説明

視線誘導灯

【課題】密巻きコイルばねの弾性変形により、接触、衝突時の衝撃が吸収できる視線誘導灯であって、支柱軸周りの角度調整と固定が容易なものを提供する。
【解決手段】視線誘導灯1は、発光部4を有する灯体2と、この灯体2の下部に接続される第1のニップル6、支持パイプPの上部に接続される第2のニップル8、ニップル8の上部に接続される第3のニップル9、ニップル8,9を固定する固定カバー10、ニップル6,9間に介設される密巻きコイルばね7、この密巻きコイルばね7を被覆する柔軟な防水チューブ11を具備する。ニップル9は、ニップル8の上部に軸周りの相対回転角度を調整可能に接続さる。ニップル8の接続鍔部28は、上端面に多数の放射状凹凸条からなる環状のスラスト係合部30を有する。ニップル9の接続鍔部31は、下端面にニップル8のスラスト係合部30に係合する対応スラスト係合部34を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カーブしている道路の路肩等に沿って設置され道路線形を点灯表示することにより、車輌運転者の視線を誘導する自発光式の誘導灯に関する。
【背景技術】
【0002】
従来からカーブしている道路の路肩等には、道路の線形を表示する視線誘導灯が路肩等に沿って所定の間隔をおいて設置されている。このような視線誘導灯のうち、自発光式のものとして、特許文献1に記載されたものが知られている。
この視線誘導灯は、光源を内蔵する発光部と、道路の路肩等にアンカーボルトによって固定される支持台とを備える。発光部は、運転者の視線に対応する所定の高さで、支持台上に支柱を介して設置される。発光部の下端と、支持台の上端にニップルが設けられる。これら上下のニップルの螺旋溝に密巻きコイルばねの上下端部がそれぞれ螺合され、支持台に対し発光部が前後左右方向に傾倒自在に接続される。密巻きコイルばねは、柔軟性を有する防水チューブで被覆される。この防水チューブを介して各ニップルをそれぞれ覆うように、上下一対のカップ状キャップが装着される。このような構成において、密巻きコイルばねは発光部を弾性的に支持し、その弾性変形により前後左右方向に傾倒することで接触、衝突時の衝撃が吸収される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−323420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
視線誘導灯は、カーブする道路を走行する車両の運転者の視線に対応するように、発光部の支柱軸周りの角度を調整して固定する必要がある。しかしながら、上記従来の視線誘導灯は、この支柱軸周りの角度調整と固定が容易でなく、また軸周り固定のためのナットの締めすぎによる破損が生じやすい。
したがって、この出願に係る発明は、密巻きコイルばねが灯体を弾性的に支持し、その弾性変形により前後左右方向に傾倒、復元することで接触、衝突時の衝撃が吸収できる視線誘導灯であって、支柱軸周りの角度調整と固定が容易で、固定ナットの締めすぎによる破損が生じにくい視線誘導灯を提供することを目的としている。
加えて、この出願に係る発明は、灯体と第1のニップルとが異種金属で構成される場合にも、相互間に電蝕を生じない視線誘導灯を提供することを目的としている。
さらに、この出願に係る発明は、貫通する電源ケーブルを確実に保護すると同時に、密巻きコイルばねの折り曲げの繰り返しによる塑性変形を効果的に防止できる視線誘導灯を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
以下、添付図面の符号を参照して説明するが、本発明はこれに限定されるものではない。
上記課題を解決するための、この出願に係る発明の視線誘導灯1は、道路の線形を点灯表示するために、道路の路肩等に沿って支持体上に支持されて設置される視線誘導灯であって、発光部4を有する灯体2と、この灯体2の下部に接続される第1のニップル6と、支持パイプPの上部に接続される第2のニップル8と、このニップル8の上部に接続される第3のニップル9と、第2のニップル8と第3のニップル9とを固定する固定カバー10と、第1のニップル6と第3のニップル9との間に介設される密巻きコイルばね7と、この密巻きコイルばね7を被覆する柔軟な防水チューブ11とを具備する。第1のニップル6は、下部の外周に螺旋溝20が形成されたばね受け筒部17を有する。第3のニップル9は、第2のニップル8の上部に軸周りの相対回転角度を調整可能に接続され、上部の外周に螺旋溝37が形成されたばね受け筒部33を有する。密巻きコイルばね7は、上部において第1のニップル6の螺旋溝20に螺合され、下部において第3のニップル9の螺旋溝37に螺合される。第2のニップル8は、支持パイプPの上部に螺合される雄ねじ筒部25と、この雄ねじ筒部25の上部に設けられる操作鍔部27と、この操作鍔部27の上部に設けられ外周にねじ部26を有すると共に上端面に所定の回転角度刻みで放射状に形成された多数の凹凸条からなる環状のスラスト係合部30を有する接続鍔部28とを具備する。第3のニップル9は、下端面に第2のニップル8のスラスト係合部30に係合する多数の凹凸条からなる環状の対応スラスト係合部34が形成された接続鍔部31を下端部にさらに具備する。固定カバー10は、第2のニップル8の外周ねじ部26に螺合するように下方へ開放した雌ねじ筒部38と、この雌ねじ筒部38の上端部に位置して下面が第3のニップル9の接続鍔部28の上面に当接する内側フランジ部39と、第3のニップル9の接続鍔部28より上部を上方へ貫通させる中心開口41とを具備し、雌ねじ筒部38を第2のニップル8の外周ねじ部26に螺合することにより第3のニップル9と第2のニップル8とをスラスト方向に締め付け固定可能に構成される。
【発明の効果】
【0006】
この出願に係る発明の視線誘導灯によれば、密巻きコイルばねの弾性変形により前後左右方向に傾倒、復元することで接触、衝突時の衝撃を吸収して破損を防止でき、支柱軸周りの角度調整と固定が容易かつ確実であり、固定ナットの締めすぎによる破損が生じにくい等の効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【図1】本発明に係る視線誘導灯の正面図である。
【図2】図1の視線誘導灯の縦断側面図である。
【図3】図1の視線誘導灯における第1のニップルの一部を切断した正面図である。
【図4】図1の視線誘導灯におけるブッシングの一部を切断した正面図である。
【図5】図1の視線誘導灯における第2のニップルの一部を切断した正面図である。
【図6】図1の視線誘導灯における第2のニップルの平面図である。
【図7】図1の視線誘導灯における第3のニップルの一部を切断した正面図である。
【図8】図1の視線誘導灯における第3のニップルの平面図である。
【図9】図1の視線誘導灯における第3のニップルの底面図である。
【図10】図1の視線誘導灯における固定カバーの一部を切断した正面図である。
【図11】図1の視線誘導灯における固定カバーの底面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図面を参照してこの発明の実施の形態を説明する。
図1において、視線誘導灯1は、灯体2と、この灯体2を前後左右に傾倒、復元自在に支持する弾性支柱3とを具備し、支柱3の下端部が図示しないコンクリート基礎等に固定された支持パイプPに固定される。灯体2は、発光部4を備え、その下側中央には、接続筒部5が一体に突設されている。支柱3と接続筒部5内を電源ケーブルCが貫通している。
【0009】
図2において、支柱3は、接続筒部5の下端に接続され、第1のニップル6、密巻きコイルばね7、第2のニップル8、第3のニップル9、固定カバー10、防水チューブ11を具備する。
【0010】
図2、図3において、灯体の接続筒部5の下端部には、接続用の雄ねじ筒部12が形成される。第1のニップル6は、合成樹脂製のブッシング13を介して雄ねじ筒部12に接続される。図3において、第1のニップル6は、上部に内周ねじ14を有するねじ筒部15を具備し、その下部に、円筒状のチューブ受け部16を介してばね受け筒部17を具備する。チューブ受け部16は、ねじ筒部15より小径で、段部18を介して下方へ延びる。ばね受け筒部17は、チューブ受け部16より小径で、段部19を介して下方へ延びる。ばね受け筒部17の外周には、螺旋溝20が形成される。ねじ孔48は、止めねじを螺合して後記ブッシング13を回り止めするためのものである。
【0011】
図2、図4において、ブッシング13は、灯体2の雄ねじ筒部12に螺合する内周ねじ21を有すると共に、第1のニップル6に螺合する外周ねじ22を有するねじ筒部23と、このねじ筒部23の上端部に設けられたフランジ部24とを具備する。フランジ部24は、雄ねじ筒部12と第1のニップル6との間に介在し両者間を電気的に絶縁する。例えば、灯体2がアルミ合金で形成され、ニップル6がステンレス鋼で形成される場合のように、両者が異種金属で構成される場合に、ブッシング13により、両者間の電蝕を回避できる。
【0012】
図2、図5,6において、第2のニップル8は、支持パイプPの上部に螺合される外周ねじ26を有する雄ねじ筒部25と、この雄ねじ筒部25の上部に設けられる6角の操作鍔部27と、この操作鍔部27の上部に設けられる円筒状の接続鍔部28とを具備する。接続鍔部28は、外周にねじ部29を有すると共に、上端面に、所定の回転角度刻みで放射状に形成された多数の凹凸条からなる環状のスラスト係合部30を有する。
【0013】
図2、図7ないし図9において、第3のニップル9は、第2のニップル8の上部に軸周りの相対回転角度を調整可能に接合される接続鍔部31を下端に有し、中間にチューブ受け部32、上部にばね受け筒部33を有する。接続鍔部31は、下端面に、第2のニップル8のスラスト係合部30に係合する多数の凹凸条からなる環状の対応スラスト係合部34を有する。ニップル8,9のスラスト係合部30,34を凹凸条の1条ずつずらして係合させることにより、軸周りに2.5°ずつ相互角度を変化させることができる。円筒状のチューブ受け部32は、接続鍔部31より小径で、段部35を介して接続鍔部31の上部に設けられる。ばね受け筒部33は、チューブ受け部32より小径で、段部36を介して上方へ延び、外周に螺旋溝37を有する。
【0014】
図2、図10,11において、固定カバー10は、外形六角の雌ねじ筒部38と、それの上端の内側フランジ部39とを具備する。雌ねじ筒部38は、内周ねじ部40を有し、図5に示す第2のニップル8の接続鍔部28の外周ねじ部29に螺合するように下方へ開放する。フランジ部38の中心の開口41から図7に示す第3のニップル9の接続鍔部31より上部を上方へ貫通させ、段部35をOリング42を介してフランジ部39の下面に当接させるように、雌ねじ筒部38をニップル8の外周ねじ部29に螺合することにより、ニップル8,9をスラスト方向に締め付け固定する。ニップル8,9のスラスト係合部30,34の凹凸条同士が噛み合うので、相互の軸周り方向の固定は安定的で、固定カバー10による過度な締め付けは回避できる。
【0015】
図2において、密巻きコイルばね7は、第1のニップル6と第3のニップル9との間に介設され、上部において第1のニップル6の螺旋溝20に螺合され、下部において第3のニップル9の螺旋溝37に螺合される。
【0016】
図2において、防水チューブ11は、上下両端部の円筒部43,44と中間部の蛇腹部45とを有し、密巻きコイルばね7を被覆するように装着され、上端の円筒部43が第1のニップル6のチューブ受け部16の外周に気密に嵌合され、下端の円筒部45が第3のニップル9のチューブ受け部32の外周に気密に嵌合される。
【0017】
図2において、電源ケーブルCを被覆する弾性保護チューブ46が、第1のニップル6のばね受け筒部17内から密巻きコイルばね7、第3のニップル9及び第2のニップル8を貫通し、下端部が支持パイプP内へ突出する。下端部は、電源ケーブルCの絶縁被覆上にワッシャ47で固定される。保護チューブ46は、ネオプレンゴム等の弾性樹脂からなり、密巻きコイルばね7が外力を受けて屈曲した時に、ケーブルCがニップル6,8,9の内周等に擦れて損傷を受けるのを防止すると共に、密巻きコイルばね7を補強する。
【符号の説明】
【0018】
1 視線誘導灯
2 灯体
3 支柱
4 発光部
5 接続筒部
6 第1のニップル
7 密巻きコイルばね
8 第2のニップル
9 第3のニップル
10 固定カバー
11 防水チューブ
12 雄ねじ筒部
13 ブッシング
14 内周ねじ
15 ねじ筒部
16 チューブ受け部
17 ばね受け筒部
18 段部
19 段部
20 螺旋溝
21 内周ねじ
22 外周ねじ
23 ねじ筒部
24 フランジ部
25 雄ねじ筒部
26 外周ねじ
27 操作鍔部
28 接続鍔部
29 外周にねじ部
30 スラスト係合部
31 接続鍔部
32 チューブ受け部
33 ばね受け筒部
34 スラスト係合部
35 段部
36 段部
37 螺旋溝
38 雌ねじ筒部
39 内側フランジ部
40 内周ねじ部
41 開口
42 Oリング
43 円筒部
44 円筒部
45 蛇腹部
46 弾性保護チューブ
47 ワッシャ
48 ねじ孔
C 電源ケーブル
P 支持パイプ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
道路の線形を点灯表示するために、道路の路肩等に沿って支持体上に支持されて設置される視線誘導灯であって、
発光部を具備する灯体と、
この灯体の下部に接続され、外周に螺旋溝が形成されたばね受け筒部を下部に有する第1のニップルと、
前記支持体に垂直に固定される支持パイプの上部に接続される第2のニップルと、
この第2のニップルの上部に軸周りの相対回転角を度調整可能に接続され、外周に螺旋溝が形成されたばね受け筒部を上部に有する第3のニップルと、
この第3のニップルと前記第2のニップルとを固定する固定カバーと、
前記第1のニップルと前記第3のニップルとの間に介設され、上部において第1のニップルの螺旋溝に螺合され、下部において第3のニップルの螺旋溝に螺合される密巻きコイルばねと、
この密巻きコイルばねを被覆する柔軟性を有する防水チューブとを具備し、
前記第2のニップルは、前記支持パイプの上部に螺合される雄ねじ筒部と、この雄ねじ筒部の上部に設けられる操作鍔部と、この操作鍔部の上部に設けられ外周にねじ部を有すると共に上端面に所定の回転角度刻みで放射状に形成された多数の凹凸条からなる環状のスラスト係合部を有する接続鍔部とを具備し、
前記第3のニップルは、下端面に前記第2のニップルのスラスト係合部に係合する多数の凹凸条からなる環状の対応スラスト係合部が形成された接続鍔部を下端部にさらに具備し、
前記固定カバーは、前記第2のニップルの外周ねじ部に螺合するように下方へ開放した雌ねじ筒部と、この雌ねじ筒部の上端部に位置して下面が前記第3のニップルの接続鍔部の上面に当接する内側フランジ部と、第3のニップルの接続鍔部より上部を上方へ貫通させる中心開口とを具備し、雌ねじ筒部を第2のニップルの外周ねじ部に螺合することにより第3のニップルと第2のニップルとをスラスト方向に締め付け固定可能に構成されることを特徴とする視線誘導灯。
【請求項2】
前記灯体は、下部に接続用の雄ねじ筒部を具備し、
前記灯体と前記第1のニップルとの間には合成樹脂製のブッシングが介設され、当該ブッシングは、灯体の前記雄ねじ筒部に螺合する内周ねじを有すると共に外周ねじを有するねじ筒部と、このねじ筒部の上端部に設けれられ雄ねじ筒部と第1のニップルとの間に介在するフランジ部とを具備し、
前記第1のニップルは、前記ブッシングのねじ筒部の外周ねじに螺合するねじ筒部を上端部に具備することを特徴とする請求項1に記載の視線誘導灯。
【請求項3】
前記第1のニップルは、前記ねじ筒部の下部にこれより小径で段部を介して下方へ延びる円筒状のチューブ受け部をさらに具備し、このチューブ受け部の下部にこれより小径の前記ばね受け筒部が段部を介して下方へ延び、
前記第3のニップルは、前記接続鍔部の上部にこれより小径で段部を介して上方へ突出する円筒状のチューブ受け部をさらに具備し、このチューブ受け部の上部にこれより小径の前記ばね受け筒部が段部を介して上方へ延び、
前記防水チューブの上端部が前記第1のニップルのチューブ受け部の外周に気密に嵌合され、下端部が前記第3のニップルのチューブ受け部の外周に気密に嵌合されることを特徴とする請求項2に記載の視線誘導灯。
【請求項4】
電源ケーブルを被覆し、前記第1のニップルのばね受け筒部内から前記密巻きコイルばね、前記第3のニップル及び前記第2のニップルを貫通して前記支持パイプ内へ突出し、下端が電源ケーブルの絶縁被覆上に固定される弾性保護チューブをさらに具備することを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の視線誘導灯。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−47428(P2013−47428A)
【公開日】平成25年3月7日(2013.3.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−186513(P2011−186513)
【出願日】平成23年8月29日(2011.8.29)
【出願人】(509274441)株式会社ネクスコ・エンジニアリング東北 (7)
【出願人】(000108708)タキゲン製造株式会社 (256)
【Fターム(参考)】