説明

褐藻カジメ(学名:EcKLoniacovaKjillmen)の藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する方法。

【課題】 従来カジメからの抽出成分を得る方法には多くの問題があり抽出方法が複雑でカジメの藻体重量に対し多くの抽出液を得ることが出来ない等の問題点があった。
【解決手段】 褐藻カジメ(学名:EcKLonia cova Kjillmen)を採取後、粘状抽出液を多く放出させる為、細断し適湿適温で休養又は保養させた後、原藻体を練混ぜカジメの胞子が内部に有する粘液を強制的に放出させ、熱湯と共にフコイダンを含む粘状を帯びた抽出液を採集すること。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は褐藻類、こんぶ科かじめ属カジメ((学名:EcKLonia cova Kjillmen)(以下、「カジメ」という)の藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来かじめ属に類するつるめ、あんとくめ、くるめ等は地方によりわかめと同様に食される地域によりわかめと同様に食される地域はあるが、カジメはあまり食用に供されることはない。(例えば非特許文献1参照)
【0003】
褐藻カジメは表日本中部から九州沿岸、朝鮮半島の海岸と多く生息しているが、藻体は硬く、灰汁が強く、臭い等の理由から 度やアルギン酸の原料として用いられて来た。
【0004】
しかし、近年カジメを食材とする技術や含有する有効成分を抗糖尿病剤、血管新生抑制剤、養毛組成物、化粧料、美白化粧料、汗消臭剤等の原料として利用することなども研究されている。(例えば特許文献1〜7参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−23885号公報
【特許文献2】特開2005−75744号公報
【特許文献3】特開2006−22033号公報
【特許文献4】特開2003−155218号公報
【特許文献5】特開2004−75629号公報
【特許文献6】特開2002−80339号公報
【特許文献7】特開2008−184395号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】株式会社 保育社発行 「原色海藻図鑑」平成8年8月31日発行 44P 記載
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記の特許文献1〜7に見られる様に、カジメから抽出される有効成分を医薬、化粧品、食品などの分野で利用しようとしているが、有効成分の抽出に当っては、苦味、エグ味、灰汁の強さ、硬さ等カジメの持つ特徴を除去するため、カジメを粉砕したり、特殊の溶媒を用いて処理する必要があり、複雑な工程と設備に多くの時間と経費を要している。
【0008】
本発明はこの様な従来の方法が有していた問題点を解決し、簡単な方法でカジメからフコイダンを含む抽出液を安価で多量に採取する方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成するため、小さく裁断してカジメの藻体に容器内で熱湯を加えて攪拌した後、該容器内の液体を濾過して湯と共に粘状を帯びた抽出液を採集するカジメの藻体からフコイダンうぃ含む抽出液を採集する方法を提供するものである。
【0010】
本発明に用いるカジメは表日本中部から九州沿岸、朝鮮半島の海岸に多く生息する多年生海藻で、通常のカジメでも良いが2〜3年生葉で、春期に多くの胞子を持った葉(以下、含胞子葉と言う。)が粘性を帯びた抽出液を多量に保ちやすく好ましい。
【0011】
なお、原料藻として用いるカジメは前記の含胞子葉は好ましいがその季節に限定されることはない。又その保管貯蔵に付いて採取水揚されたものを直ちに使用するとか採取水揚されたものを冷凍して貯蔵後使用しても後作業に影響はない。
【0012】
又、本発明に於けるカジメの藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する方法に於て、前処理として水揚後、石やゴミ等を取除くため水洗すると良い。
【0013】
まず、カジメは小さく裁断される。裁断はカジメより抽出液が放出される表面積を多くすることを目的として行なわれる。裁断巾は1〜5mm程度であれば良いが出来得るなら狭い方が好ましい。
【0014】
ついで、小さく裁断されたカジメを容器に入れる等して散水するか濡れた布を被せて高湿度に保持したまま12〜24時間放置して養生しても良い。その温度は25℃〜30℃、湿度は80%以上を保つ事が好ましい。この様にしてカジメを養生するのはカジメより粘性を帯びて抽出液の採取量を増大させるためである。
【0015】
更に、養生させた小さく裁断したカジメを容器等に入れ箆や棒状等の器物等を使って練混ぜ、カジメの葉体から粘状物質をおおく引出し又放出させることが好ましい。
【0016】
カジメを練混することに依りカジメ自体が有する粘状物質に依ってカジメ内に存在する粘状物質に相関作用を起させることで、より多くの粘状物質を引出して排出させることが出来る。
【0017】
次に小さく裁断したカジメを容器に入れ、熱湯を加えて撹拌する。なお熱湯を加えて撹拌する処理は前記した養生処理や練混せ処理を施した後に行うことが好ましい。熱湯を加えて撹拌するのはカジメから粘性を帯びた抽出液をより多く排出させて抽出液の採取量を増大させるためである。
【0018】
前記カジメに加える熱湯の温度としては50℃以上、好ましくは80℃〜100℃であるが、抽出時間を多く要するは常温も排除するものではない。
【0019】
加える熱湯の量としてはカジメの藻体重量に対して5〜20倍の範囲でも良いが、通常は10倍程度の熱湯を加える。熱湯を加えた後に撹拌する条件としては、より多く抽出液が均質になる様にすることが好ましい。
【0020】
又、カジメに対して加える熱湯の量は採取しようとする抽出液の粘度、即ち使用目的に応じて選定するが、後述するオスワルト粘度計に於ける測定値を20秒と設定した場合カジメに対してその重量の10倍を基準とする。
【0021】
その後容器内の液体と濾過して湯と共に粘状を帯びた抽出液を採取するが、濾過処理には目の細やかなネットや濾過紙等を用いると良い。
【発明の効果】
【0022】
上記した様にカジメを小さく裁断してそのまま容器に入れるか、散水や濡れた布を被せるなどして高湿度に保持したまま養生した後練混ぜて粘りを出させた後、容器に熱湯を加へて撹拌するので、従来の方法によりカジメから抽出液を採取する方法に比較して特別な装置も必要とせず多量の抽出液を採取することが出来て抽出液を安価に提供することが出来る。
【0023】
なお、小さく裁断したカジメを養生処理したり練混せ処理を施すことでカジメの内部より今まででは得られない多量の粘性を帯びた抽出液を採取出来る。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施例に依り説明するが、本実施例によって本発明が限定されるものではない。
【0025】
なお、カジメより得ることが出来た抽出液の粘度は次の通りの粘度計と手順で測定した。
粘度計
粘度計オストワルド (相対粘度計)
毛細管内径 1.25mm
球客量 3mL
(1) 測定方法
抽出液と水との毛細管通過時間を対比する。
(2) 測定条件
抽出液、水 共に 30℃
(3) 抽出結果
通過時間 水 6秒
抽出液 20秒等
誤差 1秒
【実施例1】
【0026】
本実施例に於いて用いたカジメの原藻は九州豊後水道に於いて4月中旬に採取したが含胞子葉のカジメである。
それを、水洗後2mm巾に小さくして用いた。裁断したカジメ30gを1000ccの容器に入れ80℃の熱湯を300cc加えた後、撹拌して20分後に市販の濾過紙で濾過して抽出液を採集した。抽出液の粘度は11秒であった。
【実施例2】
【0027】
上記と同様にして準備した含胞子葉のカジメの原藻30gを2mm巾に小さく裁断した後、温度28℃、湿度80%の室内で散水した後湿布で覆い乍ら12時間放置して養生した。
【0028】
次いで、箸を用いて約10分間裁断したカジメを練混た。カジメは強い粘糸状を呈して来たので1000ccの容器に入れ80℃の熱湯300ccを加えた。そして前記同様撹拌し20分後市販の濾過紙で濾過して抽出液を採集した。抽出液の粘度は22秒であった。
【実施例3】
【0029】
本実施例に於いて用いたカジメの原藻は前記同様4月中旬に九州豊後水道に於いて採取した含胞子葉を用いた。水洗いした後巾約2mmに小さく裁断して30g単位で包装後ママイナス20℃で冷凍した。3ヶ月後に出庫して常温で2時間放置して解凍後、裁断された30gのカジメを1000ccの容器に入れ、80℃の熱湯を300cc加えた。
実施例2と同様に20分撹拌の後市販の濾過紙で濾過して抽出液を採集した。抽出液の粘度は11秒であった。
【実施例4】
【0030】
前記実施例3と同様の処理をした裁断されたカジメ30gを常温で解凍後散水して湿布で覆いた約12時間放置して養生した。
【0031】
次に裁断されたカジメを箸を用いて焼く10分間練混ぜた。カジメは、強い粘糸状を呈して来たので1000ccの容器に入れて80℃の300ccを加えた後約20分撹拌して市販の濾過紙で濾過して抽出液を採集した。抽出液の粘度は21秒であった。
〔比較例〕
【0032】
この比較例に於いて用いたカジメの原藻は4月中旬に九州豊後水道に於いて採集したカジメを水洗して葉体30gを裁断することなく採集した状態のまま1000ccの容器に入れた。80℃の熱湯300ccを加えて撹拌し、20分後に市販の濾過紙で濾過して抽出液を採取したが抽出液の粘度は7秒と非常に粘度の低いものであった。
【0033】
比較例と実施例1〜4に於ける抽出処理の差異と得られた抽出液の粘度を表1に示した。
【表1】

×・・・・ 処理なし ○・・・・ 処理有

表1から見られる様にカジメの藻体からフコイダンを含む抽出液を採取する処理に於て重要な事はカジメの藻体を小さく切断した後、養生し更に練混ぜる処理を加えることが効果的であり又カジメの原藻を冷凍保存した後使用することも可能であることが判明した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
褐藻カジメ(学名:EcKLonia cova Kjillmen)の葉体を小さく裁断後、熱湯を加えることを特徴とするフコイダンを含む抽出液を採集する方法。
【請求項2】
褐藻カジメ(学名:EcKLonia cova Kjillmen)の葉体を小さく裁断後高湿度に保管して養生させることを特徴とする請求項1記載のフコイダンを含む抽出液を採集する方法。
【請求項3】
小さく裁断された 褐藻カジメ(学名:EcKLonia cova Kjillmen)を養生後、器物を使って練混ぜて粘りを出させた後、熱湯を加えて撹拌することを特徴とする請求項1又は2記載のフコイダンを含む抽出液を採取する方法。
【請求項4】
褐藻カジメ(学名:EcKLonia cova Kjillmen)が最も多くの胞子を有する2〜3年生葉で、春期に採取した葉体であることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のフコイダンを含む抽出液を採集する方法。


【公開番号】特開2011−93865(P2011−93865A)
【公開日】平成23年5月12日(2011.5.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−251763(P2009−251763)
【出願日】平成21年11月2日(2009.11.2)
【出願人】(502019405)株式会社アッキーフーズ (6)
【Fターム(参考)】