説明

規準領域付き分析チップ、キットおよび分析方法

少なくとも一つの分析物の分析チップであり、前記チップは分析物を特異的に認識して固定するための分析スポットを少なくとも一つ;そしてそれぞれが前記チップの上に所定の様式で互いに独立して配置されている複数の規準スポットを含む規準領域(G)を具備しており、この領域の各規準スポットはその表面に:所定の標的規準分子(TRM)を特異的に認識してハイブリダイゼーションできるプローブ規準分子(PRM)、および/または前記PRMを認識もハイブリダイゼーションもできない不活性オリゴヌクレオチド(IM)を、前記領域の他の規準スポットに関して異なり、且つ各スポットについて既知である所定の比率Pで含んでおり、そしてこれら分子は共に前記分析物を固定できない。発明の方法は、前記少なくとも一つの分析物の分析に関する、その規準領域を持つ前記チップの使用を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、規準領域を含む分析チップ、前記チップを用いたサンプル分析法、および前記チップを含む診断もしくは分析キットに関する。
【0002】
本発明は、サンプル中に存在するいかなる被分析物の定性的および特に定量的分析に適している。
【0003】
それゆえに本発明は特に、化学的または生物学的チップ、例えばDNAチップ、タンパク質チップ、抗体チップ、抗原チップ、細胞チップ、レセプターチップまたは当業者公知であり、そして一もしくは複数の被分析物を特異的に捕捉し、また固定できるその他リガンドに関するチップの分野に位置する。
【0004】
通常、DNAチップを用いる応用は、二つの広い分類:遺伝子発現(i)および遺伝子型判定(ii)に分けられる。
(i)遺伝子発現は、ある生物学的もしくは生理学的パラメータに従って、細胞のトランスクリプトームの全てもしくは一部の変動:生物発生中の細胞の進化、組織の癌化等、を研究するために、DNAチップまたはその他チップを使用することを含む。このような発現プロフィールが、多因子性疾患、特に癌学の診断マーカーとしても使用可能であることが徐々に明らかになっている。
(ii)遺伝子型判定への応用では、DNAチップに必要な反応は、一般的に定性的、即ちイエス/ノー型である。実際発明者らは、一または複数の特定配列がサンプル中に存在するかどうか知ることを望む。特異性に対し強い要望がある場合、例えば突然変異体検出の場合では、一または二の塩基のみ異なる複数のオリゴヌクレオチドをいくつかチップ上に配置し、そして一般的には、結論は、例えば蛍光の、最も強いシグナルに相当する配列の存在に関して下される。
【0005】
本発明は、これら二つの広い応用分類に適しており、また以下に記す先行技術、特にこのような研究およびプロフィールを実施に関係する多くの問題を、好適に解決する。
【0006】
その規準領域によって、本発明のチップは、チップ、例えば生物学的チップからの検出および/または分析シグナルを、絶対的な、再現性のある、安定した単位に変換することができ、該シグナルは同じ変換によって得た他の測定値と比較することができる。
【背景技術】
【0007】
遺伝子発現の変動を定量化する場合、生物学者はほとんどいつも、一つのDNAチップに同時にハイブリダイゼーションさせた二つのサンプル:第一蛍光色素、例えばフルオレセイン(fluorescein)(緑で読み取る)で標識された一定質量のRNAまたはcDNAを含有する量規準サンプル、および例えばCy3もしくはCy5(オレンジまたは赤で読み取る)のような第二蛍光色素で標識された同一質量のRANまたはcDNAを含有する、測定を実施しなければならない関心対象のサンプル、を使用する。ハイブリダイゼーション後、DNAチップを二波長で読み取り、そして放射されたシグナルの二強度間の比をシグナルとして利用する。
【0008】
それゆえに実験毎で、内部規準を用いる相対的な測定が問題となる。この方法は良好に機能するものの、使用は極めて面倒であり、配列による標識の偏り、または波長に依存して変わる読み取りの偏りのような、ある種の問題がある。
【0009】
Affmetrix社が開発した遺伝子発現チップには、別の定量化技術が用いられている。この方法では、チップ上に配された各配列を一組のオリゴヌクレオチドで表し、各オリゴヌクレオチドは二種類のオリゴヌクレオチドの形態とし、一つは必要な配列に対して完璧に相補性であり、もう一つは点突然変異(「ミスマッチ」)を有するものである。次に、問題のサンプルをチップにハイブリダイゼーションし、単一色を用いる。次に相補的−ミスマッチの差を一次シグナルとして用い、これらのシグナルを、遺伝子を表すオリゴヌクレオチドのセット全体について平均化する。さらに、同一技術を用いて「規準遺伝子」をチップ上に配置する;この規準遺伝子は、いわゆる生体のハウスキーピング遺伝子から選ばれ、細胞の生理学的状態とは無関係に一定の発現性を維持すると想定されている。次に、各遺伝子の「一次シグナル」を規準遺伝子のそれで除し、例えば周囲に依存した蛍光の輝度の変動を回避する。こうすることで、異なる実験を互いに比較することが可能となる。
【0010】
この技術は、単色であるという利点を有しており、それゆえに二種類のマーカーに伴う前記欠点を持たない。しかしながら、短いオリゴヌクレオチド(20〜25塩基)を使用しなければならず、そのため、遺伝子によっては様々な形態を取ること(異なるスプラシング)による別の問題がある。それゆえにこの方法は、先行技術の他方法に比べてDNAチップ上により多くのスポットと、またチップ上に呈示する遺伝子のRNAの様々な形状についての、より多くの知識必要とする。さらには、規準遺伝子を注意深く選択した場合でさえ、規準遺伝子の選び方によって、結果が変化する。かくして、結果は、常に比較できるとは限らない。
【0011】
上記の方法は、ある種のコントロールを用い、実験を複数回繰り返した場合には、比較的信頼できるものであることから、生物学者が使用できる研究ツールとなる。しかしながら、シグナルは、一般的に任意である単位(蛍光の任意単位)を持つ二測定値間の比から生じた無次元数であることから、測定値は相対的である。それゆえに、例えば、異なる規準サンプルを用いて行われた実験は、追加の試験なしに比較することはできない。さらに、測定値が任意単位であるために、強度が低い例では、何が問題の原因か知ることも困難である:それが装置の問題なのか、チップそのもの、サンプル、操作方法または実験結果に関係する問題なのか知ることも難しい。
【0012】
遺伝子型判定の応用では、DNAチップに求められる反応は、上記のごとく一般に定性的、イエス/ノー型である。さらに、先行技術のチップでは、結果も相対的である。というのも、同じ一つのチップ上で、研究中の異なるオリゴヌクレオチドの強度が比較されるからである。
【0013】
しかしながら、複数の配列の混合物を検出するといった、ある種の応用については、今のところ、現在使用可能なチップを用いては不可能とされる、複数の実験の間でのシグナル比較が可能であることが有利である;この場合、結論を引き出すことができる相対的測定値を得るためには、常に一回または複数回の実験を繰り返す必要があり、これには時間と費用がかかる。
【0014】
さらにまた、日常の診断では、結果の定量化問題は検量線を用いて解決できる。規準サンプルを、所定の様式で、適当な希釈液を用いて各種濃度に希釈し、各希釈物について、チップとは別に生物学試験を行う。これにより、規準曲線が得られる。真の生物学試験を実施する場合は、任意単位の結果を規準曲線上にプロットし、これからサンプル中の被分析物の濃度を導き出す。しかしながら、試験では、規準曲線の作成に用いたものと同一要素を正確に用いて実施することが重要である。さらに、読み取りの為に酵素反応が必要な試験、例えばELISA、ELOSA等では、試験の製造バッチ毎に規準曲線が必要となる。さらにまた、使用者毎に、規準曲線を設定しなおすための追加のキャリブレーション点を実施し、ある機器と別の機器、ある温度と別の温度、ある研究室と別の研究室の変動、起こり得る試薬の経時劣化等を補正しなければならない。これらの追加のキャリブレーション試験を、使用者は定期的に、例えば毎週繰り返さなければならない。
【0015】
この定量化法は、一般的ではあるが、それゆえに複雑であり、また費用がかかる。さらには、DNAチップへの応用は容易ではない;実際、規準領域の各点についてDNAチップを用いる必要があり、実験を繰り返さねばならず(マーカーのバッチを交換するごと、または一定間隔、例えば毎月、起こり得る装置のドリフトをチェックする)、これも研究室にとって大きな費用負担である。
【0016】
かくして、先行技術の多くの上記問題を解決することができ、また特に信頼性の高い、正確で再現性に優れたチップおよび分析方法に対する実際の需要がある;これらは様々な、既知および将来のDNAチップに応用できる;これらは複数の実験のシグナルを比較できるようにする;これらは規準領域の各点についてDNAチップを使用することを回避できるようにする;またこれらはキャリブレーション試験を常に繰り返すこと(マーカーバッチの交換毎、もしくは、例えば毎月のような一定間隔で交換すること、および起こり得る装置のドリフトをチェックすること)を回避できるようにし、ゆえに研究室、産業界および研究分野において、チップ、例えば生物学チップでの分析の複雑さとコストを軽減する。
【0017】
以下の説明の中では、カッコ[]の中の参照は、以下記載する発明の適用例の後の参考文献のリストを指す。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明は、この需要に正確に対応しており、また先行技術の多くの前記問題を解消し、とりわけ、本発明は以下に明記する、分析チップならびにこのチップを用いた分析方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0019】
本発明の分析チップは、液体サンプル中に存在する少なくとも一つの被分析物に対する分析チップであり、前記チップは:
a)被分析物を認識して特異的に固定化できるようにチップ上に配置されている、前記少なくとも一つの被分析物のための少なくとも一つの分析スポット;ならびに
b)前記チップ上に所定の様式にて、互いに独立にそれぞれ配置されている複数の規準スポットからなる規準領域(G)であって、この領域の各規準スポットが、前記領域の他の規準スポットに関してスポット毎に異なる所定の比率Pでその表面に固定されている:(i)所定の標的規準分子(TRM)を認識し特異的に結合できる少なくとも一つのプローブ規準分子(PRM)、および/または(ii)前記標識規準分子を認識も結合もできない少なくとも一つの不活性分子(IM)、共に前記被分析物を認識も固定化もできないプローブ規準分子および不活性分子を含み; P=(PRMの数)/(PRMの数+IMの数)且つ0≦P≦1であり、RPMの数+IMの数の合計が規準スポット間で一定である規準領域(G)、を含む分析チップ。
【0020】
本発明の方法は、次の段階を含む、液体サンプル中に存在する可能性のある少なくとも一つの被分析物のインビトロ分析法である:
(α)随意、被分析物に第一検出手段を固定化する段階;
(β)随意に標識された被分析物を含む分析対象サンプルに、第一検出手段と同一または異なる第二検出手段が随意に固定されている標的規準分子(TRM)を加える段階であって、前記TRMは発明の分析チップのプローブ規準分子(PRM)を認識および特異的に結合でき、前記TRMは前記チップの規準領域(G)のPRMを飽和するのに十分な量で前記サンプルに加えられ、その結果各規準スポットについて異なる所定の比Pの関数である規準領域を創り出す段階;
(γ)TRMを含む分析対象のサンプルを、前記少なくとも一つの被分析物の少なくとも一つの分析スポットを含む前記分析チップに:一方では分析対象の被分析物が、その分析スポットが存在する場合には、チップ上のその分析スポットに結合する;もう一方で、TRMがPRMを認識し、チップの規準領域の様々な規準スポット上の該PRMに結合する、物理化学的条件の下に接触させる段階;
(δ)第二の検出手段が適用できる場合、第二検出手段により規準領域の各規準スポットから放射される規準シグナルを測定する段階であって、前記シグナルが各規準スポット上に固定された標的規準分子の量の関数である段階;ならびに
(ε)第一の検出手段が適用できる場合、第一検出手段により前記少なくとも一つの分析スポットから放射され、また分析スポットによって固定された被分析物の量の関数である分析シグナルを測定し、そして段階(δ)において測定したシグナルと比較し、この分析シグナルをPの関数として表す段階。
【0021】
用語「被分析物」は、分析すること、即ち検出および/または定量化しようとする粒子または分子、例えば微生物、細菌、真菌、ウイルス、真核生物細胞、腫瘍細胞のような細胞、化合物もしくは分子、ペプチド、タンパク質、糖タンパク質、リポタンパク質、酵素、多糖類、脂質、糖脂質、リポ多糖、リボ核酸(RNA)、デオキシリボ核酸(DNA)、ホルモン、抗原、抗体、増殖因子、ハプテン等の分子の全てまたは一部を意味する。
【0022】
サンプルは溶液、細胞抽出物、または動物もしくは植物より得たサンプルとすることができる。このサンプルは、本発明で使用するために必要に応じて希釈することができる。当業者は、分析チップ、例えば生物学的または化学的チップでの分析のための、このようなサンプルの取扱い、および前記サンプルの溶解および/または前記サンプルの希釈、前記サンプルの精製および/または前記サンプルの濃縮に精通している。これら同一操作は、本発明の実施に用いられる。
【0023】
本発明のチップは、一方では分析対象となる少なくとも一つの被分析物のための少なくとも一つの分析スポットを含み、そして他方では規準領域を、組み合わせて含み、両者は本発明の同一チップの表面上に配置される。
【0024】
本発明のチップは、本発明の意味するところの規準領域を追加して含むことを除き、先行技術の分析チップと同じ形に構成されている。それゆえに、チップの作製段階に、規準領域の製造段階が加えられる。本発明を実施するために用いることができるDNAチップ、およびそれらの製造方法は、例えば、参考文献の文書[1]に記載されている。本発明を実施するために用いることができるタンパク質チップ、およびそれらの製造方法は、例えば、参考文献の文書[2]および[3]に記載されている。
【0025】
それゆえに、本発明のチップは、分析ツールとして極めて広範囲に用いられる。従って「分析」とは、サンプルの「定性分析」、即ちサンプル中に存在する被分析物の検出、および/または「定量分析」、即ちサンプル中に存在する被分析物の定量的測定を意味する。以下にいくつかの例を記載する。
【0026】
発明によれば、「スポット」は、「被分析物」(分析スポット)または「標的規準分子」(規準領域のスポット)を排他的および特異的に認識し、固定するための手段を含む。
【0027】
「分析スポット」については、これら手段は、前記被分析物に特異的なプローブ分子を含む。特異的プローブ分子は、例えば、ハイブリダイゼーションによって相補的被分析物(DNAもしくはRNA)を認識および固定化を可能にするDNAまたはRNA;抗原/抗体型の相互作用によって、被分析物を認識および固定化する抗原または抗体;タンパク質/タンパク質型の相互作用によって、被分析物を認識および固定化するタンパク質;酵素/基質型の相互作用によって、被分析物を認識および固定化する酵素または基質、の分子とすることができる。
【0028】
例えば、被分析物が核酸の場合、少なくとも一つの分析スポットは、この核酸に対し相補的な核酸によって機能化されているスポットである。例えば、被分析物が抗体または抗原の場合、少なくとも一つの分析スポットは、それぞれ抗原または抗体により機能化されたスポットである。
【0029】
これら分析スポットの製造方法およびそれらの機能化は、当業者に公知であり、また、例えば、前記文書に開示されている。チップの分析スポットの機能化は、例えば、機能化溶液の滴を分注するためのロボット、例えばPackard Instrumentのロボット、またはGeSim型(登録商標)によって実行できる。
【0030】
本発明のチップは、研究室で現在用いられている分析チップと同様に、複数の分析スポットを含むことができ、それらは同一でも、または異なっていてもよい。
【0031】
本発明の規準領域は、規準スポットから構成されており、それらはまた標的を認識および固定化するためのスポットでもあるが、これら規準スポットは分析対象となる被分析物を認識も、固定化もできず、所定の標的規準分子のみ認識および固定化できることを特徴とする。この規準領域の規準スポットは、上記本発明の方法の点(i)および(ii)に定義されている。
【0032】
発明によれば、プローブ規準分子、標的規準分子および不活性分子は、それらが被分析物と相互作用する可能性が最も小さくなるように、本発明のチップが目的とする被分析物の機能体としてまとめて選択される。
【0033】
発明によれば、好ましくは、標的規準分子は、被分析物と同一性質のものである。それは、異なる性質のものでもよい。重要なことは、標的規準分子は、前記の少なくとも一つの分析スポットに認識も固定化もされないことである。
【0034】
発明によれば、プローブ規準分子は、前記標的規準分子を特異的に認識し、固定化するように選択される。好ましくは、このプローブ規準分子は、被分析物に特異的であるプローブ分子と同一性質のものである。それは、異なる性質のものでもよい。重要なことは、プローブ規準分子は、被分析物を認識も固定化もしないことである。
【0035】
例えば、発明によれば、標的規準分子およびプローブ規準分子は、例えば、プローブ分子を含む規準領域のスポットにおけるハイブリダイゼーションによって、標的規準分子を認識および固定化するための相補的オリゴヌクレオチド(DNAまたはRNA);例えば、プローブ分子を含む規準領域のスポットでの抗原/抗体型の相互作用によって、規準標的分子を認識および固定化できるようにする抗原およびその特異的抗体;例えば、プローブ分子を含む規準領域のスポットでのタンパク質/タンパク質型相互作用によって、規準標的が認識および固定化できるようにするタンパク質;等とすることができる。
【0036】
発明によれば、少なくとも一つの被分析物および標的規準分子は、オリゴヌクレオチドまたは抗体であることが好ましい。プローブおよび/または不活性オリゴヌクレオチドあるいは抗体または抗原を用いた、本発明のチップ上の各種スポット(分析および規準領域)の機能化は、当業者がオリゴヌクレオチドまたは抗体もしくは抗原を用いたチップ分野において完璧に精通している機能化技術を用いて実施できる。使用できる技術は、例えば、前記文書に記載されている。
【0037】
発明によれば、「非特異的」分子とも呼ばれる規準領域の不活性分子は、標的規準分子および被分析物を認識も固定化もしないものを選択する。好ましくは、発明によれば、該不活性分子はプローブ規準分子と同一性質のものである。実際このことは、本発明のチップを、例えば一方で不活性分子と被分析物に、そして他方で標的規準分子との間に用いたとしても、分析を妨害するであろう非特異的相互作用を考慮する必要がなく、信頼性のある規準領域を得ることを意味する。それゆえに、先の例では、規準領域の不活性分子はそれぞれDNAまたはRNA、抗原または抗体、タンパク質、酵素または基質とすることができる。規準不活性分子もまた、当業者公知のチップ機能化技術、例えば前記文書に記載の技術によって、規準領域のスポットに固定化される。
【0038】
発明によれば、好ましくは、プローブ規準分子、標的規準分子および不活性分子はオリゴヌクレオチドである。規準領域を作製するための、オリゴヌクレオチド配列の製造は、例えば人工的であり、本発明の該プローブを標的規準分子と不活性分子の定義に見合うものであり、規準領域を作成するためにこれらのプローブ、不活性オリゴヌクレオチドを使用し、チップ上の機能付けはオリゴヌクレオチドチップ分野に精通した当業者と共に、その技術を使用することで実際に用意となる。
【0039】
インサイチューシステム:DNAチップ作製のある種の方法は、オリゴヌクレオチドのインサイチュー合成を利用する(例えばAffymetrix(登録商標)のGeneChipチップまたはAgilent社のチップの製造方法)。これらの方法では、各オリゴヌクレオチドは、チップ上でインサイチュー合成される。通常のオリゴヌクレオチド合成サイクルにおける脱保護段階(Affymetrixにおける光脱保護);またはモノマーの結合段階(Agilentでは「スポッティング」)にて、結合対象モノマーを三次元的に配置する。このようなインサイチュー合成技術は、本発明のチップの分析スポットの作製を可能にし、また規準領域内のポイントと同数の合成サイクルを加えること、および合成のこれらサイクルにおいて、プローブ規準オリゴヌクレオチド/不活性(非特異的)オリゴヌクレオチドの混合物を、チップを形作っている基板の適当な場所に直接結合させることによって(一つのモノマーだけを結合するのに替わって)、本発明の規準領域が作られる。
【0040】
発明によれば、規準領域は前記チップ上に、所定の様式で、互いに独立して配置された複数の規準スポットから構成される。実際は、規準領域が有用であるためには、各規準領域スポットは、チップ使用時にこの領域内の各種スポットが独立し、且つ分析に利用できるシグナルを提供するように、他の規準領域スポットと明瞭に異なっている必要がある。
【0041】
規準領域の各スポットは、この領域の他のスポットとは、上記のように所定のその比率Pによって区別される:それゆえに、各規準スポットについて、不活性分子に対するプローブ規準分子の量は判明している。この所定の比率Pは、各スポットを、他のスポットとは無関係に、所定濃度のプローブ規準分子および/または不活性分子の溶液を用いて機能化することによって、得る。発明によれば、この比率Pは、規準スポットが不活性分子のみ含有する場合である0から、規準スポットがプローブ規準分子のみ含有する場合である1までの範囲をとることができる。重要な事は、規準領域を正確なものにするには、プローブ規準分子と不活性分子の合計量(PRM+IM)がスポット間で等しくならねばならないことである。
【0042】
好ましくは、規準プローブおよび不活性分子がオリゴヌクレオチドである例では、それらは、それらがチップ製造中に、規準領域のスポットに対し同一の結合効率を有するように選択される。かくして、結合後は、規準オリゴヌクレオチドの比率は、最初の希釈液の比率に等しい。これにより、本発明のチップを用いた分析の流れの中で、単位「希釈%」を単位「結合した規準オリゴヌクレオチドの%」に都合よく変換できる。
【0043】
本発明のオリゴヌクレオチドチップの例では、cDNAチップまたはPCR産物チップとは対照的に、「規準プローブオリゴヌクレオチド+非特異的不活性オリゴヌクレオチド」の合計量は、チップ製造のために、各分析スポットに用いたプローブオリゴヌクレオチドの量に等しい。さらに、同一長のオリゴヌクレオチドを用いることが好ましい。かくして、結合効率は配列依存性をほとんど持たないため、各スポットについてシグナルを、100%が表面の飽和に相当する、「ハイブリダイゼーションしたスポットのパーセンテージ」で表すことが可能となる。
【0044】
規準領域のスポットは、チップ上に線状に配置され、また各スポットの比率Pに相応して配置される、例えばプローブ規準分子が最高濃度であるスポットから最低濃度のスポットの順に配置されるのが好ましい。実際、これによりチップ使用時により簡単に利用できるキャリブレーションスケールが得られる。ある規準スポットから、その領域内にあるそのスポット近くにある別のスポットに向かって比率Pが直線的に増加してもよく、例えば、連続的する異なるスポットのプローブ規準分子の比率は、0%;20%;40%;60%;80%および100%のように増加してもよく、あるいは非直線的に増加してもよく、例えば0%;5%;10%;20%;50%;100%、または0%;0.1%;1%;10%および100%のように増加してもよい。本発明の応用には、規準領域のスポットから与えられるシグナルに明瞭に帰すことができる、プローブ規準分子の所定の比率以外はなんら制約もない。
【0045】
規準領域の規準スポットの数は、分析に求められる正確度およびチップ使用時の試験のダイナミックレンジに応じて決定できる。例えば、連続する0%、50%および100%のプローブ規準分子を用いた3種類の規準スポットは、被分析物の分析結果の基礎として提供されるキャリブレーション結果はわずか3種類のみであるが、例えば連続する0%、20%、40%、60%、80%および100%のプローブ規準分子を用いた5種類の規準スポットは、6種類のキャリブレーションを提供し、分析結果をより正確に読取ることができる。例えば、規準領域は、1〜50の規準スポット、例えば2〜20含むことができる。当業者は、分析に求められる正確度および濃度のダイナミックレンジに応じて、必要な異なる規準スポットの数、およびチップ上でのそれらの配置もしくは配列を容易に決定するだろう。
【0046】
添付の図1は、本発明のチップ(P)上の規準領域(G)を、断面図の形で図示している。この図は、各種規準スポット(1a、1b、1cおよび1d)を示しており、その上にはプローブ規準分子(PRM)(太線で示す)および不活性分子(IM)(細線で示す)が固定化されている。分析スポットは示していない。最も左型のスポットはPRMのみ(100%)を含み、そして最も右側のスポットはIMのみ(0%PRM)を含んでいる。中間のスポットは、中間の比率のPRMを含む。PRM+IMの合計は、スポット間で一定である。
【0047】
発明によれば、同一でも異なっていても良い、複数の規準領域を同一のチップ上に配置できる。複数の規準領域の使用は、必須ではないものの、いくつかのケースでは実施する分析の正確度を向上できる。このことは、例えば、チップ上で、オリゴヌクレオチドおよび抗体を用いて同時に分析する、複数の被分析物をサンプルが含む場合にあてはまる。当業者は、チップが目的とする分析に応じて、最適な実施を容易に決定するだろう。
【0048】
本発明のすべての重要性は、分析対象の、特に発明の方法の分析対象の被分析物を一または複数含む、または含むと思われるサンプルの分析にこの規準領域を有するチップを用いるとき、明らかになるだろう。
【0049】
発明の方法では、被分析物および標的規準分子は、同一性質のものであることが好ましいが、この実施態様に限定されるものではない。また、被分析物および標的規準分子は、オリゴヌクレオチドまたは抗体であることが好ましいが、この実施態様に限定されるものではない。発明の特に有利な実施態様では、プローブ規準分子、標的規準分子および不活性分子は、上記と同様の理由により、オリゴヌクレオチドである。
【0050】
同様に、また上記と同じ理由から、少なくとも一つの被分析物は、核酸であることが有利であり、チップ上にある前記被分析物の分析スポットは、核酸と相補的な核酸により機能化されたスポットである。被分析物は抗原または抗体とすることもでき、チップ上の前記被分析物の分析スポットは、抗原または抗体を認識して固定化する抗体または抗原によってそれぞれ機能化されたスポットとすることができる。
【0051】
発明の方法の段階(α)は随意である。この段階では、第一検出手段は、被分析物に固定化できる。これは、チップ上に固定された特異的プローブ分子に固定化した被分析物(プローブ/被分析物の組合せ)を検出するために用いることができる、当業者公知のいかなる手段でもよい。この手段は、例えば、特異的プローブ分子または被分析物に固定することができる第一マーカーを含んでよい。この手段はさらに、用いる標識化技術に応じて、間接的に標識するための別の分子、例えばビオチンを含んでもよい。本発明を実施するのに用いることができるマーカーおよび標識化技術は、分析チップの分野、例えば生物学的チップ、例えばDNAもしくはRNAチップ、抗体/抗原チップ、または酵素/基質相互作用を利用したチップの分野において当業者に公知である。それらマーカー及び標識化技術に限定されるものではない。
【0052】
使用可能なマーカーは、例えば、蛍光マーカー;放射活性マーカー;標準的な着色または蛍光ラテックス粒子;光子結晶(量子ドットとも呼ばれる);金コロイド;および酵素マーカーを含む群から選択できる。蛍光マーカーとしては、フルオロセイン、Cy3、Cy5およびローダミンを挙げることができる。放射活性マーカーとしては、例えばP32、P33、S35、I125、H3を挙げることができる。酵素マーカーとしては、アルカリホスファターゼ、西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、β-ガラクトシダーゼ、アセチルコリンエステラーゼが挙げられる。これら酵素については、着色、蛍光または発光マーカーがある。この場合、それらマーカーは酵素によって変換される分子であり、それらマーカーは変換後に着色(または吸収波長の変化)、蛍光、発光または酸化還元体となる。診断免疫分析で通常用いられる酵素マーカーも用いることができる。これら蛍光または酵素マーカー、および本発明で使用できるその他マーカーは、例えばSigma/Aldrich、Molecular Probes、Amersham Pharmacia Biotech.、 Stratagene等の会社のカタログから入手できる。参考文献の文書[4]および[5]は、本発明の実施に用いることができるこれらマーカーを使用する方法を記載している。本発明に使用できる粒子形態のマーカーは、複数の供給元、例えばMolecular Probe、Miltenyi、Estapor/Merck、Polymer Solutions等から入手できる。参考文献の文書[6]は、本発明を実施するのに用いることができるラテックスまたはコロイド粒子の形をしたこれらマーカーの使用方法を記載している。光子結晶の使用に関しては、例えば、参考文献の文書[7]に記載されている方法を使用することができるだろう。
【0053】
一部のマーカー、特に酵素マーカーについては、検出可能な生成物は、それが生成されたスポットから、分子拡散によっていくらか移動して隣接するスポットを汚染することがある。それが、規準領域での使用、ならびに被分析物を認識するためのスポットから放射されたシグナルの利用を妨害することがある。これが、発明者が、拡散が制限されている発光マーカーを好む理由である;ひとたび酵素生成物が光子を放射すれば、それはそれ以上放射することはない。拡散現象を回避するためには、いわゆる沈殿酵素基質を用いることも可能である:酵素生成物は不溶性であり、インサイチュー、即ちスポット上に沈殿する。例えば、テトラメチルベンジジン(TMB)は、HRP酵素に用いることができ、またニトロブルーテトラゾリウムと5-ブロモ-4-クロロ-インドリルリン酸の組合せ(NBT+BCIP)はアルカリホスファターゼに用いることができる。
【0054】
発明によれば、ある種のマーカーを用いたチップの読み取りを妨害する可能性のあるこれら拡散現象を回避するために、また同時に、一般的に、隣接するスポット間の拡散現象を回避するためにも、発明者らは、段階(β)で得たサンプルの滴が各スポットの上にのみ形成され、これら滴がスポット間を拡散しないことを保証する手段を用いてスポット(被分析物および/または規準領域の認識および固定化のための)を準備したチップを使用することを推奨する。これら手段は、例えば各スポットを取りまく例えば境界線の形をした樹脂とすることができる。これら手段はまた、各スポットを囲むリングの形をし、チップ表面の残りの部分に比べ、サンプルに対しより湿潤性が高く、結果としてサンプルの滴が各スポットの各リングによってのみ保持されるものとすることもできる。このリングは、例えばシリカまたはエレクトロウエッティングによりサンプルの滴を捕捉するための電極の表面にマイクログラビア印刷により作られたブラックシリコンのリングとすることができる。滴の形成に用いる手段を問わず、チップ表面は、サンプルに関して非湿潤性であることが好ましい。それゆえに、本発明のチップには、得られる測定値の品質および信頼性を上げるために、これら手段が備えられている。
【0055】
段階(β)では、第一検出手段と同一または別である第二検出手段が場合によって固定化されている標的規準分子を、上記のようにサンプルに加える。この第二手段は、例えば標的規準分子またはプローブ規準分子の上に固定化できる第二マーカーを含んでよい。それはまた、マーカー以外の分子を含むことができるが、それは間接的標識法に用いられる(例えばビオチン)。このマーカーは、たとえば上記記載のマーカーから選択できる。第二検出手段は、第一検出手段と同一であることが好ましいが、必須ではない。重要なことは、規準領域のプローブ規準分子の上への標的規準分子の固定化が、検出可能なシグナルによって、チップ上で検出できることである。
【0056】
発明によれば、被分析物は単独で標識してもよく、または標的規準分子のみ、または両方を標識しても、あるいは両方とも標識しなくともよい。実際、いくつかの検出方法は、マーカーを用いずに分子相互作用を検出できる(チップ上へのプローブ/標的の固定)。下にいくつか例が与えられる。
【0057】
標的規準分子の上に、場合によっては第二検出手段が固定されている標的規準分子を、サンプルをチップに接触させる(段階(γ))のに用いた実験条件において、規準領域にあるスポットの最大数のプローブ分子が標的分子を認識し固定化するのに十分な量を、サンプルに加える。サンプルへの添加は、好ましくは均一に、サンプルを混合することによって実施できる。
【0058】
段階(γ)では、段階(β)の混合物を、上記所定の物理化学条件で、本発明のチップと接触させる。これら条件は、分析チップ、例えば生物学的チップ、例えばDNAチップ、RNAチップ、抗体/抗原チップ、タンパク質チップ等の分野の当業者には公知である。それら条件は、例えば、上記チップに関しては、認識スポット上で被分析物(DNA、RNA、抗体、抗原、タンパク質等)を、そしてプローブ規準分子を含む規準領域のスポット上で標的規準分子(DNA、RNA、抗体、抗原、タンパク質等)を認識して固定化できるようなpH、温度およびイオン強度の条件である。本発明の利点は、少なくとも一つの分析スポットが被分析物を認識および固定化すること、ならびに規準スポット上にプローブ規準分子を固定化して規準領域を形作ることを同時、且つ同一操作条件で実行できることである。その効果は明らかである:規準領域が発するシグナルは、被分析物を固定化するのに用いたものと同じ操作条件で得られる。それゆえに、分析結果は、先行技術の方法で得たものに比べより信頼性が高い。
【0059】
一般的には、分析スポットおよび規準領域のスポットは、機能化させたゾーンにサンプルを分配するのに用いられる分析チップ技術の通常の手段によって、サンプルと接触させることができる。
【0060】
チップのスポット上でのサンプルの滴形成を制限するための手段を具備するチップでは、この接触はスポットをサンプルで覆い、次にサンプルを回収し、ゆえに分析スポットおよびチップの規準領域のスポット上にある、これらの手段によって捕捉されたサンプルの滴だけを残すことによって、極めて簡単に行うことができる。
【0061】
添付の図2は、接触段階後の図1の規準領域(G)を、断面で図示している。この図は、プローブ規準分子(PRM)に固定された標的規準分子(TRM)を示している。TRMは、マーカー(Mq)により標識されている。最も左側のスポット(100%PRM)が最も強いマーカーからのシグナルを与え、最も右側のスポット(0%PRM)はシグナルを発しないことは明瞭である。中間のスポットには、中間のシグナルが発生するだろう。
【0062】
当業者公知の分析チップを使用する場合と同様に、この段階(γ)に、分析スポットへの被分析物の固定、ならびにプローブ規準分子への標的規準分子の固定を破壊しない条件で洗浄およびリンスする段階(s)を続けてもよい。これらの洗浄およびリンスの段階は当業者に公知であり、上記文書に見いだせる。それらにより、過剰の試薬、チップ上に固定されていない分子を取り除くことができる。
【0063】
発明の方法の段階(δ)では、規準領域の各スポットに固定された標的規準分子の固定量を反映する、規準領域の各スポットが発するシグナルを決定する。発明の方法の段階(ε)では、各分析スポットに固定された被分析物の量を反映する、各分析スポットが発するシグナルを特に決定する。
【0064】
これらの決定は、発明の方法がマーカーを使用するか否かに応じて、様々な方法で実施できる。主要なことは、規準領域の各スポットに固定された標的の量を表す一定のシグナル、および各分析スポットに固定された被分析物の量を表す一定のシグナルを割り当てることができることである。
【0065】
マーカーを使用する場合、これらマーカーの検出にとって相応しい技術的手段を用いる。用いる第一および第二検出手段が同一のマーカーを使用する場合、検出手段は、各種分析スポットに対し、また規準領域の各種スポットに対し同一であろう。シグナル読み取りのこれら技術は、当業者に公知である。前記マーカー例では、それらマーカーは、例えば蛍光量、放射活性量、酵素反応生成物の量、発光量等を検出できるようにする。マーカーに関連する前記文書は、発明の方法の実施に用いることができる、これらシグナルを決定するための技術を公開している。
【0066】
発明によれば、規準領域の各スポットからのシグナル、および/または各分析スポットからのシグナルは、特にマーカーを使用しない場合に、表面プラズモン共鳴による検出方法、光熱検出方法、楕円偏光解析法、光学的検出法および音響検出法を含む群から選択される方法によっても決定できる。これらの方法は、当業者に公知である。参考文献の文書[8]および[9]は、マーカーを用いずにシグナルを検出するための本発明の方法を実施するのに使用可能な光熱検出法を開示している。
【0067】
発明によれば、解析スポットおよび規準領域については、マーカーを用いて、または用いずにシグナルを決定する様々な方法を用いることができる。かくして、発明の方法は、標識なしの方法を用いて得た結果(分析スポットまたは規準スポット)と、標識、例えば蛍光を用いて同一チップ上で得た他の結果とを比較することができる。主要な事は、分析スポットへの被分析物の固定化および規準領域への標的規準分子の固定化の操作条件は、同一チップでは同時、且つ同一操作条件でもたらされなければならない。
【0068】
段階(ε)では、各分析スポットが発するシグナルを分析スポットの前記シグナルを上記所定の比率Pの関数として表現するために、規準領域が発する各種シグナルと比較する。実際は、各分析スポットが発するシグナルの強度を規準領域の各種シグナルと比較し、規準領域の等価のシグナルと比べ、比率Pに比例するシグナル値を導き出す。規準領域の別の規準(IM数、PRM数、IM/PRM比、PRM/IM比等)を考慮した別の比較も可能である。
【0069】
都合よく被分析物の性質および規準プローブの性質が同じであれば、各分析スポットの被分析物の比率は、単純な読み取りによって直接、信頼性高く、また再現性よく決定できる。
【0070】
実際のところ、該決定は、本発明を基にして、同一サンプルに由来し且つ、同時に行われる規準領域を用いることにより、被分析物と同一の操作条件で実施される。
【0071】
被分析物の種類がプローブ規準分子の性質と異なる場合は、相対値を決定できる。しかしながら該相対値は安定し、再現性があり平均値を有し、また分析操作条件を統合することで同一サンプルから同一チップに規準領域を同時に形成することができるという利点を有している。それゆえに、この相対値は先行技術の方法によって得たものに比べ信頼性が高い。
【0072】
本発明の応用の具体例では、被分析物、被分析物に特異的なプローブ分子、プローブ規準分子、規準標的および不活性標的はオリゴヌクレオチドであり、接触させる段階(γ)は、被分析物をプローブ規準分子とチップ上でハイブリダイゼーションさせること、および標的規準分子とプローブ規準分子とをハイブリダイゼーションさせることを目的としている。このハイブリダイゼーションについては、規準領域のプローブ規準オリゴヌクレオチドに相補的な配列を含み、被分析物と同様の方法で標識されていることが好ましいが、必須ではない標的規準オリゴヌクレオチドを、被分析物を含有するサンプルに加える。このオリゴヌクレオチドは、規準オリゴヌクレオチドを100%含む規準領域のスポットにあるプローブ規準分子の全てが、用いたハイブリダイゼーション実験条件においてハイブリダイゼーションするように、若干過剰に用いられる。かくして規準領域の各スポットでは、ハイブリダイゼーション可能なスポットは全てハイブリダイゼーションする。こうすることで、DNAチップの各分析スポットからのシグナルを「規準希釈%」で表すことが可能になる。別の分析において、同一の規準オリゴヌクレオチドおよび非特異的オリゴヌクレオチド(即ち被分析物を認識も固定もしない)を用いることで、この単位はサンプル、標識化学、使用したマーカー(緑、赤または青、蛍光、光子等)、ハイブリダイゼーション条件(規準オリゴヌクレオチドのハイブリダイゼーションが完全であるとして)、チップのバッチ、結合効率等とは無関係となり、先行技術の方法では必要な追加実験を行うことなしに、直接相互に比較することができるようになる。
【0073】
一般的には、規準曲線、例えば(決定されたシグナル)=f(P)は規準領域から直接読取る、または構成することができ、これは前記チップの分析スポットの分析に用いることができる。
【発明の効果】
【0074】
本発明のチップおよび方法は、かくして信頼性の高く、正確なものとなり、そして結果は再現性を有するものとなる。本発明は、様々な公知および将来のDNAチップに応用できる。それは、複数の実験の間でのシグナルの比較を可能とし、規準領域各ポイントについてDNAチップを使用しなくとも済むようにし、そして先行技術の方法で必要なキャリブレーション実験を常に繰り返す必要をなくす。
【0075】
好適にも、酵素標識、例えば発光を用いた検出法では、本発明は製造元および使用者がバッチ毎に酵素活性をキャリブレーションしなくともよい様にする。結果として、これは「一連の計測学」を大きく簡素化する。
【0076】
かくして本発明は、産業および研究分野において、研究室向けオンチップ、例えば生物学チップ分析の複雑さとコストを軽減する。
【0077】
本発明は、被分析物を認識して固定化するためのスポットを利用する、先行技術の全ての分析チップを基礎にできることから、当業者は、本発明が、このタイプのチップを用いることができる全ての分野に応用できること容易に理解するだろう。
【0078】
かくして、本発明は、発明のチップを含む診断キットにも関する。この場合、本発明のチップの分析スポットは、診断確定を目的とした解釈を可能とする結果を得るために必要被分析物の認識に特異的なプローブ分子を含む。例えば、それはオリゴヌクレオチド、cDNA、抗体、レクチン、アプタマー等から選択される、該当するプローブ分子の問題とすることができる。
【0079】
本発明はまた、発明のチップを含む分析キットにも関する。この場合、本発明のチップの分析スポットは、前記分析を実施するために必要な、被分析物の認識に特異的なプローブ分子を含む。それは定性的または定量的な測定のためのキットとすることができる。例えば、それはオリゴヌクレオチド、cDNA、抗体、レクチン、アプタマー等から選択される、該当するプローブ分子とすることができる。
【0080】
本発明はまた、インビトロにおいて、組織細胞での遺伝子発現の変動をモニタリングするために本発明のチップを使用することにも関する。例えば文書[1]は、遺伝子発現の前記変動をモニタリングすることに関して、本発明のチップに用いることができるプロトコールを記載している。
【0081】
本発明はまた、インビトロでの遺伝子型判定の方法での本発明のチップの使用にも関する。例えば文書[1]は、遺伝子型判定の方法の実施に関して、本発明のチップに用いることができるプロトコールを記載している。
【0082】
例えば、本発明の遺伝子発現チップの有用性および使用に関しては、発明の方法のこれら応用における、発明の方法の実施に使用可能なプロトコールを記載している文書[10]の既述が参考になる。
【0083】
例えば、診断を目的とした遺伝子型判定法での本発明の使用に関しては、発明の方法のこの応用での実施に使用可能なプロトコールをそれぞれ記載している、文書[11]および[12]が参考になる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0084】
その他特徴および利点は、例示を目的とする以下の実施例を、添付図面を参考にしながら読むことで明らかになるだろう。
(実施例1)
【0085】
実施例1:本発明のチップ
1.1 チップ基板
発明のチップの製造に用いる基板は、「VV5501 VGA Monochrome Image Sensor」(ST Microelectronicsの登録商標)のモノクロームイメージャであり、その主な技術的特徴を下表に示す:
【0086】
【表1】

【0087】
この基板の上面図を図8の写真で示す。それは、中心部にシリコン表面を有している。図6は、以下記載するように、このチップの断面図であり、それはその上に接着されたプラスチック製チューブも有している(以下参照)。
この基板は、実際は、ゲインおよび露光制御機能を備えた低コストデジタルカメラの製造を目的としたものであり、理論的にはシグナル対ノイズ比は56dBである。さらにまた、それは、その操作に必要な外部コンポーネントがごく僅かであり、またカメラの内部パラメータを管理するためのキット(ソフトウエアおよびハードウエア)が備えられている。
【0088】
1.2 チップ製造の第一段階
前項1.1に記載したチップ基板を、シリコン表面を機能化するために変更した(図1)。光検出器のシリコン表面(基板の中心)を操作するために、ガラス製カバーを外し、結合接続部をグロブトップ樹脂(結合接続の保護に用いる樹脂を表す一般的用語)の下に埋め込んだ。光検出器中心のパシベーション層(窒化ケイ素)を機能化した(シリコン処理+スポット捕捉プローブの結合)。
【0089】
後のシリコン表面機能化実験のために、プラスチックチューブをチップの上に接着(UV接着)し、その中でハイブリダイゼーション、洗浄および発色を実施する反応チャンバーを活性表面上に画定した。図6は用いた設定の概略図である:それはチップの接続を保護するための樹脂(R)、シリコン表面(P)、セラミックフレーム(Cc)、接着されたプラスチックチューブ(Tp)、およびその上にプローブ分子および/または不活性標準体あるいは被分析物に特異的なプローブ分子が固定されているスポット(se=規準スポットおよびsa=分析スポット)を含む。この概略図は、チューブが、シリコン表面に触れる形で反応溶液(Lr)を封じ込めるために提供されていることを示している。
【0090】
(S)および(Cc)は、チューブ接着前、および樹脂を塗布する前を表している、図8の写真の上方に示されている。
【0091】
1.3 オリゴヌクレオチドであるプローブ分子および不活性分子による、シリコン表面の機能化
1.3.1 シリコンの露出
(i)シラノールを窒化ケイ素チップ表面に露出させる:2時間、室温で溶液:NaOH 1g/水3ml/エタノール99%4mlの中で攪拌する。水で何度も洗う。0.2N HClの中で1時間攪拌してから、水でよくリンスする。ストーブの中にて80℃で乾燥。
【0092】
ii)シリコン処理:プレートを、アルゴンの下、10%(容積/容積)の3-アミノプロピルトリエトキシシランのエタノール溶液の中に24時間浸漬する。次に乾燥させる。次に99%エタノールで洗浄し、99%エタノール+超音波で二回目の洗浄を行う。洗浄はそれぞれ数分行う。乾燥する。乾燥状態にて、3時間、110℃でアニーリングする。
【0093】
iii)予備活性化:プレートをKOH溶液(20mlの水に1.5gのKOH)に浸漬する。5〜10分間、室温で攪拌しながらインキュベーションする。次に純水でリンスする。
【0094】
iv)活性化:プレートをグルタールアルデヒド(水16mlに4mlのグルタールアルデヒド)溶液に浸漬する。室温で1時間30分、インキュベーションする。純水でリンスする。乾燥する。
【0095】
1.3.2 オリゴヌクレオチドの固定化
グルタールアルデヒドでこれらNH2基を活性化すれば、アミノ化されたオリゴヌクレオチド(以下ODN)を、Mikrodrop社製ピペットを装備したKarl Zuss社製のロボットを利用してチップ表面上の様々なスポットに配置し、結合させることができる。スポットの直径は、約140μmと算定された。
【0096】
配置するオリゴヌクレオチド溶液の調整:使用する溶液はそれぞれ、チップ規準領域の各スポットに配置されるODN(プローブ+不活性)を合計10μM含む。それらは、規準の比率が100%、10%、1%、0.1%および非特異が100%である、規準プローブODNと不活性(非特異的)ODNの混合物、即ち、5スポットまたは点からなる規準領域を含む。これら5種類の溶液を、Mikrodrop社製圧電式ピペットを装備したKarl Zuss社製ロボットを用いて、5本のスポットのラインに配置した。スポットは、200μmの間隔をあけて配置された。ライン間の距離は、約400μmであった。スポットの直径は約140μmであった。
【0097】
この実験のオリゴヌクレオチドは全て長さが22塩基である。用いた配列は、以下の通りである:
−プローブオリゴヌクレオチドの配列(配列番号:1)
5’ (H2N-)ATGAACAAGTAGATAAATTAGT 3’
−不活性オリゴヌクレオチドの配列(配列番号:2)
5’ (H2N-)CTAAAGGAATAGTGTAAATAAT 3’
【0098】
-NH2基は、この例で使用したグルタールアルデヒドのアルデヒドへの結合に役立つ。
(規準標的オリゴヌクレオチドの配列は、実施例3に記載されている)
【0099】
1.4 ハイブリダイゼーションおよび標識化
これらのチップを、HRP標識物の15nM溶液と、37℃で30分間インキュベーションし、洗浄後にPierce基質混合物(「Super ELISA Femto Maximum Sensitivity Kit」)(登録商標)存在下に画像化した。HRP標識物は、HRP酵素が結合された(HRP:西洋ワサビペルオキシダーゼ)、プローブオリゴヌクレオチドに相補的なオリゴヌクレオチドである。
【0100】
ハイブリダイゼーションは全て、加湿チャンバー内、37℃で30分間、TE 1X、NaCl 1M、Triton X-100 0.05%の中で行われた。ハイブリダイゼーションの容積は200μlである(即ち、液層の厚みは約3mmである)。攪拌はしなかった。ハイブリダイゼーションに続いて、400μlのTE 1X、NaCl 1M、Triton X-100 0.05%での洗浄を3回行い、さらにTE 1X、NaCl 1Mでの洗浄を1回行った。TE 1Xは、Tris 10mM、EDTA 1mM、pH8を表す。
【0101】
ハイブリダイゼーションおよび洗浄終了後、チップを読み取りカードの上に載せた。
【0102】
1.5 規準領域シグナルおよび読み取りシグナルの測定
リンスバッファを除いてから、200μlの基質混合液SuperSignal ELISA Femto Maximum Sensitivity Substrate(Pierce, #37075(登録商標))を加えた。
【0103】
画像の獲得:ゲイン15、ディバイザー15(1.8画像/秒)で50画像、ゲイン0、ディバイザー15(1.8画像/秒)で50画像。最初の画像シリーズは、微弱なシグナルを視認可能にする。第二のシリーズは、上記の条件では飽和してしまう強いシグナルを可視化できる。50枚の発光画像はピクセル間で平均化され、また50枚の黒画像も同様にした。次に黒画像の平均値を、発光画像の平均値から減じた。得られた画像に、各スポットの平均強度を重ね、その値からスポット周囲の背景ノイズの平均値を減じた。得られた値が、そのスポットの発光シグナルである。
【0104】
実際は、センサーのダイナミックレンジ(理論的には320と見積もられる)は、生物サンプルが発するシグナルのダイナミックレンジをカバーするには不十分である。それゆえに、ゲインまたは露光に関し、異なる設定をして2回取り込みを行う必要がある。選択した条件(ゲイン0/露光560ms、およびゲイン16/露光560ms)により、強いシグナルについて飽和していない画像も、弱いシグナルの画像も得ることができる:図3の写真は、左がゲイン0、右がゲイン16である。右の画像では、画像処理前でさえ、四本の水平方向のスポットのライン、上から下に向かって規準100%、10%、1%、0.1%を明瞭に区別でき、さらににそれに続いてプローブ規準分子を含まないが不活性(非特異的)分子のみ含むラインがあるが、これは見ることはできない。
【0105】
処理した画像のスポットのグレーレベル(GL)を定量化し、次に正規化して、得られた値を図4のグラフに示す。図4では、C1、C5、C6およびC7(Cはチップを表す)は、4種類の本発明のチップについての4回の独立した実験を表している。補正したシグナル(Sc)(GLの)を縦軸に示し、捕捉されたプローブ分子の比率(%SCS)を横軸に示す。
【0106】
このグラフから、酵素結合ハイブリダイゼーションによる規準標的の検出によって、1000を超える有用領域について(0.1%から100%)規準領域の各スポットの表面濃度(ここでは、規準標的に特異的な捕捉規準プローブ)を区別できることが分かる。
【0107】
このシステムは、捕捉規準標的スポットの表面濃度の変動をシミュレーションする。それゆえに、濃度範囲を持つ標的を検出することができ、即ち1000の桁の検出ダイナミックレンジを有する。
【0108】
例示を目的に実施された本実施例では、チップはHRP酵素が直接結合しているオリゴヌクレオチドとハイブリダイゼーションした。実際の応用では、チップには規準スポット以外のスポットも存在するだろう。それゆえに、チップは、例えば事前にハプテン、例えばビオチンで標識されたサンプルとハイブリダイゼーションするだろう。ハイブリダイゼーション中、規準オリゴヌクレオチドに相補的であり、且つビオチンで標識されたオリゴヌクレオチドがサンプルに加えられるだろう。ハイブリダイゼーション後、それ自体がチップ状に存在するビオチンに結合するストレプトアビジン-HRP複合体をインキュベーションする。次に、上記のようにして発光させる。この「二段階」法は次の実施例でも用いられるが、この時酵素ではなく粒子がマーカーとして用いられている。
(実施例2)
【0109】
実施例2:蛍光粒子による標的規準分子の直接標識
本実施例では、チップ(C)にハイブリダイゼーションした標的規準分子(TRM)は、この例では、検出ODN(ODNd)を用いて、ハプテンの一種であるビオチンで標識する。次に「染色」段階を行い、ストレプトアビジン(St)で機能化した蛍光粒子(Pf)でチップ表面をインキュベーションし、それによってビオチン(b)に固定化する。配列を以下に示す。図7に、この方法で、チップ表面(S)に用いた生化学的メカニズムを図示す:捕捉ODNは、チップを形作る基板の上に固定化されており、発明のプローブ規準オリゴヌクレオチド(PRM)の役割を果たしている;標的+検出ODNの組合せは、相補的(標的)オリゴヌクレオチド(TRM)の役割を果たしている。捕捉ODN(プローブ)は、70ヌクレオチドからなる。標的は513ヌクレオチドからなる。検出ODNは16ヌクレオチドからなる。配列は次の通りである:
−プローブオリゴヌクレオチドの配列(配列番号:3):
5’ TCACTATTAT CTTGTATTAC TACTGCCCCT TCACCTTTCC AGAGGAGCTT TGCTGGTCCT TTCCAAAGTG 3’
−不活性オリゴヌクレオチドの配列(配列番号:4):
5’ ACTGTTACTG ACCTACCATT TGTTACCTAT GCTAAGCTCA TTGCACCTCT GATTGCCGAG GCCTTTCTTT 3’
−標的オリゴヌクレオチドの配列(配列番号:5):
5’ ACAGCAGTAC AAATGGCAGT ATTCATCCAC AATTTTAAAA GAAAAGGGGG GATTGGGGGG TACAGTGCAG GGGAAAGAAT AGTAGACATA ATAGCAACAG ACATACAAAC TAAAGAATTA CAAAAACCCT TACAAAAATT CAAAATTTTC GGGTTTATTA CAGGGACAGC AGAAATCCAC TTTGGAAAGG ACCAGCAAAG CTCCTCTGGA AAGGTGAAGG GGCAGTAGTA ATACAAGATA ATAGTGACAT AAAAGTAGTG CCAAGAAGAA AAGCAAAGAT CATTAGGGAT TATGGAAAAC AGATGGCAGG TGATGATTGT GTGGCAAGTA GACAGGATGA GATTAGAACA TGGAAAAGTT TAGTAAAACA CCATATGTAT GTTTCAGGGA AAGCTAGGGG TAGGTTTTAT AGACATCACT ATGAAAGCCC TCATCCAAGA ATAAGTTCAG AAGTAAATCG AATTCCCGCG GCCATGGCGG CCGGGAGCAT GCGACGTCGG GCCCAATTCG CCC 3’
−検出オリゴヌクレオチドの配列(配列番号:6):
5’ TTCTGAACTTATTCTT 3’
【0110】
この染色段階の効率はまだよく分かっておらず、また実験条件、DNA製造に用いる表面化学、使用する蛍光粒子等によって変わる。即ち粒子は個々に計測できるが、先行技術では、実験を相互に比較できるようにするには、測定をキャリブレーションしなければならない。
【0111】
従って、このタイプの標識に関する本発明の利点に加え、発明は、好都合にも、このキャリブレーションを不要する。
【0112】
本実施例のチップを形作る基板は、25×75mmの顕微鏡スライドである。あらゆる操作は、顕微鏡スライドを、必要な溶液が入った小型のビーカーに漬けて行われる。作業は次の通りである:
上記実施例1の1.3.1項の段階(i)〜(iv)をこの基板について行う。次に:
(1)上記プローブおよび不活性オリゴヌクレオチドの固定化: 10μMのアミノ化オリゴヌクレオチドを、3μlの滴として、マイクロピペットを使ってマニュアルで配置する。スポットの大きさは約3mmである。加湿チャンバー内で、一晩、室温でインキュベーション。
【0113】
配置するオリゴヌクレオチドの溶液の調整:配置した10μMの捕捉ODNの混合液は、規準ODNの比率が100%、1%、0.2%、0.1%、0.033%および、不活性(非特異的)分子の規準ODNと非特異的ODNの混合物(即ち、6点の規準領域)を含む。これら6種類の溶液を、マニュアルで配置した。
【0114】
(2)固定化後処理。アルデヒドの還元がまだ存在している:水30ml/NaBH4105mg;室温で、攪拌せずに1時間インキュベーション。水で5分濯ぎ、次に5%ドデシル硫酸ナトリウムで5分間リンスした後、再度純水で5分間リンスする。乾燥。
【0115】
(3)チップのハイブリダイゼーションおよび検出:チップを、TE NaCl 1M Triton 0.05%の中で、100nMの上記513塩基の標的分子(配列番号:5)と30分間、室温にてハイブリダイゼーションした。次に、これらチップを200nMの検出オリゴヌクレオチド溶液と、室温で、1時間ハイブリダイゼーションしてから洗浄した。このヌクレオチドをビオチンで標識した。次に、スライドを直径100nmのニュートラアビジン蛍光粒子(Molecular Probes, T8861)とインキュベーションした。
【0116】
ハイブリダイゼーション:ハイブリダイゼーションは全て、室温、TE 1X、NaCl 1M、Triton X-100 0.05%中にて実施した。攪拌はしなかった。ハイブリダイゼーションに続いて、TE 1X、NaCl 1Mで3回洗浄した。TE 1Xは:Tris 10mM、EDTA 1mM、pH8を表す。
【0117】
(4)発色および読み取り:蛍光粒子を、TE NaCl 1Mの中、106粒子/μlの濃度で3時間、室温でインキュベーションした。粒子の直径は100ナノメートルである。
【0118】
(5)数値結果の取り出し:各スポットを蛍光顕微鏡(フルオロセインキューブ)で画像化した。次に、各スポットの粒子密度を、手動にて、またはマトラブルーチン(matlab routine)(登録商標)を用いて自動的に測定した。結果は、これら二種類の方法の間で一致した。
【0119】
有用な規準領域が確かに得られた。そのことは、縦軸に10000μm2当たりの流指数を取り、そして横軸にP(%PRM/(IM+PRM))を取った図5のグラフに示されている。
【0120】
前述のマーカーに代わって、Quantum Dot社製のQuantum Dot(登録商標)蛍光粒子を用いた場合、蛍光ラテックスを用いて得られるものより、遙かに優れた標識効率が得られることが予想できる。
(実施例3)
【0121】
実施例3:サンプルの分析
発明者らは、例えば、上呼吸器道感染症に罹った患者の初期スクリーニング専用の簡単なチップを提案する。チップは、気管支炎を引き起こすRSV AおよびRSV Bウイルスの存在、ならびにインフルエンザを引き起こすインフルエンザA(inf A)およびインフルエンザB(Inf B)の存在をより正確に検出することを目的としている。
【0122】
いずれの場合も、それらは極めて多形性に富んだRNAウイルスである;症状は比較的似ており、そしてこれらウイルスは乳児、高齢者および一般には、全ての免疫抑制患者にとって危険である。
【0123】
用いるチップは、実施例1と正確に同一の技術のものであり、実施例2と同じ機能化化学を利用している。
【0124】
スポット(分析スポットならびに規準領域スポット)は、約160μmの直径を有し、300μmの間隔をあけて配置されている。この発明のチップは、図9に図示されている。スポットは、円形に示されている。
【0125】
RSV A、RSV B、Inf AおよびInf Bについて、ならびに「染色」コントロールおよび発色(T & R)については、それは同一のスポットを5回繰り返す。
【0126】
「染色」コントロールおよび発色(T & R)用のスポットの分子は、TRM分子と同一であり、オリゴヌクレオチド作製中にビオチンで前もって標識されたオリゴヌクレオチドである。
【0127】
陽性コントロール(C+)は、比率100%、10%、1%、0.1%、0%(左から右)の発明の規準領域である。
【0128】
チップは、次のように用いられる:
a)生物学者は先行技術の方法に従って、サンプルのRNAを精製する。
b)生物サンプルを、作製中にビオチン標識した標的規準分子と混合する。
c)サンプルを、参考文献の文書[13]、[14]、[15]または[16]に対応する、パテントファミリーとしてBioMerieuxが出願した特許出願の目的である、LDC法の変形の一つに従ってビオチンで標識する。
d)チップ上のアセンブリをインキュベーションし(ハイブリダイゼーション段階)、続いて実施例1のようにして洗浄する。
e)ストレプトアビジン/HRP酵素複合体を、実施例1のように加える。この段階で、複合体そのものが、分析スポット上に存在する被分析物、そして規準領域のスポット上に存在するTRM分子、ならびに「染色」コントロールおよび発色用スポットの分子に結合する。
f)実施例1のようにして、発光による発色を行う。
【0129】
TRM、不活性およびPRMオリゴヌクレオチドの配列は、実施例1の配列と同一である。
【0130】
参考文献
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[12] Christen R. et Mabilat C., "Applications des puces a ADN en bacteriologie", Bull. Soc. Fr. Microbiol., 1998, 13, 10-17.
[13] "Procede de marquage d'un acide ribonucleique et fragments d'ARN marques ainsi obtenus", FR 98 07870 et ses extensions dans les autres pays (fammille de brevets). Inventeur : A. Laayoun.
[14] "Process for labelling a nucleic acid", EP A 1 238 116. Inventeurs : A. Banerjee, A. Laayoun, M. Becker, K. Browne, M. Friedenberg, F. Hajjar.
[15] "Process for labelling a nucleic acid and labelled RNA fragments which are obtained thereby", WO-A-01/44506. Inventeurs : A. Laayoun, D. Do, C. Miyada.
[16] "Procede de marquage et de fragmentation d'ADN", FR n°01 06039. Inventeurs : J. Lhomme, E. Trevisiol, A. Laayoun, C. Bourget, M. Kotera, C. Tora.
【図面の簡単な説明】
【0131】
【図1】本発明のチップの規準領域を表す概略図。
【図2】標的規準分子がプローブ規準分子上に固定された状態の、本発明のチップの規準領域を示す概略図。マーカーも示す。
【図3】560ms、ゲイン0(左)または16(右)に曝した時の、本発明のチップ規準領域の、2つのネガティブ像。
【図4】別々に行った4回の実験(C1、C5、C6およびC7)に関する、捕捉スポット上の規準オリゴヌクレオチド比率の関数として表したシグナル曲線のグラフ。 これら曲線は、本発明の規準領域から得られる規準曲線を構成する。
【図5】蛍光粒子で標識を用いて、本発明の規準領域の各スポットについて測定されたシグナルの結果をまとめたグラフ。
【図6】本発明のチップの製造について本発明者らが用いた設定の概略図。
【図7】本発明のチップでの、規準プローブ分子への標的規準分子の固定化の、ラテックス粒子を用いた間接的標識の生化学的メカニズムの概略図。
【図8】本発明のチップの製造に用いるチップ基板の写真。
【図9】気管支炎を起こすウイルスRSV AおよびRSV B(RSV:呼吸合胞体ウイルス)、ならびにインフルエンザを起こすウイルスInf A(インフルエンザA)およびinf B(インフルエンザB)の、患者体内の存在を検出するための発明の分析チップを示す概略図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
a)被分析物を特異的に認識し、固定化可能となるようにチップ上に配置されている、少なくとも一つの被分析物のための少なくとも一つの分析スポットと、
b)前記チップ上に所定の態様にて、互いに独立にそれぞれ配置されている複数の規準スポットを含む規準領域(G)とを含む、液体サンプル中に存在する少なくとも一つの被分析物の分析チップであって、該規準領域は複数の規準スポットを有し、該領域の各規準スポットは(i)少なくとも一つのプローブ規準分子(PRM)及び/または(ii)少なくとも一つの不活性分子(IM)とを含み、該少なくとも一つのプローブ規準分子(PRM)と該少なくとも一つの不活性分子(IM)とは該規準スポットの表面に固定されかつ前記領域の他の規準スポットに関してスポット毎に異なる所定の比率Pとされており、該少なくとも一つのプローブ規準分子(PRM)は所定の標的規準分子(TRM)を認識し特異的に結合でき、、該少なくとも一つの不活性分子(IM)は前記標識規準分子を認識も結合もできず、該プローブ規準分子および該不活性分子は共に前記被分析物を認識も固定化もできなく、該 PはP=(PRMの数)/(PRMの数+IMの数)且つ0≦P≦1であり、RPMの数+IMの数の合計が規準スポット間で一定である、分析チップ。
【請求項2】
被分析物および標的規準分子が同一性質である、請求項1記載のチップ。
【請求項3】
被分析物および標的規準分子がオリゴヌクレオチドまたは抗体である、請求項2記載のチップ。
【請求項4】
プローブ規準分子、標的規準分子および不活性分子がオリゴヌクレオチドである、請求項1記載のチップ。
【請求項5】
少なくとも一つの被分析物が核酸であり、且つ少なくとも一つの分析スポットが前記核酸に相補的な核酸により機能化されているスポットである、請求項1または4記載のチップ。
【請求項6】
規準領域のスポットがチップ上に直線的に配置され、且つ各スポットの比率Pの関数として配置されている、請求項1記載のチップ。
【請求項7】
請求項1記載のチップを含む診断キット。
【請求項8】
請求項1記載のチップを含む分析キット。
【請求項9】
細胞または組織内の遺伝子発現の変動をインビトロでモニタリングするための、請求項1記載のチップの使用方法。
【請求項10】
インビトロの遺伝子型判定法への、請求項1記載のチップの使用方法。
【請求項11】
次の段階を含む、液体サンプル中に存在する可能性のある少なくとも一つの被分析物のインビトロ分析方法であって、該インビトロ分析方法は、
(α)随意に、被分析物に第一検出手段を固定化する工程;
(β)随意に標識された被分析物を含む分析対象サンプルに、第一検出手段と同一または異なる第二検出手段が随意に固定されている標的規準分子(TRM)を加える工程であって、前記TRMは請求項1記載の分析チップのプローブ規準分子(PRM)を認識し特異的に結合でき、前記TRMは前記チップの規準領域(G)のPRMを飽和するのに十分な量で前記サンプルに加えられ、その結果各規準スポットについて異なる所定の比Pの関数である規準領域を形成する工程;
(γ)随意に標識された被分析物およびTRMを含む分析対象のサンプルを、前記少なくとも一つの被分析物の少なくとも一つの分析スポットを含む請求項1記載の前記分析チップに接触させる工程であって、該工程は、一方で分析対象の被分析物が存在する場合には、チップ上のその分析スポットに結合、他方でTRMがPRMを特異的に認識し、チップの規準領域の様々な規準スポット上のPRMに結合する物理化学的条件の下に接触させる工程;
(δ)該当する場合、第二検出手段により規準領域の各規準スポットから放射される規準シグナルを測定する工程であって、前記シグナルが各規準スポット上に固定された標的規準分子の量の関数である工程;ならびに
(ε)該当する場合、第一検出手段により前記少なくとも一つの分析スポットから放射されかつ分析スポットによって固定された被分析物の量の関数である分析シグナルを測定し、段階(δ)において測定したシグナルと比較し、この分析シグナルをPの関数として表す工程、からなるインビトロ分析方法。
【請求項12】
被分析物および標的規準分子が同一性質のものである、請求項11記載の方法。
【請求項13】
被分析物および標的規準分子がオリゴヌクレオチドまたは抗体である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
プローブ規準分子、標的規準分子および不活性分子がオリゴヌクレオチドである、請求項11記載の方法。
【請求項15】
少なくとも一つの被分析物が核酸であり、且つ少なくとも一つの分析スポットが該核酸に相補的な核酸により機能化されているスポットである、請求項11または14記載の方法。
【請求項16】
第一および第二検出手段がそれぞれ第一マーカーおよび第二マーカーを含んでいる、請求項11または15記載の方法。
【請求項17】
第一および第二マーカーが、蛍光マーカー、放射活性マーカー、酵素マーカー、ラテックス粒子、光子結晶および金コロイドを含む群から独立に選択される、請求項16記載の方法。
【請求項18】
規準領域の各スポットおよび各分析スポット、あるいはそれら各スポット又は各分析スポットの内の一方のシグナルの測定が、表面プラズモン共鳴による検出方法、光熱検出方法、楕円偏光解析法、および光学的検出法を含む群から選択される方法により実施される、請求項11記載の方法。
【請求項19】
分析が検出または定量的分析である、請求項11記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公表番号】特表2007−518975(P2007−518975A)
【公表日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−546291(P2006−546291)
【出願日】平成16年12月23日(2004.12.23)
【国際出願番号】PCT/FR2004/050757
【国際公開番号】WO2005/068654
【国際公開日】平成17年7月28日(2005.7.28)
【出願人】(590000514)コミツサリア タ レネルジー アトミーク (429)
【出願人】(506220841)
【Fターム(参考)】