説明

複素情報を有する波場を変調する空間光変調装置

本発明は、3次元光変調器(SLM)に関し、光変調器の画素(P01、P02)は変調素子(ME)を形成するために組み合わされる。3次元に配列された物点をホログラフィックに再構成できるように、各変調素子(ME)は事前設定された離散値によって符号化されてもよい。本発明に係る光変調器は、変調素子(ME)ごとに画素(P01、P02)により変調された光波部分を出力側の屈折又は回折によって結合することにより、設定された伝播方向に変調素子(ME)から射出する共通光束を形成する光束分割器又は光束結合器が変調器の画素(P01、P02)に割り当てられることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ビデオホログラム情報を有する光波場を変調する空間光変調装置に関し、特に、ホログラムとして再現される物体光点を含む、3次元シーンの離散複素物体光点値を有する光波場を変調する空間光変調装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、位置制御装置と、眼球検出器と、ホログラム情報を観測する観測者が位置を変更した場合に伝播する変調された光波場の光軸を実際の観測者の眼球の位置まで追跡する光波追跡手段と、を有するホログラム再現システムにおいて適用可能であることが好ましい。このようなホログラム再現システムは、例えば国際公開第2006/119760号に記載される。
【0003】
本発明は、ホログラム情報の提供方法とは無関係に使用可能であり、ホログラム的に再現されたビデオシーンを複数の観測者が同時に見ることができるシステムでも実現可能である。
【0004】
一般に既知であるように、ビデオホログラフィによって3次元シーンを再現するために、光波発生器は、空間光変調装置に向かって干渉を発生することが可能な光波を放射する有向光波場を発生する。光変調装置を容易にアドレス指定可能にするために、光変調装置は、再現されるビデオシーン中の物体光点の空間配置に従って、変調制御器により離散複素ホログラム値で各々が符号化される変調素子の規則的な構造を有することが好ましい。
【0005】
本明細書において、「符号化」は、光変調装置の変調セルの光学的透過率を個別に調整することであると理解されるべきである。この符号化の結果、変調セルは、光の伝播方向において空間光変調手段の後段の光路上の空間において、ビデオ信号によって記述されるシーンの複数の物体光点を、放射された複数の部分光波が建設的干渉あるいは相殺的干渉により再構成するような干渉を発生することが可能な光波場の部分入射光波を変調する。
【0006】
本発明に関連して、離散複素ホログラム値は、ビデオホログラムによる変調アレイの離散符号化のためのホログラム情報を含む。各変調素子の光伝達関数の振幅及び位相のすくなくともいずれかに作用するために、変調制御器は、複素数でおける実部及び虚部のようなホログラムコードの要素を各変調素子に書き込む。
【0007】
従来の光変調装置は、通常、振幅のみを変調する変調器、または位相のみを変調する変調器として作用するので、1つの実数値によって光波に影響を与えるだけである。これは、それらの変調器がセル符号化により振幅のみまたは位相情報のみを局所的に変化させることを意味する。
【0008】
ビデオホログラムの場合、光変調装置は、リアルタイムで動作可能でなければならず、広い再構成空間においてフルカラー再現を生成可能でなければならない。
【0009】
各光変調装置は、規則的に配列された変調素子を有する少なくとも1つの変調アレイを備え、各変調素子は複数の変調セルを備える。通常、変調アレイは空間光変調器(SLM)により実現される。このような空間光変調器は、一般に画素としても知られる個々の変調セルを有する。
【0010】
ホログラム再現の原理によれば、変調制御器は、物体光点のホログラム再現に関連するすべての変調素子に対して、シーンのその物体光点に対応する離散複素値に基づいて離散複素ホログラム値を同時に計算する。符号化処理に先立って、離散複素ホログラム値ごとに対応するコード値成分が生成される。各変調素子のすべての変調セルが相互に作用することで、該変調素子から期待される局所的な複素光変調が実際に実現されるように、変調素子ごとのコード値成分は計算され、互いに調整される。複素物体光点値は、符号化に先立って、例えば奥行情報を有するビデオ信号に基づいて変調制御器により計算される。
【0011】
例えば、米国特許第5,416,618号公報は、複数の積層された空間光変調アレイの組み合わせを有する光変調装置を開示している。例えば、振幅光変調セルを有する1つの光変調アレイ及び位相光変調セルを有する1つの光変調アレイ、あるいは同一種類の光変調セルを有する2つのアレイが光の伝播方向に積層される。複数の単一セルを有し、複素ホログラム値で光波場を変調する複数の変調素子が、該積層により生成される。しかしながら該構成は、光変調アレイが隣接される場合に、セル構造の正確な一致を実現するための多分な調整労力を必要とする欠点がある。
【0012】
しかし、1つの変調アレイの複数の変調セルから成るセル群により複素ホログラム値が実現される場合、特に、複数の変調セルが光の伝播方向に関して並列に配置される場合には、上記の欠点は発生しない。
【0013】
従って、本出願に係る光変調装置は個々に符号化可能であるが、光学的効果及び電気的アドレス指定に関しては協調する変調素子を形成するように組み合わされる、規則的に配列された変調セルを有する少なくとも1つの変調アレイを備える。光変調装置の変調素子は、アレイとして配列されかつ伝播光波場の干渉を発生可能な光波を、空間構造化によって変調する。これは、変調アレイに実際に入射する伝播光波場の部分光波のみを各変調素子がその変調素子の実際のホログラム値に従って変化させるだけであることを意味する。これを実現するために、変調制御器は、個々の変調セルごとに変調素子に割り当てられる複素物体走査値の個別の値成分を提供する。
【0014】
従って、各変調素子は変調セルの組み合わせを備え、変調セルは、位相変調光変調セルまたは振幅変調光変調セルの形態で実現されてもよい。このことは、変調セルの構造及び局所的な配置に応じて、各変調素子が入射する伝播光波場の部分光波を、波の位相については一方の変調セルを用い、波の振幅については他方の変調セルを用いる、あるいは波の位相または振幅について全ての変調セルを用いて変調可能であることを意味する。
【0015】
例えば二相符号化方法に従って、変調素子ごとに異なる値成分によって、互いに無関係にアドレス指定可能である、位相変調のみを提供する変調素子による上述のような空間光変調の一般的な原理は、国際公開第2007/082707号において出願人により既に説明されている。
【0016】
上記の公開特許出願は、複数の位相値によって空間光変調装置を符号化する好適な方法を示す。複素物体走査値は、同一の絶対振幅値及び異なる位相値を有する2つの位相成分の和により表され、同一の変調アレイの2つの隣接する位相変調光変調セルに符号化される。これは、位相ψ及び0〜1の範囲の振幅aを有する各複素物体走査値が同一の振幅値及び位相値ψ±acos aを有する2つの複素位相成分の和から構成されることを意味する。上記の国際特許出願では、変調素子を構成する位相変調セルの数が必ずしも2に限られないことも述べられている。
【0017】
位相変調のみを実行する空間光変調器は、振幅変調のための変調セルによる光波変調と比較して大きな利点を有する。二相符号化を伴う光変調装置の場合、変調セルは位相設定ごとに最大限の光透過率を実現するので、より高い強度で再現できる。二相符号化方法の別の利点は、再現中に更によい波長従属性を示すので、カラービデオシーンを高品質で再現できることである。
【0018】
すなわち、上述の二相符号化方法は、変調素子の隣接する変調セルにより変調された干渉を発生可能な光波場の部分光波が、複素物体走査値のすべての位相成分によって同時にアドレス指定されるような1つの変調器により変調された、部分光波と同一の干渉効果を示す状況を実現するということである。
【0019】
しかし、変調素子を形成するために組み合わされる変調セルは変調アレイの中で互いに並列に位置しているので、空間的に位置がずれており、ホログラムの種類、再現された物体光点を観測する観測者の眼球の位置、及び(例えば、フーリエホログラムの場合に)変調セルにより再現される物体光点の位置によって異なる大きさの、遅延としても知られる光路長の差を示すため、上記の方法を実現することは困難である。このような変調セルのずれは、変調素子の変調セルの間の位相差に影響を及ぼす。その位相差は、観測者の眼球の位置及びシステムの光軸に関する再現物点の所望の角度位置(ホログラムの種類によって異なる)によって決まり、またビデオシーンの再現の品質を損ねるため、各変調素子の修正が必要である。先に説明したように、観測者位置が変化するたびに伝播中の変調光場を光学的に追跡する、位置制御装置及び眼球検出器を有するホログラム再現システムにおいて、眼球検出器により検出された眼球の位置に関して数mmの観測者位置許容差を設定することは非常に有利である。光路長の差が発生すると、ホログラム再現システムの前方にいる観測者がホログラム再現を観測中に、自由に動けるわずかな範囲が相当に狭められてしまうだろう。
【0020】
この問題を解決する方法は、名称「Light modulator for representing complex‐valued information」の国際公開第2008/132206号の中で示唆されている。この方法によれば、変調アレイの光路に、すなわち変調アレイの前段及び後段の少なくともいずれかに、好ましくは変調セルと密接する状態で複屈折材料で形成された構造化遅延層が配置され、該層は、各変調素子の1つの変調セルについて、変調素子の他のセルを通る光路長に対する、放射された変調部分光波の光路長の、角度位置に特定付けられる適応に影響を及ぼす。この遅延層の層厚は、遅延層が光路長を変化させることで、各変調素子の変調セル間の光路の角度位置ごとの変化を相殺し、該角度位置ごとの変化を少なくとも部分的に補償するように選択される。この方法は、非常に微細に構造化されているが、同時にかなりの厚さを有する層を必要とするという欠点を有する。
【0021】
名称「Device for determining the position of an object in an arbitrary section of a pencil of rays」の独国特許出願公開第2058418号において開示される装置は、特に点光源及びサヴァール板を利用する。該サヴァール板は、2つの直列に配置された、主要部が垂直状態に回転されて配置された複屈折単軸板型結晶を有しており、光軸と結晶面がなす角度は、双方の結晶で同一である。この特許出願の教示によれば、サヴァール板は、初めに点光源から放射されてサヴァール板の入射側に入射した光束を、互いに直行する偏光を示し、オリジナルと対称な平面の入射側に位置する2つの直線偏光仮想光源の発生を呈する、2つの直線偏光部分光束に分割する。更に、本特許出願の教示によれば、仮想光源が鏡像対称配置で配置されている平面の各点で、互いに垂直の偏光を示す部分光束間に光路長の差は存在しない。それ以外のすべての点では、部分光束間には光路長の差がある。
【0022】
本発明において「サヴァール板」という用語は、少なくとも1つの複屈折板型単軸結晶を示すために使用される。更に、複屈折材料は、石英または方解石などの従来の結晶に限定されるべきではなく、例えば配向ポリマー及び適切なポリマー層の少なくともいずれか、あるいは適切な膜により複屈折材料を形成することも可能である。
【0023】
本発明に関して、変調セルが実際にどのように設計されるかは重要ではない。例えば、液晶セルまたは液滴駆動セルから成る変調アレイを使用することが可能である。変調セルは、光波場の光波が通過する間または反射されるときに変調アレイがそれらの光波を変調するような性質であってもよい。
【0024】
位相変調光変調セルを有する空間光変調装置に代わる装置として、振幅変調光変調セルのみを備えた変調アレイも可能であり、その場合、各変調素子は複数の振幅変調光変調セルから構成される。2つの振幅変調光変調セル、すなわち、複素数の実部に対応する光変調セル、及び虚部に対応する光変調セルを備える光変調装置の符号化方法は、バイアス符号化として知られる。3つの振幅変調光変調セルを備える光変調装置の別の符号化方法は、ブルクハルト符号化として既知である。
【0025】
変調アレイの複数の変調セルの性質に関わらず、個々の変調セル間で光路長の角度位置ごとの差が現れることで、複数の隣接する変調セルを有する複素変調素子では、再現の品質を相当に劣化させる位相誤差が常に発生する。
【発明の概要】
【0026】
従って、本発明の目的は、横方向に千鳥配列になるような位置に配置された複数の変調セルを有する複素変調素子を備えた空間光変調装置において、同一の変調素子についての千鳥配列された変調セルの間の光路長差を補償する補償手段を提供することである。さらに該補償は、例えば光波場を発生する働きをする光源において温度変化の影響として生じる、変調に使用される光の波長の変化とは、少なくとも広い範囲で無関係に実行されるべきである。
【0027】
変調素子から出射する変調された部分光波は、ホログラム再現において離散複素ホログラム値によって変調可能な単一の小型変調セルで部分光波が発生したかのように、同様の影響を受けるべきである。従って、本発明によって処理された部分光波は、光路長の差によって起こる固有の位相差をまったく示さない。
【0028】
本発明は、個々の変調セルまたは離散的に符号化可能である変調セルから構成される、少なくとも1つの変調アレイを備える光変調装置に基づく。変調セルは変調素子を形成するように組み合わされる。変調セルは、空間構造化方式でホログラム情報によって伝播中の光波場の干渉を発生させることが可能な光波を変調できる。各変調素子の変調セルは、伝播中の光波場の伝播方向に関して変調アレイの中で並列に配置され、空間的に配置された物体光点をホログラムに再現または表現するために、各変調素子は、予め設定可能な複素物体走査値または離散複素物体走査値によって符号化されてもよい。
【0029】
上記の欠点を回避するために、本発明によれば、光変調装置において変調アレイの変調セルは、実質的に共通な、即ち実質的に空間的に重なる位置を通って、実質的に共通の伝播方向に変調素子から出射するような、変調された光波多重を形成するための、屈折あるいは回折により変調セルにより変調された部分光波を出射側において各変調素子について結合可能な光波多重化手段を割り当てられる。
【0030】
本発明に関する限り、「光波多重化手段」または「出射された部分光波の空間分割多重化を行う光学多重化手段」は、本明細書において、少なくともある特定の部分光波が、光学配列の入射側界面の異なる位置から入射した部分光波が実質的に共通の伝播方向に、光学配列の出射側界面の共通の出射位置から出射するように、波偏向素子の構造体によって、光学配列または光学部品ユニットの内側で実質的に平行な向きに偏向する光学配列で構成されると理解されるべきである。
【0031】
空間分割多重化を実行するための光学多重化手段は、変調アレイに可能な限り近接して配置されかつ変調素子の変調セルの形状、大きさ及び位置と一致する形状、大きさ及び位置を有する光学波偏向手段から成る面構造を有する平坦な光学板部の形で構成されることが好ましく、光波の出射位置は、少なくとも変調セルの一部に対して光波の入射位置に対して移動して配置される。
【0032】
変調素子ごとの所望の空間光波多重化は、各変調素子についての全変調セルの部分光波が出射側界面において、前述の共通出射位置を通って共通の伝播方向へ出射するように、変調アレイの光軸とは異なる光学伝達軸を内側に有する波偏向素子が、各変調素子の少なくとも一部の変調セルに割り当てられることで実現される。光学多重化手段は変調素子ごとに個別の波出射位置を実現する。
【0033】
空間分割多重化を実行する光学手段は、変調素子の変調セルの形状、大きさ及び位置に整合された構造を有する体積ホログラム、マイクロプリズムアレイ、及び複屈折光学素子の少なくともいずれかを含むフィルム構造のような平坦な光学素子で構成されうる。
【0034】
(光束結合器としての偏光格子)
複数の異なる変調セルを通過する部分光がそれぞれ異なる光路長で進む場合、規定された光干渉効果または所望の光干渉効果を維持するために、一方の光変調セルを通過した光の部分と他方の光変調セルを通過した光の部分との間の光路長の差を、位相シフトによって修正することが一般に必要である。更に、先に述べた通り、異なる変調セルを通過した部分光の間には温度変動によって誘起される光路長の変化もある。
【0035】
該修正は、例えば図8に示されるような、光を対称に偏向する構成により実現できる。まず、1つの変調セルから入射する光、及び配列内の隣に位置する別の変調セル(画素)から入射する光のそれぞれは、変調セルの中心間距離あるいは画素ピッチ間隔の半分だけ偏光される。このような配列は、互いに角度を成して回転される2つのサヴァール板、あるいは2つではなく合わせて4つの体積格子(図6または図7を参照)を必要とし、更に、2つのサヴァール板の間または2対の体積格子の間に偏光回転層が必要とされる。
【0036】
体積格子の他に、例えば偏光格子などの他の種類の格子構造も知られている。多くの場合、+1次回折で50%の効率を示し、−1次回折で50%の効率を示す他の既知の格子とは異なり、それらの格子は、いずれか一方の第1次数(+1次または−1次のみ)で最大効率で光束を偏向する回折格子あるいはビーム偏光用として作用する。
【0037】
+1次回折では偏光格子により直線偏光光の50%が偏向され、−1次回折で50%が偏向されるが、偏光格子は、それらの第1次数のうちのいずれか一方のみで、円偏光光の100%を偏向する特性を有する。どの次数かは、時計回り方向の円偏光光が入射するか、反時計回り方向の円偏光光が入射するかによって決まる。
【0038】
更に、文献[1](Chulwoo Oh及びMichael J. Escuti、「Achromatic polarization gratings as highly efficient thin-film beamsplitters for broadband light」、Proc. SPIE、第6682巻、第628211号、2007年)に記載の、異なる波長に対して高い回折効率を示す無彩色偏光フィルタも知られている。
【0039】
本発明の更なる目的は、2つの位相画素が対称の光束光路を有することにより、例えば温度及び他の周囲条件によって生じる厚差に関して更に大きな許容差を示すように、2つの位相画素の組み合わせ及び最小数の格子構造配列を実現することである。
【0040】
この目的は、第1に既知の方法とは異なり、2つの位相画素の出射点に構造化λ/4層(λ/2層ではなく)を配置することにより達成される。
【0041】
2つの変調セルにおけるλ/4層の向きが異なることによって、変調アレイまたはSLMの出射点の直線偏光に基づいて変調素子の2つの位相画素のうち一方(マクロ画素)により放射された光に反時計回り方向の円偏光が与えられ、他方の位相画素により放射された光に時計回り方向の円偏光が与えられる。
【0042】
第2に体積格子の代わりに偏光格子が使用される。2つの位相画素の円偏光が異なるため、偏光格子は2つの位相画素から入射する光を逆方向に偏向する。その後、2つの画素から入射した光は、体積格子のスタックに類似する構造の素子であるスペーサを通過し、互いに向かって、この場合には対称に動く。光束が偏向されるため、スペーサは、体積格子を使用する場合より薄い構造であってもよく、これが体積格子と比較した場合のもう1つの利点である。光の偏光は、第2の偏光格子により再び直線に戻されるか、または2つの異なる伝播方向から共通の伝播方向へ偏向される。
【0043】
その後、偏光子は重なり合った光を結合して複素値を形成する。これは、サヴァール板または体積格子スタックの場合と同一の過程である。しかし、この偏光子は、サヴァール板または体積格子を有する構成の透過方向の向き、すなわち垂直または水平の方向と比較して45°回転された透過方向の向きを有する。
【0044】
このことはジョーンズ行列式により説明できる。
【0045】
時計回り方向の円偏光は、以下に比例するジョーンズベクトルを有する。

【0046】
反時計回り方向の円偏光は以下のジョーンズベクトルを有する。

【0047】
2つの位相画素(変調セル)の光が位相φ1及びφ2をそれぞれ有する場合、その和は以下のベクトルを有する。

【0048】
水平偏光子は以下のジョーンズ行列を有する。

【0049】
これは、二相符号化で意図されるようにその偏光子の後段で以下の複素数が実現されることを意味する。

【0050】
あるいは、垂直偏光子の場合、以下の複素数が実現されるだろう。

【0051】
これは、体積格子、直線偏光及び+45°または−45°の偏光子に対して実現されると考えられる結果と一致する。
【0052】
光束の結合は、特に赤、緑、及び青の光のカラーディスプレイにおいて実現されるべきである。
【0053】
文献[1]に記載されるような無彩色格子を使用可能である。しかし、1つの波長に対してのみ最適化される更に単純な格子を使用することも可能である。その場合、他の波長で回折損失が起こる。しかし、回折されなかった光がホログラムディスプレイを見ている観測者を妨げないように、絞りによりその光を阻止できる。
【0054】
更に、先に説明した方法に関連して提案したように、波長の変化に伴って変化する偏向角度を絞りにより補償できる。
【0055】
図9は、文献[2](Jihwan Kim他「Wide-angle nonmechanical beam steering using thin liquid crystal polarization gratings」、Proc. SPIE、第7093巻、第709302号、2008年)に記載される従来の偏光格子の機能原理を示す。図9は動的素子を示す。しかし、本発明に関連して受動素子を使用することも意図される。
【0056】
図10は、体積格子における光束光路(非対称)を示す。画素P01の後には第1の向きを有するλ/2板が配置され、画素P02の後には異なる向きを有するλ/2板が配置される。図11は、偏光格子を有する構成における光束光路(対称)を示す。画素P01の後には第1の向きを有するλ/4板が配置され、画素P02の後には異なる向きを有するλ/4板が配置される。
【0057】
図12は例示的な構成を示す。直線偏光(太い実線)を放射する2つの画素(符号化可能な変調セル)P1、P2の後に構造化λ/4層QWPが配置される。SLM(変調アレイ)により放射される光の偏光方向に対して一方の画素P1では+45°回転され、他方の画素P2では−45°回転される光軸が図12に示される。この光軸を通して円偏光が発生される(赤い環状矢印により示される)。
【0058】
図12に示される実施形態によれば、第1の偏光格子Pg1は光をその偏光に従って偏向する。光が適切な厚さのスペーサDL(薄いガラス板またはポリマー膜)を通過し、空間的に重ね合わされた後、光は第2の偏光格子Pg2により逆方向に偏向されるので、2つの画素から入射した光は平行に出射する。それらの素子の後段に、0°または90°で直線偏光子Polが配置される。
【0059】
偏光格子は、円偏光の回転方向を変化させる特性、すなわち、時計回り方向の円偏光から反時計回り方向の円偏光に変化させ、逆に反時計回り方向の円偏光から時計回り方向の円偏光に変化させる(同様に図12に示される)特性を有する。
【0060】
同一の種類の(すなわち、格子における分子の配向が同一である)2つの格子を上記の構成で使用することができるため、該特性は光束結合器としての用途に非常に有利である。
【0061】
円偏光は、第1の格子により偏向されることにより偏光の回転方向を変わるため、同一の種類の第2の格子により逆方向に偏向される。このように、光路に次々に配置された同一の種類の2つの格子は所望の平行なずれを発生する。
【0062】
好適な一実施形態によれば、光波多重化手段は、偏光手段と、第1の偏向層Vg1及び第2の偏向層Vg2とを少なくとも備える。偏光手段は、第1の変調セル1を通過する光に予め設定可能な第1の偏光を割り当てるように作用する。偏光手段は、第2の変調セル2を通過する光に予め設定可能な第2の偏光を更に割り当てる。第1の偏向層Vg1は、光の伝播方向において偏光手段の後段に配置される。光の伝播方向に見て第1の偏向層Vg1の後に、規定された距離dだけ離間して第2の偏向層Vg2が配置される。予め設定可能な第1の偏光は、予め設定可能な第2の偏光に対して垂直であってもよい。あるいは、予め設定可能な第1の偏光は、円偏光であり、予め設定可能な第2の円偏光と比較して逆の回転方向を有してもよい。例えば使用される光源の特性上、光が既に適切な構造化偏光を有する場合、一般に偏光手段を使用する必要はない。
【0063】
図7を参照すると、第1の偏向層Vg1の光学的特性は、第1の変調セル1を通過する光は実質的に偏向されず、第2の変調セル2を通過する光は第1の規定角だけ偏向されるように選択される。第2の偏光手段Vg2の光学的特性は第1の変調セル1を通過する光は実質的に偏向されないが、第2の変調セル2を通過する光は第2の規定角だけ偏向されるように選択される。第2の規定角の絶対値は第1の規定角の絶対値と実質的に同一である。
【0064】
図8を参照すると、光の伝播方向において第2の偏向層Vg2の後に、規定された距離だけ離間して第3の偏向層Vg3及び第4の偏向層Vg4が配置される。第3の偏向層Vg3の光学的特性は第1の変調セル1を通過する光は第3の規定角だけ偏向されるが、第2の変調セル2を通過する光は実質的に偏向されないように選択される。第4の偏向層Vg4の光学的特性は第1の変調セル1を通過する光は更に別の第4の規定角だけ偏向されるが、第2の変調セル2を通過する光は実質的に偏向されないように選択される。第3の規定角の絶対値は第4の規定角の絶対値と実質的に同一であってもよい。
【0065】
偏光手段は、異なる向きを特徴とする複数の領域を有する遅延板を備えてもよい。これは、変調セルの機能原理が既に偏光に基づいている場合、または少なくとも変調セルの機能が偏光の使用によって悪影響を受けない場合に特に好ましい。遅延板が使用されない場合、異なる向きを有する複数の領域を備え、ある特定の偏光方向の光を吸収する構造化偏光子が使用されなければならない。しかし、これに関連して光の損失が発生するだろう。この点に関して、構造化偏光子は、偏光子のある特定の予め設定可能な偏光と相互に作用する光に割り当てられる第1の空間領域及び第2の空間領域を備え、第1の空間領域は1つの種類の変調セルに割り当てられ、第2の空間領域は別の種類の変調セルに割り当てられるような偏光子であると特に理解されるべきである。遅延板は、λ/2板または1x+λ/2板または1x−λ/2板であってもよい。すなわち、遅延板はλ/2の相対位相シフトを有する。あるいは、偏光手段は、第1の向きを有する第1の遅延板及び第2の向きを有する第2の遅延板を備えてもよい。第1の遅延板及び第2の遅延板は、それぞれλ/2板であってもよい。その場合、第1の向きを有する第1の遅延板は、第1の変調セル1を通過する光に割り当てられる。第2の向きを有する第2の遅延板は、第2の変調セル2を通過する光に割り当てられる。
【0066】
図11及び図12を参照すると、第1の偏向層Pg1の光学的特性は第1の変調セルP01を通過する光は第1の方向へ第1の規定角だけ偏向されるが、第2の変調セルP02を通過する光は第2の方向へ第2の規定角だけ偏向されるように選択される。第2の偏向層Pg2の光学的特性は第1の変調セルP01を通過する光は第2の角度だけ偏向されるが、第2の変調セルP02を通過する光は第1の角度だけ偏向されるように選択される。第1の角度の絶対値は第2の角度の絶対値と実質的に同一であってもよい。
【0067】
偏光手段は、異なる向きを特徴とする複数の領域を有する遅延板を備えてもよい。これは、変調セルの機能原理が既に偏光に基づいている場合、または少なくとも変調器の機能が偏光の使用によって悪影響を受けない場合に特に好ましい。遅延板が使用されない場合、異なる向きを有する複数の領域を備えた構造化円偏光子が使用されなければならない。しかし、これに関連して光の損失が発生するだろう。遅延板は、λ/4板または1x+λ/4板または1x−λ/4板であってもよい。すなわち、遅延板はλ/4の相対位相シフトを有する。あるいは、偏光手段は、第1の向きを有する第1の遅延板及び第2の向きを有する第2の遅延板を少なくとも備えてもよい。第1の遅延板及び第2の遅延板は、それぞれλ/4板であってもよい。この場合、第1の向きを有する第1の遅延板は、第1の変調セルP01を通過する光に割り当てられる。第2の向きを有する第2の遅延板は、第2の変調セルP02を通過する光に割り当てられる。
【0068】
偏向層Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Pg1、Pg2は、ホログラム、体積格子、及びブラッグ格子の少なくともいずれか、あるいは偏光格子を備える層であってもよい。
【0069】
光の伝播方向において偏向層Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Pg1、Pg2の後に、検光子の効果を有する予め設定可能な光学的特性を持つ偏光手段WGP、Polが配置されてもよい。
【0070】
本発明のすべての実施形態において、変調光多重を形成するために結合されていた変調素子MEの光束に影響を与えるアポディゼーション素子APFが設けられてもよい。アポディゼーション素子APFは、使用される光のそれぞれの波長とは実質的に無関係である中性強度プロファイルを光の伝播方向に対して横方向に有してもよい。そのような強度プロファイルは、分析に基づいて書き表すことができるアポディゼーション関数、例えば余弦関数または三角関数またはブラックマン関数またはハミング関数またはウェルチ窓関数により記述されてもよい。詳細には、アポディゼーション素子APFは、各々が1つの変調素子MEに割り当てられている適切なアポディゼーションマスクを有してもよい。例えば、図16の側面図の左側に示されるようなアポディゼーションマスクは、変調素子MEの結合光束の変調光波多重に影響を与える。アポディゼーションマスクは、例えば検光子として作用する偏光子WGPの後段、すなわち図13にPCにより示される位置に配置されてもよい。
【0071】
カラー表示に適用される場合、変調光多重を形成するために結合されていた変調素子MEの光束に影響を与える適切に設計されたアポディゼーション素子APFCが設けられてもよい。アポディゼーション素子APFCは、使用される光のそれぞれの波長に従属する少なくとも2つの強度プロファイルを有する。それらの強度プロファイルは、光の伝播方向に対して横方向に側方へ予め設定可能な値だけ互いにずれている。このことは、図16の側面図の右側に示される。強度プロファイルは、光の伝播方向に次々に配置された個別の層APFSR、APFSG、APFSBに含まれてもよい。
【0072】
(受動層の製造)
文献[1]及び[2]は、能動的に切り替え可能なLCPGを説明する。
【0073】
それらのLCPGは、光重合可能な材料の配向層がUV放射に露光されるように製造される。逆方向の円偏光を伴う2つのUV光源が使用され、それらの光源の光は重ね合わされる。格子定数は、光源が重ね合わされる相対角度に応じて設定される。適切な配向層を有する基板が存在する場合、例えばスペーサボールにより厚さを規定されるLC層が基板の間に充填される。
【0074】
材料の配向が擬似凍結されるように配向された後に基板上で架橋される他のLC材料も他の用途から既知である。光束結合器としての用途に関して、受動LCPGが使用されるのが好ましい。従って、ここではポリマー材料の使用が提案される。
【0075】
(RBGに対応する光束結合器)
使用される光の波長に関連して考慮されなければならない2つの異なる影響がある。
【0076】
(a)格子の回折効率は一般に波長に伴って変化する。この影響は、通常格子の厚さによって異なる。
【0077】
(b)回折角度も、一般に波長に伴って変化する。これは、波長と格子定数との比によって決まる。
【0078】
(a)回折効率に関して:
過去の文献[1]は、全可視範囲にわたり高い回折効率を有する特殊な偏光格子を説明する。しかし、その格子でも赤色光、緑色光、及び青色光に対して異なる角度を有する。
【0079】
更に、印加電圧に応じて異なる波長に対して式dΔneff(V)=λ/2が任意に満たされるように、アレイ中のLC分子をそれぞれ制御し、部分的に配向することにより能動LCPGにおける有効複屈折を変化させることも、従来の技術で説明されている。
【0080】
これにより回折効率も向上するが、回折角度は変化しない。その素子は、色の時分割多重化によってホログラムディスプレイで光束結合器として使用可能であり、適切な電圧を印加することにより、格子は実際に処理される色に適合される。能動格子は、格子自体がアドレス指定されかつそのアドレス指定が光源及びSLMの制御と同期されることを想定する。
【0081】
色の空間多重化を実現するために、製造工程の間に個別の画素列でLC材料に異なる電圧を印加し、LC材料をその状態で重合することが可能だろう。
【0082】
(b)回折角度に関して:
光束結合器として使用することに関して、赤色光、緑色光及び青色光に対して同一の回折角度を実現することが特に非常に重要である。上記の方法はこの必要条件を満たさない。
【0083】
同一の回折角度を実現できる好適な方法は、SLMの色の空間分割多重化と一致して格子周期の空間分割多重化を実行する方法である。このために、基板の配向層の露光中にマスクが使用され(上記の文献の「Manufacture of passive layers」の章を参照)、このマスクは領域の約2/3をストライプ状に被覆する。すなわち、マスクは他の2つの色の色画素に対応する部分を被覆する。次に、2つの露光UV光源の角度は、1つの色(RGB)に対して所望の格子定数を実現するように適合される。マスクを移動し、それに従って角度を変更しつつ、この処理は3回繰り返される。
【0084】
複数の格子が重ね合わされるか、あるいは直列配置で互いに積み重ねられるブラッグ格子とは異なり、重ね合わされていない3つの格子が交互配置される状態で得られる。
【0085】
すべての波長に対して高い回折効率を示す文献[1]による従来の格子構造を、個別の波長で同一の回折角度を有する本実施形態と組み合わせることができる。
【0086】
あるいは、1つの波長に対して高い回折効率が実現されるべきであり、他の波長に対しては、回折されなかった光が観測者に到達しないように、その光が何らかの方法で除去されるのであれば、この方法を単独で使用できる。これは、その光の出射位置、出射角度または場合によっては偏光を利用することにより実行可能である。
【0087】
(数値の例)
従来の技術によれば、偏光格子において層厚と格子定数との比は限定される。この限界は、LCの材料特性、例えばその複屈折特性によって決まる。
【0088】
層厚dに対して条件dΔn=λ/2が満たされなければならないので(式中、Δnは屈折率差でありかつλは波長である)、格子定数は最小であり、従って、偏光角度は最大である。
【0089】
実験構成において、約6μmの格子定数を有する格子が既に説明されている。理論上の限界は約2μmであると思われる。従って、偏向角度は約(2×)5°である。
【0090】
格子+スペーサ+格子から成る構成は、通常、同一の屈折率差Δnを有する材料から製造されたサヴァール板の厚さの約1/2〜1/3の厚さを有すると想定することができる。しかし、そのような構成において、偏光格子自体はわずか数μm、通常は2〜3μmの厚さである。画素ピッチが60μmである場合、スペーサは200〜300μmの範囲の厚さを有するだろう(格子定数は約4〜6μm)。
【0091】
(偏光格子スタック)
可能なもう1つの方法は、1つの偏光格子の代わりに相前後して配置された複数の偏光格子のスタックを使用することである。偏光格子は入射角によって作用が大きく左右される。
【0092】
しかし、総偏光角度が一定である受動格子を使用する場合、順次大きくなる入射角に関して後続して配置される格子を最適化することが可能である。
【0093】
従って、複数の偏光格子を直列配置で配列することにより、一般に偏向角度を大きくし、全体の厚さを減少することができる。
【0094】
(無彩色屈折による光束結合)
先に示したように、複素値を生成する二次画素、すなわち、画素を通過する光の位相及び振幅の双方を変調または変化させられる二次画素(変調素子)を形成するために2つの位相シフト画素(変調セル)を組み合わせるという目的を達成する方法として、屈折を利用する方法(サヴァール板)及び回折を利用する方法(体積格子)がある。
【0095】
本明細書の特定の目的は、順次色表現に関連して屈折を利用する方法の無彩色オプションを提案することである。
【0096】
図13は、2つの位相画素を利用する複素値画素の生成を示す。図13は、複素値画素PCを形成するために、構造化された2分の1波長λ/2板及び偏光子WGPと組み合わされたサヴァール板SPを示す。これにより形成される画素の例示的な余弦型アポディゼーションプロファイルは図示されない。すなわち、画素は均一に透明な画素として示される。通常軸と異常軸との屈折率差はΔnoe=0.2であり、これは、TM偏光の偏向角度αTM=7.384°及び板のμm厚さごとの0.1296μmの光束ずれに相当する。図13はそれらの関係を縮尺通りに示す。
【0097】
複屈折材料の中で、異常光束は通常光束に対してある特定の相対角度を成して伝播する。しかし、複屈折材料から光学等方性媒体への出射点において、正常光束及び異常光束は再び平行になるように方向を規定される。従って、ある特定偏光の光は、複屈折材料の入射側界面で、複屈折材料の複屈折の大きさ及び光軸の向きの双方によって決まる角度の偏向を与えられ、出射側界面では逆方向への偏向を与えられる。これにより、複屈折体の厚さによって大きさが決まる平行な位置ずれが観測される。この効果は、複屈折材料がコプレーナ板の形である場合に特に明らかに観測される。
【0098】
図14は、順次表現における分散の問題を示す。図14は、赤色波長及び青色波長に対する分散n=n(λ)によって生じる、横方向のずれsの誤差Δsを示すサヴァール板SPを示す。サヴァール板SPにおいて、例えば余弦型アポディゼーションプロファイル(図示せず)の中心に、緑色波長の光束を位置づける設計角度がTM偏光光束に使用される場合、青色光束に対してはそれより大きい角度が得られ、赤色光束に対してはそれより小さい角度が得られるので、正の光束ずれまたは負の光束ずれ、すなわちアポディゼーションプロファイルの一方の側または他方の側に向かう光束のずれが起こる。
【0099】
順次色表現に関連して、問題は、個々の複素値画素のアポディゼーションフィルタの中心が2つの色、すなわちこの例では赤及び青により照明されないことである。
【0100】
その問題を解決する単純な方法は、アポディゼーションフィルタの寸法を縮小すること、すなわち、例えばフィルファクタFFを0.8から0.6に減少させることである。しかし、これは透明領域の約50%を除去すること、すなわち吸収による放射力の50%を排除してしまうことを意味する。更に、フィルファクタを減少させた場合、観測者ウィンドウに隣接する回折次数の抑制効率は低下する。
【0101】
別の解決方法は、使用される色の空間分割多重化を実行すること、すなわち1次元符号化3D物体に対して、例えば水平視差のみの(HPO)ホログラムに対して問題を生じない色フィルタの空間構造化配列を使用することである。これは、明らかに人間の眼球の分解能以下の3D再現を十分に提供する画素を利用可能な場合に実施可能な方法である。これは、図15に複素値画素を形成するように組み合わされた位相画素の空間分割多重化の形で示される。例えば、左側の第1の列S1Rは赤色フィルタを有する。その右側の列S2B(間に吸収黒色列SBを挟む)は、青色フィルタを有する。更にその右側の列S2G(間に吸収黒色列SBを挟む)は、緑色フィルタを有する。この構成は周期的に続く。
【0102】
別の解決方法は、「中性密度アポディゼーションフィルタ」の代わりに色知覚アポディゼーションフィルタ分布、すなわち、グレイスケール値の分布の形の強度フィルタプロファイルまたは透過率フィルタプロファイルを使用する。これは、グレイスケール値型または中性密度型のアポディゼーション関数(APFにより示される左側のフィルタ)から横方向にずれた色知覚アポディゼーション関数(APFCにより示される右側のフィルタ)への遷移の形式で図16に示される。カラースライドの場合の反転フィルムの層構造と同様に、色選択フィルタ処理は、例えば順次配列される層APFSR(赤)、APFSG(緑)及びAPFSB(青)として実現されてもよい。問題を解決するために、最大透過率点はそれぞれ対応するスペクトル色によって決まる。しかし、すべての色に対して曲線因子は同一であってもよい。更に、例えばエネルギー効率または観測者ウィンドウに隣接する回折次数の抑制をスペクトルに関して最適化するために、アポディゼーション関数の色選択修正が実行されてもよい。
【0103】
図16を参照すると、強度分布の中心は例えば10μmより小さいため、ホログラム直視型ディスプレイによるホログラム再現において、知覚されないスペクトルの異なる横方向のずれを有することがわかる。
【0104】
更に別の解決方法は、異なる分散、すなわち正常分散及び異常分散を示す少なくとも2つの異なる複屈折材料SP1、SP2を使用することである。これは、サヴァール板が2つの層SP1、SP2から構成されることを意味し、例えば第1の層SP1は、青色スペクトル線に対して最大の屈折率を有し、赤色スペクトル線に対して最小の屈折率を有するが、第2の層SP2は、青色スペクトル線に対して最小の屈折率を有し、赤色スペクトル線に対して最大の屈折率を有する。
【0105】
2つの板SP1、SP2の厚さの比は、屈折率差と緑色スペクトル線との比に比例する。板の厚さはすべてのスペクトル色に対して2乗横方向位置偏差が最小になるように選択されてもよい。2つの板SP1、SP2から構成される色修正サヴァール板は図17に示される。
【0106】
先に説明した実施形態によれば、光波多重化手段は、少なくとも1つの偏光手段及び予め設定可能な光学的特性を有する少なくとも1つの複屈折媒体SPを備える。偏光手段は、第1の変調セルP01を通過する光に、予め設定可能な第1の偏光を割り当てるように作用する。偏光手段は、第2の変調セルP02を通過する光に、予め設定可能な第2の偏光を更に割り当てる。複屈折媒体SPは、光の伝播方向において偏光手段、第1の変調セルP01、及び第2の変調セルP02の少なくともいずれかの後段に配置される。予め設定可能な第1の偏光は、予め設定可能な第2の偏光に対して垂直であってもよい。
【0107】
複屈折媒体SPの光学的特性は、第1の変調セルP01を通過する光は複屈折媒体SPにより実質的に偏向されず、第2の変調セルP02を通過する光は複屈折媒体SPの入射側界面で第1の規定角だけ偏向されるように選択される。第2の変調セルP02を通過する光は、入射側界面と共面である複屈折媒体SPの出射側界面で第2の規定角だけ偏向される。第1の角度の絶対値は第2の角度の絶対値と実質的に同一であってもよい。従って、第2の変調器P02を通過する光は、複屈折媒体SPを通過した後、実質的に平行な位置ずれを伴って複屈折媒体SPから出射する。
【0108】
図6〜図11、図12〜図14、図17、図20及び図21において、偏向層Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Pg1、Pg2と、もしあれば、遅延板及び複屈折媒体SP、SP1、SP2、SP3、SV1、SV2の少なくともいずれかの光学的特性とは、光束の方向がそれぞれの図の図平面に実質的に位置する方向に向くように選択される。しかし、関連する素子の光学的特性の他の設定も可能であり、その場合、光束はそれぞれの図の図平面から外れる方向へ偏向されてもよい。変調素子の変調光波多重は、一方向への(例えば、変調セルの列に沿った)横方向のずれを伴うだけでなく、第1の方向及び第2の方向への横方向のずれも伴って光波多重化手段から出射する。
【0109】
伝播方向において、正常分散または異常分散を伴う複屈折媒体SP1の後に、異常分散または正常分散、すなわち複屈折媒体SP1とは逆の分散を伴う別の複屈折媒体SP2が配置されてもよい。これは図17に示される。その場合、2つの複屈折媒体SP1、SP2の厚さの比は予め設定可能であり、好ましくは、2つの複屈折媒体SP1、SP2の屈折率差比、及び、例えば緑の波長光の予め設定可能な波長と例えば赤及び青の波長光の少なくとも1つの別の予め設定可能な波長との比に応じて決まる。
【0110】
少なくとも1つの複屈折媒体を使用する場合、図8に示される方法に類似する方法による光束の結合も可能である。これを実現するために、光の伝播方向において複屈折媒体SP2の後に別の複屈折媒体SP3が配置されてもよい。この別の複屈折媒体SP3の光学的特性は、別の複屈折媒体SP3が第1の変調セルP01を通過する光を複屈折媒体SP3の入射側界面で第3の規定角だけ偏向し、入射側界面と共面である複屈折媒体SP3の出射側界面で第4の規定角だけ偏向するように選択される。別の複屈折媒体SP3は、第2の変調セルP02を通過する光を実質的に偏向しない。第3の規定角の絶対値は、第4の規定角の絶対値と実質的に同一であってもよい。第1の複屈折媒体SP1に入射した光束は、第2の複屈折媒体SP3から出射するときに実質的に平行な位置ずれを与えられる。2つの複屈折媒体SP1及びSP3の間にλ/2層が配置され、この層は層を通過する光の偏光方向を90°回転させる。SP1及びSP2の光軸(両方向矢印により示される)は直角の向きを有する。
【0111】
光の伝播方向において複屈折媒体SP;SP1、SP2の後段に、検波子の効果を有する予め設定可能な光学的特性を有する偏光手段WGPが配置されてもよい。
【0112】
本発明の教示を実現し、発展させる可能性はいくつかある。そのために、特許請求の範囲第1項に続く従属特許請求の範囲及び添付の図面を含む以下の本発明の好適な実施形態の説明を参照する。本発明の好適な実施形態及び添付の図面の説明と関連して、教示の一般に好適である物理的形態及び発展形態を説明する。
【図面の簡単な説明】
【0113】
【図1】本発明の一実施形態に係る空間光変調器の詳細を示す図である。
【図2】マイクロプリズムのアレイ及び体積格子によって出射される変調部分光波を空間多重化する光学多重化手段の第1の実施形態を示す図である。
【図3】回折光を使用し、マイクロプリズムのアレイ及び体積格子によって出射された変調部分光波を空間多重化する光学多重化手段の第2の実施形態を示す図である。
【図4】回折光が使用され、開口マスクを有する空間周波数フィルタにより非回折光が除去される出射された変調部分光波を空間多重化する光学多重化手段の第3の実施形態を示す図である。
【図5】偏光光波分割器によって出射された変調部分光波を空間多重化する光学多重化手段の第4の実施形態を示す図である。
【図6】、
【図7】、
【図8】光の波長の変化に関して補償される偏光光束分割器を有する光学多重化手段の実施形態を示す図である。
【図9】文献[2]に記載される従来の偏光格子の機能原理を示す図である。
【図10】体積格子の光路(非対称)を示す図である。
【図11】偏光格子を有する構成における光路(対称)を示す図である。
【図12】本発明の一実施形態を示す図である。
【図13】、
【図14】本発明の更なる実施形態を示す図である。
【図15】複素値画素を形成するために組み合わされる位相画素の空間分割多重化を示す図である。
【図16】「中性密度」アポディゼーション関数(左側)及び横方向にずれた色知覚アポディゼーション関数(右側)を示す図である。
【図17】、
【図18】、
【図19】、
【図20】、
【図21】、
【図22】本発明の更なる実施形態をそれぞれ示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0114】
変調アレイの各変調セルのすべての光学多重化手段は同一の構造を有するので、図面を単純に、わかりやすくするために、以下の説明の中で参照される図面には変調アレイの1つの変調器のみが示される。
【0115】
同様の理由で、以下の説明中、規則的に構造化された変調セルを有し、各変調素子が変調アレイの2つの隣接する変調セルを含む変調アレイを例に、光学変調手段は説明される。このような空間光変調器の典型的な一例は、上述の二相符号化方法を実現するように構成された空間位相変調光変調器である。一般に、該構造は3つ以上の変調セルを含む変調素子に対応してもよい。
【0116】
以下に示される実施形態は振幅変調に同様に適応されてもよい。振幅変調に適応される場合、変調素子ごとに少なくとも1つの変調セルに対して光学位相シフト層が更に必要とされるだろう。バイアス符号化方法が採用される場合、2つの変調セルの一方に対してλ/2の一定の位相シフトが必要とされ、ブルクハルト符号化方法が採用される場合には、3つの変調セルのうち2つのセルに対して2π/3及び4π/3の位相シフトがそれぞれ必要とされる。
【0117】
図1は、第1の変調セルP01及び第2の変調セルP02を有する変調素子MEを示す。2つの変調セルは変調アレイの中で互いに隣接して配列される。干渉を発生することが可能な光波場LWは、変調アレイの変調素子MEを照明する。ホログラム再現を生成するために、各変調セルP01、P02が方向Dと平行な光軸a01、a02を有する、個別に変調された部分光波LWP1及びLWP2をそれぞれ放射するように、変調制御部CUは、複素ホログラム値の位相成分によって各変調セルP01、P02を符号化する。本発明によれば、光学多重化手段のアレイは変調セルP01、P02に可能な限り近接して配置される。光学多重化アレイは、変調アレイP01、P02に空間的に割り当てられた波偏向手段U1、U2から成る構造を備える。波偏向手段U1、U2は互いに異なる光軸を有する。同一の変調素子MEから放射される部分光波LWP1及びLWP2が光学多重化手段のアレイにおいて組み合わされ、共通の光軸a0を有する変調共通部分光波LWP0の波多重を形成するように、波偏光手段U1、U2の光軸は互いに関して向きを規定される。
【0118】
本発明の好適な一実施形態によれば、光学多重化手段のアレイは、積み重ねられた光学板から成る光学板部を備える。光学板は、例えば予め設定可能な光学的特性、特に複屈折特性を有する複数の透明なポリマー層を備えてもよい。
【0119】
図2は、各変調素子MEの変調セルP01、P02に対して、変調セルP01、P02の所望の光学波偏向機能を実現するマイクロプリズムを構成するマイクロプリズムアレイPAを備える上記のような光学板部の第1の実施形態を示す。この光学板ユニットは、変調された共通部分光波LWP0の波多重を形成するために、変調素子の部分光波LWP1及びLWP2を更に組み合わせる。これは、ブラッグホログラムとして知られる体積ホログラムBGを光学板部の光路に更に配置することにより実現される。この体積ホログラムBGは、伝播中の部分光波LWP1及びLWP2の交差を防止し、変調素子の変調セルP01及びP02により先に変調されていた2つの部分光波LWP1及びLWP2を光路長差を生じることなく方向Dへ誘導するという機能を有する。体積ホログラムBGは、規定された波長を有する光波を著しく限定された偏向角または出射角で厳密に偏向するように符号化される。規定された波長として、カラー再現に必要とされるすべての光波長、例えば赤、緑、及び青の色の波長が考慮されなければならない。
【0120】
図3は、図2の光学板部の第2の実施形態を示す。2つの実施形態は、干渉を発生することが可能な光波場LWの設定または入射角の点で異なる。図3に示される実施形態において、干渉を発生することが可能な光は、光軸に対して斜めに、空間光変調装置または変調セルP01、P02に入射する。このように斜め方向から入射することにより、再現に1次回折を使用可能である。図2の実施形態の場合、干渉を発生することが可能な光波場は、光軸と平行に空間光変調装置に入射するため、再構成に0次回折を使用可能である。
【0121】
図4によれば、配置された2つの無限焦点レンズアレイ系L1、L2間に配置された開口マスクAPを有する、追加の伸縮自在フィルタアレイ(TFA)により、例えば0次回折次数の光波場の入射方向についての隣接する空間回折次数の光や使用されない周期間隔の光のような望まれない部分光の抑圧が実現される。同時に、配置された2つの無限焦点レンズアレイ系L1、L2により、変調アレイの変調素子MEの変調セルの曲線因子を光学倍率に従って増加させることができる。
【0122】
図5は本発明の別の実施形態を示す。本実施形態において、偏光光波分割器Polは各変調素子の部分光波を結合する。空間多重化を実現する光学多重化手段は、変調素子の変調セルP01、P02の部分光波の各々にそれぞれ別の偏光を割り当てる偏光要素Spol及びPpolを有する板を変調素子のすべての変調された部分光波LWP1、LWP2に個別の傾斜光軸を割り当てる複屈折コプレーナ板BPと組み合わせて使用する。すべての部分光波の光軸は互いに関して傾斜し、かつコプレーナ板BPの強度はすべての部分光波がその出射側界面で重なり合うように選択される。
【0123】
図6に示されるような偏光光波分割器は、ホログラム再現を生成するように選択された波長の変化に対して高い感度を示す。使用される光の波長に依存する、横方向のずれ及び光の位相関係の変化が得られる。
【0124】
図6及び図7は、図8に示される自己補償光束分割器二重板を実現する基礎を例示する2つの実施形態を示す。Vg1及びVg2は光束分割器として作用する体積格子を示す。
【0125】
平面偏光光束分割器Vg2の後段で、幅aを有する変調セル1の部分光波TEと同様に幅aを有する変調器2の部分光波TMとを完全に重ね合わせるために、2つの平行な格子平面の間の距離dは、変調器のセル幅ごとにd=a/(2・cos(π/2))、すなわち0.57735μmでなければならない。
【0126】
変調セルの幅が50μmであると仮定すると、偏光光束分割器の0°/60°構造によって厚さd=28.87μmを実現できる。それと比較して、サヴァール板は、Δn=0.2を得るべき場合に385.8μmの最小厚を有していなければならない。
【0127】
偏光された部分光波TE及びTMは、偏光光束分割器の前段で平行であったならば、偏光光束分割器の後段で平行になる。従って、この場合、出射光束の平行度を問題にすべきではない。
【0128】
しかし、光の波長変動は問題になる。変調セルの幅が30μmであり、従って偏光光束分割器二重板の厚さが17.32μmであるとすれば、重なり合う2つの変調セルの間の約2π/10の相対位相差に、Δλ=1nmの波長偏差が起こる。この問題を解決するために、回折角度のより小さな偏光光束分割器構造を選択することが可能である。
【0129】
図6に示されるように、可能な偏光光束分割器偏光構造(偏光光束分割器Vg1、Vg2を有する)は0°/48.2°である。この例では、部分光波TEは偏向されるが、部分光波TMは偏向されない。図7は、TE偏光光を偏向せずに透過し、TM偏光光を回折または偏向する0°/41.2°偏光光束分割器(Vg1、Vg2)を示す。
【0130】
変調セルの幅がa=50μmであり、隣接する変調セル間のクロストークに関するEWプリズム(図示せず)までの最大許容距離がDmax=5×a=250μmであるとすると、θmin=arctan(a/Dmax)=arctan(0.2)=11.31°となる。Δn=0.2である場合、サヴァール板は約7.4°を実現する。
【0131】
実現可能な偏光格子光束分割器構造は数学的には級数の項であるので、使用可能な角度は約11°の範囲にある。しかし、その場合、必要とされる屈折率変化は非常に大きくなる。すなわち、偏光光束分割器構造としての11°の使用は非現実的であるように思われる。
【0132】
しかし、0°/33.557°の偏光光束分割器構造は実際には実現できそうもない。その場合、RGB多重化のために屈折率変化の余裕が更に存在していなければならない。波長がΔλ=1nmで安定している場合、この構造は、結合された変調セル光束のΔφ<2π/20の相対位相差に相当するだろう。
【0133】
ドリフトする可能性があるキー波長の影響を補償するために実現可能ないくつかの方法がある。
【0134】
1つの方法は、動作中に位相シフトを単純かつ容易に補償するために、組み合わされた2つの変調セルから発生される加算信号を使用する。これを実現するために、一方の変調セルの位相は、例えばある特定の目標強度が実現される結果となるように動かされてもよい。これにより、修正位相を導入するための値が生成される。
【0135】
更に、移相干渉計を利用して、<2π/512の精度で組み合わせ変調セルの相対位相を判定するために、1組の、すなわち少なくとも3つの位相シフトを導入することも可能である。
【0136】
わずかな数の光源しか含まないディスプレイの場合、波長ごと及び光源ごとにスペクトルに関して異なる特性を有する2つのダイオードを使用することが提案される。特性曲線が既知であれば、ダイオードの信号から<0.1nmの精度で波長を判定できる。この原理は、例えばCoherent社により提供される波長測定装置WaveMate(登録商標)で採用されている。
【0137】
キー波長が既知である場合、組み合わせ変調セルで設定される相対位相は、キー波長がドリフトした場合に直接修正可能である。その結果、組み合わせ変調セルで相対位相を設定する場合に<2π/256の残留誤差が残るはずである。
【0138】
測定精度を向上し、それにより、波長ドリフトの影響を補償するために、上述のオンライン修正方法は互いに組み合わされてもよい。それとは無関係に、レーザーはΔλ<0.1nmに安定化されてもよい。
【0139】
図8は補償された偏光光束分割器の一実施形態を示す。本実施形態において、図7に示される構成に匹敵する初めの2つの光束分割器Vg1及びVg2によってTM偏光光は回折されるが、TE偏光光は回折されない。更に、図6に示される構成に匹敵する他の2つの光束分割器Vg3及びVg4によってTE偏光光は回折されるが、TM偏光光は回折されない。TE偏光光及びTM偏光光に対して実現されなければならない光束のずれは2分の1だけでよいので、個別の光束分割器Vg1〜Vg4の間の距離は、図6及び図7に示される実施形態における距離より短くてもよい。
【0140】
図8は光の波長のドリフトをいかにして補償できるかを更に示す。Δφrel(Δλ)の補償は、この影響が組み合わせ変調セル全体に同等に分布するという事実に基づく。必要とされる遅延層(1つは構造化され、1つは平坦で構造化されない)の厚さはわずか約1.5μmであるので、4つの平面に配置された体積格子Vg1、Vg2、Vg3及びVg4の厚さを無視できない(それぞれ約10μmの厚さ)としても、SLMと偏光子WGPとの間の距離はDD<2a(a〜50μmに適用される)である。a=70μmである場合、厚さはDD<aとなる。a=20μmであれば、DDは3a未満であり、小さな変調セルでワイヤグリッド偏光子以外の偏光子を使用することが可能になる。
【0141】
図6を参照すると、変調セル2と体積格子Vg1との間にλ/2板が示される。変調セル1、2に入射する光が1つの予め設定可能な偏光のみ、すなわち直線TE偏光光のみを有する場合に、λ/2板を設けることが必要になる。その場合、変調セル2を通過する光の偏光はλ/2板により90°回転されるので、変調セル1を通過する光は変調セル2を通過する光の偏光に対して垂直な偏光を与えられる。変調セル1、2に入射する光が既に垂直偏光を有する場合、変調セル2と体積格子Vg1との間にλ/2板を設ける必要はない。言い換えれば、変調セル1を通過する光は変調セル2を通過する光とは異なる偏光、例えば垂直偏光を有し、そのため、一方の変調セルを通過する光は体積格子Vg1により偏向されるが、他方の変調セルを通過する光は体積格子Vg1により偏向されないということが重要である。以上説明したことは、図7、図8、図13、図14及び図17にも同様に当てはまる。
【0142】
幾何学的角度設定は<0.05°の精度に適合している必要はない。0.1°の誤差は重大ではない。D<aである場合、0.3°の角度誤差は重大ではない。すなわち、誤差の結果発生する影響を補償するために測定が必要であっても、重大な問題にはならない。これは、D<aである場合に偏向されない光の部分がアポディゼーションフィルタAPFの平面で阻止されるからである。
【0143】
しかし、同様の構造の2つの体積格子を備えるサンドイッチ部分を許容することは必要であるかまたは少なくとも推奨される。アポディゼーションフィルタAPFの曲線因子は位相変調SLMの曲線因子より小さいので、すなわちFFAPO<FFSLMなので、重ね合わされる波面の横方向のずれは問題にならない。従って、発光領域の寸法は一定であり、該領域は十分に均一に照明され、共通の重ね合わせ部分波面のみを含む。すなわち、5%程度の横方向のずれは問題にならないだろう。言い換えれば、変調素子MEから出射した部分光波の横方向のずれは、フィルタまたはシャッタ、例えば変調素子MEの後段に配置され、規定された透過率特性を有するアポディゼーションフィルタAPF、または規定されたマスク構造を有する開口マスクなどを利用することによって補償できる。このことは、図5〜図7に示される実施形態にも当てはまる。
【0144】
(レンズまたはプリズムを使用する屈折による光束結合)
次に、レンズ及びプリズムの少なくともいずれか、あるいはレンチキュラ及びプリズムアレイの少なくともいずれかの使用に基づく、屈折による光束結合の他の発展性について説明する。
【0145】
図18は、一実施形態を示し、レンチキュラL及びプリズムアレイPを備えた光学系100の詳細を平面図で示す。レンチキュラLのレンズ102及びプリズムアレイPのプリズム104は、共にSLM(図18には図示せず)の2つの画素に割り当てられる。図18は、互いに割り当てられた2つの画素から入射する光束106、108、レンチキュラLのレンズ102及びプリズムアレイPのプリズム104を示す。画素ピッチはpにより示され、レンズ102の前段の一方の光束106、108の直径はaにより示されかつレンチキュラLとプリズムアレイPとの距離はdにより示される。
【0146】
レンズ102は、各光束106、108の光を集束しかつ2つの光束106、108を集束する。距離dはレンズ102の焦点距離より幾分短いので、集束された光束110、112はプリズムアレイPの平面でわずかな距離Dだけ互いに離間している。2つの光束110、112はプリズム114の異なる側に入射する。プリズム角度は光束114がプリズムの後段で実質的に同一の方向に進むように選択される。図18は二重発散角度2Θ及び二重ビームウエスト2wを示す。
【0147】
この構成において、2つの光束106、108は完全には収束せず、わずかな距離Dだけ互いに離間している。しかし、この距離は画素ピッチと等しい元の距離よりはるかに短い。従って、回折次数の縁部に向かう光の光路長ははるかに短くなるので、再現品質は大幅に向上する。
【0148】
ここで、レンチキュラLとプリズムアレイPとの距離dが焦点距離fと等しい、すなわちd=fと簡単に仮定した数値例を挙げる。更に、光束はガウシアンビームであると仮定する。画素ピッチはp=50μmである。光束の距離はp=50μmからD=p/10=5μmの最小値にされなければならない。ビームウエストはD=2・wとなるように選択される。
【0149】
以下に示す関係が適用される。
Θ*w=λ/π(ガウシアンビームの光束パラメータ=ガウシアンビームの発散とビームウエストとの比)
a=2Θ*f
D=2w
【0150】
この構成を利用して、光束の距離pが50μmから5μmまで減少されると、500nmの波長に対して焦点距離はf=0.31mmとなる。従って、レンズピッチが0.1mmであるとき、レンズの半径は約0.15mmになる。
【0151】
レンチキュラL及びプリズムアレイPは、大型の素子として製造し、位置合わせすることができる光学素子である。それらの素子は、2つの光束106、108の距離を相当に短縮することにより、再現品質を向上するように作用する。
【0152】
図19は、別の実施形態を示しており、2つのプリズムアレイP1及びP2と、厚さdを有するスペーサガラス板Gとを備えた光学系100の詳細を平面図で示す。図19は、互いに割り当てられたSLM画素(図示せず)から入射する2つの光束106、108を示し、それらの光束は、構造化遅延板(図示せず)を通過した後に垂直偏光方向を有する。
【0153】
第1のプリズムアレイP1は等方性材料から製造される。これに対し、第2のプリズムアレイP2は複屈折材料から製造される。一方の偏光方向は偏向されることなく正常光束108、112として透過されるが、垂直の偏光方向は異常光束106、110として偏向される。これは、Ocuity社により2D/3D切り換え可能ディスプレイに使用されている複屈折レンチキュラに類似している。正常屈折率は周囲を取り囲む材料の屈折率と等しくなるように選択される。これに対し、異常屈折率は異常光束が偏向されるように異なる値に設定される。
【0154】
下方の光束108は、平坦な界面に入射するので、偏向されることなくプリズムアレイP1を通過する。スペーサガラス板Gに入射した時点の光束は、図中符号112により示される。この光束は、正常光束の偏光方向を有するためプリズムアレイP2によっても偏向されない。上方の光束106は、異常光束であるので2つのプリズムアレイP1及びP2により偏向される。このようにして2つの光束106、108は結合され、重ね合わせ光束114の形で光学系から同一の方向に出射される。
【0155】
そこで、画素ピッチがp=50μmの場合の数値の例を挙げる。ガラス板の厚さはd=500μmであると仮定する。この構成において、上方の光束106は、各プリズムアレイP1においてδ=5.7°だけ偏向されなければならない。角度が小さい場合、以下の関係が成り立つ。
δ=(n/n−1)*α
式中、αはプリズム角度、n及びnはプリズムP1の屈折率と周囲を取り囲む材料、すなわちガラスGの屈折率である。典型的な値はn=1.65及びn=1.5である。すなわち、Δn=0.15の屈折率差がある。その結果、必要とされるプリズム角度はα=57°となる。
【0156】
Ocuity社は、本明細書において説明される用途とは異なる用途に使用するための数インチの大きさの複屈折レンチキュラを既に製造している。従って、光束の結合を実現するために、市販のプリズムアレイ、スペーサガラス板及び複屈折プリズムアレイのサンドイッチ構造を大型に形成することは可能である。
【0157】
従って、光波多重化手段はレンズ手段及びプリズム手段を備えてもよい(図18を参照)。第1の変調セルを通過する光106は、光の伝播方向においてレンズ手段の後段に位置する平面の第1の領域においてレンズ手段により集束されてもよい。第2の変調セルを通過する光108は、その平面の第2の領域においてレンズ手段により集束されてもよい。プリズム手段はその平面に配置される。プリズム手段は第1の領域の光がプリズム手段により第1の予め設定可能な方向へ偏向され、第2の領域の光は第2の予め設定可能な方向へ偏向されるように構成される。第1の予め設定可能な方向及び第2の予め設定可能な方向は実質的に同一である。第1の領域は第2の領域に対して離間して配置される。レンズ手段はレンチキュラLを備え、プリズム手段はプリズムアレイPを備える。
【0158】
図19に示される光波多重化手段は、第1のプリズム手段及び第2のプリズム手段を備える。第1の変調セルを通過した光106は、第1のプリズム手段により第1の方向へ偏向されてもよい。第2の変調セルを通過した光108は偏向されない。光の伝播方向において第1のプリズム手段の後に、規定された距離dだけ離間して第2のプリズム手段が配置される。第2のプリズム手段は、第1のプリズム手段により偏向された光110を第2のプリズム手段により予め設定可能な方向へ偏向できるように構成される。偏向されなかった光112は第2のプリズム手段により偏向されない。
【0159】
第2のプリズム手段は複屈折プリズム素子を有するプリズムアレイP2を備える。第1の変調セルを通過する光106は、第2のプリズム手段の複屈折プリズム素子により偏向可能であるように偏光される。第2の変調セルを通過する光108は、第2のプリズム手段により偏向されないように偏光される。
【0160】
第1のプリズム手段はプリズム素子を有するプリズムアレイP1を備える。プリズム素子は、第1の変調セルを通過する光106のみがプリズム素子に割り当てられ、第2の変調セルを通過する光108はプリズム素子に割り当てられないように配列される。
【0161】
図20は本発明の別の実施形態を示す。本実施形態において、光波多重化手段は少なくとも2つの複屈折媒体SV1、SV2を備える。1つの複屈折媒体SV1は光の伝播方向において変調セル1、2の前段に配置され、別の複屈折媒体SV2は変調セル1、2の後段に配置される。各複屈折媒体SV1、SV2は予め設定可能な光学的特性を有する。変調セル1、2の前段に配置された複屈折媒体SV1の光学的特性は、光の第1の部分が第1の変調セル1に向かって第1の規定角で偏向されるように選択される。図20の上部において、この部分光の光束直径は破線により示される。その下方に2つの別の光束が示され、すべての光束は素子の全面に沿ってこれと同様であるものと解釈されるべきである。光の別の部分は偏向されない。それらの部分光の光束は実線により示される。変調セル1、2の後段に配置された複屈折媒体SV2の光学的特性は、光の他方の部分が第2の規定角だけ偏向され、第1の部分は偏向されないように選択される。2つの複屈折媒体SV1、SV2の光学的特性は、特にそれぞれの複屈折媒体SV1、SV2の光軸または長軸の向きとして理解されるべきである。2つの複屈折媒体SV1、SV2の光軸は、両方向矢印により示され、実質的に同一の向きを有する。2つの複屈折媒体SV1、SV2の光軸の向きが図20の図面の平面から外れている他の構成も考えられる。第1の複屈折媒体SV1に向かって進む光が偏向されないことも一般に可能であるが、第1の複屈折媒体SV1に入射する光は規定された直線偏光を受けることが好ましい。
【0162】
図20の2つの複屈折媒体SV1、SV2だけではなく、図13、図14、図17及び図21の複屈折媒体SP、SP1、SP2及びSP3も、実質的に共面の界面を有する。
【0163】
図20を参照すると、2つの複屈折媒体SV1、SV2の間にλ/2板の形の遅延板が配置される。この遅延板は、変調セル1、2を通過する光の偏光方向を90°回転させる。
【0164】
光の伝播方向において第1の複屈折媒体SV1の前段に開口マスクBAが配置される。この開口マスクは、各変調セル1に向かって伝播すると考えられる光の偏向されなかった部分を遮断するように構成される。言い換えれば、開口マスクBAは、変調セル1、2と実質的に同一の横断面面積を有する個別の開口を備える。開口マスクは、1つおきのすべての変調セル、すなわちすべての変調セル1に光を入射させないために、それらの変調セル1を遮蔽するように位置決めされる。これは、偏向されなかった光が変調セル1を通過することを阻止するためである。図をわかりやすくするために、図20において個々の素子は互いに離間しているように示される。しかし、それらの素子はサンドイッチ構造の形に、すなわち互いに直接接触するように組み合わされてもよい。
【0165】
図20に示される構成において、変調セル1、2と複屈折媒体SV2の後段に配置された別の光学素子(例えば、偏向プリズムセル構成またはアポディゼーションフィルタ(図20には図示せず))との間の距離は、例えば図17に示されるような構成と比較して短縮されることが好ましい。図20に示される構成は、スペクトルに関して広帯域の光の光束結合に使用されることが特に好ましいが、スペクトルに関して狭帯域の光にも使用可能である。図20に示される構成は、一方の光路長の偏差、及び重ね合わせ波面、すなわち組み合わされた波面の偏差の少なくともいずれかを最小限に抑える働きをする、対称形の光束分割及び光束結合の実現に有用である。従って、2つの重ね合わされた変調セル1、2が光変調装置の出射点で同一の強度分布及び位相分布(偏光状態の直交性を除く)を示す構成を実現できる。そのような光変調装置がホログラムディスプレイに使用された場合、これは高品質のホログラム再現を実現する主要な特徴である。同様に、構成の2つの隣接する変調セル1、2を通過する光のクロストークを最小限に抑えることは、高品質のホログラム再現を実現するもう1つの重要な特徴である。
【0166】
図22は、図20に示される実施形態に類似する機能の実現に有用な別の実施形態を示す。図20に示される実施形態は、屈折素子、すなわち2つの複屈折媒体SV1及びSV2を使用する。これに対し、図22に示される実施形態は、回折素子、すなわち図示されるように体積格子の形で実現される偏向層Vg1、Vg2、Vg3及びVg4を使用する。偏向層Vg1、Vg2は、光の伝播方向において変調セル1、2の前段に配置される。偏向層Vg3、Vg4は、光の伝播方向において変調セル1、2の後段に配置される。第1の偏向層Vg1に入射する光、すなわち開口Bを通された光は偏光されないが、個別の偏光部分の均一な分布を示す。すなわち、規定された偏光状態、例えば直線偏光を有する。
【0167】
第1の偏向層Vg1は光を2つの部分光束に分割するように構成される。一方の部分光束は、その後偏向されずに直線偏光される。すなわち、一方の部分光束は、例えばTE偏光を有し、そのことは図22において点線により示される。他方の部分光束は規定角だけ偏向されて同様に直線偏光されるが、例えばTM偏光を有する。これは図22において破線により示される。第2の偏向層Vg2は、第1の偏向層Vg1と平行に配置され、偏向されなかった光が偏向されず、規定角だけ偏向された光は別の角度で偏向されるように構成される。それら2つの偏向角度の絶対値は実質的に同一、すなわち60°である。偏向されなかった光の偏光方向は、λ/2板の形で実現され、第2の偏向層Vg2の後段に配置された構造化遅延板により90°回転される。その結果、変調セル1、2を通過する光は実質的に同一の偏光状態を有する。
【0168】
変調セル1、2は、それらのセルと相互に作用する光の位相を変更できるように構成される。変調セル1、2と第3の偏向層Vg3との間に、λ/2板の形の別の構造化遅延板が配置され、その遅延板は変調セル2を通過する光の偏光方向を90°回転させる。光は第3の偏向層Vg3に入射する。第3の偏向層Vg3は、変調セル2を通過する光が実質的に偏向されず、第1の変調セル1を通過する光は規定角だけ偏向されるように構成される。第4の偏向層Vg4は、第3の偏向層Vg3と平行に配置され、第3の偏向層Vg3により偏向されていなかった光が偏向されず、第3の偏向層Vg3により規定角だけ偏向された光は別の角度で偏向されるように構成される。それら2つの別の偏向角度の絶対値は実質的に同一である。この点に関して、2つの変調セル1、2を通過する光束はこのように結合され、実質的に同一の方向に伝播する。2つの変調セル1、2が実質的に同一の位相値を実現する場合、2つの部分光束の光路長は実質的に同一である。
【0169】
規定された入射偏光を必要としない変調セル1、2、すなわちSLMがある。その場合、変調セル平面の前段の構造化遅延板を省略し、変調器平面のすぐ後段に配置される第2の構造化遅延板の代わりに非構造化遅延板、すなわち非構造化2分の1波長板を使用できる。
【0170】
RGB提示の場合、すなわち、異なる波長の光を使用する場合、各々が別の波長に適応されている3つの異なる体積格子が各偏向層Vg1〜Vg4に交互配置されるように露出させられる。図22に示される構成は、列、線または行列の形で実現されることも当然考えられる。すなわち、図22に示される素子が、図20とまったく同様に上下、及び図の平面の外側の少なくともいずれかに続いている場合である。
【0171】
光波多重化手段は、通常、図において光の伝播方向において変調アレイの変調セルのすぐ後段に配置される。しかし、図示される光波多重化手段を異なる位置にも配置できる。例えば、変調アレイと光波多重化手段との間に別の光学素子が配置されてもよい。従って、図示され、特許請求の範囲に記載されるような光波多重化手段は、光の伝播方向に見て、その別の光学素子の後段に配置されてもよい。そのような別の光学素子は、例えば独国特許第10 2009 028 984.4号公報または国際公開第2010/149583号に開示されるような照明ユニットであってもよい。該照明ユニットに入射された光は、例えば(変調アレイと平行に配置される)ユニットの面から直角に出射し、反射型変調アレイへ伝播されてもよい。照明ユニットから入射した光は変調アレイの変調セルにより変調され、例えば変調アレイの反射層により反射されると、該変調された光は、実質的に偏向されることなく照明ユニットを通過し、光波多重化手段に入射する。この場合、光波多重化手段は照明ユニットの変調アレイとは反対の側に配置される。変調アレイにより変調されて反射された光が、妨害なく照明ユニットを通過できるようにするために、光が通過するたびに偏光方向を例えば45°回転させるフィルムが照明ユニットと変調アレイとの間に設けられる。
【0172】
最後に、以上説明した実施形態は、特許請求される教示を例示するとだけ理解されるべきであり、特許請求される教示は上述の実施形態に限定されないことを述べておかなければならない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の変調素子(ME)を形成するように結合された、離散的に符号化可能な複数の変調セル(P01、P02)を含む、少なくとも1つの変調アレイを有する光変調装置であって、
伝播光波場(LW)の干渉を生成する光波は、空間的に構造化された方法でホログラム情報を用いて、前記複数の変調セル(P01、P02)により変調され、
各変調素子(ME)の前記複数の変調セル(P01、P02)は、前記伝播光波場の伝播方向において、前記変調アレイ内に並んで配置され、
各変調素子(ME)は、空間的に配置された物体光点をホログラム的に再現するために、予め設定可能な離散複素物体走査値を用いて符号化され、
光波多重化手段は、前記変調アレイの前記複数の変調セル(P01、P02)に割り当てられ、
変調された光波多重が、実質的に共通な位置を通過する実質的に共通な伝播方向において変調素子(ME)から出射するように、前記光波多重化手段は、前記変調された光波多重を形成するために、屈折あるいは回折を介して、各変調素子(ME)について前記複数の変調セル(P01、P02)により変調された部分光波を出射側で結合する
ことを特徴とする光変調装置。
【請求項2】
前記光波多重化手段は、少なくとも1つの体積ホログラムを含むことを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項3】
前記光波多重化手段は、複屈折の光学部品を有することを特徴とする請求項1または2に記載の光変調装置。
【請求項4】
前記光波多重化手段は、1つの変調素子(ME)の前記複数の変調セル(P01、P02)を出射する前記部分光波に、個別の偏光を割り当てる偏光層を有することを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項5】
前記光波多重化手段は、構造化された体積ホログラム要素を有するコプレーナ光学板を含み、
体積ホログラムは、異なる体積ホログラム要素が、1つの変調素子(ME)の前記複数の変調セル(P01、P02)に割り当てられるように構造化され、
前記異なる体積ホログラム要素は、前記コプレーナ光学板と互いに向かい合うように光透過軸を傾斜させ、
同一の変調素子(ME)の前記複数の変調セル(P01、P02)の、前記変調された部分光波は、共通の出射位置を通過するように前記コプレーナ光学板を出射する
ことを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項6】
各変調素子(ME)は、前記部分光波の位相及び振幅の少なくともいずれかを離散的に変調する、少なくとも1つの変調セル(P01、P02)を有することを特徴とする請求項1に記載の光変調装置。
【請求項7】
個々の変調素子(ME)の前記複数の変調セル(P01、P02)は、行あるいは列が結合されており、
前記複数の変調素子(ME)の前記複数の変調セル(P01、P02)には、偏光フィルタフィルムの細片が割り当てられ、
1つの変調素子(ME)の各変調セル(P01、P02)に割り当てられた前記フィルタフィルムの細片は、光透過において個別の偏光を与える
ことを特徴とする請求項3に記載の光変調装置。
【請求項8】
異なる変調セル(P01、P02)を通過する部分光波間の位相差は、1つの変調セル(P01、P02)を通過する部分光波が予め設定可能な位相シフトを与えられた場合に、相殺可能であることを特徴とする請求項1乃至7のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項9】
前記変調素子(ME)から出射する、前記部分光波の横方向に存在するオフセットは、定義された透過特性を有するアポディゼーションフィルタ、あるいは定義されたマスク配列を有する開口マスクを含む、当該変調素子(ME)の後段に配置されたフィルタあるいはマスクにより相殺されることを特徴とする請求項1乃至8のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項10】
前記光波多重化手段は、少なくとも偏光手段と、第1及び第2の偏向層(Vg1、Vg2)を有し、
前記偏光手段は、予め設定可能な第1の偏光を有する第1の変調セル(1)、及び予め設定可能な第2の偏光を有する第2の変調セル(2)を通過する光を与え、
前記予め設定可能な1の偏光は、直線偏光であって前記予め設定可能な第2の直線偏光に対して垂直であるか、あるいは円偏光であって前記予め設定可能な第2の円偏光に対して逆方向の回転方向を有し、
前記第1の偏向層(Vg1)は、光の伝播方向において前記偏光手段の後段に配置され、
前記第2の偏向層(Vg2)は、光の伝播方向において、所定の距離をおいて前記第1の偏向層(Vg1)に続く
ことを特徴とする請求項1乃至9のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項11】
前記第1の偏向層(Vg1)の光学特性は、前記第1の変調セル(1)を通過する光が実質的に偏向されず、前記第2の変調セル(2)を通過する光が第1の規定角で偏向されるように定められることを特徴とする請求項10に記載の光変調装置。
【請求項12】
前記第2の偏向層(Vg2)の光学特性は、前記第1の変調セル(1)を通過する光が、実質的に偏向されず、前記第2の変調セル(2)を通過する光が第2の規定角で偏向されるように定められ、
前記第2の規定角の絶対値は、第1の規定角の絶対値と実質的に同一であってよい
ことを特徴とする請求項10または11に記載の光変調装置。
【請求項13】
前記第2の偏向層(Vg2)には、光の伝播方向において、所定の距離をおいて第3及び第4の偏向層(Vg3、Vg4)が続き、
前記第3の偏向層(Vg3)の光学特性は、第1の変調セル(1)を通過する光が第3の規定角で偏向され、前記第2の変調セル(2)を通過する光が実質的に偏向されないように定められ、
前記第4の偏向層(Vg4)の光学特性は、第1の変調セル(1)を通過する光が第4の規定角以上で偏向され、前記第2の変調セル(2)を通過する光が実質的に偏向されないように定められ、
前記第3の規定角の絶対値は、前記第4の規定角の絶対値と実質的に同一であってよい
ことを特徴とする請求項10乃至12のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項14】
前記偏光手段は、異なる配向性により特徴付けられる複数の領域を有する、好ましくはλ/2板である遅延板を含むか、
前記偏光手段は、第1の配向性を有する、好ましくはλ/2板である第1の遅延板と第2の配向性を有する第2の遅延板とを含み、前記第1の配向性を有する前記第1の遅延板が前記第1の変調セル(1)を通過する光に割り当てられ、前記第2の配向性を有する前記第2の遅延板が前記第2の変調セル(2)を通過する光に割り当てられるか、のいずれかである
ことを特徴とする請求項10乃至13のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項15】
前記第1の偏向層(Pg1)の光学特性は、前記第1の変調セル(P01)を通過する光が第1の方向に第1の規定角で偏向され、第2の変調セル(P02)を通過する光が第2の方向に第2の規定角で偏向されるように定められることを特徴とする請求項10に記載の光変調装置。
【請求項16】
前記第2の偏向層(Pg2)の光学特性は、前記第1の変調セル(P01)を通過する光が第2の角度で偏向され、前記第2の変調セル(P02)を通過する光が第1の角度で偏向されように定められ、
前記第1の角度の絶対値は、前記第2の角度の絶対値と実質的に同一である
ことを特徴とする請求項10または15に記載の光変調装置。
【請求項17】
前記偏光手段は、異なる配向性により特徴付けられる複数の領域を有する、好ましくはλ/4板の遅延板を含むか、
前記偏光手段は、第1の配向性を有する、好ましくはλ/4である第1の遅延板と第2の配向性を有する第2の遅延板とを含み、前記第1の配向性を有する前記第1の遅延板が前記第1の偏光セル(P01)を通過する光に割り当てられ、前記第2の配向性を有する前記第2の遅延板が前記第2変調セル(P02)を通過する光に割り当てられるか、のいずれかである
ことを特徴とする請求項15または16に記載の光変調装置。
【請求項18】
前記偏光層(Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Pg1、Pg2)は、ホログラム、体積格子、ブラッグ格子の少なくともいずれか、または偏光格子を有する層であることを特徴とする請求項10乃至17のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項19】
前記光波多重化手段は、少なくとも1つの偏光手段、及び予め設定可能な光学特性を有する少なくとも1つの複屈折媒体(SP)を有し、
前記偏光手段は、予め設定可能な第1の偏光を有する第1の変調セル(P01)を通過する光、及び予め設定可能な第2の偏光を有する第2の変調セル(P02)を通過する光を与え、前記予め設定可能な第1の偏光は、前記予め設定可能な第2の偏光と垂直であってよく、
前記複屈折媒体(SP)は、光の伝播方向において、前記偏光手段、並びに前記第1及び第2の変調セル(P01、P02)の少なくともいずれかの後段に配置される
ことを特徴とする請求項1乃至18のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項20】
前記複屈折媒体(SP)の光学特性は、前記第1の変調セル(P01)を通過する光が、該複屈折媒体(SP)により実質的に偏向されず、前記第2の変調セル(P02)を通過する光が該複屈折媒体(SP)により規定角で偏向されるように定められることを特徴とする請求項19に記載の光変調装置。
【請求項21】
前記複屈折媒体(SP)は、該複屈折媒体(SP)の入射側界面においては第1の規定角で、前記入射側界面と同一平面である、該複屈折媒体(SP)の出射側界面においては第2の規定角で、前記第2の変調セル(P02)を通過する光を偏向し、
実質的に平行移動された光の出射部について、前記第2の規定角の絶対値は、前記第1の規定角の絶対値と実質的に同一であってよい
ことを特徴とする請求項20に記載の光変調装置。
【請求項22】
正常分散あるいは異常分散を有する前記複屈折媒体(SP1)は、光の伝播方向において、異常分散あるいは正常分散を有する別の複屈折媒体(SP2)に続き、
2つの複屈折媒体(SP1、SP2)の厚さ比は、予め設定可能であり、好ましくは予め設定可能な少なくとも2つの光の波長における、該2つの複屈折媒体の回折次数差比によって決まる
ことを特徴とする請求項10乃至21のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項23】
前記複屈折媒体(SP)は光の伝播方向において、別の複屈折媒体(SP3)に続き、
前記別の複屈折媒体(SP3)の光学特性は、該別の複屈折媒体(SP3)が、該別の複屈折媒体(SP3)の入射側界面において第3の規定角で、前記入射側界面と同一平面である、該別の複屈折媒体(SP3)の出射側界面において第4の規定角で、前記第1の変調セルを通過する光を偏向するように定められ、
前記別の複屈折媒体(SP3)は、前記第2の変調セルを通過する光を実質的に偏向せず、
実質的に平行移動された光の出射部について、前記第3の規定角の絶対値は、前記第4の規定角の絶対値と実質的に同一であってよい
ことを特徴とする請求項19乃至22のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項24】
検光子効果を有し、予め設定可能な光学特性を有する偏光手段(WGP、Pol)は、光の伝播方向において、複屈折媒体(SP、SP1、SP2、SP3)あるいは偏向層(Vg1、Vg2、Vg3、Vg4、Pg1、Pg2)の後段に配置されることを特徴とする請求項10乃至23のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項25】
前記光波多重化手段は、少なくとも2つの複屈折媒体(SV1、SV2)を有し、
各々が予め設定可能な光学特性を有する前記複屈折媒体(SV1、SV2)は、光の伝播方向において前記複数の変調セル(1、2)の前段及び後段のそれぞれに配置され、
前記複数の変調セル(1、2)の前段に配置された前記複屈折媒体(SV1)の光学特性は、光の第1の部分が第1の変調セル(1)に向けて第1の規定角で偏向され、かつ光の別の部分が偏向されないように定められ、
前記複数の変調セル(1、2)の後段に配置された前記複屈折媒体(SV2)の光学特性は、光の他の部分が第2の規定角で偏向され、かつ光の前記第1の部分が偏向されないように定められる
ことを特徴とする請求項1乃至24のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項26】
前記少なくとも2つの複屈折媒体(SV1、SV2)が実質的に共通界面を有するか、好ましくはλ/2板である遅延板が、前記2つの複屈折媒体(SV1、SV2)の間に配置されるかの少なくともいずれかであることを特徴とする請求項25に記載の光変調装置。
【請求項27】
光の伝播方向において前記複屈折媒体(SV1)の前段に開口マスクが配置され、
前記開口マスクは、各変調セル(1)に向けて伝播する光の非偏向部分がブロックされるように設計される
ことを特徴とする請求項25または26に記載の光変調装置。
【請求項28】
前記光波多重化手段は、レンズ手段及びプリズム手段を有し、
第1の変調セルを通過する光(106)は、前記レンズ手段により、光の伝播方向において前記レンズ手段の後段に設けられる平面の第1の領域に集束され、
第2の変調セルを通過する光(108)は、前記レンズ手段により前記平面の第2の領域に集束され、
前記プリズム手段は、前記平面に配置され、
前記第1の領域の光が該プリズム手段により予め設定可能な第1の方向に偏向可能であり、前記第2の領域の光が予め設定可能な第2の方向に偏向可能であり、かつ予め設定可能な前記第1及び第2の方向が実質的に同一であるように、前記プリズム手段は設計される
ことを特徴とする請求項1乃至27のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項29】
前記第1の領域が前記第2の領域に対して距離を設けて配置されるか、前記レンズ手段がレンチキュラ(L)を有するかの少なくともいずれかであり、
前記プリズム手段は、プリズムアレイ(P)を有する
ことを特徴とする請求項28に記載の光変調装置。
【請求項30】
前記光波多重化手段は、第1のプリズム手段及び第2のプリズム手段を有し、
第1の変調セルを通過する光(106)は、前記第1のプリズム手段により第1の方向に偏向可能であり、
第2の変調セルを通過する光(108)は、偏向可能ではなく、
前記第1のプリズム手段は、光の伝播方向において前記第2のプリズム手段に所定距離(d)をおいて続き、
前記第2のプリズム手段は、前記第1のプリズム手段により偏向された光(110)が該第2のプリズム手段により予め設定可能な方向に偏向可能なように設計され、
前記偏向されなかった光(112)は、前記第2のプリズム手段により偏向されない
ことを特徴とする請求項1乃至27のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項31】
前記第2のプリズム手段は、複屈折プリズム素子を有するプリズムアレイ(P2)を有し、
前記第1の変調セルを通過する光(106)は、前記第2のプリズム手段の複屈折プリズム素子により偏向されるように偏光され、
前記第2の変調セルを通過する光(108)は、前記第2のプリズム手段により偏向されないように偏光される
ことを特徴とする請求項30に記載の光変調装置。
【請求項32】
前記第1のプリズム手段は、プリズム素子を有するプリズムアレイ(P1)を含み、
前記プリズム素子は、前記第1の変調セルを通過する光(106)のみがプリズム素子に割り当てられ、前記第2の変調セルを通過する光(108)がプリズム素子に割り当てられないように配置される
ことを特徴とする請求項30または31に記載の光変調装置。
【請求項33】
変調された光多重を形成するように結合された変調素子(ME)の光束に作用するアポディゼーション素子(APF)が与えられ、
前記アポディゼーション素子(APF)は、光の伝播方向の横断方向において、使用される光の各波長について実質的に独立である中性強度プロファイルを有する
ことを特徴とする請求項1乃至32のいずれか1項に記載の光変調装置。
【請求項34】
変調された光多重を形成するように結合された変調素子(ME)の光束に作用するアポディゼーション素子(APFC)が与えられ、
前記アポディゼーション素子(APFC)は、使用される光の各波長について実質的に依存する、少なくとも2つの強度プロファイルを有し、
前記強度プロファイルは、光の伝播方向の横断方向において、予め設定可能な値分、横方向に移動され、
前記強度プロファイルは、個別の層(APFSR、APFSG、APFSB)の形状で、光の伝播方向に次々と配置されうる
ことを特徴とする請求項1乃至32のいずれか1項に記載の光変調装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図21】
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【図22】
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【図4】
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【図5】
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【図15】
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【図16】
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【図20】
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【公表番号】特表2012−530951(P2012−530951A)
【公表日】平成24年12月6日(2012.12.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−516666(P2012−516666)
【出願日】平成22年6月18日(2010.6.18)
【国際出願番号】PCT/EP2010/058626
【国際公開番号】WO2010/149588
【国際公開日】平成22年12月29日(2010.12.29)
【出願人】(507230267)シーリアル テクノロジーズ ソシエテ アノニム (89)
【氏名又は名称原語表記】SEEREAL TECHNOLOGIES S.A.
【Fターム(参考)】