複数相鉄鋼を含むエンドプロテーゼ
複数相鉄鋼から製造されたエンドプロテーゼ。エンドプロテーゼとしては、様々なデバイス、例えばステープル、歯列矯正ワイヤ、心臓弁、フィルターデバイス、及びステントが挙げることができ、そのデバイスの多くは、直径方向に延伸可能なデバイスである。複数相鉄鋼としては、二相(dual phase)鋼及び変態誘起塑性鋼(TRIP鋼)が挙げられる。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年12月31日に出願された米国仮出願番号61/291,497に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、エンドプロテーゼの分野、特に直径方向に延伸可能なエンドプロテーゼの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
様々な種類の金属材料は、これまで埋め込み型医療デバイスに用いられてきている。種類316L又は316LVMのステンレス鋼、コバルト−クロム合金、工業用純チタン、及びチタン合金は、埋め込み可能なデバイスに用いられる典型的な材料である。埋め込みの環境及び方法は、特定の生体適合性及び材料特性を有する特定の原料の使用を要求する。これらの材料は、特殊用途のために、典型的に、必須の物理学的特性、例えば引張強度、疲労抵抗、弾性収縮力、及び降伏強度を保有する。
【0004】
これらの金属材料を複雑な形状(直径方向に延伸可能な形状を含む)、例えば人工心臓弁、ステント、及びフィルターに成形することは、しばしば望ましい。これらの種類の用途には、典型的に、316L又は316LVMステンレス鋼のものに近い強度特性、及び316L又は316LVMと同様の弾性収縮力を有する金属材料が要求される。これらの複雑な形状は、特定の形状(例えば、人体構造的な又はデバイスが駆動される形状)に適合する又は従うサイズ(例えば、バルーンを介して)に延伸されることを要求する用途は、しばしば存在する。これらの用途において、選択された金属材料は、比較的低い降伏強度を有し、容易な延伸を可能にする。これらのデバイス(例えば、冠状動脈ステント)のいくつかの目的とする埋め込みの環境は、典型的に比較的高い強度を有する金属材料を要求する。
【0005】
デバイス形状、送達の方法、及び環境は、しばしば4つの重要な物理的特性分野:引張強度、疲労抵抗、弾性収縮力、又は降伏強度のうちの一つにおいて妥協する金属材料の選択を強いる。これらの理由のために、特定の用途のための金属材料の選択は、しばしば困難であり、妥協が必要とされる。
【0006】
他の先進的高強度鋼(advanced high−strength steels)である、複数相鋼(multiple phase steels)(即ち、複数相鋼(multi−phase steels))は、所定の強度レベルにおいて、優れた延性を示す。複数相鋼の一つである、二相(dual phase)鋼の例によれば、増加した成形性は、原料に存在するフェライト及びマルテンサイト相の組み合わせに由来する。二相(dual phase)鋼は、スタンピング又は成形プロセスの間、それが安定であることを可能にする高い加工硬化率を有する。二相(dual phase)鋼は、供給者、例えばAK Steel(West Chester,OH.45069)から購入してもよい。
【0007】
複数相鋼であるTRIP(変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity))鋼の別の例によれば、増加した成形性は、塑性変形の間、保持されたオーステナイト(延性、鉄の高温相)のマルテンサイト(硬い、非平衡相)への変態に由来する。増加した成形性はまた、高い加工硬化率に由来し、それはスタンピング又は成形プロセスの間、金属が安定であることを可能にする。この増加した成形性のため、TRIP鋼は、複雑な形状を製造するために他の高強度鋼より用いられ得る。TRIP鋼は、供給者、例えばUS steel(Pittsburgh,PA)又はArcelorMittal(Brazil)から購入してもよい。
【0008】
4%Moを含むTRIP鋼は、種類316L又は316LVMのステンレス鋼に対して評価され、整形外科的用途のための埋め込み可能な材料として使用の可能性のある材料として、ビタリウム合金をキャスト(cast)する。これらの用途におけるTRIP鋼対316Lステンレス鋼のインビボにおける評価による結果は、TRIP鋼が応力腐食割れに影響を受けやすく、隙間腐食に一層影響を受けやすいことを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
第一の実施形態は、複数相(multi−phase)(複数相(multiple phase))鉄ステンレス鋼からなるエンドプロテーゼ(即ち、体の内部に設置されるプロテーゼ)を提供する。複数相鉄ステンレス鋼(先進的高強度鋼(Advanced High Strength steel)、又はAHSSとも称される)は、微細構造中に1超の相(例えば、オーステナイト、フェライト、ベイナイト、又はマルテンサイト)を含む任意の鉄鋼として定義される。複数相鉄ステンレス鋼としては、例えば、二相(dual phase)、複合的な相(微細構造中に2超の相が存在する)、二重(duplex)、TRIP、TWIP(双晶誘起塑性(Twining Induced Plasticity))、及びQ&P(焼入れ分配(Quenched and Partitioned))の鋼が挙げられる。
【0010】
第二の実施形態は、複数相鋼材料、例えばTRIPステンレス鋼を所望の形状に成形するステップ(例えば、スタンピング、ワイヤワインディング、レーザー切断)、所望の形状を管状形態に成形するステップ、及び前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップ(例えば、付着させること/緊締すること)、前記所望の形状を治療の領域に送達するステップ、及び治療の領域においてバルーンの膨張により前記所望の形状を延伸するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、L605、316L又は316LVM、二相(dual phase)鋼、及びTRIP鋼の応力−歪み曲線を示す。
【0012】
【図2】図2は、L605、316L又は316LVMの収縮における変化を示すグラフである。
【0013】
【図3A】図3Aは、直径方向延伸前の複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼの一つの実施形態の透視図である。
【図3B】図3Bは、直径方向延伸後の複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼの一つの実施形態の透視図である。
【0014】
【図4】図4は、典型的なバルーン送達システムに取り付けられ、典型的なバルーン送達システムにより直径方向に延伸された、複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼの長手方向の断面図を示す。
【0015】
【図5】図5は、血管内送達されたバルーン延伸可能な複数相鉄ステンレス鋼心臓弁の一つの実施形態の透視図である。
【0016】
【図6】図6は、複数相鉄ステンレス鋼を含む外科的に埋め込み可能な心臓弁の一つの実施形態の透視図を示す。
【0017】
【図7】図7は、埋め込み可能なフィルターデバイスの側面図を示す。
【0018】
【図8】図8は、複数相鉄鋼から作られた代替のバルーン延伸可能なステントの側面図を示す。
【0019】
【図9】図9は、複数相鉄鋼のシートから作られた図8のステントの側面図を示す。
【0020】
【図10】図10は、図8により記載された種類の多重バルーン延伸可能なステントを用いたステント・グラフトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
図1は、L605コバルトクロム合金、二相(dual phase)鋼、TRIP鋼、及び316L又は316LVMステンレス鋼の典型的な特性を比較した応力−歪み曲線を示す。図に示されるように、L605は、比較的高い降伏強度(YS)100及び高い最大引張強度(UTS)108を有した一方で、316L又は316LVMは、低い降伏強度106及び低い最大引張強度114を有した。二相(dual phase)鋼(102)及びTRIP鋼(104)は、典型的に、成形性及び延伸の容易性を増加させるL605(100)のそれよりも低い降伏強度を有する。二相(dual phase)鋼(102)及びTRIP鋼(104)の最大引張強度が、316L又は316LVM(114)の最大引張強度よりも高いことは、注目に値する。
【0022】
図2は、エンドプロテーゼに用いられる典型的なL605及び316L又は316LVM鋼について示される収縮の変化と併せて、応力−歪み曲線を示す。316L又は316LVM鋼についての収縮の変化は、歪み量200として示される一方で、L605ついての収縮の変化は、歪み量204として示される。歪み量204は、高い引張応力(modulus)、高い降伏強度金属、例えばL605についての典型的な収縮量を示す。歪み量200は、低い引張応力、低い降伏強度金属、例えば316L又は316LVMについての典型的な収縮量を示す。二相(dual phase)又はTRIP鋼における収縮の変化は、二つの値の間に位置する。L605の高い最大引張強度及び高い引張応力を維持する一方で、316L又は316LVMのそれとして比較的小さい収縮の量を示す、エンドプロテーゼとして使用のための材料の利点は、有利である。
【0023】
MRI(核磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging))適合性は、埋め込み可能なプロテーゼについて選択される任意の金属において、重要な特性である。二重(Duplex)ステンレス鋼は、各相について典型的には約50%である微細構造比を有する、常磁性オーステナイト及び強磁性フェライトの超微細構造(fine micro structure)を提示する。316LVMのようなステンレス鋼は、それらが100%オーステナイトであり、従って常磁性である微細構造を有するので、MRIに適合可能であると考えられる。プレーン炭素鋼のような材料は、フェライト微細構造を有し、強磁性である。強磁性材料は、それらが磁場により強く影響を受けるという事実のために、MRIに安全である又はMRI適合可能であると考えられない。フェライトの体積率は、熱処理を通して二重(Duplex)ステンレス鋼において減少し得ることは示されている。例えば、二重(Duplex)鋼サンプルは、真空炉中で1300℃の温度まで熱処理され、その後ゆっくりと1000℃まで(炉の中で)冷却され、次に炉から取り出され、室温まで空冷される。この加工技術は、任意の二次的な脆いシグマ相を形成することなく、微細構造中のフェライト体積を50%〜約11%分解した。かかるサンプルは、その後、熱磁気分析を用いて試験され、フェライトの低い含量のために、大変乏しい強磁性シグナルを有することを示した。熱磁気曲線は、常磁性材料に特有であると考えられた。
【0024】
第一の実施形態は、鉄を含有する複数相鋼からなるエンドプロテーゼを提供する。これらの複数相鉄エンドプロテーゼは、従来の材料から作られるかかるデバイスに用いられるような既知の方法(そのいくつかは下記に記載される)により製造され得る。かかるエンドプロテーゼの例としては、それの冠状動脈ステントが挙げられ得る。典型的に、冠状動脈ステントは、留置後強度のためにコバルトクロム合金、又は適合性、追従性(trackability)、最小弾性収縮力、及び成形の容易性のために、316L又は316LVMステンレス鋼のいずれかを用いて製造される。任意のこれらの金属のから作られるステントは、しばしば複雑な幾何学的なデザインで製造される。デザインは、典型的に、様々な方法を用いて成形される。いくつかのデザインは、金属ワイヤから一般的な管形状に成形される。より複雑なデザインは、金属の薄い平たいシートから切断され、その後切断されたデザインから、又は薄い管状形態から直接管を成形するために折り曲げられる。その後、どちらの方法もステントをバルーンカテーテルに固定できるように、直径方向に圧縮され得る。パターンの切断は、放電加工機、化学エッチング、スタンピング(stamping)、又はレーザー切断を含むがこれに限定されない、当該技術分野において一般的に知られている様々な方法により行われる。製造の間及び所望の埋め込み部位までのステントの送達の間に冠状動脈ステントに掛かる独自の機械的ストレスのために、最も広く用いられる金属材料は、316L又は316LVMステンレス鋼である。典型的に、留置されたデバイスに掛けられる機械的要求のために、これらの市販の冠状動脈ステントを作るために用いられる予め切断された金属は、過剰に厚い。複数相鉄鋼の特性は、これらの同一のデバイスがなお優れた強度特性を提供しながら、より薄い壁で作られることを可能にする。
【0025】
冠状動脈ステントは、典型的に、バルーンカテーテルの外側への付着により所望の埋め込み部位まで、経皮的に送達される。ステントを運ぶカテーテルは、患者血管構造を通して操作され、それはしばしば複雑で曲がりくねっている。ステントとして選択される金属材料、例えばコバルトクロム合金が高い強度特徴を保有する場合、曲がりくねった組織を首尾良くナビゲートするその能力は、損なわれ得、留置において、それは特有の収縮を示す。冠状動脈ステントの埋め込みの環境、及び機械的要求を考えると、複数相鋼の使用は、成形、送達、及び留置後の間、ステントデザインにかかる要求を理想的に満たし、前述の妥協点の多くを修正する。
【0026】
図3A及び3Bは、d及びd’として各図に示される直径差と共に、直径方向延伸前及び後の、複数相鉄ステンレスエンドプロテーゼ10(例えば、ステント12)の一つの実施形態の透視図である。
【0027】
図4は、取り付けられ、膨らんだカテーテルバルーン16により直径方向に延伸された、複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼ10(例えば、ステント12)である、典型的なバルーン送達システム14の全ての部分の長手方向の断面図を示す。
【0028】
エンドプロテーゼの更なる例は、上述の冠状動脈ステントのように同一の方法及び基本的な形状において成形され得る腎臓ステントのそれである。多くの腎臓ステントは、様々な解剖学的要求に応じるために、入口部病変領域と遠位部分の二つの異なる部分で構成される。腎臓ステントの入口部領域は、高い半径方向強度要求を有し、通常厚い壁とより長手方向のコネクタで構成される。腎臓ステントの遠位部分は、入口部領域よりもより柔軟であることが望ましく、通常薄い壁と少ないコネクタで構成される。ステント全体は、最適な追従性、正確な留置のために、低い断面(profile)であることが望ましく、任意の時間、動脈を遮断しないように、迅速、且つ容易に膨らむように設計されなければならない。これらの矛盾するデザイン要求は、材料選択における妥協を必要とする。最も利用可能な腎臓ステントは、316L又は316LVMステンレス鋼から作られる。上述の他のステント及びフレームと同様に、316L又は316LVMは、優れた追従性、成形性、及び最小限の弾性収縮を可能にする。これらの性能目標に達するために、ステントは、製造の困難性を増加させる二つの異なる部分に設計されなければならない。
【0029】
複数相鋼が用いられる場合、デザインは、高い半径方向強度、柔軟性、追従性、及びバルーン延伸の容易性の必要とされる属性を妥協することなく、均一にすることができる。デザインは、全体を通して薄い壁と少ないコネクタで作られる。
【0030】
様々な他の種類の直径方向に延伸可能なステントは、それらの製造について複数相鉄鋼の使用から恩恵を受け得る。これらとしては、末梢、頸動脈、脳(神経)、胆汁、肝臓、大動脈、及び胸部に適用のためのステントが挙げることができる。さらに、これらは、既知の方法により製造され得る。これらの種類の一部又は全てのステントデバイスは、ステントフレームが人工グラフト材料、例えば、ダクロポン又はePTFE(延伸されたポリテトラフルオロエチレン)(ステントの外面、内面のいずれか又は双方の表面上)の部分的又は全体的なコーティングを与えられた、ステント・グラフトとして提供され得る。
【0031】
エンドプロテーゼの更なる例としては、図5及び6に示されるトランスカテーテル送達された人工心臓弁50のようなものが挙げられる。トランスカテーテル送達された心臓弁は、典型的に、材料の成形性、追従性特徴、及び最小弾性収縮力について選択された医療グレードステンレス鋼のフレームから作られる。それはまた、材料の機械的ストレスについて選択されるコバルトニッケル又はコバルトクロム合金からそれらを作ることを可能にする。これらのトランスカテーテル送達された心臓弁は、現行の機能不全の心臓弁の照準に直接留置され、従って、それらは、そうでなければ血流に利用され得る空間をとる。心臓弁フレーム52を形成するための方法は、ステントを形成するために用いられるものと同様であり、先に述べられている。フレーム52のデザインは、しばしば環形状であり、列の間に長辺方向の連結とともに、ジグザグ又は正弦曲線型起伏(図5)の列から形成される。あるいは、それらは、環を成形するために一緒に連結された菱形形状要素から形成され得る。多くの他の形状は、トランスカテーテル送達された心臓弁50のフレーム52について想定され得る。
【0032】
フレーム52は、弁材料に取り付けられている。弁54の材料としては、同種グラフト(homografts)(ドナーグラフト)、自家グラフト(autografts)(典型的には、ロス手術によって)、異種グラフト(heterograft)又は異種グラフト(xenograft)(最も一般的には、ウシ又はブタドナーからの動物組織グラフト)、又は任意の生体適合性材料、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はePTFE(延伸されたポリテトラフルオロエチレン)のものが挙げられる。これらの材料は、当該技術分野に一般的に知られている様々な方法、例えばフレームに直接縫合し、又は別の材料(例えば、ダクロポン(登録商標)又はポリエステル)のスカートに縫合し、その結果フレームに縫合又は科学的に結合させる方法、を用いて、フレームに取り付けられ得る。
【0033】
これらの心臓弁50は、経心尖的又は経大腿的の2つの方法においてバルーンカテーテルにより留置される(最も一般的な送達の経路は経大腿的である)。送達のこの方法は、潜在的に曲がりくねった組織の相当な長さを通して追従するのに十分な柔軟性を有する、バルーンカテーテルに取り付けられたデバイスの能力を要求する。この追従性要求は、しばしば心臓弁フレームについての医療グレードのステンレス鋼の使用を必要とする。
【0034】
典型的な医療グレードのステンレス鋼が心臓弁50のフレーム52に選択される場合、フレーム52は、より強度のある材料、例えばコバルトクロム合金又はコバルトニッケル合金が選択された場合よりも、いくらか厚くなければならない。コバルト合金の使用は、デバイスの送達の典型的な方法を妨げ、より正確性に欠ける留置を与える。換言すれば、より薄いフレームは、血流及びデバイス送達を容易にするために望ましいが、フレームは、心臓の鼓動により与えられる機械的ストレスの下で保持するのに十分な強度がなければならない。複数相鋼は、トランスカテーテル送達された心臓弁の独自の機械的要求を満たす。
【0035】
外科用ステープル又は胸骨閉鎖デバイスはまた、複数相鉄鋼から有利に作られ得る。ステープルは、しばしば腸、肺、及び皮膚の傷を閉じるために用いられる。
【0036】
血管72に埋め込まれるような、例えば図7に示される、埋め込み可能なフィルター70はまた、本明細書に記載される複数相鉄ステンレス鋼から効率的に製造され得る。これらのフィルターとしては、下大静脈フィルター及び塞栓症のフィルターが挙げられる。これらの用途のためのフィルターは、所望の部位におけるその後の延伸のための、体の導管への挿入を可能にするために、直径方向に延伸可能であるようにしばしば作られる。
【0037】
二重(Duplex)ステンレス鋼の他の医療用途は、医療用リード(leads)の領域においてである。医療用ペーシングリード(pacing leads)は、挿入されたリードを受け入れるために延伸し、その後収縮する圧縮可能な部分を有する、又はリードに電気的及びスプリング様機械的接続の双方を提供するためにリードのまわりに圧着される、電気的コネクタ要素を有する。理想的には、この圧着接続は、圧着がされるまで、大変薄く、柔軟性を有するが、埋め込み及び外植の間、リードに与えられる高い張力に耐えるのに十分な強度を有する。材料、例えば二重(Duplex)ステンレス鋼は、かかる用途のための最適な選択である。
【0038】
ガイドワイヤはまた、複数相鉄鋼から製造されてもよい。
【0039】
歯列矯正プロテーゼ、特にアーチワイヤは、複数相鉄金属の別の適用である。アーチワイヤは、大変小さい力で成形され得なければならないが、最大5%の歪み範囲に亘り、一定力(歯の移動を引き起こすのに十分であるが、痛くないように歯医者により選択される)を与えなければならない。この一定力は、多量の収縮なく、維持されなければならない。加重は機械的に適用され得るので、強く、容易に成形可能である材料が望ましい。
【0040】
更なる加工ステップは、任意の上述のデバイスの製造に加えられ得る。例えば、耐用年数の改善ステップは、デバイス形状を成形後、加えられる。このステップとしては、金属の表面に圧縮残留応力を与えるために、成形されたデバイスの選択された部分を予歪みさせること、成形されたデバイスを電解研磨すること、又は成形されたデバイスをメディアブラスティング(media blasting)することが、挙げられる。複数相鉄金属がアニールされた表面で供給される場合、この加工ステップは、デバイス成形の前に行なわれ得る。更なる加工ステップはまた、コーティング又はカバー接着(cover adhesion)の結合強度を改善するために加えられる。このステップは、耐用年数改善についてのものと同様であるが、結合寿命の改善をもたらす。耐用年数の改善と同様に、このステップは、提供される原料に依存するデバイス成形の前又は後のいずれかで行なわれ得る。
【0041】
上述のようなエンドプロテーゼは、様々な種類の生体活性物質(治療剤)、例えば抗凝血剤、又は抗生物質のコーティングとともに提供され得る。これらは、所望の生物活性剤に適切な既知の様々な方法によりかかるデバイスに結合され得る。それらはまた、特定の用途に望ましいように、任意で、治療剤を含む、様々なポリマーで、任意でコートされる。好適なコーティングとしては、フルオロポリマー、例えばフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ePTFE、及びテトラフルオロエチレンとポリアルキルビニルエーテルのコポリマー、例えばポリアルキルメチルエーテル(TFE/PMVE)が挙げられる。
【実施例】
【0042】
実施例1
図8は、複数相鉄鋼から作られ得る典型的な種類のバルーン延伸可能な管状エンドプロテーゼ80を示す。明確にするために、マンドレル(mandrel)又は他の円筒形態がデバイスの管状形態の内部に挿入される場合に、かかるデバイスが一般的に観察者見えるように、管状形態(観察者から最も遠い)の背面は除かれて、観察者に最も近いデバイスの側面のみは、図8に示される。図8は、カテーテルバルーンでの続く部分的な直径方向の延伸のように見える、エンドプロテーゼ80を示す。この種類のデバイスは、厚さ6.35mmの鋼プレートの形態で、二重(Duplex)グレードS2205(Sandmeyer Steel Co.,Philadelphia PAから入手可能である)を用いて製造された。容認された鋼プレートは、以下の特性を有する:
845MPaのUTS
644MPaの0.2%YS
29の伸長(%)
56.4%のオーステナイト及び43.6%のフェライト体積率
オーステナイト及びフェライトの体積率は、銅源を用いたX線回折技術を用いて測定された。測定は、プレートが横断面である場合、プレートの中心で行われた。
【0043】
鋼プレートは、1300℃で熱処理され、炉は1000℃まで冷却された。1000℃に達した後、プレートは、室温まで周囲空気で冷却された。続いて熱処理を受けた鋼プレートは、以下の特性を有した:
781MPaのUTS
485MPaの0.2%YS
34の伸長(%)
216GPaの引張応力
41.4%のオーステナイト及び58.6%のフェライト体積率
【0044】
引張試験は、ASTM E8に従って行われた。熱処理されたステンレス鋼プレートからの引張試験サンプルは、通された引張試験バーに機械加工された。レーザー切断引張試験ストリップは、316LVM及びL605管類から切断され、張力において試験された。
316LVMの機械的特性は、以下である:
661MPaのUTS
340MPaの0.2%YS
53の伸長(%)
126GPaの引張応力。
試験された比較のL605サンプルの機械的特性は、以下である:
1079MPaのUTS
567MPaの0.2%YS
56の伸長(%)
235GPaの引張応力。
【0045】
この試験は、熱処理された二重(Duplex)ステンレス鋼は、合計の伸長が316LVM及びL605よりも低い一方で、二つの合金の間である弾力性(elasticity)、降伏強度、及び最大引張強度の係数を有することを示した。
【0046】
熱処理後、ハイポ管(hypotubes)は、鋼プレートからワイヤEDM(放電加工機(Electrical Discharge Machine))機械加工(Mitsubishi Wire EDM,モデル FA205)された。これらのハイポ管は、4.57mmの外径、及び0.254mmの壁厚を有した。EDM管がレーザー切断されるのに短すぎたので、ステンレス鋼管拡張は行われ、ハイポ管の末端に圧入された。図8に示される種類のステント環は、その後ハイポ管からレーザー切断され;直径及び壁厚は、影響を受けなかった。レーザー切断は、外観が一般的に図8により示されるようであるように、エンドプロテーゼの延伸された直径において行なわれた(即ち、デバイスの直径は、次のデバイスの典型的なバルーン延伸を有する)。同一の種類及び同一の寸法のレーザー切断ステント環は、316LVM合金から作られた。二重(Duplex)環及び316LVM合金環は、1.5mmまで模擬圧着を受けた。環は、その後、10mmまで先細のマンドレルを用いて直径方向に延伸され、Blockwise J−crimper(モデル RJAT,Blockwise Engineering LLC,Phoenix AZ)中に置かれた。J−crimperは、Instron tensile tester(モデル 5564,Instron Corp.,Norwood MA)に取り付けられ、環は機械式絞り中に個別に置かれた。環は、その後、個別に直径方向に、絞り中で中間サイズ(1.65mm 外径)まで押しつぶされ、環の強度は、Instron Bluehillソフトウェアで測定された。二重(Duplex)環は、316LVM環よりも約20%強いことが示された。
【0047】
二重(Duplex)レーザー切断環の収縮は、以下のプロセスを用いて測定された。上述の種類のエンドプロテーゼ環(ステント環)は、熱処理された二重(Duplex)S2205鋼から製造され、先述のものと同様に、316LVM及びL605の双方からも製造された。これらの環は、最大直径12.80mmの円筒末端部分を有する先細のステンレス鋼マンドレルを用いて直径方向に延伸された。環は、12.80mmの内径まで延伸され、その後、先細のマンドレルから取り除かれた。これらの12.80mmの直径は、このデザインのステント環に機能的に関連すると考えられる。直径方向に延伸され、先細のマンドレルが取り除かれた後、それぞれの環の内径は、Nikon vision system(モデル VMR 3020 type3)を用いて測定された。それぞれの環の直径は、ステントの内径を等間隔で10の異なる場所で測定され、平均された。これらの測定は、316LVMステント環において0.051mm、二重(Duplex)鋼ステント環において0.152mm、L605ステント環において0.279mmの収縮を示した。これらのデータは、そのままではそれ故成形可能でない、熱処理された二重(Duplex)環と比較して、L605環が高い程度の弾性収縮力を有することを示す。
【0048】
一般的に上述のように、ビレット(billet)から機械加工されることに加えて、図8に示される種類のステント環はまた、シート材料から機械加工され得る。かかるステントについて機械加工されたパターン90は、図9に示される。シートの機械加工に続いて、得られる平面形態90は、その後、先細のマンドレルを用いて管に形作られる。マンドレルの小さい直径は、平面形態90の中央開口92に挿入されることが可能でなければならない。マンドレルは、部分的に延伸されたステント形態の目的とする内径と等しい最大直径を有するべきであり;この最大直径は、円筒部分に隣接する等しい直径を含む。マンドレルの小さい末端を平面形態90の中央開口92に挿入すること、及び平面形態90を通してマンドレルを全体的に押すことは、図8に示すような管状形態80をもたらす。
【0049】
多重ステント環は、熱処理された二重(Duplex)S2205鋼から上述の様に作られた。8つの環80は、グラフト材料、例えばePTFE管102の外面と連結され、図10に示されるように、ステント・グラフト100を作った。この種類のステント・グラフトの製造は、米国特許出願公開第2008/0119943号に開示され、本明細書に参照により援用される。約40mm長の得られるバルーン延伸可能なステント・グラフト100は、続く患者の血管構造への送達、及び続くバルーン延伸のために、バルーンカテーテルが積まれ得る。図10に示されるステント・グラフト100は単なる例示であり、複数相鉄鋼から作られたステントを包含するステント・グラフトの多くの形態が可能であることは、理解される。ステントは、グラフト材料の外表面、グラフト材料の管腔表面で連結され得、又はグラフト材料内層と外層の間にサンドイッチされ得ることは、同様に理解される。さらに、グラフト材料は、特定の用途、例えば胆汁治療のために必要であれば、ミシン目を組み込み得る。
【0050】
二重(Duplex)S2205ステンレス鋼合金は、特に、上述のように熱処理された場合、バルーン延伸可能なエンドプロテーゼの製造のための優れた強度能力及び優れた成形能力を与えることが示される一方で、さらに優れた合金は、医療デバイス、特に延伸可能なエンドプロテーゼに適切であると考えられている。表1は、かかる合金の組成を示す。この組成からの小さい逸脱はまた、二重(Duplex)S2205合金を超える幾らかの改善を提供し得ることは、理解される。
【0051】
【表1】
【0052】
上述の及び添付の特許請求の範囲で請求される実施形態を対象とすることに加えて、本発明は、更に、上述の及び添付の特許請求の範囲で請求される特徴の異なる組み合わせを有する実施形態を対象とする。従って、本発明はまた、添付の特許請求の範囲で請求される独立していない特徴の任意の他の可能性のある組み合わせを有する他の実施形態を対象とする。
【0053】
本発明の多数の特徴及び有利な点は、本発明の構造及び機能の詳細と共に好ましい及び代替の実施形態を含む先の記述において説明された。本開示は、実例的であることのみが意図され、それ自体として包括的であることは意図されない。特に本発明の原理の構造、材料、要素、成分、形状、サイズ、及び部分の配置の事項から、添付の請求項が表現される、広く、一般的な用語の意味により示される全内容までにおいて、様々な変更が行なわれ得ることは、当業者に明らかである。これらの様々な変更は、添付の請求項の趣旨及び範囲から離れない限りにおいては、それらは、本明細書に包含されることを意図する。
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
この出願は、2009年12月31日に出願された米国仮出願番号61/291,497に対する優先権を主張する。
【0002】
発明の分野
本発明は、エンドプロテーゼの分野、特に直径方向に延伸可能なエンドプロテーゼの分野に関する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
様々な種類の金属材料は、これまで埋め込み型医療デバイスに用いられてきている。種類316L又は316LVMのステンレス鋼、コバルト−クロム合金、工業用純チタン、及びチタン合金は、埋め込み可能なデバイスに用いられる典型的な材料である。埋め込みの環境及び方法は、特定の生体適合性及び材料特性を有する特定の原料の使用を要求する。これらの材料は、特殊用途のために、典型的に、必須の物理学的特性、例えば引張強度、疲労抵抗、弾性収縮力、及び降伏強度を保有する。
【0004】
これらの金属材料を複雑な形状(直径方向に延伸可能な形状を含む)、例えば人工心臓弁、ステント、及びフィルターに成形することは、しばしば望ましい。これらの種類の用途には、典型的に、316L又は316LVMステンレス鋼のものに近い強度特性、及び316L又は316LVMと同様の弾性収縮力を有する金属材料が要求される。これらの複雑な形状は、特定の形状(例えば、人体構造的な又はデバイスが駆動される形状)に適合する又は従うサイズ(例えば、バルーンを介して)に延伸されることを要求する用途は、しばしば存在する。これらの用途において、選択された金属材料は、比較的低い降伏強度を有し、容易な延伸を可能にする。これらのデバイス(例えば、冠状動脈ステント)のいくつかの目的とする埋め込みの環境は、典型的に比較的高い強度を有する金属材料を要求する。
【0005】
デバイス形状、送達の方法、及び環境は、しばしば4つの重要な物理的特性分野:引張強度、疲労抵抗、弾性収縮力、又は降伏強度のうちの一つにおいて妥協する金属材料の選択を強いる。これらの理由のために、特定の用途のための金属材料の選択は、しばしば困難であり、妥協が必要とされる。
【0006】
他の先進的高強度鋼(advanced high−strength steels)である、複数相鋼(multiple phase steels)(即ち、複数相鋼(multi−phase steels))は、所定の強度レベルにおいて、優れた延性を示す。複数相鋼の一つである、二相(dual phase)鋼の例によれば、増加した成形性は、原料に存在するフェライト及びマルテンサイト相の組み合わせに由来する。二相(dual phase)鋼は、スタンピング又は成形プロセスの間、それが安定であることを可能にする高い加工硬化率を有する。二相(dual phase)鋼は、供給者、例えばAK Steel(West Chester,OH.45069)から購入してもよい。
【0007】
複数相鋼であるTRIP(変態誘起塑性(Transformation Induced Plasticity))鋼の別の例によれば、増加した成形性は、塑性変形の間、保持されたオーステナイト(延性、鉄の高温相)のマルテンサイト(硬い、非平衡相)への変態に由来する。増加した成形性はまた、高い加工硬化率に由来し、それはスタンピング又は成形プロセスの間、金属が安定であることを可能にする。この増加した成形性のため、TRIP鋼は、複雑な形状を製造するために他の高強度鋼より用いられ得る。TRIP鋼は、供給者、例えばUS steel(Pittsburgh,PA)又はArcelorMittal(Brazil)から購入してもよい。
【0008】
4%Moを含むTRIP鋼は、種類316L又は316LVMのステンレス鋼に対して評価され、整形外科的用途のための埋め込み可能な材料として使用の可能性のある材料として、ビタリウム合金をキャスト(cast)する。これらの用途におけるTRIP鋼対316Lステンレス鋼のインビボにおける評価による結果は、TRIP鋼が応力腐食割れに影響を受けやすく、隙間腐食に一層影響を受けやすいことを示した。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
発明の概要
第一の実施形態は、複数相(multi−phase)(複数相(multiple phase))鉄ステンレス鋼からなるエンドプロテーゼ(即ち、体の内部に設置されるプロテーゼ)を提供する。複数相鉄ステンレス鋼(先進的高強度鋼(Advanced High Strength steel)、又はAHSSとも称される)は、微細構造中に1超の相(例えば、オーステナイト、フェライト、ベイナイト、又はマルテンサイト)を含む任意の鉄鋼として定義される。複数相鉄ステンレス鋼としては、例えば、二相(dual phase)、複合的な相(微細構造中に2超の相が存在する)、二重(duplex)、TRIP、TWIP(双晶誘起塑性(Twining Induced Plasticity))、及びQ&P(焼入れ分配(Quenched and Partitioned))の鋼が挙げられる。
【0010】
第二の実施形態は、複数相鋼材料、例えばTRIPステンレス鋼を所望の形状に成形するステップ(例えば、スタンピング、ワイヤワインディング、レーザー切断)、所望の形状を管状形態に成形するステップ、及び前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップ(例えば、付着させること/緊締すること)、前記所望の形状を治療の領域に送達するステップ、及び治療の領域においてバルーンの膨張により前記所望の形状を延伸するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法を提供する。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図面の簡単な説明
【図1】図1は、L605、316L又は316LVM、二相(dual phase)鋼、及びTRIP鋼の応力−歪み曲線を示す。
【0012】
【図2】図2は、L605、316L又は316LVMの収縮における変化を示すグラフである。
【0013】
【図3A】図3Aは、直径方向延伸前の複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼの一つの実施形態の透視図である。
【図3B】図3Bは、直径方向延伸後の複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼの一つの実施形態の透視図である。
【0014】
【図4】図4は、典型的なバルーン送達システムに取り付けられ、典型的なバルーン送達システムにより直径方向に延伸された、複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼの長手方向の断面図を示す。
【0015】
【図5】図5は、血管内送達されたバルーン延伸可能な複数相鉄ステンレス鋼心臓弁の一つの実施形態の透視図である。
【0016】
【図6】図6は、複数相鉄ステンレス鋼を含む外科的に埋め込み可能な心臓弁の一つの実施形態の透視図を示す。
【0017】
【図7】図7は、埋め込み可能なフィルターデバイスの側面図を示す。
【0018】
【図8】図8は、複数相鉄鋼から作られた代替のバルーン延伸可能なステントの側面図を示す。
【0019】
【図9】図9は、複数相鉄鋼のシートから作られた図8のステントの側面図を示す。
【0020】
【図10】図10は、図8により記載された種類の多重バルーン延伸可能なステントを用いたステント・グラフトを示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
発明の詳細な説明
図1は、L605コバルトクロム合金、二相(dual phase)鋼、TRIP鋼、及び316L又は316LVMステンレス鋼の典型的な特性を比較した応力−歪み曲線を示す。図に示されるように、L605は、比較的高い降伏強度(YS)100及び高い最大引張強度(UTS)108を有した一方で、316L又は316LVMは、低い降伏強度106及び低い最大引張強度114を有した。二相(dual phase)鋼(102)及びTRIP鋼(104)は、典型的に、成形性及び延伸の容易性を増加させるL605(100)のそれよりも低い降伏強度を有する。二相(dual phase)鋼(102)及びTRIP鋼(104)の最大引張強度が、316L又は316LVM(114)の最大引張強度よりも高いことは、注目に値する。
【0022】
図2は、エンドプロテーゼに用いられる典型的なL605及び316L又は316LVM鋼について示される収縮の変化と併せて、応力−歪み曲線を示す。316L又は316LVM鋼についての収縮の変化は、歪み量200として示される一方で、L605ついての収縮の変化は、歪み量204として示される。歪み量204は、高い引張応力(modulus)、高い降伏強度金属、例えばL605についての典型的な収縮量を示す。歪み量200は、低い引張応力、低い降伏強度金属、例えば316L又は316LVMについての典型的な収縮量を示す。二相(dual phase)又はTRIP鋼における収縮の変化は、二つの値の間に位置する。L605の高い最大引張強度及び高い引張応力を維持する一方で、316L又は316LVMのそれとして比較的小さい収縮の量を示す、エンドプロテーゼとして使用のための材料の利点は、有利である。
【0023】
MRI(核磁気共鳴映像法(Magnetic Resonance Imaging))適合性は、埋め込み可能なプロテーゼについて選択される任意の金属において、重要な特性である。二重(Duplex)ステンレス鋼は、各相について典型的には約50%である微細構造比を有する、常磁性オーステナイト及び強磁性フェライトの超微細構造(fine micro structure)を提示する。316LVMのようなステンレス鋼は、それらが100%オーステナイトであり、従って常磁性である微細構造を有するので、MRIに適合可能であると考えられる。プレーン炭素鋼のような材料は、フェライト微細構造を有し、強磁性である。強磁性材料は、それらが磁場により強く影響を受けるという事実のために、MRIに安全である又はMRI適合可能であると考えられない。フェライトの体積率は、熱処理を通して二重(Duplex)ステンレス鋼において減少し得ることは示されている。例えば、二重(Duplex)鋼サンプルは、真空炉中で1300℃の温度まで熱処理され、その後ゆっくりと1000℃まで(炉の中で)冷却され、次に炉から取り出され、室温まで空冷される。この加工技術は、任意の二次的な脆いシグマ相を形成することなく、微細構造中のフェライト体積を50%〜約11%分解した。かかるサンプルは、その後、熱磁気分析を用いて試験され、フェライトの低い含量のために、大変乏しい強磁性シグナルを有することを示した。熱磁気曲線は、常磁性材料に特有であると考えられた。
【0024】
第一の実施形態は、鉄を含有する複数相鋼からなるエンドプロテーゼを提供する。これらの複数相鉄エンドプロテーゼは、従来の材料から作られるかかるデバイスに用いられるような既知の方法(そのいくつかは下記に記載される)により製造され得る。かかるエンドプロテーゼの例としては、それの冠状動脈ステントが挙げられ得る。典型的に、冠状動脈ステントは、留置後強度のためにコバルトクロム合金、又は適合性、追従性(trackability)、最小弾性収縮力、及び成形の容易性のために、316L又は316LVMステンレス鋼のいずれかを用いて製造される。任意のこれらの金属のから作られるステントは、しばしば複雑な幾何学的なデザインで製造される。デザインは、典型的に、様々な方法を用いて成形される。いくつかのデザインは、金属ワイヤから一般的な管形状に成形される。より複雑なデザインは、金属の薄い平たいシートから切断され、その後切断されたデザインから、又は薄い管状形態から直接管を成形するために折り曲げられる。その後、どちらの方法もステントをバルーンカテーテルに固定できるように、直径方向に圧縮され得る。パターンの切断は、放電加工機、化学エッチング、スタンピング(stamping)、又はレーザー切断を含むがこれに限定されない、当該技術分野において一般的に知られている様々な方法により行われる。製造の間及び所望の埋め込み部位までのステントの送達の間に冠状動脈ステントに掛かる独自の機械的ストレスのために、最も広く用いられる金属材料は、316L又は316LVMステンレス鋼である。典型的に、留置されたデバイスに掛けられる機械的要求のために、これらの市販の冠状動脈ステントを作るために用いられる予め切断された金属は、過剰に厚い。複数相鉄鋼の特性は、これらの同一のデバイスがなお優れた強度特性を提供しながら、より薄い壁で作られることを可能にする。
【0025】
冠状動脈ステントは、典型的に、バルーンカテーテルの外側への付着により所望の埋め込み部位まで、経皮的に送達される。ステントを運ぶカテーテルは、患者血管構造を通して操作され、それはしばしば複雑で曲がりくねっている。ステントとして選択される金属材料、例えばコバルトクロム合金が高い強度特徴を保有する場合、曲がりくねった組織を首尾良くナビゲートするその能力は、損なわれ得、留置において、それは特有の収縮を示す。冠状動脈ステントの埋め込みの環境、及び機械的要求を考えると、複数相鋼の使用は、成形、送達、及び留置後の間、ステントデザインにかかる要求を理想的に満たし、前述の妥協点の多くを修正する。
【0026】
図3A及び3Bは、d及びd’として各図に示される直径差と共に、直径方向延伸前及び後の、複数相鉄ステンレスエンドプロテーゼ10(例えば、ステント12)の一つの実施形態の透視図である。
【0027】
図4は、取り付けられ、膨らんだカテーテルバルーン16により直径方向に延伸された、複数相鉄ステンレス鋼エンドプロテーゼ10(例えば、ステント12)である、典型的なバルーン送達システム14の全ての部分の長手方向の断面図を示す。
【0028】
エンドプロテーゼの更なる例は、上述の冠状動脈ステントのように同一の方法及び基本的な形状において成形され得る腎臓ステントのそれである。多くの腎臓ステントは、様々な解剖学的要求に応じるために、入口部病変領域と遠位部分の二つの異なる部分で構成される。腎臓ステントの入口部領域は、高い半径方向強度要求を有し、通常厚い壁とより長手方向のコネクタで構成される。腎臓ステントの遠位部分は、入口部領域よりもより柔軟であることが望ましく、通常薄い壁と少ないコネクタで構成される。ステント全体は、最適な追従性、正確な留置のために、低い断面(profile)であることが望ましく、任意の時間、動脈を遮断しないように、迅速、且つ容易に膨らむように設計されなければならない。これらの矛盾するデザイン要求は、材料選択における妥協を必要とする。最も利用可能な腎臓ステントは、316L又は316LVMステンレス鋼から作られる。上述の他のステント及びフレームと同様に、316L又は316LVMは、優れた追従性、成形性、及び最小限の弾性収縮を可能にする。これらの性能目標に達するために、ステントは、製造の困難性を増加させる二つの異なる部分に設計されなければならない。
【0029】
複数相鋼が用いられる場合、デザインは、高い半径方向強度、柔軟性、追従性、及びバルーン延伸の容易性の必要とされる属性を妥協することなく、均一にすることができる。デザインは、全体を通して薄い壁と少ないコネクタで作られる。
【0030】
様々な他の種類の直径方向に延伸可能なステントは、それらの製造について複数相鉄鋼の使用から恩恵を受け得る。これらとしては、末梢、頸動脈、脳(神経)、胆汁、肝臓、大動脈、及び胸部に適用のためのステントが挙げることができる。さらに、これらは、既知の方法により製造され得る。これらの種類の一部又は全てのステントデバイスは、ステントフレームが人工グラフト材料、例えば、ダクロポン又はePTFE(延伸されたポリテトラフルオロエチレン)(ステントの外面、内面のいずれか又は双方の表面上)の部分的又は全体的なコーティングを与えられた、ステント・グラフトとして提供され得る。
【0031】
エンドプロテーゼの更なる例としては、図5及び6に示されるトランスカテーテル送達された人工心臓弁50のようなものが挙げられる。トランスカテーテル送達された心臓弁は、典型的に、材料の成形性、追従性特徴、及び最小弾性収縮力について選択された医療グレードステンレス鋼のフレームから作られる。それはまた、材料の機械的ストレスについて選択されるコバルトニッケル又はコバルトクロム合金からそれらを作ることを可能にする。これらのトランスカテーテル送達された心臓弁は、現行の機能不全の心臓弁の照準に直接留置され、従って、それらは、そうでなければ血流に利用され得る空間をとる。心臓弁フレーム52を形成するための方法は、ステントを形成するために用いられるものと同様であり、先に述べられている。フレーム52のデザインは、しばしば環形状であり、列の間に長辺方向の連結とともに、ジグザグ又は正弦曲線型起伏(図5)の列から形成される。あるいは、それらは、環を成形するために一緒に連結された菱形形状要素から形成され得る。多くの他の形状は、トランスカテーテル送達された心臓弁50のフレーム52について想定され得る。
【0032】
フレーム52は、弁材料に取り付けられている。弁54の材料としては、同種グラフト(homografts)(ドナーグラフト)、自家グラフト(autografts)(典型的には、ロス手術によって)、異種グラフト(heterograft)又は異種グラフト(xenograft)(最も一般的には、ウシ又はブタドナーからの動物組織グラフト)、又は任意の生体適合性材料、例えば、PTFE(ポリテトラフルオロエチレン)又はePTFE(延伸されたポリテトラフルオロエチレン)のものが挙げられる。これらの材料は、当該技術分野に一般的に知られている様々な方法、例えばフレームに直接縫合し、又は別の材料(例えば、ダクロポン(登録商標)又はポリエステル)のスカートに縫合し、その結果フレームに縫合又は科学的に結合させる方法、を用いて、フレームに取り付けられ得る。
【0033】
これらの心臓弁50は、経心尖的又は経大腿的の2つの方法においてバルーンカテーテルにより留置される(最も一般的な送達の経路は経大腿的である)。送達のこの方法は、潜在的に曲がりくねった組織の相当な長さを通して追従するのに十分な柔軟性を有する、バルーンカテーテルに取り付けられたデバイスの能力を要求する。この追従性要求は、しばしば心臓弁フレームについての医療グレードのステンレス鋼の使用を必要とする。
【0034】
典型的な医療グレードのステンレス鋼が心臓弁50のフレーム52に選択される場合、フレーム52は、より強度のある材料、例えばコバルトクロム合金又はコバルトニッケル合金が選択された場合よりも、いくらか厚くなければならない。コバルト合金の使用は、デバイスの送達の典型的な方法を妨げ、より正確性に欠ける留置を与える。換言すれば、より薄いフレームは、血流及びデバイス送達を容易にするために望ましいが、フレームは、心臓の鼓動により与えられる機械的ストレスの下で保持するのに十分な強度がなければならない。複数相鋼は、トランスカテーテル送達された心臓弁の独自の機械的要求を満たす。
【0035】
外科用ステープル又は胸骨閉鎖デバイスはまた、複数相鉄鋼から有利に作られ得る。ステープルは、しばしば腸、肺、及び皮膚の傷を閉じるために用いられる。
【0036】
血管72に埋め込まれるような、例えば図7に示される、埋め込み可能なフィルター70はまた、本明細書に記載される複数相鉄ステンレス鋼から効率的に製造され得る。これらのフィルターとしては、下大静脈フィルター及び塞栓症のフィルターが挙げられる。これらの用途のためのフィルターは、所望の部位におけるその後の延伸のための、体の導管への挿入を可能にするために、直径方向に延伸可能であるようにしばしば作られる。
【0037】
二重(Duplex)ステンレス鋼の他の医療用途は、医療用リード(leads)の領域においてである。医療用ペーシングリード(pacing leads)は、挿入されたリードを受け入れるために延伸し、その後収縮する圧縮可能な部分を有する、又はリードに電気的及びスプリング様機械的接続の双方を提供するためにリードのまわりに圧着される、電気的コネクタ要素を有する。理想的には、この圧着接続は、圧着がされるまで、大変薄く、柔軟性を有するが、埋め込み及び外植の間、リードに与えられる高い張力に耐えるのに十分な強度を有する。材料、例えば二重(Duplex)ステンレス鋼は、かかる用途のための最適な選択である。
【0038】
ガイドワイヤはまた、複数相鉄鋼から製造されてもよい。
【0039】
歯列矯正プロテーゼ、特にアーチワイヤは、複数相鉄金属の別の適用である。アーチワイヤは、大変小さい力で成形され得なければならないが、最大5%の歪み範囲に亘り、一定力(歯の移動を引き起こすのに十分であるが、痛くないように歯医者により選択される)を与えなければならない。この一定力は、多量の収縮なく、維持されなければならない。加重は機械的に適用され得るので、強く、容易に成形可能である材料が望ましい。
【0040】
更なる加工ステップは、任意の上述のデバイスの製造に加えられ得る。例えば、耐用年数の改善ステップは、デバイス形状を成形後、加えられる。このステップとしては、金属の表面に圧縮残留応力を与えるために、成形されたデバイスの選択された部分を予歪みさせること、成形されたデバイスを電解研磨すること、又は成形されたデバイスをメディアブラスティング(media blasting)することが、挙げられる。複数相鉄金属がアニールされた表面で供給される場合、この加工ステップは、デバイス成形の前に行なわれ得る。更なる加工ステップはまた、コーティング又はカバー接着(cover adhesion)の結合強度を改善するために加えられる。このステップは、耐用年数改善についてのものと同様であるが、結合寿命の改善をもたらす。耐用年数の改善と同様に、このステップは、提供される原料に依存するデバイス成形の前又は後のいずれかで行なわれ得る。
【0041】
上述のようなエンドプロテーゼは、様々な種類の生体活性物質(治療剤)、例えば抗凝血剤、又は抗生物質のコーティングとともに提供され得る。これらは、所望の生物活性剤に適切な既知の様々な方法によりかかるデバイスに結合され得る。それらはまた、特定の用途に望ましいように、任意で、治療剤を含む、様々なポリマーで、任意でコートされる。好適なコーティングとしては、フルオロポリマー、例えばフッ素化エチレンプロピレン(FEP)、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ePTFE、及びテトラフルオロエチレンとポリアルキルビニルエーテルのコポリマー、例えばポリアルキルメチルエーテル(TFE/PMVE)が挙げられる。
【実施例】
【0042】
実施例1
図8は、複数相鉄鋼から作られ得る典型的な種類のバルーン延伸可能な管状エンドプロテーゼ80を示す。明確にするために、マンドレル(mandrel)又は他の円筒形態がデバイスの管状形態の内部に挿入される場合に、かかるデバイスが一般的に観察者見えるように、管状形態(観察者から最も遠い)の背面は除かれて、観察者に最も近いデバイスの側面のみは、図8に示される。図8は、カテーテルバルーンでの続く部分的な直径方向の延伸のように見える、エンドプロテーゼ80を示す。この種類のデバイスは、厚さ6.35mmの鋼プレートの形態で、二重(Duplex)グレードS2205(Sandmeyer Steel Co.,Philadelphia PAから入手可能である)を用いて製造された。容認された鋼プレートは、以下の特性を有する:
845MPaのUTS
644MPaの0.2%YS
29の伸長(%)
56.4%のオーステナイト及び43.6%のフェライト体積率
オーステナイト及びフェライトの体積率は、銅源を用いたX線回折技術を用いて測定された。測定は、プレートが横断面である場合、プレートの中心で行われた。
【0043】
鋼プレートは、1300℃で熱処理され、炉は1000℃まで冷却された。1000℃に達した後、プレートは、室温まで周囲空気で冷却された。続いて熱処理を受けた鋼プレートは、以下の特性を有した:
781MPaのUTS
485MPaの0.2%YS
34の伸長(%)
216GPaの引張応力
41.4%のオーステナイト及び58.6%のフェライト体積率
【0044】
引張試験は、ASTM E8に従って行われた。熱処理されたステンレス鋼プレートからの引張試験サンプルは、通された引張試験バーに機械加工された。レーザー切断引張試験ストリップは、316LVM及びL605管類から切断され、張力において試験された。
316LVMの機械的特性は、以下である:
661MPaのUTS
340MPaの0.2%YS
53の伸長(%)
126GPaの引張応力。
試験された比較のL605サンプルの機械的特性は、以下である:
1079MPaのUTS
567MPaの0.2%YS
56の伸長(%)
235GPaの引張応力。
【0045】
この試験は、熱処理された二重(Duplex)ステンレス鋼は、合計の伸長が316LVM及びL605よりも低い一方で、二つの合金の間である弾力性(elasticity)、降伏強度、及び最大引張強度の係数を有することを示した。
【0046】
熱処理後、ハイポ管(hypotubes)は、鋼プレートからワイヤEDM(放電加工機(Electrical Discharge Machine))機械加工(Mitsubishi Wire EDM,モデル FA205)された。これらのハイポ管は、4.57mmの外径、及び0.254mmの壁厚を有した。EDM管がレーザー切断されるのに短すぎたので、ステンレス鋼管拡張は行われ、ハイポ管の末端に圧入された。図8に示される種類のステント環は、その後ハイポ管からレーザー切断され;直径及び壁厚は、影響を受けなかった。レーザー切断は、外観が一般的に図8により示されるようであるように、エンドプロテーゼの延伸された直径において行なわれた(即ち、デバイスの直径は、次のデバイスの典型的なバルーン延伸を有する)。同一の種類及び同一の寸法のレーザー切断ステント環は、316LVM合金から作られた。二重(Duplex)環及び316LVM合金環は、1.5mmまで模擬圧着を受けた。環は、その後、10mmまで先細のマンドレルを用いて直径方向に延伸され、Blockwise J−crimper(モデル RJAT,Blockwise Engineering LLC,Phoenix AZ)中に置かれた。J−crimperは、Instron tensile tester(モデル 5564,Instron Corp.,Norwood MA)に取り付けられ、環は機械式絞り中に個別に置かれた。環は、その後、個別に直径方向に、絞り中で中間サイズ(1.65mm 外径)まで押しつぶされ、環の強度は、Instron Bluehillソフトウェアで測定された。二重(Duplex)環は、316LVM環よりも約20%強いことが示された。
【0047】
二重(Duplex)レーザー切断環の収縮は、以下のプロセスを用いて測定された。上述の種類のエンドプロテーゼ環(ステント環)は、熱処理された二重(Duplex)S2205鋼から製造され、先述のものと同様に、316LVM及びL605の双方からも製造された。これらの環は、最大直径12.80mmの円筒末端部分を有する先細のステンレス鋼マンドレルを用いて直径方向に延伸された。環は、12.80mmの内径まで延伸され、その後、先細のマンドレルから取り除かれた。これらの12.80mmの直径は、このデザインのステント環に機能的に関連すると考えられる。直径方向に延伸され、先細のマンドレルが取り除かれた後、それぞれの環の内径は、Nikon vision system(モデル VMR 3020 type3)を用いて測定された。それぞれの環の直径は、ステントの内径を等間隔で10の異なる場所で測定され、平均された。これらの測定は、316LVMステント環において0.051mm、二重(Duplex)鋼ステント環において0.152mm、L605ステント環において0.279mmの収縮を示した。これらのデータは、そのままではそれ故成形可能でない、熱処理された二重(Duplex)環と比較して、L605環が高い程度の弾性収縮力を有することを示す。
【0048】
一般的に上述のように、ビレット(billet)から機械加工されることに加えて、図8に示される種類のステント環はまた、シート材料から機械加工され得る。かかるステントについて機械加工されたパターン90は、図9に示される。シートの機械加工に続いて、得られる平面形態90は、その後、先細のマンドレルを用いて管に形作られる。マンドレルの小さい直径は、平面形態90の中央開口92に挿入されることが可能でなければならない。マンドレルは、部分的に延伸されたステント形態の目的とする内径と等しい最大直径を有するべきであり;この最大直径は、円筒部分に隣接する等しい直径を含む。マンドレルの小さい末端を平面形態90の中央開口92に挿入すること、及び平面形態90を通してマンドレルを全体的に押すことは、図8に示すような管状形態80をもたらす。
【0049】
多重ステント環は、熱処理された二重(Duplex)S2205鋼から上述の様に作られた。8つの環80は、グラフト材料、例えばePTFE管102の外面と連結され、図10に示されるように、ステント・グラフト100を作った。この種類のステント・グラフトの製造は、米国特許出願公開第2008/0119943号に開示され、本明細書に参照により援用される。約40mm長の得られるバルーン延伸可能なステント・グラフト100は、続く患者の血管構造への送達、及び続くバルーン延伸のために、バルーンカテーテルが積まれ得る。図10に示されるステント・グラフト100は単なる例示であり、複数相鉄鋼から作られたステントを包含するステント・グラフトの多くの形態が可能であることは、理解される。ステントは、グラフト材料の外表面、グラフト材料の管腔表面で連結され得、又はグラフト材料内層と外層の間にサンドイッチされ得ることは、同様に理解される。さらに、グラフト材料は、特定の用途、例えば胆汁治療のために必要であれば、ミシン目を組み込み得る。
【0050】
二重(Duplex)S2205ステンレス鋼合金は、特に、上述のように熱処理された場合、バルーン延伸可能なエンドプロテーゼの製造のための優れた強度能力及び優れた成形能力を与えることが示される一方で、さらに優れた合金は、医療デバイス、特に延伸可能なエンドプロテーゼに適切であると考えられている。表1は、かかる合金の組成を示す。この組成からの小さい逸脱はまた、二重(Duplex)S2205合金を超える幾らかの改善を提供し得ることは、理解される。
【0051】
【表1】
【0052】
上述の及び添付の特許請求の範囲で請求される実施形態を対象とすることに加えて、本発明は、更に、上述の及び添付の特許請求の範囲で請求される特徴の異なる組み合わせを有する実施形態を対象とする。従って、本発明はまた、添付の特許請求の範囲で請求される独立していない特徴の任意の他の可能性のある組み合わせを有する他の実施形態を対象とする。
【0053】
本発明の多数の特徴及び有利な点は、本発明の構造及び機能の詳細と共に好ましい及び代替の実施形態を含む先の記述において説明された。本開示は、実例的であることのみが意図され、それ自体として包括的であることは意図されない。特に本発明の原理の構造、材料、要素、成分、形状、サイズ、及び部分の配置の事項から、添付の請求項が表現される、広く、一般的な用語の意味により示される全内容までにおいて、様々な変更が行なわれ得ることは、当業者に明らかである。これらの様々な変更は、添付の請求項の趣旨及び範囲から離れない限りにおいては、それらは、本明細書に包含されることを意図する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
鉄を含有する複数相鋼を含む、エンドプロテーゼ。
【請求項2】
前記複数相鋼が二相(dual phase)鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項3】
前記複数相鋼が複合的な相鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項4】
前記複数相鋼が二重(duplex)鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項5】
前記複数相鋼が変態誘起塑性鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項6】
前記複数相鋼が双晶誘起塑性鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項7】
前記複数相鋼が焼入れ分配鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項8】
直径方向に延伸可能なデバイスを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項9】
バルーン延伸可能なステントを含む、請求項8に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項10】
ステント・グラフトを含む、請求項9に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項11】
フィルターデバイスを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項12】
歯列矯正ワイヤを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項13】
電気的圧着コネクタを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項14】
更にPTFEを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項15】
更に生体活性物質を含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項16】
複数相鋼の平たいシートを所望の形状に成形するステップ、前記所望の形状を管状形態に成形するステップ、前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップ、前記所望の形状を治療の領域に送達するステップ、及び治療の領域において前記所望の形状を延伸するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法。
【請求項17】
複数相鋼の管状形態を所望の形状に成形するステップ、前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法。
【請求項18】
複数相鋼のワイヤを所望の管形状に成形するステップ、前記管形状をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップ、前記所望の形状を治療の領域まで送達するステップ、及び治療の領域において前記所望の形状を延伸するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法。
【請求項19】
金属の表面において、圧縮残留応力を与えるために、メディアを用いて、成形されたデバイスに影響を与えるステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着する前に、成形されたデバイスを電解研磨するステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項1】
鉄を含有する複数相鋼を含む、エンドプロテーゼ。
【請求項2】
前記複数相鋼が二相(dual phase)鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項3】
前記複数相鋼が複合的な相鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項4】
前記複数相鋼が二重(duplex)鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項5】
前記複数相鋼が変態誘起塑性鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項6】
前記複数相鋼が双晶誘起塑性鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項7】
前記複数相鋼が焼入れ分配鋼である、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項8】
直径方向に延伸可能なデバイスを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項9】
バルーン延伸可能なステントを含む、請求項8に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項10】
ステント・グラフトを含む、請求項9に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項11】
フィルターデバイスを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項12】
歯列矯正ワイヤを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項13】
電気的圧着コネクタを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項14】
更にPTFEを含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項15】
更に生体活性物質を含む、請求項1に記載のエンドプロテーゼ。
【請求項16】
複数相鋼の平たいシートを所望の形状に成形するステップ、前記所望の形状を管状形態に成形するステップ、前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップ、前記所望の形状を治療の領域に送達するステップ、及び治療の領域において前記所望の形状を延伸するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法。
【請求項17】
複数相鋼の管状形態を所望の形状に成形するステップ、前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法。
【請求項18】
複数相鋼のワイヤを所望の管形状に成形するステップ、前記管形状をバルーン型血管内送達システムに圧着するステップ、前記所望の形状を治療の領域まで送達するステップ、及び治療の領域において前記所望の形状を延伸するステップを含む、エンドプロテーゼを製造する方法。
【請求項19】
金属の表面において、圧縮残留応力を与えるために、メディアを用いて、成形されたデバイスに影響を与えるステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記管状形態をバルーン型血管内送達システムに圧着する前に、成形されたデバイスを電解研磨するステップを更に含む、請求項18に記載の方法。
【図1】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3A】
【図3B】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2013−516243(P2013−516243A)
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−547288(P2012−547288)
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062460
【国際公開番号】WO2011/082280
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年12月30日(2010.12.30)
【国際出願番号】PCT/US2010/062460
【国際公開番号】WO2011/082280
【国際公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【出願人】(598123677)ゴア エンタープライズ ホールディングス,インコーポレイティド (279)
【Fターム(参考)】
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