説明

複素環式ベンジルアミノ誘導体、これらの製造方法及び医薬品としての使用

本発明の対象は、式Iの化合物、これらの医薬的に許容される塩、鏡像異性体、ジアステレオ異性体、及びラセミ体、上述の化合物の調製、これらを含有する医薬組成物、及びこれらの製造、並びに疾病、特に、癌の制御又は予防における上述の化合物の使用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロテインキナーゼの活性を阻害する複素環式ベンジルアミノ誘導体に関する。プロテインキナーゼは、ATPからタンパク質上のアミノ酸残基、例えば、チロシン、セリン、トレオニン又はヒスチジンにリン酸基の転移を触媒する酵素である。これらのプロテインキナーゼの調節は、増殖及び遊走を含む、広範な細胞事象の制御に必要不可欠である。
【背景技術】
【0002】
チロシンキナーゼの不適当な活性化は、炎症、免疫、CNS障害若しくは腫瘍障害、又は骨疾患を含む多様な疾患状態に関係することが知られている。例えば、 Susva, M., et al., Trends Pharmacol. Sci. 21 (2000) 489-495; Biscardi, J.S., et al., Adv. Cancer Res. 76 (2000) 61-119を参照のこと。
【0003】
該チロシンキナーゼは、プロテインキナーゼのクラスである。多様なシグナル伝達経路に関与する少なくとも8つのメンバー(Src,Fyn,Lyn,Yes,Lck,Fgr,Hck及びBlk)から成るSrcファミリーは、細胞質プロテインチロシンキナーゼの主要なファミリーを代表する(Schwartzberg, P.L., Oncogene 17 (1998) 1463-1468)。該チロシンキナーゼファミリーのプロトタイプメンバーはSrcであり、これは多くの細胞種における増殖及び遊走応答に関与する(Sawyer, T., et al., Expert Opin. Investig. Drugs 10 (2001) 1327-1344)。Src活性は、種々の癌、例えば、乳、結腸(>90%)、膵臓(>90%)及び肝臓(>90%)の腫瘍において上昇することが示されている。極めて増加したSrc活性はまた、転移(>90%)及び悪い予後に関係する。アンチセンスSrcメッセージは、ヌードマウス中の結腸腫瘍細胞の成長を阻害し(Staley, C.A., Cell Growth Differ. 8 (1997) 269-274)、Src阻害剤が腫瘍成長を遅くできることを示唆する。更に、細胞増殖におけるその役割に追加して、Srcはまた、低酸素応答を含むストレス応答経路において作用する。アンチセンスSrcメッセージを発現する結腸腫瘍細胞を有するヌードマウス実験は、血管新生を低下し(Ellis, L.M., et al., J. Biol. Chem. 273 (1998) 1052-1057)、これはSrc阻害剤が抗血管新生並びに抗増殖性であることを示唆する。
【0004】
Srcは、E−カドヘリン関連細胞間相互作用を破壊する(Avizienyte, E., et al., Nature Cell Bio. 4 (2002) 632-638)。低分子量のSrc阻害剤は、この破壊を防止し、これにより癌細胞転移を低下させる(Nam, J.S., et al., Clin Cancer Res. 8 (2002) 2430-2436)。
【0005】
Src阻害剤は、血管透過性のVEGF−媒介増加からもたらされる、例えば、後の脳卒中として見られる二次傷害を予防することができる(Eliceiri, B.P., et al., MoI. Cell. 4 (1999) 915-924; Paul, R., et al., Nat. Med. 7 (2001) 222-227)。
【0006】
Srcの遮断は、同じキネティクスを有するFlk、VE−カドヘリン、及びβ−カテニンを含む複合体の解離を防止し、VEGF−媒介VP/浮腫を防ぎ、そしてVEGF−媒介透過性におけるSrc必要性を説明し、そして急性心筋梗塞を伴う患者のための治療的見解としてのSrc阻害についての基礎を供する(Weis, S., et al., J. Clin. Invest. 113 (2004) 885-894)。
【0007】
Srcはまた、骨粗鬆症における役割を果たす。Srcが欠損するように遺伝子改変したマウスは、骨の再吸収不全である大理石骨病を示すことが発見された(Soriano, P., et al., Cell 64 (1991) 693-702; Boyce, B.F., et al., J. Clin., Invest. 90 (1992) 1622-1627)。該欠損症は破骨細胞の欠乏により特徴づけられた。破骨細胞は通常高レベルのSrcを発現し、Srcキナーゼ活性の阻害は骨粗鬆症の治療において有用となりうる(Missbach, M., et al., Bone 24 (1999) 437-449)。
【0008】
プロテインキナーゼについての低分子量阻害剤は当業界に広く知られている。src阻害のための、このような阻害剤は、すなわちチエノ−ピリジン誘導体(米国特許第2004/0242883号);ピリド−ピリミジン誘導体(WO04/085436);ピリド−ピリミドン誘導体(WO04/041823);ピリミジン誘導体(WO03/004492及びWO01/00213);キナゾリン誘導体(WO01/94341及びWO02/016352);イソキサゾール誘導体(WO02/083668)及びピラゾール誘導体(WO02/092573)に基づく。
【0009】
いくつかのフェニル−アザ−ベンズイミダゾールは、WO04/024897から、IgE媒介免疫応答の阻害因子、並びに抗増殖効果を伴うサイトカイン及び白血球の制御因子として知られている。そしていくつかのベンズイミダゾール−ピラゾール及び−インダゾールは、WO03/035065から、キナーゼ阻害剤、特にKdr、Syk及びItkチロシンキナーゼに対する阻害剤として知られている。WO2005/063747は、キナーゼ関連疾患、例えば、癌、ウイルス感染、アルツハイマー病等の治療のためのキナーゼ阻害剤として、ピロロ[2,3−b]ピリジン誘導体を記載する。
【発明の開示】
【0010】
本発明は、一般式I
【化1】

の複素環式ベンジルアミノ誘導体
(式中、
1及びR2は、独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノを表し;
3は、水素又はアルキルであり;
4は、水素、ハロゲン、アルコキシ又はアルキルであり;
Aは、=CH−又は=N−である)、
及び全ての医薬的に許容されるその塩、に関する。
【0011】
本発明に従う化合物は、プロテインキナーゼ阻害剤、特にSrcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤としての活性を示し、従って前記チロシンキナーゼにより媒介される疾患の治療に有用である。
【0012】
Srcファミリーチロシンキナーゼは、多様な疾患状態に関係することが知られている。本発明の化合物は、例えば、移植片拒絶、炎症性腸症候群、関節リウマチ、乾癬、再狭窄、アレルギー性喘息、アルツハイマー病、パーキンソン病、脳卒中、骨粗鬆症、良性過形成及び癌、例えば、直腸癌、乳癌、肺癌及び膵臓癌及び白血病の予防及び治療における活性剤として使用することができる。
【0013】
本発明の対象は、式Iの化合物及び医薬的に許容される塩及びこれらの鏡像異性体、上述の化合物の調製、これらを含有する医薬、及びこれらの製造、並びに疾病、特に、上述の疾病及び障害の制御又は予防における、あるいは対応する医薬の製造における上述の化合物の使用である。
【0014】
発明の詳細な説明
本明細書に使用される「アルキル」の語は、飽和した、1〜6個、好ましくは1〜4個、より好ましくは1又は2個の炭素原子を含む直鎖又は分岐鎖炭化水素、例えば、メチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチル、2−ブチル、t−ブチルを意味する。
【0015】
本明細書に使用される「アルコキシ」の語は、酸素原子を介して結合される、上に定義したアルキル基を意味する。例は、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ等である。
【0016】
本明細書において使用される「アルコキシアルコキシ」の語は、アルコキシで置換された、上に定義されたアルコキシ基を意味する。例は、例えば、メトキシ−メトキシ、エトキシ−メトキシ、2−メトキシ−エトキシ、2−エトキシ−エトキシ、4−メトキシ−ブトキシ、2−メトキシ−ブトキシ、2−エトキシ−プロポキシ、3−プロポキシ−ブトキシ等であり、好ましくは2−エトキシ−エトキシである。
【0017】
本明細書において使用される「アシルアミノ」の語は、−C(O)−NH−基を介して結合した、上に定義されたアルキル基を意味する。例は、例えば、アセチルアミノ、プロピノニルアミノ、イソブチリルアミノ、n−ブチリルアミノ、3−メチル−ブチリルアミノ、ペンタノイルアミノ等である。
【0018】
本明細書において使用される「ハロゲン」の語は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素、好ましくはフッ素、塩素又は臭素を意味し、そしてより好ましくはフッ素及び塩素である。
【0019】
本明細書において使用される化合物の「治療的有効量」の語は、疾患の症状を予防、緩和、又は寛解するため、あるいは処理された対象の生存を延長するために有効な化合物の量を意味する。治療的有効量の決定は、当業者に既知である。
【0020】
本発明に従う化合物の治療的有効量又は投与量は、広範な範囲において変更することができ、そして当業界に既知の方法において測定することができる。このような投与量は、各々の特定のケース、例えば、投与される特定の化合物、投与経路、治療される条件、ならびに治療される患者において個々の必要に応じて調節されるであろう。一般に、約70kgの大人に対する経口又は非経口投与の場合、約10mg〜約10,000mg、好ましくは約200mg〜約1,000mgの一日投与量を適当とすべきであるが、適応する場合には上限を超えてもよい。該一日投与量は、単回投与又は分割投与としても投与することができ、あるいは非経口投与のために、これは持続点滴として与えることができる。
【0021】
本明細書において使用される「医薬的に許容される担体」は、医薬投与に適合性のいずれかの物質及び全ての物質、例えば、溶媒、分散媒体、コーティング剤、抗細菌剤及び抗真菌剤、並びに等張剤及び吸収遅延剤、並びに医薬投与に適合性の他の物質及び化合物を含むことを意図する。いずれかの慣習的な媒体又は薬剤が活性化合物と適合でない場合を除き、本発明の組成物においてこれらの使用が考慮される。補充制活性化合物もまた、該組成物中に組み込むことができる。
【0022】
好ましくは、式IにおいてR4の位置は、CHR3−NH−結合に対してオルト位である。
【0023】
本発明の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1が、水素、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノであり;
2が、水素であり;そして
4が、水素又はアルキルである、化合物である。
【0024】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
Aが、=N−である、化合物である。
【0025】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1が、水素、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノであり;
2が、水素であり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=N−である、化合物である。
【0026】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1及びR2が、独立に、水素又はアルキルを表し;
3が、水素又はアルキルであり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=N−である、化合物である。
【0027】
このような化合物は、例えば:
(1−フェニル−エチル)−(2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−6−イル)−アミン、である。
【0028】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1及びR2が、水素であり;
3が、アルキルであり;そして
4が、水素であり;そして
Aが、=N−である、化合物である。
【0029】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
Aが、=CH−である、化合物である。
【0030】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1が、水素、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノであり;
2が、水素であり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=CH−である、化合物である。
【0031】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1が、水素、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノであり;
2が、水素であり;
3が、水素であり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=CH−である、化合物である。
【0032】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1が、水素又はアルコキシアルコキシであり;
2が、水素であり;
3が、水素であり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=CH−である、化合物である。
【0033】
このような化合物は、例えば、以下から成る群から選択することができる:
(2−メチル−ベンジル)−(2−フェニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)−アミン;
ベンジル−{2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−アミン;
{2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−(2−メチル−ベンジル)−アミン;及び
ベンジル−(2−フェニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)−アミン。
【0034】
本発明の他の態様は、式Iに従う化合物であって、
式中、
1が、アシルアミノであり;
2が、水素であり;
3が、水素であり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=CH−である、化合物である。
【0035】
このような化合物は、例えば、以下から成る群から選択することができる:
N−[3−(5−ベンジルアミノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミド;
N−{3−[5−(2−メチル−ベンジルアミノ)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−フェニル}−アセトアミド;
N−[4−(5−ベンジルアミノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミド;及び
N−{4−[5−(2−メチル−ベンジルアミノ)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−フェニル}−アセトアミド。
【0036】
本発明のさらに他の態様は、式Iの化合物の製造方法であって、ここで、
(a)式VI
【化2】

(式中A、R1及びR2は、上の式Iに与えられた意味を有する)の化合物を、
式VII
【化3】

(式中R3及びR4は式Iについて上に与えられた意味を有し、そしてHalは臭素又はヨウ素である)の化合物と反応させ、式Iのそれぞれの化合物を与え、
(b)上記式Iの化合物を反応混合物から単離し、そして
(c)所望の場合には、医薬的に許容される塩に変換する、方法である。
【0037】
本発明のさらに他の態様は、R3が水素である式Iの化合物の製造方法であって、
ここで、
(a)式VI
【化4】

(式中A、R1及びR2は、上の式Iに与えられた意味を有する)の化合物を、
式VIII
【化5】

(式中R4は式Iについて上に与えられた意味を有する)の化合物と反応させ、R3が水素である式Iのそれぞれの化合物を与え、
(b)上記式Iの化合物を反応混合物から単離し、そして
(c)所望の場合には、医薬的に許容される塩に変換する、方法である。
【0038】
一般式Iの誘導体又はその医薬的に許容される塩は、当業者により化学関連化合物の調製に適用可能ないずれかの既知の方法により調製することができる。このような方法は、式Iの誘導体又はその医薬的に許容される塩を調製するために使用される場合、本発明の更なる特性として提供され、そしてスキーム1又はスキーム2の以下の代表例により例証される(ここで、ほかに言及されない限り、R1、R2、R3及びR4が式Iについて前に与えた意味を有し、そしてAは、スキーム1中=N−であり、そしてスキーム2中=CH−である)。必要な出発物質は、有機化学の標準的な手順により得ることができる。このような出発物質の調製は、付随する実施例において記載される。あるいは、必要な出発物質は、有機化学の当業者に例証されたものと類似する手順により得ることができる。
【0039】
スキーム1
式Iの化合物の製造は、式I中の「A」の特性に従い変更する。式中「A」が=N−である本発明の化合物は、スキーム1に従い調製することができ、そしてI−Aと称される。
【0040】
【化6】

【0041】
スキーム1において、R1、R2、R3及びR4は、式Iについて上に与えられた意味を有し、Yは臭素(工程2aを介する経路について)又はニトロ(工程2bを介する経路について)であり、そしてHalは臭素又はヨウ素である。
【0042】
工程1a:式IIIの芳香族アルデヒドと式IIの2,3−ジアミノ−ピリジン誘導体の縮合は、適当な溶媒、例えば、アセトニトリル、ニトロベンゼン、ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、キシレン、又はメトキシエタノール中、任意的に、酸化剤、例えば、酸素又は鉄(III)塩若しくは硫黄、又は2,3−ジクロロ−5,6−ジシアノ−1,4−ベンゾキノン(DDQ)の存在下で、60〜200℃の上昇温度において行うことができ、式V−A(式中Aは=N−である)の化合物を与える。
【0043】
工程1b:式IVの芳香族カルボン酸又はその適当な誘導体と式IIの2,3−ジアミノ−ピリジン誘導体の縮合は、縮合剤、例えば、ポリリン酸、POCl3又はP410により、任意的に、メタンスルホン酸の存在下で、100〜220℃の範囲の温度で達成することができ、式V−A(式中Aは=N−である)の化合物を与える。
【0044】
工程2a:式中Yが臭素である式V−Aの化合物において、このような臭素は、触媒、例えば、CuSO又はCuIの存在下において水性アンモニアで加熱することにより、アミノ基により置換することができ、式VI−Aの化合物を与える。可溶性共溶媒、例えば、N−メチル−ピロリドン(NMP)又はジメチルアセトアミドを添加することができ、そして該反応は密閉した容器中で100〜180℃の温度において行われる。
【0045】
あるいは、標準Hartwig/Buchwald条件下(例えば、ナトリウムtert−ブトキシドのような塩基とpd2(dba)3のようなパラジウム触媒、及びトリ−tert−ブチルホスファンのようなホスフィンリガンド)におけるカップリングを介するtert−ブトキシカルボニルアミノ置換基として、保護形態においてアミノ官能性を導入することができる。
【0046】
工程2b:式中Yがニトロである式V−Aの化合物について、ニトロ基の還元は、例えば、メタノール、エタノール、テトラヒドロフラン(THF)又は酢酸エチル等の溶媒中で、室温又は最大80℃で、標準条件、触媒として木炭上Pdによる不均一水素化により、あるいは、還流条件におけるメタノール等の溶媒中のPd触媒及びギ酸トリエチルアンモニウムでの不均一水素化により達成される。還元はまた、酢酸又は水性若しくはエタノール性HCl等の酸性媒質中の鉄又はスズ等の塩基金属により、室温〜120℃で行うことができる。他の適当な還元剤は、水若しくはメタノール中の硫化アンモニウム、又はジメチルホルムアミド(DMF)中若しくは水性HCl中の塩化スズ(II)であろう。該還元反応は、対応する式V−Aの化合物を産生する。
【0047】
工程3a:式VI−Aの化合物におけるアミノ部分のアルキル化は、適当な臭化又はヨウ化ベンジルにより、不活性溶媒、例えば、ジメチルホルムアミド、ジクロロメタン、トルエン、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はジメチルアセトアミド中で、任意的に、塩基、例えば、トリエチルアミン若しくはジ−イソプロピルエチルアミンの存在下において行うことができ、式I−Aの化合物を産生する。適当な温度は−20℃〜100℃の範囲である。
【0048】
工程3b:あるいは、式中R3が水素である式VI−Aの化合物のために、還元アルキル化条件下において、例えば、溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、メタノール、ジメチルホルムアミド(DMF)中、還元剤、例えば、水素ホウ素ナトリウム又はシアノ水素ホウ素ナトリウムの存在下において、あるいは酢酸中金属、例えば、亜鉛又はスズの存在下において、適当なベンズアルデヒドを使用することができる。中間体シッフ塩基はまた、別々の工程において、例えば、トルエン、ベンゼン又はクロロホルム中の水の共沸除去を伴うトルエンスルホン酸による酸触媒下における縮合により、あるいは三フッ化ホウ素又は四塩化チタンの存在下における縮合により、アルデヒド及び複素環式アミンから形成及び単離することができる。該シッフ塩基は、続いて、上に挙げた還元剤により、あるいはエーテル又はTHF中の水素化リチウムアルミニウムにより、あるいは不活性溶媒、例えば、THF、酢酸エチル若しくはメタノール中のパラジウム触媒上の触媒水素化により還元することができる。このように、式中R3が水素である式I−Aの化合物が得られる。
【0049】
スキーム2
式Iの化合物の製造は、式I中の「A」の特性に従い変更する。式中「A」が=CH−である本発明の化合物は、スキーム2に従い調製することができ、そしてI−Bと称される。
【0050】
【化7】

【0051】
スキーム2において、R1、R2、R3及びR4は、式Iについて上に与えられた意味を有し、そしてHalは臭素又はヨウ素である。
【0052】
工程1:式IXのエチニル−アレンは、銅触媒、例えば、CuI又はCuCl、及びパラジウム触媒、例えば、PdCl2(PPH32又はPdCl2(PhCN)2/PtBu3、及び延期、例えば、トリエチルアミン又はジ−イソプロピルアミンと共に、不活性溶媒、例えば、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサン、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はアセトニトリル中で、いわゆるSongashira反応の標準条件下において、2−アミノ−3−ブロモ−5−ニトロピリジンとカップリングすることができる。該反応は、室温又はそれ以上、最大160℃において進行し、式Xの対応する化合物を産生する。
【0053】
あるいは、式IXのエチニル−アレンは、まず、当業者に既知な手順によって、より反応性のアルキニル−Zn又は−Sn誘導体に変換することができる:該エチニル−アレンは、強塩基、例えば、ブチルリチウムで脱保護され、ZnCl2又はBu3SnClと反応し所望の亜鉛又はスズ中間体を産生するアルキニル−Li中間体を形成する。これらは、続いて、標準架橋条件下、例えば、溶媒、例えば、ジメチルアセトアミド、THF,又はトルエン中、パラジウムホスフィン錯体、Pd(PPh34又はPdCl(PPh32又はPd2(dba)3/PtBu3による触媒において、ブロモピリジンとカップリングすることができる。
【0054】
工程2:式V−Bのピロールを与えるための式Xのアルキン中間体の環化は、室温から還流温度の範囲の温度において、不活性溶媒、例えば、N−メチル−ピロリドン(NMP)、テトラヒドロフラン(THF)、ジメチルホルムアミド(DMF)、又はエタノール中、塩基、例えば、カリウムtert−ブトキシド、水素化カリウム、又はナトリウムエトキシドとの処理により達成することができる。あるいは、該塩基は、触媒、例えば、CuIにより置き換えることができる。式V−Bの得られたピロールは、その後、工程3及び工程4a又は4bに対応する式I−Bの化合物に変換することができる。
【0055】
工程3、工程4a及び工程4b:これらの工程は、上記スキーム1において記載された工程2b、工程3a及び工程3bに類似する。
【0056】
式I−A又はI−B中の一定の置換基は、上述の合成手順の条件に対して不活性でない場合があり、当業界に既知な標準的な保護基による保護を必要とし得る。例えば、アミノ酸は、tert−ブトキシカルボニル誘導体として保護することができる。あるいは、いくつかの置換基は、反応手順の最後に他のものに由来してもよい。例えば、式Iの化合物は、ニトロ基を伴い合成することができ、かかる置換基は、標準的な手順により最終的にアシルアミノ置換基に変換される。
【0057】
式Iの化合物は、1又は数個のキラル中心を含んでよく、そしてラセミ体又は光学活性体において存在してもよい。該ラセミ体は、既知の方法に従い鏡像異性体に分離することができる。例えば、結晶化により分離できるジアステレオ異性体塩は、光学的に活性な酸、例えば、D−又はL−の酒石酸、マンデル酸、リンゴ酸、乳酸若しくはカンファースルホン酸との反応によりラセミ混合物から形成される。あるいは、該鏡像異性体の分離はまた、商業的に入手可能なキラルHPLC相におけるクロマトグラフィーを使用することにより達成することができる。
【0058】
本発明に従う化合物は、これらの医薬的に許容される塩の形態において存在するこができる。「医薬的に許容される塩」の語は、式Iの化合物の生物学的有効性及び特性を維持し、適当な無毒性の有機若しくは無機酸、又は有機若しくは無機塩基から形成される慣習的な酸付加塩又は塩基付加塩を意味する。酸付加塩は、例えば、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、ヨウ化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、及び硝酸に由来するもの、及び有機酸、例えば、p−トルエンスルホン酸、サリチル酸、メタンスルホン酸、シュウ酸、コハク酸、クエン酸、リンゴ酸、乳酸、フマル酸等に由来するものを含む。塩基付加塩は、アンモニウム、カリウム、ナトリウム、第四級水酸化アンモニウム、例えば、水酸化テトラメチルアンモニウム、特にナトリウムに由来するものを含む。医薬化合物の塩への化学修飾は、改善された化合物の物理的及び化学的安定性、吸湿性、流動性、並びに溶解性を得るための薬理化学者に周知な技術である。これは、例えば、Stahl, P. H., and Wermuth, G., (editors), Handbook of Pharmaceutical Salts, Verlag Helvetica Chimica Acta (VHCA), Zurich (2002)又はBastin, R.J., et al., Organic Proc. Res. Dev. 4 (2000) 427-435に記載される。
【0059】
本発明に従う化合物及びこれらの医薬的に許容される塩は、例えば、医薬組成物の形態において、医薬として使用することができる。該医薬組成物は、例えば、錠剤、コート錠、ドラジェー、ハード及びソフトゼラチンカプセル、溶液、乳化物又は懸濁液の形態において、経口的に投与することができる。しかしながら、該投与は、座薬の形態において直腸的に、又は例えば、注射溶液の形態において非経口的に有効であってよい。
【0060】
上述の医薬製剤は、本発明に従う化合物を、医薬的に許容される無機又は有機担体で処理することにより得ることができる。ラクトース、コーンスターチ若しくはこれらの誘導体、タルク、ステアリン酸若しくはその塩等は、例えば、錠剤、コート錠、ドラジェー、及びハードゼラチンカプセルの担体として使用することができる。ソフトゼラチンカプセルに適当な担体は、例えば、植物油、ワックス、脂肪、半流動性及び液体ポリオール等である。活性物質の特性に依存するが、ソフトゼラチンカプセルの場合には担体は通常必要とされない。溶液及びシロップの製造に適当な担体は、例えば、水、ポリオール、グリセロール、植物油等である。座薬に適当な担体は、例えば、天然若しくは硬化油、ワックス、脂肪、半流動性若しくは液体ポリオール等である。
【0061】
医薬製剤は、更に、防腐剤、可溶化剤、安定化剤、湿潤剤、乳化剤、甘味料、着色料、香味料、浸透圧を変えるための塩、バッファー、マスキング剤、又は抗酸化剤を含むことができる。これらはまた、更に他の治療的価値のある物質を含むことができる。
【0062】
本発明の態様は、医薬的に許容される担体と一緒に、活性成分として1又は複数の式Iの化合物を含有する医薬組成物である。
【0063】
本発明の他の態様は、srcファミリーチロシンキナーゼの不適当な活性化により媒介される疾患の治療のための上記医薬組成物である。
【0064】
本発明の他の態様は、炎症性−、免疫−、CNS障害又は骨疾患の治療のための上記医薬組成物である。
【0065】
本発明の他の態様は、癌の治療のための前記医薬組成物である。
【0066】
本発明の他の態様は、直腸結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、膀胱癌、卵巣、黒色腫、神経芽細胞腫、子宮頸癌、腎癌若しくは腎臓癌、白血病若しくはリンパ腫の治療のための前記医薬組成物である。
【0067】
本発明の他の態様は、癌の治療のための医薬組成物の製造のための1又は複数の式Iに従う化合物の使用である。
【0068】
本発明の他の態様は、直腸結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、膀胱癌、卵巣、黒色腫、神経芽細胞腫、子宮頸癌、腎癌若しくは腎臓癌、白血病若しくはリンパ腫の治療のための医薬組成物の製造のための1又は複数の式Iに従う化合物の使用である。
【0069】
本発明の他の態様は、炎症性−、免疫−、CNS障害又は骨疾患の治療のための医薬組成物の製造のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0070】
本発明の他の態様は、srcファミリーチロシンキナーゼ阻害剤としての1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0071】
本発明の他の態様は、細胞シグナル伝達制御及び抗増殖剤としての1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0072】
本発明の他の態様は、炎症性−、免疫−、CNS障害又は骨疾患の治療のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0073】
本発明の他の態様は、癌の治療のための1又は複数の式Iの化合物の使用である。
【0074】
本発明の他の態様は、活性成分として治療的有効量の式Iに従う化合物、及び医薬的に許容される担体を含んで成る医薬組成物である。
【0075】
本発明の他の態様は、治療的有効量の式Iに従う化合物を、それが必要な人に対して投与することを含んで成る、癌の治療方法である。
【0076】
本発明の他の態様は、治療的有効量の式Iに従う化合物を、それが必要な人に対して投与することを含んで成る、直腸結腸癌、乳癌、肺癌、前立腺癌、膵癌、胃癌、膀胱癌、卵巣、黒色腫、神経芽細胞腫、子宮頸癌、腎癌若しくは腎臓癌、白血病若しくはリンパ腫の治療方法である。
【0077】
医薬製剤は、例えば、以下の手順に従い得られた:
1. カスタムメイドチューブGL25.4cm中に4.0gのガラスビーズを秤量する(該ビーズをチューブの半分に充填する)。
2. 50mgの化合物を添加し、スパチュラで分散させ、そしてボルテックスする。
3. 2mlのゼラチン溶液を添加し(重量 ビーズ:ゼラチン溶液=2:1)、そしてボルテックスする。
4. 光保護のためにアルミホイルでキャップ及びラップする。
5. 製粉のためのカウンターバランスを準備する。
6. Retsh mill において20/s、4時間製粉する(いくつかの物質については30/sで最大24時間)。
7. レシピエントバイアルに結合したフィルターホルダーにおける2層のフィルター(100μm)で該ビーズから400gで2分間の遠心分離により懸濁液を抽出する。
8. 抽出物をメスシリンダーに移す。
9. 最終容積に達するか又は抽出物が透明になるまで少量(ここでは1mlの工程)で洗浄を繰り返す。
10.ゼラチンで最終容積に満たし、そしてホモジナイズする。
【0078】
上述の調製手順は、1〜10μmの粒子サイズを有する式Iの化合物のマイクロサスペンションを産生する。該マイクロサスペンションは経口投与に適当であり、そして以下に記載される生体内における薬物動態試験に使用することができる。
【0079】
薬理活性:
src−ファミリーチロシンキナーゼの阻害剤としての本発明に従う化合物の活性は、以下のアッセイを用いることにより示された。
【0080】
SRC−阻害剤−アッセイパラメーター:
反応混合物:
ATP 5μM
ペプチド(Ro+Ja133−Ro): 10μM
Ja133−Ro 196nM
Ro 9.8μM
PT66 230ng/ml
アッセイバッファー: 4mM MgCl2
2mM TCEP
50mM HEPES
0.1% Tween 20
pH 7.3
酵素: 2.5 U/ml
阻害剤: 最大 25μM
最小 0.42nM
材料:
Eu−標識ホスホチロシン抗体:
−Lck Cisbio Mab PT66−K
−Src EG&G Wallac PT66 Eu−W1024
(全て商業的に入手可能)。
ペプチド: Ro: NH2−A−E−E−E−I−Y−G−E−F−E−A−K−K−K−K−CONH2、及び
Ja133−Ro: Ja133−G−アミノカプリル酸−A−E−E−E−I−Y−G−E−F−E−A−K−K−K−K−CONH2、ここでJa133はLightCycler−Red 640−N−ヒドロキシスクシンイミドエステルである;
【0081】
これにより、両方のペプチドは、Zinsser SMP350ペプチドシンセサイザーにおいて最適化した固相ペプチド合成プロトコル(Merrifield, Fed. Proc. Fed. Amer. Soc. Exp. Biol. 21 (1962) 412)により合成した。手短には、当該ペプチドは160mg(22.8μmolスケール)のRink−Linker修飾ポリスチレン固相において、側鎖の官能基に依存して一時的なピペリジン不安定のFmoc−及び永久的な酸不安定のtert−Bu−、BOC−、及びO−tert−Bu−基によりそれぞれ保護された20倍超のアミノ酸を繰り返し結合することにより構築した。基質配列AEEEIYGEFEAKKKKは、スペーサーアミノ酸アミノカプリル酸及びグリシンでN末端付加的にマウントした。N末端の一次的な保護基の切断後、まだ付着し、保護されているペプチドを1.5倍量のLightCycler−Red 640−N−ヒドロキシスクシンイミドエステル(Roche Diagnostics GmbHから購入した)及びトリエチルアミンで標識した。3時間後、青色の樹脂の溶出液が無色となるまで当該樹脂をジメチルホルムアミドとイソプロパノールで洗浄した。完全に保護し標識したペプチドを固相から除去し、そして80%のトリフルオロ酢酸、10%のエタンジチオール、5%のチオアニソール、及び5%の水の混合物で処理することにより永久的な保護基(permanent protecting group)から開放した。基質は最終的に調製用逆相HPLC精製により単離した。精製は、12.2mgのRP−HPLCの単一のピークの純粋な青色の物質を産生した(凍結乾燥物)。同定はMALDI質量分光法[2720.0]により証明した。
【0082】
酵素:
Upstate Lck(p56lck、活性)、Upstate Src(p60c-src、部分的に精製されている)はUBI, Upstate Biotech, Inc.から購入した。
【0083】
時間分解蛍光アッセイ:リーダー:Perkin Elmer, Wallac Viktor 1420-040 マルチラベルカウンター;液体操作システム: Beckman Coulter, Biomek 2000。
【0084】
ATP、TweenTM 20、4−(2−ヒドロキシエチル)−1−ピペラジンエタンスルホン酸(HEPES)は、Roche Molecular Biochemicalsから購入し、MgCl2及びMnCl2は、Merck Eurolabから購入し、トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンハイドロクロライド(TCEP)は、Pierceから購入し、384ウェル低容積蛍光プレートはFalconから購入した。
【0085】
アッセイの説明:
最初に、酵素を対応量の本発明に従う阻害剤と共に水溶液中15℃で15分間プレインキュベートする。それからATP、ペプチド、及びPT66を含有する反応混合物を添加することによりリン酸化反応を開始し、そしてその後振盪する。当該反応の進行は、適当なウェルプレートリーダーにおいて時間分解蛍光分光法を使用して直ぐにモニターする。
【0086】
IC50値は、非線形曲線フィット(XLfitソフトウェア(ID Business Solution Ltd., Guilford, Surrey, UK))を使用することにより反応速度から得ることができる。
【表1】

【0087】
以下の実施例及び引用例は、本発明、付随の特許請求の範囲に記載される真の範囲の理解を助けるために供される。本発明の精神に離れることなく記載される手順において改変を行うことができることが理解される。
【実施例】
【0088】
実験手順:
出発物質
2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−6−イルアミン
a)6−ニトロ−2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン
250mlのニトロベンゼン中の14.05gの2,3−ジアミノ−5−ニトロピリジン及び9.68gのベンズアルデヒドを140〜150℃で15時間加熱した。該溶媒を減圧蒸留により除去し、そして残渣を酢酸エチル中に分散させ、濾過し、そしてろ紙上の残渣を酢酸エチルで完全に洗浄した。
収量 16.0g
【0089】
b)2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−6−イルアミン
12.0gの6−ニトロ−2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジンを1lの酢酸中に溶解させた。18gの鉄粉を添加し、そして該混合物を撹拌しながら80℃に加熱した。2時間後、該混合物を室温に冷却し、そしてセライト上で濾過した。該セライトパットをメタノールで洗浄し、そそいて併せた濾液を蒸発させた。残渣をメタノール/ジクロロメタン 1:1中に溶解させ、そしてシリカ上で濾過した。該濾液を100mlの体積に濃縮し、生じた沈殿を濾過により回収し、そしてメタノールで洗浄した。
収量 7.68g
【0090】
置換フェニル−アセチレン
置換フェニル−アセチレンは、米国特許第4,162,265A号に記載される文献の手順により、3−又は4−アミノ−フェニルアセチレンのアシル化により、あるいは文献の手順により、3−又は4−ヒドロキシフェニルアセチレンのアルキル化により調製した。
【0091】
3−(2−メトキシエトキシ)フェニルアセチレン
3−ヒドロキシフェニルアセチレン(237mg、2mmol)を、アセトン(5ml)中、2−ブロモエチルメチルエーテル(0.23ml、2.4mmol)及び炭酸カリウム(322mg、2.4mmol)と共に、電子レンジ(CEM Discover)において110℃で45分間加熱した。水(1ml)を該混合物に添加し、そして全体をジクロロメタン(2×25ml)で抽出した。併せた有機相をMgSO4で乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮し、褐色油を産生した。該油をカラムクロマトグラフィー(SiO2、ジクロロメタン)で精製し、無色の油として、3−(2−メトキシエトキシ)フェニルアセチレンを産生した(247mg,70%収率)。
【表2】

【0092】
あるいは、4−(2−メトキシエトキシ)フェニルアセチレンは、Tsuji, M., J.Org. Chem. 68 (2003) 9589-9597-supporting information S.l-36 -http://pubs.acs.org/subscribe/journals/joceah/suppinfo/jo035090f/jo035090fsi20030918_025110.pdfにおいて、4−メトキシフェニルアセチレンについて記載されるとおり、Sonogashiraカップリングにより、対応するヨードベンゼン及びトリメチルシリルアセチレンから調製した。
【0093】
無水酢酸(13.8ml、144mmol)を、テトラヒドロフラン(300ml)中の3−エチニルアニリン(14.0g、120mmol)及び4−(ジメチルアミノ)ピリジン(DMAP)(1.5g、12mmol)の溶液中に滴下した。該混合物を室温で2時間混合し、水(100ml)を該混合物に添加し、そして全体をジクロロメタン(2×25ml)で抽出した。併せた有機相を10%クエン酸(100ml)で、続いて飽和炭酸水素ナトリウム(100ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮し、黄色の固形物として、3−(アセチルアミノ)フェニルアセチレンを産生した(18.3g、96%)。
【表3】

【0094】
最終生成物
例1−1:(1−フェニル−エチル)−(2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−6−イル)−アミン
例b)由来の100mgの2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−6−イルアミンを1mlの乾燥ジメチルホルムアミド(DMF)中に溶解し、そして92mgの臭化1−フェニルエチルを室温で添加した。該混合物を18時間撹拌し、該DMFを真空下で除去し、そして該残渣を、段階的に、まずジクロロメタン、その後ジクロロメタン/メタノール(60:1)、それからジクロロメタン/メタノール/アンモニア(60:1:0.2)で溶出する、シリカにおけるクロマトグラフィーにより精製した。画分を含有する精製物をプールし、そして更に調製用HPLC−MSにより精製した。
収量、17.4mgの表題の生成物。
【表4】

【0095】
例2−1:ベンジル−{2−[3−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−アミン
a)3−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニルエチニル]−5−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン
3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニルアセチレン(6.3g、36mmol)を、暗所において、無水テトラヒドロフラン(80ml)中のトリエチルアミン(1.92ml、14mmol)、2−アミノ−3−ブロモ−5−ニトロピリジン(4g、18mmol)、PdCl2(PPh32(966mg、1.38mmol)及びCuI(262mg、1.38mmol)の溶液に添加した。該混合物を室温で48時間撹拌し、そして真空下で濃縮し、そしてジクロロメタン(150ml)中に溶解した。有機溶液を水(25ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして真空下でその有機体積の20%まで濃縮し、その後ヘプタン(20ml)を添加した。生じた黄色の固形物を濾過し、そして乾燥させ、3−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニルエチニル]−5−ニトロ−ピリジン−2−イルアミンを与えた(4.2g、74%収率)。
【表5】

【0096】
b)2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−5−ニトロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン
カリウムtert−ブトキシド(1.18g、10.5mmol)を、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドの2:1混合物(75ml)中の3−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニルエチル]−5−ニトロ−ピリジン−2−イルアミン(1.57g、5mmol)の溶液中に添加した。該混合物を70℃で16時間加熱し、その後テトラヒドロフランを真空下で除去した。該混合物をシリカパッド上に注ぎ、そして酢酸エチル、その後酢酸エチル中10%メタノールで抽出した。該有機相を、原体積の5%まで真空下で濃縮し、そして水(30ml)を添加した。生じたオレンジ色の固形物を濾過し、そして乾燥させ、2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−5−ニトロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジンを産生した(1.3g、83%)。
【表6】

【0097】
c)2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イルアミン
エタノール(50ml)中の2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−5−ニトロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン(7.1mmol、2.2g)及び鉄粉(6.7g)の混合物に、HCl(濃)(0.7ml)及び水(5ml)を添加した。該混合物を70℃で3時間加熱し、その後冷却し、そしてセライト(登録商標)を介して濾過した。該溶媒を真空下で除去し、そして残渣を酢酸エチル(30ml)中に溶解し、飽和炭酸水素ナトリウム(15ml)で洗浄し、MgSO4で乾燥させ、濾過し、そして真空下で濃縮した。粗生成物をカラムクロマトグラフィー(SiO2、酢酸エチル)により精製し、2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イルアミン(1.2g、60%)を産生した。
【表7】

【0098】
d)ベンジル−{2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−アミン
ポリマー支持水素化ホウ素(706mg、1.8mmol)を、メタノール(3ml)中の2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イルアミン(50mg、0.18mmol)及びベンズアルデヒド(18mg、0.18mmol)の混合物に添加した。該混合物を16時間撹拌し、濾過し、真空下で濃縮し、そして調製用HPLCで精製し、ベンジル−{2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−アミン(4.4mg、7%)を産生した。
MS:M=(ES+)374(M+H)、415(M+アセトニトリル)、747(2M+H)
【0099】
上に報告された実験条件(例2−1)及び適当な出発物質を使用して、以下の誘導体を調製した:
【表8】

【0100】
環化反応による例2−5〜2−8の中間体、N−[3−(5−ニトロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミドの調製において、例2−1のとおり、より高い等モル量の塩基(カリウムtert−ブトキシド)を必要とする。
【0101】
N−[3−(5−ニトロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミドの調製
カリウムtert−ブトキシド(2.25g、20mmol)を、テトラヒドロフラン及びジメチルホルムアミドの2:1混合物(75ml)中のN−[4−(2−アミノ−5−ニトロ−ピリジン−3−イルエチニル)−フェニル]−アセトアミド(1.45g、5mmol)の溶液に添加した。該混合物を70℃で16時間加熱し、その後テトラヒドロフランを真空下で除去した。該混合物をシリカパッド上に注ぎ、そして酢酸エチル中の10%メタノールで溶出させた。有機相を真空下で原体積の5%まで濃縮し、そして水(30ml)を添加した。生じたオレンジ色の固形物を濾過し、そして乾燥させ、N−[3−(5−ニトロ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミド(1.01g、68%)を産生した。
【表9】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
式Iの化合物
【化1】

(式中、
1及びR2は、独立に、水素、ハロゲン、アルキル、アルコキシ、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノを表し;
3は、水素又はアルキルであり;
4は、水素、ハロゲン、アルコキシ又はアルキルであり;
Aは、=CH−又は=N−である)、
及び全ての医薬的に許容されるその塩。
【請求項2】
前記式中、
1が水素、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノであり;
2が水素であり;そして
4が水素又はアルキルである、
請求項1に記載の化合物。
【請求項3】
前記式中、
1及びR2が、独立に、水素又はアルキルを表し;
3が、水素又はアルキルであり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=N−である、
請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
前記式中、
1が、水素、アルコキシアルコキシ又はアシルアミノであり;
2が、水素であり;
3が、水素であり;
4が、水素又はアルキルであり;そして
Aが、=CH−である、
請求項1又は2のいずれか一項に記載の化合物。
【請求項5】
(1−フェニル−エチル)−(2−フェニル−3H−イミダゾ[4,5−b]ピリジン−6−イル)−アミン;
ベンジル−{2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−アミン;
{2−[3−(2−メトキシ−エトキシ)−フェニル]−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル}−(2−メチル−ベンジル)−アミン;
ベンジル−(2−フェニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)−アミン;
(2−メチル−ベンジル)−(2−フェニル−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−5−イル)−アミン;
N−[3−(5−ベンジルアミノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミド;
N−{3−[5−(2−メチル−ベンジルアミノ)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−フェニル}−アセトアミド;
N−[4−(5−ベンジルアミノ−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル)−フェニル]−アセトアミド;及び
N−{4−[5−(2−メチル−ベンジルアミノ)−1H−ピロロ[2,3−b]ピリジン−2−イル]−フェニル}−アセトアミド、
から成る群から選択される、請求項1に記載の化合物。
【請求項6】
請求項1に記載の式Iの化合物の製造方法であって、
3が水素であり、ここで、
(a)式VI
【化2】

(式中A、R1及びR2は、請求項1中の式Iに与えられた意味を有する)の化合物を、
式VIII
【化3】

(式中R4は、請求項1中の式Iに与えられた意味を有する)の化合物と反応させ、請求項1中の式I(式中、R3は水素である)のそれぞれの化合物を与え、
(b)上記式Iの化合物を反応混合物から単離し、そして
(c)所望の場合には、医薬的に許容される塩に変換する、方法。
【請求項7】
医薬的に許容される担体と一緒に、活性成分として請求項1〜5に記載の1又は複数の化合物を含有する、医薬組成物。
【請求項8】
癌の治療のための請求項7に記載の医薬組成物。
【請求項9】
癌の治療のための請求項1〜5に記載の1又は複数の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−503001(P2009−503001A)
【公表日】平成21年1月29日(2009.1.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−524409(P2008−524409)
【出願日】平成18年7月28日(2006.7.28)
【国際出願番号】PCT/EP2006/007479
【国際公開番号】WO2007/014707
【国際公開日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【出願人】(591003013)エフ.ホフマン−ラ ロシュ アーゲー (1,754)
【氏名又は名称原語表記】F. HOFFMANN−LA ROCHE AKTIENGESELLSCHAFT
【Fターム(参考)】