説明

褐藻類盤状体由来フコイダン多糖およびその利用

【課題】 フコイダンを多量かつ簡便に取得すること。
【解決手段】 褐藻類の盤状体を室内で簡便に生育させ、該盤状体からフコイダン多糖を精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、褐藻類由来のフコイダン多糖に関するものであり、より詳細には、オキナワモズクの盤状体から得られる新規フコイダン多糖に関するものである。
【背景技術】
【0002】
オキナワモズクにはフコイダンが多量に含まれていることが知られており、またオキナワモズクの生育分布の北限が鹿児島県の奄美大島であり、南限が沖縄県の石垣島であることから、オキナワモズクは沖縄県の有望な生物資源の1つとなっている。
【0003】
近年、フコイダンは低コレステロール作用、抗胃潰瘍作用、抗エイズウイルス作用、抗癌作用、抗酸化作用、免疫賦活作用、保湿作用などの様々な薬理作用が注目されており医薬品、機能性食品、化粧品、バイオテクノロジー関連分野において広く利用されている。身近なところでは、フコイダン含有食品が提供されている(例えば、特許文献1を参照のこと)。特許文献1には、モズクから抽出・精製されたフコイダンを含有する種々の食品が開示されている。また、特許文献2には、高脂血症、特に高トリグリセライド血症の予防および治療に用いることのできるフコイダン含有組成物が開示されている。
【0004】
オキナワモズクに限らず褐藻類(例えば、モズク類)にフコイダンが存在することは周知である。例えば、非特許文献1には、天然オキナワモズクから分離したフコイダンの構成糖比はL−フコース:D−キシロース:D−ガラクトース:D−マンノース:D−キシロース:L−ラムノース=92:2:1:2:2:1で、それらに加えD−グルクロン酸(11.3%)を含み、硫酸は35.2%含まれることが記載されている。また,非特許文献3には、イトモズクの構成糖はほとんどがL−フコースで、わずかに(1%前後)D−キシロースとD−ガラクトースを含み、ウロン酸は存在せず硫酸は35%含まれることが記載されている。さらに特許文献3には、養殖オキナワモズクに存在するフコイダンは酢酸を含み、分子量が500,000〜600,000Daであり、天然のオキナワモズク由来のフコイダンとは構成糖比が異なることが開示されている。
【0005】
天然または養殖に限らず、オキナワモズク藻体からフコイダンを抽出する従来の方法は、多量の藻体を必要とする。よって藻体を増養殖するために広大な海面積が必要であり、このことは、漁業権に関して、および/または台風災害対策などに関して、多額の維持費、管理費および/または人件費を必要とする。このように、オキナワモズク藻体からのフコイダンの精製は、多くの問題を抱えており、その生産性の効率化が非常に望まれている。
【0006】
オキナワモズクは、藻体を形成するまでに胞子体(顕微鏡レベルのサイズ)が成長した盤状体(可視サイズ)の時期を経る。盤状体は、適度な生育条件下(適切な温度、光量など)でエアレーションを行なうと、藻体に生育することなく盤状体のまま増殖し続ける性質を有している(例えば、特許文献4を参照のこと)。特許文献4には、盤状体を首尾よく増殖させる方法、ならびに盤状体もしくは糸状体から抽出・分離したフコキサンチンおよび/またはフコステロールが開示されている。
【0007】
このオキナワモズク藻体の有機溶媒抽出物中にフコキサンチンおよびフコステロールも含まれていることは、すでに知られている。そして、このフコキサンチンおよびフコステロールはそれぞれ、発癌抑制効果およびコレステロール低減作用を有することが知られており、医薬、化粧品、健康食品としての利用が検討されている。藻体に含まれているフコキサンチンおよび/またはフコステロールの量は少なく、実用的な量を得るには時間と費用がかかる点が大きな問題となっていたが、特許文献4に記載される事項は、盤状体もしくは糸状体を首尾よく増殖させてその盤状体もしくは糸状体には藻体と比較して非常に多く(数十倍〜百倍以上)のフコキサンチンおよびフコステロールが含まれていることを見出したことに基づく画期的な発明である。
【特許文献1】特開平10−165114号公報(平成10年6月23日公開)
【特許文献2】特開2003−155244公報(平成15年5月27日公開)
【特許文献3】特開平10−237103号公報(平成10年9月8日公開)
【特許文献4】特開2004−35528公報(平成16年2月5日公開)
【非特許文献1】Hydrobiologia,204/205巻,573−576(1990);日本水産学会誌,53巻,1083−1088(1987)
【非特許文献2】Agric.Biol.Chem.,39巻,1115−1122(1975)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、オキナワモズクには、フコイダン、フコキサンチンおよびフコステロールという医薬分野において非常に有用な物質が含まれている。特許文献4によれば、フコキサンチンおよびフコステロールは、藻体中には非常に少量しか含まれていないので精製が非常に困難であったが、盤状体を用いれば多量に取得し得る。このことは、フコイダンもまた盤状体中に非常に多く含まれており、盤状体から精製することによって、藻体から精製する不都合が解消されると考えられる。
【0009】
おそらく、特許文献4の発明者らも同様に想定して盤状体中の多糖体を調べたものと考えられるが、特許文献4には、藻体中に多く含まれる多糖体が、盤状体中のフコイダン自体については何ら記載されていないばかりか、盤状体にはほとんど含まれていないことが記載されている。このことは、盤状体がフコイダンの供給源になり得ないことを十二分に教示している。
【0010】
本発明は、上記の問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、褐藻類の盤状体から従来存在すら認識されていなかったフコイダンを精製する方法を見出し、これによりオキナワモズク盤状体由来の新規フコイダン多糖を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明に係るフコイダン多糖は、褐藻類盤状体由来であることを特徴としている。
【0012】
本発明に係るフコイダン多糖は、オキナワモズク盤状体由来であることが好ましい。
【0013】
本発明に係るフコイダン多糖は、フコース、キシロースおよびガラクトースを2:1:1の割合で含有することが好ましい。
【0014】
本発明に係るフコイダン多糖は、フェノール硫酸法に基づいて算出した全糖量が30〜50重量%であることが好ましい。
【0015】
本発明に係るフコイダン多糖は、バリウム沈殿法に基づいて算出した硫酸含量が5〜15%であることが好ましい。
【0016】
本発明に係るフコイダン多糖は、ゲルクロマトグラフィーに基づいて算出した分子量が約50,000Daであることが好ましい。
【0017】
本発明に係る食用組成物は、上記フコイダン多糖を含有することを特徴としている。
【0018】
本発明に係る化粧用組成物は、上記フコイダン多糖を含有することを特徴としている。
【0019】
本発明に係る医薬組成物は、上記フコイダン多糖を含有することを特徴としている。
【発明の効果】
【0020】
本発明の方法を用いれば、オキナワモズクの盤状体の増養殖において、藻体の生産地域に限定されることなく室内で簡便に維持および/または管理することができる。また、本発明の方法を用いれば、盤状体の有するフコイダン産生能力を利用してフコイダンを多量かつ簡便に取得することができる。さらに、藻体の養殖とは異なり、盤状体は人工的に容器内で室内生育させることができるので、生育条件を自由にコントロールすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0021】
(1)褐藻類盤状体由来フコイダン多糖
本発明は、褐藻類盤状体由来であるフコイダン多糖を提供する。上記褐藻類としては、盤状体中にフコイダンが含まれているものであれば特に限定されないが、例えば、モズク科(Spermatochnaceae)またはナガマツモ科(Chordaceae)などのナガマツモ目(Chordariales)に属する褐藻類が好ましい。中でも、ナガマツモ科のオキナワモズク(Cladosiphon okamuranus)またはモズク科のモズク(Nemacystus decipiens)が好ましく、培養による生産、フコイダン含量を考慮すると、オキナワモズクがより好ましい。
【0022】
上記盤状体は、天然由来のものであってもよいが、特許文献4に記載される方法に従って人工的に培養されたものを使用することが好ましい。
【0023】
一般に、フコイダンと称される多糖は種々の糖類から構成されるが、本発明に係るフコイダン多糖は、フコース、キシロースおよびガラクトースを2:1:1の割合で含有することが好ましい。
【0024】
盤状体からフコイダンを抽出する際に使用される溶媒は、特に制限されないが、例えば、熱水、アルコール水溶液(例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなど)、塩酸、有機酸(例えば、クエン酸、酢酸など)が好ましい。フコイダンが食品などに使用される観点から、熱水が最も好ましい。必要に応じて、超音波、攪拌機などを用いて攪拌してもよい。
【0025】
本明細書中に記載される方法に従って得られる褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖は、フコース、キシロースおよびガラクトースを2:1:1の割合で含有し、分子量が約50,000Daである新規フコイダン多糖である。本発明に係るフコイダン多糖の全糖量は30〜50重量%であり、硫酸含量は5〜20%の範囲であり、好ましくは6〜15%、最も好ましくは7〜10%である、
(2)褐藻類盤状体由来フコイダン多糖の利用
上述したように、モズクなどから得られるフコイダンは、医薬品、機能性食品、化粧品などの分野において実用化されている。後述の実施例に記載されるように、盤状体由来のフコイダンもまた藻体由来のフコイダンと同等の抗菌作用を示すことから、藻体由来のフコイダンに匹敵するかまたはそれ以上の種々の効果を有することが容易に理解される。すなわち、本発明はさらに、褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖を含有する食用組成物、化粧用組成物および医薬組成物を提供する。
【0026】
(2−1)食用組成物
本発明は、褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖を含有、添加および/または希釈してなる食用組成物(すなわち、食品、飲料または飼料)を提供する。本発明に係る食用組成物は、フコイダン多糖の生理作用によって極めて有用である。
【0027】
本発明において、「含有」とは、食用組成物(すなわち、食品、飲料、または飼料)中に褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖が含まれるという態様を、「添加」とは、食用組成物の原料に、褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖を添加するという態様を、「希釈」とは褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖を、食用組成物の原料で希釈するという態様をいう。また、上述した本発明に係る化粧用組成物についての記載における「含有」の語は、本発明の態様にいう含有、添加、希釈の意を包含する。
【0028】
本発明に係る食用組成物の製造法は特に限定されるものではなく、調理、加工および一般に用いられている食品または飲料の製造法による製造を挙げることができ、製造された食品または飲料に本発明に係る褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖が含有、添加および/または希釈されていれば良い。
【0029】
本発明に係る食用組成物としては特に限定はないが、公知のフコイダン含有食品と同様の食品が挙げられることを当業者は容易に理解する。具体的には、本発明に係る食用組成物としては、菓子類(例えば、チューインガム、キャンディー、ゼリー、ビスケット、チョコレート、米菓)、乳製品(例えば、ヨーグルト)、健康食品(例えば、カプセル、タブレット、粉末)、飲料(例えば、清涼飲料、乳飲料、野菜・果汁飲料、茶)、ドリンク剤などが挙げられるがこれらに限定されない。菓子類は、携行利便性の観点から好ましく、乳製品は、菓子類と比較すると1回当たりの摂取量が多く、毎日摂取しやすいという観点からより好ましい。
【0030】
本発明に係る食品、飲料または飼料としては、本発明に係る褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖が含有、添加および/または希釈されており、その生理作用を発現させるための有効量が含有されていれば特にその形状に限定はなく、タブレット状、顆粒状、カプセル状などの経口的に摂取可能な形状物も包含する。なお、本発明に係る褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖は、当該生理作用と食物繊維機能とを合わせ持つ健康食品素材として、食品、飲料または飼料の製造素材として極めて有用である。
【0031】
(2−2)化粧用組成物
本発明はさらに、化粧用組成物を提供する。本発明に係る化粧用組成物は、化粧品で通常使用されるいずれの形態で存在してもよい。
【0032】
本発明に係る化粧用組成物は、化粧料成分として一般に使用されている油分、保湿剤、紫外線吸収剤、美白剤、アルコール類、キレート剤、pH調整剤、防腐剤、増粘剤、色素、植物エキス、香料などを任意に組み合わせて配合することができる。化粧用組成物としては、種々の用途および形態、例えば、水/油または油/水型の乳化化粧料、クリーム、化粧乳液、化粧水、油性化粧料、口紅、ファンデーション、皮膚洗浄剤、ヘアートニック、整髪剤、養毛剤、育毛剤、入浴剤として用いることができる。本発明に係る化粧用組成物は、常用の方法により上記種々の形態のものに調製することができる。
【0033】
本発明に係る化粧用組成物は、必要に応じて、ゲル化した水溶液、ローションタイプの分散物、二相ローション、水性相に脂肪相を分散することによって得られるエマルジョン(O/Wエマルジョン)、またはその逆のエマルジョン(W/Oエマルジョン)、または三重エマルジョン(W/O/W若しくはO/W/Oエマルジョン)、またはイオン性および/または非イオン性タイプのベシクル分散物の形態で存在し得る。
【0034】
本発明に係る化粧用組成物は、流体であっても固体であってもよい。流体で提供される場合、白色または着色クリーム、軟膏、乳液、ローション、美容液、ペースト、またはムースの外観を有してもよい。さらに本発明に係る化粧用組成物は、エアロゾルの形態で適用されてもよい。本発明に係る化粧用組成物はまた、固体形態、特にスティックの形態で提供され得る。
【0035】
本発明に係る化粧用組成物は、組成物中の褐藻類盤状体由来フコイダン多糖の機能を補助する目的で、希釈剤、分散剤、または担体として機能する薬学的、特に化粧的に受容可能な賦形剤を含むことが好ましい。
【0036】
水以外の、または水に付加される賦形剤は、液体または固体皮膚軟化剤、溶剤、湿潤剤、増粘剤、および粉末であり得る。
【0037】
一実施形態において、本発明に係る化粧用組成物に使用され得る化粧的に受容可能な賦形剤は、一般に、組成物の重量の5%〜99.9%、好ましくは25%〜80%を構成し、そして、他の化粧補助剤の不存在においては、組成物の残余部分を構成する。好ましくは、賦形剤の重量の少なくとも80重量%が水である。好ましくは、水が、新規組成物の少なくとも50重量%、最も好ましくは60〜80重量%を構成する。
【0038】
好ましい局面において、本発明に係る化粧用組成物は、化粧品で一般に使用されるアジュバント(例えば、親水性または親油性ゲル化剤、親水性または親油性活性剤、防腐剤、抗酸化剤、溶媒、香料、フィラー、スクリーン剤、顔料、脱臭剤、および染料など)を含み得る。これらの各種のアジュバントの量は、当該分野において通常使用される量であり、例えば組成物の全重量に対して0.01%〜80%、好ましくは、0.01〜50%、より好ましくは、0.05〜30%である。これらのアジュバントは、各々の性質に依存して、脂肪相中に、水性相中に、または液体ベシクル中に導入され得る。いずれの場合でも、上記アジュバントの種類およびその割合は、本発明に係る化粧用組成物の所望の特性を損なわないように選択され得る。
【0039】
本発明に係る化粧用組成物がエマルジョンである場合、脂肪相の割合は、組成物の全重量に対して5〜80重量%、好ましくは5〜50重量%の範囲であり得る。エマルジョン形態で組成物において使用される油、乳化剤、および共乳化剤は、当該分野において従来使用される公知の物質から選択される。本発明に係る化粧用組成物は、組成物の全重量に対して0.3〜30重量%、好ましくは0.5〜20重量%の範囲の割合で、乳化剤および共乳化剤を含み得る。
【0040】
本発明に係る化粧用組成物において使用可能な油としては、鉱物油(流動ワセリンまたは水素化ポリイソブテン)、植物起源の油(アボカド油またはダイズ油)、鉱物起源の油(ラノリン)、シリコーン油(シクロメチコーンまたはジメチコーン)、およびフルオロ油(パーフルオロポリエーテル)が挙げられるが、これらに限定されない。脂肪アルコール(セチルアルコール)、脂肪酸、およびワックス(カルナウバワックスまたはオゾケライト)もまた、脂肪物質として使用され得る。
【0041】
本発明に係る化粧用組成物において使用可能な乳化剤および共乳化剤の例としては、例えばポリエチレングルコールの脂肪酸エステル、例えばPEG−100ステアラート、およびグリセロールの脂肪酸エステル、例えばグリセリルステアラートが挙げられる。
【0042】
本発明に係る化粧用組成物において使用可能な親水性ゲル化剤としては、カルボキシビニルポリマー(カーボマー)、アクリル酸ポリマー、例えばアクリラート/アルキルアクリラートコポリマー、ポリアクリルアミド、特に架橋化ポリアクリルアミド−メチルプロパン−スルホン酸、ポリサッカリド、天然ゴムおよびクレーが挙げられるが、これらに限定されない。親油性ゲル化剤としては、変性クレー、例えばベントン、脂肪酸の金属塩、疎水性シリカ、およびポリエチレンが挙げられる。
【0043】
本発明に係る化粧用組成物は、粉末を含み得る。これらの粉末としては、白亜、タルク、カオリン、スターチ、スメクタイトクレー、化学的修飾珪酸アルミニウムマグネシウム、有機的修飾モントモリロナイトクレー、水和珪酸アルミニウム、ヒュームドシリカ、アルミニウムスターチオクテニルスクシネート、およびそれらの混合物が挙げられる。
【0044】
他の補助少量成分もまた、本発明に係る化粧用組成物に含まれ得る。これらの成分としては、着色剤、不透明剤、および香料が挙げられる。これらの他の補助少量成分の量は、組成物に対して0.001〜20重量%であり得る。
【0045】
本発明に係る化粧用組成物は、ヒトの皮膚に局所適用される製品、特に、皮膚を整え、潤いを与え、滑らかにし、そして、線のある皮膚、シワのある皮膚、または老化した皮膚の外観を予防しまたは減少させる薬剤として使用されることが意図される。
【0046】
本発明に係る化粧用組成物の使用に際して、少量の、例えば1〜100mlの組成物を、好適な容器またはアプリケーターから皮膚の露出面に適用し、必要に応じて、手または指または好適な器具を使用して、皮膚に拡げ、そして擦り込む。
【0047】
一実施形態において、本発明に係る局所皮膚処置用の医薬組成物は、ローション、クリーム、またはゲルとして製剤化され得る。本実施形態に係る医薬組成物は、それの粘度および意図される使用に適した容器に包装され得る。本実施形態に係る医薬組成物は、例えば、ローションまたはクリームは、ボトルまたはロール−ボールアプリケーター、または噴射剤被動エアゾールデバイス(propellant−driven aerosol device)または指での操作に好適なポンプ付き容器に包装され得る。本実施形態に係る医薬組成物がクリームの場合は、非変形性ボトルまたはスクィーズ容器、例えば、チューブまたは蓋付き広口瓶に収容されても、カプセルに封入されてもよい。本実施形態に係る医薬組成物は、化粧的に受容可能な組成物を含有する密閉容器に収容された形態で提供され得る。
【0048】
商業ベースで組成される場合、本発明に係る化粧用組成物は、従来の様々な着色料、香料、増粘剤(キサンタンガムなど)、防腐剤、湿潤剤、皮膚軟化剤、緩和剤、界面活性剤、分散剤、浸透促進剤などを含むことができ、さらに利点が得られ、かつ局所製剤の触り心地および/または外見が改善されるように添加可能である。同様に、この組成物は、クリーム、ローション、軟膏、石鹸または液体ソープ、シャンプー、マスクなどに組成可能である。
【0049】
(2−3)医薬組成物
本発明はまた、医薬組成物を提供する。医薬組成物中に使用される医薬用担体は、医薬組成物の投与形態および剤型に応じて選択することができる。本明細書中で使用される場合、用語「医薬組成物」は、上述した化粧用組成物として提供される組成物以外の形態を有する組成物が意図される。
【0050】
経口剤の場合、例えばデンプン、乳糖、白糖、マンニット、カルボキシメチルセルロース、コーンスターチ、無機塩などが医薬用担体として利用される。また経口剤を調製する際、更に結合剤、崩壊剤、界面活性剤、潤滑剤、流動性促進剤、矯味剤、着色剤、香料などを配合してもよい。
【0051】
非経口剤の場合、当該分野において公知の方法に従って、本発明の有効成分を希釈剤としての注射用蒸留水、生理食塩水、ブドウ糖水溶液、注射用植物油、ゴマ油、ラッカセイ油、ダイズ油、トウモロコシ油、プロピレングリコール、ポリエチレングリコールなどに溶解ないし懸濁させ、所望により殺菌剤、安定剤、等張化剤、無痛化剤などを加えることにより調製することができる。
【0052】
本発明に係る医薬組成物は、製薬分野における公知の方法により製造することができる。本発明に係る医薬組成物における褐藻類盤状体由来フコイダン多糖の含有量は、投与形態、投与方法などを考慮し、当該医薬組成物を用いて後述の投与量範囲で褐藻類盤状体由来フコイダン多糖を投与できるような量であれば特に限定されない。
【0053】
本発明に係る医薬組成物は、製剤形態に応じた適当な投与経路で投与できる。投与方法も特に限定はなく、内用、外用および注射によることができる。注射剤は、例えば静脈内、筋肉内、皮下、皮内などに投与することができる。
【0054】
本発明に係る医薬組成物の投与量は、その製剤形態、投与方法、使用目的および当該医薬の投与対象である患者の年齢、体重、症状によって適宜設定され一定ではない。一般には、製剤中に含有される有効成分の投与量で、好ましくは成人1日当り0.1〜2000mg/kgである。もちろん投与量は、種々の条件によって変動するので、上記投与量より少ない量で十分な場合もあるし、あるいは範囲を超えて必要な場合もある。投与は、所望の投与量範囲内において、1日内において単回で、または数回に分けて行ってもよい。また、本発明に係る医薬組成物はそのまま経口投与するほか、任意の飲食品に添加して日常的に摂取させることもできる。
【0055】
本発明は、以下の実施例によってさらに詳細に説明されるが、これに限定されるべきではない。
【実施例】
【0056】
25℃、5000lx(ルクス)・18h/日の条件下で室内にて増殖させたオキナワモズクの盤状体1.12gを、80℃の熱水300mlを用いて4時間抽出した。抽出液を、ハイフロスーパーセルを用いて吸引濾過した後、濾液をエバポレーターで減圧濃縮した。濃縮して得られたオイルに水10mlを添加し混濁させた後、30mlのエタノールを徐々に添加して白色の沈殿を形成させた。この沈殿物を濾別した後75%エタノールで洗浄し、減圧乾燥して60mgの粗フコイダンを得た。
【0057】
IRおよびNMRスペクトルについて市販のフコイダンと比較して、フコイダンを精製した。精製したフコイダンの全糖をフェノール硫酸法によって算出した結果、フコース、キシロース、ガラクトースの割合が2:1:1からなるフコイダンであることがわかった。さらに、バリウム沈殿法を用いて、得られたフコイダンの硫酸含量が9.0%であることがわかった。また、ゲルクロマトグラフィーによって、得られたフコイダンの分子量は約50,000Daであった。ちなみに、オキナワモズク藻体由来のフコイダンは、分子量20〜30万Daであり、通常7〜10重量%含まれている。また、本実施例にて得られたフコイダンの性状は、特許文献3に記載されるような養殖オキナワモズク藻体から得られるフコイダンの性状とは全く異なり、新規フコイダン多糖が得られたことがわかる。
【0058】
オキナワモズクの藻体または盤状体からの熱水抽出物を用いて、Bacillus subtilis ATCC 6623、Staphylococcus aureus FDA 209PまたはEscherichia coli O111に対する抗菌効果を検討した。結果を表1に示す。
【0059】
【表1】

【0060】
この結果から、盤状体由来のフコイダンは、藻体由来のフコイダンとは異なる性状を有するものの、少なくとも同等の抗菌効果を有することがわかった。
【0061】
尚、発明を実施するための最良の形態の項においてなした具体的な実施態様および実施例は、あくまでも、本発明の技術内容を明らかにするものであって、そのような具体例にのみ限定して狭義に解釈されるべきものではなく、当業者は、本発明の精神および添付の特許請求の範囲内で変更して実施することができる。
【0062】
また、本明細書中に記載された学術文献および特許文献の全てが、本明細書中において参考として援用される。
【産業上の利用可能性】
【0063】
公知のフコイダン同様、健康食品、化粧品、医薬などに用いることができるので、本発明は、医薬分野および/または食品分野の開発に寄与する。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
褐藻類盤状体由来のフコイダン多糖。
【請求項2】
前記褐藻類がオキナワモズクである、請求項1に記載のフコイダン多糖。
【請求項3】
フコース、キシロースおよびガラクトースを2:1:1の割合で含有する、請求項1に記載のフコイダン多糖。
【請求項4】
フェノール硫酸法に基づいて算出した全糖量が30〜50重量%である、請求項1に記載のフコイダン多糖。
【請求項5】
バリウム沈殿法に基づいて算出した硫酸含量が5〜20%である、請求項1に記載のフコイダン多糖。
【請求項6】
ゲルクロマトグラフィーに基づいて算出した分子量が約50,000Daである、請求項1に記載のフコイダン多糖。
【請求項7】
請求項1に記載のフコイダン多糖を含有する食用組成物。
【請求項8】
請求項1に記載のフコイダン多糖を含有する化粧用組成物。
【請求項9】
請求項1に記載のフコイダン多糖を含有する医薬組成物。

【公開番号】特開2006−233099(P2006−233099A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−52022(P2005−52022)
【出願日】平成17年2月25日(2005.2.25)
【出願人】(504145308)国立大学法人 琉球大学 (100)
【Fターム(参考)】