に位置する開口21を穿設した突部の外周に嵌合するため、閉蓋時には回転板A2が不用意に回転してしまうという不都合は生じない。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】本発明キャップの斜視図である。(実施例1)
【図2】本発明キャップの開蓋状態の斜視図である。(実施例1)
【図3】本発明キャップの縦断面図である。(実施例1)
【図4】本発明キャップに於ける位置決め部分の要部縦断面図である。(実施例1)
【図5】本発明キャップの開蓋状態の平面図である。(実施例1)
【符号の説明】
【0032】
A…キャップ
A1…キャップ本体
10…周壁,11…頂板,12…収納凹部,13…側面開口部,14…透孔,15…支軸,
16…係合凹部
A2…回転板
20…軸孔,21…開口,21a …第1開口,21b …第2開口,21c …第3開口,
22…係合突起、23…第1突部,24…第2突部,25…第3突部
A3…蓋体
30…周壁,31…頂壁、32…ヒンジ,33…栓
B…容器体
2…口頸部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器体Bの口頸部2に嵌合させ、口頸部2上端開口を覆う頂板11に収納物排出用の透孔14を備えたキャップ本体A1と、キャップ本体A1上に回転可能に設けるとともに、異種の開口形態をなす複数の開口21…を、透孔14と合致する中心円上に配置した回転板A2と、キャップ本体A1に開閉可能に連結した蓋体A3とからなることを特徴とする複数の開口形態を選択できるキャップ。
【請求項2】
いずれかの開口21と透孔14とが連通可能に合致した状態を検知する位置併せ検知手段を設け、該検知手段は、回転板A2とキャップ本体A1とのいずれか一方に設けた係合突起22と、他方に設けた係合凹部16とで構成してなる請求項1記載の複数の開口形態を選択できるキャップ。
【請求項3】
蓋体A3裏面に、透孔14と合致している開口21を密閉して回転板A2上に嵌合する栓33を設けてなる請求項1又は請求項2のいずれかに記載の複数の開口形態を選択できるキャップ。
【請求項4】
開口21…が、大径の第1開口21a と、小径の第2開口21b と、複数の小孔の集合体である第3開口21c とからなる請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の複数の開口形態を選択できるキャップ。
【請求項5】
キャップ本体A1の一部を下方へ陥没させて回転板A2を収納する収納凹部12を凹設し、該収納凹部12は、回転板A2の一部がキャップ本体周壁10外方へ突出する如き側面開口部13を備えている。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2008−94455(P2008−94455A)
【公開日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−280272(P2006−280272)
【出願日】平成18年10月13日(2006.10.13)
【出願人】(000006909)株式会社吉野工業所 (2,913)
【Fターム(参考)】