説明

視覚検査装置の評価システム

【課題】正事例および負事例の実物のワークを入手することなく、広範囲の色斑を有する負事例のワークを容易に再現して評価する視覚検査装置の評価システムを提供する。
【解決手段】色斑データ生成部23は、既存の視覚検査装置100で負事例と判断されたワークから色斑データを生成する。これにより、色斑データは、設計者などが作成しなくても、既存の視覚検査装置100の判断結果から入手される。負事例画像合成部25は、ワークデータに基づいて作成したワークの疑似3D画像に色斑データに基づく色斑テクスチャ画像を貼り付け、3D負事例画像を擬似的に合成する。視覚検査プログラムの実行によって実現される視覚検査装置は、この任意に生成した3D負事例画像を用いて評価される。これにより、視覚検査装置は、幅広い種類の色斑が付された負事例のワークについて評価される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、視覚検査装置の評価システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えばロボットのアームの先端に取り付けたカメラや検査設備に固定されたカメラによって検査対象であるワークを撮影し、この撮影した画像を用いてワークを検査する視覚検査装置が公知である。このような視覚検査装置は、実際の使用時の検査設備において適正な検査結果が得られるように事前に検査結果の評価、および判断基準を調整する必要がある。例えば、視覚検査装置は、ワークの塗装が適正であるか否か、すなわちワークに色斑があるか否かについて、ワークを撮影した画像を用いて判断している(人の肌の色斑をシミュレーションで生成する技術について特許文献1参照)。
【0003】
ところで、視覚検査装置は、システムを構築する際、検査において合格となる正事例のワークだけでなく、検査において不合格となる負事例のワークを用いて、その検査機能が適切であるかを評価しなければならない。このうち、正事例は合格基準のワークを撮影した画像をサンプルとして準備すれば足りるのに対し、負事例は幅広い事例が想定され数多くの負事例のサンプルおよび画像を必要とする。すなわち、負事例は、法則性のあるものであれば人が予測することができるので容易に作成することができる。一方、特に色斑などのように人の感性が大きく影響し客観的な判断が難しい負事例の場合、人が予測可能な範囲で色斑についての負事例を作成しても、この負事例による視覚検査装置の評価は客観性のないものとなる。そのため、視覚検査装置の評価は、客観性が乏しく偏ったものとなる。その結果、視覚検査装置の評価の精度を高めるためには、人の予測の範囲を超えた自然な負事例を多数収集する必要がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−293214号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
そこで、本発明の目的は、正事例および負事例の実物のワークを入手することなく、人の予測を超えた多様な色斑の負事例の収集を容易にするとともに、評価の精度が高い視覚検査装置の評価システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
請求項1記載の発明では、色斑データ生成手段は、既存の検査ラインのカメラで撮影した画像データを取得している。そして、色斑データ生成手段は、取得した画像データから既存の検査ラインで正事例または負事例の判断がされた検査対象に生じている色斑を抽出して色斑データを生成する。すなわち、色斑データは、既存の正事例と負事例とを比較することにより生成される。負事例画像合成手段は、ワークデータ取得手段で取得したワークデータに基づいて3D画像生成手段で生成した疑似3D画像に、色斑データ生成手段で生成され色斑データ蓄積手段に蓄積されている色斑データに基づいて生成した画像を貼り付ける。これにより、負事例画像合成手段は、色斑を有する擬似的なワークの3D負事例画像を合成する。疑似撮影画像作成手段は、負事例画像合成手段で合成した擬似的なワークの3D負事例画像を、視覚検査装置のカメラの撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影し、疑似撮影画像を作成する。そして、検査手段は、この作成した疑似撮影画像を検査対象疑似画像として取得して、予め設定されている検査プログラムにしたがって検査対象疑似画像を用いてワークを擬似的に検査する。なお、本明細書中において、「3D」とは「三次元:3dimension」を意味する。
【0007】
請求項1では、色斑データ生成手段は、既存の検査ラインで正事例または負事例の判断がされた検査対象の色斑を抽出している。そのため、色斑データは、実際の既存のラインにおいて、カメラで撮影した画像を用いて正事例である負事例であるかが判断されたデータから生成される。既存のラインから色斑データを取得する場合、この既存のラインと評価の対象となる視覚検査装置との間には、例えば検査対象となるワークが相違する可能性、ワークへの自然光の当たり方の相違、および検査用の光源の位置の相違すなわち人工光の当たり方の相違など複数の撹乱要素が含まれる。そのため、既存のラインから取得した色斑データは、評価の対象となる視覚検査装置において人の予測を超えた多様性を含むこととなる。その結果、色斑データ生成手段で生成する色斑データは人の感性および人の予測を超えたものとなる。また、負事例画像合成手段は、ワークデータに基づいてワークの疑似3D画像を作成し、この疑似3D画像に、既に抽出して蓄積した色斑データに基づく画像を貼り付けることにより、3D負事例画像を擬似的に合成する。そのため、ワークデータを入力し蓄積した色斑データを合成すれば、任意のワークに、任意の色斑が生じた擬似的な3D負事例画像を合成することができる。そして、任意に生成した3D負事例画像を用いて、視覚検査装置の評価が実行される。これにより、色斑データを既存のラインから数多く蓄積することにより、擬似的なワークの3D画像に色斑データに対応する色斑画像を貼り付けるだけで、容易に負事例のワークに相当する3D負事例画像が生成される。この3D負事例画像を利用することにより、視覚検査装置は、幅広い色斑が付された負事例のワークについて評価される。したがって、正事例および負事例の実物のワークを入手することなく、人の予測を超えた多様な色斑の負事例を容易に収集することができ、視覚検査装置の検査精度および評価精度を高めることができる。
【0008】
請求項2記載の発明では、色斑データ生成手段は、既存のラインで撮影した画像に含まれる輝度情報の差分に基づいて色斑データを生成している。具体的には、色斑データ生成手段は、正事例であると判断された検査対象の画像データの輝度情報と、負事例であると判断された検査対象の画像データの輝度情報とから、差分を算出する。このとき、各画像データの輝度情報は、ワークにおいて同一の位置に相当する画素から抽出する。これにより、色斑データは、正事例の画像データの輝度と負事例の画像データの輝度との差を算出するという簡単な処理で入手される。したがって、色斑データの入手および蓄積を容易にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】一実施形態による視覚検査装置の評価システムを示すブロック図
【図2】一実施形態による評価システムにおける色斑画像を抽出する手順を示す模式図
【図3】一実施形態による評価システムにおける3D負事例画像の合成の手順を示す模式図
【図4】一実施形態による評価システムにおける検査データファイルの構造を示す模式図
【図5】一実施形態による評価システムの処理の流れを示す概略図
【図6】一実施形態による評価システムの処理を示す模式図
【図7】視覚検査装置の一例を示す概略図
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、一実施形態による視覚検査装置の評価システムを図面に基づいて説明する。
(視覚検査装置)
まず、図7に示す視覚検査装置100について説明する。なお、図7に示す視覚検査装置100は、実体的なものであり、本実施形態の視覚検査装置の評価システムと直接の関係はないが、以降の理解を容易にするために説明する。視覚検査装置100は、検査設備101、カメラ102および処理装置103を備えている。検査設備101では、実際に検査対象となるワーク104が検査される。カメラ102は、検査設備101に設けられている。カメラ102は、検査設備101に固定、または検査設備101に設けられているロボット105に取り付けられている。カメラ102を検査設備101に固定する場合、ワーク104は常に一定の位置から撮影される。一方、カメラ102をロボット105に取り付ける場合、ワーク104は周囲の任意の位置から撮影される。カメラ102を検査設備101に固定するか、ロボット105に取り付けるかは、ワーク104の検査の種類に応じて任意に選択することができる。
【0011】
処理装置103は、例えばパーソナルコンピュータ(以下、「パソコン」)などで構成されており、カメラ102で撮影したワーク104の撮影画像に基づいてワーク104の検査を実施する。処理装置103は、予め設定されている視覚検査プログラムにしたがってワーク104の検査を実施する。具体的には、処理装置103は、視覚検査プログラムを実行することにより、カメラ102で撮影したワーク104の画像を取得する。この場合、処理装置103は、カメラ102で撮影した実際のワーク104の画像すなわちワークの実像を取得する。そして、処理装置103は、取得したワーク104の画像に基づいて、ワーク104の検査を実施する。ここで検査項目としては、例えばワーク104の変色や塗装不良などを原因とする色斑を含んでいる。
【0012】
以上のような視覚検査装置100は、実際にカメラ102でワーク104を撮影する。そのため、視覚検査装置100を評価する場合、視覚検査装置100を実際に構築し、ワーク104の実物を利用した実像の画像を取得する必要がある。このうち、実物のワーク104のうち検査に合格するワーク、いわゆる正事例のワークおよびその画像は、製品として流通するワークを入手することにより容易に取得可能である。一方、視覚検査装置100およびこれを用いてワーク104を検査する視覚検査プログラムの検査精度を高めるためには、正事例のワークだけでなく、検査に不合格となるワーク、いわゆる負事例のワークについても、視覚検査装置100および視覚検査プログラムがどのような挙動を示すか評価する必要がある。しかしながら、負事例のワークは、例えば正事例のワークに、検査不合格の原因となる色斑をあえて付加して作成しなければならない。そのため、視覚検査装置100および視覚検査プログラムの評価のためだけに、あえて正事例のワークに色斑を形成して負事例を確保しなければならず、現実的でない。また、想定される負事例のすべてについて負事例のワークを入手することも困難である。
【0013】
そこで、以下に説明する本実施形態の視覚検査装置100の評価システムは、負事例のワークをあえて作成することなく、視覚検査装置100を評価することを目的としている。
(本実施形態による視覚検査装置の評価システム)
図1に示すように本実施形態の評価システム10は、制御装置11、画像生成装置12、検査装置13、記憶装置14および表示装置15を備えている。評価システム10は、図7に示すような視覚検査装置100を仮想的な世界に擬似的に構築し、この構築した仮想的な視覚検査装置100、および視覚検査装置100で実行される視覚検査プログラムの評価を実施する。
【0014】
評価システム10は、例えばパソコンにおいて、評価プログラムを実行することによりソフトウェア的に実現されている。なお、評価システム10は、ソフトウェア的な実現だけでなく、専用の電子回路によりハードウェア的に実現してもよい。制御装置11は、例えばCPU、ROMおよびRAMを有するマイクロコンピュータを含むパーソナルコンピュータで構成されており、上述の視覚検査プログラムおよび評価プログラムを実行することにより、評価システムの全体を制御する。
【0015】
画像生成装置12は、制御装置11で実行される視覚検査プログラムによってソフトウェア的に実現されている。画像生成装置12は、ワークデータ取得部21、3D画像生成部22、色斑データ生成部23、色斑データ蓄積部24、負事例画像合成部25、疑似撮影画像作成部26および疑似撮影画像送信部27を有している。ワークデータ取得部21は、ワーク104を擬似的に形成する基礎となるワークデータを取得する。ワークデータ取得部21は、入力部28から入力されたワークデータを取得する。入力部28は、ワークデータを構成する各種のパラメータが入力される。入力部28は、例えばキーボードやマウスなどによる機械的な入力、およびCDやHDDなどによる光学的または磁気的な入力が行われる。ワークデータ取得部21で取得されるワークデータは、検査対象となるワーク104を擬似的に形成する基礎となるデータである。ワークデータは、例えばワークの形状、寸法および表面の状態などを含んでいる。ワークデータは、例えばワーク104の3D−CADによるデータによって3次元のデータとして入力される。なお、ワークデータ取得部21は、ワークデータに限らず周辺データをあわせて取得してもよい。周辺データは、検査条件を擬似的に形成する基礎となるデータである。周辺データは、例えばワークを照射する光の方向、強さおよび色温度など、検査設備101において時々刻々と変化する検査環境に関するデータを含んでいる。
【0016】
3D画像生成部22は、ワークデータ取得部21で取得したワークデータからワークの疑似3D画像を生成する。これにより、3D画像生成部22は、実際の検査設備101で検査される対象となるワーク104に近似した疑似3D画像を生成する。この場合、3D画像生成部22は、周辺データも考慮して疑似3D画像を生成してもよい。このように、3D画像生成部22は、ワークデータおよび必要に応じて周辺データに基づいてシミュレートしたワークを疑似3D画像として生成する。
【0017】
色斑データ生成部23は、色斑データ取得部231および色斑データ算出部232を有している。色斑データ取得部231は、既存の検査ラインすなわち図7に示すような実体的な視覚検査装置100から画像データを取得する。すなわち、既存の検査ラインを構成する視覚検査装置100は、上述のようにカメラ102を備えている。この視覚検査装置100は、カメラ102で検査対象となるワーク104を撮影することにより、正事例または負事例の判断を行っている。色斑データ取得部231は、この視覚検査装置100の処理装置103から正事例または負事例の判断が行われたワーク104について、カメラ102で撮影した画像データを取得する。具体的には、色斑データ取得部231は、既存の視覚検査装置100の処理装置103から、この視覚検査装置100で正事例と判断されたワークを撮影した正事例画像データ、および負事例と判断されたワークを撮影した負事例画像データを取得する。既存の視覚検査装置100から取得した画像データは、制御装置11の図示しないRAMなどに一時的に保管される。
【0018】
色斑データ算出部232は、色斑データを生成する。すなわち、色斑データ算出部232は、既存の視覚検査装置100から取得された正事例画像データと負事例画像データとから、これらの画像データに含まれる輝度情報の差分を算出する。図2に示すように、色斑のない正事例のワーク31と、色斑のある負事例のワーク32とは、色斑33の部分において、撮影した画像の同一の部分で色彩や色調に差が生じる。そのため、正事例のワーク31を撮影した正事例画像データと、負事例のワーク32を撮影した負事例画像データとの間には、同一の部分すなわち同一の画素において輝度に差が生じる。そこで、色斑データ算出部232は、正事例画像データおよび負事例画像データに含まれる輝度情報の差分を算出し、取得した負事例のワークに対応する色斑データを生成する。すなわち、色斑データ算出部232は、図2に示すように正事例のワーク31の正事例画像と、負事例のワーク32の負事例画像との輝度の差から、色斑33を抽出する。そして、色斑データ算出部232は、抽出した色斑33に対応する色斑画像34、およびこの色斑画像34のデータである色斑データを生成する。
【0019】
色斑データ生成部23は、既存の視覚検査装置100において検査対象のワーク104が負事例であると判断されるごとに、色斑データ取得部231において視覚検査装置100からその負事例のワークに対応する負事例画像データを取得する。色斑データ算出部232は、色斑データ取得部231で負事例のワークに対応する負事例画像データを取得するごとに、予め取得されている正事例のワークに対する正事例画像データとの間で輝度の差を算出する。この場合、正事例のワークに対応する正事例画像データは、基準となる正事例のワークに対応して予め取得されている。正事例のワークは、基準となる一つのデータがあればよいので、予め取得しておけばよい。したがって、既存の視覚検査装置100でワークが正事例と判断されるたびに、色斑データ取得部231で正事例のワークの正事例画像データを取得する必要はない。このように、色斑データ生成部23は、既存の視覚検査装置100において、検査対象となるワーク104が負事例であると判断されるごとに、負事例と判断されたワークから色斑を抽出して色斑データを生成する。
【0020】
色斑データ蓄積部24は、色斑データ生成部23で生成した色斑データを蓄積する。色斑データ蓄積部24は、例えばHDDなどの大容量記憶媒体を有している。色斑データ蓄積部24は、色斑データ生成部23において、検査対象のワーク104が負事例であると判断されるごとに生成された色斑データを蓄積する。一般に、既存の視覚検査装置100を流れる検査対象であるワーク104は、大部分が正事例であり、負事例の割合が小さい。これに対し、負事例のワークは、評価項目である色斑だけでも多種多様な形態が想定される。そのため、すべての負事例のワークをサンプルとして視覚検査装置100の評価のために予め用意することは困難である。本実施形態のように、既存の視覚検査装置100でワーク104が負事例であると判断されるごとに、判断の対象となったワーク104の負事例画像データを取得し、この負事例画像データから色斑データを作成することにより、検査対象のワークが負事例であると判断されるごとに色斑データが蓄積される。これにより、本実施形態の場合、既存の視覚検査装置100を稼働させて負事例のワークに対応する色斑データを蓄積することにより、負事例のワークに生じる多種多様な色斑の多くが色斑データとして容易に蓄積される。その結果、色斑のある負事例のワークに対応する色斑データを取得するために、手作業で負事例のワークを作成したり、正事例の画像を加工して負事例の画像を作成したりする必要がない。また、得られた色斑データは、色斑データの取得の基となったワークの表面形状や表面色などに関係なく、単なる色斑のみのデータとして取得される。
【0021】
負事例画像合成部25は、3D画像生成部22で生成した疑似3D画像に、色斑データ取得部231で取得し、色斑データ蓄積部24に蓄積した色斑データに基づいて生成された画像を貼り付ける。これにより、負事例画像合成部25は、疑似3D画像の一部に色斑画像を貼り付けた擬似的なワークの3D負事例画像を合成する。負事例画像合成部25は、色斑データ蓄積部24に蓄積されている色斑データを用いて色斑テクスチャ画像を作成する。具体的には、負事例画像合成部25は、図3に示すように色斑データに基づく色斑画像34を作成する。そして、負事例画像合成部25は、ワークデータから画像を合成する対象となる疑似3D画像の表面色に関するデータ35を取得する。これにより、負事例画像合成部25は、色斑画像34と疑似3D画像の表面色に関するデータ35とから、表面色に関わらず色斑のみが表現された色斑テクスチャ画像36を生成する。
【0022】
負事例画像合成部25は、生成した色斑テクスチャ画像36を、疑似3D画像として生成された擬似的なワーク104の疑似3D画像37の一部に貼り付ける。これにより、負事例画像合成部25は、色斑テクスチャ画像36と疑似3D画像37とを合成し、疑似3D画像37の表面に色斑が貼り付けられた3D負事例画像38を作成する。その結果、得られる3D負事例画像38は、あたかも色斑が生じたような負事例のワークを再現する。
【0023】
疑似撮影画像作成部26は、負事例画像合成部25で色斑テクスチャ画像36と疑似3D画像37とを合成することにより生成した3D負事例画像38から疑似撮影画像を作成する。具体的には、疑似撮影画像作成部26は、負事例画像合成部25で合成した3D負事例画像38を、実際の視覚検査装置100のカメラ102による撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影する。この場合、疑似撮影画像作成部26は、3D負事例画像38を実際のカメラ102で撮影するのではなく、あくまでも擬似的に作成した3D負事例画像38を、カメラ102の撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影する。これにより、疑似撮影画像作成部26は、3D負事例画像38を擬似的に撮影した疑似撮影画像をソフトウェア的に作成する。ここで、作成される疑似撮影画像は、3D負事例画像38を平面的な画像として撮影した2D画像である。これら、3D画像生成部22による疑似3D画像37の生成、色斑データ生成部23による色斑データの作成、負事例画像合成部25による3D負事例画像38の合成、および疑似撮影画像作成部26による疑似撮影画像の作成は、いずれも制御装置11におけるコンピュータプログラムの実行によってソフトウェア的に一連に処理される。
【0024】
疑似撮影画像送信部27は、疑似撮影画像作成部26で作成した疑似撮影画像を疑似撮影画像データとして検査装置13へ送信する。このとき、疑似撮影画像データには、疑似撮影画像のデータに加え、作成条件データが含まれている。作成条件データは、疑似撮影画像作成部26で疑似撮影画像を作成するために使用したワークデータおよび疑似撮影画像の種類を示すデータなど、疑似撮影画像を作成するために設定した条件に関するデータである。これにより、疑似撮影画像送信部27は、疑似撮影画像作成部26で疑似撮影画像が作成されると、この疑似撮影画像に相当する疑似撮影画像データを検査装置13へ送信する。
【0025】
検査装置13は、特許請求の範囲の検査手段に相当し、検査プログラム取得部41、プログラム実行部42、疑似撮影画像付与部43および検査結果送信部44を有している。検査プログラム取得部41は、例えば制御装置11の図示しない記憶部や制御装置11に接続されている外部の記憶媒体に記憶された検査プログラムを取得する。検査プログラムは、実際の視覚検査装置100におけるワーク104の検査のために予め設定されている。そのため、検査プログラム取得部41は、予め設定され、図示しない記憶部に記憶されている検査プログラムを取得する。また、検査プログラムは、評価プログラムに含まれるサブルーチンの一つとして設定されている場合もある。この場合、検査プログラム取得部41は、評価プログラムから検査プログラムを取得する。
【0026】
プログラム実行部42は、検査プログラム取得部41で取得した視覚検査プログラムを実行する。疑似撮影画像付与部43は、プログラム実行部42で実行される視覚検査プログラムへ疑似撮影画像を検査対象疑似撮影画像として付与する。すなわち、疑似撮影画像付与部43は、画像生成装置12の疑似撮影画像送信部27から送信された疑似撮影画像データを、プログラム実行部42で実行されている視覚検査プログラムへ検査対象疑似撮影画像として与える。プログラム実行部42は、視覚検査プログラムを実行することにより、疑似撮影画像付与部43から与えられた検査対象疑似撮影画像データに基づいて検査対象疑似撮影画像を検査する。そして、検査結果送信部44は、視覚検査プログラムの実行の結果として得られた検査結果を記憶装置14へ送信する。すなわち、検査結果送信部44は、視覚検査プログラムの実行によって検査対象疑似撮影画像が検査されると、この検査結果を検査結果データとして記憶装置14へ送信する。
【0027】
記憶装置14は、記憶領域部51、受理部52および対応部53を有している。記憶領域部51は、例えばHDDなどの大容量記憶媒体で構成されており、画像生成装置12および検査装置13から送信された各種のデータを記憶する。なお、色斑データ蓄積部24や検査プログラムなどを記憶する記憶部は、この記憶装置14と共用してもよい。受理部52は、検査装置13の検査結果送信部44から各種のデータを取得し、取得した各種のデータを記憶領域部51に書き込む。
【0028】
対応部53は、受理部52で取得した各種のデータを対応させる、すなわち関連づけをする。具体的には、対応部53は、画像生成装置12の疑似撮影画像送信部27から送信された疑似撮影画像データに、検査装置13の検査結果送信部44から送信されたその疑似撮影画像すなわち検査対象疑似撮影画像に対応する検査結果データを関連づけて記憶領域部51に記憶する。つまり、図4に示すように、検査装置13における検査対象となった検査対象疑似撮影画像61の疑似撮影画像データ62、この検査対象疑似撮影画像61の作成条件データ63、およびこの検査対象疑似撮影画像61の検査結果データ64を一つの検査データファイル65として記憶領域部51に記憶する。
【0029】
表示装置15は、例えば液晶ディスプレイなどで構成されている。表示装置15は、記憶装置14に記憶されている検査データファイル65に基づいて画像や文字を表示する。具体的には、表示装置15は、図4に示す検査データファイル65を構成する疑似撮影画像データ62に基づく画像、作成条件データ63に基づく作成条件、および検査結果データ64に基づく検査結果を表示する。
【0030】
次に、上記の構成による評価システム10の処理の流れについて図5および図6に基づいて説明する。
(色斑データの生成)
既存のラインを構成する視覚検査装置100のカメラ102は、ワーク104の画像を撮影する。視覚検査装置100は、この撮影したワーク104の画像に基づいて、正事例のワークであるか負事例のワークであるかを判断する。
【0031】
評価システム10の色斑データ取得部231は、既存の視覚検査装置100の処理装置103から正事例画像データを取得する(S101)。視覚検査装置100は、撮影されたワーク104の画像を、正事例の正事例画像データまたは負事例の負事例画像データとして処理装置103に保存する。この正事例画像データは、色斑の差分を抽出する際の基準となるデータである。そのため、基準となる正事例画像データは、一つあれば足りる。したがって、色斑データ取得部231は、処理の開始に際して、S101において既存の視覚検査装置100の処理装置103から基準となる正事例画像データを取得する。
【0032】
色斑データ取得部231は、正事例画像データを取得すると、既存の視覚検査装置100から撮影された検査対象のワーク104の画像データ、および撮影の対象となった検査対象のワーク104が正事例または負事例のいずれに該当するかを示す品質データを取得する(S102)。色斑データ取得部231は、既存の視覚検査装置100のカメラ102で検査対象のワーク104が撮影されるごとに、このワーク104の画像データ、およびこの検査対象となったワーク104の品質データを取得する。色斑データ生成部23は、視覚検査装置100の処理装置103からワーク104の画像データおよび品質データを取得すると、取得した品質データが負事例に該当するか否かを判断する(S103)。すなわち、色斑データ生成部23は、取得した画像データに対応するワーク104の品質データが負事例を示すものであるか否かを判断する。
【0033】
色斑データ算出部232は、S103において取得した画像データに対応するワーク104が負事例であると判断すると(S103:Yes)、色斑データ71を生成する(S104)。色斑データ算出部232は、S102で視覚検査装置100から取得し、S103で負事例と判断されたワーク104の画像データすなわち負事例画像データと、S101で取得した基準となる正事例のワークの正事例画像データとから色斑データ71を生成する。具体的には、図2に示すように、色斑のない正事例のワーク31と、色斑のある負事例のワーク32とは、撮影した画像において同一の部分で色彩や色調に差が生じる。そのため、正事例のワーク31を撮影した正事例画像データと、負事例のワーク32を撮影した負事例画像データとの間には、同一の部分すなわち同一の画素において輝度に差が生じる。そこで、色斑データ算出部232は、正事例画像データおよび負事例画像データに含まれる輝度情報の差分を算出し、取得した負事例のワーク32に対応する色斑画像34を抽出し、この色斑画像34に対応する色斑データ71を生成する。
【0034】
ここで、既存の視覚検査装置100は、本実施形態の評価システム10で評価する仮想的な視覚検査装置との間に複数の条件の相違が生じる。すなわち、これらの間には、例えば検査対象となるワークの相違、採光位置の相違ようなワークへの自然光の当たり方の相違、照明の設置位置のような人工光の当たり方の相違など、多種多様な相違が生じる。これらの相違は、負事例に生じる色斑についての撹乱要素つまり多様性を高める要素となる。つまり、既存の視覚検査装置100と評価システム10で評価する仮想的な視覚検査装置との間に生じる相違を、あえて色斑について人が予測できない多様性を高めることに積極的に利用することにより、既存の視覚検査装置100から取得した色斑データ71は、評価システム10で評価する仮想的な視覚検査装置において人の予測の範囲を超えた幅広い多様性を有することになる。その結果、色斑データ生成部23で生成する色斑データ71は、人の感性および人の予測を超え、評価システム10における評価の客観性を高めることに寄与する。
【0035】
色斑データ生成部23は、S104において負事例のワークについて色斑データ71が生成されると、生成した色斑データ71を色斑データ蓄積部24に蓄積する(S105)。このように、色斑データ蓄積部24は、視覚検査装置100で検査対象のワーク104が負事例であると判断されるごとに色斑データ算出部232で生成された色斑データ71を蓄積する。すなわち、既存の視覚検査装置100において、検査対象のワーク104が負事例であると判断されると、色斑データ生成部23は自動的に色斑データ71を生成し、生成した色斑データ71は色斑データ蓄積部24に蓄積される。
【0036】
色斑データ生成部23は、生成した色斑データ71を色斑データ蓄積部24に蓄積すると、正事例または負事例の判断の対象となる画像データがあるか否かを判断する(S106)。すなわち、色斑データ生成部23は、視覚検査装置100のカメラ102で次の検査対象となるワーク104が撮影され、画像データが生成されたか否かを判断する。また、色斑データ生成部23は、S103において検査対象となったワーク104が負事例でない、すなわち正事例であると判断されたときも(S103:No)、S106へ移行し、判断の対象となる次の画像データがあるか否かを判断する。色斑データ生成部23は、S106において判断の対象となる次の画像があると判断すると(S106:Yes)、S102以降の処理を繰り返す。一方、色斑データ生成部23は、S106において判断の対象となる次の画像がないと判断すると(S106:No)、色斑データ71の蓄積が不要と判断し、処理を終了する。
【0037】
(負事例画像の合成)
負事例画像合成部25は、上述の色斑データ生成部23における処理と平行して、3D負事例画像38を合成する処理を実行する。
3D負事例画像38を合成する場合、ワークデータ取得部21は、入力部28から入力されたワークデータを取得する(S201)。ワークデータは、ワーク104を擬似的に形成する基礎として、検査対象となるワーク104の3D−CADのデータとして入力される。
【0038】
3D画像生成部22および負事例画像合成部25は、S201において取得したワークデータ、およびS105において蓄積された色斑データ71を取得する(S202)。3D画像生成部22は、ワークデータ取得部21からワークデータを取得する。一方、負事例画像合成部25は、色斑データ蓄積部24に蓄積されている色斑データ71を取得する。3D画像生成部22は、ワークデータ取得部21から取得したワークデータに基づいて、疑似3D画像を生成する(S203)。すなわち、3D画像生成部22は、ワークデータを用いて実際の検査設備101で検査される対象となるワーク104に近似した疑似3D画像37を生成する。
【0039】
負事例画像合成部25は、3D負事例画像38を合成する(S204)。具体的には、負事例画像合成部25は、3D画像生成部22で生成した疑似3D画像37に、色斑データ蓄積部24に蓄積した色斑データ71に基づいて生成された色斑テクスチャ画像36を貼り付ける。これにより、負事例画像合成部25は、疑似3D画像37の一部に、色斑データ71に基づいて作成された色斑テクスチャ画像36を貼り付けた擬似的なワークの3D負事例画像38を合成する。その結果、負事例画像合成部25で合成された3D負事例画像38は、あたかも色斑が生じたような負事例のワークを再現している。
【0040】
3D負事例画像38が合成されると、疑似撮影画像作成部26は、負事例画像合成部25で合成された3D負事例画像38から疑似撮影画像72を作成する(S205)。具体的には、疑似撮影画像作成部26は、負事例画像合成部25で合成した3D負事例画像38を、実際の視覚検査装置100のカメラ102による撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影する。この場合、疑似撮影画像作成部26は、3D負事例画像38を実際のカメラ102で撮影するのではなく、あくまでも擬似的に作成した3D負事例画像38を、カメラ102の撮影範囲と一致する指定範囲から疑似的に撮影する。これにより、疑似撮影画像作成部26は、3D負事例画像38を擬似的に撮影した疑似撮影画像72をソフトウェア的に作成する。作成される疑似撮影画像72は、3D負事例画像38を平面的な画像として撮影した2D画像である。
【0041】
3D負事例画像38から疑似撮影画像72が作成されると、疑似撮影画像送信部27は、疑似撮影画像作成部26で作成した疑似撮影画像72を疑似撮影画像データとして検査装置13へ送信する(S206)。このとき、疑似撮影画像送信部27から検査装置13へ送信される疑似撮影画像データには、疑似撮影画像72の画像データに加え、作成条件データが含まれている。作成条件データは、疑似撮影画像作成部26で疑似撮影画像72を作成するために使用したワークデータおよび疑似撮影画像72の種類を示すデータなど、疑似撮影画像72を作成するために設定した条件に関するデータである。このように、疑似撮影画像作成部26で疑似撮影画像72が作成されると、疑似撮影画像送信部27はこの疑似撮影画像72に対応する疑似撮影画像データを検査装置13へ送信する。
【0042】
(検査装置の評価)
検査装置13は、疑似撮影画像72に対応する疑似撮影画像データを受け取ると、受け取った疑似撮影画像データに基づいて検査を実行する。
検査装置13は、疑似撮影画像データを用いた検査に先立って、視覚検査プログラム73を取得する(S301)。検査装置13は、例えば視覚検査プログラム73の内容が変更されたり、更新されるごとに、これを評価するために新規な視覚検査プログラム73を取得する。検査装置13は、検査プログラム取得部41を経由して新規な視覚検査プログラム73を取得する。
【0043】
検査装置13は、視覚検査プログラム73を取得すると、画像生成装置12から疑似撮影画像データを取得したか否かを判断する(S302)。すなわち、検査装置13は、画像生成装置12の疑似撮影画像送信部27から、S205で作成した疑似撮影画像データが送信されたか否かを判断する。検査装置13は、画像生成装置12から疑似撮影画像データを取得したと判断すると(S302:Yes)、視覚検査プログラム73を実行する(S303)。すなわち、検査装置13のプログラム実行部42は、画像生成装置12から疑似撮影画像データを取得すると、S301で取得した視覚検査プログラム73を実行する。一方、検査装置13の疑似撮影画像付与部43は、画像生成装置12から受け取った疑似撮影画像データを、プログラム実行部42で実行されている視覚検査プログラム73へ検査対象疑似撮影画像として与える(S304)。これにより、検査装置13は、プログラム実行部42で実行されている視覚検査プログラム73にしたがって、検査対象疑似撮影画像について検査する。その結果、検査装置13は、検査対象疑似撮影画像について検査結果を取得する(S305)。検査装置13は、画像生成装置12から疑似撮影画像データを取得していないと判断すると(S302:No)、疑似撮影画像データを受信するまで待機する。
【0044】
検査装置13は、S305において特定の検査対象疑似撮影画像についての検査結果を取得すると、他の色斑データ71に基づく疑似撮影画像データがあるか否かを判断する(S306)。すなわち、検査装置13は、まだ検査すべき疑似撮影画像データの残があるか否かを判断する。上述のように色斑データ生成部23は、検査対象のワークが負事例であると判断されるごとに、S104において色斑データ71を生成する。そして、生成された色斑データ71は、色斑データ蓄積部24に蓄積される。一方、負事例画像合成部25は、ワークの疑似3D画像37に、蓄積された色斑データ71に応じた色斑テクスチャ画像36を貼り付けて3D負事例画像38を合成する。そして、合成された3D負事例画像38は、疑似撮影画像作成部26において疑似撮影画像72として作成され、検査装置13へ送信される。したがって、検査装置13は、S105において蓄積されている色斑データ71の数に応じて作成された疑似撮影画像データを用いて評価される。このように、検査装置13を評価する対象となる疑似撮影画像データは、色斑データ71の数に応じて複数用意されている。そのため、検査装置13は、特定の色斑データ71に基づく疑似撮影画像について検査結果を取得した後、他の色斑データ71に基づく疑似撮影画像データが残っているか否かを判断する。
【0045】
検査装置13は、他の色斑データ71に基づく疑似撮影画像データがあると判断すると(S306:Yes)、S302にリターンし、他の色斑データ71に基づく疑似撮影画像データの送信を受け付ける。一方、検査装置13は、他の色斑データ71に基づく疑似撮影画像データがないと判断すると(S306:No)、すべての色斑データ71に基づく検査結果を記憶装置14へ送信する(S307)。すなわち、検査装置13の検査結果送信部44は、視覚検査プログラム73の実行によって得られた検査結果を記憶装置14へ送信する。記憶装置14は、受理部52において検査結果送信部44から送信されたデータを取得し、記憶領域部51に書き込む。記憶装置14の対応部53は、画像生成装置12の疑似撮影画像送信部27から送信された疑似撮影画像データに、検査装置13の検査結果送信部44から送信されたその疑似撮影画像72すなわち検査対象疑似画像に対応する検査結果データを関連づけて図4に示す検査データファイル65として記憶領域部51に記憶する。表示装置15は、記憶装置14に記憶された図4に示す検査データファイル65を構成する疑似撮影画像データ62に基づく画像、作成条件データ63に基づく作成条件、および検査結果データ64に基づく検査結果を表示する。
【0046】
以上説明した一実施形態では、色斑データ生成部23は、既存の検査ラインを構成する視覚検査装置100で正事例または負事例の判断がされたワーク104について色斑を抽出している。そのため、色斑データ71は、実際の既存の視覚検査装置100において、カメラ102で撮影した画像を用いて正事例である負事例であるかが判断されたデータに基づいて生成される。これにより、色斑データ71は、例えば設計者などがあえて作成しなくても、人の予測を超えた多様性を含む客観的なものを既存の視覚検査装置100から容易に入手できる。また、負事例画像合成部25は、ワークデータに基づいてワーク104の疑似3D画像37を作成し、この疑似3D画像37に、予め抽出して蓄積した色斑データ71に基づく色斑テクスチャ画像36を貼り付けることにより、3D負事例画像38を擬似的に合成している。そのため、ワークデータを入力してワーク104の疑似3D画像37を作成し、この疑似3D画像37に蓄積した色斑データ71を合成すれば、任意のワークに、任意の色斑が生じた擬似的な3D負事例画像38が容易に生成される。そして、視覚検査プログラム73の実行によって実現される視覚検査装置は、任意に生成した3D負事例画像38を用いて評価される。これにより、色斑データ71を既存の視覚検査装置100から数多く蓄積することにより、擬似的なワークの疑似3D画像37に色斑データ71に対応する色斑テクスチャ画像36が合成され、容易に負事例のワークに相当する3D負事例画像38が生成される。この3D負事例画像38を利用することにより、視覚検査プログラム73の実行によって実現される視覚検査装置は、幅広い種類の色斑が付された負事例のワークについて評価される。したがって、正事例および負事例の実物のワークを入手することなく、人の予測を超えた多様な色斑の負事例を容易に収集することができ、視覚検査プログラム73の実行によって実現される視覚検査装置の検査精度および評価精度を高めることができる。
【0047】
また、一実施形態では、色斑データ生成部23は、既存の視覚検査装置100のカメラ102で撮影した画像に含まれる輝度情報の差分に基づいて色斑データ71を生成している。具体的には、色斑データ生成部23は、正事例であると判断された検査対象の画像データの輝度情報と、負事例であると判断された検査対象の画像データの輝度情報とから差分を算出する。このとき、正事例の画像データおよび負事例の画像データの輝度情報は、ワークにおいて同一の位置に相当する画素から抽出する。これにより、色斑データ71は、正事例の画像データの輝度と負事例の画像データの輝度との差を算出するという簡単な処理で入手される。したがって、色斑データの入手および蓄積を容易にすることができる。
【0048】
以上説明した本発明は、上記実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の実施形態に適用可能である。
【符号の説明】
【0049】
図面中、10は評価システム、13は検査装置(検査手段)、14は記憶装置、21はワークデータ取得部(ワークデータ取得手段)、22は3D画像生成部(3D画像生成手段)、23は色斑データ生成部(色斑データ生成手段)、24は色斑データ蓄積部(色斑データ蓄積手段)、25は負事例画像合成部(負事例画像合成手段)、26は疑似撮影画像作成部(疑似撮影画像作成手段)、37は疑似3D画像、38は3D負事例画像、61は検査対象疑似撮影画像、72は疑似撮影画像、73は視覚検査プログラム、100は視覚検査装置(既存の検査ライン)、101は検査設備、102はカメラ、104はワーク(検査対象)を示す。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検査設備に設けられているカメラで検査対象であるワークを撮影して、前記カメラで撮影した撮影画像に基づいて前記ワークの色斑を検査する視覚検査装置を評価する評価システムであって、
前記ワークを擬似的に形成する基礎となるワークデータを取得するワークデータ取得手段と、
前記ワークデータ取得手段で取得した前記ワークデータから前記ワークの疑似3D画像を生成する3D画像生成手段と、
既存の検査ラインからカメラで撮影した画像データを取得して、取得した画像データから前記既存の検査ラインで正事例または負事例の判断がされた検査対象に生じている色斑を抽出して色斑データを生成する色斑データ生成手段と、
前記色斑データを蓄積する色斑データ蓄積手段と、
前記3D画像生成手段で生成した前記疑似3D画像に、前記色斑データ蓄積手段に蓄積された前記色斑データに基づく画像を貼り付け、色斑を有する擬似的な前記ワークの3D負事例画像を合成する負事例画像合成手段と、
前記3D負事例画像を、前記カメラによる撮影範囲と一致する指定範囲から擬似的に撮影した疑似撮影画像を作成する疑似撮影画像作成手段と、
前記疑似撮影画像作成手段で作成した前記疑似撮影画像を検査対象疑似画像として取得し、予め設定されている検査プログラムにしたがって前記検査対象疑似画像から擬似的なワークを検査する検査手段と、
を備える視覚検査装置の評価システム。
【請求項2】
前記色斑データ生成手段は、正事例と判断された検査対象と、負事例と判断された検査対象とから、前記画像データに含まれる輝度情報の差分を算出して前記色斑データを生成する請求項1記載の視覚検査装置の評価システム。

【図1】
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【図4】
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【図5】
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【図7】
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【図2】
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【図3】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−63262(P2012−63262A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−207929(P2010−207929)
【出願日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【出願人】(501428545)株式会社デンソーウェーブ (1,155)
【出願人】(390001052)一般財団法人機械振興協会 (21)
【Fターム(参考)】