複数種の薬物を有するポリグルタミン酸塩複合体及びポリグルタミン酸塩−アミノ酸複合体
一般式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含む種々の生物分解性ポリグルタミン酸塩複合体が調製される。該ポリマー複合体は複数の薬物と複合化できる。このようなポリマー複合物は、種々の薬物、標的化剤、安定剤及び/又は造影剤の送達の用途に有用である。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮出願第60/916,865号、名称:複数種の薬物を有するポリグルタミン酸塩複合体及びポリグルタミン酸塩−アミノ酸複合体、2007年5月9日出願その内容すべては参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
ここに主として開示されるものは、複数種の薬物が結合された生体適合性ポリマーである。ここに記載されるポリマー複合体は、種々の薬物、生体分子及び造影剤の送達の用途に有用である。さらに、対象の治療、診断及び/又は造影のためにポリマー複合体を使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
種々の系が、薬物、生体分子、及び造影剤の送達に使用されている。例えば、そのような系には、カプセル、リポソーム、ミクロ粒子、ナノ粒子、及びポリマーがある。
【0004】
種々のポリエステル系の生物分解性系が研究されその特徴を調べられている。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、及びそれらの共重合体、ポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)は、薬物送達の用途に対する設計及び性能についてよく特徴が調べられている生体材料のいくつかである。Uhrich,K.E.;Cannizzaro,S.M.;Langer,R.S.及びShakeshelf,K.M.“Polymeric Systems for Controlled Drug Release,”Chem.Rev.1999,99,3181−3198及びPanyam J.Labhasetwar V.“Biodegradable nanoparticles for drug and gene delivery to cells and tissues,”Adv.Drug.Deliv.Rev.2003,55,329−47参照。また、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPMA)も薬物送達用ポリマーの調製に広く使用されている。ポリオルトエステルをベースとする生物分解性系も研究されている。Heller,J.;Barr,J.:Ng,S.Y.;Abdellauoi,K.S.及びGurny,R.“Poly(ortho esters):synthesis,characterization,properties and uses.”Adv.Drug Del.Rev.2002,54,1015−1039参照。ポリ無水物系も研究されている。そのようなポリ無水物は、典型的に生体適合性であり、また代謝産物として生体から排除される相対的に無毒の化合物にインビボで分解され得る。Kumar,N.;Langer,R.S.及びDomb,A.J.“Polyanhydrides:an overview,”Adv.Drug Del.Rev.2002,54,889−91参照。
【0005】
アミノ酸系ポリマーも可能性のある新規な生体材料源として考えられている。良好な生体適合性を有するポリアミノ酸が、低分子量の化合物を送達するため研究されている。比較的少ない数のポリグルタミン酸及び共重合体が、薬物送達の候補材料として特定されている。Bourke,S.L.及びKohn,J.“Polymers derived from the amino acid L−tyrosine:polycarbonates,polyarylates and copolymers with poly(ethylene glycol).”Adv.Drug Del.Rev.2003,55,447−466参照。
【0006】
投与された疎水性の抗癌剤並びに治療蛋白質及びポリペプチドは、しばしばバイオアベイラビリティが低いという問題を生じる。そのような低いバイオアベイラビリティの原因は、疎水性薬物と水溶液との二相性溶液が不適合であるということ及び/又はそれらの分子が酵素的分解によって血液循環から速やかに除去されるということである。投与される蛋白質及びその他の小分子薬剤の効力を高める手法の一つは、投与される薬剤にポリマー例えばポリエチレングリコール(PEG)を結合させることを伴うものである。そのようなポリマーはインビボで酵素的分解に対して保護をもたらすことができる。そのような「PEG誘導体化」はしばしば循環時間を向上させ、従って投与される薬剤のバイオアベイラビリティを向上させる。
【0007】
しかしPEGはある点において欠点を有している。例えば、PEGは線状ポリマーであるため、枝分れポリマーに比べてPEGによりもたらされる立体保護は限られている。PEGの別の欠点は、それが一般的に2つの末端において誘導体化を受けやすいということである。このことは、PEGに結合し得る他の機能的分子(例えば特定の組織への蛋白質又は薬物の送達に有用なもの)の数を制限する。
【0008】
ポリグルタミン酸(PGA)は、疎水性抗癌剤を可溶化するため選択できる別のポリマーである。PGAに結合された多くの抗癌剤が報告されている。Chun Li.“Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates.”Adv.Drug Del.Rev.,2002,54,695−713参照。しかし、現在FDAによって承認されているものはない。
【0009】
パクリタキセル(太平洋イチイの樹皮から抽出された)は、卵巣癌及び乳癌の治療に対してFDAが承認した薬物である。Wani他,“Plant antitumor agents.VI.The isolation and structure of taxol,a novel antileukemic and antitumor agent from Taxus brevifolia,”J.Am.Chem.Soc.1971,93,2325−7。しかし、他の抗癌剤と同様、パクリタキセルは、その疎水性及び水溶液不溶性のため、バイオアベイラビリティが低いという問題がある。パクリタキセルを可溶化する方法の一つは、それをクレモホールELと無水エタノールとの混合物(1:1、v/v)中に製剤化するということである。Sparreboom他,“Cremophor EL−mediated Alteration of Paclitaxel Distribution in Human Blood:Clinical Pharmacokinetic Implications,”Cancer Research,1999,59,1454−1457。この製剤はTaxol(登録商標)(Bristol−Myers Squibb)として現在商品化されている。パクリタキセルを可溶化する別の方法は、高剪断のホモジナイズを使用した乳化によるものである。Constantinides他,“Formulation Development and Antitumor Activity of a Filter−Sterilizable Emulsion of Paclitaxel,”Pharmaceutical Research 2000,17,175−182。最近、ポリマー−パクリタキセル複合体が、いくつかの臨床試験に進んでいる。Ruth Duncan“The Dawning era of polymer therapeutics,”Nature Reviews Drug Discovery 2003,2,374−360。さらに最近、パクリタキセルは、ヒトアルブミン蛋白質を用いてナノ粒子に製剤化され、臨床研究に使用されている。Damascelli他,“Intraarterial chemotherapy with polyoxyethylated castor oil free paclitaxel,incorporated in albumin nanoparticles(ABI−007):Phase II study of patients with squamous cell carcinoma of the head and neck and anal canal:preliminary evidence of clinical activity.”Cancer,2001,92,2592−602、及びIbrahim他,“Phase I and pharmacokinetic study of ABI−007,a Cremophor−free,protein−stabilized,nanoparticle formulation of paclitaxel,”Clin.Cancer Res.2002,8,1038−44。この製剤は現在Abraxane(登録商標)(American Pharmaceutical Partners,Inc.)として商品化されている。
【0010】
磁気共鳴映像法(MRI)は病気の診断及び病期特定において重要な手段である。というのもそれが非侵襲的かつ非放射線的であるためである。Bulte他,“Magnetic resonance microscopy and histology of the CNS,”Trends in Biotechnology,2002,20,S24−S28参照。組織の画像を得ることができる一方、造影剤を用いるMRIは顕著にその解像度を向上させている。しかし、MRI造影剤に適する常磁性金属イオンはしばしば毒性である。毒性を低減する方法の1つは、それらの金属イオンを多座分子(例えばジエチレントリアミン五酢酸分子(DTPA))でキレート化することである。Gd−DTPAはFDAによって1988年臨床用に承認された。それは、現在Magnevist(登録商標)として商品化されている。その他にもGd−キレートがFDAによって承認され商品化されており、またその他多くのものが開発中である。Caravan他,“Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications,”Chem.Rev.1999,99,2293−2352参照。
【0011】
しかし、Gd−DTPAは腫瘍組織を標的化するには理想的ではない。というのもそれが特異性を欠いているからである。Gd−DTPAをIV注射により投与した場合、それは自発的かつ速やかに組織の血管外空間に拡散する。従って通常、妥当なコントラストの像を得るため多量の造影剤が必要とされる。さらに、それは腎臓ろ過により速やかに排除される。そのような拡散とろ過を防ぐため、高分子MRI造影剤が開発されている。Caravan他,“Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications,”Chem.Rev.1999,99,2293−2352参照。これらの高分子MRI造影剤には、蛋白質−MRIキレート、多糖−MRIキレート、及びポリマー−MRIキレートがある。以下参照。Lauffer他,“Preparation and Water Pelaxation Properties of Proteins Labeled with Paramagnetic Metal Chelates,”Magn.Reson.Imaging 1985,3,11−16;Sirlin他,“Gadolinium−DTPA−Dextran:A Macromolecular MR Blood Pool Contrast Agent,”Acad.Radiol.2004,11,1361−1369;Lu他,“Poly(L−glutamic acid)Gd(III)−DOTA Conjugate with a Degradable Spacer for Magnetic Resonance Imaging,”Bioconjugate Chem.2003,14,715−719;並びにWen他,“Synthesis and Characterization of Poly(L−glutamic acid)Gadolinium Chelate:A New Biodegradable MRI Contrast Agent,”Bioconjugate Chem.2004,15,1408−1415。
【0012】
最近、組織特異的MRI造影剤が開発されている。Weinmann他,“Tissue−specific MR contrast agents,”Eur.J.Radiol.,2003,46,33−44参照。しかし、腫瘍特異的MRI造影剤は、臨床用途において報告されていない。高い浸透性及び局所留保性効果(EPR)により腫瘍を標的化するためのナノサイズの粒子が報告されている。Brannon−Peppas他,“Nanoparticle and targeted systems for cancer therapy.”ADDR,2004,56,1649−1659参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
相対的に疎水性の造影剤及び薬物(例えばある特定の疎水性抗癌剤、治療蛋白質及びポリペプチド)はしばしば低いバイオアベイラビリティという欠点を有する。この問題は少なくとも部分的にこれらの造影剤及び薬物が水系において溶解度が低いことに起因するものと考えられる。また、酵素により分解可能なある特定の薬物も低いバイオアベイラビリティという欠点を有する。というのも、それらは循環系において相対的に速く分解され、体内から速やかに排除されるからである。
【0014】
本発明者らは、多くの作用因子(例えば造影剤、標的化剤、安定剤及び/又は薬物)に結合することができる一連の新規なポリグルタミン酸塩複合体及び/又はポリグルタミン酸塩−アミノ酸複合体を見出した。ある特定の実施形態において、このポリマー及び得られる複合体は、ある特定の組織(例えば腫瘍組織)及び/又はある特定の受容体に優先的に蓄積するとともに、体の特定の部分(例えば腫瘍)に薬物(例えば抗癌剤)及び/又は造影剤を送達するのに有用である。一実施形態において、ポリマー複合体は、第1の薬物を含む基及び第2の薬物を含む基を含有し、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。ある実施形態において、このポリマー及び/又は得られるポリマー複合体は、ナノ粒子を形成する。該ナノ粒子は、水系において分子レベルで造影剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は薬物を分散して効果的に可溶化し、それにより機能性及び/又はバイオアベイラビリティを高める。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここに示す実施形態は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位、及び式(VI)の繰り返し単位を含有することができるポリマー複合体に関する。式中、各A1、各A2、A3、A4、A5及びA6は独立して酸素又はNR7とすることができ、ここでR7は水素又はC1−4アルキルとすることができ、各R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択されることができ、m、n及びoはそれぞれ独立して1又は2とすることができ、p、q、r、s、t及びuはそれぞれ独立して0又は≧1とすることができ、ここでp、q、r、s、t及びuの合計は2以上とすることができ、ただし、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第1の薬物を含む基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第2の薬物を含む基であり、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。
【0016】
ここに示す別の実施形態は、式(VII)の繰り返し単位及び/又は式(VIII)の繰り返し単位の少なくとも1つを有するポリマー反応物を溶媒に溶解又は部分的に溶解して溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を調製すること、式中、zは独立して1又は2とすることができ、A7及び各A8は酸素とすることができ、かつR10及び各R11は独立して水素、アンモニウム、及びアルカリ金属からなる群から選択されることができる;該溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第2の反応物及び第3の反応物と反応させることを有する、ここで、第2の反応物が第1の薬物を含有し、第3の反応物は第2の薬物を含有する、を有する、ポリマー複合体を製造する方法、に関する。
【0017】
ここに示す別の実施形態は、ここに示すポリマー複合体と、製薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つとをさらに含む、組成物に関する。
【0018】
さらに、ここに示す別の実施形態は、病気又は症状の治療又は寛容が必要な哺乳動物にここに記載される有効量のポリマー複合体を投与することを有することができる、病気又は症状を治療又は寛容する方法に関する。
【0019】
ここに示すある実施形態は、ここに記載される有効量のポリマー複合体を哺乳動物に投与することを有することができる、病気又は症状を診断する方法に関する。
【0020】
ここに示す別の実施形態は、ここに記載される有効量のポリマー複合体と組織の一部を接触させることを含むことができる、組織の一部を造影する方法に関する。
【0021】
これらの及び他の実施形態を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一種の薬物を有するポリマー複合体を模式的に示す図である。
【0023】
【図2】複数の薬物を有するポリマー複合体を模式的に示す図である。
【0024】
【図3】複数の薬物を有するポリマー複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0025】
【図4】他の複数の薬物を有するポリマー複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0026】
【図5】パクリタキセルを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0027】
【図6】パクリタキセル及びドキソルビシンを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0028】
【図7】パクリタキセル及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0029】
【図8】パクリタキセル、ドキソルビシン、及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0030】
【図9】パクリタキセルを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0031】
【図10】パクリタキセル及びドキソルビシンを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0032】
【図11】パクリタキセル及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0033】
【図12】パクリタキセル、ドキソルビシン及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
特に断らない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書で引用するすべての特許、出願、出願公開公報、及び他の刊行物は、特に断らない限り、参照によりそれらの内容すべてが本明細書に組み込まれる。本明細書において一つの用語に対して複数の定義が存在する場合、特に断らない限り、この章における定義を優先する。
【0035】
用語「エステル」は、その通常の意味を有するものとして本明細書で使用されており、従って、式−(R)n−COOR’(式中、R及びR’は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基(環炭素を介して結合)、及び複素脂環式基(環炭素を介して結合)から選択され、かつnは0又は1である)の化学部位を含む。
【0036】
用語「アミド」は、その通常の意味を有するものとして本明細書で使用されており、従って、式−(R)n−C(O)NHR’又は−(R)n−NHC(O)R’(式中、R及びR’は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基(環炭素を介して結合)、及びヘテロ脂環式基(環炭素を介して結合)から選択され、かつnは0又は1である)の化学部位を含む。アミドは、本明細書に示す薬物分子に結合されたアミノ酸又はペプチド分子中に含まれてもよく、従ってプロドラッグを形成してもよい。
【0037】
本明細書に開示する化合物上の任意のアミン、ヒドロキシ、又はカルボキシル側鎖は、エステル化又はアミド化することができる。この目的を達成するため使用する手法及び特定の基は、当業者の知るところであり、参照文献、例えばGreene及びWuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley & Sons,New York,NY,1999(その内容すべてが本明細書に組み込まれる)において容易に見出すことができる。
【0038】
本明細書で使用するとき、「アルキル」は、完全に飽和の(二重結合又は三重結合がない)炭化水素基を含む線状又は枝分れの炭化水素鎖を指す。アルキル基は1〜20の炭素原子を有してもよい(ここで「1〜20」などの数の範囲を示す場合は必ず、所定の範囲内にある各整数を指している。例えば、「1〜20の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、・・・そして最高20個までの炭素原子からなってもよいことを意味する。なお、この定義は、数の範囲を指定しない場合の用語「アルキル」に対してもあてはまる)。アルキル基は1〜10の炭素原子を有する中位のサイズのアルキルであってもよい。またアルキル基は1〜5の炭素原子を有する低級アルキルとすることもできる。化合物のアルキル基は「C1〜C4アルキル」等のように呼ぶことができる。単なる例示であるが、「C1〜C4アルキル」はアルキル鎖中に1〜4の炭素原子が存在することを示しており、すなわちアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びt−ブチルからなる群から選ばれる。典型的なアルキル基にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0039】
アルキル基は置換されていてもよく置換されていなくてもよい。置換されている場合、1つ又は複数の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えばモノハロアルキル、ジハロアルキル、及びトリハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えばモノハロアルコキシ、ジハロアルコキシ、及びトリハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、及びアミノ(一置換アミノ基及び二置換アミノ基を含む)、並びにそれらの保護された誘導体からそれぞれ独立して選択される一種以上の基である。ある置換基が「必要に応じて置換」と記載される場合、その置換基は上記置換基のいずれか1つによって置換されていてよい。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、完全に非局在化されたπ電子系を有する炭素環(すべて炭素)の単環式又は多環式芳香環系を指す。アリール基の例にはベンゼン、ナフタレン、及びアズレンがあるが、これらに限定されない。本発明のアリール基は、置換されていてもよく置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基が特に示されていない限り、水素原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えば、モノ−、ジ−、トリ−ハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えば、モノ−、ジ−、トリ−ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、及びアミノ(一置換アミノ基及び二置換アミノ基を含む)、並びにそれらの保護された誘導体から独立して選択される一種以上の基である1つ又は複数の置換基によって置換されている。
【0041】
「常磁性金属キレート」は、配位子が常磁性金属イオンに結合している錯体である。その例には1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)−Gd(III)、DOTA−イットリウム−88、DOTA−インジウム−111、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)−Gd(III)、DTPA−イットリウム−88、DTPA−インジウム−111があるが、これらに限定されない。
【0042】
「多座配位子」は、2つ以上の結合点を介して、例えば配位共有結合により、金属イオンにそれ自身を結合させることができる配位子である。多座配位子の例には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、及びエタン二酸(ox)があるが、これらに限定されない。
【0043】
「保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体」は、適当な保護基で保護された酸素原子(例えばカルボキシル基の単結合酸素原子)を含む多座配位子である。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるがこれらに限定されない。
【0044】
「安定剤」は、バイオアベイラビリティを高め、かつ/又は加水分解酵素に対してより耐性にし免疫原性を低くすることによってインビボでの担体−薬物複合体の半減期を延ばす置換基である。典型的な安定剤はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0045】
当然のことながら、1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が特に示されていない場合、各中心は、独立してR配置若しくはS配置、又はその両方である。従って、本明細書に提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であってもよいし、あるいは立体異性体の混合物であってもよい。また当然のことながら、1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載の任意の化合物でE又はZとして定義し得る幾何異性体をもたらすものにおいて、各二重結合は独立してE若しくはZ又はその両方であってもよい。同様に、すべての互変異性型を含むことも意図するところである。
【0046】
一つの実施形態として、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有することができるポリマー複合体を提供する。
【化1】
(式中、各A1、A2、A3、A4、A5及びA6は独立して酸素又はNR7とすることができ、ここでR7は水素又はC1−4アルキルとすることができる;各R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択され;m、n、及びoはそれぞれ独立して1又は2とすることができ、p、q、r、s、t及びuはそれぞれ独立して0又は≧1とすることができ、ここでp、q、r、s、t及びuの合計は2以上であり、ただし、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第1の薬物を含む基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第2の薬物を含む基であり、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。)
【0047】
ポリマー複合体に存在する、前記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)の繰り返し単位の相対割合は広い範囲で変えることができる。一実施形態では、p+qが2以上であり、かつr、s、t及びuが0である。一実施形態では、s+tが2以上であり、かつp、q、r及びuが0である。一実施形態では、p+q+rが3以上であり、かつs、t及びuが0である。一実施形態では、s+t+uが3以上であり、かつq、r及びuが0である。一実施形態では、p+sが2以上であり、かつq、r、t及びuが0である。一実施形態では、p+q+sが3以上であり、かつr、t及びuが0である。一実施形態では、p+s+tが3以上であり、かつq、r及びtが0である。一実施形態では、p+q+s+tが4以上であり、かつr及びuが0である。一実施形態では、p+q+r+s+tが5以上であり、かつuが0である。一実施形態では、p+q+s+t+uが5以上であり、かつrが0である。一実施形態では、p+q+r+s+t+uが6以上である。
【0048】
多くの異なる種類の薬物を第1の薬物に使用することができる。一実施形態において、第1の薬物は第1の疎水性薬物とすることができる。一実施形態において、第1の疎水性薬物は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル又はドセタキセルとすることができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第1の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0049】
多くの異なる種類の薬物を第2の薬物に使用することができる。一実施形態において、第2の薬物は第2の疎水性薬物とすることができる。一実施形態において、第2の疎水性薬物は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル又はドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第2の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0050】
図1は、ポリマー複合体に1種類の薬物が結合された実施形態を模式的に示している。ポリマー複合体は、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル及びカンプトテシンといった薬剤を結合させることできる多く側鎖を含み、多くの種類のポリマー材料として表わすことができる。
【0051】
図2は、ポリマー複合体に最高で三種類の薬物が結合された実施形態を模式的に示している。多くの種類のポリマー材料がポリマー複合体として表わすことができる。例えば、ポリアミノ酸(例えばポリグルタミン酸)及びその関連塩を、ここに記載されるポリマー複合体の形成に用いることができる。さらに、ポリアミノアミノ酸(例えばポリグルタミングルタミン酸)及びその関連塩を、ここに記載されるポリマー複合体の形成に用いることができる。さらに、ポリアミノ酸とポリアミノアミノ酸の共重合体、及びその関連塩を、ここに記載されるポリマー複合体の形成に用いることができる。複数種の薬物を結合させることによって、病気又は疾患(例えば癌)の併用療法が可能になる。例えば、タキサン類(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)、カンプトテカ類(例えばカンプトテシン)、及びアントラサイクリン類(例えばドキソルビシン)の任意の組み合わせをここに記載されるポリマーに結合させることができる。
【0052】
ポリマーに結合される第1の薬物の量は、広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第1の薬物の重量の割合)で、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。
【0053】
ポリマーに結合される第2の薬物の量は、広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第2の薬物の重量の割合)で、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。
【0054】
ポリマーに結合される第1の薬物と第2の薬物の総量は、広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める薬物の重量の割合)で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。
【0055】
一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して作用因子を含む基とすることができる。多くの種類の作用因子を用いることができる。例えば1つ又は複数の作用因子は、標的化剤、光造影剤、磁気共鳴造影剤、及び安定剤から選択することができる。
【0056】
作用因子は任意の種類の活性化合物を含んでいてよい。一実施形態において、作用因子は光造影剤を含んでいてよい。好ましい実施形態において、光造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素からなる群から選択される1種以上とすることができる。例えば、具体的な光造影剤には、Texas Red、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、フルオレセイン、Oregon Green(登録商標)色素、及びRhodamine Green(商標)色素(これらは市販されているか又は当業者に知られた方法により容易に調製される)が含まれ得る。
【0057】
別の実施形態において、作用因子は標的化剤を含有することができる。一実施形態において、標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体からなる群から選択される1種以上とすることができる。他の好ましい実施形態において、標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用し得る。一実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)とすることができる。
【0058】
別の実施形態において、作用因子は磁気共鳴造影剤を含むことができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤は常磁性金属化合物を含むことができる。例えば、磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含んでいてよい。一実施形態において、Gd(III)化合物は以下からなる群から選択することができる。
【化2】
及び
【化3】
【0059】
別の実施形態において、作用因子は安定剤を含むことができる。好ましい実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールである。
【0060】
別の実施形態において、ポリマー複合体は多座配位子を含む。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは独立して多座配位子を含む基から選択することができる。一実施形態において、多座配位子は、常磁性金属と反応して磁気共鳴造影剤を形成できるものであってよい。多座配位子は、数個のカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を含んでいてよい。一実施形態において、多座配位子は以下から選択することができる。
【化4】
及び
【化5】
式中、各R8及びR9は独立して水素、アンモニウム及びアルカリ金属から選択することができる。
【0061】
別の実施形態において、ポリマー複合体は、多座配位子前駆体を含有することができる。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して多座配位子前駆体を含む基から選択することができる。そのような実施形態において、多座配位子の酸素原子は、適当な保護基により保護されることができる。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるが、これらに限定されない。保護基を有する多座配位子前駆体の一例を以下に示す。
【化6】
【0062】
ある実施形態において、ここに記載されるポリマー及び/又はポリマー複合体は、アルカリ金属を含む。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)のようなアルカリ金属を含むよう選択することができる。一実施形態において、アルカリ金属はナトリウムとすることができる。一実施形態において、ここに記載されるポリマー及び/又はポリマー複合体のR1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは、水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、又はアンモニウム基を含有することができる。
【0063】
ポリマー中に存在する1つ又は複数の作用因子(例えば標的化剤、光造影剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は安定剤)の量は、広範囲に変わり得る。また、ポリマー中に存在する配位子又は配位子前駆体の量も広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比(結合された薬物の重量とともに、1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の重量がポリマー複合体中に占める割合)で、約0.1%〜約50%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約40%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約30%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約20%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約10%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約5%〜約40%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約10%〜約30%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約20%〜約40%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約30%〜約50%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。
【0064】
一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは、第3の薬物を含む基とすることができる。一実施形態において、第3の薬物は、第1の薬物及び第2の薬物と異なるものとすることができる。多くの異なる種類の薬物を第3の薬物に使用することができる。一実施形態において、第3の薬物は第3の疎水性薬物とすることができる。一実施形態において、第3の疎水性薬物は抗癌剤を含有することができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第3の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0065】
ポリマーに結合される第3の薬物の量も広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第3の薬物の重量の割合)で、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。
【0066】
ポリマーに結合される第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物の量も広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める薬物の重量の割合)で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。
【0067】
一実施形態において、少なくとも1つのm、n又はoは1とすることができる。一実施形態においては、少なくとも1つのm、n又はoは2とすることができる。いくつかの実施形態においては、mは1とすることができる。他の一実施形態においては、mは2とすることができる。いくつかの実施形態において、nは1とすることができる。他の実施形態においては、nは2とすることができ。いくつかの実施形態において、oは1とすることができる。他の実施形態においては、oは2とすることができる。
【0068】
薬剤を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び安定剤を含む基の1つ以上は、多くの異なる方法でポリマーに複合化させることができる。いくつかの実施形態において、上述した化合物は、ポリマー(例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位)に直接結合させることができる。一実施形態において、薬剤を含む基礎、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び安定剤を含む基の1つ以上を、該作用因子又は薬物の酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及び/又は炭素原子を介してポリマーに直接結合させることができる。
【0069】
他の実施形態において、薬剤を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び安定剤を含む基の1つ以上は、リンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第1の薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第2の薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第3の薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び/又は安定剤を含む基は、リンカー基をさらに有することができる。リンカー基は、例えば作用因子(又は作用因子を有する化合物)をポリマーに結合させる基である。一実施形態において、上述した化合物の1つ以上を、リンカー基を介してポリマー(例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位)に結合させることができる。リンカー基は比較的小さなものとすることができる。例えば、リンカー基は、アミン、アミド、エーテル、エステル、水酸基、カルボニル基又はチオールエーテル基を有するものとすることができる。あるいは、リンカー基は比較的大きなものとしてもよい。例えば、リンカー基は、アルキル基、エーテル基、アリール基、アリール(C1−6アルキル)基(例えばフェニル−(CH2)1−4−)、ヘテロアリール基、又はヘテロアリール(C1−6アルキル)基とすることができる。一実施形態において、リンカー基は−NH(CH2)1−4−NH−とすることができる。別の実施形態において、リンカー基は−(CH2)1−4−アリール−NH−とすることができる。リンカー基は、薬剤を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基の1つ以上に、任意の適当な位置において結合させることができる。例えば、リンカー基は、上述した化合物の1つにおいて炭素の位置にある水素の代わりに結合させることができる。リンカー基は、当業者に知られた方法を用いて化合物に付加することができる。
【0070】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーは、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の2種以上の異なる繰り返し単位を含む共重合体である。他の種々の繰り返し単位が、ここに示すポリマー複合体に含まれてもよい。また、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位含むポリマーは、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)ではない他の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。ポリマー中の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位数は、広範囲に変わり得るが、好ましくは、約50〜約5000の範囲が好ましく、さらに約100〜約2000の範囲が好ましい。
【0071】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(I)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(I)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。
【0072】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(II)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(II)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。
【0073】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(III)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(III)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。
【0074】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(IV)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(IV)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。
【0075】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(V)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(V)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。
【0076】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(VI)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(VI)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。
【0077】
一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される2つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される3つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される4つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される5つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)の繰り返し単位の6つの相違する繰り返し単位を含むことができる。
【0078】
ポリマー複合体中に存在する各繰り返し単位の量(例えばモル%)は、上述したように非常に大きく変わり得る。一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の任意の1つの繰り返し単位の量は、それと異なる式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位の量とは無関係に選択することができる。
【0079】
ポリマー複合体は1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。キラル炭素(アステリスク*で示すことができる)は、R(rectus(右旋))配置又はS(sinister(左旋))配置をとることができ、従って、繰り返し単位は、ラセミ体、エナンチオマー、又はエナンチオマー過剰とすることができる。本明細書の別の個所で使用する記号「n」及び「*」(キラル炭素を指定)も、特に断らない限り、上記と同じ意味を有する。
【0080】
一実施形態において、作用因子の量、第1、第2及び/又は第3薬剤の量、ポリマー複合体における式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位の割合は、ポリマー複合体の溶解度がほぼ同じ量の作用因子及び/又は薬剤を含む対応のポリグルタミン酸複合体よりも高くなるよう選択される。式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマー複合体が対応のポリグルタミン酸複合体よりも高い溶解度を有するpH値の範囲は、狭くてもよいし、広くてもよい。溶解度は、約22℃で0.9重量%のNaCl水に5mg/mL以上のポリマー複合体を含むポリマー複合体溶液を調製し、その光学的透明度を調べることにより測定される。一実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約3のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約8のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約9のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、約2〜約5の範囲にある少なくとも1つのpH値を含み、例えば、pH=2、pH=3、pH=4、及び/又はpH=5で可溶性である。ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、対応のポリグルタミン酸複合体が可溶性であるpH範囲よりも広いことが好ましい。例えば一実施形態において、ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、対応のポリグルタミン酸複合体が可溶性であるpH範囲よりも、約1pH単位以上広く、好ましくは約2pH単位以上広い。
【0081】
溶解度を測定するため溶液に含まれるポリマー複合体の量も大きく変わり得る。一実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約5mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約10mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約25mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約100mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約150mg/mLのポリマー複合体を含む。当業者に明らかなとおり、対応のポリグルタミン酸複合体は、試験されるポリマー複合体とほぼ同じ濃度で試験される。
【0082】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーは、種々の方法で調製することができる。一実施形態において、ポリマー反応物は、溶媒に溶解され、又は溶媒に一部溶解され、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物を形成する。次いで溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第2の反応物及び第3の反応物と反応させられ、中間生成物を形成するか、又は一部の実施形態において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する。一実施形態において第2の反応物は第1薬剤を含むことができる。一実施形態において第3の反応物は第2薬剤を含むことができる。
【0083】
ポリマー反応物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意の適当な材料を含むことができる。一実施形態において、ポリマー反応物は以下の式(VII)及び式(VIII)から選択した繰り返し単位を含む。
【化7】
式中、各zは独立して1又は2とすることができ、各A7及びA8はそれぞれ酸素とすることができ、かつR10及びR11はそれぞれ独立して水素、アンモニウム、及びアルカリ金属(例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、及びセシウム(Cs))から選択されることができる。
【0084】
一実施形態において、式(VII)の繰り返し単位を含むポリマー反応物は、ポリグルタミン酸から開始して生成させることができる。一方、別の実施形態において、ポリマーは、まずポリグルタミン酸出発材料を塩の形に変換することにより調製することができる。ポリグルタミン酸の塩形は、ポリグルタミン酸を適当な塩基(例えば重炭酸ナトリウム)と反応させることにより得ることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は、限定されないが、約10000〜約500000ダルトンが好ましく、約25000〜約300000ダルトンがより好ましい。
【0085】
一実施形態において、式(VIII)の繰り返し単位を含むポリマー反応物は、ポリグルタミン酸及びアミノ酸(例えばアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)から開始して生成させることができる。一方、別の実施形態において、ポリマーは、まずポリグルタミン酸出発材料を塩の形に変換することにより調製することができる。ポリグルタミン酸の塩形は、ポリグルタミン酸を適当な塩基(例えば重炭酸ナトリウム)と反応させることにより得ることができる。アミノ酸部位は、ポリグルタミン酸の側鎖カルボン酸基に結合させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は、限定されないが、約10000〜約500000ダルトンが好ましく、約25000〜約300000ダルトンがより好ましい。そのような反応を用いてポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)又はポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を調製することができる。
【0086】
一実施形態において、アミノ酸は、ポリグルタミン酸に結合させる前に、保護基によって保護することができる。この反応に適する保護アミノ酸部位の一例は、以下に示すL−アスパラギン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩である。
【化8】
【0087】
ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応は、任意の適当な溶媒の存在下で行うことができる。一実施形態において、溶媒は非プロトン性溶媒とすることができる。好ましい実施形態において、溶媒はN,N’−ジメチルホルムアミドである。一実施形態において、ポリグルタミン酸及びアミノ酸との間の反応物にカップリング剤、例えばEDC、DCC、CDI、DSC、HATU、HBTU、HCTU、PyBOP(登録商標)、PyBroP(登録商標)、TBTU、及びBOPを用いることができる。他の実施形態において、ポリグルタミン酸とアミノ酸は、触媒(例えばDMAP)を用いて反応させることができる。
【0088】
ポリマーは、当業者に知られた方法によって回収かつ/又は精製することができる。例えば溶媒は、適当な方法(例えば回転蒸発)によって除去することができる。さらに、反応混合物をろ過して酸性水溶液に加え、沈殿を生成させることができる。次いで得られた沈殿をろ過し、水で洗浄することができる。
【0089】
一実施形態において、式(VII)の繰り返し単位を含むポリマー反応物は、式(VIIII)の繰り返し単位をさらに含むこともできる。式(VII)の繰り返し単位及び式(VIII)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する一つの方法は、ポリグルタミン酸から出発し、それを、ポリグルタミン酸に対して1.0当量未満の量のアミノ酸(例えばアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)と反応させることによるものである。例えば、一実施形態において、ポリグルタミン酸に対して0.7当量のアミノ酸をポリグルタミン酸と反応させることができ、その結果、得られるポリマーの繰り返し単位の約70%がアミノ酸を含む。上述したとおり、適当な保護基を用いてアミノ酸の酸素原子を保護することができる。一実施形態において、アミノ酸はL−アスパラギン酸又はL−グルタミン酸とすることができる。別の実施形態において、アミノ酸の酸素原子はt−ブチル基により保護することができる。アミノ酸の酸素原子を保護した場合、公知の方法(例えば適当な酸(例えばトリフルオロ酢酸)による方法)を用いて保護基を除去することができる。
【0090】
一実施形態において、ポリマー反応物は、第2の反応物及び第3の反応物とともに溶解又は部分的に溶解することでき、ここで第2の反応物は第1の薬物を含み、かつ第3の反応物は第2の薬物を含む。
【0091】
第2の反応物は多くの種類の薬剤を含むことができる。一実施形態において、第1薬剤は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第1の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0092】
第3の反応物は多くの種類の薬剤を含むことができる。一実施形態において、第1薬剤は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第2の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0093】
一実施形態において、第2の反応物はヒドロキシ及びアミンから選択された置換基を含むことができる。一実施形態において、第3の反応物はヒドロキシ及びアミンから選択された置換基を含むことができる。
【0094】
一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、溶解された又は部分的に溶解された反応物が第3の反応物の少なくとも一部と反応する前に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、溶解された又は部分的に溶解された反応物が第3の反応物の少なくとも一部と反応した後に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、溶解された又は部分的に溶解された反応物が第3の反応物の少なくとも一部と反応するとほぼ同時に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。
【0095】
図3は、種々のポリアミノポリマー複合体を調製するための反応スキームの限定されない一例を示している。例示される反応スキームは、複数の薬物をポリグルタミン酸に結合させるための反応工程を示す。図3に例示する反応スキームにおいて他の形態のポリグルタミン酸を使用してもよい。例えば、ポリグルタミン酸のアルカリ塩又はアンモニウム塩を使用することができる。一実施形態において、式(VII)の繰り返し単位を有するポリマー反応物を図3に例示される反応スキームに使用することができる。
【0096】
図3に示すとおり、溶解された又は部分的に溶解されたポリグルタミン酸(PGA)は、カップリング剤の存在下でパクリタキセルと反応させられ、ポリグルタミン酸−パクリタキセル複合体(PGA−パクリタキセル)を形成する。次いで、溶解された又は部分的に溶解されたPGA−パクリタキセルをカップリング剤の存在下で第2の薬物とさらに反応させてもよい。第2の薬物をドキソルビシンとすることができ、PGA−(パクリタキセル)−ドキソルビシン複合体を得ることができる。一方、第2の薬物をカンプトテシンとしてもよく、PGA−(パクリタキセル)−カンプトテシン複合体を得てもよい。図3に示される一実施形態において、PGA−(パクリタキセル)−カンプトテシンは、溶解又は部分的に溶解され、第3の薬物であるドキソルビシンと反応させられ、PGA−(パクリタキセル)−(カンプトテシン)−ドキソルビシン複合体を形成する。
【0097】
図3に示す実施形態では薬物結合の順序が記載されているが、順序は限定して解釈すべきものではない。ポリマーに結合される第1の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。またポリマーに結合される第2の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにポリマーに結合される第3の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにまた、第1、第2及び/又は第3の薬物の任意の1つを、第1、第2及び/又は第3の薬物の他の任意の1つとほぼ同時にポリマーに結合させてもよい。
【0098】
図4は、種々のポリアミノポリマー複合体を調製するための反応スキームの限定されない一例を示している。例示される反応スキームは、複数の薬物をポリ(γ−グルタミル−グルタミン)に結合させるための反応工程を示す。図4に例示する反応スキームにおいて他の形態のポリアミノアミノ酸を使用してもよい。例えば、ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)のアルカリ塩又はアンモニウム塩を使用することができる。一実施形態において、式(VIII)の繰り返し単位を有するポリマー反応物を図4に例示される反応スキームに使用することができる。
【0099】
図4に示すとおり、溶解された又は部分的に溶解されたポリ(γ−グルタミル−グルタミン)(PGGA)は、カップリング剤の存在下でパクリタキセルと反応させられ、ポリグルタミン酸−パクリタキセル複合体(PGGA−パクリタキセル)を形成する。次いで、溶解された又は部分的に溶解されたPGGA−パクリタキセルをカップリング剤の存在下で第2の薬物とさらに反応させてもよい。第2の薬物をドキソルビシンとすることができ、PGGA−(パクリタキセル)−ドキソルビシン複合体を得ることができる。一方、第2の薬物をカンプトテシンとしてもよく、PGGA−(パクリタキセル)−カンプトテシン複合体を得てもよい。図4に示される一実施形態において、PGGA−(パクリタキセル)−カンプトテシンは、溶解又は部分的に溶解され、第3の薬物であるドキソルビシンと反応させられ、PGGA−(パクリタキセル)−(カンプトテシン)−ドキソルビシン複合体を形成する。
【0100】
図4に示す実施形態では薬物結合の順序が記載されているが、順序は限定して解釈すべきものではない。ポリマーに結合される第1の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにポリマーに結合される第2の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。またポリマーに結合される第3の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにまた、第1、第2及び/又は第3の薬物の任意の1つを、第1、第2及び/又は第3の薬物の他の任意の1つとほぼ同時にポリマーに結合させてもよい。
【0101】
一実施形態において、ポリマー複合体を製造する方法は、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第4の反応物と反応させることを含むことができ、ここで、該第4の反応物は、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、第3の薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基及び安定剤を含む基から選択される少なくとも1つを有するものである。一実施形態において、該第4の反応物は置換基をさらに含んでもよい。該置換基はヒドロキシ及びアミンから選択することができる。
【0102】
一実施形態において、第4の反応物は作用因子を含む化合物を含むことができる。作用因子は任意の活性化合物とすることができる。例えば、作用因子を含む化合物は、薬物を含む化合物、標的化剤を含む化合物、光造影剤を含む化合物、磁気共鳴造影剤を含む化合物及び安定剤を含む化合物から選択することができる。
【0103】
一部の実施形態において、第4の反応物は抗癌剤のような第3薬物を含む化合物を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択されることができる。パクリタキセルは、いくつかの方法によりポリマーに結合させることができる。一実施形態において、パクリタキセルは、C2’炭素に結合する酸素原子において式(I)の繰り返し単位に結合させる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。一実施形態において、第3薬物は第1薬物及び第2薬物と相違したものにすることができる。
【0104】
一実施形態において、第4の反応物は標的化剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、標的化剤は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体から選択されることができる。一実施形態において、標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体から選択される受容体と相互作用することができる。一部の実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)とすることができる。
【0105】
一実施形態において、第4の反応物は光造影剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、光造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素から選択され得る。
【0106】
一実施形態において、第4の反応物は安定剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールとすることができる。
【0107】
一実施形態において、第4の反応物は磁気共鳴造影剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤は常磁性金属化合物を含むことができる。作用因子を含む化合物はGd(III)化合物を含むことが好ましい。例えば、Gd(III)化合物には以下のものがある。
【化9】
及び
【化10】
【0108】
一実施形態において、第4の反応物は多座配位子を含むことができる。任意の適当な多座配位子を用いることができる。一実施形態において、多座配位子は、常磁性金属と反応して磁気共鳴造影剤を形成できるものとすることができる。例えば、多座配位子は、数個のカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を含むことができる。例えば、以下の構造の多座配位子をポリマーに結合させることができる。
【化11】
及び
【化12】
式中、各R8及びR9は独立して水素、アンモニウム、又はアルカリ金属とすることができる。
【0109】
別の実施形態において、第4の反応物は多座配位子前駆体を含むことができる。別の実施形態において、保護基を有する多座配位子前駆体をポリマーに結合させてもよい。そのような前駆体は、その酸素原子が1つ又は複数の適当な保護基により保護されている。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるが、これらに限定されない。保護基を有する多座配位子前駆体の一例を以下に示す。
【化13】
【0110】
前述したように、一部の実施形態において、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第3の反応物との反応の前に第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、第2の反応物の少なくとも一部を加えた後生成する中間化合物は、第3の反応物を加える前に分離することができる。別の実施形態では、第2の反応物を加えた後生成する中間化合物を分離することなく、第3の反応物を加えることができる。他の実施形態において、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第3の反応物との反応とほぼ同時に第2の反応物の少なくとも一部と反応させられる。一実施形態において、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第3の反応物の少なくとも一部との反応の後に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させられる。
【0111】
一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第4の反応物の少なくとも一部と反応させる前に、第2の反応物の少なくとも一部及び/又は第3の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第2の反応物の少なくとも一部及び/又は第3の反応物の少なくとも一部と反応させる前に、第4の反応物の少なくとも一部と反応させる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第2の反応物の少なくとも一部及び/又は第3の反応物の少なくとも一部と反応させるとほぼ同時に、第4の反応物の少なくとも一部と反応させる。
【0112】
一実施形態において、ポリマー複合体を調製する方法は、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物をカップリング剤の存在下で第2の反応物及び/又は第3の反応物と反応させることを含むことができる。第4の反応物との反応のためカップリング剤をさらに存在させてもよい。任意の適当なカップリング剤を用いることができる。任意の適当なカップリング剤を用いることができる。一実施形態において、カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP(登録商標))、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及びベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)から選択することができる。
【0113】
反応を起こさせることができる任意の適当な溶媒を用いることができる。一実施形態において、溶媒は極性非プロトン性溶媒とすることができる。例えば、溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)から選択することができる。
【0114】
別の実施形態において、反応は、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物を触媒の存在下で反応させることをさらに含んでもよい。反応を促進する任意の触媒を用いることができる。一実施形態において、触媒は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含むことができる。
【0115】
薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び/又は安定剤を含む基をポリマー酸又はその塩形に結合させることは、種々の方法によって(例えば、作用因子、多座配位子、及び/又は酸素原子が保護された多座配位子前駆体を含む基を種々のポリマーに共有結合させることにより)行うことができる。ポリマーに上述した基を結合させる一つの方法は、熱(例えば、マイクロ波法を使用することによる熱)を使用することによるものである。一方、結合は室温で行ってもよい。通常当業者に知られた又は本明細書に記載された適当な溶媒、カップリング剤、触媒、及び/又は緩衝剤を用いてポリマー複合体を形成することができる。ポリグルタミン酸と同様に、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、ポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。
【0116】
ここに示すポリマーに結合させることができる適当な作用因子には、薬物、光剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤(例えば常磁性金属化合物)、安定剤、多座配位子、及び保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体があるが、これらに限定されない。
【0117】
一実施形態において、ポリマーは、例えば本明細書に記載されるような光造影剤と結合させることができる。一実施形態において、光造影剤はTexas Red−NH2(テキサスレッド−NH2)とすることができる。
【化14】
【0118】
特定の一実施形態において、少なくとも1つの式(I)、(II)、(II)、(IV)、(V)及び/又は(VI)(例えば、ポリグルタミン酸及び/又はその塩及びアミン酸から得られたポリマー)の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意のポリマー反応物は、DCC、テキサスレッド−NH2色素、ピリジン、及び4−ジメチルアミノピリジンと反応させることができる。この混合物はマイクロ波法を用いて加熱することができる。一実施形態において、反応は、約100℃〜約150℃の範囲の温度まで加熱されることができる。別の実施形態において、材料の加熱時間は5〜40分である。必要に応じて、反応混合物を室温まで冷却することができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、反応混合物をろ過して酸性水溶液に投入することができる。生成する沈殿物があれば、次いでそれをろ過し、水で洗浄することができる。必要に応じて、沈殿物を任意の適当な方法により精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移して溶解させることができ、そして得られた溶液を再度ろ過して重炭酸ナトリウム溶液に投入することができる。必要に応じて、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。
【0119】
一実施形態において、少なくとも1つの式(I)、(II)、(II)、(IV)、(V)及び/又は(VI)(例えば、ポリグルタミン酸及び/又はその塩及びアミン酸から得られたポリマー)の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意のポリマー反応物は、薬物(例えば抗癌剤)に結合させることができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ、及び/又はアントラサイクリンとすることができる。一実施形態において、抗癌剤は、例えばパクリタキセル又はドセタキセルのようなタキサンとすることができる。他の実施形態において、抗癌剤は、例えばカンプトテシンのようなカンプトテカとすることができる。また別の実施形態において、抗癌剤は、例えばドキソルビシンのようなアントラサイクリンとすることができる。一実施形態において、ポリマーに結合された抗癌剤はドキソルビシンとすることができる。他の実施形態において、ポリマーに結合された抗癌剤はパクリタキセルとすることができる。一実施形態において、パクリタキセルは、C2’−酸素原子においてポリマーに結合させることができる。別の実施形態において、パクリタキセルは、C7−酸素原子においてポリマーに結合させることができる。さらに別の実施形態において、ポリマーは、C2’結合パクリタキセル基とC7結合パクリタキセル基との両方を有すことができる。
【0120】
抗癌剤は、テキサス−レッドついて上述した方法を用いて、適当なポリマー反応物に結合させることができる。
【0121】
一実施形態において、パクリタキセルを、好ましくはカップリン剤(例えばEDC及び/又はDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下、溶媒(例えばDMFのような非プロトン性溶媒)中において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物と反応させることができる。さらなる試薬(例えばピリジン又はヒドロキシベンゾトリアゾール)を用いてもよい。一実施形態において、反応は0.5〜2日間行うことができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、反応混合物を酸性溶液に注入して沈殿を形成することができる。形成される沈殿があれば、次いでそれをろ過し、水で洗浄することができる。必要に応じて、沈殿を任意の適当な方法により精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移して溶解させることができ、そして得られた溶液を再度ろ過して重炭酸ナトリウム溶液に投入することができる。必要に応じて、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。得られるポリマー中のパクリタキセルの含量は、UV分光測定法により測定することができる。
【0122】
別の実施形態において、作用因子を含む化合物は、アミノ酸(例えばグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸)と反応させることができ、そこにおいて作用因子を含む化合物は該アミノ酸に結合される(例えば共有結合される)。次いで、アミノ酸−作用因子化合物をポリグルタミン酸又はその塩と反応させてここに示すポリマー複合体を形成することができる。一実施形態において、パクリタキセルをグルタミン酸と反応させて、グルタミン酸の側鎖カルボン酸基にパクリタキセルが共有結合する化合物を形成することができる。次いでグルタミン酸−パクリタキセル化合物を、ポリグルタミン酸又はその塩と反応させて、ここに示すポリマー複合体を形成することができる。一実施形態において、パクリタキセルをアスパラギン酸と反応させて、アスパラギン酸の側鎖カルボン酸基にパクリタキセルが共有結合した化合物を形成することができる。次いでアスパラギン酸−パクリタキセル化合物を、ポリグルタミン酸又はその塩と反応させて、ポリマー複合体を形成することができる。必要に応じて、公知の分離法(例えばHPLC)を用い、C2’−酸素によりアミノ酸に結合したパクリタキセルを、C7−酸素によりアミノ酸に結合したパクリタキセルから分離することができる。
【0123】
ポリマー複合体の形成の後、ポリマーに共有結合していない遊離の作用因子があれば、その量を測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて、パクリタキセルに結合したポリマーの組成物中に遊離のパクリタキセルが実質的に残存しないことを確認してもよい。
【0124】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、多座配位子に結合させることができる。適当な多座配位子には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、及びエタン二酸(ox)があるが、これらに限定されない。通常当業者に知られた及び/又は本明細書に記載された適当な溶媒、カップリング剤、触媒、及び/又は緩衝剤を用いてポリマー複合体を形成することができる。別の実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体に結合させることができる。ポリグルタミン酸と同様に、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、ポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。
【0125】
一実施形態において、多座配位子はDTPAとすることができる。別の実施形態において、多座配位子はDOTAとすることができる。一実施形態において、DTPAなどの多座配位子(保護された酸素原子を有する又は有しない)を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中で反応させることができる。保護基が存在する場合、適当な方法を用いて除去することができる。例えば、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体(例えば酸素原子がt−ブチル基により保護されたDTPA)を有するポリマー複合体を、トリフルオロ酢酸などの酸で処理することができる。保護基を除去した後、酸を回転蒸発により除去することができる。一実施形態において、DTPAを適当な塩基で処理してカルボン酸−OH基の水素原子を除くことができる。一部の実施形態において塩基は重炭酸ナトリウムである。
【0126】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、標的化剤に結合させることができる。例示的な標的化剤には、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体があるが、これらに限定されない。標的化剤として、特定の受容体と相互作用するものを選ぶことができる。例えば、標的化剤として、以下の受容体の1種以上と相互作用するものを選ぶことができる:αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体。一実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)である。
【0127】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物の塩形又は酸形のいずれも、標的化剤を有するポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。一実施形態において、標的化剤を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。ポリマー複合体の形成後、ポリマーに共有結合していない遊離の作用因子がいくらかあるかどうか測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて遊離の標的化剤が実質的に存在しないことを確認してもよい。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる(例えば凍結乾燥)。
【0128】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、磁気共鳴造影剤に結合させることができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含むことができる。磁気共鳴造影剤を形成する方法の一つは、多座配位子を含むポリマー複合体と常磁性金属とを反応させることによるものである。適当な常磁性金属には、Gd(III)、インジウム−111、及びイットリウム−88があるが、これらに限定されない。例えば、DTPAを含むポリマー複合体を、緩衝溶液中、Gd(III)で数時間処理することができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。常磁性金属の量を、誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)測定により定量してもよい。
【0129】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、安定剤に結合させることができる。一部の実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールである。一つの方法において安定剤を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。反応の経過を任意の適当な方法(例えばTLC)により測定することができる。得られたポリマー複合体を、当業者に知られた方法(例えば透析)を用いて精製することができる。
【0130】
ポリマー複合体を用いて、造影剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は薬物を選択された組織に送達することができる。例えば、テキサスレッド色素を含むポリマー複合体を用いて、選択された組織に造影剤を送達することができる。一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリマー複合体を用いて、癌などの病気又は症状を治療又は寛解することができる。一実施形態において、本明細書に記載されるポリマー複合体を用いて、病気又は症状(例えば癌)を診断することができる。さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるポリマー複合体を用いて、組織の部分を造影することができる。一部の実施形態において、病気又は症状は、癌、例えば肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫であり得る。一実施形態において、病気又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択される腫瘍であり得る。一実施形態において、造影された組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からの組織であり得る。
【0131】
本明細書に記載されるポリマーは、水溶液中でナノ粒子にしてもよい。同様に、ポリマー及び薬物を含む複合体をナノ粒子にすることができる。そのようなナノ粒子を用いて、薬物を選択された組織に選択的に送達することができる。
【0132】
一実施形態により、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体と、製薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つとを含む組成物が提供される。一部の実施形態において、本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)のプロドラッグ、代謝産物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形体、及び製薬上許容される塩が提供される。
【0133】
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換される薬剤を指す。プロドラッグはしばしば有用である。なぜなら、親薬物よりもプロドラッグの方が投与しやすい場合があるからである。例えば、親薬物はそうではないのに対し、プロドラッグを経口投与により生物学的に利用可能にすることができる。またプロドラッグは、医薬組成物において親薬物よりも高い溶解度を有することができる。限定されないが、プロドラッグの例として、細胞膜での移動を容易にするためエステル(プロドラッグ)として投与される化合物がある。細胞膜において水溶性は移動に不利である一方、プロドラッグが一旦細胞の内部に入ると、代謝によって加水分解されカルボン酸(活性体)となり、そこでは水溶性が有利となる。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であろう。酸基において該ペプチドは代謝され、活性部位を外に出す。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための在来法は、例えばDesign of Prodrugs(H.Bundgaard,Elsevier編,1985)(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0134】
用語「プロドラッグエステル」は、生理的条件下で加水分解されるいくつかのエステル形成基のいずれかを付加することにより形成される本開示の化合物の誘導体を指す。プロドラッグエステル基の例には、ピバロイルオキシメチル基、アセトキシメチル基、フタリジル基、インダニル基、及びメトキシメチル基、さらには当該技術において知られた他の基、例えば(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基がある。プロドラッグエステル基の他の例は、例えばT.Higuchi及びV.Stella,in “Pro−drugs as Novel Delivery Systems”,Vol.14,A.C.S.Symposium Series,American Chemical Society(1975)、及び“Bioreversible Carriers in Drug Design:Theory and Application”,E.B.Roche編,Pergamon Press:New York,14−21(1987)(カルボキシル基を含む化合物に対しプロドラッグとして有用なエステルの例を提供している)に存在する。なお上述した各文献は、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる。
【0135】
用語「製薬上許容される塩」は、化合物の塩であって、投与される生体に顕著な刺激を引き起こさず、また該化合物の生物活性及び特性を損なわないものを指す。一部の実施形態において、該塩は、化合物の酸付加塩である。医薬塩は、化合物を無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸など)と反応させることにより得ることができる。また医薬塩は、化合物を有機酸(脂肪族又は芳香族のカルボン酸又はスルホン酸(例えば酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、又はナフタレンスルホン酸)と反応させることにより得ることもできる。また医薬塩は、化合物を塩基と反応させて塩(例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩)、有機塩基(例えばジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1〜C7アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン)の塩、及びアミノ酸(例えばアルギニン、リシンなど)との塩)を形成することにより得ることもできる。
【0136】
医薬製剤の製造が、医薬賦形剤と塩の形態の有効成分との混合を伴う場合、塩基性でない医薬賦形剤(すなわち、酸性又は中性の賦形剤)を使用することが望ましい。
【0137】
種々の実施形態において、本明細書に開示される化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、単独で用いることができ、本明細書に開示される他の化合物と組み合わせて用いることができ、あるいは、本明細書に記載される治療分野において活性である1種以上の他の薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0138】
別の態様において、本開示は、1つ以上の生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、懸濁剤、製膜物質、コーティング助剤、又はそれらの組み合わせと、本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)とを含む医薬組成物に関する。治療用途のため許容される担体又は希釈剤は、製薬技術においてよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されている。保存剤、安定剤、色素、甘味料、香料、矯味矯臭剤などを医薬組成物に加えてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを保存剤として添加することができる。さらに、抗酸化剤及び懸濁剤を使用してもよい。種々の実施形態において、アルコール類、エステル類、硫酸化脂肪族アルコールなどを界面活性剤として用いることができ、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを賦形剤として用いることができ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを滑沢剤として用いることができ、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆を懸濁剤又は滑剤として用いることができ、酢酸フタル酸セルロース(炭水化物(例えばセルロース又は糖)の誘導体として)あるいは酢酸メチル−メタクリル酸エステル共重合体(ポリビニルの誘導体として)を懸濁剤として用いることができ、そして可塑剤(例えばフタル酸エステル等)を懸濁剤として用いることができる。
【0139】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)と他の化学成分(例えば希釈剤又は担体)との混合物を指す。医薬組成物は、化合物の生体への投与を容易にする。化合物を投与する手法は当該技術において多数存在し、例えば、経口投与、注射投与、エアゾール投与、非経口投与、及び局所投与があるが、これらに限定されない。また医薬組成物は、化合物を無機酸又は有機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と反応させることにより得ることもできる。
【0140】
用語「担体」は、化合物の細胞又は組織への取り込みを容易にする化合物を指す。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生体の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを促進するため、一般的に使用される担体である。
【0141】
用語「希釈剤」は、水中に希釈される化合物であって、目的の化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)を溶解するとともに、該化合物の生物学的活性形を安定化するものを指す。当該技術において緩衝溶液に溶解された塩は希釈剤として利用される。一般的に使用される緩衝溶液の1つは、リン酸緩衝生理食塩水である。それはヒトの血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御できるので、緩衝希釈剤は化合物の生物学的活性をほとんど変化させない。用語「生理学的に許容される」は、化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体又は希釈剤を指している。
【0142】
本明細書に記載される医薬組成物は、それ自体で、あるいは、それを併用療法のように他の活性な成分と混合した医薬組成物として、又はそれを適当な担体又は希釈剤と混合した医薬組成物として、ヒトに投与することができる。本願の化合物を製剤化し投与するための手法は、“Remigton’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PA,第18版,1990に見出すことができる。
【0143】
投与の適当な経路には、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、又は腸内投与、非経口送達(筋内注射、皮下注射、静脈注射、骨髄内注射、さらには、クモ膜下注射、直接的心室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注入、又は眼内注射を含む)がある。また化合物(ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、持効性又は制御放出性の剤形(所定の速度での長期投与、適時投与、間欠投与のためのデポ注射剤、浸透ポンプ、丸剤、経皮(エレクトロトランスポートを含む)パッチ等を含む)で投与することもできる。
【0144】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の方法、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠調製、研和、乳化、カプセル化、封入、又は錠剤化の方法により製造することができる。
【0145】
かくして本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用可能な製剤に加工するのを容易にする賦形剤及び助剤を含む生理学的に許容される1つ以上の担体を用いて通常の方法により調製することができる。適切な製剤は、選択される投与経路による。周知の手法、担体、及び賦形剤の任意のものを当該技術(例えば上記Remington’s Pharmaceutical Sciences)において適切かつ妥当なように使用することができる。
【0146】
注射剤は、通常の形態(溶液又は懸濁液として)で、注射の前に溶液又は懸濁液にするのに適当な固体の形態で、あるいは乳剤として、調製することができる。適当な賦形剤には、例えば水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などがある。さらに必要に応じて、注射可能な医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。生理学的に適合する緩衝剤には、ハンクス溶液、リンゲル液、あるいは生理的塩類緩衝液があるが、これらに限定されない。必要に応じて、吸収促進製剤(例えばリポソーム類)を利用してもよい。
【0147】
経粘膜投与のため、透過させるべき障壁に適する浸透剤を製剤に使用することができる。
【0148】
非経口投与(例えばボーラス注射又は連続点滴)のための医薬製剤には、水溶性形態の活性化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)の水溶液がある。さらに活性化合物の懸濁液を適当な油性注射懸濁剤として調製してもよい。適当な親油性溶媒又は媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)あるいは他の有機油(例えば大豆油、グレープフルーツ油又は扁桃油)、あるいは合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド)、あるいはリポソーム類がある。水性注射懸濁剤は、懸濁剤の粘度を上げる物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストラン)を含んでもよい。必要に応じて、懸濁剤は、適当な安定剤、又は高濃度の溶液の調製を可能にするよう化合物の溶解度を上げる適当な物質をさらに含むこともできる。注射用製剤は、単位剤形(例えばアンプル又は反復投与容器)で保存剤を添加して提供することができる。組成物は、油性媒体又は水性媒体中の懸濁剤、溶液、又は乳剤のような形態をとることができ、また、製剤化剤(例えば懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含んでもよい。一方、使用前、有効成分は、適当な賦形剤(例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水)を用いて構成するため、粉末の形態であってもよい。
【0149】
経口投与のため、当該技術においてよく知られた製薬上許容される担体と活性化合物とを合わせることにより、化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)を容易に製剤にすることができる。そのような担体は、本発明の化合物を、治療すべき患者が経口摂取できるよう、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などの製剤にすることを可能にする。経口用医薬製剤は、活性化合物を固体の賦形剤と合わせ、得られた混合物を必要に応じて粉砕し、そして必要に応じて適当な助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して錠剤又は糖衣錠の核を得ることにより、得ることができる。適当な賦形剤には、特に、充填剤、例えば糖類(ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む)、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)がある。必要に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)を加えてもよい。糖衣錠核は適当なコーティングが施されている。この目的のため、高濃度の糖溶液を用いることができ、該糖溶液は、必要に応じて、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のためあるいは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤又は糖衣錠のコーティングに染料又は顔料を添加することができる。この目的のため、高濃度の糖溶液を用いることができ、該糖溶液は、必要に応じて、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のためあるいは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤又は糖衣錠のコーティングに染料又は顔料を添加することができる。
【0150】
経口で使用できる医薬製剤には、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル剤、さらにはゼラチン及び可塑剤(例えばグリセロール又はソルビトール)からなるソフトシールドカプセル剤がある。プッシュ−フィットカプセル剤は、有効成分(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)と合わせて充填剤(例えばラクトース)、結合剤(例えばデンプン)、及び/又は滑剤(例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム)、及び必要に応じて安定剤を含むことができる。ソフトカプセル剤において、活性化合物は、適当な液体(例えば脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール)に溶解又は懸濁することができる。さらに安定剤を加えてもよい。全ての経口投与用製剤がその投与に適した用量となっていることが望ましい。
【0151】
口腔投与のため、組成物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は通常の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態をとることができる。
【0152】
吸入による投与のため、本発明に従って使用される化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、適当なプロペラント(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガス)の使用とともに加圧容器又はネブライザから供給できるエーロゾルスプレーの形態で送達することが有利である。加圧エーロゾルの場合、計測量を送るバルブを設けることにより、用量単位を決めることができる。吸入器又は噴霧器で使用するための例えばゼラチンからなるカプセル及びカートリッジを、化合物と適当な粉末基剤(例えばラクトース又はデンプン)との粉末混合物を含むよう調製することができる。
【0153】
眼内、鼻腔内、及び耳介内の送達を含む使用のための製薬技術においてよく知られた種々の医薬組成物がさらに本明細書に開示される。これらの使用のための適当な浸透剤は当該技術において一般的に知られている。眼内送達用の医薬組成物には、水溶性形態の(例えば点眼剤)又はゲランガムにおける活性化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)の眼科用水性液剤(Shedden他,Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))又はヒドロゲル(Mayer他,Ophthalmologica,210(2):101−3(1996))、眼軟膏剤、懸濁性点眼剤(例えば液体の担体媒質中に懸濁されたミクロ粒子、薬物含有小ポリマー粒子(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、脂質溶解性製剤(Alm他,Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、ミクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999))、並びに眼球インサートがある。上記参考文献はすべて参照によりその内容が本明細書に組み込まれる。そのような適当な医薬製剤は、多くの場合そして好ましくは、安定性及び快適性のため、滅菌され、等張性となり、かつ緩衝されるよう調製される。また鼻腔内送達用の医薬組成物には、滴剤及びスプレー剤があり、それらは多くの場合、正常な線毛作用の維持を確保するため多くの点で鼻の分泌物をシミュレートして調製される。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(参照によりその内容はすべて本明細書に組み込まれる)に開示されるように、また当業者によく知られているとおり、適当な製剤は、多くの場合そして好ましくは、等張性であり、pH5.5〜6.5を維持するようわずかに緩衝されており、また多くの場合そして好ましくは、抗菌性の保存剤及び適当な薬物安定剤を含むものである。耳介内送達用の医薬組成物には、懸濁剤及び耳の局所的塗布のための軟膏剤がある。そのような耳用製剤のための一般的な溶媒には、グリセリン及び水がある。
【0154】
また化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は直腸用組成物(例えば座剤又は保持用浣腸剤(例えばカカオ脂又は他のグリセリドなどの通常の座剤基剤を含む))に調製することができる。
【0155】
上記製剤に加えて、化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、デポ製剤として調製することもできる。そのような長時間作用型の製剤は、移植により(例えば皮下又は筋内で)あるいは筋肉注射により投与することができる。従って、例えば、化合物は、適当なポリマー材料又は疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)を用いて、あるいはイオン交換樹脂を用いて、あるいはゆるやかに溶解する誘導体として(例えばゆるやかに溶解する塩として)製剤化される。
【0156】
疎水性化合物に対して適当な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水性相を含む共溶媒系とすることができる。使用される一般的な共溶媒系の一つはVPD共溶媒系であり、これは3%w/vベンジルアルコール、8%w/v非極性界面活性剤ポリソルベート80(商標)、及び65%w/vポリエチレングリコール300、無水エタノール(規定の体積まで仕上げる)の溶液である。当然のことながら、共溶媒系の組成は、その溶解性及び毒性の性質を損なうことなく顕著に変えることができる。また、共溶媒成分の種類を変えてもよい。例えば、他の低毒性で非極性の界面活性剤をポリソルベート80(商標)の代わりに使用してもよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズを変えてもよく、他の生体適合性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン)をポリエチレングリコールの代わりに使用してもよく、また他の糖類又は多糖類をデキストロースの代わりとしてもよい。
【0157】
一方、疎水性医薬化合物に対して他の送達系を使用してもよい。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物用の送達ビヒクル又は担体のよく知られた例である。通常代償として毒性が高くなるが、ある特定の有機溶媒(例えばジメチルスルホキシド)を用いることもできる。さらに、化合物は、徐放系(例えば治療剤を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)を用いて送達することができる。種々の徐放性材料が確立されており、当業者によく知られるところである。徐放性カプセル剤は、その化学的性質に応じて、化合物を数時間又は数週間〜最高100日以上の間放出する。治療剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、蛋白質の安定化のためさらなる戦略を用いてもよい。
【0158】
細胞内に投与することを目的とする薬剤は、当業者によく知られた手法を用いて投与することができる。例えば、そのような薬剤はリポソームに封入することができる。リポソーム形成時に水溶液中に存在するすべての分子は、水性の内部に組み込まれる。リポソームの内容物は、外の微小環境から保護されるとともに、リポソームは細胞膜と融合するため、効率的に細胞質中に送達される。リポソームを組織特異的抗体で被覆してもよい。リポソームは、所望の器官を標的化するようになり、所望の器官によって選択的に取り込まれる。一方、小さな疎水性有機分子は、直接細胞内に投与してもよい。
【0159】
追加の治療薬又は診断薬を医薬組成物に組み込んでもよい。その代わりに又はそれに加えて、医薬組成物は、他の治療薬又は診断薬を含む他の組成物と組み合わせてもよい。
【0160】
化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)又は医薬組成物は、任意の適当な手段により患者に投与することができる。限定されないが、投与方法の例には、特に以下のものがある:(a)経口経路による投与(その投与には、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、スプレー剤、シロップ剤、又は他のそのような剤形による投与がある)、(b)非経口経路による投与(例えば、直腸、膣、尿道内、眼内、鼻腔内、又は耳介内。その投与には、水性懸濁剤、油性製剤などとして、あるいは、点滴、スプレー剤、座剤、軟膏、軟膏剤などとしての投与がある)、(c)注射による投与(皮下、腹腔内、静脈内、筋内、皮内、眼窩内、包内、脊椎内、胸骨内などであって、注入ポンプによる送達を含む)、(d)局部的投与(例えば、腎臓又は心臓の部分に直接注入(例えばデポ移植により))、並びに(e)局所的投与(活性化合物を生きた組織に接触させるため当業者が妥当と考えるもの)。
【0161】
投与に適する組成物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)には、その目的を達成するのに有効な量で有効成分が含まれる組成物がある。本明細書に開示の化合物の用量として必要とされる有効な量は、投与の経路、治療される動物(ヒトを含む)の種類、及び対象となる特定の動物の身体的性質による。用量は、所望の効果を得るため調整することができるが、体重、食生活、並存する薬物治療、当業者が認識するであろう他の要因による。より具体的には、有効な量は、病状を防ぎ、軽減し、又は改善するのに有効な化合物の量、又は、治療される対象の生存を延ばすのに有効な化合物の量を意味する。有効な量の決定は、特に本明細書の詳細な開示に照らして、当業者に十分可能な範囲の事項である。
【0162】
当業者に容易に理解されるとおり、インビボで有用な投与すべき用量及び特定の投与形態は、年齢、体重、治療される哺乳動物の種類、使用される特定の化合物、及びそれらの化合物を使用する特定の用途による。当業者は日常的な薬理学的方法を用いて、有効な用量のレベル(すなわち所望の結果を得るために必要な用量のレベル)を決定することができる。典型的に、生成物をヒトの臨床用途に用いる場合、より低い用量レベルから始め、所望の効果が得られるまで、用量レベルを上げていく。一方、確立された薬理学的方法を用いて、本方法により特定される組成物の有効な用量及び投与経路を確立するため、可能なインビトロ研究を採用してもよい。
【0163】
非ヒト動物の研究では、可能性のある生成物の使用は、より高い投与量レベルから始められ、所望の効果がもはや得られなくなるか又は有害な副作用が消えるまで投与量が減らされる。投与量は、所望の効果及び治療指標に応じて、広い範囲で変わる可能性がある。典型的には、投与量は、約10マイクログラム/kg〜100mg/kg体重、好ましくは約100マイクログラム/kg〜10mg/kg体重とすることができる。一方、投与量は、当業者に明らかなとおり、患者の表面積に基づき算出することができる。
【0164】
本発明の医薬組成物についての的確な製剤、投与経路、及び投与量は、患者の症状を見て、個々の医師が選択することができる(例えばFingl他,1975,“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)参照、特にCh.1,p.1参照)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者の体重kgあたり0.5〜1000mgとすることができる。投薬は、患者の必要に応じて、1日又は2日以上のうちに1回又は一連の2回以上の投与とすることができる。少なくともある症状に対していくつかの化合物のヒトへの投与量が確立されている場合、本発明は、それと同じ投与量を用いるか、あるいは、確立されたヒトへの投与量の約0.1%〜500%、より好ましくは約25%〜250%を用いることができる。新たに見出された医薬組成物の場合のようにヒトへの投与量が確立していない場合、適切なヒトへの投与量は、ED50又はID50の値から推測することができ、あるいは、動物での毒性試験及び効力試験により限定されるように、インビトロ又はインビボの試験から得られる他の適切な値から推測することができる。
【0165】
なお、担当の医師は、毒性や臓器不全に起因してどのようにそしていつ投与を終了、中止、又は調整すべきか理解するはずである。逆に、担当の医師は、臨床反応が十分でない(毒性を除いて)場合、より高いレベルに治療を調整することも理解するはずである。目的とする疾患の処置における用量の大きさは、治療すべき症状の重症度及び投与経路によって変わってくる。例えば、症状の重症度は、部分的に、標準の予後評価法によって評価することができる。さらに、用量、場合によっては投薬頻度も、個々の患者の年齢、体重、及び反応による。獣医学においては、上述したことに相当するプログラムを用いることができる。
【0166】
的確な投与量は薬物ごとに決定することになるが、多くの場合、投与量に関していくらかの一般化を行うことができる。例えば、成人の患者に対する1日の投薬計画は、経口用量で各有効成分0.1mg〜2000mg、好ましくは1mg〜500mg、例えば5〜200mgとすることができる。他の実施形態において、静脈内、皮下、又は筋内の用量で、各有効成分0.01mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mg、例えば1〜40mgが使用される。製薬上許容される塩を投与する場合、投与量は遊離ベースとして算出することができる。一部の実施形態において、組成物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は1日1〜4回投与される。一方、組成物は、連続的な静脈内点滴により、好ましくは各有効成分1日1000mgまでの用量で投与することができる。当業者に明らかなとおり、ある特定の状況では、特に進行性の病気又は感染を有効かつ積極的に治療するため、上述した好ましい投与量範囲を超えた、あるいははるかに超えた量で、本開示の化合物を投与する必要がある場合がある。一部の実施形態において、化合物は、連続的な治療期間の間、例えば1週間以上、あるいは、数か月又は数年、投与されることとなる。
【0167】
投与量及び投与間隔は、調節作用が持続するのに十分な活性成分の血漿濃度、すなわち最小有効濃度(MEC)が得られるよう、個々に調節することができる。MECは、各化合物によって変わるが、インビトロのデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の性質及び投与経路による。しかしながら、HPLCアッセイ又はバイオアッセイを使用して血漿濃度を測定することができる。
【0168】
MEC値を用いて投与間隔を決定することもできる。期間の10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の間、MECより高い血漿濃度が維持される投薬計画を用いて組成物を投与することが望ましい。
【0169】
局所的投与又は選択的摂取の場合、薬物の有効な局所的濃度は、血漿濃度と無関係であり得る。
【0170】
投与される組成物の量は、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、処方する医師の投与方法及び診断方法によって変わる場合がある。
【0171】
本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、公知の方法を用いて効力及び毒性に関し評価することができる。例えば、特定の化合物の毒性、又は、ある特定の化学部位が共通する化合物のサブセットの毒性は、細胞株(例えば哺乳動物の細胞株、好ましくはヒトの細胞株)に対するインビトロの毒性を測定することによって、特定することができる。そのような試験の結果は、多くの場合、動物(例えば、哺乳動物、より具体的にはヒト)における毒性の予測となる。一方、動物モデル(例えばマウス、ラット、ウサギ、又はサル)において特定の化合物の毒性を、公知の方法を用いて調べることができる。特定の化合物の効力は、いつくかの認められた方法、例えばインビトロの方法、動物モデル、又はヒトの臨床試験を用いて確立することができる。ほぼすべての種類の病気(例えば癌、心臓血管の疾患、及び種々の免疫不全があるがこれらに限定されない)についてインビトロモデルの存在が認められる。同様に、そのような症状を治療する化学物質の効力を確立するため、可能な動物モデルを使用してもよい。効力を調べるためのモデルを選択する場合、適当なモデル、用量、及び投与経路、並びに投薬計画を選択するよう、通常の技術水準により当業者を導くことができる。もちろんヒトの臨床試験を用いてヒトにおける化合物の効力を調べることもできる。
【0172】
必要に応じて、組成物は、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含むことができるパック又はディスペンサ装置において提供してもよい。例えばパックは、金属又はプラスチックの箔、例えばブリスターパックを含んでよい。パック又はディスペンサ装置は、投与のための説明書が付随されている場合がある。またパック又はディスペンサは、医薬の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で容器に関する通知が付随されている場合もある。そのような通知は、ヒト又はヒト以外の動物に投与するための薬物の形態を該機関が承認していることを反映するものである。そのような通知は、例えば、処方薬又は承認された製品への挿入物について米国食品医薬品局が認めた表示とすることができる。また、適合する医薬担体中に製剤化される本発明の化合物を含む組成物は、表示される症状の治療のため、調製され、適当な容器に収容され、そして表示を付与することができる。
【0173】
式(I)の繰り返し単位を有するポリマー及びコポリマーは、多くの異なる用途を有することができる。一実施形態により疾患又は症状を治療又は寛解する方法が提供され、該方法は、疾患又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物にここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を投与することを有する。別の実施形態により、疾患又は症状を治療又は寛解するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。一実施形態において、疾患又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択されるものである。一実施形態において、疾患又は症状は、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫から選択されるものである。
【0174】
一実施形態により疾患又は症状を診断する方法が提供され、該方法は、疾患又は症状の診断が必要な哺乳動物にここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を投与することを有する。別の実施形態により、疾患又は症状を診断するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。一実施形態において、疾患又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択されるものである。一実施形態において、疾患又は症状は、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫から選択されるものである。
【0175】
一実施形態により組織の一部を造影する方法が提供され、該方法は、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を組織の一部に接触させることを有する。別の実施形態により、組織の一部を造影するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。いくつかの実施形態において、造影される組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及び/又はメラノーマ腫瘍からの組織とすることができる。
【実施例】
【0176】
本明細書に記載される実施形態をさらに説明するため以下の実施例を提供するが、それらは本発明の技術範囲を限定するものではない。
【0177】
(材料)
分子量の異なるポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(多角度光散乱(MALS)に基づく平均分子量41400(PGA(97k))、17600(PGA(44k))、16000(PGA(32k))、及び10900(PGA(21k))ダルトン);N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC);ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt);ピリジン;4−ジメチルアミノピリジン(DMAP);N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF):ガドリニウム−酢酸;クロロホルム;カンプトテシン、及び重炭酸ナトリウムを、Sigma−Aldrich Chemical Companyから購入した。ポリ−L−グルタミン酸塩は、2N塩酸溶液を用いてポリ−L−グルタミン酸に変換した。トリフルオロ酢酸(TFA)はBioscienceから購入した。L−グルタミン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Glu(OtBu)−OtBu・HCl)、N−α−CBZ−L−グルタミン酸α−ベンジルエステル(Z−Glu−OBzl)は、Novabiochem(ラホーヤ、カリフォルニア州)から購入した。パクリタキセル及びドキソルビシンは、PolyMed(ヒューストン、テキサス州)から購入した。化学薬品p−NH2−Bn−DPTA−ペンタ−(t−Buエステル)は、Macrocyclics(ダラス、テキサス州)から購入した。1H NMRはJoel(400MHz)より入手したものであり、粒子径はZetalPals(Brookhaven Instruments Corporation)によって測定した。マイクロ波による化学処理はBiotageにおいて行った。ポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)と多角度光散乱(MALS)検出器(Wyatt Corporation)とを組み合わせて測定した。
【0178】
ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を、ポリグルタミン酸ナトリウム塩から、米国特許公開番号2007−0128118(2006年12月1日出願、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載された手順に従って調製した。米国特許出願第11/566141号は、特に本明細書に記載されるポリマー(例えばポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)、ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸、及びポリ−(γ−L−アルパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸)の合成を説明する目的のため、その内容すべてが本明細書に組み込まれる。ポリマーの平均分子量は、下記のシステム及び条件(以下、MALS検出器を用いたHeleosシステムと呼ぶ)を使用して測定した。
(SEC−MALS分析条件)
HPLSシステム:Agilent1200
カラム:Shodex SB 806M HQ(プルランに対する排除限界は20000000である。粒子径:13ミクロン、サイズ(mm)ID×長さ;8.0×300)
移動相:1×DPBS又はDPBS中1%LiBr(pH7.0)
流速:1ml/分
MALS検出器:WyattからのDAWN HELEOS
DRI検出器:WyattからのOptilab rEX
オンライン粘度計:WyattからのViscoStar
ソフトウェア:WyattからのASTRA5.1.9
サンプル濃度:1〜2mg/ml
注入量:100μl
ポリマーのdn/dc値:0.185を測定に使用した。
実際のサンプルを流す前にBSAを対照として使用した。
【0179】
fKRGD−保護の合成は、2−クロロトリチルクロリド樹脂、HBTU及びHOBtカップリング剤をジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)とともに用いる標準的なFmoc−固相法により行った。Fmoc基の検出は、DMF中20%ピペリジンにおいて行った。樹脂からのfKRGD−保護の分裂は、酢酸:トリフルオロエタノール:ジクロロメタン(1:1:3)中で行った。fKRGD−保護の環化は、DMF中NaHCO3及びDPPAを用いて行った。環状(fKRGD)の脱保護は、95%TFA中で行った。環状(fKRGD)−保護及び環状(fKRGD)の精製はHPLCシステムにおいて行い、生成物の純度はLC−MSにより確認した。
【0180】
実施例1
図5に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTXポリマー複合体を調製した。
【0181】
ポリ−L−グルタメート−パクリタキセル複合体(PGA−PTX)(1)の合成を、先の文献に報告されているとおり行った。Liら“Complete Regression of Well−established tumors using a novel water−soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate”Cancer Research 1998,55,2404−2409参照(それらの内容は参照によりその全体が本明細書に援用されたものとする)。
【0182】
実施例2
図6に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTX−DOXポリマー複合体を調製した。
【0183】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル複合体(50mg)(1)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(7mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(40mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0184】
実施例3
図7に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTX−CPTポリマー複合体を調製した。
【0185】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル複合体(50mg)(1)をDMF(5mL)に溶解した。次いでカンプトテシン(8mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(35mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。カンプトテシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0186】
実施例4
図8に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTX−CPT−DOXポリマー複合体を調製した。
【0187】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル−カンプトテシン複合体(30mg)(3)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(5mg)、EDC(16mg)及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(29mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0188】
実施例5
図9に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTXポリマー複合体を調製した。
【0189】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(5)の合成を、米国特許公開番号第2007-0128118(2006年12月1日出願、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載された手順に従って調製した。
【0190】
実施例6
図10に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTX−DOXポリマー複合体を調製した。
【0191】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(50mg)(5)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(7mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(45mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0192】
実施例7
図11に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTX−CPTポリマー複合体を調製した。
【0193】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(50mg)(5)をDMF(5mL)に溶解した。次いでカンプトテシン(8mg)、EDC(16mg)及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(42mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。カンプトテシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0194】
実施例8
図12に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTX−CAMP−DOXポリマー複合体を調製した。
【0195】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセルル−カンプトテシン複合体(30mg)(7)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(5mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(25mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0196】
実施例9
(細胞培養及び調製)
B16F0細胞をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド州)から購入し、10%胎児ウシ血清及び100単位/mLペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において成長させた。細胞は37℃で5%CO2環境において成長させた。培養培地を除去し、処分した。細胞をダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS)で濯ぎ、トリプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(0.5ml)を添加し、そして細胞を倒立顕微鏡下で観察してその分散を確認した。完全成長培地(6.0〜8.0ml)を添加し、そして細胞をゆっくりピペットに吸い込んだ。細胞懸濁液の適当なアリコートを新たな培養プレートに移した。さらなる実験の前に細胞を37℃で5%CO2において24時間成長させた。
【0197】
実施例10
(インビトロ細胞毒性MTT試験)
抗癌剤を含む本明細書に記載されたポリマー複合体のB16F0メラノーマ細胞増殖に対する作用を、いくつかの異なる該薬物の濃度で評価する。細胞毒性MTTアッセイを、Monks他,JNCI 1991,83,757−766(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に報告されるとおり行う。ポリマー複合体は実施例1〜8に記載されるように調製される。
【0198】
実施例11
(結合試験)
結合アッセイを、Line他,Journal of Nuclear Medicine,46(2005),1552−1560、及びMitra他,Journal of Controlled Release,114(2006)175−183(ともに参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されるとおり行う。ここで記載されるポリマー複合体は実施例1〜8に記載されるように調製される。
【0199】
実施例12
(動物及び腫瘍のモデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30g、オス)をCharles River Lab(ウィリングトン、マサチューセッツ州)から購入する。B16細胞株をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド州)から購入する。10%胎児ウシ血清、2μMグルタミン、1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンで補足したRMPI1640において、B16細胞を培養する。細胞培養物から採集したB16細胞を数えて5×106/mLの濃度に再懸濁する。TBシリンジを用いて、0.2mL(合計1×106細胞)を各マウスに皮下注射によって投与する。右の臀部に動物1匹あたり1腫瘍を接種する。接種に先立って腫瘍接種部位の毛をそり、腫瘍増殖の測定を容易にする。
【0200】
実施例13
(腫瘍蓄積に対する磁気共鳴映像法)
マウスの映像を、造影前及び造影後、ニー・コイルを用いたGE3TMRスキャナにおいて取得する。イメージングパラメータは以下のとおりである。TE:minful、TR=250ms、FOV:8及び24スライス/スラブ、並びに1.0mm冠状スライス厚。磁気共鳴造影剤(例えばGd(III))を含む化合物とのポリマー複合体、及びオムニスキャン−Gd(III)−(DTPA−BMA(0.1mmolのGd(III)/kg)(対照)を、麻酔したマウスに尾の静脈を介して注入する。ポリマー複合体及びオムニスキャン(商標)の注入用量は0.1mmolGd(III)/kgである。そして映像を、注入の前及び造影剤の注入後6分〜4時間において取得する。
【0201】
当業者に明らかなとおり、多数の種々の変更が、本発明の精神を逸脱することなく可能である。従って、当然のことながら、本発明の形態は、単に例示であって本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。
【技術分野】
【0001】
本出願は米国仮出願第60/916,865号、名称:複数種の薬物を有するポリグルタミン酸塩複合体及びポリグルタミン酸塩−アミノ酸複合体、2007年5月9日出願その内容すべては参照により本明細書に組み込まれる)の優先権を主張する。
【0002】
ここに主として開示されるものは、複数種の薬物が結合された生体適合性ポリマーである。ここに記載されるポリマー複合体は、種々の薬物、生体分子及び造影剤の送達の用途に有用である。さらに、対象の治療、診断及び/又は造影のためにポリマー複合体を使用する方法が開示される。
【背景技術】
【0003】
種々の系が、薬物、生体分子、及び造影剤の送達に使用されている。例えば、そのような系には、カプセル、リポソーム、ミクロ粒子、ナノ粒子、及びポリマーがある。
【0004】
種々のポリエステル系の生物分解性系が研究されその特徴を調べられている。ポリ乳酸(PLA)、ポリグリコール酸、及びそれらの共重合体、ポリ乳酸−グリコール酸(PLGA)は、薬物送達の用途に対する設計及び性能についてよく特徴が調べられている生体材料のいくつかである。Uhrich,K.E.;Cannizzaro,S.M.;Langer,R.S.及びShakeshelf,K.M.“Polymeric Systems for Controlled Drug Release,”Chem.Rev.1999,99,3181−3198及びPanyam J.Labhasetwar V.“Biodegradable nanoparticles for drug and gene delivery to cells and tissues,”Adv.Drug.Deliv.Rev.2003,55,329−47参照。また、メタクリル酸2−ヒドロキシプロピル(HPMA)も薬物送達用ポリマーの調製に広く使用されている。ポリオルトエステルをベースとする生物分解性系も研究されている。Heller,J.;Barr,J.:Ng,S.Y.;Abdellauoi,K.S.及びGurny,R.“Poly(ortho esters):synthesis,characterization,properties and uses.”Adv.Drug Del.Rev.2002,54,1015−1039参照。ポリ無水物系も研究されている。そのようなポリ無水物は、典型的に生体適合性であり、また代謝産物として生体から排除される相対的に無毒の化合物にインビボで分解され得る。Kumar,N.;Langer,R.S.及びDomb,A.J.“Polyanhydrides:an overview,”Adv.Drug Del.Rev.2002,54,889−91参照。
【0005】
アミノ酸系ポリマーも可能性のある新規な生体材料源として考えられている。良好な生体適合性を有するポリアミノ酸が、低分子量の化合物を送達するため研究されている。比較的少ない数のポリグルタミン酸及び共重合体が、薬物送達の候補材料として特定されている。Bourke,S.L.及びKohn,J.“Polymers derived from the amino acid L−tyrosine:polycarbonates,polyarylates and copolymers with poly(ethylene glycol).”Adv.Drug Del.Rev.2003,55,447−466参照。
【0006】
投与された疎水性の抗癌剤並びに治療蛋白質及びポリペプチドは、しばしばバイオアベイラビリティが低いという問題を生じる。そのような低いバイオアベイラビリティの原因は、疎水性薬物と水溶液との二相性溶液が不適合であるということ及び/又はそれらの分子が酵素的分解によって血液循環から速やかに除去されるということである。投与される蛋白質及びその他の小分子薬剤の効力を高める手法の一つは、投与される薬剤にポリマー例えばポリエチレングリコール(PEG)を結合させることを伴うものである。そのようなポリマーはインビボで酵素的分解に対して保護をもたらすことができる。そのような「PEG誘導体化」はしばしば循環時間を向上させ、従って投与される薬剤のバイオアベイラビリティを向上させる。
【0007】
しかしPEGはある点において欠点を有している。例えば、PEGは線状ポリマーであるため、枝分れポリマーに比べてPEGによりもたらされる立体保護は限られている。PEGの別の欠点は、それが一般的に2つの末端において誘導体化を受けやすいということである。このことは、PEGに結合し得る他の機能的分子(例えば特定の組織への蛋白質又は薬物の送達に有用なもの)の数を制限する。
【0008】
ポリグルタミン酸(PGA)は、疎水性抗癌剤を可溶化するため選択できる別のポリマーである。PGAに結合された多くの抗癌剤が報告されている。Chun Li.“Poly(L−glutamic acid)−anticancer drug conjugates.”Adv.Drug Del.Rev.,2002,54,695−713参照。しかし、現在FDAによって承認されているものはない。
【0009】
パクリタキセル(太平洋イチイの樹皮から抽出された)は、卵巣癌及び乳癌の治療に対してFDAが承認した薬物である。Wani他,“Plant antitumor agents.VI.The isolation and structure of taxol,a novel antileukemic and antitumor agent from Taxus brevifolia,”J.Am.Chem.Soc.1971,93,2325−7。しかし、他の抗癌剤と同様、パクリタキセルは、その疎水性及び水溶液不溶性のため、バイオアベイラビリティが低いという問題がある。パクリタキセルを可溶化する方法の一つは、それをクレモホールELと無水エタノールとの混合物(1:1、v/v)中に製剤化するということである。Sparreboom他,“Cremophor EL−mediated Alteration of Paclitaxel Distribution in Human Blood:Clinical Pharmacokinetic Implications,”Cancer Research,1999,59,1454−1457。この製剤はTaxol(登録商標)(Bristol−Myers Squibb)として現在商品化されている。パクリタキセルを可溶化する別の方法は、高剪断のホモジナイズを使用した乳化によるものである。Constantinides他,“Formulation Development and Antitumor Activity of a Filter−Sterilizable Emulsion of Paclitaxel,”Pharmaceutical Research 2000,17,175−182。最近、ポリマー−パクリタキセル複合体が、いくつかの臨床試験に進んでいる。Ruth Duncan“The Dawning era of polymer therapeutics,”Nature Reviews Drug Discovery 2003,2,374−360。さらに最近、パクリタキセルは、ヒトアルブミン蛋白質を用いてナノ粒子に製剤化され、臨床研究に使用されている。Damascelli他,“Intraarterial chemotherapy with polyoxyethylated castor oil free paclitaxel,incorporated in albumin nanoparticles(ABI−007):Phase II study of patients with squamous cell carcinoma of the head and neck and anal canal:preliminary evidence of clinical activity.”Cancer,2001,92,2592−602、及びIbrahim他,“Phase I and pharmacokinetic study of ABI−007,a Cremophor−free,protein−stabilized,nanoparticle formulation of paclitaxel,”Clin.Cancer Res.2002,8,1038−44。この製剤は現在Abraxane(登録商標)(American Pharmaceutical Partners,Inc.)として商品化されている。
【0010】
磁気共鳴映像法(MRI)は病気の診断及び病期特定において重要な手段である。というのもそれが非侵襲的かつ非放射線的であるためである。Bulte他,“Magnetic resonance microscopy and histology of the CNS,”Trends in Biotechnology,2002,20,S24−S28参照。組織の画像を得ることができる一方、造影剤を用いるMRIは顕著にその解像度を向上させている。しかし、MRI造影剤に適する常磁性金属イオンはしばしば毒性である。毒性を低減する方法の1つは、それらの金属イオンを多座分子(例えばジエチレントリアミン五酢酸分子(DTPA))でキレート化することである。Gd−DTPAはFDAによって1988年臨床用に承認された。それは、現在Magnevist(登録商標)として商品化されている。その他にもGd−キレートがFDAによって承認され商品化されており、またその他多くのものが開発中である。Caravan他,“Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications,”Chem.Rev.1999,99,2293−2352参照。
【0011】
しかし、Gd−DTPAは腫瘍組織を標的化するには理想的ではない。というのもそれが特異性を欠いているからである。Gd−DTPAをIV注射により投与した場合、それは自発的かつ速やかに組織の血管外空間に拡散する。従って通常、妥当なコントラストの像を得るため多量の造影剤が必要とされる。さらに、それは腎臓ろ過により速やかに排除される。そのような拡散とろ過を防ぐため、高分子MRI造影剤が開発されている。Caravan他,“Gadolinium(III)Chelates as MRI Contrast Agents:Structure,Dynamics,and Applications,”Chem.Rev.1999,99,2293−2352参照。これらの高分子MRI造影剤には、蛋白質−MRIキレート、多糖−MRIキレート、及びポリマー−MRIキレートがある。以下参照。Lauffer他,“Preparation and Water Pelaxation Properties of Proteins Labeled with Paramagnetic Metal Chelates,”Magn.Reson.Imaging 1985,3,11−16;Sirlin他,“Gadolinium−DTPA−Dextran:A Macromolecular MR Blood Pool Contrast Agent,”Acad.Radiol.2004,11,1361−1369;Lu他,“Poly(L−glutamic acid)Gd(III)−DOTA Conjugate with a Degradable Spacer for Magnetic Resonance Imaging,”Bioconjugate Chem.2003,14,715−719;並びにWen他,“Synthesis and Characterization of Poly(L−glutamic acid)Gadolinium Chelate:A New Biodegradable MRI Contrast Agent,”Bioconjugate Chem.2004,15,1408−1415。
【0012】
最近、組織特異的MRI造影剤が開発されている。Weinmann他,“Tissue−specific MR contrast agents,”Eur.J.Radiol.,2003,46,33−44参照。しかし、腫瘍特異的MRI造影剤は、臨床用途において報告されていない。高い浸透性及び局所留保性効果(EPR)により腫瘍を標的化するためのナノサイズの粒子が報告されている。Brannon−Peppas他,“Nanoparticle and targeted systems for cancer therapy.”ADDR,2004,56,1649−1659参照。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
相対的に疎水性の造影剤及び薬物(例えばある特定の疎水性抗癌剤、治療蛋白質及びポリペプチド)はしばしば低いバイオアベイラビリティという欠点を有する。この問題は少なくとも部分的にこれらの造影剤及び薬物が水系において溶解度が低いことに起因するものと考えられる。また、酵素により分解可能なある特定の薬物も低いバイオアベイラビリティという欠点を有する。というのも、それらは循環系において相対的に速く分解され、体内から速やかに排除されるからである。
【0014】
本発明者らは、多くの作用因子(例えば造影剤、標的化剤、安定剤及び/又は薬物)に結合することができる一連の新規なポリグルタミン酸塩複合体及び/又はポリグルタミン酸塩−アミノ酸複合体を見出した。ある特定の実施形態において、このポリマー及び得られる複合体は、ある特定の組織(例えば腫瘍組織)及び/又はある特定の受容体に優先的に蓄積するとともに、体の特定の部分(例えば腫瘍)に薬物(例えば抗癌剤)及び/又は造影剤を送達するのに有用である。一実施形態において、ポリマー複合体は、第1の薬物を含む基及び第2の薬物を含む基を含有し、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。ある実施形態において、このポリマー及び/又は得られるポリマー複合体は、ナノ粒子を形成する。該ナノ粒子は、水系において分子レベルで造影剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は薬物を分散して効果的に可溶化し、それにより機能性及び/又はバイオアベイラビリティを高める。
【課題を解決するための手段】
【0015】
ここに示す実施形態は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位、及び式(VI)の繰り返し単位を含有することができるポリマー複合体に関する。式中、各A1、各A2、A3、A4、A5及びA6は独立して酸素又はNR7とすることができ、ここでR7は水素又はC1−4アルキルとすることができ、各R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択されることができ、m、n及びoはそれぞれ独立して1又は2とすることができ、p、q、r、s、t及びuはそれぞれ独立して0又は≧1とすることができ、ここでp、q、r、s、t及びuの合計は2以上とすることができ、ただし、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第1の薬物を含む基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第2の薬物を含む基であり、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。
【0016】
ここに示す別の実施形態は、式(VII)の繰り返し単位及び/又は式(VIII)の繰り返し単位の少なくとも1つを有するポリマー反応物を溶媒に溶解又は部分的に溶解して溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を調製すること、式中、zは独立して1又は2とすることができ、A7及び各A8は酸素とすることができ、かつR10及び各R11は独立して水素、アンモニウム、及びアルカリ金属からなる群から選択されることができる;該溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第2の反応物及び第3の反応物と反応させることを有する、ここで、第2の反応物が第1の薬物を含有し、第3の反応物は第2の薬物を含有する、を有する、ポリマー複合体を製造する方法、に関する。
【0017】
ここに示す別の実施形態は、ここに示すポリマー複合体と、製薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つとをさらに含む、組成物に関する。
【0018】
さらに、ここに示す別の実施形態は、病気又は症状の治療又は寛容が必要な哺乳動物にここに記載される有効量のポリマー複合体を投与することを有することができる、病気又は症状を治療又は寛容する方法に関する。
【0019】
ここに示すある実施形態は、ここに記載される有効量のポリマー複合体を哺乳動物に投与することを有することができる、病気又は症状を診断する方法に関する。
【0020】
ここに示す別の実施形態は、ここに記載される有効量のポリマー複合体と組織の一部を接触させることを含むことができる、組織の一部を造影する方法に関する。
【0021】
これらの及び他の実施形態を以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】一種の薬物を有するポリマー複合体を模式的に示す図である。
【0023】
【図2】複数の薬物を有するポリマー複合体を模式的に示す図である。
【0024】
【図3】複数の薬物を有するポリマー複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0025】
【図4】他の複数の薬物を有するポリマー複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0026】
【図5】パクリタキセルを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0027】
【図6】パクリタキセル及びドキソルビシンを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0028】
【図7】パクリタキセル及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0029】
【図8】パクリタキセル、ドキソルビシン、及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0030】
【図9】パクリタキセルを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0031】
【図10】パクリタキセル及びドキソルビシンを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0032】
【図11】パクリタキセル及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【0033】
【図12】パクリタキセル、ドキソルビシン及びカンプトテシンを有するポリグルタミン酸アミノ酸複合体の調製のための反応スキームを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
特に断らない限り、本明細書で使用するすべての技術用語及び科学用語は、当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。本明細書で引用するすべての特許、出願、出願公開公報、及び他の刊行物は、特に断らない限り、参照によりそれらの内容すべてが本明細書に組み込まれる。本明細書において一つの用語に対して複数の定義が存在する場合、特に断らない限り、この章における定義を優先する。
【0035】
用語「エステル」は、その通常の意味を有するものとして本明細書で使用されており、従って、式−(R)n−COOR’(式中、R及びR’は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基(環炭素を介して結合)、及び複素脂環式基(環炭素を介して結合)から選択され、かつnは0又は1である)の化学部位を含む。
【0036】
用語「アミド」は、その通常の意味を有するものとして本明細書で使用されており、従って、式−(R)n−C(O)NHR’又は−(R)n−NHC(O)R’(式中、R及びR’は独立してアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、ヘテロアリール基(環炭素を介して結合)、及びヘテロ脂環式基(環炭素を介して結合)から選択され、かつnは0又は1である)の化学部位を含む。アミドは、本明細書に示す薬物分子に結合されたアミノ酸又はペプチド分子中に含まれてもよく、従ってプロドラッグを形成してもよい。
【0037】
本明細書に開示する化合物上の任意のアミン、ヒドロキシ、又はカルボキシル側鎖は、エステル化又はアミド化することができる。この目的を達成するため使用する手法及び特定の基は、当業者の知るところであり、参照文献、例えばGreene及びWuts,Protective Groups in Organic Synthesis,第3版,John Wiley & Sons,New York,NY,1999(その内容すべてが本明細書に組み込まれる)において容易に見出すことができる。
【0038】
本明細書で使用するとき、「アルキル」は、完全に飽和の(二重結合又は三重結合がない)炭化水素基を含む線状又は枝分れの炭化水素鎖を指す。アルキル基は1〜20の炭素原子を有してもよい(ここで「1〜20」などの数の範囲を示す場合は必ず、所定の範囲内にある各整数を指している。例えば、「1〜20の炭素原子」は、アルキル基が、1個の炭素原子、2個の炭素原子、3個の炭素原子、・・・そして最高20個までの炭素原子からなってもよいことを意味する。なお、この定義は、数の範囲を指定しない場合の用語「アルキル」に対してもあてはまる)。アルキル基は1〜10の炭素原子を有する中位のサイズのアルキルであってもよい。またアルキル基は1〜5の炭素原子を有する低級アルキルとすることもできる。化合物のアルキル基は「C1〜C4アルキル」等のように呼ぶことができる。単なる例示であるが、「C1〜C4アルキル」はアルキル鎖中に1〜4の炭素原子が存在することを示しており、すなわちアルキル鎖は、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、イソブチル、sec−ブチル、及びt−ブチルからなる群から選ばれる。典型的なアルキル基にはメチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、t−ブチル、ペンチル、ヘキシルなどがあるが、これらに限定されない。
【0039】
アルキル基は置換されていてもよく置換されていなくてもよい。置換されている場合、1つ又は複数の置換基は、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシル、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、アルキルチオ、アリールチオ、シアノ、ハロゲン、カルボニル、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えばモノハロアルキル、ジハロアルキル、及びトリハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えばモノハロアルコキシ、ジハロアルコキシ、及びトリハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、及びアミノ(一置換アミノ基及び二置換アミノ基を含む)、並びにそれらの保護された誘導体からそれぞれ独立して選択される一種以上の基である。ある置換基が「必要に応じて置換」と記載される場合、その置換基は上記置換基のいずれか1つによって置換されていてよい。
【0040】
本明細書で使用するとき、用語「アリール」は、完全に非局在化されたπ電子系を有する炭素環(すべて炭素)の単環式又は多環式芳香環系を指す。アリール基の例にはベンゼン、ナフタレン、及びアズレンがあるが、これらに限定されない。本発明のアリール基は、置換されていてもよく置換されていなくてもよい。置換されている場合、置換基が特に示されていない限り、水素原子は、アルキル、アルケニル、アルキニル、シクロアルキル、シクロアルケニル、シクロアルキニル、アリール、ヘテロアリール、ヘテロアリシクリル、アラルキル、ヘテロアラルキル、(ヘテロアリシクリル)アルキル、ヒドロキシ、保護されたヒドロキシ、アルコキシ、アリールオキシ、アシル、エステル、メルカプト、シアノ、ハロゲン、チオカルボニル、O−カルバミル、N−カルバミル、O−チオカルバミル、N−チオカルバミル、C−アミド、N−アミド、S−スルホンアミド、N−スルホンアミド、C−カルボキシ、保護されたC−カルボキシ、O−カルボキシ、イソシアナト、チオシアナト、イソチオシアナト、ニトロ、シリル、スルフェニル、スルフィニル、スルホニル、ハロアルキル(例えば、モノ−、ジ−、トリ−ハロアルキル)、ハロアルコキシ(例えば、モノ−、ジ−、トリ−ハロアルコキシ)、トリハロメタンスルホニル、トリハロメタンスルホンアミド、及びアミノ(一置換アミノ基及び二置換アミノ基を含む)、並びにそれらの保護された誘導体から独立して選択される一種以上の基である1つ又は複数の置換基によって置換されている。
【0041】
「常磁性金属キレート」は、配位子が常磁性金属イオンに結合している錯体である。その例には1,4,7,10−テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)−Gd(III)、DOTA−イットリウム−88、DOTA−インジウム−111、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)−Gd(III)、DTPA−イットリウム−88、DTPA−インジウム−111があるが、これらに限定されない。
【0042】
「多座配位子」は、2つ以上の結合点を介して、例えば配位共有結合により、金属イオンにそれ自身を結合させることができる配位子である。多座配位子の例には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、及びエタン二酸(ox)があるが、これらに限定されない。
【0043】
「保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体」は、適当な保護基で保護された酸素原子(例えばカルボキシル基の単結合酸素原子)を含む多座配位子である。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるがこれらに限定されない。
【0044】
「安定剤」は、バイオアベイラビリティを高め、かつ/又は加水分解酵素に対してより耐性にし免疫原性を低くすることによってインビボでの担体−薬物複合体の半減期を延ばす置換基である。典型的な安定剤はポリエチレングリコール(PEG)である。
【0045】
当然のことながら、1つ以上のキラル中心を有する本明細書に記載の任意の化合物において、絶対立体化学が特に示されていない場合、各中心は、独立してR配置若しくはS配置、又はその両方である。従って、本明細書に提供される化合物は、鏡像異性的に純粋であってもよいし、あるいは立体異性体の混合物であってもよい。また当然のことながら、1つ以上の二重結合を有する本明細書に記載の任意の化合物でE又はZとして定義し得る幾何異性体をもたらすものにおいて、各二重結合は独立してE若しくはZ又はその両方であってもよい。同様に、すべての互変異性型を含むことも意図するところである。
【0046】
一つの実施形態として、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有することができるポリマー複合体を提供する。
【化1】
(式中、各A1、A2、A3、A4、A5及びA6は独立して酸素又はNR7とすることができ、ここでR7は水素又はC1−4アルキルとすることができる;各R1、R2、R3、R4、R5及びR6は独立して水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択され;m、n、及びoはそれぞれ独立して1又は2とすることができ、p、q、r、s、t及びuはそれぞれ独立して0又は≧1とすることができ、ここでp、q、r、s、t及びuの合計は2以上であり、ただし、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第1の薬物を含む基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第2の薬物を含む基であり、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。)
【0047】
ポリマー複合体に存在する、前記式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)の繰り返し単位の相対割合は広い範囲で変えることができる。一実施形態では、p+qが2以上であり、かつr、s、t及びuが0である。一実施形態では、s+tが2以上であり、かつp、q、r及びuが0である。一実施形態では、p+q+rが3以上であり、かつs、t及びuが0である。一実施形態では、s+t+uが3以上であり、かつq、r及びuが0である。一実施形態では、p+sが2以上であり、かつq、r、t及びuが0である。一実施形態では、p+q+sが3以上であり、かつr、t及びuが0である。一実施形態では、p+s+tが3以上であり、かつq、r及びtが0である。一実施形態では、p+q+s+tが4以上であり、かつr及びuが0である。一実施形態では、p+q+r+s+tが5以上であり、かつuが0である。一実施形態では、p+q+s+t+uが5以上であり、かつrが0である。一実施形態では、p+q+r+s+t+uが6以上である。
【0048】
多くの異なる種類の薬物を第1の薬物に使用することができる。一実施形態において、第1の薬物は第1の疎水性薬物とすることができる。一実施形態において、第1の疎水性薬物は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル又はドセタキセルとすることができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第1の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0049】
多くの異なる種類の薬物を第2の薬物に使用することができる。一実施形態において、第2の薬物は第2の疎水性薬物とすることができる。一実施形態において、第2の疎水性薬物は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル又はドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第2の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0050】
図1は、ポリマー複合体に1種類の薬物が結合された実施形態を模式的に示している。ポリマー複合体は、例えば、パクリタキセル、ドセタキセル及びカンプトテシンといった薬剤を結合させることできる多く側鎖を含み、多くの種類のポリマー材料として表わすことができる。
【0051】
図2は、ポリマー複合体に最高で三種類の薬物が結合された実施形態を模式的に示している。多くの種類のポリマー材料がポリマー複合体として表わすことができる。例えば、ポリアミノ酸(例えばポリグルタミン酸)及びその関連塩を、ここに記載されるポリマー複合体の形成に用いることができる。さらに、ポリアミノアミノ酸(例えばポリグルタミングルタミン酸)及びその関連塩を、ここに記載されるポリマー複合体の形成に用いることができる。さらに、ポリアミノ酸とポリアミノアミノ酸の共重合体、及びその関連塩を、ここに記載されるポリマー複合体の形成に用いることができる。複数種の薬物を結合させることによって、病気又は疾患(例えば癌)の併用療法が可能になる。例えば、タキサン類(例えばパクリタキセル及びドセタキセル)、カンプトテカ類(例えばカンプトテシン)、及びアントラサイクリン類(例えばドキソルビシン)の任意の組み合わせをここに記載されるポリマーに結合させることができる。
【0052】
ポリマーに結合される第1の薬物の量は、広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第1の薬物の重量の割合)で、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第1の薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第1の薬物を含むことができる。
【0053】
ポリマーに結合される第2の薬物の量は、広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第2の薬物の重量の割合)で、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第2の薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第2の薬物を含むことができる。
【0054】
ポリマーに結合される第1の薬物と第2の薬物の総量は、広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める薬物の重量の割合)で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の第1の薬物及び第2の薬物の総量を含むことができる。
【0055】
一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して作用因子を含む基とすることができる。多くの種類の作用因子を用いることができる。例えば1つ又は複数の作用因子は、標的化剤、光造影剤、磁気共鳴造影剤、及び安定剤から選択することができる。
【0056】
作用因子は任意の種類の活性化合物を含んでいてよい。一実施形態において、作用因子は光造影剤を含んでいてよい。好ましい実施形態において、光造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素からなる群から選択される1種以上とすることができる。例えば、具体的な光造影剤には、Texas Red、Alexa Fluor(登録商標)色素、BODIPY(登録商標)色素、フルオレセイン、Oregon Green(登録商標)色素、及びRhodamine Green(商標)色素(これらは市販されているか又は当業者に知られた方法により容易に調製される)が含まれ得る。
【0057】
別の実施形態において、作用因子は標的化剤を含有することができる。一実施形態において、標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体からなる群から選択される1種以上とすることができる。他の好ましい実施形態において、標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用し得る。一実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)とすることができる。
【0058】
別の実施形態において、作用因子は磁気共鳴造影剤を含むことができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤は常磁性金属化合物を含むことができる。例えば、磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含んでいてよい。一実施形態において、Gd(III)化合物は以下からなる群から選択することができる。
【化2】
及び
【化3】
【0059】
別の実施形態において、作用因子は安定剤を含むことができる。好ましい実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールである。
【0060】
別の実施形態において、ポリマー複合体は多座配位子を含む。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは独立して多座配位子を含む基から選択することができる。一実施形態において、多座配位子は、常磁性金属と反応して磁気共鳴造影剤を形成できるものであってよい。多座配位子は、数個のカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を含んでいてよい。一実施形態において、多座配位子は以下から選択することができる。
【化4】
及び
【化5】
式中、各R8及びR9は独立して水素、アンモニウム及びアルカリ金属から選択することができる。
【0061】
別の実施形態において、ポリマー複合体は、多座配位子前駆体を含有することができる。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して多座配位子前駆体を含む基から選択することができる。そのような実施形態において、多座配位子の酸素原子は、適当な保護基により保護されることができる。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるが、これらに限定されない。保護基を有する多座配位子前駆体の一例を以下に示す。
【化6】
【0062】
ある実施形態において、ここに記載されるポリマー及び/又はポリマー複合体は、アルカリ金属を含む。一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5、及びR6のそれぞれは独立して、リチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)及びセシウム(Cs)のようなアルカリ金属を含むよう選択することができる。一実施形態において、アルカリ金属はナトリウムとすることができる。一実施形態において、ここに記載されるポリマー及び/又はポリマー複合体のR1、R2、R3、R4、R5及びR6のそれぞれは、水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、又はアンモニウム基を含有することができる。
【0063】
ポリマー中に存在する1つ又は複数の作用因子(例えば標的化剤、光造影剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は安定剤)の量は、広範囲に変わり得る。また、ポリマー中に存在する配位子又は配位子前駆体の量も広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比(結合された薬物の重量とともに、1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の重量がポリマー複合体中に占める割合)で、約0.1%〜約50%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約40%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約30%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約20%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約1%〜約10%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約5%〜約40%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約10%〜約30%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約20%〜約40%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体の質量比で、約30%〜約50%(重量/重要)の範囲の量の1つ又は複数の作用因子、配位子及び/又は配位子前駆体を含む。
【0064】
一実施形態において、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは、第3の薬物を含む基とすることができる。一実施形態において、第3の薬物は、第1の薬物及び第2の薬物と異なるものとすることができる。多くの異なる種類の薬物を第3の薬物に使用することができる。一実施形態において、第3の薬物は第3の疎水性薬物とすることができる。一実施形態において、第3の疎水性薬物は抗癌剤を含有することができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第3の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0065】
ポリマーに結合される第3の薬物の量も広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める第3の薬物の重量の割合)で、約0.5%〜約50%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する第3の薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の量の第3の薬物を含むことができる。
【0066】
ポリマーに結合される第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物の量も広範囲に変わり得る。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比(ポリマー複合体中に占める薬物の重量の割合)で、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。一実施形態においてポリマー複合体は、ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲の総量の第1の薬物、第2の薬物及び第3の薬物を含むことができる。
【0067】
一実施形態において、少なくとも1つのm、n又はoは1とすることができる。一実施形態においては、少なくとも1つのm、n又はoは2とすることができる。いくつかの実施形態においては、mは1とすることができる。他の一実施形態においては、mは2とすることができる。いくつかの実施形態において、nは1とすることができる。他の実施形態においては、nは2とすることができ。いくつかの実施形態において、oは1とすることができる。他の実施形態においては、oは2とすることができる。
【0068】
薬剤を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び安定剤を含む基の1つ以上は、多くの異なる方法でポリマーに複合化させることができる。いくつかの実施形態において、上述した化合物は、ポリマー(例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位)に直接結合させることができる。一実施形態において、薬剤を含む基礎、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び安定剤を含む基の1つ以上を、該作用因子又は薬物の酸素原子、硫黄原子、窒素原子、及び/又は炭素原子を介してポリマーに直接結合させることができる。
【0069】
他の実施形態において、薬剤を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び安定剤を含む基の1つ以上は、リンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第1の薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第2の薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、第3の薬物を含む基はリンカー基をさらに有することができる。一実施形態において、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び/又は安定剤を含む基は、リンカー基をさらに有することができる。リンカー基は、例えば作用因子(又は作用因子を有する化合物)をポリマーに結合させる基である。一実施形態において、上述した化合物の1つ以上を、リンカー基を介してポリマー(例えば式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位)に結合させることができる。リンカー基は比較的小さなものとすることができる。例えば、リンカー基は、アミン、アミド、エーテル、エステル、水酸基、カルボニル基又はチオールエーテル基を有するものとすることができる。あるいは、リンカー基は比較的大きなものとしてもよい。例えば、リンカー基は、アルキル基、エーテル基、アリール基、アリール(C1−6アルキル)基(例えばフェニル−(CH2)1−4−)、ヘテロアリール基、又はヘテロアリール(C1−6アルキル)基とすることができる。一実施形態において、リンカー基は−NH(CH2)1−4−NH−とすることができる。別の実施形態において、リンカー基は−(CH2)1−4−アリール−NH−とすることができる。リンカー基は、薬剤を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基、又は安定剤を含む基の1つ以上に、任意の適当な位置において結合させることができる。例えば、リンカー基は、上述した化合物の1つにおいて炭素の位置にある水素の代わりに結合させることができる。リンカー基は、当業者に知られた方法を用いて化合物に付加することができる。
【0070】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーは、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の2種以上の異なる繰り返し単位を含む共重合体である。他の種々の繰り返し単位が、ここに示すポリマー複合体に含まれてもよい。また、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位含むポリマーは、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)ではない他の繰り返し単位を含む共重合体であってもよい。ポリマー中の式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位数は、広範囲に変わり得るが、好ましくは、約50〜約5000の範囲が好ましく、さらに約100〜約2000の範囲が好ましい。
【0071】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(I)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(I)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(I)の繰り返し単位を含むことができる。
【0072】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(II)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(II)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマーは、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(II)の繰り返し単位を含むことができる。
【0073】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(III)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(III)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(III)の繰り返し単位を含むことができる。
【0074】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(IV)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(IV)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(IV)の繰り返し単位を含むことができる。
【0075】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(V)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(V)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(V)の繰り返し単位を含むことができる。
【0076】
ポリマー複合体における繰り返し単位総数に対する式(VI)の繰り返し単位の割合は、広範囲に変わり得る。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体中における繰り返し単位の全モル数に対し、式(VI)の繰り返し単位を最高約99モル%含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約99モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約50モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約30モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約20モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。別の実施形態において、ポリマー複合体は、ポリマー複合体における繰り返し単位の総モルに対して、約1モル%〜約10モル%の式(VI)の繰り返し単位を含むことができる。
【0077】
一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される2つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される3つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される4つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)の繰り返し単位、式(II)の繰り返し単位、式(III)の繰り返し単位、式(IV)の繰り返し単位、式(V)の繰り返し単位及び式(VI)の繰り返し単位から選択される5つ又はそれ以上の繰り返し単位を含むことができる。一実施形態において、ポリマー複合体は、式(I)、式(II)、式(III)、式(IV)、式(V)、式(VI)の繰り返し単位の6つの相違する繰り返し単位を含むことができる。
【0078】
ポリマー複合体中に存在する各繰り返し単位の量(例えばモル%)は、上述したように非常に大きく変わり得る。一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の任意の1つの繰り返し単位の量は、それと異なる式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位の量とは無関係に選択することができる。
【0079】
ポリマー複合体は1つ以上のキラル炭素原子を含み得る。キラル炭素(アステリスク*で示すことができる)は、R(rectus(右旋))配置又はS(sinister(左旋))配置をとることができ、従って、繰り返し単位は、ラセミ体、エナンチオマー、又はエナンチオマー過剰とすることができる。本明細書の別の個所で使用する記号「n」及び「*」(キラル炭素を指定)も、特に断らない限り、上記と同じ意味を有する。
【0080】
一実施形態において、作用因子の量、第1、第2及び/又は第3薬剤の量、ポリマー複合体における式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位の割合は、ポリマー複合体の溶解度がほぼ同じ量の作用因子及び/又は薬剤を含む対応のポリグルタミン酸複合体よりも高くなるよう選択される。式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマー複合体が対応のポリグルタミン酸複合体よりも高い溶解度を有するpH値の範囲は、狭くてもよいし、広くてもよい。溶解度は、約22℃で0.9重量%のNaCl水に5mg/mL以上のポリマー複合体を含むポリマー複合体溶液を調製し、その光学的透明度を調べることにより測定される。一実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約3のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約8のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体は少なくとも約9のpH単位からなるpH範囲にわたって可溶性である。別の実施形態において、ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、約2〜約5の範囲にある少なくとも1つのpH値を含み、例えば、pH=2、pH=3、pH=4、及び/又はpH=5で可溶性である。ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、対応のポリグルタミン酸複合体が可溶性であるpH範囲よりも広いことが好ましい。例えば一実施形態において、ポリマー複合体が可溶性であるpH範囲は、対応のポリグルタミン酸複合体が可溶性であるpH範囲よりも、約1pH単位以上広く、好ましくは約2pH単位以上広い。
【0081】
溶解度を測定するため溶液に含まれるポリマー複合体の量も大きく変わり得る。一実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約5mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約10mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約25mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約100mg/mLのポリマー複合体を含む。別の実施形態において、溶解度を測定する場合、ポリマー複合体の試験溶液は少なくとも約150mg/mLのポリマー複合体を含む。当業者に明らかなとおり、対応のポリグルタミン酸複合体は、試験されるポリマー複合体とほぼ同じ濃度で試験される。
【0082】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーは、種々の方法で調製することができる。一実施形態において、ポリマー反応物は、溶媒に溶解され、又は溶媒に一部溶解され、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物を形成する。次いで溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第2の反応物及び第3の反応物と反応させられ、中間生成物を形成するか、又は一部の実施形態において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する。一実施形態において第2の反応物は第1薬剤を含むことができる。一実施形態において第3の反応物は第2薬剤を含むことができる。
【0083】
ポリマー反応物は、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意の適当な材料を含むことができる。一実施形態において、ポリマー反応物は以下の式(VII)及び式(VIII)から選択した繰り返し単位を含む。
【化7】
式中、各zは独立して1又は2とすることができ、各A7及びA8はそれぞれ酸素とすることができ、かつR10及びR11はそれぞれ独立して水素、アンモニウム、及びアルカリ金属(例えばリチウム(Li)、ナトリウム(Na)、カリウム(K)、ルビジウム(Rb)、及びセシウム(Cs))から選択されることができる。
【0084】
一実施形態において、式(VII)の繰り返し単位を含むポリマー反応物は、ポリグルタミン酸から開始して生成させることができる。一方、別の実施形態において、ポリマーは、まずポリグルタミン酸出発材料を塩の形に変換することにより調製することができる。ポリグルタミン酸の塩形は、ポリグルタミン酸を適当な塩基(例えば重炭酸ナトリウム)と反応させることにより得ることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は、限定されないが、約10000〜約500000ダルトンが好ましく、約25000〜約300000ダルトンがより好ましい。
【0085】
一実施形態において、式(VIII)の繰り返し単位を含むポリマー反応物は、ポリグルタミン酸及びアミノ酸(例えばアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)から開始して生成させることができる。一方、別の実施形態において、ポリマーは、まずポリグルタミン酸出発材料を塩の形に変換することにより調製することができる。ポリグルタミン酸の塩形は、ポリグルタミン酸を適当な塩基(例えば重炭酸ナトリウム)と反応させることにより得ることができる。アミノ酸部位は、ポリグルタミン酸の側鎖カルボン酸基に結合させることができる。ポリグルタミン酸の重量平均分子量は、限定されないが、約10000〜約500000ダルトンが好ましく、約25000〜約300000ダルトンがより好ましい。そのような反応を用いてポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)又はポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を調製することができる。
【0086】
一実施形態において、アミノ酸は、ポリグルタミン酸に結合させる前に、保護基によって保護することができる。この反応に適する保護アミノ酸部位の一例は、以下に示すL−アスパラギン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩である。
【化8】
【0087】
ポリグルタミン酸とアミノ酸との反応は、任意の適当な溶媒の存在下で行うことができる。一実施形態において、溶媒は非プロトン性溶媒とすることができる。好ましい実施形態において、溶媒はN,N’−ジメチルホルムアミドである。一実施形態において、ポリグルタミン酸及びアミノ酸との間の反応物にカップリング剤、例えばEDC、DCC、CDI、DSC、HATU、HBTU、HCTU、PyBOP(登録商標)、PyBroP(登録商標)、TBTU、及びBOPを用いることができる。他の実施形態において、ポリグルタミン酸とアミノ酸は、触媒(例えばDMAP)を用いて反応させることができる。
【0088】
ポリマーは、当業者に知られた方法によって回収かつ/又は精製することができる。例えば溶媒は、適当な方法(例えば回転蒸発)によって除去することができる。さらに、反応混合物をろ過して酸性水溶液に加え、沈殿を生成させることができる。次いで得られた沈殿をろ過し、水で洗浄することができる。
【0089】
一実施形態において、式(VII)の繰り返し単位を含むポリマー反応物は、式(VIIII)の繰り返し単位をさらに含むこともできる。式(VII)の繰り返し単位及び式(VIII)の繰り返し単位を含むポリマーを形成する一つの方法は、ポリグルタミン酸から出発し、それを、ポリグルタミン酸に対して1.0当量未満の量のアミノ酸(例えばアスパラギン酸及び/又はグルタミン酸)と反応させることによるものである。例えば、一実施形態において、ポリグルタミン酸に対して0.7当量のアミノ酸をポリグルタミン酸と反応させることができ、その結果、得られるポリマーの繰り返し単位の約70%がアミノ酸を含む。上述したとおり、適当な保護基を用いてアミノ酸の酸素原子を保護することができる。一実施形態において、アミノ酸はL−アスパラギン酸又はL−グルタミン酸とすることができる。別の実施形態において、アミノ酸の酸素原子はt−ブチル基により保護することができる。アミノ酸の酸素原子を保護した場合、公知の方法(例えば適当な酸(例えばトリフルオロ酢酸)による方法)を用いて保護基を除去することができる。
【0090】
一実施形態において、ポリマー反応物は、第2の反応物及び第3の反応物とともに溶解又は部分的に溶解することでき、ここで第2の反応物は第1の薬物を含み、かつ第3の反応物は第2の薬物を含む。
【0091】
第2の反応物は多くの種類の薬剤を含むことができる。一実施形態において、第1薬剤は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第1の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0092】
第3の反応物は多くの種類の薬剤を含むことができる。一実施形態において、第1薬剤は抗癌剤を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ、及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセルとすることができる。第2の疎水性薬物がパクリタキセルを含む一実施形態において、パクリタキセルは、そのC2’炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。他の一実施形態において、パクリタキセルは、そのC7炭素に結合する酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合又は連結させることができる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。
【0093】
一実施形態において、第2の反応物はヒドロキシ及びアミンから選択された置換基を含むことができる。一実施形態において、第3の反応物はヒドロキシ及びアミンから選択された置換基を含むことができる。
【0094】
一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、溶解された又は部分的に溶解された反応物が第3の反応物の少なくとも一部と反応する前に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、溶解された又は部分的に溶解された反応物が第3の反応物の少なくとも一部と反応した後に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、溶解された又は部分的に溶解された反応物が第3の反応物の少なくとも一部と反応するとほぼ同時に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。
【0095】
図3は、種々のポリアミノポリマー複合体を調製するための反応スキームの限定されない一例を示している。例示される反応スキームは、複数の薬物をポリグルタミン酸に結合させるための反応工程を示す。図3に例示する反応スキームにおいて他の形態のポリグルタミン酸を使用してもよい。例えば、ポリグルタミン酸のアルカリ塩又はアンモニウム塩を使用することができる。一実施形態において、式(VII)の繰り返し単位を有するポリマー反応物を図3に例示される反応スキームに使用することができる。
【0096】
図3に示すとおり、溶解された又は部分的に溶解されたポリグルタミン酸(PGA)は、カップリング剤の存在下でパクリタキセルと反応させられ、ポリグルタミン酸−パクリタキセル複合体(PGA−パクリタキセル)を形成する。次いで、溶解された又は部分的に溶解されたPGA−パクリタキセルをカップリング剤の存在下で第2の薬物とさらに反応させてもよい。第2の薬物をドキソルビシンとすることができ、PGA−(パクリタキセル)−ドキソルビシン複合体を得ることができる。一方、第2の薬物をカンプトテシンとしてもよく、PGA−(パクリタキセル)−カンプトテシン複合体を得てもよい。図3に示される一実施形態において、PGA−(パクリタキセル)−カンプトテシンは、溶解又は部分的に溶解され、第3の薬物であるドキソルビシンと反応させられ、PGA−(パクリタキセル)−(カンプトテシン)−ドキソルビシン複合体を形成する。
【0097】
図3に示す実施形態では薬物結合の順序が記載されているが、順序は限定して解釈すべきものではない。ポリマーに結合される第1の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。またポリマーに結合される第2の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにポリマーに結合される第3の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにまた、第1、第2及び/又は第3の薬物の任意の1つを、第1、第2及び/又は第3の薬物の他の任意の1つとほぼ同時にポリマーに結合させてもよい。
【0098】
図4は、種々のポリアミノポリマー複合体を調製するための反応スキームの限定されない一例を示している。例示される反応スキームは、複数の薬物をポリ(γ−グルタミル−グルタミン)に結合させるための反応工程を示す。図4に例示する反応スキームにおいて他の形態のポリアミノアミノ酸を使用してもよい。例えば、ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)のアルカリ塩又はアンモニウム塩を使用することができる。一実施形態において、式(VIII)の繰り返し単位を有するポリマー反応物を図4に例示される反応スキームに使用することができる。
【0099】
図4に示すとおり、溶解された又は部分的に溶解されたポリ(γ−グルタミル−グルタミン)(PGGA)は、カップリング剤の存在下でパクリタキセルと反応させられ、ポリグルタミン酸−パクリタキセル複合体(PGGA−パクリタキセル)を形成する。次いで、溶解された又は部分的に溶解されたPGGA−パクリタキセルをカップリング剤の存在下で第2の薬物とさらに反応させてもよい。第2の薬物をドキソルビシンとすることができ、PGGA−(パクリタキセル)−ドキソルビシン複合体を得ることができる。一方、第2の薬物をカンプトテシンとしてもよく、PGGA−(パクリタキセル)−カンプトテシン複合体を得てもよい。図4に示される一実施形態において、PGGA−(パクリタキセル)−カンプトテシンは、溶解又は部分的に溶解され、第3の薬物であるドキソルビシンと反応させられ、PGGA−(パクリタキセル)−(カンプトテシン)−ドキソルビシン複合体を形成する。
【0100】
図4に示す実施形態では薬物結合の順序が記載されているが、順序は限定して解釈すべきものではない。ポリマーに結合される第1の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにポリマーに結合される第2の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。またポリマーに結合される第3の薬物は、ここに記載されるタキサン、カンプトテカ、又はアントラサイクリンの任意の1つとすることができる。さらにまた、第1、第2及び/又は第3の薬物の任意の1つを、第1、第2及び/又は第3の薬物の他の任意の1つとほぼ同時にポリマーに結合させてもよい。
【0101】
一実施形態において、ポリマー複合体を製造する方法は、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第4の反応物と反応させることを含むことができ、ここで、該第4の反応物は、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、第3の薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基及び安定剤を含む基から選択される少なくとも1つを有するものである。一実施形態において、該第4の反応物は置換基をさらに含んでもよい。該置換基はヒドロキシ及びアミンから選択することができる。
【0102】
一実施形態において、第4の反応物は作用因子を含む化合物を含むことができる。作用因子は任意の活性化合物とすることができる。例えば、作用因子を含む化合物は、薬物を含む化合物、標的化剤を含む化合物、光造影剤を含む化合物、磁気共鳴造影剤を含む化合物及び安定剤を含む化合物から選択することができる。
【0103】
一部の実施形態において、第4の反応物は抗癌剤のような第3薬物を含む化合物を含むことができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンから選択することができる。一実施形態において、タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルから選択されることができる。パクリタキセルは、いくつかの方法によりポリマーに結合させることができる。一実施形態において、パクリタキセルは、C2’炭素に結合する酸素原子において式(I)の繰り返し単位に結合させる。一実施形態において、カンプトテカはカンプトテシンとすることができる。一実施形態において、アントラサイクリンはドキソルビシンとすることができる。一実施形態において、第3薬物は第1薬物及び第2薬物と相違したものにすることができる。
【0104】
一実施形態において、第4の反応物は標的化剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、標的化剤は、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体から選択されることができる。一実施形態において、標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体から選択される受容体と相互作用することができる。一部の実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)とすることができる。
【0105】
一実施形態において、第4の反応物は光造影剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、光造影剤は、アクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素から選択され得る。
【0106】
一実施形態において、第4の反応物は安定剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールとすることができる。
【0107】
一実施形態において、第4の反応物は磁気共鳴造影剤を含む基を含むことができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤は常磁性金属化合物を含むことができる。作用因子を含む化合物はGd(III)化合物を含むことが好ましい。例えば、Gd(III)化合物には以下のものがある。
【化9】
及び
【化10】
【0108】
一実施形態において、第4の反応物は多座配位子を含むことができる。任意の適当な多座配位子を用いることができる。一実施形態において、多座配位子は、常磁性金属と反応して磁気共鳴造影剤を形成できるものとすることができる。例えば、多座配位子は、数個のカルボン酸基及び/又はカルボキシレート基を含むことができる。例えば、以下の構造の多座配位子をポリマーに結合させることができる。
【化11】
及び
【化12】
式中、各R8及びR9は独立して水素、アンモニウム、又はアルカリ金属とすることができる。
【0109】
別の実施形態において、第4の反応物は多座配位子前駆体を含むことができる。別の実施形態において、保護基を有する多座配位子前駆体をポリマーに結合させてもよい。そのような前駆体は、その酸素原子が1つ又は複数の適当な保護基により保護されている。適当な保護基には低級アルキル基、ベンジル基、及びシリル基があるが、これらに限定されない。保護基を有する多座配位子前駆体の一例を以下に示す。
【化13】
【0110】
前述したように、一部の実施形態において、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第3の反応物との反応の前に第2の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、第2の反応物の少なくとも一部を加えた後生成する中間化合物は、第3の反応物を加える前に分離することができる。別の実施形態では、第2の反応物を加えた後生成する中間化合物を分離することなく、第3の反応物を加えることができる。他の実施形態において、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第3の反応物との反応とほぼ同時に第2の反応物の少なくとも一部と反応させられる。一実施形態において、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物は、第3の反応物の少なくとも一部との反応の後に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させられる。
【0111】
一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第4の反応物の少なくとも一部と反応させる前に、第2の反応物の少なくとも一部及び/又は第3の反応物の少なくとも一部と反応させることができる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第2の反応物の少なくとも一部及び/又は第3の反応物の少なくとも一部と反応させる前に、第4の反応物の少なくとも一部と反応させる。一実施形態において、溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第2の反応物の少なくとも一部及び/又は第3の反応物の少なくとも一部と反応させるとほぼ同時に、第4の反応物の少なくとも一部と反応させる。
【0112】
一実施形態において、ポリマー複合体を調製する方法は、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物をカップリング剤の存在下で第2の反応物及び/又は第3の反応物と反応させることを含むことができる。第4の反応物との反応のためカップリング剤をさらに存在させてもよい。任意の適当なカップリング剤を用いることができる。任意の適当なカップリング剤を用いることができる。一実施形態において、カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBOP(登録商標))、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(PyBroP(登録商標))、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及びベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)から選択することができる。
【0113】
反応を起こさせることができる任意の適当な溶媒を用いることができる。一実施形態において、溶媒は極性非プロトン性溶媒とすることができる。例えば、溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)から選択することができる。
【0114】
別の実施形態において、反応は、溶解されたポリマー反応物又は部分的に溶解されたポリマー反応物を触媒の存在下で反応させることをさらに含んでもよい。反応を促進する任意の触媒を用いることができる。一実施形態において、触媒は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)を含むことができる。
【0115】
薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、多座配位子を含む基、多座配位子前駆体を含む基及び/又は安定剤を含む基をポリマー酸又はその塩形に結合させることは、種々の方法によって(例えば、作用因子、多座配位子、及び/又は酸素原子が保護された多座配位子前駆体を含む基を種々のポリマーに共有結合させることにより)行うことができる。ポリマーに上述した基を結合させる一つの方法は、熱(例えば、マイクロ波法を使用することによる熱)を使用することによるものである。一方、結合は室温で行ってもよい。通常当業者に知られた又は本明細書に記載された適当な溶媒、カップリング剤、触媒、及び/又は緩衝剤を用いてポリマー複合体を形成することができる。ポリグルタミン酸と同様に、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、ポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。
【0116】
ここに示すポリマーに結合させることができる適当な作用因子には、薬物、光剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤(例えば常磁性金属化合物)、安定剤、多座配位子、及び保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体があるが、これらに限定されない。
【0117】
一実施形態において、ポリマーは、例えば本明細書に記載されるような光造影剤と結合させることができる。一実施形態において、光造影剤はTexas Red−NH2(テキサスレッド−NH2)とすることができる。
【化14】
【0118】
特定の一実施形態において、少なくとも1つの式(I)、(II)、(II)、(IV)、(V)及び/又は(VI)(例えば、ポリグルタミン酸及び/又はその塩及びアミン酸から得られたポリマー)の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意のポリマー反応物は、DCC、テキサスレッド−NH2色素、ピリジン、及び4−ジメチルアミノピリジンと反応させることができる。この混合物はマイクロ波法を用いて加熱することができる。一実施形態において、反応は、約100℃〜約150℃の範囲の温度まで加熱されることができる。別の実施形態において、材料の加熱時間は5〜40分である。必要に応じて、反応混合物を室温まで冷却することができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、反応混合物をろ過して酸性水溶液に投入することができる。生成する沈殿物があれば、次いでそれをろ過し、水で洗浄することができる。必要に応じて、沈殿物を任意の適当な方法により精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移して溶解させることができ、そして得られた溶液を再度ろ過して重炭酸ナトリウム溶液に投入することができる。必要に応じて、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。
【0119】
一実施形態において、少なくとも1つの式(I)、(II)、(II)、(IV)、(V)及び/又は(VI)(例えば、ポリグルタミン酸及び/又はその塩及びアミン酸から得られたポリマー)の繰り返し単位を含むポリマーを形成することができる任意のポリマー反応物は、薬物(例えば抗癌剤)に結合させることができる。一実施形態において、抗癌剤はタキサン、カンプトテカ、及び/又はアントラサイクリンとすることができる。一実施形態において、抗癌剤は、例えばパクリタキセル又はドセタキセルのようなタキサンとすることができる。他の実施形態において、抗癌剤は、例えばカンプトテシンのようなカンプトテカとすることができる。また別の実施形態において、抗癌剤は、例えばドキソルビシンのようなアントラサイクリンとすることができる。一実施形態において、ポリマーに結合された抗癌剤はドキソルビシンとすることができる。他の実施形態において、ポリマーに結合された抗癌剤はパクリタキセルとすることができる。一実施形態において、パクリタキセルは、C2’−酸素原子においてポリマーに結合させることができる。別の実施形態において、パクリタキセルは、C7−酸素原子においてポリマーに結合させることができる。さらに別の実施形態において、ポリマーは、C2’結合パクリタキセル基とC7結合パクリタキセル基との両方を有すことができる。
【0120】
抗癌剤は、テキサス−レッドついて上述した方法を用いて、適当なポリマー反応物に結合させることができる。
【0121】
一実施形態において、パクリタキセルを、好ましくはカップリン剤(例えばEDC及び/又はDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下、溶媒(例えばDMFのような非プロトン性溶媒)中において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物と反応させることができる。さらなる試薬(例えばピリジン又はヒドロキシベンゾトリアゾール)を用いてもよい。一実施形態において、反応は0.5〜2日間行うことができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、反応混合物を酸性溶液に注入して沈殿を形成することができる。形成される沈殿があれば、次いでそれをろ過し、水で洗浄することができる。必要に応じて、沈殿を任意の適当な方法により精製することができる。例えば、沈殿物をアセトン中に移して溶解させることができ、そして得られた溶液を再度ろ過して重炭酸ナトリウム溶液に投入することができる。必要に応じて、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。得られるポリマー中のパクリタキセルの含量は、UV分光測定法により測定することができる。
【0122】
別の実施形態において、作用因子を含む化合物は、アミノ酸(例えばグルタミン酸及び/又はアスパラギン酸)と反応させることができ、そこにおいて作用因子を含む化合物は該アミノ酸に結合される(例えば共有結合される)。次いで、アミノ酸−作用因子化合物をポリグルタミン酸又はその塩と反応させてここに示すポリマー複合体を形成することができる。一実施形態において、パクリタキセルをグルタミン酸と反応させて、グルタミン酸の側鎖カルボン酸基にパクリタキセルが共有結合する化合物を形成することができる。次いでグルタミン酸−パクリタキセル化合物を、ポリグルタミン酸又はその塩と反応させて、ここに示すポリマー複合体を形成することができる。一実施形態において、パクリタキセルをアスパラギン酸と反応させて、アスパラギン酸の側鎖カルボン酸基にパクリタキセルが共有結合した化合物を形成することができる。次いでアスパラギン酸−パクリタキセル化合物を、ポリグルタミン酸又はその塩と反応させて、ポリマー複合体を形成することができる。必要に応じて、公知の分離法(例えばHPLC)を用い、C2’−酸素によりアミノ酸に結合したパクリタキセルを、C7−酸素によりアミノ酸に結合したパクリタキセルから分離することができる。
【0123】
ポリマー複合体の形成の後、ポリマーに共有結合していない遊離の作用因子があれば、その量を測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて、パクリタキセルに結合したポリマーの組成物中に遊離のパクリタキセルが実質的に残存しないことを確認してもよい。
【0124】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、多座配位子に結合させることができる。適当な多座配位子には、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、テトラアザシクロドデカン−1,4,7,10−四酢酸(DOTA)、(1,2−エタンジイルジニトリロ)四酢酸(EDTA)、エチレンジアミン、2,2’−ビピリジン(bipy)、1,10−フェナントロリン(phen)、1,2−ビス(ジフェニルホスフィノ)エタン(DPPE)、2,4−ペンタンジオン(acac)、及びエタン二酸(ox)があるが、これらに限定されない。通常当業者に知られた及び/又は本明細書に記載された適当な溶媒、カップリング剤、触媒、及び/又は緩衝剤を用いてポリマー複合体を形成することができる。別の実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体に結合させることができる。ポリグルタミン酸と同様に、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーの塩形又は酸形のいずれも、ポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。
【0125】
一実施形態において、多座配位子はDTPAとすることができる。別の実施形態において、多座配位子はDOTAとすることができる。一実施形態において、DTPAなどの多座配位子(保護された酸素原子を有する又は有しない)を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中で反応させることができる。保護基が存在する場合、適当な方法を用いて除去することができる。例えば、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体(例えば酸素原子がt−ブチル基により保護されたDTPA)を有するポリマー複合体を、トリフルオロ酢酸などの酸で処理することができる。保護基を除去した後、酸を回転蒸発により除去することができる。一実施形態において、DTPAを適当な塩基で処理してカルボン酸−OH基の水素原子を除くことができる。一部の実施形態において塩基は重炭酸ナトリウムである。
【0126】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、標的化剤に結合させることができる。例示的な標的化剤には、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体があるが、これらに限定されない。標的化剤として、特定の受容体と相互作用するものを選ぶことができる。例えば、標的化剤として、以下の受容体の1種以上と相互作用するものを選ぶことができる:αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体。一実施形態において、アルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチドは環状(fKRGD)である。
【0127】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物の塩形又は酸形のいずれも、標的化剤を有するポリマー複合体を形成するための出発材料として用いることができる。一実施形態において、標的化剤を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。ポリマー複合体の形成後、ポリマーに共有結合していない遊離の作用因子がいくらかあるかどうか測定してもよい。例えば、薄層クロマトグラフィ(TLC)を用いて遊離の標的化剤が実質的に存在しないことを確認してもよい。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる(例えば凍結乾燥)。
【0128】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、磁気共鳴造影剤に結合させることができる。一実施形態において、磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含むことができる。磁気共鳴造影剤を形成する方法の一つは、多座配位子を含むポリマー複合体と常磁性金属とを反応させることによるものである。適当な常磁性金属には、Gd(III)、インジウム−111、及びイットリウム−88があるが、これらに限定されない。例えば、DTPAを含むポリマー複合体を、緩衝溶液中、Gd(III)で数時間処理することができる。当業者に知られた適当な方法を用いてポリマー複合体を分離かつ/又は精製することができる。例えば、得られた反応溶液をセルロース膜を用いて水中で透析することができ、そしてポリマーを凍結乾燥して分離することができる。常磁性金属の量を、誘導結合プラズマ発光分光(ICP−OES)測定により定量してもよい。
【0129】
一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマーを形成することができる適当なポリマー反応物は、安定剤に結合させることができる。一部の実施形態において、安定剤はポリエチレングリコールである。一つの方法において安定剤を、好ましくはカップリング剤(例えばDCC)及び触媒(例えばDMAP)の存在下で、溶媒(例えばDMFなどの非プロトン性溶媒)中、ポリグルタミン酸及び/又はその塩並びにアミノ酸から得られたポリマーと反応させることができる。反応の経過を任意の適当な方法(例えばTLC)により測定することができる。得られたポリマー複合体を、当業者に知られた方法(例えば透析)を用いて精製することができる。
【0130】
ポリマー複合体を用いて、造影剤、標的化剤、磁気共鳴造影剤、及び/又は薬物を選択された組織に送達することができる。例えば、テキサスレッド色素を含むポリマー複合体を用いて、選択された組織に造影剤を送達することができる。一実施形態において、式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の少なくとも1つの繰り返し単位を含むポリマー複合体を用いて、癌などの病気又は症状を治療又は寛解することができる。一実施形態において、本明細書に記載されるポリマー複合体を用いて、病気又は症状(例えば癌)を診断することができる。さらに別の実施形態において、本明細書に記載されるポリマー複合体を用いて、組織の部分を造影することができる。一部の実施形態において、病気又は症状は、癌、例えば肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫であり得る。一実施形態において、病気又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択される腫瘍であり得る。一実施形態において、造影された組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からの組織であり得る。
【0131】
本明細書に記載されるポリマーは、水溶液中でナノ粒子にしてもよい。同様に、ポリマー及び薬物を含む複合体をナノ粒子にすることができる。そのようなナノ粒子を用いて、薬物を選択された組織に選択的に送達することができる。
【0132】
一実施形態により、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体と、製薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つとを含む組成物が提供される。一部の実施形態において、本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)のプロドラッグ、代謝産物、立体異性体、水和物、溶媒和物、多形体、及び製薬上許容される塩が提供される。
【0133】
「プロドラッグ」は、インビボで親薬物に変換される薬剤を指す。プロドラッグはしばしば有用である。なぜなら、親薬物よりもプロドラッグの方が投与しやすい場合があるからである。例えば、親薬物はそうではないのに対し、プロドラッグを経口投与により生物学的に利用可能にすることができる。またプロドラッグは、医薬組成物において親薬物よりも高い溶解度を有することができる。限定されないが、プロドラッグの例として、細胞膜での移動を容易にするためエステル(プロドラッグ)として投与される化合物がある。細胞膜において水溶性は移動に不利である一方、プロドラッグが一旦細胞の内部に入ると、代謝によって加水分解されカルボン酸(活性体)となり、そこでは水溶性が有利となる。プロドラッグのさらなる例は、酸基に結合された短いペプチド(ポリアミノ酸)であろう。酸基において該ペプチドは代謝され、活性部位を外に出す。適切なプロドラッグ誘導体の選択及び調製のための在来法は、例えばDesign of Prodrugs(H.Bundgaard,Elsevier編,1985)(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されている。
【0134】
用語「プロドラッグエステル」は、生理的条件下で加水分解されるいくつかのエステル形成基のいずれかを付加することにより形成される本開示の化合物の誘導体を指す。プロドラッグエステル基の例には、ピバロイルオキシメチル基、アセトキシメチル基、フタリジル基、インダニル基、及びメトキシメチル基、さらには当該技術において知られた他の基、例えば(5−R−2−オキソ−1,3−ジオキソレン−4−イル)メチル基がある。プロドラッグエステル基の他の例は、例えばT.Higuchi及びV.Stella,in “Pro−drugs as Novel Delivery Systems”,Vol.14,A.C.S.Symposium Series,American Chemical Society(1975)、及び“Bioreversible Carriers in Drug Design:Theory and Application”,E.B.Roche編,Pergamon Press:New York,14−21(1987)(カルボキシル基を含む化合物に対しプロドラッグとして有用なエステルの例を提供している)に存在する。なお上述した各文献は、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる。
【0135】
用語「製薬上許容される塩」は、化合物の塩であって、投与される生体に顕著な刺激を引き起こさず、また該化合物の生物活性及び特性を損なわないものを指す。一部の実施形態において、該塩は、化合物の酸付加塩である。医薬塩は、化合物を無機酸(例えば、ハロゲン化水素酸(例えば塩酸又は臭化水素酸)、硫酸、硝酸、リン酸など)と反応させることにより得ることができる。また医薬塩は、化合物を有機酸(脂肪族又は芳香族のカルボン酸又はスルホン酸(例えば酢酸、コハク酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、ニコチン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、又はナフタレンスルホン酸)と反応させることにより得ることもできる。また医薬塩は、化合物を塩基と反応させて塩(例えば、アンモニウム塩、アルカリ金属塩(例えばナトリウム塩又はカリウム塩)、アルカリ土類金属塩(例えばカルシウム塩又はマグネシウム塩)、有機塩基(例えばジシクロヘキシルアミン、N−メチル−D−グルカミン、トリス(ヒドロキシメチル)メチルアミン、C1〜C7アルキルアミン、シクロヘキシルアミン、トリエタノールアミン、エチレンジアミン)の塩、及びアミノ酸(例えばアルギニン、リシンなど)との塩)を形成することにより得ることもできる。
【0136】
医薬製剤の製造が、医薬賦形剤と塩の形態の有効成分との混合を伴う場合、塩基性でない医薬賦形剤(すなわち、酸性又は中性の賦形剤)を使用することが望ましい。
【0137】
種々の実施形態において、本明細書に開示される化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、単独で用いることができ、本明細書に開示される他の化合物と組み合わせて用いることができ、あるいは、本明細書に記載される治療分野において活性である1種以上の他の薬剤と組み合わせて用いることができる。
【0138】
別の態様において、本開示は、1つ以上の生理学的に許容される界面活性剤、担体、希釈剤、賦形剤、滑沢剤、懸濁剤、製膜物質、コーティング助剤、又はそれらの組み合わせと、本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)とを含む医薬組成物に関する。治療用途のため許容される担体又は希釈剤は、製薬技術においてよく知られており、例えばRemington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されている。保存剤、安定剤、色素、甘味料、香料、矯味矯臭剤などを医薬組成物に加えてもよい。例えば、安息香酸ナトリウム、アスコルビン酸、及びp−ヒドロキシ安息香酸のエステルを保存剤として添加することができる。さらに、抗酸化剤及び懸濁剤を使用してもよい。種々の実施形態において、アルコール類、エステル類、硫酸化脂肪族アルコールなどを界面活性剤として用いることができ、スクロース、グルコース、ラクトース、デンプン、結晶セルロース、マンニトール、軽質無水ケイ酸、アルミン酸マグネシウム、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、合成ケイ酸アルミニウム、炭酸カルシウム、酸性炭酸ナトリウム、リン酸水素カルシウム、カルボキシメチルセルロースカルシウムなどを賦形剤として用いることができ、ステアリン酸マグネシウム、タルク、硬化油などを滑沢剤として用いることができ、ココナッツ油、オリーブ油、ゴマ油、ピーナッツ油、大豆を懸濁剤又は滑剤として用いることができ、酢酸フタル酸セルロース(炭水化物(例えばセルロース又は糖)の誘導体として)あるいは酢酸メチル−メタクリル酸エステル共重合体(ポリビニルの誘導体として)を懸濁剤として用いることができ、そして可塑剤(例えばフタル酸エステル等)を懸濁剤として用いることができる。
【0139】
用語「医薬組成物」は、本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)と他の化学成分(例えば希釈剤又は担体)との混合物を指す。医薬組成物は、化合物の生体への投与を容易にする。化合物を投与する手法は当該技術において多数存在し、例えば、経口投与、注射投与、エアゾール投与、非経口投与、及び局所投与があるが、これらに限定されない。また医薬組成物は、化合物を無機酸又は有機酸(例えば塩酸、臭化水素酸、硫酸、硝酸、リン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸など)と反応させることにより得ることもできる。
【0140】
用語「担体」は、化合物の細胞又は組織への取り込みを容易にする化合物を指す。例えば、ジメチルスルホキシド(DMSO)は、生体の細胞又は組織への多くの有機化合物の取り込みを促進するため、一般的に使用される担体である。
【0141】
用語「希釈剤」は、水中に希釈される化合物であって、目的の化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)を溶解するとともに、該化合物の生物学的活性形を安定化するものを指す。当該技術において緩衝溶液に溶解された塩は希釈剤として利用される。一般的に使用される緩衝溶液の1つは、リン酸緩衝生理食塩水である。それはヒトの血液の塩条件を模倣しているからである。緩衝塩は低濃度で溶液のpHを制御できるので、緩衝希釈剤は化合物の生物学的活性をほとんど変化させない。用語「生理学的に許容される」は、化合物の生物学的活性及び特性を損なわない担体又は希釈剤を指している。
【0142】
本明細書に記載される医薬組成物は、それ自体で、あるいは、それを併用療法のように他の活性な成分と混合した医薬組成物として、又はそれを適当な担体又は希釈剤と混合した医薬組成物として、ヒトに投与することができる。本願の化合物を製剤化し投与するための手法は、“Remigton’s Pharmaceutical Sciences,”Mack Publishing Co.,Easton,PA,第18版,1990に見出すことができる。
【0143】
投与の適当な経路には、例えば、経口投与、直腸投与、経粘膜投与、局所投与、又は腸内投与、非経口送達(筋内注射、皮下注射、静脈注射、骨髄内注射、さらには、クモ膜下注射、直接的心室内注射、腹腔内注射、鼻腔内注入、又は眼内注射を含む)がある。また化合物(ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、持効性又は制御放出性の剤形(所定の速度での長期投与、適時投与、間欠投与のためのデポ注射剤、浸透ポンプ、丸剤、経皮(エレクトロトランスポートを含む)パッチ等を含む)で投与することもできる。
【0144】
本発明の医薬組成物は、それ自体公知の方法、例えば、通常の混合、溶解、顆粒化、糖衣錠調製、研和、乳化、カプセル化、封入、又は錠剤化の方法により製造することができる。
【0145】
かくして本発明に従って使用するための医薬組成物は、活性化合物を医薬的に使用可能な製剤に加工するのを容易にする賦形剤及び助剤を含む生理学的に許容される1つ以上の担体を用いて通常の方法により調製することができる。適切な製剤は、選択される投与経路による。周知の手法、担体、及び賦形剤の任意のものを当該技術(例えば上記Remington’s Pharmaceutical Sciences)において適切かつ妥当なように使用することができる。
【0146】
注射剤は、通常の形態(溶液又は懸濁液として)で、注射の前に溶液又は懸濁液にするのに適当な固体の形態で、あるいは乳剤として、調製することができる。適当な賦形剤には、例えば水、生理食塩水、デキストロース、マンニトール、ラクトース、レシチン、アルブミン、グルタミン酸ナトリウム、システイン塩酸塩などがある。さらに必要に応じて、注射可能な医薬組成物は、少量の非毒性補助物質、例えば湿潤剤、pH緩衝剤などを含んでもよい。生理学的に適合する緩衝剤には、ハンクス溶液、リンゲル液、あるいは生理的塩類緩衝液があるが、これらに限定されない。必要に応じて、吸収促進製剤(例えばリポソーム類)を利用してもよい。
【0147】
経粘膜投与のため、透過させるべき障壁に適する浸透剤を製剤に使用することができる。
【0148】
非経口投与(例えばボーラス注射又は連続点滴)のための医薬製剤には、水溶性形態の活性化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)の水溶液がある。さらに活性化合物の懸濁液を適当な油性注射懸濁剤として調製してもよい。適当な親油性溶媒又は媒体には、脂肪油(例えばゴマ油)あるいは他の有機油(例えば大豆油、グレープフルーツ油又は扁桃油)、あるいは合成脂肪酸エステル(例えばオレイン酸エチル又はトリグリセリド)、あるいはリポソーム類がある。水性注射懸濁剤は、懸濁剤の粘度を上げる物質(例えばカルボキシメチルセルロースナトリウム、ソルビトール、又はデキストラン)を含んでもよい。必要に応じて、懸濁剤は、適当な安定剤、又は高濃度の溶液の調製を可能にするよう化合物の溶解度を上げる適当な物質をさらに含むこともできる。注射用製剤は、単位剤形(例えばアンプル又は反復投与容器)で保存剤を添加して提供することができる。組成物は、油性媒体又は水性媒体中の懸濁剤、溶液、又は乳剤のような形態をとることができ、また、製剤化剤(例えば懸濁化剤、安定化剤、及び/又は分散剤)を含んでもよい。一方、使用前、有効成分は、適当な賦形剤(例えば滅菌発熱性物質除去蒸留水)を用いて構成するため、粉末の形態であってもよい。
【0149】
経口投与のため、当該技術においてよく知られた製薬上許容される担体と活性化合物とを合わせることにより、化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)を容易に製剤にすることができる。そのような担体は、本発明の化合物を、治療すべき患者が経口摂取できるよう、錠剤、丸剤、糖衣錠、カプセル剤、液剤、ゲル剤、シロップ剤、スラリー剤、懸濁剤などの製剤にすることを可能にする。経口用医薬製剤は、活性化合物を固体の賦形剤と合わせ、得られた混合物を必要に応じて粉砕し、そして必要に応じて適当な助剤を加えた後、顆粒の混合物を加工して錠剤又は糖衣錠の核を得ることにより、得ることができる。適当な賦形剤には、特に、充填剤、例えば糖類(ラクトース、スクロース、マンニトール、又はソルビトールを含む)、セルロース調製物、例えばトウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、ジャガイモデンプン、ゼラチン、トラガカントガム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン(PVP)がある。必要に応じて、崩壊剤、例えば架橋ポリビニルピロリドン、寒天、又はアルギン酸若しくはその塩(例えばアルギン酸ナトリウム)を加えてもよい。糖衣錠核は適当なコーティングが施されている。この目的のため、高濃度の糖溶液を用いることができ、該糖溶液は、必要に応じて、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のためあるいは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤又は糖衣錠のコーティングに染料又は顔料を添加することができる。この目的のため、高濃度の糖溶液を用いることができ、該糖溶液は、必要に応じて、アラビアガム、タルク、ポリビニルピロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/又は二酸化チタン、ラッカー溶液、及び適当な有機溶媒又は溶媒混合物を含むことができる。識別のためあるいは活性化合物用量の異なる組み合わせを特徴付けるため、錠剤又は糖衣錠のコーティングに染料又は顔料を添加することができる。
【0150】
経口で使用できる医薬製剤には、ゼラチンからなるプッシュフィットカプセル剤、さらにはゼラチン及び可塑剤(例えばグリセロール又はソルビトール)からなるソフトシールドカプセル剤がある。プッシュ−フィットカプセル剤は、有効成分(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)と合わせて充填剤(例えばラクトース)、結合剤(例えばデンプン)、及び/又は滑剤(例えばタルク又はステアリン酸マグネシウム)、及び必要に応じて安定剤を含むことができる。ソフトカプセル剤において、活性化合物は、適当な液体(例えば脂肪油、液体パラフィン、又は液体ポリエチレングリコール)に溶解又は懸濁することができる。さらに安定剤を加えてもよい。全ての経口投与用製剤がその投与に適した用量となっていることが望ましい。
【0151】
口腔投与のため、組成物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は通常の方法で製剤化された錠剤又はトローチ剤の形態をとることができる。
【0152】
吸入による投与のため、本発明に従って使用される化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、適当なプロペラント(例えばジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、又は他の適当なガス)の使用とともに加圧容器又はネブライザから供給できるエーロゾルスプレーの形態で送達することが有利である。加圧エーロゾルの場合、計測量を送るバルブを設けることにより、用量単位を決めることができる。吸入器又は噴霧器で使用するための例えばゼラチンからなるカプセル及びカートリッジを、化合物と適当な粉末基剤(例えばラクトース又はデンプン)との粉末混合物を含むよう調製することができる。
【0153】
眼内、鼻腔内、及び耳介内の送達を含む使用のための製薬技術においてよく知られた種々の医薬組成物がさらに本明細書に開示される。これらの使用のための適当な浸透剤は当該技術において一般的に知られている。眼内送達用の医薬組成物には、水溶性形態の(例えば点眼剤)又はゲランガムにおける活性化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)の眼科用水性液剤(Shedden他,Clin.Ther.,23(3):440−50(2001))又はヒドロゲル(Mayer他,Ophthalmologica,210(2):101−3(1996))、眼軟膏剤、懸濁性点眼剤(例えば液体の担体媒質中に懸濁されたミクロ粒子、薬物含有小ポリマー粒子(Joshi,A.,J.Ocul.Pharmacol.,10(1):29−45(1994))、脂質溶解性製剤(Alm他,Prog.Clin.Biol.Res.,312:447−58(1989))、ミクロスフェア(Mordenti,Toxicol.Sci.,52(1):101−6(1999))、並びに眼球インサートがある。上記参考文献はすべて参照によりその内容が本明細書に組み込まれる。そのような適当な医薬製剤は、多くの場合そして好ましくは、安定性及び快適性のため、滅菌され、等張性となり、かつ緩衝されるよう調製される。また鼻腔内送達用の医薬組成物には、滴剤及びスプレー剤があり、それらは多くの場合、正常な線毛作用の維持を確保するため多くの点で鼻の分泌物をシミュレートして調製される。Remington’s Pharmaceutical Sciences,第18版,Mack Publishing Co.,Easton,PA(1990)(参照によりその内容はすべて本明細書に組み込まれる)に開示されるように、また当業者によく知られているとおり、適当な製剤は、多くの場合そして好ましくは、等張性であり、pH5.5〜6.5を維持するようわずかに緩衝されており、また多くの場合そして好ましくは、抗菌性の保存剤及び適当な薬物安定剤を含むものである。耳介内送達用の医薬組成物には、懸濁剤及び耳の局所的塗布のための軟膏剤がある。そのような耳用製剤のための一般的な溶媒には、グリセリン及び水がある。
【0154】
また化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は直腸用組成物(例えば座剤又は保持用浣腸剤(例えばカカオ脂又は他のグリセリドなどの通常の座剤基剤を含む))に調製することができる。
【0155】
上記製剤に加えて、化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、デポ製剤として調製することもできる。そのような長時間作用型の製剤は、移植により(例えば皮下又は筋内で)あるいは筋肉注射により投与することができる。従って、例えば、化合物は、適当なポリマー材料又は疎水性材料(例えば、許容される油中の乳剤として)を用いて、あるいはイオン交換樹脂を用いて、あるいはゆるやかに溶解する誘導体として(例えばゆるやかに溶解する塩として)製剤化される。
【0156】
疎水性化合物に対して適当な医薬担体は、ベンジルアルコール、非極性界面活性剤、水混和性有機ポリマー、及び水性相を含む共溶媒系とすることができる。使用される一般的な共溶媒系の一つはVPD共溶媒系であり、これは3%w/vベンジルアルコール、8%w/v非極性界面活性剤ポリソルベート80(商標)、及び65%w/vポリエチレングリコール300、無水エタノール(規定の体積まで仕上げる)の溶液である。当然のことながら、共溶媒系の組成は、その溶解性及び毒性の性質を損なうことなく顕著に変えることができる。また、共溶媒成分の種類を変えてもよい。例えば、他の低毒性で非極性の界面活性剤をポリソルベート80(商標)の代わりに使用してもよく、ポリエチレングリコールのフラクションサイズを変えてもよく、他の生体適合性ポリマー(例えばポリビニルピロリドン)をポリエチレングリコールの代わりに使用してもよく、また他の糖類又は多糖類をデキストロースの代わりとしてもよい。
【0157】
一方、疎水性医薬化合物に対して他の送達系を使用してもよい。リポソーム及び乳剤は、疎水性薬物用の送達ビヒクル又は担体のよく知られた例である。通常代償として毒性が高くなるが、ある特定の有機溶媒(例えばジメチルスルホキシド)を用いることもできる。さらに、化合物は、徐放系(例えば治療剤を含む固体の疎水性ポリマーの半透過性マトリックス)を用いて送達することができる。種々の徐放性材料が確立されており、当業者によく知られるところである。徐放性カプセル剤は、その化学的性質に応じて、化合物を数時間又は数週間〜最高100日以上の間放出する。治療剤の化学的性質及び生物学的安定性に応じて、蛋白質の安定化のためさらなる戦略を用いてもよい。
【0158】
細胞内に投与することを目的とする薬剤は、当業者によく知られた手法を用いて投与することができる。例えば、そのような薬剤はリポソームに封入することができる。リポソーム形成時に水溶液中に存在するすべての分子は、水性の内部に組み込まれる。リポソームの内容物は、外の微小環境から保護されるとともに、リポソームは細胞膜と融合するため、効率的に細胞質中に送達される。リポソームを組織特異的抗体で被覆してもよい。リポソームは、所望の器官を標的化するようになり、所望の器官によって選択的に取り込まれる。一方、小さな疎水性有機分子は、直接細胞内に投与してもよい。
【0159】
追加の治療薬又は診断薬を医薬組成物に組み込んでもよい。その代わりに又はそれに加えて、医薬組成物は、他の治療薬又は診断薬を含む他の組成物と組み合わせてもよい。
【0160】
化合物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)又は医薬組成物は、任意の適当な手段により患者に投与することができる。限定されないが、投与方法の例には、特に以下のものがある:(a)経口経路による投与(その投与には、カプセル剤、錠剤、顆粒剤、スプレー剤、シロップ剤、又は他のそのような剤形による投与がある)、(b)非経口経路による投与(例えば、直腸、膣、尿道内、眼内、鼻腔内、又は耳介内。その投与には、水性懸濁剤、油性製剤などとして、あるいは、点滴、スプレー剤、座剤、軟膏、軟膏剤などとしての投与がある)、(c)注射による投与(皮下、腹腔内、静脈内、筋内、皮内、眼窩内、包内、脊椎内、胸骨内などであって、注入ポンプによる送達を含む)、(d)局部的投与(例えば、腎臓又は心臓の部分に直接注入(例えばデポ移植により))、並びに(e)局所的投与(活性化合物を生きた組織に接触させるため当業者が妥当と考えるもの)。
【0161】
投与に適する組成物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)には、その目的を達成するのに有効な量で有効成分が含まれる組成物がある。本明細書に開示の化合物の用量として必要とされる有効な量は、投与の経路、治療される動物(ヒトを含む)の種類、及び対象となる特定の動物の身体的性質による。用量は、所望の効果を得るため調整することができるが、体重、食生活、並存する薬物治療、当業者が認識するであろう他の要因による。より具体的には、有効な量は、病状を防ぎ、軽減し、又は改善するのに有効な化合物の量、又は、治療される対象の生存を延ばすのに有効な化合物の量を意味する。有効な量の決定は、特に本明細書の詳細な開示に照らして、当業者に十分可能な範囲の事項である。
【0162】
当業者に容易に理解されるとおり、インビボで有用な投与すべき用量及び特定の投与形態は、年齢、体重、治療される哺乳動物の種類、使用される特定の化合物、及びそれらの化合物を使用する特定の用途による。当業者は日常的な薬理学的方法を用いて、有効な用量のレベル(すなわち所望の結果を得るために必要な用量のレベル)を決定することができる。典型的に、生成物をヒトの臨床用途に用いる場合、より低い用量レベルから始め、所望の効果が得られるまで、用量レベルを上げていく。一方、確立された薬理学的方法を用いて、本方法により特定される組成物の有効な用量及び投与経路を確立するため、可能なインビトロ研究を採用してもよい。
【0163】
非ヒト動物の研究では、可能性のある生成物の使用は、より高い投与量レベルから始められ、所望の効果がもはや得られなくなるか又は有害な副作用が消えるまで投与量が減らされる。投与量は、所望の効果及び治療指標に応じて、広い範囲で変わる可能性がある。典型的には、投与量は、約10マイクログラム/kg〜100mg/kg体重、好ましくは約100マイクログラム/kg〜10mg/kg体重とすることができる。一方、投与量は、当業者に明らかなとおり、患者の表面積に基づき算出することができる。
【0164】
本発明の医薬組成物についての的確な製剤、投与経路、及び投与量は、患者の症状を見て、個々の医師が選択することができる(例えばFingl他,1975,“The Pharmacological Basis of Therapeutics”(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)参照、特にCh.1,p.1参照)。典型的には、患者に投与される組成物の用量範囲は、患者の体重kgあたり0.5〜1000mgとすることができる。投薬は、患者の必要に応じて、1日又は2日以上のうちに1回又は一連の2回以上の投与とすることができる。少なくともある症状に対していくつかの化合物のヒトへの投与量が確立されている場合、本発明は、それと同じ投与量を用いるか、あるいは、確立されたヒトへの投与量の約0.1%〜500%、より好ましくは約25%〜250%を用いることができる。新たに見出された医薬組成物の場合のようにヒトへの投与量が確立していない場合、適切なヒトへの投与量は、ED50又はID50の値から推測することができ、あるいは、動物での毒性試験及び効力試験により限定されるように、インビトロ又はインビボの試験から得られる他の適切な値から推測することができる。
【0165】
なお、担当の医師は、毒性や臓器不全に起因してどのようにそしていつ投与を終了、中止、又は調整すべきか理解するはずである。逆に、担当の医師は、臨床反応が十分でない(毒性を除いて)場合、より高いレベルに治療を調整することも理解するはずである。目的とする疾患の処置における用量の大きさは、治療すべき症状の重症度及び投与経路によって変わってくる。例えば、症状の重症度は、部分的に、標準の予後評価法によって評価することができる。さらに、用量、場合によっては投薬頻度も、個々の患者の年齢、体重、及び反応による。獣医学においては、上述したことに相当するプログラムを用いることができる。
【0166】
的確な投与量は薬物ごとに決定することになるが、多くの場合、投与量に関していくらかの一般化を行うことができる。例えば、成人の患者に対する1日の投薬計画は、経口用量で各有効成分0.1mg〜2000mg、好ましくは1mg〜500mg、例えば5〜200mgとすることができる。他の実施形態において、静脈内、皮下、又は筋内の用量で、各有効成分0.01mg〜100mg、好ましくは0.1mg〜60mg、例えば1〜40mgが使用される。製薬上許容される塩を投与する場合、投与量は遊離ベースとして算出することができる。一部の実施形態において、組成物(例えば、ポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は1日1〜4回投与される。一方、組成物は、連続的な静脈内点滴により、好ましくは各有効成分1日1000mgまでの用量で投与することができる。当業者に明らかなとおり、ある特定の状況では、特に進行性の病気又は感染を有効かつ積極的に治療するため、上述した好ましい投与量範囲を超えた、あるいははるかに超えた量で、本開示の化合物を投与する必要がある場合がある。一部の実施形態において、化合物は、連続的な治療期間の間、例えば1週間以上、あるいは、数か月又は数年、投与されることとなる。
【0167】
投与量及び投与間隔は、調節作用が持続するのに十分な活性成分の血漿濃度、すなわち最小有効濃度(MEC)が得られるよう、個々に調節することができる。MECは、各化合物によって変わるが、インビトロのデータから推定することができる。MECを達成するのに必要な投与量は、個々の性質及び投与経路による。しかしながら、HPLCアッセイ又はバイオアッセイを使用して血漿濃度を測定することができる。
【0168】
MEC値を用いて投与間隔を決定することもできる。期間の10〜90%、好ましくは30〜90%、最も好ましくは50〜90%の間、MECより高い血漿濃度が維持される投薬計画を用いて組成物を投与することが望ましい。
【0169】
局所的投与又は選択的摂取の場合、薬物の有効な局所的濃度は、血漿濃度と無関係であり得る。
【0170】
投与される組成物の量は、治療される対象、対象の体重、苦痛の重症度、処方する医師の投与方法及び診断方法によって変わる場合がある。
【0171】
本明細書に開示される化合物(例えばポリマー複合体及び/又はそれが有する作用因子)は、公知の方法を用いて効力及び毒性に関し評価することができる。例えば、特定の化合物の毒性、又は、ある特定の化学部位が共通する化合物のサブセットの毒性は、細胞株(例えば哺乳動物の細胞株、好ましくはヒトの細胞株)に対するインビトロの毒性を測定することによって、特定することができる。そのような試験の結果は、多くの場合、動物(例えば、哺乳動物、より具体的にはヒト)における毒性の予測となる。一方、動物モデル(例えばマウス、ラット、ウサギ、又はサル)において特定の化合物の毒性を、公知の方法を用いて調べることができる。特定の化合物の効力は、いつくかの認められた方法、例えばインビトロの方法、動物モデル、又はヒトの臨床試験を用いて確立することができる。ほぼすべての種類の病気(例えば癌、心臓血管の疾患、及び種々の免疫不全があるがこれらに限定されない)についてインビトロモデルの存在が認められる。同様に、そのような症状を治療する化学物質の効力を確立するため、可能な動物モデルを使用してもよい。効力を調べるためのモデルを選択する場合、適当なモデル、用量、及び投与経路、並びに投薬計画を選択するよう、通常の技術水準により当業者を導くことができる。もちろんヒトの臨床試験を用いてヒトにおける化合物の効力を調べることもできる。
【0172】
必要に応じて、組成物は、有効成分を含有する1つ以上の単位剤形を含むことができるパック又はディスペンサ装置において提供してもよい。例えばパックは、金属又はプラスチックの箔、例えばブリスターパックを含んでよい。パック又はディスペンサ装置は、投与のための説明書が付随されている場合がある。またパック又はディスペンサは、医薬の製造、使用又は販売を規制する政府機関によって規定された形式で容器に関する通知が付随されている場合もある。そのような通知は、ヒト又はヒト以外の動物に投与するための薬物の形態を該機関が承認していることを反映するものである。そのような通知は、例えば、処方薬又は承認された製品への挿入物について米国食品医薬品局が認めた表示とすることができる。また、適合する医薬担体中に製剤化される本発明の化合物を含む組成物は、表示される症状の治療のため、調製され、適当な容器に収容され、そして表示を付与することができる。
【0173】
式(I)の繰り返し単位を有するポリマー及びコポリマーは、多くの異なる用途を有することができる。一実施形態により疾患又は症状を治療又は寛解する方法が提供され、該方法は、疾患又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物にここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を投与することを有する。別の実施形態により、疾患又は症状を治療又は寛解するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。一実施形態において、疾患又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択されるものである。一実施形態において、疾患又は症状は、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫から選択されるものである。
【0174】
一実施形態により疾患又は症状を診断する方法が提供され、該方法は、疾患又は症状の診断が必要な哺乳動物にここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を投与することを有する。別の実施形態により、疾患又は症状を診断するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。一実施形態において、疾患又は症状は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍から選択されるものである。一実施形態において、疾患又は症状は、肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫から選択されるものである。
【0175】
一実施形態により組織の一部を造影する方法が提供され、該方法は、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を組織の一部に接触させることを有する。別の実施形態により、組織の一部を造影するため、ここに記載される1つ以上のポリマー複合体の有効量又はここに記載される医薬組成物の有効量を使用することが提供される。いくつかの実施形態において、造影される組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及び/又はメラノーマ腫瘍からの組織とすることができる。
【実施例】
【0176】
本明細書に記載される実施形態をさらに説明するため以下の実施例を提供するが、それらは本発明の技術範囲を限定するものではない。
【0177】
(材料)
分子量の異なるポリ−L−グルタミン酸ナトリウム塩(多角度光散乱(MALS)に基づく平均分子量41400(PGA(97k))、17600(PGA(44k))、16000(PGA(32k))、及び10900(PGA(21k))ダルトン);N−(3−ジメチルアミノプロピル)−N’−エチルカルボジイミド塩酸塩(EDC);ヒドロキシベンゾトリアゾール(HOBt);ピリジン;4−ジメチルアミノピリジン(DMAP);N,N’−ジメチルホルムアミド(DMF):ガドリニウム−酢酸;クロロホルム;カンプトテシン、及び重炭酸ナトリウムを、Sigma−Aldrich Chemical Companyから購入した。ポリ−L−グルタミン酸塩は、2N塩酸溶液を用いてポリ−L−グルタミン酸に変換した。トリフルオロ酢酸(TFA)はBioscienceから購入した。L−グルタミン酸ジ−t−ブチルエステル塩酸塩(H−Glu(OtBu)−OtBu・HCl)、N−α−CBZ−L−グルタミン酸α−ベンジルエステル(Z−Glu−OBzl)は、Novabiochem(ラホーヤ、カリフォルニア州)から購入した。パクリタキセル及びドキソルビシンは、PolyMed(ヒューストン、テキサス州)から購入した。化学薬品p−NH2−Bn−DPTA−ペンタ−(t−Buエステル)は、Macrocyclics(ダラス、テキサス州)から購入した。1H NMRはJoel(400MHz)より入手したものであり、粒子径はZetalPals(Brookhaven Instruments Corporation)によって測定した。マイクロ波による化学処理はBiotageにおいて行った。ポリマーの分子量は、サイズ排除クロマトグラフィ(SEC)と多角度光散乱(MALS)検出器(Wyatt Corporation)とを組み合わせて測定した。
【0178】
ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)を、ポリグルタミン酸ナトリウム塩から、米国特許公開番号2007−0128118(2006年12月1日出願、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載された手順に従って調製した。米国特許出願第11/566141号は、特に本明細書に記載されるポリマー(例えばポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)、ポリ−(γ−L−アスパルチル−グルタミン)、ポリ−(γ−L−グルタミル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸、及びポリ−(γ−L−アルパルチル−グルタミン)−ポリ−L−グルタミン酸)の合成を説明する目的のため、その内容すべてが本明細書に組み込まれる。ポリマーの平均分子量は、下記のシステム及び条件(以下、MALS検出器を用いたHeleosシステムと呼ぶ)を使用して測定した。
(SEC−MALS分析条件)
HPLSシステム:Agilent1200
カラム:Shodex SB 806M HQ(プルランに対する排除限界は20000000である。粒子径:13ミクロン、サイズ(mm)ID×長さ;8.0×300)
移動相:1×DPBS又はDPBS中1%LiBr(pH7.0)
流速:1ml/分
MALS検出器:WyattからのDAWN HELEOS
DRI検出器:WyattからのOptilab rEX
オンライン粘度計:WyattからのViscoStar
ソフトウェア:WyattからのASTRA5.1.9
サンプル濃度:1〜2mg/ml
注入量:100μl
ポリマーのdn/dc値:0.185を測定に使用した。
実際のサンプルを流す前にBSAを対照として使用した。
【0179】
fKRGD−保護の合成は、2−クロロトリチルクロリド樹脂、HBTU及びHOBtカップリング剤をジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)とともに用いる標準的なFmoc−固相法により行った。Fmoc基の検出は、DMF中20%ピペリジンにおいて行った。樹脂からのfKRGD−保護の分裂は、酢酸:トリフルオロエタノール:ジクロロメタン(1:1:3)中で行った。fKRGD−保護の環化は、DMF中NaHCO3及びDPPAを用いて行った。環状(fKRGD)の脱保護は、95%TFA中で行った。環状(fKRGD)−保護及び環状(fKRGD)の精製はHPLCシステムにおいて行い、生成物の純度はLC−MSにより確認した。
【0180】
実施例1
図5に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTXポリマー複合体を調製した。
【0181】
ポリ−L−グルタメート−パクリタキセル複合体(PGA−PTX)(1)の合成を、先の文献に報告されているとおり行った。Liら“Complete Regression of Well−established tumors using a novel water−soluble poly(L−glutamic acid)−paclitaxel conjugate”Cancer Research 1998,55,2404−2409参照(それらの内容は参照によりその全体が本明細書に援用されたものとする)。
【0182】
実施例2
図6に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTX−DOXポリマー複合体を調製した。
【0183】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル複合体(50mg)(1)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(7mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(40mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0184】
実施例3
図7に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTX−CPTポリマー複合体を調製した。
【0185】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル複合体(50mg)(1)をDMF(5mL)に溶解した。次いでカンプトテシン(8mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(35mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。カンプトテシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0186】
実施例4
図8に示す一般スキームに従って以下のとおりPGA−PTX−CPT−DOXポリマー複合体を調製した。
【0187】
ポリ−L−グルタミン酸−パクリタキセル−カンプトテシン複合体(30mg)(3)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(5mg)、EDC(16mg)及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(29mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0188】
実施例5
図9に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTXポリマー複合体を調製した。
【0189】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(5)の合成を、米国特許公開番号第2007-0128118(2006年12月1日出願、参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載された手順に従って調製した。
【0190】
実施例6
図10に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTX−DOXポリマー複合体を調製した。
【0191】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(50mg)(5)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(7mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(45mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0192】
実施例7
図11に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTX−CPTポリマー複合体を調製した。
【0193】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセル複合体(50mg)(5)をDMF(5mL)に溶解した。次いでカンプトテシン(8mg)、EDC(16mg)及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(42mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。カンプトテシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0194】
実施例8
図12に示す一般スキームに従って以下のとおりPGGA−PTX−CAMP−DOXポリマー複合体を調製した。
【0195】
ポリ(γ−グルタミル−グルタミン)−パクリタキセルル−カンプトテシン複合体(30mg)(7)をDMF(5mL)に溶解した。次いでドキソルビシン(5mg)、EDC(16mg)、及びHOBt(10mg)を添加した。混合物を24時間撹拌した。TLCにより遊離のドキソルビシンが存在しないことから反応の完了を確認した。希HCl(0.2M)溶液を添加して沈殿を生じさせた。混合物を、2分間撹拌し、そして10000rpmで15分間遠心分離にかけた。赤橙色の固体沈殿物を集め、水洗し、そして凍結乾燥した。生成物(25mg)を得、そして1H−NMRにより確認した。ドキソルビシンの含有量をUV−可視光分光法により測定した。
【0196】
実施例9
(細胞培養及び調製)
B16F0細胞をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド州)から購入し、10%胎児ウシ血清及び100単位/mLペニシリンを含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)において成長させた。細胞は37℃で5%CO2環境において成長させた。培養培地を除去し、処分した。細胞をダルベッコリン酸緩衝溶液(DPBS)で濯ぎ、トリプシン−エチレンジアミン四酢酸(EDTA)溶液(0.5ml)を添加し、そして細胞を倒立顕微鏡下で観察してその分散を確認した。完全成長培地(6.0〜8.0ml)を添加し、そして細胞をゆっくりピペットに吸い込んだ。細胞懸濁液の適当なアリコートを新たな培養プレートに移した。さらなる実験の前に細胞を37℃で5%CO2において24時間成長させた。
【0197】
実施例10
(インビトロ細胞毒性MTT試験)
抗癌剤を含む本明細書に記載されたポリマー複合体のB16F0メラノーマ細胞増殖に対する作用を、いくつかの異なる該薬物の濃度で評価する。細胞毒性MTTアッセイを、Monks他,JNCI 1991,83,757−766(参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に報告されるとおり行う。ポリマー複合体は実施例1〜8に記載されるように調製される。
【0198】
実施例11
(結合試験)
結合アッセイを、Line他,Journal of Nuclear Medicine,46(2005),1552−1560、及びMitra他,Journal of Controlled Release,114(2006)175−183(ともに参照によりその内容すべてが本明細書に組み込まれる)に記載されるとおり行う。ここで記載されるポリマー複合体は実施例1〜8に記載されるように調製される。
【0199】
実施例12
(動物及び腫瘍のモデル)
ヌードマウス(6〜7週齢、体重25〜30g、オス)をCharles River Lab(ウィリングトン、マサチューセッツ州)から購入する。B16細胞株をATCC(CRL−6322、ATCC アメリカン・タイプ・カルチャー・コレクション、ロックヴィル、メリーランド州)から購入する。10%胎児ウシ血清、2μMグルタミン、1mM非必須アミノ酸、1mMピルビン酸ナトリウム、100U/mlペニシリン、及び100μg/mlストレプトマイシンで補足したRMPI1640において、B16細胞を培養する。細胞培養物から採集したB16細胞を数えて5×106/mLの濃度に再懸濁する。TBシリンジを用いて、0.2mL(合計1×106細胞)を各マウスに皮下注射によって投与する。右の臀部に動物1匹あたり1腫瘍を接種する。接種に先立って腫瘍接種部位の毛をそり、腫瘍増殖の測定を容易にする。
【0200】
実施例13
(腫瘍蓄積に対する磁気共鳴映像法)
マウスの映像を、造影前及び造影後、ニー・コイルを用いたGE3TMRスキャナにおいて取得する。イメージングパラメータは以下のとおりである。TE:minful、TR=250ms、FOV:8及び24スライス/スラブ、並びに1.0mm冠状スライス厚。磁気共鳴造影剤(例えばGd(III))を含む化合物とのポリマー複合体、及びオムニスキャン−Gd(III)−(DTPA−BMA(0.1mmolのGd(III)/kg)(対照)を、麻酔したマウスに尾の静脈を介して注入する。ポリマー複合体及びオムニスキャン(商標)の注入用量は0.1mmolGd(III)/kgである。そして映像を、注入の前及び造影剤の注入後6分〜4時間において取得する。
【0201】
当業者に明らかなとおり、多数の種々の変更が、本発明の精神を逸脱することなく可能である。従って、当然のことながら、本発明の形態は、単に例示であって本発明の技術的範囲を限定しようとするものではない。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマー複合体。
【化1】
(式中、各A1、各A2、各A3、各A4、各A5及び各A6は独立して酸素又はNR7であり、ここでR7は水素又はC1−4アルキルであり、
各R1、各R2、各R3、各R4、各R5、及び各R6は独立して水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択され、
m、n、及びoはそれぞれ独立して1又は2であり、
p、q、r、s、t及びuはそれぞれ独立して0又は≧1であり、ここでp、q、r、s、t及びuの合計は2以上であり、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第1の薬物を含む基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第2の薬物を含む基であり、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。)
【請求項2】
p+qが2以上であり、かつr、s、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項3】
s+tが2以上であり、かつp、q、r及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項4】
p+q+rが3以上であり、かつs、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項5】
s+t+uが3以上であり、かつq、r及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項6】
p+sが2以上であり、かつq、r、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項7】
p+q+sが3以上であり、かつr、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項8】
p+s+tが3以上であり、かつq、r及びtが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項9】
p+q+s+tが4以上であり、かつr及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項10】
p+q+r+s+tが5以上であり、かつuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項11】
p+q+s+t+uが5以上であり、かつrが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項12】
p+q+r+s+t+uが6以上である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項13】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項14】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項15】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項16】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項17】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項18】
該第1の薬物が抗癌剤である、請求項1〜17のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項19】
該第2の薬物が抗癌剤である、請求項1〜18のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項20】
抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンからなる群から選択される、請求項18又は19のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項21】
タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される、請求項20のポリマー複合体。
【請求項22】
パクリタキセルは、C2’炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合されている、請求項21のポリマー複合体。
【請求項23】
パクリタキセルは、C7炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合されている、請求項21のポリマー複合体。
【請求項24】
カンプトテカはカンプトテシンである、請求項20のポリマー複合体。
【請求項25】
アントラサイクリンはドキソルビシンである、請求項20のポリマー複合体。
【請求項26】
標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体からなる群から選択される、請求項1〜25のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項27】
標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用する、請求項1〜25のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項28】
光造影剤はアクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素からなる群から選択される、請求項1〜27のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項29】
磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含む、請求項1〜28のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項30】
該Gd(III)化合物は以下の
【化2】
を含む、請求項29のポリマー複合体。
【請求項31】
該Gd(III)化合物は以下の
【化3】
を含む、請求項29のポリマー複合体。
【請求項32】
多座配位子が以下の
【化4】
(式中、各R8は独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項1〜31のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項33】
多座配位子が以下の
【化5】
(式中、各R9はそれぞれ独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項1〜31のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項34】
保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体は以下の
【化6】
を含む、請求項1〜33のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項35】
安定剤はポリエチレングリコールである、請求項1〜34のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項36】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第3の薬物を含む基であり、ここで該第3の薬物は該第1の薬物及び該第2の薬物と異なるものであることをさらに提供する、請求項1〜35のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項37】
少なくとも1つのm、n又はoが1である、請求項1、3又は5〜36のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項38】
少なくとも1つのm、n又はoが2である、請求項1、3又は5〜37のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項39】
アルカリ金属はナトリウムである、請求項1〜38のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項40】
多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択される任意の1つ以上がリンカー基をさらに有する、請求項1〜39のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項41】
該第1の薬物を含む基がリンカー基をさらに有する、請求項1〜40のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項42】
該第2の薬物を含む基がリンカー基をさらに有する、請求項1〜41のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体と、製薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つとを含む、組成物。
【請求項44】
式(VII)の繰り返し単位及び/又は式(VIII)の繰り返し単位の少なくとも1つを有するポリマー反応物を溶媒に溶解又は部分的に溶解して溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を調製すること、
【化7】
(式中、zは独立して1又は2であり、
A7及び各A8は酸素であり、かつ
R10及び各R11は独立して水素、アンモニウム及びアルカリ金属からなる群から選択される)、及び
該溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第2の反応物及び第3の反応物と反応させることを有する、ここで、第2の反応物が第1の薬物を含有し、第3の反応物は第2の薬物を含有する、を有する、請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体を製造する方法。
【請求項45】
第2の反応物はヒドロキシ及びアミンからなる群から選択される置換基を含む、請求項44の方法。
【請求項46】
第3の反応物はヒドロキシ及びアミンからなる群から選択される置換基を含む、請求項44又は45の方法。
【請求項47】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第3の反応物と反応させる前に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることを含む、請求項44〜46のいずれか1項の方法。
【請求項48】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第3の反応物と反応させるのとほぼ同時に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることを含む、請求項44〜46のいずれか1項の方法。
【請求項49】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第3の反応物と反応させた後に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることを含む、請求項44〜46のいずれか1項の方法。
【請求項50】
該溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第4の反応物と反応させることをさらに備え、ここで該第4の反応物は、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、第3の薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基及び安定剤を含む基からなる群から選択される少なくとも1つを有する、請求項44〜49のいずれか1項の方法。
【請求項51】
第4の反応物はヒドロキシ及びアミンからなる群から選択される置換基を含む、請求項50の方法。
【請求項52】
第3の薬物は抗癌剤である、請求項50または51の方法。
【請求項53】
抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンからなる群から選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される、請求項53の方法。
【請求項55】
パクリタキセルは、C2’炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合される、請求項54の方法。
【請求項56】
パクリタキセルは、C7炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合される、請求項54の方法。
【請求項57】
カンプトテカはカンプトテシンである、請求項53の方法。
【請求項58】
アントラサイクリンはドキソルビシンである、請求項53の方法。
【請求項59】
第3の薬剤は、第1の薬剤及び第2の薬剤と異なるものである請求項50〜58のいずれか1項の方法。
【請求項60】
標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)及び抗体からなる群から選択される、請求項50〜59のいずれか1項の方法。
【請求項61】
標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用する、請求項50〜59のいずれか1項の方法。
【請求項62】
光造影剤はアクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素及びピレン色素からなる群から選択される、請求項50〜61のいずれか1項の方法。
【請求項63】
磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含む、請求項50〜62のいずれか1項の方法。
【請求項64】
Gd(III)化合物は以下の
【化8】
を含む、請求項63の方法。
【請求項65】
Gd(III)化合物は以下の
【化9】
を含む、請求項63の方法。
【請求項66】
多座配位子が以下の
【化10】
(式中、各R8は独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項50〜65のいずれか1項の方法。
【請求項67】
多座配位子が以下の
【化11】
(式中、各R9は独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項50〜65のいずれか1項の方法。
【請求項68】
保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体は以下の
【化12】
を含む、請求項50〜67のいずれか1項の方法。
【請求項69】
安定剤はポリエチレングリコールである、請求項50〜68のいずれか1項の方法。
【請求項70】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物をカップリング剤の存在下で反応させることをさらに含む、請求項44〜69のいずれか1項の方法。
【請求項71】
カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及びベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)からなる群から選択される、請求項70の方法。
【請求項72】
溶媒は極性非プロトン性溶媒である、請求項44〜71のいずれか1項の方法。
【請求項73】
溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群から選択される、請求項72の方法。
【請求項74】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を触媒の存在下で反応させることをさらに含む、請求項44〜73のいずれか1項の方法。
【請求項75】
触媒は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項74の方法。
【請求項76】
病気又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物に有効量の請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は有効量の請求項43の組成物を投与することを含む、病気又は症状を治療又は寛解する方法。
【請求項77】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項76の方法。
【請求項78】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項76の方法。
【請求項79】
病気又は症状の診断が必要な哺乳動物に有効量の請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は有効量の請求項43の組成物を投与することを含む、病気又は症状を診断する方法。
【請求項80】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項79の方法。
【請求項81】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項79の方法。
【請求項82】
有効量の請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は有効量の請求項43の組成物を組織の一部に接触させることを含む、組織の一部を造影する方法。
【請求項83】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項82の方法。
【請求項84】
該ポリマー複合体は、静脈内に投与される、請求項76〜83のいずれか1項の方法。
【請求項85】
疾患又は症状の治療用又は寛解用医薬を製造するための請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は請求項43の組成物の使用。
【請求項86】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項85の使用。
【請求項87】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項85の使用。
【請求項88】
病気又は症状の診断用医薬を調製するための請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は請求項43の組成物の使用。
【請求項89】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項88の使用。
【請求項90】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項88の使用。
【請求項91】
組織部分の造影用薬剤を調製するための請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は請求項43の組成物の使用。
【請求項92】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項91の使用。
【請求項93】
該ポリマー複合体は、静脈内に投与される、請求項85〜92のいずれか1項の使用。
【請求項94】
疾患又は症状の治療又は寛解ための請求項1〜42のいずれか1項の化合物又は請求項43の組成物。
【請求項95】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項94の化合物。
【請求項96】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項94の化合物。
【請求項97】
病気又は症状を診断するための請求項1〜42のいずれか1項の化合物又は請求項43の組成物。
【請求項98】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項97の化合物。
【請求項99】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項97の化合物。
【請求項100】
組織部分の造影のための請求項1〜42のいずれか1項の化合物又は請求項43の組成物。
【請求項101】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項100の化合物。
【請求項1】
式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び(VI)から選択される少なくとも1つの繰り返し単位を有するポリマー複合体。
【化1】
(式中、各A1、各A2、各A3、各A4、各A5及び各A6は独立して酸素又はNR7であり、ここでR7は水素又はC1−4アルキルであり、
各R1、各R2、各R3、各R4、各R5、及び各R6は独立して水素、C1−10アルキル基、C6−20アリール基、アンモニウム基、アルカリ金属、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択され、
m、n、及びoはそれぞれ独立して1又は2であり、
p、q、r、s、t及びuはそれぞれ独立して0又は≧1であり、ここでp、q、r、s、t及びuの合計は2以上であり、
ただし、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第1の薬物を含む基であり、R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第2の薬物を含む基であり、ここで該第1の薬物と該第2の薬物とは同じものではない。)
【請求項2】
p+qが2以上であり、かつr、s、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項3】
s+tが2以上であり、かつp、q、r及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項4】
p+q+rが3以上であり、かつs、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項5】
s+t+uが3以上であり、かつq、r及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項6】
p+sが2以上であり、かつq、r、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項7】
p+q+sが3以上であり、かつr、t及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項8】
p+s+tが3以上であり、かつq、r及びtが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項9】
p+q+s+tが4以上であり、かつr及びuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項10】
p+q+r+s+tが5以上であり、かつuが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項11】
p+q+s+t+uが5以上であり、かつrが0である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項12】
p+q+r+s+t+uが6以上である、請求項1のポリマー複合体。
【請求項13】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約50%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項14】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約40%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項15】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約30%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項16】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約20%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項17】
該ポリマー複合体は、該ポリマー複合体に対する薬物の質量比で、該第1の薬物及び該第2の薬物の総量を、約1%〜約10%(重量/重量)の範囲で含む、請求項1〜12のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項18】
該第1の薬物が抗癌剤である、請求項1〜17のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項19】
該第2の薬物が抗癌剤である、請求項1〜18のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項20】
抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンからなる群から選択される、請求項18又は19のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項21】
タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される、請求項20のポリマー複合体。
【請求項22】
パクリタキセルは、C2’炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合されている、請求項21のポリマー複合体。
【請求項23】
パクリタキセルは、C7炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合されている、請求項21のポリマー複合体。
【請求項24】
カンプトテカはカンプトテシンである、請求項20のポリマー複合体。
【請求項25】
アントラサイクリンはドキソルビシンである、請求項20のポリマー複合体。
【請求項26】
標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)、及び抗体からなる群から選択される、請求項1〜25のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項27】
標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体、及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用する、請求項1〜25のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項28】
光造影剤はアクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素、及びピレン色素からなる群から選択される、請求項1〜27のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項29】
磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含む、請求項1〜28のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項30】
該Gd(III)化合物は以下の
【化2】
を含む、請求項29のポリマー複合体。
【請求項31】
該Gd(III)化合物は以下の
【化3】
を含む、請求項29のポリマー複合体。
【請求項32】
多座配位子が以下の
【化4】
(式中、各R8は独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項1〜31のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項33】
多座配位子が以下の
【化5】
(式中、各R9はそれぞれ独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項1〜31のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項34】
保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体は以下の
【化6】
を含む、請求項1〜33のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項35】
安定剤はポリエチレングリコールである、請求項1〜34のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項36】
R1、R2、R3、R4、R5及びR6の少なくとも1つは第3の薬物を含む基であり、ここで該第3の薬物は該第1の薬物及び該第2の薬物と異なるものであることをさらに提供する、請求項1〜35のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項37】
少なくとも1つのm、n又はoが1である、請求項1、3又は5〜36のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項38】
少なくとも1つのm、n又はoが2である、請求項1、3又は5〜37のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項39】
アルカリ金属はナトリウムである、請求項1〜38のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項40】
多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基、及び安定剤を含む基からなる群から選択される任意の1つ以上がリンカー基をさらに有する、請求項1〜39のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項41】
該第1の薬物を含む基がリンカー基をさらに有する、請求項1〜40のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項42】
該第2の薬物を含む基がリンカー基をさらに有する、請求項1〜41のいずれか1項のポリマー複合体。
【請求項43】
請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体と、製薬上許容される賦形剤、担体及び希釈剤から選択される少なくとも1つとを含む、組成物。
【請求項44】
式(VII)の繰り返し単位及び/又は式(VIII)の繰り返し単位の少なくとも1つを有するポリマー反応物を溶媒に溶解又は部分的に溶解して溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を調製すること、
【化7】
(式中、zは独立して1又は2であり、
A7及び各A8は酸素であり、かつ
R10及び各R11は独立して水素、アンモニウム及びアルカリ金属からなる群から選択される)、及び
該溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第2の反応物及び第3の反応物と反応させることを有する、ここで、第2の反応物が第1の薬物を含有し、第3の反応物は第2の薬物を含有する、を有する、請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体を製造する方法。
【請求項45】
第2の反応物はヒドロキシ及びアミンからなる群から選択される置換基を含む、請求項44の方法。
【請求項46】
第3の反応物はヒドロキシ及びアミンからなる群から選択される置換基を含む、請求項44又は45の方法。
【請求項47】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第3の反応物と反応させる前に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることを含む、請求項44〜46のいずれか1項の方法。
【請求項48】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第3の反応物と反応させるのとほぼ同時に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることを含む、請求項44〜46のいずれか1項の方法。
【請求項49】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を、第3の反応物と反応させた後に、第2の反応物の少なくとも一部と反応させることを含む、請求項44〜46のいずれか1項の方法。
【請求項50】
該溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を第4の反応物と反応させることをさらに備え、ここで該第4の反応物は、多座配位子、保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体、第3の薬物を含む基、標的化剤を含む基、光造影剤を含む基、磁気共鳴造影剤を含む基及び安定剤を含む基からなる群から選択される少なくとも1つを有する、請求項44〜49のいずれか1項の方法。
【請求項51】
第4の反応物はヒドロキシ及びアミンからなる群から選択される置換基を含む、請求項50の方法。
【請求項52】
第3の薬物は抗癌剤である、請求項50または51の方法。
【請求項53】
抗癌剤はタキサン、カンプトテカ及びアントラサイクリンからなる群から選択される、請求項52の方法。
【請求項54】
タキサンはパクリタキセル及びドセタキセルからなる群から選択される、請求項53の方法。
【請求項55】
パクリタキセルは、C2’炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合される、請求項54の方法。
【請求項56】
パクリタキセルは、C7炭素に結合される酸素原子において式(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)、及び/又は(VI)の繰り返し単位に結合される、請求項54の方法。
【請求項57】
カンプトテカはカンプトテシンである、請求項53の方法。
【請求項58】
アントラサイクリンはドキソルビシンである、請求項53の方法。
【請求項59】
第3の薬剤は、第1の薬剤及び第2の薬剤と異なるものである請求項50〜58のいずれか1項の方法。
【請求項60】
標的化剤はアルギニン−グリシン−アスパラギン酸(RGD)ペプチド、フィブロネクチン、葉酸、ガラクトース、アポリポ蛋白質、インスリン、トランスフェリン、繊維芽細胞増殖因子(FGF)、上皮細胞増殖因子(EGF)及び抗体からなる群から選択される、請求項50〜59のいずれか1項の方法。
【請求項61】
標的化剤は、αv,β3−インテグリン、葉酸、アシアロ糖蛋白質、低密度リポ蛋白質(LDL)、インスリン受容体、トランスフェリン受容体、繊維芽細胞増殖因子(FGF)受容体、上皮細胞増殖因子(EGF)受容体及び抗体受容体からなる群から選択される受容体と相互作用する、請求項50〜59のいずれか1項の方法。
【請求項62】
光造影剤はアクリジン色素、クマリン色素、ローダミン色素、キサンテン色素、シアニン色素及びピレン色素からなる群から選択される、請求項50〜61のいずれか1項の方法。
【請求項63】
磁気共鳴造影剤はGd(III)化合物を含む、請求項50〜62のいずれか1項の方法。
【請求項64】
Gd(III)化合物は以下の
【化8】
を含む、請求項63の方法。
【請求項65】
Gd(III)化合物は以下の
【化9】
を含む、請求項63の方法。
【請求項66】
多座配位子が以下の
【化10】
(式中、各R8は独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項50〜65のいずれか1項の方法。
【請求項67】
多座配位子が以下の
【化11】
(式中、各R9は独立して水素、アンモニウム又はアルカリ金属である。)
を含む、請求項50〜65のいずれか1項の方法。
【請求項68】
保護された酸素原子を有する多座配位子前駆体は以下の
【化12】
を含む、請求項50〜67のいずれか1項の方法。
【請求項69】
安定剤はポリエチレングリコールである、請求項50〜68のいずれか1項の方法。
【請求項70】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物をカップリング剤の存在下で反応させることをさらに含む、請求項44〜69のいずれか1項の方法。
【請求項71】
カップリング剤は、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)−カルボジイミド(EDC)、1,3−ジシクロヘキシルカルボジイミド(DCC)、1,1’−カルボニル−ジイミダゾール(CDI)、N,N’−ジスクシンイミジルカーボネート(DSC)、N−[(ジメチルアミノ)−1H−1,2,3−トリアゾロ−[4,5−b]ピリジン−1−イル−メチレン]−N−メチルメタンアミニウムヘキサフルオロホスフェートN−オキシド(HATU)、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HBTU)、2−[(6−クロロ−1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムヘキサフルオロホスフェート(HCTU)、ベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、ブロモ−トリス−ピロリジノ−ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート、2−[(1H−ベンゾトリアゾール−1−イル)−1,1,3,3−テトラメチルアミニウムテトラフルオロボレート(TBTU)、及びベンゾトリアゾール−1−イル−オキシ−トリス−(ジメチルアミノ)ホスホニウムヘキサフルオロホスフェート(BOP)からなる群から選択される、請求項70の方法。
【請求項72】
溶媒は極性非プロトン性溶媒である、請求項44〜71のいずれか1項の方法。
【請求項73】
溶媒はN,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N−メチル−2−ピリドン(NMP)、及びN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)からなる群から選択される、請求項72の方法。
【請求項74】
溶解された又は部分的に溶解されたポリマー反応物を触媒の存在下で反応させることをさらに含む、請求項44〜73のいずれか1項の方法。
【請求項75】
触媒は4−ジメチルアミノピリジン(DMAP)である、請求項74の方法。
【請求項76】
病気又は症状の治療又は寛解が必要な哺乳動物に有効量の請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は有効量の請求項43の組成物を投与することを含む、病気又は症状を治療又は寛解する方法。
【請求項77】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項76の方法。
【請求項78】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項76の方法。
【請求項79】
病気又は症状の診断が必要な哺乳動物に有効量の請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は有効量の請求項43の組成物を投与することを含む、病気又は症状を診断する方法。
【請求項80】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項79の方法。
【請求項81】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項79の方法。
【請求項82】
有効量の請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は有効量の請求項43の組成物を組織の一部に接触させることを含む、組織の一部を造影する方法。
【請求項83】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項82の方法。
【請求項84】
該ポリマー複合体は、静脈内に投与される、請求項76〜83のいずれか1項の方法。
【請求項85】
疾患又は症状の治療用又は寛解用医薬を製造するための請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は請求項43の組成物の使用。
【請求項86】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項85の使用。
【請求項87】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項85の使用。
【請求項88】
病気又は症状の診断用医薬を調製するための請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は請求項43の組成物の使用。
【請求項89】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項88の使用。
【請求項90】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項88の使用。
【請求項91】
組織部分の造影用薬剤を調製するための請求項1〜42のいずれか1項のポリマー複合体又は請求項43の組成物の使用。
【請求項92】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項91の使用。
【請求項93】
該ポリマー複合体は、静脈内に投与される、請求項85〜92のいずれか1項の使用。
【請求項94】
疾患又は症状の治療又は寛解ための請求項1〜42のいずれか1項の化合物又は請求項43の組成物。
【請求項95】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項94の化合物。
【請求項96】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項94の化合物。
【請求項97】
病気又は症状を診断するための請求項1〜42のいずれか1項の化合物又は請求項43の組成物。
【請求項98】
病気又は症状は肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、卵巣腫瘍、前立腺腫瘍、及びメラノーマ腫瘍からなる群から選択される、請求項97の化合物。
【請求項99】
病気又は症状は肺癌、乳癌、結腸癌、卵巣癌、前立腺癌、及び黒色腫からなる群から選択される、請求項97の化合物。
【請求項100】
組織部分の造影のための請求項1〜42のいずれか1項の化合物又は請求項43の組成物。
【請求項101】
該組織は、肺腫瘍、乳房腫瘍、結腸腫瘍、及び卵巣腫瘍からなる群から選択される腫瘍からのものである、請求項100の化合物。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公表番号】特表2010−526917(P2010−526917A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507677(P2010−507677)
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/063126
【国際公開番号】WO2008/141110
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月8日(2008.5.8)
【国際出願番号】PCT/US2008/063126
【国際公開番号】WO2008/141110
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]