説明

視線誘導標及びその基台部

【課題】より一層夜間の視認性に優れた視線誘導標およびその基台部を提供する。
【解決手段】道路に設置される視線誘導標1の基台部10であって、平行四辺形の上面部12aと、上面部12aの4辺から外側下方に向かって接地面まで延びる4つの斜面部12bと、斜面部12bの少なくとも1面に配設された反射体13と、を備え、上面部12aの1組の対辺が、道路の進行方向に沿うように設置されるとき、反射体13は、上面部12aの他の1組の対辺から延びる斜面部12bに配設される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として道路に設置される視線誘導標及びその基台部に関するものである。
【背景技術】
【0002】
視線誘導標は、上下車道の中央分離線や、車道と自転車道及び歩行者専用道路との境界線標示用、公園や街路等の車止め仕切り等の標示用として使用されるものである。そのため、視線誘導標は、時間帯や天候に関係なく、優れた視認性が要求される。
【0003】
優れた視認性を確保するため、以下の特許文献1には、太陽光下で白色系色調のポール本体の周囲に、第1の色調の反射シート、及び第2の色調の反射シートが、互いに密着せしめて巻き付けられた視線誘導標識柱が記載されている。この視線誘導標識柱は、昼間には、外来光がポール本体(標識柱)の表面で乱反射されて白色を呈するので明瞭に視認され、また夜間には、前照灯の光束が再帰反射して2種類の色調を呈するので明瞭に視認することができるものである。
【0004】
引用文献1の視線誘導標識柱は、夜間には、ポール本体については、車の前照灯によって2種類の色調を呈するので視認性が良いが、台座の部分については、反射体もしくは発光体などを設けていないので視認性があまり良くない。これに対し、以下の引用文献2には、基台部に立設された中心柱を備えた道路標識柱であって、基台部に反射レンズ(反射体)を複数個設けた道路標識柱が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−62715号公報
【特許文献2】特開2009−13715号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、引用文献2に記載された道路標識柱の基台部も、小さな反射レンズが設けられているのみで、夜間の視認性が十分とは言えない。上記のように、視線誘導標には優れた視認性が要求され、その基台部についても優れた視認性があることが好ましい。
【0007】
本発明は上記実情に鑑みてなされたものであり、その課題は、より一層夜間の視認性に優れた視線誘導標およびその基台部を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため本発明に係る視線誘導標の基台部は、
道路に設置される視線誘導標の基台部であって、
平行四辺形の上面部と、
前記上面部の4辺から外側下方に向かって接地面まで延びる4つの斜面部と、
前記斜面部の少なくとも1面に配設された反射体と、を備え、
前記上面部の1組の対辺が、道路の進行方向に沿うように設置されるとき、前記反射体は、前記上面部の他の1組の対辺から延びる前記斜面部に配設されることを特徴とする。
【0009】
この構成による視線誘導標の基台部の作用・効果を説明する。本発明に係る視線誘導標の基台部は、平行四辺形の上面部と、上面部の4辺から外側下方に向かって接地面まで延びる4つの斜面部と、斜面部の少なくとも1面に配設された反射体と、を備えている。反射体が、上面部の4辺から外側下方に向かって接地面まで延びる斜面部に配設されることにより、通常、車のヘッドライトは、下斜め方向に向かって道路面を照らすので、反射体に光が照射されやすく、本発明の基台部は夜間の視認性に優れる。
【0010】
さらに、上面部の1組の対辺が、道路の進行方向に沿うように設置されるとき、反射体は、上面部の他の1組の対辺から延びる斜面部に配設される。この構成によれば、基台部を道路に設置した際には、反射体は、道路の進行方向に対して斜め方向に向いて配設されることになる。図7に道路に設置した基台部を上方から見た様子を示す。図7のように、道路を通行する車の運転者は、斜め前方に設置された反射体に対して正面を向くことになり、基台部の反射体を視認しやすい。よって、本発明の基台部は、より一層夜間の視認性に優れる。
【0011】
本発明に係る視線誘導標の基台部は、前記反射体が配設される斜面部と前記接地面との角度が20〜40°であることが好ましい。斜面部と接地面との角度が20〜40°のとき、車のヘッドライトによる光が反射体に最も照射されやすく、夜間の視認性に優れた基台部となる。
【0012】
本発明に係る視線誘導標の基台部は、前記上面部に孔部が設けられていることが好ましい。基台部の上面部に孔部が設けられていることにより、孔部に対して中心柱の下部を固定することで、いわゆる視線誘導柱の形態をした視線誘導標を形成することができるとともに、孔部を塞ぐことで、いわゆる道路鋲の形態をした視線誘導標を形成することができる。
【0013】
上記課題を解決するため本発明に係る視線誘導標は、請求項1に記載の基台部に、中心柱が立設されたことを特徴とする。
【0014】
この構成による視線誘導標の作用・効果については、すでに述べた通りであり、本発明によれば、より一層夜間の視認性に優れた視線誘導標を提供することができる。
【0015】
なお、本発明において、平行四辺形とは、2組の対辺がいずれも平行である四角形のことをいい、菱形も当然含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の視線誘導標の好適な形態を示した斜視図
【図2】視線誘導標の正面図、右側面図、及び平面図
【図3】(a)はベース部材の平面図、(b)は(a)のB−B断面図
【図4】視線誘導標を道路に設置した状態を例示した断面図
【図5】第2実施形態の視線誘導標を示す断面図
【図6】第3実施形態の視線誘導標を示す断面図
【図7】本発明に係る視線誘導標の基台部の効果について説明するための模式図
【発明を実施するための形態】
【0017】
<第1実施形態>
図1は、本発明の視線誘導標の好適な実施形態を例示した斜視図である。また、図2は、視線誘導標の正面図、右側面図、及び平面図である。本実施形態に係る視線誘導標1は、基台部10と、この基台部10に立設された中心柱20とから構成される。
【0018】
基台部10は、ベース部材11と押え部材12とから構成されている。ただし、図1及び図2では、ベース部材11は示されていない。押え部材12は、上面部12aと斜面部12bとから構成される。
【0019】
上面部12aは、図に示すように略平行四辺形をしている。上面部12aの周縁には、固定穴12cが2箇所設けられており、不図示のネジによって、押え部材12をベース部材11に固定することができる。また、上面部12aの中心部には、孔部12dが設けられており、中心柱20を貫装することができる。
【0020】
4つの斜面部12bは、上面部12aの4辺から外側下方に向かって接地面まで延びており、押え部材12は、上方から見ると、全体として略平行四辺形をしている。斜面部12bの少なくとも1面には、反射体13が配設されている。本実施形態では、1対の向かい合う斜面部12bの2面に反射体13が配設された例を示す。ここで、反射体としては、広角反射体(ワイドアングルリフレクター)などが例示される。また、反射体13が配設される斜面部12bと接地面との角度は、20〜40°が好ましく、30°がより好ましい。なお、図1および図2に示す例では、反射体13が配設されない斜面部12bと接地面との角度は、40°以上あるが、仮に車が乗り上げた場合の衝撃を小さくするため、角度は小さい方が好ましい。
【0021】
図3(a)は、ベース部材11の平面図であり、図3(b)は、図3(a)のB−B断面図である。ベース部材11は、平行四辺形の板状部11aと、この板状部11aから突出する円筒部11bとから構成される。板状部11aには、押え部材12の固定穴12cに対応する位置に、ネジ穴11cが2箇所設けられており、不図示のネジによって、押え部材12をベース部材11に固定することができる。板状部11aの中心部には、アンカーボルト用のボルト孔11dが設けられている。路面に設置したアンカーにアンカーボルトを螺合してベース部材11を固定することで、視線誘導標1は路面に固定される。
【0022】
図4は、視線誘導標1を道路に設置した状態を例示した断面図である。具体的には、図2の平面図のA−A断面図である。中心柱20は、中空で頭部が閉鎖された柱形状をしている。中心柱20の下端部20aは、脱落防止のために、外周方向に突出した形状になっている。図4の断面視においては、さらに外側に折れ曲がって下端部20aが反転した鉤状に形成されており、中心柱20は、基台部10からさらに抜けにくくなっている。中心柱20の断面形状は特に限定されるものではないが、全方向からの視認性と製造の簡便性より円筒状であることが好ましい。また、中心柱20は、外径が5〜15cm、肉厚が2〜10mm、より好ましくは3〜8mmであり、長さは40cm以上1.5m以下であることが好ましい。また、図1に示すように、中心柱20の上部から中央部にかけた外表面に、反射シート21を複数本巻回装着して視線誘導標1の夜間の視認性を高めている。
【0023】
中心柱20は、図4のように、その下端部20aがベース部材11と押え部材12に挟持されることにより固定されている。より詳しくは、中心柱20の下端部20aの内周はベース部材11の円筒部11bの外周と嵌合し、中心柱20の下端部20aの外周は押え部材12の孔部12dの内面と嵌合しており、押え部材12の下部内面とベース部材11の下部外周とが嵌合することで中心柱20の下部を支持している。
【0024】
視線誘導標1を路面に固定する場合、ベース部材11の上面側からボルト孔11dにアンカーボルト30を挿入し、路面に設置したアンカー31にアンカーボルト30を螺合してベース部材11を固定する。本発明の視線誘導標1は、基台部10(ベース部材11及び押え部材12)が平行四辺形なので、道路の中央分離線(センターライン)などに沿って位置決めしやすく、道路の進行方向に沿って設置するのが容易である。
【0025】
中心柱20は、熱可塑性エラストマーにより構成される。熱可塑性エラストマー(TPE)としては、公知の熱可塑性エラストマーは特に限定なく使用できる。具体的にはポリエステル系TPE、ポリウレタン系TPE(TPU)、ポリオレフィン系TPE(TPO)、ポリスチレン系TPE(TPS)、ポリアミド系TPE(TPAE)、アイオノマー系TPE、ジエン系TPE、ポリ塩化ビニル系TPE(TPVC)、ポリ塩化ビニル/ポリウレタンポリマーアロイTPE、熱可塑性樹脂とゴムとの混合物等が例示される。またこれらの熱可塑性エラストマーにゴムを混合ないし微粒子状で分散した熱可塑性エラストマーも使用可能である。これらのTPEは単独で使用可能であり、必要に応じて2種以上を混合使用してもよい。熱可塑性エラストマーは、硬度がJIS−A硬度にて98以下であることが好ましく、93以下であることがより好ましい。硬度が高すぎると繰返しの屈曲により破損する場合が生じる。熱可塑性エラストマーの硬度は、通常JIS−A硬度にて50以上である。上述の熱可塑性エラストマーの中でも、耐久性が優れていることから、ポリウレタン系TPEの使用が特に好ましい。
【0026】
ベース部材11及び押え部材12は、熱可塑性樹脂により構成される。熱可塑性樹脂としては、公知のものを限定なく使用可能である。具体的にはPET、PBT、ポリプロピレンテレフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールとテレフタル酸のポリエステル等のポリアルキレンテレフタレート樹脂、ポリエチレンナフタレート、ポリプロピレンナフタレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールとナフタレンジカルボン酸とのポリエステル等のポリアルキレンナフタレート樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリフェニレンサルファイド、ポリウレタン樹脂、PFA等のフッ素系樹脂、ABS樹脂等並びにこれらの樹脂から選択される樹脂のブレンド樹脂、ポリマーアロイ等が例示される。ベース部材11及び押え部材12を構成する熱可塑性樹脂は、同じであっても異なった材料であってもよい。また、押え部材12は、上記熱可塑性エラストマーと併用することも可能である。
【0027】
<第2実施形態>
本発明に係る視線誘導標1の基台部10は、種々の太さの中心柱20を固定することができる。図5は、第2実施形態の視線誘導標1を示す断面図であり、上記の第1実施形態の中心柱20よりも外径の小さい中心柱20を基台部10に固定する例を示す。このとき、基台部10は、ベース部材11、押え部材12の他に、アダプタ部材14を備える。アダプタ部材14は、押え部材12の孔部12dの内周と、中心柱20の外周との間の隙間を埋めるものであり、中心柱20の外径に合わせて適宜設計される。このように、アダプタ部材14の形状を変更することで、視線誘導標1は、種々の中心柱20を備えるように構成することができる。なお、この実施形態では、中心柱20の下部は、ベース部材11にネジで固定されており、中心柱20とベース部材11は一体として、アンカーボルト30によりアンカー31に固定されている。
【0028】
<第3実施形態>
さらに、基台部10の上面部、すなわち押え部材12の孔部12dを塞ぐことで、中心柱20の無い、いわゆる道路鋲の形態をした視線誘導標1を形成することもできる。図6は、第3実施形態の視線誘導標1を示す断面図である。図に示すように、押え部材12の孔部12dを、蓋部材15によって塞いでいる。
【符号の説明】
【0029】
1 視線誘導標
10 基台部
11 ベース部材
12 押え部材
12a 上面部
12b 斜面部
12d 孔部
13 反射体
14 アダプタ部材
15 蓋部材
20 中心柱
20a 下端部
30 アンカーボルト
31 アンカー


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路に設置される視線誘導標の基台部であって、
平行四辺形の上面部と、
前記上面部の4辺から外側下方に向かって接地面まで延びる4つの斜面部と、
前記斜面部の少なくとも1面に配設された反射体と、を備え、
前記上面部の1組の対辺が、道路の進行方向に沿うように設置されるとき、前記反射体は、前記上面部の他の1組の対辺から延びる前記斜面部に配設されることを特徴とする視線誘導標の基台部。
【請求項2】
前記反射体が配設される斜面部と前記接地面との角度が20〜40°であることを特徴とする請求項1に記載の視線誘導標の基台部。
【請求項3】
前記上面部に孔部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の視線誘導標の基台部。
【請求項4】
請求項1に記載の基台部に、中心柱が立設された視線誘導標。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−270551(P2010−270551A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−125344(P2009−125344)
【出願日】平成21年5月25日(2009.5.25)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】