説明

見る人の関心を惹きつける表示制御の方法、デジタルサイネージシステム、コンピュータープログラム

【課題】デジタルサイネージのディスプレイ画面の周辺にいる人が思わず「あれっ何だろう」と表示に気を惹かれて画面に近づいて来る新規な表示技法を提供する。
【解決手段】(1)画像変換プロセスは、前景プレーンの前方に視点を設定し、当該視点から前景プレーンとその奧にある後景プレーンを透視した投影画像データを作成する(2)投影画像データは、前景プレーンの画像により隠面消去された後景プレーンの画像を含む(3)画像表示プロセスは、画像変換プロセスにより逐次作成される投影画像データをディスプレイ画面に逐次表示する(4)顔認識プロセスは、前記ディスプレイ画面を見る人の顔をカメラにより撮影し、当該ディスプレイ画面と顔との間隔距離に対応した顔位置データを作成する(5)画像変換プロセスは、顔認識プロセスが顔位置データを作成した際、当該顔位置データに基づいて前記視点を設定し、当該視点に基づいて投影画像データを作成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、デジタルサイネージ(電子広告システム)の分野における表示制御技術に関し、とくに、ディスプレイ画面を見る人の関心を惹きつける表示技法に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタルサイネージにとっては、店舗や公共の場所において、表示する広告作品を周囲の人々に関心を持って見てもらうことがまず最初の使命であり、そして見た人に好感を持って受け入れられる広告作品であることが望まれる。
【0003】
特開2009−128498号公報「電子広告システム」の発明では、ディスプレイ画面の周辺にいる人の携帯端末がダウンロードした広告概要に基づいて、その概要に対応した広告詳細を表示する。特開2010−176648号「携帯端末とサイネージの連携による情報処理システム及び方法」の発明では、ディスプレイ画面を見ている人の携帯端末からの信号を受信して表示内容を変化させる。
【0004】
特開2010−218489号公報「デジタルサイネージシステム」の発明では、ディスプレイ画面にタッチパネルを付設し、広告表示と、これを見る人のタッチ入力によりアンケートなどを行う。特開2010−113691号公報「行動分析装置及び行動分析方法並びにプログラム」の発明では、広告作品を見る人をディスプレイ画面に付設したカメラで撮影し、その人の特徴と見た広告作品とを紐付けして記録する。
【0005】
特開2010−113693号「顔画像抽出装置・方法及び電子広告装置並びにプログラム」の発明では、ディスプレイ画面に付設したカメラで画面に顔を向けている人々を撮影し、偶然そこに居合わせただけの人と、関心を持って表示内容を見ている人とを区別して抽出する。
【発明の開示】
【0006】
たとえば、駅構内やショッピングモールのような環境にて40〜80インチ程度のディスプレイ画面を設置したデジタルサイネージの場合、画面の前を多くの人が歩きすぎるとともに、画面の近くにたたずんでいる人もまた多い。人々とディスプレイ画面の距離は数メートル程度あるいはそれ以下と接近しており、人々は、表示内容に関心を持てば、画面に近づいて細かな表示内容を読み取ろうとする。
【0007】
この発明は、上述したような設置環境のデジタルサイネージにおいて、ディスプレイ画面の周辺にいる人が思わず「あれっ何だろう」と表示に気を惹かれて画面に近づいて来るような、いわゆるアイキャッチャーの能力に長けた、新規な表示技法を提供することを目的として創作されたものである。
【0008】
この発明の核心部分は、つぎの事項(1)〜(6)により特定されるコンピューターを用いた表示制御の方法である。
(1)原画像データは、三次元座標系において、所定間隔をおいて配置された前景プレーンおよび後景プレーンを少なくとも含んでいること
(2)画像変換プロセスは、前景プレーンの前方に視点を設定し、当該視点から前景プレーンとその奧にある後景プレーンを透視した投影画像データを作成すること
(3)投影画像データは、前景プレーンの画像により隠面消去された後景プレーンの画像を含むこと
(4)画像表示プロセスは、画像変換プロセスにより逐次作成される投影画像データをディスプレイ画面に逐次表示すること
(5)顔認識プロセスは、前記ディスプレイ画面を見る人の顔をカメラにより撮影し、当該ディスプレイ画面と顔との間隔距離に対応した顔位置データを作成すること
(6)画像変換プロセスは、顔認識プロセスが顔位置データを作成した際、当該顔位置データに基づいて前記視点を設定し、当該視点に基づいて投影画像データを作成すること
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】この発明の方法を実施するコンピューターシステムの概要を示す。
【図2】この発明の方法における原画像データの構成と画像変換プロセスの処理概要を示す。
【図3】ディスプレイ画面を見る人の顔位置が画面からたとえば2メートルほど離れている状況での投影画像の表示例。
【図4】顔位置が画面から1メートルほどに近づいた状況での投影画像の表示例。
【図5】顔位置が画面から約50センチメートルまで接近した状況での投影画像の表示例
【図6】50センチメートルまで画面に近づいた人が顔の位置を変えて視線を右に振った状況での表示例。
【実施例】
【0010】
この発明の方法を実施するコンピューターシステムの概要を図1に示している。デジタルサイネージのコンピューターシステムとしての基本的な構成は、周知の既存システムと大きく相違するものではない。ディスプレイ1の画面サイズは40〜80インチ程度であり、駅構内やショッピングモールのような環境において周辺の人々に画面が見やすいように設置されている。
【0011】
ディスプレイ1はコンピューター2に接続され、コンピューター2から供給される画像がディスプレイ1に表示される。ディスプレイ1にはカメラ3が付設されており、画面を正面から見る人の顔をカメラ3により撮影するように配置関係が設定されている。
【0012】
カメラ3の映像出力はコンピューター2に取り込まれ、顔認識プロセスにより周知のアルゴリズムにより処理される。顔認識プロセスは、カメラ1の映像出力中から画面を見る人の顔画像を認識して抽出するとともに、ディスプレイ画面に対するその人の顔の位置に対応した顔位置データを計算する。
【0013】
顔位置データは、ディスプレイ画面と顔との間隔距離に対応したZデータと、ディスプレイ画面と平行な面内における顔の二次元位置に対応したXYデータとを含んでいる。カメラ3が立体視可能な二眼カメラ(2台のカメラ)ではなく1台のカメラである場合、認識した顔画像中の両目の間隔寸法あるいは顔画像の寸法からディスプレイ画面と顔との間隔距離を計算することができる。
【0014】
コンピューター1におけるシステム統御プロセスは、あらかじめプログラムされた表示スケジュールに基づいて、画像データベースに格納された種々の画像データの中から表示すべき画像データを抽出し、その画像データを直接的に、あるいは適宜に編集加工して、画像表示プロセスを介してディスプレイ1により表示出力させる。この発明の方法は、コンピューター2によりディスプレイ1に画像を表示させる1つの形態として実施される。
【0015】
この発明の方法を実施するにあたり、コンピューター2は、画像データベースから表示対象の原画像データを抽出し、その原画像データを画像変換プロセスにより透視投影の処理を行い、その処理により作成した投影画像データを画像表示プロセスに渡す。
【0016】
この発明の方法における原画像データの構成と画像変換プロセスの処理概要を図2に示している。原画像データは、三次元座標系において、所定間隔をおいて配置された前景プレーンおよび後景プレーンを少なくとも含んでいる。画像変換プロセスは、前景プレーンの前方に視点を設定し、周知のアルゴリズムにより、当該視点から前景プレーンとその奧にある後景プレーンを投影プレーン上に透視した投影画像データを作成し、この投影画像データを画像表示プロセスを介してディスプレイ1に表示させる。表示される投影画像データは、前景プレーンの画像により隠面消去された後景プレーンの画像を含んでいる。
【0017】
さきに説明した顔認識プロセスは、カメラ3の映像出力からディスプレイ画面を見る人の顔画像を抽出した場合、前記の顔位置データを計算し、このデータを画像変換プロセスに渡す。しかし、ディスプレイ画面を見る人の顔画像を検出していない期間は、顔認識プロセスは画像変換プロセスにその旨を通知する。
【0018】
顔認識プロセスがディスプレイ画面を見る人の顔画像を検出していない期間、画像変換プロセスは、前記原画像データに合わせてあらかじめ設定された初期位置を視点として投影画像データを作成し、ディスプレイ1に表示させる。この初期位置は、たとえば、ディスプレイ画面を見る人の顔位置データに換算すると、画面との間隔距離(Zデータ)が3メートル、ディスプレイ画面と平行な面内における顔の二次元位置(XYデータ)が画面中心に対応する位置とする。
【0019】
視点を上記の初期位置として計算した投影画像データを表示している状態において、顔認識プロセスがディスプレイ画面を見る人の顔画像を検出して顔位置データを出力した際、画像変換プロセスは、その顔位置データを視点に設定しなおして投影画像データを作成し、それをディスプレイ1に表示させる。ディスプレイ画面を見る人がさらに画面に近づいたり左右上下に身体を動かすと顔位置データが変化し、画像変換プロセスは、逐次変化する顔位置データを視点として投影画像データを作成しなおす。これによりディスプレイ1に表示される画像が変化する。
【0020】
この発明の方法を実施している場合において、ディスプレイ画面を見る人の顔位置が画面からたとえば2メートルほど離れている状況での投影画像の表示例を図3に示し、顔位置が画面から1メートルほどに近づいた状況での投影画像の表示例を図4に示し、顔位置が画面から約50センチメートルまで接近した状況での投影画像の表示例を図5に示し、50センチメートルまで画面に近づいた人が顔の位置を変えて視線を左に振った状況での表示例を図6に示している。この例では、前景プレーンは丸穴のあいた無地の板であり、その丸穴から後景プレーンの犬の絵を見るのに相当する投影画像が表示される。
【0021】
この発明の方法によりディスプレイ1に表示されている画像を何げなく目にした人が、ディスプレイ画面に近づいていき正面から画面を見ると、視点を上記初期位置として作成された投影画像が、近づいた人の顔位置データを視点として作成された投影画像に変化する。つまり、初期状態では後景プレーン画像が遠く離れていて小さく表示され、かつ、前景プレーン画像により後景プレーン画像の多くが隠れていたのに、人が画面に近づくと、前景プレーン画像越しに後景プレーン画像の多くの部分が大きく見えるようになり、見る人の関心をいっそう惹きつける。そして人がさらに画面に近づくと、後景プレーン画像のさらに多くの部分がさらに大きく見えるようになる。
【0022】
画面に近づいて表示を見ている人が、前景プレーン画像に隠されている後景プレーン画像を見たくなり、顔を少し動かして視線を上下左右いずれかに変えると、後景プレーン画像の隠れていた部分が見えるようになる。以上のようにして、ディスプレイ画面の周辺にいる人が思わず「あれっ何だろう」と表示に気を惹かれて画面に近づいて来るような、いわゆるアイキャッチャーの能力に長けた、新規な表示技法を提供するという発明の目的を達成することができる。
【0023】
この発明の方法を実施するにあたり、以下の態様を採用することができる。
(1)ディスプレイ画面を見る人の顔画像を検出できない期間において視点となる初期位置を固定するのではなく、規則的あるいは不規則に変化させる。
(2)原画像データにおける前景プレーンの画像を動画(アニメーションなど)とする。
(3)原画像データにおける後景プレーンの画像を動画(アニメーションなど)とする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
つぎの事項(1)〜(6)により特定されるコンピューターを用いた表示制御の方法。
(1)原画像データは、三次元座標系において、所定間隔をおいて配置された前景プレーンおよび後景プレーンを少なくとも含んでいること
(2)画像変換プロセスは、前景プレーンの前方に視点を設定し、当該視点から前景プレーンとその奧にある後景プレーンを透視した投影画像データを作成すること
(3)投影画像データは、前景プレーンの画像により隠面消去された後景プレーンの画像を含むこと
(4)画像表示プロセスは、画像変換プロセスにより逐次作成される投影画像データをディスプレイ画面に逐次表示すること
(5)顔認識プロセスは、前記ディスプレイ画面を見る人の顔をカメラにより撮影し、当該ディスプレイ画面と顔との間隔距離に対応した顔位置データを作成すること
(6)画像変換プロセスは、顔認識プロセスが顔位置データを作成した際、当該顔位置データに基づいて前記視点を設定し、当該視点に基づいて投影画像データを作成すること
【請求項2】
顔認識プロセスは、ディスプレイ画面と顔との間隔距離と、ディスプレイ画面と平行な面内における顔の二次元位置情報とを含んだ顔位置データを作成し、
前記視点は、作成された顔位置データにおける前記間隔距離と前記二次元位置情報に基づいて設定される
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
画像変換プロセスは、顔認識プロセスが顔位置データを作成しない期間、あらかじめ設定された所定の視点に基づいて投影画像データを作成する
請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
ディスプレイ画面と当該画面を見る人を撮影するカメラを備えたコンピューターにより請求項1〜3のいずれかに記載の方法を実行するデジタルサイネージシステム。
【請求項5】
ディスプレイ画面と当該画面を見る人を撮影するカメラを備えたコンピューターにより請求項1〜3のいずれかに記載の方法を実行させるコンピュータープログラム。

【図1】
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【図3】
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【図2】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−103746(P2012−103746A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−248871(P2010−248871)
【出願日】平成22年11月5日(2010.11.5)
【出願人】(390008109)アビックス株式会社 (16)
【Fターム(参考)】