複数周波アンテナ
【課題】主偏波の利得の高い、複数の周波数帯域で利用できる複数周波アンテナを提供する。
【解決手段】複数周波アンテナ100は、基板99とアンテナ素子120,220とシャントインダクタ用導体170,270とシリーズキャパシタ用導体160(a,b),260(a,b)とシリーズインダクタ用導体140,240と接続点199と入出力端子110,210とから構成される。アンテナ素子120,220は基板99上に配置してされており、シャントインダクタ用導体170,270を介して接続点199に電気的に接続されている。また、アンテナ素子120,220は、シリーズキャパシタ用導体160(a,b),260(a,b)との対向部分とキャパシタを形成し、このキャパシタとシリーズインダクタ用導体140,240を介して入出力端子110,210に電気的に接続されている。
【解決手段】複数周波アンテナ100は、基板99とアンテナ素子120,220とシャントインダクタ用導体170,270とシリーズキャパシタ用導体160(a,b),260(a,b)とシリーズインダクタ用導体140,240と接続点199と入出力端子110,210とから構成される。アンテナ素子120,220は基板99上に配置してされており、シャントインダクタ用導体170,270を介して接続点199に電気的に接続されている。また、アンテナ素子120,220は、シリーズキャパシタ用導体160(a,b),260(a,b)との対向部分とキャパシタを形成し、このキャパシタとシリーズインダクタ用導体140,240を介して入出力端子110,210に電気的に接続されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波の無線信号を、高効率で送受信する機能を有する、小型の複数周波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANやブルートゥース(登録商標)等の様々な無線通信システムが普及している。これらの無線通信システムには、各々、長所と短所がある。このため、1つの無線通信システムのみを利用するのではなく、複数の無線通信システムを複合的に利用するのが一般的である。
無線通信システムによって使用する周波数帯域に違いがある。このため、複数の通信システムを利用するには、複数の周波数帯域の無線信号を送受信する必要がある。複数周波数の無線信号を送受信するためには、単周波用アンテナを複数個使用するか、複数の周波数に対応する複数周波アンテナを使用する必要がある。ただし、単周波用のアンテナを複数個用いるより複数周波アンテナを用いる方が、アンテナの小型化、簡易化、低コスト化という点において有利である。
【0003】
複数周波アンテナの一例が特許文献1に開示されている。この複数周波アンテナは、導体板と、該導体板上に設けられた誘電体と、該誘電体に接し、異なる特性を有する複数のアンテナ素子と、から構成されている。複数のアンテナ素子は、互いに異なる周波数帯域で動作するので、一つのアンテナで複数の周波数帯域に対して動作することができる。
【0004】
しかし、この複数周波アンテナは、複数のアンテナ素子から構成されているため、複数のアンテナ素子を設置するための大きなスペースが必要であり、アンテナが大型化してしまう。また、構成も複雑になってしまう。
【0005】
一方、複数の周波数で利得の大きい、1つのアンテナ素子から構成される小型の複数周波アンテナが、本出願人によってすでに出願されている(特願2009−180009)。
【0006】
この複数周波アンテナは、アンテナ素子と、アンテナ素子と接地部とを接続する第1のインダクタと、給電点と、給電点とアンテナ素子とを接続する、第2のインダクタとキャパシタとの直列回路と、を備える。
この第1と第2のインダクタのインダクタンス及びキャパシタのキャパシタンスは、複数の共振周波数を持つように予め調整されている。この複数周波アンテナは、1つのアンテナ導体で、複数の周波数に対して利得が大きい、という特徴を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−086518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特願2009−180009に記載の複数周波アンテナは、接地用の導体に電流が流れる可能性があった。設置用の導体に電流が流れると、ノイズやエネルギー損失が生じる。そのため、この複数周波アンテナは、この接地部を流れる電流の発生を防ぐ、という点で、改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、複数の周波の無線信号を送受信する機能を有する、エネルギー損失の少ない、小型の複数周波アンテナを提供することを目的とする。
また、放射強度が1方向に強い、複数の周波数帯域で利用できる小型の複数周波アンテナを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る複数周波アンテナは、
第1の入出力端子と、第1のアンテナ導体と、前記第1の入出力端子と前記第1のアンテナ導体とを接続する、第1のインダクタと第1のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第1のアンテナ導体に接続された第2のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第1のアンテナと、
第2の入出力端子と、第2のアンテナ導体と、前記第2の入出力端子と前記第2のアンテナ導体とを接続する、第3のインダクタと第2のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第2のアンテナ導体に接続され、他端を前記第2のインダクタの他端に接続された第4のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第2のアンテナと、
を備え、
前記第1のアンテナ導体の電波の主伝搬方向と、前記第2のアンテナ導体の電波の主伝搬方向とが、実質的に同方向である、
ことを特徴とする。
【0011】
例えば、前記第1のアンテナの複数の共振周波数と、前記第2のアンテナの複数の共振周波数とは、実質的に同一である。
【0012】
また、誘電体板をさらに備え、
前記第1と第2の入出力端子と前記第1と第2のアンテナ導体とは、前記誘電体板の1面に形成され、
前記第2と第4のインダクタは、誘電体板の他面に配置され、ビアを介して、前記第2のインダクタ1端は前記第1のアンテナ導体に、前記第4のインダクタの1端は前記第2のアンテナ導体に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第1のアンテナ導体の1部に対向する第1の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第2のアンテナ導体の1部に対向する第2の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第1のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第1の導電体と接続され、他端を前記第1の入出力端子に接続され、
前記第3のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第2の導電体と接続され、他端を前記第2の入出力端子に接続されてもよい。
【0013】
また、前記第1と第2のアンテナ導体の主伝搬方向に配置されている、前記第1と第2のアンテナ導体が放射する電波を遮断・反射する反射器を更に備えてもよい。
【0014】
例えば、前記反射器は、
前記反射器から前記第1と第2のアンテナ導体へ反射される電波と、該電波と同方向に前記第1と第2のアンテナ導体から放射される電波と、が強め合う距離に配置されている。
【0015】
例えば、前記反射器は、第3のアンテナ導体と、第4のアンテナ導体と、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する第5のインダクタと、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する、第6のインダクタと第3のキャパシタの直列回路と、から構成され、
当該反射器は前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数と実質的に同一の複数の共振周波数を持ち、
当該反射器の電波の主伝搬方向は、前記第1と第2のアンテナの電波の主伝搬方向と、実質的に同方向である。
【0016】
例えば、前記反射器は、複数の方形パターンを装荷された線路導体であり、
当該線路導体は、前記第1と第2のアンテナの主電波の電界方向に平行に延在しており、
当該反射器は、前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数のうち、少なくとも1つの共振周波数を持つ。
【0017】
例えば、前記反射器の形状は、焦点が前記第1と第2の入出力端子近傍である曲面状である。
【0018】
また、前記アンテナ導体から前記反射器に向かって斜め方向に進行する電磁波を、前記反射器方向に反射する反射導体を更に備えてもよい。
【0019】
また、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは、鏡像対称に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主偏波の利得の高い、複数の周波数帯域で利用できる複数周波アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る複数周波アンテナの斜視図である。
【図2】図1に示す複数周波アンテナの平面図である。
【図3】図1に示す複数周波アンテナの底面図である。
【図4】図1に示す複数周波アンテナの断面図である。
【図5】図1に示す複数周波アンテナの等価回路の一部分を示す図である。
【図6】図1に示す複数周波アンテナの等価回路の全体を示す図である。
【図7】図1〜図6に示す複数周波アンテナの反射損失の周波数特性を示す図である。
【図8】(a),(b)は図1〜図6に示す複数周波アンテナの指向性を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図10】図9に示す複数周波アンテナの指向性を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図12】図11に示す複数周波アンテナの指向性を示す図である。
【図13】本発明の実施形態4に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図14】図13に示す複数周波アンテナの応用例を示す図である。
【図15】本発明の実施形態5に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図16】図15に示す複数周波アンテナの断面図である。
【図17】図9に示す複数周波アンテナの応用例を示す図である。
【図18】従来の複数周波アンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る複数周波アンテナ100を説明する。
【0023】
まず、図1〜4を参照して、実施形態1に係る複数周波アンテナ100の構成を説明する。図1は複数周波アンテナ100の斜視図、図2は複数周波アンテナ100の平面図、図3は複数周波アンテナ100の底面図、図4は、複数周波アンテナ100の図2及び図3のA−A’線での断面を示す断面図である。なお、図中のX,Y,Z軸は、各図に共通の方向を示す。X軸方向は、アンテン100の高さ方向に平行、Y軸は長辺方向に平行、Z軸は短辺方向に平行である。
【0024】
図示するように、複数周波アンテナ100は、基板99と、複数周波アンテナ101,102と、から構成される。
【0025】
基板99は、板状の誘電体で、例えば、ガラスエポキシ基盤(FR4)から構成される。
【0026】
複数周波アンテナ101と複数周波アンテナ102は同様の構成をしており、放射する電磁波の主伝搬方向が同方向になるように、ほぼ鏡像対称に基板99に配置されている。複数周波アンテナ101,102は、入出力端子110,210、アンテナ素子120,220、ビア130,150a,150b,230,250a,250b、ビア導体150,250、シリーズインダクタ用導体140,240、シリーズキャパシタ用導体160a,160b,260a,260b、シャントインダクタ用導体170,270から構成されている。
【0027】
アンテナ素子120,220は、上底より下底が長い等脚台形の導体板と、この等脚台形の下底に接続された半円の導体板と、から構成される。アンテナ素子120とアンテナ素子220は、その等脚台形の上底が対向するように、基板99の一方の主面に配置されている。
【0028】
ビア130,230は、アンテナ素子120,220を構成する等脚台形の2本の対角線のほぼ交点を、基板99の一方の主面から他方の主面に貫通して形成される。ビア130,230の内部には、一端部がアンテナ素子120,220に接続された導体が充填されている。
【0029】
シャントインダクタ用導体170,270は、線路導体から構成され、基板99の他方の主面上に延在し、一端がビア130,230の他端部に接続されている。シャントインダクタ用導体170,270の他端は、基板99の他方の主面のほぼ中央の接続点199において、相互に接続されている。つまり、複数周波アンテナ101と複数周波アンテナ102とは、接続点199において、相互に接続される。
【0030】
シリーズキャパシタ用導体160aとシリーズキャパシタ用導体160bとは、間にシャントインダクタ用導体170を挟むように、基板99の他方の主面に、アンテナ素子120の一部に対向して、配置されている。アンテナ素子120の一部とシリーズキャパシタ用導体160a,160bの対向部分と、基板99のそれらの間に位置している部分により、アンテナ素子120,220に直列に接続されたシリーズキャパシタが形成される。
同様に、シリーズキャパシタ用導体260aとシリーズキャパシタ用導体260bとは、間にシャントインダクタ用導体270を挟むように、基板99の他方の主面に、アンテナ素子220の一部に対向して、配置されている。アンテナ素子220の一部とシリーズキャパシタ用導体260a,260bの対向部分と、基板99のそれらの間に位置している部分により、アンテナ素子220に直列に接続されたシリーズキャパシタが形成される。
【0031】
ビア導体150,250は、基板99の一方の主面に配置され、基板99の一方の主面から他方の主面に貫通して形成される2つのビア150a及び150b,250a及び250bを介してシリーズキャパシタ用導体160a及び160b,260a及び260bに接続されている。
【0032】
シリーズインダクタ用導体140,240は、線路導体から構成され、基板99の一方の主面に形成されており、その一端は、ビア導体150,250に接続されている。
【0033】
入出力端子110,210は、基板99の一方の主面のほぼ中央に、近接して形成されており、一端部をシリーズインダクタ用導体140,240の他端に接続されている。入出力端子110,210は、図示せぬ1対の給電線が接続され、差動信号を供給される。入出力端子110,210は給電点として機能し、複数周波アンテナ100は、入出力端子110,210との間に供給された送信信号を電波として空間に放射し、受信した電波を電気信号に変換して入出力端子110,210から給電線に伝送する。
【0034】
上記構成の複数周波アンテナ100は、例えば、基板99にビア130,150a,150b,230,250a,250bを開口し、この開口をメッキ等で充填し、続いて、基板99の両面に銅箔を貼り付け、銅箔をPEP(光エッチング法)等によりパターニングすることにより製造される。
【0035】
上述した物理的構成を有する複数周波アンテナ100の複数周波アンテナ101,102の電気的構成は、図5に示す等価回路で表される。
図示するように、複数周波アンテナ101,102は、電気的には、シリーズインダクタLserと、シリーズキャパシタCserと、アンテナ素子120,220の等価回路ANTと、シャントインダクタLshと、空間との結合の等価回路ANTsと、入出力端子110,210と、接続点199と、から構成される。
なお、シリーズインダクタLserはシリーズインダクタ用導体140,240のインダクタンスに対応し、シャントインダクタLshはシャントインダクタ用導体170,270のインダクタンスに対応する。また、シリーズキャパシタCserは、シリーズキャパシタ用導体160a,160b,260a,260b等によって形成されるシリーズキャパシタに対応する。
【0036】
複数周波アンテナ101,102の等価回路ANTは、アンテナ素子120,220の入力インピーダンスを右手系の線路で表現した回路であり、インダクタL1antとインダクタL2antとキャパシタCantから構成される。
【0037】
空間との結合の等価回路ANTsは、アンテナ素子120,220のサイズと形状に依存し、アンテナ素子120,220と空間との結合によるインピーダンスを表現する回路である。空間との結合の等価回路ANTsは、キャパシタCsと、基準インピーダンスRsと、インダクタLsから構成される。
【0038】
図5に示すように、入出力端子110,210には、シリーズインダクタLserとシリーズキャパシタCserとの直列回路の一端が接続される。
【0039】
シリーズインダクタLserとシリーズキャパシタCserとの直列回路の他端には、複数周波アンテナ101,102の等価回路ANTを構成するインダクタL1antの一端が接続される。インダクタL1antの他端には、キャパシタCantの一端とインダクタL2antの一端が接続される。キャパシタCantの他端は、接続点199に接続される。
【0040】
シャントインダクタLshの一端は、インダクタL2antの他端に接続される。シャントインダクタLshの他端は、接続点199に接続される。
【0041】
空間との結合の等価回路ANTsのキャパシタCsの一端が、インダクタL2antの他端とシャントインダクタLshの一端との接続点に接続される。キャパシタCsの他端には、インダクタLsの一端と基準インピーダンスRsの一端が接続される。インダクタLsの他端と基準インピーダンスRsの他端は、接続点199に接続される。
【0042】
空間との結合の等価回路ANTsにおけるキャパシタCsのキャパシタンスとインダクタLsのインダクタンスは、アンテナ素子120,220を内包する球の半径aと基準インピーダンスRsに依存し、次の式(1)と(2)で表される。
Cs=a/(c×Rs) ・・・(1)
Ls=(a×Rs)/c ・・・(2)
ここで、Cs:キャパシタCsのキャパシタンス[F]
Ls:インダクタLsのインダクタンス[H]
Rs:基準インピーダンスRsの抵抗値[Ω]
a:アンテナ素子を内包する球の半径[m]
c:光速[m/s]
【0043】
複数周波アンテナ101,102は、上述したように、接続点199によって相互に接続されている。同様に、複数周波アンテナ101,102からなる複数周波アンテナ100の等価回路も、図6に示すように接続点199によって相互に接続された構成をし、入出力端子110,210に、図示せぬ1対の給電線が接続されている。
【0044】
複数周波アンテナ100は、図6の等価回路において、複数周波アンテナ100で用いるそれぞれ周波数において、入力インピーダンスの虚数部が0に、実部が50Ωになるように、シャントインダクタ用導体170,270、シリーズキャパシタ用導体160a,160b,260a,260b、シリーズインダクタ用導体140,240のパターンを調整される。
本実施形態では、2.5GHzと5,2GHzの2つの周波数で、入力インピーダンスの虚数部が0に、実部が50Ωになるように、各パターンが調整されている。
【0045】
なお、アンテナ素子120,220の空間との結合の等価回路ANTsの各インダクタのインダクタンス及びキャパシタのキャパシタンスは、上述した式(1)、(2)により求められる。
【0046】
次に、上記物理的構成及び電気的構成を有する複数周波アンテナ100の反射損失の周波数特性について説明する。
【0047】
複数周波アンテナ100の反射損失の周波数特性を図7に示す。この特性は、シャントインダクタLshのインダクタンスを5.1nH、シリーズキャパシタCserのキャパシタンスを0.16pF、シリーズインダクタLserのインダクタンスを5.7nHに、設定し、2.5GHzと5.2GHzにおいての入力インピーダンスを50Ωに調整したときの、複数周波アンテナ100の反射損失の周波数特性である。
また、図7の横軸は周波数(GHz)、縦軸は反射損失S11(dB)を示す。
【0048】
複数周波アンテナ100は、上述したように、その等価回路において2.5GHzと5.2GHzにおいて、入力インピーダンスの虚数部が0になっており、この周波数において共振し、利得が大きくなる。そのため、本実施形態では、図7に示すように、2.5GHz付近と、5.2GHz付近の2つの周波数帯域において、反射損失S11が−10dB以下になっている。従って、複数周波アンテナ100は、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数において、十分な利得を得ることができる複数周波アンテナとして機能する。
【0049】
次に、上記物理的構成及び電気的構成を有する複数周波アンテナ100の偏波特性について説明する。なお理解を容易にするために、特願2009−180009に記載の多周波アンテナ900の偏波と比較して説明する。なお、多周波アンテナ900は、本発明の複数周波アンテナ101,102に対応する。
【0050】
多周波アンテナ900は、図18に示すように、基板901と、給電点910と、アンテナ素子920と、ビア930,950と、シリーズインダクタ用導体940と、シリーズキャパシタ用導体960と、シャントインダクタ用導体970と、接地部980と、から構成されている。
【0051】
給電点910は入出力端子110に、アンテナ素子920はアンテナ素子120に、ビア930,950はビア130,150a,150bに、シリーズインダクタ用導体940はシリーズインダクタ用導体140に、シリーズキャパシタ用導体960はシリーズキャパシタ用導体160a,160bに、シャントインダクタ用導体970はシャントインダクタ用導体170に、それぞれ対応する。
【0052】
接地部980は、基板901の一辺部の一方の主面に配置されたグランド導体981と、基板901の一辺部の他方の主面に配置されたグランド導体983と、グランド導体981とグランド導体983とを接続する複数のビア982と、から構成され、接地されている。
【0053】
多周波アンテナ900は、複数周波アンテナ101,102と同様に、図5に示した等価回路で表され、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数において入力インピーダンスの虚部が0になるように調整されている。
【0054】
この多周波アンテナ900の偏波の特性と、複数周波アンテナ100の偏波の特性は、それぞれ図8(a),(b)に示すようになる。
図8(a)は、多周波アンテナ900の2.5GHzと5.2GHzにおける主偏波と交差偏波の放射パターンを、図8(b)は、複数周波アンテナ100の2.5GHzと5.2GHzにおける主偏波と交差偏波の放射パターンを示したものである。
なお、図8(a),(b)における放射パターンは、図1乃至図4のX−Z平面の複数周波アンテナ100の利得を示している。ただし、+Z軸方向を0度,+X軸方向を90度としている。
【0055】
多周波アンテナ900は、アンテナ素子920にY軸方向の電流が流れることによって発生する主偏波に加え、接地部980においてZ軸方向に流れる電によって発生する交差偏波も送信される。そのため、図8(a)に示すように、主偏波と交差偏波との利得の差が、角度によって、は5dB以下になっている。
【0056】
複数周波アンテナ100は、アンテナ素子120,220に、Y軸方向の電流が流れることによって、X−Z平面に、概ねY軸方向の電界を有する主偏波が送信される。複数周波アンテナ100は、多周波アンテナ900と違い接地部980に対応するものがないため、交差偏波が多周波アンテナ900に比べて少ない。
そのため、図8(b)に示すように、X−Z平面における全ての角度で、主偏波と交差偏波の利得の差が5dB以上になっている。また、交差偏波が少なく、複数周波アンテナ100に供給される電力の大部分が主偏波に変換されるため、主偏波の利得が、多周波アンテナ900に比べて大きくなっている。
【0057】
従って、複数周波アンテナ100は、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数において、単一偏波に近い電磁波を発生させることができ、入力された電力を高効率で主偏波に変換可能な、複数周波アンテナとして機能する。
【0058】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態にかかる複数周波アンテナ100によれば、所望の複数の周波数に対して、単一偏波に近い電磁波の送受信を行うことができる複数周波アンテナを提供できる。
【0059】
以上で説明をした構成例では、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数帯に利得が得られる構成を示した。この実施形態は、これに限定されない。
【0060】
例えば、任意の2つの周波数帯の組み合わせに対応可能である。前述のように、アンテナ素子120,220の等価回路ANT及び空間との結合の等価回路ANTsの素子定数は、アンテナ素子120,220のサイズよって自動的に定まる。このため、アンテナ素子120,220のサイズにより定まる各素子定数を考慮し、目的とする複数の周波数近傍に共振点が発生するように、シャントインダクタLshのインダクタンス、シリーズキャパシタCserのキャパシタンス、シリーズインダクタLserのインダクタンス、を適宜設定することにより、任意の複数の周波数帯で十分な利得を得ることができる。
【0061】
(実施形態2)
上記第1の実施形態にかかる複数周波アンテナ100は、図8(b)に示すように、X−Z平面の全方位に対してその利得が高かった。しかし、使用目的によっては、放射強度が1方向に強いものが求められる。本実施形態にかかる複数周波アンテナは、放射強度が1方向に強いものである。
【0062】
以下、本発明の実施形態2に係る複数周波アンテナ300について説明する。
【0063】
実施形態2に係る複数周波アンテナ300は、図9の正面図を示すように、基板99に、複数周波アンテナ100と、複数周波アンテナ100からZ軸方向に距離d離れた場所に複数周波アンテナ301と、が配置されている。
複数周波アンテナ301は、複数周波アンテナ100の入出力端子110,210間が短絡されている。詳細には、複数周波アンテナ301は、シリーズインダクタ用導体140,240と入力端子110,210との代わりに、一端部をビア導体150の一端部に、他端部をビア導体250の一端部に接続されたシリーズインダクタ用導体340を備えたものである。その他の構成は、上記実施形態1の複数周波アンテナ100と同一である。距離dは、本実施形態においては、およそ15.0mm(2.5GHzのほぼ1/8波長,5.2GHzのほぼ1/4波長)である。
【0064】
複数周波アンテナ301の等価回路は、図5に示す等価回路とほぼ同一であり、複数周波アンテナ100と同様に、2.5GHzと5.2GHzとにおいて入力インピーダンスの虚部がほぼ0になっている。
【0065】
次に、上記構成を有する複数周波アンテナ300の動作を説明する。理解を容易にするために、2.5GHzの電磁波を複数周波アンテナ100が放射する場合の動作について具体的に説明する。
【0066】
複数周波アンテナ100は、入出力端子110,210に入力された電力を電磁波に変換して放射する。
+Z軸方向に放射された電磁波は、距離d離れた複数周波アンテナ300に入射する。ここで、この電磁波の位相定数をβ(rad/m)とすると、複数周波アンテナ300に入射した電磁波は、距離d進む間に、その位相は、−β・d(rad)だけ変化する。
入射した電磁波の磁界によって、複数周波アンテナ301には電流が誘起され、誘起された電流は複数周波アンテナ301において共振し、再び電磁波が放射される。この複数周波アンテナ301から放射される電磁波は、位相がほぼπ回転したものになる。すなわち、複数周波アンテナ301から放射された電磁波は、複数周波アンテナ100から放射された電磁波より、位相がπ−β・d変化している。
【0067】
複数周波アンテナ301より+Z軸方向の領域では、複数周波アンテナ100から放射され、位相が−β・d変化した電磁波と、複数周波アンテナ301から放射され、位相がπ−β・d変化した電磁波と、が重なりあう。
この2つの電磁波は、互いに位相がπずれているために、打ち消しあう。そのため、複数周波アンテナ301より+Z軸方向に放射される電磁波の電界は、ほぼ0になる。つまり、+Z軸方向に平行に放射される電磁波は、複数周波アンテナ301によって、実質的に遮断される。
【0068】
一方、複数周波アンテナ301より、−Z軸方向に放射された電磁波は、距離d進む間に、位相が−β・dだけ変化して、複数周波アンテナ100に至る。即ち、位相がπ−2・β・d変化して、再び複数周波アンテナ100に戻る。
よって、複数周波アンテナ100から−Z軸方向には、複数周波アンテナ100から放射される電磁波に加え、複数周波アンテナ301から放射される位相がπ−2・β・d変化した電磁波と、が合成されて伝播する。
【0069】
ここで、理解を容易にするために、複数周波アンテナ100が放射する電磁波をsinθであるとする。複数周波アンテナ100が放射する電磁波sinθと複数周波アンテナ301から放射される電磁波sin(θ+α)(ただしα=π−2・β・d)との合成波は、sinθ+sin(θ+α)=2・sin(θ+α/2)・cos(α/2)である。α/2が−π/3〜π・3の範囲の時、cos(α/2)>1/2なので、2・sin(θ+α/2)・cos(α/2)>sin(θ+α/2)を満たす。即ち、α/2が−π/3〜π・3の範囲の時、複数周波アンテナ100から放射される電磁波と複数周波アンテナ301から放射される電磁波とは強め合う。即ち、α(=π−2・β・d)が−2π/3から2π/3の間であれば、この2つの電磁波は強め合う。複数周波アンテナ100から放射される電磁波の位相と複数周波アンテナ301から放射される電磁波の位相とが同じ時(α=0)、特に強め合う。
【0070】
本実施形態では、距離dは、15.0mm(2.5GHzの約1/8波長,5.2GHzの約1/4波長)なので、5.2GHzの場合α=0に、2.5GHzの場合α=π/2になり、複数周波アンテナ100から放射される電磁波と複数周波アンテナ301から放射される電磁波とは強め合う。
【0071】
このように、複数周波アンテナ301は、複数周波アンテナ100から+Z軸方向に放射された電磁波を遮断・反射する反射器として機能する。
【0072】
本実施形態における複数周波アンテナ300の指向性は、図10に示すようになる。図中の実線は5.2GHzにおける指向性、点線は2.5GHzにおける指向性を示す。ただし、+Z軸方向を0度,+X軸方向を90度としている。
【0073】
上述したように、複数周波アンテナ100から+Z軸方向に放射される電磁波は、複数周波アンテナ301によって実質的に遮断される。そのため、図10に示すように、複数周波アンテナ300の+Z軸方向(0度方向)の利得は低くなっている。
【0074】
また、複数周波アンテナ100から−Z軸方向に放射された電磁波は、上述したように、複数周波アンテナ301から−Z軸方向に放射された電磁波と強め合う。そのため、図10に示すように、複数周波アンテナ300の−Z軸方向(180度方向)の利得は高くなっている。
従って、複数周波アンテナ300は、2.5GHzと5.2GHzとに対して、指向性が鋭く、ほぼ単一偏波の電磁波を放射するアンテナとして機能することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、所望の複数の周波数に対して、単一偏波に近い電磁波で通信を行うことができる、複数の周波数において指向性の鋭い複数周波アンテナを提供できる。
【0076】
以上で説明した構成例では、複数周波アンテナ301の共振周波数は、複数周波アンテナ101,102と同一の周波数であるとして説明した。しかし、同一の周波数でなくてもよい。
複数周波アンテナ301の共振周波数を変化させることによって、複数周波アンテナ301における反射位相を変化させることができる。これにより、複数周波アンテナ300の指向性を所望のものにすることができる。
【0077】
(実施形態3)
上記実施形態2では、反射器として複数周波アンテナ100と同様の形状をした複数周波アンテナ301を用いた。しかし、複数周波アンテナ301に置き換えて、単一の周波数に対して共振周波数を持つダイポールアンテナを用いてもよい。
以下、本発明の実施形態3に係る、反射器としてダイポールアンテナを用いた複数周波アンテナ500について説明する。
【0078】
複数周波アンテナ500は、図11に示すように、複数周波アンテナ300において、複数周波アンテナ301を、ダイポールアンテナに方形パターンをつけた反射パターン590に置き換えたものである。他の構成は、複数周波アンテナ300と同様である。
【0079】
反射パターン590は、細い線路に周期的に容量が装荷された方形パターンから構成される。反射パターン590の共振周波数は、線路幅、線路長、方形パターンの幅・長さによって定まる。本実施形態では、共振周波数が5.2GHzになるように、反射パターン590は形成されている。
【0080】
次に複数周波アンテナ500の指向性について説明する。
本実施形態において、反射パターン590は、5.2GHzを共振周波数に設定されており、5.2GHzの電磁波を遮断・反射する。そのため、図12に示すように、5.2GHzにおいて、+Z軸方向(0度方向)の利得が−Z軸方向(180度方向)の利得より、およそ8dB以上高くなっている。一方、2.5GHzにおいて反射パターン590は、共振しない。そのため、2.5GHzにおいて、−Z軸方向の利得と+Z軸方向の利得は、ほぼ均一になっている。従って、複数周波アンテナ500は、2.5GHzにおいて全方位にほぼ均一の指向性を持ち、5.2GHzにおいて−Z軸方向に強い指向性を持つアンテナとして機能する。
【0081】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、所望の複数の周波数に対して、単一偏波に近い電磁波で通信を行うことができ、特定の周波数で指向性の鋭い複数周波アンテナを提供できる。
【0082】
以上で説明をした構成例では、5.2GHzの1つの周波数帯において指向性が鋭い構成を示した。この実施形態は、これに限定されない。
【0083】
例えば、各周波数に対応する共振周波数をもつ反射パターン590を複数配置しても良い。
【0084】
(実施形態4)
上記実施形態2,3に記載の複数周波アンテナ500では、複数周波アンテナ100から+Z軸方向を斜めに進行する電磁波は、反射器(複数周波アンテナ300,反射パターン590)に入射しない可能性があり、電流の誘起の効率が低下してしまう。
本実施形態にかかる複数周波アンテナは、アンテナ導体から反射器に向かって斜め方向に進行する電磁波を、反射器方向に反射する反射導体を更に備えものである。
以下、本実施形態にかかる複数周波アンテナ550について説明する。
【0085】
複数周波アンテナ550は、複数周波アンテナ500において、図13に示すように、Z軸方向に平行に延在する反射パターン595a,595bを、基板99の一方の主面に更に配置したものである。
【0086】
+Z軸方向に平行に進行する電磁波は、その電界が反射パターン595a,595bと直交しているために反射パターン595a,595bの影響を受けずに反射パターン590に入射する。一方、+Z軸方向を斜めに進行する電磁波、反射パターン595a,595bに反射され、反射パターン590に入射する。従って、+Z軸方向に平行に進行する電磁波に加え、更に、+Z軸方向を斜めに進行する電磁波も反射パターン590に入射され、より多くの電磁波を反射パターン590は反射することができる。
【0087】
なお、反射パターン595a,595bは、図14に示すように、反射パターン590に向かって、反射パターン595a,595bの間隔が狭くなるように、反射パターン595a,595bを配置してもよい。
【0088】
(実施形態5)
幾何光学の観点からすると、複数周波アンテナ100の電磁波は、給電点、つまり入出力端子110,210近傍から放射される。そのため、反射器の焦点が入出力端子110,210近傍にあると、複数周波アンテナ100から放射された電磁波は、より効率よく反射器によって反射される。
以下、本実施形態にかかる複数周波アンテナ600について図15,16を参照して説明する。図15は、複数周波アンテナ600の斜視図、図16は、図15に示すX1−Z1平面での断面を示す断面図を示す。なお、図15において、図を見やすくするために、実際には見えない部分も、実線で表してある。
【0089】
複数周波アンテナ600は、図示するように、複数周波アンテナ100の入出力端子110,210付近に焦点を持つ曲面上の反射板690が、基板99の一方の主面から他方の主面を貫通するように配置されている。他の構成は、実施形態1の複数周波アンテナ100と同様である。
【0090】
この複数周波アンテナ600が電磁波を放射する場合の動作は次のようになる。
複数周波アンテナ100から放射された電磁波のうち、反射板690に入射したものは、−Z方向に反射される。反射された電磁波は、複数周波アンテナ100から−Z方向に放射された電磁波と強め合う。
【0091】
一方、複数周波アンテナ600に電磁波が入射する場合の動作は次のようになる。
−Z軸方向から、複数周波アンテナ600に電磁波が入射すると、大部分の電磁波は複数周波アンテナ100に吸収される。一部、吸収されなかった電磁波は、反射板690によって反射し、反射板690の焦点である入出力端子110,210に入射する。
【0092】
このように、反射板690によっても、指向性を変化させることができる。
【0093】
また、反射板690は、基板99を貫通する厚みがあるため、銅箔パターンである場合に比べより多くの電磁波を反射することができる。
【0094】
以上説明したように、本発明の実施形態2乃至5によれば、所望の複数の周波数に対して、1方向に指向性の鋭い複数周波アンテナを提供できる。
例えば、図17に示すように、2つの上記複数周波アンテナ100の間に、上記複数周波アンテナ301を1つ配置することによって、2つの上記複数周波アンテナ300を実現しても良い。
【0095】
また、通信の相手の位置が限定されるシステムでは、通信相手の方向に利得が増大するように、アンテナを向けることで高利得のアンテナとして用いることもできる。また、放射電波が障害となる環境では、利得の抑制される方向をその障害となる方向に向けることで、障害の少ないアンテナとして用いることもできる。
【0096】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0097】
例えば、上記実施形態では、基板99の、一方の主面に配置されたパターンと、他方の主面に配置されたパターンとは、ビアによって接続されていた。しかし、ビアではなく、容量結合や誘導結合などで接続しても良い。
【0098】
また、上記実施形態では、線路(回路パターン)によってインダクタおよびコンダクタなどを構成したが、例えば、チップ部品などによって一部又は全てのインダクタおよびコンダクタなどを構成しても良い。
【0099】
また、上記実施形態では、回路を基板99の一方の主面と他方の主面に配置したが、一方の主面のみに配置してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、誘電体の基板上に回路素子を配置する構成例を示したが、各回路素子を保持できるならば、基板は配置しなくてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、複数周波アンテナ101,102の共振周波数は同一であるとしたが、別々の共振周波数であってもよい。ただし、それぞれの周波数において利得は低下する。
【符号の説明】
【0102】
100,101,102、300,301,500,550,600・・・複数周波アンテナ、99・・・基板、110,210・・・入出力端子、120,220・・・アンテナ素子、130,150a,150b,230,250a,250b・・・ビア、150,250・・・ビア導体、140,240,340・・・シリーズインダクタ用導体、160a,160b,260a,260b・・・シリーズキャパシタ用導体、170,270・・・シャントインダクタ用導体、199・・・接続点、590,595a,595b・・・反射パターン、690・・・反射板
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数の周波の無線信号を、高効率で送受信する機能を有する、小型の複数周波アンテナに関する。
【背景技術】
【0002】
無線LANやブルートゥース(登録商標)等の様々な無線通信システムが普及している。これらの無線通信システムには、各々、長所と短所がある。このため、1つの無線通信システムのみを利用するのではなく、複数の無線通信システムを複合的に利用するのが一般的である。
無線通信システムによって使用する周波数帯域に違いがある。このため、複数の通信システムを利用するには、複数の周波数帯域の無線信号を送受信する必要がある。複数周波数の無線信号を送受信するためには、単周波用アンテナを複数個使用するか、複数の周波数に対応する複数周波アンテナを使用する必要がある。ただし、単周波用のアンテナを複数個用いるより複数周波アンテナを用いる方が、アンテナの小型化、簡易化、低コスト化という点において有利である。
【0003】
複数周波アンテナの一例が特許文献1に開示されている。この複数周波アンテナは、導体板と、該導体板上に設けられた誘電体と、該誘電体に接し、異なる特性を有する複数のアンテナ素子と、から構成されている。複数のアンテナ素子は、互いに異なる周波数帯域で動作するので、一つのアンテナで複数の周波数帯域に対して動作することができる。
【0004】
しかし、この複数周波アンテナは、複数のアンテナ素子から構成されているため、複数のアンテナ素子を設置するための大きなスペースが必要であり、アンテナが大型化してしまう。また、構成も複雑になってしまう。
【0005】
一方、複数の周波数で利得の大きい、1つのアンテナ素子から構成される小型の複数周波アンテナが、本出願人によってすでに出願されている(特願2009−180009)。
【0006】
この複数周波アンテナは、アンテナ素子と、アンテナ素子と接地部とを接続する第1のインダクタと、給電点と、給電点とアンテナ素子とを接続する、第2のインダクタとキャパシタとの直列回路と、を備える。
この第1と第2のインダクタのインダクタンス及びキャパシタのキャパシタンスは、複数の共振周波数を持つように予め調整されている。この複数周波アンテナは、1つのアンテナ導体で、複数の周波数に対して利得が大きい、という特徴を持つ。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−086518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特願2009−180009に記載の複数周波アンテナは、接地用の導体に電流が流れる可能性があった。設置用の導体に電流が流れると、ノイズやエネルギー損失が生じる。そのため、この複数周波アンテナは、この接地部を流れる電流の発生を防ぐ、という点で、改善の余地があった。
【0009】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたもので、複数の周波の無線信号を送受信する機能を有する、エネルギー損失の少ない、小型の複数周波アンテナを提供することを目的とする。
また、放射強度が1方向に強い、複数の周波数帯域で利用できる小型の複数周波アンテナを提供することを他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明に係る複数周波アンテナは、
第1の入出力端子と、第1のアンテナ導体と、前記第1の入出力端子と前記第1のアンテナ導体とを接続する、第1のインダクタと第1のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第1のアンテナ導体に接続された第2のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第1のアンテナと、
第2の入出力端子と、第2のアンテナ導体と、前記第2の入出力端子と前記第2のアンテナ導体とを接続する、第3のインダクタと第2のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第2のアンテナ導体に接続され、他端を前記第2のインダクタの他端に接続された第4のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第2のアンテナと、
を備え、
前記第1のアンテナ導体の電波の主伝搬方向と、前記第2のアンテナ導体の電波の主伝搬方向とが、実質的に同方向である、
ことを特徴とする。
【0011】
例えば、前記第1のアンテナの複数の共振周波数と、前記第2のアンテナの複数の共振周波数とは、実質的に同一である。
【0012】
また、誘電体板をさらに備え、
前記第1と第2の入出力端子と前記第1と第2のアンテナ導体とは、前記誘電体板の1面に形成され、
前記第2と第4のインダクタは、誘電体板の他面に配置され、ビアを介して、前記第2のインダクタ1端は前記第1のアンテナ導体に、前記第4のインダクタの1端は前記第2のアンテナ導体に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第1のアンテナ導体の1部に対向する第1の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第2のアンテナ導体の1部に対向する第2の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第1のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第1の導電体と接続され、他端を前記第1の入出力端子に接続され、
前記第3のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第2の導電体と接続され、他端を前記第2の入出力端子に接続されてもよい。
【0013】
また、前記第1と第2のアンテナ導体の主伝搬方向に配置されている、前記第1と第2のアンテナ導体が放射する電波を遮断・反射する反射器を更に備えてもよい。
【0014】
例えば、前記反射器は、
前記反射器から前記第1と第2のアンテナ導体へ反射される電波と、該電波と同方向に前記第1と第2のアンテナ導体から放射される電波と、が強め合う距離に配置されている。
【0015】
例えば、前記反射器は、第3のアンテナ導体と、第4のアンテナ導体と、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する第5のインダクタと、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する、第6のインダクタと第3のキャパシタの直列回路と、から構成され、
当該反射器は前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数と実質的に同一の複数の共振周波数を持ち、
当該反射器の電波の主伝搬方向は、前記第1と第2のアンテナの電波の主伝搬方向と、実質的に同方向である。
【0016】
例えば、前記反射器は、複数の方形パターンを装荷された線路導体であり、
当該線路導体は、前記第1と第2のアンテナの主電波の電界方向に平行に延在しており、
当該反射器は、前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数のうち、少なくとも1つの共振周波数を持つ。
【0017】
例えば、前記反射器の形状は、焦点が前記第1と第2の入出力端子近傍である曲面状である。
【0018】
また、前記アンテナ導体から前記反射器に向かって斜め方向に進行する電磁波を、前記反射器方向に反射する反射導体を更に備えてもよい。
【0019】
また、前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは、鏡像対称に配置されていてもよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、主偏波の利得の高い、複数の周波数帯域で利用できる複数周波アンテナを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施形態1に係る複数周波アンテナの斜視図である。
【図2】図1に示す複数周波アンテナの平面図である。
【図3】図1に示す複数周波アンテナの底面図である。
【図4】図1に示す複数周波アンテナの断面図である。
【図5】図1に示す複数周波アンテナの等価回路の一部分を示す図である。
【図6】図1に示す複数周波アンテナの等価回路の全体を示す図である。
【図7】図1〜図6に示す複数周波アンテナの反射損失の周波数特性を示す図である。
【図8】(a),(b)は図1〜図6に示す複数周波アンテナの指向性を示す図である。
【図9】本発明の実施形態2に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図10】図9に示す複数周波アンテナの指向性を示す図である。
【図11】本発明の実施形態3に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図12】図11に示す複数周波アンテナの指向性を示す図である。
【図13】本発明の実施形態4に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図14】図13に示す複数周波アンテナの応用例を示す図である。
【図15】本発明の実施形態5に係る複数周波アンテナの平面図である。
【図16】図15に示す複数周波アンテナの断面図である。
【図17】図9に示す複数周波アンテナの応用例を示す図である。
【図18】従来の複数周波アンテナの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
(実施形態1)
以下、本発明の実施形態1に係る複数周波アンテナ100を説明する。
【0023】
まず、図1〜4を参照して、実施形態1に係る複数周波アンテナ100の構成を説明する。図1は複数周波アンテナ100の斜視図、図2は複数周波アンテナ100の平面図、図3は複数周波アンテナ100の底面図、図4は、複数周波アンテナ100の図2及び図3のA−A’線での断面を示す断面図である。なお、図中のX,Y,Z軸は、各図に共通の方向を示す。X軸方向は、アンテン100の高さ方向に平行、Y軸は長辺方向に平行、Z軸は短辺方向に平行である。
【0024】
図示するように、複数周波アンテナ100は、基板99と、複数周波アンテナ101,102と、から構成される。
【0025】
基板99は、板状の誘電体で、例えば、ガラスエポキシ基盤(FR4)から構成される。
【0026】
複数周波アンテナ101と複数周波アンテナ102は同様の構成をしており、放射する電磁波の主伝搬方向が同方向になるように、ほぼ鏡像対称に基板99に配置されている。複数周波アンテナ101,102は、入出力端子110,210、アンテナ素子120,220、ビア130,150a,150b,230,250a,250b、ビア導体150,250、シリーズインダクタ用導体140,240、シリーズキャパシタ用導体160a,160b,260a,260b、シャントインダクタ用導体170,270から構成されている。
【0027】
アンテナ素子120,220は、上底より下底が長い等脚台形の導体板と、この等脚台形の下底に接続された半円の導体板と、から構成される。アンテナ素子120とアンテナ素子220は、その等脚台形の上底が対向するように、基板99の一方の主面に配置されている。
【0028】
ビア130,230は、アンテナ素子120,220を構成する等脚台形の2本の対角線のほぼ交点を、基板99の一方の主面から他方の主面に貫通して形成される。ビア130,230の内部には、一端部がアンテナ素子120,220に接続された導体が充填されている。
【0029】
シャントインダクタ用導体170,270は、線路導体から構成され、基板99の他方の主面上に延在し、一端がビア130,230の他端部に接続されている。シャントインダクタ用導体170,270の他端は、基板99の他方の主面のほぼ中央の接続点199において、相互に接続されている。つまり、複数周波アンテナ101と複数周波アンテナ102とは、接続点199において、相互に接続される。
【0030】
シリーズキャパシタ用導体160aとシリーズキャパシタ用導体160bとは、間にシャントインダクタ用導体170を挟むように、基板99の他方の主面に、アンテナ素子120の一部に対向して、配置されている。アンテナ素子120の一部とシリーズキャパシタ用導体160a,160bの対向部分と、基板99のそれらの間に位置している部分により、アンテナ素子120,220に直列に接続されたシリーズキャパシタが形成される。
同様に、シリーズキャパシタ用導体260aとシリーズキャパシタ用導体260bとは、間にシャントインダクタ用導体270を挟むように、基板99の他方の主面に、アンテナ素子220の一部に対向して、配置されている。アンテナ素子220の一部とシリーズキャパシタ用導体260a,260bの対向部分と、基板99のそれらの間に位置している部分により、アンテナ素子220に直列に接続されたシリーズキャパシタが形成される。
【0031】
ビア導体150,250は、基板99の一方の主面に配置され、基板99の一方の主面から他方の主面に貫通して形成される2つのビア150a及び150b,250a及び250bを介してシリーズキャパシタ用導体160a及び160b,260a及び260bに接続されている。
【0032】
シリーズインダクタ用導体140,240は、線路導体から構成され、基板99の一方の主面に形成されており、その一端は、ビア導体150,250に接続されている。
【0033】
入出力端子110,210は、基板99の一方の主面のほぼ中央に、近接して形成されており、一端部をシリーズインダクタ用導体140,240の他端に接続されている。入出力端子110,210は、図示せぬ1対の給電線が接続され、差動信号を供給される。入出力端子110,210は給電点として機能し、複数周波アンテナ100は、入出力端子110,210との間に供給された送信信号を電波として空間に放射し、受信した電波を電気信号に変換して入出力端子110,210から給電線に伝送する。
【0034】
上記構成の複数周波アンテナ100は、例えば、基板99にビア130,150a,150b,230,250a,250bを開口し、この開口をメッキ等で充填し、続いて、基板99の両面に銅箔を貼り付け、銅箔をPEP(光エッチング法)等によりパターニングすることにより製造される。
【0035】
上述した物理的構成を有する複数周波アンテナ100の複数周波アンテナ101,102の電気的構成は、図5に示す等価回路で表される。
図示するように、複数周波アンテナ101,102は、電気的には、シリーズインダクタLserと、シリーズキャパシタCserと、アンテナ素子120,220の等価回路ANTと、シャントインダクタLshと、空間との結合の等価回路ANTsと、入出力端子110,210と、接続点199と、から構成される。
なお、シリーズインダクタLserはシリーズインダクタ用導体140,240のインダクタンスに対応し、シャントインダクタLshはシャントインダクタ用導体170,270のインダクタンスに対応する。また、シリーズキャパシタCserは、シリーズキャパシタ用導体160a,160b,260a,260b等によって形成されるシリーズキャパシタに対応する。
【0036】
複数周波アンテナ101,102の等価回路ANTは、アンテナ素子120,220の入力インピーダンスを右手系の線路で表現した回路であり、インダクタL1antとインダクタL2antとキャパシタCantから構成される。
【0037】
空間との結合の等価回路ANTsは、アンテナ素子120,220のサイズと形状に依存し、アンテナ素子120,220と空間との結合によるインピーダンスを表現する回路である。空間との結合の等価回路ANTsは、キャパシタCsと、基準インピーダンスRsと、インダクタLsから構成される。
【0038】
図5に示すように、入出力端子110,210には、シリーズインダクタLserとシリーズキャパシタCserとの直列回路の一端が接続される。
【0039】
シリーズインダクタLserとシリーズキャパシタCserとの直列回路の他端には、複数周波アンテナ101,102の等価回路ANTを構成するインダクタL1antの一端が接続される。インダクタL1antの他端には、キャパシタCantの一端とインダクタL2antの一端が接続される。キャパシタCantの他端は、接続点199に接続される。
【0040】
シャントインダクタLshの一端は、インダクタL2antの他端に接続される。シャントインダクタLshの他端は、接続点199に接続される。
【0041】
空間との結合の等価回路ANTsのキャパシタCsの一端が、インダクタL2antの他端とシャントインダクタLshの一端との接続点に接続される。キャパシタCsの他端には、インダクタLsの一端と基準インピーダンスRsの一端が接続される。インダクタLsの他端と基準インピーダンスRsの他端は、接続点199に接続される。
【0042】
空間との結合の等価回路ANTsにおけるキャパシタCsのキャパシタンスとインダクタLsのインダクタンスは、アンテナ素子120,220を内包する球の半径aと基準インピーダンスRsに依存し、次の式(1)と(2)で表される。
Cs=a/(c×Rs) ・・・(1)
Ls=(a×Rs)/c ・・・(2)
ここで、Cs:キャパシタCsのキャパシタンス[F]
Ls:インダクタLsのインダクタンス[H]
Rs:基準インピーダンスRsの抵抗値[Ω]
a:アンテナ素子を内包する球の半径[m]
c:光速[m/s]
【0043】
複数周波アンテナ101,102は、上述したように、接続点199によって相互に接続されている。同様に、複数周波アンテナ101,102からなる複数周波アンテナ100の等価回路も、図6に示すように接続点199によって相互に接続された構成をし、入出力端子110,210に、図示せぬ1対の給電線が接続されている。
【0044】
複数周波アンテナ100は、図6の等価回路において、複数周波アンテナ100で用いるそれぞれ周波数において、入力インピーダンスの虚数部が0に、実部が50Ωになるように、シャントインダクタ用導体170,270、シリーズキャパシタ用導体160a,160b,260a,260b、シリーズインダクタ用導体140,240のパターンを調整される。
本実施形態では、2.5GHzと5,2GHzの2つの周波数で、入力インピーダンスの虚数部が0に、実部が50Ωになるように、各パターンが調整されている。
【0045】
なお、アンテナ素子120,220の空間との結合の等価回路ANTsの各インダクタのインダクタンス及びキャパシタのキャパシタンスは、上述した式(1)、(2)により求められる。
【0046】
次に、上記物理的構成及び電気的構成を有する複数周波アンテナ100の反射損失の周波数特性について説明する。
【0047】
複数周波アンテナ100の反射損失の周波数特性を図7に示す。この特性は、シャントインダクタLshのインダクタンスを5.1nH、シリーズキャパシタCserのキャパシタンスを0.16pF、シリーズインダクタLserのインダクタンスを5.7nHに、設定し、2.5GHzと5.2GHzにおいての入力インピーダンスを50Ωに調整したときの、複数周波アンテナ100の反射損失の周波数特性である。
また、図7の横軸は周波数(GHz)、縦軸は反射損失S11(dB)を示す。
【0048】
複数周波アンテナ100は、上述したように、その等価回路において2.5GHzと5.2GHzにおいて、入力インピーダンスの虚数部が0になっており、この周波数において共振し、利得が大きくなる。そのため、本実施形態では、図7に示すように、2.5GHz付近と、5.2GHz付近の2つの周波数帯域において、反射損失S11が−10dB以下になっている。従って、複数周波アンテナ100は、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数において、十分な利得を得ることができる複数周波アンテナとして機能する。
【0049】
次に、上記物理的構成及び電気的構成を有する複数周波アンテナ100の偏波特性について説明する。なお理解を容易にするために、特願2009−180009に記載の多周波アンテナ900の偏波と比較して説明する。なお、多周波アンテナ900は、本発明の複数周波アンテナ101,102に対応する。
【0050】
多周波アンテナ900は、図18に示すように、基板901と、給電点910と、アンテナ素子920と、ビア930,950と、シリーズインダクタ用導体940と、シリーズキャパシタ用導体960と、シャントインダクタ用導体970と、接地部980と、から構成されている。
【0051】
給電点910は入出力端子110に、アンテナ素子920はアンテナ素子120に、ビア930,950はビア130,150a,150bに、シリーズインダクタ用導体940はシリーズインダクタ用導体140に、シリーズキャパシタ用導体960はシリーズキャパシタ用導体160a,160bに、シャントインダクタ用導体970はシャントインダクタ用導体170に、それぞれ対応する。
【0052】
接地部980は、基板901の一辺部の一方の主面に配置されたグランド導体981と、基板901の一辺部の他方の主面に配置されたグランド導体983と、グランド導体981とグランド導体983とを接続する複数のビア982と、から構成され、接地されている。
【0053】
多周波アンテナ900は、複数周波アンテナ101,102と同様に、図5に示した等価回路で表され、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数において入力インピーダンスの虚部が0になるように調整されている。
【0054】
この多周波アンテナ900の偏波の特性と、複数周波アンテナ100の偏波の特性は、それぞれ図8(a),(b)に示すようになる。
図8(a)は、多周波アンテナ900の2.5GHzと5.2GHzにおける主偏波と交差偏波の放射パターンを、図8(b)は、複数周波アンテナ100の2.5GHzと5.2GHzにおける主偏波と交差偏波の放射パターンを示したものである。
なお、図8(a),(b)における放射パターンは、図1乃至図4のX−Z平面の複数周波アンテナ100の利得を示している。ただし、+Z軸方向を0度,+X軸方向を90度としている。
【0055】
多周波アンテナ900は、アンテナ素子920にY軸方向の電流が流れることによって発生する主偏波に加え、接地部980においてZ軸方向に流れる電によって発生する交差偏波も送信される。そのため、図8(a)に示すように、主偏波と交差偏波との利得の差が、角度によって、は5dB以下になっている。
【0056】
複数周波アンテナ100は、アンテナ素子120,220に、Y軸方向の電流が流れることによって、X−Z平面に、概ねY軸方向の電界を有する主偏波が送信される。複数周波アンテナ100は、多周波アンテナ900と違い接地部980に対応するものがないため、交差偏波が多周波アンテナ900に比べて少ない。
そのため、図8(b)に示すように、X−Z平面における全ての角度で、主偏波と交差偏波の利得の差が5dB以上になっている。また、交差偏波が少なく、複数周波アンテナ100に供給される電力の大部分が主偏波に変換されるため、主偏波の利得が、多周波アンテナ900に比べて大きくなっている。
【0057】
従って、複数周波アンテナ100は、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数において、単一偏波に近い電磁波を発生させることができ、入力された電力を高効率で主偏波に変換可能な、複数周波アンテナとして機能する。
【0058】
以上説明したように、本発明の第1の実施形態にかかる複数周波アンテナ100によれば、所望の複数の周波数に対して、単一偏波に近い電磁波の送受信を行うことができる複数周波アンテナを提供できる。
【0059】
以上で説明をした構成例では、2.5GHzと5.2GHzの2つの周波数帯に利得が得られる構成を示した。この実施形態は、これに限定されない。
【0060】
例えば、任意の2つの周波数帯の組み合わせに対応可能である。前述のように、アンテナ素子120,220の等価回路ANT及び空間との結合の等価回路ANTsの素子定数は、アンテナ素子120,220のサイズよって自動的に定まる。このため、アンテナ素子120,220のサイズにより定まる各素子定数を考慮し、目的とする複数の周波数近傍に共振点が発生するように、シャントインダクタLshのインダクタンス、シリーズキャパシタCserのキャパシタンス、シリーズインダクタLserのインダクタンス、を適宜設定することにより、任意の複数の周波数帯で十分な利得を得ることができる。
【0061】
(実施形態2)
上記第1の実施形態にかかる複数周波アンテナ100は、図8(b)に示すように、X−Z平面の全方位に対してその利得が高かった。しかし、使用目的によっては、放射強度が1方向に強いものが求められる。本実施形態にかかる複数周波アンテナは、放射強度が1方向に強いものである。
【0062】
以下、本発明の実施形態2に係る複数周波アンテナ300について説明する。
【0063】
実施形態2に係る複数周波アンテナ300は、図9の正面図を示すように、基板99に、複数周波アンテナ100と、複数周波アンテナ100からZ軸方向に距離d離れた場所に複数周波アンテナ301と、が配置されている。
複数周波アンテナ301は、複数周波アンテナ100の入出力端子110,210間が短絡されている。詳細には、複数周波アンテナ301は、シリーズインダクタ用導体140,240と入力端子110,210との代わりに、一端部をビア導体150の一端部に、他端部をビア導体250の一端部に接続されたシリーズインダクタ用導体340を備えたものである。その他の構成は、上記実施形態1の複数周波アンテナ100と同一である。距離dは、本実施形態においては、およそ15.0mm(2.5GHzのほぼ1/8波長,5.2GHzのほぼ1/4波長)である。
【0064】
複数周波アンテナ301の等価回路は、図5に示す等価回路とほぼ同一であり、複数周波アンテナ100と同様に、2.5GHzと5.2GHzとにおいて入力インピーダンスの虚部がほぼ0になっている。
【0065】
次に、上記構成を有する複数周波アンテナ300の動作を説明する。理解を容易にするために、2.5GHzの電磁波を複数周波アンテナ100が放射する場合の動作について具体的に説明する。
【0066】
複数周波アンテナ100は、入出力端子110,210に入力された電力を電磁波に変換して放射する。
+Z軸方向に放射された電磁波は、距離d離れた複数周波アンテナ300に入射する。ここで、この電磁波の位相定数をβ(rad/m)とすると、複数周波アンテナ300に入射した電磁波は、距離d進む間に、その位相は、−β・d(rad)だけ変化する。
入射した電磁波の磁界によって、複数周波アンテナ301には電流が誘起され、誘起された電流は複数周波アンテナ301において共振し、再び電磁波が放射される。この複数周波アンテナ301から放射される電磁波は、位相がほぼπ回転したものになる。すなわち、複数周波アンテナ301から放射された電磁波は、複数周波アンテナ100から放射された電磁波より、位相がπ−β・d変化している。
【0067】
複数周波アンテナ301より+Z軸方向の領域では、複数周波アンテナ100から放射され、位相が−β・d変化した電磁波と、複数周波アンテナ301から放射され、位相がπ−β・d変化した電磁波と、が重なりあう。
この2つの電磁波は、互いに位相がπずれているために、打ち消しあう。そのため、複数周波アンテナ301より+Z軸方向に放射される電磁波の電界は、ほぼ0になる。つまり、+Z軸方向に平行に放射される電磁波は、複数周波アンテナ301によって、実質的に遮断される。
【0068】
一方、複数周波アンテナ301より、−Z軸方向に放射された電磁波は、距離d進む間に、位相が−β・dだけ変化して、複数周波アンテナ100に至る。即ち、位相がπ−2・β・d変化して、再び複数周波アンテナ100に戻る。
よって、複数周波アンテナ100から−Z軸方向には、複数周波アンテナ100から放射される電磁波に加え、複数周波アンテナ301から放射される位相がπ−2・β・d変化した電磁波と、が合成されて伝播する。
【0069】
ここで、理解を容易にするために、複数周波アンテナ100が放射する電磁波をsinθであるとする。複数周波アンテナ100が放射する電磁波sinθと複数周波アンテナ301から放射される電磁波sin(θ+α)(ただしα=π−2・β・d)との合成波は、sinθ+sin(θ+α)=2・sin(θ+α/2)・cos(α/2)である。α/2が−π/3〜π・3の範囲の時、cos(α/2)>1/2なので、2・sin(θ+α/2)・cos(α/2)>sin(θ+α/2)を満たす。即ち、α/2が−π/3〜π・3の範囲の時、複数周波アンテナ100から放射される電磁波と複数周波アンテナ301から放射される電磁波とは強め合う。即ち、α(=π−2・β・d)が−2π/3から2π/3の間であれば、この2つの電磁波は強め合う。複数周波アンテナ100から放射される電磁波の位相と複数周波アンテナ301から放射される電磁波の位相とが同じ時(α=0)、特に強め合う。
【0070】
本実施形態では、距離dは、15.0mm(2.5GHzの約1/8波長,5.2GHzの約1/4波長)なので、5.2GHzの場合α=0に、2.5GHzの場合α=π/2になり、複数周波アンテナ100から放射される電磁波と複数周波アンテナ301から放射される電磁波とは強め合う。
【0071】
このように、複数周波アンテナ301は、複数周波アンテナ100から+Z軸方向に放射された電磁波を遮断・反射する反射器として機能する。
【0072】
本実施形態における複数周波アンテナ300の指向性は、図10に示すようになる。図中の実線は5.2GHzにおける指向性、点線は2.5GHzにおける指向性を示す。ただし、+Z軸方向を0度,+X軸方向を90度としている。
【0073】
上述したように、複数周波アンテナ100から+Z軸方向に放射される電磁波は、複数周波アンテナ301によって実質的に遮断される。そのため、図10に示すように、複数周波アンテナ300の+Z軸方向(0度方向)の利得は低くなっている。
【0074】
また、複数周波アンテナ100から−Z軸方向に放射された電磁波は、上述したように、複数周波アンテナ301から−Z軸方向に放射された電磁波と強め合う。そのため、図10に示すように、複数周波アンテナ300の−Z軸方向(180度方向)の利得は高くなっている。
従って、複数周波アンテナ300は、2.5GHzと5.2GHzとに対して、指向性が鋭く、ほぼ単一偏波の電磁波を放射するアンテナとして機能することができる。
【0075】
以上説明したように、本発明の第2の実施形態によれば、所望の複数の周波数に対して、単一偏波に近い電磁波で通信を行うことができる、複数の周波数において指向性の鋭い複数周波アンテナを提供できる。
【0076】
以上で説明した構成例では、複数周波アンテナ301の共振周波数は、複数周波アンテナ101,102と同一の周波数であるとして説明した。しかし、同一の周波数でなくてもよい。
複数周波アンテナ301の共振周波数を変化させることによって、複数周波アンテナ301における反射位相を変化させることができる。これにより、複数周波アンテナ300の指向性を所望のものにすることができる。
【0077】
(実施形態3)
上記実施形態2では、反射器として複数周波アンテナ100と同様の形状をした複数周波アンテナ301を用いた。しかし、複数周波アンテナ301に置き換えて、単一の周波数に対して共振周波数を持つダイポールアンテナを用いてもよい。
以下、本発明の実施形態3に係る、反射器としてダイポールアンテナを用いた複数周波アンテナ500について説明する。
【0078】
複数周波アンテナ500は、図11に示すように、複数周波アンテナ300において、複数周波アンテナ301を、ダイポールアンテナに方形パターンをつけた反射パターン590に置き換えたものである。他の構成は、複数周波アンテナ300と同様である。
【0079】
反射パターン590は、細い線路に周期的に容量が装荷された方形パターンから構成される。反射パターン590の共振周波数は、線路幅、線路長、方形パターンの幅・長さによって定まる。本実施形態では、共振周波数が5.2GHzになるように、反射パターン590は形成されている。
【0080】
次に複数周波アンテナ500の指向性について説明する。
本実施形態において、反射パターン590は、5.2GHzを共振周波数に設定されており、5.2GHzの電磁波を遮断・反射する。そのため、図12に示すように、5.2GHzにおいて、+Z軸方向(0度方向)の利得が−Z軸方向(180度方向)の利得より、およそ8dB以上高くなっている。一方、2.5GHzにおいて反射パターン590は、共振しない。そのため、2.5GHzにおいて、−Z軸方向の利得と+Z軸方向の利得は、ほぼ均一になっている。従って、複数周波アンテナ500は、2.5GHzにおいて全方位にほぼ均一の指向性を持ち、5.2GHzにおいて−Z軸方向に強い指向性を持つアンテナとして機能する。
【0081】
以上説明したように、本発明の第3の実施形態によれば、所望の複数の周波数に対して、単一偏波に近い電磁波で通信を行うことができ、特定の周波数で指向性の鋭い複数周波アンテナを提供できる。
【0082】
以上で説明をした構成例では、5.2GHzの1つの周波数帯において指向性が鋭い構成を示した。この実施形態は、これに限定されない。
【0083】
例えば、各周波数に対応する共振周波数をもつ反射パターン590を複数配置しても良い。
【0084】
(実施形態4)
上記実施形態2,3に記載の複数周波アンテナ500では、複数周波アンテナ100から+Z軸方向を斜めに進行する電磁波は、反射器(複数周波アンテナ300,反射パターン590)に入射しない可能性があり、電流の誘起の効率が低下してしまう。
本実施形態にかかる複数周波アンテナは、アンテナ導体から反射器に向かって斜め方向に進行する電磁波を、反射器方向に反射する反射導体を更に備えものである。
以下、本実施形態にかかる複数周波アンテナ550について説明する。
【0085】
複数周波アンテナ550は、複数周波アンテナ500において、図13に示すように、Z軸方向に平行に延在する反射パターン595a,595bを、基板99の一方の主面に更に配置したものである。
【0086】
+Z軸方向に平行に進行する電磁波は、その電界が反射パターン595a,595bと直交しているために反射パターン595a,595bの影響を受けずに反射パターン590に入射する。一方、+Z軸方向を斜めに進行する電磁波、反射パターン595a,595bに反射され、反射パターン590に入射する。従って、+Z軸方向に平行に進行する電磁波に加え、更に、+Z軸方向を斜めに進行する電磁波も反射パターン590に入射され、より多くの電磁波を反射パターン590は反射することができる。
【0087】
なお、反射パターン595a,595bは、図14に示すように、反射パターン590に向かって、反射パターン595a,595bの間隔が狭くなるように、反射パターン595a,595bを配置してもよい。
【0088】
(実施形態5)
幾何光学の観点からすると、複数周波アンテナ100の電磁波は、給電点、つまり入出力端子110,210近傍から放射される。そのため、反射器の焦点が入出力端子110,210近傍にあると、複数周波アンテナ100から放射された電磁波は、より効率よく反射器によって反射される。
以下、本実施形態にかかる複数周波アンテナ600について図15,16を参照して説明する。図15は、複数周波アンテナ600の斜視図、図16は、図15に示すX1−Z1平面での断面を示す断面図を示す。なお、図15において、図を見やすくするために、実際には見えない部分も、実線で表してある。
【0089】
複数周波アンテナ600は、図示するように、複数周波アンテナ100の入出力端子110,210付近に焦点を持つ曲面上の反射板690が、基板99の一方の主面から他方の主面を貫通するように配置されている。他の構成は、実施形態1の複数周波アンテナ100と同様である。
【0090】
この複数周波アンテナ600が電磁波を放射する場合の動作は次のようになる。
複数周波アンテナ100から放射された電磁波のうち、反射板690に入射したものは、−Z方向に反射される。反射された電磁波は、複数周波アンテナ100から−Z方向に放射された電磁波と強め合う。
【0091】
一方、複数周波アンテナ600に電磁波が入射する場合の動作は次のようになる。
−Z軸方向から、複数周波アンテナ600に電磁波が入射すると、大部分の電磁波は複数周波アンテナ100に吸収される。一部、吸収されなかった電磁波は、反射板690によって反射し、反射板690の焦点である入出力端子110,210に入射する。
【0092】
このように、反射板690によっても、指向性を変化させることができる。
【0093】
また、反射板690は、基板99を貫通する厚みがあるため、銅箔パターンである場合に比べより多くの電磁波を反射することができる。
【0094】
以上説明したように、本発明の実施形態2乃至5によれば、所望の複数の周波数に対して、1方向に指向性の鋭い複数周波アンテナを提供できる。
例えば、図17に示すように、2つの上記複数周波アンテナ100の間に、上記複数周波アンテナ301を1つ配置することによって、2つの上記複数周波アンテナ300を実現しても良い。
【0095】
また、通信の相手の位置が限定されるシステムでは、通信相手の方向に利得が増大するように、アンテナを向けることで高利得のアンテナとして用いることもできる。また、放射電波が障害となる環境では、利得の抑制される方向をその障害となる方向に向けることで、障害の少ないアンテナとして用いることもできる。
【0096】
本発明は、上記実施形態に限定されず、種々の変形及び応用が可能である。
【0097】
例えば、上記実施形態では、基板99の、一方の主面に配置されたパターンと、他方の主面に配置されたパターンとは、ビアによって接続されていた。しかし、ビアではなく、容量結合や誘導結合などで接続しても良い。
【0098】
また、上記実施形態では、線路(回路パターン)によってインダクタおよびコンダクタなどを構成したが、例えば、チップ部品などによって一部又は全てのインダクタおよびコンダクタなどを構成しても良い。
【0099】
また、上記実施形態では、回路を基板99の一方の主面と他方の主面に配置したが、一方の主面のみに配置してもよい。
【0100】
また、上記実施形態では、誘電体の基板上に回路素子を配置する構成例を示したが、各回路素子を保持できるならば、基板は配置しなくてもよい。
【0101】
また、上記実施形態では、複数周波アンテナ101,102の共振周波数は同一であるとしたが、別々の共振周波数であってもよい。ただし、それぞれの周波数において利得は低下する。
【符号の説明】
【0102】
100,101,102、300,301,500,550,600・・・複数周波アンテナ、99・・・基板、110,210・・・入出力端子、120,220・・・アンテナ素子、130,150a,150b,230,250a,250b・・・ビア、150,250・・・ビア導体、140,240,340・・・シリーズインダクタ用導体、160a,160b,260a,260b・・・シリーズキャパシタ用導体、170,270・・・シャントインダクタ用導体、199・・・接続点、590,595a,595b・・・反射パターン、690・・・反射板
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の入出力端子と、第1のアンテナ導体と、前記第1の入出力端子と前記第1のアンテナ導体とを接続する、第1のインダクタと第1のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第1のアンテナ導体に接続された第2のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第1のアンテナと、
第2の入出力端子と、第2のアンテナ導体と、前記第2の入出力端子と前記第2のアンテナ導体とを接続する、第3のインダクタと第2のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第2のアンテナ導体に接続され、他端を前記第2のインダクタの他端に接続された第4のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第2のアンテナと、
を備え、
前記第1のアンテナ導体の電波の主伝搬方向と、前記第2のアンテナ導体の電波の主伝搬方向とが、実質的に同方向である、
ことを特徴とする複数周波アンテナ。
【請求項2】
前記第1のアンテナの複数の共振周波数と、前記第2のアンテナの複数の共振周波数とは、実質的に同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複数周波アンテナ。
【請求項3】
誘電体板をさらに備え、
前記第1と第2の入出力端子と前記第1と第2のアンテナ導体とは、前記誘電体板の1面に形成され、
前記第2と第4のインダクタは、誘電体板の他面に配置され、ビアを介して、前記第2のインダクタ1端は前記第1のアンテナ導体に、前記第4のインダクタの1端は前記第2のアンテナ導体に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第1のアンテナ導体の1部に対向する第1の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第2のアンテナ導体の1部に対向する第2の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第1のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第1の導電体と接続され、他端を前記第1の入出力端子に接続され、
前記第3のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第2の導電体と接続され、他端を前記第2の入出力端子に接続されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の複数周波アンテナ。
【請求項4】
前記第1と第2のアンテナ導体の主伝搬方向に配置されている、前記第1と第2のアンテナ導体が放射する電波を遮断・反射する反射器を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項5】
前記反射器は、
前記反射器から前記第1と第2のアンテナ導体へ反射される電波と、該電波と同方向に前記第1と第2のアンテナ導体から放射される電波と、が強め合う距離に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の複数周波アンテナ。
【請求項6】
前記反射器は、第3のアンテナ導体と、第4のアンテナ導体と、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する第5のインダクタと、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する、第6のインダクタと第3のキャパシタの直列回路と、から構成され、
当該反射器は前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数と実質的に同一の複数の共振周波数を持ち、
当該反射器の電波の主伝搬方向は、前記第1と第2のアンテナの電波の主伝搬方向と、実質的に同方向である、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の複数周波アンテナ。
【請求項7】
前記反射器は、複数の方形パターンを装荷された線路導体であり、
当該線路導体は、前記第1と第2のアンテナの主電波の電界方向に平行に延在しており、
当該反射器は、前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数のうち、少なくとも1つの共振周波数を持つ、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の複数周波アンテナ。
【請求項8】
前記反射器の形状は、焦点が前記第1と第2の入出力端子近傍である曲面状である、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の複数周波アンテナ。
【請求項9】
前記アンテナ導体から前記反射器に向かって斜め方向に進行する電磁波を、前記反射器方向に反射する反射導体を更に備える、
ことを特徴とする請求項4乃至8の何れか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項10】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは、鏡像対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項1】
第1の入出力端子と、第1のアンテナ導体と、前記第1の入出力端子と前記第1のアンテナ導体とを接続する、第1のインダクタと第1のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第1のアンテナ導体に接続された第2のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第1のアンテナと、
第2の入出力端子と、第2のアンテナ導体と、前記第2の入出力端子と前記第2のアンテナ導体とを接続する、第3のインダクタと第2のキャパシタとの直列回路と、1端を前記第2のアンテナ導体に接続され、他端を前記第2のインダクタの他端に接続された第4のインダクタと、を備え、複数の共振周波数を持つ第2のアンテナと、
を備え、
前記第1のアンテナ導体の電波の主伝搬方向と、前記第2のアンテナ導体の電波の主伝搬方向とが、実質的に同方向である、
ことを特徴とする複数周波アンテナ。
【請求項2】
前記第1のアンテナの複数の共振周波数と、前記第2のアンテナの複数の共振周波数とは、実質的に同一である、
ことを特徴とする請求項1に記載の複数周波アンテナ。
【請求項3】
誘電体板をさらに備え、
前記第1と第2の入出力端子と前記第1と第2のアンテナ導体とは、前記誘電体板の1面に形成され、
前記第2と第4のインダクタは、誘電体板の他面に配置され、ビアを介して、前記第2のインダクタ1端は前記第1のアンテナ導体に、前記第4のインダクタの1端は前記第2のアンテナ導体に接続され、
前記第1のキャパシタは、前記第1のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第1のアンテナ導体の1部に対向する第1の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第2のキャパシタは、前記第2のアンテナ導体の1部と、前記誘電体板の他面に配置され、前記第2のアンテナ導体の1部に対向する第2の導電体と、間の誘電体板と、から構成され、
前記第1のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第1の導電体と接続され、他端を前記第1の入出力端子に接続され、
前記第3のインダクタは、前記誘電体板の1面に配置され、1端を、ビアを介して前記第2の導電体と接続され、他端を前記第2の入出力端子に接続されている、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の複数周波アンテナ。
【請求項4】
前記第1と第2のアンテナ導体の主伝搬方向に配置されている、前記第1と第2のアンテナ導体が放射する電波を遮断・反射する反射器を更に備える、
ことを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項5】
前記反射器は、
前記反射器から前記第1と第2のアンテナ導体へ反射される電波と、該電波と同方向に前記第1と第2のアンテナ導体から放射される電波と、が強め合う距離に配置されている、
ことを特徴とする請求項4に記載の複数周波アンテナ。
【請求項6】
前記反射器は、第3のアンテナ導体と、第4のアンテナ導体と、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する第5のインダクタと、前記第3のアンテナ導体と前記第4のアンテナ導体とを接続する、第6のインダクタと第3のキャパシタの直列回路と、から構成され、
当該反射器は前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数と実質的に同一の複数の共振周波数を持ち、
当該反射器の電波の主伝搬方向は、前記第1と第2のアンテナの電波の主伝搬方向と、実質的に同方向である、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の複数周波アンテナ。
【請求項7】
前記反射器は、複数の方形パターンを装荷された線路導体であり、
当該線路導体は、前記第1と第2のアンテナの主電波の電界方向に平行に延在しており、
当該反射器は、前記第1と第2のアンテナの複数の共振周波数のうち、少なくとも1つの共振周波数を持つ、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の複数周波アンテナ。
【請求項8】
前記反射器の形状は、焦点が前記第1と第2の入出力端子近傍である曲面状である、
ことを特徴とする請求項4または5に記載の複数周波アンテナ。
【請求項9】
前記アンテナ導体から前記反射器に向かって斜め方向に進行する電磁波を、前記反射器方向に反射する反射導体を更に備える、
ことを特徴とする請求項4乃至8の何れか1項に記載の複数周波アンテナ。
【請求項10】
前記第1のアンテナと前記第2のアンテナとは、鏡像対称に配置されている、
ことを特徴とする請求項1乃至9の何れか1項に記載の複数周波アンテナ。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【公開番号】特開2011−176495(P2011−176495A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−37956(P2010−37956)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000001443)カシオ計算機株式会社 (8,748)
【出願人】(504133110)国立大学法人電気通信大学 (383)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]